説明

移動局及び通信制御方法

【課題】 移動局の送信機能の異常を好適に検出し、メッセージ送信の抑制を行う。
【解決手段】移動局1は、基地局に対して送信メッセージを送信する送信部20と、基地局から送信される受信メッセージを監視する受信監視部10、31と、受信メッセージの監視結果に応じて、送信部の異常を判定する異常判定部32と、送信部が送信メッセージを送信する頻度を制御する送信制御部33とを備える。異常判定部は、(i)送信部が送信した送信メッセージに対して、所定のシーケンスに沿った受信メッセージが受信されない場合、所定のシーケンスに失敗したと判断し、(ii)基地局に対する所定のシーケンスに連続して失敗する場合、送信部に異常が生じていると判定する。送信制御部は、送信部に異常が生じていると判定される場合、送信部が送信メッセージを送信する頻度を所定の頻度より低減する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信を行う移動局等の装置における異常検出の技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の移動局が用いられる移動通信システムにおいて、移動局は、接続する基地局との間で位置登録や呼制御等の複数種類の送受信シーケンスを適宜行っている。
【0003】
携帯電話等の移動局は、基本的には通話において同一の周波数を用いて基地局と通信を行うため、移動局が複数台存在する環境では、夫々の送信電波が干渉しあって通信品質が劣化する場合がある。このため、各種送信シーケンスにおいて用いられる移動局の送信電力は、他の移動局の送信電波と干渉し合わないように、基地局との距離等に応じて一律に制御される。
【0004】
例えば、後述の先行技術文献等に開示される従来の移動局は、電波の送信回路内に、送信電波の電力を検出して制御回路上で監視するフィードバックループを設けることで、送信電力の制御を行っている。
【0005】
移動局の送信回路内に異常が生じた場合等、送信電力制御が正常に機能しない場合、移動局は基地局との間の呼制御のシーケンスを完了することが出来なくなる。呼処理のシーケンスが完了出来ない場合、移動局は、次に基地局との間で基本的なシーケンスである位置登録シーケンスを実施することを試みる。しかしながら、送信電力が適切に制御出来ない場合、位置登録シーケンスも正常に終了出来ず、移動局は、位置登録シーケンスを繰り返し再実行することとなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−236572号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
移動局の送信機能に不具合が生じて送信電力の制御が行えない場合、移動局は、過剰な送信電力で電波を出力したり、上述のように位置登録シーケンスを繰り返し実行する等頻繁に上位装置との通信を試みることがある。いずれの場合であっても、このような移動局の通信が周囲の他の移動局の送信電波に干渉し通信を妨害する可能性がある。このため、移動局は、送信電力の制御が行えない場合には、上位装置との通信を制限することが好ましい。
【0008】
移動局の送信電力の制御が機能していない状況下で基地局からの電波受信機能が正常に動作している場合、移動局は報知情報により上位装置の状況を把握することは出来る。このため、移動局は、基地局に対して位置登録シーケンス等を繰り返し試み、上述のように過剰な送信電力で電波を送信したり、頻繁に通信を行う。
【0009】
また、通話中に送信電力の制御機能に不具合が発生した場合、移動局は、送信電力を設定範囲内の下限又は上限に設定することがある。このような送信電力では通話品質を確保できないため、基地局は回線の切断を行う。基地局から切断された移動局は、新たに発呼する呼制御シーケンス、又は基地局に対する位置登録を繰り返し実行し、周囲の移動局の通信の妨害や、基地局における不要なトラフィックの原因となる。
【0010】
本発明は、上述した技術的な問題点に鑑み、移動局の送信電力制御機能の異常状態を検出し、過剰な送信電力で電波を送信することで他の移動局の通信を妨害することや、基地局における不要なトラフィックの増大を抑制可能な移動局を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、開示の移動局は、基地局との間で通信を行う移動局であって、送信部と、受信監視部と、異常判定部と、送信制御部との機能部を有する。送信部は、基地局に対して所定の頻度で送信メッセージの送信を行う。受信監視部は、基地局から送信される受信メッセージを監視する。異常判定部は、受信メッセージの監視結果に応じて、送信部に異常が生じているか否かを判定する。送信制御部は、送信部が送信メッセージを送信する頻度を制御する。また、異常判定部は、(i)送信部が送信した送信メッセージに対して、所定のシーケンスに沿った受信メッセージが受信されない場合、所定のシーケンスに失敗したと判断し、(ii)基地局に対する所定のシーケンスに連続して失敗する場合、送信部に異常が生じていると判定する。送信制御部は、送信部に異常が生じていると判定される場合、送信部が送信メッセージを送信する頻度を所定の頻度より低減する。
【発明の効果】
【0012】
上述の構成によれば、移動局の送信機能に異常が生じていることを好適に検出することが出来る。また、送信機能に異常が生じている場合に、異常な送信シーケンスを繰り返し実行することに起因する、周囲の移動局の通信に対する干渉や基地局の不要なトラフィックの増加を好適に抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】移動局の位置実施形態の構成を示すブロック図である。
【図2】移動局の送信機能の正常性の判定処理の流れを示すフローチャートである。
【図3】位置登録シーケンスにおける処理の一例を示すシーケンス図である。
【図4】不具合データベース41に記録される監視情報テーブルの一例である。
【図5】監視情報のテーブルの更新処理の流れを示すフローチャートである。
【図6】移動局の送信機能の正常性の判定処理の流れを示すフローチャートである。
【図7】監視情報テーブルに格納されるレコードの例である。
【図8】監視情報テーブルに格納されるレコードの例である。
【図9】監視情報テーブルに格納されるレコードの例である。
