説明

神経障害の処置のためのアセトアセテートのモノグリセリドおよび誘導体

本発明は、神経代謝低下に関連する神経疾患、たとえばアルツハイマー病、パーキンソン病、フリードライヒ運動失調症(FRDA)、GLUT1欠乏性てんかん、レプレコーニズムおよびラブソン−メンデンホール症候群、大動脈冠動脈バイパス移植(CABG)認知症、麻酔誘発性記憶喪失、加齢性記憶障害(AAMI)、外傷性脳傷害(TBI)、ハンチントン病、および他の多数の疾患を治療、予防、抑制または軽減するために、アセトアセテートのモノグリセリドおよび代謝前駆物質を使用する方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001] 本発明は、神経代謝低下に関連する神経疾患、たとえばアルツハイマー病、パーキンソン病、フリードライヒ運動失調症(Friedreich’s ataxia)(FRDA)、GLUT1欠乏性てんかん、レプレコーニズム(Leprechaunism)およびラブソン−メンデンホール症候群(Rabson−Mendenhall syndrome)、大動脈冠動脈バイパス移植(CABG)認知症、麻酔誘発性記憶喪失、加齢性記憶障害(AAMI)、外傷性脳傷害(TBI)、ハンチントン病、および他の多数の疾患を治療、予防、抑制または軽減する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
[0002] アルツハイマー病
[0003] アルツハイマー病(AD)は、主に高齢者が罹患する進行性神経変性障害である。1984年、BlassおよびZemcov(Blass and Zemcov 1984)は、ADがコリン作動性ニューロンのサブ集団における代謝速度低下から生じると提唱した。しかし、ADはコリン作動系に限定されず、多数のタイプの伝達系および幾つかの別個の脳領域をも伴うことが明らかになった。代謝速度低下はグルコース利用の低下に関係すると思われる。脳イメージング技術によりAD患者の脳における放射性標識グルコースの取込み低下が明らかになった;これらの欠陥は認知症の臨床徴候が起きる以前に十分に検出できる(Reiman, Caselli et al. 1996)。脳グルコース代謝の測定により、AD患者ではグルコース代謝が20〜40%低下し、その結果、危険なほど低いATPレベルになることが指摘されている。
【0003】
[0004] グルコース代謝低下の原因は依然として不確かであるが、アミロイド前駆体タンパク質(APP)のプロセシングに関係している可能性がある。早発型ADにおいてAPPのプロセシングを変化させる変異の関与が示唆されている。早発型症例は60歳以前に発症し、多くの場合3種類の遺伝子:APP、プレセニリン(presenilin)1(PSl)およびプレセニリン2(PS2)における変異を伴う。これらの遺伝子における変異は、APPタンパク質の異常なプロセシングをもたらす(概説については(Selkoe 1999)を参照)。調べた例では、これらの病的変異は脳グルコース代謝の早期欠陥を生じる。APP670/671に二重変異(“スウェーデン変異”)がある個体は側頭葉におけるグルコース代謝の病的低下を示し、これはしばしば認知症の臨床発現以前に顕性になる。APP V717Fトランスジーンを保有するマウスは、脳グルコース代謝に局所的欠陥を示す。プレセニリン遺伝子における変異もグルコース欠乏に対する感受性を直接増大させる可能性がある。
【0004】
[0005] ADにおける脳代謝速度低下を補う試みは、ある程度の成功を達成した。AD患者において血清ケトン体レベルを上昇させると、認知スコア(Reger, Henderson et al. 2004)およびUSPが向上する。しかし、この報告された方法は十分なレベルのケトン体を生成させるために大量の脂肪を投与する必要がある。したがって、大量の脂肪を摂取せずにケトンレベルを上昇させることができる化合物が要望されている。
【0005】
[0006] パーキンソン病(PD)
[0007] パーキンソン病(PD)は進行性神経変性障害であり、アルツハイマー病に次ぐ第2の最も一般的な神経変性疾患である。PDの推定有病率は米国集団全般において0.3パーセントであり、85歳より高齢者においては4〜5パーセントの有病率である。PDは運動異常を特徴とし、これには振戦、筋肉強直、随意運動欠如、および体位不安定が含まれる。PDの主要な神経病理学的特徴は、黒質緻密部(substantia nigra pars compacta)(SNpc)におけるドーパミン作動性ニューロンの損失、および残存するドーパミン作動性ニューロンにおける好酸性細胞質内封入体(レーヴィ体)の存在である。
【0006】
[0008] PDに対する現在の処置には、モノアミンオキシダーゼ−B(MAO−B)阻害薬であるアマンタジン(amantadine)(Symmetrel)、または抗コリン作動薬が含まれる。それらの薬剤は軽度の症状を適度に改善することができる。しかし、細胞損失規模が大きいため、米国神経学会(American Academy of Neurology)(AAN)は、ドーパミン作動性処置が必要な場合にはレボドパまたはドーパミンアゴニストを推奨している。一般に、レボドパは運動能力障害を改善する必要がある者に投与され、一方、ドーパミンアゴニストは運動合併症を軽減させる必要がある者に投与される。一般に、ドーパミンアゴニストは軽度の疾患を伴う比較的若い患者において開始され、一方、レボドパは重篤な運動症状を伴う高齢患者において開始される。
【0007】
[0009] 初期におけるPD処置は比較的成功するとみることができるが、レボドパによる約5年間の処置後に約40パーセントの患者がジスキネジー(すなわち、頭、体幹、四肢、および稀に呼吸筋に関係する、不随意の舞踏病型運動または常同運動)を発現する。患者に個々のレボドパ投与による有益性の減退を特徴とする“消耗(wearing−off)”作用が起きて、パーキンソン病症状が再発する。予測できない唐突な運動状態変動を特徴とする“オン−オフ”作用も患者に起きる場合がある。したがって、PDのためのより有効な処置、特に神経保護性の処置が要望されている。
【0008】
[0010] 散発性PDの原因は不確実であるが、幾つかの系列の証拠により酸化的リン酸化の欠陥がその病因に関与する可能性のあることが示唆される。たとえば、1−メチル−4−フェニル−l,2,3,6−テトラヒドロピリジン(MPTP)はミトコンドリア電子伝達系の複合体I(NADH−ユビキノンオキシドレダクターゼ)を遮断し、ドーパミン作動性ニューロンの損失および典型的なPD症状を引き起こす。複合体I活性の低下はPD組織においても報告されている。この作用は脳にのみ限定されず、PD患者からの血小板にも見いだされた。
【0009】
[0011] D−βヒドロキシブチレート(BHB)は、肝細胞によって、またより少ない程度にではあるが星状細胞によって産生されるケトン体である。BHBは、飢餓などに際してグルコース供給が制限されると脳において代替エネルギー源として作用する。BHBは、酸化的リン酸化を増強することによりMPTP−関連の複合体I阻害から保護することが見いだされた{Tieu, 2003 #295}。
【0010】
[0012] フリードライヒ運動失調症(FRDA)
[0013] FRDAは、進行性の運動失調、肥大性心筋症、インスリン抵抗性糖尿病の早期発症、廃疾、および早死を特徴とする劣性疾患である。FRDAは、フラタキシン(frataxin)、すなわちアミノ酸210個の核コード化ミトコンドリアタンパク質の欠乏により起きる遺伝子障害である。このタンパク質のレベルが低いのは、イントロンGAA反復配列が拡張してmRNAレベルの低下をもたらすことによるものである。FRDA患者はミトコンドリア酵素アコニターゼの活性低下を示す。アコニターゼは、クエン酸からイソクエン酸への変換、すなわちクレブス回路(クエン酸回路またはTCA回路としても知られる)の第1段階に関与する。ヒト患者におけるフラタキシンの欠乏は主にTCA回路の欠陥をもたらすと考えられる。
