説明

移動端末、距離測定方法

【課題】デジタル放送送信所から移動端末までの距離を容易に算出する。
【解決手段】位置が既知であるデジタル放送送信所から送信されているデジタル放送波を受信し、受信されるデジタル放送波に含まれている番組時刻基準値情報に基づき、デジタル放送送信所から自端末までの距離を算出する。第1の地点に自端末が位置していた時における距離算出結果と、第2の地点に自端末が位置していた時における距離算出結果とを記憶しておき、その記憶内容に基づき、第1の地点と第2の地点との距離を算出する。
【効果】2つの地点の間に、工事現場や路上駐車など障害物があると適切な測距が実現できないことがあるが、そういった状況下においてもそれら2つの地点の距離を算出することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は移動端末、距離測定方法に関し、特にデジタル放送送信所から移動端末の距離を算出する移動端末、距離測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
地上デジタル放送の電波を受信し、地上デジタル放送局とGPS受信機との距離を推定する技術が知られている(例えば、特許文献1)。
特許文献1では、送信時刻と受信時刻とを基に、地上デジタル放送局とGPS受信機間の距離を算出している。
【特許文献1】特開2005−221331号公報(段落[0062])
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上述した特許文献1では、フレームの送信時刻とその受信時刻との差すなわちフレームの到着時間に光速を掛け算することによって、放送局からの距離を推定している。
しかしながら、距離の算出に必要な送信時刻については、受信側では認識できない。送信時刻を受信側で認識するには、送信側と受信側との時刻合わせが必要であると共に、送信時刻に関する情報を送信側で挿入する必要がある。このように、特許文献1に記載の技術を採用する場合、時刻合わせを行うための構成および送信時刻を挿入するための構成を送信側に設ける必要があり、その実現は困難である。
本発明は上述した従来技術の問題点を解決するためになされたものであり、その目的はデジタル放送送信所から移動端末までの距離を容易に算出することのできる移動端末、距離測定方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の請求項1による移動端末は、位置が既知であるデジタル放送送信所から送信されているデジタル放送波を受信する受信手段と、前記受信手段によって受信されるデジタル放送波に含まれている番組時刻基準値情報に基づき、前記デジタル放送送信所から自端末までの距離を算出する距離算出手段とを含むことを特徴とする。
この構成によれば、地上デジタルテレビジョン放送の部分受信(ワンセグ放送受信)の放送方式を利用して、通常のテレビジョン放送よりも極めて小さい特定のエリアに限定して独自のコンテンツを放送のように送信する「ワンセグメント・ローカルサービス」の送信所までの距離が算出でき、バス停や駅などの通過ポイントごとにその設備が構築されていた場合には、目的地のバス停や駅まで、「あとどの程度の距離(=何分後に到着)」という目安を知ることが可能となる。
【0005】
本発明の請求項2による移動端末は、請求項1において、前記距離算出手段は、前記デジタル放送波から、前記番組時刻基準値情報に比例するシステムタイムクロックを自端末内で再生し、この再生システムタイムクロックに電波伝搬速度を乗算することによって、前記デジタル放送送信所から自端末までの距離を算出することを特徴とする。
プログラム参照時刻と自端末内部のシステムタイムクロックとの位相差すなわち電波伝搬時間に電波伝搬速度を乗算することにより、デジタル放送送信所から自端末までの距離を算出することができる。
【0006】
本発明の請求項3による移動端末は、請求項2において、前記距離算出手段は、前記デジタル放送送信所の内部クロックに自端末内部のシステムタイムクロックを同期させるための位相同期回路(PLL)を構成するカウンタを含み、前記カウンタの出力から前記システムタイムクロックを導出することを特徴とする。
ハードウェアの大幅なる変更や追加を施さずとも、位相同期回路のカウンタの出力を利用することにより、所要の信号を取り出し、自端末までの距離を算出することができる。
【0007】
本発明の請求項4による移動端末は、請求項1から請求項3までのいずれか1項において、前記デジタル放送送信所は、自端末の通過ポイントごとに設けられ、前記距離算出手段が、各ポイントから自端末までの距離を算出する測定することを特徴とする。
バス停や駅などの通過ポイントごとに、目的地のバス停や駅まで、「あとどの程度の距離(=何分後に到着)」という目安を知ることが可能となる。
【0008】
