説明

移動体用測位装置

【課題】測位に用いる衛星の組み合わせが変化した場合にその後の測位結果を精度良く補正すること。
【解決手段】本発明による移動体用測位装置は、測位に用いる衛星の組み合わせが変化したか否かを判定する判定手段と、ドップラシフトの観測値を用いて前記移動体の速度ベクトルを算出する速度ベクトル算出手段と、衛星信号に基づいて前記移動体の位置を測位する測位手段と、前記測位手段により測位された前記移動体の位置の測位結果の変化に基づいて所定時間内における前記移動体の移動ベクトルを算出する移動ベクトル算出手段と、前記判定手段により前記衛星の組み合わせが変化したと判定された場合に、前記速度ベクトル算出手段により算出された速度ベクトルと、前記移動ベクトル算出手段により算出された移動ベクトルの双方のベクトルを用いて、前記測位手段により測位された前記移動体の位置を補正する補正手段とを含むことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動体の位置等を測位する移動体測位装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、測位に用いるGPS衛星を所定の論理で所定個数選択し、選択したGPS衛星の組み合わせを示す選択衛星情報を出力する衛星選択演算部と、選択衛星情報に係るGPS衛星から信号を受信し、これに基づき各GPS衛星との擬似距離を求め擬似距離データとして出力する受信部と、選択衛星情報及び擬似距離データに基づき、自位置を求め位置データとして出力する測位演算部と、を備えるGPS受信装置において、選択衛星情報に基づき測位に用いるGPS衛星の組み合わせが変化したか否かを判定し、変化した場合には新たに選択されたGPS衛星について変化前の自位置を基準とした擬似距離補正量を求め、これを擬似距離補正データとして出力する距離補正値演算部を備え、測位演算部が、新たに選択されたGPS衛星に係る擬似距離データを擬似距離補正データにより補正し、自位置を演算することを特徴とするGPS受信装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特許第3182198号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上述の特許文献1に記載の発明では、GPS衛星の組み合わせが変化した場合に、GPS衛星の組み合わせの変化前の自位置を基準として、新たに選択されたGPS衛星と自位置の間の距離(以下、便宜上、「衛星車両間距離」という)を求め、当該求めた衛星車両間距離から、新たに選択されたGPS衛星に対する擬似距離の計測値を差し引くことで、擬似距離補正量を求めている。この構成では、衛星車両間距離が、GPS衛星の組み合わせの変化前の自位置を基準として求められている一方で、新たに選択されたGPS衛星に対する擬似距離は、当然ながら、GPS衛星の組み合わせの変化後の観測値から算出されることになる。従って、GPS衛星の組み合わせの変化前後に車両が移動していると(一般的に移動している場合が多い)、時間的にずれた幾何的位置関係に基づいて擬似距離補正量が導出されることになるので、擬似距離補正量が適切な補正量とならない虞がある。
【0004】
そこで、本発明は、測位に用いる衛星の組み合わせが変化した場合にその後の測位結果を精度良く補正することができる移動体用測位装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、第1の発明は、移動体に搭載され、3つ以上の衛星から放送される衛星信号に基づいて前記移動体の位置及び/又は速度を測位する移動体用測位装置において、
測位に用いる衛星の組み合わせが変化したか否かを判定する判定手段と、
前記衛星信号の搬送波のドップラシフトの観測値を用いて前記移動体の速度ベクトルを算出する速度ベクトル算出手段と、
前記衛星信号に基づいて前記移動体の位置を測位する測位手段と、
前記測位手段により測位された前記移動体の位置の測位結果の変化に基づいて所定時間内における前記移動体の移動ベクトルを算出する移動ベクトル算出手段と、
前記判定手段により前記衛星の組み合わせが変化したと判定された場合に、前記速度ベクトル算出手段により算出された速度ベクトルと、前記移動ベクトル算出手段により算出された移動ベクトルの双方のベクトルを用いて、前記測位手段により測位された前記移動体の位置を補正する補正手段とを含むことを特徴とする。
【0006】
第2の発明は、第1の発明に係る移動体用測位装置において、
前記速度ベクトル算出手段により算出された前記速度ベクトルに基づいて、前記所定時間内における前記移動体の移動ベクトル(以下、第2移動体ベクトルという)を算出する第2移動体ベクトル算出手段を更に含み、
前記補正手段は、前記判定手段により前記衛星の組み合わせが変化したと判定された場合に、前記第2移動体ベクトル算出手段により算出された第2移動ベクトルと、該衛星の組み合わせの変化前後の前記測位手段による測位結果の変化に基づいて前記移動ベクトル算出手段により算出された前記移動ベクトルとの差分を取ることで補正ベクトルを算出し、該算出した補正ベクトルと、前記衛星の組み合わせの変化前の前記衛星信号に基づいて前記測位手段により測位された前記移動体の位置とに基づいて、前記衛星の組み合わせの変化後の前記衛星信号に基づいて前記測位手段により測位された前記移動体の位置を補正することを特徴とする。この場合、前記補正ベクトルの算出に用いる第2移動ベクトルは、好ましくは、該衛星の組み合わせの変化前若しくは変化後の前記ドップラシフトの観測値に基づいて前記速度ベクトル算出手段により算出された前記速度ベクトルを用いて導出され、より好ましくは、該衛星の組み合わせの変化前(好ましくは直前周期)の前記ドップラシフトの観測値に基づいて前記速度ベクトル算出手段により算出された前記速度ベクトルを用いて導出される。