【0011】
[0014] 最近の研究は、絶食に対する正常な応答である血中ケトン体上昇がミトコンドリアのクエン酸およびイソクエン酸のレベルを上昇させ、したがってFRDAにみられるアコニターゼ遮断を克服できることを示している。ケトン体をベースとする療法は、このグループの患者に有効な処置を提供できるであろう。
【0012】
[0015] GLUTl欠乏性てんかん
[0016] GLUTl欠乏性てんかんは、乳児発作、発達遅延、および精神発育遅滞を伴う後天性小頭症を特徴とする。GLUTl欠乏性てんかんは、GLUTlの遺伝子における幾つかのタイプの変異から起きる。グルコース輸送体1(GLUTl)は、血流から脳内へのグルコース輸送に関与する主要なタンパク質である。標準的な食事条件下では、脳はエネルギーをほぼ完全に血中グルコース(血糖)に依存している。しかし、ある状況、たとえば飢餓状態では、ケトン体がグルコースと異なるエネルギー源を供給することができる。ケトン体は脳内への輸送のためにGLUTlに依存しないので、GLUTl欠乏症候群においてエネルギーを供給できる。したがって、ケトン体療法はこれらの患者の終生治療のための実用的な方法になる可能性がある。
【0013】
[0017] レプレコーニズムおよびラブソン−メンデンホール症候群
[0018] レプレコーニズムおよびラブソン−メンデンホール症候群は、インスリン抵抗性、持続性高血糖および成長遅滞を特徴とする、稀な疾患である。20歳を超えて生存する対象は稀である。これらの症候群はインスリン受容体遺伝子の変異から起き、これによってインスリンに対する受容体の親和性が低下する。現在の処置は漸増用量のインスリン投与からなる(1日当たり最高数千単位)。インスリン受容体へのインスリンの結合が乏しいため、この処置によって弱い効果が得られるにすぎない。ケトン体はインスリンによるPDH多酵素複合体の刺激作用を模倣し、これによりクレブスTCA回路の代謝産物レベルを上昇させ、ATPの形でのエネルギー出力を増大させて、代謝効率を高めることが示された。ケトン強化食またはケトン生成食は、これらの状態の有効な処置となる可能性がある。
【0014】
[0019] 他の疾患および症候群
[0020] 他の多数の疾患および症候群が代謝低下に関連する。そのような状態には、大動脈冠動脈バイパス移植(CABG)認知症、加齢性記憶障害、麻酔誘発性記憶喪失、外傷性脳傷害、ハンチントン病、および他の多数の疾患が含まれる。代謝介入がそのような疾患に罹患している人々を救済できるのは明らかである。
【0015】
[0021] 未解決の要望
[0022] ケトン体をベースとする療法がそのような疾患に適切な可能性はあるが、現在の方法は非実用的または不適切である。ケトン生成食は低い炭水化物摂取量を継続的に厳守する必要があり、これがそれらの遵守を困難にしている。
【0016】
[0023] 1979年、Birkhahnら((Birkhahn, McMenamy et al. 1979))は、彼らがモノアセトアセチン(monoacetoacetin)(MA)と呼んだアセトアセテートのモノグリセリドの合成を記載した。その後の研究(1986)で、Birkhahn、McMemanyおよびBorderはモノアセトアセチンをラットに静脈内投与して、モノアセトアセチンが適切な代替エネルギー源であるかどうかを調べた(Birkhahn, Askari et al. 1986)。
【0017】
[0024] モノアセトアセチンに関する研究がさらにHirakawaらにより行われ、Birkhahnによる研究が拡張された。2004年に公表された研究で、Sawaiらは、幾つかの胃癌細胞系の細胞培養に用いるエネルギー源としてのモノアセトアセチンの作用を調べた(Sawai, Yashiro et al. 2004) (Takahata, Ohira et al. 2004)。
【0018】
[0025] 公表された先行技術はいずれも、神経障害、たとえばアルツハイマー病、パーキンソン病、フリードライヒ運動失調症(FRDA)、GLUT1欠乏性てんかん、レプレコーニズムおよびラブソン−メンデンホール症候群、大動脈冠動脈バイパス移植(CABG)認知症、麻酔誘発性記憶喪失、加齢性記憶障害、外傷性脳傷害、ハンチントン病、またはパーキンソン病の処置のためのモノアセトアセチンの使用に関するものではないことが分かる。モノアセトアセチンをこのような状態の処置のために使用できることは、本発明の新規な洞察である。
【0019】
[0026] Birkhahnらにより関連化合物に関する幾つかの特許出願が提出された。USP 5,420,335、タイトル“水溶性グリセロールビスアセトアセテートをベースとする非経口栄養”が、1995年5月30日に交付された。US patent 5,693,850、タイトル“ヒドロキシ酪酸の栄養性水溶性グリセロールエステル”が、1997年12月2日に交付された。発明者Richard Veechによる一連の特許および特許出願は神経変性障害の処置のための類似化合物に関係し、これらにはUSP 6323237、6316038および6207856、ならびにUS2004/0266872、US2004/0171671およびUS2006/0280721を含む幾つかの特許出願が含まれる。しかし、これらのVeech特許が下記のように教示していることが注目される:“アセトアセテートを形成する1,3−ブタンジオールもグルコース前駆物質であるグリセロールも、正常な酸化還元対D−β−ヒドロキシブチレートの一部ではない”ので、“生理的比率のケトン類を供給すべきである。そうでなければ、その動物全体において肝臓がケトン類の比率をそれ自身のミトコンドリアの自由[NAD+]/[NADH]に従って決定するであろう。異常な比率のケトン類が供給されると、病的結果になる可能性があることは明らかである。”たとえば、US2004/0171671、[0054]節を参照。
【0020】
[0027] したがって、本発明はヒドロキシ酪酸または対応する塩の供給源なしに投与したモノアセトアセチンおよび他のアセトアセテートエステルを用いて、神経変性障害を効果的に処置しうることを示すものであることが分かる。したがって、上記において考察した未解決の要望に対処することができる。
【0021】
[0028] 本明細書中で参照するすべての米国特許および出願の全体を本明細書に援用する。本明細書中で参照する特許および出願の部分リストには、たとえば下記のものが含まれる:USSN 60/953,074,“神経代謝低下を伴うアルツハイマー病その他の疾患におけるゲノム検査”,2007年7月31日出願;USSN 60/917,886,“代謝低下を処置するためのアセチル−CoAカルボキシラーゼ阻害薬”,2007年5月14日出願;USSN 11/123,706,“疾患関連タンパク質のレベルを低下させるための方法”,2005年5月3日出願;USSN 11/424,429,“酸化的損傷を軽減し、ミトコンドリア効率を改善するための方法”,2006年6月15日出願;USSN 10/546,976,“新規化学物質、および代謝障害の処置にそれらを使用するための方法”,2005年8月25日出願;USSN 09/845,741、2001年5月1日出願;USSN 10/152,147、2004年12月28日出願,現在はUSPN 6,835,750;USSN 11/021,920、2004年月12日22出願;USSN 11/331,673、2006年1月13日出願;USSN 11/611,114、2006年12月14日出願;およびUSSN 11/771,431、2007年6月29日出願。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0022】
【特許文献1】USP 5,420,335
【特許文献2】US patent 5,693,850
【特許文献3】USP 6323237
【特許文献4】USP 6316038
