説明

移動体、無線給電システムおよび無線給電方法

【課題】給電装置から移動体に無線で電力を供給する際の、電力のロスを低減することができる、移動体の構造の提供を目的の一とする。また、四方に放射される電波の強度を低く抑えることができる、移動体の構造の提供を目的の一とする。
【解決手段】移動体への電力の供給を行う前に、アンテナの位置合わせを行うための電波を、給電装置から出力する。すなわち、給電装置から2段階に渡って電波を出力する。1段階目の電波の出力は、給電装置と移動体がそれぞれ有するアンテナの位置を合わせるために行う。2段階目の電波の出力は、給電装置から移動体に電力を供給するために行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動機により推進し、無線で二次電池の充電が可能な移動体に関する。さらに、本発明は、上記移動体と、上記移動体へ無線で電力の供給を行う給電装置とを有する無線給電システムに関する。また、当該無線給電システムにおける無線通信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球温暖化等の環境問題が深刻化しており、省エネルギー技術、創エネルギー技術、畜エネルギー技術が注目を集めている。特に、二次電池を有する移動体、具体的には、原動機付自転車、電気自動車などの、二輪、四輪を問わず、二次電池に蓄積された電力を用いて電動機により推進する移動体は、畜エネルギー技術を利用していることに加えて、二酸化炭素の排出量を抑えられるため、技術開発が活発に進められている。
【0003】
現在のところ、上記移動体が有する二次電池の充電は、一般家庭に広く普及している家庭用交流電源を給電装置として用いるか、もしくは、急速充電器などの給電装置を備えた公共用給電設備を利用することで、行うことができる。いずれの場合も、充電の際には、コンセントにプラグを挿入することで電気的な接続を形成する接続器が、一般的に用いられている。
【0004】
この接続器を用いた二次電池の充電では、プラグ側の導体とコンセント側の導体を接触させることで、移動体と給電装置の間の電気的な接続が形成される。そのため、充電の度にプラグの抜き差しを行う手間がかかる上に、繰り返し充電を行うことによる接続器の劣化が懸念される。また、電気自動車等の比較的大型の移動体では、充電に大電力が必要となる。よって、感電や、水分等による漏電の被害は甚大であり、接続器の取り扱い方には細心の注意を必要とするため、安全面で問題がある。
【0005】
これらの接続器に起因する問題を回避するために、近年では、給電装置から移動体へ無線で電力を供給する、無線給電システムの研究開発が行われている(例えば、下記の特許文献1)。無線給電システムを利用することで、接続器を用いなくとも、二次電池の充電を行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−229425号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前述の無線給電システムでは、給電装置のアンテナから発信される電波を、移動体のアンテナが受信して電気エネルギーに変換し、二次電池に蓄積する。この電波のエネルギーを電気エネルギーに変換する際の変換効率は、給電装置のアンテナと移動体のアンテナの位置関係に大きく左右される。すなわち、給電装置のアンテナの位置と、移動体のアンテナの位置が大きくずれるほど、変換効率が落ち、二次電池の充電が効率よく行われない。しかし、アンテナの設置箇所にもよるが、移動体の操縦者が、移動体のアンテナと給電装置のアンテナの位置関係を、移動体の操縦中に正確に把握することは、通常困難である。
【0008】
また、給電装置のアンテナからは、概ね一定で、なおかつ大電力の電波が出力される場合が多い。そのため、アンテナの位置関係がずれて充電の変換効率が落ちると、電力が無駄になるだけではなく、電気エネルギーに変換されなかった大電力の電波が、四方に放射される。放射された電波が人体などの生体に照射されても、その大部分は吸収されて熱となるだけなので問題がないと考えられているが、電波の生体に与える影響は未解明な部分が多い。よって、四方に放射される電波の強度は、低く抑えておくことが望ましい。
【0009】
上述の課題に鑑み、本発明は、給電装置から移動体に無線で電力を供給する際の、電力のロスを低減することができる、移動体の構造の提供を目的の一とする。本発明は、四方に放射される電波の強度を低く抑えることができる、移動体の構造の提供を目的の一とする。
【0010】
本発明は、給電装置から移動体に無線で電力を供給する際の、電力のロスを低減することができる、無線給電システム及び無線給電方法の提供を目的の一とする。本発明は、充電時において給電装置から四方に放射される電波の強度を低く抑えることができる、無線給電システム及び無線給電方法の提供を目的の一とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述の諸問題を解決するため、本発明の一態様では、移動体への電力の供給を行う前に、アンテナの位置合わせを行うための電波を、給電装置から出力する。すなわち、本発明の一態様では、給電装置から2段階に渡って電波を出力する。1段階目の電波の出力は、給電装置と移動体がそれぞれ有するアンテナの位置を合わせるために行う。2段階目の電波の出力は、給電装置から移動体に電力を供給するために行う。
【0012】
給電装置から1段階目の電波が出力されると、移動体は該電波を受信し、電気信号に変換する。該電気信号の強度には、給電装置と移動体がそれぞれ有するアンテナの距離、向きなどの位置関係が、情報として含まれている。よって、該電気信号を用いることで、上記アンテナの位置関係を把握し、それにより、電力の供給を行うのに最適な位置関係となるように、移動体もしくは給電装置の位置または向きを変更することができる。
【0013】
なお、1段階目に出力される電波は、給電装置のアンテナと、移動体のアンテナの位置関係を把握できる程度の強度であれば良い。よって、1段階目に出力される電波の強度は、2段階目に出力される、移動体に電力を供給するための電波の強度よりも、低く抑えることができる。
【0014】
また、本明細書において移動体とは、二次電池に蓄積された電力を用いて電動機により推進する移動手段であり、自動車(自動二輪車、三輪以上の自動車)、電動アシスト自転車を含む原動機付自転車、航空機、船舶、鉄道車両などが、その範疇に含まれる。
【0015】
具体的に、本発明の一態様に係る移動体は、給電装置から順次発信される第1の電波と第2の電波から、それぞれ第1の電気信号と第2の電気信号を生成するアンテナ回路と、前記第1の電気信号を用いて前記給電装置と移動体の位置関係を情報として抽出する信号処理回路と、前記第2の電気信号を用いて電気エネルギーを蓄積する二次電池と、前記二次電池から前記電気エネルギーが供給される電動機とを有するものである。
【0016】
また、具体的に、本発明の一態様に係る無線給電システムは、第1のアンテナ回路を有する給電装置と、移動体とを有し、前記移動体は、前記第1のアンテナ回路から順次発信される第1の電波と第2の電波から、それぞれ第1の電気信号と第2の電気信号を生成する第2のアンテナ回路と、前記第1の電気信号を用いて前記給電装置との位置関係を情報として抽出する信号処理回路と、前記第2の電気信号を用いて電気エネルギーを蓄積する二次電池と、前記二次電池から前記電気エネルギーが供給される電動機とを有するものである。
【0017】
また、具体的に、本発明の一態様に係る無線給電方法では、給電装置が有する第1のアンテナ回路から第1の電波が発信され、移動体が有する第2のアンテナ回路は、前記第1の電波から第1の電気信号を生成し、前記移動体が有する信号処理回路は、前記第1の電気信号を用いて前記給電装置と前記移動体の位置関係を情報として抽出し、前記位置関係に従って、前記第1のアンテナ回路から第2の電波が発信されるか否かが判断され、前記第1のアンテナ回路から前記第2の電波が発信されると、前記第2のアンテナ回路は、前記第2の電波から第2の電気信号を生成し、前記第2の電気信号を用いて前記移動体が有する二次電池に電気エネルギーが蓄積され、前記移動体が有する電動機に前記二次電池から前記電気エネルギーが供給されるものである。
【0018】
なお、二次電池の充電を開始するか否かは、信号処理回路によって抽出された給電装置と移動体の位置関係の情報を基に、移動体の操縦者、或いは給電装置の操作を管理している者が、人為的に判断することができる。或いは、移動体が有する信号処理回路において、二次電池の充電を開始するか否かを判断し、その判断結果を給電装置に電波で信号として送るようにしても良い。或いは、給電装置と移動体の位置関係の情報を、そのまま、移動体から給電装置に電波で信号として送り、給電装置側で、二次電池の充電を開始するか否かを判断するようにしても良い。
【発明の効果】
【0019】
