移動検出装置および記録装置
【課題】 状況に応じて最適なテンプレートパターンのサイズを可変に設定することで、確実なダイレクトセンシングを実現する。
【解決手段】 物体の移動状態の情報を間接的又は推定によって取得する取得手段(エンコーダ等)で取得された第1画像データと第2画像データとの間での移動状態の情報に応じて、移動方向におけるテンプレートパターンのサイズを可変に設定して、パターンマッチング処理を行なう。
【解決手段】 物体の移動状態の情報を間接的又は推定によって取得する取得手段(エンコーダ等)で取得された第1画像データと第2画像データとの間での移動状態の情報に応じて、移動方向におけるテンプレートパターンのサイズを可変に設定して、パターンマッチング処理を行なう。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像処理によって物体の移動を検出する技術、および同技術を採用したプリンタ等の記録装置の技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
プリント用紙等のメディアを搬送しながらプリントを行なう際、搬送精度が低いと、中間調画像の濃度ムラが生じたり、倍率誤差が生じたりして、得られるプリント画像の品質が劣化する。そのため、高精度な部品を採用し精密な搬送機構を搭載しているが、プリント品質に対する要求は厳しくさらなる精度向上が望まれている。一方ではコストに対する要求も厳しく、高精度化と低コスト化の両立が求められている。
【0003】
これに対処するため、メディアの移動を高精度に検出して、フィードバック制御により安定した搬送を実現するために、メディアの表面を撮像して、搬送されるメディアの移動を画像処理によって検出するダイレクトセンシングと呼ばれる試みがなされている。
【0004】
特許文献1は、ダイレクトセンシングの一手法を開示する。特許文献1は、移動するメディアの表面をイメージセンサにより時系列に複数回撮像し、得られた画像同士をパターンマッチング処理で比較して、メディアの移動量を検出するものである。以下、物体の表面を直接検出して移動状態を検出する方式をダイレクトセンシング、この方式を用いた検出器をダイレクトセンサと称する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−217176号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ダイレクトセンシングにおいてパターンマッチング処理で確実な判定を行なうには、設定するテンプレートパターンのサイズと位置が適切であることが重要となる。例えば、図17(a)は、最初に取得した第1画像データ1700Aに対して設定するテンプレートパターン1702のメディア搬送方向のサイズが大きすぎる場合を示す。第1画像データの次に取得した第2画像データ1700Bの内部にテンプレートパターン1702全体が収まり切らないと、確実な判定ができなくなる。逆に、図17(b)は、第1画像データ1701Aに対して設定するテンプレートパターン1703が小さすぎる場合である。第2画像データ1700Bの内部に本来のマッチングパターンと共に、マッチングパターンに類似したノイズパターンが含まれる可能性が高まり、ノイズパターンの方を選んでしまう畏れがある。
【0007】
本発明は上述の課題認識のもとになされたものである。本発明の目的は、状況に応じて適切なテンプレートパターンを可変に設定することで、確実な移動検出を行なうことができるダイレクトセンシングの手法の提供である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述の課題を解決する本発明の移動検出装置は、物体を所定方向に移動させる搬送機構と、前記物体の表面を撮像して、異なるタイミングで第1画像データおよび第2画像データを取得するのに用いられるイメージセンサと、前記第1画像データからテンプレートパターンを切り出し、前記第2画像データの中で前記テンプレートパターンと相関が大きい領域をサーチして前記物体の移動状態を求める処理部と、前記第1画像データと前記第2画像データとの間での前記物体の移動状態の情報を間接的又は推定によって取得する取得手段とを有し、前記処理部は、前記取得手段で取得した情報に応じて、前記所定方向における前記テンプレートパターンのサイズを可変に設定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、状況に応じて最適なテンプレートパターンを可変に設定することで、確実な移動検出を行なうことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施形態のプリンタの断面図
【図2】変形例のプリンタの断面図
【図3】プリンタのシステムブロック図
【図4】ダイレクトセンサの構成図
【図5】メディアの給送、記録、排出の動作シーケンスを示すフローチャート図
【図6】メディアをステップ送りで搬送する動作シーケンスを示すフローチャート図
【図7】ダイレクトセンシングの処理を説明するための図
【図8】テンプレートパターンの設定手順を示すフローチャート図
【図9】制御プロファイルの例を説明するためのグラフ図
【図10】異なる時刻に取得した複数の画像データを模式的に示した図
【図11】搬送量/搬送速度とテンプレートパターンサイズとを対応付けて示した表
【図12】制御プロファイルの例を説明するためのグラフ図
【図13】テンプレートパターンの設定手順を示すフローチャート図
【図14】搬送方向が双方向であるときのテンプレートパターンの設定例を示す図
【図15】テンプレートパターンの位置を搬送方向に応じて設定した例を示す図
【図16】テンプレートパターンの設定手順を示すフローチャート図
【図17】パターンマッチング処理における課題を説明するための図
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に図面を参照して、本発明の好適な実施の形態を例示する。ただし、例示する実施の形態に記載されている構成要素はあくまで例示であり、本発明の範囲を限定する主旨のものではない。
【0012】
(実施例1)
本発明の適用範囲は、プリンタを始めとして、物体の移動を高精度に検出することが要求される移動検出の分野に広く渡る。例えば、プリンタ、スキャナ等の機器や、物体を搬送して検査、読取、加工、マーキング等の各種の処理を施す、工業分野、産業分野、物流分野などで使用する機器に適用可能である。また、本発明をプリンタに適用する場合は、インクジェット方式、電子写真方式、サーマル方式、ドットインパクト方式などの様々な方式のプリンタに適用可能である。なお、本明細書において、メディアとは、紙、プラスチックシート、フィルム、ガラス、セラミック、樹脂等のシート状あるいは板状の媒体をいう。また、本明細書において上流・下流とは、シートに画像記録を行なう際のシートの搬送方向を基準とした上流・下流を意味するものとする。
【0013】
以下に、記録装置の一例であるインクジェット方式のプリンタの実施形態を説明する。本実施形態のプリンタは、プリントヘッドの往復移動(主走査)とメディアの所定量のステップ送り(副走査)とを交互に行なって二次元画像を形成する、いわゆるシリアルプリンタである。なお、本発明は、シリアルプリンタに限らず、プリント幅をカバーする長尺ライン型プリントヘッドを持ち、固定されたプリントヘッドに対してメディアが移動して二次元画像を形成する、いわゆるラインプリンタにも適用可能である。
【0014】
図1はプリンタの主要部の構成を示す断面図である。プリンタは、メディアをベルト搬送系によって副走査方向(第1方向、所定方向)に移動させる搬送機構と、移動するメディアに対してプリントヘッドを用いて記録を行なう記録部とを有する。プリンタは更に、物体の移動状態を間接的に検出するエンコーダ133と、物体の移動状態を直接的に検出するダイレクトセンサ134を有する。
【0015】
搬送機構は、回転体である第1ローラ202、第2ローラ203、およびこれらローラの間に所定のテンションで掛けられた幅広の搬送ベルト205を有する。メディア206は搬送ベルト205の表面に静電力等による吸着もしくは粘着によって密着して、搬送ベルト205の移動に伴なって搬送される。副走査のための駆動源である搬送モータ171の回転力は駆動ベルト172によって駆動ローラである第1ローラ202に伝達され、第1ローラ202が回転する。第1ローラ202と第2ローラ203は搬送ベルト205によって同期回転する。搬送機構は更に、トレイ208の上に積載されたメディア207を一枚ずる分離して搬送ベルト205の上に給送するための給送ローラ209と、これを駆動する給送モータ161(図1では不図示)を有する。給送モータ161の下流設けられたペーパーエンドセンサ132は、メディア搬送のタイミングを取得するためにメディアの先端または後端を検出するものである。
【0016】
回転式のエンコーダ133(回転角センサ)は、第1ローラ202の回転状態を検出して、搬送ベルト205の移動状態を間接的に取得するのに用いられる。エンコーダ133はフォトインタラプタを備え、第1ローラ202と同軸に取り付けられたコードホイール204の円周に沿って刻まれている等間隔のスリットを光学的に読み取って、パルス信号を生成する。
【0017】
