説明

移動装置

【課題】
バネを用いたバンパセンサであると、バネの圧縮の特性はばらつきが大きいため、接触感度が常に一定とならないという問題がある。ここで、カバーの弾性を用いる方法が考えられるが、変形を大きく取れるよう剛性を低くすると、局所的に変形が起こり、また、剛性を高めるとほとんど変形が起こらず、バンパセンサの感度が低くなってしまうという問題がある。
【解決手段】
本発明の移動装置は、本体の外周にバンパを備え、そのバンパの剛性に異方性を付与し、さらにそのバンパは本体に回動自在に取り付けられたアームの端に取り付けられ、そのアームの回転を検知しバンパと障害物が接触したことを判断する検出装置を備えた移動装置とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接触による障害物検出手段を有する移動装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自律にて運転される走行台車は安全性を重視して全方向への接触を感知可能なバンパスイッチが取り付けられている。例えば、特許文献1には枠状に構成されたバンパ,クランク,バネ,センサにより障害物の接触を検知可能な無人搬送車の安全装置が示されている。
【0003】
【特許文献1】特開昭62−232009号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前述の方法によれば、バンパセンサにバネを用いているが、バネの圧縮の特性はばらつきが大きいため、接触感度が常に一定とならないという問題がある。ここで、カバーの弾性を用いる方法が考えられるが、変形を大きく取れるよう剛性を低くすると、局所的に変形が起こり、また、剛性を高めるとほとんど変形が起こらず、バンパセンサの感度が低くなってしまうという問題がある。
【0005】
本発明の目的は、正面,側面,回転中のどの状態においても移動装置と障害物との接触を感度よく検出し、全方向に対してのバンパセンサを部品点数が少ない簡素な構造で実現した移動装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的は、移動機能を備えた本体と、この本体の周囲を囲うように離間して接地された弾性変形可能なバンパと、このバンパと前記本体とを複数箇所で係合するアームと、このアームの回転を検知する検知手段とを備えた移動装置において、前記アームは前記本体側に対して回動自在に取り付けられ、前記バンパ側では剛に接続されてなり、前記バンパが障害物と接触することにより前記バンパの変形が前記アームの回転に変換され、この回転を前記検知手段で検出することにより達成される。
【0007】
また上記目的は、前記アームと前記バンパとの接続部の位置関係は左右対称及び前後対称であり、かつ前記アームと前記バンパとの接続部は前記アームと前記本体との接続部よりも前記本体中央側で、前記本体中央を通る進行方向に対して直角の線よりも前にあって前記本体より外側に張り出していことにより達成される。
【0008】
また上記目的は、前記バンパを前記アームと前記バンパの4つの接続部で区切り、移動装置の進行方向を前とすると前後の前記カバーは外に凸、左右の前記バンパの部分の形状は内側に凸となっていることにより達成される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、正面,側面,回転中のどの状態においても移動装置と障害物との接触を感度よく検出し、全方向に対してのバンパセンサを部品点数が少ない簡素な構造で実現した移動装置を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の一実施例を図1から図7を用いて説明する。
【実施例1】
【0011】
図1は本発明の実施例を備えた移動装置の全体構成を説明する斜視図である。
【0012】
図1において、移動装置1は装置本体2と、この装置本体2の下部に移動手段3を備えており、装置本体2と移動手段3の周囲に前方バンパ4,側方バンパ5R,5L,後方バンパ6を少なくとも備えている。
【0013】
移動手段3は移動装置1を移動させる手段であり、例えばモータにより駆動される車輪でも良いし、クローラでも良い。また、本発明の移動手段3はこれらに限られるものではない。
【0014】
図2は本発明のバンパの概略構成図である。