【特許文献5】USP 6207856
【特許文献6】US2004/0266872
【特許文献7】US2004/0171671
【特許文献8】US2006/0280721
【特許文献9】USSN 60/953,074
【特許文献10】USSN 60/917,886
【特許文献11】USSN 11/123,706
【特許文献12】USSN 11/424,429
【特許文献13】USSN 10/546,976
【特許文献14】USSN 09/845,741
【特許文献15】USSN 10/152,147(USPN 6,835,750)
【特許文献16】USSN 11/021,920
【特許文献17】USSN 11/331,673
【特許文献18】USSN 11/611,114
【特許文献19】USSN 11/771,431
【非特許文献】
【0023】
【非特許文献1】Blass and Zemcov 1984
【非特許文献2】Reiman, Caselli et al. 1996
【非特許文献3】Selkoe 1999
【非特許文献4】Reger, Henderson et al. 2004
【非特許文献5】Tieu, 2003 #295
【非特許文献6】Birkhahn, McMenamy et al. 1979
【非特許文献7】Birkhahn, Askari et al. 1986
【非特許文献8】Sawai, Yashiro et al. 2004
【非特許文献9】Takahata, Ohira et al. 2004
【発明の概要】
【0024】
[0031] 本発明は代謝低下に関連する疾患の処置方法を含み、この方法は、代謝低下に関連する疾患に罹患している対象に有効量の式1の化合物:
【0025】
【化1】

【0026】
[0032] (式中、Rは独立してヒドロキシルまたはアセトアセテートエステルのいずれかを表わす)またはその医薬的に許容できる塩を含む組成物を、患者の血中ケトン体レベルを上昇させるのに有効な量で投与することを含み、その際、組成物はD−β−ヒドロキシ酪酸またはそれの対応する塩の供給源を含まない。
【0027】
[0033] 他の態様において、D−β−ヒドロキシブチレートとアセトアセテートの生理的比率が正常範囲である患者の血中に、上昇したレベルのケトン体が存在する。代謝低下に関連する可能性のある疾患には、アルツハイマー病、パーキンソン病、フリードライヒ運動失調症、GLUT1欠乏性てんかん、レプレコーニズムおよびラブソン−メンデンホール症候群、大動脈冠動脈バイパス移植認知症、麻酔誘発性記憶喪失、加齢性記憶障害、またはハンチントン病が含まれる。1態様において、式Iの化合物を0.1g/kg/日〜10g/kg/日の範囲の用量で投与する。
【0028】
[0034] 1態様において、投与後の約2時間目に、患者の血中ケトン体レベルが0.2mM〜20mMに上昇している。1態様において、式Iはモノアセトアセチンである。
【0029】
[0035] 本発明方法は、哺乳動物のApoE状態を測定し、その哺乳動物がApoE4(−)である場合にはその哺乳動物を処置のために選択する追加段階をも含む。他の態様において、第2組成物を投与し、その際その組成物が炭水化物源を含む。1態様において、炭水化物源はグルコースである。他の態様においては、前記組成物がさらに炭水化物源を含む。炭水化物源はグルコースであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1A】[0029] 図1Aは、種々の量のモノアセトアセチンを投与したマウスにおける経時的な(時間)β−ヒドロキシブチレートの血中レベル(mM)を示す。
【図1B】図1Bは、種々の量のモノアセトアセチンを投与したマウスにおける経時的な(時間)β−ヒドロキシブチレートの血中レベル(mM)を示す。
【図1C】図1Cは、種々の量のモノアセトアセチンを投与したマウスにおける経時的な(時間)β−ヒドロキシブチレートの血中レベル(mM)を示す。
【図1D】図1Dは、種々の量のモノアセトアセチンを投与したマウスにおける経時的な(時間)β−ヒドロキシブチレートの血中レベル(mM)を示す。
【図2】[0030] 図2は、より高い出発BHBレベルの動物と剖検時のTH+ニューロン数がより多い動物の相関関係を示す。
【発明を実施するための形態】
【0031】
[0036] アルツハイマー病、パーキンソン病、フリードライヒ運動失調症(FRDA)、GLUT1欠乏性てんかん、レプレコーニズムおよびラブソン−メンデンホール症候群、大動脈冠動脈バイパス移植(CABG)認知症、麻酔誘発性記憶喪失、加齢性記憶障害、外傷性脳傷害、ハンチントン病などの障害、および他の多数の疾患を処置することに対する多大な要望がある。たとえば、アルツハイマー病に対する現在の処置ではこの疾患はほとんど遅延または処置されない。本発明に記載するモノアセトアセチンなどの化合物を含む本発明組成物のようなケトン体前駆物質の使用は、多くの未解決の医療要望を解決するであろう。
【0032】
[0037] 本発明者らは、中鎖トリグリセリド(MCT)の経口投与によるケトーシス誘導が、軽度ないし中等度のほぼ確実なアルツハイマー病対象の認知性能を改善することを先に示した(US patent 6,835,750;Reger, 2004 #136)。しかし、この処置は大量のMCTを投与する必要があり、若干の腸窮迫を引き起こす可能性がある。本出願において本発明者らは、MCT投与に伴う問題の多くを解決する新規発明を開示する。
【0033】
[0038] 本発明は、下記によって高ケトン血を誘発することを記載する;哺乳動物に有効量の式1の化合物:
【0034】
【化2】

【0035】
[0039] (式中、Rは独立してヒドロキシルまたはアセトアセテートエステルのいずれかを表わす)またはその医薬的に許容できる塩を含む組成物を、患者の血中ケトン体レベルを上昇させるのに有効な量で投与することを含み、その際、組成物はD−β−ヒドロキシ酪酸またはそれの対応する塩の供給源を含まない。式1の化合物は、代謝低下に関連する疾患の処置方法としても有用である。1態様において、本発明はモノアセトアセチン(2,3−ジヒドロキシプロピル 3−オキソブタノエート)の経口および静脈内投与を含む。他の態様において、本発明はグリセリルビスアセトアセテート(アセトアセテートのジグリセリド)を含む。他の態様において、本発明はアセトアセテートのトリグリセリドを含む。式1による化合物は、哺乳動物において循環ケトン体レベルを上昇させ、これが神経変性障害および代謝低下障害の処置のために有用である。
【0036】
[0040] ある態様において、代謝低下に関連する疾患は下記のいずれであってもよい:アルツハイマー病、パーキンソン病、フリードライヒ運動失調症、GLUT1欠乏性てんかん、レプレコーニズムおよびラブソン−メンデンホール症候群、大動脈冠動脈バイパス移植認知症、麻酔誘発性記憶喪失、加齢性記憶障害、外傷性脳傷害、またはハンチントン病。1態様において、処置すべき代謝低下に関連する疾患はアルツハイマー病である。
【0037】
[0041] モノアセトアセチンおよび他の化合物を製造する方法は当技術分野で既知である。
【0038】
[0042] 本発明者らは、モノアセトアセチンを経口供給すると血清ケトン体、特にβ-ヒドロキシブチレート(βHB)が増加することを示した。アセトアセテートの前駆物質をそれに対応する酸化還元対であるD−β−ヒドロキシブチレートの供給源なしで供給すると病的結果をもたらす可能性があるということを教示する先行技術にかかわらず、意外にも、インビボで分解してアセトアセテートになるアセトアセテート前駆物質、たとえばモノアセトアセチンを供給すると、神経障害の処置に有効であることが示された。
【0039】