ダイレクトセンサ134は、搬送ベルト205の下方(メディア206の載置面とは反対の裏面側)に設置されている。ダイレクトセンサ134は、搬送ベルト205の面にマーキングされたマーカを含む領域を撮像するイメージセンサを備える。ダイレクトセンサ134は、搬送ベルト205の移動状態を後述する画像処理によって直接的に検出するものである。搬送ベルト205に対してメディア206は面同士で強固に密着しているので、ベルト表面とメディアとの間での滑りによる相対位置変動は無視できるほど小さい。そのため、ダイレクトセンサ134はメディアの移動状態を直接的に検出するのと等価とみなすことができる。なお、ダイレクトセンサ134は、搬送ベルト205の裏面を撮像する形態には限定されず、搬送ベルト205の表面のメディア206で覆われない領域を撮像するようにしてもよい。また、ダイレクトセンサ134は、被写体として搬送ベルト205ではなくメディア206の表面を撮像するものであってもよい。
【0018】
記録部は、主走査方向に往復移動するキャリッジ212と、これに搭載されたプリントヘッド213及びインクタンク211を有する。キャリッジ212は主走査モータ151(図1では不図示)の駆動力によって主走査方向(第2方向)に往復移動する。この移動に同期してプリントヘッド213のノズルからインクを吐出して、メディア206上にプリントする。プリントヘッド213とインクタンク211は一体化してキャリッジ212に対して着脱されるものであっても、別体として個別にキャリッジ212に対して着脱されるものであってもよい。プリントヘッド213はインクジェット方式によりインクを吐出するものであり、その方式は発熱素子を用いた方式、ピエゾ素子を用いた方式、静電素子を用いた方式、MEMS素子を用いた方式などを採用することができる。
【0019】
なお、搬送機構はベルト搬送系には限定されず、変形例として、搬送ベルトを用いずに搬送ローラによってメディアを搬送させる機構を有するものであってもよい。図2は変形例のプリンタの断面図を示す。図1の部材と同一の符号を付したものは同一の部材を示す。第1ローラ202と第2ローラ203が直接メディア206に接して、メディアを移動させる。第1ローラ202と第2ローラ203の間には不図示の同期ベルトが掛けられて、第1ローラの回転に同期して第2ローラが回転するようになっている。この形態では、ダイレクトセンサ134が撮像する被写体は搬送ベルト205ではなくメディア206であり、ダイレクトセンサ134はメディア206の裏面側を撮像する。
【0020】
図3はプリンタのシステムブロック図である。コントローラ100は、CPU101、ROM102、RAM103を有する。コントローラ100は、プリンタ全体の各種制御や画像処理等を司る制御部と処理部とを兼ね備える。情報処理装置110は、コンピュータ、デジタルカメラ、TV、携帯電話機など、メディアに記録するための画像データを供給する装置であり、インターフェース111を通してコントローラ100と接続される。操作部120は操作者とのユーザーインターフェースであり、電源スイッチを含む各種入力スイッチ121と表示器122を備える。 センサ部130はプリンタの各種状態を検出するためのセンサ群である。ホームポジションセンサ131は往復移動するキャリッジ212のホームポジションを検出する。センサ部130は、上述したペーパーエンドセンサ132、エンコーダ133、およびダイレクトセンサ134を備える。これらの各センサはコントローラ100に接続されている。コントローラ100の指令に基づいて、ドライバを介してプリントヘッドやプリンタの各種モータが駆動される。ヘッドドライバ140は記録データに応じてプリントヘッド213を駆動する。モータドライバ150は主走査モータ151を駆動する。モータドライバ160は給送モータ161を駆動する。モータドライバ170は副走査のための搬送モータ171を駆動する。
【0021】
図4はダイレクトセンシングを行なうためのダイレクトセンサ134の構成図である。ダイレクトセンサ134は、LED、OLED、半導体レーザ等の光源301を含む発光部、イメージセンサ302と屈折率分布レンズアレイ303を含む受光部、及び駆動回路やA/D変換回路などの回路部304を1つのセンサユニットとしたものである。光源301によって撮像対象である搬送ベルト205の裏面側の一部を照明する。イメージセンサ302は屈折率分布レンズアレイ303を介して照明された所定の撮像領域を撮像する。イメージセンサはCCDセンサやCMOSセンサなどの二次元エリアセンサまたはラインセンサである。イメージセンサ302の信号はA/D変換されデジタル画像データとして取り込まれる。イメージセンサ302は、物体(搬送ベルト205)の表面を撮像して異なるタイミングで複数の画像データ(連続して取得したものを、第1画像データ、第2画像データという)を取得するのに用いられる。そして後述するように、第1画像データからテンプレートパターンを切り出し、前記第2画像データの中で前記テンプレートパターンと相関が大きい領域を画像処理でサーチすることで、物体の移動状態を求めることができる。画像処理を行なう処理部はコントローラ100であってもよいし、ダイレクトセンサ134のユニットに処理部を内蔵するようにしてもよい。
【0022】
図5はメディアの給送、記録、排出の一連の動作シーケンスを示すフローチャート図である。これらの動作シーケンスはコントローラ100の指令に基づいてなされる。ステップS501では、給送モータ161を駆動して給送ローラ209によってトレイ208上のメディア207を1枚ずつ分離して搬送経路に沿って給送する。ペーパーエンドセンサ132が給送中のメディア206の先頭を検出すると、この検出タイミングに基づいてメディアの頭出し動作を行なって所定の記録開始位置まで搬送する。
【0023】
ステップS502では、搬送ベルト205を用いてメディアを所定量ずつステップ送りする。所定量とは1バンド(プリントヘッドの1回の主走査)の記録における副走査方向における長さである。例えば、プリントヘッド213の副走査方向におけるノズル列幅の半分ずつ送りながら2回ずつ重ねてマルチパス記録を行なう場合は、所定量はノズル列幅の半分の長さとなる。
【0024】
ステップS503では、キャリッジ212によってプリントヘッド213を主走査方向に移動させながら、1バンド分の記録を行なう。ステップS504では、すべての記録データの記録が終了したかを判断する。未記録の残りがある場合(NO)は、ステップS502に戻って副走査のステップ送りと主走査の1分の記録を繰りかえす。全ての記録が終了してステップS504の判断がYESになったら、ステップS505に移行する。ステップS505ではメディア206を記録部から排出する。こうして1枚のメディア206に二次元の画像が形成される。
【0025】
図6のフローチャート図を用いて、ステップS502のステップ送りの動作シーケンスについて更に詳細に説明する。ステップS601では、ダイレクトセンサ134のイメージセンサで搬送ベルト205のマーカを含む領域を撮像する。取得した画像データは、移動開始前の搬送ベルトの位置を示すものであり、RAM103に記憶される。ステップS602では、エンコーダ133でローラ202の回転状態をモニタしながら搬送モータ171を駆動して搬送ベルト205の移動、すなわちメディア206の搬送制御を開始する。目標とする搬送量だけメディア206を搬送するようにコントローラ100がサーボ制御を行う。このエンコーダを用いた搬送制御と並行して、ステップS603以降の処理を実行する。
【0026】
ステップS603では、ダイレクトセンサ134でベルトを撮像する。撮像のタイミングについては、1バンド分の記録をするための目標とするメディア搬送量(以後、目標搬送量という)、イメージセンサの第1方向における幅、および搬送速度などによって予め決められた搬送量を搬送したと推定されるタイミングで撮像する。本例では、予め決められた搬送量を搬送した時点でエンコーダ133が検出するであろうコードホイール204の特定のスリットを指定しておき、そのスリットをエンコーダ133が検出したタイミングで撮像する。
【0027】
ステップS604はダイレクトセンシングの処理、すなわち画像処理による移動量検出を行なう。直前にステップS603で撮像した第2画像データと、そのひとつ前に撮像した第1画像データとの間で、どれだけの距離だけ搬送ベルト205が移動したかを画像処理によって検出する。処理の詳細については後述する。目標搬送量に応じて決められた回数だけ所定のインターバルで撮像を行なう。
【0028】
ステップS605では、決められた回数の撮像を終了したか否かを判断する。終了してない場合(NO)はステップS603に戻って終了するまで処理を繰り返す。決められた回数だけ繰返し搬送量を検出する毎に搬送量を累計していき、最初にステップS601で撮像したタイミングからの1バンド分の搬送量を求める。ステップS606では、1バンド分の、ダイレクトセンサ134で取得した搬送量とエンコーダ133から取得した搬送量の差分を計算する。エンコーダ133は間接的な搬送量の検出であり、ダイレクトセンサ134による直接的な搬送量の検出に較べて検出精度に劣る。従って、上述の差分はエンコーダ133の検出誤差とみなすことができる。
【0029】
ステップS607では、ステップS606で求めたエンコーダの誤差分だけ搬送制御に補正を与える。補正には、搬送制御の現在の位置情報を誤差分だけ増減して補正する方法、目標搬送量を誤差分だけ増減して補正する方法があり、いずれの方法を採用してもよい。こうしてフィードバック制御により目標搬送量までメディア206を正確に搬送して1バンド分の搬送が完了する。
【0030】