本発明の請求項5による移動端末は、請求項1から請求項3までのいずれか1項において、第1の地点に自端末が位置していた時における前記デジタル放送送信所から自端末までの距離算出結果と、第2の地点に自端末が位置していた時における前記デジタル放送送信所から自端末までの距離算出結果とを記憶する記憶手段(例えば、図1中の記憶部14に対応)を更に含み、前記記憶手段の記憶内容に基づき、前記第1の地点と前記第2の地点との距離を算出することを特徴とする。
2つの地点の間に、工事現場や路上駐車など障害物があると適切な測距が実現できないことがあるが、そういった状況下においてもそれら2つの地点の距離を算出することができる。
【0009】
本発明の請求項6による距離測定方法は、位置が既知であるデジタル放送送信所から送信されているデジタル放送波を動通信端末において受信する受信ステップ(例えば、図4中のステップS31に対応)と、前記受信ステップにおいて受信されたデジタル放送波に含まれている番組時刻基準値情報に基づき、前記デジタル放送送信所から移動端末までの距離を算出する距離算出ステップ(例えば、図4中のステップS32に対応)とを含むことを特徴とする。
【0010】
この方法によれば、地上デジタルテレビジョン放送の部分受信の放送方式を利用して、通常のテレビジョン放送よりも極めて小さい特定のエリアに限定して独自のコンテンツを放送のように送信する「ワンセグメント・ローカルサービス」の送信所までの距離が算出でき、バス停や駅などの通過ポイントごとにその設備が構築されていた場合には、目的地のバス停や駅まで、「あとどの程度の距離(=何分後に到着)」という目安を知ることが可能となる。
【0011】
本発明の請求項7による距離測定方法は、請求項6において、第1の地点に自端末が位置していた時における前記デジタル放送送信所から自端末までの距離算出結果と、第2の地点に自端末が位置していた時における前記デジタル放送送信所から自端末までの距離算出結果とを記憶する記憶ステップ(例えば、図7中のステップS63に対応)を更に含み、前記記憶ステップにおける記憶内容に基づき、前記第1の地点と前記第2の地点との距離を算出することを特徴とする。
2つの地点の間に、工事現場や路上駐車など障害物があると適切な測距が実現できないことがあるが、そういった状況下においてもそれら2つの地点の距離を算出することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、位置が既知であるデジタル放送送信所から送信されているデジタル放送波を受信し、その放送波に含まれている番組時刻基準値情報に基づき、デジタル放送送信所から自端末までの距離を算出することにより、地上デジタルテレビジョン放送の部分受信(ワンセグ放送受信)の放送方式を利用して、通常のテレビジョン放送よりも極めて小さい特定のエリアに限定して独自のコンテンツを放送のように送信する「ワンセグメント・ローカルサービス」の送信所までの距離が算出でき、バス停や駅などの通過ポイントごとにその設備が構築されていた場合には、目的地のバス停や駅までの距離の目安を知ることができる。
【0013】
また、2つの地点それぞれに自端末が位置していた時におけるデジタル放送送信所から自端末までの距離算出結果をそれぞれ記憶しておき、それら記憶内容に基づき、2つの地点の距離を算出することにより、2つの地点の間に、工事現場や路上駐車など障害物があると適切な測距が実現できないことがあるが、そういった状況下においてもそれら2つの地点の距離を算出できる。
【0014】
さらに、デジタル放送送信所の内部クロックに自端末内部のシステムタイムクロックを同期させるための位相同期回路(PLL)を構成するカウンタの出力からシステムタイムクロックを導出し、この再生システムタイムクロックに電波伝搬速度を乗算することによって、デジタル放送送信所から自端末までの距離を算出することにより、ハードウェアの大幅なる変更や追加を施さずに、簡潔な構成で、所要の信号を取り出し、自端末までの距離を算出することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照して説明する。なお、以下の説明において参照する各図では、他の図と同等部分は同一符号によって示されている。
(移動端末の構成)
図1は、本発明の実施形態による移動端末の構成例を示すブロック図である。同図において、本例の移動端末10は、他の装置との間で信号を送受信するための通信部11と、図示せぬデジタル放送送信所から送信されてくる放送波を受信する放送受信部12と、各種情報を表示する表示部13と、各種情報を記憶する記憶部14と、この端末のユーザが操作する操作部15と、各部を制御する制御部16とを含み、これら各部が信号を相互に授受できるようにバスによって接続された構成になっている。
【0016】
記憶部14は、後述するように、第1の地点および第2の地点に自端末が位置していた時におけるデジタル放送送信所から自端末までの距離算出結果を記憶する機能を有している。
