説明

磁気記録媒体用六方晶フェライト粒子粉末

【課題】 本発明は、磁気記録媒体用六方晶フェライト粒子粉末に関するものであり、磁性塗料中における分散性に優れると共に、磁気記録媒体のノイズをより低減できる六方晶フェライト粒子粉末に関するものである。
【解決手段】 六方晶フェライト粒子粉末の平均板面径(L)が10〜20.5nmであって、平均板面径(L)とBET比表面積値(SSA)が下記式(1)の関係にある磁気記録媒体用六方晶フェライト粒子粉末である。
SSA(m/g) ≧ −2.3×L(nm)+127 ・・・ (1)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気記録媒体用六方晶フェライト粒子粉末に関するものであり、詳しくは、平均板面径(L)が10〜20nmであって、平均板面径(L)とBET比表面積値(SSA)が特定の関係を有する、分散性に優れた六方晶フェライト粒子粉末に関するものである。
【背景技術】
【0002】
磁気記録技術は、従来、オーディオ用、ビデオ用、コンピューター用等をはじめとしてさまざまな分野で幅広く用いられている。近年、機器の小型軽量化、記録の長時間化及び記録容量の増大等が求められており、記録媒体に対しては、記録密度のより一層の向上が望まれている。
【0003】
従来の磁気記録媒体に対してより高密度記録を行うためには、高いC/N比が必要であり、ノイズ(N)が低く、再生出力(C)が高いことが求められている。近年では、これまで用いられていた誘導型磁気ヘッドに替わり、磁気抵抗型ヘッド(MRヘッド)や巨大磁気抵抗型ヘッド(GMRヘッド)等の高感度ヘッドが開発されており、これらは誘導型磁気ヘッドに比べて再生出力が得られやすいことから、高いC/N比を得るためには、出力を上げるよりもノイズを低減する方が重要となってきている。
【0004】
磁気記録媒体のノイズは、粒子性ノイズと磁気記録媒体の表面性に起因して発生する表面性ノイズに大別される。粒子性ノイズの場合、粒子サイズの影響が大きく、微粒子であるほどノイズ低減に有利であることから、磁気記録媒体に用いる磁性粒子粉末の粒子サイズはできるだけ小さいことが求められている。
【0005】
一般に、微粒子、且つ、高保磁力値を有する磁性粒子粉末としては、鉄を主成分とする金属磁性粒子粉末及び六方晶フェライト粒子粉末等が知られており、六方晶フェライト粒子粉末は針状の金属磁性粒子粉末に比べ短波長領域で高い出力が得られるという特徴があり、再生にMRヘッドやGMRヘッドを用いた高密度記録の磁気記録媒体用磁性粉末として非常に有望である。
【0006】
六方晶フェライト粒子粉末の製法としては、所望のフェライト組成になるように混合した原材料とガラス形成物質を溶融し、急冷して非晶質体とし、次いで再加熱処理した後、洗浄・粉砕して六方晶フェライト粒子粉末を得るガラス結晶化法(特許文献1)、所望のフェライト組成のアルカリ性懸濁液を100℃以上で液相加熱し、洗浄・乾燥した後900℃前後で熱処理し、粉砕して六方晶フェライト粒子粉末を得る水熱合成法(特許文献2)、所望のフェライト組成の金属塩溶液をアルカリで中和し、得られた鉄塩とバリウム塩の共沈物を水洗・乾燥した後800℃で熱処理し、粉砕して六方晶フェライト粒子粉末を得る共沈−焼成法(特許文献3)及び共沈物の形成を逆ミセル法により行った共沈−焼成法(特許文献4)等が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−5299号公報
【特許文献2】特開平2−9723号公報
【特許文献3】特開平7−172839号公報
【特許文献4】特開2007−91517号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