図7は、上述のステップS604のダイレクトセンシングの処理の詳細を説明するための図である。ダイレクトセンサ134の撮像で取得された搬送ベルト205の第1画像データ700A、第2画像データ700Bが模式的に示されている。また、符号Wはダイレクトセンサ134のイメージセンサのメディア搬送方向(第1方向)における幅[画素]、符号Hはダイレクトセンサ134の第2方向における幅[画素]である。符号mは2つの画像データを取得する間の時間差における搬送量[画素]をである。符号m’はエンコーダ133の検出出力をもとに取得した搬送量である。符号Thはパターンマッチングに用いるテンプレートパターンの高さ[画素]、符号Twはテンプレートパターンの幅[画素]である。座標(x、y)はテンプレートパターンの切り出し位置である。Tw=W−m’−xが成り立つようTwが定められる。
【0031】
第1画像データ700A、第2画像データ700Bの中で「○」で示されるパターン(明暗の階調差がある部分)は、搬送ベルト205に刻印されたマーカーの像である。なお、図2に示した装置のように被写体がメディアの場合には、メディア表面の微視的なパターン(紙の繊維パターンなど)がマーカーと同等の役割を果たす。第1画像データ700Aに対して、上流側の位置にテンプレートパターン701を設定して、この部分の画像を切り出す。設定方法の詳細は後述する。第2画像データ700Bを取得したら、切り出したテンプレートパターン701と類似のパターンが、第2画像データ700Bのどこに位置するかをサーチする。サーチはパターンマッチングの手法により行なう。類似度を判定するアルゴリズムは、SSD(Sum of Squared Difference)、SAD(Sum of Absolute Difference)、NCC(Normalized Cross−Correlation)等が知られる。いずれを採用してもよい。この例では最も類似するパターンが領域702に位置している。第1画像データ700Aにおけるテンプレートパターン701と第2画像データ700Bにおける領域702との副走査方向におけるイメージセンサの画素数の差分を求める。そして、この差分画素数に1画素に対応した距離を掛けることで、この間の移動量(搬送量m)、更には移動速度を求めることができる。
【0032】
図8は、ダイレクトセンシングにおけるテンプレートパターンの設定手順を示すフローチャート図である。この処理はコントローラ100の処理部においてなされる。
【0033】
ステップS801では、第1画像データと第2画像データとの間での物体の移動状態の情報を間接的又は推定によって取得する。2つの画像データの取得の間の時間差における搬送機構によるメディアの搬送量m’(図7における搬送量m’)を、その間のエンコーダ133の検出出力(パルスカウント値)から間接的に取得する。間接的な移動量の取得手段であるエンコーダ133の検出精度は、物体表面の直接的な計測によるダイレクトセンシングによる検出精度よりは悪いが、概ねの搬送量m’の情報を推定することができる。
【0034】
なお、間接的又は推定によって移動状態を取得する取得手段としてはエンコーダに限らない。例えば、搬送機構が有する搬送モータのサーボ制御の制御目標値、もしくは搬送モータ(パルスモータ)の制御パルス値から搬送量m’を推定することができる。あるいは、直前もしくはそれ以前のダイレクトセンシングで取得した搬送量から、今回の搬送量mの情報を推定することもできる。これは、繰返しの計測中に大きな搬送量の変動は起きないという前提のもとでの推定による間接的な搬送量の取得である。推定は、直前もしくはそれ以前のダイレクトセンシングによる搬送量をそのまま推定値としてもよいし、事前に検出した複数の搬送量の増減トレンドを考慮して直前の搬送量を補正して推定値としてもよい。
【0035】
ステップS802ではW−m’を計算する。W−m’は第1方向において2つの画像データが重なるオーバーラップ領域の幅を意味する。
【0036】
ステップS803ではテンプレートパターンのサイズを設定する。第1方向においては、
Tw=W−m’−α−x (式1)
を計算してTwとして設定する。第2方向においては、
Th=H−β−y (式2)
を計算してThとして設定する。座標(x、y)は、テンプレートパターンの切り出し位置座標である。x、yは画像データの端に発生するレンズのゆがみ等を考慮した値である。α、βは、搬送機構の各部品が持つ寸法誤差や取り付け誤差、メディアとローラ間の摩擦の差によるスリップ等を反映した調整値である。この調整値は予め決めた静的な値であってもよいしキャリブレーションなどで動的に設定した値であってもよい。
【0037】
ステップS804では、基づいて適切なサイズに設定したテンプレートパターンを元に、上述した手法でパターンマッチング処理を行う。ステップS805では、ステップS804のパターンマッチングの結果から上述した手法で移動量mを算出する。このダイレクトセンシングによって求めた移動量mは非常の精度の高いものである。
【0038】
テンプレートパターンは、サイズが大きいほど画像データのノイズやムラなどによる誤判定の確率が小さくなる。反面、移動量や移動速度が大きい場合に大きなサイズのテンプレートパターンを設定すると、第2画像データにおいてテンプレートパターンに対応した領域が、画像からはみ出してしまう可能性がある。上述の(式1)はこのバランスを考慮して、テンプレートパターンのサイズを定めたものである。
【0039】
図9は、図6で説明した搬送制御の制御プロファイルの例を説明するためのグラフ図である。同図において、横軸は搬送制御を開始してからの経過時間を示す。曲線aは目標位置までの残りの搬送量の変化、曲線bはメディアの搬送速度の変化を示す。時刻t0はステップS601の撮像タイミングを表す。時刻t1、時刻t2、時刻t3はステップS603での撮像タイミングを表す。時刻t3からb=0の時間は、はステップS606とステップS607の補正処理を行なうタイミングを表す。m1は時刻t0と時刻t1の間での搬送量、m2は時刻t1と時刻t2の間での搬送量、m3は時刻t2と時刻t3の間での搬送量を示す。曲線bのように、所定速度になるまで加速して、その後所定速度を維持して、目標位置に近づくと減速するように制御される。
【0040】
m1、m2、m3の値はそれぞれエンコーダ133の検出値を用いて間接的に取得する。あるいは、搬送モータ171のサーボ制御の制御目標値からm1、m2、m3の値を推定によって取得する。あるいは、搬送モータ171(パルスモータ)の制御パルス値からm1、m2、m3の値を推定によって取得する。あるいは、事前のダイレクトセンシングの検出値を用いて、今回のm1、m2、m3を推定によって取得する。
【0041】
図10は、異なる時刻t0、時刻t1、時刻t3、時刻t4のそれぞれにおいて、イメージセンサによって取得される4つの画像データ1000A、1000B、1000C、1000Dを模式的に示した図である。矢印Mはメディアの搬送方向(第1方向)を示す。m1は画像データ1000Aと画像データ1000Bの間での搬送量であり、図9のm1に対応する。m2は画像データ1000Bと画像データ1000Cの間での搬送量であり、図9のm2に対応する。m3は画像データ1000Cと画像データ1000Dの間での搬送量であり、図9のm3に対応する。
【0042】
図8のステップS802で説明した処理については、画像データ1000Aと画像データ1000Bのオーバーラップ領域の幅はW−m1で計算される。同様に、画像データ1000Bと画像データ1000Cのオーバーラップ領域の幅はW−m2で計算され、画像データ1000Cと画像データ1000Dのオーバーラップ領域の幅はW−m3で計算される。
【0043】
Tw1は画像データAから切り出すテンプレートパターンの第1方向における幅である。同様に、Tw2は画像データB、Tw3は画像データCに対して設定するテンプレートパターンの幅である。ここで、m1>m2の場合はTw1<Tw2となるように設定している。同様に、m2>m3の場合はTw2<Tw3となるように設定している。つまり、間接的又は推定によって取得された第1画像データと第2画像データとの間でのメディアの搬送量に応じて、第1方向におけるテンプレートパターンのサイズを動的に可変に設定している。具体的には、搬送量が相対的に大きいときテンプレートパターンのサイズは相対的に小さくし、搬送量が相対的に小さいときはテンプレートパターンのサイズを相対的に大きくする。すなわち、m1≧m2≧m3のとき、Tw1≦Tw2≦Tw3が成り立つように各Twを設定する。更に、Tw1<W−m1、Tw2<W−m2、Tw3<W−m3をそれぞれ満たす各Twを設定して、第2画像データにおいてテンプレートパターンが画像から外れないようにする。つまり、テンプレートパターンのサイズが、イメージセンサで撮像する撮像領域のサイズから取得手段で取得される物体の移動量を引いた値よりも大きくならないように、第1方向におけるテンプレートパターンのサイズを設定する。なお、移動量ではなく、移動量とその間の時間から分かる移動速度を元にして、所定方向における点プレートパターンのサイズを可変に設定するようにしてもよい。また、テンプレートパターンのサイズにかかわらず、第1画像データの第1方向における上流側の端部近傍に揃えてテンプレートパターンを設定する。
【0044】
なお、複数のm(m1、m2、m3、・・・)に対応付けて予めメモリに記憶しておいて、mに応じて呼び出して設定するようにしてもよい。異なる搬送量mに対して必ずしも異なるテンプレートサイズTwを割り当てる必要は無く、ある閾値を設定して閾値を越えるか否かに応じて、少なくとも2つのテンプレートサイズTwを割り当てるようにしてもよい。
【0045】
