説明

移動体のキャリブレーション装置およびこれを搭載した移動体並びにキャリブレーション方法

【課題】簡単な構成の装置で移動体の運動学パラメターを精度よく求めることができ、かつキャリブレーション作業に要する手間と空間を大幅に削減する移動体のキャリブレーション装置と方法および自己キャリブレーション機能を有する移動体を提供する。
【解決手段】モータ回転速度計測部と、移動体の回転速度計測部と、車輪を駆動するモータの回転速度指令を出力するモータ回転速度指令部と、前記モータ回転速度計測部の出力値と前記移動体の回転速度計測部の出力値とから前記移動体の運動学パラメターを得る演算処理部と、を備え、前記モータ回転速度指令部はキャリブレーションにあたって正負対称の定常波指令を一定期間出力するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動体の運動学パラメターのキャリブレーションを行うキャリブレーション装置およびこれを搭載した移動体並びにキャリブレーション方法に関する。
【背景技術】
【0002】
移動体の並進位置や回転角度を得るためには、移動体の運動学パラメター(例えば車輪半径、車輪接地点半径など)を用いてモータ回転速度から移動体の並進速度・回転速度を求めて積分する「オドメトリ」という方法が広く用いられている。
【0003】
オドメトリについて、図6に示した2輪型移動体の例を用いて説明する。図において、601が2輪型移動体、602が右車輪、603が左車輪、604が右モータ、605が左モータ、606が減速器である。
移動体601の並進速度vをモータ回転速度(ω、ω)から求める式は式(1)である。
【数1】

移動体601の路面に垂直な軸回りの回転速度をモータ回転速度から求める式は式(2)である。
【数2】

式中、Gは減速器606の減速比、rは右車輪602の半径である右車輪半径、rは左車輪603の半径である左車輪半径、Rは車軸中心に対する車輪接地点半径であって、ここではp、p、p、およびpを運動学パラメターと定義する。
なお、パラメターp、p、p、およびpの間には、式(3)の関係がある。
【数3】

モータ回転速度(ω、ω)はモータに内蔵されたエンコーダやタコメータなどのセンサで計測できる。よって上記2つの式を用いて移動体の並進・回転速度を逐次求め、それを積分していくことで移動体の初期位置に対する移動量を求めることができる。これを式で表すと、式(4)のようになる。
【数4】

ここでtは現在時刻、tはオドメトリの開始時刻、θ、x、yはそれぞれ移動体初期姿勢、初期x座標、初期y座標を表す。移動体の初期位置を定めれば、後は式(4)の積分計算によって逐次移動体位置・姿勢(x(t) 、y(t) 、θ(t))を推定できるのである。これがオドメトリと呼ばれる手法である。
【0004】
オドメトリは、図6のような2輪型移動体に限らず、多くの移動体に適用可能な手法である。ここでは更に、図10を用いて3輪を有する全方向移動体にオドメトリを実施する場合を説明する。図10は前記全方向移動体の上視図である。図10において、1001が全方向移動体、1002−1〜1002−3がそれぞれ第1モータ〜第3モータである。また、1003がエンコーダ、1004が減速器、1005−1〜1005−3がそれぞれ第1オムニホイル〜第3オムニホイルである。
第1車輪1〜第3車輪は、その回転軸が移動体1001の中心で互いに交わるように、かつ互いのなす角が120°になるように設置する。
【0005】
全方向移動体1001の移動体固定座標系における並進および回転の速度をモータ回転速度(ω、ω、ω)から求める式は 、式(5)である。
【数5】

ここで、v、vはそれぞれ移動体に固定された座標系で表現した移動体1001の並進速度、vθは移動体に固定された座標系で表現した移動体1001の回転速度である。式中Gは減速器1004の減速比、r、r、r、はそれぞれ車輪1−3の半径である車輪半径1−3、また、R、R、Rはそれぞれ車軸中心に対する車輪1−3の車輪接地点半径1−3である。ここではp11、p12、p13、p21、p22、p23、p31、p32、およびp33を運動学パラメターと定義する。モータ回転速度(ω、ω、ω)はモータに内蔵されたエンコーダやタコメータなどのセンサで計測できる。よって式(5)を用いて移動体の並進・回転速度を逐次求め、それを積分していくことで移動体の初期位置に対する移動量を求めることができる。これを式で表すと、式(6)のようになる。
【数6】

