説明

移動ステージ装置

【課題】 X軸方向、Y軸方向のアクチュエータを取り付けた構造全体として、精度よい位置調整を行うことができるようにした移動ステージ装置を提供する。
【解決手段】
ステージテーブル11から分離され、X方向のみに変位することができるとともに、X方向の変位をステージテーブルに伝達することができるX方向主動中間ステージ12に、X方向アクチュエータ37を接続するようにし、同様に、ステージテーブル11から分離され、Y方向のみに変位することができるとともに、Y方向の変位をステージテーブル11に伝達することができるY方向主動中間ステージ14に、Y方向アクチュエータを接続するようにして、X方向アクチュエータ37およびY方向アクチュエータ38がステージテーブルに接続されることに起因して発生するクロストークを回避する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、位置が固定されたベースに支持されるステージテーブルの位置調整を行う移動ステージ装置に関し、さらに詳細には、ステージテーブルを互いに直交するXY方向にナノスケールレベルで位置調整を行う移動ステージ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
試料を載置したステージテーブルを、二次元平面内で互いに直交するX方向およびY方向に沿って移動させる移動ステージ装置(X−Yステージ装置ともいう)は、例えば、走査型プローブ顕微鏡(SPM)の試料ステージや各種工作機械等に利用されている。
二次元平面内を移動させる移動ステージ装置では、X軸制御機構、Y軸制御機構が必要であり、これら2軸を制御する際に互いの軸方向のクロストーク(一方の軸を変位させた時に他方の軸が僅かに変位する現象)を回避する必要がある。そのため、従来、X軸ステージとY軸ステージとを積み重ねた2段構造にすることがなされている。X軸ステージとY軸ステージとを積み重ねた2段構造の装置では、下側のステージは上側のステージの重量を支持することとなり、移動動作に大きな負荷が掛かることとなって、最高移動速度を低下したり、駆動機構を大型にしたりする必要がある等の問題がある。
【0003】
これに対し、ベースと外枠フレーム(ステージ)との間に中間部材(中間フレーム)を配設し、さらに、ベースと中間部材との間にX方向に変位可能な弾性ヒンジを配置し、中間部材と外枠フレーム(ステージ)との間にY方向に変位可能な弾性ヒンジを配置し、コンパクトな構成で、高速かつ高精度の制御を可能としたX−Yステージの支持構造が開示されている(特許文献1参照)。これによれば、X方向及びY方向へ外枠フレーム(ステージ)を駆動するリニアモータなどの適宜の駆動手段を設けることにより、外枠フレーム(ステージ)をX−Y平面内における任意の方向へ微小駆動することができる。
【特許文献1】特開2002−22868号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載されたX−Yステージの支持構造は、弾性ヒンジを用いるとともに、ベースに対して、中間部材や弾性ヒンジが左右前後対称あるいは点対称となるように取り付けられており、その結果、Z方向、X軸回転(θx)、Y軸回転(θy)、Z軸回転(θz)については、「剛体」として機能するようにして、クロストークが発生しないようにしてある。
一方、X方向及びY方向へ外枠フレームを駆動するリニアモータなどの適宜の駆動手段を設けることが記載されているが、これら駆動手段の外枠フレームへの取り付け位置についても、外枠フレームの重量バランスがX軸方向に左右対称、Y軸方向に前後対称になるように配慮して取り付けることが、クロストークを生じないようにするためには必要となる。しかしながら、実際には、X方向に1つの駆動手段が左右いずれか一辺に取り付けられ、Y方向に1つの駆動手段が前後いずれか一辺に取り付けられることにより重量バランスが非対称になる。
駆動手段が非対称に取り付けられる結果、X方向またはY方向のリニアモータが駆動されると、Z軸回転が生じてクロストークが発生することとなる。
【0005】
駆動手段が非対称に取り付けられていることによりクロストークが発生することを、図を用いて説明する。図5は、対称な形状のXステージ、Yステージを、入れ子構造に配置した移動ステージ装置の構成を示す平面図である。すなわち、この移動ステージ装置は、外側にベース50が配置してあり、ベースの内側にX軸ステージ52、さらにその内側にY軸ステージ55が配置してある。ベース50、X軸ステージ52、Y軸ステージ55は、いずれもX方向、Y方向に左右前後対称な方形枠あるいは方形をなしている。
