磁気結合装置
【課題】磁束漏れが低減され、小型化が容易な磁気結合装置を提供する。
【解決手段】磁心と、前記磁心に巻回され且つ前記磁心と絶縁された導電層を有し、入力電気信号が入力される1次コイルと、前記磁心に巻回され且つ前記磁心と絶縁された導電層を有し、前記1次コイルにより発生する磁束の変化による相互誘導起電力を出力可能な2次コイルと、前記磁心の上に設けられ、前記入力電気信号の立ち上がりまたは立ち下がりに応じた信号を前記1次コイルに向けて出力可能な変換回路と、前記磁心の上に設けられ、前記2次コイルの出力に応じて立ち上がりまたは立ち下がりに応じた出力電気信号を出力可能な逆変換回路と、を備えたことを特徴とする磁気結合装置が提供される。
【解決手段】磁心と、前記磁心に巻回され且つ前記磁心と絶縁された導電層を有し、入力電気信号が入力される1次コイルと、前記磁心に巻回され且つ前記磁心と絶縁された導電層を有し、前記1次コイルにより発生する磁束の変化による相互誘導起電力を出力可能な2次コイルと、前記磁心の上に設けられ、前記入力電気信号の立ち上がりまたは立ち下がりに応じた信号を前記1次コイルに向けて出力可能な変換回路と、前記磁心の上に設けられ、前記2次コイルの出力に応じて立ち上がりまたは立ち下がりに応じた出力電気信号を出力可能な逆変換回路と、を備えたことを特徴とする磁気結合装置が提供される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気結合装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電気信号を伝達する場合、入力側電源と出力側電源とを電気的に絶縁すると産業用機器及びこれを用いたシステムの安定動作及び安全確保が容易となる。
【0003】
例えば発光素子を用いて入力電気信号を一旦光信号に変換し、受光素子を用いて光信号を再び電気信号に逆変換可能な光結合装置などを用いることができる。このような光結合装置には、フォトカプラーやフォトリレーなどがあり、産業用機器に広く使用されている。
【0004】
光の代わりに磁気を用いても、電気的な絶縁分離が可能である。すなわち、入力電気信号により1次コイルに磁束を発生させ、この磁束変化に基づいて2次コイルに生じた相互誘導起電力を用いると、出力電気信号が取り出し可能である。この場合、1次コイルと2次コイルとは磁束を介して結合されているので、入力側と出力側とが電気的に絶縁分離可能となっている。
【0005】
磁気結合素子並びに送受信装置に関する技術開示例がある(特許文献1)。この例では、積層された絶縁基板を用いて構成され、対向配置された磁気結合素子を介して電気信号が送受信可能である。しかしながら、1次コイルと2次コイルとの間の磁気結合を密にすることが困難であり、装置の小型化が容易ではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−339257号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
磁束漏れが低減され、小型化が容易な磁気結合装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様によれば、磁心と、前記磁心に巻回され且つ前記磁心と絶縁された導電層を有し、入力電気信号が入力される1次コイルと、前記磁心に巻回され且つ前記磁心と絶縁された導電層を有し、前記1次コイルにより発生する磁束の変化による相互誘導起電力を出力可能な2次コイルと、前記磁心の上に設けられ、前記入力電気信号の立ち上がりまたは立ち下がりに応じた信号を前記1次コイルに向けて出力可能な変換回路と、前記磁心の上に設けられ、前記2次コイルの出力に応じて立ち上がりまたは立ち下がりに応じた出力電気信号を出力可能な逆変換回路と、を備えたことを特徴とする磁気結合装置が提供される。
【発明の効果】
【0009】
磁束漏れが低減され、小型化が容易な磁気結合装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】第1の実施形態にかかる磁気結合装置の模式図
【図2】変換回路及び逆変換回路を説明する概念図
【図3】コイルを説明する模式図
【図4】本実施形態に用いるコイルの製造方法を表す工程断面図
【図5】第1の実施形態の変形例を表す模式斜視図
【図6】第2の実施形態にかかる磁気結合装置の模式斜視図
【図7】第2の実施形態の変形例を表す模式斜視図
【図8】第3の実施形態にかかる磁気結合装置の模式斜視図
【図9】第4の実施形態にかかる磁気結合装置の構成図
【図10】第5の実施形態にかかる磁気結合装置の構成図
【図11】第5の実施形態の一例を表す模式斜視図
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は、本発明の第1の実施形態にかかる磁気結合装置の模式図である。すなわち、図1(a)は斜視図、図1(b)はA−A線に沿った断面図である。
ポリイミド樹脂、ガラスエポキシ樹脂、及びセラミックなどの絶縁材料からなる基板10の上に、1次コイル20及び2次コイル30が設けられている。1次コイル20及び2次コイル30は、磁心32を巻回するように設けられている。また、磁心32には矩形状や環状(トロイダル)などの貫通孔32aを設けることができる。貫通孔32aを設ける場合、第1のコイル20の導電層及び第2のコイル30の導電層は、磁心32の外縁32bと貫通孔32aに面する磁心32の内縁32cとを含む断面を巻回するように設けられる。
【0012】
リードは鉄系や銅系の合金などからなり、入力端子34、36、及び出力端子38、40、電源用端子35、39を含み、基板10と銀ロウや半田などを用いてそれぞれ接着されている。この場合、リードフレームと基板10とを接着し、必要部品をさらに実装したのちにリードカットをすると図1の構造を得ることができる。
【0013】
1次コイル20及び2次コイル30は、基板10上に設けられたストライプ状の第1の導電層と、磁心32の上に形成されストライプ状の第2の導電層と、磁心32の側面に形成され、第1の導電層と第2の導電層とを接続する側面導電層と、を有しており、断面が略矩形とされる。ストライプの数は磁心32の断面を巻回するコイルの巻き数nと略一致する。