[0043] ケトン体は、脳のニューロンの発達および健康状態に重要な役割を果たす。多数の研究が、哺乳動物新生児の脳の発達のために好ましい基質はケトン体であることを示している(概説については参考文献を参照されたい(Edmond, 1992 #43})。高齢者においてすら、成人の脳によりケトン体が濃度依存性で利用されることを証明する多量の証拠がある。ケトン体が脳においてグルコースを補給する能力は、脳へのグルコース供給能力が低下している状態を処置するために用いられている。GLUT−1は、グルコースを中枢神経系(CNS)へ輸送する構成性グルコース輸送体である。グルコース要求の高い脳は、GLUT−1遺伝子の機能性コピーが2つ存在することを要求する。1つのGLUT−1コピーが非機能性である場合、その結果としてGLUT−1欠乏症候群が起きる。発達中に起きる低グルコースレベルは、乳児発作、発達遅延、および小頭症を生じる。ケトン生成食の供給により血清ケトンレベルを上昇させることによって、これらの症状の部分的軽減を達成することができる。
【0040】
[0044] これらの化合物は脂肪酸の酸化亢進の作用を模倣することができ、式Iの化合物、たとえばモノアセトアセチンが含まれるが、これらに限定されない。アセトアセテートの前駆物質には、そのまま投与した際にアセトアセテートを生成する化合物が含まれる。そのような化合物は、前駆化合物に作用してアセトアセテートを放出する酵素の作用により、またはpH変化、温度もしくは機械的作用により、アセトアセテートを生成することができる。そのような化合物には下記のものが含まれるが、それらに限定されない:アセトアセテートの二量体、三量体または他のオリゴマー;アセトアセテートのエステルならびに糖類;アミドおよび硫黄結合など他の結合を含むもの。
【0041】
[0045] 本発明化合物によるケトーシス誘発がグルコース利用低下に関連する状態を緩和するであろうというのは、本発明の新規な洞察である。
【0042】
[0046] てんかんに関して、先行技術は、脂肪分が高く炭水化物を制限したケトン生成食の記載を示している。要約すると、そのような食事の理由付けは、長鎖または中鎖いずれのトリグリセリドであっても多量の脂肪の摂取は、炭水化物レベルを欠如または制限した高度に計画された食事によって血中ケトンレベルを上昇させることができるというものである。炭水化物およびインスリンの制限は、脂肪組織における再エステル化を阻止すると考えられる。この先行技術とは対照的に、本発明はケトン生成食の概念以外における式Iの化合物、たとえばモノアセトアセチンの投与を提供および主張する。さらに、後記の実施例のセクションは炭水化物を含有する例示配合物を提供する。
【0043】
[0047] ある態様において、本発明化合物は炭水化物源と共投与し、または炭水化物源を共配合することができる。炭水化物源は1種類より多い炭水化物を含むことができる。炭水化物または糖類は一般に直鎖状のアルデヒド類またはケトン類である単純な分子であって、多数のヒドロキシル基が、通常はアルデヒドまたはケトン官能基の一部ではない各炭素原子上に1個付加されている。炭水化物は単糖、二糖、多糖および/またはオリゴ糖であってもよい。本発明に適切な炭水化物は、哺乳動物において消化された際にその炭水化物の少なくとも一部を単糖として生成することができる炭水化物である。1態様において、炭水化物は単糖であり、場合によりグルコース、フルクトースおよび/またはガラクトースである。他の態様において、炭水化物は二糖であり、場合によりショ糖および/または乳糖である。
【0044】
[0048] 代謝補助剤を含有する第1組成物および/または第2組成物を含めた医薬組成物の配合によって、さらに他の有益性を得ることができる。代謝補助剤には、ビタミン、無機質、抗酸化剤および他の関連化合物が含まれる。そのような化合物は下記のものを含むリストから選択できるが、これらに限定されない;アスコルビン酸、ビオチン、カルシトリオール、コバラミン、葉酸、ナイアシン、パントテン酸、ピリドキシン、レチノール、レチナール(レチンアルデヒド)、レチノイン酸、リボフラビン、チアミン、α−トコフェロール、フィチルメナキノン(phytylmenaquinone)、マルチプレニルメナキノン(multiprenylmenaquinone)、カルシウム、マグネシウム、ナトリウム、アルミニウム、亜鉛、カリウム、クロム、バナジウム、セレン、リン、マンガン、鉄、フッ素、銅、コバルト、モリブデン、ヨウ素。したがって、代謝補助剤、ケトン体レベルを上昇させる化合物、およびTCA回路の中間体から選択される成分の組合わせは、アルツハイマー病、パーキンソン病、TBI、ハンチントン病およびてんかんを含めた代謝低下に関連する疾患の治療および予防のために有益であることが証明されるであろう。
【0045】
[0049] 本発明組成物の投与は必要に応じて、または目的に応じて行なうことができる。この組成物は月1回、週1回、1日1回、または1日1回より多く投与することができる。投与は隔日、隔週、隔月、3日目毎、3週目毎、3カ月目毎、4日目毎、4週目毎、4カ月目毎などであってもよい。投与は1日多数回であってもよい。通常の食事要求に対するサプリメントとして投与する場合、この組成物を哺乳動物に直接投与するか、さもなければ毎日の食物または飲料と接触または混合することができる。毎日の食物または飲料として用いる場合、投与手法は当業者に既知であろう。投与は規則的に、たとえば哺乳動物における処置計画の一部として実施することもできる。処置計画は、哺乳動物に前記の特性を増強するのに有効な量の本発明組成物を規則的に摂取させることを含んでもよい。規則的摂取は、1日1回、もしくは1日2回、3回、4回、またはそれより多い回数で、毎日または毎週の基準で行なうものであってもよい。規則的摂取は、隔日または隔週、3日目毎または3週目毎、4日目毎または4週目毎、5日目毎または5週目毎、6日目毎または6週目毎であってもよく、そのような計画において投与は1日多数回であってもよい。規則的投与の目標は、本明細書に例示するように哺乳動物に最適用量のいずれかの本発明組成物を供給することである。
【0046】
[0050] 本発明において提供される組成物は、1態様においては“長期”摂取のためのものであり、これを時には本明細書中で“長い”期間と記載する。本発明において用いる長期投与は、一般に1カ月を超える期間を表わす。2、3または4カ月より長い期間も本発明の1態様を構成する。より長い期間を含む態様も含まれ、これには5、6、7、8、9または10カ月が含まれる。11カ月または1年を超える期間も含まれる。2、3、4、5、6、7、8、9、10、12、14、16、18、20年またはより多数年にわたる、より長期の使用も含まれるものとする。ある場合には、患者がその生涯の残りの期間、前記に述べたように規則的基準で本発明組成物を摂取し続けることも考慮される。本明細書中で用いる規則的基準でとは、組成物を少なくとも週1回投与または摂取することを表わす。より頻繁な投与または摂取、たとえば週2回または3回も含まれる。少なくとも1日1回の摂取を含む計画も含まれる。達成される血液(尿または脳脊髄液)中のケトン体レベルまたは比ケトン体が投与頻度を決定するために有用な尺度であることは、当業者に認識されるであろう。本明細書中に明瞭に例示されているかどうかにかかわらず、測定化合物の血中レベルを許容範囲内に維持できる頻度はいずれも本発明に有用であるとみなすことができる。投与頻度が摂取または投与される組成物の関数であること、およびある組成物は測定化合物(たとえばケトン体)の目的とする血中レベルを維持するために、より多いかまたは少ない頻度での投与が必要であることは、当業者に認識されるであろう。
【0047】