本発明の一態様により、給電装置と移動体がそれぞれ有するアンテナの位置関係を最適化することが容易となり、充電の際に生じる、電力のロスを抑えることができる。また、充電に利用されずに給電装置から四方に放射される電波の強度を、低く抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】移動体と、無線給電システムの構成を示す図。
【図2】移動体と、無線給電システムの構成を示す図。
【図3】移動体と給電装置の動作の手順を示すフローチャート。
【図4】移動体と給電装置の動作の手順を示すフローチャート。
【図5】移動体と、無線給電システムの構成を示す図。
【図6】移動体と、無線給電システムの構成を示す図。
【図7】移動体と、無線給電システムの構成を示す図。
【図8】移動体が給電装置用アンテナ回路に接近している様子を示す図。
【図9】給電装置用アンテナと移動体用アンテナとが隣接している様子を示す図。
【図10】アンテナ回路の回路図。
【図11】アンテナの形状を示す図。
【図12】給電装置と移動体の図。
【図13】移動体の図。
【図14】整流回路の図。
【図15】トランジスタの構造を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下では、本発明の実施の形態について図面を用いて詳細に説明する。ただし、本発明は以下の説明に限定されず、本発明の趣旨及びその範囲から逸脱することなくその形態及び詳細を様々に変更し得ることは、当業者であれば容易に理解される。したがって、本発明は、以下に示す実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。
【0022】
(実施の形態1)
本発明の一態様に係る移動体、及び上記移動体と給電装置を用いた無線給電システムの構成を、図1にブロック図で一例として示す。なお、ブロック図では、移動体または給電装置内の構成要素を機能ごとに分類し、互いに独立したブロックとして示しているが、実際の構成要素は機能ごとに完全に切り分けることが難しく、一つの構成要素が複数の機能に係わることもあり得る。
【0023】
図1では、移動体100が、受電装置部101と、電源負荷部110とを有する。受電装置部101は、移動体用アンテナ回路102と、信号処理回路103と、二次電池104とを少なくとも有する。また、電源負荷部110は、少なくとも電動機111を有する。
【0024】
なお、二次電池104は蓄電手段であり、例えば、鉛蓄電池、ニッケルカドミウム電池、ニッケル水素電池、リチウムイオン電池等がその範疇に含まれる。
【0025】
また、給電装置200は、給電装置用アンテナ回路201と、信号処理回路202とを有している。信号処理回路202は、給電装置用アンテナ回路201の動作を制御する。すなわち、給電装置用アンテナ回路201から発信される電波の強度、周波数などを制御することができる。
【0026】
給電装置200は、移動体100への電力の供給を行う前に、移動体100と給電装置200の位置合わせを行うために、給電装置用アンテナ回路201から、位置合わせ用の電波をテスト信号として発信する。移動体100は、上記テスト信号を移動体用アンテナ回路102において受信し、電気信号に変換して信号処理回路103に送る。
【0027】
受信されたテスト信号の強度は、移動体用アンテナ回路102と給電装置用アンテナ回路201の、距離、向きなどの位置関係によって異なる。信号処理回路103では、受信されたテスト信号の強度から、移動体用アンテナ回路102と給電装置用アンテナ回路201の位置関係を、情報として抽出する。
【0028】
そして、受信したテスト信号の強度が十分に高ければ、電波が電気信号に変換される際の、エネルギーの変換効率が十分に高いということを意味する。よって、移動体用アンテナ回路102と給電装置用アンテナ回路201の位置関係が、充電を開始するのに適した状態にあると判断される。
【0029】
逆に、受信したテスト信号の強度が不十分ならば、電波が電気信号に変換される際の、エネルギーの変換効率が低いということを意味する。よって、移動体用アンテナ回路102と給電装置用アンテナ回路201の位置関係が、充電を開始するのに適した状態にないと判断される。
【0030】
なお、移動体用アンテナ回路102と給電装置用アンテナ回路201の位置関係が、充電を開始するのに適した状態にあるか否かの判断基準は、設計者が適宜設定することが可能である。
【0031】
なお、二次電池104の充電を開始するか否かは、信号処理回路103によって抽出された上記位置関係の情報を基に、移動体100の操縦者、或いは給電装置200の操作を管理している者が、人為的に判断することができる。
【0032】
二次電池104の充電は、給電装置200の給電装置用アンテナ回路201から、充電用の電波を発信することで行われる。移動体100は、上記充電用の電波を移動体用アンテナ回路102において受信し、電気信号に変換して信号処理回路103に送る。そして、該電気信号は、信号処理回路103から二次電池104に送られ、電気エネルギーとして二次電池104に蓄積される。
【0033】
電動機111は、二次電池104に蓄えられた電気エネルギーを機械エネルギーに変換することで、移動体100を推進させる。
【0034】
なお、テスト信号の強度が不十分で充電を開始できない場合は、移動体100もしくは給電装置200の、位置または向きを変えることで、移動体用アンテナ回路102と給電装置用アンテナ回路201の位置関係を修正する。或いは、移動体100または給電装置200を動かさずに、直接、移動体用アンテナ回路102もしくは給電装置用アンテナ回路201の、位置または向きを変えることで、位置関係の修正を図っても良い。そして、位置関係の修正を行った後、再びテスト信号により、移動体用アンテナ回路102と給電装置用アンテナ回路201の位置関係が、充電を開始するのに適した状態にあるか否かを判断する。
【0035】
テスト信号として発信される電波は、給電装置用アンテナ回路201と、移動体用アンテナ回路102の位置関係を把握できる程度の強度であれば良い。よって、上記電波の強度は、充電用の電波の強度よりも、十分低く抑えることができる。
【0036】
なお、テスト信号を複数回発信させて位置合わせを行う場合、発信される各テスト信号の強度は、必ずしも同じである必要はない。例えば、位置合わせを行う度ごとに、次に発信されるテスト信号の強度を低くしていくようにしても良い。或いは、給電装置用アンテナ回路201と、移動体用アンテナ回路102の位置関係が悪く、最初に発信されたテスト信号が全く受信できなかった場合に、次に強度の高いテスト信号を発信するようにしても良い。
【0037】
また、本発明の一態様では、充電用の電波の周波数に特に限定はなく、電力が伝送できる周波数であればどの帯域であっても構わない。充電用の電波は、例えば、135kHzのLF帯(長波)でも良いし、13.56MHzのHF帯でも良いし、900MHz〜1GHzのUHF帯でも良いし、2.45GHzのマイクロ波帯でもよい。
【0038】
また、テスト信号として用いる電波は、充電用の電波と同じ帯域の周波数を有していても良いし、異なる帯域の周波数を有していても良い。
【0039】
また、電波の伝送方式は電磁結合方式、電磁誘導方式、共鳴方式、マイクロ波方式など様々な種類があるが、適宜選択すればよい。ただし、雨や泥などの、水分を含んだ異物によるエネルギーの損失を抑えるためには、本発明の一態様では、周波数が低い帯域、具体的には、短波である3MHz〜30MHz、中波である300kHz〜3MHz、長波である30kHz〜300kHz、及び超長波である3kHz〜30kHzの周波数を利用した電磁誘導方式、共鳴方式を用いることが望ましい。
【0040】
本発明の一態様では、移動体用アンテナ回路102と給電装置用アンテナ回路201の位置関係の情報を、テスト信号の強度から抽出することができる。そして、上記位置関係の情報は、移動体100の操縦者が、移動体100の操縦中において、移動体100と給電装置200の位置合わせをする際の、手助けとなる。もしくは、給電装置200の操作を管理している者が、給電装置200の操作中において、移動体100と給電装置200の位置合わせをする際の、手助けとなる。よって、移動体100と給電装置200の位置合わせが容易となり、充電の際に生じる電力のロスを抑えることができる。また、充電に利用されずに給電装置200から四方に放射される電波の強度を、低く抑えることができる。
【0041】
(実施の形態2)
本実施の形態では、本発明の一態様に係る移動体、及び上記移動体と給電装置を用いた無線給電システムの、より詳細な構成について説明する。
【0042】
図2に、本発明の一態様に係る移動体、及び上記移動体と給電装置を用いた無線給電システムの構成を、ブロック図で一例として示す。図2では、図1と同様に、移動体100が、受電装置部101と、電源負荷部110とを有する。
【0043】
受電装置部101は、移動体用アンテナ回路102と、信号処理回路103と、二次電池104と、整流回路105と、変調回路106と、電源回路107とを少なくとも有する。
