説明

移動通信装置および無線通信方法

【課題】待ち受け中の移動通信装置の消費電力を低減する。
【解決手段】無線通信部11は、無線アクセス網21(第1の無線アクセス網)を利用したデータ通信と、無線アクセス網21よりカバーエリアの広い無線アクセス網22(第2の無線アクセス網)を利用したデータ通信とを行える。制御部12は、無線アクセス網21を利用したデータ通信が終了した後、無線アクセス網21から無線アクセス網22へのハンドオーバを行ってから、移動通信装置10を待ち受け状態に遷移させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本件は移動通信装置および無線通信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、携帯電話システムや無線LAN(Local Area Network)などの無線通信システムが広く利用されている。移動通信装置から利用される無線アクセス網としては、CDMA(Code Division Multiple Access)2000の1xやEV−DO(Evolution Data Only)ネットワーク、WiMAXネットワークなど、通信方式の異なる複数の種類の無線アクセス網が存在する。1xやEV−DOネットワークは、多元接続方式として符号分割多元接続(CDMA)を用いる。WiMAXネットワークは、多元接続方式として直交周波数分割多元接続(OFDMA:Orthogonal Frequency Division Multiple Access)を用いる。複数の種類の無線アクセス網を利用できる移動通信装置も存在する。
【0003】
なお、移動無線端末が優先度の低い移動電話システムで待ち受け中であっても、ユーザの発信操作が行われたときは即時にセルサーチを行って、優先度の高い移動電話システムのセルを検出するセルサーチ方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。また、デュアルモード携帯端末が、非優先システムで待ち受け中、非優先システムから受信される情報によって示されるタイミングで、非優先システムよりカバーエリアの狭い優先システムのサーチを行うサーチ方法が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0004】
また、ハンドオーバ元のアクセスポイントとハンドオーバ先のアクセスポイントが同一サブネットに属するとき、同一のIP(Internet Protocol)アドレスをハンドオーバ前後で継続して利用する無線LAN端末が提案されている(例えば、特許文献3参照)。また、移動局がWiMAXネットワークとEV−DOネットワークの間で、IPセッションを維持してハンドオーバを行う方法が提案されている(例えば、非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−187104号公報
【特許文献2】特開2006−303733号公報
【特許文献3】特開2008−11184号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Peretz Feder, Ramana Isukapalli and Semyon Mizikovsky, “WiMAX-EVDO Interworking Using Mobile IP”, IEEE (The Institute of Electrical and Electronics Engineers) Communications Magazine, pp.122-131, June 2009.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記のように、無線アクセス網には、移動通信装置が通信可能なカバーエリアの広いものと狭いものとが存在する。カバーエリアの狭い無線アクセス網には、移動通信装置と基地局の間の通信帯域が、カバーエリアの広い無線アクセス網よりも広いといった利点を有するものもある。複数の無線アクセス網を利用できる移動通信装置は、複数の無線アクセス網を使い分けることで、カバーエリアの広さとそれ以外の利点とを享受できる。
【0008】
しかし、複数の無線アクセス網を利用できる移動通信装置では、データ通信を行わない間の待ち受けの方法によっては、待ち受け中の消費電力が増大してしまうという問題がある。例えば、移動通信装置が、カバーエリアの狭い無線アクセス網を利用してデータ通信を行った後にそのまま待ち受け状態になると、待ち受け中に当該カバーエリアの狭い無線アクセス網の圏外に移動することでハンドオーバが発生する可能性が比較的高い。この場合、例えば、移動通信装置が、無線アクセス網を跨がるハンドオーバの発生に備えた処理を継続的に行うことなどにより、待ち受け中の消費電力が増大するおそれがある。
