説明

移動式金型反転装置

【課題】装置を小型化でき、また、安価に実現することができる移動式金型反転装置を提供する。
【解決手段】第1支持面13を備えた第1支持盤15と第2支持面17を備えた第2支持盤19とがL字型に連結されてなる、金型50を載置可能な金型支持盤11を有し、第1支持盤15に第1車輪23が設けられるとともに、第2支持盤19に第2車輪27が設けられ、金型支持盤11における第1支持盤15と第2支持盤19との連結部43に、連結部43に最も近い第1車輪23と第2車輪27の、それぞれ支持面から遠い方の外周を結ぶ共通接線Aより外側に突出した接地部49が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動式金型反転装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、射出成形機で用いる金型の交換や分解などを目的として金型を反転させることがある。金型を反転させる方法として、一般的にはクレーンやチェーンブロックを使用して金型を吊り上げた後に、金型を反転させている。しかしながら、従来の方法では、作業に多くの手間や時間がかかり、また重量物の落下や挟まれによる危険を伴う場合が多かった。
【0003】
このような問題を解消するために、近年では金型反転装置が提案されている。具体的には、左右一対の金型支持盤の基端部を、枢支機構を介して共通の軸心回りに回動可能に支持し、その枢支機構を基台の上端に固定し、各金型支持盤を駆動する油圧シリンダを対応する各盤の下面側近傍位置に配設して、基台と金型支持盤の下面の先端側部分とに連結したものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平8−80531号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述の特許文献1に開示されている金型反転装置は、設置場所が固定されるとともに、設置面積が大きくなるという問題があった。また、装置が自動化されているため、装置の製造コストが高くなるという問題があった。
【0005】
そこで、本発明は、上述の事情を鑑みてなされたものであり、装置を小型化でき、また、安価に実現することができる移動式金型反転装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、請求項1に記載した発明は、第1支持面を備えた第1支持盤と第2支持面を備えた第2支持盤とがL字型に連結されてなる、金型を載置可能な金型支持盤を有し、前記第1支持盤に少なくとも一つの第1車輪が設けられるとともに、前記第2支持盤に少なくとも一つの第2車輪が設けられ、前記金型支持盤における前記第1支持盤と第2支持盤との連結部に、連結部に最も近い前記第1車輪と連結部に最も近い第2車輪の、それぞれ支持面から遠い方の外周を結ぶ共通接線より外側に突出した接地部が形成されていることを特徴としている。
【0007】
請求項2に記載した発明は、前記第1支持盤および第2支持盤の少なくとも一方に、前記金型を反転させるための操作用レバーが着脱可能に設けられていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、金型支持盤を第1支持盤と第2支持盤とで略L字状に形成し、金型支持盤に車輪を設けて、移動式金型反転装置を構成しているため、装置を小型化することができるとともに、安価に実現することができる。また、金型支持盤に接地部を形成しているため、金型支持盤を容易に反転させることができる。さらに、金型支持盤に車輪を設けたため、容易に移動させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
次に、本発明の実施形態を図1〜図4に基づいて説明する。
図1、図2に示すように、移動式金型反転装置10は、2枚の鋼板を直角に接合したL字型の金型支持盤11を備えている。金型支持盤11は、第1支持面13を備えた第1支持盤15と、第2支持面17を備えた第2支持盤19とで構成されている。第1支持面13または第2支持面17に金型50が載置可能に構成されている。
【0010】