このように3輪を有する全方向移動体であっても、モータ回転速度と移動体の並進および回転速度とを対応付ける関係式を導けば、オドメトリ手法を適用することができる。
【0006】
従来、運動学パラメターを取得するには、設計値を用いる(従来技術1)か、実際に物差で測定(従来技術2)していた。あるいは、移動体に正方形状の目標軌道を与え、実際の到達位置を測定してオドメトリの結果と比較することにより運動学パラメターを修正する方法(従来技術3、非特許文献1参照)もあった。
【非特許文献1】J.Borenstein and L.Feng、 “Measurement and Correction of Systematic Odometry Errors in Mobile Robots”、 IEEE Trans. Robotics and Automation、 Vol.12、 No.6、 1996
【0007】
従来技術3における移動体のキャリブレーション方法を以下で説明する。
その手順は以下のとおりである。
1)運動学パラメターとして設計値を設定する。
2)基準壁に対する移動体の位置・姿勢を計測し、計測結果を移動体のオドメトリ初期値に設定する。
3)移動体に一辺が4mの正方形経路上を時計回りに走行する指令を与える。正方形の各頂点では逐一移動体を停止させ、時計回りに90度回転させる。滑りを生じないように移動体をゆっくり走らせる。
4)走行後の基準壁に対する位置を計測する。
5)オドメトリの結果と実際の位置計測結果を比較する。
6)ステップ2)から5)を合計5回以上繰り返す。
7)ステップ2)から6)を、走行の向きを時計回りから反時計回りに変更して実施する。
8)以上のステップで得られた計測結果を利用して修正運動学パラメターを求め、設定する(運動学パラメターの修正に関する数式については、非特許文献1を参照されたい。)。
【0008】
図11は従来技術3のキャリブレーションにあたって移動体が走行する経路の例を示した図である。図11において1101が移動体、1102が基準壁、1103が移動体の移動開始点、1104が移動完了点、実線1105が移動体に与える事前にプログラムされた一辺が4mの正方形の経路、 点線1106は移動体1101が実際に走行した経路である。なお、図11は移動体を反時計回りに走行させた場合である。
従来技術3では、移動体に同じ経路を時計回りに走行させた場合と反時計回りに走行させた場合とを比較することで、回転に関する運動学パラメターの誤差の影響と、並進に関する運動学パラメターの誤差の影響とを分離している。
また、試行を5回以上行うことで施行毎に生じるノイズの影響を軽減している。
したがって、以上に示したようなキャリブレーションを行うことによって、より真値に近い運動学パラメターを取得することができるのである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従来技術1では加工や組立によって生じる運動学パラメターの設計値と真値との相違に対応できないため、オドメトリの結果に誤差を生じる可能性が高いという問題があった。
従来技術2は計測に手間がかかる上、移動体の構造によっては計測そのものが困難であるという問題があった。また、計測は多くの場合目測に頼らざるを得ないため、測定誤差を生じる可能性も高かった。
従来技術3においても、移動体の初期位置や到達位置を実測する必要があり、手間がかかった。また、移動体を走行させるための広い空間を必要とするという問題もあった。
【0010】
本発明はこのような問題点に鑑みてなされたものであり、簡単な構成の装置で移動体の運動学パラメターを精度よく求めることができ、かつキャリブレーション作業に要する手間と空間を大幅に削減する移動体のキャリブレーション装置およびこれを搭載した移動体並びにそのキャリブレーション方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記問題を解決するため、本発明は、次のように構成したのである。
請求項1記載の発明は、移動体のキャリブレーション装置に係り、1つ以上のモータによって駆動される車輪によって走行する移動体の運動学パラメターのキャリブレーションを行うキャリブレーション装置であって、モータ回転速度計測部と、移動体の回転速度計測部と、車輪を駆動するモータの回転速度指令を出力するモータ回転速度指令部と、前記モータ回転速度計測部の出力値と前記移動体の回転速度計測部の出力値とから前記移動体の運動学パラメターを演算する演算処理部と、を備えたことを特徴とするものである。
請求項2記載の発明は、移動体のキャリブレーション装置に係り、1つ以上のモータによって駆動される車輪によって走行する移動体の運動学パラメターのキャリブレーションを行うキャリブレーション装置であって、モータ回転速度計測部と、移動体の回転加速度計測部と、車輪を駆動するモータの回転速度指令を出力するモータ回転速度指令部と、前記モータ回転速度計測部の出力値と前記移動体の回転加速度計測部の出力値とから前記移動体の運動学パラメターを演算する演算処理部と、を備えたことを特徴とするものである。
請求項3記載の発明は、移動体のキャリブレーション装置に係り、1つ以上のモータによって駆動される車輪によって走行する移動体の運動学パラメターのキャリブレーションを行うキャリブレーション装置であって、モータ回転速度計測部と、移動体の並進速度計測部と、車輪を駆動するモータの回転速度指令を出力するモータ回転速度指令部と、前記モータ回転速度計測部の出力値と前記移動体の並進速度計測部の出力値とから前記移動体の運動学パラメターを演算する演算処理部と、を備えたことを特徴とするものである。
請求項4記載の発明は、移動体のキャリブレーション装置に係り、1つ以上のモータによって駆動される車輪によって走行する移動体の運動学パラメターのキャリブレーションを行うキャリブレーション装置であって、モータ回転速度計測部と、移動体の並進加速度計測部と、車輪を駆動するモータの回転速度指令を出力するモータ回転速度指令部と、前記モータ回転速度計測部の出力値と前記移動体の並進加速度計測部の出力値とから前記移動体の運動学パラメターを演算する演算処理部と、を備えたことを特徴とするものである。
請求項5記載の発明は、移動体のキャリブレーション装置に係り、1つ以上のモータによって駆動される車輪によって走行する移動体の運動学パラメターのキャリブレーションを行うキャリブレーション装置であって、モータ回転速度計測部と、移動体の回転速度計測部と、移動体の並進加速度計測部と、車輪を駆動するモータの回転速度指令を出力するモータ回転速度指令部と、前記モータ回転速度計測部の出力値と前記移動体の回転速度計測部の出力値と、前記移動体の並進加速度計測部の出力値とから前記移動体の運動学パラメターを演算する演算処理部と、を備えたことを特徴とするものである。
請求項6記載の発明は、移動体のキャリブレーション装置に係り、1つ以上のモータによって駆動される車輪によって走行する移動体の運動学パラメターのキャリブレーションを行うキャリブレーション装置であって、モータ回転速度計測部と、移動体の回転加速度計測部と、移動体の並進加速度計測部と、車輪を駆動するモータの回転速度指令を出力するモータ回転速度指令部と、前記モータ回転速度計測部の出力値と前記移動体の回転加速度計測部の出力値と前記移動体の並進加速度計測部の出力値とから前記移動体の運動学パラメターを演算する演算処理部と、を備えたことを特徴とするものである。
請求項7記載の発明は、移動体のキャリブレーション装置に係り、1つ以上のモータによって駆動される車輪によって走行する移動体の運動学パラメターのキャリブレーションを行うキャリブレーション装置であって、モータ回転速度計測部と、移動体の回転速度計測部と、移動体の並進速度計測部と、車輪を駆動するモータの回転速度指令を出力するモータ回転速度指令部と、前記モータ回転速度計測部の出力値と前記移動体の回転速度計測部の出力値と前記移動体の並進速度計測部の出力値とから前記移動体の運動学パラメターを演算する演算処理部と、を備えたことを特徴とするものである。
請求項8記載の発明は、移動体のキャリブレーション装置に係り、1つ以上のモータによって駆動される車輪によって走行する移動体の運動学パラメターのキャリブレーションを行うキャリブレーション装置であって、モータ回転速度計測部と、移動体の回転加速度計測部と、移動体の並進速度計測部と、車輪を駆動するモータの回転速度指令を出力するモータ回転速度指令部と、前記モータ回転速度計測部の出力値と前記移動体の回転加速度計測部の出力値と前記移動体の並進速度計測部の出力値とから前記移動体の運動学パラメターを演算する演算処理部と、を備えたことを特徴とするものである。
【0012】
請求項9記載の発明は、請求項1、5、又は7記載の移動体のキャリブレーション装置において、前記演算処理部が、前記移動体の回転速度計測部の出力値の振幅値を得る振幅値取得部を備え、前記モータ回転速度指令部は正負対称の定常波指令を一定期間にわたって出力し、前記演算処理部は前記モータ回転速度の振幅値と前記振幅値取得部で得られた振幅値との比から前記移動体の運動学パラメターを計算することを特徴とするものである。
請求項10記載の発明は、請求項2、6、又は8記載の移動体のキャリブレーション装置において、前記演算処理部が、前記移動体の回転加速度計測部の出力値の振幅値を得る振幅値取得部を備え、前記モータ回転速度指令部は正負対称の定常波指令を一定期間にわたって出力し、前記演算処理部は前記モータ回転速度の振幅値と前記振幅値取得部で得られた振幅値との比から前記移動体の運動学パラメターを計算することを特徴とするものである。
請求項11記載の発明は、請求項4、5又は6記載の移動体のキャリブレーション装置において、前記演算処理部が、前記移動体の並進加速度計測部の出力値の振幅値を得る振幅値取得部を備え、前記モータ回転速度指令部は正負対称の定常波指令を一定期間にわたって出力し、前記演算処理部は前記モータ回転速度の振幅値と前記振幅値取得部で得られた振幅値との比から前記移動体の運動学パラメターを計算することを特徴とする。
請求項12記載の発明は、請求項3、7又は8記載の移動体のキャリブレーション装置において、前記演算処理部が、前記移動体の並進速度計測部の出力値の振幅値を得る振幅値取得部を備え、前記モータ回転速度指令部は正負対称の定常波指令を一定期間にわたって出力し、前記演算処理部は前記モータ回転速度の振幅値と前記振幅値取得部で得られた振幅値との比から前記移動体の運動学パラメターを計算することを特徴とするものである。
請求項13記載の発明は、請求項9〜12のいずれか1項記載の移動体のキャリブレーション装置において、前記モータ回転速度指令部が出力するのは、一定角周波数の正弦波状の指令であることを特徴とするものである。
【0013】
請求項14記載の発明は、請求項13記載の移動体のキャリブレーション装置において、前記振幅値取得部が、その入力信号の周波数解析を行って前記一定角周波数の振動振幅値を抽出する周波数解析部からなることを特徴とするものである。
請求項15記載の発明は、請求項13記載の移動体のキャリブレーション装置において、前記移動体の回転速度計測部が、前記一定角周波数に近い振動成分のみを通過するバンドパスフィルタを有していることを特徴とするものである。
請求項16記載の発明は、請求項13記載の移動体のキャリブレーション装置において、前記移動体の回転加速度計測部が、前記一定角周波数に近い振動成分のみを通過するバンドパスフィルタを有していることを特徴とするものである。