X軸ステージ52は、左辺と右辺それぞれ対称な二箇所で、X軸弾性ヒンジ53a〜53dによってベースと結合しており、さらに左辺中央には、X方向に押圧するためのX軸アクチュエータ51が取り付けられている。
Y軸ステージ55は、前辺と後辺それぞれ対称な二箇所でY軸弾性ヒンジ56a〜56dによってX軸ステージ52と結合しており、さらに前辺中央には、Y方向に押圧するためのY軸アクチュエータ54が取り付けられている。
【0006】
このような構造の移動ステージ装置では、Y軸アクチュエータ54の配置が、X軸アクチュエータ51に対して非対称な配置になっていることに起因して重量バランスが崩れ、クロストークが発生することになる。すなわち、X軸アクチュエータ51を駆動したときにZ軸回転方向のねじれが発生し、微小な変位が発生して、精度よく位置調整ができないという問題があった。
そこで、本発明は、X軸方向、Y軸方向のアクチュエータを取り付けた構造全体として、精度よい位置調整を行うことができるようにした移動ステージ装置を提供するとする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するためになされた本発明の移動ステージ装置は、ステージテーブルから分離され、X方向のみに変位することができるとともに、X方向の変位をステージテーブルに伝達することができるX方向主動中間ステージに、X方向アクチュエータを接続するようにし、同様に、ステージテーブルから分離され、Y方向のみに変位することができるとともに、Y方向の変位をステージテーブルに伝達することができるY方向主動中間ステージに、Y方向アクチュエータを接続するようにして、X方向アクチュエータおよびY方向アクチュエータがステージテーブルに接続されることに起因して発生するクロストークを回避するようにしている。
すなわち、本発明にかかる移動ステージ装置は、ベースに対して移動可能に支持され、互いに直交するX方向およびY方向に駆動するX方向アクチュエータとY方向アクチュエータとによりXY平面内で位置を移動するステージテーブルを備えた移動ステージ装置において、ベースとステージテーブルとの間には、X方向アクチュエータに接続されX方向にのみ駆動されるX方向主動中間ステージと、X方向主動中間ステージと対をなしX方向にのみ従動するX方向従動中間ステージと、Y方向アクチュエータに接続されY方向にのみ駆動されるY方向主動中間ステージと、Y方向主動中間ステージと対をなしY方向にのみ従動するY方向従動中間ステージとの4つの中間ステージが介在し、X方向主動中間ステージおよびX方向従動中間ステージについてはベースに対してX方向のみに変位可能に支持するX方向変位支持手段を有するとともに、ステージテーブルに対してY方向のみに変位可能に支持するY方向変位支持手段を有し、Y方向主動中間ステージおよびY方向従動中間ステージについてはベースに対してY方向のみに変位可能に支持するY方向変位支持手段を有するとともに、ステージテーブルに対してX方向のみに変位可能に支持するX方向変位支持手段を有するようにしている。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ステージテーブルを駆動するX軸アクチュエータ、Y軸アクチュエータは、ステージテーブルから分離された中間ステージに接続されており、X軸アクチュエータが駆動されるときには、Y軸アクチュエータについてはステージテーブルから切り離されており、Y軸アクチュエータが駆動されるときは、X軸アクチュエータについては切り離されているので、アクチュエータに起因する重量バランスの非対称性から発生したねじれが問題にならなくなり、ステージ構造全体として、精度よい位置調整を行うことができる。
【0009】
(その他の課題を解決するための手段および効果)
上記発明において、X方向主動中間ステージおよびX方向従動中間ステージは、それぞれX方向の中心軸に対して左右対称な形状であり、かつ、X方向の中心軸に対して対称な位置に形成された一対のX方向変位支持手段によりベースに対して支持され、かつ、X方向の中心軸に対して対称な位置に形成された1つのY方向変位支持手段によりステージテーブルに対して支持され、Y方向主動中間ステージおよびY方向従動中間ステージは、それぞれY方向の中心軸に対して左右対称な形状であり、かつ、Y方向の中心軸に対して対称な位置に形成された一対のY方向変位支持手段によりベースに対して支持され、かつ、Y方向の中心軸に対して対称な位置に形成された1つのX方向変位支持手段によりステージテーブルに対して支持されるようにしてもよい。