また、第1支持盤15における第1支持面の反対側の裏面21には、第1車輪23が設けられており、第2支持盤19における第2支持面17の反対側の裏面25には、第2車輪27が設けられている。第1車輪23および第2車輪27は、それぞれ4個の車輪で構成されており、水平面上に設置されている何れかの車輪を用いて、水平方向に移動可能に構成されている。なお、裏面21および裏面25にそれぞれ4個の車輪を装備すると移動時のバランスを確実に保持することができるため好ましいが、それぞれ2個の車輪を装備してもよい。また、これら第1車輪23および第2車輪27は、移動中に左右の進行方法を容易に変更することができるように、床面に垂直な軸を中心に回転できるようにしても良い。なお、金型支持盤11の連結部43に最も近い車輪23aおよび27aは、反転操作時の金型支持盤11のバランスを保持するために、床面に垂直な軸を中心に回転しないように固定する方が好ましい。
【0011】
また、裏面21には、操作用レバー30の端部を差込み可能に構成された中空形状の第1差込み部材31が設けられている。裏面25にも、同じく中空形状の第2差込み部材33が設けられている。第1差込み部材31および第2差込み部材33は、例えば鋼管などで形成されており、裏面21および裏面25にそれぞれ溶接接合されている。また、第1差込み部材31および第2差込み部材33は、それぞれ2個ずつ設けられている。
【0012】
操作用レバー30は、例えば金属製の棒材で形成されており、2本の棒材35,35を備えている。2本の棒材35,35は、それぞれ第1差込み部材31または第2差込み部材33にその端部を差込み可能に構成されている。2本の棒材35,35は、互いを連接するように中間部材37を設けることが好ましい。すなわち中間部材37により、2本の棒材35,35は連接し、操作用レバー30として一体化することにより、取り扱い性が向上する。
【0013】
さらに、裏面21および裏面25には、第1支持盤11および第2支持盤19を強度的に補強するための補強用鋼材39が設けられている。補強用鋼材39は、第1支持盤11の裏面21の端部41から裏面21を沿うように設けられ、第1支持盤11と第2支持盤19との連結部43において、略直角に折曲し、第2支持盤19の裏面25に沿うように設けられ、第2支持盤19の裏面25の端部45まで延設されている。補強用鋼材39は、裏面21および裏面25に平行して2本形成されている。
【0014】
ここで、図3に示すように、連結部43において、補強用鋼材39は略直角に折曲しているが、その周縁部47は湾曲形成されて、滑らかに接地できる接地部49として構成されている。また、接地部49の周縁部47は、連結部43に最も近い第1車輪23と連結部43に最も近い第2車輪27の、それぞれ支持面から遠い方の外周を結ぶ共通接線Aよりも金型支持盤11の外側に突出して形成されている。
【0015】
次に、移動式金型反転装置10の作用について図4に基づいて説明する。
図4(A)に示すように、金型支持盤11の第2支持盤19の第2支持面17上に金型50を載置する。第2支持盤19と垂直に接続された第1支持盤15の裏面21の第1差込み部材31に操作用レバー30を差し込む。この状態で、操作用レバー30を手前側に倒す。
【0016】
図4(B)に示すように、操作用レバー30を手前側に倒すと、第2車輪27が床面から離間する方向に移動する。このとき、連結部43に最も近い車輪27aが床面から離間する前に、補強用鋼材39の接地部49が床面と接する。さらに倒すと、車輪27aが床面から離間し、接地部49のみが床面と接する状態になる。ここで、接地部49が湾曲形状になっているため、接地部49で転がるようにしてスムーズに金型支持盤11を手前側に倒すことができる。さらに倒すと、接地部49が床面に接した状態で、連結部43に最も近い第1支持盤15側の車輪23aが床面と接する。そして、さらに金型支持盤11を手前側に倒す。
【0017】
図4(C)に示すように、第1支持盤15の裏面21が床面と略平行になるまで倒すことで、金型支持盤11および金型支持盤11に載置された金型50を90度反転させることができる。つまり、金型支持盤11および金型50を容易に姿勢変化させることができる。
【0018】
したがって、上述のように構成した移動式金型反転装置10は、L字状の金型支持盤11の連結部43における補強用鋼材39の周縁部47を床面に接触させ、そこを支点として手動により金型支持盤11およびその上に載置された金型50を容易に90度反転させることができる。
【0019】
また、移動式金型反転装置10には、金型支持盤11の金型50を載せる第1支持盤15の裏面21および第2支持盤19の裏面25に各4個の車輪を装備し、金型50を載置した状態で簡単に移動できる。
