説明

神経成長因子アゴニストおよびNSAID、ならびにこれらを含む組成物の投与によって疼痛を処置するための方法

本発明は、疼痛を処置または予防するための方法を特徴とし、この方法は、神経成長因子アンタゴニスト(例えば、抗NGF抗体)およびNSAIDを、これらが一緒になって有効な疼痛軽減を提供するような量で投与する工程を包含する。さらなる実施形態において、本発明はまた、神経成長因子アンタゴニストおよびNSAIDを含有する組成物、ならびにこれらを含むキットを特徴とする。このような治療は、結果として疼痛処置を予想外に増強した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の引用)
本出願は、米国仮出願番号60/448,823(2003年2月19日出願)および同60/448,853(2003年2月19日出願)の優先の利益を主張する。これらの内容は、その全体を参考として援用する。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、神経成長因子アンタゴニストとNSAIDとの組み合わせを投与することによって患者の疼痛を予防および処置するための方法および組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
(背景技術)
非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)の投与に関する多数の処置が、現在疼痛軽減のために推奨されている。NSAIDの投与は、疼痛緩和特性を表すことが示されている。しかし、NSAIDニヨル処置は、公知の欠点を有する。この欠点としては、望ましくない副作用(例えば、消化管および腎臓の過敏および肝毒性)が挙げられる。さらに、NSAIDは、ある疼痛の状態においては、その治療的に認可された最大用量においてでさえも、適切な疼痛緩和を達成し得ない。
【0004】
神経成長因子(NGF)は、最初に同定された神経栄養因子であり、末梢神経系および中枢神経系の両方の発生および生存におけるその役割は、よく特徴付けられている。NGFは、末梢自律神経および胚性感覚神経ならびに前脳コリン作動性ニューロンの発生における重要な生存因子および維持因子であることが示されている(Smeyneら、Nature 368:246−249(1994);Crowleyら、Cell 76:1001−1011(1994))。NGFは、感覚神経における神経ペプチドの発現をアップレギュレートし(Lindsayら、Nature 337:362−364(1989))、そしてその活性は、2つの異なる膜結合レセプター、TrkAチロシンキナーゼレセプターおよびp75レセプターを通じて媒介される。これらのレセプターは、構造的に、腫瘍壊死因子レセプターファミリーの他の膜に関係する(Chaoら、Science 232:518−521(1986))。
【0005】
神経系におけるその効果に加えて、NGFは、神経系以外のプロセスにおいて示されるようになってきた。例えば、外因性に投与されたNGFは、管の透過性を増強すること(Ottenら、Eur.J.Pharmacol.106:199−201(1984))、T細胞およびB細胞免疫応答を増強すること(Ottenら、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.86:10059−10063(1989))、リンパ球分化および肥満細胞増殖を誘導すること、ならびに肥満細胞からの可溶性生物シグナルの放出を引き起こすこと(Matsudaら、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.85:6508−6512(1988);Pearceら、J.Physiol.372:379−393(1986);Bischoffら、Blood 79:2662−2669(1992);Horigomeら、J.Biol.Chem.268:14881−14887(1993))を示した。
【0006】
NGFは、多くの細胞型で産生される。これらの細胞型としては、肥満細胞(Leonら、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.91:3739−3743(1994))、Bリンパ球(Torciaら、Cell 85:345−356(1996))、ケラチノサイト(Di Marcoら、J.Biol.Chem.268:22838−22846)、平滑筋細胞(Ueyamaら、J.Hypertens.11:1061−1065(1993))、線維芽細胞(Lindholmら、Eur.J.Neirosci.2:795−801(1990))、気管支上皮細胞(Kasselら、Clin.Exp.Allergy 31:1432−40(2001))、腎臓メサンギウム細胞(Steinerら、Am.J.Physiol.261:F792−798(1991))、および骨格筋筋管(Schwartzら、J.Photochem.Photobiol.B66:195−200(2002))が挙げられる。NGFレセプターは、神経系以外の種々の細胞型で見出されている。例えば、TrkAは、ヒトの単球、Tリンパ球、Bリンパ球および肥満細胞に見出されている。
【0007】
NGFレベルの増加と種々の炎症状態との間の関係は、ヒト患者およびいくつかの動物モデルにおいて観察されている。これらには、全身性エリテマトーデス(Bracci−Laudieroら、Neuroreport 4:563−565(1993))、多発性硬化症(Bracci−Laudieroら、Neurosci.Lett.147:9−12(1992))、乾癬(Raychaudhuriら、Acta Derm.l’enereol.78:84−86(1998))、関節炎(Falcimiら、Ann.Rheum,Dis.55:745−748(1996))、間質性膀胱炎(Okraglyら、J.Urology 161:438−441(1999))、および喘息(Braunら、Eur.J Immunol.28:3240−3251(1998))が挙げられる。
【0008】
一貫して、末梢組織におけるNGFのレベルの上昇は、痛覚過敏および炎症に関連し、種々の関節炎の形態において観察されている。慢性関節リューマチに罹患する患者の滑膜は、高レベルのNGFを発現する一方、非炎症性滑膜においては、NGFは検出できないことが報告されている(Aloeら、Arch.Rheum. 35:351−355(1992))。同様の結果が、実験的に誘導された慢性関節リューマチを有するラットにおいて見られた(Aloeら、Clin.Exp.Rheumatol。10:203−204(1992))。NGFのレベルの上昇は、トランスジェニック関節炎マウスにおいて、肥満細胞の数の増加とともに報告されている(Aloeら、Int.J.Tissue Reactions−Exp.Clin.Aspects 15:139−143(1993))。
【0009】
疼痛の処置のための医薬の2つの一般的なカテゴリーがある。各々は、異なる機構を介して作用し、そして異なる効果を有するが、両方とも欠点を有する。第一のカテゴリーは、軽い疼痛を処置するために使用される非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)を含むが、この治療への使用は、望ましくない消化管への影響(例えば、胃粘膜糜爛、消化性潰瘍または十二指腸および結腸の炎症の形成)ならびに長期使用による腎毒性によって制限される。第二のカテゴリーは、モルフィンのようなオピオイド系鎮痛剤を含む。これらは強い疼痛を緩和処置するために使用されるが、この治療への使用は、望ましくない影響(例えば、便秘、吐き気および嘔吐、呼吸抑制、精神混濁、腎疝痛、長期使用による耐性、および中毒の危険性)のため、限定される。
【0010】
治療的利益(例えば、疼痛の重症度および/または頻度の減少)の改善を提供し、そして/または現行のレジメンの多くによって引き起こされる望ましくない副作用の発生を減少する、疼痛処置の改善に対する必要性が存在することは明らかである。
【0011】
本明細書において引用される全ての参考文献(特許出願および特許公開を含む)は、その全体が参考として援用される。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0012】
(発明の簡単な要旨)
本発明は、NGFのアンタゴニストが、NSAIDと組み合わせて、疼痛を処置するのに有効であるという発見に基づく。このような治療は、結果として疼痛処置を予想外に増強した。さらに、このような治療は、一般的に、減少した投薬量のNSAIDが、同じ量の疼痛の減少および/またはNSAID疼痛処置の増強の他の形態をもたらすことを可能にする。
【0013】
第一の局面において、本発明は、疼痛を処置する(または、他の実施形態においては、予防する)ための方法を特徴とし、この方法は、ある量の神経成長因子アンタゴニストおよびある量のNSAIDを投与する工程を包含し、これによって、それらは組み合わせて、有効な疼痛の軽減を提供する。NGFアンタゴニストおよびNSAIDの相対的な量および比率は、変動し得る。いくつかの実施形態では、十分なNGFアンタゴニストが投与されて、同程度の疼痛の改善をもたらすのに必要とされる、NSAIDの通常量を減少させる。いくつかの実施形態では、十分なNGFアンタゴニストが投与されて、同程度の疼痛の改善をもたらすのに必要とされる、NSAIDの通常量を、少なくとも約5%まで、少なくとも約10%まで、少なくとも約20%まで、少なくとも約30%まで、少なくとも約40%まで、少なくとも約50%まで、少なくとも約60%まで、少なくとも約70%まで、少なくとも約80%まで、少なくとも約90%まで、またはそれ以上、減少させる。この減少は、所定の投与で投与される量、および/または所定の期間にわたって投与される量(頻度の減少)に反映され得る。
【0014】
別の局面において、本発明は、NSAID疼痛処置を増強するための方法を提供する。この方法は、有効量のNSAIDを、有効量のNGFアンタゴニストと組み合わせて投与する工程を包含する。本明細書中で使用される場合、組み合わせ投与は、同時投与および/または異なる時間での投与を包含する。組み合わせ投与はまた、同時処方(すなわち、同じ組成物中にNGFアンタゴニストとNSAIDとが(組み合わせて)存在する)としての投与、および/または別個の組成物としての投与を包含する。本明細書中で使用される場合、「組み合わせ投与」とは、NSAIDとNGFアンタゴニストとが、個々の有効量で投与される任意の環境を含むことを意味する。本明細書においてさらに考察されるように、NGFアンタゴニストとNSAIDとが、異なる投薬頻度および/または投薬間隔で投与されうることが、理解される。例えば、抗NGF抗体は、毎週投与され得、一方NSAIDは、より頻繁に投与され得る。NGFアンタゴニストとNSAIDとが、同じ投与経路または異なる投与経路を用いて投与され得ること、そして種々の投薬レジメンが、投与の経過にわたって変更され得ることが、理解される。投与は、疼痛の開始の前であり得る。
【0015】
別の局面において、本発明は、疼痛の発生を減少し、疼痛を改善し、疼痛を緩和し、および/または固体の疼痛の発生および進行を遅延させるための方法を提供する。この方法は、有効量のNGFアンタゴニストを有効量のNSAIDと組み合わせて投与する工程を包含する。
【0016】
本発明の方法は、あらゆる疼痛のあらゆる病因を処置または予防するのに適切である。これらは、NSAIDの使用が一般的に処方されている疼痛を含む。いくつかの実施形態においては、疼痛は、術後の疼痛である。いくつかの実施形態においては、疼痛は、火傷に関連する疼痛である。他の実施形態においては、疼痛は、慢性関節リューマチに関連する疼痛である。他の実施形態においては、疼痛は、骨関節炎に関する疼痛である。本発明の方法における使用に適切なNGFアンタゴニストは、NGFの生物学的活性を直接的または間接的に減少させる、任意の薬剤である。いくつかの実施形態においては、NGFアンタゴニストは、NGFに結合(物理的に相互作用)し(例えば、抗体)、NGFレセプター(例えば、trkAレセプターおよび/もしくはp75)に結合し、ならびに/または下流のNGFレセプターのシグナル伝達を減少(妨害および/もしくはブロック)する(例えば、標的細胞におけるNGFにより誘導されるキナーゼシグナル伝達もしくは他の下流のシグナル伝達のインヒビター)。他の実施形態において、NGFアンタゴニストは、NGF合成および/または放出を阻害(減少)する。他の実施形態において、NGFアンタゴニストは、NGFレセプターTrkAおよび/もしくはp75の発現または機能を減少させる。別の実施形態において、NGFアンタゴニストは、TrkAイムノアドヘシンでないNGFアンタゴニスト(すなわち、TrkAイムノアドヘシン以外)である。いくつかの実施形態において、NGFアンタゴニストは、以下のいずれか一以上から選択される:抗NGF抗体、NGFをコードする核酸に指向するアンチセンス分子(NGFをコードする核酸に指向するアンチセンス分子を含む)、NGFレセプターに指向するアンチセンス分子(例えば、TrkAおよび/もしくはp75)、NGF阻害化合物、NGFの構造アナログ、NGFに結合する、TrkAレセプターおよび/もしくはp75レセプターの顕性不活性突然変異体、抗TrkA抗体、抗p75抗体、ならびにキナーゼインヒビター。いくつかの実施形態において、NGFアンタゴニスト(例えば、抗NGF抗体)は、NGF(例えば、hNGF)に結合し、そして関連する神経栄養因子(例えば、NT−3、NT4/5、および/またはBDNF)には結合しない。別の実施形態において、NGFアンタゴニストは、抗NGF抗体である。さらに他の実施形態において、この抗NGF抗体は、NGFに特異的に結合する。さらに他の実施形態において、この抗NGF抗体は、ヒトNGFを認識する。なお他の実施形態において、この抗NGF抗体は、ヒトNGFに特異的に結合する。なおさらなる実施形態において、この抗体は、以下のいずれか一以上から選択される抗体と本質的に同一のNGFエピトープ6に結合する:MAb911、MAb912、およびMAb938(Hongoら、Hybridoma 19:215−227(2000)を参照のこと)。さらに他の実施形態において、この抗NGF抗体は、ヒト化される(本明細書において記載される抗体E3のような、ヒト化Mab911を含む)。さらに他の実施形態において、この抗NGF抗体は、(本明細書において記載されるような)抗体E3である。他の実施形態において、この抗NGF抗体は、抗体E3の一以上のCDR(例えば、1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、または他の実施形態においては、E3由来の6つ全てのCDR)を含む。他の実施形態において、この抗NGF抗体は、ヒトである、さらに他の実施形態において、この抗NGF抗体は、表1に示される重鎖可変領域のアミノ酸配列(配列番号1)および表2に示される軽鎖可変領域のアミノ酸配列(配列番号2)を含む。さらに他の実施形態において、この抗NGF抗体は、表1に示される重鎖可変領域のアミノ酸配列(配列番号1)を含む。さらに他の実施形態において、この抗NGF抗体は、表2に示される軽鎖可変領域のアミノ酸配列(配列番号2)を含む。さらに他の実施形態において、この抗体は、改変された定常領域(例えば、免疫学的に不活性な定常領域)を含み、例えば、補体に媒介される溶解を誘発しないか、または抗体依存性細胞媒介性細胞毒性(ADCC)を刺激しない。他の実施形態において、この定常領域は、Eur.J.Immunol.(1999)29:2613−2624;PCT出願番号PCT/GB99/01441;および/または英国特許出願番号9809951.8に記載されるように改変される。
【0017】
いくつかの実施形態において、NGFアンタゴニストは、NGF分子に結合する。さらに他の実施形態において、このNGFアンタゴニストは、NGFに特異的に結合する抗体である。しかし、このNGFアンタゴニストは、代替的にtrkAレセプターに結合する。このNGFアンタゴニストは、hNGFに結合し得、そしてヒトTrkA(hTrkA)へのhNGFの結合を有効に阻害し得る、抗ヒトNGF(抗hNGF)モノクローナル抗体であり得る。
【0018】
NGF(例えば、hNGF)への抗ヒトNGFの結合親和性は、約0.10nM〜約0.80nM、約0.15nM〜約0.75nM、および約0.18nM〜約0.72nMであり得る。一実施形態において、この結合親和性は、約2pMと約22pMとの間である。いくつかの実施形態において、この結合親和性は、約10nMである。他の実施形態において、この結合親和性は、約10nM未満である。他の実施形態において、この結合親和性は、約0.1nMであるか、または約0.07nMである他の実施形態において、この結合親和性は、約0.1nM未満であるか、または約0.07nM未満である。他の実施形態において、この結合親和性は、約100nM、約50nM、約10nM、約1nM、約500pM、約100pM、または約50pMのいずれか〜約2pM、約5pM、約10pM、約15pM、約20pM、約40pM、または約50pMのいずれかである。いくつかの実施形態において、この結合親和性は、約100nM、約50nM、約10nM、約1nM、約500pM、約100pM、もしくは約50pM、または約50pM未満のいずれかである。いくつかの実施形態において、この結合親和性は、約100nM、約50nM、約10nM、約1nM、約500pM、約100pM、または約50pMのいずれかに満たない。さらに他の実施形態において、この結合親和性は、約2pM、約5pM、約10pM、約15pM、約20pM、約40pM、または約40pMより大きい。当該分野で周知のように、結合親和性は、Kまたは解離定数として表現され得、そして結合親和性の上昇は、Kの減少に相当する。抗NGFマウスモノクローナル抗体911(Hongoら、Hybridoma 19:215−227(2000))のヒトNGFに対する結合親和性は、約10nMであり、ヒト化抗NGF抗体E3(本明細書において記載される)のヒトNGFに対する結合親和性は、約0.07nMである。
【0019】
例えば、NGFアンタゴニストが抗体である場合、この抗体は、抗体フラグメントであり得る。この抗体フラグメントとしては、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fvフラグメント、ダイアボディ(diabody)、単鎖抗体分子および抗体フラグメントから形成された他特異性抗体、ならびに単鎖Fv(scFv)分子からなる群より選択される抗体フラグメントが挙げられる。
【0020】
NSAIDは、任意の非ステロイド系抗炎症化合物であり得る。NSAIDは、シクロオキシゲナーゼを阻害するそれらの能力によってカテゴライズされる。シクロオキシゲナーゼ1およびシクロオキシゲナーゼ2は、シクロオキシゲナーゼの2つの主なアイソフォームであり、最も標準的なNSAIDは、この2つのアイソフォームの混合インヒビターである。最も標準的なNSAIDは、以下の5つの構造カテゴリーの一つに入る:(1)プロピオン酸誘導体(例えば、イブプロフェン、ナプロキセン、ナプロシン、ジクロフェナク、およびケトプロフェン);(2)酢酸誘導体(例えば、トルメチンおよびスリンダック);(3)フェナム酸誘導体(例えば、メフェナム酸およびメクロフェナム酸);(4)ビフェニルカルボン酸誘導体(例えば、ジフルニサルおよびフルフェニサール);および(5)オキシカム(oxicam)(例えば、ピロキシム、スドキシカム、およびイソキシカム)。
【0021】
NSAIDの別の分類が記載されており、これは、シクロオキシゲナーゼ2を選択的に阻害する。Cox−2インヒビターは、例えば、米国特許第5,616,601号;同第5,604,260号;同第5,593,994号;同第5,550,142号;同第5,536,752号;同第5,521,213号;同第5,475,995号;同第5,639,780号;同第5,604,253号;同第5,552,422号;同第5,510,368号;同第5,436,265号;同第5,409,944号;および同第5,130,311号に記載されている(これらの全ては、本明細書において参考として援用される)。特定の例示的COX−2インヒビターとしては、セレコキシブ(SC−58635)、ロフェコキシブ、DUP−697、フロスリド(CGP−28238)、メロキシカム、6−メトキシ−2ナフチル酢酸(6−MNA)、MK−966、ナブメトン(6−MNAのプロドラッグ)、ニメスリド、NS−398、SC−5766、SC−58215、T−614;またはこれらの組み合わせが挙げられる。
【0022】
いくつかの実施形態において、本発明は、アスピリンおよび/またはアセトアミノフェンがNGFアンタゴニスト(例えば、抗NGF抗体)と組み合わせて使用される方法を提供する。
【0023】
NGFアンタゴニストおよび/またはNSAIDは、任意の適切な経路を介して個体に投与され得る。例えば、それらは、一緒にもしくは別々に、および/または同時におよび/または順次、経口的に、静脈内に、舌下に、皮下に、動脈内に、筋肉内に、直腸に、脊髄内に、気管内に、腹腔内に、脳室内に、舌下に、経皮的に、または吸入によって、投与され得る。投与は、全身性(例えば、静脈内)でも局所的でもよい。
【0024】
第二の局面において、本発明は、神経成長因子アンタゴニストとNSAIDとを含有する組成物を特徴とする。神経成長因子アンタゴニストおよびNSAIDは、一種以上の薬学的に受容可能なキャリアまたは薬学的に受容可能な賦形剤と一緒に存在し得るか、またはそれらは別々の組成物中に存在し得る。別の局面において、本発明は、神経成長因子アンタゴニストとNSAIDとの相乗作用性組成物を提供する。