【0044】
電源負荷部110は、電動機111と、電動機111によってその動作が制御される駆動部112とを、少なくとも有する。
【0045】
また、給電装置200は、給電装置用アンテナ回路201と、信号処理回路202と、整流回路203と、変調回路204と、復調回路205と、発振回路206とを、少なくとも有している。
【0046】
次いで、図2に示した移動体100と給電装置200の動作について、図3に示したフローチャートを用いて説明する。
【0047】
図2に示した移動体100と給電装置200の動作は、移動体100と給電装置200の位置合わせを行う第1段階と、充電を行う第2段階とに分けて、説明することができる。
【0048】
まず、第1段階では、位置合わせ用の電波がテスト信号として給電装置用アンテナ回路201から発信される(A01:テスト信号の発信)。具体的には、信号処理回路202が、位置合わせに必要な信号を生成する。当該信号は電波の強度、周波数等の情報を含んでいる。そして、当該信号、および、発振回路206で生成された一定の周波数の信号に従って、変調回路204が給電装置用アンテナ回路201に電圧を印加することで、給電装置用アンテナ回路201から位置合わせ用の電波がテスト信号として発信される。
【0049】
給電装置用アンテナ回路201から発信されたテスト信号は、移動体100が有する移動体用アンテナ回路102において受信される(B01:テスト信号の受信)。受信されたテスト信号は、移動体用アンテナ回路102において電気信号に変換され、整流回路105において整流された後、信号処理回路103に送られる。
【0050】
受信されたテスト信号の強度は、移動体用アンテナ回路102と給電装置用アンテナ回路201の、距離、向きなどの位置関係によって異なる。信号処理回路103では、整流回路105から送られてきた電気信号中のテスト信号の強度に関するデータから、移動体用アンテナ回路102と給電装置用アンテナ回路201の位置関係を、情報として抽出する。
【0051】
そして、信号処理回路103では、受信したテスト信号の強度から、移動体用アンテナ回路102と給電装置用アンテナ回路201の位置関係が、充電を開始するのに適した状態にあるか否かを判断する(B02:充電を開始するのに適した状態か否かの判断)。
【0052】
受信したテスト信号の強度が不十分ならば、電波が電気信号に変換される際の、エネルギーの変換効率が低いということを意味する。よって、移動体用アンテナ回路102と給電装置用アンテナ回路201の位置関係の状態が、充電を開始するのに適していないと判断される。そして、適していない場合は、移動体100もしくは給電装置200の、位置または向きを変えることで、移動体用アンテナ回路102と給電装置用アンテナ回路201の位置関係を修正する(B03:アンテナ回路の位置関係の修正)。或いは、移動体100または給電装置200を動かさずに、直接、移動体用アンテナ回路102もしくは給電装置用アンテナ回路201の、位置または向きを変えることで、位置関係の修正を図っても良い。そして、位置関係の修正を行った後、再び、(A01:テスト信号の発信)から(B02:充電を開始するのに適した状態か否かの判断)までの手順を繰り返し、位置合わせを行う。
【0053】
受信したテスト信号の強度が十分に高ければ、電波が電気信号に変換される際の、エネルギーの変換効率が十分に高いということを意味する。よって、移動体用アンテナ回路102と給電装置用アンテナ回路201の位置関係の状態が、充電を開始するのに適している判断される。
【0054】
充電を開始するのに適していると判断された場合、位置合わせが終了し、充電の準備が完了したことになる。すると、信号処理回路103は、準備完了を給電装置200に通知するための信号を生成する。そして、該信号に従って、変調回路106が移動体用アンテナ回路102に電圧を印加することで、準備完了を通知する信号が、電波として移動体用アンテナ回路102から発信される(B04:準備完了を通知する信号の発信)。
【0055】
そして、準備完了を通知する信号が、電波として給電装置200の給電装置用アンテナ回路201において受信される(A02:準備完了を通知する信号の受信)。受信された信号は、給電装置用アンテナ回路201において電気信号に変換され、整流回路203において整流される。整流された信号は、復調回路205において復調された後、信号処理回路202に送られる。信号処理回路202が準備完了を通知する信号(復調された信号)を受け取ったら、移動体100と給電装置200の動作は、第1段階から第2段階に移行する。
【0056】
第2段階では、充電用の電波が給電装置用アンテナ回路201から発信される(A03:充電用の電波の発信)。具体的には、信号処理回路202が、充電に必要な信号を生成する。当該信号は電波の強度、周波数等の情報を含んでいる。そして、当該信号、および、発振回路206で生成された一定の周波数の信号に従って、変調回路204が給電装置用アンテナ回路201に電圧を印加することで、充電用の電波が給電装置用アンテナ回路201から発信される。
【0057】
給電装置用アンテナ回路201から発信された充電用の電波は、移動体100が有する移動体用アンテナ回路102において受信される。受信された充電用の電波は、移動体用アンテナ回路102において電気信号に変換され、整流回路105において整流された後、信号処理回路103に送られる。そして、該電気信号は、信号処理回路103から二次電池104に送られ、電気エネルギーとして二次電池104に蓄積される。
【0058】
二次電池104の充電が完了すると(B05:充電完了)、信号処理回路103において、充電完了を給電装置200に通知するための信号が生成される。そして、該信号に従って、変調回路106が移動体用アンテナ回路102に交流電圧を印加することで、充電完了を通知する信号が、電波として移動体用アンテナ回路102から発信される(B06:充電完了を通知する信号の発信)。
【0059】
そして、充電完了を通知する信号が、電波として給電装置200の給電装置用アンテナ回路201において受信される(A04:充電完了を通知する信号の受信)。受信された信号は、給電装置用アンテナ回路201において電気信号に変換され、整流回路203において整流される。整流された信号は、復調回路205において復調された後、信号処理回路202に送られる。信号処理回路202が充電完了を通知する信号(復調された信号)を受け取ったら、信号処理回路202は電波の発信を停止するための信号を、発振回路206および変調回路204に送信し、充電用の電波の発信を停止させる(A05:充電用の電波の発信終了)。
【0060】
二次電池104に蓄えられた電気エネルギーは、電源回路107において定電圧化されて電動機111に供給される。電動機111は、供給された電気エネルギーを機械エネルギーに変換し、駆動部112を動かす。
【0061】
なお、本実施の形態では、移動体100が有する信号処理回路103において、二次電池104の充電を開始するか否かを判断し、その判断結果を給電装置200に電波で信号として送っているが、本発明の一態様はこの構成に限定されない。例えば、給電装置200と移動体100の位置関係の情報を、そのまま、移動体100から給電装置200に電波で信号として送り、給電装置200側で、二次電池104の充電を開始するか否かを判断するようにしても良い。この場合、給電装置200の移動により位置関係の修正を行っても良い。或いは、給電装置200から移動体100に位置関係の修正を要求する信号を送り、移動体100の移動により位置関係の修正を行っても良い。そして、充電の準備完了を通知する信号を、移動体100から給電装置200に送る必要はないので、(B02:充電を開始するのに適した状態か否かの判断)の後は、直接、(A03:充電用の電波の発信)に移行すればよい。
【0062】
また、変調回路106または変調回路204において用いられる変調の方式は、振幅変調、周波数変調、位相変調など、様々な方式を用いることが可能である。
【0063】
また、移動体100から給電装置200への、充電の準備完了を通知する信号、または充電完了を通知する信号の送信は、変調回路106が該信号に従って移動体用アンテナ回路102に交流電圧を印加することで、給電装置用アンテナ回路201から発信されるキャリア(搬送波)に変調をかけることにより、行われていても良い。
【0064】
なお、第1段階において、テスト信号の発信を給電装置200に指示するために、移動体100が有する受電装置部101に発振回路を設けて、移動体100からスタート信号を発信するようにしても良い。この場合、発振回路は変調回路106と電気的に接続されていれば良い。図4に、移動体100からスタート信号を発信する場合のフローチャートを示す。図4に示すフローチャートでは、信号処理回路103がスタート信号を生成する。当該信号は電波の強度、周波数等の情報を含んでいる。そして、当該信号、および、発振回路で生成された一定の周波数の信号に従って、変調回路106が移動体用アンテナ回路102に電圧を印加することで、移動体用アンテナ回路102からスタート信号が電波として発信される(B00:テスト信号の発信を指示するスタート信号の発信)。
