説明

移動無線通信システム

【課題】電波干渉が生じている区域でも受信が可能な移動無線通信システムを提供すること。
【解決手段】中央装置1にネットワークNW、NW‘を介して接続された複数基、例えば2基の基地局7,7’を設け、移動局11による通信可能領域を広げるようにした移動無線通信システムにおいて、中央装置側のタイミング送信装置12からタイミング信号伝送線路L1を介して一方の基地局7にタイミング信号を伝送し、遅延部20を介して基地局7にタイミング信号を供給し、更にタイミング信号伝送線路L2を介して他方の基地局7‘にもタイミング信号を伝送し、遅延部20’を介して基地局7‘にタイミング信号を供給することにより、各々の無線機10,10’によるデータの送信タイミングの同期が取られ、基地局7と基地局7‘電波が干渉してしまう区域に移動局11が移動したときでも、問題なくデータが受信できるようにしたもの。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、同一周波数のキャリアで送受信動作する複数の基地局を備えた移動無線通信
システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
移動無線通信システムでは、移動局による通信可能エリアを拡張するため、同一周波数
のキャリアで送受信動作する基地局を異なった地点に配置する方法が従来から用いられて
いる。そこで、このような複数の基地局を備えた移動無線通信システムの一例について、
図2により説明する。ここで、この例は、基地局が2台、すなわち基地局7と基地局7'
が設けられている場合である。
【0003】
図2において、まず、符号1は中央装置で、これには信号発生元2が含まれている。そ
して、この中央装置1には、更に複数のバッファ3、3'と複数のネットワークインター
フェース4、4'が備えられているが、ここで、バッファ3、3'は、信号をネットワーク
に同期させて送信するために設けられ、ネットワークインターフェース4、4'は、バッ
ファ3又はバッファ3'からネットワークのタイミングで信号を取得し、ネットワークに
送信するために設けられている。
【0004】
各ネットワークインターフェース4、4'は、中央装置側のネットワーク端末5、5'に
接続され、これら中央装置側のネットワーク端末5、5'は夫々基地局側のネットワーク
端末6、6'に接続されており、この結果、中央装置1のネットワークインターフェース
4、4'は、各ネットワークNW、NW'を介してネットワーク端末5、5'とネットワー
ク端末6、6'を介して各々の基地局7、7'に接続されていることになる。
【0005】
各基地局7、7'には、ネットワークインターフェース8、8'とバッファ9、9'、そ
れに無線機10、10'が備えられ、ここで、まず、ネットワークインターフェース8、
8'は、ネットワークに同期してネットワークから所要の信号を取得し、これをバッファ
9、9'に送信する働きをし、次にバッファ9、9'は、このとき入力された信号を一時的
に保持する働きをする。そして無線機10、10'は、所定のタイミングでバッファ9、
9'から信号を取り出し、所定の周波数のキャリアに乗せ、電波として送信し、信号受信
元となる移動局11で受信されるようにする。
【0006】
次に、この従来技術の動作について、更に詳しく説明する。まず、信号発生元2からは
周期的に信号データが出力される。そこで、バッファ3、3'は、その信号を記憶し、一
時的に蓄える。このとき、ネットワークインターフェース4、4'は、常時、ネットワー
ク端末6、6'に同期している。そこで、このときネットワークのタイミングでバッファ
3、3'から信号を取得し、ネットワークに通知する。
【0007】
このとき、基地局7、7'のネットワークインターフェース8、8'も、同じくネットワ
ークのタイミングに同期している。そこで、基地局側でも、中央装置側のバッファ3、3
'から、ネットワークのタイミングで、ネットワーク端末5、6、5'、6'を含むネット
ワークを介して信号を取得し、基地局側のバッファ9、9'に格納し、ここに一時的に蓄
えておく。そして、この後、無線機10、10'は、バッファ9、9'にデータが蓄積され
たタイミングの後、無線機側のタイミングでバッファ9、9'にアクセスし、信号を取り
出して送信し、移動局11で受信されるようにするのである。
【0008】
