説明

移動体通信端末用両面粘着シート、及び、移動体通信端末

【課題】高温高湿条件下等の過酷な環境下においても被着体に対する浮きや剥がれが生じることがなく、透明性及び接着性に優れる移動体通信端末用両面粘着シート、及び、該移動体通信端末用両面粘着シートを用いてなる移動体通信端末を提供する。
【解決手段】移動体通信端末の表示装置と該表示装置の表面を保護する保護板とを貼り合わせるための移動体通信端末用両面粘着シートであって、(メタ)アクリル系樹脂からなり、90℃で30分加熱したときの残留モノマー及び残留溶剤に起因するアウトガス濃度が200ppm以下である移動体通信端末用両面粘着シート。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高温高湿条件下等の過酷な環境下においても被着体に対する浮きや剥がれが生じることがなく、透明性及び接着性に優れる移動体通信端末用両面粘着シート、及び、該移動体通信端末用両面粘着シートを用いてなる移動体通信端末に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、急速に発展、拡大した携帯電話機等のモバイル型電話機端末や、PDA(Personal Digital Assistant)端末等の表示装置を有する移動体通信端末等は、より薄型化、軽量化、低消費電力化、高精細化及び高輝度化等が図られている。
このような移動体通信端末の表示装置は、通常、偏光板を含む表示装置の表面保護等のため、偏光板表面の外周付近に枠状に設けられた接着層を介して保護板が貼り付けられている。このような構造の表示装置は、保護板と偏光板との間に空間が形成されており、該空間が移動体通信端末の表示装置に加えられた外力を緩衝する役割を果たし、表示装置が損傷することを防止していた。しかしながら、このような構造の移動体通信端末の表示装置は、光散乱等が生じて高輝度化が困難で表示品質を向上させるのに限界があり、また、移動体通信端末に比較的大きな歪みが生じた場合、保護板に割れが発生することがあった。
【0003】
このような従来の移動体通信端末の表示装置に対して、より表示品質の向上が可能で、割れ等に対しても耐久性を有する移動体通信端末の表示装置として、例えば、表示装置の偏光板と保護板との全面を透明両面粘着シートで貼り合わせた構造のものが考えられている。
このような構造の移動体通信端末の表示装置において、透明両面粘着シートとしては、一般的にアクリル系樹脂が用いられており、例えば、特許文献1、2、3及び4等には、粘着力を改良した透明アクリル系両面粘着テープ又はシートが開示されている。
【0004】
しかしながら、従来の透明アクリル系両面粘着テープ又はシートを用いてなる移動体通信端末は、高温高湿環境等の過酷な環境下に置かれると、アウトガスが発生して粘着テープ又はシート中に泡が形成され、被着体に対して浮きや剥がれが発生し、透明性の低下や粘着力の低下を引き起こすことがあった。
【特許文献1】特開2003−342542号公報
【特許文献2】特開2003−238915号公報
【特許文献3】特開2004−231723号公報
【特許文献4】特開2005−255877号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記現状に鑑み、高温高湿条件下等の過酷な環境下においても被着体に対する浮きや剥がれが生じることがなく、透明性及び接着性に優れる移動体通信端末用両面粘着シート、及び、該移動体通信端末用両面粘着シートを用いてなる移動体通信端末を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、移動体通信端末の表示装置と該表示装置の表面を保護する保護板とを貼り合わせるための移動体通信端末用両面粘着シートであって、(メタ)アクリル系樹脂からなり、90℃で30分加熱したときの残留モノマー及び残留溶剤に起因するアウトガス濃度が200ppm以下である移動体通信端末用両面粘着シートである。
以下に、本発明を詳述する。
【0007】