この移動端末10は、例えば、周知の地上デジタルテレビジョン放送の部分受信(ワンセグ放送受信)機能付きの携帯電話機であるが、その機能を有していれば携帯電話機に限定されるものではない。
【0017】
(放送受信部)
一般に、放送番組は、送信側からの距離に関係なく、番組の開始時刻に合わせて表示することが求められる。デジタル放送では、MPEG(Moving Picture Experts Group)システムが採用されている。デジタル受信機である移動端末では、ビデオの同期信号は伝送されないため、基本クロックである27MHzのクロックを再生し、そこから分周して同期信号が生成される。
【0018】
送信側であるデジタル放送送信所では、番組を送信する際のクロックが発生する値を所定間隔でサンプリングした情報であるPCR(Program Clock Reference :番組時刻基準値情報)が、MPEG−2 TS(トランスポートストリーム)に多重されて送信される。このPCRデータは、送信側と受信側とで、クロックを同期させるために、TSのパケットに、一定の周期で重畳される。受信側では、送信側の内部クロック(System Time Clock;システムタイムクロック)に、受信側の内部クロック(システムタイムクロック)を合わせるために、そのPCRデータを利用してPLL(Phase Locked Loop)で同期をかけている。
【0019】
図2(a)は、TSに、PCRが多重化された状態を概念的に示す図である。同図に示されているように、PCRは、送信側から受信側へ、一定の周期で重畳されて伝送される。
図2(b)は、図1中の放送受信部12の内部構成のうち、本発明に関連する部分を示す図であり、PLLにより送信側の内部クロック(システムタイムクロック)に、受信側の内部クロック(システムタイムクロック)を同期させるための構成が示されている。
【0020】
同図において、放送受信部12には、入力される制御電圧値によって発振周波数が変化する電圧制御発振器121と、この電圧制御発振器121の出力をカウントするカウンタ122と、このカウンタ122の出力である再生STC値とTSのPCR中のSTC値とを比較する比較器123と、この比較器123の比較結果を入力とし、電圧制御発振器121へ制御電圧を与えるフィルタ124とが設けられている。電圧制御発振器121の出力は、移動端末内部のシステムタイムクロックとなる。
【0021】
フィルタ124は低域通過フィルタであり、このフィルタ124によって高周波成分が除去される。高周波成分が除去されることにより、再生STC値とTSのPCR中のSTC値との差に応じた電圧値が電圧制御発振器121に入力される。これにより、カウンタ122の出力である再生STC値とTSのPCR中のSTC値との差つまりデジタル放送送信所から送信される電波の到達時間に応じて、電圧制御発振器121の発振周波数が制御されることになる。
【0022】
以上の構成において、一定周期で送られてくる初めのPCRデータ中のSTC値がカウンタ122にロード(Load)される。そして、TS中のPCR中のSTC値と受信側のシステムタイムクロックでカウントされたカウンタ値(再生STC値)を比較し、その差分が0(ゼロ)になるように制御をかける。その結果、送信側のクロックに対して、ある範囲内の精度でロックがかかることになる。これにより、デジタル放送送信所のシステムクロックに、移動端末内部のシステムタイムクロックを同期させることができる。
【0023】
ここで、デジタル放送の受信機である移動端末の位置がデジタル放送送信所から遠くなればなるほど、PCR到着時間が長くなる。よって、受信側内部のシステムタイムクロックである再生STC値は、PCR到着時間と比例する関係になる。このことから、図2中のカウンタ122の出力から再生STC値を得ることにより、PCR到着時間が判明する。再生STC値とPCRが到着する時間との比例関係は、その移動端末において常に一定である。従って、移動端末の再生STC値とPCR到着時間との関係式を予め知っておくことにより、端末が移動して再生STC値が変動していても、PCR到着時間を知ることが可能である。
【0024】
したがって、デジタル放送送信所から移動端末までの距離は、式(1)のようになる。すなわち、
距離L = 電波伝搬速度 × 時間
= 30万[km/s] × PCR到達時間 …(1)
であるから、受信機である移動端末とデジタル放送送信所との距離Lを算出することができる。
ここで、図3に示されているように、上記の距離Lは、移動端末10とデジタル放送送信所50の電波送信部分との直線距離である。移動端末10とデジタル放送送信所50との高低差をHとすると、移動端末10とデジタル放送送信所50との地面Gに平行な経路の距離L’は、式(2)のようになる。すなわち、
距離L’=(L2+H21/2 …(2)
である。
【0025】