【図10】監視情報テーブルに格納されるレコードの例である。
【図11】移動局の送信機能の正常性の判定処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、発明を実施するための実施形態について説明する。
【0015】
(1)構成例
図1を参照して、開示の移動局の構成例について説明する。図1は、開示の移動局の構成例である移動局1が備えるハードウェア及び該ハードウェアが有する機能を便宜的に表す機能部を示したブロック図である。
【0016】
移動局1は、図1に示されるように、受信部10、送信部20、CPU(Central Processing Unit)30、メモリ40を備える。尚、図1は、移動局1が有するハードウェア及び機能部のうち、開示の移動局の構成又は動作に関連する部位に注目して記載したものであり、開示の移動局の構成又は動作に比較的関連の薄いハードウェア等については記載を省略している。移動局1は、以下に説明する構成の他には、公知の移動局と同様のハードウェア等を有していてよい。
【0017】
受信部10は、移動局1が設けるアンテナ及び受信信号処理を行うDSP(Digital Signal Processor)を包含する概念であって、移動局1が通信を行う基地局からの電波を受信し、該電波に含まれる受信データを取得してCPU30に入力する。
【0018】
送信部20は、移動局1が設けるアンテナ並びに送信信号処理や送信シーケンス処理を行うDSP等を包含する概念であって、移動局1が通信を行う基地局に対して電波を送信することで基地局に対してデータの送信を行う。
【0019】
受信部10と送信部20とは、CPU30の制御の下、基地局との間で位置登録や呼処理等の所定の送信シーケンスを実行する。該送信シーケンスにおいて、移動局1の送信部20は所定のメッセージを基地局に送信し、受信部10は基地局からの何らかの要求を行うメッセージ又は送信したメッセージに対する応答を受信する。
【0020】
CPU30は、受信監視部31、異常判定部32及び送信制御部33を有する。これらは、CPU30の動作により実現される機能を便宜上の機能部として記載したものである。各機能部は、例えば、CPU30により実行される何らかのプログラムによって実現されるものであってもよく、又CPU30の制御下で動作する何らかのハードウェアによって実現されるものであってもよい。
【0021】
受信監視部31は、受信部10が受信した基地局からのデータ内容を監視し、該データが送信シーケンスにおける適切なものであるか否かを判定する。具体的には、受信監視部31は、所定の送信シーケンスにおいて、送信部20が基地局に対して送信したメッセージに対して、基地局が送信した応答メッセージの内容を監視し、該メッセージが送信シーケンスに沿った適切なものであるか否かを判定する。受信監視部31は、受信したメッセージが、送信シーケンスに沿った適切な応答でない場合には、該シーケンスに係る情報をメモリ40内の不具合データベース41に格納する。
【0022】
また、受信監視部31は、所定の送信シーケンスにおいて、送信部20が基地局に対してメッセージを送った後に、経過時間をカウントする。受信監視部31は、該シーケンスにおいて定められる規定のタイムアウト期間内に応答メッセージが受信されない場合に、該シーケンスに係る情報を不具合データベース41に格納する。
【0023】
メモリ40は、移動局1の動作に係る種々のデータ及びプログラム、並びにユーザデータ等を格納する記録装置である。メモリ40は、不具合データベース41を格納する。不具合データベース41に格納されるデータの形式、及びデータの格納の具体的な態様について後に詳述する。
【0024】
異常判定部32は、不具合データベース41に格納されるデータを参照し、移動局1の送信部20の機能が異常であるか否かを判定する。異常判定部32は、判定結果を送信制御部33に通知する。
【0025】
送信制御部33は、送信部20における送信シーケンスに応じたデータの送信処理を制御する。送信制御部33は、送信部20の機能が正常である場合には、基地局に対して所定の頻度で位置登録の送信シーケンスを実行するよう送信部20の動作を制御する。他方で、送信制御部33は、送信部20の機能が異常であると判断される場合には、基地局に対して位置登録の送信シーケンスを実行する頻度を、正常時と比較して低減させるよう送信部20の動作を制御する。また、送信制御部33は、送信部20の機能が異常であると判断される場合には、送信を行わせないよう送信部20の動作を制御してもよい。
【0026】
(2)動作例
図2を参照して、異常判定部32による、移動局1の送信部20の機能の正常性の判定処理の流れについて説明する。図2は、異常判定部32による送信部20の機能の正常性の判定処理の流れを示すフローチャートである。図2では、送信部20が行う送信シーケンスの内、比較的頻繁に実施される位置登録シーケンスに係る種々の処理について説明する。
【0027】
図2に示されるように、移動局1の送信部20は、CPU30の送信制御部33の制御のもと、所定のタイミングで基地局に対して位置登録シーケンスを実行する(ステップS101)。位置登録シーケンスは、移動局1が接続中の基地局から他の基地局の配下のセルに移動する場合や、セル内で起動する場合等の状況をトリガとして、CPU30により開始のタイミング等が判断される。尚、このときCPU30の送信制御部33は、後に詳述する「位置登録抑制フラグ」の状態を加味して位置登録シーケンスの開始を判断する。
【0028】
位置登録シーケンス中において、受信監視部31は、該位置登録シーケンスにおける受信メッセージを監視することで、位置登録シーケンスが正常に完了したか否かを監視する。
【0029】
ここに、位置登録シーケンスが正常に完了した場合とは、定められたシーケンス通りに所定のメッセージのやり取りが行われたことを示す。他方で、正常に完了しなかった場合、つまり、異常が生じた場合とは、移動局1が基地局と通信可能な状態において、通信プロトコルが定められたシーケンス通りに完了しなかったことを示す。例えば、基地局側からの次のメッセージ待機中に、所定の待機期間中に応答メッセージを受信しなかったことによるメッセージ受信監視タイマのタイムアウトや、受信したメッセージがプロトコルに沿った適切なものでない場合が該当する。