平均板面径(L)が10〜20nmであると共に、平均板面径(L)(nm)とBET比表面積値(SSA)(m/g)が下記式(1)の関係にある磁気記録媒体用六方晶フェライト粒子粉末は未だ得られていない。
SSA(m/g) ≧ −2.3×L(nm)+127 ・・・ (1)
【0009】
即ち、前出特許文献1〜4に記載の六方晶フェライト粒子粉末は、いずれも、平均板面径(L)が10〜20nmであると共に、本発明が好ましいとする平均板面径(L)に対するBET比表面積値(SSA)の関係を満たしていない。
【0010】
そこで、本発明は、平均板面径(L)が10〜20nmであって、平均板面径(L)とBET比表面積値(SSA)が特定の関係を有する、分散性に優れた六方晶フェライト粒子粉末を得ることを技術的課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記技術的課題は、次の通りの本発明によって達成できる。
【0012】
即ち、本発明は、六方晶フェライト粒子粉末の平均板面径(L)が10〜20nmであって、該六方晶フェライト粒子粉末の平均板面径(L)(nm)とBET比表面積値(SSA)(m/g)が下記式(1)の関係にあることを特徴とする磁気記録媒体用六方晶フェライト粒子粉末である(本発明1)。
SSA(m/g) ≧ −2.3×L(nm)+127 ・・・ (1)
【0013】
また、本発明は、保磁力(Hc)が95.5kA/m以上であることを特徴とする本発明1の磁気記録媒体用六方晶フェライト粒子粉末である(本発明2)。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る磁気記録媒体用六方晶フェライト粒子粉末は、平均板面径(L)が10〜20nmであって、平均板面径(L)とBET比表面積値(SSA)が特定の関係にあることによって、磁性塗料中における分散性に優れると共に、これを磁気記録媒体の磁性粒子粉末として用いた場合には、磁気記録媒体のノイズをより低減できるため、高密度磁気記録媒体の磁性粒子粉末として好適である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の構成をより詳しく説明すれば、次の通りである。
【0016】
先ず、本発明に係る磁気記録媒体用六方晶フェライト粒子粉末について述べる。
【0017】
本発明に係る磁気記録媒体用六方晶フェライト粒子粉末は、平均板面径(L)が10〜20nmであって、平均板面径(L)(nm)とBET比表面積値(SSA)(m/g)が下記式(1)の関係にあることを特徴とする。
SSA(m/g) ≧ −2.3×L(nm)+127 ・・・ (1)
【0018】
本発明に係る磁気記録媒体用六方晶フェライト粒子粉末は、Ba、Sr及びCaから選ばれる1種又は2種以上の元素を含有するマグネトプランバイト型(M型)フェライト微粒子粉末又はW型フェライト微粒子粉末、あるいはそれらの原子の一部が他の元素で置換された六方晶フェライト粒子粉末である。置換元素としては、具体的にはCo、Ni、Zn、Mn、Mg、Ti、Sn、Zr、Cu、Mo、La、Ce、V、Si、S、Sc、Sb、Y、Rh、Pd、Nd、Nb、B、P、Ge、Al、Ag、Au、Ru、Pr、Bi、W、Re、Te等の元素を1種又は2種以上を用いることができる。
【0019】
本発明に係る磁気記録媒体用六方晶フェライト粒子粉末の平均板面径は10〜20nmであり、好ましくは11〜20nm、より好ましくは12〜20nmである。六方晶フェライト粒子粉末の平均板面径が20nmを超える場合には、粒子サイズが大きいため、粒子性ノイズをより低減することが難しく、高いC/N比を有する磁気記録媒体を得ることが困難となる。また、平均板面径が10nm以下である場合には、磁性粒子粉末の微細化に伴う熱揺らぎの影響が大きくなるため好ましくない。
