説明

移動回診車

【課題】読取部の振動の抑制を図るとともに移動時の読取部の損傷を防ぐことができる移動回診車を提供する。
【解決手段】放射線変換パネルPに照射される放射線を出力するX線源16と、前記放射線変換パネルPを光走査することで放射線画像情報を読み取る走査ユニット66を有する読取装置26とを備え、当該移動回診車10の移動中に、少なくとも前記読取部66を固定状態とするシリンダ機構88a〜88fと、前記移動回診車10の停止中であって、少なくとも前記走査ユニット66による前記放射線画像情報の読取中に、少なくとも前記走査ユニット66を浮動状態とする袋状体96a〜96cとを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線変換パネルに照射される放射線を出力する放射線源と、前記放射線変換パネルを光走査することで放射線画像情報を読み取る読取部を有する読取装置とを備えた移動回診車に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、ある種の蛍光体に放射線(X線、α線、β線、γ線、紫外線、電子線等)を照射すると、この放射線のエネルギの一部が蛍光体に蓄積され、その後、その蛍光体に可視光等の励起光を照射すると、蓄積されたエネルギに応じた輝尽発光光が出力される。
【0003】
このような蛍光体からなる蓄積性蛍光体パネルを利用し、撮影装置を用いて人体等の被写体の放射線画像情報を蓄積性蛍光体パネルに蓄積記録した後、読取装置を用いて、放射線画像情報が記録された蓄積性蛍光体パネルを励起光で走査し、得られる輝尽発光光を光電的に読み取って画像信号に変換し、この画像信号を処理して診断適性に優れた画像を得る放射線画像情報処理システムが開発されている。
【0004】
ところで、病院等の医療施設では、当該システムが設置されている放射線科まで移動し、所望の撮影を行うことが可能な患者ばかりとは限らず、病室から移動することができず、病室内で放射線画像の撮影を行わざるを得ない患者も多数存在している。このような患者に対応すべく、撮影装置を台車に載置して病室まで移動可能に構成した移動回診車が開発されている(特許文献1参照)。この場合、撮影装置に加えて、読取装置も移動回診車に載置し、病室まで移動可能に構成すれば、その場で撮影処理及び読取処理を連続的に行うことができるため、極めて効率的である。
【0005】
しかしながら、このような移動回診車は、外部から振動を受けるおそれがある。例えば、読取装置において、蓄積性蛍光体パネルに記録された放射線画像情報の読取中に外部から振動が加わると、蓄積性蛍光体パネルに対する読取部による励起光の走査位置がずれて、読取精度が低下してしまうおそれがある。
【0006】
このような振動による影響を抑制するため、例えば、特許文献2に開示された従来技術では、励起光を走査する読取部を防振部材を介して読取装置内に設置する構成としている。
【0007】
【特許文献1】特開平6−245926号公報
【特許文献2】特開2000−122198号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献2に開示された従来技術は、据え置き型の読取装置に関するものであり、台車に載置して移動させるものではない。また、特許文献2の読取装置を台車に載置して移動可能に構成した場合、特に、低周波数からなる大きな振動が読取部に加わると、読取装置の内部の他の部材に読取部が衝突し、損傷してしまうおそれがある。
【0009】
本発明は、前記の不具合を解消するためになされたものであって、読取部の振動を抑制して放射線画像情報を高精度に読み取ることができる一方、移動中において読取部が損傷する事態を回避することのできる移動回診車を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の移動回診車は、放射線変換パネルに照射される放射線を出力する放射線源と、前記放射線変換パネルを光走査することで放射線画像情報を読み取る読取部を有する読取装置とを備えた移動回診車であって、
当該移動回診車の移動中に、少なくとも前記読取部を固定状態とする固定手段と、
前記移動回診車の停止中であって、少なくとも前記読取部による前記放射線画像情報の読取中に、少なくとも前記読取部を当該移動回診車に対して浮動状態とする浮動手段と、
を備えることを特徴とする。
【0011】
この場合、固定手段は、読取部を読取装置に対して固定してもよく、あるいは、読取部を有する読取装置を当該移動回診車に対して固定してもよい。
