説明

移動通信方法及び基地局

【課題】ヘッダ圧縮技術が用いられる移動通信システムにおいて、ハンドオーバ手順の完了後におけるオーバヘッド増大を抑制できるようにする。
【解決手段】ソース基地局eNB#1は、ソース基地局eNB#1からターゲット基地局eNB#2への無線端末UEのハンドオーバ手順の際に、無線端末UE宛てのヘッダ圧縮パケットをターゲット基地局eNB#2にフォワーディングする。ターゲット基地局eNB#2は、ハンドオーバ手順の際に、フォワーディングされたヘッダ圧縮パケットと、コアネットワークEPCからの無線端末UE宛てのヘッダ非圧縮パケットとを受信すると、該ヘッダ圧縮パケット及び該ヘッダ非圧縮パケットを使用して、該ヘッダ圧縮パケットのヘッダ圧縮レベルに対応するROHCコンテキストを生成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘッダ圧縮技術が用いられる移動通信システムの移動通信方法及び基地局に関する。
【背景技術】
【0002】
移動通信システムの標準化プロジェクトである3GPP(3rd Generation Partnership Project)では、より高速・大容量の通信を実現するために、LTE(Long Term Evolution)、及びLTEを高度化したLTE Advancedの仕様が策定されている。
【0003】
このような移動通信システムにおいては、無線区間を介して送受信するパケットにおけるヘッダの占める割合、すなわちオーバヘッドを低減するために、ヘッダ圧縮技術の一つであるROHC(Robust Header Compression)プロトコルが用いられる(非特許文献1参照)。ROHCプロトコルによれば、IP(Internet Protocol)、UDP(User Datagram Protocol)、RTP(Real-time Transport Protocol)等の様々な形式のパケットヘッダを最大で1バイトまで圧縮できる。
【0004】
ヘッダ圧縮技術では、無線端末及び基地局のそれぞれは、送受信するパケットに基づいてヘッダ関連情報を構築し、互いに共有するヘッダ関連情報を使用して、無線区間を介して送受信するパケットのヘッダ圧縮及び解凍を行う。このようなヘッダ圧縮技術では、無線端末及び基地局でヘッダ関連情報が構築されていくのに従って、ヘッダ圧縮レベルを順次上昇させることができる。ROHCプロトコルにおいてヘッダ関連情報は、ROHCコンテキストと称されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】3GPP TS 36.300 V10.1.0 (2010-09)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、第1の基地局(ソース基地局)から第2の基地局(ターゲット基地局)への無線端末のハンドオーバ手順を行うと、第1の基地局と無線端末との間でヘッダ関連情報が構築されていても、第2の基地局と無線端末との間でヘッダ関連情報の構築を最初からやり直す必要がある。
【0007】
このため、ヘッダ圧縮技術が用いられる移動通信システムにおいては、ハンドオーバ手順の完了後暫くはヘッダ圧縮レベルが低くなり、オーバヘッドが増大するという問題があった。
【0008】
そこで、本発明は、ヘッダ圧縮技術が用いられる移動通信システムにおいて、ハンドオーバ手順の完了後におけるオーバヘッド増大を抑制できる移動通信方法及び基地局を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決するために、本発明は以下のような特徴を有している。まず、本発明に係る移動通信方法の特徴は、ヘッダ圧縮技術が用いられる移動通信方法であって、第1の基地局(ソース基地局eNB#1)が、前記第1の基地局から第2の基地局(ターゲット基地局eNB#2)への無線端末(無線端末UE)のハンドオーバ手順の際に、前記無線端末宛てのヘッダ圧縮パケットを前記第2の基地局にフォワーディングするステップと、前記第2の基地局が、前記ハンドオーバ手順の際に、前記フォワーディングされたヘッダ圧縮パケットと、コアネットワーク(コアネットワークEPC)からの前記無線端末宛てのヘッダ非圧縮パケットとを受信すると、該ヘッダ圧縮パケット及び該ヘッダ非圧縮パケットを使用して、該ヘッダ圧縮パケットのヘッダ圧縮レベルに対応するヘッダ関連情報(ROHCコンテキスト)を生成するステップと、前記第2の基地局が、前記ハンドオーバ手順の完了後に、前記生成したヘッダ関連情報を使用して、前記コアネットワークから受信した前記無線端末宛てのヘッダ非圧縮パケットに対するヘッダ圧縮を行うとともに、該ヘッダ圧縮により得られたヘッダ圧縮パケットを前記無線端末に送信するステップと、を有することを要旨とする。
【0010】
このような特徴によれば、第2の基地局は、ハンドオーバ手順の際に、第1の基地局からのヘッダ圧縮パケットと、コアネットワークからのヘッダ非圧縮パケットとを使用して、該ヘッダ圧縮パケットのヘッダ圧縮レベルに対応するヘッダ関連情報を生成する。そして、第2の基地局は、ハンドオーバ手順の完了後において、ハンドオーバ手順の際に生成したヘッダ関連情報を使用して、コアネットワークから受信したヘッダ非圧縮パケットに対するヘッダ圧縮を行うとともに、該ヘッダ圧縮により得られたヘッダ圧縮パケットを無線端末に送信する。
【0011】
これにより、下りリンクについて、ハンドオーバ手順の前後においてヘッダ圧縮レベルを維持することができ、ハンドオーバ手順の完了後におけるオーバヘッド増大を抑制できる。
【0012】
本発明に係る移動通信方法の他の特徴は、上記特徴に係る移動通信方法において、前記ヘッダ関連情報を生成するステップは、前記フォワーディングされたヘッダ圧縮パケットのヘッダ圧縮レベルを特定するステップと、前記特定されたヘッダ圧縮レベルに基づき、前記コアネットワークから受信した前記無線端末宛ての1つのヘッダ非圧縮パケットから、固定されている値として分類されるべきパケットヘッダフィールドの各パラメータを取得する第1の取得ステップと、を含み、前記ヘッダ関連情報は、前記第1の取得ステップで取得された各パラメータを含むことを要旨とする。
【0013】
本発明に係る移動通信方法の他の特徴は、上記特徴に係る移動通信方法において、前記ヘッダ関連情報を生成するステップは、前記特定されたヘッダ圧縮レベルに基づき、前記コアネットワークから受信した前記無線端末宛ての複数のヘッダ非圧縮パケットを使用して、規則性を有する値として分類されるべきパケットヘッダフィールドの各パラメータの算出に使用する値を取得する第2の取得ステップをさらに含み、前記ヘッダ関連情報は、前記第2の取得ステップで取得された値をさらに含むことを要旨とする。
【0014】
本発明に係る移動通信方法の他の特徴は、上記特徴に係る移動通信方法において、前記ハンドオーバ手順の際に、前記無線端末が前記第1の基地局との間で使用していたヘッダ関連情報を保持させるための情報を、前記第1の基地局から前記無線端末に送信するステップと、前記無線端末が、前記第1の基地局から前記情報を受信した場合に、前記第1の基地局との間で使用していた前記ヘッダ関連情報を保持しながら前記ハンドオーバ手順を行うステップと、前記無線端末が、前記ハンドオーバ手順の完了後に、前記保持しているヘッダ関連情報を使用して、前記第2の基地局から受信した前記ヘッダ圧縮パケットに対するヘッダ解凍を行うステップと、をさらに有することを要旨とする。
【0015】
本発明に係る基地局の特徴は、ヘッダ圧縮技術が用いられる移動通信システム(移動通信システム1)の基地局(ターゲット基地局eNB#2)であって、他の基地局(ソース基地局eNB#1)及びコアネットワーク(コアネットワークEPC)との通信を行うネットワーク通信部(ネットワーク通信部120#2)と、無線端末(無線端末UE)との通信を行う無線通信部(無線通信部110#2)と、前記ネットワーク通信部及び前記無線通信部を制御する制御部(制御部140#2)と、を有し、前記制御部は、前記他の基地局から自局への前記無線端末のハンドオーバ手順の際に、前記他の基地局からの前記無線端末宛てのヘッダ圧縮パケットと、コアネットワークからの前記無線端末宛てのヘッダ非圧縮パケットとを前記ネットワーク通信部が受信すると、該ヘッダ圧縮パケット及び該ヘッダ非圧縮パケットを使用して、該ヘッダ圧縮パケットのヘッダ圧縮レベルに対応するヘッダ関連情報を生成し、前記ハンドオーバ手順の完了後に、前記生成したヘッダ関連情報を使用して、前記コアネットワークから受信した前記無線端末宛てのヘッダ非圧縮パケットに対するヘッダ圧縮を行うとともに、該ヘッダ圧縮により得られたヘッダ圧縮パケットを前記無線通信部から前記無線端末に送信する、よう制御することを要旨とする。
【0016】