【0030】
図3に、位置登録シーケンスの一例における、移動局1、基地局及び上位装置であるRNC(Radio Network Controller:ネットワーク制御装置)の間でのメッセージの送受信の態様を示す。
【0031】
図3に示されるように、送信部20は、基地局に対して「RRC CONNECCTION SETUP REQUEST」メッセージを基地局を介してRNCに送信することで位置登録シーケンスを開始する。RNCは、基地局との間でNBAP(Node B Application Part)及びQAAL2(ATM Adaptation Layer type 2)等の局間制御信号をやりとりすることで、無線リンクの設定を行う。
【0032】
無線リンクの設定後に、RNCは、「RRC CONNECCTION SETUP REQUEST」メッセージに対する応答として、「RRC CONNECCTION SETUP」メッセージを移動局1に送信する。
【0033】
このとき、移動局1の受信監視部31は、「RRC CONNECCTION SETUP REQUEST」メッセージに対する応答を受信したか否か、又は受信したメッセージが応答内容に応じた適切なものであるか否かを監視することで、位置登録シーケンスが正常に完了したか否かを判断する。受信監視部31は、図3に示される位置登録シーケンスにおけるその他の受信メッセージについても同様の判断を行い、最終的に位置登録シーケンスが正常に完了したか否かを判断する。受信監視部31は、位置登録が正常に完了したか否かの監視情報を位置登録終了コードとしてメモリ40内に保持する。
【0034】
位置登録シーケンスの終了後に、受信監視部31は、移動局1が通話規制等のアクセス規制中であるか否かの判定を行い、判定結果に応じて不具合データベース41の更新を行う(ステップS103)。
【0035】
移動局1がアクセス規制中である場合(ステップS103:Yes)、位置登録シーケンスの異常終了が移動局1の送信機能の異常に起因するものでなく、規制によるものである可能性がある。このため、位置登録シーケンスに基づく送信機能の正常性の判断が適切に行えない可能性がある。また、アクセス規制中は、移動局1の送受信機能が不安定となる場合が考えられるため、受信監視部31は、アクセス規制中と判断されるタイミングでは、不具合データベース41内の監視情報のテーブルをすべて消去する(ステップS104)。
【0036】
移動局1がアクセス規制中でない場合(ステップS103:No)、受信監視部31は、不具合データベース41内に記録される監視情報のテーブルの更新処理を行う(ステップS105)。
【0037】
図4及び図5を参照して、監視情報のテーブルの更新処理の説明を行う。図4は、不具合データベース41に記録される監視情報テーブルの一例である。監視情報テーブルは、位置登録シーケンスにおいて通信していた基地局に応じた複数の不具合データベース41を有する。図5は、監視情報のテーブルの更新処理の流れを示すフローチャートである。
【0038】
図4に示されるように、監視情報テーブルには、レコード番号、位置登録処理において移動局1が通信した基地局を特定する基地局番号、位置登録終了コード、位置登録終了時の判定時刻及び移動局1が受信した基地局からの受信信号レベルを含むレコードが格納される。尚、受信監視部31は、基地局からの受信電波の強度を示すアンテナピクトや、基地局からの受信電波のレベル等を監視することで、基地局からの受信信号レベルを取得してもよい。このときの受信信号レベルは、測定された電波強度等の形で格納されてもよく、予め設定された閾値との比較によって、良好或いは不良である等の判断結果として格納されてもよい。
【0039】
監視情報テーブルは、夫々単一の基地局に係るレコードを格納するように設定されており、不具合データベース41内に所定の個数設けられる。各監視情報テーブルは、格納可能なレコード数(例えば、図4の例では、X個)が予め設定されている。この上限レコード数Xは、好適には、後述する正常性判定処理において、位置登録の終了コードから移動局1の送信機能の正常性の判定を行うために十分な数用意される。
【0040】
位置登録シーケンスは、移動局1が他の基地局エリアに移動する等、RNC等の上位装置側で管理する位置情報が更新されることが好ましい状況において適宜実施される。このとき、位置登録シーケンスが正常に完了する場合、次回の位置登録シーケンスは、位置情報の更新が必要となるまで実施されない。他方で、位置登録シーケンスが正常に完了しなかった場合、移動局1は、位置登録シーケンスが正常に完了するまで位置登録シーケンスを繰り返し実行する。このため、位置登録シーケンスが正常に完了しない場合には、繰り返し実行される位置登録シーケンスにおいて取得される監視情報に基づくレコードを用いて、比較的高い頻度で監視情報テーブルのレコードが更新される。このことを考慮して、各監視情報テーブルのレコード数の上限が決定されることが好ましい。例えば、レコード数の上限は、20乃至50程度が望ましい。
【0041】
上述のように、各監視情報テーブルは、夫々単一の基地局に係る監視情報を格納するよう設定される。このため、不具合データベース41は、複数の基地局についての監視情報を格納するために、複数の(例えば、m個。mは2以上の整数)監視情報テーブルを格納する。ある一つの基地局との間で行われた位置登録シーケンスが正常に完了しない場合、移動局1の送信機能に異常が生じている場合が考えられると共に、移動局1自体は正常で、基地局側に異常が生じている可能性が考えられる。このため、複数の基地局について夫々位置登録シーケンスを行った際の監視情報を格納し、夫々の監視情報に基づいて移動局1の正常性の判定を行うことで、正常性判定の精度が向上する。尚、監視する基地局の数の増加は、判定に要する期間の延長とトレードオフの関係にあるため、状況に応じて好適な監視基地局の数(言い換えれば、監視情報テーブル数)が設定されることが好ましい。例えば、m=3程度が現実的で好ましい。
【0042】
図5を参照して、監視情報のテーブルの更新処理の流れについて説明する。受信監視部31は、先ず、位置登録シーケンスの監視情報から、監視情報テーブルに格納するための情報を収集する(ステップS201)。
【0043】