【0009】
本件はこのような点に鑑みてなされたものであり、待ち受け中の消費電力を低減できる移動通信装置および無線通信方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
無線通信部と制御部とを有する移動通信装置が提供される。無線通信部は、第1の無線アクセス網を利用したデータ通信と、第1の無線アクセス網よりカバーエリアの広い第2の無線アクセス網を利用したデータ通信とが可能である。制御部は、第1の無線アクセス網を利用したデータ通信が終了した後、第1の無線アクセス網から第2の無線アクセス網へのハンドオーバを行ってから、自装置を待ち受け状態に遷移させる。
【0011】
また、複数の無線アクセス網を利用可能な移動通信装置の無線通信方法が提供される。無線通信方法では、第1の無線アクセス網を利用してデータ通信を行う。データ通信が終了した後、第1の無線アクセス網から、第1の無線アクセス網よりカバーエリアの広い第2の無線アクセス網へのハンドオーバを行う。第2の無線アクセス網へのハンドオーバの後、待ち受け状態に遷移する。
【発明の効果】
【0012】
待ち受け中の移動通信装置の消費電力を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】第1の実施の形態の移動通信装置を示す図である。
【図2】第2の実施の形態の移動通信システムを示す図である。
【図3】無線通信のカバーエリアの例を示す図である。
【図4】無線アクセス網の物理チャネルの例を示す図である。
【図5】他の無線アクセス網の物理チャネルの例を示す図である。
【図6】ページング情報の受信タイミングの例を示す図である。
【図7】移動局の例を示すブロック図である。
【図8】端末制御部の例を示すブロック図である。
【図9】アイドル状態への遷移を示すフローチャートである。
【図10】アクティブ状態への遷移を示すフローチャートである。
【図11】無線アクセス網への初期接続の例を示すシーケンス図である。
【図12】第1のハンドオーバの例を示すシーケンス図である。
【図13】第1のハンドオーバの例を示すシーケンス図(続き)である。
【図14】第2のハンドオーバの例を示すシーケンス図である。
【図15】第2のハンドオーバの例を示すシーケンス図(続き)である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本実施の形態を図面を参照して説明する。
[第1の実施の形態]
図1は、第1の実施の形態の移動通信装置を示す図である。第1の実施の形態の移動通信装置10は、無線アクセス網21(第1の無線アクセス網)と無線アクセス網22(第2の無線アクセス網)とを利用して無線通信を行うことができる。移動通信装置10は、例えば、携帯電話機や携帯情報端末装置などの無線端末装置である。
【0015】
無線アクセス網22は、無線アクセス網21よりカバーエリアが広い。例えば、無線アクセス網22のカバーエリアは、無線アクセス網21のカバーエリアを包含する。また、無線アクセス網21,22は、互いに異なる通信方式を用いたものであってもよい。例えば、無線アクセス網21がWiMAXネットワーク、無線アクセス網22がCDMA2000のEV−DOネットワークである場合が考えられる。
【0016】
移動通信装置10は、無線アクセス網21のカバーエリア内では無線アクセス網21を利用した無線通信が可能であり、無線アクセス網22のカバーエリア内では無線アクセス網22を利用した無線通信が可能である。移動通信装置10は、無線アクセス網21,22の両方によってカバーされている場所では、所定の基準で、利用する無線アクセス網を選択する。例えば、無線アクセス網21を優先的に利用することが考えられる。
【0017】
移動通信装置10は、無線通信部11および制御部12を有する。
無線通信部11は、無線アクセス網21を利用したデータ通信と、無線アクセス網22を利用したデータ通信とを行うことができる。例えば、復調や復号を含むデータ受信処理や、符号化や変調を含むデータ送信処理を行う。無線アクセス網21,22の通信方式が異なる場合、無線通信部11は、各通信方式に対応した通信部を備えていてもよい。
【0018】
制御部12は、無線アクセス網21,22の間のハンドオーバや、移動通信装置10の待ち受け状態(アイドルモード)を制御する。制御部12は、無線通信部11において無線アクセス網21を利用したデータ通信が終了した後は、無線アクセス網21から無線アクセス網22へハンドオーバを行ってから、移動通信装置10を待ち受け状態に遷移させる。移動通信装置10は、カバーエリアの狭い無線アクセス網21で待ち受けを行う代わりに、カバーエリアの広い無線アクセス網22で待ち受けを行うことになる。
【0019】