これによれば、X方向主動中間ステージおよびX方向従動中間ステージは、X方向の中心軸に対して、対称な形状にしてあり、かつ、対称な位置に支持されているので、X方向の中心軸に沿ってX方向の荷重を加える(力点が中心軸上)と中間ステージはねじれたり回転したりすることなく正確にX方向に移動するようになる。同様に、Y方向主動中間ステージおよびY方向従動中間ステージは、Y方向の中心軸に対して対称な形状にしてあり、かつ、対称な位置に支持されているので、Y方向の中心軸に沿ってY方向の荷重を加えるとねじれたり回転したりすることなく正確にY方向に移動するようになる。
【0010】
上記発明において、X方向変位支持手段およびY方向変位支持手段は、ベースと中間ステージとの間、および、ステージテーブルと中間ステージとの間に介在する副従動ステージと、副従動ステージとベース、副従動ステージと中間ステージ、副従動ステージとステージテーブルとの部材間を接続する弾性ヒンジ機構とから構成されるようにしてもよい。
ここで、弾性ヒンジ機構とは、荷重が加えられる方向を軸方向(この軸をヒンジ軸という)として、ヒンジ軸方向に対しては、ヒンジ自体は伸縮や曲がり等の変形が生じず、加えられた荷重をそのままヒンジ軸方向に伝達することができ、ヒンジ軸方向と垂直方向に対しては弾性的に変形する構造を有しているヒンジを用いた機構をいう。
この発明によれば、ベースと中間ステージとの間、あるいはステージテーブルと中間ステージとの間を、直接、弾性ヒンジで接続するのではなく、副従動ステージを介在させて接続する。すなわち、ベースと中間ステージとの間は、ベース、弾性ヒンジ機構、副従動ステージ、弾性ヒンジ機構、中間ステージの順で接続するようにし、また、ステージテーブルと中間ステージとの間は、ステージテーブル、弾性ヒンジ機構、副従動ステージ、弾性ヒンジ機構、中間ステージの順で接続するようにする。これにより、ベースと中間ステージ、ステージテーブルと中間ステージとの間では、中間ステージが変形することなく、また、弾性ヒンジ機構自体が軸方向に伸縮することなく、中間ステージを動かすことができるようになる(ベースと中間ステージとの間、ステージテーブルと中間ステージとの間を直接、弾性ヒンジ機構で接続した場合、中間ステージが変形するかヒンジ自体がヒンジ軸方向に伸縮するかいずれかの変形部分を設けなければ、中間ステージを動かすことができない)。
【0011】
また、上記発明において、弾性ヒンジ機構は、部材間を接続する一対の平行に配置された弾性ヒンジ対により構成されるようにしてもよい。
すなわち、弾性ヒンジ機構を一対の平行な弾性ヒンジを用いた弾性ヒンジ機構とすることにより、中間ステージを常に中心軸方向に平行に移動させることができる。これにより、中間ステージへ荷重を与える位置が中心軸から外れた場合(力点が中心軸上でない)でも、中間ステージはねじれたり回転したりすることなく中心軸方向に移動することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて説明する。なお、本発明は、以下に説明するような実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の態様が含まれることはいうまでもない。
【0013】
図1は、本発明の一実施形態である移動ステージ装置の構成を示す平面図であり、図2はその一部拡大図である。図3は弾性ヒンジの一例を示す斜視図である。
この移動ステージ装置10は、主に、ステージテーブル11、4つの中間ステージ12〜15、ベース16a〜16d、X方向アクチュエータ37、Y方向アクチュエータ38により構成される。
【0014】
ステージテーブル11は、X方向となる左右方向、および、Y方向となる前後方向にそれぞれX方向中心軸Xc、Y方向中心軸Ycを有し、これら中心軸Xc、Ycに対して対称な形状である正方形を有している。なお、ステージテーブル11の形状は、正方形以外に長方形、ひし形、円形等でもよい。ステージテーブル11のX方向中心軸Xc、Y方向中心軸Ycの延長線上に沿って、四つの中間ステージ12〜15が配置される。
【0015】
4つの中間ステージ12〜15は、X方向アクチュエータ37に接続されX方向アクチュエータ37のX方向の変位をステージテーブル11に伝達するX方向主動中間ステージ12と、X方向主動中間ステージ12の動きに従動するX方向従動中間ステージ13と、Y方向アクチュエータ38に接続されY方向アクチュエータ38のY方向の変位をステージテーブル11に伝達するY方向主動中間ステージ14と、Y方向主動中間ステージ14の動きに従動するY方向従動中間ステージ15とからなる。これらの中間ステージ12〜15はアクチュエータに接続しているか否かの点を除いていずれも同じ形状であり、また、力が加わっても変形が生じないブロック状部材で構成される。