【0012】
同様に、浮動手段は、読取部を読取装置に対して浮動させてもよく、あるいは、読取部を有する読取装置を当該移動回診車に対して浮動させてもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明の移動回診車は、読取部を当該移動回診車に対して浮動状態とする浮動手段を設けることにより、放射線画像情報の読取中に読取装置に振動が加わった場合、放射線画像情報の読取処理に対する振動の影響を最小限に抑え、放射線画像情報を高精度に読み取ることができる。
【0014】
また、読取部を当該移動回診車に対して固定状態とする固定手段を設けることにより、移動回診車の移動中に読取部が読取装置内の他の部材に衝突して損傷する事態を回避することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
図1は、本実施形態の移動回診車10の構成を示す。移動回診車10は、台車12上に各種装置を載置した状態で病室等に搬送可能に構成される。
【0016】
台車12には、放射線画像情報を撮影するための撮影情報等を入力し、あるいは、外部から取得するためのディスプレイを備えたコンソール14と、コンソール14から供給された撮影情報に従ってX線源16を制御し、被写体18にX線20を照射するX線源制御装置22と、被写体18を透過したX線20が照射されることで放射線画像情報が記録される蓄積性蛍光体パネルP(放射線変換パネル)を収納したカセッテ24が装填され、前記蓄積性蛍光体パネルPから放射線画像情報を読み取る読取装置26と、蓄積性蛍光体パネルPから読み取られた放射線画像情報を外部に送信する一方、外部から必要な情報を取得する送受信機28と、コンソール14、X線源16、X線源制御装置22、読取装置26及び送受信機28に対して電力を供給するバッテリ27とが載置される。X線源16は、アーム部材29を介してX線源制御装置22に連結される。また、バッテリ27には、電源31が接続されており、必要に応じてバッテリ27の充電を行うことができる。さらに、台車12の移動状態を検知するための、例えば、ロータリエンコーダから構成される移動検知センサ118が台車12の車輪120に設けられている。なお、X線源16、X線源制御装置22及び後述するX線照射スイッチ75は、撮影装置を構成する。
【0017】
図2は、読取装置26の内部構成を示す。ここで、読取装置26に装填されるカセッテ24は、開閉自在な蓋部材30を有するとともに、当該カセッテ24を識別するためのID情報が記録された図示しないバーコードが装着されている。
【0018】
読取装置26は、ケーシング36の上部にカセッテ装填部38を備え、このカセッテ装填部38には、矢印方向にスライド自在な蓋部材40が配設される。放射線画像情報が記録された蓄積性蛍光体パネルPを収納したカセッテ24は、蓋部材30を下にした状態でカセッテ装填部38に装填される。なお、ケーシング36は、外部からのX線20の侵入を阻止すべく、鉛等の重金属を含む材料で形成される。
【0019】
カセッテ装填部38には、カセッテ24に装着されている図示しないバーコードを読み取るバーコードリーダ42と、カセッテ24の蓋部材30のロックを解除するロック解除機構46と、カセッテ24から蓄積性蛍光体パネルPを吸着して取り出す吸着盤48と、吸着盤48によって取り出された蓄積性蛍光体パネルPを挟持搬送するニップローラ50とが配設される。
【0020】
ニップローラ50に連設して、複数の搬送ローラ52a〜52g及び複数のガイド板54a〜54fが配設され、これらにより湾曲搬送路56が構成される。湾曲搬送路56は、カセッテ装填部38から下方向に延在した後、最下部において略水平状態となり、次いで、略鉛直上方向に延在する。このように湾曲搬送路56を湾曲して構成することにより、読取装置26の小型化が達成される。
【0021】
ニップローラ50と搬送ローラ52aとの間には、読取処理が終了した蓄積性蛍光体パネルPに残存する放射線画像情報を消去するための消去ユニット60が配設される。消去ユニット60は、消去光を出力する冷陰極管からなる複数の消去光源62を有する。
【0022】
一方、湾曲搬送路56の最下部に配設される搬送ローラ52d、52e間には、プラテンローラ64が配設される。そして、プラテンローラ64の上部には、蓄積性蛍光体パネルPに蓄積記録された放射線画像情報を読み取る走査ユニット(読取部)66が配設される。