以上の実施例1は、取得手段で間接的又は推定によって取得された第1画像データと第2画像データとの間での移動状態の情報に応じて、第1方向におけるテンプレートパターンのサイズを可変に設定してパターンマッチング処理を行なうものである。これにより、発明が解決しようとする課題の欄で説明した課題が解決される。すなわち、確実なパターンマッチング処理ができ信頼性の高いダイレクトセンシングが実現される。その結果、高い信頼性且つ高い搬送精度を実現したプリンタが提供される。
【0046】
(実施例2)
実施例2は、予め少なくとも2つのテンプレートパターンのサイズを記憶しておいて、状況に応じて記憶したサイズの中から適切なものを選んで切り替える可変設定である。以下、実施例1と異なる部分を中心に説明する。
【0047】
図11は、図5のステップS502におけるメディアの搬送制御において、搬送量/搬送速度とテンプレートパターンサイズとを対応付けて示した表である。ここでは2つのテンプレートパターンサイズを例に挙げたが、2つ以上であってもよい。搬送量M1>M2または搬送速度S1>S2であるとき、テンプレートパターンサイズT1<T2の関係を満たすように各数値が決められる。各数値は予め求めてメモリにデータテーブルとして記憶しておき、使用するモード(搬送量または搬送速度)に応じて、対応するテンプレートパターンサイズがメモリから読み出され、設定される。
【0048】
図12は、図11におけるメディア搬送制御モードを説明するための図である。同図において、横軸は搬送制御を開始してからの経過時間を示す。曲線a1は目標位置までの搬送量M1に対して残りの搬送量の変化を示すグラフである。曲線b1は曲線a1に対応した搬送速度の変化を示すグラフである。一方、曲線a2は目標位置までの搬送量M2に対して残りの搬送量を示すグラフである。曲線b2は曲線a2に対応した搬送速度の変化を示すグラフである。曲線b1とb2を比較すると、加速後の一定期間の最高速度(S1、S2)が異なる。2種類の異なる搬送量M1,M2の大小に応じて搬送速度(b1、b2)を変化させて、結果としてどちらのモードにおいても同時刻に1回の搬送が完了するようにしている。
【0049】
図13は、テンプレートパターンの設定手順を示すフローチャート図である。この処理は図6で説明したステップS604の中で行なわれる。ステップ1301では、現在の搬送制御モードの搬送量(M1,M2のいずれか)を取得する。ステップS1302では、取得した搬送量に対応付けられたテンプレートパターンサイズをメモリから読み出して設定する。ステップS1303では、設定したテンプレートパターンを元に、上述した手法でパターンマッチング処理を行う。ステップS1304では、ステップS804のパターンマッチングの結果から上述した手法で移動量を算出する。
【0050】
実施例2によれば、取得手段で間接的又は推定によって取得された第1画像データと第2画像データとの間での移動状態の情報に応じて、第1方向におけるテンプレートパターンのサイズを可変に設定してパターンマッチング処理を行なうものである。これにより実施例1と同様の作用効果を得ることができる。
【0051】
(実施例3)
実施例1、実施例2では、ダイレクトセンシングで移動を検出する方向を一方向(上流から下流方向)であることを想定している。これに対して実施例3では、上流から下流、および下流から上流の双方向の移動検出を可能とするものである。
【0052】
図14は、搬送ベルト205の搬送方向が双方向であるときのテンプレートパターンの設定例を示す図である。テンプレートパターンの位置は画像データの中央に設定し、テンプレートパターンの上流側、下流側の両方向にmを設定している。このためTwおよびmを大きく取れずに、パターンマッチング処理に支障を生じる畏れがある。
【0053】
これを解決するため、実施例3では搬送ベルト205の搬送方向に応じて、適切な位置にテンプレートパターンを設定する。図15は、テンプレートパターンの位置を搬送方向に応じて設定した例を示す図である。図15(a)は、搬送ベルト205がMf方向(上流から下流の方向)に移動する場合における、第1画像データ1500に対して設定するテンプレートパターン1502の位置を示す。画像データ1500の上流側の端部近傍にテンプレートパターン1502を設定する。これにより、移動する下流側には余裕が生じるので、テンプレートパターン1502のサイズを大きく取ることが可能となる。一方、図15(b)は、搬送ベルト205がMb方向(下流から上流の方向)に移動する場合における、第1画像データ1501に対して設定するテンプレートパターン1503の位置を示す。画像データ1501の下流側の端部近傍にテンプレートパターン1503を設定する。これにより、移動する上流側には余裕が生じるので、テンプレートパターン1503のサイズを大きく取ることが可能となる。
【0054】
図16は、テンプレートパターンの設定手順を示すフローチャート図である。この処理は図6で説明したステップS604の中で行なわれる。ステップS1601では、搬送ベルト205の搬送方向を取得する。搬送方向は、制御しようとする搬送モータ171を回転方向から分かる。ステップS1602では、取得した搬送方向から2つの画像データの重なる方向が画像データの右側であるか左側か判断してオーバーラップ位置を求める。
【0055】
ステップS1603では、テンプレートパターンの位置座標およびサイズを求めて設定する。メモリには、オーバーラップ位置とテンプレートパターンの設定すべき位置座標(x、y)とを関連付けてデータテーブルとして予め記録しておく。ステップS1602で求めたオーバーラップ位置に対応した位置座標(x、y)をメモリから読み出す。更に、上述の実施例で説明したように、テンプレートパターンのサイズを可変設定する。ステップS1604では、設定したテンプレートパターンを元に、上述した手法でパターンマッチング処理を行う。ステップS1605では、ステップS1604のパターンマッチングの結果から上述した手法で移動量を算出する。
【0056】
実施例3によれば、検出する物体の移動方向に応じて適切な位置にテンプレートパターンを設定する。その結果、移動方向によらずテンプレートパターンの幅サイズを適切な値にすることができる。
【符号の説明】
【0057】
134 ダイレクトセンサ
171 モータ
202 第1ローラ
203 第2ローラ
205 搬送ベルト
206 メディア
211 インクタンク
212 キャリッジ
213 プリントヘッド
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像処理によって物体の移動を検出する技術、および同技術を採用したプリンタ等の記録装置の技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
プリント用紙等のメディアを搬送しながらプリントを行なう際、搬送精度が低いと、中間調画像の濃度ムラが生じたり、倍率誤差が生じたりして、得られるプリント画像の品質が劣化する。そのため、高精度な部品を採用し精密な搬送機構を搭載しているが、プリント品質に対する要求は厳しくさらなる精度向上が望まれている。一方ではコストに対する要求も厳しく、高精度化と低コスト化の両立が求められている。
【0003】
これに対処するため、メディアの移動を高精度に検出して、フィードバック制御により安定した搬送を実現するために、メディアの表面を撮像して、搬送されるメディアの移動を画像処理によって検出するダイレクトセンシングと呼ばれる試みがなされている。
【0004】
特許文献1は、ダイレクトセンシングの一手法を開示する。特許文献1は、移動するメディアの表面をイメージセンサにより時系列に複数回撮像し、得られた画像同士をパターンマッチング処理で比較して、メディアの移動量を検出するものである。以下、物体の表面を直接検出して移動状態を検出する方式をダイレクトセンシング、この方式を用いた検出器をダイレクトセンサと称する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−217176号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ダイレクトセンシングにおいてパターンマッチング処理で確実な判定を行なうには、設定するテンプレートパターンのサイズと位置が適切であることが重要となる。例えば、図17(a)は、最初に取得した第1画像データ1700Aに対して設定するテンプレートパターン1702のメディア搬送方向のサイズが大きすぎる場合を示す。第1画像データの次に取得した第2画像データ1700Bの内部にテンプレートパターン1702全体が収まり切らないと、確実な判定ができなくなる。逆に、図17(b)は、第1画像データ1701Aに対して設定するテンプレートパターン1703が小さすぎる場合である。第2画像データ1700Bの内部に本来のマッチングパターンと共に、マッチングパターンに類似したノイズパターンが含まれる可能性が高まり、ノイズパターンの方を選んでしまう畏れがある。
【0007】
本発明は上述の課題認識のもとになされたものである。本発明の目的は、状況に応じて適切なテンプレートパターンを可変に設定することで、確実な移動検出を行なうことができるダイレクトセンシングの手法の提供である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述の課題を解決する本発明の移動検出装置は、物体を所定方向に移動させる搬送機構と、前記物体の表面を撮像して、異なるタイミングで第1画像データおよび第2画像データを取得するのに用いられるイメージセンサと、前記第1画像データからテンプレートパターンを切り出し、前記第2画像データの中で前記テンプレートパターンと相関が大きい領域をサーチして前記物体の移動状態を求める処理部と、前記第1画像データと前記第2画像データとの間での前記物体の移動状態の情報を間接的又は推定によって取得する取得手段とを有し、前記処理部は、前記取得手段で取得した情報に応じて、前記所定方向における前記テンプレートパターンのサイズを可変に設定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、状況に応じて最適なテンプレートパターンを可変に設定することで、確実な移動検出を行なうことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施形態のプリンタの断面図