【0020】
本発明に係る磁気記録媒体用六方晶フェライト粒子粉末の板状比(平均板面径と平均厚みの比)(以下、「板状比」という。)は1.5〜10.0が好ましく、より好ましくは1.75〜8.0、更により好ましくは2.0〜6.0である。板状比が10を超える場合には、粒子間のスタッキングが多くなり、磁性塗料の製造時におけるビヒクル中への分散性が低下すると共に、粘度が増加する場合があるため好ましくない。
【0021】
本発明に係る磁気記録媒体用六方晶フェライト粒子粉末の平均板面径(L)(nm)とBET比表面積値(SSA)(m/g)との関係は下記式(1)で表される。
SSA(m/g) ≧ −2.3×L(nm)+127 ・・・ (1)
【0022】
平均板面径(L)とBET比表面積値(SSA)との関係が上記式(1)の範囲にある場合、これを用いて磁気記録媒体を作製する際、磁性塗料中における分散性が向上するため、表面性に優れた磁気記録媒体を得ることができる。
【0023】
本発明に係る磁気記録媒体用磁性微粒子粉末のBET比表面積値の下限値は、前述の式(1)で表される値である。また、その上限値は170m/gであることが好ましく、より好ましくは160m/g、更により好ましくは150m/gである。BET比表面積値が170m/gを超える場合には、粒子の微細化による分子間力の増大により凝集を起こしやすいため、磁性塗料の製造時におけるビヒクル中への分散性が低下する。
【0024】
本発明に係る磁気記録媒体用六方晶フェライト粒子粉末の磁気特性は、保磁力(Hc)が95.5〜397.9kA/mが好ましく、より好ましくは119.4〜318.3kA/mであり、飽和磁化値が40〜70Am/kgが好ましく、より好ましくは45〜70Am/kgである。
【0025】
本発明に係る磁気記録媒体用六方晶フェライト粒子粉末は、必要により、六方晶フェライト粒子粉末の粒子表面を、アルミニウムの水酸化物、アルミニウムの酸化物、ケイ素の水酸化物及びケイ素の酸化物から選ばれた1種又は2種以上の化合物(以下、「アルミニウムの水酸化物等」という。)で被覆しておいてもよい。アルミニウムの水酸化物等で被覆処理を行うことにより、磁性塗料中に分散させた場合に、結合剤樹脂とのなじみがよく、所望の分散度がより得られ易い。
【0026】
本発明に係る磁気記録媒体用六方晶フェライト粒子粉末を得るための製造法としては、所望のフェライト組成になるように混合した原材料とガラス形成物質を溶融し、急冷して非晶質体とし、次いで再加熱処理した後、洗浄・粉砕して六方晶フェライト粒子粉末を得るガラス結晶化法、所望のフェライト組成のアルカリ性懸濁液を100℃以上で液相加熱し、洗浄・乾燥した後900℃前後で熱処理し、粉砕して六方晶フェライト粒子粉末を得る水熱合成法、所望のフェライト組成の金属塩溶液をアルカリで中和し、得られた鉄塩とバリウム塩の共沈物を水洗・乾燥した後800℃で熱処理し、粉砕して六方晶フェライト粒子粉末を得る共沈−焼成法等があるが、前述の特性を満たすものであれば特に限定されない。
【実施例】
【0027】
以下に、本発明における実施例を示し、本発明を具体的に説明する。
【0028】
六方晶フェライト粒子粉末の平均板面径及び平均厚さは、透過型電子顕微鏡を用いて粒子の写真を撮影し、該写真を用いて粒子360個以上について板面径、厚さをそれぞれ測定し、その平均値で粒子の平均板面径及び平均厚さを示した。なお、粒子の選定基準としては、粒子同士が重なっており、境界がはっきりしていないものは測定を行わないものとした。
【0029】
板状比は、平均板面径と平均厚さとの比で示した。
【0030】