[0051] 一般に有効量は、(1)処置したい疾患の症状を軽減するために、または(2)処置したい疾患の処置に関連する薬理学的変化を誘発するために有効な量である。たとえばアルツハイマー病について、有効量には下記のために有効な量が含まれる:認知スコアを向上させる;認知症の進行速度を低下させる;または罹患した患者の余命を延長する。有効量は、特定の生物学的結果を達成するのに有効な、本明細書に記載する化合物または組成物の量も表わす。前記のある状態の処置に関する有効性は、少なくとも1つの神経心理テストについて改善された結果によって評価することができる;このテストには、たとえば、アルツハイマー病、パーキンソン病、フリードライヒ運動失調症、GLUT1欠乏性てんかん、レプレコーニズムおよびラブソン−メンデンホール症候群、大動脈冠動脈バイパス移植認知症、麻酔誘発性記憶喪失、加齢性記憶障害、またはハンチントン病を含む代謝低下に関連する疾患の評価のための当技術分野で既知のいずれかの神経心理テストが含まれる。そのような神経心理テストの例には、ADAS−cog、MMSE、ストループ・色と語の干渉タスク(Stroop Color Word Interference Task)、ウェクスラー記憶スケールIIIの論理記憶サブテスト(Logical Memory subtest of the Wechsler Memory Scale−III)、臨床医の認知症評価(Clinician’s Dementia Rating)、および臨床医の問診に基づく変化印象(Clinician’s Interview Based Impression of Change)が含まれる。前記状態の処置に関する有効性には、当技術分野において適切ないずれかの手段により測定した脳の適正な生理活性、たとえば精神安定性、記憶/想起能力、問題解決能力、推理能力、思考能力、判断能力、学習能力、認識(perception)、直観(intuition)、意識性(awareness)、注意力の改善が含まれる。
【0048】
[0052] 上記カテゴリーまたは特定タイプの質のいずれかが個体において衰退することは、一般に質または機能の改善または向上に反する。本発明組成物の“有効量”(前記に述べたとおり)は、衰退を阻止し、衰退の程度もしくは速度を低下させ、または衰退の開始もしくは進行を遅延させ、またはそれ以前の衰退から改善をもたらすのに必要な量であってもよい。衰退の阻止、低下または遅延は、処置を受けていないコホートに対比して考慮することができる。衰退の阻止、低下または遅延は、個体基準で、またはある態様においては集団基準で測定および考察することもできる。
【0049】
[0053] 好ましい態様において、ケトン生成化合物は、多様な容器に入れた投与単位を含む、投与に好都合な組成物の製剤で提供される。ケトン生成化合物、たとえばモノアセトアセチンの用量は、好ましくは、前記に述べた代謝低下に関連する疾患、たとえばアルツハイマー病、パーキンソン病、フリードライヒ運動失調症、GLUT1欠乏性てんかん、レプレコーニズムおよびラブソン−メンデンホール症候群、大動脈冠動脈バイパス移植認知症、麻酔誘発性記憶喪失、加齢性記憶障害、外傷性脳傷害、またはハンチントン病に罹患している患者の認知能力を向上させるのに十分なケトン体濃度を生じるために有効な量で投与される。
【0050】
[0054] 1態様においては、ケトン生成化合物を経口投与する。他の態様においては、ケトン生成化合物を静脈内投与する。たとえばモノアセトアセチンおよび/または他のケトン生成化合物の製剤の経口投与は、当技術分野で既知である。
【0051】
[0055] 1態様において、本発明組成物はいずれも、哺乳動物または患者において少なくとも1つのタイプのケトン体の循環濃度を上昇させる。1態様において、循環ケトン体はD−β−ヒドロキシブチレートである。他の態様において、循環ケトン体は、正常な酸化還元対であるD−β−ヒドロキシブチレート/アセトアセテートの等モル混合物である。1態様においては、肝臓はそれ自身のミトコンドリアの自由[NAD+]/[NADH]に従ってケトン体の比率を調整する。循環ケトン体(単数または複数)の量を投与後の多数の時点で測定することができ、1態様においては血中ピーク濃度付近と推定される時点で測定するが、推定血中ピーク濃度レベルの前または後にも循環ケトン体を測定することができる。ある態様において、測定する循環ケトン体はD−β−ヒドロキシブチレート;アセトアセテー;または両方であってもよい。これらのオフピーク時点でのこれらの種のいずれかの測定量を、次いで場合により推定ピーク時点での推定レベルを反映するように調整する。1態様において、推定ピーク時点は約2時間目である。ピーク循環血中レベルおよびタイミングは、当業者に既知の要因に応じて変動する可能性がある;これには、当業者に既知のように、個体の消化速度、食物、飲料などの共摂取または前摂取または後摂取が含まれる。
【0052】
[0056] 1態様において、D−β−ヒドロキシブチレート種の到達ピーク血中レベルは約0.05ミリモル濃度(mM)〜約50mMである。D−β−ヒドロキシブチレートのピーク血中レベルが血液中で約0.05〜約50mMに上昇しているかどうかを判定するための他の方法は、D−β−ヒドロキシブチレートの尿排量を測定するものであり、この場合は上記の血中レベルに対応するレベルは約5ミリグラム/デシリットル(mg/dL)〜約160mg/dLの範囲である。他の態様においては、D−β−ヒドロキシブチレートのピーク血中レベルを約0.15〜約2mM、約0.15〜約0.3mMに上昇させる。他の態様においては、D−β−ヒドロキシブチレートのピーク血中レベルを少なくとも約0.05mMに、少なくとも約0.1mMに、少なくとも約0.15mMに、少なくとも約0.2mMに、少なくとも約0.5mMに、少なくとも約1mMに、少なくとも約2mMに、少なくとも約2.5mMに、少なくとも約3mMに、少なくとも約4mMに、少なくとも約5mMに、少なくとも約10mMに、少なくとも約20mMに、少なくとも約30mMに、少なくとも約40mMに、少なくとも約50mMに上昇させる。他の態様において、少なくとも1つのタイプのケトン体の循環濃度は約0.1mMのレベル;0.1〜50mMの範囲、0.2〜20mMの範囲、0.3〜5mMの範囲、および0.5〜2mMの範囲である。
【0053】
[0057] ある態様では有効量の第1組成物における、本発明組成物のための化合物、すなわちケトン体濃度を上昇させることができる化合物の有効用量は当業者に明らかであり、血中の生成ケトン体の量を測定することによって簡便に測定できる。ケトン体レベルを上昇させることができる化合物がモノアセトアセチンである場合、1態様においてモノアセトアセチンの用量は0.05g/kg/日〜10g/kg/日の範囲のモノアセトアセチンであろう。他の態様において、用量は0.25g/kg/日〜5g/kg/日の範囲のモノアセトアセチンであろう。他の態様において、用量は0.5g/kg/日〜2g/kg/日の範囲のモノアセトアセチンであろう。他の態様において、用量は0.1g/kg/日〜2g/kg/日の範囲であろう。他の態様において、モノアセトアセチンの用量は、少なくとも約0.05g/kg/日、少なくとも約0.1g/kg/日、少なくとも約0.15g/kg/日、少なくとも約0.2g/kg/日、少なくとも約0.5g/kg/日、少なくとも約1g/kg/日、少なくとも約1.5g/kg/日、少なくとも約2g/kg/日、少なくとも約2.5g/kg/日、少なくとも約3g/kg/日、少なくとも約4g/kg/日、少なくとも約5g/kg/日、少なくとも約10g/kg/日、少なくとも約15g/kg/日、少なくとも約20g/kg/日、少なくとも約30g/kg/日、少なくとも約40g/kg/日、少なくとも約50g/kg/日である。
【0054】
[0058] 好都合な単位量容器および/または製剤には、特に錠剤、カプセル剤、ロゼンジ、トローチ剤、ハードキャンディー、栄養バー、栄養ドリンク剤、計量式スプレー剤、クリーム剤、および坐剤が含まれる。本発明組成物は、医薬的に許容できる賦形剤、たとえばゼラチン、油、および/または他の医薬有効物質(単数または複数)と組み合わせることができる。たとえば本発明組成物を、本発明化合物とは異なる他の治療薬または予防薬と組み合わせること、および/または組み合わせて使用することが有利な場合がある。多くの場合、本発明組成物との併用投与はそのような薬剤の有効性を増強する。たとえば、本発明化合物を抗酸化剤、グルコース利用効率を増大させる化合物、およびその混合物と併用することが有利な場合がある(たとえば、Goodman et al. 1996を参照)。
