説明

移動炉床炉

【課題】回転炉床炉を大型化しても炉体に過大な負荷を与えず均一に粒状処理物を排出することができるディスチャージャーを備えた回転炉床炉を提供する。
【解決手段】還元剤と酸化鉄を含む原料を移動する炉床1a上に供給して加熱し、得られた処理物を上記炉床上に配置された排出装置6によって炉外に排出するように構成された移動炉床炉において、排出装置6は、スクリュー軸とそのスクリュー軸上に形成されたスクリュー羽根を有する少なくとも第一および第二のスクリューコンベヤ6a,6bを有し、各スクリュー羽根の形成長さは炉床幅よりも短く、処理物の一部は炉床の幅方向一方側から第一のスクリューコンベヤ6aによって排出され、処理物の他の一部または全部は炉床の幅方向他方側から第二のスクリューコンベヤ6bによって排出されることを特徴とする移動炉床炉。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭素質還元剤と酸化鉄を含有し塊状に成形された塊成化物から還元金属を製造する移動炉床炉に関するものである。
【背景技術】
【0002】
移動炉床炉の一つとしての回転炉床炉は、通常、図8に示すように、円形の炉体50内を環状の炉床51が垂直軸まわりに一定速度で回転(矢印A方向)しており、塊成化物は装入口52から炉内に装入されて炉床51上に敷き詰められるようになっている。
【0003】
炉床51上の塊成化物は、装入口52下流側の加熱領域を通過する際にバーナー53によって加熱還元される。
【0004】
還元によって生成された金属は、スクリューフィーダー54の送り(矢印B方向)動作によって排出口55から炉外に排出される(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
この種の回転炉床炉では、年間50〜60万t程度までは粒状金属鉄を製造することができるが、粒状金属鉄の生産量をそれ以上に高めるためには複数の回転炉床炉が必要になり、回転炉床炉の数を増やすと建設費及びランニングコストが高くなる。
【0006】
建設費の低減を目的とした回転炉床炉として、炉体をコンパクト化(炉内高さの低減)することによって炉体放散熱量を抑制し、燃料原単位の改善を図った回転炉床炉が知られている(例えば、特許文献2参照)。
【0007】
特許文献2に記載の回転炉床炉は、バーナーの火炎直径を小さく、かつ、燃焼量にかかわらず一定の大きさに維持することによって火炎から炉体天井面までの距離(クリアランス)を減少させ、炉内高さを最小限に抑えるように構成されている。この構成によれば、建設費を抑制して燃料原単位を改善できるという効果がある。
【0008】
しかしながら、特許文献2に記載の回転炉床炉は、粒状金属鉄の生産量を大幅に高めるための回転炉床炉の構成を提案するものではないため、回転炉床炉の大型化を図るための構成については、現状では実現されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2001−152223号公報
【特許文献2】特開2003−279255号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
回転炉床炉の大型化を図るには、炉体の構造、バーナーの配置、塊成化物の供給装置の構成、粒状金属鉄を炉外に排出するディスチャージャーの構成等、解決すべき様々な問題がある。中でも、ディスチャージャーをいかに構成するかは重要である。
【0011】
ディスチャージャーは、回転軸とその回転軸の胴部に螺旋状に形成されたスクリュー羽根と、それらを被覆する耐火物とから構成されており、生産量が年間20万トンのプラント用のものであっても総重量が35t〜40tもある。
【0012】
回転炉床炉の大型化にともなって上記回転軸を長尺にすると、回転軸にたわみが生じ炉床内周部および外周部については粒状金属鉄が排出されずに残ってしまい、粒状金属鉄を均一に排出することができなくなる。たわみが発生しないように回転軸の径を大きくすると、今度は炉体天井面の高さに制約のある炉体内に収納することが困難になり、また、その回転軸を支える炉体も補強が必要となって大規模になる。
【0013】
このような事情から、回転炉床炉を大型化する場合、炉体に対して過大な負荷とならず、金属鉄等の処理物を均一に排出することができるディスチャージャーの実現が優先課題となる。