【0014】
1次コイル20には、入力(電気)信号により電流が流れ磁束が発生する。磁心32内を通る磁束の時間変化により2次コイル30には相互誘導起電力を生じ、出力端子38、40を介して出力(電気)信号が外部に取り出し可能となる。すなわち図1の構造はトランス型と言える。
【0015】
なお、光結合装置では、電気信号を光信号に変換するのに発光素子を用い、光信号を電気信号に逆変換するのに受光素子を用いる。発光素子及び受光素子を駆動するには直流電源が必要であり、また発光素子の光出力は徐々に低下する。これに対して、磁気結合装置では、コイルは直流電源を必要とせず、また経時変化により磁束が低下することはない。すなわち、電気/磁気変換は、簡素な構造であり小型化が容易であるとともに、信頼性の改善が容易である。
【0016】
図2は、変換回路と逆変換回路を説明する概念図である。
磁気結合の場合、1次コイルにより発生した磁束が時間変化した時にのみ、2次コイルに相互誘導起電力を生じる。ディジタル信号の場合、信号の立ち上がりと立ち下がりを区別できれば、入力信号波形に応じた出力信号波形とすることができる。
【0017】
本図において、入力信号は、破線Aにおいて変換回路52に入力され、破線Bにおいて出力される。変換回路52の出力は、破線Bにおいて1次コイル20に入力され、破線Cにおいて2次コイル30から出力される。また、2次コイル30の出力は、破線Cにおいて逆変換回路54に入力され、破線Dにおいて出力される。
【0018】
変換回路52は、破線Aにおける入力信号が立ち上がる場合には、例えば単パルスを出力し、立ち下がる場合には、例えば連続パルスを出力するものとする。これらのパルス波形に応じて、1次コイル20は右ねじの法則にしたがって磁束を発生する。他方、磁束の時間変化により、2次コイル30に相互誘導起電力が発生し、破線Cにおいて磁束の時間変化に応じた信号が出力される。また、逆変換回路54に単パルスが入力されると立ち上がり信号に逆変換され、連続パルスが入力されると立ち下がり信号に逆変換されるものとする。パルス波形を変換するために変換回路52は電源電圧Vaを供給可能な電源用端子35を、逆変換するために逆変換回路54は電源電圧Vbを供給可能な電源用端子39を、それぞれ有している。
【0019】
このようにして、破線Aにおける入力信号の波形が破線Dにおいて再生された出力信号が出力可能となる。なお、変換信号波形は、単パルスや連続パルスなどに限定されない。例えば、入力信号がハイレベルの期間には交流信号を出力し、ローレベルの期間には交流信号が停止するようにしてもよい。変換信号波形に関しては、のちにさらに説明する。
【0020】
本実施形態では、変換回路52及び逆変換回路54が磁心32の上に配置される。この場合、磁心32の上に絶縁層を設けると、より絶縁性を高めることができる。
【0021】
このようにして、入力端子34、36からの入力信号は、変換回路52を介して1次コイル20に磁束を発生する。2次コイル30により、磁束変化が電気信号に変換され、逆変換回路54を介して出力信号として外部に取り出し可能となる。なお、1次コイル20と2次コイル30とは電気的に絶縁されているが、絶縁耐圧の高い樹脂などを用いて図1(b)のような成型体50を形成すると、絶縁耐圧をより高めることができ、安全確保を容易となる。
【0022】
図3は、コイルを説明する模式図である。すなわち、図3(a)は平面スパイラルコイルの斜視図、図3(b)は本実施形態のコイルの斜視図、図3(c)は本実施形態のトランス型構造の平面図である。図3(a)の平面スパイラルコイル120は、半導体チップ122上に形成することが容易であるが、図3(b)のコイルと比べて自己インダクタンスを大とすることが困難であり、例えばμHよりも大とすることが容易ではない。また、磁気結合を行う場合、1次コイルと2次コイルとをそれぞれ形成したのち、その間に絶縁物を挟むために磁束が漏れやすくなる。このように、平面スパイラルコイル120を2つ用いる磁気結合装置の製造工程において、生産性を高めることは容易ではない。
【0023】
図3(b)において、導電層を有するコイルが磁心の外縁を巻回している。本構造のコイルの自己インダクタンスLは式(1)で表すことができる。
【0024】
L=kμn2S/l 式(1)
但し、 k:コイル形状により決定される長岡係数
μ:透磁率
n:巻き数
S:コイル断面積
l:コイル長さ
【0025】
式(1)に表すように、自己インダクタンスLは、透磁率μ及びコイル断面積Sに比例し、コイルの巻き数nの2乗に比例し、且つコイル長さlに反比例する。すなわち、透磁率μ及び巻き数nを大とすると、コイル断面積Sを小とすることができ、コイルの小型化が容易となる。
【0026】
また、導電層の高さを低くすると、半導体プロセスを用いてコイルを形成でき、コイルの薄型化が容易となる。なお、このコイル製造工程に関しては、のちに説明する。
【0027】
さらに、図3(c)において、1次コイル(自己インダクタンスL1)の巻き数をn1、2次コイル(自己インダクタンスL2)の巻き数をn2とし、磁心32の透磁率をμとする。この場合、式(2)が成り立つ。
【0028】
V2=V1×α×(L2/L1)1/2=α×V1×(n2/n1) 式(2)
但し、V1:1次コイル電圧(V)
V2:2次コイルの相互誘導起電力(V)
α:結合係数
【0029】
すなわち、n2>n1とするとV2>V1となり電圧を増幅することができる。また、磁気結合装置では、2次側では外部から電圧を供給しなくとも出力電圧V2を得ることができる。この場合、透磁率μを高くすると磁束を磁心内に閉じ込め、且つ密結合とすることが容易となり漏れ磁束を低減可能である。このために、トランスの小型化及び大容量化が容易となる。
【0030】
図4は、本実施形態に用いるコイルの製造方法を表す工程断面図である。
図4(a)のように、基板10上にコイルの下面となるストライプ状の第1の導電層20aを形成する。複数の第1の導電層20aの間隙には、例えば略同一の高さの絶縁層22を形成する。絶縁層22の材料としては、酸化物、窒化物、及びポリマーなどとすることができる。
【0031】