本発明に係る移動通信方法の特徴は、ヘッダ圧縮技術が用いられる移動通信方法であって、第1の基地局(ソース基地局eNB#1)が、前記第1の基地局から第2の基地局(ターゲット基地局eNB#2)への無線端末(無線端末UE)のハンドオーバ手順の際に、前記無線端末からコアネットワーク(コアネットワークEPC)宛てのヘッダ非圧縮パケットを前記第2の基地局にフォワーディングするステップと、前記第2の基地局が、前記ハンドオーバ手順の際に、前記フォワーディングされたヘッダ非圧縮パケットと、前記無線端末からのヘッダ圧縮パケットとを受信すると、該ヘッダ非圧縮パケット及び該ヘッダ圧縮パケットを使用して、該ヘッダ圧縮パケットのヘッダ圧縮レベルに対応するヘッダ関連情報を生成するステップと、前記第2の基地局が、前記ハンドオーバ手順の完了後に、前記生成したヘッダ関連情報を使用して、前記無線端末から受信したヘッダ圧縮パケットに対するヘッダ解凍を行うとともに、該ヘッダ解凍により得られたヘッダ非圧縮パケットを前記コアネットワークに送信するステップと、を有することを要旨とする。
【0017】
このような特徴によれば、第2の基地局は、ハンドオーバ手順の際に、第1の基地局からのヘッダ非圧縮パケットと、無線端末からのヘッダ圧縮パケットと使用して、該ヘッダ圧縮パケットのヘッダ圧縮レベルに対応するヘッダ関連情報を生成する。そして、第2の基地局は、ハンドオーバ手順の完了後において、ハンドオーバ手順の際に生成したヘッダ関連情報を使用して、無線端末から受信したヘッダ圧縮パケットに対するヘッダ解凍を行うとともに、該ヘッダ解凍により得られたヘッダ非圧縮パケットをコアネットワークに送信する。
【0018】
これにより、上りリンクについて、ハンドオーバ手順の前後においてヘッダ圧縮レベルを維持することができ、ハンドオーバ手順の完了後におけるオーバヘッド増大を抑制できる。
【0019】
本発明に係る移動通信方法の他の特徴は、上記特徴に係る移動通信方法において、前記ヘッダ関連情報を生成するステップは、前記無線端末からの前記ヘッダ圧縮パケットのヘッダ圧縮レベルを特定するステップと、前記特定されたヘッダ圧縮レベルに基づき、前記第1の基地局からフォワーディングされた1つのヘッダ非圧縮パケットから、固定されている値として分類されるべきパケットヘッダフィールドの各パラメータを取得する第1の取得ステップと、を含み、前記ヘッダ関連情報は、前記第1の取得ステップで取得された各パラメータを含むことを要旨とする。
【0020】
本発明に係る移動通信方法の他の特徴は、上記特徴に係る移動通信方法において、前記ヘッダ関連情報を生成するステップは、前記特定されたヘッダ圧縮レベルに基づき、前記第1の基地局からフォワーディングされた複数のヘッダ非圧縮パケットを使用して、規則性を有する値として分類されるべきパケットヘッダフィールドの各パラメータの算出に使用する値を取得する第2の取得ステップをさらに含み、前記ヘッダ関連情報は、前記第2の取得ステップで取得された値をさらに含むことを要旨とする。
【0021】
本発明に係る移動通信方法の他の特徴は、上記特徴に係る移動通信方法において、前記ハンドオーバ手順の際に、前記無線端末が前記第1の基地局との間で使用していたヘッダ関連情報を保持させるための情報を、前記第1の基地局から前記無線端末に送信するステップと、前記無線端末が、前記第1の基地局から前記情報を受信した場合に、前記第1の基地局との間で使用していた前記ヘッダ関連情報を保持しながら前記ハンドオーバ手順を行うステップと、前記無線端末が、前記ハンドオーバ手順の完了後、前記保持しているヘッダ関連情報を使用して、前記第2の基地局に送信すべきヘッダ非圧縮パケットに対するヘッダ圧縮を行うとともに、該ヘッダ圧縮により得られたヘッダ圧縮パケットを前記第2の基地局に送信するステップと、をさらに有することを要旨とする。
【0022】
本発明に係る基地局の特徴は、ヘッダ圧縮技術が用いられる移動通信システムの基地局(ターゲット基地局eNB#2)であって、他の基地局(ソース基地局eNB#1)及びコアネットワーク(コアネットワークEPC)との通信を行うネットワーク通信部(ネットワーク通信部120#2)と、無線端末(無線端末UE)との通信を行う無線通信部(無線通信部110#2)と、前記ネットワーク通信部及び前記無線通信部を制御する制御部(制御部140#2)と、を有し、前記制御部は、前記他の基地局から自局への前記無線端末のハンドオーバ手順の際に、前記無線端末からコアネットワーク宛てのヘッダ非圧縮パケットを前記ネットワーク通信部が前記他の基地局から受信し、且つ前記無線端末からのヘッダ圧縮パケットを前記無線通信部が受信すると、該ヘッダ非圧縮パケット及び該ヘッダ圧縮パケットを使用して、該ヘッダ圧縮パケットのヘッダ圧縮レベルに対応するヘッダ関連情報を生成し、前記ハンドオーバ手順の完了後に、前記生成したヘッダ関連情報を使用して、前記無線端末から前記無線通信部が受信したヘッダ圧縮パケットに対するヘッダ解凍を行うとともに、該ヘッダ解凍により得られたヘッダ非圧縮パケットを前記ネットワーク通信部から前記コアネットワークに送信する、よう制御することを要旨とする。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、ヘッダ圧縮技術が用いられる移動通信システムにおいて、ハンドオーバ手順の完了後におけるオーバヘッド増大を抑制できる移動通信方法及び基地局を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の実施形態の移動通信システムの全体概略構成図である。
【図2】本発明の実施形態のROHCコンプレッサ及びROHCデコンプレッサを説明するための図である。
【図3】RTP/UDP/IPヘッダのパケットヘッダフィールドを示す図である。
【図4】ROHCコンテキストを説明するための図である。
【図5】ROHCプロトコルで規定されたヘッダ圧縮レベルを説明するための図である。
【図6】図6(a)は、本発明の実施形態のソース基地局の構成を示すブロック図であり、図6(b)は、本発明の実施形態のターゲット基地局eNB#2の構成を示すブロック図である。
【図7】本発明の実施形態の無線端末の構成を示すブロック図である。
【図8】本発明の実施形態のハンドオーバ手順の概要を説明するためのシーケンス図である。
【図9】本発明の実施形態の下りリンクに係るROHCコンテキスト生成動作の概要を説明するための図である。
【図10】本発明の実施形態の下りリンクに係るソース基地局の動作を示すフローチャートである。
【図11】本発明の実施形態の下りリンクに係るターゲット基地局の動作を示すフローチャートである。
【図12】本発明の実施形態の上りリンクに係るROHCコンテキスト生成動作の概要を説明するための図である。
【図13】本発明の実施形態の上りリンクに係るソース基地局の動作を示すフローチャートである。
【図14】本発明の実施形態の上りリンクに係るターゲット基地局の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図面を参照して、本発明の実施形態について、(1)移動通信システムの概要、(2)内部ブロック構成、(3)ハンドオーバ手順の概要、(4)下りリンクに係るROHCコンテキスト生成動作、(5)上りリンクに係るROHCコンテキスト生成動作、(6)実施形態の効果、(7)その他の実施形態の順に説明する。以下の実施形態における図面において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付す。
【0026】
(1)移動通信システムの概要
まず、本実施形態に係る移動通信システムの概要について、(1.1)移動通信システムの概略構成、(1.2)ROHCプロトコルの概要の順に説明する。
【0027】
(1.1)移動通信システムの概略構成
図1は、本実施形態に係る移動通信システム1の全体概略構成図である。移動通信システム1は、3GPPで仕様が策定されているLTE(Long Term Evolution)に基づいて構成されている。
【0028】
図1に示すように、移動通信システム1は、無線端末(UE: User Equipment)と、基地局(eNB: evolved Node-B)と、移動管理装置(MME: Mobility Management Entity)と、ゲートウェイ装置(S−GW: Serving Gateway)とを有する。
【0029】
複数の基地局eNBは、無線アクセスネットワーク(E-UTRAN: Evolved-UMTS Terrestrial Radio Access Network)を構成する。複数の移動管理装置MME及び複数のゲートウェイ装置S−GWは、コアネットワーク(EPC: Evolved Packet Core)を構成する。
【0030】
複数の基地局eNBのそれぞれは、無線端末UEにサービスを提供すべき通信エリアを形成する。該通信エリアは、最小エリア単位であるセルを1つ又は複数用いて構成される。