受信監視部31は、不具合データベース41を参照し、格納する情報に係る基地局番号(言い換えれば、位置登録シーケンスにおいて移動局1が通信した基地局)が既にテーブルに格納されているか否かを確認する(ステップS202)。上述のように、図4に示す監視情報テーブルは、基地局毎に設けられているため、該処理において、受信監視部31は、不具合データベース41内に格納する情報に係る基地局番号に対応する監視情報テーブルが存在するか否かを確認してもよい。
【0044】
格納する情報に係る基地局番号が監視情報テーブルに登録済みの場合(ステップS202:Yes)、受信監視部31は、該基地局番号に対応するテーブルのレコードに空きがあるか否かを確認する(ステップS203)。上述のように、各テーブルのレコード数には上限が設定されている。受信監視部31は、格納されたレコード数と、該上限とを比較することでレコードに空きがあるか否かの確認を行ってもよい。
【0045】
テーブルのレコードに空きがある場合(ステップS203:Yes)、受信監視部31は、ステップS201で収集した情報を該テーブルの空きレコードであって、前回格納したレコードのレコード番号をインクリメントしたレコードに格納する(ステップS204)。他方で、テーブルのレコードに空きがない場合(ステップS203:No)、受信監視部31は、ステップS201で収集した情報を該テーブル内の測定時間が最も古いレコードに上書きして格納する(ステップS205)。
【0046】
また、格納する情報に係る基地局番号が監視情報テーブルに登録されていない場合(ステップS202:No)、受信監視部31は、不具合データベース41内の監視情報テーブルのうち、更新時間(言い換えれば、最新のレコードが格納された時間)が一番古いテーブルをクリアし、該テーブルに収集した情報に係る基地局番号を割り当てる(ステップS206)。その後、受信監視部31は、収集した情報を該テーブルの一番目のレコードに格納する(ステップS207)。
【0047】
図2のフローチャートに戻り、正常性の判定処理について説明を続ける。テーブル更新処理(ステップS105)の終了後に、異常判定部32は、更新後のテーブル情報を参照して、移動局1の送信機能の正常性の判定を行う(ステップS106)。
【0048】
図6及び図7を参照して、送信機能の正常性の判定処理の流れについて説明する。図6は、移動局1の送信機能の正常性の判定処理の流れを示すフローチャートである。図7は、監視情報テーブルに格納されるレコードの例である。
【0049】
送信機能の正常性の判定において、異常判定部32は、不具合データベース41に格納されるm個の監視情報テーブルについて、便宜上の1からmまでの番号を割り当てる。異常判定部32は、変数n=0を設定し(ステップS301)、nを順次インクリメントすることで、1からmまでの監視情報テーブルを個別に参照する。
【0050】
異常判定部32は、nをインクリメントして(ステップS302)、n=1とし、1番目の監視情報テーブルに格納されるレコードの位置登録終了コードを確認する(ステップS303)。具体的には、異常判定部32は、n番目の監視情報テーブルに格納されるレコードの位置登録終了コードを参照し、その中に一つでも位置登録シーケンスが正常に完了したことを示す「正常」のレコードが含まれているか否かに応じて、該n番目のテーブルが「正常」であるか「異常」であるかを判定する(ステップS304)。
【0051】
n番目の監視情報テーブルに格納されるレコードの中に、一つ以上の位置登録終了コードが「正常」であるレコードが含まれる場合(ステップS304:Yes)、異常判定部32は、該n番目の監視情報テーブルについて、「正常」であると判断する(ステップS305)。
【0052】
図7及び図8に、「正常」と判断される場合の監視情報テーブルの例を示す。図7では、基地局番号12に設定される基地局との位置登録シーケンスにおいて、測定時刻11:07:07.100から11:07:08.400まで連続して位置登録終了コードが「異常」であるレコードが格納される。他方で、測定時刻11:07:08.500においては、位置登録終了コードが「正常」であるレコードが格納される。このように位置登録終了コードが連続して「異常」であるレコードが格納される場合であっても、その後に「正常」であるレコードが格納される場合、何らかの理由で位置登録シーケンスを正常に完了出来なかった移動局1の機能が正常化したと判断出来る。このため、異常判定部32は、監視情報テーブルに、位置登録終了コードが「正常」であるレコードが一つ以上格納されている場合、該監視情報テーブルから判断される移動局1の送信機能は「正常」であると判断する。
【0053】
尚、図7の例では、各レコードについて、位置登録シーケンス時の基地局からの受信レベルが良好である(言い換えれば、測定される受信レベルが、良好と判断可能な所定の閾値以上である)場合について説明している。一方で、図8に示されるように、位置登録シーケンス時の基地局からの受信レベルが不良である場合であっても、異常判定部32は、監視情報テーブルに、位置登録終了コードが「正常」であるレコードが一つ以上格納されている場合、該監視情報テーブルから判断される移動局1の送信機能は「正常」であると判断する。受信レベルが不良であるとは、例えば、アンテナピクトが最大でない等、移動局1において測定される基地局からの受信レベルが、良好と判断可能な所定の閾値未満である場合を示す。このように基地局からの受信レベルが良好でない場合であっても、位置登録シーケンスに正常に完了していることから、移動局1の送信機能自体には異常が生じていないと判断出来るからである。
【0054】
一方で、n番目の監視情報テーブルに格納されるレコードの中に、位置登録終了コードが「正常」であるレコードが一つも含まれていない場合(ステップS304:No)、次に異常判定部32は、該テーブルに含まれるレコードの受信レベルを参照する(ステップS306)。異常判定部32は、各レコードの受信レベルに応じて、該監視情報テーブルから判断される移動局1の送信機能が「正常」であるか「異常」であるかを判断する。
【0055】