【図2】変形例のプリンタの断面図
【図3】プリンタのシステムブロック図
【図4】ダイレクトセンサの構成図
【図5】メディアの給送、記録、排出の動作シーケンスを示すフローチャート図
【図6】メディアをステップ送りで搬送する動作シーケンスを示すフローチャート図
【図7】ダイレクトセンシングの処理を説明するための図
【図8】テンプレートパターンの設定手順を示すフローチャート図
【図9】制御プロファイルの例を説明するためのグラフ図
【図10】異なる時刻に取得した複数の画像データを模式的に示した図
【図11】搬送量/搬送速度とテンプレートパターンサイズとを対応付けて示した表
【図12】制御プロファイルの例を説明するためのグラフ図
【図13】テンプレートパターンの設定手順を示すフローチャート図
【図14】搬送方向が双方向であるときのテンプレートパターンの設定例を示す図
【図15】テンプレートパターンの位置を搬送方向に応じて設定した例を示す図
【図16】テンプレートパターンの設定手順を示すフローチャート図
【図17】パターンマッチング処理における課題を説明するための図
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に図面を参照して、本発明の好適な実施の形態を例示する。ただし、例示する実施の形態に記載されている構成要素はあくまで例示であり、本発明の範囲を限定する主旨のものではない。
【0012】
(実施例1)
本発明の適用範囲は、プリンタを始めとして、物体の移動を高精度に検出することが要求される移動検出の分野に広く渡る。例えば、プリンタ、スキャナ等の機器や、物体を搬送して検査、読取、加工、マーキング等の各種の処理を施す、工業分野、産業分野、物流分野などで使用する機器に適用可能である。また、本発明をプリンタに適用する場合は、インクジェット方式、電子写真方式、サーマル方式、ドットインパクト方式などの様々な方式のプリンタに適用可能である。なお、本明細書において、メディアとは、紙、プラスチックシート、フィルム、ガラス、セラミック、樹脂等のシート状あるいは板状の媒体をいう。また、本明細書において上流・下流とは、シートに画像記録を行なう際のシートの搬送方向を基準とした上流・下流を意味するものとする。
【0013】
以下に、記録装置の一例であるインクジェット方式のプリンタの実施形態を説明する。本実施形態のプリンタは、プリントヘッドの往復移動(主走査)とメディアの所定量のステップ送り(副走査)とを交互に行なって二次元画像を形成する、いわゆるシリアルプリンタである。なお、本発明は、シリアルプリンタに限らず、プリント幅をカバーする長尺ライン型プリントヘッドを持ち、固定されたプリントヘッドに対してメディアが移動して二次元画像を形成する、いわゆるラインプリンタにも適用可能である。
【0014】
図1はプリンタの主要部の構成を示す断面図である。プリンタは、メディアをベルト搬送系によって副走査方向(第1方向、所定方向)に移動させる搬送機構と、移動するメディアに対してプリントヘッドを用いて記録を行なう記録部とを有する。プリンタは更に、物体の移動状態を間接的に検出するエンコーダ133と、物体の移動状態を直接的に検出するダイレクトセンサ134を有する。
【0015】
搬送機構は、回転体である第1ローラ202、第2ローラ203、およびこれらローラの間に所定のテンションで掛けられた幅広の搬送ベルト205を有する。メディア206は搬送ベルト205の表面に静電力等による吸着もしくは粘着によって密着して、搬送ベルト205の移動に伴なって搬送される。副走査のための駆動源である搬送モータ171の回転力は駆動ベルト172によって駆動ローラである第1ローラ202に伝達され、第1ローラ202が回転する。第1ローラ202と第2ローラ203は搬送ベルト205によって同期回転する。搬送機構は更に、トレイ208の上に積載されたメディア207を一枚ずる分離して搬送ベルト205の上に給送するための給送ローラ209と、これを駆動する給送モータ161(図1では不図示)を有する。給送モータ161の下流設けられたペーパーエンドセンサ132は、メディア搬送のタイミングを取得するためにメディアの先端または後端を検出するものである。
【0016】
回転式のエンコーダ133(回転角センサ)は、第1ローラ202の回転状態を検出して、搬送ベルト205の移動状態を間接的に取得するのに用いられる。エンコーダ133はフォトインタラプタを備え、第1ローラ202と同軸に取り付けられたコードホイール204の円周に沿って刻まれている等間隔のスリットを光学的に読み取って、パルス信号を生成する。
【0017】
ダイレクトセンサ134は、搬送ベルト205の下方(メディア206の載置面とは反対の裏面側)に設置されている。ダイレクトセンサ134は、搬送ベルト205の面にマーキングされたマーカを含む領域を撮像するイメージセンサを備える。ダイレクトセンサ134は、搬送ベルト205の移動状態を後述する画像処理によって直接的に検出するものである。搬送ベルト205に対してメディア206は面同士で強固に密着しているので、ベルト表面とメディアとの間での滑りによる相対位置変動は無視できるほど小さい。そのため、ダイレクトセンサ134はメディアの移動状態を直接的に検出するのと等価とみなすことができる。なお、ダイレクトセンサ134は、搬送ベルト205の裏面を撮像する形態には限定されず、搬送ベルト205の表面のメディア206で覆われない領域を撮像するようにしてもよい。また、ダイレクトセンサ134は、被写体として搬送ベルト205ではなくメディア206の表面を撮像するものであってもよい。
【0018】
記録部は、主走査方向に往復移動するキャリッジ212と、これに搭載されたプリントヘッド213及びインクタンク211を有する。キャリッジ212は主走査モータ151(図1では不図示)の駆動力によって主走査方向(第2方向)に往復移動する。この移動に同期してプリントヘッド213のノズルからインクを吐出して、メディア206上にプリントする。プリントヘッド213とインクタンク211は一体化してキャリッジ212に対して着脱されるものであっても、別体として個別にキャリッジ212に対して着脱されるものであってもよい。プリントヘッド213はインクジェット方式によりインクを吐出するものであり、その方式は発熱素子を用いた方式、ピエゾ素子を用いた方式、静電素子を用いた方式、MEMS素子を用いた方式などを採用することができる。
【0019】
なお、搬送機構はベルト搬送系には限定されず、変形例として、搬送ベルトを用いずに搬送ローラによってメディアを搬送させる機構を有するものであってもよい。図2は変形例のプリンタの断面図を示す。図1の部材と同一の符号を付したものは同一の部材を示す。第1ローラ202と第2ローラ203が直接メディア206に接して、メディアを移動させる。第1ローラ202と第2ローラ203の間には不図示の同期ベルトが掛けられて、第1ローラの回転に同期して第2ローラが回転するようになっている。この形態では、ダイレクトセンサ134が撮像する被写体は搬送ベルト205ではなくメディア206であり、ダイレクトセンサ134はメディア206の裏面側を撮像する。
【0020】
図3はプリンタのシステムブロック図である。コントローラ100は、CPU101、ROM102、RAM103を有する。コントローラ100は、プリンタ全体の各種制御や画像処理等を司る制御部と処理部とを兼ね備える。情報処理装置110は、コンピュータ、デジタルカメラ、TV、携帯電話機など、メディアに記録するための画像データを供給する装置であり、インターフェース111を通してコントローラ100と接続される。操作部120は操作者とのユーザーインターフェースであり、電源スイッチを含む各種入力スイッチ121と表示器122を備える。 センサ部130はプリンタの各種状態を検出するためのセンサ群である。ホームポジションセンサ131は往復移動するキャリッジ212のホームポジションを検出する。センサ部130は、上述したペーパーエンドセンサ132、エンコーダ133、およびダイレクトセンサ134を備える。これらの各センサはコントローラ100に接続されている。コントローラ100の指令に基づいて、ドライバを介してプリントヘッドやプリンタの各種モータが駆動される。ヘッドドライバ140は記録データに応じてプリントヘッド213を駆動する。モータドライバ150は主走査モータ151を駆動する。モータドライバ160は給送モータ161を駆動する。モータドライバ170は副走査のための搬送モータ171を駆動する。
【0021】