この結果、一方の基地局、例えば基地局7による通信エリアと、他方の基地局、つまり
基地局7'による通信エリアの双方が確立され、移動局11の通信可能範囲を、これら双
方の基地局による伝送範囲に広げることができる。
【0009】
ここで、この従来技術によれば、システム内の各装置とネットワークの間にネットワー
クインターフェースが設けてあるので、各装置は、ネットワークのタイミングとは異なる
タイミングで夫々動作が可能になり、系のゆらぎや処理元、処理先の都合に合わせて通信
することができるというメリットがある。
【0010】
なお、本発明に関連する従来技術についての開示としては、例えば、特許文献1などを
挙げることができる。
【特許文献1】特開2002−325270号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上記従来技術は、同一周波数のキャリアによる電波が複数の基地局から送信されている
際の電波の干渉(衝突とも言う)について配慮がされておらず、基地局間の特定の地域に通
信が困難な区域が現れてしまうという問題があった。
【0012】
図2により説明すると、ここで、基地局7と基地局7'は、夫々中央装置1から離れた
異なった場所に設置されているので、これらの間にあるネットワークには、夫々異なった
信号遅延が生じてしまう。また、このとき、各装置も独立したタイミングで動いているの
で、タイミングによる差も生じている。
【0013】
一方、信号受信先である移動局1は、例えば列車に搭載された無線機であり、線路に沿
って移動するので、基地局7と基地局7'による電波が干渉してしまう区域に移動するこ
とがあるのが避けられないが、このとき、送信されているデータが同じであっても、タイ
ミングが異なっているため、移動局11では、データが受信できなくなってしまうのであ
る。
【0014】
ここで、この遅延を補償しようとしても、この遅延は、ネットワークに使用されている
汎用の多重伝送装置(SDH:Synchronous Digital Hierachy)の場合、必ずしも固定され
ておらず、遅延量が変化されてしまうことがある。このため、基地局のネットワークイン
ターフェースでタイミング調整しても、SDHなどで変えられてしまうと、受信出来なく
なってしまう。
【0015】
一方、汎用ではない多重伝送装置を用いるとなると、同等のサービスが可能な独自のネ
ットワーク装置を使用する必要があり、開発コストの上昇やサービス品質低下の問題が顕
在化してしまう。
【0016】
本発明は、従来技術の問題点に対処してなされたもので、その目的は、電波干渉が生じ
ている区域でも受信が可能な移動無線通信システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記目的は、中央装置に夫々独立したネットワークを介して接続された複数の基地局を
備え、これら複数の基地局から同一周波数のキャリアを用いて同一のデータを送信するよ
うにした移動無線通信システムにおいて、前記中央装置から、上記ネットワークとは別の
タイミング信号伝送線路を介して、前記複数の基地局の夫々にタイミング信号を伝送する
タイミング信号伝送手段を設け、前記複数の基地局の夫々から送信されるデータのタイミ
ング同期が、前記タイミング信号伝送手段により伝送されるタイミング信号により取られ
るようにして達成される。
【0018】
このとき、前記タイミング信号伝送手段が、前記夫々独立したネットワークによる伝送
遅れ時間の中の最大の伝送遅れ時間と同じ遅延時間に設定された信号遅延手段を含み、前
記複数の基地局の夫々から送信されるデータのタイミング遅れが、前記信号遅延手段に設
定された遅延時間により決定されるようにしても、上記目的が達成される。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、単純な伝送路の付加だけで、電波干渉地域での受信を可能にすること
ができ、開発コストの上昇やサービス品質低下の少ない移動無線通信システムが提供でき
る。
【0020】
また、本発明によれば、信号伝送元のタイミングに基づいて基地局の送信タイミングが
調整されるので、中央装置と基地局の間の伝送系にどのような遅延特性があっても、状況
に左右されないで通信を行うことができる。
【0021】
そして、本発明によれば、単一の信号を送出するだけで済むので、必要な構成の付加も