【0065】
そして、スタート信号が、給電装置200の給電装置用アンテナ回路201において受信される(A00:スタート信号の受信)。受信された信号は、給電装置用アンテナ回路201において電気信号に変換され、整流回路203において整流される。整流された信号は、復調回路205において復調された後、信号処理回路202に送られる。
【0066】
信号処理回路202は、スタート信号を受け取ると、位置合わせに必要な信号を生成する。当該信号は電波の強度、周波数等の情報を含んでいる。そして、当該信号、および、発振回路206で生成された一定の周波数の信号に従って、変調回路204が給電装置用アンテナ回路201に電圧を印加することで、給電装置用アンテナ回路201から位置合わせ用の電波がテスト信号として発信される(A01:テスト信号の発信)。そして、(A01:テスト信号の発信)以降の手順については、図3に示したフローチャートと同じであるので、上記記載を参照することができる。
【0067】
また、図2に示す移動体100は、受電装置部101に復調回路を有していても良い。移動体100が復調回路108を有している場合の、移動体、及び上記移動体と給電装置を用いた無線給電システムの構成を、図5にブロック図で一例として示す。図5は、移動体100が受電装置部101に復調回路108を有している点だけが、図2と異なっている。
【0068】
図5に示した移動体100と給電装置200の動作は、図2の場合と同様に、図3と図4に示したフローチャートに従って説明することができる。ただし、図4に示したフローチャートに従う場合は、移動体100が有する受電装置部101に発振回路を設け、発振回路は変調回路106と電気的に接続されていれば良い。なお、図5の場合、移動体用アンテナ回路102においてテスト信号が電波として受信されると(B01:テスト信号の受信)、受信されたテスト信号が、移動体用アンテナ回路102において電気信号に変換され、整流回路105において整流された後、復調回路108において復調される。そして、復調されたテスト信号が、信号処理回路103に送られる。
【0069】
信号処理回路103は、復調されたテスト信号の強度が不十分だと、該テスト信号に従って信号処理を行うことができない。よって、準備完了を給電装置200に通知するための信号を生成するという、次の手順に移ることができない。また、復調されたテスト信号の強度が十分高いと、該テスト信号に従って信号処理が行われる。よって、準備完了を給電装置200に通知するための信号を生成するという、次の手順に移ることができる。すなわち、復調されたテスト信号の強度に従って、信号処理回路103が信号処理を行えるか否かが決まるため、それにより、充電を開始するのに適した状態にあるか否かを判断することができる(B02:充電を開始するのに適した状態か否かの判断)。
【0070】
そして、充電を開始するのに適していない場合は、移動体100もしくは給電装置200の、位置または向きを変えることで、移動体用アンテナ回路102と給電装置用アンテナ回路201の位置関係を修正する(B03:アンテナ回路の位置関係の修正)。或いは、移動体100または給電装置200を動かさずに、直接、移動体用アンテナ回路102もしくは給電装置用アンテナ回路201の、位置または向きを変えることで、位置関係の修正を図っても良い。そして、位置関係の修正を行った後、再び、(A01:テスト信号の発信)から(B02:充電を開始するのに適した状態か否かの判断)までの手順を繰り返し、位置合わせを行う。
【0071】
また、充電を開始するのに適している場合、信号処理回路103は、準備完了を給電装置200に通知するための信号を生成する。そして、該信号に従って、変調回路106が移動体用アンテナ回路102に交流電圧を印加することで、準備完了を通知する信号が、電波として移動体用アンテナ回路102から発信される(B04:準備完了を通知する信号の発信)。そして、(B04:準備完了を通知する信号の発信)以降の手順については、図3または図4に示したフローチャートと同じであるので、上記記載を参照することができる。
【0072】
ただし、図5の場合、充電用の電波が移動体用アンテナ回路102において電気信号に変換され、整流回路105において整流された後、復調回路108を介さずに、信号処理回路103に送られるようにしても良い。
【0073】
また、図2に示す移動体100は、原動機として、電動機111の他に燃焼機関を用いていても良い。移動体100が燃焼機関を有している場合の、移動体、及び上記移動体と給電装置を用いた無線給電システムの構成を、図6にブロック図で一例として示す。
【0074】
図6の動作においても、図2および図5の場合と同様に、図3と図4に示したフローチャートに従って説明することができる。ただし、図4に示したフローチャートに従う場合は、移動体100が有する受電装置部101に発振回路を設け、発振回路は変調回路106と電気的に接続されていれば良い。
【0075】
図6では、移動体100が電源負荷部110に燃焼機関113を有しており、電動機111と燃焼機関113が、原動機114として機能している点だけが、図2と異なっている。そして、二次電池104に蓄えられた電気エネルギーは、電源回路107において定電圧化されて電動機111と燃焼機関113に供給される。
【0076】
電動機111は、供給された電気エネルギーを機械エネルギーに変換し、駆動部112を動かす。また、燃焼機関113では、供給された電気エネルギーによりプラグ点火が行われることで始動し、駆動部112を動かす。
【0077】
また、図2に示す移動体100は、電源負荷部110に出力装置を有していても良い。移動体100が電源負荷部110に出力装置115を有している場合の、移動体、及び上記移動体と給電装置を用いた無線給電システムの構成を、図7にブロック図で一例として示す。
【0078】
図7では、移動体100が電源負荷部110に出力装置115と入力装置116を有している点だけが、図2と異なっている。出力装置115は、信号処理回路103においてテスト信号から抽出された情報を、外部に出力するための装置であり、例えば、ディスプレイ、ライト、スピーカーなどがその範疇に含まれる。入力装置116は、移動体100に外部から情報を入力するための装置であり、例えば、ハンドル、ブレーキ、アクセル、スイッチなどが、その範疇に含まれる。
【0079】
図7の動作においても、図2、図5および図6の場合と同様に、図3と図4に示したフローチャートに従って説明することができる。ただし、図4に示したフローチャートに従う場合は、移動体100が有する受電装置部101に発振回路を設け、発振回路は変調回路106と電気的に接続されていれば良い。
【0080】
図3または図4に示すフローチャートにおいて、移動体用アンテナ回路102と給電装置用アンテナ回路201の位置関係が充電を開始するのに適した状態にあるか否かが判断されたら(B02:充電を開始するのに適した状態か否かの判断)、判断の結果を情報として出力装置115を用いて出力することができる。或いは、移動体100において受信された、テスト信号の相対的な強度を、情報として出力装置115を用いて出力し、位置関係が充電を開始するのに適した状態にあるか否かの判断は、操縦者が行うようにしても良い。
【0081】
移動体100の操縦者は、出力装置115を用いて出力された情報を用いて、移動体100と給電装置200の位置関係、または上記位置関係の修正が必要か否かを、知ることができる。
【0082】
そして、位置関係の修正を行う場合は、移動体100の操縦者が、移動体100の位置または向きを変更するための情報を、入力装置116から移動体100に入力する。そして、入力装置116から入力された情報に従い、駆動部112の動作が制御されることで、移動体100或いは移動体用アンテナ回路102の、向きまたは位置が変更される。
【0083】
位置関係の修正を行う必要がない場合は、次の手順に移行する指示を、情報として入力装置116から移動体100に入力することができる。
【0084】
なお、出力装置115は、位置合わせが開始されてから移動体100への電力の伝送が終了するまでの一連の流れの中で、作業がどの段階まで進んでいるかを情報として出力することも可能である。
【0085】
なお、図2、図5、図6、図7に示したブロック図において、DC−DCコンバータや、二次電池104の過充電を防ぐように電源回路107の動作を制御する過充電制御回路が、適宜設けられていても良い。
【0086】