【0007】
第3の発明は、第2の発明に係る移動体用測位装置において、
前記補正手段は、前記判定手段により前記衛星の組み合わせが変化したと判定された場合に、その後に前記判定手段により前記衛星の組み合わせが変化したと判定されるまでの間、前記算出した補正ベクトルを継続的に用いて前記測位手段により継続的に測位される前記移動体の位置を補正することを特徴とする。
【0008】
第4の発明は、第3の発明に係る移動体用測位装置において、
前記補正手段は、前記判定手段により前記衛星の組み合わせが変化したと判定された後の経過時間若しくは前記移動体の移動距離に応じて、前記算出した補正ベクトルを変化させることを特徴とする。
【0009】
第5の発明は、第6の発明に係る移動体用測位装置において、
前記補正手段は、前記判定手段により前記衛星の組み合わせが変化したと判定された後の経過時間若しくは前記移動体の移動距離に応じて、前記算出した補正ベクトルの大きさを徐々に小さくすることを特徴とする。
【0010】
第6の発明は、第2〜5のうちのいずれかの発明に係る移動体用測位装置において、
前記補正手段は、前記判定手段により前記衛星の組み合わせが変化したと判定された場合であって、その後に前記判定手段により前記衛星の組み合わせが変化したと再び判定された場合に、最初の前記衛星の組み合わせの変化時に算出した前記補正ベクトルと、その後の前記衛星の組み合わせの変化時に算出した前記補正ベクトルとを用いて、前記補正ベクトルを更新することを特徴とする。
【0011】
第7の発明は、第1の発明に係る移動体用測位装置において、
前記補正手段は、前記判定手段により前記衛星の組み合わせが変化したと判定された場合に、前記速度ベクトル算出手段により算出される速度ベクトルの誤差の統計値と、前記測位手段により測位される前記移動体の位置の誤差の統計値とに基づいて、補正ベクトルを算出し、該算出した補正ベクトルと、前記衛星の組み合わせの変化前の前記衛星信号に基づいて前記測位手段により測位された前記移動体の位置とに基づいて、前記衛星の組み合わせの変化後の前記衛星信号に基づいて前記測位手段により測位された前記移動体の位置を補正することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、測位に用いる衛星の組み合わせが変化した場合にその後の測位結果を精度良く補正することができる移動体用測位装置が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、図面を参照して、本発明を実施するための最良の形態の説明を行う。
【0014】
図1は、本発明に係る移動体位置測位装置が適用されるGPS(Global Positioning System)の全体的な構成を示すシステム構成図である。図1に示すように、GPSは、地球周りを周回するGPS衛星10と、地球上に位置し地球上を移動しうる車両90とから構成される。尚、車両90は、あくまで移動体の一例であり、その他の移動体としては、自動二輪車、鉄道、船舶、航空機、ホークリフト、ロボットや、人の移動に伴い移動する携帯電話等の情報端末等がありうる。
【0015】
GPS衛星10は、航法メッセージ(衛星信号)を地球に向けて常時放送する。航法メッセージには、対応するGPS衛星10に関する衛星軌道情報(エフェメリスやアルマナク)、時計の補正値、電離層の補正係数が含まれている。航法メッセージは、C/Aコードにより拡散されL1波(周波数:1575.42MHz)に乗せられて、地球に向けて常時放送されている。尚、L1波は、C/Aコードで変調されたSin波とPコード(Precision Code)で変調されたCos波の合成波であり、直交変調されている。C/Aコード及びPコードは、擬似雑音(Pseudo Noise)符号であり、−1と1が不規則に周期的に並ぶ符号列である。
【0016】
尚、現在、31個のGPS衛星10が高度約20,000kmの上空で地球を一周しており、各4個のGPS衛星10が55度ずつ傾いた6つの地球周回軌道面に均等に配置されている。従って、天空が開けている場所であれば、地球上のどの場所にいても、常時、少なくとも5個以上のGPS衛星10が観測可能である。
【0017】
車両90には、移動体位置測位装置としてのGPS受信機20が搭載される。
【0018】
図2は、GPS受信機20の内部構成の一例を示す。以下では、説明の複雑化を避けるため、ある1つのGPS衛星10からの衛星信号に関する信号処理(1チャンネルの信号処理)を代表して説明する。以下で説明する信号処理は、観測周期毎(例えば1ms)に、観測可能な各GPS衛星10,10,10等からの衛星信号に対して並列的(同時)に実行される。
【0019】
GPS受信機20は、GPSアンテナ21、高周波回路22、A/D(analog-to-digital)変換回路24、DLL(Delay-Locked Loop)110、PLL(Phase-Locked Loop)120、衛星位置算出部124、フィルタ130、及び、測位部50を含む。DLL110は、相互相関演算部111,112、位相進め部113、位相遅れ部114、位相ずれ計算部115、位相補正量計算部116、レプリカC/Aコード生成部117、及び、擬似距離算出部118を含む。
【0020】