【0055】
[0059] 好ましい態様においては、ヒト対象に本発明組成物、たとえばモノアセトアセチンを、代謝低下に関連する疾患の治療および発症予防に必要なレベルまで静脈内に直接注入する。静脈内液剤の調製は当業者に周知である。
【0056】
[0060] 追加の代謝補助剤には、エネルギー増強化合物、たとえば補酵素CoQ−10、クレアチン、L−カルニチン、n−アセチル−カルニチン、L−カルニチン誘導体、およびその混合物が含まれる。これらの化合物は、多様な手段でエネルギー産生を増大させる。カルニチンは脂肪酸の代謝を増大させるであろう。CoQl0は、ミトコンドリア内での電子伝達に際して電子伝達体として作用する。したがって、そのような化合物を本発明組成物、たとえばモノアセトアセチンに添加すると、特に栄養欠乏の可能性がある個体において代謝効率が増大するであろう。
【0057】
[0061] 本発明組成物、たとえばモノアセトアセチンを投与すると、大量の炭水化物を同時に摂取した場合ですらケトン体レベルが上昇する(概説については、(Odle 1997)を参照;同様に下記も参照されたい:米国仮特許出願No.60/323,995,“アルツハイマー病その他のニューロン代謝低下に関連する疾患に対する薬物標的”,2001年9月21日出願)。食べるものを慎重にモニターする必要がなく、コンプライアンスがより簡単であるので、本発明方法の利点は明白である。
【0058】
[0062] 1態様において本発明は、本発明組成物、たとえばモノアセトアセチンを含有する組成物と、L−カルニチンまたはL−カルニチン誘導体との共投与を含む。したがって本発明において、たとえばモノアセトアセチンを含有する本発明組成物を、このモノアセトアセチンの利用を増大させるのに必要な用量のL−カルニチンと組み合わせる。L−カルニチンおよびモノアセトアセチンの用量は、ホストの状態、送達方法、および当業者に既知である他の要因に従って異なり、本発明において定める代謝低下疾患を治療および予防するために必要な程度にまで血中ケトンレベルを上昇させるのに十分な量であろう。本発明に使用できるL−カルニチン誘導体には下記のものが含まれるが、これらに限定されない:デカノイルカルニチン、ヘキサノイルカルニチン、カプロイルカルニチン、ラウロイルカルニチン、オクタノイルカルニチン、ステアロイルカルニチン、ミリストイルカルニチン、アセチル−L−カルニチン、O−アセチル−L−カルニチン、およびパルミトイル−L−カルニチン。1態様において本発明は、血中ケトンレベルを上昇させるためのモノアセトアセチンとカルニチンの混合物を含む配合物を提供する。そのような配合物の性質は、投与の期間および経路に依存するであろう。そのような配合物は、0.05g/kg/日〜10g/kg/日のモノアセトアセチンおよび0.05mg/kg/日〜10mg/kg/日のカルニチンまたはその誘導体の範囲にあるであろう。1態様において、モノアセトアセチンの用量は0.05g/kg/日〜10g/kg/日の範囲のモノアセトアセチンであろう。より好ましくは、用量は0.25g/kg/日〜5g/kg/日の範囲のモノアセトアセチンであろう。より好ましくは、用量は0.5g/kg/日〜2g/kg/日の範囲のモノアセトアセチンであろう。ある態様において、カルニチンまたはカルニチン誘導体の用量は0.05g/kg/日〜10g/kg/日の範囲であろう。より好ましくは、カルニチンまたはカルニチン誘導体の用量は0.1g/kg/日〜5g/kg/日の範囲であろう。より好ましくは、カルニチンまたはカルニチン誘導体の用量は0.5g/kg/日〜1g/kg/日の範囲であろう。たとえば配合物および/またはホストに応じて必然的に変更が行われるであろう。
【0059】
[0063] 1態様において、本発明組成物は1〜500gの範囲のモノアセトアセチンを1〜2000mgのカルニチンと組み合わせて含む配合物を含む。モノアセトアセチンの量は、少なくとも約1g、少なくとも約10g、少なくとも約50g、少なくとも約100g、少なくとも約150g、少なくとも約200g、少なくとも約250g、少なくとも約300g、少なくとも約400gであってよい。カルニチンの量は、少なくとも約1mg、少なくとも約50mg、少なくとも約100mg、少なくとも約250mg、少なくとも約500mg、少なくとも約1000mg、少なくとも約1250mg、または少なくとも約1500mgであってよい。よりさらに好ましい配合物は、50gのモノアセトアセチンを50gのモノ−およびジ−グリセリドで乳化したものを、500mgのL−カルニチンと組み合わせて含む。そのような配合物は良好に耐容され、健康なヒト対象において高ケトン血を3〜4時間誘発するであろう。
【0060】
[0064] 他の態様において、本発明はさらに患者の遺伝子型または特定の対立遺伝子の判定を含む。この方法はさらに、この判定の結果に基づいて処置のための患者を選択することを含む。1態様において、アポリポタンパク質E遺伝子について患者の対立遺伝子を判定する。ある例において、モノアセトアセチンを含有する本発明組成物で高いケトン体レベルを誘発した場合、非−E4保有者がE4対立遺伝子をもつ者より良好な効果を示すことを本発明者らは教示する。さらに、E4対立遺伝子をもつ者はより高い空腹時ケトン体レベルをもち、そのレベルは2時間の間に上昇し続けた。したがって、E4保有者はより高いケトンレベルを必要とする可能性または存在するケトン体の利用能力を高める薬剤を必要とする可能性がある。したがって、E4対立遺伝子をもつ者についての1態様において、投与量には、脂肪、モノアセトアセチンまたはケトン体の利用を増大させる薬剤と組み合わせた、モノアセトアセチンの用量が含まれる。脂肪酸の利用を増大させる薬剤の例は、非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)、スタチン系薬物(たとえばリピトール(Lipitor)(登録商標)およびゾコール(Zocor)(登録商標))およびフィブレート(fibrate)類からなる群からから選択できるが、これらに限定されない(本明細書中の他の箇所で考察)。
【0061】
[0065] 本発明の他の態様において、患者のケトン体濃度を上昇させることができる化合物、たとえばモノアセトアセチン、ならびに追加の療法薬、たとえば抗アルツハイマー病薬、抗糖尿病薬、脂質の利用を増大させることができる薬剤、抗アテローム硬化症薬、抗高血圧症薬、抗炎症薬、抗肥満症薬、およびその組合わせを含む医薬組成物の製剤から、さらに有益性を得ることができる。1態様において、これら他の療法薬はアルツハイマー病、パーキンソン病、外傷性脳傷害、ハンチントン病またはてんかんの処置に用いられているものである。
【0062】
[0066] 本発明のある方法において、本発明のケトン生成化合物と療法薬(単数または複数)、または第1組成物と第2組成物の両方を、それぞれ常法により哺乳動物(たとえば、ヒト、男性または女性)に投与する。本明細書に述べる各組成物の投与は、その組成物および/または化合物について当技術分野で既知である現行プロトコル、推奨または計画に従った剤形および計画で行なうことができる。この態様において、本発明のケトン生成化合物および療法薬(単数または複数)の投与は、それぞれに固有のプロトコルおよび/または投薬計画に従って行われるであろう;ただし、本発明のケトン生成化合物および療法薬(単数または複数)の投与が特定の哺乳動物において特定の処置計画期間中に少なくとも部分的にオーバーラップするように行われるであろう。1態様において、本発明のケトン生成化合物および療法薬(単数または複数)の投与は、処置計画期間中に実質的にオーバーラップする。1態様において、第1組成物と第2組成物についての処置計画は、本明細書に記載する有益な効果が起きるために十分なほどオーバーラップするであろう。
【0063】