【0025】
第三の局面において、本発明は、本明細書において開示される任意の方法で使用するためのキットを特徴とする。このキットは、神経成長因子アンタゴニストとNSAIDとを含む。このキットは、本明細書において開示される任意の方法のための使用説明書をさらに含む。この使用説明書は、NSAIDと組み合わせたNGFアンタゴニスト(例えば、抗NGF抗体)の投与(すなわち、同時投与および/または異なる時間での投与)を含み得る。いくつかの実施形態において、NGFアンタゴニストとNSAIDとは、一緒に包装されるが、それらは、同じ容器に入っていても入っていなくともよい。したがって、いくつかの実施形態において、このキットは、同じ容器内に存在するNGFアンタゴニストおよびNSAID、ならびに本明細書において開示される任意の方法における使用のための説明書を含む。他の実施形態において、このキットは、別々の容器内に存在するNGFアンタゴニストおよびNSAIDを含む。
【0026】
いくつかの実施形態において、本発明は、個体における疼痛を処置するための方法を提供する。この方法は、個体に有効量の抗神経成長因子(NGF)抗体およびNSAIDを投与する工程を包含する。いくつかの実施形態において、このNSAIDは、イブプロフェン、ナプロキセン、ナプロシン、ジクロフェナク、ケトプロフェン、トルメチン、スリンダク(slindac)、メフェナム酸、メクロフェナム酸、ジフルニサル、フルフェニサール、ピロキシム(piroxim)、スドキシカム、イソキシカム、セレコキシブ(Celecoxib)、ロフェコキシブ(rofecoxib)、DUP−697、フロスリド(flosulide)、メロキシカム(Meloxicam)、6−メトキシ−2ナフチル酢酸、MK−966、ナブメトン、ニメスリド、NS−398、SC−5766、SC−58215、T−614からなる群より選択される。いくつかの実施形態において、このNSAIDは、イブプロフェンである。いくつかの実施形態において、この抗NGF抗体は、ヒトNGFに結合する。いくつかの実施形態において、この抗NGF抗体は、約10nMまたは約10nM未満の結合親和性でヒトNGFに結合する。いくつかの実施形態において、この抗NGF抗体は、ヒト抗体である。いくつかの実施形態において、この抗NGF抗体は、ヒト化抗体である。いくつかの実施形態において、このヒト化抗体は、配列番号1で示される重鎖可変領域および配列番号2で示される軽鎖可変領域を含む抗体である。いくつかの実施形態において、疼痛は、術後の疼痛である。
【0027】
いくつかの実施形態において、本発明は、疼痛を処置するための薬学的組成物を提供する。この薬学的組成物は、有効量の抗NGF抗体およびNSAID、ならびに薬学的に受容可能なキャリアを含有する。
【0028】
いくつかの実施形態において、本発明は、疼痛を処置するためのキットを提供する。このキットは、抗NGF抗体、NSAID、および抗NGF抗体をNSAIDと組み合わせて投与して疼痛を処置するための、使用説明書を含む。
【0029】
(発明の詳細な記述)
本発明者らは、有効量のNGFアンタゴニスト(例えば、抗NGF抗体)をNSAIDと合わせて投与することによって、疼痛が予防され得るか、または処置され得ることを発見した。本発明の方法および組成物は、疼痛の処置または予防に有用であり、その疼痛としては、NSAIDの使用が一般に処方される任意の疼痛が挙げられる。神経発育因子アンタゴニストの、本発明に従ったNSAIDと組み合わせての使用によって、低用量のNSAIDによる疼痛の処置が可能になり、それによって、NSAID処置と関連する副作用の可能性を低減する。いくつかの実施形態において、十分なNGFアンタゴニストは、少なくとも約5%まで、少なくとも約10%まで、少なくとも約20%まで、少なくとも約30%まで、少なくとも約50%まで、少なくとも約60%まで、少なくとも約70%まで、もしくは少なくとも約90%まで、またはそれより高い程度の疼痛の回復と同程度の効果に必要な通常のNSAIDの投薬量の低減を可能にするように投与される。
【0030】
NSAIDによる疼痛の処置はまた、本明細書中に記載されるように、NGFアンタゴニストと組み合わせたNSAIDの投与により増強され得る。
【0031】
一局面において、本発明は、有効量のNSAIDと組み合わせた有効量のNGFアンタゴニストを投与する工程を包含する、個体(例えば、哺乳動物、ヒトおよび非ヒトの両方)の疼痛を処置するか、または予防する方法を提供する。別の局面において、本発明は、有効量のNSAIDと組み合わせた有効量のNGFアンタゴニスト(例えば、抗NGF抗体)を投与する工程を包含する、個体における疼痛のNSAID処置またはNSAID予防を増強する方法を提供する。別の局面において、本発明は、疼痛の発生または進行を予防、改善、および/または予防する方法を提供する。
【0032】
いくつかの実施形態において、抗NGF抗体は、NGFに結合し得、そしてNGFのインビボにおけるそのTrkAまたはp75レセプターへの結合を有効に阻害し得るか、またはNGFが、そのTrkAまたはp75レセプターを活性化する工程有効に阻害し得る。いくつかの実施形態において、抗体のNGFに対する結合親和性は、約0.01〜約1.00nM、または約0.05〜約0.25nMである。他の実施形態において、結合親和性は、約1pM、約2pM、約5pM、約10pM、約15pM、約20pM、約50pM、約100pM、またはそれより高い結合親和性である。一実施形態において、結合親和性は、約2pMと22pMとの間である。いくつかの実施形態において、その抗体は、以下の任意の1つ以上から選択される抗体と本質的に同じNGFエピトープ6に結合する:MAb911、MAb912およびMAb938。Hongoら、Hybridoma 19:215〜227(2000)を参照のこと。
【0033】
その抗体はまた、抗体フラグメント(例えば、以下:Fab、Fab’、F(ab’)2、Fvフラグメント、二重特異性抗体、単鎖抗体分子および抗体フラグメントから形成された複数特異性抗体、および単鎖Fv(scFv)分子の1つ以上から選択される抗体フラグメント)であり得る。その抗体はまた、キメラ抗体であり得、そして、ヒト化抗体またはヒト抗体であり得る。その抗体はまた、二重特異性であり得る。
【0034】
本発明に有用な例示的なNSAIDとしては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:(1)プロピオン酸誘導体(例えば、イブプロフェン、ナプロキセン、ナプロシン、ジクロフェナクおよびケトプロフェン);(2)酢酸誘導体(例えば、トルメチンおよびスリンダク);(3)フェナム酸誘導体(例えば、メフェナム酸およびメクロフェナム酸);(4)ビフェニルカルボン酸誘導体(例えば、ジフルニサルおよびフルフェニサール);ならびに、(5)オキシカム(例えば、ピロキシム、スドキシカムおよびイソキシカム)。シクロオキシゲナーゼ2を選択的に阻害する別のクラスのNSAIDが記載されている。Cox−2インヒビターは、例えば、米国特許第5,616,601号;同第5,604,260号;同第5,593,994号;同第5,550,142号;同第5,536,752号;同第5,521,213号;同第5,475,995号;同第5,639,780号;同第5,604,253号;同第5,552,422号;同第5,510,368号;同第5,436,265号;同第5,409,944号;および同第5,130,311号に記載され、これらは全て、本明細書中に参考として援用される。特定の例示的なCOX−2インヒビターとしては、セレコキシブ(SC−58635)、ロフェコキシブ、DUP−697、フロスリド(CGP−28238)、メロキシカム、6−メトキシ−2−ナフチル酢酸(6−MNA)、MK−966、ナブメトン(6−MNAに対するプロドラッグ)、ニメスリド、NS−398、SC−5766、SC−58215、T−614またはこれらの組合せが挙げられる。いくつかの実施形態において、アスピリンおよび/またはアセトミノフェンは、NGFアンタゴニスト(例えば、抗NGF抗体)と組み合わせて使用される。
【0035】
本発明の方法および組成物は、任意の病因の疼痛の処置に有用であって、その疼痛としては、急性疼痛および慢性疼痛、炎症性構成要素を有する任意の疼痛、およびNSAIDが通常処方される任意の疼痛が挙げられる。疼痛の例としては、外科手術後の疼痛、手術後の疼痛(歯痛を含む)、偏頭痛、頭痛および三叉神経神経痛、火傷と関連する疼痛、創傷または腎結石、外傷と関連する疼痛(外傷性頭部損傷を含む)、ニューロパシー性疼痛、筋骨格障害(例えば、慢性関節リウマチ)、変形性関節症、内臓疼痛、大腸炎、膵炎、胃炎、強直性脊髄炎、セロネガティブ(非リウマチ性)関節症、非関節性リウマチおよび関節周囲障害、ならびに癌と関連する疼痛(「ブレークスルー疼痛(break−through pain)」および末期癌と関連する疼痛)、末梢ニューロパシー、ヘルペス後神経痛、ならびに鎌状赤血球発症と関連する疼痛が挙げられる。炎症性構成要素を有する疼痛の例としては(上記の疼痛のいくつかに加えて)、リウマチ性疼痛、粘膜炎および月経困難症と関連する疼痛が挙げられる。いくつかの実施形態において、本発明の方法および組成物は、外科手術後疼痛および/または癌性疼痛の処置または予防のために使用される。他の実施形態において、疼痛は、NSAIDが一般に処方される疼痛徴候(例えば、ニューロパシー性疼痛)である。他の実施形態において、本明細書中に記載される方法および組成物は、火傷と関連する疼痛の処置および/または予防のために使用される。他の実施形態において、本明細書中に記載される方法および組成物は、慢性関節リウマチに関連する疼痛の処置および/または予防のために使用される。他の実施形態において、本明細書中に記載される方法および組成物は、変形性関節症に関連する疼痛の処置および/または予防のために使用される。
【0036】
別の局面において、本発明は、本明細書中に記載される任意の方法に使用するために適切なNGFアンタゴニスト(例えば、抗NGF抗体)およびNSAIDを含む、疼痛を処置するための組成物およびキットを提供する。
【0037】
(一般的技術)
本発明の実施は、他に示さない限り、分子生物学(組換え技術を含む)、微生物学、細胞生物学、生化学および免疫学の従来技術を使用し、それらは、当業者の範囲内である。このような技術は、文献、例えば、Molecular Cloning:A Laboratory Manual、第二版(Sambrookら、1989)Cold Spring Harbor Press;Oligonucleotide Synthesis(M.J.Gait編、19849;Methods in Molecular Biology、Humana Press;Cell Biology:A Laboratory Notebook(J.E.Cellis編、1998)Academic Press;Animal Cell Culture(R.I.Freshney編、1987);Introduction to Cell and Tissue Culture(J.P.Mather and P.E.Roberts、1998)Prenum Press;Cell and Tissue Culture:Laboratory Procedures(A.Doyle、J.B.Griffiths、およびD.G.Newell編、1993〜8)J.Wiley and Sons;Methods in Enzymology(Academic Press,Inc);Handbook of Experimental Immunology(D.M.WeirおよびC.C.Blackwell編);Gene Transfer Vectors for Mammalian Cells(J.M.MillerおよびM.P.Calos編、1987);Current Protocols in MolecularBiology(F.M.Ausubelら編、1987);PCR:The Polymerase Chain Reaction、(Mullisら編、1994);Current Protocols in Immunology(J.E.Coliganら編、1991);Short Protocols in MolecularBiology(Wiley and Sons、1999);Immunobiology(C.A.JanewayおよびP.Travers、1997);Antibodies(P.Finch、1997);Antibodies:a practical approach(D.Catty編、IRL Press、1988〜1989);Monoclonal antibodies:a practical approach(P.ShepherdおよびC.Dean編、Oxford University Press、2000);Using antibodies:a laboratory manual(E.HarlowおよびD.Lane(Cold Spring Harbor Laboratory Press、1999);The Antibodies(M.ZanettiおよびJ.D.Capra編、Harwood Academic Publishers、1995)中に十分に説明されている。
【0038】
(定義)
「抗体」(複数形態で相互変換可能に使用される)は、免疫グロブリン分子の可変領域に位置する少なくとも1つの抗原認識部位を介して標的(例えば、炭水化物、ポリヌクレオチド、脂質、ポリペプチドなど)に特異的に結合し得る免疫グロブリン分子である。本明細書中で使用される場合、この用語は、インタクトなポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体だけでなく、それらのフラグメント(例えば、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fv)、単鎖(ScFv)、それらの変異体、抗体部分を含む融合タンパク質、ヒト化抗体、キメラ抗体、二重特異性直鎖抗体単鎖抗体、複数特異的抗体(例えば、二重特異性抗体)、および必要な特異性の抗原認識部位を含む免疫グロブリン分子の任意の他の改変構造もまた含む。抗体としては、任意のクラスの抗体(例えば、IgG、IgAまたはIgM(もしくはこれらのサブクラス)が挙げられ、そしてその抗体は、任意の特定のクラスである必要はない。抗体の重鎖の定常ドメインの抗体アミノ酸配列に依存して、免疫グロブリンは、種々のクラスに割り当てられ得る。5つの主要なクラスの免疫グロブリン:IgA、IgD、IgE、IgGおよびIgMが存在し、これらの内のいくつかは、さらにサブクラス(アイソタイプ)、例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1およびIgA2に分けられ得る。種々のクラスの免疫グロブリンに対応する重鎖定常ドメインは、それぞれ、α、δ、ε、γおよびμを称される。種々のクラスの免疫グロブリンのサブユニット構造および三次元構造は周知である。
【0039】
「モノクローナル抗体」は、同種の抗体集団をいい、ここで、このモノクローナル抗体は、抗原の選択的結合に関与するアミノ酸(天然に存在する、天然には存在しない)からなる。モノクローナル抗体は、特異性が高く、単独抗原部位に対して指向される。用語「モノクローナル抗体」は、インタクトなモノクローナル抗体および全長モノクローナル抗体のみならず、それらのフラグメント(例えば、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fv)、単鎖(ScFv)、これらの改変体、抗体部分を含む融合タンパク質、ヒト化モノクローナル抗体、キメラモノクローナル抗体、および必要な特異性の抗原認識部位および抗原に結合する能力を有する免疫グロブリン分子の任意の他の改変された構造も含む。抗体の取得源、または抗体が作製される様式(例えば、ハイブリドーマ、ファージ選択、組換え発現トランスジェニック動物など)に関しては、限定されることは意図されない。
【0040】
「ヒト化」抗体は、非ヒト種の免疫グロブリン、およびヒト免疫グロブリンの構造および/または配列に基づく分子の残存する免疫グロブリン構造に実質的に由来する抗原結合部位を有する分子をいう。抗原結合部位は、定常ドメイン上に融合した完全可変ドメインまたは可変ドメイン中の適切なフレームワーク領域上に移植された相補性決定領域(CDR)のみを含み得る。抗原結合部位は、野生型であり得るか、または1つ以上のアミノ酸置換基により改変(例えば、ヒト免疫グロブリンにより近く類似するように改変)され得る。ヒト化抗体のいくつかの型は、全てのCDR配列(例えば、マウス抗体由来の全ての6個のCDRを含むヒト化マウス抗体)を保存する。ヒト化抗体の他の形態は、1つ以上のCDR(1、2、3、4、5、6つ)を有し、それらは、元の抗体に関して改変される。いくつかの例において、フレームワーク領域(FR)残基、またはヒト免疫グロブリンの他の残基は、対応する非ヒト残基により置換され得る。さらに、ヒト化抗体は、レシピエント抗体またはドナー抗体には見出されない残基を含み得る。
【0041】
本明細書中で使用される場合、用語「神経発育因子」および「NGF」は、神経発育因子およびNGFの活性の少なくとも一部を保持するその改変体(例えば、スプライシング改変体およびタンパク質プロセシング改変体が挙げられる)をいう。本明細書中で使用される場合、NGFは、すべての哺乳動物種(ヒト、非ヒト霊長類、イヌ、ネコ、ウマまたはウシ)のネイティブな配列NGFを含む。
【0042】
「NGFレセプター」とは、NGFによって結合されるか、またはNGFによって活性化されるポリペプチドをいう。NGFレセプターとしては、任意の哺乳動物種のTrkAレセプターおよびp75レセプターが挙げられ、この任意の哺乳動物種としては、ヒト、イヌ、ネコ、ウマ、霊長類、またはウシが挙げられるが、これらに限定されない。
【0043】
「NGFアンタゴニスト」とは、NGF生物学的活性をブロックするか、抑制するかまたは低減させる任意の分子をいい、このNGF生物学的活性としては、NGFシグナル伝達により媒介される下流の経路(例えば、レセプター結合および/またはNGFに対する細胞応答の誘発)が挙げられる。用語「アンタゴニスト」とは、どんなものであれ、生物学的作用の非特異的な機構を意味し、直接的であるか、間接的であるか、またはNGF、そのレセプターと相互作用するか、または別の機構を介したNGFとの全ての可能な薬理学的、生理学的、および生化学的な相互作用を含み、そして種々の異なる、かつ化学的に相違する組成物によって達成され得るその結果を含むことが明白に判断される。例示的なNGFアンタゴニストとしては、抗NGF抗体、NGFに関するアンチセンス分子(NGFをコードする核酸に関するアンチセンス分子を含む)、NGF阻害化合物、NGF構造アナログ、NGFに結合するTrkAレセプターのドミナントネガティブな変異、TrkAイムノアドヘシン、抗TrkA抗体、抗p75抗体、TrkAレセプターおよび/またはp75レセプターのいずれか、または両方に関するアンチセンス分子(TrkAまたはp75をコードする核酸分子に関するアンチセンス分子を含む)、ならびに、キナーゼインヒビターが挙げられるが、これらに限定されない。本発明の目的のために、用語「アンタゴニスト」が、全てのこれまでに同定した用語、表題および機能状態ならびに特徴を含むことが明白に理解され、それによって、NGFそれ自体、NGFの生物学的活性(疼痛の任意の局面を媒介するその能力が挙げられるが、これに限定されない)または生物学的活性の結果が、実質的に無効化されるか、低減されるか、または任意の意味のある程度に中和されることが明白に理解される。いくつかの実施形態において、NGFアンタゴニストは、NGF(例えば、抗体)に結合する(物理的に相互作用する)か、NGFレセプター(例えば、trkAレセプターまたはp75レセプター)に結合するか、下流のNGFレセプターシグナル伝達を低減する(妨げる、および/またはブロックする)か、そして/またはNGF合成、産生または放出を阻害する(低減する)。いくつかの実施形態において、NGFアンタゴニストは、NGF(例えば、抗体)に結合する(物理的に相互作用する)か、NGFレセプター(例えば、Trkレセプターまたはp75レセプター)に結合するか、そして/または下流のNGFレセプターシグナル伝達を低減する(妨げる、および/またはブロックする)。他の実施形態において、NGFアンタゴニストじゃ、NGFに結合し、そして、Trkレセプターの二量体化を防止し、そして/またはTrkA自己リン酸化を防止する。他の実施形態において、NGFアンタゴニストは、NGF合成および/または産生(放出)を阻害するか、または低減する。NGFアンタゴニストの型の例は、本明細書中に提供される。
【0044】
本明細書中で使用される場合、「抗NGF抗体」とは、NGFに結合し、NGFの生物学的活性および/またはNGFシグナル伝達によって媒介される下流の経路を阻害し得る。
【0045】
「TrkAイムノアドヘシン」とは、TrkAレセプターのフラグメント(例えば、TrkAレセプターの結合特異性を保持するTrkAレセプターの細胞外ドメインおよび免疫グロブリン配列)を含む可溶性キメラ分子をいう。
【0046】
NGFの「生物学的活性」とは、一般に、NGFレセプターに結合し、そして/またはNGFレセプターシグナル伝達経路を活性化する能力をいう。生物学的活性は、限定されることなく、以下の任意の1つ以上を含む:NGFレセプター(例えば、p75および/もしくはTrkA)に結合する能力;TrkAレセプター二量体化を促進する能力、および/または自己リン酸化を促進する能力;NGFレセプターシグナル伝達経路を活性化する能力;細胞分化、増殖(proliferation)、生存、増殖(growth)および他の細胞生理における変化((ニューロンの場合には、末梢ニューロンおよび中枢ニューロンを含む)ニューロン形態、シナプス形成、シナプス機能、神経伝達物における変化および/または神経ペプチド放出ならびに損傷後の再生)を促進する能力;ならびに疼痛を媒介する能力。