本発明の一態様では、移動体用アンテナ回路102と給電装置用アンテナ回路201の位置関係の情報を、テスト信号の強度から抽出することができる。そして、上記位置関係の情報は、移動体100の操縦者が、移動体100の操縦中において、移動体100と給電装置200の位置合わせをする際の、手助けとなる。もしくは、給電装置200の操作を管理している者が、給電装置200の操作中において、移動体100と給電装置200の位置合わせをする際の、手助けとなる。よって、移動体100と給電装置200の位置合わせが容易となり、充電の際に生じる電力のロスを抑えることができる。また、充電に利用されずに給電装置200から四方に放射される電波の強度を、低く抑えることができる。
【0087】
本実施の形態は、上記実施の形態と適宜組み合わせて実施することが可能である。
【0088】
(実施の形態3)
本実施の形態では、移動体が有する移動体用アンテナ回路と、給電装置が有する給電装置用アンテナ回路の位置関係について説明する。
【0089】
図8(A)に、移動体の一つである四輪の自動車300が、給電装置が有する給電装置用アンテナ回路301に接近している様子を示す。自動車300は、矢印で示す方向に従って給電装置用アンテナ回路301に近づいている。
【0090】
自動車300は、その底部に移動体用アンテナ回路302が設けられている。自動車300における移動体用アンテナ回路302の位置を明確にするために、図8(B)に、輪郭だけ示した自動車300と、自動車300の底部に設けられた移動体用アンテナ回路302とを示す。
【0091】
自動車300の底部に設けられた移動体用アンテナ回路302は、自動車300が矢印の方向に従って進むことで、最終的には図8(C)に示すように、給電装置用アンテナ回路301に隣接した状態となる。
【0092】
なお、給電装置用アンテナ回路301と移動体用アンテナ回路302の設置箇所にもよるが、自動車300の操縦者が、上記アンテナ回路の位置関係を、自動車300の運転席から正確に把握し、高い変換効率を確保できるように上記アンテナ回路の位置合わせを行うことは、通常困難である。しかし、本発明の一態様では、上記アンテナ回路間において送受信されるテスト信号を用い、上記アンテナ回路を直接目視で確認できなくても位置関係を把握することができるので、位置合わせを容易にすることができる。
【0093】
また、本実施の形態のように、自動車300の底部に移動体用アンテナ回路302を設置し、自動車300が移動する道路などの面上に給電装置用アンテナ回路301を設置している場合、上記アンテナ回路間には常に一定の間隔が設けられることになる。よって、上記アンテナ回路の位置合わせは、自動車300が移動する面(道路など)内において、給電装置用アンテナ回路301を移動させるだけで良い。或いは、自動車300が移動する面と平行関係にある面(自動車の底面など)内において、移動体用アンテナ回路302を移動させるだけで良い。
【0094】
そして、電波の持つエネルギーを電気エネルギーに変換する際の変換効率は、給電装置用アンテナ回路301と移動体用アンテナ回路302の距離、向きなどの位置関係に大きく左右されるが、図8の場合、上記アンテナ回路の向きは固定されている。よって、図8の場合、給電装置用アンテナ回路301と移動体用アンテナ回路302の距離がより短くなるように、上記アンテナ回路の位置合わせを行えばよい。
【0095】
図9(A)に、給電装置用アンテナ回路301が有する給電装置用アンテナ303と、移動体用アンテナ回路302が有する移動体用アンテナ304とが、隣接している様子を示す。なお、図9(A)では、給電装置用アンテナ303から、テスト信号が電波として発信されているものとする。
【0096】
給電装置用アンテナ303から発信される電波を効率よく受信するためには、移動体用アンテナ304が、最適エリア305内に収まるようにするのが望ましい。移動体用アンテナ304が最適エリア305内に収まっていれば、変換効率が高まるので、移動体用アンテナ304が強度の高いテスト信号を受信することができる。逆に、移動体用アンテナ304が、図9(A)に示すように、最適エリア305内に収まっていなければ、変換効率が低いので、移動体用アンテナ304が強度の高いテスト信号を受信することができない。
【0097】
図9(B)に、移動体用アンテナ304が、最適エリア305内に収まっている様子を示す。なお、図9(B)では、給電装置用アンテナ303から、充電用の電波が発信されているものとする。
【0098】
図9(B)に示すように、移動体用アンテナ304が、最適エリア305内に収まっていれば、変換効率が高まるので、充電の際の電力のロスを抑えることができる。
【0099】
なお、最適エリア305の範囲は、設計者が適宜設定することができる。例えば、電磁結合方式を用いて電波の送受信を行う場合、給電装置用アンテナ303に交流の電流が流れると、給電装置用アンテナ303と移動体用アンテナ304とが電磁結合し、移動体用アンテナ304に誘導起電力が生じる。よって、給電装置用アンテナ303において生じる磁束が最も強くなる領域を、最適エリア305に設定することで、移動体用アンテナ304において生じる誘導起電力を大きくし、変換効率を高めることができる。
【0100】
本実施の形態は、上記実施の形態と適宜組み合わせて実施することが可能である。
【0101】
(実施の形態4)
本実施の形態では、移動体用アンテナ回路と、給電装置用アンテナ回路の構成について説明する。
【0102】
移動体用アンテナ回路と、給電装置用アンテナ回路に用いられているアンテナ回路は、アンテナと、容量とを用いたLC回路で構成することができる。図10(A)に、アンテナ回路の一例を回路図で示す。
【0103】
図10(A)に示すアンテナ回路は、アンテナ401と容量402とを有した並列LC回路を用いている。具体的に、アンテナ401が有する一対の端子は、アンテナ回路の有する入力端子403、入力端子404に、それぞれ接続されている。また、容量402が有する一対の電極は、アンテナ回路の有する入力端子403、入力端子404に、それぞれ接続されている。
【0104】
アンテナ回路の有する入力端子403と入力端子404の間には、交流の電圧が印加される。また、入力端子404は、グラウンドなどの固定電位が与えられているノードに、接続されている。
【0105】
なお、本明細書において接続とは電気的な接続を意味しており、電流、電圧または電位が、供給可能、或いは伝送可能な状態に相当する。従って、接続している状態とは、直接接続している状態を必ずしも指すわけではなく、電流、電圧または電位が、供給可能、或いは伝送可能であるように、配線、抵抗、ダイオード、トランジスタなどの回路素子を介して間接的に接続している状態も、その範疇に含む。
【0106】
また、図10(B)に示すアンテナ回路は、アンテナ401と容量402とを有した直列LC回路を用いている。具体的に、容量402が有する一対の電極は、一方が、アンテナ401の一方の電極に接続され、他方が、アンテナ回路の有する入力端子403に接続されている。また、アンテナ401の他方の電極は、アンテナ回路の有する入力端子404に接続されている。
【0107】
アンテナ回路の有する入力端子403と入力端子404の間には、交流の電圧が印加される。また、入力端子404は、グラウンドなどの固定電位が与えられているノードに、接続されている。
【0108】
なお、図10では、アンテナ401がコイル状である場合を例示しているが、本発明で用いることができるアンテナの形状は、これに限定されない。アンテナ401の形状は、無線で信号を送受信できるものであれば良く、電波の波長、伝送方式に合わせて適宜選択すれば良い。
【0109】
例えば、マイクロ波方式で信号の送受信を行う場合、アンテナ回路は回路部とインピーダンスの整合を取ることで、反射による電力の損失を抑えることができ、電力伝送効率を高めることができる。インピーダンスの虚数部に相当するリアクタンスは、アンテナ回路が有する容量の容量値によって変わる。よって、電力伝送効率を高めるためには、容量の容量値を最適化し、インピーダンスの整合を取るのが望ましい。
【0110】
また、電磁誘導方式で信号の送受信を行う場合、アンテナ回路が有する容量の容量値を最適化することで、電力伝送効率を向上させることができる。
【0111】
図11に、アンテナの形状を例示する。図11(A)に示すアンテナは、矩形状の平板に開口部が設けられた構成を有している。また、図11(B)に示すアンテナは、導体410が渦巻状に成型された構成を有している。また、図11(C)に示すアンテナは、平板状のパッチ素子411とパッチ素子412とが、環状に成型された配線413を間に挟んで連結されている。
【0112】
なお、アンテナ回路は、給電点において給電線に接続されたコイルの他に、例えば、ブースターアンテナのように、給電線に物理的に接続されていない電波の送受信用コイルを有していても良く、上記構成により通信距離を伸ばすことができる。
【0113】
本実施の形態は、上記実施の形態と適宜組み合わせて実施することが可能である。
【0114】
(実施の形態5)
本実施の形態では、自動車などの、軌条によらずに移動する移動体を用いる場合において、位置合わせを容易にすることができる給電装置の構成について説明する。
【0115】