【0016】
ベース16a〜16dは、Y方向従動中間ステージ15とX方向主動中間ステージ12とに隣接する位置にベース16a、X方向主動中間ステージ12とY方向主動中間ステージ14とに隣接する位置にベース16b、Y方向主動中間ステージ14とX方向従動中間ステージ13とに隣接する位置にベース16c、X方向従動中間ステージ13とY方向従動中間ステージ15とに隣接する位置にベース16dが取り付けてあり、それぞれ位置が固定されている。これらは同じ形状をしており、X方向中心軸Xc、Y方向中心軸Ycに対して対称に配置されている。また、ステージテーブル11の裏面側(紙面奥側)で一体に組み付けてあり、1つのベース16(不図示)を構成している。
【0017】
X方向主動中間ステージ12は、ステージテーブル11とは反対側にX方向アクチュエータ37が接続され、Y方向主動中間ステージ14は、ステージテーブル11とは反対側にY方向アクチュエータ38が接続される。X方向アクチュエータ37、Y方向アクチュエータ38には、ピエゾ素子を用いている。
【0018】
次に、ベース16と中間ステージ12〜15とステージテーブル11との支持構造について説明する。
図2に示すように、X方向主動中間ステージ12は、ベース16aとベース16bとに支持され、かつ、ステージテーブル11の一端を支持する。
X方向主動中間ステージ12とベース16aとの間は、一対の平行な弾性ヒンジ21a、21bと、副従動ステージ17と、一対の平行な弾性ヒンジ22a、22bとにより接続される。ここで用いる弾性ヒンジ21a、21b、22a、22bは、図3に示すように、長手方向をヒンジ軸とし、その両端近傍においてヒンジ軸と垂直方向に削られた薄肉部A、Bを有するロッド状部材で構成される。したがってヒンジ軸方向には変形や伸縮が起きず、ヒンジ軸に垂直方向に曲がることができるようになっている。弾性ヒンジ21a、21b、22a、22bのヒンジ軸方向は、Y方向に向けられており、薄肉部A、Bの削り面がX方向に向けられている。したがって、これらの弾性ヒンジはX方向に変位することができるようにしてある。一方、副従動ステージ17は力が加わっても変形が生じないブロック状部材で構成されている。
【0019】
また、弾性ヒンジ21a、22bや弾性ヒンジ22a、22bのように、弾性ヒンジを平行に配置した一対の平行リンク構造とすることにより、弾性ヒンジで結合する部材間の回転変位をなくし、平行に移動するようにしてある。
【0020】
同様に、X方向主動中間ステージ12とベース16bとの間は、一対の平行な弾性ヒンジ23a、23bと、副従動ステージ18と、一対の平行な弾性ヒンジ24a、24bとにより接続される。弾性ヒンジ23a、23b、24a、24bは図3に示すものと同じであり、副従動ステージ18は副従動ステージ17と同じである。弾性ヒンジ23a、23b、24a、24bについてもヒンジ軸方向がY方向に向けられ、X方向に変位することができるようにしてある。副従動ステージ18は変形が生じないブロック状部材で構成されている。
【0021】
また、X方向主動中間ステージ12に対して、副従動ステージ17、18と、弾性ヒンジ21a、21b、22a、22b、23a、23b、24a、24bとは、X方向中心軸Xcに対して対称に配置してある。その結果、X方向アクチュエータ37の駆動によりX方向主動中間ステージ12にX方向の力Fxが作用すると、X方向主動中間ステージ12は、図4(a)に示した平衡状態から図4(b)に示すように右方向に変位する。このときX方向主動中間ステージ12自体のY方向への変位は、中心軸に対して対称な構造を有していることから互いに打ち消され、X方向のみに移動するようになる。すなわち、副従動ステージ17、18がX方向に移動するとともに、Y方向にも変位することにより、X方向主動中間ステージ12は、X方向のみに移動するようになる。
【0022】
一方、X方向主動中間ステージ12とステージテーブル11との間は、一対の平行な弾性ヒンジ25a、25bと、副従動ステージ19と、一対の平行な弾性ヒンジ26a、26bとにより接続してある。弾性ヒンジ25a、25b、26a、26bは図3に示すものと同じである。副従動ステージ19は副従動ステージ17と同じく変形しないブロック状部材で構成される。弾性ヒンジ25a、25b、26a、26bのヒンジ軸方向は、X方向に向けられており、したがって、これらの弾性ヒンジはY方向に変位することができるとともに、X方向には変形や伸縮ができないようにしてある。
【0023】