【0047】
用語「エピトープ」は、(モノクローナルまたはポリクローナル)抗体のための、抗原(例えば、タンパク質抗原)上の結合部位をいうために使用される。
【0048】
本明細書中で使用される場合、「処置」は、有益であるか、または所望の臨床結果を得るためのアプローチである。本発明の目的のために、有益であるか、または所望の臨床結果としては、以下:疼痛(急性、慢性、炎症性、神経障害性、または外科手術後の疼痛)の任意の局面の改善または軽減の1つ以上が挙げられるが、これらに限定されない。本発明の目的のために、有益であるか、または所望の臨床結果としては、以下:重篤度の軽減、任意の局面の疼痛を含む疼痛と関連する1つ以上の症状の軽減(例えば、疼痛の期間の短縮および/または疼痛の感度または知覚の軽減)の1つ以上が挙げられるが、これらに限定されない。
【0049】
疼痛の「発生率の減少」は、任意の重篤度の軽減(この状態に対して一般に使用される他の薬物および/または治療(例えば、それらに曝露する)、期間および/または頻度(例えば、個体において、疼痛までの時間を遅らせるか、または疼痛までの時間を増加させる工程が挙げられる)に対する必要性および/またはそれらの量の低減を含み得る)を意味する。当業者に理解されるように、個体は、処置に対する反応に関して変動し得、従って、例えば、「個体における疼痛の発生率を低減させる方法」は、本明細書中に記載されるNSAIDと組み合わせた本明細書中に記載されるNGFアンタゴニストの投与が特定の個体における発生率における低減を引き起こし得るという適切な予測に基づいて、このように投与する工程を示す。
【0050】
疼痛または1つ以上の疼痛の症状の「改善」は、NSAIDと組み合わせたNGFアンタゴニストを投与しない工程に比較して、疼痛の1つ以上の症状が軽減または改善する工程を意味する。「改善」はまた、症状の期間における短縮および減少を含む。
【0051】
疼痛または1つ以上の疼痛の症状の「緩和」は、本発明に従って、NSAIDと組み合わせたNGFアンタゴニストで処置した個体または個体の集団における疼痛の1つ以上の望ましくない臨床的発現の程度を減少させる工程を意味する。
【0052】
本明細書中で使用される場合、疼痛の発生の「遅延」は、疼痛の進行を延期し、阻害し、緩慢にし、遅延させ、安定させ、そして/または遅らせることを意味する。この遅延は、病歴および/または処置される個体に依存して時間の長さが変動し得る。当業者には明らかでるように、十分または顕著な遅延は、事実上、個体が疼痛を発現しないという点で予防を含み得る。症状の発症を遅延する方法は、この方法を使用しない場合と比較して、所定の時間枠内で、症状を発現する可能性を減少させる方法、および/または所定の時間内で症状の程度を軽減する方法である。このような比較は、代表的に、統計的に有意な数の被験体を使用する臨床研究に基づいている。
【0053】
疼痛の「発生」または「進行」は、初期の徴候および/または障害の進行を確実にする工程を意味する。疼痛の発生は、検出可能であり得、そして、当該分野で周知である標準的な臨床技術を使用して評価され得る。しかし、発生はまた、検出可能ではあり得ない進行もまたいう。本発明の目的のために、発生または進行は、症状の生物学的過程をいう。「発生」とは、出現、再発および開始を含む。本明細書中で使用される場合、疼痛の「開始」または「出現」は、初期の開始および/または再発を含む。
【0054】
「有効量」は、疼痛の知覚における緩和または減少を含む有益または所望の臨床結果を達成するのに十分な量である。本発明の目的のために、有効量のNGFアンタゴニスト(例えば、抗NGF抗体)およびNSAIDは、任意の種類の疼痛(急逝、慢性、炎症性、神経障害性、または外科手術後の疼痛を含む)を処置するか、改善するか、その疼痛の強度を低減させるか、または予防するために十分な量を含む。いくつかの実施形態において、有効量のNSAIDおよびNGFアンタゴニストは、外部刺激に対する感受性の閾値を、健康な被験体に観察されるレベルと同等のレベルまで調節し得るNGFアンタゴニストおよびNSAIDの量である。他の実施形態において、このレベルは、健康な被験体に観察されるレベルと同等ではない場合もあるが、組合せ治療を受けない場合と比較して低減される。有効量のNGFアンタゴニストはまた、本明細書中に記載されるとおり、疼痛のNSAID処置を増強するため、または、本明細書中で記載されるとおり、疼痛の処置または予防に必要なNSAIDの用量を減少させるために、十分な量のNGFアンタゴニストを含む。当該分野で理解されるように、NSAIDと組み合わせた有効量のNGFアンタゴニストは、とりわけ、疼痛の型(および患者の病歴ならびに他の因子(例えば、使用されたNGFアンタゴニストおよび/もしくはNSAIDの型(ならびに/または投薬量)))に依存して変動し得る。本発明の文脈における有効量はまた、相乗効果が達成されるようなNGFアンタゴニストおよびNSAIDアンタゴニストの量であり得る。本発明の文脈における有効量のアンタゴニストは一般に、疼痛に対するNSAIDの治療効果の増強を生じる(言い換えると、それは、その投薬量が減少する、そして/またはいくつかの他の有益な効果が観察されることを意味する)ため、そして/またはNSAID処置のみと比較して有益な効果を生じるために十分な量を意味する。「有効量」のNGFアンタゴニストはまた、NGFアンタゴニストのみ、またはNSAIDのみを投与する場合と比較する場合に相乗効果を生じ得る。
【0055】
「個体」は、脊椎動物、好ましくは、哺乳動物、より好ましくは、ヒトである。哺乳動物としては、家畜、娯楽動物(sport animal)、ペット、霊長類、ウマ、ウシ、イヌ、ネコ、マウスおよびラットが挙げられるが、これらに限定されない。
【0056】
用語「NSAID」とは、非ステロイド性抗炎症性化合物をいう。NSAIDは、シクロオキシゲナーゼを阻害し得る能力によって分類される。シクロオキシゲナーゼ1およびシクロオキシゲナーゼ2は、シクロオキシゲナーゼの二つの主要なアイソフォームであり、最も標準的なNSAIDは、この二つのアイソフォームの混合されたインヒビターである。最も標準的なNSAIDは、以下の5つの構造分類の一つに含まれる:(1)プロピオン酸誘導体(例えば、イブプロフェン、ナプロキセン、ナプロシン、ジクロフェナクおよびケトプロフェン);(2)酢酸誘導体(例えば、トルメチンおよびスリンダク);(3)フェナム酸誘導体(例えば、メフェナム酸およびメクロフェナム酸);(4)ビフェニルカルボン酸誘導体(例えば、ジフルニサルおよびフルフェニサール);ならびに、(5)オキシカム(例えば、ピロキシム、スドキシカムおよびイソキシカム)。
【0057】
シクロオキシゲナーゼ2を選択的に阻害する別のクラスのNSAIDが記載されている。Cox−2インヒビターは、例えば、米国特許第5,616,601号;同第5,604,260号;同第5,593,994号;同第5,550,142号;同第5,536,752号;同第5,521,213号;同第5,475,995号;同第5,639,780号;同第5,604,253号;同第5,552,422号;同第5,510,368号;同第5,436,265号;同第5,409,944号;および同第5,130,311号に記載され、これらは全て、本明細書中に参考として援用される。特定の例示的なCOX−2インヒビターとしては、セレコキシブ(SC−58635)、DUP−697、フロスリド(CGP−28238)、メロキシカム、6−メトキシ−2−ナフチル酢酸(6−MNA)、ロフェコキシブ、MK−966、ナブメトン(6−MNAに対するプロドラッグ)、ニメスリド、NS−398、SC−5766、SC−58215、T−614またはこれらの組合せが挙げられる。
【0058】
いくつかの実施形態において、アスピリンおよび/またはアセトミノフェンは、NGFアンタゴニスト(例えば、抗NGF抗体)と組み合わせて摂取される。アスピリンは、別の型の非ステロイド性抗炎症性化合物である。
【0059】
本明細書中に使用される場合、「組み合わせた」投与は、同時投与および/または異なる時点での投与を包含する。組み合わせた投与はまた、共処方物(すなわち、NGFアンタゴニストおよびNSAIDが、同じ組成物中に存在する)としての投与、または別個の組成物としての投与を包含する。本明細書中で使用される場合、組み合わせた投与は、NSAIDとNGFアンタゴニストとが個体に投与される(これは、同時および/または別個に行われ得る)任意の環境を包含する。本明細書中でさらに考察されるように、NGFアンタゴニストとNSAIDとは、種々の投与頻度または投与間隔で投与され得ることが理解される。例えば、抗NGF抗体は、1週間当たり1回投与され得、一方、NSAIDは、同じ投与経路または異なる投与経路を使用して、投与され得る。
【0060】
「外科手術後の疼痛」(互換可能に、「切開後の疼痛」または「外傷後の疼痛」ともいわれる)は、個体の組織中への切断、穿刺、切開、裂傷、または創傷(侵襲的であるかまたは非侵襲的であるかにはかかわらず、全ての外科手術手順によって生じるものを含む)のような、外傷によって生じる疼痛または外傷の結果である疼痛をいう。本明細書中で使用される場合、外科手術後の疼痛には、外部からの物理的な外傷を伴わずに起こる(外部からの物理的な外傷を伴わずに生じる、または外部からの物理的な外傷が原因ではない)疼痛は含まれない。いくつかの実施形態においては、外科手術後の疼痛は、内部または外部(周辺を含む)の疼痛であり、創傷、切断、外傷、裂傷、または切開が、偶然に(外傷性創傷のように)または意図的に(外科手術による切開のように)生じ得る。本明細書中で使用される場合は、「疼痛」には、侵害受容および疼痛の感覚が含まれ、疼痛は、当該分野で周知の疼痛のスコアおよび他の方法を使用して、客観的および主観的に評価され得る。外科手術後の疼痛には、本明細書中で使用される場合には、異痛症(すなわち、通常は毒性のない刺激に対する増加した反応(有害な知覚))および痛覚過敏(すなわち、通常は有害であるかまたは不愉快である刺激に対する増加した反応)が含まれ、これらは言い換えると、熱または機械的な(触感)の性質のものであり得る。いくつかの実施形態においては、疼痛は、温度感受性、機械的感受性、および/または安静時の疼痛によって特徴付けられる。いくつかの実施形態においては、外科手術後の疼痛には、無意識に生じた疼痛または安静時の疼痛が含まれる。他の実施形態においては、外科手術後の疼痛には、安静時の疼痛が含まれる。
【0061】
疼痛のNSAID処置は、NSAID処置の一局面が(NGFアンタゴニストを投与せずにNSAIDを投与するのと比較して)改善された場合に、「増強される」。例えば、疼痛のNSAID処置の効力は、NGDアンタゴニストの非存在下でのNSAIDの効力と比較して、NGFアンタゴニストの存在下では増加され得る。別の例として、NSAIDを用いる疼痛の処置または予防は、NSAIDと組み合わせてNGFアンタゴニストを使用することによって、その使用が良好な疼痛の軽減を可能にする場合(例えば、疼痛の有効な処置も予防も可能にしない用量のNSAIDが使用される場合)には、「増強され得る」。
【0062】
(本発明の方法)
本明細書中で記載される方法すべてに関して、NGFアンタゴニストおよびNSAIDに対する言及はまた、1種以上のこれらの薬剤を含む組成物を包含する。本発明は、個体(すべての動物(ヒト動物および非ヒト動物の両方)を含む)における疼痛を処置するために有用である。
【0063】
一局面において、本発明は、個体において疼痛を処置する方法を提供し、この方法は、有効量のNGFアンタゴニスト(例えば、抗NGF抗体)を有効量のNSAIDと組み合わせて個体に投与する工程を包含する。いくつかの実施形態において、充分なNGFアンタゴニストが、同程度の疼痛軽減をもたらすために必要とされるNSAIDの通常量を、少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、または少なくとも約90%以上減少させるのを可能にするために、投与される。
【0064】
別の局面において、本発明は、個体における疼痛のNSAIDによる処置を増強する方法を提供し、この方法は、有効量のNGFアンタゴニストを有効量のNSAIDと組み合わせて個体に投与する工程を包含する。
【0065】
いくつかの実施形態において、疼痛は、以下のうちの任意の1つ以上を包含する:急性疼痛および/もしくは慢性疼痛、炎症成分を伴う任意の疼痛、手術後の疼痛(歯痛を含む)、偏頭痛、頭痛および三叉神経痛、火傷に関連する疼痛、創傷に関連する疼痛もしくは腎結石に関連する疼痛、外傷(外傷性頭部損傷を含む)に関連する疼痛、神経障害性疼痛、鎌状赤血球に関連する疼痛、月経困難症に関連する疼痛もしくは腸機能不全に関連する疼痛、および癌に関連する疼痛(「抑えきれない痛み(break−through pain)」および末期癌に関連する疼痛)。他の実施形態において、上記疼痛は、NSAID(例えば、イブプロフェン)を用いて通常処置される任意の疼痛である。他の実施形態において、上記疼痛は、火傷に関連する疼痛である。他の実施形態において、上記疼痛は、慢性関節リウマチに関連する疼痛である。他の実施形態において、上記疼痛は、変形性関節症に関連する疼痛である。
【0066】
別の局面において、本発明は、疼痛の発症もしくは進行を、予防、軽減および/または防止する方法を提供する。従って、いくつかの実施形態において、NGFアンタゴニスト(例えば、NGF抗体)および/またはNSAIDが、有痛事象(例えば、手術)の前に投与される。例えば、NGFアンタゴニストは、疼痛を生じる可能性がある活動または疼痛を生じる危険性がある活動(例えば、外傷もしくは手術)の30分間前、1時間前、5時間前、10時間前、15時間前、24時間前、またはそれ以上(例えば、1日間、数日間、もしくは1週間、2週間、3週間、またはそれ以上)前に、投与される。
【0067】
疼痛の処置または予防は、当該分野で周知の方法を使用して評価される。評価は、客観的尺度(例えば、挙動(例えば、刺激に対する反応、顔の表情など)の観察)に基づいて実施され得る。評価はまた、主観的尺度(例えば、種々の疼痛の尺度を使用しての疼痛の患者の特徴付け)に基づいてなされ得る。例えば、Katzら、Surg Clin North Am.(1999)79(2):231〜52;Caraceniら、J Pain Sympton Manage(2002)23(3):239〜55参照)。
【0068】
慢性関節リウマチの疼痛の診断または評価は、当該分野で充分に確立されている。評価は、当該分野で公知の尺度(例えば、種々の疼痛の尺度を使用する疼痛の患者の特徴づけ)に基づいて実施され得る。例えば、Katzら、Surg Clin North Am.(1999)79(2):231〜52;Caraceniら、J Pain Sympton Manage(2002)23(3):239〜55参照。疾患状態を測定するために、これもまた一般的に使用されている尺度が存在する。例えば、American College of Rheumatology(ACR)(Felsonら、Arthritis and Rheumatism(1993)36(6):729〜740)、Health Assessment Questionnaire(HAQ)(Friesら(1982)J.Rheumatol.9:789〜793)、Paulus Scale(Paulusら、Arthritis and Rheumatism(1990)33:477〜484)、およびArthritis Impact Measure Scale(AIMS)(Meenamら、Arthritis and Rheumatology(1982)25:1048〜1053)である。
【0069】
変形性関節症疼痛の診断または評価は、当該分野で充分に確立されている。評価は、当該分野で公知の尺度(例えば、種々の疼痛の尺度を使用する疼痛の患者の特徴づけ)に基づいて実施され得る。例えば、Katzら、Surg Clin North Am.(1999)79(2):231〜52;Caraceniら、J Pain Sympton Manage(2002)23(3):239〜55参照。例えば、WOMAC Ambulation Pain Scale(疼痛、硬さ、身体機能を含む)および100mm Visual Analogue Scale(VAS)が、疼痛を評価するため、およびその処置に対する応答を評価するために、使用され得る。
【0070】
NGFアンタゴニスト(例えば、抗NGF抗体)およびNSAIDが、単一組成物または別個の組成物のいずれかとして、併用して投与される場合に、その神経成長因子アンタゴニストおよびNSAIDは、望ましい効果の発現と一致する比率で提示されることが理解される。いくつかの実施形態において、神経成長因子アンタゴニスト:NSAIDの重量比は、1:1である。いくつかの実施形態において、この比は、約0.001:約1と、約1000:約1との間、約0.01:約1と約100:約1との間、または約0.1:約1と約10:約1との間であり得る。他の比も企図される。
【0071】
疼痛の処置または予防において使用するために必要な神経成長因子アンタゴニストおよびNSAIDの量は、選択する特定の化合物または組成物によってのみならず、投与経路、処置される状態の性質、ならびに患者の年齢および状態によっても変動し、最終的には主治医の判断によることが認識される。
【0072】
(NGFアンタゴニスト)
本発明の方法は、NGFアンタゴニストを使用する。NGFアンタゴニストとは、NGFの生物学的活性(NGFシグナル伝達により媒介される下流経路(レセプター結合および/またはNGFに対する細胞応答の惹起を含む)を含む)をブロック(有意にブロックすることを含む)、抑制(有意に抑制することを含む)、または減少(有意に減少することを含む)する任意の分子を指す。用語「アンタゴニスト」とは、生物学的作用の特定の機構を一切示さず、この用語は、種々の異なりかつ化学的に多用な組成物によって達成され得る、NGFと生じ得るすべての薬理学的相互作用、生理学的相互作用、および生化学的相互作用、ならびにその結果を明示的に包含するとみなされる。例示的なNGFアンタゴニストとしては、抗NGF抗体、ポリペプチド(抗NGF抗体に由来するNGF結合ドメイン(例えば、NGFに結合するために充分なCDR領域を含む結合ドメイン)を含むポリペプチドを含む)、NGFに対するアンチセンス分子(NGFをコードする核酸に対するアンチセンス分子を含む)、TrkAレセプターおよび/もしくはp75レセプターのうちのいずれかまたは両方に対するアンチセンス分子(trkAもしくはp75をコードする核酸分子に対するアンチセンス分子を含む)、NGF阻害化合物、NGF構造アナログ、NGFに結合するTrkAレセプターのドミナントネガティブ変異、TrkAイムノアドヘシン、抗TrkA抗体、抗p75抗体、およびキナーゼインヒビターが挙げられるが、これらに限定されない。本発明の目的のためには、用語「アンタゴニスト」とは、NGF自体、NGFの生物学的活性(それが疼痛のなんらかの局面を媒介する能力が挙げられ得るが、これに限定されない)、またはその生物学的活性の結果が、有意義な何らかの手以後で実質的に無効になるか、減少するか、または中和される、以前に同定された用語、表題、および機能的な状態および特徴を包含することが明示的に理解される。いくつかの実施形態において、NGFアンタゴニスト(例えば、抗NGF抗体)は、NGFに結合(NGFと物理的に相互作用)し、NGFレセプター(例えば、TrkAレセプターおよび/もしくはp75レセプター)に結合し、そして/または下流のNGFレセプターシグナル伝達を減少(妨害および/もしくはブロック)する。従って、いくつかの実施形態において、NGFアンタゴニスト(例えば、抗NGF抗体)は、NGFに結合(NGFと物理的に相互作用)する。他の実施形態において、NGFアンタゴニストは、NGFレセプター(例えば、TrkAレセプターもしくはp75レセプター)に結合する。他の実施形態において、NGFアンタゴニストは、下流のNGFレセプターシグナル伝達を減少(妨害および/もしくはブロック)する(例えば、キナーゼシグナル伝達のインヒビター)。他の実施形態において、NGFアンタゴニストは、NGFの合成および/または放出を阻害(減少)する。別の実施形態において、NGFアンタゴニストは、TrkAイムノアドヘシンである。別の実施形態において、NGFアンタゴニストは、抗NGF抗体以外である。いくつかの実施形態において、NGFアンタゴニストは、NGF(例えば、hNGF)に結合し、関連するニューロトロフィン(例えば、NT−3、NT4/5、および/もしくはBDNF)には有意には結合しない。いくつかの実施形態において、NGFアンタゴニストは、ヒトNGFに結合し、別の脊椎動物種(いくつかの実施形態においては、哺乳動物)に由来するNGFには有意には結合しない。いくつかの実施形態において、NGFアンタゴニストは、ヒトNGFおよび別の脊椎動物種由来の1種以上のNGFに結合する。いくつかの実施形態において、NGFアンタゴニストは、NGFおよび少なくとも1種の他のニューロトロフィンに結合する。いくつかの実施形態において、NGFアンタゴニストは、ある哺乳動物(例えば、ウマもしくはイヌ)種のNGFに結合するが、別の哺乳動物種に由来するNGFには有意には結合しない。
【0073】
(抗NGF抗体)