【0023】
走査ユニット66は、励起光であるレーザビームLBを導出して蓄積性蛍光体パネルPを搬送方向と直交する方向に走査する励起部68と、レーザビームLBによって励起されることで放出される放射線画像情報に係る輝尽発光光を集光する集光ガイド70と、集光ガイド70によって集光された輝尽発光光を電気信号に変換するフォトマルチプライヤ72とを備える。なお、集光ガイド70の一端部には、輝尽発光光の集光効率を高めるための集光ミラー74が近接して配設される。
【0024】
励起部68は、レーザビームLBを出力するレーザ発振器76と、レーザビームLBを蓄積性蛍光体パネルPの主走査方向に偏向する回転多面鏡であるポリゴンミラー78と、レーザビームLBを反射させ、蓄積性蛍光体パネルPに導く反射ミラー80と、レーザビームLBを受光した際に吸収する吸収体82とを備える。
【0025】
図3A、図3Bは、読取装置26に対して走査ユニット66を固定状態とする固定手段、及び、走査ユニット66を浮動状態とする浮動手段の構成を示す。
【0026】
走査ユニット66の側部及び下部には、蓄積性蛍光体パネルPの搬送路を妨げない状態で、読取装置26のケーシング36に対して固定されるフレーム部材86a、86b及び90が配設される。立設状態で対向するフレーム部材86a、86bの上下の所定位置、及び、下部のフレーム部材90上の所定位置には、走査ユニット66のケーシング94を支持するシリンダ機構88a〜88fが配設される。シリンダ機構88a〜88fを構成する各シリンダロッド92a〜92fは、端部がケーシング94に押圧可能に構成される。シリンダ機構88a、88b間、88c、88d間、及び、88e、88f間には、内部に気体や液体等の流体が封入された弾性体である袋状体96a〜96cが配設される。
【0027】
図4は、移動回診車10の制御ブロックを示す。X線源制御装置22には、作業者の操作によってX線源16を駆動し、X線20を被写体18に照射するX線照射スイッチ75が接続される。
【0028】
読取装置26は、読取装置制御部100を有する。読取装置制御部100には、カセッテ24のバーコードを読み取るバーコードリーダ42、読取装置26の電源スイッチ102、走査ユニット66を制御する走査ユニット制御部104、消去ユニットを制御する消去ユニット制御部106、湾曲搬送路56を制御して蓄積性蛍光体パネルPを搬送するとともに蓄積性蛍光体パネルPの走査位置が記憶される記憶手段108が接続されるパネル搬送制御部110、読取装置26に対する走査ユニット66の固定及び浮動を制御する固定浮動制御部112、読取装置26に加わる振動を振動センサ114で検知し、検知した振幅値に基づいて蓄積性蛍光体パネルPの読取処理の継続、中断、再読取を制御する振動検知制御部116、及び、台車12の移動状態を検知する移動検知センサ118が接続される。読取装置制御部100は、蓄積性蛍光体パネルPを所定の待避部に移動させた後、X線源16による撮影を許可する撮影許可信号をX線源制御装置22に出力する。
【0029】
本実施形態の移動回診車10は、基本的には以上のように構成されるものであり、次に、その動作につき図5に示すフローチャートに従って説明する。
【0030】
先ず、作業者は、移動回診車10を被写体18の場所、例えば、病室まで移動させる。移動回診車10の移動中は、車輪120に設けられている移動検知センサ118によって移動状態が検知される(ステップS1)。固定浮動制御部112は、移動検知センサ118が移動回診車10の移動状態を検知すると、読取装置26に対して走査ユニット66を固定する(ステップS2)。すなわち、固定浮動制御部112は、シリンダ機構88a〜88fを駆動し、各シリンダロッド92a〜92fの端部を走査ユニット66のケーシング94の底面部及び側面部に押圧させることにより、走査ユニット66を読取装置26内のフレーム部材86a、86b、90に固定する(図3A参照)。
【0031】
この場合、移動回診車10の移動中に外部から大きな振動が加わったとしても、走査ユニット66が読取装置26に固定された状態になっているため、走査ユニット66がフレーム部材86a、86b、90に衝突して破損してしまう事態を回避することができる。
【0032】
