説明

移動体ネットワークシステム

【課題】ひとつのLANを構成する複数の無線LANノードが複数のグループに分かれてしまった場合においても、各グループがそれぞれLAN外部との通信を行うことができる移動体ネットワークシステムを提供する。
【解決手段】個々に移動可能な複数の無線LANノード2と、無線LANノード2から受信したデータに付された無線LANノード2のアドレスをアドレス変換テーブル33内の情報に従って別のアドレスに変換する移動可能なゲートウェイノード3と、このゲートウェイノード3から受信したデータに付された変換後の無線LANノード2のアドレスをアドレス変換テーブル54内の情報に従って再び元の無線LANノード2のアドレスに変換し、アドレス変換テーブル54に格納されている情報をゲートウェイノード3の配下にいずれの無線LANノード2が存在するかを確認して最新の情報に更新する中継装置とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の移動可能な移動体で構成される移動体ネットワークシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
無線LAN(Local Area Network)を利用して、例えば、携帯電話や携帯型ノートパソコン等の携帯情報端末(以下、「無線LANノード」と言う。)が使用される場合に、これら複数の無線LANノードが一つのLANを構成し、このLAN内において自由に移動しつつ使用されることは可能である。
【0003】
例えば、図9に示すように、複数示されている丸印はそれぞれ無線LANノード100を示しており、無線LANノード100のうちの一つがゲートウェイノード101に設定されている。複数の無線LANノード100及び一つのゲートウェイノード101を囲む点線は、これらの無線LANノード100及びゲートウェイノード101で構成される一つのLAN1010を表わしている。無線LANノード100及びゲートウェイノード101から出る矢印には方向性、規則性がなく、これらはLAN1010内において自由に移動可能であることを示している。
【0004】
ゲートウェイノード101は携帯キャリア120へのインターフェイスとアクセスポイント機能を持っているため、このゲートウェイノード101、通信路である携帯キャリア120、アクセスポイント130を介して各無線LANノード100はLAN1010外部との通信が可能である。
【0005】
また、このゲートウェイノード101は複数設定しても良く、このようにすることで通常使用しているゲートウェイノード101が故障した場合であっても、他のゲートウェイノード101を使用することで無線LANノード100はバックアップルートを確保して、外部との間で通信を継続することも可能となる。この際の各無線LANノード100にとってのゲートウェイノード101の切換えについては、例えば、ルーティングプロトコルを使用することができる。
【0006】
すなわち、上述のように無線LANノード100がまとまってLANを一つ構成している場合は、少なくとも一つのゲートウェイノード101が存在することでLAN1010外部との通信が確保される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、この無線LANノード100のまとまりが複数に分かれてそれぞれ別個のグループを構成した場合には、ゲートウェイノード101が存在しないグループもできてしまい、LAN1010外部との通信ができなくなる可能性も出てくる。
【0008】
また、各グループごとに一つのゲートウェイノード101が入るように設定しても、複数の無線LANノード100のうちいずれの無線LANノード100が、いずれのグループに入るかは予め決めることができず、予測することもできないため、複数のゲートウェイノード101ごとにネットワークを分けることは不可能である。
【0009】
さらに、このような不都合を避けるために全ての無線LANノード100を同一のネットワークに属するようにすると、無線LANノード100側からLAN外部に対して通信することはできるが、この送信に対する返信をいずれの無線LANノード100に返して良いのかが不明となり、結局LAN1010外部との通信が不可能な状態となる。