第1の導電層20a及びこれと略同一高さの絶縁層22の上に、磁心32とする磁性材料を、例えば0.1〜100μmの厚さの範囲で形成する(図4(b))。磁性材料としては高透磁率を有するものが好ましい。高透磁率材料としては、例えばNi−Zrフェライト(比透磁率は略650)、Fe−Niパーマロイ(比透磁率は略1000)などがある。このうち、フェライト系材料は、例えばスパッタ法やメッキ法を用いて形成可能である。
【0032】
第1の導電層20aのストライプ方向の長さを、ストライプ方向に沿った磁心32の長さよりも大きくしておき、マスク材から露出した第1の導電層20aの端部上に、磁心32の高さと略同一の高さとなるまで導電層を繰り返し積み重ね、側面導電層20bを形成する。さらに、一方の側の側面導電層20bと、1つずらした反対側の側面導電層20cとを連結するようにストライプ状の第2の導電層20dを設けると、巻き数がnのコイルが形成される(図4(c))。
【0033】
第1の導電層20a、側面導電層20b、20c、及び第2の導電層20dは、半導体プロセスを用いると形成が容易である。例えば、1次コイル20と2次コイル30とを同時形成できる。なお、磁心32と、導電層との間に、絶縁層を設けると、絶縁性をより高めることが容易となる。半導体プロセスを用いたコイルの形成方法は、トロイダル状磁心に導線を巻回する方法よりも量産性に優れている。
【0034】
コイルの導電層形成工程において、1次コイル20の入力パッド部60a、60b、2次コイル30の出力パッド部60c、60d、変換回路52及び逆変換回路54のダイパッド部などを同時に形成することができる。また、図1(a)において、1次コイル20及び2次コイル30の導電層は入出力パッド部60と電気的に接続するように形成するとワイヤボンディングの回数を低減できる。
【0035】
入力端子34、36と、変換回路52の入力パッド部と、はボンディングワイヤによりそれぞれ接続され、変換回路52の出力パッド部と、1次コイル20の入力パッド部60a、60bと、はボンディングワイヤによりそれぞれ接続される。また、電源用端子35と、変換回路52のパッド部と、はボンディングワイヤで接続される。
【0036】
また、逆変換回路54の入力パッド部と、2次コイル30の出力パッド部60c、60dと、はそれぞれボンディングワイヤにより接続され、逆変換回路54の出力パッド部と、出力端子38、40とは、ボンディングワイヤによりそれぞれ接続される。さらに、電源用端子39と、逆変換回路54のパッド部と、はボンディングワイヤで接続される。
【0037】
本実施形態では、変換回路52及び逆変換回路54は、磁心32の表面のうち、1次コイル20及び2次コイル30が巻回されていない領域に配置されている。このために、磁気結合装置の小型化及び薄型化が容易となる。
【0038】
図5は、第1の実施形態の変形例にかかる磁気結合装置の模式斜視図である。
変換回路52は、1次コイル20の上にポリイミドなどの絶縁層33を介して配置され、逆変換回路54は、2次コイル30の上に絶縁層33を介して配置されている。このようにすれば、磁心32のサイズを縮小することが容易であり、磁気結合装置の形状をより小型に保つことが容易となる。
【0039】
図6は、第2の実施形態にかかる磁気結合装置の模式斜視図である。
基板の上に1次コイル20及び2次コイル30が設けられている。磁心32には貫通孔が設けられていないバー状とする。1次コイル20と2次コイル30とが磁心32上に隣接している。1次コイル20の外側に変換回路52が配置されており、2次コイル30の外側に逆変換回路54が配置されている。貫通孔がない本実施形態では、磁心32のサイズを縮小することが容易となる。
【0040】
図7は、第2の実施形態の変形例の模式斜視図である。
1次コイル20の導電層と2次コイルの導電層とは、交互に磁心32に巻回されている。このようにすると、磁心32の長さを短くすることが可能となる。半導体製造プロセスを用いて導電層を磁心32に巻回する本製造方法ではこのように交互に1次コイル20及び2次コイル30巻回する工程がさらに容易となる。
【0041】
図8は、本発明の第3の実施形態にかかる磁気結合装置の模式斜視図である。
本実施形態は、信号の多チャネル伝送が可能である。すなわち、本図では、3つの独立した磁気結合構造を有しており、3チャネルの信号伝送が可能である。この場合、磁心32の透磁率μを高くすると、磁束を磁心32内に閉じ込めて漏れ磁束を低減できる。このために、隣接したチャネルへの磁束の漏れにより生じるクロストークを抑制でき、信号伝送品質を高めることが容易となる。それぞれの変換回路52の電源電圧Vaは、例えば基板10上に設けられた導電層11を介して電源用端子35と接続可能である。また、それぞれの逆変換回路54の電源電圧Vbは,例えば基板10上に設けられた導電層12を介して電源用端子39と接続可能である。
【0042】
図9は、第4の実施形態にかかる磁気結合装置の構成図である。
1次コイル(高域コイル)20には変換回路20を介して入力信号が加えられる。また、磁心32には1次コイル(低域コイル)21も巻回されており、DA変換器56を介して交流信号が加えられる。このために、1次コイル20、21による磁束は、入力信号に応じた磁束と、交流信号による磁束と、が重畳されている。
【0043】
2次コイル30の出力が入力されるフィルタ61の出力は、低域フィルタを通過可能な交流信号成分と、高域フィルタを通過可能な高域信号成分と、に分離される。交流信号成分はAD変換器58により平滑化されて直流電圧Vccへと変換される。また、高域信号成分は、逆変換回路54により入力信号に応じた波形の出力信号に逆変換される。
【0044】
本実施形態では、生成された直流電圧Vccを用いて動作可能な内部駆動出力回路70から信号を出力可能となる。この内部駆動出力回路70は、例えばコンパレータ62、MOSFET66a、66b、及びMOSFETを制御可能な制御回路64を有しており、増幅機能など備えることもできる。
【0045】
コンパレータ62もMOSFETにより構成可能である。MOSFETは、低消費電力によりオンとオフとを切り替えるのでこのような内部駆動出力回路70の構成に適している。このようにして、小型化が容易であり、且つ内部で増幅可能な磁気結合装置が提供される。
【0046】
図10は、第5の実施形態にかかる磁気結合装置の構成図である。