本発明者らは、鋭意検討の結果、移動体通信端末を高温高湿条件下等の過酷な環境で使用したときに表示装置と該表示装置の保護板との接着に用いられた両面粘着シートに発生するアウトガスは、該両面粘着シート中に存在する残留モノマーや残留溶剤が大きな原因となっていることを見出した。そこで、更に鋭意検討の結果、両面粘着シートに含まれる残留モノマーや残留溶剤の量を極めて低減させることで、過酷な環境下であってもアウトガスが発生することがなく、被着体に対する浮きや剥がれを生じることがなく優れた接着性と透明性とを有する両面粘着シートとすることができ、表示品質に優れた移動体通信端末を得ることができることを見出し、本発明を完成するに至った。また、特に本発明の両面粘着シートとして、紫外線照射により後架橋が可能な特定の樹脂を用いることにより耐熱性が向上し、高温接着力が向上することも見出した。
【0008】
本発明の移動体通信端末用両面粘着シート(以下、本発明の両面粘着シートともいう)は、(メタ)アクリル樹脂を含有する。なお、本明細書において「シート」とは、一定の幅と長さとを備えた面状の部材のみならず、帯状のいわゆるテープ状のものも含むものである。
【0009】
上記(メタ)アクリル樹脂としては特に限定されないが、ブロック共重合体であることが好ましく、具体的には、(メタ)アクリル酸エステルモノマーを共重合したブロック共重合体であることが好ましい。上記(メタ)アクリル酸エステルモノマーを共重合したブロック共重合体は、重合の段階で反応が好適に進行して残留モノマーを少なくすることができ、更に、シート状に成形する際に溶剤を要しない加熱プレス機や押し出し成形機を用いることができ、本発明の両面粘着シートの残留溶剤量を極めて少なくすることができる。なお、本明細書において、(メタ)アクリル樹脂とは、アクリル樹脂又はメタクリル樹脂を意味する。
【0010】
上記(メタ)アクリル酸エステルモノマーとしては特に限定されないが、アルキル基の炭素数が1〜12の1級又は2級アルコールと、アクリル酸又はメタクリル酸とのエステルが好適に用いられる。
【0011】
上記アルキル基の炭素数が1〜12の1級又は2級アルコールとしては特に限定されず、例えば、メタノール、エタノール、n−ブタノール、イソプロパノール等が挙げられる。
【0012】
本発明の両面粘着シートにおいて、上記(メタ)アクリル樹脂は、ハードブロックと、ソフトブロックとを有するブロック共重合体であることが好ましい。このようなブロック共重合体からなることで、本発明の両面粘着シートは、上述した優れた接着性及び透明性に加えて、優れたクッション性を備えたものとなり、本発明の両面粘着シートを用いて表示装置と該表示装置を保護する保護板とを貼り付けてなる移動体通信端末に外力が加わった場合、該外力を好適に緩衝させることができるため、移動体通信端末の表示装置が損傷することを防止することができる。
【0013】
上記ハードブロックを構成するモノマーの具体例としては特に限定されず、例えば、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸t−ブチル等のメタクリル酸低級アルキルエステル類、スチレン、ビニルトルエン等の硬質モノマー等が挙げられる。
【0014】
上記ソフトブロックを構成するモノマーの具体例としては特に限定されず、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル等のアクリル酸アルキルエステル類、メタクリル酸ラウリル等のメタクリル酸高級アルキルエステル等の軟質モノマー等が挙げられる。
【0015】
上記ブロック共重合体は、なかでも、ハードブロックがポリメチルメタクリレート(PMMA)ブロックから構成され、ソフトブロックがポリn−ブチルアクリレート(PnBA)ブロックから構成されることが好ましい。このような構造のブロック共重合体は、重合段階で反応が好適に進行するため、残留モノマー成分を極めて少なくすることができるとともに、溶剤が不要な加熱プレスや押し出し成形によりシート状に成形することができるため、残留溶剤を含まないようにすることもできる。更に、本発明の両面粘着シートの(メタ)アクリル樹脂中に柔軟なソフトブロックを含有するため、クッション性も極めて優れたものとすることができる。
【0016】
上記PMMAブロックとPnBAブロックとを有するブロック共重合体の構造としては特に限定されず、例えば、PMMA−PnBAで表されるようなジブロックコポリマーであってもよく、PMMA−PnBA−PMMAで表されるようなトリブロックコポリマーであってもよい。