【0010】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、本発明の目的は、ひとつのLANを構成する複数の無線LANノードが複数のグループに分かれてしまった場合においても、各グループがそれぞれLAN外部との通信を行うことができる移動体ネットワークシステムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の実施の形態に係る特徴は、移動体ネットワークシステムにおいて、個々に移動可能な複数の無線LANノードと、無線LANノードから受信したデータに付されている無線LANノードのアドレスをアドレス変換テーブル内に予め格納されている情報に従ってNAT処理により別のアドレスに変換し、及び中継装置から受信したデータに付されている宛先アドレスをアドレス変換テーブル内に予め格納されている情報に従ってNAT処理により宛先となる無線LANノードのアドレスに変換する、移動可能なゲートウェイノードと、ゲートウェイノードから受信したデータに付されているゲートウェイノードにおいて変換された送信元である無線LANノードのアドレスをアドレス変換テーブル内に予め格納されている情報に従ってNAT処理により再び元の無線LANノードのアドレスに変換し、及び通信の相手側から受信したデータに付されている宛先アドレスである無線LANノードのアドレスをアドレス変換テーブル内に予め格納されている情報に従ってNAT処理により別の無線LANノードのアドレスに変換するとともに、アドレス変換テーブルに格納されている情報をゲートウェイノードの配下にいずれの無線LANノードが存在するかを確認することで最新の情報に更新する中継装置とを備える。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ひとつのLANを構成する複数の無線LANノードが複数のグループに分かれてしまった場合においても、各グループがそれぞれLAN外部との通信を行うことができる移動体ネットワークシステムを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0014】
(第1の実施の形態)
図1に示すように、本発明の第1の実施の形態に係る移動体ネットワークシステム1は、自由に移動可能な複数の無線LANノード2a、2b、2c・・・(以下、適宜「無線LANノード2」と言う。)と、自由に移動可能なゲーウェイノード3a、3b、3c・・・(以下、適宜「ゲートウェイノード3」と言う。)と、ゲートウェイノード3及び携帯キャリアのネットワーク4を介して無線LANノード2から送信されたデータパケットを受信し、インターネットを経由して送信の相手方に中継する中継装置5とから構成される。
【0015】
無線LANノード2は、例えば、無線により通信可能とされている携帯電話や携帯型ノートパソコン等の携帯情報端末であり、図1ではノートパソコンを例にとって記載している。無線LANノード2は、例えば机等に固定されてはおらず、自由に移動可能な状態である。また、本発明の実施の形態においては、複数の無線LANノード2が集まって一つのLANを構成しており、各無線LANノード2は同一のネットワークのIPアドレスを有している。
【0016】
ゲートウェイノード3は、無線LANノード2から無線で送信されてきたデータを携帯キャリアのネットワーク4を介してLANの外に設けられている中継装置5に対して送信する。その際、ゲートウェイノード3は、無線LANノード2に付されている送信元IPアドレス(無線LANノード2のIPアドレス)と宛先アドレス(送信の相手方のIPアドレス)のうち送信元アドレスのIPアドレスを変換して中継装置5へ送信する。このゲートウェイノード3は1つのLAN内に単数又は複数存在し、そのLAN内において無線LANノード2と同様、自由に移動することができる。なお、図1では無線LANノード2a、2b、2cがそれぞれゲートウェイノード3a、3b、3cに無線でデータを送信しているように描かれているが、無線LANノード2はいずれのゲートウェイノード3にデータを送信してもよい。
【0017】
中継装置5は、ゲートウェイノード3から送信されてきたデータを受信して送信先の相手方へインターネット網を介して送信する。その際、ゲートウェイノード3で変換された送信元IPアドレスである無線LANノード2のIPアドレスを再度変換して送信する。
【0018】
なお、以下、無線LANノード2からゲートウェイノード3、中継装置5を経由して相手方へデータが送信される流れを「上り」、相手方から中継装置5、ネットワーク4を経由して無線LANノード2へデータが送信される流れを「下り」と表記する。
【0019】