【0031】
無線端末UEは、ユーザが所持する無線通信装置であり、ユーザ装置とも称される。無線端末UEは、通信中において、サービング基地局(或いはサービングセル)の切り替え、すなわちハンドオーバを行うことができる。
【0032】
以下においては、ハンドオーバにおいて切り替え元になる基地局をソース基地局eNB#1と称し、切り替え先の基地局をターゲット基地局eNB#2と称する。なお、LTEはハードハンドオーバを採用しており、ハンドオーバ時においてソース基地局eNB#1からターゲット基地局eNB#2へのデータフォワーディングが行われる。
【0033】
互いに隣接する各基地局eNBは、基地局間通信のための論理インターフェイスであるX2インターフェイスを用いて通信可能である。隣接し合う基地局eNBは、X2インターフェイスを用いて、パケット管理やハンドオーバ制御等に用いられる制御信号を送受信する。
【0034】
基地局eNBはコアネットワークEPCに接続されている。基地局eNBは、コアネットワークEPCとの通信のための論理インターフェイスであるS1インターフェイスを用いて、コアネットワークEPC、具体的には、移動管理装置MME及びゲートウェイ装置S−GWと通信可能である。
【0035】
移動管理装置MMEは、主にユーザ認証やページング、他システムとの相互接続等を可能にするためのコントロールプレーン機能を実行する。移動管理装置MMEは、S1インターフェイスの一種であるS1-MMEインターフェイスを用いて制御信号を基地局eNBと送受信する。
【0036】
ゲートウェイ装置S−GWは、ユーザデータを転送するためのユーザプレーン機能を実行する。ゲートウェイ装置S−GWは、S1インターフェイスの一種であるS1-Uインターフェイスを用いてデータパケットを基地局eNBと送受信する。
【0037】
(1.2)ROHCプロトコルの概要
ROHCプロトコルは、音声通信やビデオストリームなどの連続したデータストリームの快適な送受信を目的としてRFC3095,3408,3843,4019,4362,4996,5225等で策定されており、IETF標準化技術として別途規定されている。また、ROHCプロトコルは、IP,UDP,RTPなど様々なパケットフォーマットに対応しており、各データパケットのヘッダ部の圧縮に使用される。
【0038】
図2は、ROHCコンプレッサ及びROHCデコンプレッサを説明するための図である。
【0039】
図2に示すように、無線端末UE及び基地局eNBは、無線区間を介して送受信するパケットにおけるヘッダの占める割合、すなわちオーバヘッドを低減するために、下りリンク及び上りリンクのそれぞれについてROHCプロトコル(RFC3095)を用いてヘッダ圧縮パケットを送受信する。なお、下りリンクとは、コアネットワークEPCから無線端末UEに向かう方向の通信を意味し、上りリンクとは、無線端末UEからコアネットワークEPCに向かう方向の通信を意味する。
【0040】
基地局eNBは、下りリンクについてはROHCコンプレッサの機能を有し、上りリンクについてはROHCデコンプレッサの機能を有する。無線端末UEは、下りリンクについてはROHCデコンプレッサの機能を有し、上りリンクについてはROHCコンプレッサの機能を有する。
【0041】
これに対し、基地局eNB及びゲートウェイ装置S−GWは、トンネリングプロトコルであるGTP−U(GPRS Tunneling Protocol for User Plane)プロトコルを用いてヘッダ非圧縮パケットを送受信する。
【0042】
図3は、RTP/UDP/IPヘッダのパケットヘッダフィールドを示す図である。
【0043】
図3に示すように、ROHCプロトコルでは、連続するパケット間におけるRTP/UDP/IPヘッダの整合性に着目し、ROHCコンプレッサは、ROHCコンテキストを使用して、固定されている値、及び推定可能な値(すなわち、規則性を有する値)の送信を省略し、推定可能な値を算出するための情報と、推定不可能でかつ毎回変わる情報とを送信する。
【0044】
「固定されている値」とは、IP versionなどである。「固定されている値」に分類される値は、システムなどに依存して、通信中はパラメータが固定される。そのため、一度通信が開始されると値が変更することはないため、各ROHC(UEとeNB)にてROHCコンテキストとしてこの情報を共有することで省略(圧縮)可能になる。
【0045】
「規則性を有する値」とは、タイムスタンプなどである。「規則性を有する値」に分類される値は、プロトコルに依存して、パラメータが規則正しく変化するという特徴を持つ。タイムスタンプは音声コーデックなどに依存して、パケットごとに等差数列を形成するようにパラメータが割り振られる。そのため、初期値及び増分など計算に必要なパラメータをROHCコンテキストとして共有できれば省略(圧縮)可能になる。
【0046】
「推定不可能な値」とは、UDPチェックサムなどである。ROHCによる圧縮は不可能とされており、圧縮できないフィールドを指す。
【0047】
ROHCコンプレッサは、圧縮レベルが低い状態では、固定されている値の送信を省略する。ROHCコンプレッサは、圧縮レベルが高い状態では、固定されている値に加え、推定可能な値の送信を省略する。ROHCデコンプレッサは、ヘッダ圧縮されたROHCパケット(ヘッダ圧縮パケット)を受信すると、ROHCコンテキストを使用して、送信が省略された値を補完することでヘッダ解凍を行う。
【0048】
図4は、ROHCコンテキストを説明するための図である。
【0049】
図4に示すように、ROHCコンテキストは、固定されている値として分類されるべきパケットヘッダフィールドの各パラメータからなる部分(Static chain partと称される)を含む。圧縮レベルが高い状態では、ROHCコンテキストは、規則性を有する値として分類されるべきパケットヘッダフィールドの各パラメータの算出に使用する値からなる部分(Dynamic chain partと称される)をさらに含む。ROHCコンプレッサ及びROHCデコンプレッサのそれぞれでROHCコンテキストが構築されていくのに従って、ヘッダ圧縮レベルを順次上昇させることができる。
【0050】
図5は、ROHCプロトコルで規定されたヘッダ圧縮レベルを説明するための図である。
【0051】
図5に示すように、ROHCプロトコルでは、3つの動作モードが用意されている。具体的には、単方向モード(以下、「Uモード」と称する)と、双方向楽観モード(以下、「Oモード」と称する)と、双方向高信頼モード(以下、「Rモード」と称する)が用意されている。UモードはROHCデコンプレッサからのフィードバック情報が得られない場合に適用され、Oモード及びRモードはROHCデコンプレッサからのフィードバック情報が得られる場合に適用される。
【0052】
Uモード、OモードおよびRモードのそれぞれにおいては、3つの圧縮状態(ヘッダ圧縮レベル)が規定されている。具体的には、初期化・リフレッシュ状態(IR状態)、一次圧縮状態(FO状態)、二次圧縮状態(SO状態)が規定されている。IR状態は、初期状態であり、ROHCコンプレッサではエラー後の回復時等にIR状態に遷移する。IR状態においては、ヘッダは圧縮されず、完全なヘッダを含むパケット(いわゆる、IRパケット)が送信される。FO状態は、ヘッダが一部圧縮されている状態であり、SO状態よりもヘッダ圧縮レベルの低い状態である。SO状態は、ヘッダ圧縮レベルが最も高い状態である。SO状態では、RTPシーケンス番号のみが送信される。なお、IR状態、FO状態、及びSO状態のそれぞれにおいては、複数段階のヘッダ圧縮レベルが規定されている。
【0053】
ROHCコンテキストが構築されていくのに従って、IR状態からFO状態、FO状態からSO状態に順次遷移する。しかし、ソース基地局eNB#1からターゲット基地局eNB#2への無線端末UEのハンドオーバ手順が行われると、ターゲット基地局eNB#2と無線端末UEとの間でROHCコンテキストの構築を最初からやり直す必要があるため、ハンドオーバ前においてFO状態又はSO状態で動作していても、ハンドオーバ後においてはIR状態に初期化されてしまい、オーバーヘッドが増大する。
【0054】
そこで、本実施形態では、ハンドオーバ手順の過程でターゲット基地局eNB#2がROHCコンテキストを生成することにより、ハンドオーバ後においてハンドオーバ前と同じ圧縮状態(ヘッダ圧縮レベル)を実現する。
【0055】
(2)内部ブロック構成
次に、移動通信システム1の内部ブロック構成について、(2.1)基地局の構成、(2.2)無線端末の構成の順に説明する。
【0056】
(2.1)基地局の構成