少なくて済むことになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明による移動無線システムについて、図示の実施の形態により、詳細に説明
する。
【0023】
図1は、本発明の一実施形態で、これも基地局が2台の場合の実施形態であり、信号発
生元2を含む中央装置1に複数のバッファ3、3'と複数のネットワークインターフェー
ス4、4'を備え、これによりバッファ3、3'からネットワークのタイミングで信号を取
得し、ネットワークに送信するようになっている点は、図2で説明した従来技術の場合と
同じである。
【0024】
このとき、各ネットワークインターフェース4、4'は、中央装置側のネットワーク端
末5、5'に接続され、これら中央装置側のネットワーク端末5、5'は夫々基地局側のネ
ットワーク端末6、6'に接続されていて、これにより、中央装置1のネットワークイン
ーフェース4、4'が、各ネットワーク端末5、5'とネットワーク端末6、6'を介して
各々の基地局7、7'に接続されている点も、同じく従来技術と同じである。
【0025】
更に、基地局7、7'には、夫々ネットワークインターフェース8、8'とバッファ9、
9'、それに無線機10、10'が備えられ、ここで、まず、ネットワークインターフェー
ス8、8'は、ネットワークに同期してネットワークから所要の信号を取得してバッファ
9、9'に送信するために設けられ、バッファ9、9'は、このとき入力された信号を一時
的に保持するために設けられている点も、やはり従来技術と同じであり、よって、この実
施形態でも、無線機10、10'は、所定のタイミングでバッファ9、9'から信号を取り
出し、所定の周波数のキャリアに乗せ、電波として送信し、信号受信元となる移動局11
で受信されるようにすることになる。
【0026】
そこで、この実施形態でも、信号発生元2から信号が出力されるとバッファ3、3に一
時的に蓄え、ネットワークインターフェース4、4'のタイミングでバッファ3、3'から
信号を取得し、ネットワークに通知し、基地局7、7'のネットワークインターフェース
8、8'も、ネットワークのタイミングで、ネットワーク端末5、6、5'、6'を含むネ
ットワークを介して、中央装置側のバッファ3、3'から信号を取得させ、基地局側のバ
ッファ9、9'に一時的に蓄え、この蓄積されたタイミングの後、無線機10、10'は、
無線機側のタイミングでバッファ9、9'にアクセスし、信号を取り出して送信し、移動
局11で受信されることになる。
【0027】
従って、この実施形態でも、一方の基地局、例えば基地局7による通信エリアと、他方
の基地局、つまり基地局7'による通信エリアの双方が確立され、移動局11の通信可能
範囲を、これら双方の基地局による伝送範囲に広げることができ、このとき、システム内
の各装置とネットワークの間にネットワークインターフェースが設けてあるので、各装置
は、ネットワークのタイミングとは異なるタイミングで夫々動作が可能になり、この結果
、系のゆらぎや処理元、処理先の都合に合わせて通信することができるという、従来技術
と同じメリットがある。
【0028】
しかし、この実施形態では、上記の構成に加えて、更に以下の構成がタイミング信号伝
送手段として付加され、これにより上記従来技術では得ることができない作用効果を奏す
るものであり、以下、この点について、詳細に説明する。
【0029】
まず、図1において、12はタイミング送信装置で、中央装置1側に設けられ、中央装
置1側から基地局7、7'に同期タイミングを伝送し、伝送結果を確認する働きをするも
ので、このため同期タイミング生成部13と同期タイミング送信部14、返送タイミング
受信部18、それにアラーム検出部19を備えている。
【0030】
次に、15、15'はタイミング受信装置で、基地局7、7'側の夫々に設けられ、各基
地局7、7'側で中央装置1側から送信された同期タイミングを受信し、受信された同期
タイミングにより無線機10、10'のタイミングを取り、且つ、同期タイミングが受信
されたら、それを返送タイミングとして送り返す働きをするもので、このため、各々が同
期タイミング受信部16、16'と返送タイミング送信部17、17'、それにタイミング
遅延部20、20'を備えている。
【0031】
ここで、L1、L2、L3はタイミング信号を伝送するためのタイミング信号伝送線路