図12(A)に、移動体の一つである四輪の自動車500が、給電装置が有する給電装置用アンテナ回路501に接近している様子を示す。自動車500は、矢印で示す方向に従って給電装置用アンテナ回路501に近づいている。
【0116】
自動車500は、電動機からの機械エネルギーを用いて動作する駆動輪504を駆動部に有する。そして、駆動輪504が回転運動することで、自動車500を推進させることができる。本実施の形態では、図12(A)に示すように、自動車が推進する方向を制限するために、駆動輪504の回転軸の方向を固定するためのガイド503を、給電装置に設ける。よって、駆動輪504は、ガイド503が延設されている方向に沿って、回転しながら移動する。
【0117】
自動車500は、その底部に移動体用アンテナ回路502が設けられている。そして、自動車500の底部に設けられた移動体用アンテナ回路502は、自動車500が矢印の方向に従って進むことで、最終的には図12(B)に示すように、給電装置用アンテナ回路501に隣接した状態となる。
【0118】
本実施の形態のように、ガイド503を用いることで、ガイド503の延設されている方向においてのみ、給電装置用アンテナ回路501と移動体用アンテナ回路502の位置合わせを行えば良い。よって、位置合わせをさらに容易にすることができる。
【0119】
本実施の形態は、上記実施の形態と適宜組み合わせて実施することが可能である。
【0120】
(実施の形態6)
本発明の一態様に係る移動体は、自動車(自動二輪車、三輪以上の自動車)、電動アシスト自転車を含む原動機付自転車、航空機、船舶、鉄道車両など、二次電池に蓄積された電力を用いて電動機により推進する移動手段が、その範疇に含まれる。
【0121】
図13(A)に、本発明の移動体の一つであるモーターボート1301の構成を示す。図13(A)では、モーターボート1301が、移動体用アンテナ回路1302を、その船体の側部に備えている場合を例示している。モーターボート1301の充電を行うための給電装置は、例えば、港湾において船舶を係留させるための係留施設に設けることができる。そして、係留施設において、岸壁などの堤に給電装置用アンテナ回路1303を設けることで、モーターボート1301の係留中に、電力のロスを抑えつつ、充電を行うことができる。無線で充電を行うことができれば、充電の度に二次電池をモーターボート1301から取り外す手間が省ける。
【0122】
図13(B)に、本発明の移動体の一つである電動車いす1311の構成を示す。図13(B)では、電動車いす1311が、移動体用アンテナ回路1312を、その底部に備えている場合を例示している。電動車いす1311の充電を行うための給電装置が有する給電装置用アンテナ回路1313は、電動車いす1311が載置されている道路などの面に、設けることができる。そして、電動車いすの停車中に、電力のロスを抑えつつ、充電を行うことができる。無線で充電を行うことができれば、充電の度に二次電池を電動車いす1311から取り外す手間が省ける。また、充電に利用されずに給電装置から四方に放射される電波の強度を、低く抑えることができるので、利用者が電動車いす1311に座ったままでも、電動車いす1311充電時の漏洩電波による健康被害の恐れが軽減される。
【0123】
本実施の形態は、上記実施の形態と適宜組み合わせて実施することが可能である。
【0124】
(実施の形態7)
本実施の形態では、移動体に用いられる整流回路の構成と、移動体の各種回路が有するトランジスタの構成について説明する。
【0125】
図14(A)に、整流回路の一つである、半波整流回路の一例を示す。図14(A)に示す整流回路は、トランジスタ800と、容量素子803とを有する。トランジスタ800のソース電極とドレイン電極は、いずれか一方が入力端子801に接続されており、他方が出力端子802に接続されている。トランジスタ800が有するゲート電極は、入力端子801に接続されている。容量素子803が有する一対の電極は、一方が出力端子802に接続され、他方がグラウンド(GND)に落とされている。
【0126】
図14(B)に、整流回路の一つである、半波2倍電圧整流回路の一例を示す。図14(B)に示す整流回路は、トランジスタ810と、トランジスタ814と、容量素子813とを有する。トランジスタ810のソース電極とドレイン電極は、いずれか一方が入力端子811に接続されており、他方が出力端子812に接続されている。トランジスタ810が有するゲート電極は、入力端子811に接続されている。トランジスタ814のソース電極とドレイン電極は、いずれか一方が入力端子811に接続されており、他方がグラウンド(GND)に落とされている。トランジスタ814が有するゲート電極は、グラウンド(GND)に落とされている。容量素子813が有する一対の電極は、一方が出力端子812に接続され、他方がグラウンド(GND)に落とされている。
【0127】
なお、移動体が有する整流回路は、図14に示した構成に限定されない。例えば、半波4倍電圧整流回路、半波6倍電圧整流回路などの半波2倍電圧整流回路以外の半波倍電圧整流回路を用いても良いし、全波整流回路を用いても良い。
【0128】
また、回路図上は独立している構成要素どうしが接続しているように図示されている場合であっても、実際には、例えば配線の一部が電極としても機能する場合など、一の導電膜が、複数の構成要素の機能を併せ持っているだけの場合もある。本明細書において接続とは、このような、一の導電膜が、複数の構成要素の機能を併せ持っている場合も、その範疇に含める。
【0129】
また、トランジスタが有するソース電極とドレイン電極は、トランジスタの極性及び各電極に与えられる電位の高低差によって、その呼び方が入れ替わる。一般的に、nチャネル型トランジスタでは、低い電位が与えられる電極がソース電極と呼ばれ、高い電位が与えられる電極がドレイン電極と呼ばれる。また、pチャネル型トランジスタでは、低い電位が与えられる電極がドレイン電極と呼ばれ、高い電位が与えられる電極がソース電極と呼ばれる。本明細書では、便宜上、ソース電極とドレイン電極とが固定されているものと仮定して、トランジスタの接続関係を説明する場合があるが、実際には上記電位の関係に従ってソース電極とドレイン電極の呼び方が入れ替わる。
【0130】
次いで、整流回路、電源回路、信号処理回路、変調回路、復調回路、選択回路などに用いられるトランジスタの構成について説明する。本発明の一態様では、上記回路に用いられるトランジスタの構成に特に限定はないが、高耐圧、大電流を制御することができるトランジスタを用いるのが望ましい。また、移動体が使用される環境下における温度範囲が広い場合には、温度によって特性に変化が生じにくいトランジスタを用いることが望ましい。
【0131】
上述した要件を満たすトランジスタの一例として、シリコン半導体よりもバンドギャップが広く、真性キャリア密度がシリコンよりも低い、炭化珪素(SiC)、窒化ガリウム(GaN)などの化合物半導体、酸化亜鉛(ZnO)などの金属酸化物でなる酸化物半導体などを半導体材料として用いたトランジスタが挙げられる。この中でも酸化物半導体は、スパッタリング法や湿式法(印刷法など)により作製可能であり、量産性に優れるといった利点がある。また、炭化珪素や窒化ガリウムは単結晶としなければ十分な特性が得られず、そのための炭化珪素のプロセス温度は約1500℃、窒化ガリウムのプロセス温度は約1100℃であるが、酸化物半導体の成膜温度は、300〜500℃(最大でも700℃程度)と低く、単結晶シリコン等の半導体材料を用いた集積回路上に、酸化物半導体による半導体素子を積層させることも可能である。また、基板の大型化にも対応が可能である。よって、上述したワイドギャップ半導体の中でも、特に酸化物半導体は量産性が高いというメリットを有する。また、より優れた性能(例えば電界効果移動度)を有する結晶性の酸化物半導体も、450℃から800℃の熱処理によって容易に得ることができる。
【0132】
電子供与体(ドナー)となる水分または水素などの不純物が低減されて高純度化された酸化物半導体(purified OS)は、i型(真性半導体)又はi型に限りなく近い。そのため、上記酸化物半導体を用いたトランジスタは、特にオフ電流またはリーク電流が著しく低いという特性を有する。具体的に、高純度化された酸化物半導体は、二次イオン質量分析法(SIMS:Secondary Ion Mass Spectrometry)による水素濃度の測定値が、5×1019/cm以下、好ましくは5×1018/cm以下、より好ましくは5×1017/cm以下、さらに好ましくは1×1016/cm以下とする。また、ホール効果測定により測定できる酸化物半導体膜のキャリア密度は、1×1014/cm未満、好ましくは1×1012/cm未満、さらに好ましくは1×1011/cm未満とする。また、酸化物半導体のバンドギャップは、2eV以上、好ましくは2.5eV以上、より好ましくは3eV以上とする。水分または水素などの不純物濃度が十分に低減されて高純度化された酸化物半導体膜を用いることにより、トランジスタのオフ電流、リーク電流を下げることができる。