【0020】
さらに、移動式金型反転装置10は、金型支持盤11に設けられた接地部49が、金型支持盤11の連結部43に最も近い第1支持盤15の車輪23aと第2支持盤19の車輪27aとの共通接線Aより外側に突出成形されているため、金型支持盤11の第1支持盤15に接続された操作用レバー30を手前に倒したときに、金型支持盤11の接地部49が床面に接触し、そこを支点として金型支持盤11を、バランスを崩さずに人力で容易に反転することができる。
【0021】
接地部49が、金型支持盤11の連結部43に最も近い第1支持盤15の車輪23aと第2支持盤の車輪27aの、それぞれ支持面から遠い方の外周を結ぶ共通接線Aから外側に突出する距離は特に限定されないが、移動式金型反転装置10を移動する場合に、接地部49が床面に接触して移動が困難とならない範囲で、前記共通接線Aから外側に突出する距離が5mm以上となるようにすることが好ましい。接地部49の形状は特に限定されないが、金型支持盤11を反転するときに金型50および移動式金型反転装置10の略全重量が加わるため、床面にかかる荷重を分散するために湾曲形成させた方が好ましい。湾曲された丸みの半径は特に限定されないが、5mm以上が好ましい。
【0022】
なお、金型50が大型になると、操作用レバー30を手前に倒す際に大きな力が必要となるため、本実施形態の移動式金型反転装置10は重量が350kg以下の小型の金型に特に適している。
【0023】
移動式金型反転装置10の金型支持盤11は、金型50を支えるための強度を有する範囲内で、できるだけ軽量に設計する方が好ましく、重量が350kg以下の金型50に対しては、金型支持盤11の第1支持盤15および第2支持盤19の寸法は400mm×400mm以下が好ましく、厚さは10mm以下が好ましい。
尚、移動式金型反転装置10に用いる各部材の材料は特に制限されないが、機械的強度の観点から金属が好ましい。
【0024】
金型支持盤11の第1支持盤15および第2支持盤19の裏面21および裏面25には、操作用レバー30の着脱を可能とする第1差込み部材31および第2差込み部材33を設けたため、金型支持盤11の反転時には操作用レバー30を金型支持盤11の垂直面(第1支持盤15)に取り付けて反転に要する力を低減し、移動時には金型支持盤11の水平面から取り外して移動の妨げにならないようにすることが容易となり好ましい。
【0025】
操作用レバー30の材質は鋼管や木材などが使用でき、人力によって手前に倒すため、寸法は長い方が力は少なくて済むが、実際の操作性を考慮するとその長さは1700mm以下が好ましい。
【実施例】
【0026】
以下、実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。
(L字型金型支持盤)
金型反転装置のL字型金型支持盤として、縦360mm、横360mm、厚さ7mmの2枚の鋼板を溶接して作製した。
L字型金型支持盤には補強用として幅50mm、厚み7mmの鋼材を、中心線を挟んで間隔が200mmで平行になるようにL字型金型支持盤における金型を載せる面とは反対側の裏面に沿って垂直に2列溶接して取り付けた。
【0027】
この補強用鋼材のL字型の連結部は、金型反転装置を90度反転するときに支点となる接地部であり、半径20mmの丸みを形成した。
【0028】
(操作用レバーの差込み部材)
金型反転装置の金型支持盤の第1支持盤および第2支持盤の裏面には、反転用の操作用レバーを差し込むための中空形状の鋼管からなる差込み部材(外形30mm、肉厚1.8mm、長さ300mm)を160mmの間隔を空けて2本平行になるようにそれぞれ溶接して取り付けた。
【0029】
(操作用レバー)
上述の差込み部材に差し込んで取り付ける鋼管製の操作用レバーは、外形25mm、肉厚1.8mm、長さ1500mmの鋼管を2本用意し、矩形の鋼製中間部材により連結した。
この鋼管製の操作用レバーは、操作用レバーの差込み部材に200mm挿入され、固定ピンにて固定できるようにした。
【0030】
(金型支持盤に取り付ける車輪)
金型反転装置の金型支持盤の第1支持盤および第2支持盤の裏面には、平行に溶接して取り付けた操作用レバーの差込み部材と、L字型に沿って垂直に溶接して取り付けた補強用鋼材があり、それらの外側の鋼板の四隅に直径70mmの車輪をそれぞれの裏面に取り付けた。