で、まずタイミング信号伝送線路L1は、タイミング送信装置12の同期タイミング送信
部14とタイミング受信装置15の同期タイミング受信部16の間に接続され、次にタイ
ミング信号伝送線路L2はタイミング受信装置15の返送タイミング送信部17とタイミ
ング受信装置15'の同期タイミング受信部16'の間に接続され、そしてタイミング信号
伝送線路L3は、タイミング受信装置15'の返送タイミング送信部17'とタイミング送
信装置12の返送タイミング受信部18の間に接続されている。
【0032】
このとき伝送されるタイミング信号は、単にタイミングだけを情報として持っていれば
よく、このため例えば単なる電圧パルスを信号にするだけで済む。このため、同期タイミ
ング送信部14と返送タイミング送信部17、17'、及び同期タイミング受信部16、
16'と返送タイミング受信部18は、一般的な伝送装置とは異なり、多重化などの複雑
な処理のための構成は不要で、単純なパルス送受信装置で済み、且つ、タイミング信号伝
送線路L1、L2、L3も、同じく単純な線路ですむことになる。
【0033】
ここで、本発明の実施形態としては、このタイミング情報の伝送に光伝送方式を適用し
てもよく、このときは同期タイミング送信部14と返送タイミング送信部17、17'、
及び同期タイミング受信部16、16'と返送タイミング受信部18を光伝送用として、
電気−光変換部と光−電気変換部を備えた構成とし、各タイミング信号伝送線路L1、L
2、L3としては光ファイバケーブルが用いられることになる。
【0034】
次に、この実施形態の動作について説明する。いま、信号発生元2から信号が出力され
たとすると、まずタイミング送信装置12において、同期タイミング生成部13が、信号
発生元2から元の信号のタイミングを取り込み、これに基づいて同期タイミング信号を生
成する。そこで、同期タイミング送信部14は、この同期タイミング信号を、タイミング
信号伝送線路L1を介してタイミング受信装置15の同期タイミング受信部16に送信す
る。このとき、上記したように、タイミングが分かればよいので、多重化などの複雑な処
理は不要であり、例えば電圧パルス信号を送信すればよい。
【0035】
そして、この同期タイミング信号がタイミング受信装置15の同期タイミング受信部1
6に受信されると、それが遅延部20に入力され、ここで予め設定してある時間遅延を受
け、遅延補正されたタイミング信号が無線機10に供給される。そこで無線機10は、こ
の遅延補正されたタイミング信号のタイミングでバッファ9にアクセスし、信号を取り出
して送信し、移動局11で受信されるようにする。
【0036】
一方、このとき同期タイミング受信部16に受信されたタイミング信号は、そのまま返
送タイミング送信部17にも供給される。そして、この返送タイミング送信部17により
タイミング信号伝送線路L2を介してタイミング受信装置15'の同期タイミング受信部
16'に中継送信される。
【0037】
ここで、タイミング受信装置15'の同期タイミング受信部16'に同期タイミング信号
が受信されると、ここでも、それが遅延部20'に入力され、同じく予め設定してある時
間遅延を受け、遅延補正されたタイミング信号が無縁機10'に供給されるようになる。
そこで、この無線機10'も、この遅延補正されたタイミング信号のタイミングでバッフ
ァ9'にアクセスし、信号を取り出して送信し、移動局11で受信されるようにする。
【0038】
一方、ここでも、同期タイミング受信部16'に受信されたタイミング信号は、そのま
ま返送タイミング送信部17'も供給されるが、今度はタイミング信号伝送線路L3を介
して中央装置1側のタイミング受信装置12に中継送信され、そこにある返送タイミング
受信部18に受信される。
【0039】
そこで、この返送タイミング受信部18は、受信された信号をアラーム検出部19に供
給するが、このときアラーム検出部19は、タイミング生成部12から取り込んだタイミ
ング信号により、返送タイミング受信部18から供給された信号をサンプリングし、受信
した信号からタイミング信号を検出する働きをする。そして、タイミング信号が検出され
なかったときは、所定のアラーム報知が作動されるように構成されている。
【0040】
次に、この実施形態における遅延部20、20'の遅延時間について説明すると、まず
、この実施形態の場合、各無線機10、10'の送信タイミングは、各々のタイミング受