図2に示すように、ゲートウェイノード3は、データを受信する受信手段31と、無線LANノード2から接続する相手方へ向けて送信されるデータに含まれる送信元の無線LANノード2のIPアドレスを別のIPアドレスに変換する上りデータアドレス変換手段32と、変換前のIPアドレスと変換後のIPアドレスの関係を予め決めておきその関係を格納(記憶)するアドレス変換テーブル33と、中継装置5によって変換されたIPアドレスを宛先となる無線LANノード2のIPアドレスに変換する下りデータアドレス変換手段34と、データを送信する送信手段35とから構成される。なお、以下、変換される前のIPアドレスを「変換前IPアドレス」と、変換された後のIPアドレスを「変換後IPアドレス」という。
【0020】
上りデータアドレス変換手段32では、無線LANノード2から送信されてきたデータに付けられている送信元である無線LANノード2のIPアドレスが変換前IPアドレスに該当する。この変換前IPアドレスをアドレス変換テーブル33内に格納されている変換前IPアドレスに対応する変換後IPアドレスに変換する。IPアドレスをどのような関係の下で変換するかは予め決められてアドレス変換テーブル33に記憶されており、上りデータアドレス変換手段32或いは下りデータアドレス変換手段34は、その関係に従って変換を行う。
【0021】
アドレス変換テーブル33内の変換テーブルに従って変換されたIPアドレス(変換後IPアドレス)は、無線LANノード2から送信されてきたデータに改めて付けられて、送信手段35を介して中継装置5に向けて出力される。
【0022】
図3に示すように、中継装置5は、データを受信する受信手段51と、ゲートウェイノード3から受信したデータに付されているアドレスを判断するアドレス判断手段52と、ゲートウェイノード3で変換されたIPアドレスを別のIPアドレスに変換する上りデータアドレス変換手段53と、変換前のIPアドレスと変換後のIPアドレスの関係を予め決めておきその関係を格納(記憶)するアドレス変換テーブル54と、通信の相手方から無線LANノード2へ向けて送信されるデータに含まれるIPアドレスをそのIPアドレスに対応するIPアドレスに変換する下りデータアドレス変換手段55と、データを送信する送信手段56とから構成される。
【0023】
アドレス判断手段52は、中継装置5に送信されてきたデータに付されているIPアドレスの中でも特に宛先アドレスを確認する。このアドレス判断手段52は、アドレス変換テーブル54にアクセスして、送信されてきたデータに付されている宛先アドレスがアドレス変換テーブル54に格納されているか否かを確認する。このアドレス変換テーブル54に宛先アドレスが格納されていない場合は、LAN10を構成する他の無線LANノード2にデータを送信するのではなく、インターネットを経由してLAN10の外部へとデータが送信されると判断する。
【0024】
アドレス判断手段52によりデータの宛先アドレスが他の無線LANノード2のアドレスではないと確認されると、上りデータアドレス変換手段53は、アドレス変換テーブル54内に格納されているテーブルに従って、ゲートウェイノード3において変換された送信元である無線LANノード2aのIPアドレスをさらに変換する。具体的には、一旦ゲートウェイノード3で無線LANノード2のIPアドレスを変換しているが、この変換されたIPアドレスを再度、無線LANノード2が本来持っているIPアドレスに戻す変換を行う。その後インターネット網を介して相手方にデータを送信する。
【0025】
一方、相手方から送信されてきた返信データは、中継装置5の受信手段51で受信され、下りデータアドレス変換手段55にてアドレスが変換される。この返信データに付されていたIPアドレス(変換前IPアドレス)は中継装置5から相手方にデータを送信した際に付されていた無線LANノード2のIPアドレスである。この変換前IPアドレスを変換した変換後IPアドレスをデータに付して送信手段56からゲートウェイノード3へ送信する。
【0026】
ゲートウェイノード3において中継装置5から送信されてきたデータは、受信手段31を介して下りデータアドレス変換手段34に入力される。この中継装置5から送信されてきたデータに付けられているIPアドレスがこの場合における変換前IPアドレスに該当する。下りデータアドレス変換手段34は、変換前IPアドレスをアドレス変換テーブル33内に格納されている変換前IPアドレスに対応する変換後IPアドレスに変換する。この変換後IPアドレスは、もともと送信元である無線LANノード2が持っているIPアドレスである。このIPアドレスに基づいて送信の相手方からデータが送信元の無線LANノード2に届けられる。