[0067] 本発明のケトン生成化合物および療法薬(単数または複数)を同一の経口剤形中で、または同時に摂取される別個の剤形中で、一緒に使用することもできる。前記の組成物を1日1〜4回の単回または複数回投与で投与することができる。患者を低用量の組合わせから出発し、徐々に高用量の組合わせへ増量することを推奨できる。
【実施例】
【0064】
[0068] 以下の実施例は説明のために提示するにすぎず、本発明の範囲を限定するためのものではない。
【0065】
実施例1
[0069] マウス薬物動態(PK)試験
[0070] 本発明者らは、モノアセトアセチンをマウスに経口(po)および腹腔内(ip)投与した後、種々の時点でケトン体の血中レベルを調べた。
【0066】
[0071] 6〜7週令のICR雄マウスを用いた。各マウスは体重20〜30グラムであった。動物をケージ当たり3匹ずつ収容し、投薬前に少なくとも3日間順化させた。マウスに1回経口用量(2.5、5および10ml/kgの範囲)の化合物、または1回腹腔内用量(lg/kg)の化合物を投与した。動物を15、30、60および180分の時点で採血のために麻酔した。全血(約0.4ml)を心臓穿刺により採集し、ヘパリンナトリウム抗凝固剤(Naヘパリン、1:9の比率)中へ採集した。血液を13,000rpmで8分間遠心して血漿を分離した。血漿を予めラベルを貼ったカラーコード付きエッペンドルフ試験管に移して−70℃で凍結した。動物を毒性の徴候について観察し、臨床所見を記録した。β−ヒドロキシブチレート検出キットを製造業者(StanBio Inc.)の指示に従って用いて、β−ヒドロキシブチレート(BHB)の血漿レベルを測定した。
【0067】
[0072] モノアセトアセチン(本明細書中でAC−0523とも記載する)は、15分という早期に循環BHBレベルの有意の上昇をもたらした(図1A〜Dを参照)。
【0068】
実施例2
[0073] ラットモデルにおいて血清ケトンレベルを上昇させるためのモノアセトアセチンの使用
[0074] Sprague−Dawleyラットに標準的な市販のラット用固形飼料を与える。15日間の順化後、2グループのラットにl〜5g/kg/日のモノアセトアセチンを含有する実験食を与える。対照グループは標準的な等カロリー固形飼料で飼育し続ける。
【0069】
[0075] 各ラットの体重を毎日測定する。尿試料を毎日採集し、3−ヒドロキシブチレートを酵素アッセイにより分析する。実験食を5日間与えた後、ラットを安楽死させ、血液試料を採集し、3−ヒドロキシブチレート、アセトアセテートおよびアセトンを標準的な酵素法により分析する。
【0070】
[0076] 安楽死させた時点で採集したラット血漿中のケトン体の濃度を酵素法により測定する。対照グループは、予想どおり3−ヒドロキシブチレートおよびアセトアセテートの正常濃度、約0.02〜0.07mMを示す。モノアセトアセチンを与えたラットは、予想どおり上昇した3−ヒドロキシブチレート、アセトアセテートおよびアセトン濃度をもつ。これらの結果は、モノアセトアセチンを与えたラットがそれらの血液中に上昇したレベルのケトン体をもつことを示す。
【0071】
[0077] モノアセトアセチンを与えたラットの尿中の3−ヒドロキシブチレート濃度は、GC−MSによりそれぞれ約1〜10mMと測定される。対照ラットの尿中には3−ヒドロキシブチレートを検出できない。これらの結果は、モノアセトアセチンの経口投与が血中および尿中のケトン体濃度を上昇させることを示す。
【0072】
実施例3
[0078] MPTP病変マウスにおける神経保護効果
[0079] AC−0523の可能な療法効力を調べるために、パーキンソン病(PD)のマウスモデルにおいてAC−0523の神経保護効果の効力を検査する小規模パイロット実験を実施した。l−メチル−4−フェニル−l,2,3,6−テトラヒドロピリジン(MPTP)は、ミトコンドリア電子伝達系の複合体I(NADH−ユビキノンオキシドレダクターゼ)を遮断し、典型的なPDの症状およびドーパミン作動性ニューロンの損失を引き起こす。
【0073】
[0080] MPTPを全身注射すると、MPP+に変換されて、黒質線条体のドーパミン(DA)神経終末の喪失を生じ、最終的に線条体ドーパミン作動性ニューロンの死に至る。この神経病態はヒトPD患者のドーパミン脱神経線条体における状態を模倣し、活動亢進および体位不安定性を生じる。チロシンヒドロキシラーゼ(TH)、すなわちドーパミン産生の触媒作用に関与する酵素のアッセイ、およびSNcにおけるTH含有細胞の定量を実施して、線条体ドーパミン作動性神経変性の程度を測定する。チロシンヒドロキシラーゼはドーパミン作動性神経線維の信頼できるマーカーであり、ヒトPD患者およびこの疾患の動物モデルの両方において減少することが認められている。
【0074】
[0081] 平行グループ方式を採用した。施設に順化させた後、被験動物をロータロッド(Rotarod)および活動タスクについて試験した。試験処理の2日目に、すべての被験動物に8日間の腹腔内MPTPまたは生理食塩水投与を開始した。MPTPまたは生理食塩水による処理の15分前および2.75時間後に、被験動物に試験化合物または生理食塩水を投与した。処理の1日目および9日目に、その後のβ−ヒドロキシブチレートのモニタリングのために採血した。処理の11日目にすべての被験動物を安楽死させ、少数の被験動物について組織検査を実施した。
【0075】
[0082] AC−0523は、チロシンヒドロキシラーゼ(TH)発現細胞をMPTP毒性から保護した。AC−0523で処理した動物は(111±20)のTH+ニューロン平均密度をもち、これは生理食塩水処理動物(111±11)に匹敵し、MPTPで処理した動物(78±12)より高かった(下記の表を参照)。
【0076】
【表1】

【0077】
[0083] 一般に、出発BHBレベルの高い動物ほど、剖検時に多数のTH+ニューロンをもっていた;これも、AC−0523がこれらの条件下で神経保護性であることを証明していた(図2の相関関係を参照)。
【0078】
[0084] MPTP結論
[0085] MPTP処理した被験動物におけるAC−0523の神経保護の役割が支持される。AC−0523をも投与したMPTP処理マウスのSNcにおけるTH+細胞数は、生理食塩水またはAC−1202のみを投与されたMPTP処理マウスより高く、MPTPを投与されなかったマウスに匹敵した。尾状被殻(caudate−putamen)のTH密度は、MPTPと生理食塩水で処理した動物において最低であり、MPTPとAC0523を投与された被験動物において最高であった。
【0079】
実施例4
[0086] アルツハイマー病におけるモノアセトアセチンの安全性、耐容性および有効性の評価
[0087] 軽度ないし中等度のほぼ確実なアルツハイマー病被験者にモノアセトアセチンを1日1回、90日間投与する。ランダム化二重盲検式プラセボ対照付き平行多センター方式を採用する。最高4週間のスクリーニング期間後、被験者に化合物2またはプラセボのいずれかを90日間投与し、続いて2週間のウォッシュアウト期間を置く。
【0080】
[0088] 被験者は、軽度ないし中等度のほぼ確実なアルツハイマー病を伴うと診断された100人の外来患者である。プロトコルの二重盲検期間中に、50人の被験者に有効医薬を投与し、50人の被験者にプラセボを投与する。
【0081】
[0089] モノアセトアセチンまたは調和するプラセボを1日1回、90日間投与する。90日間の投与期間が終了した後、被験者に2週間の投薬ウォッシュアウト期間を置く。各被験者を5回診察する:スクリーニング時、ベースライン、およびベースライン後45、90および104日目。有害事象、生命徴候、体重、理学的検査、12導出ECG、検体検査を調べる。一次転帰計測は下記のものである:アルツハイマー病評価スケール−認知サブスケール(Alzheimer’s Disease Assessment Scale−Cognitive Subscale)(ADAS−Cog)、アルツハイマー病協同試験−臨床医の全般的な変化印象(Alzheimer’s Disease Cooperative Study−Clinician’s Global Impression of Change)(ADCS−CGIC)、およびミニメンタルステート検査(Mini−Mental State Examination)(MMSE)。モノアセトアセチンで処置した被験者は、ADAS−Cog、ADCS−CGICまたはMMSEを含む1以上の転帰計測において改善を示すと予想される。