図2において、本発明の移動装置1は、装置本体2と、前記装置本体2との全周に渡って空隙を有し、枠状に形成される前方バンパ4,側方バンパ5R,5L,後方バンパ6と、前記装置本体2に回転検知手段8FR,8FL,8RR,8RLを経由してZ軸周りに端部を回動自在に取り付けられ、その長手方向逆端は前記前方バンパ4,前記側方バンパ5R,5L,前記後方バンパ6に剛接されるセンサアーム7FR,7FL,7RR,7RLとからなる。また、前記センサアーム7FR,7FL,7RR,7RLは、必ずしも回転検知手段8FR,8FL,8RR,8RLを経由して前記装置本体2に接続されなくてもよく、前記回転検知手段8FR,8FL,8RR,8RLは前記センサアーム7FR,7FL,7RR,7RLと前記装置本体2との相対回転を検知できる場所ならばどこに配置しても良い。
【0015】
ここで、前記センサアーム7FR,7FL,7RR,7RLの接続角度について説明するが、前記センサアーム7FR,7FL,7RR,7RLと前記装置本体2との接続の関係は、左右前後に対称であるため、ここでは前記センサアーム7FRと全に装置本体2の接続の関係について説明する。前記センサアーム7FRは、一端を前記装置本体2に回転自在に取り付けられ、前記センサアーム7FRの回転中心よりも進行方向に対して後ろ側になるように前記前方バンパ4及び前記側方バンパ5Rに剛接される。
【0016】
前記前方バンパ4,前記側方バンパ5R,5L,前記後方バンパ6は、接触外力に対して弾性をもち変形可能な材質であれば自由に決定でき、例えば、前記移動装置1の重量や走行速度を考慮し適切に設定する。また、その形状は、直交する2軸の力の向きに対して、剛性を異ならせることを目的とし、前記側方バンパ5R,5Lにおいては、進行方向(Y軸方向)の変形を大きくとることを目的とし、A−A′に対して軸方向に荷重がかかったときに曲げが発生するよう、真直でなく内側に凸となる形状とした。
【0017】
ここで、外側に凸となる形状でも良いが、前記移動装置1の進行方向への投影面積を考慮し、内側に凸となる形状とした。前記前方バンパ4,前記後方バンパ6においては、横方向(X軸方向)の変形を大きく取ることを目的とし、外側に凸となる形状とした。内側に凸となる形状でも良いが、障害物に接触したときの巻き込みを考慮して、障害物に倣って接触力を逃がせるように外側に凸となる形状とした。また、前記側方バンパ5R,5LはA−A′に垂直な方向に対して曲がりばりを形成する。図3は曲がり梁のアスペクト比と、真直梁に垂直荷重をかけたときの変位を1としたときの曲がり梁の変位の関係である。
【0018】
アスペクト比が0近傍の場合は真直梁との変位に大差はないが、アスペクト比が大きくなると曲がり梁の変位は小さくなる。したがって、A−A′に垂直な方向に外力が加わったときには真直ばりであるときに比較し剛性が高く、内部の部品の損傷の可能性を低減でき、この効果は、前記前方バンパ4,前記後方バンパ6についても同様である。
【0019】
また、本実施例では、バンパを前記前方バンパ4と前記側方バンパ5R,5Lと前記後方バンパ6とで4部品により形成されているが、これらは全周を繋がった形で一体のものでもよく、前記装置本体2と前記センサアーム7FR,7FL,7RR,7RLとの接続点と、バンパとの接続点の位置関係が維持されていれば良い。
【0020】
前方バンパ4,前記側方バンパ5R,5L,前記後方バンパ6の変形からの復帰は、前方バンパ4,前記側方バンパ5R,5L,前記後方バンパ6の弾性を利用して復帰するため、バネ等の装置が必要なく、少ない部品数で安全装置を構成できる。
【0021】
前記回転検知手段8FR,8FL,8RR,8RLは、例えば回動変位を測定するポテンショメータやロータリエンコーダ等で構成しても良いし、初期角度から所定の角度だけ回転を生じた時に反応するタッチスイッチや光学式スイッチでも良い。前記センサアーム7FR,7FL,7RR,7RLは、ピンまたは蝶番のような一方向に限定されて回動するような継ぎ手であれば何でもよい。
【0022】
図4は本発明のバンパに進行方向からの外力が加わったときの動作を説明する横断面図である。
図4において、ここでは、説明のために弾性体である前記前方バンパ4を前方バンパバネ4SC,4SR,4SL,前記側方バンパ5Rを側方バンパバネ5SR,前記側方バンパ5Lを側方バンパバネ5SL,前記後方バンパ6を後方バンパバネ6SC,6SR,6SLの組み合わせで表記した。
【0023】