変換回路52は、入力信号がハイレベルとなると交流信号を1次コイル20に向けて出力し、入力信号がローレベルとなると交流信号を停止する。また、逆変換回路54は、2次コイル30が交流信号を出力すると出力信号をハイレベルとし、2次コイル30が交流信号を停止すると出力信号をローレベルとする。このような波形変換とすることもできる。
【0047】
本実施形態では、入力信号がハイレベルを保つ期間、逆変換回路54は交流信号をAD変換して直流電圧を生成可能である。もし、逆変換回路54の後段に内部駆動出力回路70を接続すると、この直流電圧を内部駆動出力回路70に供給可能となる。内部駆動出力回路70をソース・コモンのNチャネルMOSFET66a、66bで構成すると、直流電圧がゲート閾値以上において2つのMOSFET66a、66bは共にオンとなる。他方、直流電圧がゲート閾値よりも低いと、2つのMOSFET66a、66bは共にオフとなる。
【0048】
このようにして、本実施形態の磁気結合装置はスイッチとしての機能を有し、FAXやPBXなどの回線スイッチとしてディジタル及びアナログ信号の切り替えが可能である。スイッチとしての機能を有する磁気結合装置は、メカニカル・リレーよりも、接点摩耗などがなく、小型軽量化が容易である。
【0049】
図11は、第5の実施形態の一例を表す模式斜視図である。
逆変換回路54の上にポリイミドなどからなる絶縁層37をさらに設け、その上にMOSFET66a、66bを配置する。このようにすると、内部駆動回路70が設けられた磁気結合装置の形状をより小型化することができる。なお、本図では、手前側にMOSFET66a、66bが配置されており、出力側となる。
【0050】
逆変換回路54の表面において、MOSFET66a、66bが設けられていない領域に逆変換回路54の入出力パッド部及び電源電圧用パッド部が露出している。
【0051】
磁心32に設けられた2次コイル30の出力パッド部と、逆変換回路54の入力パッド部と、がボンディングワイヤでそれぞれ接続される。逆変換回路54の一方の出力と、MOSFET66a、66bのゲートと、がボンディングワイヤでそれぞれ接続される。また、逆変換回路54の他方の出力と、MOSFET66a、66bのそれぞれのソース端子と、がボンディングワイヤによりそれぞれ接続される。さらに、MOSFET66aのドレイン端子と出力端子74とがボンディングワイヤにより接続され、MOSFET66bのドレイン端子と出力端子76とがボンディングワイヤにより接続され、出力信号を出力可能となる。このように、2次コイル30上に、逆変換回路54及び内部駆動出力回路70を積層することにより、磁気結合装置の小型化がより容易となる。
【0052】
第1〜第5の実施形態及びこれらに付随する変形例において、磁束漏れが低減され、小型化が容易な磁気結合装置が提供される。このような磁気結合装置を用いて入力電気信号を伝達すると、入力側電源と出力側電源とを電気的に絶縁しつつ出力電気信号を出力可能である。このために、高い動作電圧を必要とする産業用機器の制御などに広く用いることができ、制御システムの安定動作及び機器の安全確保が容易となる。
【0053】
以上、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明した。しかし、本発明はこれらの実施形態に限定されない。本発明を構成する1次コイル、2次コイル、磁心、絶縁層、変換回路、逆変換回路、内部駆動回路、フィルタ、AD変換器、DA変換器、及びMOSFETの材質、サイズ、形状、及び配置などに関して、当業者が各種の設計変更を行ったものであっても、本発明の主旨を逸脱しない限り本発明に包含される。
【符号の説明】
【0054】
20 1次コイル(高域コイル)、20a、20b、20c、20d、導電層、21 1次コイル(低域コイル)、30 2次コイル、32、32a、32b、32c 磁心、52 変換回路、54 逆変換回路、58 AD変換器、60 パッド部、61 フィルタ、70 内部駆動出力回路
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気結合装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電気信号を伝達する場合、入力側電源と出力側電源とを電気的に絶縁すると産業用機器及びこれを用いたシステムの安定動作及び安全確保が容易となる。
【0003】
例えば発光素子を用いて入力電気信号を一旦光信号に変換し、受光素子を用いて光信号を再び電気信号に逆変換可能な光結合装置などを用いることができる。このような光結合装置には、フォトカプラーやフォトリレーなどがあり、産業用機器に広く使用されている。
【0004】
光の代わりに磁気を用いても、電気的な絶縁分離が可能である。すなわち、入力電気信号により1次コイルに磁束を発生させ、この磁束変化に基づいて2次コイルに生じた相互誘導起電力を用いると、出力電気信号が取り出し可能である。この場合、1次コイルと2次コイルとは磁束を介して結合されているので、入力側と出力側とが電気的に絶縁分離可能となっている。
【0005】
磁気結合素子並びに送受信装置に関する技術開示例がある(特許文献1)。この例では、積層された絶縁基板を用いて構成され、対向配置された磁気結合素子を介して電気信号が送受信可能である。しかしながら、1次コイルと2次コイルとの間の磁気結合を密にすることが困難であり、装置の小型化が容易ではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−339257号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
磁束漏れが低減され、小型化が容易な磁気結合装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様によれば、磁心と、前記磁心に巻回され且つ前記磁心と絶縁された導電層を有し、入力電気信号が入力される1次コイルと、前記磁心に巻回され且つ前記磁心と絶縁された導電層を有し、前記1次コイルにより発生する磁束の変化による相互誘導起電力を出力可能な2次コイルと、前記磁心の上に設けられ、前記入力電気信号の立ち上がりまたは立ち下がりに応じた信号を前記1次コイルに向けて出力可能な変換回路と、前記磁心の上に設けられ、前記2次コイルの出力に応じて立ち上がりまたは立ち下がりに応じた出力電気信号を出力可能な逆変換回路と、を備えたことを特徴とする磁気結合装置が提供される。