図4はダイレクトセンシングを行なうためのダイレクトセンサ134の構成図である。ダイレクトセンサ134は、LED、OLED、半導体レーザ等の光源301を含む発光部、イメージセンサ302と屈折率分布レンズアレイ303を含む受光部、及び駆動回路やA/D変換回路などの回路部304を1つのセンサユニットとしたものである。光源301によって撮像対象である搬送ベルト205の裏面側の一部を照明する。イメージセンサ302は屈折率分布レンズアレイ303を介して照明された所定の撮像領域を撮像する。イメージセンサはCCDセンサやCMOSセンサなどの二次元エリアセンサまたはラインセンサである。イメージセンサ302の信号はA/D変換されデジタル画像データとして取り込まれる。イメージセンサ302は、物体(搬送ベルト205)の表面を撮像して異なるタイミングで複数の画像データ(連続して取得したものを、第1画像データ、第2画像データという)を取得するのに用いられる。そして後述するように、第1画像データからテンプレートパターンを切り出し、前記第2画像データの中で前記テンプレートパターンと相関が大きい領域を画像処理でサーチすることで、物体の移動状態を求めることができる。画像処理を行なう処理部はコントローラ100であってもよいし、ダイレクトセンサ134のユニットに処理部を内蔵するようにしてもよい。
【0022】
図5はメディアの給送、記録、排出の一連の動作シーケンスを示すフローチャート図である。これらの動作シーケンスはコントローラ100の指令に基づいてなされる。ステップS501では、給送モータ161を駆動して給送ローラ209によってトレイ208上のメディア207を1枚ずつ分離して搬送経路に沿って給送する。ペーパーエンドセンサ132が給送中のメディア206の先頭を検出すると、この検出タイミングに基づいてメディアの頭出し動作を行なって所定の記録開始位置まで搬送する。
【0023】
ステップS502では、搬送ベルト205を用いてメディアを所定量ずつステップ送りする。所定量とは1バンド(プリントヘッドの1回の主走査)の記録における副走査方向における長さである。例えば、プリントヘッド213の副走査方向におけるノズル列幅の半分ずつ送りながら2回ずつ重ねてマルチパス記録を行なう場合は、所定量はノズル列幅の半分の長さとなる。
【0024】
ステップS503では、キャリッジ212によってプリントヘッド213を主走査方向に移動させながら、1バンド分の記録を行なう。ステップS504では、すべての記録データの記録が終了したかを判断する。未記録の残りがある場合(NO)は、ステップS502に戻って副走査のステップ送りと主走査の1分の記録を繰りかえす。全ての記録が終了してステップS504の判断がYESになったら、ステップS505に移行する。ステップS505ではメディア206を記録部から排出する。こうして1枚のメディア206に二次元の画像が形成される。
【0025】
図6のフローチャート図を用いて、ステップS502のステップ送りの動作シーケンスについて更に詳細に説明する。ステップS601では、ダイレクトセンサ134のイメージセンサで搬送ベルト205のマーカを含む領域を撮像する。取得した画像データは、移動開始前の搬送ベルトの位置を示すものであり、RAM103に記憶される。ステップS602では、エンコーダ133でローラ202の回転状態をモニタしながら搬送モータ171を駆動して搬送ベルト205の移動、すなわちメディア206の搬送制御を開始する。目標とする搬送量だけメディア206を搬送するようにコントローラ100がサーボ制御を行う。このエンコーダを用いた搬送制御と並行して、ステップS603以降の処理を実行する。
【0026】
ステップS603では、ダイレクトセンサ134でベルトを撮像する。撮像のタイミングについては、1バンド分の記録をするための目標とするメディア搬送量(以後、目標搬送量という)、イメージセンサの第1方向における幅、および搬送速度などによって予め決められた搬送量を搬送したと推定されるタイミングで撮像する。本例では、予め決められた搬送量を搬送した時点でエンコーダ133が検出するであろうコードホイール204の特定のスリットを指定しておき、そのスリットをエンコーダ133が検出したタイミングで撮像する。
【0027】
ステップS604はダイレクトセンシングの処理、すなわち画像処理による移動量検出を行なう。直前にステップS603で撮像した第2画像データと、そのひとつ前に撮像した第1画像データとの間で、どれだけの距離だけ搬送ベルト205が移動したかを画像処理によって検出する。処理の詳細については後述する。目標搬送量に応じて決められた回数だけ所定のインターバルで撮像を行なう。
【0028】
ステップS605では、決められた回数の撮像を終了したか否かを判断する。終了してない場合(NO)はステップS603に戻って終了するまで処理を繰り返す。決められた回数だけ繰返し搬送量を検出する毎に搬送量を累計していき、最初にステップS601で撮像したタイミングからの1バンド分の搬送量を求める。ステップS606では、1バンド分の、ダイレクトセンサ134で取得した搬送量とエンコーダ133から取得した搬送量の差分を計算する。エンコーダ133は間接的な搬送量の検出であり、ダイレクトセンサ134による直接的な搬送量の検出に較べて検出精度に劣る。従って、上述の差分はエンコーダ133の検出誤差とみなすことができる。
【0029】
ステップS607では、ステップS606で求めたエンコーダの誤差分だけ搬送制御に補正を与える。補正には、搬送制御の現在の位置情報を誤差分だけ増減して補正する方法、目標搬送量を誤差分だけ増減して補正する方法があり、いずれの方法を採用してもよい。こうしてフィードバック制御により目標搬送量までメディア206を正確に搬送して1バンド分の搬送が完了する。
【0030】
図7は、上述のステップS604のダイレクトセンシングの処理の詳細を説明するための図である。ダイレクトセンサ134の撮像で取得された搬送ベルト205の第1画像データ700A、第2画像データ700Bが模式的に示されている。また、符号Wはダイレクトセンサ134のイメージセンサのメディア搬送方向(第1方向)における幅[画素]、符号Hはダイレクトセンサ134の第2方向における幅[画素]である。符号mは2つの画像データを取得する間の時間差における搬送量[画素]をである。符号m’はエンコーダ133の検出出力をもとに取得した搬送量である。符号Thはパターンマッチングに用いるテンプレートパターンの高さ[画素]、符号Twはテンプレートパターンの幅[画素]である。座標(x、y)はテンプレートパターンの切り出し位置である。Tw=W−m’−xが成り立つようTwが定められる。
【0031】
第1画像データ700A、第2画像データ700Bの中で「○」で示されるパターン(明暗の階調差がある部分)は、搬送ベルト205に刻印されたマーカーの像である。なお、図2に示した装置のように被写体がメディアの場合には、メディア表面の微視的なパターン(紙の繊維パターンなど)がマーカーと同等の役割を果たす。第1画像データ700Aに対して、上流側の位置にテンプレートパターン701を設定して、この部分の画像を切り出す。設定方法の詳細は後述する。第2画像データ700Bを取得したら、切り出したテンプレートパターン701と類似のパターンが、第2画像データ700Bのどこに位置するかをサーチする。サーチはパターンマッチングの手法により行なう。類似度を判定するアルゴリズムは、SSD(Sum of Squared Difference)、SAD(Sum of Absolute Difference)、NCC(Normalized Cross−Correlation)等が知られる。いずれを採用してもよい。この例では最も類似するパターンが領域702に位置している。第1画像データ700Aにおけるテンプレートパターン701と第2画像データ700Bにおける領域702との副走査方向におけるイメージセンサの画素数の差分を求める。そして、この差分画素数に1画素に対応した距離を掛けることで、この間の移動量(搬送量m)、更には移動速度を求めることができる。
【0032】
図8は、ダイレクトセンシングにおけるテンプレートパターンの設定手順を示すフローチャート図である。この処理はコントローラ100の処理部においてなされる。
【0033】
ステップS801では、第1画像データと第2画像データとの間での物体の移動状態の情報を間接的又は推定によって取得する。2つの画像データの取得の間の時間差における搬送機構によるメディアの搬送量m’(図7における搬送量m’)を、その間のエンコーダ133の検出出力(パルスカウント値)から間接的に取得する。間接的な移動量の取得手段であるエンコーダ133の検出精度は、物体表面の直接的な計測によるダイレクトセンシングによる検出精度よりは悪いが、概ねの搬送量m’の情報を推定することができる。
【0034】
なお、間接的又は推定によって移動状態を取得する取得手段としてはエンコーダに限らない。例えば、搬送機構が有する搬送モータのサーボ制御の制御目標値、もしくは搬送モータ(パルスモータ)の制御パルス値から搬送量m’を推定することができる。あるいは、直前もしくはそれ以前のダイレクトセンシングで取得した搬送量から、今回の搬送量mの情報を推定することもできる。これは、繰返しの計測中に大きな搬送量の変動は起きないという前提のもとでの推定による間接的な搬送量の取得である。推定は、直前もしくはそれ以前のダイレクトセンシングによる搬送量をそのまま推定値としてもよいし、事前に検出した複数の搬送量の増減トレンドを考慮して直前の搬送量を補正して推定値としてもよい。
【0035】
ステップS802ではW−m’を計算する。W−m’は第1方向において2つの画像データが重なるオーバーラップ領域の幅を意味する。
【0036】
ステップS803ではテンプレートパターンのサイズを設定する。第1方向においては、
Tw=W−m’−α−x (式1)
を計算してTwとして設定する。第2方向においては、
Th=H−β−y (式2)