請求項17記載の発明は、請求項13記載の移動体のキャリブレーション装置において、前記移動体の並進加速度計測部が、前記一定角周波数に近い振動成分のみを通過するバンドパスフィルタを有していることを特徴とするものである。
請求項18記載の発明は、請求項13記載の移動体のキャリブレーション装置において、前記移動体の並進速度計測部が、前記一定角周波数に近い振動成分のみを通過するバンドパスフィルタを有していることを特徴とするものである。
【0014】
請求項19記載の発明は、請求項9記載のキャリブレーション装置において、前記振幅値取得部が、前記定常波指令の1周期に相当する時間にわたって、前記移動体の回転速度の最大値から最小値を減じた値を1/2倍した値である1周期振幅値を出力することを特徴とするものである。
請求項20記載の発明は、請求項10記載のキャリブレーション装置において、前記振幅値取得部が、前記定常波指令の1周期に相当する時間にわたって、前記移動体の回転加速度の最大値から最小値を減じた値を1/2倍した値である1周期振幅値を出力することを特徴とするものである。
請求項21記載の発明は、請求項11記載のキャリブレーション装置において、前記振幅値取得部が、前記定常波指令の1周期に相当する時間にわたって、前記移動体の並進加速度の最大値から最小値を減じた値を1/2倍した値である1周期振幅値を出力することを特徴とするものである。
請求項22記載の発明は、請求項12記載のキャリブレーション装置において、前記振幅値取得部が、前記定常波指令の1周期に相当する時間にわたって、前記移動体の並進速度の最大値から最小値を減じた値を1/2倍した値である1周期振幅値を出力することを特徴とするものである。
請求項23記載の発明は、請求項9記載の移動体のキャリブレーション装置において、前記振幅値取得部が、前記移動体の回転速度計測部の複数周期にわたる所定時間内の平均的な波形値を求め、その最大値から最小値を減じた値を1/2倍した値を出力することを特徴とするものである。
請求項24記載の発明は、請求項10記載の移動体のキャリブレーション装置において、前記振幅値取得部が、前記移動体の回転加速度計測部の複数周期にわたる所定時間内の平均的な波形値を求め、その最大値から最小値を減じた値を1/2倍した値を出力することを特徴とするものである。
請求項25記載の発明は、請求項11記載の移動体のキャリブレーション装置において、前記振幅値取得部が、前記移動体の並進加速度計測部の複数周期にわたる所定時間内の平均的な波形値を求め、その最大値から最小値を減じた値を1/2倍した値を出力することを特徴とするものである。
請求項26記載の発明は、請求項12記載の移動体のキャリブレーション装置において、前記振幅値取得部が、前記移動体の並進速度計測部の複数周期にわたる所定時間内の平均的な波形値を求め、その最大値から最小値を減じた値を1/2倍した値を出力することを特徴とするものである。
請求項27記載の発明は、請求項1〜8のいずれか1項記載の移動体のキャリブレーション装置において、前記モータ回転速度が、前記モータ回転速度指令で代替されることを特徴とするものである。
請求項28記載の発明は、移動体に係り、請求項1〜8のいずれか1項記載の移動体のキャリブレーション装置を搭載したことを特徴とするものである。
請求項29記載の発明は、移動体のキャリブレーション方法に係り、1つ以上のモータによって駆動される車輪によって走行する移動体の運動学パラメターのキャリブレーションを行うためのキャリブレーション方法であって、はじめにモータ回転速度とセンサから得られる前記移動体の回転速度とを用いて移動体の回転に関する第1の運動学パラメターを求め、次いで、求まった第1の運動学パラメターと、モータ回転速度と、センサから得られる前記移動体の並進加速度あるいは並進速度と、を用いて移動体の並進に関する第2の運動学パラメターを求めることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0015】
請求項1記載の発明によると、移動体の寸法や回転角度を測定する手間をかけることなく移動体の回転に関する運動学パラメターを自動的に求めることができる。
請求項2記載の発明によると、移動体の回転速度計測部が手に入らない場合でも同等の効果を有する移動体のキャリブレーション装置を構成できる。
請求項3および4記載の発明によると、移動体の寸法や並進移動量を測定する手間をかけることなく、移動体の並進に関する運動学パラメターを求めることができる。
請求項5〜8記載の発明によると、移動体の寸法や回転移動量および並進移動量を測定する手間をかけることなく、移動体の回転および並進に関する運動学パラメターを自動的に求めることができる。
請求項9〜12記載の発明によると、移動体の回転速度計測部や回転加速度計測部、並進速度計測部、あるいは並進加速度計測部の出力にバイアス誤差が含まれている場合でも移動体の運動学パラメターを自動的に精度良く求めることができる。また、キャリブレーション時の移動体移動量を少なくできるため、キャリブレーションのために広大な空間を必要としないという利点もある。
請求項13記載の発明によると、単純な信号発生装置で前記モータ回転速度指令部を構成でき、なおかつセンサの出力値に含まれるバイアス誤差にかかわらず精度良く移動体の運動学パラメターを求めることができる。
【0016】
請求項14〜18記載の発明によると、センサの出力値に含まれるノイズ成分を効果的に除去でき、精度良く移動体の運動学パラメターを求めることができる。
請求項19〜22記載の発明によると、単純な演算によって素早く移動体の運動学パラメターを求めることができる。
請求項23〜26記載の発明によると、センサの出力値に含まれるノイズ成分の影響を減少させ、精度良く移動体の運動学パラメターを求めることができる。
請求項27記載の発明によれば、より単純な構成で移動体の運動学パラメターを求めることができる。
請求項28記載の発明によれば、キャリブレーションにあたって別途装置を用意する必要がなくなり、作業の迅速化が可能となる。
請求項29記載の発明によると、移動体の回転および並進に関する運動学パラメターを少ない手順で効果的に求めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について図を参照して説明する。
【実施例1】
【0018】
図1は、図6に示した2輪型移動体のキャリブレーション装置の構成を示した図である。図において、破線101内部が移動体のキャリブレーション装置、点線102内部が移動体、103がマイクロコンピュータ、104が移動体の回転速度を計測するジャイロセンサ、105が加速度センサ、106がAD変換器、107がDA変換器、108がサーボアンプ、109がエンコーダおよびモータ、110が減速器および車輪である。本実施例においてキャリブレーションの対象とする移動体は2輪型なので、サーボアンプ108、エンコーダおよびモータ109、減速器および車輪110はそれぞれ2つずつ設置されている。ジャイロセンサ104および加速度センサ105の出力は、それぞれ移動体の回転速度、前後方向加速度に比例したアナログ電圧であるから、AD変換器106を通してディジタル信号に変換される。変換後の値はバス接続されたマイクロコンピュータ103から利用可能となっている。マイクロコンピュータ103はモータ回転速度指令を計算し、バス接続されたDA変換器107を通してサーボアンプ108に出力する。サーボアンプ108はモータ109を前記モータ回転速度指令に追従するように制御するとともに、エンコーダ信号をマイクロコンピュータ103に出力する。モータ109の回転は減速器で減速され、車輪110を駆動する。その結果移動体102は路面に対して移動する。移動によって生じる回転速度はジャイロセンサ104で、前後方向加速度は加速度センサ105で計測される。なお、本実施例は図6のような平面上を走行する2輪型移動体を対象としたキャリブレーション装置であるので、ジャイロセンサ104は走行面に垂直な軸回りの回転速度を計測できるように、加速度センサ105は移動体前後方向の加速度を計測できるように、それぞれ設置する。
続いて、マイクロコンピュータ103内部で実行される処理を説明する。図2は、マイクロコンピュータ内部で実行されるタスクと信号の流れを示した図である。図2において、破線201がマイクロコンピュータ内部であり、202はモータ回転速度指令出力タスク、203はジャイロセンサ出力読み取りタスク、204は加速度センサ出力読み取りタスク、205はエンコーダ信号読み取りおよび差分タスク、206は運動学パラメター演算タスク、207はマイクロコンピュータ103が内蔵するメモリ、211はモータ回転速度指令信号、212はサーボアンプから得られるエンコーダ信号、213はジャイロセンサから得られる移動体102の回転速度信号、214は加速度センサから得られる移動体102の前後方向加速度信号、215はキャリブレーション結果として出力される運動学パラメター信号である。モータ回転速度指令出力タスク202の処理内容は後述する。
ジャイロセンサ出力読み取りタスク203は、一定周期毎に回転速度信号213を読み取り、時系列データとしてメモリ207に保存するタスクである。
加速度センサ出力読み取りタスク204は、一定周期毎に前後方向加速度信号214を読み取り、時系列データとしてメモリ207に保存するタスクである。
エンコーダ信号読み取りおよび差分タスク205は、エンコーダ信号212からモータ回転角度を取得するとともに、一定周期毎にモータ回転角度の差分値を計算してモータ回転速度を求め、時系列データとしてメモリ207に保存するタスクである。なお、運動学パラメター演算タスク206の処理内容は後述する。
メモリ207には、各タスクで生成する時系列データに加え、速度指令生成に用いるパラメターをあらかじめ保存しておく。
本実施例では、求めるべき運動学パラメターは、前記のp,p,p,およびpの4つである。
このうち、移動体の回転速度とモータ回転速度とを対応付けるのはpおよびpであるから、これらを回転に関する運動学パラメターと呼ぶ。
残るpおよびpは、移動体の並進速度とモータ回転速度とを対応付けるパラメターであるから、これらを並進に関する運動学パラメターと呼ぶ。
【0019】
図3はキャリブレーションの手順に関するフロー図である。
図3において、301は回転に関する運動学パラメターを求めるステップ、302は求めた回転に関する運動学パラメターを保存するステップ、303は並進に関する運動学パラメターを求めるステップ、304は求めた並進に関する運動学パラメターを保存するステップである。
モータ回転速度指令出力タスク202の処理内容および運動学パラメター演算タスク206の処理内容は、キャリブレーションの対象とする運動学パラメターの種類によって切り替える。したがって、以下では図3に示した運動学パラメターのキャリブレーション手順に沿って各タスクの処理内容を説明する。
最初に実行するのは、回転に関する運動学パラメターを求めるステップ301である。ステップ301では、パラメターp、を求める処理、パラメターp、を求める処理を順に行う。
【0020】
まず、パラメターpを求める処理について以下で説明する。
モータ回転速度指令出力タスク202は、左モータに対して振幅Aref、位相角速度
の正弦波を、右モータに対して0を、モータ回転速度指令信号211として一定期間にわたって出力する。すなわち、時間[0、T]において、式(7)とする。
【数7】