上述したように、X方向アクチュエータ37の駆動により、X方向主動ステージ12がX方向のみに移動すると、X方向主動ステージ12は弾性ヒンジ25a、25bを引っ張るが、引張力がヒンジ軸方向であるので、弾性ヒンジ25a、25bは変形することなくX方向のみへの変位を、正確に副従動ステージ19に伝達するようになる。同様に、X方向のみへの変位が生じた副従動ステージ19は、弾性ヒンジ26a、26bをX方向のみに正確に押す。この押圧力は弾性ヒンジ26a、26bのヒンジ軸方向であるので、変形することなくX方向のみの変位を、正確にステージテーブル11に伝達するようになっている。ステージテーブル11自体もX方向中心軸Xcに対して対称な形状であるので、ステージテーブル11はZ軸回転することなく正確にX方向に変位するようになっている。
【0024】
また、ステージテーブル11を挟んでX方向主動中間ステージ12と反対側には、X方向従動中間ステージ13が取り付けられている。X方向従動中間ステージ13は、X方向主動中間ステージ12と対をなすものであり、形状が同じであるとともに、副従動ステージ17、18、19と、弾性ヒンジ21a、21b、〜、26a、26bとによるステージテーブル11やベース16c、16dとの間の支持構造についても同じである(但しX方向アクチュエータ37が接続されていない点が異なる)。
【0025】
Y方向主動中間ステージ14とY方向従動中間ステージ15とについて説明する。
これらは、それぞれX方向主動中間ステージ12とX方向従動中間ステージ13についての支持構造と基本的に同じであり、副従動ステージ27、28、29は、それぞれ副従動ステージ17、18、19に対応しており、これらと同じ機能、動作を行う。また、弾性ヒンジ31a、31b、〜、36a、36bは、弾性ヒンジ21a、21b、〜、26a、26bに対応しており、これらと同じ機能、動作を行う。
【0026】
次に、移動ステージ装置10の動作について説明する。図示しない制御機構により、X方向アクチュエータ37、Y方向アクチュエータ38を駆動する。
X方向アクチュエータ37が駆動されると、X方向主動中間ステージ12がX方向に押圧され、弾性ヒンジ21a、21b、〜、24a、24bが変形するとともに、副従動ステージ17、18が変位することにより、X方向主動中間ステージ12はX方向のみに移動する。X方向主動中間ステージ12の動きは、ヒンジ軸がX方向に向いている弾性ヒンジ25a、25b、26a、26bと副従動ステージ19とにより、正確にステージテーブル11に伝達され、ステージテーブル11は、X方向のみに移動する。ステージテーブル11を挟んで反対側に位置するX方向従動中間ステージ13は、ステージテーブル11のX方向の動きを受け、弾性ヒンジ21a、21b、〜、26a、26bと副従動ステージ17〜19とにより、X方向主動中間ステージ12の動きに従動した動きをする。これにより、ステージテーブル11は、X方向主動中間ステージ12、X方向従動中間ステージ13による支持構造を保ちながら、X方向に移動する。
【0027】
ステージテーブル11がX方向に動くときのY方向主動中間ステージ14、Y方向従動中間ステージ15との関係について説明する。
Y方向主動中間ステージ14、Y方向従動中間ステージ15は、ベース16a〜16dに対して、副従動ステージ27、28と、弾性ヒンジ31a、31b、〜、34a、34bとを介して支持されているが、これら弾性ヒンジ31a、31b、〜、34a、34bのヒンジ軸がX方向を向いているので、Y方向主動中間ステージ14、Y方向従動中間ステージ15はX方向には動けない。
【0028】
一方、Y方向主動中間ステージ14、Y方向従動中間ステージ15は、ステージテーブル11を、副従動ステージ29、弾性ヒンジ35a、35b、36a、36bを介して支持している。弾性ヒンジ35a、35b、36a、36bのヒンジ軸はY方向を向いているので、X方向に変形することができる。したがって、ステージテーブル11のX方向の動きを、副従動ステージ29、弾性ヒンジ35a、35b、36a、36bで吸収することができる。
このため、X方向の力が働いてステージテーブル11が動くときに、ステージテーブル11とY方向主動中間ステージ14、Y方向従動中間ステージ15とは分離されており、それゆえY方向アクチュエータ38もステージテーブル11から分離されているので、これによる影響を受けない。
【0029】
Y方向アクチュエータ38が駆動された場合についても同様であり、Y方向の力が働いてステージテーブル11が動くときに、X方向主動中間ステージ12、X方向従動中間ステージ13は分離されており、それゆえX方向アクチュエータ37もステージテーブル11から分離されているので、これによる影響を受けない。
よって、X方向、Y方向アクチュエータの非対称的な配置による影響を受けることなく、精度の高い位置調整を行うことができる。