図6(a)は、ソース基地局eNB#1の構成を示すブロック図である。図6(a)に示すように、ソース基地局eNB#1は、無線通信部110#1と、ネットワーク通信部120#1と、記憶部130#1と、制御部140#1とを有する。
【0057】
無線通信部110#1は、アンテナを介して無線通信を行うように構成される。送信については、無線通信部110#1は、制御部140#1から入力されるベースバンド信号のアップコンバート及び増幅等を行って無線信号をアンテナから出力する。受信については、無線通信部110#1は、アンテナから入力される受信信号の増幅及びダウンコンバート等を行った後、ベースバンド信号を制御部140#1に出力する。
【0058】
ネットワーク通信部120#1は、コアネットワークEPC及びターゲット基地局eNB#2との通信を行う。具体的には、ネットワーク通信部120#1は、S1インターフェイスを用いて、ゲートウェイ装置S−GW及び移動管理装置MMEとの通信を行う。また、ネットワーク通信部120#1は、X2インターフェイスを用いて、ターゲット基地局eNB#2との基地局間通信を行う。
【0059】
記憶部130#1は、例えばメモリを用いて構成されており、制御部140#1による制御等に用いられる各種の情報を記憶すると共に、バッファとしても使用される。また、記憶部130#1は、ROHCコンテキストを記憶する。制御部140#1は、例えばCPUを用いて構成されており、ソース基地局eNB#1の各種の機能(無線通信部110#1やネットワーク通信部120#1等)を制御する。制御部140#1は、下りリンクについてはROHCコンプレッサとして機能し、上りリンクについてはROHCデコンプレッサとして機能する。
【0060】
図6(b)は、ターゲット基地局eNB#2の構成を示すブロック図である。図6(b)に示すように、ターゲット基地局eNB#2は、無線通信部110#2と、ネットワーク通信部120#2と、記憶部130#2と、制御部140#2とを有する。
【0061】
無線通信部110#2は、アンテナを介して無線通信を行うように構成される。送信については、無線通信部110#2は、制御部140#2から入力されるベースバンド信号のアップコンバート及び増幅等を行って無線信号をアンテナから出力する。受信については、無線通信部110#2は、アンテナから入力される受信信号の増幅及びダウンコンバート等を行った後、ベースバンド信号を制御部140#2に出力する。
【0062】
ネットワーク通信部120#2は、コアネットワークEPC及びソース基地局eNB#1との通信を行う。具体的には、ネットワーク通信部120#2は、S1インターフェイスを用いて、ゲートウェイ装置S−GW及び移動管理装置MMEとの通信を行う。また、ネットワーク通信部120#2は、X2インターフェイスを用いて、ソース基地局eNB#1との基地局間通信を行う。
【0063】
記憶部130#2は、例えばメモリを用いて構成されており、制御部140#2による制御等に用いられる各種の情報を記憶すると共に、バッファとしても使用される。また、記憶部130#2は、ROHCコンテキストを記憶する。制御部140#2は、例えばCPUを用いて構成されており、ソース基地局eNB#2の各種の機能(無線通信部110#2やネットワーク通信部120#2等)を制御する。制御部140#2は、下りリンクについてはROHCコンプレッサとして機能し、上りリンクについてはROHCデコンプレッサとして機能する。
【0064】
(2.2)無線端末の構成
図7は、無線端末UEの構成を示すブロック図である。図7に示すように、無線端末UEは、無線通信部210と、ユーザインターフェイス部220と、記憶部230と、制御部240と、バッテリ250とを有する。
【0065】
無線通信部210は、アンテナを介して基地局eNBとの無線通信を行うように構成される。送信については、無線通信部210は、制御部240から入力されるベースバンド信号のアップコンバート及び増幅等を行って無線信号をアンテナから出力する。受信については、無線通信部210は、アンテナから入力される受信信号の増幅及びダウンコンバート等を行った後、ベースバンド信号を制御部240に出力する。ユーザインターフェイス部220は、ユーザとのインターフェイスとして機能するディスプレイやボタン等である。
【0066】
記憶部230は、例えばメモリを用いて構成されており、無線端末UEの制御等に用いられる各種の情報を記憶する。記憶部230は、ROHCコンテキストを記憶する。制御部240は、例えばCPUを用いて構成されており、無線端末UEが備える各種の機能(無線通信部210やユーザインターフェイス部220等)を制御する。制御部240は、下りリンクについてはROHCデコンプレッサとしての機能を実行し、上りリンクについてはROHCコンプレッサとしての機能を実行する。バッテリ250は、無線端末UEの各ブロックに供給すべき電力を蓄える。
【0067】
(3)ハンドオーバ手順の概要
次に、本実施形態に係るハンドオーバ手順の概要を説明する。ここでは、ROHC通信を実行中の無線端末UEがソース基地局eNB#1からターゲット基地局eNB#2へのハンドオーバを行うケースを説明する。
【0068】
図8は、本実施形態に係るハンドオーバ手順の概要を説明するためのシーケンス図である。図8では、下位レイヤ(レイヤ1及びレイヤ2)シグナリング等の一部シーケンスの図示を省略している。ハンドオーバ手順は、ハンドオーバ準備段階と、ハンドオーバ実行段階と、ハンドオーバ完了段階とを含む。
【0069】
図8に示すように、ステップS101において、ソース基地局eNB#1は、下りリンクについての測定を無線端末UEに指示する。
【0070】
ステップS102において、無線端末UE及びソース基地局eNB#1は無線区間を介してヘッダ圧縮パケットを送受信し、ステップS103において、ソース基地局eNB#1及びゲートウェイ装置S−GWはバックホールを介してヘッダ非圧縮パケットを送受信する。
【0071】
ステップS103において、無線端末UEは、測定結果の報告メッセージをソース基地局eNB#1に送信する。ステップS104において、ソース基地局eNB#1は、無線端末UEからの報告に基づいて、ハンドオーバ手順を開始するか否かを判断する。ここでは、ソース基地局eNB#1がハンドオーバ手順を開始すると判断したものとする。
【0072】
ステップS105において、ソース基地局eNB#1は、ターゲット基地局eNB#2がハンドオーバの準備を行うための情報を含むハンドオーバ要求メッセージをターゲット基地局eNB#2に送信する。ステップS106において、ターゲット基地局eNB#2は、ハンドオーバ要求メッセージに応じて、無線端末UEの受け入れを許容するか否かを判断する。ここでは、ソース基地局eNB#1が無線端末UEの受け入れを許容すると判断したものとする。ステップS107において、ターゲット基地局eNB#2は、無線端末UEがターゲット基地局eNB#2に接続するための情報を含むハンドオーバ肯定応答メッセージをソース基地局eNB#1に送信する。
【0073】
なお、ステップS105〜ステップS107の各処理は、ハンドオーバ手順のうちのハンドオーバ準備段階に相当する。
【0074】
ステップS108において、ソース基地局eNB#1は、無線端末UEがターゲット基地局eNB#2との接続を行うための情報を無線端末UEに通知するとともに、ターゲット基地局eNB#2へのハンドオーバを無線端末UEに指示する。
【0075】
ステップS109において、無線端末UEは、ソース基地局eNB#1との接続を切断し、ターゲット基地局eNB#2との同期を開始する。無線端末UEは、ソース基地局eNB#1との接続を切断しても、ソース基地局eNB#1との間で使用していたROHCコンテキストを破棄せずに保持する。
【0076】
ステップS110において、ソース基地局eNB#1は、送信未完了としてバッファに保持されている下り・上り両リンクのデータパケットのフォワーディングを開始すると決定する。ステップS111において、ソース基地局eNB#1は、無線端末UEとのデータパケット送受信の状況を示すSN Status Transferメッセージをターゲット基地局eNB#2に送信する。ステップS112において、ソース基地局eNB#1は、送信未完了としてバッファに保持されている下り・上り両リンクのデータパケットをターゲット基地局eNB#2にフォワーディングする。
【0077】
ここで、下りリンクについては、ソース基地局eNB#1は、ROHCコンテキストを使用して、フォワーディングすべきデータパケットに対するヘッダ圧縮を行い、該ヘッダ圧縮により得られたヘッダ圧縮パケットをターゲット基地局eNB#2にフォワーディングする。一方、上りリンクについては、ソース基地局eNB#1は、フォワーディングすべきデータパケットをそのままターゲット基地局eNB#2にフォワーディングする。すなわち、上りリンクについては、ソース基地局eNB#1は、ヘッダ非圧縮パケット(ヘッダが圧縮されていないデータパケット)をフォワーディングする。