【0014】
本発明は以上のような回転炉床炉を大型化させる場合の課題を考慮してなされたものであり、移動炉床炉を大型化しても炉体に過大な負荷を与えず均一に処理物を排出することができるディスチャージャーを備えた移動炉床炉を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、還元剤と酸化鉄を含む原料を移動する炉床上に供給して加熱し、得られた処理物を上記炉床上に配置された排出装置によって炉外に排出するように構成された移動炉床炉において、
上記排出装置は、スクリュー軸とそのスクリュー軸に形成されたスクリュー羽根を有する少なくとも第一および第二のスクリューコンベヤを有し、
上記各スクリュー羽根の形成長さは炉床幅よりも短く、
上記処理物の一部は上記炉床の幅方向一方側から上記第一のスクリューコンベヤによって排出され、上記処理物の他の一部または全部は上記炉床の幅方向他方側から上記第二のスクリューコンベヤによって排出される移動炉床炉である。
【0016】
本発明の移動炉床炉には、炉床が直線的に移動する炉床炉と、環状の炉床が垂直軸まわりに回転する回転炉床炉が含まれる。
【0017】
また、本発明における原料の形態としては塊成物および粉体が含まれる。
【0018】
回転炉床炉における大型化とは、炉の生産量に比例して炉床面積が大きくなるように、炉の外径、内径、炉幅を決定するものである。ただし、炉の外径、内径、炉幅を、既存の回転炉床炉から同じ比率で大きくするのではなく、炉の内径を小さくして炉幅を稼ぐことにより、炉の外径増加を抑制しながら炉床面積を拡張することが好ましい。それにより、建設費を抑制しつつより効果的に大型化することができる。
【0019】
本発明において、例えば、スクリューコンベヤを2連で構成する場合、処理物の一部を第一のスクリューコンベヤで排出し、残りの処理物を第二のスクリューコンベヤで排出することになる。また、スクリューコンベヤを3連以上で構成する場合、第一および第二のスクリューコンベヤを含み、複数のスクリューコンベヤで分担して処理物を排出することになる。
【0020】
本発明の第一形態では、上記第一のスクリューコンベヤとして、上記炉床を跨ぐように設けられたスクリュー軸と、上記炉床の幅方向一方端部またはその近傍から幅方向所定部位に至る範囲に対応して上記スクリュー軸に形成された上記スクリュー羽根とを有し、
上記第二のスクリューコンベヤとして、上記炉床を跨ぐように設けられたスクリュー軸と、上記炉床の幅方向所定部位から幅方向他方端部またはその近傍に至る範囲に対応して上記スクリュー軸に形成された上記スクリュー羽根とを有することができる。
【0021】
本発明の第二形態では、上記第一のスクリューコンベヤとして、上記炉床を跨ぐように設けられたフレームと、そのフレームに支持され上記炉床の幅方向一方端部またはその近傍から幅方向所定部位まで延設されたスクリュー軸と、そのスクリュー軸に形成されたスクリュー羽根とを有し、
上記第二のスクリューコンベヤとして、上記炉床を跨ぐように設けられたフレームと、そのフレームに支持され上記炉床の幅方向所定部位から幅方向他方端部またはその近傍まで延設されたスクリュー軸と、そのスクリュー軸に形成されたスクリュー羽根とを有することができる。
【0022】
スクリューコンベアを2連で構成する場合、上記所定部位は炉床の幅方向中央またはその近傍とすることができる。
【0023】
また、上記所定部位を炉床の幅方向中央として炉床の幅方向両側から処理物を均等に排出する場合に限らず、上記所定部位を炉床幅方向に偏らせ、炉床の幅方向両側から排出される処理物の排出割合を例えば、4:6や3:7などのように変更することもできる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、スクリューコンベヤを炉床上に並設し、重量の重い各スクリュー羽根の形成範囲を炉床幅よりも短い範囲に制限することによりスクリュー軸のたわみを抑制しているため、移動炉床炉を大型化した場合に炉体に対して過大な負荷とならず、且つ均一に処理物を排出することができるという長所を有する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明に係る回転炉床炉の概略平面図である。
【図2】図1のC−C縦断面図である。
【図3】図1の回転炉床炉を回転移動方向に展開して示した説明図である。