【0017】
上記(メタ)アクリル酸エステルモノマーを共重合する方法としては特に限定されず、例えば、リビング重合法等の公知の重合方法を用いることができる。なかでも、ブロック共重合体を効率よく得ることができることから、リビングアニオン重合法が好適である。
【0018】
上記リビングアニオン重合法としては特に限定されず、従来公知の方法を使用することができる。例えば、反応容器に、重合開始剤としてアルカリ金属の有機化合物、上記(メタ)アクリル酸エステルモノマー、及び、必要に応じて溶剤を仕込み、所定の反応温度でリビングアニオン重合させるか、反応容器に溶剤と重合開始剤とを仕込み所定の温度に維持した系に上記(メタ)アクリル酸エステルモノマーを、連続的又は断続的に添加することによりリビングアニオン重合させる。更に有用な方法としては、例えば、特開平11−335432号公報に開示のリビングアニオン重合である。
【0019】
上記重合開始剤としては特に限定されず、従来リビングアニオン重合に使用されている重合開始剤の中から必要に応じて適宜選択して使用することができる。具体的には、例えば、エチルリチウム、ブチルリチウム等のアルキルリチウム、リチウムナフタレン、カリウムナフタレン、ナトリウムナフタレン等のアルカリ金属のナフタレン錯体等を使用することができる。
【0020】
また、リビングアニオン重合の際には、溶剤の使用が必須ではないが、溶剤を用いた場合、重合熱を除去し、更に反応系の均一性を確保すること等より重合反応の制御を容易にすることができる。上記溶剤としては特に限定されず、従来リビングアニオン重合に使用されている溶媒の中から必要に応じて適宜選択して使用することができる。具体的には、例えば、ヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素、シクロヘキサン、メチルヘキサン等の脂環式炭化水素、ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素、エチルエーテル、THF等のエーテル等を使用することができる。
【0021】
上記リビングアニオン重合反応温度は、使用する重合開始剤、モノマーの種類等により異なるが、一般には−100℃〜100℃の範囲内である。重合時間も使用する重合開始剤、モノマー、反応温度等により異なるが、一般には10分〜50時間の範囲内である。
【0022】
なお、(メタ)アクリル酸エステルモノマーを共重合する際には、必要に応じて、更に粘着付与剤、充填剤、顔料、染料等のアクリル系粘着剤組成物に使用される公知の添加剤が配合されてもよい。
【0023】
本発明の両面粘着シートでは、上記(メタ)アクリル酸エステルモノマーを共重合してなる(メタ)アクリル系共重合体中の残留モノマー、残留開始剤、他の不純物を減少させるために、重合時又は重合終了後、必要に応じて残留モノマー、残留開始剤、他の不純物を除去する操作を施す必要がある。このような操作により、本発明の両面粘着シート中の残留モノマー量、及び、重合時に溶剤を使用した場合は残留溶剤量を極めて少なくすることができ、後述するような残留モノマー及び残留溶剤に起因するアウトガス濃度を極めて低くすることができる。
【0024】
上記重合段階で残留モノマーを低減する具体的な手段としては、例えば、重合終了時に、(メタ)アクリル系共重合体に対する貧溶媒、例えば、メタノール、エタノール、n−ヘキサン、n−へプタン等の低沸点溶媒を用いて(メタ)アクリル系共重合体を洗浄する方法や、蒸留によって溶剤を除去する方法等が挙げられる。
【0025】
上記重合段階で残留開始剤及び開始剤残渣を低減する具体的な手段としては、例えば、重合終了時に、酸性水溶液を用いて洗浄する方法等が挙げられる。
【0026】
また、本発明においては、上記(メタ)アクリル系樹脂は、紫外線照射により後架橋が可能なアクリレートポリマーであることが好ましい。シート状に成形後、紫外線を照射して架橋させることにより、本発明の両面粘着シートに耐熱性を付与することができる。これにより、本発明の両面粘着シートは高温接着力が向上する。
【0027】
上記紫外線により後架橋が可能なアクリレートポリマーは、ベンゾイン誘導体由来の骨格を有することが好ましい。このような骨格を有することで紫外線照射により後架橋が可能となる。