【0027】
以下、図を用いて上記の内容を具体的に説明する。
【0028】
図4は、図1で示した移動体ネットワークシステム1を模式図で示した図である。複数の無線LANノード2とゲートウェイノード3a、3bがあり、ゲートウェイノード3a、3bは携帯キャリアのネットワークを介して中継装置5にデータを送信し、さらに図4には図示しないインターネット網を通じて相手方へデータを送信する。複数の無線LANノード2が一つのLAN10を構成している。また、図4においては、ゲートウェイノード3a、3bを無線LANノード2と区別するために二重丸で示し、上りデータアドレス変換手段32及び下りデータアドレス変換手段34をアドレス変換処理を行う手段として明示している。中継装置5は、ゲートウェイノード3a、3bから送信されたデータが入力される。中継装置5においても上りデータアドレス変換手段53及び下りデータアドレス変換手段55によって送信元である無線LANノード2のIPアドレスが変換される。なお、中継装置5は、RAS(Remote Access Service)の機能を有していてもよい。
【0029】
図5に示すように、送信元である無線LANノード2aがデータを送信する相手方であるCとの間でデータのやり取りをする場合、ゲートウェイノード3a、中継装置5を介してデータのやり取りを行う。ここでは、説明の便宜上、例えば無線LANノード2aのIPアドレスを「A」と表わし、相手方CのIPアドレスを「C」と表わす。無線LANノード2aと相手方Cとの間でやり取りされるデータDのヘッダーには、送信元である無線LANノード2aのIPアドレス「A」と送信先である相手方のIPアドレス「C」が含まれている。
【0030】
無線LANノード2aから送信されてきたデータは、ゲートウェイノード3a内に設けられている上りデータアドレス変換手段32において無線LANノード2aのIPアドレス「A」がIPアドレス「A’」に変換される。なお、アドレス変換処理はNAT(Network Address Translation)と呼ばれる(以下、このアドレス変換処理を適宜「NAT処理」という)。ゲートウェイノード3aにおいてNAT処理が行われたデータD1のヘッダーには、送信元アドレスとして「A’」、宛先アドレスとして「C」が含まれている。
【0031】
ゲートウェイノード3aから送信されてきたデータは、中継装置5内に設けられている上りデータアドレス変換手段53において、ゲートウェイノード3aで一旦変換されたIPアドレス「A’」からもともと無線LANノード2aが持っているIPアドレス「A」に変換される。すなわち、中継装置5においてNAT処理が行われたデータD2のヘッダーには、送信元アドレスとして「A」、宛先アドレスとして「C」が含まれている。この状態で相手方Cにデータが送信される。
【0032】
一方、相手方Cから無線LANノード2aへ返信がされる場合、データのヘッダーには送信元アドレスとして「C」、宛先アドレスとして「A」が含まれる。インターネット網を通じて相手方Cから送信されたデータを受信した中継装置5は、下りデータアドレス変換手段55にて宛先アドレスである「A」を「A’」へ変換するNAT処理を行う。すなわち、中継装置5からゲートウェイノード3aに向けて送信されるデータのヘッダーに含まれる送信元アドレスは「C」、宛先アドレスは「A’」となる。ゲートウェイノード3aでは、受信したデータの宛先アドレスを「A’」から「A」にさらに変換するNAT処理を行い、無線LANノード2aへ送信する。無線LANノード2aは、ヘッダーの送信元アドレスが「C」、宛先アドレスが「A」とされるデータを受信する。
【0033】
図5には、無線LANノード2bがゲートウェイノード3b、中継装置5を介して相手方Cとデータのやり取りをする場合についても図示されているが、ゲートウェイノード3b及び中継装置5において行われるNAT処理は、上述した無線LANノード2aが相手方Cとデータのやり取りを行う場合と同様である。
【0034】
図6は、ゲートウェイノード3、中継装置5におけるNAT処理の流れを説明する説明図であり、縦軸は各機器における処理の流れを示し、各機器の縦軸をつなぐ横軸(矢印)はデータの流れを示している。ここでは、例えば、無線LANノード2aが相手方Cとの間でデータを送受信する場合を例にとって説明する。
【0035】