GPSアンテナ21は、GPS衛星10から発信されている衛生信号を受信し、受信した衛星信号を電圧信号(本例では、周波数1.5GHz)に変換する。1.5GHzの電圧信号をRF(radio frequency)信号と称する。
【0021】
高周波回路22は、GPSアンテナ21を介して供給される微弱なRF信号を後段でA/D変換できるレベルまで増幅すると共に、RF信号の周波数を信号処理できる中間周波数(典型的には、1MHz〜20MHz)に変換する。尚、このようにRF信号をダウンコンバートして得られる信号を、IF(Intermediate frequency)信号と称する。
【0022】
A/D変換回路24は、高周波回路22から供給されるIF信号(アナログ信号)を、デジタル信号処理ができるようにデジタルIF信号に変換する。デジタルIF信号は、DLL110及びPLL120等に供給される。
【0023】
DLL110のレプリカC/Aコード生成部117では、レプリカC/Aコードが生成される。レプリカC/Aコードとは、GPS衛星10からの衛星信号に乗せられるC/Aコードに対して、+1、−1の並びが同一のコードである。
【0024】
相互相関演算部111には、レプリカC/Aコード生成部117で生成されるレプリカC/Aコードが、位相進め部113を介して入力される。即ち、相互相関演算部111には、Earlyレプリカ符号が入力される。位相進め部113では、レプリカC/Aコードが所定の位相だけ進められる。位相進め部113で進められる位相進み量をθとする。
【0025】
相互相関演算部111には、また、デジタルIF信号が、図示しないミキサにより、PLL120で生成されるレプリカキャリアが乗算されてから入力される。
【0026】
相互相関演算部111では、入力されるデジタルIF信号と、位相進み量θのEarlyレプリカ符号を用いて、相関値(Early相関値ECA)が演算される。Early相関値ECAは、例えば以下の式で演算される。
Early相関値ECA=Σ{(デジタルIF)×(Earlyレプリカ符号)}
相互相関演算部112には、レプリカC/Aコード生成部117で生成されるレプリカC/Aコードが、位相遅れ部114を介して入力される。即ち、相互相関演算部112には、Lateレプリカ符号が入力される。位相遅れ部114では、レプリカC/Aコードが所定の位相だけ遅らされる。位相遅れ部114で遅らされる位相遅れ量は、位相進み量θと大きさ同一で符号が異なる。
【0027】
相互相関演算部112には、また、デジタルIF信号が、図示しないミキサにより、PLL120で生成されるレプリカキャリアが乗算されてから入力される。
【0028】
相互相関演算部112では、入力されるデジタルIF信号と、位相遅れ量−θのLateレプリカ符号を用いて、相関値(Late相関値LCA)が演算される。Late相関値LCAは、例えば以下の式で演算される。
Late相関値LCA1=Σ{(デジタルIF)×(Lateレプリカ符号)}
このようにして、相互相関演算部111、112では、コリレータ間隔d(“スペーシング”とも称される)を2θとした相関値演算が実行される。相互相関演算部111、112にてそれぞれ演算されたEarly相関値ECA及びLate相関値LCAは、位相ずれ計算部115に入力される。
【0029】
位相ずれ計算部115では、デジタルIF信号と、レプリカC/Aコード生成部117で生成されるレプリカC/Aコードとの間に、どの程度位相のずれがあるかが算出される。即ち、位相ずれ計算部115では、受信したC/Aコードに対するレプリカC/Aコードの位相ずれ量Δφが算出(推定)される。レプリカC/Aコードの位相ずれ量Δφは、例えば以下の式で演算される。
(位相ずれ量Δφ)=(ECA−LCA)/2(ECA+LCA
このようにして算出された位相ずれ量Δφは、位相補正量計算部116に入力される。
【0030】
位相補正量計算部116では、位相ずれ量Δφを無くすべく、適切な位相補正量が算出される。適切な位相補正量が、例えば以下の演算式に従って、算出される。
(位相補正量)=(Pゲイン)×(位相ずれ量Δφ)+(Iゲイン)×Σ(位相ずれ量Δφ)
この式は、PI制御を利用したフィードバック制御を表す式であり、Pゲイン及びIゲインは、それぞれバラツキと応答性の兼ね合いから実験的に決定される。このようにして算出された位相補正量は、レプリカC/Aコード生成部117に入力される。
【0031】
レプリカC/Aコード生成部117では、生成されるレプリカC/Aコードの位相が、位相補正量計算部116により算出された位相補正量だけ補正される。即ち、レプリカC/Aコードの追尾点が補正される。かくして生成されたレプリカC/Aコードは、上述の如く位相進め部113及び位相遅れ部114を介して相互相関演算部111、112に入力されると共に、擬似距離算出部118に入力される。尚、相互相関演算部111、112では、このようにして生成されたレプリカC/Aコードは、次回の観測周期で入力されるIFデジタル信号に対する相関値演算に用いられることになる。
【0032】
擬似距離算出部118では、レプリカC/Aコード生成部117で生成されるレプリカC/Aコードの位相情報に基づいて、擬似距離ρ’が、例えば以下の式により演算される。尚、符号の意味として、擬似距離ρに付された「’」は、後述のフィルタ処理が実行されていないことを示し、下付き文字「」は、GPS衛星10に係るC/Aコードに基づいて算出された擬似距離ρであることを示す。
ρ’=N×300