移動回診車10が病室内の所定位置に到着した後、撮影の準備が開始される。作業者は、コンソール14を操作して、被写体18の名前、撮影方法、曝射条件等の撮影情報を入力し、あるいは、送受信機28を介して外部からこれらの撮影情報を取得するとともに、被写体18の放射線画像情報を記録するカセッテ24を選択し、カセッテ24に装着されているバーコードを読み取ることで、カセッテ24のID情報を取得する。ID情報の取得されたカセッテ24は、撮影台の所定位置に配置される。なお、曝射条件である管電圧、管電流及び照射時間は、X線源制御装置22に供給される。
【0033】
X線源制御装置22は、作業者によるX線照射スイッチ75からショット信号が入力されると、曝射条件に従ってX線源16を駆動し、放射線画像の撮影を行う(ステップS3)。X線源16から出力されたX線20は、被写体18を透過し、カセッテ24に収納された蓄積性蛍光体パネルPに照射されることで、放射線画像情報が蓄積記録される。
【0034】
次に、放射線画像情報が蓄積記録された蓄積性蛍光体パネルPを収納したカセッテ24を読取装置26に装填し、読取処理を行う場合について説明する。
【0035】
カセッテ24がカセッテ装填部38に装填され、バーコードリーダ42がカセッテ24に装着されているバーコードを読み取り、カセッテ24のID情報が取得されると、ロック解除機構46により蓋部材30のロックが解除され、カセッテ24が開蓋される。次いで、吸着盤48によってカセッテ24内の蓄積性蛍光体パネルPが吸着されて取り出され、ニップローラ50により湾曲搬送路56に供給される。湾曲搬送路56を構成する搬送ローラ52a〜52gは、蓄積性蛍光体パネルPの搬送を開始する(ステップS4)。
【0036】
蓄積性蛍光体パネルPの搬送が開始されると、固定浮動制御部112は、読取装置26に対する走査ユニット66の固定状態を解除し、走査ユニット66を浮動状態とする(ステップS5)。すなわち、固定浮動制御部112は、パネル搬送制御部110による蓄積性蛍光体パネルPの搬送が開始されると、シリンダ機構88a〜88fを駆動し、各シリンダロッド92a〜92fの端部を矢印X方向に移動させることで(図3B参照)、走査ユニット66のケーシング94の底面部及び側面部から離間させる。このとき、走査ユニット66は、シリンダ機構88a、88b間、88c、88d間、及び、88e、88f間に配設されている袋状体96a〜96cによって浮動状態で支持される。なお、走査ユニット66を浮動状態とするタイミングは、移動検知センサ118により移動回診車10が移動状態を停止したときであってもよい。
【0037】
蓄積性蛍光体パネルPが搬送ローラ52d、52e間を副走査搬送されるとともに、励起部68からのレーザビームLBが回転するポリゴンミラー78及び反射ミラー80を介して蓄積性蛍光体パネルPを主走査することにより、放射線画像情報の読み取りが開始される(ステップS6)。
【0038】
励起部68から出力されたレーザビームLBが、蓄積性蛍光体パネルPに照射されると、蓄積性蛍光体パネルPから放射線画像情報に対応した輝尽発光光が出力される。この輝尽発光光は、集光ガイド70を介してフォトマルチプライヤ72に導かれ、電気信号としての放射線画像情報に変換される。読み取られた放射線画像情報は、カセッテ24のID情報とともに図示しない記憶手段に記憶され、あるいは、コンソール14を介して送受信機28から外部に送信される。蓄積性蛍光体パネルPの搬送ローラ52d、52e間の副走査搬送が終了すると、放射線画像情報の読み取りも終了する(ステップS7)。
【0039】
この場合、走査ユニット66は、レーザビームLBにより蓄積性蛍光体パネルPから放射線画像情報を読み取っている間、浮動状態とされているため、外部から加わる振動等の影響を受けることなく、安定した状態で読取処理を遂行することができる。
【0040】
一方、放射線画像情報の読み取りを行っている間、振動センサ114によって読取装置26の振動検出が行われる(ステップS8)。
【0041】
振動センサ114により検出された振動の振幅は、振動検知制御部116に供給され、予め設定されている所定の許容振幅と比較される。なお、許容振幅は、蓄積性蛍光体パネルPの読取精度が許容される範囲内の値として設定される。
【0042】
振動の振幅が許容振幅以上となった場合、蓄積性蛍光体パネルPの読み取りが中断される(ステップS9)。振動検知制御部116は、振動の振幅が許容振幅以上となるとき、例えば、ポリゴンミラー78の下流側に配設されている反射ミラー80の角度を変更し、レーザビームLBの光路を吸収体82に向けることにより、蓄積性蛍光体パネルPにレーザビームLBが照射されないようにする。なお、蓄積性蛍光体パネルPの読み取りの中断は、レーザ発振器76からのレーザビームLBの出力自体を中断することにより行うことも可能である。読み取りが中断されたとき、直前まで読取中であった蓄積性蛍光体パネルPのレーザビームLBによる走査位置が記憶手段108に記憶される。