【図4】本発明に係る排出装置の第一形態を示す拡大平面図である。
【図5】図4の側面縦断面図である。
【図6】本発明に係る排出装置の第二形態を示す拡大平面図である。
【図7】図6のJ−J矢視縦断面図である。
【図8】従来の回転炉床炉の構成を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面に示した実施の形態に基づいて本発明を詳細に説明する。
【0027】
1.回転炉床炉
本発明の回転炉床炉は、回転するドーナツ状の炉床を備えており、図1は回転炉床炉1の平面図を示し、図2は図1におけるC−C縦断面図を示している。
【0028】
本発明の回転炉床炉は、(a)回転炉床上に装入した塊成物を炉内を一周する間に加熱し、塊成物に含まれる酸化鉄を炭材によって還元し、還元鉄として炉外に排出する「FASTMET法」、(b)上記炉内において加熱還元後にさらに加熱して還元鉄を一旦、溶融し、次いで冷却することにより粒状金属鉄を製造する「ITmk3法」のいずれにも適用することができるが、以下の実施形態では「ITmk3法」に使用する回転炉床炉を例に取り説明する。
【0029】
両図において、回転炉床炉1の炉床1aは、図示しない駆動装置により垂直軸まわりに一定の速度で回転するように構成されている。
【0030】
本発明の回転炉床炉1は、炉床1aの内周縁1bをより中心Oに近づけることにより炉床1aの面積を拡張し、回転炉床炉1の大型化を図っている。なお、図中、二点鎖線で示した円Dは、従来の炉床内周縁の位置を示している。
【0031】
炉体2の内周側壁面および外周側壁面の適所には燃焼バーナー3が複数配設されており、これらの燃焼バーナー3の燃焼熱およびその輻射熱を、炉床1a上に装入された原料、本実施形態では塊成化物としての例えばペレットに伝達することにより、そのペレットの加熱還元および溶融が行われる。なお、内周側壁面に配設される燃焼バーナーについては図示を省略している。上記塊成化物としては、ペレット状、ブリケット状など種々の形態が含まれる。
【0032】
図3は、加熱還元溶融工程を説明するために、図1に示した回転炉床炉1を回転移動方向に展開して示した説明図である。
【0033】
同図において、炉体2の内部構造は仕切壁K1〜K3により還元ゾーンZ1から冷却ゾーンZ4にまで仕切られており、炉体2の回転方向上流側には炉床1aを臨んで炉床材装入装置4および原料供給装置5が配置されるとともに、回転方向最下流側(回転構造であるため、実際には炉床材装入装置4の直上流側にもなる)には排出装置6が配置されている。
【0034】
上記回転炉床炉1を運転する場合、炉床1aを一定の速度で回転させておき、その炉床1a上に、原料供給装置5からペレットを供給していく。
【0035】
炉床1a上に供給されたペレットは、還元・溶融ゾーンZ1〜Z3を移動する過程で燃焼バーナー3による燃焼熱及び輻射熱を受け、ペレット中の酸化鉄が炭素質還元剤により還元される。
【0036】
ほぼ完全に還元された還元鉄は、さらに加熱されることにより溶融し、副生するスラグと分離しながら凝集して粒状の溶融金属鉄となり、冷却ゾーンZ4にて冷却装置7によって冷却されて固化し、その下流側に設けられた排出装置6によって順次、回転炉床炉1の外部に掻き出される。
【0037】
この時、副生したスラグも同時に排出されるが、これらは排出部8を経た後、分離装置(篩目や磁選装置など)により粒状の金属鉄とスラグの分離が行われ、最終的に、スラグ成分含量の極めて少ない粒状金属鉄を得ることができるようになっている。
【0038】
なお、図3では炉体2の内部が4つのゾーンに分割されているが、分割するゾーンの数は適宜変更し得るものである。
【0039】
2.排出装置
2.1 排出装置の第一形態
図4は本発明に係る排出装置6の第一形態を拡大して示した平面図であり、図5はその側面縦断面図である。
【0040】
まず、図4において、排出装置6は、炉床回転方向における上流側と下流側に配置された二連のディスチャージャー(第一のスクリューコンベヤ)6aおよびディスチャージャー(第二のスクリューコンベア)6bから構成されている。
【0041】
上流側に配置されるディスチャージャー6aは、一方端部に軸端部10a、他方端部に軸端部10bを有するシャフト(スクリュー軸)10cを備えており、このシャフト10cは炉床1aを跨がるようにして炉床1a上に設けられている。