ここで、Nは、GPS衛星10と車両90との間のC/Aコードのビット数に相当し、レプリカC/Aコード生成部117で生成されるレプリカC/Aコードの位相及び受信機1内部の受信機時計に基づいて算出される。尚、数値300は、C/Aコードが、1ビットの長さが1μsであり、1ビットに相当する長さが約300m(1μs×光速)であることに由来する。このようにして算出された擬似距離ρ’を表す信号は、DLL110からフィルタ130に入力される。
【0033】
PLL120では、内部で発生させたキャリアレプリカ信号を用いて、ドップラシフトした受信搬送波(受信キャリア)のドップラ周波数Δfが測定される。即ち、PLL120では、レプリカキャリアの周波数frと既知の搬送波周波数fL1(1575.42MHz)に基づいて、ドップラ周波数Δf(=fr−fL1)が測定される。尚、PLL120に入力されるデジタルIF信号は、図示しないミキサにより、DLL110から供給されるレプリカC/Aコードが乗算されたものである。PLL120からのドップラ周波数Δfを表す信号は、フィルタ130及び測位部50に入力される。
【0034】
フィルタ130では、ドップラ周波数Δfを用いて、擬似距離ρ’のフィルタ処理が実行される。フィルタ130では、例えば以下の演算式に従って、フィルタ処理後の擬似距離ρが計算される。
【0035】
【数1】

ここで、(i)は今回値を表し、(i−1)は前回値を表し、Mは、重み係数である。Mの値は、精度と応答性を考慮しつつ適切に決定される。また、ΔVは、GPS衛星10と車両90との間の相対速度(ドップラ速度)であり、例えば以下の関係式を用いて、算出される。
ΔfL1=ΔV・fL1/(c−ΔV)
尚、cは光速である。数1で示すフィルタ処理は、本分野で知られているキャリアスムージングと呼ばれる処理であってよく、上記のハッチフィルタの他、カルマンフィルタを用いても実現可能である。フィルタ130からの擬似距離ρを表す信号は、測位部50に入力される。
【0036】
衛星位置算出部124は、航法メッセージの衛星軌道情報に基づいて、GPS衛星10の、ワールド座標系での現在位置S=(X、Y、Z)及び移動速度V=(Vx1、Vy1、Vz1)を計算する。衛星移動速度ベクトルV=(Vx1、Vy1、Vz1)は、算出した衛星位置Sの今回値と前回値の差分を、演算周期の時間幅で除算することにより演算されてよい。このようにして衛星位置算出部124にて導出される衛星位置S及び衛星移動速度ベクトルVは、測位部50に入力される。
【0037】
次に、図3以降の図面を参照して、本実施例の測位部50の詳細について説明する。
【0038】
図3は、本実施例の測位部50により実行される主要処理の一例を示すフローチャートである。本処理ルーチンは、例えば車両90のイグニッションスイッチがオンとなってからオフとなるまでの1トリップにおいて所定周期(測位周期)毎に繰り返し実行されてよい。測位周期は、擬似距離ρの演算周期(観測周期)に一致してもよく、或いは、擬似距離ρの演算周期の所定の整数倍に対応してもよい。
【0039】
ステップ200では、補正ベクトルcがゼロベクトルに初期化される。補正ベクトルcの役割については後述する。尚、ステップ200の初期化処理は、1トリップにおける本処理ルーチンの初回の周期のみ実行される。
【0040】
ステップ202では、今回周期(i)に対応する周期で取得されたC/Aコードの観測データに基づいて、今回周期(i)の車両90の位置(X’(i),Y’(i),Z’(i))の測位計算が実行される。測位計算は、例えば、以下の関係式に基づいて実行されてもよい。
【0041】
【数2】

ここで、下付き文字「k」は、GPS衛星10に係る値を示す(以下も同様)。ここでは、ρは、GPS衛星10に係る擬似距離を表し、DLL110のフィルタ130から出力される値が用いられる。(X(i),Y(i),Z(i))は、同GPS衛星10に係る衛星位置を表し、衛星位置算出部124から出力される値が用いられる。また、(X’(i),Y’(i),Z’(i))は、今回周期(i)の車両90の位置(例えばWGS84に基づくワールド座標系)を表し、未知数である。また、c・ΔTは、GPS受信機20における時計誤差を表し、未知数である。この場合、例えば現在観測可能なGPS衛星10の数が4つである場合には、数2の式が4つ立つので、最小二乗法等を用いて時計誤差c・ΔTを除去した測位が実現される。
【0042】
ステップ204では、ドップラ周波数Δfを用いて、前回周期(i−1)における車両90の速度ベクトルv=(v(i−1),v(i−1),v(i−1))が測位される。車両90の速度の測位は、例えば以下のような関係式に基づいて、最小二乗法等を用いて実行されてよい。尚、文字の上についた記号黒丸は、ドット(時間微分)を表し、例えばドップラレンジdρは、ρドット(擬似距離ρの時間微分)である。
【0043】
【数3】

尚、Iドット及びTドットは、電離層誤差の変動量及び対流圏誤差の変動量を表すが、非常に小さいので、ここでは、白色ノイズεとして扱う。また、bドットは、時計誤差の微分値である。また、(V−v)・lのV・lの部分は、前回周期(i−1)における単位ベクトルl(i−1)と衛星移動速度ベクトルV(i−1)との内積であり、衛星移動速度ベクトルV(i−1)は、上述の如く衛星位置算出部124にて航法メッセージの衛星軌道情報に基づいて算出され、単位ベクトルl(i−1)は、前回周期(i−1)において測位部50により測位された車両90の位置(X(i−1),Y(i−1),Z(i−1))、及び、前回周期(i−1)において衛星位置算出部124により算出される衛星位置(X(i−1),Y(i−1),Z(i−1))を用いて、以下のように、算出されてよい。
【0044】
【数4】