比表面積値は、「モノソーブMS−11」(カンタクロム株式会社製)を用いて、BET法により測定した値で示した。
【0031】
六方晶フェライト粒子粉末に含有される各種元素の含有量は、「蛍光X線分析装置3063M型」(理学電機工業株式会社製)を使用し、JIS K0119の「けい光X線分析通則」に従って測定した。
【0032】
六方晶フェライト粒子粉末の磁気特性は、「振動試料型磁力計VSM SSM−5−15」(東英工業株式会社製)を用いて外部磁場1193.7kA/mの条件で測定した。
【0033】
本発明に係る磁気記録媒体用六方晶フェライト粒子粉末の磁気記録媒体における特性を評価・確認するため、以下に示す方法で磁気テープを作製し評価した。
【0034】
非磁性下地層形成用の非磁性塗料組成
非磁性下地層用ヘマタイト粒子粉末 100.0重量部、
スルホン酸カリウム基を有する塩化ビニル系共重合樹脂 11.8重量部、
スルホン酸ナトリウム基を有するポリウレタン樹脂 11.8重量部、
シクロヘキサノン 78.3重量部、
メチルエチルケトン 195.8重量部、
トルエン 117.5重量部、
硬化剤(ポリイソシアネート) 3.0重量部、
潤滑剤(ブチルステアレート) 1.0重量部。
【0035】
非磁性下地層用ヘマタイト粒子粉末と結合剤樹脂溶液(スルホン酸カリウム基を有する塩化ビニル系共重合樹脂30重量%とシクロヘキサノン70重量%)及びシクロヘキサノンとを固形分が72wt%となるよう混合し、自動乳鉢を用いて30分間混練して混練物を得た。
【0036】
次いで、上記非磁性塗料組成となるように、上記混練物と、追加の結合剤樹脂溶液(スルホン酸ナトリウム基を有するポリウレタン樹脂30重量%、溶剤(メチルエチルケトン:トルエン=1:1)70重量%)、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン及びトルエン1.5mmφガラスビーズ95gと共に140mlガラス瓶に添加し、ペイントシェーカーで6時間混合・分散を行って非磁性塗料組成物を得た。その後、潤滑剤及び硬化剤を加え、更に、ペイントシェーカーで15分間混合・分散した後、3μmの平均孔径を有するフィルターを用いてろ過し、非磁性下地層用非磁性塗料を調整した。
【0037】
上記非磁性下地層用非磁性塗料を厚さ4.5μmの芳香族ポリアミドフィルム上に塗布し、次いで、乾燥させることにより非磁性下地層を形成した。
【0038】
磁気記録層形成用の磁性塗料組成
六方晶フェライト粒子粉末 100.0重量部、
スルホン酸カリウム基を有する塩化ビニル系共重合樹脂 12.5重量部、
スルホン酸ナトリウム基を有するポリウレタン樹脂 7.5重量部、
研磨剤(AKP−50) 5.0重量部、
カーボンブラック 2.0重量部、
潤滑剤(ミリスチン酸:ステアリン酸ブチル=1:2) 3.0重量部、
硬化剤(ポリイソシアネート) 5.0重量部、
シクロヘキサノン 170.0重量部、
メチルエチルケトン 170.0重量部。
【0039】
六方晶フェライト粒子粉末と研磨剤、カーボンブラック、結合剤樹脂溶液(スルホン酸カリウム基を有する塩化ビニル系共重合樹脂30重量%とシクロヘキサノン70重量%)及びシクロヘキサノンとを固形分が76wt%となるよう混合し、自動乳鉢を用いて40分間混練して混練物を得た。
【0040】
次いで、上記磁性塗料組成となるように、上記混練物と、追加の結合剤樹脂溶液(スルホン酸ナトリウム基を有するポリウレタン樹脂30重量%、溶剤(メチルエチルケトン:トルエン=1:1)70重量%)、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン及びトルエン1.5mmφガラスビーズ95gと共に140mlガラス瓶に添加し、ペイントシェーカーで6時間混合・分散を行って非磁性塗料組成物を得た。その後、潤滑剤及び硬化剤を加え、更に、ペイントシェーカーで15分間混合・分散した後、3μmの平均孔径を有するフィルターを用いてろ過し、磁気記録層用磁性塗料を調整した。