まず、データの送信元である無線LANノード2aのIPアドレスを仮に「192.168.0.1」とする。無線LANノード2aからゲートウェイノード3aにデータが送信されるとこのデータを受信したゲートウェイノード3aの上りデータアドレス変換手段32は、送信元である無線LANノード2aの送信元アドレス(変換前アドレス)「192.168.0.1」を例えば「192.168.1.1」(変換後アドレス)に変換するNAT処理を行う。上述のように、変換前アドレスと変換後アドレスは予め関連付けられてアドレス変換テーブル33内に格納されている。
【0036】
ゲートウェイノード3aにおいて「192.168.1.1」と変換された無線LANノード2aの変換後アドレスは、データのヘッダーに含まれて中継装置5に送信される。このデータを受信した中継装置5は、変換後アドレス「192.168.1.1」を再度「192.168.0.1」に戻す変換処理を行う。このIPアドレスを送信元アドレスとしてデータのヘッダーに含めてインターネット網を通じて相手方Cへ送信する。
【0037】
相手方Cから無線LANノード2aへデータが返信される場合、データのヘッダーに含まれる宛先アドレス(この場合は無線LANノード2aのアドレス)は、相手方Cに送信されてきたデータに含まれていた「192.168.0.1」である。
【0038】
相手方Cから送信されたデータは、中継装置5の下りデータアドレス変換手段55において宛先アドレス「192.168.0.1」を「192.168.1.1」に変換するNAT処理を行う。この「192.168.1.1」をヘッダーに含むデータがゲートウェイノード3aに送信され、ゲートウェイノード3aではヘッダーに含まれた宛先アドレス「192.168.1.1」を再度「192.168.0.1」に変換する。この変換後アドレスをヘッダーに含めて無線LANノード2aにデータを送信する。この変換後のアドレスは、もともと無線LANノード2aが持っているIPアドレスであるので、この宛先アドレスが含まれたデータは間違いなく無線LANノード2aに届くことになる。
【0039】
上述のように、ゲートウェイノード3は、アドレス変換テーブル33を有しているが、このアドレス変換テーブル33内に格納されている変換前アドレスと変換後アドレスの関係は、例えば、図7(a)(b)に示すように予め決められている。これは複数存在するゲートウェイノード3のいずれにおいても同様である。例えば、図7(a)は、ゲートウェイノード3aに設けられているアドレス変換テーブル33aに予め格納されている変換前アドレスと変換後アドレスの関係を表にして示すものである。なお、図において中央の左右に向いている矢印の向かって左側に無線LANノード2のIPアドレスが、向かって右側にゲートウェイノード3aが送信中継装置5との間でデータを送受信する際にデータに含まれる無線LANノード2の変換後のIPアドレスがそれぞれ記載されている。
【0040】
このテーブルによれば、IPアドレス「192.168.0.1」を有する無線LANノード2aがゲートウェイノード3aを介して中継装置5にデータを送信する場合には、「192.168.1.1」というIPアドレスに変換されることがわかる。また、IPアドレス「192.168.0.2」を有する無線LANノード2bは、「192.168.1.2」というIPアドレスに変換される。
【0041】
一方、図7(b)は、ゲートウェイノード3bに設けられているアドレス変換テーブル33bに予め格納されている変換前アドレスと変換後アドレスの関係を示す。このテーブルによると、IPアドレス「192.168.0.1」を有する無線LANノード2aがゲートウェイノード3bを介して中継装置5にデータを送信する場合には、「192.168.2.1」というIPアドレスに変換されることがわかる。また、IPアドレス「192.168.0.2」を有する無線LANノード2bは、「192.168.2.2」というIPアドレスに変換される。
【0042】
このように、このゲートウェイノード3における無線LANノード2のIPアドレスの変換は、各ゲートウェイノード3ごとに規則性がある。例えば、無線LANノード2aのIPアドレスは「192.168.0.1」であるが、この無線LANノード2aが中継装置5にデータを送信する際にゲートウェイノード3aを介すると、「192.168.1.1」というIPアドレスに変換される。一方、ゲートウェイノード3bを介すると、「192.168.2.1」というIPアドレスに変換される。このゲートウェイノード3ごとの規則性は、予め決められているものであり、各ゲートウェイノード3において重複することはない。
【0043】