【発明の効果】
【0009】
磁束漏れが低減され、小型化が容易な磁気結合装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】第1の実施形態にかかる磁気結合装置の模式図
【図2】変換回路及び逆変換回路を説明する概念図
【図3】コイルを説明する模式図
【図4】本実施形態に用いるコイルの製造方法を表す工程断面図
【図5】第1の実施形態の変形例を表す模式斜視図
【図6】第2の実施形態にかかる磁気結合装置の模式斜視図
【図7】第2の実施形態の変形例を表す模式斜視図
【図8】第3の実施形態にかかる磁気結合装置の模式斜視図
【図9】第4の実施形態にかかる磁気結合装置の構成図
【図10】第5の実施形態にかかる磁気結合装置の構成図
【図11】第5の実施形態の一例を表す模式斜視図
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は、本発明の第1の実施形態にかかる磁気結合装置の模式図である。すなわち、図1(a)は斜視図、図1(b)はA−A線に沿った断面図である。
ポリイミド樹脂、ガラスエポキシ樹脂、及びセラミックなどの絶縁材料からなる基板10の上に、1次コイル20及び2次コイル30が設けられている。1次コイル20及び2次コイル30は、磁心32を巻回するように設けられている。また、磁心32には矩形状や環状(トロイダル)などの貫通孔32aを設けることができる。貫通孔32aを設ける場合、第1のコイル20の導電層及び第2のコイル30の導電層は、磁心32の外縁32bと貫通孔32aに面する磁心32の内縁32cとを含む断面を巻回するように設けられる。
【0012】
リードは鉄系や銅系の合金などからなり、入力端子34、36、及び出力端子38、40、電源用端子35、39を含み、基板10と銀ロウや半田などを用いてそれぞれ接着されている。この場合、リードフレームと基板10とを接着し、必要部品をさらに実装したのちにリードカットをすると図1の構造を得ることができる。
【0013】
1次コイル20及び2次コイル30は、基板10上に設けられたストライプ状の第1の導電層と、磁心32の上に形成されストライプ状の第2の導電層と、磁心32の側面に形成され、第1の導電層と第2の導電層とを接続する側面導電層と、を有しており、断面が略矩形とされる。ストライプの数は磁心32の断面を巻回するコイルの巻き数nと略一致する。
【0014】
1次コイル20には、入力(電気)信号により電流が流れ磁束が発生する。磁心32内を通る磁束の時間変化により2次コイル30には相互誘導起電力を生じ、出力端子38、40を介して出力(電気)信号が外部に取り出し可能となる。すなわち図1の構造はトランス型と言える。
【0015】
なお、光結合装置では、電気信号を光信号に変換するのに発光素子を用い、光信号を電気信号に逆変換するのに受光素子を用いる。発光素子及び受光素子を駆動するには直流電源が必要であり、また発光素子の光出力は徐々に低下する。これに対して、磁気結合装置では、コイルは直流電源を必要とせず、また経時変化により磁束が低下することはない。すなわち、電気/磁気変換は、簡素な構造であり小型化が容易であるとともに、信頼性の改善が容易である。
【0016】
図2は、変換回路と逆変換回路を説明する概念図である。
磁気結合の場合、1次コイルにより発生した磁束が時間変化した時にのみ、2次コイルに相互誘導起電力を生じる。ディジタル信号の場合、信号の立ち上がりと立ち下がりを区別できれば、入力信号波形に応じた出力信号波形とすることができる。
【0017】
本図において、入力信号は、破線Aにおいて変換回路52に入力され、破線Bにおいて出力される。変換回路52の出力は、破線Bにおいて1次コイル20に入力され、破線Cにおいて2次コイル30から出力される。また、2次コイル30の出力は、破線Cにおいて逆変換回路54に入力され、破線Dにおいて出力される。
【0018】
変換回路52は、破線Aにおける入力信号が立ち上がる場合には、例えば単パルスを出力し、立ち下がる場合には、例えば連続パルスを出力するものとする。これらのパルス波形に応じて、1次コイル20は右ねじの法則にしたがって磁束を発生する。他方、磁束の時間変化により、2次コイル30に相互誘導起電力が発生し、破線Cにおいて磁束の時間変化に応じた信号が出力される。また、逆変換回路54に単パルスが入力されると立ち上がり信号に逆変換され、連続パルスが入力されると立ち下がり信号に逆変換されるものとする。パルス波形を変換するために変換回路52は電源電圧Vaを供給可能な電源用端子35を、逆変換するために逆変換回路54は電源電圧Vbを供給可能な電源用端子39を、それぞれ有している。
【0019】
このようにして、破線Aにおける入力信号の波形が破線Dにおいて再生された出力信号が出力可能となる。なお、変換信号波形は、単パルスや連続パルスなどに限定されない。例えば、入力信号がハイレベルの期間には交流信号を出力し、ローレベルの期間には交流信号が停止するようにしてもよい。変換信号波形に関しては、のちにさらに説明する。
【0020】
本実施形態では、変換回路52及び逆変換回路54が磁心32の上に配置される。この場合、磁心32の上に絶縁層を設けると、より絶縁性を高めることができる。
【0021】
このようにして、入力端子34、36からの入力信号は、変換回路52を介して1次コイル20に磁束を発生する。2次コイル30により、磁束変化が電気信号に変換され、逆変換回路54を介して出力信号として外部に取り出し可能となる。なお、1次コイル20と2次コイル30とは電気的に絶縁されているが、絶縁耐圧の高い樹脂などを用いて図1(b)のような成型体50を形成すると、絶縁耐圧をより高めることができ、安全確保を容易となる。
【0022】