を計算してThとして設定する。座標(x、y)は、テンプレートパターンの切り出し位置座標である。x、yは画像データの端に発生するレンズのゆがみ等を考慮した値である。α、βは、搬送機構の各部品が持つ寸法誤差や取り付け誤差、メディアとローラ間の摩擦の差によるスリップ等を反映した調整値である。この調整値は予め決めた静的な値であってもよいしキャリブレーションなどで動的に設定した値であってもよい。
【0037】
ステップS804では、基づいて適切なサイズに設定したテンプレートパターンを元に、上述した手法でパターンマッチング処理を行う。ステップS805では、ステップS804のパターンマッチングの結果から上述した手法で移動量mを算出する。このダイレクトセンシングによって求めた移動量mは非常の精度の高いものである。
【0038】
テンプレートパターンは、サイズが大きいほど画像データのノイズやムラなどによる誤判定の確率が小さくなる。反面、移動量や移動速度が大きい場合に大きなサイズのテンプレートパターンを設定すると、第2画像データにおいてテンプレートパターンに対応した領域が、画像からはみ出してしまう可能性がある。上述の(式1)はこのバランスを考慮して、テンプレートパターンのサイズを定めたものである。
【0039】
図9は、図6で説明した搬送制御の制御プロファイルの例を説明するためのグラフ図である。同図において、横軸は搬送制御を開始してからの経過時間を示す。曲線aは目標位置までの残りの搬送量の変化、曲線bはメディアの搬送速度の変化を示す。時刻t0はステップS601の撮像タイミングを表す。時刻t1、時刻t2、時刻t3はステップS603での撮像タイミングを表す。時刻t3からb=0の時間は、はステップS606とステップS607の補正処理を行なうタイミングを表す。m1は時刻t0と時刻t1の間での搬送量、m2は時刻t1と時刻t2の間での搬送量、m3は時刻t2と時刻t3の間での搬送量を示す。曲線bのように、所定速度になるまで加速して、その後所定速度を維持して、目標位置に近づくと減速するように制御される。
【0040】
m1、m2、m3の値はそれぞれエンコーダ133の検出値を用いて間接的に取得する。あるいは、搬送モータ171のサーボ制御の制御目標値からm1、m2、m3の値を推定によって取得する。あるいは、搬送モータ171(パルスモータ)の制御パルス値からm1、m2、m3の値を推定によって取得する。あるいは、事前のダイレクトセンシングの検出値を用いて、今回のm1、m2、m3を推定によって取得する。
【0041】
図10は、異なる時刻t0、時刻t1、時刻t3、時刻t4のそれぞれにおいて、イメージセンサによって取得される4つの画像データ1000A、1000B、1000C、1000Dを模式的に示した図である。矢印Mはメディアの搬送方向(第1方向)を示す。m1は画像データ1000Aと画像データ1000Bの間での搬送量であり、図9のm1に対応する。m2は画像データ1000Bと画像データ1000Cの間での搬送量であり、図9のm2に対応する。m3は画像データ1000Cと画像データ1000Dの間での搬送量であり、図9のm3に対応する。
【0042】
図8のステップS802で説明した処理については、画像データ1000Aと画像データ1000Bのオーバーラップ領域の幅はW−m1で計算される。同様に、画像データ1000Bと画像データ1000Cのオーバーラップ領域の幅はW−m2で計算され、画像データ1000Cと画像データ1000Dのオーバーラップ領域の幅はW−m3で計算される。
【0043】
Tw1は画像データAから切り出すテンプレートパターンの第1方向における幅である。同様に、Tw2は画像データB、Tw3は画像データCに対して設定するテンプレートパターンの幅である。ここで、m1>m2の場合はTw1<Tw2となるように設定している。同様に、m2>m3の場合はTw2<Tw3となるように設定している。つまり、間接的又は推定によって取得された第1画像データと第2画像データとの間でのメディアの搬送量に応じて、第1方向におけるテンプレートパターンのサイズを動的に可変に設定している。具体的には、搬送量が相対的に大きいときテンプレートパターンのサイズは相対的に小さくし、搬送量が相対的に小さいときはテンプレートパターンのサイズを相対的に大きくする。すなわち、m1≧m2≧m3のとき、Tw1≦Tw2≦Tw3が成り立つように各Twを設定する。更に、Tw1<W−m1、Tw2<W−m2、Tw3<W−m3をそれぞれ満たす各Twを設定して、第2画像データにおいてテンプレートパターンが画像から外れないようにする。つまり、テンプレートパターンのサイズが、イメージセンサで撮像する撮像領域のサイズから取得手段で取得される物体の移動量を引いた値よりも大きくならないように、第1方向におけるテンプレートパターンのサイズを設定する。なお、移動量ではなく、移動量とその間の時間から分かる移動速度を元にして、所定方向における点プレートパターンのサイズを可変に設定するようにしてもよい。また、テンプレートパターンのサイズにかかわらず、第1画像データの第1方向における上流側の端部近傍に揃えてテンプレートパターンを設定する。
【0044】
なお、複数のm(m1、m2、m3、・・・)に対応付けて予めメモリに記憶しておいて、mに応じて呼び出して設定するようにしてもよい。異なる搬送量mに対して必ずしも異なるテンプレートサイズTwを割り当てる必要は無く、ある閾値を設定して閾値を越えるか否かに応じて、少なくとも2つのテンプレートサイズTwを割り当てるようにしてもよい。
【0045】
以上の実施例1は、取得手段で間接的又は推定によって取得された第1画像データと第2画像データとの間での移動状態の情報に応じて、第1方向におけるテンプレートパターンのサイズを可変に設定してパターンマッチング処理を行なうものである。これにより、発明が解決しようとする課題の欄で説明した課題が解決される。すなわち、確実なパターンマッチング処理ができ信頼性の高いダイレクトセンシングが実現される。その結果、高い信頼性且つ高い搬送精度を実現したプリンタが提供される。
【0046】
(実施例2)
実施例2は、予め少なくとも2つのテンプレートパターンのサイズを記憶しておいて、状況に応じて記憶したサイズの中から適切なものを選んで切り替える可変設定である。以下、実施例1と異なる部分を中心に説明する。
【0047】
図11は、図5のステップS502におけるメディアの搬送制御において、搬送量/搬送速度とテンプレートパターンサイズとを対応付けて示した表である。ここでは2つのテンプレートパターンサイズを例に挙げたが、2つ以上であってもよい。搬送量M1>M2または搬送速度S1>S2であるとき、テンプレートパターンサイズT1<T2の関係を満たすように各数値が決められる。各数値は予め求めてメモリにデータテーブルとして記憶しておき、使用するモード(搬送量または搬送速度)に応じて、対応するテンプレートパターンサイズがメモリから読み出され、設定される。
【0048】
図12は、図11におけるメディア搬送制御モードを説明するための図である。同図において、横軸は搬送制御を開始してからの経過時間を示す。曲線a1は目標位置までの搬送量M1に対して残りの搬送量の変化を示すグラフである。曲線b1は曲線a1に対応した搬送速度の変化を示すグラフである。一方、曲線a2は目標位置までの搬送量M2に対して残りの搬送量を示すグラフである。曲線b2は曲線a2に対応した搬送速度の変化を示すグラフである。曲線b1とb2を比較すると、加速後の一定期間の最高速度(S1、S2)が異なる。2種類の異なる搬送量M1,M2の大小に応じて搬送速度(b1、b2)を変化させて、結果としてどちらのモードにおいても同時刻に1回の搬送が完了するようにしている。
【0049】
図13は、テンプレートパターンの設定手順を示すフローチャート図である。この処理は図6で説明したステップS604の中で行なわれる。ステップ1301では、現在の搬送制御モードの搬送量(M1,M2のいずれか)を取得する。ステップS1302では、取得した搬送量に対応付けられたテンプレートパターンサイズをメモリから読み出して設定する。ステップS1303では、設定したテンプレートパターンを元に、上述した手法でパターンマッチング処理を行う。ステップS1304では、ステップS804のパターンマッチングの結果から上述した手法で移動量を算出する。
【0050】
実施例2によれば、取得手段で間接的又は推定によって取得された第1画像データと第2画像データとの間での移動状態の情報に応じて、第1方向におけるテンプレートパターンのサイズを可変に設定してパターンマッチング処理を行なうものである。これにより実施例1と同様の作用効果を得ることができる。
【0051】
(実施例3)
実施例1、実施例2では、ダイレクトセンシングで移動を検出する方向を一方向(上流から下流方向)であることを想定している。これに対して実施例3では、上流から下流、および下流から上流の双方向の移動検出を可能とするものである。
【0052】
図14は、搬送ベルト205の搬送方向が双方向であるときのテンプレートパターンの設定例を示す図である。テンプレートパターンの位置は画像データの中央に設定し、テンプレートパターンの上流側、下流側の両方向にmを設定している。このためTwおよびmを大きく取れずに、パターンマッチング処理に支障を生じる畏れがある。
【0053】