図9に、「異常」と判断される場合の監視情報テーブルの例を示す。図9では、基地局番号12に設定される基地局との位置登録シーケンスにおいて、測定時刻11:07:07.100から11:07:08.500まで連続して位置登録終了コードが「異常」であるレコードが格納される。また、図9に示される例では、各レコードについて、受信レベルが「良好」となっている(ステップS306:No)。このように受信レベルが良好である場合に、連続して位置登録シーケンスが正常に完了しないことは、受信レベルに起因しない、移動局1又は基地局の何らかの異常によるものと判断出来る。このとき、異常判定部32は、該n番目の監視情報テーブルについて、「異常」であると判断する(ステップS308)。
【0056】
一方で、テーブルに格納されるレコードについて、受信レベルが「不良」である場合(ステップS306:Yes)、異常判定部32は、該テーブルについて、「正常」であると判断する(ステップS307)。図10に、格納されるレコードの位置登録終了コードが全て「異常」であり、且つ受信レベルが全て「不良」である場合の監視情報テーブルの例を示す。図10では、基地局番号12に設定される基地局との位置登録シーケンスにおいて、測定時刻11:07:07.100から11:07:08.500まで連続して位置登録終了コードが「異常」であるレコードが格納される。また、各レコードについて、受信レベルが「不良」となっている。このような場合、基地局からの受信状況が良好でないため、これに起因して位置登録シーケンスが正常に完了出来ないと判断出来る。このため、異常判定部32は、該n番目の監視情報テーブルについて、暫定的に「正常」であると判断する(ステップS307)。
【0057】
n番目の監視情報テーブルについて、「正常」又は「異常」の判定を行った後に、異常判定部32は、最新の測定時刻のレコードが含まれる監視情報テーブルについての判定結果を、最新判定結果としてメモリ40内に格納する(ステップS309)。例えば、n=1である場合には、異常判定部32は、1番目の監視情報テーブルの判定結果と、該1番目の監視情報テーブルに格納される最新のレコードの測定時刻とを最新判定結果としてメモリ40内に格納する。n>1となる以降の処理時には、異常判定部32は、n番目の監視情報テーブルに格納される最新のレコードの測定時刻をメモリ40内に格納される最新判定結果に係る最新のレコードの測定時刻と比較し、より新しいレコードを含むテーブルに係る判定結果を最新判定結果として格納する。尚、異常判定部32は、その他何らかの手段により、測定時刻が最新であるレコードを含む監視情報テーブルについての判定結果を最新判定結果として格納してもよい。
【0058】
続いて、異常判定部32は、変数nと監視情報テーブル数mとを比較する(ステップS310)。n=mでない場合(つまり、n<mである場合)、異常判定部32は、nの値をインクリメントして(ステップS302)、ステップS303からステップS309の処理をn=mとなるまで(言い換えれば、全ての監視情報テーブルについて判定を終了するまで)繰り返し実行する。
【0059】
n=mである場合(ステップS310:Yes)、異常判定部32は、m個の監視情報テーブル全てについて、判定結果を参照する(ステップS311)。m個の監視情報テーブルについての判定結果の内、1つ以上のテーブルについて判定結果が「正常」である場合(ステップS312:Yes)、次に異常判定部32は、最新判定結果を参照する(ステップS313)。
【0060】
m個の監視情報テーブルについての判定結果の内、1つ以上のテーブルについて判定結果が「正常」であり(ステップS312:Yes)、且つ最新判定結果が「正常」である場合(ステップS313:Yes)、異常判定部32は、移動局1の送信機能は「正常」であると判定する(ステップS314)。異常判定部32から「正常」判定の通知を受けた送信制御部33は、以前の処理で「位置登録抑制フラグ」が設定されている場合、該フラグを解除し、位置登録シーケンスの実行頻度を通常の状態(言い換えれば、本実施例に係る制御に依らない状態)に設定する。
【0061】
m個の監視情報テーブルについての判定結果の内、1つ以上のテーブルについて判定結果が「正常」であり(ステップS312:Yes)、且つ最新判定結果が「異常」である場合(ステップS313:No)、異常判定部32は、移動局1は、送信機能に異常が生じている可能性があると判断して、「要注意」であると判定する(ステップS316)。異常判定部32から「要注意」判定の通知を受けた送信制御部33は、位置登録抑制フラグ」を設定し、位置登録シーケンスの実行頻度を抑制する(ステップS317)。
【0062】
また、m個の監視情報テーブルについての判定結果の内、全てのテーブルについて判定結果が「異常」である場合(ステップS312:No)、異常判定部32は、移動局1は、送信機能に異常が生じていると判断して、「異常」であると判定する(ステップS318)。異常判定部32から「異常」判定の通知を受けた送信制御部33は、以前の処理で「位置登録抑制フラグ」が設定されている場合、該フラグを解除する(ステップS319)。後の処理で、送信機能自体を停止するため、送信を再実行する際に「位置登録抑制フラグ」が影響することを避けるためである。
【0063】
再び図2において、送信制御部33は、移動局1の送信機能に対して上述したいずれかの判定を行った後、送信機能についての判定結果を参照する(図2、ステップS107)。送信機能に異常が生じていると判定されている場合(図2、ステップS107:No)、送信制御部33は、送信部20の送信機能を停止する(図2、ステップS108)。正常性判定処理後に、送信制御部33は、位置登録シーケンスを終了する。
【0064】
上述した「位置登録抑制フラグ」とは、送信制御部33において設定されるソフトウェア実行上の一設定(言い換えれば、フラグ)である。「位置登録抑制フラグ」が設定されている場合、送信制御部33は、送信部20が実施する基地局への位置登録シーケンスの実行頻度を上述した通常状態と比較して低減する。
【0065】
移動局1の送信機能に異常が生じ、例えば、送信電力の制御等が適切に行えない場合、位置登録シーケンスが正常に完了しない。位置登録シーケンスが正常に完了しない場合、移動局1の送信制御部33は、再度基地局に対して位置登録シーケンスを実行する。このため、移動局1の送信機能に異常が生じており、位置登録シーケンスが正常に完了出来ない場合は、移動局1は所定の頻度で繰り返し位置登録シーケンスを実行する。
【0066】