(距離の算出処理)
図4を参照して、本例の移動端末による距離算出処理について説明する。同図において、移動端末は、デジタル放送波を受信する(ステップS31)。受信したデジタル放送波には、上述したPCRが挿入されている。このPCRと、移動端末内部のシステムタイムクロックが生成するカウント値とを比較して端末内部のシステムタイムクロックの速度を調整する。これにより、移動端末は、デジタル放送送信所との同期を確立する。
そして、デジタル放送送信所から移動端末までの距離が、上記式(1)によって算出される(ステップS32)。この算出された距離は、必要に応じて表示部に出力されて表示される(ステップS33)。
【0026】
このように距離を算出することにより、地上デジタルテレビジョン放送の部分受信(ワンセグ)の放送方式を利用して、通常のテレビジョン放送よりも極めて小さい特定のエリアに限定して独自のコンテンツを放送のように送信する「ワンセグメント・ローカルサービス」の送信所から自端末までの距離が算出できる。よって、バス停や駅などの通過ポイントごとにその設備が構築されていた場合には、目的地のバス停や鉄道駅までの距離の目安を知ることができる。
【0027】
例えば、図5に示されているように、鉄道駅40にデジタル放送送信所が設けられていれば、電車41などに乗って移動中に、移動端末からデジタル放送送信所までの距離を算出できれば、その鉄道駅40までの距離の目安を知ることができる。なお、この鉄道駅40にデジタル放送送信所が設けられている場合、その放送波の届くエリア42内に限り、距離の測定を行うことができる。
なお、「ワンセグメント・ローカルサービス」については、webページ「エリア限定のワンセグサービスを実施する方々へ」社団法人デジタル放送推進協会(URL;http://www.dpa.or.jp/corp/1seg_area.html、2008年9月1日検索)に開示されている。
【0028】
(2つの地点間の距離の算出)
ところで、デジタル放送送信所から移動端末までの距離算出を2つの地点において行うことにより、それら2つの地点A−B間の距離を算出することができる。例えば、図6を参照すると、第1の地点Aにおいてデジタル放送送信所50から移動端末までの距離を算出することにより、デジタル放送送信所50から第1の地点Aまでの距離Laを算出することができる。この算出された距離Laの値は、移動端末内の記憶部に記憶しておく。また、第1の地点Aにおいて、デジタル放送送信所50と第2の地点Bとのなす角度θaを測定しておく。
【0029】
次に、第1の地点Aとは別の地点である第2の地点Bにおいてデジタル放送送信所50から移動端末までの距離を算出することにより、デジタル放送送信所50から第2の地点Bまでの距離Lbを算出することができる。この算出された距離Lbの値は、移動端末内の記憶部に記憶しておく。また、第2の地点Bにおいて、デジタル放送送信所50と第1の地点Aとのなす角度θbを測定しておく。
【0030】
以上により、移動端末内の記憶部には、デジタル放送送信所50から第1の地点Aまでの距離La、デジタル放送送信所50から第2の地点Bまでの距離Lb、上記角度θa、上記角度θbに基づき、下記の式(3)によって、地点A−地点B間の距離を算出できる。
地点A−地点B間の距離=La×cosθa+Lb×cosθb …(3)
地点Aと地点Bとの間の距離を測る際に、途中に工事現場51や路上駐車など障害物があると適切な測距が実現できないことがあるが、そういった状況下においても本発明によれば地点Aと地点Bとの間の距離を算出することが可能となる。
【0031】
なお、地点A、地点Bで各々角度θa、θbを測定するには、周知のトランシット(測量機)などを用いればよい。ここで、地点Aと地点Bとの間に障害物がある場合の角度測定について図7を参照して説明する。斜視図である図7(a)を参照すると、地点Aと地点Bとの間で道路工事が行われており、障害物Sが存在している。この場合、平面図である図7(b)を参照すると、地点Aから地点Bを直接見通すことはできない。この場合、図7(c)のように、地点Bの鉛直線上に見通し可能な地点B’を見出し、地点A−地点B’間を結ぶ直線を地点A−地点B間を結ぶ直線とみなして、デジタル放送電波到来方向の角度θaを測定すればよい。なお、上記のように道路工事による障害物が存在する場合に限らず、地点Aと地点Bとの間に河川が存在する場合も同様に測定することができる。
【0032】