上記ベンゾイン誘導体由来の骨格を導入する方法としては特に限定されず、例えば、欧州特許出願公開公報0578151号に記載されているように、アクリル酸エステル類と少量のベンゾインアクリレートの混合モノマーを、酢酸エチル等の溶媒に溶解して加熱還流させ、これにラジカル重合開始剤を添加し、ラジカル共重合する方法等が挙げられる。この方法により得られるアクリレートポリマーは、ベンゾイン基が側鎖にぶら下がった構造となる。
【0028】
本発明の両面粘着シートは、90℃で30分加熱したときの残留モノマー及び残留溶剤に起因するアウトガス濃度の上限が200ppmである。200ppmを超えると、本発明の両面粘着シートを用いてなる移動体通信端末を高温高湿条件等の過酷な環境で使用したときにアウトガスが発生してしまう。
【0029】
本発明の両面粘着シートは、可視光波長領域における全光線透過率の好ましい下限が80%であり、かつ、ヘイズの好ましい上限が5.0%である。可視光波長領域における全光線透過率が80%未満及び/又はヘイズが5.0%を超えると、本発明の両面粘着シートを用いてなる移動体通信端末の表示装置の表示品質が低下してしまうことがある。上記可視光波長領域における全光線透過率のより好ましい下限は90%であり、ヘイズのより好ましい上限は2.0%である。
【0030】
本発明の両面粘着シートは、移動体通信端末の表示装置と該表示装置上に配置される保護板とを貼り付けるものであるため、ある程度のクッション性を有することが必要である。本発明の両面粘着シートの弾性率の好ましい下限が10万Pa、好ましい上限が300万Paである。上記範囲を外れると、表示装置と保護板とを本発明の両面粘着シートを用いて貼り付けた移動体通信端末に加えられた外力を充分に緩衝することができず、表示装置を損傷することがある。より好ましい下限は20万Pa、より好ましい上限は300万Paである。
【0031】
本発明の両面粘着シートは、移動体通信端末の表示装置と該表示装置を保護する保護板との貼り合わせに用いられるが、該移動体通信端末としては特に限定されず、例えば、携帯電話やPHS(Personal Handy−phone System)等のモバイル型電話機端末や、PDA端末等の表示装置を備えた従来公知のものが挙げられる。
【0032】
また、上記保護板としては特に限定されず、例えば、アクリル板やポリカーボネート板等の透明プラスチック板やガラス板、タッチパネル等が挙げられる。
【0033】
本発明の両面粘着シートの製造方法としては特に限定されないが、加熱プレス法、又は、押し出し成形法を用いて製造することが好ましい。加熱プレス法や押し出し成形法は、製造時に溶剤を必要としないため、本発明の両面粘着シートの含有する残留溶剤量を極めて少なくすることができ、本発明の両面粘着シートを90℃で30分加熱したときの残留モノマー及び残留溶剤に起因するアウトガスの上限を200ppmとすることができる。
特に、本発明の両面粘着シートを構成する(メタ)アクリル系樹脂が、紫外線照射により後架橋が可能なアクリレートポリマーである場合には、加熱プレス機、又は、押し出し成形機を用いてシート状に成型して、紫外線照射により架橋して作製されることが好ましい。
【0034】
上記加熱プレス法、及び、押し出し成形法としては特に限定されず、従来公知の方法と同様の方法が挙げられる。
【0035】
本発明の両面粘着シートは、90℃で30分加熱したときに残留モノマー及び残留溶剤に起因したアウトガス濃度の上限が200ppmと極めて低いものであるため、本発明の両面粘着シートを用いて移動体通信端末の表示装置と該表示装置を保護する保護板とを貼り合わせて製造した移動体通信端末は、高温高湿条件下等の過酷な環境下で使用した場合であっても、本発明の両面粘着シートからアウトガスが発生して表示装置や保護板等の被着体に対する剥がれが生じることがなく、透明性及び接着性に優れたものとなる。
本発明の両面粘着シートを用いてなる移動体通信端末もまた、本発明の1つである。
【発明の効果】
【0036】
本発明によれば、高温高湿条件下等の過酷な環境下においても表示装置や保護板等の被着体に対する浮きや剥がれが生じることがなく、透明性及び接着性に優れる移動体通信端末用両面粘着シート、及び、該移動体通信端末用両面粘着シートを用いてなる移動体通信端末を提供することできる。