本発明のいくつかの実施形態において、NGFアンタゴニストは、抗NGF抗体を包含する。抗NGF抗体は、以下の特徴のうちのいずれか1つ以上の示す:(a)NGFに結合し、NGFの生物学的機能および/またはNGFシグナル伝達機能により媒介される下流経路を阻害する;(b)特にNSAIDと組み合わせて、疼痛の何らかの局面を処置または予防する;(c)NGFレセプターの活性化(trkAレセプターの二量体化および/もしくは自己リン酸化を含む)をブロックもしくは減少する;(d)NGFのクリアランスを増加する;(e)疼痛のNSAIDによる処置を増強する。
【0074】
抗NGF抗体は、当該分野で公知である。例えば、PCT公開番号WO02096458;WO01/78698、WO01/64247、米国特許第5,844,092号、同第5,877,016号;および同第6,153,189号;Hongoら、Hybridoma 19:215〜227(2000);Cell.Molec.Biol.13:559〜568(1993);GenBank登録番号U39608、U39609、L17078、もしくはL17077を参照のこと。
【0075】
いくつかの実施形態において、抗NGF抗体は、NGFに特異的に結合する。なお他の実施形態において、抗NGF抗体は、ヒト化抗体(例えば、本明細書中に記載される抗体E3)である。いくつかの実施形態において、抗NGF抗体は、抗体E3(本明細書中に記載される)である。他の実施形態において、抗NGF抗体は、抗体E3の1つ以上のCDR(例えば、E3に由来する1つのCDR、2つのCDR、3つのCDR、4つのCDR、5つのCDR、またはいくつかの実施形態においては、6つすべてのCDR)を含む。他の実施形態において、上記抗体は、ヒト抗体である。なお他の実施形態において、抗NGF抗体は、表1に示される重鎖可変領域のアミノ酸配列(配列番号1)および表2に示される軽鎖可変領域のアミノ酸配列(配列番号2)を含む。なお他の実施形態において、抗NGF抗体は、表1に示される重鎖可変領域のアミノ酸配列(配列番号1)を含む。なお他の実施形態において、抗NGF抗体は、表2に示される軽鎖可変領域のアミノ酸配列(配列番号2)を含む。なお他の実施形態において、上記抗体は、改変型定常領域(例えば、免疫学的に不活性である(例えば、補体媒介性溶解を誘発しない、または抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)を刺激しない)定常領域)を含む。他の実施形態において、上記定常領域は、Eur.J.Immunol.(1999)29:2613〜2624;PCT出願番号PCT/GB99/01441;および/または英国特許出願番号9809951.8に記載されるように、改変される。他の実施形態において、上記NGF抗体は、米国特許出願番号10/745,775に記載される任意の抗体である。
【0076】
いくつかの実施形態において、抗NGF抗体は、抗体「E3」と呼ばれるヒト化マウス抗NGFモノクローナル抗体であり、これは、変異A330P331→S330S331(アミノ酸の番号付けは、野生型IgG2aの配列を参照する;Eur.J.Immunol.(1999)29:2613〜2624参照)を含むヒト重鎖IgG2a定常領域;ヒト軽鎖κ定常領域;ならびに表1および表2に示される重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含む。
【0077】
(表1:重鎖可変領域)
【0078】
【表1】

(配列番号1)。
【0079】
(表2:軽鎖可変領域)
【0080】
【表2】

(配列番号2)。
【0081】
上記E3重鎖可変領域をコードする以下のポリペプチドまたは上記E3軽鎖可変領域をコードする以下のポリペプチドは、2003年1月8日にATCCに寄託された:
【0082】
【表3】

ベクターEb.911.3Eは、表2に示される軽鎖可変領域をコードするポリヌクレオチドである。ベクターEb.pur.911.3Eは、表2に示される軽鎖可変領域をコードするポリヌクレオチドである。ベクターDb.911.3Eは、表1に示される重鎖可変領域をコードするポリヌクレオチドである。これらのポリヌクレオチドはまた、定常ドメインもコードする。
【0083】
CDRを決定するための少なくとも2つの技術((1)交差種配列変動性に基づくアプローチ(すなわち、Kabatら、Sequences of Proteins of Immunological Interest(第5版、1991、National Institues of Health,Bethesda,MD));および(2)高原−抗体複合体の結晶学的研究に基づくアプローチ(Chothiaら(1989)Nature 342:877;Al−lazikaniら(1997)J.Molec.Biol.273:927〜948))が、存在する。本明細書中で使用される場合、CDRは、いずれかのアプローチによってか、または両方のアプローチの組み合わせによって規定される、CDRを指し得る。
【0084】
別の実施形態において、抗NGF抗体は、抗体E3の1つ以上のCDR(例えば、E3に由来する1つのCDR、2つのCDR、3つのCDR、4つのCDR、5つのCDR、またはいくつかの実施形態においては、6つすべてのCDR)を含む。CDR領域の決定は、充分に当業者の技術範囲内にある。CDRは、Kabat、Chothia、またはKabatとChothiaとの組み合わせであり得る。
【0085】
本発明において有用な抗体は、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、抗体フラグメント(例えば、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fv、Fcなど)、キメラ抗体、二重特異性抗体、へテロ結合体抗体、単鎖抗体(scFv)、それらの変異体、抗体部分を含む融合タンパク質、ヒト化抗体、ならびに必要な特異性の抗原認識部位を含む免疫グロブリン分子の他の任意の改変構成(抗体のグリコシル化改変体、抗体のアミノ酸配列改変体、および共有結合改変抗体を包含する)を包含し得る。上記抗体は、マウス抗体、ラット抗体、ヒト抗体、または他の任意の起源(キメラ抗体もしくはヒト化抗体を含む)であり得る。本発明の目的のために、上記抗体は、NGFを阻害する様式、および/またはNGFシグナル伝達機能により媒介される下流経路を阻害する様式で、NGFと反応する。一実施形態において、上記抗体は、ヒトNGF上の1つ以上のエピトープを認識する抗体である。別の実施形態において、上記抗体は、ヒトNGF上の1つ以上のエピトープを認識する、マウス抗体またはラット抗体である。別の実施形態において、上記抗体は、霊長類、げっ歯類、イヌ、ネコ、ウマ、およびウシからなる群より選択されるNGF上の1つ以上のエピトープを認識する。別の実施形態において、上記抗体は、改変型定常領域(例えば、免疫学的に不活性である(例えば、補体媒介性溶解を誘発しない、または抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)を刺激しない)定常領域)を含む。ADCC活性は、米国特許第5,500,362号に開示される方法を使用して評価され得る。他の実施形態において、上記定常領域は、Eur.J.Immunol.(1999)29:2613〜2624;PCT出願番号PCT/GB99/01441;および/または英国特許出願番号9809951.8に記載されるように、改変される。
【0086】
NGF(例えば、hNGF)に対する抗NGF抗体の結合親和性は、約0.01〜約1nM、約0.05〜約0.25nM、約0.10〜約0.80nM、約0.15〜約0.75nM、および約0.18〜約0.25nMであり得る。いくつかの実施形態において、上記結合親和性は、約1pM、約2pM、約5pM、約10pM、約15pM、約20pM、約40pM、または約40pMより大きい。一実施形態において、上記結合親和性は、約2pMと22pMとの間である。他の実施形態において、上記結合親和性は、約100nM、約50nM、約10nM、約1nM、約500pM、約100pM、約50pM、約10pM未満である。いくつかの実施形態において、上記結合親和性は、約10nMである。他の実施形態において、上記結合親和性は、約10nM未満である。他の実施形態において、上記結合親和性は、約0.1nM〜約0.07nMである。他の実施形態において、上記結合親和性は、約0.1nM未満または約0.07nM未満である。他の実施形態において、上記結合親和性は、約100nM、約50nM、約10nM、約1nM、約500pM、約100pM、または約50pMのうちのいずれかから、約2pM、約5pM、約10pM、約15pM、約20pM、または約40pMのうちのいずれかまでである。いくつかの実施形態において、上記結合親和性は、約100nM、約50nM、約10nM、約1nM、約100pM、もしくは約p50M、または約50pM未満のうちのいずれかである。なお他の実施形態において、上記結合親和性は、約2pM、約5pM、約10pM、約15pM、約20pM、約40pM、または約40pMよりも大きい。
【0087】
NGFに対する抗体の結合親和性を決定する1つの方法は、抗体の単官能性Fab断片の結合親和性を測定することによる。単官能性Fab断片を得るためには、抗体(例えば、IgG)をパパインで切断することができ、また、組み換えによって発現させることもできる。抗体の抗NGF Fab断片の親和性は、表面プラズモン共鳴(BIAcore3000TM表面プラズモン共鳴(SPR)システム、BIAcore,INC,Piscaway NJ)によって決定することができる。CM5チップは、供給業者の説明書にしたがって、N−エチル−N’−(3−ジメチルアミノプロピル)−カルボジイミド塩酸塩(EDC)およびN−ヒドロキシスクシンイミド(NHS)で活性化させることができる。ヒトNGF(または任意の他のNGF)は、10mMの酢酸ナトリウム(pH4.0)で希釈して、0.005mg/mLの濃度で活性化したチップ上に注入することができる。個々のチップチャンネルを通過させるフロー時間を変化させることにより、2つの抗原密度の範囲に達するようにできる:詳細な速度論の研究については100〜200反応単位(RU)、そしてスクリーニングアッセイについては500〜600RU。チップは、エタノールアミンでブロックすることができる。再生の研究は、Pierce溶出緩衝液(製品番号21004、Pierce Biotechnology,Rockford IL)と4MのNaClの混合物(2:1)により200回の注入全てについてチップ上でhNGFの活性を維持したまま、結合したFabが効率よく除去されたことを示した。HBS−EP緩衝液(0.01MのHEPES(pH7.4)、0.15 NaCl、3mMのEDTA、0.005%のSurfactant P29)は、BIAcoreアッセイの泳動緩衝液として使用される。精製されたFab試料の段階希釈物(0.1〜10×概算のK)を、100μL/分で1分間かけて注入し、2時間までの解離時間とした。Fabタンパク質の濃度は、標準として既知の濃度(アミノ酸分析によって決定される)Fabを使用して、ELISAおよび/またはSDS−PAGE電気泳動によって決定される。動的会合速度(kon)と解離速度(koff)は、BIAevalutionプログラムを使用して1:1 Langmuir結合モデル(Karlsson,R.Ross,H.Fagerstam,L.Petersson,B.(1994)Methods Enzymology 6.99−110)にデータをフィットさせることによって同時に得られる。平衡解離定数(K)の値は、kon/koffとして計算される。このプロトコルは、ヒトNGF、別の脊椎動物のNGF(いくかの実施形態においては、哺乳動物)を含むあらゆるNGF(例えば、マウスNGF、ラットNGF、霊長類NGF)に対する抗体の結合親和性を決定することにおける使用に、さらには、関連するニュートロフィンNT3、NT4/5、および/またはBDNFのような他のニュートロフィンを伴う使用に適している。
【0088】
いくつかの実施形態においては、抗体はヒトNGFに結合し、別の脊椎動物種(いくつかの実施形態においては、哺乳動物)に由来するNGFには有意には結合しない。いくつかの実施形態においては、抗体はヒトNGFに結合し、さらに別の脊椎動物種(いくつかの実施形態においては、哺乳動物)に由来する1つ以上のNGFにも結合する。さらに他の実施形態においては、抗体はNGFに結合し、他のニュートロフィン(例えば、関連するニュートロフィン、NT3、NT4/5、および/またはBDNF)とは有意には交差反応しない。いくつかの実施形態においては、抗体はNGFに結合し、さらに少なくとも1つの他のニュートロフィンにも結合する。いくつかの実施形態においては、抗体は哺乳動物種(例えば、ウマまたはイヌ)のNGFに結合するが、別の哺乳動物種に由来するNGFには有意には結合しない。
【0089】
エピトープ(単数または複数)は、連続的であっても、連続的ではなくてもよい。1つの実施形態においては、抗体は、本質的に、Hongo等,Hybridoma 19:215−227(2000)に記載されているような、Mab 911、Mab 912、およびMAb 938からなる群より選択される抗体と同じhNGFピトープに結合する。別の実施形態においては、抗体は、本質的に、Mab 911と同じエピトープに結合する。さらに別の実施形態においては、抗体は、本質的に、MAb 909と同じエピトープに結合する。Hongo等,前出。例えば、エピトープには、以下の1つ以上が含まれる場合もある:hNGFの可変領域1(アミノ酸23〜35)内の残基K32、K34、およびE35;hNGFの可変領域4(アミノ酸81〜88)内の残基F79およびT81;可変領域4内の残基H84およびK88;hNGFの可変領域5(アミノ酸94〜98)とhNGFのC末端(アミノ酸111〜118)との間の残基R103;hNGFの前可変領域1(アミノ酸10〜23)内の残基E11;hNGFの可変領域2(アミノ酸40〜49)とhNGFの可変領域3(アミノ酸59〜66)との間のY52;hNGFのC末端内の残基L112およびS113;hNGFの可変領域3内の残基R59およびR69;あるいはhNGFの前可変領域1内の残基V18、V20、およびG23。さらに、エピトープは、hNGFの可変領域1、可変領域3、可変領域4、可変領域5、N末端領域、および/またはC末端領域の1つ以上を含むことができる。さらに別の実施形態においては、抗体は、hNGFの残基R103の溶媒露出度を有意に低下させる。上記のエピトープはヒトNGFに関して記載したが、当業者であれば、ヒトNGFを他の種のNGFの構造と並べることができ、これらのエピトープにおそらく対応する部分を同定することができる。
【0090】
1つの局面においては、NGFを阻害することができる抗体(例えば、ヒト抗体、ヒト化抗体、マウス抗体、キメラ抗体)を、NGFの全長または部分的な配列を発現する免疫原を使用して作成することができる。別の態様においては、NGFを過剰発現する、免疫原を含む細胞を使用することができる。使用することができる別の免疫原の例は、全長のNGFを含むNGFタンパク質またはNGFタンパク質の一部である。
【0091】
抗NGFアンタゴニスト抗体は、当該分野で公知の任意の方法によって作製することができる。宿主動物の免疫化の経路およびスケジュールは、一般に、本明細書中にさらに記載されるように、抗体の刺激および生産のための確立された従来技術と一致する。ヒトおよびマウス抗体の生産のための一般的な技術は当該分野で公知であり、本明細書中に記載されている。
【0092】
ヒトを含む任意の哺乳動物被験体またはそれらに由来する抗体を生産する細胞は、ヒト
ハイブリドーマ細胞株を含む、哺乳動物の生産についての基準となるように操作することができることが企図される。通常は、宿主動物には、本明細書中に記載されているものを含む一定量の免疫原が、腹腔内、筋肉内、経口、皮下、足底、および/または皮内から接種される。
【0093】
ハイブリドーマは、Kohler,B.and Milstein,C.(1975)Nature 256:495−497の一般的な体細胞ハイブリダイゼーション技術、またはBuck,D.W.等,In Vitro,18:377−381(1982)によって変更が加えられた体細胞ハイブリダイゼーション技術を使用して、リンパ球および固定化された骨髄腫細胞から調製することができる。利用できる骨髄腫細胞株としては、X−63−Ag8.653が挙げられるがこれらに限定されず、Salk Institute,Cell Distribution Center,San Diego,Calif.,USAによるものを、ハイブリダイゼーションに使用することもできる。一般的には、この技術には、ポリエチレングリコールのような融合誘導因子を使用して、または当業者に周知の電気的手段によって骨髄腫細胞とリンパ球とを融合させる段階が含まれる。融合後、細胞は融合培地から分離され、選択的な増殖培地、例えば、ヒポキサンチン−アミノプテリン−チミジン(HAT)培地中で増殖させられて、ハイブリダイズしていないもとの細胞が除かれる。血清を含むかまたは含まない、本明細書中に記載される任意の培地を、モノクローナル抗体を分泌するハイブリドーマを培養するために使用することができる。細胞融合技術の別の代替えとしては、EBV固定化B細胞を、本発明の抗NGFモノクローナル抗体を生産させるために使用することもできる。ハイブリドーマは、所望される場合には、増殖させられ、サブクローニングされ、上清が、従来の免疫アッセイ手順(例えば、放射免疫法、酵素免疫法、または蛍光免疫法)によって抗免疫原活性についてアッセイされる。
【0094】
抗体の供給源として使用することができるハイブリドーマには、NGFに特異的なモノクローナル抗体またはその一部を生産する、もとのハイブリドーマの全ての誘導体、子孫細胞が含まれる。
【0095】
このような抗体を生産するハイブリドーマは、生体外または生体内で、公知の手順を使用して増殖させることができる。モノクローナル抗体は、所望される場合には、培養培地または体液から、硫酸アンモニウム沈殿、ゲル電気泳動、透析、クロマトグラフィー、および限外濾過のような従来の免疫グロブリン精製手順によって単離することができる。存在する場合には、望ましくない活性を、例えば、固相に結合させた免疫原により構成される吸着剤の上に調製物を流し、免疫原から所望される抗体を溶出または解離させることによって除去することができる。ヒトNGF、または免疫化される種において免疫原性であるタンパク質(例えば、キーホールリンペットヘモシアニン、血清アルブミン、ウシチログロブリン、またはダイズトリプシン阻害因子)に結合させられた標的アミノ酸配列を含む断片での、二官能性試薬または誘導試薬(例えば、マレイミドベンゾイルスルホスクシンイミドエステル(システイン残基を介した結合)、N−ヒドロキシスクシンイミド(リジン残基を介する)、グルタルアルデヒド、コハク酸無水物、SOCl2、またはR1N=C=NR(ここでは、RおよびR1は異なるアルキル基である))を用いる宿主動物の免疫化により、抗体(例えば、モノクローナル抗体)の集団を得ることができる。
【0096】
所望される場合は、目的の抗NGFアンタゴニスト抗体(モノクローナルまたはポリクローナル)を配列決定することができ、その後、ポリヌクレオチド配列を発現または増殖のためのベクター中にクローニングすることができる。目的の抗体をコードする配列は、宿主細胞中でベクターの中に維持することができ、次いで、宿主細胞を増殖させて、後で使用するために凍結することができる。あるいは、ポリヌクレオチド配列は、抗体を「ヒト化」するため、または親和性もしくは抗体の他の特性を改善するための、遺伝子操作に使用することもできる。例えば、定常領域を、抗体が臨床試験およびヒトの処置に使用される場合には、免疫応答を回避するために、より似ているヒト定常領域になるように操作することができる。NGFに対するより高い親和性、およびNGFを阻害することにおけるより高い効率を得るためには、抗体配列を遺伝子操作することが望まれる場合もある。1つ以上のポリヌクレオチドの変化によって、抗NGFアンタゴニスト抗体とし、なおそのNGFに対する結合能力を維持することができることは、当業者に明らかである。
【0097】
モノクローナル抗体をヒト化するためには、4つの一般的な段階が存在する。これらは(1)出発抗体の軽鎖および重鎖可変ドメインのヌクレオチドおよび推定されるアミノ酸配列を決定する段階、(2)ヒト化抗体を設計する段階、すなわち、ヒト化プロセスの間に使用するための抗体フレームワーク領域を推定する段階、(3)実際のヒト化方法/技術、ならびに(4)ヒト化抗体のトランスフェクションおよび発現である。例えば、米国特許第4,816,567号;同第5,807,715号;同第5,866,692号;同第6,331,415号;同第5,530,101号;同第5,693,761号;同第5,693,762号;同第5,585,089号;および同第6,180,370号を参照のこと。
【0098】