ここで、Aref,αは、Arefの値がモータの制限回転速度を超えないように、かつαArefの値がモータの制限回転角加速度を超えないように適当に設定する定数である。
また、指令出力時間であるTには、正弦波の周期2π/αのn倍に適当な正数Tを加えた値よりも十分大きな値を設定する。すなわち、
T>T+n×2π/α
とする。ここでnは十分大きな正整数である。
正数Tを設定するのは、移動体の運動がモータ回転指令出力直後から定常状態に移行するまでの時間を使用するデータから除外するためである。
また、正整数nを設定するのは、複数周期にわって移動体を動作させることで各種計測値に含まれるノイズの影響を抑えるためである。
時刻tは、マイクロコンピュータ103が内蔵する図示しないタイマーから取得する。
以上が、モータ回転速度指令出力タスク202がパラメターpを求めるために実行する処理である。
【0021】
式(7)の指令を与えたときのモータ回転速度は、一般に
(ω,ω)=(Asin(αt+δservo),0)
となる。
【数8】

モータ回転速度(ω,ω)の値は、時間[T,T+n×2π/α]にわたってエンコーダ信号読み取りおよび差分タスクで取得し、メモリ207に保存する。
このとき、移動体の路面に垂直な軸回りの回転速度は
ω=−pω=−PAsin(αt+δservo
となる。
この結果、移動体は初期位置付近で振動的に運動するため、移動体の走行する領域は限定される。すなわち、移動体の走行のために広大な領域を確保する必要はない。ωの計測値ωobsには一般にバイアス誤差dDCとホワイトノイズdが含まれる。
ωobs=ω+dDC+d=−pAsin(αt+δservo)dDC+d
しかし、ωobsの振幅にはバイアス誤差dDCは影響せず、ホワイトノイズdのみが影響する。ωobsは回転速度信号213に相当し、その値を時間[T,T+n×2π/α]にわたってジャイロセンサ出力読み取りタスク203によってメモリ207に保存する。
【0022】
図4にωとωobsの波形例を示す。
図4において、401は時間軸、402は回転速度軸、403は移動体回転速度ωの波形、404はジャイロセンサ104で計測した移動体回転速度ωobsの波形、405は左モータ回転速度指令ωrefとして出力した正弦波の1周期に相当する時間を表している。
パラメターpを求めるための運動学パラメター演算タスク206の処理を以下で説明する。運動学パラメター演算タスク206の処理は、指令出力および各種データの保存が完了した後に開始する。まず、メモリ207に保存された左モータ回転速度ωの時系列データからその振幅Aの値を求める。振幅Aの値は、ωの時系列データを1周期毎に分割して得られるn個の波形の平均値を取ることで得られる1周期分の平均波形について最大値と最小値とを求め、その差を1/2倍することで求める。これはωに含まれるホワイトノイズの影響を抑えるためである。
次いで、メモリ207に保存されたωobsの時系列データからその振幅Bの値を求める。振幅Bの値も、振幅Aの値と同様に1周期分の平均波形から求めることで、ωobsに含まれるホワイトノイズの影響を抑える。なお、ジャイロセンサ104の持つバイアス誤差は、振幅Bには全く影響しない。
【0023】
図5は、1周期分の平均波形から振幅値を求めることの効果を示した図である。
図5において、501−1は分割したωobsの時系列データの1番目の波形、501−nは分割したωobsの時系列データのn番目の波形、502はn個の波形から求めた前記1周期分の平均波形、503は前記平均波形502の最大値と最小値との差を1/2倍したものであって、振幅Bである。
平均波形502を求めることで、波形に含まれるホワイトノイズの影響を効果的に抑制できる。
更に、振幅を求めるためωobsに含まれるバイアス誤差dDCの影響は皆無である。
得られるωobsの振幅Bとωの振幅Aとの間には、
B=P
なる関係があるため、パラメターPは式(8)から求める。

=B/A ・・・・式(8)

以上が、Pを求めるための運動学パラメター演算タスク206の処理である。
本実施例では、振幅AおよびBを求めるためにn個の波形の平均をとってその最大値と最小値の差を1/2倍したが、ωおよびωobsの周波数スペクトル解析を行って位相角速度αに対応する成分の振幅を抽出するようにしてもよい。
あるいは、計測したωおよびωobsを位相角速度α付近の振動成分のみを通過するバンドパスフィルタに通してから用いるような構成とすれば、不要なノイズ成分を効果的に除去できる。
【0024】
次に、パラメターPを求める処理を実行する。
処理の内容はPを求める処理とほぼ同じである。すなわち、モータ回転速度指令出力タスク202は、右モータに対して振幅Aref、位相角速度αの正弦波を、右モータに対して0を、モータ回転速度指令信号211として一定期間にわたって出力する。すなわち、時間[0、T]において、式(9)とする。
【数9】