待ち受け中は、無線通信部11は、無線アクセス網21,22に対応する送信回路を停止してもよい(例えば、送信回路への電力供給を停止してもよく、送信回路のクロック周波数を下げてもよい)。また、待ち受け中は、無線通信部11は、無線アクセス網21の基地局をサーチしなくてもよく、無線アクセス網21に対応する受信回路を停止してもよい(例えば、受信回路への電力供給を停止してもよく、受信回路のクロック周波数を下げてもよい)。また、無線アクセス網22に対応する受信回路を間欠的に動作させて、無線アクセス網22からの呼び出し(ページング)の有無を確認してもよい。
【0020】
なお、待ち受け状態は、無線アクセス網22からのページングが検出されたときや、送信データが移動通信装置10で発生したときなどに解除される。無線通信部11は、待ち受け状態が解除されると、無線アクセス網21の基地局をサーチしてもよい。制御部12は、サーチにより無線アクセス網21の基地局が検出されたときは、無線アクセス網22から無線アクセス網21へハンドオーバを行い、無線アクセス網21を利用してデータ通信が行われるようにしてもよい。また、制御部12は、無線アクセス網21と無線アクセス網22との間のハンドオーバにおいて、ハンドオーバ前に移動通信装置10に割り当てられていたアドレスを、ハンドオーバ後に引き継ぐようにしてもよい。
【0021】
第1の実施の形態の移動通信装置10によれば、無線アクセス網21を利用したデータ通信が行われる。当該データ通信が終了した後、無線アクセス網21から、無線アクセス網21よりカバーエリアの広い無線アクセス網22へのハンドオーバが行われる。無線アクセス網22へのハンドオーバの後、移動通信装置10が待ち受け状態になる。
【0022】
待ち受けの開始時からカバーエリアの広い無線アクセス網22で待ち受けが行われるため、待ち受け中に無線アクセス網21,22を跨がるハンドオーバが発生する可能性が低減される。このため、移動通信装置10はハンドオーバの発生に備えた処理(例えば、無線アクセス網21,22両方の定期的なサーチ)を抑制し、待ち受け中の消費電力を低減することができる。また、移動通信装置10が待ち受け中に無線アクセス網21の基地局をサーチしないことで、消費電力を更に低減できる。
【0023】
また、待ち受け解除後には移動通信装置10が無線アクセス網22から無線アクセス網21へハンドオーバしてデータ通信を行うことで、カバーエリアの狭い無線アクセス網21を優先的に利用することができ、無線アクセス網21の利点(例えば、通信帯域の広さや通信の高速性)を享受できる。また、移動通信装置10が無線アクセス網21,22の間のハンドオーバにおいてアドレスを引き継ぐことで、移動通信装置10の通信相手から移動通信装置10へのサービスの提供が中断されずに継続される。
【0024】
以下に説明する第2の実施の形態では、CDMA2000のEV−DOネットワークとWiMAXネットワークの間でハンドオーバを行う移動通信装置の例を挙げる。ただし、第1の実施の形態の無線アクセス網21,22は、他の種類の無線アクセス網であってもよい。例えば、無線アクセス網21,22は、W−CDMA(Wideband Code Division Multiple Access)、LTE(Long Term Evolution)、LTE−A(Long Term Evolution Advanced)、無線LANなどのネットワークであってもよい。
【0025】
[第2の実施の形態]
図2は、第2の実施の形態の移動通信システムを示す図である。この移動通信システムは、移動局100、無線アクセス網210,220,230、公衆交換電話網(PSTN:Public Switched Telephone Network)310およびIPコアネットワーク320を含む。無線アクセス網210,220,230には、例えば、異なる周波数が割り当てられる。
【0026】
移動局100は、携帯電話機や携帯情報端末装置などの移動無線通信装置である。移動局100は、CDMA2000の1x、CDMA2000のEV−DOおよびWiMAXの3つの通信方式で無線通信を行うことができる。移動局100は、1x方式により音声通信を行い、EV−DO方式またはWiMAX方式によりパケット通信を行う。
【0027】
無線アクセス網210は、CDMA2000の1x方式によって移動局100と音声通信を行うネットワークである。無線アクセス網210は、PSTN310と接続されている。無線アクセス網210は、基地局211を含む複数の基地局およびMSC(Mobile Switching Center)212を含む。複数の基地局それぞれがセルを形成し、複数のセルの集合によって無線アクセス網210のカバーエリアが形成される。無線アクセス網210では、回線交換方式により音声信号が伝送される。
【0028】