ヒト以外の免疫グロブリンに由来する抗原結合部位を含む多数の「ヒト化」抗体分子が記載されており、これには、齧歯類の、または修飾された齧歯類のV領域と、ヒト定常ドメインに融合されたそれに関連する相補性決定領域(CDR)を有するキメラ抗体が含まれる。例えば、Winter等,Nature 349:293−299(1991),Lobuglio等、Proc.Nat.Acad.Sci.USA,86:4220−4224(1989),Shaw等,J.Immunol.138:4534−4538(1987)、およびBrown等,Cancer Res.47:3577−3583(1987)を参照のこと。他の参考文献には、適切なヒト抗体の定常ドメインと融合させる前に、ヒト支持フレームワーク領域(FR)に接続された齧歯類のCDRが記載されている。例えば、Riechmann等,Nature 332:323−327(1988)、Verhoeyen等,Science 239:1534−1536(1988)、およびJones等,Nature 321:522−525(1986)を参照のこと。別の参考文献には、組み換えにより貼り付けられた齧歯類のフレームワーク領域によって支持されている齧歯類のCDRが記載されている。例えば、欧州特許公開番号519,596を参照のこと。これらの「ヒト化」分子は、ヒトレシピエント中のそのような部分の治療的適用の期間および有効性を制限する、齧歯類抗ヒト抗体分子に対する所望されない免疫学的応答を最小にするように設計されている。例えば、抗体の定常領域は、それが免疫学的に不活性である(例えば、補体媒介性溶解を誘発しない)ように操作することができる。例えば、PCT公開番号PCT/GB99/01441;英国特許出願番号9809951.8を参照のこと。抗体(それらもまた利用することができる)をヒト化する他の方法は、Daugherty等,Nucl.Acids Res.19:2471−2476(1991)、ならびに米国特許第6,180,377号;同第6,054,297号;同第5,997,867号;同第5,866,692号;同第6,210,671号;および同第6,350,861号、ならびにPCT公開番号WO01/27160に開示されている。他の方法は、米国シリアル番号10/745,775に記載される。
【0099】
なお別に、完全なヒト抗体は、特異的なヒト免疫グロブリンタンパク質を発現するように操作されている、市販により入手することができるマウスを使用して得ることができる。より所望される(例えば、完全なヒト抗体)またはより強い免疫応答を生じるように設計されたトランスジェニック動物もまた、ヒト化抗体またはヒト抗体の作成に使用することができる。このような技術の例は、Abgenix,Inc.(Fremont,CA)のXenomouse(登録商標)、ならびに、Medarex,Inc.(Princeton,NJ)のHuMAb−Mouse(登録商標)およびTC MouseTMである。
【0100】
上記の議論はヒト化抗体に関して行ったが、議論された一般的な原理を、例えば、イヌ、ネコ、霊長類、ウマ、およびウシでの使用のために抗体をカスタマイズするために適応できることは、明らかである。さらに、本明細書中に記載される抗体のヒト化の1つ以上の態様を、例えば、CDRの接続、フレームワークの変異、およびCDRの変異と組み合わせることもできることが明らかである。
【0101】
あるいは、抗体は、当該分野で公知の任意の方法を使用して組み換えによって作成し、発現させることができる。別の方法では、抗体は、ファージディスプレイ技術によって組み換えにより作成することができる。例えば、米国特許第5,565,332号;同第5,580,717号;同第5,733,743号;および同第6,265,150号;ならびにWinter等,Annu.Rev.Immunol.12:433−455(1994)を参照のこと。あるいは、ファージディスプレイ技術(McCafferty等,Nature 348:552−553(1990))を使用して、免疫化されていないドナーに由来する免疫グロブリン可変(V)ドメイン遺伝子のレパートリーにより、ヒト抗体および抗体断片を生体外で生産させることができる。この技術により、抗体Vドメイン遺伝子は、繊維状バクテリオファージ、例えば、M13またはfdの主要なまたは主要ではないコートタンパク質遺伝子のいずれかにインフレームでクローニングされ、ファージ粒子の表面上の機能性抗体断片として提示される。繊維状粒子にはファージゲノムの一本鎖DNAのコピーが含まれるので、抗体の機能的特性に基づく選択により、これらの特性を示す抗体をコードする遺伝子の選択もまたできる。したがって、ファージは、B細胞の特性のいくつかに類似した特性を示す。ファージディスプレイは、種々の形式で行うことができる。概要については、例えば、Johnson,Kevin S.and Chiswell,David J.,Current Opinion in Structural Biology 3:564−571(1993)を参照のこと。V遺伝子断片のいくつかの供給源は、ファージディスプレイに使用することができる。Clackson等,Nature 352:624−628(1991)は、免疫化したマウスの脾臓に由来するV遺伝子の小さいランダムな組み合わせライブラリーから、多数の異なるオキサゾロン抗体を単離した。免疫化されていないヒトドナーに由来するV遺伝子のレパートリーを構築することができ、多数の異なる抗原(自己抗原を含む)に対する抗体を、原則としてMark等,J.Mol.Biol.222:581−597(1991)、またはGriffith等,EMBO J.12:725−734(1993)に記載されている技術にしたがって単離することができる。自然な免疫応答においては、抗体遺伝子は、高い割合で変異を重ねている(体細胞超変異)。導入されている変異のいくつかは、高い親和性を与え、親和性の高い表面免疫グロブリンを提示するB細胞が優先的に複製され、その後の抗原でのチャレンジの間に差が出てくる。この自然界に存在しているこのプロセスは、「鎖シャッフリング」として知られている技術を使用して真似ることができる。Marks等,Bio/Technol.10:779−783(1992))。この方法においては、ファージディスプレイによって得られた「最初の」ヒト抗体の親和性を、免疫化されていないドナーから得られたVドメイン遺伝子の自然界に存在している変異体のレパートリー(レパートリー)で、重鎖および軽鎖V領域遺伝子を連続して置換することによって改善することができる。この技術により、pM〜nMの範囲の親和性を有している抗体、および抗体断片の生産が可能になる。極めて大きなファージ抗体のレパートリー(「全てのライブラリーのもと(mother−of−all libraries)」としても知られている)を作成するための方法は、Waterhouse等,Nucl.Acids Res.21:2265−2266(1993)に記載されている。遺伝子シャッフリングもまた、齧歯類の抗体からヒト抗体へと誘導するために使用することができる。ここでは、ヒト抗体は、出発齧歯類抗体に対して同様の親和性と特異性を有している。「エピトープ刷り込み(epitope imprinting)」とも呼ばれるこの方法により、ファージディスプレイ技術によって得られた齧歯類抗体の重鎖および軽鎖Vドメイン遺伝子が、ヒトVドメイン遺伝子のレパートリーで置き換えられ、これにより齧歯類−ヒトキメラが作成される。抗原の選択により、機能的な抗原結合部位を回復することができるヒト可変領域の単離ができる、すなわち、エピトープがパートナーの選択を支配する(刷り込む)。このプロセスが齧歯類のVドメインを置き換えるために繰り返されると、ヒト抗体が得られる(1993年4月1日に公開されたPCT公開番号WO93/06213を参照のこと)。CDRの接続による齧歯類抗体の従来のヒト化とは異なり、この技術により、齧歯類に起源するフレームワークまたはCDR残基を有さない完全なヒト抗体が提供される。上記の議論はヒト化抗体に関して行ったが、議論された一般的な原理を、例えば、イヌ、ネコ、霊長類、ウマ、およびウシでの使用のために抗体をカスタマイズするために適応できることは、明らかである。
【0102】
抗体は、最初に、宿主動物から抗体と抗体を生産する細胞を単離すること、遺伝子配列を得ること、そして宿主細胞(例えば、CHO細胞)中で抗体を組み換えによって発現させるように遺伝子を使用することによって、組み換えにより作成することができる。使用することができる別の方法は、植物(例えば、タバコ)またはトランスジェニック乳中で抗体配列を発現させることである。植物または乳中で抗体を組み換えにより発現させるための方法は、開示されている。例えば、Peeters等,Vaccine 19:2756(2001);Lonberg,N.and D.Huszar Int.Rev.Immunol 13:65(1995);およびPollock等,J.Immunol Methods 231:147(1999)を参照のこと。抗体の誘導体(例えば、ヒト化抗体、単鎖抗体など)を作成するための方法は当該分野で公知である。
【0103】
免疫アッセイおよびフローサイトメトリー選別技術(例えば、蛍光活性化細胞選別(FACS))もまた、NGFに特異的な抗体を単離するために使用することができる。
【0104】
抗体は、多くの異なるキャリアに結合させることができる。キャリアは、活性であっても、また不活性であってもよい。周知のキャリアの例として、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリエチレン、デキストラン、ナイロン、アミラーゼ、ガラス、天然のおよび修飾されたセルロース、ポリアクリルアミド、アガロース、およびマグネタイトが挙げられる。キャリアの性質は、本発明の目的については、可溶性であっても不溶性であってもいずれでもよい。当業者であれば、抗体を結合させるための他の適切なキャリアを認識しており、また、日常的に行われる実験を使用してそれを確認することができる。いくつかの実施形態においては、キャリアには、心筋を標的とする部分が含まれる。
【0105】
モノクローナル抗体をコードするDNAは、従来の手順を使用して(例えば、モノクローナル抗体の重鎖および軽鎖をコードする遺伝子に特異的に結合できるオリゴヌクレオチドプローブを使用することによって)容易に単離され、配列決定される。ハイブリドーマ細胞は、このようなDNAの好ましい供給源として働く。一旦単離されると、DNAは、発現ベクター中に置かれ、次いでこれは、そうでなければ免疫グロブリンタンパク質を生産しない大腸菌(E.coli)細胞、サルのCOS細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、骨髄腫細胞のような宿主細胞にトランスフェクトされ、組み換え宿主細胞中でモノクローナル抗体の合成が得られる。DNAはまた、例えば、相同であるマウスの配列の代わりにヒト重鎖および軽鎖定常ドメインのコード配列で置換することによって(Morrison等,Proc.Nat.Acad.Sci.81:6851(1984))、または免疫グロブリンではないポリペプチドのコード配列全体またはその一部に、免疫グロブリンコード配列を共有結合させることによって、修飾することもできる。そのような様式で、本明細書中に記載される抗NGFモノクローナル抗体の結合特異性を有する「キメラ」または「ハイブリッド」抗体が調製される。抗NGF抗体(例えば、ヒト化抗ヒトNGFアンタゴニスト抗体)をコードするDNAは、本明細書中に記載されるように、所望の細胞によって、アンタゴニスト抗NGF抗体の送達および発現のために使用され得る。DNA送達技術は、さらに本明細書中に記載される。
【0106】
抗NGF抗体は、当該分野で周知の方法を使用して特徴付けることができる。例えば、1つの方法は、それに結合するエピトープを同定すること、すなわち、「エピトープマッピング」である。タンパク質のエピトープの位置をマップし、特徴付けるための多くの方法が当該分野で公知であり、これには、例えば、Harlow and Lane,Using Antibodies,a Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,New York,1999のChapter 11に記載されているような、抗体−抗原複合体の結晶構造の解析、競合アッセイ、遺伝子断片発現アッセイ、および合成ペプチドに基づくアッセイが含まれる。さらなる例においては、エピトープマッピングを使用して、抗NGFアンタゴニスト抗体が結合する配列を決定することができる。エピトープマッピングは、種々の業者、例えば、Pepscan Systems(Edelhertweg 15,8219 PH Lelystad,The Netherlands)から市販されている。エピトープは、直鎖状のエピトープ、すなわち、アミノ酸の1つのストレッチに含まれる)であっても、また、必ずしも単一のストレッチに含まれる必要のないアミノ酸の三次元相互作用によって形成される立体構造を有するエピトープであってもよい。種々の長さ(例えば、少なくとも4〜6アミノ酸の長さ)のペプチドを単離または合成(例えば、組み換えによって)することができ、そして抗NGFアンタゴニスト抗体との結合アッセイに使用することができる。別の例においては、抗NGFアンタゴニスト抗体が結合するエピトープを、NGF配列から導いた重複ペプチドを使用し、抗NGFアンタゴニスト抗体による結合を決定することによって、系統的スクリーニングにおいて決定することができる。遺伝子断片の発現アッセイにより、NGFをコードするオープンリーディングフレームは、ランダムに、または特異的な遺伝子構造によってのいずれかで断片化され、発現させられたNGFの断片の、試験される抗体との反応性が決定される。遺伝子断片は、例えば、PCRによって生産することができ、これは次いで、放射性アミノ酸の存在下で、生体内で転写されてタンパク質に翻訳される。その後、放射標識されたNGF断片に対する抗体の結合が、免疫沈降およびゲル電気泳動によって決定される。特定のエピトープはまた、ファージ粒子(ファージライブラリー)の表面上に提示されるランダムなペプチド配列の大きなライブラリーを使用して同定することができる。あるいは、重複しているペプチド断片の定義されたライブラリーを、単純な結合アッセイにおいて試験抗体への結合について試験することができる。さらなる例においては、抗原結合ドメインの突然変異誘発、ドメイン交換実験、およびアラニンスキャン突然変異誘発を行って、エピトープの結合に必要とされる、十分な、および/または必須の残基を同定することができる。例えば、ドメイン交換実験は、近縁関係にあるが抗原性が異なるタンパク質(例えば、ニューロトロフィンタンパク質ファミリーの別のメンバー)に由来する配列で、種々のNGFポリペプチドの断片が置き換えられている(交換されている)、変異体NGFを使用して行うことができる。変異体NGFに対する抗体の結合を評価することにより、抗体結合に関する特定のNGF断片の重要性を評価できる。
【0107】
抗NGFアンタゴニスト抗体を特徴付けるために使用することができるなお別の方法は、抗NGFアンタゴニスト抗体が他の抗体と同じエピトープに結合するかどうかを決定するための、同じ抗原に結合すること、すなわち、NGF上の種々の断片に結合することが知られている他の抗体との競合アッセイを使用することである。競合アッセイは当業者に周知である。本発明の競合アッセイに使用することができる抗体の例として、Hongo等,Hybridoma 19:215−227(2000)に記載されているMab 911、Mab 912、Mab 938が挙げられる。
【0108】
(他のNGFアンタゴニスト)
抗NGF抗体以外のNGFアンタゴニストが用いられ得る。本発明のいくつかの実施形態では、NGFアンタゴニストは、機能的NGFの発現または機能的trkAおよび/もしくはp75レセプターの発現をブロックまたは低減し得る、少なくとも1つのアンチセンス分子を含む。NGF、trkAおよびp75のヌクレオチド配列は公知であり、公に利用可能なデータベースから容易に入手され得る。例えば、Borsaniら,Nuc.Acids Res.1990,18,4020;登録番号NM 002506;Ullrichら,Nature 303:821−825(1983)を参照のこと。他のポリヌクレオチドと交叉反応することなく、NGF、trkAまたはp75のmRNAを特異的に結合するアンチセンスオリゴヌクレオチド分子を調製することは慣用的である。標的化の例示的な部位としては、以下が挙げられるがこれらに限定されない:開始コドン、5’調節領域、コード配列および3’非翻訳領域。いくつかの実施形態では、このオリゴヌクレオチドは、約10〜100ヌクレオチド長、約15〜50ヌクレオチド長、約18〜25ヌクレオチド長、またはそれより長い。このオリゴヌクレオチドは、骨格修飾(例えば、ホスホロチオエート結合、および当該分野で周知の2’−O糖修飾)を含み得る。例えば、AgrawalおよびZhao(1998),Antisense & Nucleic Acid Drug Development 8,135−139を参照のこと。例示的なアンチセンス分子としては、米国公開番号20010046959に記載のNGFアンチセンス分子が挙げられる;http://www.rna−tec.com/repair.htm.も参照のこと。
【0109】
あるいは、NGFの発現および/または放出は、当該分野で周知の方法である、遺伝子のノックダウン、モルホリノオリゴヌクレオチド、RNAiまたはリボザイムを用いて低減され得る。例えば、Rossi,J.J.ら編,「Intracellular Ribozyme Applications:Principles and Protocols」,Horizon Scientific Press(Duarte,CA,1999);米国特許6,506,559;WO 02/244321;WO 01/192513;WO 01/29058を参照のこと。
【0110】
他の実施形態では、このNGFアンタゴニストは、少なくとも1つのNGF阻害性化合物を含む。本明細書中で用いられる場合、「NGF阻害性化合物」とは、NGFの生物学的活性を直接的または間接的に、低減、阻害、中和または無効にする抗NGF抗体以外の化合物をいう。NGF阻害性化合物は、以下の特徴のうちの任意の1以上を示すはずである:(a)NGFに結合して、NGFシグナル伝達機能によって媒介されるNGFの生物学的活性および/もしくは下流の経路を阻害すること;(b)疼痛(特に、NSAIDに関連した疼痛)の任意の局面を処置または予防すること;(c)NGFレセプター活性化(trkAレセプター二量体化および/または自己リン酸化を含む)をブロックまたは減少させること;(d)NGFのクリアランスを増大させること;(e)NGF合成、産生または放出を阻害する(低減する)こと;(f)疼痛のNSAID処置を増強すること。例示的なNGF阻害性化合物としては、以下が挙げられるがこれらに限定されない:米国公開番号20010046959に記載される低分子NGFインヒビター;PCT公開番号WO 00/69829に記載されるとおりの、p75へのNGFの結合を阻害する化合物;PCT公開番号WO 98/17278に記載されるとおりのTrkA/p75へのNGFの結合を阻害する化合物。NGF阻害性化合物のさらなる例としては、PCT公開番号WO 02/17914、同WO 02/20479、米国特許第5,342,942号、同第6,127,401号および同第6,359,130号に記載の化合物が挙げられる。さらなる例示的なNGF阻害化合物は、NGFの競合的インヒビターである化合物である。米国特許第6,291,247号を参照のこと。さらに、当業者は、他の低分子NGF阻害性化合物を調製し得る。
【0111】
いくつかの実施形態では、NGF阻害性化合物はNGFを結合する。例示的な標的化(結合)部位としては、以下が挙げられるがこれらに限定されない:NGFのうちの、TrkAレセプターおよび/またはp75レセプターに結合する部分、ならびにNGFのうちの、レセプター結合領域に隣接しかつレセプター結合タンパク質の正確な三次元形状を部分的に担う部分。他の実施形態では、NGF阻害性化合物は、NGFレセプター(例えば、TrkAおよび/またはp75)を結合し、そしてNGFの生物学的活性を阻害する。例示的な標的化部位としては、TrkAおよび/またはp75のうちの、NGFに結合する部分が挙げられる。
【0112】
低分子を含む実施形態では、低分子は、100〜20,000ダルトン、500〜15,000ダルトン、または1000〜10,000ダルトンのほぼいずれかの分子量を有し得る。低分子のライブラリーは、市販される。この低分子は、吸入、腹腔内、静脈内、筋肉内、皮下、髄腔内、心室内、経口的、腸内、非経口、鼻腔内、または皮膚を含めた、当該分野で公知の任意の手段を用いて投与され得る。いくつかの実施形態では、NGF−アンタゴニストが低分子である場合、これは、患者の体重1kgあたり0.1〜300mgの割合で、1〜3以上の用量に分けて投与される。通常の体重の成体患者に関しては、用量あたりの1mg〜5gの範囲の用量が投与され得る。
【0113】
他の実施形態では、このNGFアンタゴニストは、少なくとも1つのNGF構造アナログを含む。本発明における「NGF構造アナログ」とは、NGFの3次元構造の一部と類似の3次元構造を有しかつ生理学的状態の下でインビトロまたはインビボでNGFレセプターに結合する化合物をいう。1つの実施形態では、このNGF構造アナログは、TrkAおよび/またはp75レセプターに結合する。例示的なNGF構造アナログとしては、以下が挙げられるがこれらに限定されない:PCT公開番号WO97/15593に記載される二環式ペプチド;米国特許第6,291,247号に記載される二環式ペプチド;米国特許第6,017,878号に記載される環式化合物;およびPCT公報番号WO89/09225に記載されるNGF由来ペプチド。適切なNGF構造アナログもまた、例えば、PCT公開番号WO98/06048に記載される方法による、NGFレセプター結合の分子モデリングによって設計および合成され得る。このNGF構造アナログは、改善された親和性および生物学的効果を得るための、同じかまたは異なる構造の任意の所望の組み合わせの、モノマーおよび/またはダイマー/オリゴマーであり得る。
【0114】