以下の手順はPの場合と同様であるため割愛する。
ここでも移動体は初期位置付近で振動的に運動するため、移動体の走行のために広大な領域を確保する必要はない。
回転に関する運動学パラメターを求めるステップ301が完了したら、求めた回転に関する運動学パラメターを保存するステップ302に移行する。運動学パラメター演算タスク206は、外部から参照できるように結果をメモリ207に保存する。
ステップ302の次は、並進に関する運動学パラメターを求めるステップ303に進む。本ステップで求めるのはp,pである。
以下でその方法を説明する。
ステップ303では、モータ回転速度指令タスク202は時間[0、T]にわたって以下のようなモータ回転速度指令を出力する。
【数10】

このときのモータ回転速度は、

mL、ωmR)=(A´sin(αt+δservo´)、-A´sin(αt+δservo´))

のようになり、移動体の並進速度は式(1)から
v=(p+p)A´sin(αt+δservo´)
となる。
ここでも、移動体は初期位置付近で振動的に運動するため、移動体の走行のために広大な領域を確保する必要はない。
【0025】
移動体の並進加速度は、
dv/dt=α(p+p)A´cos(αt+δservo´)
となる。
加速度センサ105で計測される加速度aobsは、実際の移動体加速度に加速度センサのバイアス誤差dDC´、ホワイトノイズd´が加わった値となる。
obs=α(p+p)A´cos(αt+δservo´)+dDC´+d´
obsは前後方向加速度信号214に相当する。
【0026】
モータ回転速度指令の出力完了後、運動学パラメター演算タスク206の処理を開始する。
まず、メモリ207に保存された左モータ回転速度ωまたは右モータ回転速度ωの時系列データから、その振幅A´の値を求める。振幅を求める方法はステップ301の方法と同じである。
次いで、加速度センサ出力読み取りタスクによって保存された時系列データから、aobsの振幅B´を求める。振幅を求める方法はステップ301の方法と同じである。ステップ301の場合と同様、値に含まれるバイアス誤差の影響は皆無であり、ホワイトノイズの影響も小さく抑えられる。
得られる振幅B´と振幅A´との間には
B´=α(p+p)A´
なる関係がある。また、式(3)から

=(p/p)×p

であるから、上記2式により並進に関する運動学パラメターp、pは、

=pB´/(αA´(p+p))
=pB´/(αA´(p+p))
のように求まるのである。
以上でステップ303の処理は完了し、ステップ304に移行する。
ステップ304では、求めた並進に関する運動学パラメターp、pを外部から参照できるようにメモリ207に保存する。
【0027】
本発明は従来の手法とは全く異なり、移動体の回転速度や加速度を直接計測できるセンサを運動学パラメターのキャリブレーションに用いている。そのため、移動体の移動量を計測する手間を必要としない。
更に、正負対称の定常波状のモータ回転速度指令を与えることによってホワイトノイズの影響を軽減し、パラメター計算に振幅を用いることによってセンサ出力値に含まれるバイアス誤差の影響を排除している。
【0028】
実施例1では、モータ回転速度をエンコーダ信号212から求めて保存し、運動学パラメター演算に用いる構成とした。しかし、モータ回転速度制御の性能が十分高い場合はモータ回転速度指令信号211をそのままモータ回転速度としてパラメター演算に用いても良い。
また、実施例1では移動体の回転速度を計測するジャイロセンサと移動体の並進加速度を計測する加速度センサとをそれぞれ備えた構成としたが、これは本発明の実施形態をこれに限定するものではない。
【0029】
以下、2輪型移動体601に適用する移動体のキャリブレーション装置について、実施例2では移動体の回転加速度および並進加速度を計測するセンサユニットを備えた例を、実施例3では移動体の回転速度および並進速度を計測するセンサユニットを備えた例を、それぞれ説明する。
【実施例2】
【0030】
〈移動体の回転加速度および並進加速度を計測するセンサユニットを備えた例〉
実施例2では、移動体の回転加速度および並進加速度を計測するセンサユニットを備えた2輪型移動体のキャリブレーション装置について述べる。
本実施例における移動体のキャリブレーション装置の構成は図1におけるジャイロセンサ104と加速度センサ105とを図7に示したセンサユニットに置き換えたものである。
図7は、移動体の回転加速度および並進加速度を計測するセンサユニット1の上視図である。図において、701がセンサユニット1、702−1が第1の1軸加速度センサ、702−2が第2の1軸加速度センサ、703−1が第1の1軸加速度センサ702−1が計測する加速度の正方向、703−2が第2の1軸加速度センサ702−2が計測する加速度の正方向、704がセンサユニット1の中心線、705がセンサユニット1の移動体正面に対する取り付け方向である。
1軸加速度センサ702−1および702−2は、センサユニット1の中心線704について対称な位置に、中心線704から距離各raだけ離れた点における加速度を計測するように設置する。また、センサユニット701は中心線704が移動体の中心線と一致するように2輪型移動体601(図6)に水平に取り付ける。2つの加速度センサ、702−1、702−2で計測する加速度の向きは、それぞれ矢印703−1、矢印703−2に沿う向きである。計測された加速度をそれぞれa1obs 、a2obsと表現する。
実施例2におけるマイクロコンピュータ103内部で実行されるタスクと信号の流れを図8に示す。図において801はセンサユニット1出力読み取り・処理タスクである。811−1および811−2はそれぞれ1軸加速度センサ702−1および702−2から得られる加速度信号であって、a1obsとa2obsに相当する。
センサユニット1出力読み取り・処理タスク801は加速度信号a1obsとa2obsを逐次読み取って処理し、移動体の路面に垂直な軸回りの回転加速度および並進加速度に変換したものを時系列データとしてメモリ207に保存するタスクである。
得られる移動体の回転加速度をξobs 、移動体の並進加速度をaobs’と表現すると、変換式は以下の通りである。
ξobs =(a1obs+a2obs)/(2r
obs’ =(a1obs−a2obs)/2
実施例2におけるキャリブレーションの手順とステップ2,4における処理内容は実施例1と同様である。
また、各ステップにおけるモータ回転速度指令出力タスク202の処理も、実施例1と同様である。ただし、ステップ1において、運動学パラメター演算タスク206が回転に関する運動学パラメターP,およびPを求める処理内容は実施例1と異なるため、以下で説明する。
【0031】
ステップ1では、モータ回転速度指令力出力タスク202は時間[0,T]にわたって式(7)のようなモータ回転速度指令信号を出力する。このときのモータ回転加速度は