また、中継装置5においても図7(c)に示すような変換前アドレスと変換後アドレスの関係表がアドレス変換テーブル54に格納されている。この表によれば、「192.168.1.1」とゲートウェイノード3aにおいて変換されたIPアドレスは、中継装置5において再度「192.168.0.1」というIPアドレスに変換される。このIPアドレスは、もともと無線LANノード2aが有しているIPアドレスである。また、例えば、「192.168.2.2」のIPアドレスは、「192.168.0.2」というIPアドレスに変換され、このアドレスは、無線LANノード2bが有しているIPアドレスである。なお、中継装置5としては、ゲートウェイノード3から送信されてきたデータのヘッダーに付されているIPアドレスを見るだけでいずれのゲートウェイノード3から送信されてきたデータであるか把握することができる。例えば、第1の実施の形態においては、第3オクテットの部分が「0」とされている無線LANノード2のIPアドレスを「1」と変換するのはゲートウェイノード3aであり、「2」と変換するのはゲートウェイノード3bである。
【0044】
このように、中継装置5がいずれのゲートウェイノード3からデータを送信されたのか、或いは、ゲートウェイノード3でどのようなアドレス変換が行われたのかを把握するためには、中継装置5のアドレス変換テーブル54においてゲートウェイノード3でのアドレス変換の表を格納しておかなければならない。そのためには、予めゲートウェイノード3のアドレス変換テーブル33と同じ変換表を中継装置5のアドレス変換テーブル54にも設定しておく。或いは、SNMP(Simple Network Management Protocol)を利用して各ゲートウェイノード3のアドレス変換テーブル33に格納されている変換表を取得する。そして、中継装置5は適宜この変換表を最新のものに更新することで、新たな無線LANノード2やゲートウェイノード3が増加した場合にもNAT処理を適切に行うことができ、送信されてきたデータを確実に宛先となっている無線LANノード2に送信することができる。
【0045】
中継装置5がアドレス変換テーブル54のテーブルを適宜最新のものに更新する方法としては、例えば、以下の方法を挙げることができる。すなわち、まず、各ゲートウェイノード3にデータを送信する可能性のある無線LANノード2の存在を確認し、同時に各無線LANノード2の変換前のアドレスも確認してテーブルを最新のものに更新する。なお、この無線LANノード2の存在を確認するには、中継装置5から各方角にブロードキャストピン(ping)を送信する、無線LANノード2から定期的に中継装置5等にピン(ping)を行わせてそのピン(ping)を中継装置5が監視する、或いは、各ゲートウェイノード3が自らにデータを送信してくる無線LANノード2のアドレスの情報を中継装置5に送信する等の方法が考えられる。
【0046】
また、無線LANノード2のゲートウェイノード3における変換後のアドレスを知ることにより中継装置5がアドレス変換テーブル54のテーブルを最新のものに更新することも可能である。そもそもこのテーブルには各ゲートウェイノード3内のアドレス変換テーブル33の登録内容が格納されていることから、中継装置5がテーブルの内容を更新する際、各ゲートウェイノード3に格納されている無線LANノード2のアドレスのうち、実際に各ゲートウェイノード3を介してデータを送信している無線LANノード2のアドレスを把握することで、最新のテーブルに更新することができる。また、予め無線LANノード2のアドレスを規則性を持たせて各ゲートウェイノード3において変換させることにより、各ゲートウェイノード3における無線LANノード2の変換後のアドレスを知れば中継装置5は自身のテーブルを最新のものに更新できる。
【0047】
このようにすることで、割り当てられている少ないIPアドレスを複数の無線LANノードで効率よく使用することができるとともに、ひとつのLANを構成する複数の無線LANノードが複数のグループに分かれてしまった場合においても、各グループがそれぞれLAN外部との通信を行うことができる移動体ネットワークシステムを提供することができる。
【0048】
(第2の実施の形態)
次に本発明における第2の実施の形態について説明する。なお、第2の実施の形態において、上述の第1の実施の形態において説明した構成要素と同一の構成要素には同一の符号を付し、同一の構成要素の説明は重複するので省略する。
【0049】
第2の実施の形態は、図8に示すように、第1の実施の形態とは異なり各無線LANノード2は中継装置5を介して相手方Cではなく他の無線LANノード2へデータを送信する形態であり、自らのアドレスを変換するだけではなくデータの送信先である他の無線LANノード2のアドレスも変換する。