信装置15、15'の同期タイミング受信部16、16'で受信したタイミング信号に基づ
き、それに遅延部20、20'の遅延時間を加算したタイミングに決められる。
【0041】
このとき、タイミング信号伝送線路L1による信号の伝送時間とタイミング信号伝送線
路L2による信号の伝送時間は、信号発生元2の信号データの伝送周期と比較して、ほと
んど無視できるので、基地局7側のタイミング受信装置15で受信されるタイミング信号
と、基地局7'側のタイミング受信装置15'で受信されるタイミング信号とはタイミング
が同じで同期しているものと見做せる。
【0042】
そこで、いま、基地局7側のネットワーク端末5とネットワークNW、それにネットワ
ーク端末6によるデータの伝送遅れ時間をτとし、基地局7'側のネットワーク端末5'と
ネットワークNW'、それにネットワーク端末6'によるデータの伝送遅れ時間をτ'とす
る。そして、これらの伝送遅れ時間τ、τ'を比較し、伝送遅れ時間が大きい方を選択す
る。そして、この大きい方の時間を各遅延部20、20'に遅延時間として設定する。
【0043】
具体的に説明すると、まず、伝送遅れ時間がτ>τ'になっていた場合は、遅延部20
、20'の双方に遅延時間τを設定し、伝送遅れ時間がτ<τ'になっていた場合は、遅延
部20、20'の双方には遅延時間τ'を設定することになり、従って、遅延部20、20
'の双方に設定される遅延時間をTとすると、以下の通りになる。
【0044】
τ>τ' ⇒ T=τ
τ<τ' ⇒ T=τ'
この結果、基地局7側の無線機10による送信タイミングと基地局7'側の無線機10'
による送信タイミングは、何れも信号発生元2から信号データが発生されたタイミングか
ら時間Tだけ遅れるが、一致したタイミングにされ、タイミングが同期したデータの送信
を、複数の基地局から確実に得ることができることになる。
【0045】
従って、この実施形態によれば、基地局7と基地局7'の電波が干渉してしまう区域に
移動局11が移動したときでも、送信されているデータのタイミングが同期しているので
、問題無くデータを受信することができ、この結果、この実施形態によれば、基地局の設
置数の増加による通信可能範囲の拡大を問題無く図ることができる。
【0046】
ところで、このときアラーム検出部19では、上記したように、返送タイミング受信部
18から供給される信号を常時監視して、タイミング信号が検出されなかったときは、所
定のアラーム報知がなされるように構成されている。
【0047】
従って、この実施形態によれば、基地局7と基地局7'の電波が干渉してしまう区域に
移動局11が移動したとき問題無くデータを受信することができる状態にあるか否かが常
時、確認できることになり、当該移動無線システムの信頼性を担保し、システムの健全性
保持に寄与することができる。
【0048】
上述したように、本発明の実施の形態によれば、鉄道に使用するデジタルのLCX無線
方式による列車無線通信システムに有効なものとなる。具体的には、LCX無線方式では
、隣接する基地局で同一周波数が使用できる利点を持つ反面、基地局の境界では下り方向
(基地局から移動局方向)に電波干渉が発生し、部分的に通信ができない区間(不感区間)が
発生するという問題を本実施の形態により解決することができる。
【0049】
特にデジタル無線方式を採用した場合、データ伝送速度はアナログ無線方式に較べ、格
段に速くなることから、不感区間の存在は列車無線通信区間全体からみた伝送品質を著し
く劣化させることになり、従って、移動局の位置に関わらず安定した伝送品質を確保する
ため、この不感区間を解消するのに本実施の形態が有効である。
【0050】
具体的には、電波干渉の原因は、符号間干渉が大きな要因となるが、この符号間干渉の
発生は、中央装置から複数の基地局に送るデータの各基地局への到着時間の差(遅延差)に
起因する。この遅延差を移動局からみた場合、同値とすれば不感区間を解消できる点を見
出し、基地局のバッファ読み出し時に遅延差を等価するためのタイミング回路を挿入した
構成による本実施の形態とした。
【0051】
より具体的には、各無線機へのデータを読み込みタイミングは中央装置より基地局への
データ情報伝送路とは独立に設置したタイミング回路によって決定される。
【0052】
また、遅延差はタイミング回路が接続される基地局中最大の遅延時間と等価とし、この