(ξ,ξ)=(−αAcos(αt+δservo
となる。実際の移動体の回転加速度ξは
ξ=−Pω=PαAcos(αt+δservo
となる。
センサユニット1出力読み取り・処理タスク801で得られる移動体の回転加速度ξobnには一般にバイアス誤差dDC2とホワイトノイズdW2が含まれる。
ξobs =ξ+dDC2+dW2=PαAsin(αt+δservo)+dDC2+dW2
しかし、ξobsの振幅にはバイアス誤差dDC2は影響せず、ホワイトノイズdW2のみが影響する。センサユニット1出力読み取り・処理タスク801は、ξobs の値を時間[T,T+n×2π/α]にわたってメモリ207に保存する。
運動学パラメター演算タスク206の処理は、指令出力および各種データの保存が完了した後に開始する。まず、メモリ207に保存された左モータ回転速度ωの時系列データからその振幅Aの値を求める。
次いで、メモリ207に保存されたξobsの時系列データからその振幅Bの値を求める。振幅を求める方法は実施例1と同様である。振幅にはバイアス誤差の影響が皆無であり、複数周期にわたる時系列データを利用するためホワイトノイズの影響も小さく抑えられる。
得られるξobsの振幅Bとωの振幅Aとの間には、
=PαA
なる関係があるため、パラメターP
=B/(αA) ・・・式(A)
によって求める。
以上が、実施例2においてPLを求めるための運動学パラメター演算タスク206の処理である。パラメターPRは、モータ回転速度指令信号211を式(9)のように与え、Pの場合と同様にして求める。
以上で実施例2におけるステップ1の処理は完了である。
ステップ3において並進に関する運動学パラメターを求める処理は、実施例1においてaobsをaobs’に置き換えたものであるので、説明は割愛する。
【実施例3】
【0032】
〈移動体の回転速度および並進速度を計測するセンサユニットを備えた例〉
実施例3では、移動体の回転速度および並進速度を計測するセンサユニットを備えた2輪型移動体のキャリブレーション装置について述べる。本実施例における移動体のキャリブレーション装置の構成は図1におけるジャイロセンサ104と加速度センサ105とをビジョンセンサと画像処理装置を組み合わせたセンサユニット2に置き換えたものである。
センサユニット2は、一定周期毎に移動体601(図6)の周辺環境の画像を取り込み、前回の画像との比較差分をとることで移動体601の並進速度および回転速度を計算し出力する。計測された移動体の並進速度v3obs,回転速度をω3obsと表現する。
実施例3におけるマイクロコンピュータ103内部で実行されるタスクと信号の流れを図9に示す。図において901はセンサユニット2出力読み取りタスクである。911−1および911−2はそれぞれセンサユニット2から得られる移動体の並進速度信号、回転速度信号であって、v3obs,ω3obsに相当する。
センサユニット2出力読み取り・処理タスク901は移動体の並進速度信号v3obsおよび回転速度信号ω3obsを逐次読み取り、時系列データとしてメモリ207に保存するタスクである。ジャイロセンサ104(図1)や加速度センサ105(図1)とは異なり、このセンサユニット2はビジョンセンサと画像処理装置を組み合わせた構成であるためバイアスノイズは信号中にほとんど含まれない。しかし、一般に信号へのホワイトノイズの重畳は避け難い。
【0033】
実施例3におけるキャリブレーションの手順とステップ2,4における処理内容は実施例1と同様である。また、各ステップにおけるモータ回転速度指令出力タスク202の処理も、実施例1と同様である。
ステップ1において回転に関する運動学パラメターを求める処理は、実施例1においてωobsをω3obsに置き換えたものであるので、説明は割愛する。
ステップ3において運動学パラメター演算タスク206が並進に関する運動学パラメターPおよびPを求める処理内容は実施例1,2と異なるため、以下で説明する。
ステップ3では、モータ回転速度指令タスク202は時間[0,T]にわたって式(10)のようなモータ回転速度指令を出力する。このときの移動体の並進速度は前述の通りであるが、その計測値であるv3obsにはホワイトノイズd3wが含まれる。
3obs=v+d3w=(p+p)A’sin(αt+δservo’)+d3w
センサユニット2出力読み取り・処理タスク801は、v3obs の値を時間[TS,TS+n×2π/α]にわたってメモリ207に保存する。
運動学パラメター演算タスク206の処理は、指令出力および各種データの保存が完了した後に開始する。
まず、メモリ207に保存された左モータ回転速度ωまたは右モータ回転速度ωの時系列データから、その振幅A’の値を求める。振幅を求める方法は実施例1と同様である。
次いで、メモリ207に保存されたv3obsの時系列データから、その振幅B’を求める。振幅を求める方法は実施例1と同様である。ここでv3obsに含まれるホワイトノイズd3wの影響は小さく抑えられる。
得られる振幅B’と振幅A’との間には
’=(p+p)A’
なる関係がある。また、式(3)から
=(p/p)×p
であるから、上記2式により並進に関する運動学パラメターp、pは、
=p’/(A’(p+p))
=p’/(A’(p+p))
のように求まる。以上で実施例3におけるステップ303の処理は完了である。
以上に示したように、本発明による移動体のキャリブレーション装置はさまざまな種類のセンサを用いて実現することができるのである。キャリブレーションにあたっては、何れの場合も移動体は初期位置付近で振動的に運動するため、移動体の走行する領域は限定される。よってキャリブレーションのために広大な領域を確保する必要はない。
【実施例4】
【0034】
実施例1は2輪型の移動体をキャリブレーション対象としていたが、本発明はオドメトリによって位置推定を行っている移動体に広く適用できるものである。
本発明の実施例4として、図10に示した全方向移動体のキャリブレーション装置についても説明する。
図10において、1002−1〜1002−3はそれぞれ第1モータ〜第3モータ、1003はエンコーダ、1004は減速器、1005−1〜3はそれぞれ第1オムニホイル〜第3オムニホイルである。第1車輪1〜第3車輪は、その回転軸が移動体1001の中心で互いに交わるように、かつ互いのなす角が120°になるように設置する。
実施例4においても装置の基本構成は図1と同じである。ただし、加速度センサ105(図1)は図10では全方向移動体1001に固定した座標系におけるX軸方向およびY軸方向の並進加速度を計測できる2軸加速度センサとする。
計測される移動体加速度をaxobs、ayobsのように表す。また、キャリブレーションの手順は図3と異なるが、単純であるため図示はしない。
【0035】
パラメターp11を求める処理について以下で説明する。
モータ回転速度指令出力タスク202(図2)は、第1モータ1002−1に対して振幅Aref、位相角速度αの正弦波を、第2モータ1002−2、第3モータ1002−3に対して0を、モータ回転速度指令信号211(図2)として一定期間にわたって出力する。すなわち、時間[0、T]において、式(11)とする。
【数11】

ここでAref,α,Tの各設定基準は、実施例1と同様である。
このときのモータ1002−1,1002−2,および1002−3の回転速度は、式(12)である。
【数12】