【0050】
図8に示すように、送信元無線LANノード2aがデータを送信する相手方である無線LANノード2bとの間でデータのやり取りをする場合、ゲートウェイノード3a、中継装置5、ゲートウェイノード3bを介してデータのやり取りを行う。ここでは、説明の便宜上、例えば無線LANノード2aのIPアドレスを「A」と表わし、相手方無線LANノード2bのIPアドレスを「B」と表わす。無線LANノード2aと無線LANノード2bとの間でやり取りされるデータDのヘッダーには、送信元である無線LANノード2aのIPアドレス「A」と送信先である無線LANノード2bのIPアドレス「B」が含まれている。
【0051】
ゲートウェイノード3a内に設けられている上りデータアドレス変換手段32は、無線LANノード2aから送信されてきたデータDに含まれる無線LANノード2aのIPアドレス「A」をIPアドレス「A’」に変換する。そしてさらに、宛先である無線LANノード2bのIPアドレス「B」も「B’」と変換する。ゲートウェイノード3aにおいてNAT処理が行われたデータDのヘッダーには、送信元アドレスとして「A’」、宛先アドレスとして「B’」が含まれている。すなわち、無線LANノード2同士でデータの送受信を行う場合には、ゲートウェイノード3内の上りデータアドレス変換手段32及び下りデータアドレス変換手段34において、送信元及び宛先両者のIPアドレスを変換する。
【0052】
中継装置5は、ゲートウェイノード3aから送信されてきたデータDに含まれている宛先アドレス「B’」が上りデータアドレス変換手段53内に格納されているか否かをアドレス判断手段52がアドレス変換テーブル54にアクセスして判断する。このアドレス変換テーブル54に宛先アドレスが格納されている場合は、インターネットを経由してLAN10の外部へとデータが送信されるのではなく、LAN10を構成する他の無線LANノード2にデータを送信すると判断する。この場合は、上りデータアドレス変換手段53において送信元、宛先いずれのアドレスも変換せず、また、無線LANノード2aから送信されたデータDをインターネットを介してLANの域外に送信することなくゲートウェイノード3aから送信されてきたデータDに含まれているアドレスそのままの状態でゲートウェイノード3bへ送信する。なお、中継装置5の内部構成を示す図3においては、この場合のデータをアドレス判断手段52から上りデータアドレス変換手段53を回避して送信手段56へと送るように記載されているが、このような迂回路を設けずに上りデータアドレス変換手段53を経由するもアドレスは一切変換しない構成とすることも可能である。
【0053】
無線LANノード2aから無線LANノード2bへ送信されるデータDを中継装置5から受信したゲートウェイノード3bは、このデータDに付されている送信元アドレス「A’」及び宛先アドレス「B’」をそれぞれ「A」及び「B」に変換するNAT処理を行い、無線LANノード2bへ送信する。無線LANノード2bは、ヘッダーの送信元アドレスが「A」、宛先アドレスが「B」とされるデータを受信する。
【0054】
第2の実施の形態では、同一のLAN10を構成する他の無線LANノード2へデータを送信することから、上述のようにゲートウェイノード3においては無線LANノード2から送信されてきたデータに付されている送信元アドレスだけではなく、宛先アドレスも変換される。そのため、ゲートウェイノード3内に設けられているアドレス変換テーブル33内には常にゲートウェイノード3にデータを送信してくる可能性のある無線LANノード2のアドレスを逐次更新して格納しておく必要がある。
【0055】
ゲートウェイノード3がアドレス変換テーブル33内に格納する無線LANノード2のIPアドレスを適宜最新のものに更新するタイミングは、上述した第1の実施の形態において中継装置5がアドレス変換テーブル54を最新のものへの更新に同期している。すなわち、中継装置5がアドレス変換テーブル54を更新すると、中継装置5はゲートウェイノード3に更新内容を通知する。この更新内容を受信したゲートウェイノード3は、自己のアドレス変換テーブル33内に格納されていない無線LANノード2のIPアドレスを選択し格納する。
【0056】
また、ゲートウェイノード3のアドレス変換テーブル33がこのように更新されることから、通常はデータを送受信することのない無線LANノード2のアドレスも取得することになる。そこで、ゲートウェイノード3では、このような無線LANノード2のアドレスを取得すると、本来このような無線LANノード2へとの間でデータを送受信するゲートウェイノード3に代理して、例えば中継装置5からデータを受信する応答を行う。