他の実施形態では、本発明は、TrkAレセプターおよび/またはp75レセプターの少なくとも1つのドミナントネガティブ変異体を含むNGFアンタゴニストを提供する。当業者は、例えば、TrkAレセプターのドミナントネガティブ変異体を調製し得、その結果、このレセプターはNGFを結合し、それゆえ、NGFを捕捉する「シンク」として作用する。しかし、ドミナントネガティブ変異体は、NGFに結合した際に、このレセプター(例えば、TrkAレセプター)の正常な生物活性を有さない。例示的なドミナントネガティブ変異体としては、以下の参考文献に記載される変異体が挙げられるがこれらに限定されない:Liら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 1998,95,10884;Eideら,J.Neurosci.1996,16,3123;Liuら,J.Neurosci 1997,17,8749;Kleinら,Cell 1990,61,647;Valenzuelaら,Neuron 1993,10,963;Tsoulfasら,Neuron 1993,10,975;およびLamballeら,EMBO J.1993,12,3083(これらの各々は、その全体が本明細書中に参考として援用される)。このドミナントネガティブ変異体は、タンパク質形態で、または発現ベクターの形態で、投与され得、その結果、ドミナントネガティブ変異体(例えば、変異体TrkAレセプター)は、インビボで発現される。このタンパク質または発現ベクターは、腹腔内、静脈内、筋肉内、皮下、髄腔内、心室内、経口的、腸内、非経口、鼻腔内、皮膚、または吸入によるような、当該分野で公知の任意の手段を用いて投与され得る。例えば、発現ベクターの投与としては、注射、経口投与、パーティクルガンまたはカテーテル法投与、および局所投与を含めた、局所投与または全身投与が挙げられる。他の実施形態では、このタンパク質または発現ベクターは、交感神経または知覚神経の体幹または節へと直接的に投与される。当業者は、インビボでの外因性タンパク質の発現を得るための、発現ベクターの投与に精通している。例えば、米国特許第6,436,908号;同第6,413,942号;同第6,376,471号を参照のこと。
【0115】
アンチセンスポリヌクレオチド、発現ベクター、またはサブゲノムポリヌクレオチドを含む治療用組成物の標的化送達もまた用いられ得る。レセプター媒介DNA送達技術は、例えば、以下に記載される:Findeisら,Trends Biotechnol.(1993)11:202;Chiouら,Gene Therapeutics:Methods And Applications Of Direct Gene Transfer(J.A.Wolff編)(1994);Wuら,J.Biol.Chem.(1988)263:621;Wuら,J.Biol.Chem.(1994)269:542;Zenkeら,Proc.Natl.Acad.Sci.(USA)(1990)87:3655;Wuら,J.Biol.Chem.(1991)266:338。ポリヌクレオチドを含む治療用組成物は、遺伝子治療プロトコルにおいて局所投与について、約100ng〜約200mg(またはそれより多く)の範囲のDNAで投与される。いくつかの実施形態では、約500ng、約500ng〜約50mg、約1μg〜約2mg、約5μg〜約500μg、そして約20μg〜約100μgまたはそれより多くの濃度範囲のDNAもまた、遺伝子治療プロトコルの間に用いられ得る。本発明の治療用ポリヌクレオチドおよび治療用ポリペプチドは、遺伝子送達ビヒクルを用いて送達され得る。この遺伝子送達ビヒクルは、ウイルス起源または非ウイルス起源のものであり得る(一般的に、Jolly,Cancer Gene Therapy(1994)1:51;Kimura,Human Gene Therapy(1994)5:845;Connelly,Human Gene Therapy(1995)1:185;およびKaplitt,Nature Genetics(1994)6:148を参照のこと)。このようなコード配列の発現は、内因性哺乳動物または異種プロモーターおよび/またはエンハンサーを用いて誘導され得る。コード配列の発現は、構成的または調節性のいずれかであり得る。
【0116】
所望のポリヌクレオチドの送達および所望の細胞での発現のための、ウイルスベースのベクターは、当該分野で周知である。例示的なウイルスベースのビヒクルとしては、以下が挙げられるがこれらに限定されない:組換えレトロウイルス(例えば、PCT公開番号WO 90/07936;WO 94/03622;WO 93/25698;WO 93/25234;WO 93/11230;WO 93/10218;WO 91/02805;米国特許第5,219,740号;同第4,777,127号;英国特許第2,200,651号;および欧州特許第0345 242号を参照のこと)、アルファウイルスベースのベクター(例えば、シンドビスウイルスベクター、セムリキ森林ウイルス(ATCC VR−67;ATCCVR−1247)、ロス川ウイルス(ATCC VR−373;ATCCVR−1246)およびベネズエラ馬脳炎ウイルス(ATCCVR−923;ATCCVR−1250;ATCC VR 1249;ATCC VR−532))、ならびにアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクター(例えば、PCT公開番号WO 94/12649、WO 93/03769;WO 93/19191;WO 94/28938;WO 95/11984およびWO 95/00655を参照のこと)。Curiel,Hum.Gene Ther.(1992)3:147に記載されるとおりの、殺傷したアデノウイルスに連結したDNAの投与もまた用いられ得る。
【0117】
以下を含むがこれらに限定されない、非ウイルス性の送達ビヒクルおよび方法もまた用いられ得る:殺傷したアデノウイルス単独に連結したかまたは連結していないポリカチオン性凝縮DNA(例えば、Curiel,Hum.Gene Ther.(1992)3:147を参照のこと);リガンドに連結したDNA(例えば、Wu,J.Biol.Chem.(1989)264:16985を参照のこと);真核生物細胞送達ビヒクル細胞(例えば、米国特許第5,814,482号;PCT公開番号WO 95/07994;WO 96/17072;WO 95/30763;およびWO 97/42338を参照のこと)および核酸電荷中和または細胞膜との融合。裸のDNAもまた用いられ得る。例示的な裸のDNAの導入方法は、PCR公開番号WO 90/11092および米国特許第5,580,859号に記載される。遺伝子送達ビヒクルとして作用し得るリポソームは、米国特許第5,422,120号;PCT公開番号WO 95/13796;WO 94/23697;WO 91/14445;および欧州特許第0524968号に記載される。さらなるアプローチは、Philip,Mol.Cell Biol.(1994)14:2411およびWoffendin,Proc.Natl.Acad.Sci.(1994)91:1581に記載される。
【0118】
発現ベクターを用いて、本明細書中に記載の任意のタンパク質ベースのNGFアンタゴニスト(例えば、抗NGF抗体、TrkA免疫接着など)の発現を指向することもまた明らかである。例えば、アンタゴニスト抗NGF抗体をコードするポリヌクレオチドはまた、所望の細胞でのアンタゴニスト抗NGF抗体の送達および発現のために用いられ得る。発現ベクターを用いてアンタゴニスト抗NGF抗体の発現を指向し得ることは明らかである。この発現ベクターは、腹腔内、静脈内、筋肉内、皮下、腔内、脳室内、経口、腸内、非経口、鼻腔内、皮膚または吸入によって投与され得る。例えば、発現ベクターの投与は、注射、経口投与、パーティクルガンまたはカテーテル法による投与および局所投与を含め、局所または全身での投与を包含する。本明細書中でさらに考察するように、当業者は、インビボでの外因性タンパク質の発現を得るための発現ベクターの投与に精通している。例えば、米国特許第6,436,908号;同第6,413,942号;および同第6,376,471号を参照のこと。NGFおよび/またはNGFの生物学的活性をブロックし得る(部分的から、完全までのブロッキング)他のTrkAレセプターフラグメントは、当該分野で公知である。
【0119】
別の実施形態では、NGFアンタゴニストは、少なくとも1つのTrkA免疫付着因子を含む。本明細書中で用いられる通りのTrkA免疫付着因子とは、TrkAレセプターの細胞外ドメイン(またはその一部)および免疫グロブリン配列を含み、TrkAレセプターの結合特異性を保持し(いくつかの実施形態では、結合特異性を実質的に保持し)、そしてNGFに結合し得る、可溶性キメラ分子をいう。TrkA免疫付着因子は、本明細書中に記載の通り、NGFの生物学的活性をブロック(低減および/または抑制)し得る。
【0120】
TrkA免疫付着因子は当該分野で公知であり、そしてTrkAレセプターに対するNGFの結合をブロック(低減または抑制)することが見出されている。例えば、米国特許第6,153,189号を参照のこと。1つの実施形態では、TrkA免疫付着因子は、NGFを結合し得るTrkAレセプターアミノ酸配列(またはtrkAレセプターの結合特異性を実質的に保持するアミノ酸配列)および免疫グロブリン配列(またはTrkAレセプターの結合特異性を実質的に保持するアミノ酸)の融合体を含む。いくつかの実施形態では、TrkAレセプターは、ヒトTrkAレセプター配列であり、そしてこの融合体は、免疫グロブリン定常ドメイン配列とのものである。他の実施形態では、この免疫グロブリン定常ドメイン配列は、免疫グロブリン重鎖定常ドメイン配列である。他の実施形態では、(例えば、ジスルフィド結合による共有結合を介する)2つのTrkAレセプター−免疫グロブリン重鎖融合体の会合は、ホモダイマー免疫グロブリン様構造をもたらす。免疫グロブリン軽鎖は、ジスルフィド結合ダイマーにおけるTrkAレセプター免疫グロブリンキメラの一方または両方とさらに会合されて、ホモトリマー構造またはホモテトラマー構造を生じ得る。適切なTrkA免疫付着因子の例としては、米国特許第6,153,189号に記載のものが挙げられる。
【0121】
別の実施形態では、NGFアンタゴニストは、TrkAレセプターとのNGFの物理的相互作用および/または下流のシグナル伝達をブロック、抑制、変更および/または低減し得、それにより、NGFの生物学的活性が低減および/またはブロックされる、少なくとも1つの抗TrkA抗体を含む。抗TrkA抗体は当該分野で公知である。例示的な抗TrkA抗体としては、PCT公開番号Wo 97/21732、WO00/73344、WO02/15924、および米国公開番号20010046959に記載のものが挙げられる。別の実施形態では、NGFアンタゴニストは、p75レセプターとのNGFの物理的相互作用および/または下流のシグナル伝達をブロック、抑制および/または低減し得、それにより、NGFの生物学的活性が低減および/またはブロックされる、少なくとも1つの抗p75抗体を包含する。
【0122】
別の実施形態では、NGFアンタゴニストは、TrkAおよび/またはp75レセプター活性に関連した下流のキナーゼシグナル伝達を阻害し得る少なくとも1つのキナーゼインヒビターを含む。例示的なキナーゼインヒビターは、K252aまたはK252bであり、これらは当該分野で公知であり、以下に記載される:Knuselら,J.Neurochem.59:715−722(1992);Knuselら,J.Neurochemistry 57:955−962(1991);Koizumiら、J.Neuroscience 8:715−721(1988);Hirataら,Chemical Abstracts 111:728,XP00204135、要約およびを参照のこと、および12th Collective Chemical Substance Index,p.34237,c.3(5−7),55−60,66−69),p.34238,c.1(41−44),c.2(25−27,32−33),p.3423,c.3(48−50,52−53);米国特許第6,306,849号。
【0123】
臨床医が希望すれば多数の他のカテゴリーのNGFアンタゴニストが同定されることが予想される。
【0124】
(NGFアンタゴニスト抗体の同定)
抗NGF抗体および他のNGFアンタゴニストは、当該分野で公知の方法を使用して同定または特徴付けられ得、それにより、NGFの生物学的活性の低下、向上または中和が検出および/または測定される。例えば、米国特許第5,766,863号および同第5,891,650号に記載されているキナーゼレセプター活性化(KIRA)アッセイは、抗NGF薬剤を同定するために使用され得る。このELISA型アッセイは、レセプタータンパク質チロシンキナーゼ(本明細書中以後、「rPTK」とする)(例えば、TrkAレセプター)のキナーゼドメインの自己リン酸化を測定することによるキナーゼの活性化の定量的または定性的な測定に、ならびに、選択されたrPTK(例えば、TrkA)についての可能性のあるアンタゴニストの同定および特徴付けに適切である。アッセイの最初の段階には、キナーゼレセプター(例えば、TrkAレセプター)のキナーゼドメインのリン酸化が含まれ、ここで、このレセプターは、真核生物細胞の細胞膜中に存在する。このレセプターは、内因性レセプターであっても、このレセプターをコードする核酸であっても、またはレセプター構築物であってもよく、細胞中に形質転換され得る。代表的には、第1の固相(例えば、第1のアッセイプレートのウェル)が、実質的に均質なこのような細胞の集団(通常は、哺乳動物細胞株)でコーティングされ、それにより、細胞が固相に付着させられる。しばしば、これらの細胞は付着性であり、それによって第1の固相に対して自然に付着する。「レセプター構築物」が使用される場合、これには通常、キナーゼレセプターとflagポリペプチドとの融合体が含まれる。flagポリペプチドは、アッセイのELISA部分において、捕捉薬剤(しばしば、捕捉抗体)によって認識される。候補の抗NGF抗体または他のNGFアンタゴニストのような分析物が、次いで、細胞が付着しているウェルに対してNGFと共に添加され、その結果、チロシンキナーゼレセプター(例えば、TrkAレセプター)がNGFおよび分析物に曝露される(またはそれらと接触させられる)。このアッセイにより、そのリガンドであるNGFによるTrkAの活性化を阻害する抗体(または他のNGFアンタゴニスト)を同定することができる。NGFおよび分析物に曝露された後、付着している細胞は、溶解緩衝液(これは、その中に可溶化界面活性剤を含む)および穏やかな攪拌を使用して溶解させられ、それによって細胞溶解物が遊離し、この細胞溶解物を、細胞溶解物の濃縮または明澄化の必要なく、直接、アッセイのELISA部分に供することができる。
【0125】
次いで、このように調製された細胞溶解物は、アッセイのELISA段階に供される準備ができている。ELISA段階の第1の工程として、第2の固相(通常は、ELISAマイクロタイタープレートのウェル)は、チロシンキナーゼレセプターに特異的に結合するか、またはレセプター構築物の場合はflagポリペプチドに特異的に結合する捕捉薬剤(しばしば、捕捉抗体)でコーティングされる。第2の固相のコーティングは、捕捉薬剤が第2の固相に付着するように行われる。捕捉薬剤は、一般に、モノクローナル抗体であるが、本明細書中の実施例に記載されるように、ポリクローナル抗体を使用できる場合もある。次いで、得られた細胞溶解物は、付着している捕捉薬剤に曝露されるかまたは付着している捕捉薬剤と接触させられ、その結果、レセプターまたはレセプター構築物が第2の固相に付着させられる(あるいは、第2の固相中に捕捉される)。次いで、結合していない細胞溶解物をとり除くための洗浄工程が行われ、それによって、捕捉されたレセプターまたはレセプター構築物が残される。次いで、付着しているかまたは捕捉されたレセプターまたはレセプター構築物は、チロシンキナーゼレセプター中のリン酸化されたチロシン残基を同定する抗ホスホチロシン抗体に曝露されるか、またはこの抗体と接触させられる。1つの実施形態においては、抗ホスホチロシン抗体は、放射性のない発色試薬の色の変化を触媒する酵素に(直接的または間接的に)結合体化させられる。したがって、このレセプターのリン酸化は、その後の試薬の色の変化によって測定され得る。この酵素は、抗ホスホチロシン抗体に直接結合させてもよく、または結合体化分子(例えば、ビオチン)を、抗ホスホチロシン抗体に結合させて、その後、この酵素を、結合体化分子を介して抗ホスホチロシン抗体に結合させてもよい。最後に、捕捉されたレセプターまたはレセプター構築物への抗ホスホチロシン抗体の結合は、例えば、発色試薬の色の変化によって測定され得る。
【0126】
このNGFアンタゴニストは、候補因子をNGFとともにインキュベートし、以下の特徴のうちのいずれか1つ以上をモニタリングすることによって同定され得る:(a)NGFに結合し、そしてNGFの生物学的活性および/またはNGFシグナル伝達機能によって媒介される下流の経路を阻害すること;(b)NGFレセプターの活性化をブロックするかまたは低下させること;(c)NGFのクリアランスを増大させること;(d)NGFレセプターの活性化を阻害すること(TrkAの二量体化および/または自己リン酸化を阻害すること);(e)(特に、NSAIDに関連した)疼痛の任意の局面を処置、改善または予防すること;(f)NGFの合成、産生または放出を阻害(低減)すること;(g)疼痛のNSAID処置を高めること。いくつかの実施形態では、NGFアンタゴニストは、候補因子をNGFとともにインキュベートし、そして結合および/またはそれに伴うNGFの生物学的活性の低下もしくは中和をモニターすることによって同定される。結合アッセイは、精製されたNGFポリペプチドを用いて、またはNGFポリペプチドをもともと発現する細胞もしくはNGFポリペプチドを発現するようにトランスフェクトされた細胞を用いて、行われ得る。1つの実施形態においては、結合アッセイは競合結合アッセイであり、ここでは、候補抗体がNGF結合について既知の抗NGFアンタゴニストと競合する能力が評価される。このアッセイは、ELISA形式を含め、種々の形式で行われ得る。他の実施形態においては、NGFアンタゴニストは、候補因子をNGFと共にインキュベートし、そして結合、ならびにそれに付随するTrkAレセプターの二量体化および/または自己リン酸化の阻害をモニターすることによって同定される。
【0127】
最初の同定の後、候補抗NGFアンタゴニストの活性を、標的とされた生物学的活性を試験することが公知のバイオアッセイによってさらに確認して絞り込み得る。あるいは、バイオアッセイは、候補を直接スクリーニングするために使用することができる。例えば、NGFは、応答細胞中の多数の形態学的に認識され得る変化を促進する。これらとしては、PC12細胞の分化の促進、およびこれらの細胞からの軸索突起の成長の増強(Urferら,Biochem.36:4775−4781(1997);Tsoulfasら,Neuron 10:975−990(1993))、応答性の知覚神経節および交感神経節の外植片からの軸索突起の伸長の促進(Levi−Montalcini,R.およびAngeletti,P.Nerve growth factor.Physiol.Rev.48:534−569,1968)、ならびにNGF依存性ニューロン(例えば、胚性後根神経節、三叉神経節、または交感神経節のニューロン)の生存の促進(例えば、ChunおよびPatterson,Dev.Biol.75:705−711(1997);BuchmanおよびDavies,Development 118:989−1001(1993))が挙げられるがこれらに限定されない。したがって、NGFの生物学的活性の阻害についてのアッセイには、NGFおよび分析物(例えば、候補抗NGFアンタゴニスト抗体および候補NGFアンタゴニスト)と共にNGF応答性細胞を培養することが必然的に伴う。適切な時間の後、細胞応答(細胞の分化、軸索突起の伸長、または細胞の生存)がアッセイされる。
【0128】
候補NGFアンタゴニストが、NGFの生物学的活性をブロックまたは中和する能力はまた、Hongoら,Hybridoma 19:215−227(2000)に記載されているような、胚性ラットの後根神経節の生存についてのバイオアッセイにおいて、この候補因子がNGF媒介性生存を阻害する能力をモニタリングすることによって実施され得る。NGF活性のモジュレーターを同定する方法は、PCT/US2004/01609に記載される。
【0129】
(組成物)
本発明の組成物は、本明細書中の種々の実施形態に記載されるように、有効量のNGFアンタゴニスト(例えば、抗NGF抗体)およびNSAIDを含む。いくつかの実施形態において、これらの組成物は、薬学的に受容可能な賦形剤をさらに含む。いくつかの実施形態において、その組成物は、本明細書中で記載される方法のいずれかの用途のために(例えば、術後の疼痛)のいずれかにおける用途のためのものである。このような組成物、ならびに処方の方法もまた、これまでの節および以下に記載される。上述のNGFアンタゴニストおよびNSAIDは、単一の組成物中に存在するか、または、別個の組成物として存在する。したがって、いくつかの実施形態において、このNGFアンタゴニストおよびNSAIDは、同じ組成物中に存在する。他の実施形態において、このNGFアンタゴニストおよびNSAIDは、別個の組成物中に存在する。
【0130】
別の局面において、本発明は、NGFアンタゴニストおよびNSAIDの相乗的な組成物を提供する。
【0131】