【0078】
ステップS113において、ターゲット基地局eNB#2は、ソース基地局eNB#1からフォワーディングされた下りリンクのヘッダ圧縮パケットと、ソース基地局eNB#1からフォワーディングされた上りリンクのヘッダ非圧縮パケットとを受信し、該下りリンクのヘッダ圧縮パケット及び該上りリンクのヘッダ非圧縮パケットを保持する。
【0079】
ステップS114において、無線端末UEは、ターゲット基地局eNB#2との接続に成功すると、その旨のメッセージをターゲット基地局eNB#2に送信する。
【0080】
なお、ステップS108〜ステップS114の各処理は、ハンドオーバ手順のうちのハンドオーバ実行段階に相当する。
【0081】
ステップS115において、ターゲット基地局eNB#2は、ステップS113で保持した下りリンクのヘッダ圧縮パケットを無線端末UEに送信する。無線端末UEは、保持しているROHCコンテキストを使用して、受信した下りリンクのヘッダ圧縮パケットのヘッダ解凍を行う。また、無線端末UEは、保持しているROHCコンテキストを使用して得られたヘッダ圧縮パケットをターゲット基地局eNB#2に送信する。
【0082】
ターゲット基地局eNB#2は、ステップS112でソース基地局eNB#1からフォワーディングされた上りリンクのヘッダ非圧縮パケットと、ステップS115で無線端末UEから送信された上りリンクのヘッダ圧縮パケットとを使用して、上りリンクについてのROHCコンテキストを生成する。該生成処理の詳細については後述する。
【0083】
ステップS116において、ターゲット基地局eNB#2は、ステップS115で無線端末UEから受信したデータパケットをゲートウェイ装置S−GWに送信する。
【0084】
ステップS117において、ターゲット基地局eNB#2は、ハンドオーバに伴う経路切り替え要求メッセージを移動管理装置MMEに送信する。ステップS118において、移動管理装置MMEは、受信した要求メッセージに応じて、ユーザプレーンに対する更新要求メッセージをゲートウェイ装置S−GWに送信する。ステップS119において、ゲートウェイ装置S−GWは、受信した要求メッセージに応じて、下りリンクの経路をソース基地局eNB#1からターゲット基地局eNB#2側に切り替える。ステップS120において、ゲートウェイ装置S−GWは、経路切り替えを通知するためのEnd Markerをソース基地局eNB#1に送信する。
【0085】
ステップS121において、ターゲット基地局eNB#2及びゲートウェイ装置S−GWは、バックホールを介してヘッダ非圧縮パケットを送受信する。
【0086】
ターゲット基地局eNB#2は、ステップS112でソース基地局eNB#1からフォワーディングされた下りリンクのヘッダ圧縮パケットと、ステップS121でゲートウェイ装置S−GWから送信された下りリンクのヘッダ非圧縮パケットとを使用して、下りリンクについてのROHCコンテキストを生成する。該生成処理の詳細については後述する。
【0087】
ステップS122において、ソース基地局eNB#1は、フォワーディング完了を示すEnd Markerをターゲット基地局eNB#2に送信する。
【0088】
ステップS123において、ゲートウェイ装置S−GWは、ユーザプレーンの更新完了を示す応答メッセージを移動管理装置MMEに送信する。ステップS124において、移動管理装置MMEは、ターゲット基地局eNB#2からの経路切り替えの要求メッセージに対する応答メッセージをターゲット基地局eNB#2に送信する。ステップS125において、ターゲット基地局eNB#2は、ハンドオーバの成功を通知するためのメッセージをソース基地局eNB#1に送信する。ステップS126において、ソース基地局eNB#1は、無線端末UEに対する自局のリソースを開放する。
【0089】
なお、ステップS115〜ステップS126の各処理は、ハンドオーバ手順のうちのハンドオーバ完了段階に相当する。
【0090】
このようなハンドオーバ手順の過程において、ターゲット基地局eNB#2は、下り・上り両リンクについてのROHCコンテキストを生成している。また、無線端末UEは、下り・上り両リンクについてのROHCコンテキストを保持しながらハンドオーバ手順を行っている。
【0091】
よって、ターゲット基地局eNB#2及び無線端末UEは、ハンドオーバ手順が完了した時点で、ハンドオーバ手順の開始前と同じヘッダ圧縮レベルでのROHC通信を開始可能な状態になっている。従って、ハンドオーバ手順完了後のターゲット基地局eNB#2及び無線端末UEの通信開始と同時に、高いヘッダ圧縮レベルでのROHC通信が開始される。
【0092】
(4)下りリンクに係るROHCコンテキスト生成動作
次に、下りリンクに係る移動通信システム1の動作について、(4.1)下りリンクに係る概略動作、(4.2)下りリンクに係るソース基地局の詳細動作例、(4.3)下りリンクに係るターゲット基地局の詳細動作例の順に説明する。
【0093】
(4.1)下りリンクに係る概略動作
図9は、下りリンクに係るROHCコンテキスト生成動作の概要を説明するための図である。
【0094】
図9に示すように、第1に、基地局eNB#1の制御部140#1は、基地局eNB#1から基地局eNB#2への無線端末UEのハンドオーバ手順の際に、無線端末UE宛てのヘッダ圧縮パケットを基地局eNB#2にフォワーディングするようネットワーク通信部120#1を制御する。基地局eNB#2の制御部140#2は、フォワーディングされたヘッダ圧縮パケットをネットワーク通信部120#2が受信すると、該ヘッダ圧縮パケットを記憶部130#2に記憶させる。
【0095】
第2に、ゲートウェイ装置S−GWは、無線端末UE宛てのヘッダ非圧縮パケットを基地局eNB#2に送信する。基地局eNB#2の制御部140#2は、ゲートウェイ装置S−GWからのヘッダ非圧縮パケットをネットワーク通信部120#2が受信すると、フォワーディングされたヘッダ圧縮パケットと、ゲートウェイ装置S−GWからのヘッダ非圧縮パケットとを使用して、該ヘッダ圧縮パケットのヘッダ圧縮レベルに対応するROHCコンテキストを生成する。基地局eNB#2の制御部140#2は、生成したROHCコンテキストを記憶部130#2に記憶させる。
【0096】
第3に、ハンドオーバ手順の完了後に、ゲートウェイ装置S−GWからのヘッダ非圧縮パケットをネットワーク通信部120#2が受信すると、基地局eNB#2の制御部140#2は、生成したROHCコンテキストを使用して、ゲートウェイ装置S−GWからのヘッダ未圧縮パケットに対するヘッダ圧縮を行う。そして、基地局eNB#2の制御部140#2は、該ヘッダ圧縮により得られたヘッダ圧縮パケットを無線端末UEに送信するよう無線通信部110#2を制御する。
【0097】
(4.2)下りリンクに係るソース基地局の詳細動作例
図10は、下りリンクに係るソース基地局eNB#1の動作を示すフローチャートである。
【0098】
図10に示すように、ステップS201において、基地局eNB#1のネットワーク通信部120#1は、ターゲット基地局eNB#2からのHandover Request Ackメッセージ(図8のステップS107参照)を受信する。
【0099】
ステップS202において、基地局eNB#1の制御部140#1は、ROHCコンテキストを使用して、記憶部130#1にバッファされている下りリンクの未送信データパケットのヘッダ圧縮を行う。
【0100】
ステップS203において、基地局eNB#1の制御部140#1は、SN Status transferメッセージ(図8のステップS111参照)をターゲット基地局eNB#2に送信するようネットワーク通信部120#1を制御する。
【0101】
ステップS204において、基地局eNB#1の制御部140#1は、ステップS202で得られたヘッダ圧縮パケットをターゲット基地局eNB#2にフォワーディング(図8のステップS112参照)するようネットワーク通信部120#1を制御する。
【0102】
ステップS205において、基地局eNB#1の制御部140#1は、フォワーディングが完了すると、その旨のEnd Marker(図8のステップS122参照)をターゲット基地局eNB#2に送信するようネットワーク通信部120#1を制御する。
【0103】
(4.3)下りリンクに係るターゲット基地局の詳細動作例
図11は、下りリンクに係るターゲット基地局eNB#2の動作を示すフローチャートである。
【0104】
図11に示すように、ステップS301において、基地局eNB#2のネットワーク通信部120#2は、ソース基地局eNB#1からのSN Status transferメッセージ(図8のステップS111参照)を受信する。その後、基地局eNB#2のネットワーク通信部120#2は、フォワーディングパケットの受信を開始する。また、基地局eNB#2のネットワーク通信部120#2は、ゲートウェイ装置S−GWからのヘッダ非圧縮パケットの受信を開始する。