【0057】
このようにすることで、ひとつのLANを構成する複数の無線LANノードが複数のグループに分かれてしまった場合においても、各グループに属する無線LANノード間において通信を行うことができる移動体ネットワークシステムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る移動体ネットワークシステムを示す構成図である。
【図2】ゲートウェイノードの構成を示すブロック図である。
【図3】中継装置の構成を示すブロック図である。
【図4】図1で示した移動体ネットワークシステムを示す模式図である。
【図5】第1の実施の形態において無線LANノード、ゲートウェイノード、中継装置及び通信の相手方とのそれぞれの間で行われるデータのやり取りを説明する説明図である。
【図6】ゲートウェイノード、中継装置におけるNAT処理の流れを説明する説明図である。
【図7】アドレス変換テーブルに予め格納されている変換前アドレスと変換後アドレスの関係を示す表であり、(a)及び(b)はゲートウェイノードに設けられているアドレス変換テーブル内に、(c)は中継装置に設けられているアドレス変換テーブル内にそれぞれ格納されている表である。
【図8】第2の実施の形態において無線LANノード、ゲートウェイノード、及び中継装置とのそれぞれの間で行われるデータのやり取りを説明する説明図である。
【図9】従来無線LANノード、ゲートウェイノード、中継装置及び通信の相手方とのそれぞれの間で行われるデータのやり取りを説明する説明図である。
【符号の説明】
【0059】
1 移動体ネットワークシステム
2 無線LANノード
3 ゲートウェイノード
4 携帯キャリアのネットワーク
5 中継装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
個々に移動可能な複数の無線LANノードと、
前記無線LANノードから受信したデータに付されている前記無線LANノードのアドレスをアドレス変換テーブル内に予め格納されている情報に従ってNAT処理により別のアドレスに変換し、及び中継装置から受信したデータに付されている宛先アドレスをアドレス変換テーブル内に予め格納されている情報に従ってNAT処理により宛先となる無線LANノードのアドレスに変換する、移動可能なゲートウェイノードと、
前記ゲートウェイノードから受信したデータに付されている前記ゲートウェイノードにおいて変換された送信元である無線LANノードのアドレスをアドレス変換テーブル内に予め格納されている情報に従ってNAT処理により再び元の無線LANノードのアドレスに変換し、及び通信の相手側から受信したデータに付されている宛先アドレスである無線LANノードのアドレスをアドレス変換テーブル内に予め格納されている情報に従ってNAT処理により別の無線LANノードのアドレスに変換するとともに、前記アドレス変換テーブルに格納されている情報を前記ゲートウェイノードの配下にいずれの無線LANノードが存在するかを確認することで最新の情報に更新する中継装置と、
を備えることを特徴とする移動体ネットワークシステム。
【請求項2】
前記中継装置は、前記ゲートウェイノード内のアドレス変換テーブルに格納されている前記無線LANノードの変換後のアドレスを把握することにより自らのアドレス変換テーブルに格納された情報を最新の情報に更新することを特徴とする請求項1に記載の移動体ネットワークシステム。
【請求項3】
前記ゲートウェイノードは自らが保持するアドレス変換テーブルに格納された情報の最新の情報への更新を、前記中継装置がアドレス変換テーブルに格納された情報を最新の情報に更新する機会と同期させて行うことを特徴とする請求項1または請求項2のいずれかに記載の移動体ネットワークシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−259338(P2007−259338A)
【公開日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−84183(P2006−84183)
【出願日】平成18年3月24日(2006.3.24)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(301063496)東芝ソリューション株式会社 (1,478)
【Fターム(参考)】