いくつかの実施形態において、本発明は、疼痛の処置の用途のため(例えば、手術後の疼痛)のNGFアンタゴニストを含む薬学的組成物を提供する。ここで、この用途は、NSAIDの同時および/または連続的な投与を包含する。いくつかの実施形態において、本発明は、疼痛の処置の用途のためのNASIDを含む薬学的組成物を提供して、ここで、この用途は、NGFアンタゴニストの同時および/または連続的な投与を包含する。いくつの実施形態において、本発明は、疼痛の処置のための別個、同時および/または連続した用途のための、NGFアンタゴニストおよびNSAIDを含む薬学的組成を提供する。幾つかの実施形態において、このNGFアンタゴニストは、抗NGF抗体(例えば、本明細書中に記載されるような抗体E3)である。他の実施形態において、このNSAIDは、イブプロフェンである。さらに他の実施形態において、このNGFアンタゴニストは、抗NGF抗体であり、そして、このNSAIDは、イブプロフェンである。
【0132】
組成物は1よりも多いNGFアンタゴニストを含み得ることが理解される。例えば、組成物は、NGFアンタゴニストのあるクラスにおける1よりも多いメンバー(例えば、NGFの異なるエピトープを認識する抗NGF抗体の混合物)、ならびに異なるクラスのNGFアンタゴニストのメンバー(例えば、抗NGF抗体およびNGF阻害性化合物)を含み得る。他の例示的な組成物は、同じエピトープを認識する1より多い抗体、様々な種のエピトープを結合する様々な種の抗NGF抗体、または異なるNGF阻害性化合物を含む。他の実施形態において、この組成物は、1以上のNGFアンタゴニストを含む。このアンタゴニストは、NGF(例えば、抗体)に結合する(これらと物理的に相互作用する)アンタゴニスト、NGFレセプターに結合するアンタゴニスト(例えば、TrkAレセプターまたはp75レセプター)、および下流のNGFレセプターシグナル伝達を低減(妨害および/またはブロック)するアンタゴニストからなる群より選択される。
【0133】
本発明で使用される組成物は、さらに、薬学的に受容可能なキャリア、賦形剤、または安定剤(Remington:The Science and Practice of Pharmacy 第20版(2000)Lippincott WilliamsおよびWilkins編、K.E.Hoover)を、凍結乾燥された処方物の形態または水溶液の形態で含み得る。受容可能なキャリア、賦形剤、または安定剤は、使用される投薬量および濃度においてレシピエントに対して無毒性であり、そして以下のものを含み得る:リン酸、クエン酸、および他の有機酸のような緩衝液;アスコルビン酸およびメチオニンを含む抗酸化剤;防腐剤(例えば、オクダデシルジメチルベンジルアンモニウムクロリド、塩化ヘキサメトニウム、塩化ベンズアルコニウム、塩化ベンズエトニウム、フェノール、ブチルアルコールもしくはベンジルアルコール、アルキルパラベン(例えば、メチルパラベンもしくはプロピルパラベン)、カテコール、レゾルシノール、シクロヘキサノール、3−ペンタノール、およびm−クレゾール);低分子量(約10残基未満の)ポリペプチド;タンパク質(例えば、血清アルブミン、ゼラチン、または免疫グロブリン);親水性ポリマー(例えば、ポリビニルピロリドン);アミノ酸(例えば、グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニン、またはリジン);単糖類、二糖類、および他の糖質(グルコース、マンノース、またはデキストランが挙げられる);キレート剤(例えば、EDTA);糖(例えば、スクロース、マンニトール、トレハロースまたはソルビトール);塩形成対イオン(例えば、ナトリウム);金属錯体(例えば、Zn−タンパク質錯体);ならびに/あるいは非イオン性界面活性剤(例えば、TWEENTM、PLURONICSTMまたはポリエチレングリコール(PEG))。薬学的に受容可能な賦形剤は、本明細書中にさらに記載される。
【0134】
本明細書中に記載される組成物は、疼痛の処置に有用であることが公知のさらなる化合物を含み得る。NGFアンタゴニストおよびNSAID、ならびにその組成物はまた、その薬剤の有効性を増強し、そして/または補完する他の薬剤と併用して使用され得る。
【0135】
他の実施形態において、本発明は、医薬としての使用および/または医薬の製造ための使用の文脈であるかを問わず、本明細書中に記載される方法のうちのいずれかで使用するための組成物(本明細書中に記載される)を提供する。
【0136】
(キット)
本発明はまた、即時的な方法での使用のためのキットを提供する。本発明のキットは、NGFアンタゴニスト(例えば、抗NGF抗体)、NSAIDを含む1以上の容器を備え、いくつかの実施形態では、本明細書中に記載される方法のうちのいずれかに従う使用のための指示書をさらに備える。いくつかの実施形態において、キットは、抗NGF抗体(例えば、本明細書中に記載される抗体E3)を含む。他の実施形態において、キットは、抗体E3の1つ以上のCDR(例えば、1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、あるいはいくつかの実施形態では、E3に由来する6つすべてのCDR)を含む抗NGF抗体を含む。キットは、個体が疼痛を有するかどうか、または個体が疼痛の危険性があるかどうかを同定することに基づき、処置に適切な個体を選択することの説明書をさらに備え得る。いくつかの実施形態において、本発明は、本明細書に記載される方法のうちのいずれかに伴う使用のためのキットを提供し、そのキットは、NGFアンタゴニストを含む。さらに他の実施形態において、キットは、抗NGF抗体を含む。さらに他の実施形態において、キットは、ヒト化抗NGF抗体(例えば、本明細書中に記載される抗体E3)を含む。さらに他の実施形態において、指示書は、任意の疼痛(例えば、術後の疼痛、熱傷に関係する疼痛、関節リウマチ、または骨関節炎)を処置、予防および/または改善するために、NSAIDと併用してNGFアンタゴニストを投与することの説明書を含む。
【0137】
いくつかの実施形態において、キットは、NGFアンタゴニスト(例えば、抗NGF抗体)、NSAID、および疼痛の有効な処置のためにNGFアンタゴニストおよびNSAIDを同時投与および/または連続投与するための指示書を含む。他の実施形態において、キットは、NGFアンタゴニスト(例えば、抗NGF抗体)、および疼痛の有効な処置のためにNGFアンタゴニスト(例えば、抗NGF抗体)およびNSAIDを互いに併用して投与するための指示書を含む。他の実施形態において、キットは、NGFアンタゴニスト(例えば、抗NGF抗体)、およびNSAID(例えば、イブプロフェン)、ならびに疼痛の有効な処置のためにNGFアンタゴニストおよびNSAIDを互いに併用して投与するための指示書を含む。従って、本明細書中に記載される方法のうちのいずれかが、指示書に反映され得る。
【0138】
いくつかの実施形態において、キットは、抗NGF抗体を含む。他の実施形態において、抗NGF抗体は、表1に示される重鎖可変領域、および表2に示される軽鎖可変領域を含む抗体である。さらに他の実施形態において、抗NGF抗体は、本明細書中に記載されるような抗体E3である。
【0139】
NGFアンタゴニスト(例えば、抗NGF抗体)およびNSAIDは、別個の容器中に存在し得るか、または単一の容器中に存在し得る。キットが、1つの特徴的な組成物を含んでいても、2つ以上の組成物を含んでいてもよく、ここで、1つの組成物がNGFアンタゴニストを含み、また1つの組成物がNSAIDを含むことが理解される。
【0140】
本発明のキットは、包装するのに適切である。適切な包装としては、バイアル、ボトル、ジャー、可撓性の包装(例えば、シールされたマイラーまたはビニール袋)などが挙げられるが、これらに限定されない。キットは、必要に応じて、さらなる成分(例えば、緩衝液および説明用情報)を提供し得る。
【0141】
NGFアンタゴニストの使用に関する指示書は、一般的には、投薬量、投薬スケジュール、および意図される処置のための投与経路についての情報を含む。容器は、単位用量であっても、バルク包装(例えば、複数回投与包装)であっても、副次単位用量であってもよい。本発明のキットに提供される指示書は、代表的には、ラベル上の文書による指示であるか、または包装の挿入物(例えば、キットに備えられる書類)であるが、機械読み取り可能な指示書(例えば、磁気保存ディスクまたは光学保存ディスクで持ち運ばれる指示書)もまた、利用可能である。
【0142】
ラベルまたは包装の挿入物は、組成物が、疼痛(術後の疼痛を含む)を処置、改善および/または予防するために使用されることを示す。指示書は、本明細書中に記載される方法のいずれかを実施するために提供され得る。
【0143】
本発明のキットは、包装するのに適切である。適切な包装としては、バイアル、ボトル、ジャー、可撓性の包装(例えば、シールされたマイラーまたはビニール袋)などが挙げられるが、これらに限定されない。また、特定のデバイス(例えば、吸入器、鼻投与デバイス(例えば、噴霧器)またはミニポンプのような注入デバイス)を組み合わせて使用するための包装も、意図される。キットは、滅菌アクセスポートを有し得る(例えば、容器は、皮下注射針によって貫通可能な栓を有する静脈溶液バッグもしくはバイアルであり得る)。容器はまた、滅菌アクセスポートを有し得る(例えば、容器は、皮下注射針によって貫通可能な栓を有する静脈溶液バッグもしくはバイアルであり得る)。組成物中の少なくとも1つの活性な薬剤は、NGFアンタゴニスト(例えば、抗NGF抗体)である。容器は、第2の薬学的に活性な薬剤をさらに備え得る。
【0144】
キットは、必要に応じて、さらなる成分(例えば、緩衝液および説明用の情報)を提供し得る。通常は、キットは、容器およびその容器におけるラベルもしくは容器に添付される包装の挿入物を備える。
【0145】
いくつかの実施形態において、本発明は、上記のキットの内容物を含む製造物品を提供する。いくつかの実施形態において、キットは、疼痛を処置するための使用を指示する情報と共に、NGFアンタゴニスト(例えば、抗NGF抗体)および/またはNSAIDを含む。
【0146】
(NGFアンタゴニストおよびNSAIDの投与、ならびに処置の評価)
NGFアンタゴニストおよびNSAIDは、任意の適切な経路を介して個体に投与され得る。例えば、それらは、経口的に、静脈内に、胸腔内に、腹腔内に、脳室内に、舌下に、経皮的にかまたは吸入によって、一緒にかまたは別個に投与され得る。それらは、例えば、当該分野で調製される錠剤、トローチ、カプセル、エリキシル、懸濁液、シロップ、オブラート、チューインガム、ロリポップ(lolliopop)、座剤などの形態で、経口投与され得る。本明細書中に記載される実施例が、利用可能な技術を限定するものではなく例示であることが意図されることが、当業者に明らかである。
【0147】
従って、いくつかの実施形態において、NGFアンタゴニスト抗体(例えば、抗NGF抗体)は、例えば、ボーラスとしてかまたは一定期間にわたる連続注入により、筋肉内経路、腹腔内経路、脳室内経路、皮下経路、関節内経路、滑液嚢内経路、髄腔内経路、経口経路、吸入経路または局所的経路によって、静脈内投与のような公知の方法に従って、個体に投与される。液体処方物のための市販の噴霧器(ジェット噴霧器および超音波噴霧器が挙げられる)が、投与のために有用である。液体処方物は、直接噴霧され得、そして凍結乾燥された粉末は、再構築後に噴霧され得る。あるいは、NGFアンタゴニスト(例えば、抗NGF抗体)は、フルオロカーボン処方物および測定用量吸入器を使用してエアロゾル化され得るか、または凍結乾燥され粉砕された粉末として吸入され得る。
【0148】
部位特異的送達技術または標的化局所送達技術もまた、投与のために有効である。部位特異的送達技術または標的化局所送達技術の例としては、NGFアンタゴニストおよび/もしくはNSAIDの種々の移植可能なデポー供給源、または局所送達用カテーテル(例えば、注入カテーテル、留置カテーテル、または針状カテーテル)、人工血管移植、外膜ラップ(adventitial wraps)、シャントおよびステント、あるいは他の移植可能デバイス)、部位特異的キャリア、直接注射、患者管理無痛法(PCA)技術もしくはデバイス、ならびに/あるいは直接適用が挙げられる。例えば、PCT公開番号WO00/53211、および米国特許第5,981,568号を参照のこと。
【0149】
抗NGF抗体またはそのフラグメントのような薬剤の種々の処方物(NGFアンタゴニスト)が投与のために使用され得る。いくつかの実施形態において、抗NGF抗体またはそのフラグメントのような薬剤は、ニートで投与される。いくつかの実施形態において、薬剤は、種々の処方物中(薬学的に受容可能な賦形剤を含む処方物)に含まれ得る抗NGF抗体を含む。薬学的に受容可能な賦形剤は、当該分野で公知であり、これらは、薬理学的に有効な物質の投与を容易にする比較的不活性な物質である。例えば、賦形剤は、形態もしくは一貫性を与え得るか、または希釈剤として作用し得る。適切な賦形剤としては、安定剤、湿潤剤および乳化剤、浸透圧を変化させるための塩、カプセル化剤、緩衝液、および皮膚浸透促進剤が挙げられるが、これらに限定されない。経口薬物送達および非経口薬物送達のための賦形剤ならびに処方物は、Remington,The Science and Practice of Pharmacy 第20版、 Mack Publishing編(2000)に記載されている。
【0150】
いくつかの実施形態において、これらの試薬(NGFアンタゴニス)は、注射(例えば、腹腔内、静脈内、皮下、筋肉内など)による投与のために処方される。したがって、これらの試薬を、生理食塩水、リンガー溶液、デキストロース溶液などのような薬学的に許容されるビヒクルと混合することができる。特定の投与レジメン(すなわち、用量、タイミング、および繰り返し)は、特定の固体、および個体の病歴に依存する。投薬レジメン(使用されるNGFアンタゴニスト)は、時間が経つとともに変化し得る。
【0151】
抗NGF抗体は、注射(例えば、腹腔内、静脈内、皮下、筋肉内など)を含む任意の適切な方法を使用して投与され得る。抗NGF抗体はまた、本明細書中に記載されているように、吸入によって投与され得る。一般的には、抗NGF抗体の投与について、最初の候補投与量は、約0.2mg/kgまたは約2mgである。いくつかの実施形態において、典型的な1日の投薬量は、上記の因子に依存して、3μg/kgから30μg/kgから300μg/kgから3mg/kgから30mg/kgから100mg/kg、あるいはそれ以上の範囲である。数日間もしくはそれ以上にわたる反復投与について、その状態に依存して、処置は、疾患症状の所望の抑制が生じるまでかまたは十分な治療レベルが疼痛を軽減することを達成するまで持続される。例示的な投薬レジメンは、約2mg/kgの初期用量、次いで、抗NGF抗体の約1mg/kgの週間持続用量か、または隔週の約1mg/kgの持続用量を投与する工程を包含する。しかし、他の投薬レジメンが、実施者が達成されることを望む薬理動力学的減衰のパターンに依存して有用であり得る。例えば、1週間に1〜4回の投与が意図される。他の投薬レジメンとしては、1日当たり1回まで、1週間当たり1〜4回、またはそれ以下の頻度のレジメンが挙げられる。いくつかの実施形態において、化合物は、1週間に約1回、1ヶ月当たり約1〜4回投与される。抗NGF抗体の投薬量が本明細書中に記載される。この治療の経過は、従来の技術およびアッセイによって容易にモニタリングされる。
【0152】
いくつかの実施形態において、抗体ではない場合、本発明に従うNGFアンタゴニストは、患者の体重1kg当たり0.1〜300mgの割合で1回〜3回の用量に分けるか、または本明細書中に開示されるように投与され得る。正常な体重の数名の成人患者では、約0.3〜5.00mg/kgの範囲の用量が投与され得る。特定の投薬レジメン(すなわち、用量、タイミングおよび反復)は、特定の個体およびその個体の病歴、ならびに個々の薬剤の特性(例えば、その薬剤の半減期、および当該分野で周知の他の考慮すべき事項)に依存する。
【0153】
NSAIDは、そのような鎮痛剤についての従来の投薬量レベルまでの投薬レベルで投与され得る。いくつかの実施形態において、NSAIDは、減少されたレベルで投与される。適切な投薬レベルは、選択されたNSAIDの鎮痛効果に依存するが、代表的には、適切なレベルは、1日当たり約0.001〜25mg/kg、1日当たり約0.005〜10mg/kg、または1日当たり0.05〜1mg/kgであるか、あるいはそれ未満である。化合物は、1日当たり6回まで(またはそれ以上)、1日当たり1〜4回のレジメンで投与され得るか、あるいはそれ以下の頻度で投与され得る。いくつかの実施形態において、NSAIDは、(例えば、PCAと同様に)連続的にか、または間をあけずに投与される。
【0154】
単一の組成物としてかまたは別個の組成物としてかのいずれかで、組み合わせて投与される場合、神経成長因子アンタゴニストおよびNSAIDは、所望の効果の発現と一致する比で提示される。いくつかの実施形態において、重量でのNSAIDに対する神経成長因子は、およそ1:1である。いくつかの実施形態において、この比は、約0.001:約1と約1000:約1との間、約0.01:約1と約100:約1との間、または約1と約10:約1との間であり得る。他の比が、意図される。
【0155】
疼痛の処置または予防における使用のために必要とされる神経成長因子およびNSAIDの量が、選択される特定の化合物もしくは組成物だけでなく、投与経路、処置されるべき状態の性質、ならびに患者の年齢および状態、処置の経過もしくは段階によって変化し、そして最終的に担当医の裁量で変化することが理解される。例えば、NGFアンタゴニスト(例えば、抗NGF抗体)の適切な投薬量は、使用されるNGFアンタゴニスト(またはその組成物)、処置されるべき疼痛の型および重篤度、薬剤が予防目的または治療目的で投与されたのかどうか、以前の治療、患者の病歴および薬剤への応答性、ならびに担当医の裁量に依存する。代表的には、臨床家は、投薬量が所望を達成する投薬量に達するまで、NGFアンタゴニスト(例えば、抗NGF抗体)を投与する。
【0156】
半減期のような経験的な考慮が、一般的には、投与量の決定の一因となる。例えば、ヒトの免疫系と適合する抗体(例えば、ヒト化抗体または完全なヒト抗体)が、抗体の半減期を長くするために、宿主免疫系による攻撃から抗体を防ぐために、使用され得る。投与の頻度は、治療の経過全体を通じて決定し、調整され得、一般的には、疼痛の処置、および/または抑制、および/または緩和、および/または遅延に基づくが、必ずしもそうであるとは限らない。あるいは、NGFアンタゴニストおよび/またはNSAIDの徐放性の連続的放出処方物が適切であり得る。徐放性放出を達成するための種々の処方物およびデバイスは当該分野で公知である。
【0157】
1つの実施形態において、NGFアンタゴニスト抗体についての投薬量は、疼痛を処置するためにNGF活性を阻害する薬剤の1回以上の投与がなされた個体において、経験的に決定され得る。個体は、NGFを阻害する薬剤(例えば、抗NGF抗体)の増分投薬量が、NSAIDと併用して与えられる。処置の効力を評価するために、疼痛の指標が追跡され得る。
【0158】
本発明の方法に従うNGFアンタゴニストおよびNSAIDの投与は、例えば、レシピエントの生理学的状態、投与の目的が治療的であるかまたは予防的であるか、および熟練した実施者に公知の他の因子に依存して、連続的であり得るかまたは断続的であり得る。NGFアンタゴニストの投与は、本質的には、あらかじめ選択された期間にわたって連続的に行われても、間隔のあいた用量(例えば、痛みが発生する前、間、もしくは後のいずれか)で順次行われてもよい。例えば、投与は、創傷、切開、外傷、手術、および疼痛を生じる可能性を有する任意の他の事象の前、間および/または後であり得る。
【0159】
いくつかの実施形態において、1つより多くのNGFアンタゴニスト(例えば、抗体)が存在し得る。アンタゴニストは、互いに同じであっても、異なっていてもよい。少なくとも1つ、少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つの異なるNGFアンタゴニスト、あるいはそれ以上の異なるNGFアンタゴニストが存在し得る。一般的には、これらのNGFアンタゴニストは、互いに悪影響を与えない相補的な活性を有する。NGFアンタゴニストはまた、薬剤の有効性を増強および/または補完する役割を果たす他の薬剤と併用して使用され得る。
【0160】
いくつかの実施形態において、1つ以上のNSAIDが存在し得る。少なくとも1つ、少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つの異なるNSAID、あるいはそれ以上の抗NGFアンタゴニスト抗体が存在し得る。通常は、これらのNSAIDは、互いに悪影響を及ぼさない相補的な活性を有する。NSAIDはまた、薬剤の有効性を増強および/または補完する役割を果たす他の薬剤と併用して使用され得る。
【0161】