【0030】
本実施形態では、弾性ヒンジをロッド状部材で構成し、ステージテーブル、中間ステージ、副従動ステージと接続することとしたが、ステージテーブル、中間ステージ、副従動ステージ、弾性ヒンジをひとつのブロック材をくり抜くことにより(ワイヤカット加工等)、本発明の構成を実現するようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明は、精度の高い位置調整を行う移動ステージ装置に適用することができ、例えば、走査型プローブ顕微鏡、工作機械の試料ステージとして利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の一実施形態で移動ステージ装置の構成を示す平面図。
【図2】図1の一部拡大図。
【図3】弾性ヒンジの一例を示す図。
【図4】アクチュエータを駆動したときの中間ステージとベースとの位置関係を説明する図。
【図5】従来の移動ステージ装置の構成を示す平面図。
【符号の説明】
【0033】
10:移動ステージ装置
11:ステージテーブル
12:X方向主動中間ステージ
13:X方向従動中間ステージ
14:Y方向主動中間ステージ
15:Y方向従動中間ステージ
16a〜16d: ベース
17〜19: 副従動ステージ
21a、21b、〜、26a、26b: 弾性ヒンジ
31a、31b、〜、36a、36b: 弾性ヒンジ
37: X方向アクチュエータ
38: Y方法アクチュエータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベースに対して移動可能に支持され、互いに直交するX方向およびY方向に駆動するX方向アクチュエータとY方向アクチュエータとによりXY平面内で位置を移動するステージテーブルを備えた移動ステージ装置において、
ベースとステージテーブルとの間には、X方向アクチュエータに接続されX方向にのみ駆動されるX方向主動中間ステージと、X方向主動中間ステージと対をなしX方向にのみ従動するX方向従動中間ステージと、Y方向アクチュエータに接続されY方向にのみ駆動されるY方向主動中間ステージと、Y方向主動中間ステージと対をなしY方向にのみ従動するY方向従動中間ステージとの4つの中間ステージが介在し、
X方向主動中間ステージおよびX方向従動中間ステージについてはベースに対してX方向のみに変位可能に支持するX方向変位支持手段を有するとともに、ステージテーブルに対してY方向のみに変位可能に支持するY方向変位支持手段を有し、
Y方向主動中間ステージおよびY方向従動中間ステージについてはベースに対してY方向のみに変位可能に支持するY方向変位支持手段を有するとともに、ステージテーブルに対してX方向のみに変位可能に支持するX方向変位支持手段を有することを特徴とする移動ステージ装置。
【請求項2】
X方向主動中間ステージおよびX方向従動中間ステージは、それぞれX方向の中心軸に対して左右対称な形状であり、かつ、X方向の中心軸に対して対称な位置に形成された一対のX方向変位支持手段によりベースに対して支持され、かつ、X方向の中心軸に対して対称な位置に形成された1つのY方向変位支持手段によりステージテーブルを支持し、
Y方向主動中間ステージおよびY方向従動中間ステージは、それぞれY方向の中心軸に対して左右対称な形状であり、かつ、Y方向の中心軸に対して対称な位置に形成された一対のY方向変位支持手段によりベースに対して支持され、かつ、Y方向の中心軸に対して対称な位置に形成された1つのX方向変位支持手段によりステージテーブルを支持することを特徴とする請求項1に記載の移動ステージ装置。
【請求項3】
X方向変位支持手段およびY方向変位支持手段は、ベースと中間ステージとの間、ステージテーブルと中間ステージとの間に介在する副従動ステージと、
副従動ステージとベース、副従動ステージと中間ステージ、副従動ステージとステージテーブルとの部材間を接続する弾性ヒンジ機構とから構成されることを特徴とする請求項2に記載の移動ステージ装置。
【請求項4】
弾性ヒンジ機構は、部材間を接続する一対の平行に配置された弾性ヒンジ対により構成されることを特徴とする請求項3に記載の移動ステージ装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2006−322714(P2006−322714A)
【公開日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−143562(P2005−143562)
【出願日】平成17年5月17日(2005.5.17)
【出願人】(000001993)株式会社島津製作所 (3,708)
【Fターム(参考)】