基地局211は、移動局100と無線通信を行い、MSC212と有線通信を行う通信装置である。基地局211は、音声信号を移動局100とMSC212の間で中継する。MSC212は、基地局211およびPSTN310と有線通信を行う交換機である。MSC212は、基地局211を介して移動局100と接続を確立する。MSC212は、例えば、基地局211とPSTN310の間で音声信号を中継する。
【0029】
無線アクセス網220は、CDMA2000のEV−DO方式によって移動局100とパケット通信を行うネットワークである。無線アクセス網220は、IPコアネットワーク320と接続されている。無線アクセス網220は、基地局221を含む複数の基地局およびPDSN(Packet Data Serving Node)222を含む。複数の基地局それぞれがセルを形成し、複数のセルの集合によって無線アクセス網220のカバーエリアが形成される。無線アクセス網220では、パケット交換方式によりパケットデータが伝送される。
【0030】
基地局221は、移動局100と無線通信を行い、PDSN222と有線通信を行う通信装置である。基地局221は、パケットデータを移動局100とPDSN222の間で中継する。PDSN222は、基地局221およびIPコアネットワーク320と有線通信を行うゲートウェイ装置である。PDSN222は、基地局221を介して移動局100と接続を確立する。また、PDSN222は、パケットデータを基地局221とIPコアネットワーク320の間で中継する。
【0031】
無線アクセス網230は、WiMAX方式によって移動局100とパケット通信を行うネットワークである。無線アクセス網230は、IPコアネットワーク320と接続されている。無線アクセス網230は、基地局231を含む複数の基地局およびASN(Access Service Network)ゲートウェイ232を含む。複数の基地局それぞれがセルを形成し、複数のセルの集合によって無線アクセス網230のカバーエリアが形成される。無線アクセス網230では、パケット交換方式によりパケットデータが伝送される。
【0032】
基地局231は、移動局100と無線通信を行い、ASNゲートウェイ232と有線通信を行う通信装置である。基地局231は、パケットデータを移動局100とASNゲートウェイ232の間で中継する。ASNゲートウェイ232は、基地局231およびIPコアネットワーク320と有線通信を行うゲートウェイ装置である。ASNゲートウェイ232は、基地局231を介して移動局100と接続を確立する。また、パケットデータを基地局231とIPコアネットワーク320の間で中継する。
【0033】
PSTN310は、回線交換方式によって音声信号を伝送する加入者電話回線ネットワークである。PSTN310は、固定電話機からも利用される。
IPコアネットワーク320は、移動局100のパケット通信を制御し、パケット交換方式によってパケットデータを伝送するIPネットワークである。IPコアネットワーク320は、無線アクセス網220,230と接続されている。IPコアネットワーク320は、ホームエージェント(HA:Home Agent)321および認証・許可・課金(AAA:Authentication, Authorization and Accounting)サーバ322を含む。
【0034】
ホームエージェント321は、無線アクセス網220,230へ接続した移動局100を登録し、移動局100のパケットデータを中継する通信装置である。ホームエージェント321は、利用される無線アクセス網に依存しないIPアドレスとしてホームアドレス(HoA:Home Address)を移動局100に付与する。そして、ホームアドレスが指定されたパケットデータを、PDSN222またはASNゲートウェイ232と移動局100の通信相手との間で中継する。AAAサーバ322は、移動局100の認証や移動局100のユーザへの課金を行うサーバ装置である。AAAサーバ322は、例えば、移動局100が無線アクセス網220,230に接続するときに、移動局100を認証する。
【0035】
このように、ホームエージェント321とAAAサーバ322は、無線アクセス網220を利用したパケット通信と無線アクセス網230を利用したパケット通信とに共通に使用される。ホームエージェント321とAAAサーバ322を用いることで、移動局100が無線アクセス網220と無線アクセス網230の間でハンドオーバを行っても、移動局100に付与されたIPアドレスが維持される(IP継続性(IP Continuity))。IPアドレスが維持されることで、移動局100の通信相手は、移動局100が無線アクセス網220,230を跨がるハンドオーバを行ってもサービスを継続できる。
【0036】
なお、移動局100は、第1の実施の形態の移動通信装置10の一例である。無線アクセス網230は、第1の実施の形態の無線アクセス網21の一例である。無線アクセス網220は、第1の実施の形態の無線アクセス網22の一例である。また、図2では、音声通信を行う基地局211とパケット通信を行う基地局221を異なる基地局としたが、同一の基地局としてもよい。その場合、1つの基地局が、MSC212を利用して移動局100と音声通信を行い、PDSN222を利用して移動局100とパケット通信を行う。