遅延時間は前記タイミング回路により決定する。
【0053】
これらにより列車用の移動無線通信システムに接続される情報伝送路の種類、状態およ
び移動局の位置に関わらず移動無線通信システムが構成される区間全体にわたり安定した
通信を行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明による移動無線通信システムの一実施形態を示すブロック図である。
【図2】従来技術による移動無線通信システムの一例を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0055】
1:中央装置
2:信号発生元
3、3':バッファ(中央装置側)
4、4':ネットワークインターフェース(中央装置側)
5、5':ネットワーク端末(中央装置側)
6、6':ネットワーク端末(基地局側)
7、7':基地局
8、8':ネットワークインターフェース(基地局側)
9、9':バッファ(基地局側)
10、10':無線機
11:移動局(信号受信先)
12:タイミング送信装置
13:同期タイミング生成部
14:同期タイミング送信部
15、15':タイミング受信装置
16、16':同期タイミング受信部
17、17':返送タイミング送信部
18、18':返送タイミング受信部
19:アラーム検出部
20、20':遅延部
NW、NW':ネットワーク
L1、L2、L3:タイミング信号伝送線路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中央装置に夫々独立したネットワークを介して接続された複数の基地局を備え、これら
複数の基地局から同一周波数の搬送波を用いて同一のデータを送信するようにした移動無
線通信システムにおいて、
前記中央装置から、上記ネットワークとは別のタイミング信号伝送線路を介して、前記
複数の基地局の夫々にタイミング信号を伝送するタイミング信号伝送手段を設け、
前記複数の基地局の夫々の無線機から送信されるデータのタイミング同期が、前記タイ
ミング信号伝送手段により伝送されるタイミング信号により取られるように構成したこと
を特徴とする移動無線通信システム。
【請求項2】
請求項1に記載の移動無線通信システムにおいて、
前記タイミング信号伝送手段が、前記夫々独立したネットワークによる伝送遅れ時間の
中の最大の伝送遅れ時間と同じ遅延時間に設定された信号遅延手段を含み、
前記複数の基地局の夫々から送信されるデータのタイミング遅れが、前記信号遅延手段
に設定された遅延時間により決定されることを特徴とする移動無線通信システム。
【請求項3】
中央装置と、線路近傍に設置され前記中央装置に接続された複数の基地局と、前記線路
上を移動し前記複数の基地局と無線通信を行う複数の移動局とより構成された列車用の移
動無線通信システムにおいて、
前記中央装置から、上記ネットワークとは別のタイミング信号伝送線路を介して、前
記複数の基地局の夫々にタイミング信号を伝送するタイミング信号伝送手段を設け、
前記複数の基地局の夫々の無線機から送信されるデータのタイミング同期が、前記タイ
ミング信号伝送手段により伝送されるタイミング信号により取られるように構成したこと
を特徴とする列車用の移動無線通信システム。
【請求項4】
請求項3に記載の列車用の移動無線通信システムにおいて、
前記タイミング信号伝送手段が、前記夫々独立したネットワークによる伝送遅れ時間の
中の最大の伝送遅れ時間と同じ遅延時間に設定された信号遅延手段を含み、
前記複数の基地局の夫々から送信されるデータのタイミング遅れが、前記信号遅延手段
に設定された遅延時間により決定されることを特徴とする列車用の移動無線通信システム


【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−150561(P2007−150561A)
【公開日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−340502(P2005−340502)
【出願日】平成17年11月25日(2005.11.25)
【出願人】(000001122)株式会社日立国際電気 (5,007)
【出願人】(303059071)独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構 (64)
【Fターム(参考)】