本動作例において、異常判定部32は、複数の基地局との位置登録シーケンスにおいて、位置登録終了コードが「正常」であると判定される基地局が一つ以上存在し、最新の判定において基地局との間の位置登録シーケンスが正常に完了する場合、移動局1の送信機能は「正常」であると判定する。このような場合、基地局側の不具合により、位置登録シーケンスが正常に完了しなかったものと判断出来る。従って、異常判定部32は、移動局1の送信機能には異常が生じていないと判断し、既に「位置登録抑制フラグ」が設定されていれば、該フラグを解除する。
【0067】
また、異常判定部32は、複数の基地局との位置登録シーケンスにおいて、位置登録終了コードが「正常」であると判定される基地局が一つ以上存在し、最新の判定において基地局との間の位置登録シーケンスが正常に完了しない場合、移動局1の送信機能について「要注意」であると判定する。このような場合、基地局又は移動局1のいずれかの不具合により、位置登録シーケンスが正常に完了しなかったものと判断出来る。しかしながら、移動局1の機能については、必ずしも正常であるか否かが判断出来ない。そこで、異常判定部32は、異常が生じている可能性があるとの趣旨である「要注意」との判定を行い、通信制御部33における位置登録シーケンスの実行頻度を抑制する「位置登録抑制フラグ」を設定する。
【0068】
尚、最新の判定において基地局との間の位置登録シーケンスが正常に完了しない場合とは、基本的に、現在移動局1が通信を行っている基地局との間で位置登録シーケンスが正常に完了しない状況を示す。そこで、通信制御部33は、該基地局エリアでは、位置登録シーケンスが成功する可能性が低いと判断する一方で、不具合データベース41に格納された情報から、他の基地局エリアでは位置登録シーケンスが正常に完了する可能性があると判断してもよい。このとき、通信制御部33は、該基地局エリア内で位置登録が成功することの他、移動局1が他の基地局エリアに移動後に位置登録シーケンスが正常に完了することをトリガとして、「位置登録抑制フラグ」を解除してもよい。
【0069】
異常判定部32は、複数の基地局との位置登録シーケンスの全てにおいて、位置登録終了コードが「異常」であると判定される場合に、移動局1の送信機能に異常が生じていると判定する。また、通信制御部33は、位置登録シーケンスの実行頻度を抑制する「位置登録抑制フラグ」を設定する。
【0070】
例えば、複数の基地局との位置登録シーケンスが正常に完了しない場合であって、他の一の基地局との間で位置登録シーケンスが正常に終了する場合、位置登録シーケンスが正常に完了しないことの理由として、移動局1の異常の他に、基地局側の異常が考えられるからである。一方で、不具合データベース41内に格納されるm個の監視情報テーブルの全てにおいて、対応する基地局との間の位置登録シーケンスが正常に完了していないことを示すレコードが格納される場合、基地局側の異常の可能性は低く、移動局1の送信機能に異常が生じている可能性が高い。不具合データベース41内に格納される監視情報テーブル数、言い換えれば、移動局1の正常性判定の基準となる基地局数は、このような理由を考慮して、位置登録シーケンスが正常に完了しないことが基地局側の異常によるものか、移動局1の異常によるものかを好適に区別可能に設定されることが好ましい。
【0071】
尚、移動局1の送信機能に異常が生じていると判定される場合、移動局1が他の基地局エリアに移動したとしても、該基地局との間で位置登録シーケンスが正常に完了することはないと考えられる。このため、移動局1の送信機能に異常が生じていると判定される場合、送信制御部33は、速やかに送信部20を介した電波の送信を停止する。尚、好適には、異常判定部32は、移動局1の送信機能に異常が生じていると判定した場合、移動局1のモニタやスピーカ(いずれも不図示)等を介して、ユーザに対して送信機能の異常と、送信機能の停止とを通知する。
【0072】
上述した動作例では、送信制御部33は、移動局1の送信機能に異常が生じていると判定する場合(図6、ステップS318)、送信機能の停止を行い、例えば、以降の位置登録シーケンスを実行しないよう送信部20の動作を制御する(図2、ステップS108)。このとき、送信制御部33は、送信機能の停止を行う代わりに、位置登録抑制フラグの設定を行うこと等により、位置登録シーケンスの実行頻度を低減する処理を行ってもよい。このとき、変更後の位置登録シーケンスの実行頻度は、基地局との間のトラフィック量や、周囲の移動局に与える干渉等の影響を考慮して決定されることが好ましい。尚、位置登録シーケンスの実行頻度を低減した後に、位置登録シーケンスが正常に完了する等、正常と判断される通信が行われた場合、異常判定部32は、移動局1の送信機能が正常であると判定し、位置登録シーケンスの実行頻度を低減前の状態に戻してもよい。
【0073】
上述した動作例では、異常判定部32は、不具合データベース41に格納される監視情報テーブルを参照して、複数の基地局についての位置登録シーケンスの監視情報に基づく正常性の判定を行っている。複数の基地局についての位置登録シーケンスの監視情報を参照することで、位置登録シーケンスが正常に完了しない場合、移動局1側の問題か、該位置登録シーケンスにおいて通信していた基地局側の問題かを好適に判別出来る。このことは、移動局1の送信機能の異常を検出する上で、検出精度の向上に繋がり、有益である。
【0074】
一方で、異常判定部32は、単一の基地局との間での位置登録シーケンスの監視情報に基づいて、移動局1の送信機能の正常性の判定を行ってもよい。具体的には、異常判定部32は、図6に示す正常性判定のフローチャートにおいて、m=1に設定し、移動局1が正常性判定処理時に通信を行っている基地局についての監視情報テーブルに基づく正常性の判定を行う。このような処理においても、移動局1の送信機能の異常を好適に検出可能である。
【0075】
上述した動作例では、送信シーケンスの一例として、移動局1の位置登録シーケンスを用いて、送信部20の機能の正常性判定を行う例について説明した。しかしながら、異常判定部32は、他の送信シーケンスについても同様の処理を行うことで送信部20の機能の正常性判定を行ってもよい。ここに、送信シーケンスとは、移動局1と基地局又はネットワーク上の上位装置の間において、所定のフォーマットに沿った一連のデータの送受信を示す。好適には、送信シーケンスとは、移動局1と、該移動局と通信する対向装置との間のデータの送受信であって、移動局1からの送信メッセージが適切に受信された場合にその旨を通知するメッセージの応答が行われるものを示す趣旨である。他の送信シーケンスは、例えば、発信シーケンス、着信シーケンス、終話シーケンス、セクタ追加シーケンス等の公知のシーケンスであってもよい。また、異常判定部32は、このような異なる種類の複数の送信シーケンスが正常に完了したか否かの監視情報を適宜組み合わせて、送信部20の機能の正常性判定を行ってもよい。