トランシット(測量機)を用いて上記のように角度を測定する場合、例えば、以下のように、電波到来方向を定める。すなわち、パラボラアンテナやヘリカルアンテナのように、所定方向に水平面・指向性のあるアンテナを用いて電界強度が最も高くなる方向にアンテナを向けることによってその電波到来方向を知ることができる。図8には電波到来方向とアンテナの向きとの関係が示されている。同図(a)の場合は電波到来方向である破線矢印とアンテナの指向性パターンのメインローブMとがずれている。これに対し、同図(b)の場合は電波到来方向である破線矢印とアンテナの指向性パターンのメインローブMとが一致している。このため、同図(a)の場合の受信電界強度E1よりも、同図(b)の場合の受信電界強度E2の方が大である。つまり、電界強度が最も高くなる方向が電波到来方向となるので、その方向にアンテナを向けることによってその電波到来方向を知ることができる。なお、ワンセグの周波数から考慮すれば、例えば、ヘリカルアンテナが適切なアンテナの1つと考えられる。
【0033】
また、無指向性のアンテナとアレイアンテナとを用いて、電界強度を監視し、方位磁石によって最適な電波到来方向を検出・表示する方法が特開2005−109530号公報に示されている。同じ特性を持つアンテナをいくつか並べたものをアレーアンテナと呼び、アレーアンテナを使う際に各々のアンテナの位相差を比較・検出することによって、アンテナ指向性を特定の方向だけに向けることができる。
このように放送送信所の電波到来方向は、周知技術を用いて知ることが可能であることから、地点Aにおいて、放送の電波到来方向から、測位対象となる地点Bを見通すように、上記のようにトランシットなどを用いることによって、地点Aからの角度θaを測定することができる。同様に地点Bにおいても同様の手段によって角度θbを測定することができる。
【0034】
図9を参照して、上記の場合の距離算出処理について説明する。同図において、移動端末は、デジタル放送波を受信する(ステップS61)。受信したデジタル放送波には、上述したPCRが挿入されている。このPCRと、移動端末内部のシステムタイムクロックが生成するカウント値とを比較して端末内部のシステムタイムクロックの速度を調整する。これにより、移動端末は、デジタル放送送信所との同期を確立する。
【0035】
そして、デジタル放送送信所から移動端末までの距離が、上記式(1)によって算出される(ステップS62)。この算出された距離の値は、移動端末内の記憶部に記憶される(ステップS63)。以上の距離算出は、2つの地点について行われ(ステップS64:No)、2つの地点についての距離算出が完了後(ステップS64:Yes)、それら2つの地点間の距離が上記式(3)によって算出される(ステップS65)。
この算出された距離は、表示部に出力されて表示される(ステップS66)。
【0036】
(距離測定方法)
上述した移動端末においては、以下のような距離測定方法が採用されている。すなわち、位置が既知であるデジタル放送送信所から送信されているデジタル放送波を動通信端末において受信する受信ステップ(図4中のステップS31に対応)と、上記受信ステップにおいて受信されたデジタル放送波に含まれている番組時刻基準値情報に基づき、上記デジタル放送送信所から移動端末までの距離を算出する距離算出ステップ(図4中のステップS32に対応)とを含むことを特徴とする距離測定方法が採用されている。
【0037】
この方法によれば、地上デジタルテレビジョン放送の部分受信の放送方式を利用して、通常のテレビジョン放送よりも極めて小さい特定のエリアに限定して独自のコンテンツを放送のように送信する「ワンセグメント・ローカルサービス」の送信所までの距離が算出でき、バス停や駅などの通過ポイントごとにその設備が構築されていた場合には、目的地のバス停や駅まで、「あとどの程度の距離(=何分後に到着)」という目安を知ることが可能となる。
【0038】
また、第1の地点に自端末が位置していた時における上記デジタル放送送信所から自端末までの距離算出結果と、第2の地点に自端末が位置していた時における上記デジタル放送送信所から自端末までの距離算出結果とを記憶する記憶ステップ(例えば、図9中のステップS63に対応)を更に含み、上記記憶ステップにおける記憶内容に基づき、上記第1の地点と上記第2の地点との距離を算出することを特徴とする距離測定方法が採用されている。
この方法によれば、2つの地点の間に、工事現場や路上駐車など障害物があると適切な測距が実現できないことがあるが、そういった状況下においてもそれら2つの地点の距離を算出することができる。
【0039】
(まとめ)
位置が既知であるデジタル放送送信所から送信されているデジタル放送波に含まれている番組時刻基準値情報に基づき、デジタル放送送信所から自端末までの距離を算出することにより、地上デジタルテレビジョン放送の部分受信(ワンセグ放送受信)の放送方式を利用して、「ワンセグメント・ローカルサービス」の送信所までの距離が算出でき、バス停や駅などの通過ポイントごとにその設備が構築されていた場合には、目的地のバス停や駅までの距離の目安を知ることができる。