図3は、コイルを説明する模式図である。すなわち、図3(a)は平面スパイラルコイルの斜視図、図3(b)は本実施形態のコイルの斜視図、図3(c)は本実施形態のトランス型構造の平面図である。図3(a)の平面スパイラルコイル120は、半導体チップ122上に形成することが容易であるが、図3(b)のコイルと比べて自己インダクタンスを大とすることが困難であり、例えばμHよりも大とすることが容易ではない。また、磁気結合を行う場合、1次コイルと2次コイルとをそれぞれ形成したのち、その間に絶縁物を挟むために磁束が漏れやすくなる。このように、平面スパイラルコイル120を2つ用いる磁気結合装置の製造工程において、生産性を高めることは容易ではない。
【0023】
図3(b)において、導電層を有するコイルが磁心の外縁を巻回している。本構造のコイルの自己インダクタンスLは式(1)で表すことができる。
【0024】
L=kμn2S/l 式(1)
但し、 k:コイル形状により決定される長岡係数
μ:透磁率
n:巻き数
S:コイル断面積
l:コイル長さ
【0025】
式(1)に表すように、自己インダクタンスLは、透磁率μ及びコイル断面積Sに比例し、コイルの巻き数nの2乗に比例し、且つコイル長さlに反比例する。すなわち、透磁率μ及び巻き数nを大とすると、コイル断面積Sを小とすることができ、コイルの小型化が容易となる。
【0026】
また、導電層の高さを低くすると、半導体プロセスを用いてコイルを形成でき、コイルの薄型化が容易となる。なお、このコイル製造工程に関しては、のちに説明する。
【0027】
さらに、図3(c)において、1次コイル(自己インダクタンスL1)の巻き数をn1、2次コイル(自己インダクタンスL2)の巻き数をn2とし、磁心32の透磁率をμとする。この場合、式(2)が成り立つ。
【0028】
V2=V1×α×(L2/L1)1/2=α×V1×(n2/n1) 式(2)
但し、V1:1次コイル電圧(V)
V2:2次コイルの相互誘導起電力(V)
α:結合係数
【0029】
すなわち、n2>n1とするとV2>V1となり電圧を増幅することができる。また、磁気結合装置では、2次側では外部から電圧を供給しなくとも出力電圧V2を得ることができる。この場合、透磁率μを高くすると磁束を磁心内に閉じ込め、且つ密結合とすることが容易となり漏れ磁束を低減可能である。このために、トランスの小型化及び大容量化が容易となる。
【0030】
図4は、本実施形態に用いるコイルの製造方法を表す工程断面図である。
図4(a)のように、基板10上にコイルの下面となるストライプ状の第1の導電層20aを形成する。複数の第1の導電層20aの間隙には、例えば略同一の高さの絶縁層22を形成する。絶縁層22の材料としては、酸化物、窒化物、及びポリマーなどとすることができる。
【0031】
第1の導電層20a及びこれと略同一高さの絶縁層22の上に、磁心32とする磁性材料を、例えば0.1〜100μmの厚さの範囲で形成する(図4(b))。磁性材料としては高透磁率を有するものが好ましい。高透磁率材料としては、例えばNi−Zrフェライト(比透磁率は略650)、Fe−Niパーマロイ(比透磁率は略1000)などがある。このうち、フェライト系材料は、例えばスパッタ法やメッキ法を用いて形成可能である。
【0032】
第1の導電層20aのストライプ方向の長さを、ストライプ方向に沿った磁心32の長さよりも大きくしておき、マスク材から露出した第1の導電層20aの端部上に、磁心32の高さと略同一の高さとなるまで導電層を繰り返し積み重ね、側面導電層20bを形成する。さらに、一方の側の側面導電層20bと、1つずらした反対側の側面導電層20cとを連結するようにストライプ状の第2の導電層20dを設けると、巻き数がnのコイルが形成される(図4(c))。
【0033】
第1の導電層20a、側面導電層20b、20c、及び第2の導電層20dは、半導体プロセスを用いると形成が容易である。例えば、1次コイル20と2次コイル30とを同時形成できる。なお、磁心32と、導電層との間に、絶縁層を設けると、絶縁性をより高めることが容易となる。半導体プロセスを用いたコイルの形成方法は、トロイダル状磁心に導線を巻回する方法よりも量産性に優れている。
【0034】
コイルの導電層形成工程において、1次コイル20の入力パッド部60a、60b、2次コイル30の出力パッド部60c、60d、変換回路52及び逆変換回路54のダイパッド部などを同時に形成することができる。また、図1(a)において、1次コイル20及び2次コイル30の導電層は入出力パッド部60と電気的に接続するように形成するとワイヤボンディングの回数を低減できる。
【0035】
入力端子34、36と、変換回路52の入力パッド部と、はボンディングワイヤによりそれぞれ接続され、変換回路52の出力パッド部と、1次コイル20の入力パッド部60a、60bと、はボンディングワイヤによりそれぞれ接続される。また、電源用端子35と、変換回路52のパッド部と、はボンディングワイヤで接続される。
【0036】
また、逆変換回路54の入力パッド部と、2次コイル30の出力パッド部60c、60dと、はそれぞれボンディングワイヤにより接続され、逆変換回路54の出力パッド部と、出力端子38、40とは、ボンディングワイヤによりそれぞれ接続される。さらに、電源用端子39と、逆変換回路54のパッド部と、はボンディングワイヤで接続される。
【0037】
本実施形態では、変換回路52及び逆変換回路54は、磁心32の表面のうち、1次コイル20及び2次コイル30が巻回されていない領域に配置されている。このために、磁気結合装置の小型化及び薄型化が容易となる。
【0038】
図5は、第1の実施形態の変形例にかかる磁気結合装置の模式斜視図である。
変換回路52は、1次コイル20の上にポリイミドなどの絶縁層33を介して配置され、逆変換回路54は、2次コイル30の上に絶縁層33を介して配置されている。このようにすれば、磁心32のサイズを縮小することが容易であり、磁気結合装置の形状をより小型に保つことが容易となる。
【0039】
図6は、第2の実施形態にかかる磁気結合装置の模式斜視図である。
基板の上に1次コイル20及び2次コイル30が設けられている。磁心32には貫通孔が設けられていないバー状とする。1次コイル20と2次コイル30とが磁心32上に隣接している。1次コイル20の外側に変換回路52が配置されており、2次コイル30の外側に逆変換回路54が配置されている。貫通孔がない本実施形態では、磁心32のサイズを縮小することが容易となる。
【0040】
図7は、第2の実施形態の変形例の模式斜視図である。