【0041】
上記磁気記録層用塗料を、乾燥後の厚さが1.5μmになるよう前記非磁性下地層の上に塗布した後、磁場中において配向・乾燥した。その後、60℃で24時間硬化反応を行い、12.7mm幅にスリットして磁気テープを得た。
【0042】
磁気テープの磁気特性のうち保磁力値Hcと角形比Br/Bmは、「振動試料型磁力計VSM SSM−5−15」(東英工業株式会社製)を用いて外部磁場1193.7kA/mの条件で測定した。
【0043】
磁気テープの磁気特性のうち保磁力分布SFDは、「振動試料型磁力計VSM SSM−5−15」(東英工業株式会社製)を用いて、印加磁場が0〜397.9kA/mの範囲ではスイープ速度を79.6(kA/m)/分とし、397.9〜1,193.7kA/mの範囲ではスイープ速度を397.9(kA/m)/分として測定した。
【0044】
磁気記録媒体を構成する非磁性支持体及び磁気記録層の各層の厚みは、デジタル電子マイクロメーターK351C(安立電気株式会社製)を用いて測定した。
【0045】
磁気テープの塗膜表面の光沢度は、「グロスメーター UGV−5D」(スガ試験機株式会社製)を用いて入射角45°で測定した値であり、標準板光沢を86.3%とした時の値を%で示したものである。
【0046】
磁気テープの塗膜の表面粗度Raは、「ZYGO NewView600S」(ZYGO株式会社製)を用いて塗膜の中心線平均粗さを測定した。
【0047】
磁気テープの電磁変換特性は、ドラムテスターを用い、記録ヘッドにはMIGヘッドを、再生用ヘッドにはMRヘッドを用いて測定を行った。ヘッドと磁気テープとの相対速度は2.5m/secとし、記録周波数10MHzにおける再生信号出力(C)及び記録周波数9MHzにおける出力をノイズ信号出力(N)を、それぞれ後出参考例2−1を0dB(基準テープ)として、基準テープに対する相対値として求めた。またC/Nはこれら再生信号出力(C)とノイズ信号出力(N)を用いて示した。
【0048】
<実施例1:磁気記録媒体用六方晶フェライト粒子粉末の製造>
BaCl・2HO 0.798mol、FeCl・6HO 6.00mol、NiCl 0.18mol、TiCl 0.18molに純水を加えて溶解し、7Lの混合溶液を調製した。次いで、18.55mol/LのNaOH水溶液5Lを攪拌させながら前記混合溶液を200mL/min.の流量でNaOH水溶液中に添加した後、80℃で6時間反応を行った。次に、純水を用いて十分に水洗し、共沈物を含む10Lのスラリーとした後、フラックスとしてBaCl・2HOを前記スラリー1Lに対して100g添加し、ろ過・乾燥して共沈物を得た。
【0049】
次いで、得られた共沈物を空気雰囲気下、720℃の温度で4時間焼成し、得られた焼成物に純水1Lを加えて分散スラリーとした。得られたスラリーを、塩酸を用いてpH値を2に調製して60分保持して酸処理を行い、水酸化ナトリウム水溶液を用いてpH値を5に調整した後、水洗・ろ過・乾燥・粉砕して、実施例1の六方晶フェライト粒子粉末を得た。
【0050】
得られた六方晶フェライト粒子粉末は板状であり、平均板面径は18.9nm、平均厚みは5.8nm、板状比は3.3、BET比表面積値(実測値)は88.8m/gであり、保磁力値(Hc)は165.6kA/m、飽和磁化(σs)は46.5Am/kgであった。
【0051】
実施例2:
BaCl ・2H O 0.08mol、FeCl/6HO 0.60mol、NiCl 0.024mol、TiCl 0.024molに純水を加えて溶解し、0.7Lの混合溶液を調製した。次いで、18.55mol/LのNaOH水溶液0.5Lを攪拌させながら、前記混合溶液を20mL/min.の流量でNaOH水溶液中に添加し、オートクレーブを用いて150℃で6時間反応を行った後、室温まで冷却した。反応溶液を「超音波ホモジナイザー SonifierII model 450D」(BRANSON株式会社製)を用いて10分間攪拌後、純水を用いて十分に水洗し、六方晶フェライト粒子の種晶を含む1Lのスラリーとした後、フラックスとしてBaCl・2HOを前記スラリー1Lに対して100g添加し、ろ過・乾燥して六方晶フェライト粒子の種晶を得た。
【0052】
次いで、得られた六方晶フェライト粒子の種晶を空気雰囲気下、720℃の温度で4時間焼成し、得られた焼成物に純水1Lを加えて分散スラリーとした。得られたスラリーを、塩酸を用いてpH値を2に調製して60分保持して酸処理を行い、水酸化ナトリウム水溶液を用いてpH値を5に調整した後、水洗・ろ過・乾燥・粉砕して、実施例2の六方晶フェライト粒子粉末を得た。得られた六方晶フェライト粒子粉末の諸特性を表1に示す。
【0053】
実施例3:
BaCO 24.7mmol、HBO 34.1mmol、Fe 19.8mmol、Co 0.44mmol、ZnO 1.12mmol、Nb 0.28mmol、ZrO 0.14mmolを十分に混合し、白金ルツボに混合原料を入れて、1330℃で加熱溶融した後、(均質化した)溶融物を急冷(圧延)し、非晶質体を作製した。得られた非晶質体を600℃で3時間保持して六方晶フェライト結晶を析出させた。析出物を粉砕した後、10%の酢酸溶液中で、溶液温度を80℃以上に制御しながら、4時間攪拌し酸処理を行い、BaO及びBを溶解した。次いで、これらのBaO及びB成分並びに酸成分を除去するため水洗を繰り返した後、スラリーを乾燥させ、実施例3の六方晶フェライト粒子粉末を得た。得られた六方晶フェライト粒子粉末の諸特性を表1に示す。
【0054】
実施例4:

実施例1で得られた共沈物の焼成温度を690℃とし、3.5時間焼成した以外は実施例1と同様にして実施例4の六方晶フェライト粒子粉末を得た。得られた六方晶フェライト粒子粉末の諸特性を表1に示す。
【0055】
実施例5:
実施例1の六方晶フェライト粒子粉末200gと水1500mlとを用いて分散スラリーを調整し、水酸化ナトリウム水溶液を添加してpH値を9とした後、該スラリーに水を加えスラリー濃度を98g/Lとした。このスラリー150lを加熱して60℃とし、このスラリー中に3号水ガラス 9.8mL(六方晶フェライト粒子粉末に対してSi換算で0.9重量%に相当する)を加え、30分間保持した後、酢酸を用いてpH値を9に調整した。この状態で30分間保持した後、濾過・水洗・乾燥・粉砕し、粒子表面がケイ素化合物により被覆されている実施例5の六方晶フェライト粒子粉末を得た。得られた六方晶フェライト粒子粉末の諸特性を表1に示す。
【0056】
比較例1(特開2007−91517号公報 実施例5に準じた追試実験):
NaOH 80mmolを純水160mlに溶解した水溶液に、エーロゾルOT 108gとデカン800mlとを混合したアルカン溶液を添加、混合して逆ミセル溶液(I)を調製した。
【0057】
BaCl・2HO 2mmol、FeCl・6HO 22.7mmol、CoCl・6HO 0.56mmol、ZnCl 0.50mmol、Nb(NO 0.24mmolを純水140mlに溶解した金属塩水溶液に、エーロゾルOT 54gとデカン500mlとを混合したアルカン溶液を添加、混合して逆ミセル溶液(II)を調製した。
【0058】