これを解決するため、実施例3では搬送ベルト205の搬送方向に応じて、適切な位置にテンプレートパターンを設定する。図15は、テンプレートパターンの位置を搬送方向に応じて設定した例を示す図である。図15(a)は、搬送ベルト205がMf方向(上流から下流の方向)に移動する場合における、第1画像データ1500に対して設定するテンプレートパターン1502の位置を示す。画像データ1500の上流側の端部近傍にテンプレートパターン1502を設定する。これにより、移動する下流側には余裕が生じるので、テンプレートパターン1502のサイズを大きく取ることが可能となる。一方、図15(b)は、搬送ベルト205がMb方向(下流から上流の方向)に移動する場合における、第1画像データ1501に対して設定するテンプレートパターン1503の位置を示す。画像データ1501の下流側の端部近傍にテンプレートパターン1503を設定する。これにより、移動する上流側には余裕が生じるので、テンプレートパターン1503のサイズを大きく取ることが可能となる。
【0054】
図16は、テンプレートパターンの設定手順を示すフローチャート図である。この処理は図6で説明したステップS604の中で行なわれる。ステップS1601では、搬送ベルト205の搬送方向を取得する。搬送方向は、制御しようとする搬送モータ171を回転方向から分かる。ステップS1602では、取得した搬送方向から2つの画像データの重なる方向が画像データの右側であるか左側か判断してオーバーラップ位置を求める。
【0055】
ステップS1603では、テンプレートパターンの位置座標およびサイズを求めて設定する。メモリには、オーバーラップ位置とテンプレートパターンの設定すべき位置座標(x、y)とを関連付けてデータテーブルとして予め記録しておく。ステップS1602で求めたオーバーラップ位置に対応した位置座標(x、y)をメモリから読み出す。更に、上述の実施例で説明したように、テンプレートパターンのサイズを可変設定する。ステップS1604では、設定したテンプレートパターンを元に、上述した手法でパターンマッチング処理を行う。ステップS1605では、ステップS1604のパターンマッチングの結果から上述した手法で移動量を算出する。
【0056】
実施例3によれば、検出する物体の移動方向に応じて適切な位置にテンプレートパターンを設定する。その結果、移動方向によらずテンプレートパターンの幅サイズを適切な値にすることができる。
【符号の説明】
【0057】
134 ダイレクトセンサ
171 モータ
202 第1ローラ
203 第2ローラ
205 搬送ベルト
206 メディア
211 インクタンク
212 キャリッジ
213 プリントヘッド
【特許請求の範囲】
【請求項1】
物体を所定方向に移動させる搬送機構と、
前記物体の表面を撮像して、異なるタイミングで第1画像データおよび第2画像データを取得するのに用いられるイメージセンサと、
前記第1画像データからテンプレートパターンを切り出し、前記第2画像データの中で前記テンプレートパターンと相関が大きい領域をサーチして前記物体の移動状態を求める処理部と、
前記第1画像データと前記第2画像データとの間での前記物体の移動状態の情報を間接的又は推定によって取得する取得手段と、を有し、
前記処理部は、前記取得手段で取得した情報に応じて、前記所定方向における前記テンプレートパターンのサイズを可変に設定することを特徴とする移動検出装置。
【請求項2】
前記取得手段は、前記第1画像データと前記第2画像データを取得する間における前記物体の移動量または移動速度の情報を間接的又は推定によって取得することを特徴とする、請求項1記載の移動検出装置。
【請求項3】
前記取得手段は、前記搬送機構が有するローラの回転状態を検出するエンコーダの検出値から間接的に前記情報を取得することを特徴とする、請求項1又は2記載の移動検出装置。
【請求項4】
前記取得手段は、前記搬送機構が有するモータのサーボ制御の制御目標値、もしくは前記搬送機構が有するパルスモータの制御パルス値から、前記搬送機構による搬送量を推定して前記情報を取得することを特徴とする、請求項1又は2記載の移動検出装置。
【請求項5】
前記取得手段は、直前もしくはそれ以前のダイレクトセンシングの処理で取得した前記前記物体の移動状態の情報から今回の移動状態を推定して前記情報を取得することを特徴とする、請求項1又は2記載の移動検出装置。
【請求項6】
前記処理部は、前記所定方向において、前記テンプレートパターンのサイズが、前記イメージセンサで撮像する撮像領域のサイズから前記取得手段で取得される前記物体の移動量を引いた値よりも大きくならないように、前記所定方向における前記テンプレートパターンのサイズを設定することを特徴とする、請求項1から5のいずれか記載の記録装置。
【請求項7】
前記搬送機構は上流から下流、下流から上流の双方向に物体を移動させることが可能であり、前記処理部は、上流から下流に移動する際には前記前記テンプレートパターンを前記第1画像データにおいて上流側の端部近傍に設定し、下流から上流に移動する際には前記前記テンプレートパターンを前記第1画像データにおいて下流側の端部近傍に設定することを特徴とする、請求項1又は2記載の記録装置。
【請求項8】
前記処理部は、前記テンプレートパターンのサイズにかかわらず、前記第1画像データの前記所定方向における上流側の端部近傍に揃えて前記テンプレートパターンを設定することを特徴とする、請求項1から7のいずれか1項記載の記録装置。
【請求項9】
前記物体は記録を行なうメディアまたはメディアを搭載して搬送する搬送ベルトであることを特徴とする、請求項1から8のいずれか1項記載の移動検出装置。
【請求項10】
前記処理部で求められた前記搬送ベルトまたは前記メディアの移動状態に基づいて、前記搬送機構の駆動を制御する制御部を有することを特徴とする、請求項9記載の移動検出装置。
【請求項11】
請求項1から10のいずれか1項記載の移動検出装置と、移動する前記物体に記録を行なう記録部を有することを特徴とする記録装置。
【請求項1】
物体を所定方向に移動させる搬送機構と、
前記物体の表面を撮像して、異なるタイミングで第1画像データおよび第2画像データを取得するのに用いられるイメージセンサと、
前記第1画像データからテンプレートパターンを切り出し、前記第2画像データの中で前記テンプレートパターンと相関が大きい領域をサーチして前記物体の移動状態を求める処理部と、
前記第1画像データと前記第2画像データとの間での前記物体の移動状態の情報を間接的又は推定によって取得する取得手段と、を有し、
前記処理部は、前記取得手段で取得した情報に応じて、前記所定方向における前記テンプレートパターンのサイズを可変に設定することを特徴とする移動検出装置。
【請求項2】
前記取得手段は、前記第1画像データと前記第2画像データを取得する間における前記物体の移動量または移動速度の情報を間接的又は推定によって取得することを特徴とする、請求項1記載の移動検出装置。
【請求項3】
前記取得手段は、前記搬送機構が有するローラの回転状態を検出するエンコーダの検出値から間接的に前記情報を取得することを特徴とする、請求項1又は2記載の移動検出装置。
【請求項4】
前記取得手段は、前記搬送機構が有するモータのサーボ制御の制御目標値、もしくは前記搬送機構が有するパルスモータの制御パルス値から、前記搬送機構による搬送量を推定して前記情報を取得することを特徴とする、請求項1又は2記載の移動検出装置。
【請求項5】
前記取得手段は、直前もしくはそれ以前のダイレクトセンシングの処理で取得した前記前記物体の移動状態の情報から今回の移動状態を推定して前記情報を取得することを特徴とする、請求項1又は2記載の移動検出装置。
【請求項6】
前記処理部は、前記所定方向において、前記テンプレートパターンのサイズが、前記イメージセンサで撮像する撮像領域のサイズから前記取得手段で取得される前記物体の移動量を引いた値よりも大きくならないように、前記所定方向における前記テンプレートパターンのサイズを設定することを特徴とする、請求項1から5のいずれか記載の記録装置。
【請求項7】
前記搬送機構は上流から下流、下流から上流の双方向に物体を移動させることが可能であり、前記処理部は、上流から下流に移動する際には前記前記テンプレートパターンを前記第1画像データにおいて上流側の端部近傍に設定し、下流から上流に移動する際には前記前記テンプレートパターンを前記第1画像データにおいて下流側の端部近傍に設定することを特徴とする、請求項1又は2記載の記録装置。
【請求項8】
前記処理部は、前記テンプレートパターンのサイズにかかわらず、前記第1画像データの前記所定方向における上流側の端部近傍に揃えて前記テンプレートパターンを設定することを特徴とする、請求項1から7のいずれか1項記載の記録装置。
【請求項9】
前記物体は記録を行なうメディアまたはメディアを搭載して搬送する搬送ベルトであることを特徴とする、請求項1から8のいずれか1項記載の移動検出装置。
【請求項10】
前記処理部で求められた前記搬送ベルトまたは前記メディアの移動状態に基づいて、前記搬送機構の駆動を制御する制御部を有することを特徴とする、請求項9記載の移動検出装置。
【請求項11】
請求項1から10のいずれか1項記載の移動検出装置と、移動する前記物体に記録を行なう記録部を有することを特徴とする記録装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2011−96091(P2011−96091A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−250825(P2009−250825)
【出願日】平成21年10月30日(2009.10.30)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年10月30日(2009.10.30)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
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