【0133】
ここで、酸化物半導体膜中の、水素濃度の分析について触れておく。酸化物半導体膜中及び導電膜中の水素濃度測定は、SIMSで行う。SIMSは、その原理上、試料表面近傍や、材質が異なる膜との積層界面近傍のデータを正確に得ることが困難であることが知られている。そこで、膜中における水素濃度の厚さ方向の分布をSIMSで分析する場合、対象となる膜が存在する範囲において、値に極端な変動が無く、ほぼ一定の値が得られる領域における平均値を、水素濃度として採用する。また、測定の対象となる膜の厚さが小さい場合、隣接する膜内の水素濃度の影響を受けて、ほぼ一定の値が得られる領域を見いだせない場合がある。この場合、当該膜が存在する領域における、水素濃度の極大値または極小値を、当該膜中の水素濃度として採用する。さらに、当該膜の存在する領域において、極大値を有する山型のピーク、極小値を有する谷型のピークが存在しない場合、変曲点の値を水素濃度として採用する。
【0134】
具体的に、高純度化された酸化物半導体膜を活性層として用いたトランジスタのオフ電流が低いことは、いろいろな実験により証明できる。例えば、チャネル幅が1×10μmでチャネル長が10μmの素子であっても、ソース電極とドレイン電極間の電圧(ドレイン電圧)が1Vから10Vの範囲において、オフ電流(ゲート電極とソース電極間の電圧を0V以下としたときのドレイン電流)が、半導体パラメータアナライザの測定限界以下、すなわち1×10−13A以下という特性を得ることができる。この場合、オフ電流をトランジスタのチャネル幅で除した数値に相当するオフ電流密度は、100zA/μm以下であることが分かる。また、容量素子とトランジスタ(ゲート絶縁膜の厚さは100nm)とを接続して、容量素子に流入または流出する電荷を当該トランジスタで制御する回路を用いた実験において、当該トランジスタとして高純度化された酸化物半導体膜をチャネル形成領域に用いた場合、容量素子の単位時間あたりの電荷量の推移から当該トランジスタのオフ電流密度を測定したところ、トランジスタのソース電極とドレイン電極間の電圧が3Vの場合に、10zA/μm乃至100zA/μmという、さらに低いオフ電流密度が得られることが分かった。したがって、高純度化された酸化物半導体膜を活性層として用いたトランジスタのオフ電流密度を、ソース電極とドレイン電極間の電圧によっては、100zA/μm以下、好ましくは10zA/μm以下、更に好ましくは1zA/μm以下にすることができる。従って、高純度化された酸化物半導体膜を活性層として用いたトランジスタは、オフ電流が、結晶性を有するシリコンを用いたトランジスタに比べて著しく低い。
【0135】
変調回路のスイッチング素子など、低いオフ電流がその特性に要求される素子には、上記酸化物半導体をチャネル形成領域に有するトランジスタを用いることが、望ましい。
【0136】
また、高純度化された酸化物半導体を用いたトランジスタは、オフ電流の温度依存性がほとんど現れない。これは、酸化物半導体中で電子供与体(ドナー)となる不純物を除去して、酸化物半導体が高純度化することによって、導電型が限りなく真性型に近づき、フェルミ準位が禁制帯の中央に位置するためと言える。また、これは、酸化物半導体のエネルギーギャップが3eV以上であり、熱励起キャリアが極めて少ないことにも起因する。また、ソース電極及びドレイン電極が縮退した状態にあることも、温度依存性が現れない要因となっている。トランジスタの動作は、縮退したソース電極から酸化物半導体に注入されたキャリアによるものがほとんどであり、キャリア密度には温度依存性がないことから、オフ電流の温度依存性がみられないことを説明することができる。
【0137】
なお、酸化物半導体は、四元系金属酸化物であるIn−Sn−Ga−Zn−O系酸化物半導体や、三元系金属酸化物であるIn−Ga−Zn−O系酸化物半導体、In−Sn−Zn−O系酸化物半導体、In−Al−Zn−O系酸化物半導体、Sn−Ga−Zn−O系酸化物半導体、Al−Ga−Zn−O系酸化物半導体、Sn−Al−Zn−O系酸化物半導体や、二元系金属酸化物であるIn−Zn−O系酸化物半導体、Sn−Zn−O系酸化物半導体、Al−Zn−O系酸化物半導体、Zn−Mg−O系酸化物半導体、Sn−Mg−O系酸化物半導体、In−Mg−O系酸化物半導体、In−Ga−O系酸化物半導体や、In−O系酸化物半導体、Sn−O系酸化物半導体、Zn−O系酸化物半導体などを用いることができる。なお、本明細書においては、例えば、In−Sn−Ga−Zn−O系酸化物半導体とは、インジウム(In)、錫(Sn)、ガリウム(Ga)、亜鉛(Zn)を有する金属酸化物、という意味であり、その化学量論的組成比は特に問わない。また、上記酸化物半導体は、珪素を含んでいてもよい。
【0138】
或いは、酸化物半導体は、化学式InMO(ZnO)(m>0)で表記することができる。ここで、Mは、Ga、Al、MnおよびCoから選ばれた一または複数の金属元素を示す。
【0139】
次いで、シリコンを用いたトランジスタ上に形成された、酸化物半導体を用いたトランジスタの構成を、図15に示す。なお、シリコンは、薄膜の半導体膜であっても良いし、バルクの半導体基板であっても良い。本実施の形態では、SOI(Silicon on Insulator)基板を用いて形成されたトランジスタ上に、酸化物半導体を用いたトランジスタが形成されている場合を例に挙げて、その構成について説明する。
【0140】
図15(A)では、SOI基板を用いて形成されたトランジスタ601と、トランジスタ602とを有している。そして、トランジスタ601と、トランジスタ602上に、酸化物半導体膜を用いたチャネルエッチ構造の、ボトムゲート型のトランジスタ610が形成されている。
【0141】
トランジスタ610は、ゲート電極611と、ゲート電極611上のゲート絶縁膜612と、ゲート絶縁膜612上においてゲート電極611と重なっている酸化物半導体膜613と、酸化物半導体膜613上に形成された一対のソース電極614またはドレイン電極615とを有する。さらに、トランジスタ610は、酸化物半導体膜613上に形成された絶縁膜616を、その構成要素に含めても良い。トランジスタ610は、ソース電極614とドレイン電極615の間において、酸化物半導体膜613の一部が露出したチャネルエッチ構造である。
【0142】
なお、トランジスタ610は、絶縁膜616上に、バックゲート電極をさらに有していても良い。バックゲート電極は、酸化物半導体膜613のチャネル形成領域と重なるように形成する。バックゲート電極は、電気的に絶縁しているフローティングの状態であっても良いし、電位が与えられる状態であっても良い。後者の場合、バックゲート電極には、ゲート電極611と同じ高さの電位が与えられていても良いし、グラウンドなどの固定電位が与えられていても良い。バックゲート電極に与える電位の高さを制御することで、トランジスタ610の閾値電圧を制御することができる。
【0143】
図15(B)では、SOI基板を用いて形成されたトランジスタ601と、トランジスタ602とを有している。そして、トランジスタ601と、トランジスタ602上に、酸化物半導体膜を用いたチャネル保護構造の、ボトムゲート型のトランジスタ620が形成されている。
【0144】
トランジスタ620は、ゲート電極631と、ゲート電極631上のゲート絶縁膜632と、ゲート絶縁膜632上においてゲート電極631と重なっている酸化物半導体膜633と、ゲート電極631と重なる位置において島状の酸化物半導体膜633上に形成されたチャネル保護膜634と、酸化物半導体膜633上に形成されたソース電極635、ドレイン電極636と、を有する。さらに、トランジスタ620は、ソース電極635、ドレイン電極636上に形成された絶縁膜637を、その構成要素に含めても良い。
【0145】
チャネル保護膜634を設けることによって、酸化物半導体膜633のチャネル形成領域となる部分に対する、後の工程時におけるダメージ(エッチング時のプラズマやエッチング剤による膜減りなど)を防ぐことができる。従ってトランジスタの信頼性を向上させることができる。
【0146】
酸素を含む無機材料をチャネル保護膜634に用いることで、水分または水素を低減させるための加熱処理により酸化物半導体膜633中に酸素欠損が発生していたとしても、酸化物半導体膜633の少なくともチャネル保護膜634と接する領域に酸素を供給し、ドナーとなる酸素欠損を低減して化学量論的組成比を満たす構成とすることが可能である。よって、チャネル形成領域を、i型化または実質的にi型化させることができ、酸素欠損によるトランジスタの電気特性のばらつきを軽減し、電気特性の向上を実現することができる。
【0147】