このときの全方向移動体1001(図10)の並進および回転速度は、式(13)となる。
【数13】

ここでも移動体の走行領域は限定されており、広大な領域を確保する必要はない。移動体のx方向並進加速度は式(14)であって、
【数14】

その計測値axobsvには、一般に、バイアス誤差dDCxとホワイトノイズdwxが含まれる。
【数15】

vxobsは加速度信号214(図2)に相当し、その値を加速度センサ出力読み取りタスク204(図2)によって時間[T、T+n×2π/α]にわたってメモリ207(図2)に保存する。
また、モータ回転速度指令出力タスク202(図2)、ジャイロセンサ出力読み取りタスク203(図2)、加速度センサ出力読み取りタスク204(図2)、エンコーダ信号読み取りおよび差分タスク205(図2)の処理内容は実施例1と同じである。
【0036】
モータ回転速度指令の出力完了後、運動学パラメター演算タスク206(図2)の処理を開始する。
まず、メモリ207に保存されたモータ1回転速度ωの時系列データから、その振幅A”の値を求める。振幅を求める方法は実施例1と同様である。
次いで、加速度センサ出力読み取りタスク204によって保存されたX方向加速度信号の時系列データから、aobsの振幅B”を求める。振幅を求める方法は実施例1と同じである。
得られる振幅B”と振幅A”との間には
B”=αp11A”
なる関係があるため、
11=B”/(αA”)
の演算によってパラメターp11を求める。
他の運動学パラメターも同様の手順で求めることができる。
このように、本発明の移動体のキャリブレーション装置は、オドメトリを適用する移動体の運動学パラメターを精度良く求めることができる。
【0037】
また、本発明のキャリブレーション装置を構成する要素は全て移動体に搭載可能であって、キャリブレーション実施にあたって外部環境に別途設備を用意する必要はない。本キャリブレーション装置を予め搭載した自己キャリブレーション機能を有する移動体を提供することもできる。
【0038】
簡単な構成の装置で移動体の運動学パラメターを精度よく求めることができ、かつキャリブレーション作業に要する手間と空間を大幅に削減できるため、新たに製造された移動ロボットや長期間使用したために運動学パラメターが変化してしまった移動ロボットなどの調整作業に効果的に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の実施例1示す移動体のキャリブレーション装置の構成ブロック図である。
【図2】実施例1示す移動体のキャリブレーション装置におけるマイクロコンピュータ内部の処理タスクと信号の流れを示した図である。
【図3】実施例1おける移動体のキャリブレーション方法の手順を示した流れ図である。
【図4】移動体の回転速度とそのジャイロセンサによる計測値の波形例である。
【図5】平均波形から振幅値を求めることの効果を示した図である。
【図6】実施例1〜3が対象とする2輪型移動体を示した図である。
【図7】本発明の実施例2示す移動体のキャリブレーション装置におけるセンサユニット1の上視図である。
【図8】実施例2示す移動体のキャリブレーション装置におけるマイクロコンピュータ内部の処理タスクと信号の流れを示した図である。
【図9】実施例3示す移動体のキャリブレーション装置におけるマイクロコンピュータ内部の処理タスクと信号の流れを示した図である。
【図10】実施例4が対象とする全方向移動体を示した図である。
【図11】従来技術3において移動体が走行する経路の例を示した図である。
【符号の説明】
【0040】
101 移動体のキャリブレーション装置
102 移動体
103 マイクロコンピュータ
104 ジャイロセンサ
105 加速度センサ
106 AD変換器
107 DA変換器
108 サーボアンプ
109 エンコーダおよびモータ
110 減速器および車輪
201 マイクロコンピュータ内部
202 モータ回転速度指令出力タスク
203 ジャイロセンサ出力読み取りタスク
204 加速度センサ出力読み取りタスク
205 エンコーダ信号読み取りおよび差分タスク
206 運動学パラメター演算タスク
207 マイクロコンピュータ103が内蔵するメモリ
211 モータ回転速度指令信号
212 サーボアンプから得られるエンコーダ信号
213 移動体102の回転速度信号
214 移動体102の前後方向加速度信号
215 運動学パラメター信号
301 回転に関する運動学パラメターを求めるステップ
302 求めた回転に関する運動学パラメターを保存するステップ
303 並進に関する運動学パラメターを求めるステップ
304 求めた並進に関する運動学パラメターを保存するステップ
401 時間軸
402 回転速度軸
403 移動体回転速度の波形
404 ジャイロセンサ104で計測した移動体回転速度の波形
405 左モータ回転速度指令として出力した正弦波の1周期
501−1 n分割したωobsの時系列データの1番目の波形
501−n n分割したωobsの時系列データのn番目の波形
502 n個の波形から求めた1周期分の平均波形
503 平均波形502の最大値と最小値との差を1/2倍(振幅)
601 2輪型移動体
602 右車輪
603 左車輪
604 右モータ
605 左モータ
606 減速器
701 センサユニット1
702−1 第1の1軸加速度センサ
702−2 第2の1軸加速度センサ
703−1 第1の1軸加速度センサ702−1が計測する加速度の正方向
703−2 第2の1軸加速度センサ702−2が計測する加速度の正方向
704 センサユニット1の中心線
705 センサユニット1の移動体正面に対する取り付け方向
801 センサユニット1出力読み取り・処理タスク
811−1 1軸加速度センサ702−1から得られる加速度信号
811−2 1軸加速度センサ702−2から得られる加速度信号
901 センサユニット2出力読み取りタスク
911−1 センサユニット2から得られる移動体の並進速度信号
911−2 センサユニット2から得られる移動体の回転速度信号
1001 全方向移動体
1002−1 モータ1
1002−2 モータ2
1002−3 モータ3
1003 エンコーダ
1004 減速器
1005−1 オムニホイル1
1005−2 オムニホイル2
1005−3 オムニホイル3、
1101 移動体
1102 基準壁
1103 移動体の移動開始点
1104 移動完了点
1105 事前にプログラムされた一辺が4mの正方形の経路
1106 移動体1101が実際に走行した経路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つ以上のモータによって駆動される車輪によって走行する移動体の運動学パラメターのキャリブレーションを行うキャリブレーション装置であって、モータ回転速度計測部と、移動体の回転速度計測部と、車輪を駆動するモータの回転速度指令を出力するモータ回転速度指令部と、前記モータ回転速度計測部の出力値と前記移動体の回転速度計測部の出力値とから前記移動体の運動学パラメターを演算する演算処理部と、を備えたことを特徴とする移動体のキャリブレーション装置。
【請求項2】
1つ以上のモータによって駆動される車輪によって走行する移動体の運動学パラメターのキャリブレーションを行うキャリブレーション装置であって、モータ回転速度計測部と、移動体の回転加速度計測部と、車輪を駆動するモータの回転速度指令を出力するモータ回転速度指令部と、前記モータ回転速度計測部の出力値と前記移動体の回転加速度計測部の出力値とから前記移動体の運動学パラメターを演算する演算処理部と、を備えたことを特徴とする移動体のキャリブレーション装置。
【請求項3】
1つ以上のモータによって駆動される車輪によって走行する移動体の運動学パラメターのキャリブレーションを行うキャリブレーション装置であって、モータ回転速度計測部と、移動体の並進速度計測部と、車輪を駆動するモータの回転速度指令を出力するモータ回転速度指令部と、前記モータ回転速度計測部の出力値と前記移動体の並進速度計測部の出力値とから前記移動体の運動学パラメターを演算する演算処理部と、を備えたことを特徴とする移動体のキャリブレーション装置。
【請求項4】
1つ以上のモータによって駆動される車輪によって走行する移動体の運動学パラメターのキャリブレーションを行うキャリブレーション装置であって、モータ回転速度計測部と、移動体の並進加速度計測部と、車輪を駆動するモータの回転速度指令を出力するモータ回転速度指令部と、前記モータ回転速度計測部の出力値と前記移動体の並進加速度計測部の出力値とから前記移動体の運動学パラメターを演算する演算処理部と、を備えたことを特徴とする移動体のキャリブレーション装置。