逆ミセル溶液(I)を22℃で「超音波ホモジナイザー SonifierII model 450D」(BRANSON株式会社製)で高速攪拌しながら、22℃にした逆ミセル溶液(II)を3分間かけて添加し、マグネチックスターラーで8分攪拌した後、50℃に昇温して30分間熟成し、室温まで冷却して大気中に取出した。逆ミセルを破壊するために、水500mlとメタノール500mlとの混合溶液を添加して水相と油相とに分離し、共沈粒子が分散した油相側を水600mlとメタノール200mlとの混合溶液で2回洗浄した後、メタノールを2000ml添加して共沈粒子にフロキュレーションを起こさせて沈降させ、上澄み液を除去した後、ヘプタン100mlを添加して再分散させた。
【0059】
更に、メタノール1000ml添加による沈降とヘプタン100ml分散との沈降分散を2回繰り返し、メタノールを添加して共沈粒子を沈降させた。上澄みを除去し、次に水1000mlを添加し分散、沈降、上澄み除去を2回繰り返した。得られた共沈物を純水1L中に再分散し、0.1モルのCaCl・6HOを純水に溶解したものを添加し、次いで、NHOHで中和し、六方晶フェライト組成物粒子表面にCa(OH)の被覆を形成した。沈殿物をろ過・水洗し、次いで120℃で乾燥した後、乾燥物を粉砕した。
【0060】
粉砕した乾燥物を空気中で600℃にて加熱し表面被覆物を酸化物とした後、更に700℃で2時間熱処理し、六方晶フェライト粒子粉末とした。生成物を5%酢酸水溶液に入れ表面被覆物を除去し、比較例1の六方晶フェライト粒子粉末を得た。得られた六方晶フェライト粒子粉末の諸特性を表1に示す。
【0061】
【表1】

【0062】
<磁気テープの製造>
磁気テープ1〜5、比較磁気テープ1:
六方晶フェライト粒子の種類を種々変化させた以外は、前記実施例の磁気テープの作製方法に従って磁気テープを製造した。
【0063】
得られた磁気テープの諸特性を表2に示す。
【0064】
【表2】

【0065】
上記実施例からわかるように、本発明により得られた六方晶フェライト粒子粉末は、平均板面径(L)が10〜20.5nmであって、平均板面径(L)とBET比表面積値(SSA)が特定の関係にあることによって、磁性塗料中における分散性に優れるため、これらを用いて得られた磁気記録媒体は、ノイズがより低減され、高いC/Nが得られている。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明に係る磁気記録媒体用六方晶フェライト粒子粉末は、平均板面径(L)が10〜20.5nmであって、平均板面径(L)とBET比表面積値(SSA)が特定の関係にあることによって、磁性塗料中における分散性に優れると共に、これを磁気記録媒体の磁性粒子粉末として用いた場合には、磁気記録媒体のノイズをより低減できるため、高密度磁気記録媒体の磁性粒子粉末として好適である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
六方晶フェライト粒子粉末の平均板面径(L)が10〜20nmであって、該六方晶フェライト粒子粉末の平均板面径(L)(nm)とBET比表面積値(SSA)(m/g)が下記式(1)の関係にあることを特徴とする磁気記録媒体用六方晶フェライト粒子粉末。
SSA(m/g) ≧ −2.3×L(nm)+127 ・・・ (1)
【請求項2】
保磁力(Hc)が95.5kA/m以上であることを特徴とする請求項1記載の磁気記録媒体用六方晶フェライト粒子粉末。

【公開番号】特開2011−18423(P2011−18423A)
【公開日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−163970(P2009−163970)
【出願日】平成21年7月10日(2009.7.10)
【出願人】(000166443)戸田工業株式会社 (406)
【Fターム(参考)】