【0043】
振動検知制御部116は、読取装置26の振動の振幅が許容振幅以下に減衰するまで蓄積性蛍光体パネルPの読取中断状態を継続する(ステップS10)。
【0044】
次いで、振動の振幅が許容振幅以下に減衰したとき、蓄積性蛍光体パネルPの読み取りを再開する(ステップS11)。蓄積性蛍光体パネルPの読み取りを再開する場合、ステップS9の場合と同様に、反射ミラー80の角度を変更してレーザビームLBを蓄積性蛍光体パネルPに導く。一方、パネル搬送制御部110は、記憶手段108に記憶されている蓄積性蛍光体パネルPの読み取りを中断した走査位置から蓄積性蛍光体パネルPの読み取りを再開する(ステップS6)。なお、パネル搬送制御部110は、蓄積性蛍光体パネルPの中断時の走査位置から所定量戻した位置から読み取りを再開するようにしてもよい。
【0045】
このように、読取中に許容振幅以上の振動が読取装置26に加わった場合、読取動作を一旦中断させることにより、特に、蓄積記録された放射線画像情報を再読み取りできない放射線変換パネルPであっても、読取処理を再開して、高精度な放射線画像情報を得ることができる。
【0046】
放射線画像情報の読み取られた蓄積性蛍光体パネルPは、一旦ガイド板54f側まで搬送された後、再び走査ユニット66の下部を介してカセッテ装填部38側に戻される。カセッテ装填部38側に戻された蓄積性蛍光体パネルPは、ニップローラ50、搬送ローラ52a間に配設されている消去ユニット60を構成する消去光源62から出力される消去光により、蓄積性蛍光体パネルPに残存する放射線画像情報が除去される。
【0047】
残存する放射線画像情報の消去処理が終了した蓄積性蛍光体パネルPは、ニップローラ50及び吸着盤48を用いてカセッテ24に収納されて蓋部材30が閉蓋された後、カセッテ装填部38から抜き取られ、次の撮影に使用される。
【0048】
なお、読取装置26に対する走査ユニット66の固定は、読取装置26を固定することができれば、例えば、エアシリンダ、油圧シリンダ等で構成されるシリンダ機構88a〜88fに限られるものではない。例えば、ケーシング94に押圧されるソレノイド機構や、パンタグラフ機構を用いて走査ユニット66を読取装置26に固定してもよい。
【0049】
また、読取装置26に対する走査ユニット66の浮動は、読取装置26を浮動することができれば、袋状体96a〜96cに限られるものではない。例えば、図6A、図6Bに示すように、弾性部材122を介して走査ユニット66を読取装置26に浮動させるようにしてもよい。図6A、図6Bでは、弾性部材122としてばねが用いられているが、ゴムや樹脂等を用いてもよい。
【0050】
さらに、読取装置26に対する走査ユニット66の固定及び浮動を永久磁石124a及び電磁石124b(電磁石機構)で行うこともできる。図7Aは、走査ユニット66を読取装置26に固定した状態を示し、図7Bは、走査ユニット66を読取装置26に浮動させた状態を示す。ケーシング94の側面及び底面には、永久磁石124aが固着され、永久磁石124aに対向するフレーム部材86a、86b、90側には、電磁石124bが固着される。
【0051】
読取装置26に対して走査ユニット66を固定する場合、フレーム部材90に配設される電磁石124bによって走査ユニット66の底面に配設される永久磁石124aを吸着保持させることにより、走査ユニット66を固定状態とする。一方、読取装置26に対して走査ユニット66を浮動させる場合、フレーム部材86a、86b、90に配設される各電磁石124bと、走査ユニット66に配設される各永久磁石124aとの間に斥力を発生させることにより、走査ユニット66を浮動状態とする。
【0052】
また、読取装置26に対する走査ユニット66の固定状態及び浮動状態は、シリンダ機構88a〜88fを用いることなく、袋状体96a〜96cに供給する空気圧の調整のみにより行うこともできる。すなわち、袋状体96a〜96cに供給する空気圧を高く設定すれば、走査ユニット66を読取装置26に対して固定状態とすることができ、袋状体96a〜96cに供給する空気圧を低く設定すれば、走査ユニット66を読取装置26に対して浮動状態とすることができる。
【0053】