【0042】
シャフト10cの胴部外周面には、処理物としての粒状金属鉄を炉床内周側(矢印E方向)に排出するためのスクリュー羽根10dが螺旋状に形成されている。ただし、上記スクリュー羽根10dが形成されている範囲は、シャフト10cの軸端部10a側の端部(炉床の幅方向一方端部に対応する)からシャフト10cの略中央部(炉床の幅方向所定部位に対応する)までの範囲Fに限られている。
【0043】
一方の軸端部10aは炉床1aの内側に配置された軸受け10eによって、また、他方の軸端部10bは炉床1aの外側に配置された軸受け10fによってそれぞれ回転自在に支持されている。
【0044】
また、軸端部10aの先端にはスプロケット10gが固定されており、このスプロケット10gは後述するローラーチェーンを介して駆動装置と接続されている。
【0045】
下流側に配置されるディスチャージャー6bは、基本的に上記したディスチャージャー6aと同じものから構成されているが、ディスチャージャー6aに対し、シャフト軸方向において左右対称に配置されている。なお、ディスチャージャー6bにおいてディスチャージャー6aと同じ構成要素については同一符号を付してその説明を省略する。なお、図中、Gは炉床1aの回転方向を示している。
【0046】
下流側に配置されるディスチャージャー6bのシャフト10cの胴部外周面には、粒状金属鉄を炉床内周側(矢印E方向と逆方向)に排出するためのスクリュー羽根10dが螺旋状に形成されている。ただし、上記スクリュー羽根10dが形成されている範囲は、シャフト10cの略中央部(炉床の幅方向所定部位に対応する)から軸端部(炉床の幅方向他方端部に対応する)10aまでの範囲F′に限られている。
【0047】
上記各スクリュー羽根10dによる粒状金属鉄の排出範囲は、隣接する二連のディスチャージャー6aおよび6bにおいて一部重複させることが好ましい。
【0048】
なお、ディスチャージャー6a、6bの配置は、上記した配置と逆の配置であってもよい。
【0049】
上記実施形態ではディスチャージャーを2連で構成し、炉床の幅方向端部から炉床の幅方向略中央部に至る二つの範囲に分割してスクリュー羽根を形成する場合を例に取り説明したが、上記炉床の幅方向端部はその近傍であってもよく、上記炉床の幅方向所定部位は、炉床の中央またはその近傍であってもよい。
【0050】
また、上記実施形態では炉床の幅方向両側から処理物を均等に排出する場合を例に取り説明したが、これに限らず、スクリュー羽根が形成される範囲を特定した上記炉床の幅方向所定部位を、炉床の幅方向中央から偏らせた位置に設定し、各ディスチャージャーによる排出分担を変更することもできる。
【0051】
図5において、2連のディスチャージャー6aおよび6bは、昇降フレーム11に支持されており、水冷カバー12内に収納されている。
【0052】
昇降フレーム11に設けられた駆動装置10hがローラーチェーン10iを介して軸端部10aのスプロケット10gに回転力を伝達すれば、上流側のディスチャージャー6aのシャフト10cに形成されているスクリュー羽根10dが回転し、炉床上の粒状金属鉄(炉床材も含む)を、炉床1aの幅方向一方側である炉床内周側(矢印E方向)に移送し、スクリュー羽根10dの先端下方に配置されたシュート13aを通じ、排出部8を構成している内周側排出ホッパー8aに粒状金属鉄を投下させるようになっている。
【0053】
同様に、図示しない駆動装置、ローラーチェーン、スプロケット10gを介して下流側のディスチャージャー6bの軸端部10aを回転させれば、シャフト10cに形成されているスクリュー羽根10dが回転し、炉床上の粒状金属鉄(炉床材も含む)を、炉床1aの幅方向他方側である炉床外周側(矢印E方向と逆方向)に移送し、スクリュー羽根10dの先端下方に配置されたシュート13bを通じて排出部8を構成している外周側排出ホッパー8bに粒状金属鉄を投下させるようになっている。
【0054】
内周側排出ホッパー8aおよび外周側排出ホッパー8bに投下された粒状金属鉄は別々に、または合流されて上述した分離装置へ送られる。
【0055】
このように、排出装置6を、2連のディスチャージャー6aおよび6bによって構成すれば、シャフト10cの端部からシャフト10cの略中央部までの範囲F、F′(図4参照)に限って金属鉄を掻き出すためのスクリュー羽根10dが形成されているため、各シャフト10cに加わる重量が低減される。したがって、回転炉床炉の大型化を図るにあたって炉床幅を拡張し、それにともなってディスチャージャーを長尺にしても、シャフト10cのたわみを抑制することができる。