また、ドップラレンジdρ(i−1)は、搬送波の波長λ(既知)と、前回周期(i−1)で得られるGPS衛星10に関するドップラ周波数Δf(i−1)を用いて、例えばdρ(i−1)=λ・Δf(i−1)により、算出される。
【0045】
ステップ206では、今回周期(i)で上記のステップ202(及びステップ204)の測位に用いたGPS衛星10の組み合わせが、前回周期(i−1)の同組み合わせから変化したか否かが判定される。例えば4つのGPS衛星10を用いる測位の場合、前回周期(i−1)でk=1,2,4,6のGPS衛星10の組み合わせを用いていた場合に、今回周期(i)でk=1,2,4,7のGPS衛星10の組み合わせが用いられた場合には、GPS衛星10の組み合わせが変化したと判定されることになる。また、観測可能なGPS衛星10を可能な限り多く(上限があってもよいが)用いる測位の場合、前回周期(i−1)でk=1,2,4,6のGPS衛星10の組み合わせを用いていた場合に、今回周期(i)でk=1,2,4,6,7のGPS衛星10の組み合わせが用いられた場合には、GPS衛星10の組み合わせが変化したと判定されることとしてもよい。また、逆に、今回周期(i)でk=1,2,4,6,7のGPS衛星10の組み合わせを用いていた場合に、今回周期(i)でk=1,2,4,6のGPS衛星10の組み合わせが用いられた場合には、GPS衛星10の組み合わせが変化したと判定されることとしてもよい。
【0046】
尚、測位に用いるGPS衛星10の組み合わせは、任意の適切な方法で決定されてよい。例えば、GPS衛星10の組み合わせは、各GPS衛星10の仰角、受信電波強度、各種DOP(Dilution Of Precision)等を考慮して決定されてもよい。尚、測位に用いるGPS衛星10の組み合わせは、典型的には、車両90の移動や時間の経過と共に変化する車両90と各GPS衛星10の位置関係に伴って変化することになるだろう。測位に用いるGPS衛星10の組み合わせは、測位部50において決定されてもよいし(この場合、ステップ202の前に決定する)、或いは、測位部50の前段側で決定されていてもよい。後者の場合、測位部50には、測位に用いるGPS衛星10の組み合わせを特定する情報と共に、同組み合わせに係るGPS衛星10のデータ(衛星位置や、擬似距離ρ等)が入力されればよい。
【0047】
本ステップ206において、今回周期(i)で測位に用いたGPS衛星10の組み合わせが、前回周期(i−1)の同組み合わせから変化したと判定された場合には、ステップ208に進む。尚、この場合、上記のステップ202及び204では、新たな組み合わせのGPS衛星10に係るデータに基づいて、車両90の位置及び速度ベクトルが算出されたことになる。GPS衛星10の組み合わせが変化していないと判定された場合には、ステップ220に進む。
【0048】
ステップ208では、上記のステップ202及び204で算出された車両90の位置及び速度ベクトルに基づいて、補正ベクトルcが更新される。具体的には、先ず、上記ステップ202で前回周期に得られる車両90の位置(X’(i−1),Y’(i−1),Z’(i−1))と、上記ステップ202で今回周期に得られる車両90の位置(X’(i),Y’(i),Z’(i))との差分ベクトルP(i)が算出される。即ち、P(i)=(X’(i)−X’(i−1),Y’(i)−Y’(i−1),Z’(i)−Z’(i−1))が算出される。この差分ベクトルP(i)は、今回周期と前回周期の間の車両90の移動ベクトルを表す。次いで、上記のステップ204で算出された車両90の速度ベクトルvに基づいて、今回周期と前回周期の間の車両90の移動ベクトルQ(i)が算出される。即ち、Δtを測位演算周期(即ち、今回周期と前回周期の間の時間)とすると、移動ベクトルQ(i)は、Q(i)=Δt・(v(i−1),v(i−1),v(i−1))として算出される。そして、これらの2つの移動ベクトルQ及び差分ベクトルPを用いて、以下のようにして補正ベクトルが更新される。
c(i)=Q(i)−P(i)+c(i−1)
尚、上の式は、ベクトル演算として理解されたい。ここで、c(i−1)は、前回周期(i−1)での補正ベクトル、即ち更新前の補正ベクトルを表す。従って、今回周期で初めて測位に用いるGPS衛星10の組み合わせが変化した場合には、c(i−1)はゼロベクトルである。
【0049】
ステップ220では、上記のステップ202で算出された車両90の位置(X’(i),Y’(i),Z’(i))が、上記ステップ208で導出された補正ベクトルc(i)を用いて補正され、今回周期(i)での最終的な車両90の位置の測位結果(X(i),Y(i),Z(i))が導出される。具体的には、今回周期(i)での車両90の位置の測位結果(X(i),Y(i),Z(i))は、次のように算出されてもよい。
(X(i),Y(i),Z(i))=(X’(i),Y’(i),Z’(i))+c(i)
尚、測位に用いるGPS衛星10の組み合わせが変化したと判定された周期の速度ベクトルvがゼロベクトルである場合であって、その前の周期までの補正ベクトルcがゼロベクトルである場合には、当然ながら、補正は行われないことになる。即ち、(X(i),Y(i),Z(i))=(X’(i−1),Y’(i−1),Z’(i−1))、又は、(X(i),Y(i),Z(i))=(X(i−1),Y(i−1),Z(i−1))である。
【0050】