ここでは、進行方向から外力9が加わると、前記前方バンパバネ4SR,4SLが圧縮方向に変位し、さらに前記側方バンパバネ5SRと5SLも圧縮方向に変位するため、前記センサアーム7FRとカバーとの接続点及び前記センサアーム7FLとカバーとの接続点が後方に変位し、これに伴い前記センサアーム7FRは右回りに回動し、前記センサアーム7FLは左回りに回転し、前記回転検知手段8FR,8FLは前記センサアーム7FR,7FLの回転を検知し前記外力9が加わったと判断する。ここでの変形の様子を図8(b)に示す。図7(a)は、外力がかかっていない状態を示す図である。
【0024】
図5は、本発明のバンパに横方向からの外力が加わったときの動作を説明する横断面図である。
図5において、横方向から外力10が加わると、幾何学的な関係から前記センサアーム7FRと7RRは側方バンパバネ5SRを圧縮する方向に回転し、前記回転検知手段8FR,8RRは前記センサアーム7FR,7RRの回転を検知し前記外力10が加わったと判断する。ここでの変形の様子を図7(c)に示す。
【0025】
図6は、本発明の前記移動装置1が左旋回中においてバンパ角部に外力が加わったときの動作を説明する横断面図である。
図6において、外力11が加わると、前記前方バンパバネ4SRが圧縮方向に変位し、さらに前記側方バンパバネ5SRが圧縮方向に変位するため、前記センサアーム7FRとカバーとの接続点が後方に変位し、これに伴い前記センサアーム7FRは右回りに回動し、前記回転検知手段8FRは前記センサアーム7FRの回転を検知し前記外力11が加わったと判断する。ここでの変形の様子を図7(d)に示す。
【0026】
以上のように、本発明によれば、少ない自由度のバンパ系において、弾性体により過拘束を回避し、少ない部品点数で、全方位からの外力を検知できるバンパセンサを実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の実施例の移動装置の全体構成図である。
【図2】本発明のバンパの構成を示す一部の内容物を省略した横断面図である。
【図3】曲がり梁の変位について説明する図である。
【図4】本発明のバンパの動作を説明する横断面図である。
【図5】本発明のバンパの動作を説明する横断面図である。
【図6】本発明のバンパの動作を説明する横断面図である。
【図7】本発明のバンパの変形の様子を説明する横断面図である。
【符号の説明】
【0028】
1 移動装置
2 装置本体
3 移動手段
4 前方バンパ
4SC,4SL,4SR 前方バンパバネ
5R,5L 側方バンパ
5SL,5SR 側方バンパバネ
6 後方バンパ
6SC,6SL,6SR 後方バンパバネ
7,7FR,7FL,7RR,7RL センサアーム
8,8FR,8FL,8RR,8RL 回転検知手段
9,10,11 外力

【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動機能を備えた本体と、この本体の周囲を囲うように離間して接地された弾性変形可能なバンパと、このバンパと前記本体とを複数箇所で係合するアームと、このアームの回転を検知する検知手段とを備えた移動装置において、
前記アームは前記本体側に対して回動自在に取り付けられ、前記バンパ側では剛に接続されてなり、前記バンパが障害物と接触することにより前記バンパの変形が前記アームの回転に変換され、この回転を前記検知手段で検出することを特徴とする移動装置。
【請求項2】
請求項1記載の移動装置において、
前記アームと前記バンパとの接続部の位置関係は左右対称及び前後対称であり、かつ前記アームと前記バンパとの接続部は前記アームと前記本体との接続部よりも前記本体中央側で、前記本体中央を通る進行方向に対して直角の線よりも前にあって前記本体より外側に張り出していことを特徴とする移動装置。
【請求項3】
請求項1記載の移動装置において、
前記バンパを前記アームと前記バンパの4つの接続部で区切り、移動装置の進行方向を前とすると前後の前記カバーは外に凸、左右の前記バンパの部分の形状は内側に凸となっていることを特徴とした移動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−55331(P2010−55331A)
【公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−218955(P2008−218955)
【出願日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【出願人】(502129933)株式会社日立産機システム (1,140)
【Fターム(参考)】