【0076】
CPU30が有する機能部である受信監視部31、異常判定部32、送信制御部33の夫々は、CPU30により実行される何らかのプログラムによって実現される機能であってもよい。この場合、移動局1は、従来用いられる移動局の構成に対して新規のハードウェアを追加することなく、プログラムを含むソフトウェアを用いることで、上述の各処理を実現可能となる。このため、移動局1では、基地局に対する送信電波出力を監視するためのフィードバックループ等の専用のハードウェアを設けることが不要となり、汎用性の向上や製造コストの抑制という利点を有する。
【0077】
(3)第2動作例
異常判定部32は、上述した動作例の他に、例えば以下に説明するような第2動作例に係る移動局1の正常性判定処理によって移動局1の送信機能に異常が生じているか否かを判定してもよい。図11は、第2動作例に係る正常性判定処理の流れを示すフローチャートである。図11を参照して、第2動作例に係る正常性判定処理の流れを説明する。
【0078】
送信機能の正常性の判定において、異常判定部32は、不具合データベース41に格納されるm個の監視情報テーブルについて、便宜上の1からmまでの番号を割り当てる。異常判定部32は、変数n=0を設定し(ステップS401)、nを順次インクリメントすることで、1からmまでの監視情報テーブルを個別に参照する。
【0079】
異常判定部32は、nをインクリメントして(ステップS402)、n=1とし、1番目の監視情報テーブルに格納されるレコードの位置登録終了コードを確認する(ステップS403)。具体的には、異常判定部32は、n番目の監視情報テーブルに格納されるレコードの位置登録終了コードを参照し、その中に一つでも位置登録シーケンスが正常に完了したことを示す「正常」のレコードが含まれているか否かに応じて、該n番目のテーブルが「正常」であるか「異常」であるかを判定する(ステップS404)。
【0080】
n番目の監視情報テーブルに格納されるレコードの中に、一つ以上の位置登録終了コードが「正常」であるレコードが含まれる場合(ステップS304:Yes)、異常判定部32は、移動局1の送信機能について、「正常」であると判定する(ステップS405)。このとき、以前の処理で「位置登録抑制フラグ」が設定されている場合、送信制御部33は、該フラグを解除し、位置登録シーケンスの実行頻度を通常の状態に設定する(ステップS406)。
【0081】
他方で、n番目の監視情報テーブルに格納されるレコードが全て位置登録終了コードが「異常」である場合(ステップS406:No)、異常判定部32は、変数nと監視情報テーブル数mとを比較する(ステップS407)。n=mでない場合(つまり、n<mである場合)、異常判定部32は、nの値をインクリメントして(ステップS402)、ステップS403からステップS404の処理をn=mとなるまで(言い換えれば、全ての監視情報テーブルについて判定を終了するまで)繰り返し実行する。
【0082】
m個の監視情報テーブルについての判定結果の内、全てのテーブルについて判定結果が「異常」である場合(ステップS404:No、且つステップS407:Yes)、異常判定部32は、移動局1は、送信機能に異常が生じていると判断して、「異常」であると判定する(ステップS408)。異常判定部32から「異常」判定の通知を受けた送信制御部33は、以前の処理で「位置登録抑制フラグ」が設定されている場合、該フラグを解除する(ステップS409)。後の処理で、送信機能自体を停止するため、送信を再実行する際に「位置登録抑制フラグ」が影響することを避けるためである。
【0083】
送信制御部33は、移動局1の送信機能に対して上述したいずれかの判定を行った後、送信機能についての判定結果を参照する(図2、ステップS107)。送信機能に異常が生じていると判定されている場合(図2、ステップS107:No)、送信制御部33は、送信部20の送信機能を停止する(図2、ステップS108)。正常性判定処理後に、送信制御部33は、位置登録シーケンスを終了する。
【0084】
上述した第2動作例に係る正常性判定処理によれば、より簡単な処理で移動局1の送信機能に異常が生じているか否かを判定可能となる。
【0085】
本発明は、上述した実施例に限られるものではなく、請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う移動局及び通信制御方法もまた本発明の技術的範囲に含まれるものである。
【0086】
以上、本明細書で説明した実施形態について、以下の付記を更に記載する。
(付記1)
基地局との間で無線通信を行う移動局であって、
前記基地局に対して所定の頻度で送信メッセージの送信を行う送信部と、
前記基地局から送信される受信メッセージを監視する受信監視部と、
前記受信メッセージの監視結果に応じて、前記送信部に異常が生じているか否かを判定する異常判定部と、
前記送信部が前記送信メッセージを送信する頻度を制御する送信制御部と
を備え、
前記異常判定部は、(i)前記送信部が送信した前記送信メッセージに対して、所定のシーケンスに沿った受信メッセージが受信されない場合、前記所定のシーケンスに失敗したと判断し、(ii)前記基地局に対する前記所定のシーケンスに連続して失敗する場合、前記送信部に異常が生じていると判定し、
前記送信制御部は、前記送信部に異常が生じていると判定される場合、前記送信部が前記送信メッセージを送信する頻度を前記所定の頻度より低減することを特徴とする移動局。
(付記2)
前記異常判定部は、同一の前記基地局に対する前記所定のシーケンスに連続して失敗する場合、前記送信部に異常が生じていると判定することを特徴とする付記1に記載の移動局。
(付記3)
前記異常判定部は、複数の前記基地局の全てに対する前記所定のシーケンスに連続して失敗する場合、前記送信部に異常が生じていると判定することを特徴とする付記1に記載の移動局。
(付記4)