【請求項5】
1つ以上のモータによって駆動される車輪によって走行する移動体の運動学パラメターのキャリブレーションを行うキャリブレーション装置であって、モータ回転速度計測部と、移動体の回転速度計測部と、移動体の並進加速度計測部と、車輪を駆動するモータの回転速度指令を出力するモータ回転速度指令部と、前記モータ回転速度計測部の出力値と前記移動体の回転速度計測部の出力値と前記移動体の並進加速度計測部の出力値とから前記移動体の運動学パラメターを演算する演算処理部と、を備えたことを特徴とする移動体のキャリブレーション装置。
【請求項6】
1つ以上のモータによって駆動される車輪によって走行する移動体の運動学パラメターのキャリブレーションを行うキャリブレーション装置であって、モータ回転速度計測部と、移動体の回転加速度計測部と、移動体の並進加速度計測部と、車輪を駆動するモータの回転速度指令を出力するモータ回転速度指令部と、前記モータ回転速度計測部の出力値と前記移動体の回転加速度計測部の出力値と前記移動体の並進加速度計測部の出力値とから前記移動体の運動学パラメターを演算する演算処理部と、を備えたことを特徴とする移動体のキャリブレーション装置。
【請求項7】
1つ以上のモータによって駆動される車輪によって走行する移動体の運動学パラメターのキャリブレーションを行うキャリブレーション装置であって、モータ回転速度計測部と、移動体の回転速度計測部と、移動体の並進速度計測部と、車輪を駆動するモータの回転速度指令を出力するモータ回転速度指令部と、前記モータ回転速度計測部の出力値と前記移動体の回転速度計測部の出力値と前記移動体の並進速度計測部の出力値とから前記移動体の運動学パラメターを演算する演算処理部と、を備えたことを特徴とする移動体のキャリブレーション装置。
【請求項8】
1つ以上のモータによって駆動される車輪によって走行する移動体の運動学パラメターのキャリブレーションを行うキャリブレーション装置であって、モータ回転速度計測部と、移動体の回転加速度計測部と、移動体の並進速度計測部と、車輪を駆動するモータの回転速度指令を出力するモータ回転速度指令部と、前記モータ回転速度計測部の出力値と前記移動体の回転加速度計測部の出力値と前記移動体の並進速度計測部の出力値とから前記移動体の運動学パラメターを演算する演算処理部と、を備えたことを特徴とする移動体のキャリブレーション装置。
【請求項9】
前記演算処理部は、前記移動体の回転速度計測部の出力値の振幅値を得る振幅値取得部を備え、前記モータ回転速度指令部は正負対称の定常波指令を一定期間にわたって出力し、前記演算処理部は前記モータ回転速度の振幅値と前記振幅値取得部で得られた振幅値との比から前記移動体の運動学パラメターを計算することを特徴とする請求項1、5、又は7記載の移動体のキャリブレーション装置。
【請求項10】
前記演算処理部は、前記移動体の回転加速度計測部の出力値の振幅値を得る振幅値取得部を備え、前記モータ回転速度指令部は正負対称の定常波指令を一定期間にわたって出力し、前記演算処理部は前記モータ回転速度の振幅値と前記振幅値取得部で得られた振幅値との比から前記移動体の運動学パラメターを計算することを特徴とする請求項2、6又は8記載の移動体のキャリブレーション装置。
【請求項11】
前記演算処理部は、前記移動体の並進加速度計測部の出力値の振幅値を得る振幅値取得部を備え、前記モータ回転速度指令部は正負対称の定常波指令を一定期間にわたって出力し、前記演算処理部は前記モータ回転速度の振幅値と前記振幅値取得部で得られた振幅値との比から前記移動体の運動学パラメターを計算することを特徴とする請求項4、5又は6記載の移動体のキャリブレーション装置。
【請求項12】
前記演算処理部は、前記移動体の並進速度計測部の出力値の振幅値を得る振幅値取得部を備え、前記モータ回転速度指令部は正負対称の定常波指令を一定期間にわたって出力し、前記演算処理部は前記モータ回転速度の振幅値と前記振幅値取得部で得られた振幅値との比から前記移動体の運動学パラメターを計算することを特徴とする請求項3、7又は8記載の移動体のキャリブレーション装置。
【請求項13】
前記モータ回転速度指令部が出力するのは、一定角周波数の正弦波状の指令であることを特徴とする請求項9〜12のいずれか1項記載の移動体のキャリブレーション装置。
【請求項14】
前記振幅値取得部は、その入力信号の周波数解析を行って前記一定角周波数の振動振幅値を抽出する周波数解析部からなることを特徴とする請求項13記載の移動体のキャリブレーション装置。
【請求項15】
前記移動体の回転速度計測部は、前記一定角周波数に近い振動成分のみを通過するバンドパスフィルタを有していることを特徴とする請求項13記載の移動体のキャリブレーション装置。
【請求項16】
前記移動体の回転加速度計測部は、前記一定角周波数に近い振動成分のみを通過するバンドパスフィルタを有していることを特徴とする請求項13記載の移動体のキャリブレーション装置。
【請求項17】
前記移動体の並進加速度計測部は、前記一定角周波数に近い振動成分のみを通過するバンドパスフィルタを有していることを特徴とする請求項13記載の移動体のキャリブレーション装置。
【請求項18】
前記移動体の並進速度計測部は、前記一定角周波数に近い振動成分のみを通過するバンドパスフィルタを有していることを特徴とする請求項13記載の移動体のキャリブレーション装置。
【請求項19】
前記振幅値取得部は、前記定常波指令の1周期に相当する時間にわたって、前記移動体の回転速度の最大値から最小値を減じた値を1/2倍した値である1周期振幅値を出力することを特徴とする請求項9記載のキャリブレーション装置。
【請求項20】
前記振幅値取得部は、前記定常波指令の1周期に相当する時間にわたって、前記移動体の回転加速度の最大値から最小値を減じた値を1/2倍した値である1周期振幅値を出力することを特徴とする請求項10記載のキャリブレーション装置。
【請求項21】
前記振幅値取得部は、前記定常波指令の1周期に相当する時間にわたって、前記移動体の並進加速度の最大値から最小値を減じた値を1/2倍した値である1周期振幅値を出力することを特徴とする請求項11記載のキャリブレーション装置。
【請求項22】
前記振幅値取得部は、前記定常波指令の1周期に相当する時間にわたって、前記移動体の並進速度の最大値から最小値を減じた値を1/2倍した値である1周期振幅値を出力することを特徴とする請求項12記載のキャリブレーション装置。
【請求項23】
前記振幅値取得部は、前記移動体の回転速度計測部の複数周期にわたる所定時間内の平均的な波形値を求め、その最大値から最小値を減じた値を1/2倍した値を出力することを特徴とする請求項9記載の移動体のキャリブレーション装置。
【請求項24】
前記振幅値取得部は、前記移動体の回転加速度計測部の複数周期にわたる所定時間内の平均的な波形値を求め、その最大値から最小値を減じた値を1/2倍した値を出力することを特徴とする請求項10記載の移動体のキャリブレーション装置。
【請求項25】
前記振幅値取得部は、前記移動体の並進加速度計測部の複数周期にわたる所定時間内の平均的な波形値を求め、その最大値から最小値を減じた値を1/2倍した値を出力することを特徴とする請求項11記載の移動体のキャリブレーション装置。
【請求項26】
前記振幅値取得部は、前記移動体の並進速度計測部の複数周期にわたる所定時間内の平均的な波形値を求め、その最大値から最小値を減じた値を1/2倍した値を出力することを特徴とする請求項12記載の移動体のキャリブレーション装置。
【請求項27】
前記モータ回転速度は、前記モータ回転速度指令で代替されることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項記載の移動体のキャリブレーション装置。
【請求項28】
請求項1〜8のいずれか1項記載の移動体のキャリブレーション装置を搭載したことを特徴とする移動体。
【請求項29】
1つ以上のモータによって駆動される車輪によって走行する移動体の運動学パラメターのキャリブレーションを行うためのキャリブレーション方法であって、
はじめにモータ回転速度とセンサから得られる前記移動体の回転速度とを用いて移動体の回転に関する第1の運動学パラメターを求め、
次いで、求まった第1の運動学パラメターと、モータ回転速度と、センサから得られる前記移動体の並進加速度あるいは並進速度と、を用いて移動体の並進に関する第2の運動学パラメターを求めること
を特徴とする移動体のキャリブレーション方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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