1次コイル20の導電層と2次コイルの導電層とは、交互に磁心32に巻回されている。このようにすると、磁心32の長さを短くすることが可能となる。半導体製造プロセスを用いて導電層を磁心32に巻回する本製造方法ではこのように交互に1次コイル20及び2次コイル30巻回する工程がさらに容易となる。
【0041】
図8は、本発明の第3の実施形態にかかる磁気結合装置の模式斜視図である。
本実施形態は、信号の多チャネル伝送が可能である。すなわち、本図では、3つの独立した磁気結合構造を有しており、3チャネルの信号伝送が可能である。この場合、磁心32の透磁率μを高くすると、磁束を磁心32内に閉じ込めて漏れ磁束を低減できる。このために、隣接したチャネルへの磁束の漏れにより生じるクロストークを抑制でき、信号伝送品質を高めることが容易となる。それぞれの変換回路52の電源電圧Vaは、例えば基板10上に設けられた導電層11を介して電源用端子35と接続可能である。また、それぞれの逆変換回路54の電源電圧Vbは,例えば基板10上に設けられた導電層12を介して電源用端子39と接続可能である。
【0042】
図9は、第4の実施形態にかかる磁気結合装置の構成図である。
1次コイル(高域コイル)20には変換回路20を介して入力信号が加えられる。また、磁心32には1次コイル(低域コイル)21も巻回されており、DA変換器56を介して交流信号が加えられる。このために、1次コイル20、21による磁束は、入力信号に応じた磁束と、交流信号による磁束と、が重畳されている。
【0043】
2次コイル30の出力が入力されるフィルタ61の出力は、低域フィルタを通過可能な交流信号成分と、高域フィルタを通過可能な高域信号成分と、に分離される。交流信号成分はAD変換器58により平滑化されて直流電圧Vccへと変換される。また、高域信号成分は、逆変換回路54により入力信号に応じた波形の出力信号に逆変換される。
【0044】
本実施形態では、生成された直流電圧Vccを用いて動作可能な内部駆動出力回路70から信号を出力可能となる。この内部駆動出力回路70は、例えばコンパレータ62、MOSFET66a、66b、及びMOSFETを制御可能な制御回路64を有しており、増幅機能など備えることもできる。
【0045】
コンパレータ62もMOSFETにより構成可能である。MOSFETは、低消費電力によりオンとオフとを切り替えるのでこのような内部駆動出力回路70の構成に適している。このようにして、小型化が容易であり、且つ内部で増幅可能な磁気結合装置が提供される。
【0046】
図10は、第5の実施形態にかかる磁気結合装置の構成図である。
変換回路52は、入力信号がハイレベルとなると交流信号を1次コイル20に向けて出力し、入力信号がローレベルとなると交流信号を停止する。また、逆変換回路54は、2次コイル30が交流信号を出力すると出力信号をハイレベルとし、2次コイル30が交流信号を停止すると出力信号をローレベルとする。このような波形変換とすることもできる。
【0047】
本実施形態では、入力信号がハイレベルを保つ期間、逆変換回路54は交流信号をAD変換して直流電圧を生成可能である。もし、逆変換回路54の後段に内部駆動出力回路70を接続すると、この直流電圧を内部駆動出力回路70に供給可能となる。内部駆動出力回路70をソース・コモンのNチャネルMOSFET66a、66bで構成すると、直流電圧がゲート閾値以上において2つのMOSFET66a、66bは共にオンとなる。他方、直流電圧がゲート閾値よりも低いと、2つのMOSFET66a、66bは共にオフとなる。
【0048】
このようにして、本実施形態の磁気結合装置はスイッチとしての機能を有し、FAXやPBXなどの回線スイッチとしてディジタル及びアナログ信号の切り替えが可能である。スイッチとしての機能を有する磁気結合装置は、メカニカル・リレーよりも、接点摩耗などがなく、小型軽量化が容易である。
【0049】
図11は、第5の実施形態の一例を表す模式斜視図である。
逆変換回路54の上にポリイミドなどからなる絶縁層37をさらに設け、その上にMOSFET66a、66bを配置する。このようにすると、内部駆動回路70が設けられた磁気結合装置の形状をより小型化することができる。なお、本図では、手前側にMOSFET66a、66bが配置されており、出力側となる。
【0050】
逆変換回路54の表面において、MOSFET66a、66bが設けられていない領域に逆変換回路54の入出力パッド部及び電源電圧用パッド部が露出している。
【0051】
磁心32に設けられた2次コイル30の出力パッド部と、逆変換回路54の入力パッド部と、がボンディングワイヤでそれぞれ接続される。逆変換回路54の一方の出力と、MOSFET66a、66bのゲートと、がボンディングワイヤでそれぞれ接続される。また、逆変換回路54の他方の出力と、MOSFET66a、66bのそれぞれのソース端子と、がボンディングワイヤによりそれぞれ接続される。さらに、MOSFET66aのドレイン端子と出力端子74とがボンディングワイヤにより接続され、MOSFET66bのドレイン端子と出力端子76とがボンディングワイヤにより接続され、出力信号を出力可能となる。このように、2次コイル30上に、逆変換回路54及び内部駆動出力回路70を積層することにより、磁気結合装置の小型化がより容易となる。
【0052】
第1〜第5の実施形態及びこれらに付随する変形例において、磁束漏れが低減され、小型化が容易な磁気結合装置が提供される。このような磁気結合装置を用いて入力電気信号を伝達すると、入力側電源と出力側電源とを電気的に絶縁しつつ出力電気信号を出力可能である。このために、高い動作電圧を必要とする産業用機器の制御などに広く用いることができ、制御システムの安定動作及び機器の安全確保が容易となる。
【0053】
以上、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明した。しかし、本発明はこれらの実施形態に限定されない。本発明を構成する1次コイル、2次コイル、磁心、絶縁層、変換回路、逆変換回路、内部駆動回路、フィルタ、AD変換器、DA変換器、及びMOSFETの材質、サイズ、形状、及び配置などに関して、当業者が各種の設計変更を行ったものであっても、本発明の主旨を逸脱しない限り本発明に包含される。
【符号の説明】