特に本発明の両面粘着シートとして、紫外線照射により後架橋が可能なアクリレートポリマーを用いた場合には、耐熱性が向上し、高温接着力が向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
【0038】
(実施例1)
(1)アクリル系共重合体の合成
sec−ブチルリチルムを重合開始剤とし、イソブチルビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノキシ)アルミニウムの存在下でアニオン重合する方法を用いメタクリル酸メチルを重合させ、次いで、アクリル酸−n−ブチルを重合させ、次いで、メタクリル酸メチルを重合させることで、PMMA−PnBA−PMMAで表される共重合体を得た。MMA単位、nBA単位をそれぞれ25.0質量%と75.0質量%有していた。
【0039】
(2)両面粘着シートサンプルの作製
離型処理を施した厚み50μmのポリエチレンテレフタレートフィルムからなるセパレータに、得られたアクリル系共重合体を挟み込んだ後、加熱プレス機で250μm厚の両面粘着シートサンプル(1)を作製した。
【0040】
(実施例2)
ベンゾイン骨格を有するアクリレートポリマーとしてBASF社のacResin DS3583(ブチルアクリレート主骨格、分子量〜200000g/mol)を用い、離型処理を施した厚み50μmのポリエチレンテレフタレートフィルムからなるセパレータに、アクリレートポリマーを挟み込んだ後、加熱プレス機で250μm厚の両面粘着シートに成型した。
このシートに低圧水銀ランプで紫外線を20J照射して後架橋することにより、両面粘着シートサンプル(2)を作製した。
【0041】
(実施例3)
紫外線を40J照射したこと以外は実施例2と同様にして、両面粘着シートサンプル(3)を作製した。
【0042】
(比較例1)
アクリルモノマーに光重合開始剤を投入し、離型処理を施した厚み50μmのポリエチレンテレフタレートフィルムからなるセパレータの片面に250μmで塗工し、離型処理を施した厚み50μmのポリエチレンテレフタレートフィルムからなるセパレータを被せた後、紫外線で重合し、両面粘着シートサンプル(4)を作製した。
【0043】
(比較例2)
実施例1で得られたアクリル系共重合体を酢酸エチルで溶解し、アクリル系共重合体溶液を得た。得られたアクリル系粘着剤を、離型処理を施した厚み50μmのポリエチレンテレフタレートフィルムからなるセパレータの片面に、乾燥後の厚みが250μmになるように塗布し、110℃で5分間溶剤を完全に乾燥除去し、離型処理を施した厚み50μmのポリエチレンテレフタレートフィルムからなるセパレータを被せて、両面粘着シートサンプル(5)を作製した。
【0044】
(比較例3)
温度計、攪拌機、冷却管を備えた反応器にて、n−ブチルアクリレート79重量部、2−エチルヘキシルアクリレート18重量部、アクリル酸3重量部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート0.1重量部、ドデカンチオール0.05重量部、及び、酢酸ビニルモノマー5重量部からなるモノマー混合物を酢酸エチル82重量部に溶解し、還流点において、重合開始剤としてパーオキシケタール0.01重量部を重合開始時に加え、更にパーオキシエステル0.79重量部を1.0時間〜4.5時間に適宜加えて、6.5時間反応させ、アクリルモノマーを重合した。得られた溶液を冷却し、アクリル系共重合体溶液を得た。得られたアクリル系粘着剤を、離型処理を施した厚み50μmのポリエチレンテレフタレートフィルムからなるセパレータの片面に、乾燥後の厚みが250μmになるように塗布し、110℃で5分間溶剤を完全に乾燥除去し、離型処理を施した厚み50μmのポリエチレンテレフタレートフィルムからなるセパレータを被せて、両面粘着シートサンプル(6)を作製した。
【0045】
<評価>
実施例1〜3及び比較例1〜3で作製した両面粘着シートサンプル(1)〜(6)について以下の評価を行った。結果を表1に示した。
【0046】
(1)アウトガス成分濃度の測定
実施例1〜3及び比較例1〜3で作製した両面粘着シートサンプル(1)〜(6)を用いて、以下の方法によりアウトガス濃度を測定した。