【0037】
図3は、無線通信のカバーエリアの例を示す図である。例えば、無線アクセス網210が1x方式の音声通信を提供するカバーエリアと、無線アクセス網220がEV−DO方式のパケット通信を提供するカバーエリアとは、同一であるかまたは大部分が重複する。一方で、無線アクセス網230がWiMAX方式のパケット通信を提供するカバーエリアは、無線アクセス網210,220のカバーエリアより狭く、無線アクセス網210,220のカバーエリアの一部分と重複する。無線アクセス網230のカバーエリアは、例えば、無線アクセス網210,220のカバーエリア内に点在している。
【0038】
ただし、無線アクセス網230は、無線アクセス網220よりも高速・広帯域のパケット通信を行うことができる。よって、移動局100は、無線アクセス網230のカバーエリア内では、無線アクセス網230を優先的に利用することが好ましい。
【0039】
図4は、無線アクセス網の物理チャネルの例を示す図である。図4は、(A)無線アクセス網210の基地局211が送信する1x方式の物理チャネルと、(B)無線アクセス網220の基地局221が送信するEV−DO方式の物理チャネルの例を示している。
【0040】
基地局211は、異なる周波数でトラフィックチャネル(TCH:Traffic Channel)とページングチャネル(PCH:Paging Channel)と既知のパイロット信号を送信する。トラフィックチャネルには音声信号が含まれ、ページングチャネルには移動局100への着信の有無を示すページング情報が含まれる。移動局100は、待ち受け中、基地局211から間欠的にページング情報を受信して音声着信の有無を判断する。また、無線アクセス網210に接続するとき、パイロット信号を受信して基地局211と同期をとる。
【0041】
基地局221は、同一の周波数において時分割でデータと既知のパイロット信号を送信する。2分の1スロット(1024チップ)のうち、928チップがデータに割り当てられ、96チップがパイロット信号に割り当てられる。データには、移動局100への着信の有無を示すページングの情報が含まれる。移動局100は、待ち受け中、基地局221から間欠的にページング情報を受信して着信の有無を判断する。また、無線アクセス網220に接続するとき、パイロット信号を受信して基地局221と同期をとる。
【0042】
図5は、他の無線アクセス網の物理チャネルの例を示す図である。図5は、無線アクセス網230の基地局231が扱うWiMAX方式の無線フレームの例を示している。
OFDMAでは、無線リソースが周波数および時間方向に細分化されて、各種の物理チャネルに割り当てられる。5ミリ秒の無線フレームは、下りリンク(DL:Downlink)サブフレームと上りリンク(UL:Uplink)サブフレームを含む。DLサブフレームとULサブフレームの間には、TTG(Transmit Transition Gap)と呼ばれるインターバルが挿入される。ULサブフレームと次の無線フレームのDLサブフレームの間には、RTG(Receive Transition Gap)と呼ばれるインターバルが挿入される。
【0043】
基地局231が送信するDLサブフレームは、プリアンブル、FCH(Frame Control Header)、DL−MAP、UL−MAPおよびDLバーストを含む。移動局100が送信するULサブフレームは、レンジング領域およびULバーストを含む。
【0044】
プリアンブルは、既知のパイロット信号である。FCHは、移動局100がMAP領域を認識するための情報を含む。DL−MAPは、DLバーストへの無線リソースの割り当てを示す制御情報である。なお、UL−MAPも、DLバーストの一部として取り扱われる。UL−MAPは、ULバーストへの無線リソースの割り当てを示す制御情報である。なお、レンジング領域も、ULバーストの一部として取り扱われる。DLバーストには、パケットデータやページング情報が含まれ得る。また、DLバーストには、ULチャネル記述子(UCD:Uplink Channel Descriptor)が含まれ得る。ULチャネル記述子は、ULバーストで使用できる変調符号化方式など、ULサブフレームの物理特性を示す。
【0045】
レンジング領域では、移動局100が基地局231に対し、所定の信号系列であるレンジングコードを送信することができる。基地局231は、レンジングコードを検出することで、自局にアクセスする移動局の存在を認識する。ULバーストでは、移動局100が基地局231に対し、パケットデータを送信することができる。移動局100は、無線アクセス網230に接続するとき、プリアンブルを受信して基地局231と同期をとり、レンジング領域でレンジングコードを基地局231に送信する。また、待ち受け中、基地局231から間欠的にページング情報を受信して着信の有無を判断する。