金型支持盤の連結部に最も近い位置に取り付ける車輪の位置は、金型支持盤に溶接して取り付けたL字型の補強用鋼材の連結部が、装置を反転するときに接地して支点となるように調節して取り付けた。この場合、補強用鋼材のL字型の接地部は、金型支持盤の連結部に最も近い第1支持盤の車輪と第2支持盤の車輪の、それぞれ支持面から遠い方の外周を結ぶ共通接線から15mm外側に出るように構成した。
【0031】
上述の金型反転装置の金型支持盤の第2支持面に、重量が310kgの射出成形用金型を載置し、金型支持盤の第1支持盤に取り付けた操作用レバーを手前に倒し、金型支持盤の接地部を床面に接地させて、そこを支点としてさらに操作用レバーを倒したところ、容易に金型支持盤と金型を90度反転することができた。次いで、水平になった操作用レバーを第1差込み部材から引き抜き、それを第2支持盤に接合された第2差込み部材に差し込み、取っ手として掴み押すことにより金型を容易に移動することができた。
【0032】
本実施形態によれば、第1支持面13を備えた第1支持盤15と第2支持面17を備えた第2支持盤19とが、L字型に連結され、金型50を載置可能な金型支持盤11を備えた移動式金型反転装置10において、第1支持盤15に第1車輪23が設けられるとともに、第2支持盤19に第2車輪27が設けられ、金型支持盤11における第1支持盤15と第2支持盤19との連結部43に、第1車輪23と第2車輪27との共通接線Aより外側に突出した接地部49を形成した。
【0033】
このように構成したため、移動式金型反転装置10を小型化することができるとともに、安価に実現することができる。また、金型支持盤11に接地部49を形成しているため、接地部49を支点として一方の第1支持盤15から他方の第2支持盤19へと金型50の載置姿勢を切り換えることが可能となる。つまり、金型支持盤11を容易に反転させることができる。さらに、金型支持盤11に車輪23,27を設けたため、容易に移動させることができる。
【0034】
また、第1支持盤15および第2支持盤19の裏面21,25に、金型50を反転させるための操作用レバー30を着脱可能に設けた。
このように構成したため、金型支持盤11を反転させる際に、操作用レバー30を用いて、てこの原理で金型支持盤11を反転させることができ、容易に金型50を反転させることができる。
【0035】
尚、本発明の技術範囲は上述した実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。すなわち、本実施形態で挙げた具体的な材料や構成などは一例に過ぎず、適宜変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の実施形態における移動式金型反転装置の側面図である。
【図2】本発明の実施形態における移動式金型反転装置の背面図である。
【図3】図1のB部拡大図である。
【図4】本発明の実施形態における移動式金型反転装置を反転させる手順を示す説明図である。
【符号の説明】
【0037】
10…移動式金型反転装置 11…金型支持盤 13…第1支持面 15…第1支持盤 17…第2支持面 19…第2支持盤 23…第1車輪 27…第2車輪 30…操作用レバー 43…連結部 49…接地部 A…共通接線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1支持面を備えた第1支持盤と第2支持面を備えた第2支持盤とがL字型に連結されてなる、金型を載置可能な金型支持盤を有し、
前記第1支持盤に少なくとも一つの第1車輪が設けられるとともに、前記第2支持盤に少なくとも一つの第2車輪が設けられ、
前記金型支持盤における前記第1支持盤と第2支持盤との連結部に、連結部に最も近い前記第1車輪と連結部に最も近い第2車輪の、それぞれ支持面から遠い方の外周を結ぶ共通接線より外側に突出した接地部が形成されている移動式金型反転装置。
【請求項2】
前記第1支持盤および第2支持盤の少なくとも一方に、前記金型を反転させるための操作用レバーが着脱可能に設けられている請求項1に記載の移動式金型反転装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−290270(P2008−290270A)
【公開日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−135483(P2007−135483)
【出願日】平成19年5月22日(2007.5.22)
【出願人】(000006035)三菱レイヨン株式会社 (2,875)
【Fターム(参考)】