本発明に従って使用されるNGFアンタゴニスト(例えば、抗体)およびNSAIDの治療用処方物は、所望される純度を有する抗体を、任意の薬学的に受容可能なキャリア、賦形剤、または安定剤(Remington,The Science and Practice of Pharmacy 第20版,Mack Publishing(2000))と混合することによって、凍結乾燥処方物または水溶液の形態で、保存用に調製される。受容可能なキャリア、賦形剤、または安定剤は、使用される投与量および濃度ではレシピエントに対して無毒性であり、そして以下のものを含み得る:緩衝液(例えば、リン酸、クエン酸、および他の有機酸);塩(例えば、塩化ナトリウム;アスコルビン酸およびメチオニンを含む抗酸化物質);防腐剤(例えば、オクタデシルジメチルベンジル塩化アンモニウム;塩化ヘキサメトニウム;塩化ベンズアルコニウム;塩化ベンズエトニウム;フェノール、ブチル、またはベンジルアルコール;アルキルパラベン(例えば、メチルパラベンもしくはプロピルパラベン);カテコール;レゾルシノール;シクロヘキサノール;3−ペンタノール;およびm−クレゾール);低分子量(約10残基未満)のポリペプチド;タンパク質(例えば、血清アルブミン、ゼラチン、または免疫グロブリン);親水性ポリマー(例えば、ポリビニルピロリドン);アミノ酸(例えば、グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニン、またはリジン);単糖類、ニ糖類、および他の糖質(グルコース、マンノース、またはデキストリンを含む);キレート化剤(例えば、EDTA);糖(例えば、スクロース、マンニトール、トレハロース、またはソルビトール;塩形成対イオン(例えば、ナトリウム);金属錯体(例えば、Zn−タンパク質錯体);ならびに/あるいは非イオン性界面活性剤(例えば、TWEENTM、PLURONICSTM、またはポリエチレングリコール(PEG))。
【0162】
上述のNGFアンタゴニスト(例えば、抗体)を含むリポソームは、当該分野で公知の方法によって調製される。このような方法は、以下:に記載される:Epsteinら、Proc.Natl.Acad.Sci.US 82:3633(1985);Hwangら、Proc.Natl Acad.Sci.USA 77:4030(1980);ならびに米国特許第4,485,045号および同第4,544,545号。循環時間が増大されたリポソームは、米国特許番号5,013,556に記載される。特に有用なリポソームは、ホスファチジルコリン、コレステロール、およびPEG誘導体化ホスファチジルエタノールアミン−PE)を含む脂質組成物を用いる逆相エバポレーション法によって生成され得る。リポソームは、所望の直径を有するリポソームを産生するための、細かいポアサイズのフィルターを通して押し出し成形される。
【0163】
それらの活性成分もまた、例えば、コアセルベーション技術または界面重合によって調製されるマイクロカプセル(例えば、それぞれにおいて、ヒドロキシメチルセルロースまたはゼラチン−マイクロカプセル、およびポリ(メチルメタクリエート)マイクロカプセル)中、コロイド薬物送達系(例えば、リポソーム、アルブミンミクロスフィア、またはミクロエマルジョン、ナノ粒子およびナノカプセル)中、またはマクロエマルジョン中に、閉じ込められ得る。このような技術は、Remington,The Science and Practice of Pharmacy 20th Ed.Mack Publishing(2000)に記載される。
【0164】
徐放性調製物が、調製され得る。徐放性調製物の適切な例としては、その抗体を含む固相疎水性ポリマーの半透過性マトリクス(このマトリクスは、成形されたもの(例えば、フィルムまたはマイクロカプセル)の形態である。徐放性マトリクスの例としては、ポリエステル、ヒドロゲル(例えば、ポリ(2−ヒドロキシエチルーメタクリレート)またはポリ(ビニルアルコール)(poly(v nylalchol))、ポリラクチド(米国特許第3,773,919号)、L−グルタミン酸と7エチル−L−グルタメートとのコポリマー、非分解性エチレン酢酸ビニル、分解性乳酸−グリコール酸コポリマー(例えば、LUPRON DEPOTTM(乳酸−グリコール酸コポリマーと酢酸ロイプロリドとからなる注射可能な微小球))、酢酸イソ酪酸スクロース、ならびにポリ−D−(−)−3ヒドロキシ酪酸が挙げられる。
【0165】
インビボで使用される処方物は滅菌でなければならない。これは、例えば、滅菌の濾過膜を通過させる濾過によって容易に達成される。治療用の抗NGFアンタゴニスト(例えば、抗NGF抗体)組成物は、通常、滅菌アクセスポートを有する容器(例えば、静脈内溶液バッグ、または皮下注射用の注射針によって孔を空けることができるストッパーを有しているバイアル)に入れられる。
【0166】
本発明による組成物は、経口投与、非経口投与、または直腸投与、あるいは吸入または送気による投与のための、錠剤、丸剤、カプセル剤、散剤、顆粒剤、液剤もしくは懸濁剤、または坐剤のような単位投薬形態であり得る。
【0167】
錠剤のような固形の組成物を調製するためには、主要な活性成分が薬学的キャリア、例えば、従来の錠剤形成成分(例えば、トウモロコシ澱粉、乳糖、スクロース、ソルビトール、タルク、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、第二リン酸カルシウム、またはガム)および他の薬学的希釈剤(例えば、水)と混合され、本発明の化合物またはその非毒性の薬学的に受容可能な塩の均質な混合物の均質な混合物を含む固形の予備処方組成物が形成される。これらの予備処方組成物を均質であるという場合には、活性成分が組成物全体に均一に分散させられており、その結果、組成物を錠剤、丸剤、およびカプセル剤のような等しい有効単位投薬形態に容易に分割することができることを意味する。その後、この固形の予備処方組成物は、0.01mg〜0.1mgから約500mgまでの本発明の活性成分を含む上記の型の単位投薬形態へと分割される。新規の組成物の錠剤または丸剤は、コーティングされ得るか、または別の方法で、持続性の作用の利点を与える投薬形態を生じるように調合され得る。例えば、錠剤または丸剤は、内部投薬成分と外部投薬成分とを含み得、後者は、前者を覆う外皮の形態である。これらの2つの成分を、胃での分解には抵抗性があり、内部性分を完全なまま十二指腸へと通過させるか、または放出を遅らせるように作用する腸溶層によって分離され得る。種々の材料を、このような腸溶層およびコーティングに使用し得、このような材料としては、多数の重合性の酸、およびシェラック、セチルアルコール、および酢酸セルロースのような材料との重合性の酸の混合物のメンバーが挙げられる。
【0168】
本発明の組成物が、経口的にかまたは注射によって投与されるために組み込まれ得る、液体形態としては、水溶液、適切に矯味矯臭されたアジュバント、水性懸濁液もしくは油性懸濁液、ならびに食用油(例えば、綿実油、ゴマ油、ヤシ油、または落花生油)との矯味矯臭されたエマルジョン、ならびにエリキシルおよび類似の薬学的ビヒクルが挙げられる。水性懸濁液のために適切な分散剤または懸濁剤としては、合成ゴムおよび天然ゴム(例えば、トラガカント、アカシア、アルギネート、デキストラン、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ポリビニルピロリドンまたはゼラチン)が挙げられる。活性成分はまた、非常に粘性の制御放出製品(例えば、酢酸イソブチル酸スクロースなど)に組み込まれ得る。これらの処方物は、経口投薬または注射のいずれかのために使用され得る。注射は、薬物の局所デポーを生じ得、これは、1日〜3ヶ月の期間にわたって、局所的に放出される。
【0169】
注射によって投与するための組成物としては、活性成分としてNGFアンタゴニストおよびNSAIDを、表面活性剤(または湿潤剤もしくは界面活性剤)と組み合わせて、またはエマルジョンの形態(油中水エマルジョンまたは水中油エマルジョンとして)で含有する組成物が挙げられる。
【0170】
適切な界面活性剤として、具体的に、非イオン性薬剤(例えば、ポリオキシエチレンソルビタン(例えば、TweenTM20、40、60、80、または85)、および他のソルビタン(例えば、SpanTM20、40、60、80、または85)が挙げられる。界面活性剤を含む組成物は、好都合には、0.05%と5%との間、または0.1%と2.5%との間の界面活性剤を含み得る。必要である場合には、他の成分、例えば、マンニトールまたは他の薬学的に受容可能なビヒクルを添加し得ることは明らかである。
【0171】
適切なエマルジョンは、IntrapidTM、LiposynTM、InfonutrolTM、LipofundinTM、およびLipiphysamTMのような、市販されている脂肪エマルジョンを使用して調製され得る。活性成分は、予め混合したエマルジョン組成物中に溶解され得るか、あるいは、活性成分は、油(例えば、大豆油、ベニバナ油、菜種油、胡麻油、コーン油、またはアーモンド油)およびリン脂質(例えば、卵のリン脂質、大豆リン脂質、または大豆レシチン)と水の混合の際に形成されるエマルジョン中に溶解され得るかのいずれかである。エマルジョンの張度を調節するために他の成分(例えば、グリセロールまたはグルコース)が添加され得ることは明らかである。適切なエマルジョンは、代表的に、20%までの油、例えば、5%と20%との間の油を含む。脂質エマルジョンは、0.1μmと1.0μmとの間、具体的には、0.1μmと0.5μmとの間の脂質の液滴を含み得、5.5から8.0までの範囲のpHを有し得る。
【0172】
いくつかの実施形態においては、エマルジョン組成物は、神経成長因子アンタゴニストを、IntralipidTMまたはその成分(大豆油、卵のリン脂質、グリセロール、および水)と混合することによって調製されたものである。
【0173】
吸入または送気のための組成物としては、薬学的に受容可能な水性溶媒または有機溶媒中の溶液および懸濁液、またはそれらの混合物、ならびに粉末が挙げられる。液体または固体の組成物は、上記に示されたような適切な薬学的に受容可能な賦形剤を含み得る。組成物は、局所または全身的な効果のために、経口または鼻腔の呼吸経路によって投与される。好ましくは、滅菌の薬学的に受容可能な溶媒中のものである、組成物は、気体を使用することによって噴霧することができる。噴霧された溶液は、噴霧デバイスから直接吸い込むことができるか、または噴霧デバイスを、フェイスマスク、テント、もしくは間欠型陽圧呼吸器に取り付け得る。溶液、懸濁液、または粉末組成物は、適切な様式で処方物を送達するデバイスから、に投与され得る(経口または鼻腔内が挙げられる)。
【0174】
処置効果は、当該分野で周知の方法によって評価され得る。
【0175】
以下の実施例は、本発明を説明するために提供されるが、本発明を限定しない。
【実施例】
【0176】
(実施例1)
(手術後の疼痛を処置するための、NSAIDと組み合わせた抗NGFモノクローナル抗体での処置)
本発明者らは、手術後の疼痛を模倣する疼痛モデルを使用して、NSAID(イブプロフェン)と組み合わせた抗NGF抗体の効力を評価した。各実験について、200gと220gとの間の体重の16匹の雄性成体Sprague Dawleyラット(Harlan;Indianapolis,IN)を、使用前に、通常な光条件下で、食物および水が随意に摂取できる状態で、少なくとも1週間閉じ込めた。手術前日の、試験チャンバ内での2時間の順化期間の後に、これらのラットを2つの群に分割した:1つは、手術の15時間前に抗体を受け、他方はこの時点でビヒクル(5%ブドウ糖/0.45%生理食塩水USP)を受けた。抗NGFアンタゴニスト抗体911(Hongoら、Hybridoma 19:215−227(2000)を参照のこと)を、体重1kgあたり1mgで与えた。イブプロフェンを、10mg/kg、30mg/kg、100mg/kgおよび300mg/kg(s.c.)の範囲の種々の濃度で、手術の24時間後に全ての動物に与えた。
【0177】
手術は、Brennanら、Pain 64:493−501(1996)によって記載された手順に基づいた。動物を、2%イソフルランと空気との混合物で麻酔し、この麻酔を、ノーズコーンを介して、手術の間維持した。右側の肢の足底表面を、ポビドン−ヨウ素パッドで準備し、そして1cmの中心長手軸方向切開を、皮膚および筋膜を通して、踵の縁部から0.5cmの位置から足先の方へと延びるように作製した。足を固定位置に保持して物差しを用いて、測定を行った。足底筋を、湾曲したピンセットを用いて持ち上げ、そして長手軸方向に切開した。この筋肉を、その全深さを通して、起点と停止との間で切開した。ガーゼパッドを介して適用される圧力によって、手術の間中、出血を制御した。この創傷を、2針のさし縫い縫合(5−0エチコンブラックモノフィラメント)で閉鎖した。これらの縫合糸を5〜6回結び、1回目の結び目を緩く締めた。この創傷部位を、バシトラシン溶液で擦った。動物を、きれいなケージ内で回復させ、そして22時間休ませ、その後、行動試験を開始した。
【0178】
各実験について、動物を2つの群(コントロールおよび抗体処置)に分割した。抗NGF抗体を、手術の15時間前に与えた。安静時の疼痛を、両方の群において、手術の22時間後に評価した(以下のグラフにおける「ベースライン」)。手術後24時間において、全ての動物を、10mg/kg、30mg/kg、100mg/kgまたは300mg/kg(s.c.)のイブプロフェンで処置した。安静時の疼痛を、イブプロフェン処置の1時間後から開始して評価した。
【0179】
安静時の疼痛を、手術後の種々の時点で、累積疼痛スコアを使用して評価した。ラットを、透明なプラスチックケージ内のプラスチックメッシュ(格子:8mm)の上に置き、そして15分〜20分間順化させた。行動を、0〜2の目盛で評価した。足が白くなるかまたはメッシュに押し付けられるかに注目することによって評価されるように、動物が切開された足に体重をかけている場合に、0のスコアを与えた。皮膚が白くもならずへこみもせずに、前足の皮膚がメッシュにちょうど接触する場合に、1のスコアを与えた。足がメッシュから完全に離れて保持される場合に、2のスコアを与えた。各動物を、10分間にわたって5分おきに、1分間観察した。0.5時間の間に得られた6つのスコアの合計(合計0〜12)を使用して、切開された足における疼痛を評価した。
【0180】
これらの実験の結果を、表1および図1に示す。
【0181】
表1:手術の1日後の、1mg/kgの抗NGFアンタゴニスト抗体および0、10mg/kg、30mg/kg、100mg/kgまたは300mg/kgのイブプロフェンでの処置後の、動物における累積疼痛スコア。データは、平均(SEM)として示される。データを、分散の一方向分析によって分析し、次いで、個々の対を、Bonferroni補正を使用して、Prizmソフトウェアを用いる複数の比較のために分析した。
【0182】
【表4】

表1に示されるように、Mab911(1mg/kg)処置についての安静時疼痛スコアは、イブプロフェンなしのコントロールより有意に低かった(p<0.001)。同様に、1mg/kgのMab911および10mg/kgのイブプロフェンでの処置についての、安静時疼痛スコアは、10mg/kgのイブプロフェン単独での処置より有意に低かった(p<0.001);そして1mg/kgのMab911および30mg/kgのイブプロフェンでの処置についての安静時疼痛スコアは、30mg/kgのイブプロフェン単独での処置より有意に低かった(p<0.05)。図1は、1mg/kgの抗NGF抗体での処置ありまたはなし、および種々の用量のイブプロフェンでの処置ありまたはなしの動物において測定された、安静時疼痛スコアを記載する。抗NGF抗体およびイブプロフェンでの、手術前の処置は、安静時疼痛を低下させる際に、イブプロフェン単独または抗体単独での処置よりも有効である。10mg/kgのイブプロフェンと組み合わせたMab911(1mg/kg)処置は、300mg/kgのイブプロフェン単独と少なくとも同程度に有効であることが理解される。
【0183】
手術後の疼痛についての、ジクロフェナクと組み合わせた抗NGFモノクローナル抗体911での処置の効果を試験するために、動物にイブプロフェンの代わりにビヒクルまたは5mg/kgのジクロフェナクを投与したことを除いて、上記のように実験を実施した。その結果を図2に示す。疼痛スコアの減少が、5mg/kgのジクロフェナク単独での処置と比較して、1mg/kgの911と5mg/kgのジクロフェナクとの両方での処置について、平均して、観察された。
【0184】
上記発明は、理解を明瞭にする目的で、説明および例示によっていくらか詳細に記載されたが、これらの記載および実施例は、本発明の範囲を限定すると解釈されるべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0185】
【図1】図1は、NGFアンタゴニスト(抗NGFアンタゴニストMab911;Hongoら、Hybridoma 19:215−227(2000)を参照のこと)と組み合わせて、10mg/kgまたは30mg/kgのS[+]イブプロフェンで処置された動物において、累積的な疼痛の点数が減少したことを示す。動物は、2つの群(コントロール群および抗体処置群)に由来する。NGFアンタゴニストを、外科手術の15時間前に、腹腔内に(時間=−15時間)、1mg/kgの用量で与えた。外科手術は、時間0で記載されるときに行った。安静時の疼痛を、外科手術の24時間後に評価した(グラフ中「0」)。次いで、全ての動物を、10mg/体重1kgまたは30mg/体重1kgのイブプロフェン(45%のβシクロデキストリン液中300mg/ml)で処置した。抗体処置されないコントロール動物もまた、10mg/kg、30mg/kg、100mg/kgおよび300mg/kgのイブプロフェンで処置した。イブプロフェンを、首筋において、皮下に送達した。イブプロフェン投薬の1時間後、安静時の疼痛を試験した。抗NGFアンタゴニスト抗体+イブプロフェンによる処置は、イブプロフェン単独または抗NGFアンタゴニスト抗体単独のいずれかによる処置よりも、安静時の疼痛を減少するのに有効である。
【図2】図2は、NGFアンタゴニスト(抗NGFアンタゴニストMab911;Hongoら、Hybridoma 19:215−227(2000)を参照のこと)と組み合わせて、5mg/kgのジクロフェナクで処置した動物における、累積的な疼痛の点数を示すグラフである。動物を2つの群(コントロール群および抗体処置群)に分けた。NGFアンタゴニストを、外科手術の15時間前に、腹腔内に(時間=−15時間)、1mg/kgの用量で与えた。外科手術は、時間0で記載されるときに行った。安静時の疼痛を、外科手術の24時間後に評価した(グラフ中「0」)。次いで、全ての動物を、5mg/体重1kgのジクロフェナクで処置した。抗体処置されないコントロール動物もまた、5mg/kgのジクロフェナクで処置した。ジクロフェナクを、首筋において、皮下に送達した。ジクロフェナク投薬の1時間後、安静時の疼痛を試験した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
個体における疼痛を処置する方法であって、該方法は、有効量の抗神経増殖因子(NGF)抗体およびNSAIDを該個体に投与する工程を包含する、方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、該NSAIDは、イブフロフェン、ナプロキセン、ナプロシン、ジクロフェナク、ケトプロフェン、トルメチン、スリンダク、メフェナム酸、メクロフェナム酸、ジフルニサル、フルフェニサール、ピロキシム、スドキシカム、イソキシカム、セレコキシブ、ロフェコキシブ、DUP−697、フロスリド、メロキシカム(Meloxicam)、6−メトキシ−2ナフチル酸、MK−966、ナブメトン、ニメスリド、NS−398、SC−5766、SC−58215、T−614からなる群より選択される、方法。
【請求項3】
前記NSAIDが、イブプロフェンである、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記抗NGF抗体が、ヒトNGFに結合する、請求項1、2または3に記載の方法。
【請求項5】
前記抗NGF抗体が、約10nM以下の結合親和性で、ヒトNGFと結合する、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記抗NGF抗体が、ヒト抗体である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記抗NGF抗体が、ヒト化抗体である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記ヒト化抗体は、配列番号1に示される重鎖可変領域および配列番号2に示される軽鎖可変領域を含む抗体である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記疼痛が、手術後の疼痛である、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記疼痛が、手術後の疼痛である、請求項4に記載の方法。
【請求項11】
前記疼痛が、手術後の疼痛である、請求項8に記載の方法。
【請求項12】
疼痛を処置するための薬学的組成物であって、該組成物は、有効量の抗NGF抗体およびNSAID、ならびに薬学的に受容可能なキャリアを含む、薬学的組成物。
【請求項13】
疼痛を処置するためのキットであって、該キットは、
抗NGF抗体、NSAID、ならびに疼痛を処置するために該NSAIDと併用して該抗NGF抗体を投与するための指示書
を備える、キット。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2006−525960(P2006−525960A)
【公表日】平成18年11月16日(2006.11.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−503765(P2006−503765)
【出願日】平成16年2月19日(2004.2.19)
【国際出願番号】PCT/US2004/005162
【国際公開番号】WO2004/073653
【国際公開日】平成16年9月2日(2004.9.2)
【出願人】(505129415)ライナット ニューロサイエンス コーポレイション (33)
【Fターム(参考)】