【0105】
ステップS302において、基地局eNB#2の制御部140#2は、ネットワーク通信部120#2が受信したフォワーディングパケットがROHC圧縮されているか否かを確認する。
【0106】
フォワーディングパケットがROHC圧縮されていない場合(ステップS302;NO)、基地局eNB#2の制御部140#2は、該フォワーディングパケット(ヘッダ非圧縮パケット)を無線端末UEに送信するよう無線通信部110#2を制御する(ステップS309)。
【0107】
一方、フォワーディングパケットがROHC圧縮されている場合(ステップS302;YES)、基地局eNB#2の制御部140#2は、処理をステップS303に進める。
【0108】
ステップS303において、基地局eNB#2の制御部140#2は、フォワーディングパケットとしてのヘッダ圧縮パケットを解析し、該ヘッダ圧縮パケットのヘッダ圧縮レベルを特定する。例えば、予め基地局eNB#2の記憶部130#2に記憶されているヘッダ圧縮レベル毎のヘッダ圧縮パターン(ヘッダ省略パターン)とのマッチングを行うことで、フォワーディングパケットとしてのヘッダ圧縮パケットのヘッダ圧縮レベルを特定する。あるいは、フォワーディングパケットとしてのヘッダ圧縮パケットとゲートウェイ装置S−GWからのヘッダ非圧縮パケットとの差分を求め、該差分に基づいてフォワーディングパケットとしてのヘッダ圧縮パケットのヘッダ圧縮レベルを特定してもよい。
【0109】
ステップS304において、基地局eNB#2の制御部140#2は、ゲートウェイ装置S−GWからの2個以上のヘッダ非圧縮パケット(GTPパケット)をネットワーク通信部120#2が受信したか否かを確認する。なお、Dynamic chain partを算出するためには、複数個のヘッダ非圧縮パケットが必要になる。
【0110】
ゲートウェイ装置S−GWからの2個以上のヘッダ非圧縮パケットをネットワーク通信部120#2が受信していない場合(ステップS304;NO)、基地局eNB#2の制御部140#2は、該フォワーディングパケット(ヘッダ非圧縮パケット)を無線端末UEに送信するよう無線通信部110#2を制御する(ステップS309)。
【0111】
一方、ゲートウェイ装置S−GWからの2個以上のヘッダ非圧縮パケットをネットワーク通信部120#2が受信している場合(ステップS304;YES)、基地局eNB#2の制御部140#2は、処理をステップS305に進める。
【0112】
ステップS305において、基地局eNB#2の制御部140#2は、ステップS303で特定したヘッダ圧縮レベルに基づき、ゲートウェイ装置S−GWから受信した1つのヘッダ未圧縮パケットから、固定されている値として分類されるべきパケットヘッダフィールドの各パラメータ(Static chain)を取得する。ステップS305は、第1の取得ステップに相当する。取得されたStatic chainは、ROHCコンテキストの少なくとも一部を構成する。
【0113】
ステップS306において、基地局eNB#2の制御部140#2は、ステップS303で特定したヘッダ圧縮レベルに基づき、ゲートウェイ装置S−GWから受信した無線端末UE宛ての複数のヘッダ未圧縮パケットを使用して、規則性を有する値として分類されるべきパケットヘッダフィールドの各パラメータの算出に使用する値(Dynamic chain)を取得する。ステップS306は、第2の取得ステップに相当する。取得されたDynamic chainは、ROHCコンテキストの一部を構成する。ただし、ステップS303で特定したヘッダ圧縮レベルが低い場合には、ステップS306は省略されることがある。また、その際フォワーディングされてきたヘッダ圧縮パケットと圧縮レベルを合致させることが好ましい。
【0114】
基地局eNB#2の制御部140#2は、このようにしてROHCコンテキストを生成(ステップS307)すると、生成したROHCコンテキストを記憶部130#2に記憶させる。
【0115】
ステップS308において、基地局eNB#2の制御部140#2は、記憶しているROHCコンテキストを使用して、ゲートウェイ装置S−GWからネットワーク通信部120#2が受信したヘッダ非圧縮パケットのヘッダ圧縮を行う。
【0116】
ステップS309において、基地局eNB#2の制御部140#2は、ステップS308により得られたヘッダ圧縮パケットを無線端末UEに送信するよう無線通信部110#2を制御する。
【0117】
(5)上りリンクに係るROHCコンテキスト生成動作
次に、上りリンクに係る移動通信システム1の動作について、(5.1)上りリンクに係る概略動作、(5.2)上りリンクに係るソース基地局の詳細動作例、(5.3)上りリンクに係るターゲット基地局の詳細動作例の順に説明する。
【0118】
(5.1)上りリンクに係る概略動作
図12は、上りリンクに係るROHCコンテキスト生成動作の概要を説明するための図である。
【0119】
図12に示すように、第1に、基地局eNB#1の制御部140#1は、基地局eNB#1から基地局eNB#2への無線端末UEのハンドオーバ手順の際に、無線端末UEからのゲートウェイ装置S−GW宛てのヘッダ非圧縮パケットを基地局eNB#2にフォワーディングするようネットワーク通信部120#1を制御する。基地局eNB#2の制御部140#2は、フォワーディングされたヘッダ非圧縮パケットをネットワーク通信部120#2が受信すると、該ヘッダ非圧縮パケットを記憶部130#2に記憶させる。
【0120】
第2に、無線端末UEは、ゲートウェイ装置S−GW宛てのヘッダ圧縮パケットを基地局eNB#2に送信する。基地局eNB#2の制御部140#2は、無線端末UEからのヘッダ圧縮パケットをネットワーク通信部120#2が受信すると、フォワーディングされたヘッダ非圧縮パケットと、無線端末UEからのヘッダ圧縮パケットとを使用して、該ヘッダ圧縮パケットのヘッダ圧縮レベルに対応するROHCコンテキストを生成する。基地局eNB#2の制御部140#2は、生成したROHCコンテキストを記憶部130#2に記憶させる。
【0121】
第3に、ハンドオーバ手順の完了後に、無線端末UEからのヘッダ圧縮パケットを無線通信部110#2が受信すると、基地局eNB#2の制御部140#2は、生成したROHCコンテキストを使用して、無線端末UEからのヘッダ圧縮パケットに対するヘッダ解凍を行う。そして、基地局eNB#2の制御部140#2は、該ヘッダ解凍により得られたヘッダ非圧縮パケットをゲートウェイ装置S−GWに送信するようネットワーク通信部120#2を制御する。
【0122】
(5.2)上りリンクに係るソース基地局の詳細動作例
図13は、上りリンクに係るソース基地局eNB#1の動作を示すフローチャートである。
【0123】
図13に示すように、ステップS401において、基地局eNB#1のネットワーク通信部120#1は、ターゲット基地局eNB#2からのHandover Request Ackメッセージ(図8のステップS107参照)を受信する。
【0124】
ステップS402において、基地局eNB#1の制御部140#1は、SN Status transferメッセージ(図8のステップS111参照)をターゲット基地局eNB#2に送信するようネットワーク通信部120#1を制御する。
【0125】
ステップS403において、基地局eNB#1の制御部140#1は、記憶部130#1にバッファされている上りリンクの未送信データパケット(ヘッダ非圧縮パケット)をターゲット基地局eNB#2にフォワーディング(図8のステップS112参照)するようネットワーク通信部120#1を制御する。
【0126】
ステップS404において、基地局eNB#1の制御部140#1は、フォワーディングが完了すると、その旨のEnd Marker(図8のステップS122参照)をターゲット基地局eNB#2に送信するようネットワーク通信部120#1を制御する。
【0127】
(5.3)上りリンクに係るターゲット基地局の詳細動作例
図14は、上りリンクに係るターゲット基地局eNB#2の動作を示すフローチャートである。
【0128】
図14に示すように、ステップS501において、基地局eNB#2のネットワーク通信部120#2は、ソース基地局eNB#1からのSN Status transferメッセージ(図8のステップS111参照)を受信する。
【0129】
ステップS502において、基地局eNB#2の制御部140#2は、上りリンクのフォワーディングパケット(ヘッダ非圧縮パケット)をネットワーク通信部120#2が受信したか否かを確認する。上りリンクのフォワーディングパケットをネットワーク通信部120#2が受信した場合(ステップS502;YES)、基地局eNB#2の制御部140#2は、処理をステップS503に進める。