【0082】
[0090] 0(ベースライン)、45および90日目の投与前および投与後2時間目に、β-ヒドロキシブチレートレベルを測定する。β-ヒドロキシブチレートCminレベルも、スクリーニング時およびウォッシュアウト期間終了時(104日目)に測定する。同意書を提出した被験者についてApoE遺伝子型を調べる。化合物2で処置した被験者は上昇した血清ケトン体レベルを示すと予想される。
【0083】
実施例5
[0091] 栄養ドリンク剤および他の配合物
[0092] A.そのまま飲める飲料(Ready to Drink Beverage).下記の成分を用いて、そのまま飲める飲料を調製する:乳化モノアセトアセチン5〜100g/ドリンク、L−カルニチン250〜1000mg/ドリンク、および嗜好性、安定性などを高めるために用いる多様な矯味矯臭剤その他の成分。
【0084】
[0093] B.粉末飲料.モノアセトアセチンは、フードバー(food bar)および粉末飲料製品に有用な乾燥形態で調製することができる。粉末飲料は下記の成分から調製できる:乾燥乳化モノアセトアセチン10〜50g、L−カルニチン250〜500mg、ショ糖8〜15g、マルトデキストリン1〜5g、矯味矯臭剤0〜1g。
【0085】
[0094] C.フードバー.フードバーは下記のものからなる:乾燥乳化モノアセトアセチン0.1〜50g、L−カルニチン250〜500mg、グリセリン1〜5g、コーンシロップ固形分5〜25g、カカオ2〜7g、コーティング15〜25g。
【0086】
[0095] D.ゼラチンカプセル剤.下記の成分を用いて硬または軟カプセル剤を調製する:モノアセトアセチン0.1〜1000mg/カプセル;L−カルニチン250〜500mg/カプセル;デンプン、NF 0〜600mg/カプセル;流動性粉末状デンプン0〜600mg/カプセル;シリコーン油、350センチストークス 0〜20mg/カプセル。これらの成分を混合し、ふるいにかけ、カプセルに充填する。
【0087】
[0096] E.錠剤.下記の成分を用いて錠剤を調製する:モノアセトアセチン0.1〜1000mg/錠;L−カルニチン250〜500mg/錠;微結晶性セルロース20〜300mg/錠;デンプン0〜50mg/錠;ステアリン酸マグネシウムまたはステアリン酸0〜15mg/錠;ヒュームド二酸化ケイ素0〜400mg/錠;コロイド状二酸化ケイ素0〜1mg/錠;および乳糖0〜100mg/錠。これらの成分をブレンドし、圧縮して錠剤を形成する。
【0088】
[0097] F.懸濁液剤.下記の成分を用いて懸濁液剤を調製する:モノアセトアセチン0.1〜1000mg;L−カルニチン250〜500mg;カルボキシメチルセルロースナトリウム50〜700mg/5ml;安息香酸ナトリウム0〜10mg/5ml;精製水5ml;ならびに必要に応じて着香剤および着色剤。
【0089】
[0098] G.非経口液剤.1.5重量%のモノアセトアセチンおよびL−カルニチンを10容量%のプロピレングリコールおよび水中で撹拌することにより、非経口組成物を調製する。この溶液を塩化ナトリウムで等張にし、殺菌する。
【0090】
[0099] 本発明の記載は説明および記述のために提示され、開示したものがすべてではなく、または本発明をそれらに限定するためのものではない。本発明の範囲は特許請求の範囲によってのみ限定される。多数の改変および変更が当業者に明らかであろう。記載および図示した態様は、本発明の原理、実際の適用を最も良く説明するために、かつ他の当業者が意図する特定の用途に適するように多様に改変した多様な態様について本発明を理解できるように選択された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
代謝低下に関連する疾患の処置方法であって、代謝低下に関連する疾患に罹患している対象に有効量の式1の化合物:
【化1】

(式中、Rは独立してヒドロキシルまたはアセトアセテートエステルのいずれかを表わす)またはその医薬的に許容できる塩を含む組成物を、患者の血中ケトン体レベルを上昇させるのに有効な量で投与することを含み、その際、組成物はD−β−ヒドロキシ酪酸またはそれの対応する塩の供給源を含まない方法。
【請求項2】
D−β−ヒドロキシブチレートとアセトアセテートの生理的比率が正常範囲である患者の血中に、上昇したレベルのケトン体が存在する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
代謝低下に関連する疾患が、アルツハイマー病、パーキンソン病、フリードライヒ運動失調症、GLUT1欠乏性てんかん、レプレコーニズムおよびラブソン−メンデンホール症候群、大動脈冠動脈バイパス移植認知症、麻酔誘発性記憶喪失、加齢性記憶障害、またはハンチントン病である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
式Iの化合物を0.1g/kg/日〜10g/kg/日の範囲の用量で投与する、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
投与後の約2時間目に、患者の血中ケトン体レベルが0.2mM〜20mMに上昇している、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
式Iがモノアセトアセチンである、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
哺乳動物のApoE状態を測定し、その哺乳動物がApoE4(−)である場合にはその哺乳動物を処置のために選択する追加段階を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
第2組成物を投与し、その際その組成物が炭水化物源を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
炭水化物源がグルコースである、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
組成物がさらに炭水化物源を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
炭水化物源がグルコースである、請求項10に記載の方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図1D】
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【図2】
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【公表番号】特表2011−526929(P2011−526929A)
【公表日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−516889(P2011−516889)
【出願日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際出願番号】PCT/US2009/049609
【国際公開番号】WO2010/003114
【国際公開日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【出願人】(502398171)アクセラ・インコーポレーテッド (8)
【Fターム(参考)】