尚、このようにして得られる今回周期の車両90の位置(X(i),Y(i),Z(i))は、今回周期の車両90の位置の最終的な測位結果として、例えば図示しないナビゲーション装置に供給されてもよい。また、このようにして得られる今回周期の車両90の位置(X(i),Y(i),Z(i))は、次回周期で前回周期の値として選択的にステップ204で用いられることになる。また、本ステップ220において、今回周期の車両90の速度(v(i),v(i),v(i))が、上述の如く得られた今回周期の車両90の位置(X(i),Y(i),Z(i))と、今回周期の衛星位置(X(i),Y(i),Z(i))及びドップラレンジdρ(i)を用いて、上記の数3の式から最小二乗法等を用いて測位されてもよい。
【0051】
ステップ222では、所定の測位終了条件が判断され、例えば今回のトリップが終了したか否かが判定される。今回のトリップが終了した場合、即ち車両90が停車してエンジンが停止された場合には、今回のトリップに対する処理が終了する。今回のトリップが終了していない場合には、ステップ202からの処理が繰り返し実行されることになる。従って、この場合、補正ベクトルcは、測位に用いるGPS衛星10の組み合わせが変化する毎に、上記のステップ208の更新処理を受け、測位に用いるGPS衛星10の組み合わせが一定の間は、一定に維持される。
【0052】
図4は、上述の図3の補正処理による車両90の位置の測位結果の補正方法の説明図である。図4において、白丸で示した各ポイントは、各周期で上記のステップ202で算出される車両90の位置を示し、+マークで示した各ポイントは、上記のステップ220での補正後の車両90の位置を示す。また、各ポイントに付した数字は、測位周期の番号であり、丸で囲んだ測位周期番号が、補正後の各ポイントに付与されている。
【0053】
図4では、測位周期4から5にかけて測位に用いるGPS衛星10の組み合わせが変化し、また、測位周期8から9にかけて測位に用いるGPS衛星10の組み合わせが変化している。これに伴い、測位周期5で上記のステップ202で算出される車両90の位置は、測位周期4で上記のステップ202で算出される車両90の位置から不連続に変化している。即ち、測位結果の精度悪化が、測位に用いるGPS衛星10の組み合わせの変化に起因して生じている。同様に、測位周期9で上記のステップ202で算出される車両90の位置は、測位周期8で上記のステップ202で算出される車両90の位置から不連続に変化している。この不連続の発生は、主には、測位に用いるGPS衛星10の組み合わせの変化自体が原因であるが、その他の要因として、新たな追加されたGPS衛星10に係るC/Aコード追尾が一回又は数回の観測では困難であること(即ち、新たな追加されたGPS衛星10に係る擬似距離ρ’の初期の精度が悪いこと)や、過去のデータが存在しないが故に新たな追加されたGPS衛星10に係る擬似距離ρ’のフィルタ130でのスムージングが実質的に機能していないことなどがありえる。
【0054】
本実施例によれば、測位周期4から5にかけて測位に用いるGPS衛星10の組み合わせが変化すると、上述の如く、補正ベクトルcにより、測位周期5で上記のステップ202で算出される車両90の位置が、+マークで示した丸内の5の位置に補正される。同様に、測位周期8から9にかけて測位に用いるGPS衛星10の組み合わせが変化すると、上述の如く、補正ベクトルcにより、測位周期9で上記のステップ202で算出される車両90の位置が、+マークで示した丸内の9の位置に補正される。ここで、補正ベクトルcは、上述の如く、C/Aコードではなくドップラ周波数Δfに基づいて導出される速度ベクトル(及び移動ベクトルQ)に基づいて導出されているため、上述の新たな追加されたGPS衛星10に係る擬似距離ρ’と異なり、GPS衛星10の組み合わせの変化に大きな影響を受け難い。また、補正ベクトルcは、前回周期の車両90の速度ベクトル(即ち測位に用いるGPS衛星10の組み合わせの変化前の速度ベクトル)を用いて導出されているので、新たな追加されたGPS衛星10に係る擬似距離ρ’からの影響は無い。また、前回周期の車両90の速度ベクトルは、今回周期の車両90の位置を決定する主要因子であるので、遅れ等の問題も生じない。従って、本実施例によれば、測位周期8から9にかけて測位に用いるGPS衛星10の組み合わせが変化したことに起因して生じうる測位結果の不連続、即ち測位結果の精度悪化を防止することができる。
【0055】
図5は、本実施例の測位部50により実行される主要処理のその他の一例を示すフローチャートである。図5において、上述の図3と同一であってよい処理については、図3と同一のステップ番号を付して説明を省略する。
【0056】
ステップ210は、前回周期(i−1)で用いた補正ベクトルc(i−1)が補正される。この際、上記のステップ208で導出される補正ベクトルは、測位に用いるGPS衛星10の組み合わせが変化した後の経過時間が長くなるにつれて、大きさが小さくなるように補正される。この反比例的な関係は、線形であっても非線形であってもよいし、不連続関数であってもよい。例えば、補正ベクトルc(i−1)の補正は、以下のように実現されてもよい。
c(i)=A・c(i−1)
ここで、Aは、補正係数であり、例えば0.9のような、1より小さい値が選択される。従って、例えば、測位に用いるGPS衛星10の組み合わせが変化した後、連続してm周期、測位に用いるGPS衛星10の組み合わせが変化しない場合には、補正ベクトルcの大きさは、0.9のm乗倍小さくなる(指数関数的に減少する)。
【0057】
ステップ220では、上記のステップ202で算出された車両90の位置(X’(i),Y’(i),Z’(i))が、上記ステップ208で導出された補正ベクトルc(i)若しくは上記ステップ210で補正された補正ベクトルc(i)を用いて補正され、今回周期(i)での最終的な車両90の位置の測位結果(X(i),Y(i),Z(i))が導出される。