【0130】
ステップS503において、基地局eNB#2の制御部140#2は、無線端末UEからのヘッダ圧縮パケット(図8のステップS115参照)を無線通信部110#2が受信したか否かを確認する。無線端末UEからのヘッダ圧縮パケットを無線通信部110#2が受信した場合(ステップS503;YES)、基地局eNB#2の制御部140#2は、処理をステップS504に進める。
【0131】
ステップS504において、基地局eNB#2の制御部140#2は、無線端末UEからのヘッダ圧縮パケットを解析し、該ヘッダ圧縮パケットのヘッダ圧縮レベルを特定する。例えば、予め基地局eNB#2の記憶部130#2に記憶されているヘッダ圧縮レベル毎のヘッダ圧縮パターン(ヘッダ省略パターン)とのマッチングを行うことで、無線端末UEからのヘッダ圧縮パケットのヘッダ圧縮レベルを特定する。あるいは、無線端末UEからのヘッダ圧縮パケットとフォワーディングパケットとしてのヘッダ非圧縮パケットとの差分を求め、該差分に基づいてフォワーディングパケットとしてのヘッダ圧縮パケットのヘッダ圧縮レベルを特定してもよい。
【0132】
ステップS505において、基地局eNB#2の制御部140#2は、ステップS504で特定したヘッダ圧縮レベルに基づき、フォワーディングパケットとしての1つのヘッダ非圧縮パケットゲートから、固定されている値として分類されるべきパケットヘッダフィールドの各パラメータ(Static chain)を取得する。ステップS505は、第1の取得ステップに相当する。取得されたStatic chainは、ROHCコンテキストの少なくとも一部を構成する。
【0133】
ステップS506において、基地局eNB#2の制御部140#2は、フォワーディングパケットとしての2個以上のヘッダ非圧縮パケットをネットワーク通信部120#2が受信したか否かを確認する。フォワーディングパケットとしての2個以上のヘッダ非圧縮パケットをネットワーク通信部120#2が受信していない場合(ステップS506;NO)、基地局eNB#2の制御部140#2は、処理をステップS508に進める。一方、フォワーディングパケットとしての2個以上のヘッダ非圧縮パケットをネットワーク通信部120#2が受信している場合(ステップS506;YES)、基地局eNB#2の制御部140#2は、処理をステップS507に進める。
【0134】
ステップS507において、基地局eNB#2の制御部140#2は、ステップS504で特定したヘッダ圧縮レベルに基づき、ゲートウェイ装置S−GWから受信した無線端末UE宛ての複数のヘッダ未圧縮パケットを使用して、規則性を有する値として分類されるべきパケットヘッダフィールドの各パラメータの算出に使用する値(Dynamic chain)を取得する。ステップS507は、第2の取得ステップに相当する。取得されたDynamic chainは、ROHCコンテキストの一部を構成する。ただし、ステップS504で特定したヘッダ圧縮レベルが低い場合には、ステップS507は省略されることがある。
【0135】
基地局eNB#2の制御部140#2は、このようにしてROHCコンテキストを生成(ステップS508)すると、生成したROHCコンテキストを記憶部130#2に記憶させる。
【0136】
ステップS509において、基地局eNB#2の制御部140#2は、記憶しているROHCコンテキストを使用して、無線端末UEから無線通信部110#2が受信したヘッダ圧縮パケットのヘッダ解凍を行う。
【0137】
ステップS510において、基地局eNB#2の制御部140#2は、ステップS509により得られたヘッダ非圧縮パケットをゲートウェイ装置S−GWに送信するようネットワーク通信部120#2を制御する。
【0138】
(6)実施形態の効果
以上説明したように、本実施形態によれば、ターゲット基地局eNB#2は、ハンドオーバ手順の際に、ソース基地局eNB#1からのヘッダ圧縮パケットと、コアネットワークEPCからのヘッダ非圧縮パケットとを使用して、該ヘッダ圧縮パケットのヘッダ圧縮レベルに対応するROHCコンテキストを生成する。そして、ターゲット基地局eNB#2は、ハンドオーバ手順の完了後において、ハンドオーバ手順の際に生成したROHCコンテキストを使用して、ゲートウェイ装置S−GWから受信したヘッダ非圧縮パケットに対するヘッダ圧縮を行うとともに、該ヘッダ圧縮により得られたヘッダ圧縮パケットを無線端末UEに送信する。これにより、下りリンクについて、ハンドオーバ手順の前後においてヘッダ圧縮レベルを維持することができ、ハンドオーバ手順の完了後におけるオーバヘッド増大を抑制できる。さらに、下りリンクのフォワーディングデータがヘッダ圧縮されていることにより、フォワーディングデータのオーバーヘッドを削減でき、X2インターフェイス上のトラフィックを削減できる。
【0139】
また、本実施形態によれば、ターゲット基地局eNB#2は、ハンドオーバ手順の際に、ソース基地局eNB#1からのヘッダ非圧縮パケットと、無線端末UEからのヘッダ圧縮パケットと使用して、該ヘッダ圧縮パケットのヘッダ圧縮レベルに対応するROHCコンテキストを生成する。そして、ターゲット基地局eNB#2は、ハンドオーバ手順の完了後において、ハンドオーバ手順の際に生成したROHCコンテキストを使用して、無線端末UEから受信したヘッダ圧縮パケットに対するヘッダ解凍を行うとともに、該ヘッダ解凍により得られたヘッダ非圧縮パケットをゲートウェイ装置S−GWに送信する。これにより、上りリンクについて、ハンドオーバ手順の前後においてヘッダ圧縮レベルを維持することができ、ハンドオーバ手順の完了後におけるオーバヘッド増大を抑制できる。
【0140】
特に、LTEにおいては、ハンドオーバ時にROHCコンテキストをソース基地局eNB#1からターゲット基地局eNB#2に転送することは禁止されているが、本実施形態によれば、そのようなLTEの制約を守りつつ、ハンドオーバ手順の完了後におけるオーバヘッド増大を抑制できる。
【0141】
(7)その他の実施形態
上記のように、本発明は実施形態によって記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面はこの発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施形態、実施例及び運用技術が明らかとなる。
【0142】
例えば、ソース基地局eNB#1及び無線端末UEは、本実施形態に係るROHCコンテキスト生成処理をターゲット基地局eNB#2がサポートしているか否かを確認し、サポートしていない場合には、一般的なLTEのハンドオーバ手順を行ってもよい。具体的には、ソース基地局eNB#1は、ハンドオーバ中のROHCコンテキスト生成が可能であるか否かを問い合わせるための情報をHandover Requestメッセージ(図8のステップS105参照)に含めて送信し、ターゲット基地局eNB#2は、該情報に応じて、ハンドオーバ中のROHCコンテキスト生成が可能であるか否かを示す情報をHandover Request Ackメッセージ(図8のステップS107参照)に含めて送信する。ソース基地局eNB#1は、ハンドオーバ中のROHCコンテキスト生成が可能である旨の情報を受信すると、無線端末UEがソース基地局eNB#1との間で使用していたROHCコンテキストを保持させるための情報を、ハンドオーバ指示(図8のステップS108参照)に含めて無線端末UEに送信する。無線端末UEは、ROHCコンテキストを保持させるための情報をソース基地局eNB#1から受信した場合には、ソース基地局eNB#1との間で使用していたROHCコンテキストを保持しながらハンドオーバ手順を行う。一方、ROHCコンテキストを保持させるための情報をソース基地局eNB#1から受信しない場合には、無線端末UEは、ソース基地局eNB#1との間で使用していたROHCコンテキストをハンドオーバ時に破棄する。
【0143】
上述した実施形態では、ソース基地局eNB#1及びターゲット基地局eNB#2のそれぞれがLTEの基地局である一例を説明したが、3GPPでは異なる無線アクセス技術(RAT)間のハンドオーバもサポートされており、ソース基地局eNB#1及びターゲット基地局eNB#2の一方がLTE以外のRATの基地局であってもよい。
【0144】
また、上述した実施形態では、ヘッダ圧縮技術としてROHCプロトコルを用いる一例を説明したが、コンテキストを使用してヘッダ圧縮及び解凍を行うヘッダ圧縮技術であればよく、ROHCプロトコル以外のヘッダ圧縮技術に対して本発明を適用可能である。
【0145】
このように本発明は、ここでは記載していない様々な実施形態等を包含するということを理解すべきである。したがって、本発明はこの開示から妥当な特許請求の範囲の発明特定事項によってのみ限定されるものである。