なお、トランジスタ620は、絶縁膜637上に、バックゲート電極をさらに有していても良い。バックゲート電極は、酸化物半導体膜633のチャネル形成領域と重なるように形成する。バックゲート電極は、電気的に絶縁しているフローティングの状態であっても良いし、電位が与えられる状態であっても良い。後者の場合、バックゲート電極には、ゲート電極631と同じ高さの電位が与えられていても良いし、グラウンドなどの固定電位が与えられていても良い。バックゲート電極に与える電位の高さを制御することで、トランジスタ620の閾値電圧を制御することができる。
【0148】
図15(C)では、SOI基板を用いて形成されたトランジスタ601と、トランジスタ602とを有している。そして、トランジスタ601と、トランジスタ602上に、酸化物半導体膜を用いたボトムコンタクト型のトランジスタ640が形成されている。
【0149】
トランジスタ640は、ゲート電極641と、ゲート電極641上のゲート絶縁膜642と、ゲート絶縁膜642上のソース電極643、ドレイン電極644と、ゲート電極641と重なっている酸化物半導体膜645とを有する。さらに、トランジスタ640は、酸化物半導体膜645上に形成された絶縁膜646を、その構成要素に含めても良い。
【0150】
なお、トランジスタ640は、絶縁膜646上に、バックゲート電極をさらに有していても良い。バックゲート電極は、酸化物半導体膜645のチャネル形成領域と重なるように形成する。バックゲート電極は、電気的に絶縁しているフローティングの状態であっても良いし、電位が与えられる状態であっても良い。後者の場合、バックゲート電極には、ゲート電極641と同じ高さの電位が与えられていても良いし、グラウンドなどの固定電位が与えられていても良い。バックゲート電極に与える電位の高さを制御することで、トランジスタ640の閾値電圧を制御することができる。
【0151】
図15(D)では、SOI基板を用いて形成されたトランジスタ601と、トランジスタ602とを有している。そして、トランジスタ601と、トランジスタ602上に、酸化物半導体膜を用いたトップゲート型のトランジスタ650が形成されている。
【0152】
トランジスタ650は、ソース電極651、ドレイン電極652と、ソース電極651、ドレイン電極652上に形成された酸化物半導体膜653と、酸化物半導体膜653上のゲート絶縁膜654と、ゲート絶縁膜654上において酸化物半導体膜653と重なっているゲート電極655とを有する。さらに、トランジスタ650は、ゲート電極655上に形成された絶縁膜656を、その構成要素に含めても良い。
【0153】
なお、上述した全てのトランジスタは、図面ではシングルゲート構造で示しているが、電気的に接続された複数のゲート電極を有する、すなわち、チャネル形成領域を複数有する、マルチゲート構造のトランジスタであっても良い。
【0154】
本実施の形態は、上記実施の形態と組み合わせて実施することが可能である。
【符号の説明】
【0155】
100 移動体
101 受電装置部
102 移動体用アンテナ回路
103 信号処理回路
104 二次電池
105 整流回路
106 変調回路
107 電源回路
108 復調回路
109 発振回路
110 電源負荷部
111 電動機
112 駆動部
113 燃焼機関
114 原動機
115 出力装置
116 入力装置
200 給電装置
201 給電装置用アンテナ回路
202 信号処理回路
203 整流回路
204 変調回路
205 復調回路
206 発振回路
300 自動車
301 給電装置用アンテナ回路
302 移動体用アンテナ回路
303 給電装置用アンテナ
304 移動体用アンテナ
305 最適エリア
401 アンテナ
402 容量
403 入力端子
404 入力端子
410 導体
411 パッチ素子
412 パッチ素子
413 配線
500 自動車
501 給電装置用アンテナ回路
502 移動体用アンテナ回路
503 ガイド
504 駆動輪
601 トランジスタ
602 トランジスタ
610 トランジスタ
611 ゲート電極
612 ゲート絶縁膜
613 酸化物半導体膜
614 ソース電極
615 ドレイン電極
616 絶縁膜
620 トランジスタ
631 ゲート電極
632 ゲート絶縁膜
633 酸化物半導体膜
634 チャネル保護膜
635 ソース電極
636 ドレイン電極
637 絶縁膜
640 トランジスタ
641 ゲート電極
642 ゲート絶縁膜
643 ソース電極
644 ドレイン電極
645 酸化物半導体膜
646 絶縁膜
650 トランジスタ
651 ソース電極
652 ドレイン電極
653 酸化物半導体膜
654 ゲート絶縁膜
655 ゲート電極
656 絶縁膜
800 トランジスタ
801 入力端子
802 出力端子
803 容量素子
810 トランジスタ
811 入力端子
812 出力端子
813 容量素子
814 トランジスタ
1301 モーターボート
1302 移動体用アンテナ回路
1303 給電装置用アンテナ回路
1311 電動車いす
1312 移動体用アンテナ回路
1313 給電装置用アンテナ回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
給電装置から順次発信される第1の電波と第2の電波から、それぞれ第1の電気信号と第2の電気信号を生成するアンテナ回路と、
前記第1の電気信号を用いて、前記アンテナ回路と、前記給電装置の位置関係を情報として抽出する信号処理回路と、
前記第2の電気信号を用いて電気エネルギーを蓄積する二次電池と、
前記二次電池から前記電気エネルギーが供給される電動機と、を有する移動体。
【請求項2】
給電装置から順次発信される第1の電波と第2の電波から、それぞれ第1の電気信号と第2の電気信号を生成するアンテナ回路と、
前記第1の電気信号を用いて、前記アンテナ回路と、前記給電装置の位置関係を情報として抽出し、前記情報に従って、前記第2の電波の発信を前記給電装置に指示する第3の電気信号を生成する信号処理回路と、
前記第2の電気信号を用いて電気エネルギーを蓄積する二次電池と、
前記二次電池から前記電気エネルギーが供給される電動機と、を有し、
前記アンテナ回路は、前記第3の電気信号から第3の電波を生成する移動体。
【請求項3】
請求項1または請求項2において、
前記アンテナ回路は、導体を用いたアンテナと、容量とを有し、
前記導体は渦巻状である移動体。
【請求項4】
第1のアンテナ回路を有する給電装置と、移動体とを有し、
前記移動体は、前記第1のアンテナ回路から順次発信される第1の電波と第2の電波から、それぞれ第1の電気信号と第2の電気信号を生成する第2のアンテナ回路と、
前記第1の電気信号を用いて、前記第1のアンテナ回路と前記第2のアンテナ回路の位置関係を情報として抽出する信号処理回路と、
前記第2の電気信号を用いて電気エネルギーを蓄積する二次電池と、
前記二次電池から前記電気エネルギーが供給される電動機と、を有する無線給電システム。
【請求項5】
第1のアンテナ回路を有する給電装置と、移動体とを有し、
前記移動体は、前記第1のアンテナ回路から順次発信される第1の電波と第2の電波から、それぞれ第1の電気信号と第2の電気信号を生成する第2のアンテナ回路と、
前記第1の電気信号を用いて、前記第1のアンテナ回路と前記第2のアンテナ回路の位置関係を情報として抽出し、前記情報に従って、前記第2の電波の発信を前記給電装置に指示する第3の電気信号を生成する信号処理回路と、
前記第2の電気信号を用いて電気エネルギーを蓄積する二次電池と、
前記二次電池から前記電気エネルギーが供給される電動機と、を有し、
前記第2のアンテナ回路は、前記第3の電気信号から第3の電波を生成する無線給電システム。
【請求項6】
請求項4または請求項5において、
前記第1のアンテナ回路または前記第2のアンテナ回路は、導体を用いたアンテナと、容量とを有し、
前記導体は渦巻状である無線給電システム。
【請求項7】
給電装置から発信された第1の電波を、移動体において電気信号に変換し、
該電気信号の強度から、前記給電装置と前記移動体がそれぞれ有するアンテナ回路の位置関係を情報として抽出し、
前記情報に従って前記位置関係を変更した後、前記給電装置から第2の電波が発信され、
前記第2の電波を用いて前記移動体が有する二次電池の充電を行う無線給電方法。
【請求項8】
給電装置から発信された第1の電波を、移動体において電気信号に変換し、
該電気信号の強度から、前記給電装置と前記移動体がそれぞれ有するアンテナ回路の位置関係を情報として抽出し、
前記情報に従って、前記給電装置もしくは前記移動体の位置または向きを変更することで前記位置関係を変更した後、前記給電装置から第2の電波が発信され、
前記第2の電波を用いて前記移動体が有する二次電池の充電を行う無線給電方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2011−182633(P2011−182633A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−20284(P2011−20284)
【出願日】平成23年2月2日(2011.2.2)
【出願人】(000153878)株式会社半導体エネルギー研究所 (5,264)
【Fターム(参考)】