【0056】
また、シャフト10cに加わる重量が低減されることによってシャフト10cの径を小さくすることができ、それにより、排出装置6を比較的小型なもので構成することができる。
【0057】
2.2 排出装置の第二形態
図6は本発明に係る排出装置の第二形態を拡大して示した平面図であり、図7は図6の排出装置をJ−J方向から見た側面縦断面図である。
【0058】
図6に示す排出装置6は、吊り下げ式のディスチャージャー(第二のスクリューコンベヤ)6cおよびディスチャージャー(第一のスクリューコンベヤ)6dからなり、各ディスチャージャー6c、6dは炉床1a回転方向(G方向)においてちどりに配置されている。
【0059】
上流側のディスチャージャー6cは、一方端部に軸端部14a、他方端部に軸端部14bを有するシャフト(スクリュー軸)14cを備えている。そのシャフト14cの軸長は、炉床幅の略半分の長さを上回る長さを有し、炉床1aの径方向に向けて配置されている。
【0060】
シャフト14cの胴部外周面には、粒状金属鉄を炉床外周側(矢印H方向)に排出するためのスクリュー羽根14dが螺旋状に形成されている。
【0061】
上記軸端部14aは軸受け14eによって、上記軸端部14bは軸受け14fによってそれぞれ回転自在に支持されており、軸受け14eは昇降フレーム15から垂設された支持フレーム15aの下部に、また、軸受け14fは昇降フレーム15の側壁部15bにそれぞれ固定されている(図7参照)。
【0062】
下流側のディスチャージャー6dは、基本的に上記したディスチャージャー6cと同じものから構成されているが、ディスチャージャー6cに対し、シャフト軸方向において左右対称に配置されている。なお、ディスチャージャー6dにおいてディスチャージャー6cと同じ構成要素については同一符号を付してその説明を省略する。
【0063】
また、2連のディスチャージャー6cおよび6dは、昇降フレーム15に支持されており、水冷カバー16内に収納されている。
【0064】
水冷カバー16は、各ディスチャージャー6c、6dと平行に、それらの外側に配置される仕切外壁16a、16bと、各ディスチャージャー6c、6dの間に配置される仕切内壁16cを有し、さらに、ディスチャージャー6cの軸方向両側に仕切壁16d、16eが設けられ、ディスチャージャー6dの軸方向両側に仕切壁16f、16gが設けられている。
【0065】
また、図7に示すように、軸受け14e、14fが高熱に曝されるのを防止するため、軸受け14eは水冷壁16d、16fの外側に配置され、軸受け14fは水冷壁16e、16gの外側に配置されている(図6参照)。
【0066】
シャフト14cの軸端部14bにはスプロケット14gが設けられ、このスプロケット14gはローラーチェーン14hを介して駆動装置14iと接続されている。それにより、駆動装置14iを駆動させると、シャフト14cが回転し、そのシャフト14cに形成されたスクリュー羽根14dによる送り動作によって、炉床上の粒状金属鉄(炉床材も含む)が炉床外周側(矢印H方向)に移送される。
【0067】
移送された粒状金属鉄は、スクリュー羽根14dの先端下方に配置されたシュート13bを通じて外周側排出ホッパー8bに投下されるようになっている。
【0068】
下流側のディスチャージャー6dについてもディスチャージャー6cと同様に、図示しない駆動装置を駆動させると、シャフト14cが回転し、そのシャフト14cに形成されたスクリュー羽根14dによる送り動作によって、炉床上の粒状金属鉄(炉床材も含む)が炉床内周側(矢印I方向)に移送され、移送された粒状金属鉄は、スクリュー羽根14dの先端下方に配置されたシュート(図示しない)を通じて内周側排出ホッパー8aに投下されるようになっている(図6参照)。
【0069】
内周側排出ホッパー8aおよび外周側ホッパー8bに投下された粒状金属鉄は、別々に、または合流されて上述した分離装置へ送られる。
【0070】
なお、炉床1a上の粒状金属鉄が完全に排出されるように、符号Lの範囲(図7参照)については、各シャフト14cのスクリュー羽根14dによる送りの範囲をオーバーラップさせている。