【符号の説明】
【0146】
EPC…コアネットワーク、MME…移動管理装置、S−GW…ゲートウェイ装置、UE…無線端末、eNB…基地局、1…移動通信システム、110…無線通信部、120…ネットワーク通信部、130…記憶部、140…制御部、210…無線通信部、220…ユーザインターフェイス部、230…記憶部、240…制御部、250…バッテリ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヘッダ圧縮技術が用いられる移動通信方法であって、
第1の基地局が、前記第1の基地局から第2の基地局への無線端末のハンドオーバ手順の際に、前記無線端末宛てのヘッダ圧縮パケットを前記第2の基地局にフォワーディングするステップと、
前記第2の基地局が、前記ハンドオーバ手順の際に、前記フォワーディングされたヘッダ圧縮パケットと、コアネットワークからの前記無線端末宛てのヘッダ非圧縮パケットとを受信すると、該ヘッダ圧縮パケット及び該ヘッダ非圧縮パケットを使用して、該ヘッダ圧縮パケットのヘッダ圧縮レベルに対応するヘッダ関連情報を生成するステップと、
前記第2の基地局が、前記ハンドオーバ手順の完了後に、前記生成したヘッダ関連情報を使用して、前記コアネットワークから受信した前記無線端末宛てのヘッダ非圧縮パケットに対するヘッダ圧縮を行うとともに、該ヘッダ圧縮により得られたヘッダ圧縮パケットを前記無線端末に送信するステップと、
を有することを特徴とする移動通信方法。
【請求項2】
前記ヘッダ関連情報を生成するステップは、
前記フォワーディングされたヘッダ圧縮パケットのヘッダ圧縮レベルを特定するステップと、
前記特定されたヘッダ圧縮レベルに基づき、前記コアネットワークから受信した前記無線端末宛ての1つのヘッダ非圧縮パケットから、固定されている値として分類されるべきパケットヘッダフィールドの各パラメータを取得する第1の取得ステップと、
を含み、
前記ヘッダ関連情報は、前記第1の取得ステップで取得された各パラメータを含むことを特徴とする請求項1に記載の移動通信方法。
【請求項3】
前記ヘッダ関連情報を生成するステップは、
前記特定されたヘッダ圧縮レベルに基づき、前記コアネットワークから受信した前記無線端末宛ての複数のヘッダ非圧縮パケットを使用して、規則性を有する値として分類されるべきパケットヘッダフィールドの各パラメータの算出に使用する値を取得する第2の取得ステップをさらに含み、
前記ヘッダ関連情報は、前記第2の取得ステップで取得された値をさらに含むことを特徴とする請求項2に記載の移動通信方法。
【請求項4】
前記ハンドオーバ手順の際に、前記無線端末が前記第1の基地局との間で使用していたヘッダ関連情報を保持させるための情報を、前記第1の基地局から前記無線端末に送信するステップと、
前記無線端末が、前記第1の基地局から前記情報を受信した場合に、前記第1の基地局との間で使用していた前記ヘッダ関連情報を保持しながら前記ハンドオーバ手順を行うステップと、
前記無線端末が、前記ハンドオーバ手順の完了後に、前記保持しているヘッダ関連情報を使用して、前記第2の基地局から受信した前記ヘッダ圧縮パケットに対するヘッダ解凍を行うステップと、
をさらに有することを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載の移動通信方法。
【請求項5】
ヘッダ圧縮技術が用いられる移動通信システムの基地局であって、
他の基地局及びコアネットワークとの通信を行うネットワーク通信部と、
無線端末との通信を行う無線通信部と、
前記ネットワーク通信部及び前記無線通信部を制御する制御部と、
を有し、
前記制御部は、
前記他の基地局から自局への前記無線端末のハンドオーバ手順の際に、前記他の基地局からの前記無線端末宛てのヘッダ圧縮パケットと、コアネットワークからの前記無線端末宛てのヘッダ非圧縮パケットとを前記ネットワーク通信部が受信すると、該ヘッダ圧縮パケット及び該ヘッダ非圧縮パケットを使用して、該ヘッダ圧縮パケットのヘッダ圧縮レベルに対応するヘッダ関連情報を生成し、
前記ハンドオーバ手順の完了後に、前記生成したヘッダ関連情報を使用して、前記コアネットワークから受信した前記無線端末宛てのヘッダ非圧縮パケットに対するヘッダ圧縮を行うとともに、該ヘッダ圧縮により得られたヘッダ圧縮パケットを前記無線通信部から前記無線端末に送信する、
よう制御することを特徴とする基地局。
【請求項6】
ヘッダ圧縮技術が用いられる移動通信方法であって、
第1の基地局が、前記第1の基地局から第2の基地局への無線端末のハンドオーバ手順の際に、前記無線端末からコアネットワーク宛てのヘッダ非圧縮パケットを前記第2の基地局にフォワーディングするステップと、
前記第2の基地局が、前記ハンドオーバ手順の際に、前記フォワーディングされたヘッダ非圧縮パケットと、前記無線端末からのヘッダ圧縮パケットとを受信すると、該ヘッダ非圧縮パケット及び該ヘッダ圧縮パケットを使用して、該ヘッダ圧縮パケットのヘッダ圧縮レベルに対応するヘッダ関連情報を生成するステップと、
前記第2の基地局が、前記ハンドオーバ手順の完了後に、前記生成したヘッダ関連情報を使用して、前記無線端末から受信したヘッダ圧縮パケットに対するヘッダ解凍を行うとともに、該ヘッダ解凍により得られたヘッダ非圧縮パケットを前記コアネットワークに送信するステップと、
を有することを特徴とする移動通信方法。
【請求項7】
前記ヘッダ関連情報を生成するステップは、
前記無線端末からの前記ヘッダ圧縮パケットのヘッダ圧縮レベルを特定するステップと、
前記特定されたヘッダ圧縮レベルに基づき、前記第1の基地局からフォワーディングされた1つのヘッダ非圧縮パケットから、固定されている値として分類されるべきパケットヘッダフィールドの各パラメータを取得する第1の取得ステップと、
を含み、
前記ヘッダ関連情報は、前記第1の取得ステップで取得された各パラメータを含むことを特徴とする請求項6に記載の移動通信方法。
【請求項8】
前記ヘッダ関連情報を生成するステップは、
前記特定されたヘッダ圧縮レベルに基づき、前記第1の基地局からフォワーディングされた複数のヘッダ非圧縮パケットを使用して、規則性を有する値として分類されるべきパケットヘッダフィールドの各パラメータの算出に使用する値を取得する第2の取得ステップをさらに含み、
前記ヘッダ関連情報は、前記第2の取得ステップで取得された値をさらに含むことを特徴とする請求項7に記載の移動通信方法。
【請求項9】
前記ハンドオーバ手順の際に、前記無線端末が前記第1の基地局との間で使用していたヘッダ関連情報を保持させるための情報を、前記第1の基地局から前記無線端末に送信するステップと、
前記無線端末が、前記第1の基地局から前記情報を受信した場合に、前記第1の基地局との間で使用していた前記ヘッダ関連情報を保持しながら前記ハンドオーバ手順を行うステップと、
前記無線端末が、前記ハンドオーバ手順の完了後、前記保持しているヘッダ関連情報を使用して、前記第2の基地局に送信すべきヘッダ非圧縮パケットに対するヘッダ圧縮を行うとともに、該ヘッダ圧縮により得られたヘッダ圧縮パケットを前記第2の基地局に送信するステップと、
をさらに有することを特徴とする請求項6〜8の何れか一項に記載の移動通信方法。
【請求項10】
ヘッダ圧縮技術が用いられる移動通信システムの基地局であって、
他の基地局及びコアネットワークとの通信を行うネットワーク通信部と、
無線端末との通信を行う無線通信部と、
前記ネットワーク通信部及び前記無線通信部を制御する制御部と、
を有し、
前記制御部は、
前記他の基地局から自局への前記無線端末のハンドオーバ手順の際に、前記無線端末からコアネットワーク宛てのヘッダ非圧縮パケットを前記ネットワーク通信部が前記他の基地局から受信し、且つ前記無線端末からのヘッダ圧縮パケットを前記無線通信部が受信すると、該ヘッダ非圧縮パケット及び該ヘッダ圧縮パケットを使用して、該ヘッダ圧縮パケットのヘッダ圧縮レベルに対応するヘッダ関連情報を生成し、
前記ハンドオーバ手順の完了後に、前記生成したヘッダ関連情報を使用して、前記無線端末から前記無線通信部が受信したヘッダ圧縮パケットに対するヘッダ解凍を行うとともに、該ヘッダ解凍により得られたヘッダ非圧縮パケットを前記ネットワーク通信部から前記コアネットワークに送信する、
よう制御することを特徴とする基地局。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2012−156814(P2012−156814A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−14586(P2011−14586)
【出願日】平成23年1月26日(2011.1.26)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】