【0058】
図6は、上述の図5の補正処理による車両90の位置の測位結果の補正方法の説明図である。図6において、白丸で示した各ポイントは、各周期で上記のステップ202で算出される車両90の位置を示し、+マークで示した各ポイントは、上記のステップ220での補正後の車両90の位置を示す。また、各ポイントに付した数字は、測位周期の番号であり、丸で囲んだ測位周期番号が、補正後の各ポイントに付与されている。
【0059】
図6では、上述の図4と同様、測位周期4から5にかけて測位に用いるGPS衛星10の組み合わせが変化し、また、測位周期8から9にかけて測位に用いるGPS衛星10の組み合わせが変化している。図6から分かるように、測位周期5で導出された補正ベクトルcの大きさは、次にGPS衛星10の組み合わせが変化する測位周期9まで、徐々に小さく補正されている。このように補正ベクトルcを時間の経過と共に小さくしていく理由は、測位に用いるGPS衛星10の組み合わせが変化した直後では、測位結果の不連続が発生するものの、測位に用いるGPS衛星10の組み合わせが変化した後、時間の経過と共に、観測データが安定して測位結果が真値に近くなるからである。
【0060】
尚、図5に示す例では、測位に用いるGPS衛星10の組み合わせが変化した後の経過時間に応じて補正ベクトルを変化させているが、測位に用いるGPS衛星10の組み合わせが変化した後の車両90の移動量(移動距離)に応じて補正ベクトルを変化させることも可能である。例えば、測位に用いるGPS衛星10の組み合わせが変化した後の車両90の移動距離が長くなるにつれて、補正ベクトルcの大きさが小さくなるように補正ベクトルcを補正することとしてもよい。
【0061】
次に、図7を参照して、補正ベクトルcの決定方法の代替実施例を説明する。
【0062】
図7は、補正ベクトルcの決定方法の代替実施例の説明図である。図7において、白丸で示したポイントは、測位周期4でC/Aコードに基づいて算出される車両90の位置(図3のステップ202参照)を示し、+マークで示したポイントは、移動ベクトルQの終点位置を示し、△マークで示したポイントは、補正ベクトルcによる補正後の車両90の位置を示す。また、各ポイントに付した数字は、測位周期の番号であり、丸で囲んだ測位周期番号が、補正後のポイントに付与されている。図7では、上述の図4と同様、測位周期4から5にかけて測位に用いるGPS衛星10の組み合わせが変化している。
【0063】
また、図7には、ドップラ周波数Δfに基づいて導出される速度(図3のステップ204参照)の誤差分散(測位結果のばらつき度合い)が模式的に範囲A1で示され、C/Aコードに基づいて算出される車両90の位置(図3のステップ202参照)の誤差分散(測位結果のばらつき度合い)が模式的に範囲A2で示され、これらの2つの誤差分散を重ね合わせた誤差分散が、模式的に範囲A3で示されている。
【0064】
図8は、図7のラインTに沿って、ドップラ周波数Δfに基づいて導出される速度の誤差分散に基づく確率密度関数(分布)と、C/Aコードに基づいて算出される車両90の位置の誤差分散に基づく確率密度関数とが、それぞれ符号A1,A2が付された曲線で示されている。尚、これら分布は、それぞれ、ドップラ周波数Δfに基づいて導出される移動ベクトルQの終点、及び、C/Aコードに基づいて算出される車両90の位置を中心として設定されている。図8には、これらの2つの分布を重ね合わせた分布が、符号A3が付された曲線で概略的に示されている。
【0065】
尚、ドップラ周波数Δfに基づいて導出される速度の誤差分散、及びC/Aコードに基づいて算出される車両90の位置の誤差分散は、実稼動中に測位演算の過程で算出されたものが用いられてもよいし(例えば残差やDOP等を用いて算出されてもよいし)、実験的に導出された固定値が用いられてもよい。
【0066】
本代替実施例では、補正ベクトルcは、図7に示すように、C/Aコードに基づいて算出される車両90の位置から、範囲A3(この場合、円形範囲)の中心に向かうベクトルとして決定される。尚、範囲A3の中心は、図8に示すように、2つの分布を重ね合わせた分布のピーク位置に相当する。
【0067】
このようにして決定された補正ベクトルcは、上述の実施例と同様に用いることができる。また、このようにして決定された補正ベクトルcは、測位に用いるGPS衛星10の組み合わせが変化していない場合にも、用いることができる。この場合、同様に、補正ベクトルcを、C/Aコードに基づいて算出される車両90の位置に加算することで、C/Aコードに基づいて算出される車両90の位置を補正すればよい。
【0068】
以上、本発明の好ましい実施例について詳説したが、本発明は、上述した実施例に制限されることはなく、本発明の範囲を逸脱することなく、上述した実施例に種々の変形及び置換を加えることができる。
【0069】
例えば、上述の実施例では、好ましい実施例として、前回周期に係る速度ベクトル及びひいては移動ベクトルが算出されているが、それに代えて、今回周期に係る速度ベクトル及びひいては移動ベクトルが算出されてもよい。
【0070】
また、上述の実施例では、C/Aコードを用いて擬似距離ρを導出しているが、擬似距離ρは、L2波のPコードのような他の擬似雑音コードに基づいて計測されてもよい。尚、Pコードの場合、Wコードで暗号化されているので、Pコード同期を行う際に、クロス相関方式を利用したDLLにより、Pコードを取り出すこととしてよい。Pコードに基づく擬似距離ρは、GPS衛星10でPコードが0ビット目であるとしてPコードのMビット目が車両90にて受信されているかを計測することで、ρ’=M×30として求めることができる。