【0071】
このように、排出装置6を、上記ディスチャージャー6cおよび6dによって構成したものは、シャフト10cの長さを長尺化せずにちどりに配置することにより、炉床回転方向上流側と下流側との二か所において粒状金属鉄を排出するように構成しているため、スクリュー軸を含めてディスチャージャー6c、6dを大型化することなく粒状金属鉄を均一に排出することができる。
【0072】
また、上記実施形態ではディスチャージャーを2連配置する構成を示したが、大型化する回転炉床炉の炉床幅に応じ、3連または4連等、2連以上配置することもできる。この場合、炉床上の粒状金属鉄の排出については、炉床径方向に複数の排出領域を設定し、複数のディスチャージャーで各排出領域の排出を分担することが好ましい。
【符号の説明】
【0073】
1 回転炉床炉
1a 炉床
2 炉体
3 燃焼バーナー
4 炉床材装入装置
5 原料供給装置
6 排出装置
6a ディスチャージャー(第一のスクリューコンベヤ)
6b ディスチャージャー(第二のスクリューコンベヤ)
7 冷却装置
8 排出部
8a 内周側排出ホッパー
8b 外周側排出ホッパー
10a,10b 軸端部
10c シャフト
10d スクリュー羽根
10e,10f 軸受け
10g スプロケット
11 昇降フレーム
12 水冷カバー
13a,13b シュート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
還元剤と酸化鉄を含む原料を移動する炉床上に供給して加熱し、得られた処理物を上記炉床上に配置された排出装置によって炉外に排出するように構成された移動炉床炉において、
上記排出装置は、スクリュー軸とそのスクリュー軸に形成されたスクリュー羽根を有する少なくとも第一および第二のスクリューコンベヤを有し、
上記各スクリュー羽根の形成長さは炉床幅よりも短く、
上記処理物の一部は上記炉床の幅方向一方側から上記第一のスクリューコンベヤによって排出され、上記処理物の他の一部または全部は上記炉床の幅方向他方側から上記第二のスクリューコンベヤによって排出されることを特徴とする移動炉床炉。
【請求項2】
上記第一のスクリューコンベヤは、上記炉床を跨ぐように設けられたスクリュー軸と、上記炉床の幅方向一方端部またはその近傍から幅方向所定部位に至る範囲に対応して上記スクリュー軸に形成された上記スクリュー羽根とを有し、
上記第二のスクリューコンベヤは、上記炉床を跨ぐように設けられたスクリュー軸と、上記炉床の幅方向所定部位から幅方向他方端部またはその近傍に至る範囲に対応して上記スクリュー軸に形成された上記スクリュー羽根とを有する請求項1に記載の移動炉床炉。
【請求項3】
上記第一のスクリューコンベヤは、上記炉床を跨ぐように設けられたフレームと、そのフレームに支持され上記炉床の幅方向一方端部またはその近傍から幅方向所定部位まで延設されたスクリュー軸と、そのスクリュー軸に形成されたスクリュー羽根とを有し、
上記第二のスクリューコンベヤは、上記炉床を跨ぐように設けられたフレームと、そのフレームに支持され上記炉床の幅方向所定部位から幅方向他方端部またはその近傍まで延設されたスクリュー軸と、そのスクリュー軸に形成されたスクリュー羽根とを有する請求項1に記載の移動炉床炉。
【請求項4】
上記幅方向所定部位が、上記炉床の幅方向中央またはその近傍である請求項2または3に記載の移動炉床炉。
【請求項5】
上記各スクリュー羽根による上記処理物の排出範囲が、隣接する上記スクリューコンベヤにおいて一部重複するように構成されている請求項1〜4のいずれか1項に記載の移動炉床炉。
【請求項6】
上記スクリュー羽根が形成されている上記スクリュー軸が、上記炉床上に設けられた水冷カバー内に収納されている請求項1〜5のいずれか1項に記載の移動炉床炉。
【請求項7】
上記移動炉床炉が回転炉床炉である請求項1〜6のいずれか1項に記載の移動炉床炉。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2013−2777(P2013−2777A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−136595(P2011−136595)
【出願日】平成23年6月20日(2011.6.20)
【出願人】(000001199)株式会社神戸製鋼所 (5,860)
【Fターム(参考)】