すなわち、熱脱着装置(パーキンエルマー社製、「ATD−400」)を用い、秤量した両面粘着シートサンプルを90℃で30分間加熱したときに放出されたアウトガス成分及び量を、GC−MS装置(日本電子社製、「AutomassII−15」)を用いることにより測定し、アウトガス成分濃度を算出した。
【0047】
(2)粘着力評価
得られた両面粘着シートサンプルを25mm幅の短冊状に細切して、被着体(ポリカーボネート板)に2kgゴムローラ1往復の荷重にて貼り合わせ、23℃で20分間及び24時間放置した。その後、JIS規格(JIS Z 0237)に準ずる方法により剥離速度300mm/minで180°方向のピール試験を行い、剥離力を測定した。
【0048】
(3)全光線透過率及びヘイズ測定
得られた両面粘着シートサンプルをJIS K 7105に記載されている通り、積分球式光線透過率装置により測定した。但し、本両面粘着シートサンプルは、単体では非常に軟らかいため、両面にPET(ポリエチレンテレフタラート)基材を貼り付けた状態で測定し、基準値として、PET基材にエタノールを挟み込んだものと比較した値とした。
なお、ヘイズ値(%)は下記の式で導入された値をいう。
ヘイズ値(%)=(H/H)×100
:拡散透過率(%)
:全光線透過率(%)
【0049】
(4)80℃剥離力の測定
得られた両面粘着シートサンプルを25mm幅の短冊状に細切して、被着体(ポリカーボネート板)に2kgゴムローラ1往復の荷重にて貼り合わせ、23℃で24時間放置した後、80℃の環境にてJIS規格(JIS Z 0237)に準ずる方法により剥離速度300mm/minで180°方向のピール試験を行い、剥離力を測定した。
【0050】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明によれば、高温高湿条件下等の過酷な環境下においても被着体に対する浮きや剥がれが生じることがなく、透明性及び接着性に優れる移動体通信端末用両面粘着シート、及び、該移動体通信端末用両面粘着シートを用いてなる移動体通信端末を提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体通信端末の表示装置と該表示装置の表面を保護する保護板とを貼り合わせるための移動体通信端末用両面粘着シートであって、
(メタ)アクリル系樹脂からなり、90℃で30分加熱したときの残留モノマー及び残留溶剤に起因するアウトガス濃度が200ppm以下である
ことを特徴とする移動体通信端末用両面粘着シート。
【請求項2】
可視光波長領域における全光線透過率が85%以上であり、かつ、ヘイズが2.0%以下であることを特徴とする請求項1記載の移動体通信端末用両面粘着シート。
【請求項3】
(メタ)アクリル系樹脂は、ハードブロックとソフトブロックとを有するブロック共重合体であることを特徴とする請求項1又は2記載の移動体通信端末用両面粘着シート。
【請求項4】
ハードブロックは、ポリメチルメタクリレートから構成され、ソフトブロックは、ポリn−ブチルアクリレートから構成されることを特徴とする請求項3の移動体通信端末用両面粘着シート。
【請求項5】
(メタ)アクリル系樹脂は、紫外線照射により後架橋が可能なアクリレートポリマーであることを特徴とする請求項1又は2記載の移動体通信端末用両面粘着シート。
【請求項6】
アクリレートポリマーは、ベンゾイン誘導体由来の骨格を有することを特徴とする請求項5記載の移動体通信端末用両面粘着シート。
【請求項7】
加熱プレス機、又は、押し出し成形機を用いて作製されることを特徴とする請求項1、2、3又は4記載の移動体通信端末用両面粘着シート。
【請求項8】
加熱プレス機、又は、押し出し成形機を用いてシート状に成型して、紫外線照射により架橋して作製されることを特徴とする請求項5又は6記載の移動体通信端末用両面粘着シート。
【請求項9】
請求項1、2、3、4、5、6、7又は8記載の移動体通信端末用両面粘着シートを用いてなることを特徴とする移動体通信端末。

【公開番号】特開2008−88395(P2008−88395A)
【公開日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−304207(P2006−304207)
【出願日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】