さらに、本実施形態では読取装置26に対して走査ユニット66を固定、浮動としているが、読取装置26の全体を台車12に対して固定又は浮動としてもよい。さらに、走査ユニット66又は読取装置26を袋状体96a〜96c等の浮動手段の弾性係数よりも大きな弾性係数からなる防振手段により常時支持するようにしてもよい。図8は、防振手段に読取装置26を載置した状態を示す説明図である。図8に示すように、台車12と読取装置26との間に防振部材(防振手段)130が設けられている。防振部材130の弾性係数は、袋状体96a〜96cの弾性係数よりも大きく設定されている。この場合、シリンダ機構88a〜88f(図3A、図3B)によって走査ユニット66が読取装置26に固定され、その状態で移動回診車10から移動する間、加わる振動が防振部材130によって好適にされる。なお、防振部材130としては振動を吸収するばね部材、ゴム部材等を用いることができる。
【0054】
また、振動センサ114としては、読取装置26の振動を検出することができれば、特に限定されるものではなく、例えば加速度センサを用いることができる。
【0055】
さらに、上述した実施形態では、移動回診車10の移動状態を検知したとき、走査ユニット66を固定状態としているが、走査ユニット66が固定状態となった後、移動回診車10を移動可能な状態とするようにしてもよい。
【0056】
図9は、かかる場合の移動回診車10の制御ブロック図である。この場合、例えば、読取装置制御部100は、走査ユニット制御部104が蓄積性蛍光体パネルPの走査を行っている間、台車駆動制御部132に対して移動回診車10の移動を禁止する信号を出力する。
【0057】
一方、走査ユニット制御部104が蓄積性蛍光体パネルPの走査終了信号を出力したとき、読取装置制御部100は、固定浮動制御部112を制御して走査ユニット66を読取装置26に対して固定状態とする。固定浮動制御部112は、走査ユニット66を固定状態とした後、固定状態信号を台車駆動制御部132に出力する。固定状態信号を受信した台車駆動制御部132は、外部からの台車駆動信号を受け付け可能な状態となる。この状態において、作業者による移動回診車10の移動操作が行われたとき、台車駆動制御部132は、モータ134を駆動して移動回診車10の移動を開始する。
【0058】
また、図8に示すように、防振部材130を介して読取装置26を支持する代わりに、図10に示すように、台車12に固定されたフレーム部材136a、136bに対して、シリンダ機構88a〜88f及び袋状体96a〜96cにより読取装置26のケーシング36を支持する一方、読取装置26のケーシング36に対して、防振部材130により走査ユニット66を支持するように構成してもよい。
【0059】
さらに、放射線変換パネルとして、蓄積性蛍光体パネルPの代わりに、光変換方式の放射線固体検出器を読取走査して放射線画像情報を取得することもできる。この光変換方式の放射線固体検出器は、多数の固体検出素子をマトリクス状に配列して形成したもので、放射線が照射されると、放射線量に応じた静電潜像が固体検出素子に蓄積記録される。静電潜像を読み取る際には、放射線固体検出器に読取光を照射し、発生した電流の値を放射線画像情報として取得する。この場合、放射線固体検出器は、蓄積性蛍光体パネルと同様に、消去光を放射線固体検出器に照射することで、残存する静電潜像である放射線画像情報を消去して再使用することができる。
【0060】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で自由に変更できることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本実施形態の移動回診車の構成図である。
【図2】読取装置の内部構成図である。
【図3】図3Aは、読取装置に対して走査ユニットを固定した状態を示し、図3Bは、読取装置に対して走査ユニットを浮動した状態を示す説明図である。
【図4】移動回診車の制御ブロック図である。
【図5】読取装置の動作フローチャートである。
【図6】図6Aは、読取装置に対して走査ユニットを弾性部材で固定した状態を示し、図6Bは、読取装置に対して走査ユニットを浮動した状態を示す説明図である。
【図7】図7Aは、読取装置に対して走査ユニットを電磁石で固定した状態を示し、図7Bは、読取装置に対して走査ユニットを浮動した状態を示す説明図である。
【図8】防振手段に読取装置を載置した状態を示す説明図である。
【図9】移動回診車の他の構成からなる制御ブロック図である。