前記送信制御部は、前記送信部に異常が生じていると判定される場合、前記送信部が前記送信メッセージを送信しないよう、前記送信部が前記送信メッセージを送信する頻度を低減することを特徴とする付記1から3のいずれか一項に記載の移動局。
(付記5)
前記基地局から送信される前記受信メッセージの受信レベルを測定する受信レベル測定部を更に備え、
前記異常判定部は、前記基地局に対する前記所定のシーケンスに連続して失敗し、且つ前記基地局から送信される前記受信メッセージの前記受信レベルが所定の閾値以下である場合、前記送信部に異常が生じていると判定することを特徴とする付記1から4のいずれか一項に記載の移動局。
(付記6)
前記異常判定部は、前記基地局に対する前記所定のシーケンスに成功する場合、前記送信部に異常が生じていないと判定し、
前記送信制御部は、前記送信部に異常が生じていないと判定される場合、前記送信部が前記送信メッセージを送信する頻度を前記所定の頻度とすることを特徴とする付記1から5のいずれか一項に記載の移動局。
(付記7)
基地局との間で無線通信を行う移動局における通信制御方法であって、
前記基地局に対して所定の頻度で送信メッセージの送信を行う送信工程と、
前記基地局から送信される受信メッセージを監視する受信監視工程と、
前記受信メッセージの監視結果に応じて、当該移動局の送信機能に異常が生じているか否かを判定する異常判定工程と、
前記送信工程において前記送信メッセージを送信する頻度を制御する送信制御工程と
を備え、
前記異常判定工程では、(i)前記送信工程において送信した前記送信メッセージに対して、所定のシーケンスに沿った受信メッセージが受信されない場合、前記所定のシーケンスに失敗したと判断し、(ii)前記基地局に対する前記所定のシーケンスに連続して失敗する場合、前記送信機能に異常が生じていると判定し、
前記送信制御工程では、前記送信機能に異常が生じている場合、前記送信工程において前記送信メッセージを送信する頻度を前記所定の頻度より低減することを特徴とする通信制御方法。
【符号の説明】
【0087】
1 移動局、
10 受信部、
20 送信部、
30 CPU、
31 受信監視部、
32 異常判定部、
33 送信制御部、
40 メモリ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基地局との間で無線通信を行う移動局であって、
前記基地局に対して所定の頻度で送信メッセージの送信を行う送信部と、
前記基地局から送信される受信メッセージを監視する受信監視部と、
前記受信メッセージの監視結果に応じて、前記送信部に異常が生じているか否かを判定する異常判定部と、
前記送信部が前記送信メッセージを送信する頻度を制御する送信制御部と
を備え、
前記異常判定部は、(i)前記送信部が送信した前記送信メッセージに対して、所定のシーケンスに沿った受信メッセージが受信されない場合、前記所定のシーケンスに失敗したと判断し、(ii)前記基地局に対する前記所定のシーケンスに連続して失敗する場合、前記送信部に異常が生じていると判定し、
前記送信制御部は、前記送信部に異常が生じていると判定される場合、前記送信部が前記送信メッセージを送信する頻度を前記所定の頻度より低減することを特徴とする移動局。
【請求項2】
前記異常判定部は、同一の前記基地局に対する前記所定のシーケンスに連続して失敗する場合、前記送信部に異常が生じていると判定することを特徴とする請求項1に記載の移動局。
【請求項3】
前記異常判定部は、複数の前記基地局の全てに対する前記所定のシーケンスに連続して失敗する場合、前記送信部に異常が生じていると判定することを特徴とする請求項1に記載の移動局。
【請求項4】
前記送信制御部は、前記送信部に異常が生じていると判定される場合、前記送信部が前記送信メッセージを送信しないよう、前記送信部が前記送信メッセージを送信する頻度を低減することを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の移動局。
【請求項5】
前記基地局から送信される前記受信メッセージの受信レベルを測定する受信レベル測定部を更に備え、
前記異常判定部は、前記基地局に対する前記所定のシーケンスに連続して失敗し、且つ前記基地局から送信される前記受信メッセージの前記受信レベルが所定の閾値以下である場合、前記送信部に異常が生じていると判定することを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の移動局。
【請求項6】
前記異常判定部は、前記基地局に対する前記所定のシーケンスに成功する場合、前記送信部に異常が生じていないと判定し、
前記送信制御部は、前記送信部に異常が生じていないと判定される場合、前記送信部が前記送信メッセージを送信する頻度を前記所定の頻度とすることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の移動局。
【請求項7】
基地局との間で無線通信を行う移動局における通信制御方法であって、
前記基地局に対して所定の頻度で送信メッセージの送信を行う送信工程と、
前記基地局から送信される受信メッセージを監視する受信監視工程と、
前記受信メッセージの監視結果に応じて、当該移動局の送信機能に異常が生じているか否かを判定する異常判定工程と、
前記送信工程において前記送信メッセージを送信する頻度を制御する送信制御工程と
を備え、
前記異常判定工程では、(i)前記送信工程において送信した前記送信メッセージに対して、所定のシーケンスに沿った受信メッセージが受信されない場合、前記所定のシーケンスに失敗したと判断し、(ii)前記基地局に対する前記所定のシーケンスに連続して失敗する場合、前記送信機能に異常が生じていると判定し、
前記送信制御工程では、前記送信機能に異常が生じている場合、前記送信工程において前記送信メッセージを送信する頻度を前記所定の頻度より低減することを特徴とする通信制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−175663(P2012−175663A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−38732(P2011−38732)
【出願日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】