2つの地点それぞれに自端末が位置していた時におけるデジタル放送送信所から自端末までの距離算出結果をそれぞれ記憶しておき、それら記憶内容に基づき、2つの地点の距離を算出することにより、2つの地点の間に、障害物がある状況下においてもそれら2つの地点の距離を算出することができる。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明は、デジタル放送送信所から自端末までの距離を算出する場合に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の実施形態による移動端末の構成例を示すブロック図である。
【図2】(a)はMPEG−2 トランスポートストリームにPCRが多重化された状態を概念的に示す図、(b)は図1中の放送受信部12の内部構成のうち、本発明に関連する部分を示す図である。
【図3】高低差を考慮した場合の距離算出を説明するための図である。
【図4】移動端末における距離算出処理を示すフローチャートである。
【図5】移動端末において距離を算出することによる効果を説明するための図である。
【図6】移動端末における、2つの地点間の距離算出を説明するための図である。
【図7】2つの地点間に障害物がある場合の角度測定を説明するための図である。
【図8】電波到来方向とアンテナの向きとの関係を示す図である。
【図9】図6の場合の距離算出処理を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0042】
10 移動端末
11 通信部
12 放送受信部
13 表示部
14 記憶部
15 操作部
16 制御部
40 鉄道駅
41 電車
42 エリア
50 デジタル放送送信所
51 工事現場
121 電圧制御発振器
122 カウンタ
123 比較器
124 フィルタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
位置が既知であるデジタル放送送信所から送信されているデジタル放送波を受信する受信手段と、前記受信手段によって受信されるデジタル放送波に含まれている番組時刻基準値情報に基づき、前記デジタル放送送信所から自端末までの距離を算出する距離算出手段とを含むことを特徴とする移動端末。
【請求項2】
前記距離算出手段は、前記デジタル放送波から、前記番組時刻基準値情報に比例するシステムタイムクロックを自端末内で再生し、この再生システムタイムクロックに電波伝搬速度を乗算することによって、前記デジタル放送送信所から自端末までの距離を算出することを特徴とする請求項1に記載の移動端末。
【請求項3】
前記距離算出手段は、前記デジタル放送送信所の内部クロックに自端末内部のシステムタイムクロックを同期させるための位相同期回路を構成するカウンタを含み、前記カウンタの出力から前記システムタイムクロックを導出することを特徴とする請求項2に記載の移動端末。
【請求項4】
前記デジタル放送送信所は、自端末の通過ポイントごとに設けられ、前記距離算出手段は、各ポイントから自端末までの距離を算出する測定することを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の移動端末。
【請求項5】
第1の地点に自端末が位置していた時における前記デジタル放送送信所から自端末までの距離算出結果と、第2の地点に自端末が位置していた時における前記デジタル放送送信所から自端末までの距離算出結果とを記憶する記憶手段を更に含み、前記記憶手段の記憶内容に基づき、前記第1の地点と前記第2の地点との距離を算出することを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の移動端末。
【請求項6】
位置が既知であるデジタル放送送信所から送信されているデジタル放送波を動通信端末において受信する受信ステップと、前記受信ステップにおいて受信されたデジタル放送波に含まれている番組時刻基準値情報に基づき、前記デジタル放送送信所から移動端末までの距離を算出する距離算出ステップとを含むことを特徴とする距離測定方法。
【請求項7】
第1の地点に自端末が位置していた時における前記デジタル放送送信所から自端末までの距離算出結果と、第2の地点に自端末が位置していた時における前記デジタル放送送信所から自端末までの距離算出結果とを記憶する記憶ステップを更に含み、前記記憶ステップにおける記憶内容に基づき、前記第1の地点と前記第2の地点との距離を算出することを特徴とする請求項6に記載の距離測定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−109432(P2010−109432A)
【公開日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−276687(P2008−276687)
【出願日】平成20年10月28日(2008.10.28)
【出願人】(392026693)株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモ (5,876)
【Fターム(参考)】