【図10】台車に対して読取装置を固定した状態を示す説明図である。
【符号の説明】
【0062】
10…移動回診車 12…台車
14…コンソール 16…X線源
18…被写体 20…X線
22…X線源制御装置 24…カセッテ
26…読取装置 27…バッテリ
28…送受信機 60…消去ユニット
66…走査ユニット 68…励起部
76…レーザ発振器 78…ポリゴンミラー
80…反射ミラー 82…吸収体
86a、86b、90、136a、136b…フレーム部材
88a〜88f…シリンダ機構
92a〜92f…シリンダロッド
94…ケーシング 96a〜96c…袋状体
100…読取装置制御部 102…電源スイッチ
104…走査ユニット制御部 106…消去ユニット制御部
108…記憶手段 110…パネル搬送制御部
112…固定浮動制御部 114…振動センサ
116…振動検知制御部 118…移動検知センサ
120…車輪 122…弾性部材
124a…永久磁石 124b…電磁石
130…防振部材 132…台車駆動制御部
P…蓄積性蛍光体パネル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射線変換パネルに照射される放射線を出力する放射線源と、前記放射線変換パネルを光走査することで放射線画像情報を読み取る読取部を有する読取装置とを備えた移動回診車であって、
当該移動回診車の少なくとも移動中に、少なくとも前記読取部を固定状態とする固定手段と、
前記移動回診車の停止中であって、少なくとも前記読取部による前記放射線画像情報の読取中に、少なくとも前記読取部を浮動状態とする浮動手段と、
を備えることを特徴とする移動回診車。
【請求項2】
請求項1記載の移動回診車において、
前記固定手段は、前記読取部を当該移動回診車に対して固定状態とするシリンダ機構を有することを特徴とする移動回診車。
【請求項3】
請求項1記載の移動回診車において、
前記固定手段は、前記読取部を当該移動回診車に対して固定状態とするソレノイド機構を有することを特徴とする移動回診車。
【請求項4】
請求項1記載の移動回診車において、
前記固定手段は、前記読取部を当該移動回診車に対して磁気的に固定状態とする電磁石機構を有することを特徴とする移動回診車。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の移動回診車において、
前記浮動手段は、前記読取部を当該移動回診車に対して浮動状態とする弾性体であることを特徴とする移動回診車。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の移動回診車において、
前記浮動手段は、前記読取部を当該移動回診車に対して浮動状態とする流体であることを特徴とする移動回診車。
【請求項7】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の移動回診車において、
前記浮動手段は、前記読取部を当該移動回診車に対して磁気的に浮動状態とする電磁石機構であることを特徴とする移動回診車。
【請求項8】
請求項1記載の移動回診車において、
前記浮動手段の弾性係数よりも大きな弾性係数からなる防振手段を有し、
前記防振手段は、前記固定手段を介して前記読取部を弾性的に支持することを特徴とする移動回診車。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の移動回診車において、
前記移動回診車の移動状態を検知する移動検知センサを備え、前記固定手段は、前記移動検知センサが前記移動状態を検知したとき、少なくとも前記読取部を固定状態とすることを特徴とする移動回診車。
【請求項10】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の移動回診車において、
前記読取部が固定状態とされたとき、当該移動回診車を移動可能とすることを特徴とする移動回診車。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−201560(P2009−201560A)
【公開日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−44281(P2008−44281)
【出願日】平成20年2月26日(2008.2.26)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】