【0054】
20 1次コイル(高域コイル)、20a、20b、20c、20d、導電層、21 1次コイル(低域コイル)、30 2次コイル、32、32a、32b、32c 磁心、52 変換回路、54 逆変換回路、58 AD変換器、60 パッド部、61 フィルタ、70 内部駆動出力回路
【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁心と、
前記磁心に巻回され且つ前記磁心と絶縁された導電層を有し、入力電気信号が入力される1次コイルと、
前記磁心に巻回され且つ前記磁心と絶縁された導電層を有し、前記1次コイルにより発生する磁束の変化による相互誘導起電力を出力可能な2次コイルと、
前記磁心の上に設けられ、前記入力電気信号の立ち上がりまたは立ち下がりに応じた信号を前記1次コイルに向けて出力可能な変換回路と、
前記磁心の上に設けられ、前記2次コイルの出力に応じて立ち上がりまたは立ち下がりに応じた出力電気信号を出力可能な逆変換回路と、
を備えたことを特徴とする磁気結合装置。
【請求項2】
前記磁心には貫通孔が設けられ、
前記第1のコイルの前記導電層及び前記第2のコイルの前記導電層は、前記磁心の断面を巻回するように設けられたことを特徴とする請求項1記載の磁気結合装置。
【請求項3】
前記変換回路は、入力電気信号がハイレベルとなると交流信号を前記1次コイルに向けて出力し、入力電気信号がローレベルとなると前記交流信号を停止し、
前記逆変換回路は、前記2次コイルが交流信号を出力すると前記出力電気信号をハイレベルとし、前記2次コイルが前記交流信号を停止すると前記出力電気信号をローレベルとすることを特徴とする請求項1または2に記載の磁気結合装置。
【請求項4】
内部駆動出力回路をさらに備え、
前記逆変換回路は、前記2次コイルからの前記出力に含まれる前記交流信号を直流電圧に変換して前記内部駆動出力回路に供給し、
前記内部駆動出力回路は、前記逆変換回路からの前記出力電気信号に基づいて、出力側を開状態及び閉状態のいずれかに切り替え可能とすることを特徴とする請求項3記載の磁気結合装置。
【請求項5】
交流信号を出力可能なDA変換器と、
前記2次コイルの前記出力が入力されるフィルタと、
前記フィルタの出力から直流電圧を生成可能なAD変換器と、
内部駆動出力回路と、
をさらに備え、
前記1次コイルは、前記変換回路に接続される高域コイルと、前記DA変換器に接続される低域コイルと、を有し、
前記フィルタの前記出力のうち、前記高域コイルの出力に応じて前記2次コイルに発生した出力は前記逆変換回路へ入力され、前記低域コイルの出力に応じて前記2次コイルに発生した出力は前記AD変換器へ入力され、
前記内部駆動出力回路は、前記AD変換器からの前記直流電圧を用いて前記逆変換回路からの前記出力電気信号を出力可能とすることを特徴とする請求項1または2に記載の磁気結合装置。
【請求項1】
磁心と、
前記磁心に巻回され且つ前記磁心と絶縁された導電層を有し、入力電気信号が入力される1次コイルと、
前記磁心に巻回され且つ前記磁心と絶縁された導電層を有し、前記1次コイルにより発生する磁束の変化による相互誘導起電力を出力可能な2次コイルと、
前記磁心の上に設けられ、前記入力電気信号の立ち上がりまたは立ち下がりに応じた信号を前記1次コイルに向けて出力可能な変換回路と、
前記磁心の上に設けられ、前記2次コイルの出力に応じて立ち上がりまたは立ち下がりに応じた出力電気信号を出力可能な逆変換回路と、
を備えたことを特徴とする磁気結合装置。
【請求項2】
前記磁心には貫通孔が設けられ、
前記第1のコイルの前記導電層及び前記第2のコイルの前記導電層は、前記磁心の断面を巻回するように設けられたことを特徴とする請求項1記載の磁気結合装置。
【請求項3】
前記変換回路は、入力電気信号がハイレベルとなると交流信号を前記1次コイルに向けて出力し、入力電気信号がローレベルとなると前記交流信号を停止し、
前記逆変換回路は、前記2次コイルが交流信号を出力すると前記出力電気信号をハイレベルとし、前記2次コイルが前記交流信号を停止すると前記出力電気信号をローレベルとすることを特徴とする請求項1または2に記載の磁気結合装置。
【請求項4】
内部駆動出力回路をさらに備え、
前記逆変換回路は、前記2次コイルからの前記出力に含まれる前記交流信号を直流電圧に変換して前記内部駆動出力回路に供給し、
前記内部駆動出力回路は、前記逆変換回路からの前記出力電気信号に基づいて、出力側を開状態及び閉状態のいずれかに切り替え可能とすることを特徴とする請求項3記載の磁気結合装置。
【請求項5】
交流信号を出力可能なDA変換器と、
前記2次コイルの前記出力が入力されるフィルタと、
前記フィルタの出力から直流電圧を生成可能なAD変換器と、
内部駆動出力回路と、
をさらに備え、
前記1次コイルは、前記変換回路に接続される高域コイルと、前記DA変換器に接続される低域コイルと、を有し、
前記フィルタの前記出力のうち、前記高域コイルの出力に応じて前記2次コイルに発生した出力は前記逆変換回路へ入力され、前記低域コイルの出力に応じて前記2次コイルに発生した出力は前記AD変換器へ入力され、
前記内部駆動出力回路は、前記AD変換器からの前記直流電圧を用いて前記逆変換回路からの前記出力電気信号を出力可能とすることを特徴とする請求項1または2に記載の磁気結合装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図7】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図7】
【公開番号】特開2010−226343(P2010−226343A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−70473(P2009−70473)
【出願日】平成21年3月23日(2009.3.23)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年3月23日(2009.3.23)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】
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