【0071】
また、上述の実施例では、GPSに本発明が適用された例を示したが、本発明は、GPS以下の衛星システム、例えばガリレオ等の他のGNSS(Global Navigation Satellite System)にも適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】本発明に係る移動体用測位装置が適用されるGPSの全体的な構成を示すシステム構成図である。
【図2】GPS受信機20の内部構成の一例を示す図である。
【図3】本実施例の測位部50により実行される主要処理の一例を示すフローチャートである。
【図4】図3の補正処理による車両90の位置の測位結果の補正方法の説明図である。
【図5】本実施例の測位部50により実行される主要処理のその他の一例を示すフローチャートである。
【図6】図5の補正処理による車両90の位置の測位結果の補正方法の説明図である。
【図7】補正ベクトルcの決定方法の代替実施例の説明図である。
【図8】補正ベクトルcの決定方法の代替実施例の説明図である。
【符号の説明】
【0073】
10 GPS衛星
20 GPS受信機
50 測位部
90 車両

【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体に搭載され、3つ以上の衛星から放送される衛星信号に基づいて前記移動体の位置及び/又は速度を測位する移動体用測位装置において、
測位に用いる衛星の組み合わせが変化したか否かを判定する判定手段と、
前記衛星信号の搬送波のドップラシフトの観測値を用いて前記移動体の速度ベクトルを算出する速度ベクトル算出手段と、
前記衛星信号に基づいて前記移動体の位置を測位する測位手段と、
前記測位手段により測位された前記移動体の位置の測位結果の変化に基づいて所定時間内における前記移動体の移動ベクトルを算出する移動ベクトル算出手段と、
前記判定手段により前記衛星の組み合わせが変化したと判定された場合に、前記速度ベクトル算出手段により算出された速度ベクトルと、前記移動ベクトル算出手段により算出された移動ベクトルの双方のベクトルを用いて、前記測位手段により測位された前記移動体の位置を補正する補正手段とを含むことを特徴とする、移動体用測位装置。
【請求項2】
前記速度ベクトル算出手段により算出された前記速度ベクトルに基づいて、前記所定時間内における前記移動体の移動ベクトル(以下、第2移動体ベクトルという)を算出する第2移動体ベクトル算出手段を更に含み、
前記補正手段は、前記判定手段により前記衛星の組み合わせが変化したと判定された場合に、前記第2移動体ベクトル算出手段により算出された第2移動ベクトルと、該衛星の組み合わせの変化前後の前記測位手段による測位結果の変化に基づいて前記移動ベクトル算出手段により算出された前記移動ベクトルとの差分を取ることで補正ベクトルを算出し、該算出した補正ベクトルと、前記衛星の組み合わせの変化前の前記衛星信号に基づいて前記測位手段により測位された前記移動体の位置とに基づいて、前記衛星の組み合わせの変化後の前記衛星信号に基づいて前記測位手段により測位された前記移動体の位置を補正する、請求項1に記載の移動体用測位装置。
【請求項3】
前記補正手段は、前記判定手段により前記衛星の組み合わせが変化したと判定された場合に、その後に前記判定手段により前記衛星の組み合わせが変化したと判定されるまでの間、前記算出した補正ベクトルを継続的に用いて前記測位手段により継続的に測位される前記移動体の位置を補正する、請求項2に記載の移動体用測位装置。
【請求項4】
前記補正手段は、前記判定手段により前記衛星の組み合わせが変化したと判定された後の経過時間若しくは前記移動体の移動距離に応じて、前記算出した補正ベクトルを変化させる、請求項3に記載の移動体用測位装置。
【請求項5】
前記補正手段は、前記判定手段により前記衛星の組み合わせが変化したと判定された後の経過時間若しくは前記移動体の移動距離に応じて、前記算出した補正ベクトルの大きさを徐々に小さくする、請求項4に記載の移動体用測位装置。
【請求項6】
前記補正手段は、前記判定手段により前記衛星の組み合わせが変化したと判定された場合であって、その後に前記判定手段により前記衛星の組み合わせが変化したと再び判定された場合に、最初の前記衛星の組み合わせの変化時に算出した前記補正ベクトルと、その後の前記衛星の組み合わせの変化時に算出した前記補正ベクトルとを用いて、前記移動体の位置の補正に用いる前記補正ベクトルを更新する、請求項2〜5のうちのいずれか1項に記載の移動体用測位装置。
【請求項7】
前記補正手段は、前記判定手段により前記衛星の組み合わせが変化したと判定された場合に、前記速度ベクトル算出手段により算出される速度ベクトルの誤差の統計値と、前記測位手段により測位される前記移動体の位置の誤差の統計値とに基づいて、補正ベクトルを算出し、該算出した補正ベクトルと、前記衛星の組み合わせの変化前の前記衛星信号に基づいて前記測位手段により測位された前記移動体の位置とに基づいて、前記衛星の組み合わせの変化後の前記衛星信号に基づいて前記測位手段により測位された前記移動体の位置を補正する、請求項1に記載の移動体用測位装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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