【0046】
図6は、ページング情報の受信タイミングの例を示す図である。移動局100は、音声通信に関して、アイドルモード(待ち受け状態)である間、基地局211から間欠的にページング情報を受信する。また、パケット通信に関して、EV−DO方式のアイドルモードになった場合、基地局221から間欠的にページング情報を受信し、WiMAX方式のアイドルモードになった場合、基地局231から間欠的にページング情報を受信する。
【0047】
例えば、移動局100は、アイドルモードの間、基地局211から5.12秒毎にページング情報を受信する(A)。また、移動局100は、EV−DO方式のアイドルモードの間、基地局221から5.12秒毎にページング情報を受信する(B)。ただし、アイドルモードに遷移して15分が経過した後は、基地局221から20.48秒毎にページング情報を受信すればよい。基地局211,221は、1x方式のページングのタイミングとEV−DO方式のページングのタイミングとが異なるように調整する。
【0048】
また、移動局100は、WiMAX方式のアイドルモードの間、基地局231から5.21秒毎にページング情報を受信する(C)。WiMAX方式のページングのタイミングは、1x方式またはEV−DO方式のページングのタイミングと重なる可能性がある。その場合、移動局100は、当該タイミングにおいて複数の通信方式の受信処理を行うことになる。ただし、後述するように、移動局100は、パケット通信の終了後、原則としてWiMAX方式のアイドルモードでなくEV−DO方式のアイドルモードに遷移する。
【0049】
図7は、移動局の例を示すブロック図である。移動局100は、アンテナ111,112,113,114、無線受信部120、受信処理部130、端末制御部140、入力部151、表示部152、送信処理部160および無線送信部170を有する。
【0050】
アンテナ111,113は、送信・受信兼用のアンテナである。アンテナ112,114は、受信用のアンテナである。アンテナ111,112は、無線アクセス網210,220から無線信号を受信する。また、アンテナ111は、無線アクセス網210,220に無線信号を送信する。アンテナ113,114は、無線アクセス網230から無線信号を受信する。また、アンテナ113は、無線アクセス網230に無線信号を送信する。
【0051】
無線受信部120は、受信された高周波の無線信号をベースバンド信号にダウンコンバートし、ベースバンド信号を受信処理部130に出力する。無線受信部120は、CDMA受信部121およびOFDMA受信部122を有する。
【0052】
CDMA受信部121は、アンテナ111,112で受信された1x方式およびEV−DO方式の無線信号を処理する。アンテナ111,112を用いて、ダイバーシティやMIMO(Multiple Input Multiple Output)通信が行われてもよい。OFDMA受信部122は、アンテナ113,114で受信されたWiMAX方式の無線信号を処理する。アンテナ113,114を用いて、ダイバーシティやMIMO通信が行われてもよい。
【0053】
受信処理部130は、無線受信部120からベースバンド信号を取得し、復調や誤り訂正復号を含むベースバンド処理を行って、音声信号やパケットデータ、制御情報を抽出する。受信処理部130は、信号処理部131,132,133を有する。
【0054】
信号処理部131は、CDMA受信部121からベースバンド信号を取得して、1x方式のベースバンド処理を行い、音声信号などを抽出する。信号処理部132は、CDMA受信部121からベースバンド信号を取得して、EV−DO方式のベースバンド処理を行い、パケットデータなどを抽出する。信号処理部131,132で行われるベースバンド処理には、逆拡散復調が含まれる。信号処理部133は、OFDMA受信部122からベースバンド信号を取得して、WiMAX方式のベースバンド処理を行い、パケットデータなどを抽出する。信号処理部133で行われるベースバンド処理には、高速フーリエ変換(FFT:Fast Fourier Transform)が含まれる。
【0055】
端末制御部140は、無線受信部120、受信処理部130、送信処理部160および無線送信部170による無線通信を制御する。例えば、基地局211,221,231のサーチ、音声通信やパケット通信、ハンドオーバ、アクティブモードとアイドルモードの切り替えなどを制御する。また、端末制御部140は、入力部151および表示部152により実現されるユーザインタフェースを制御する。端末制御部140は、CPU(Central Processing Unit)とRAM(Random Access Memory)を用いて実装してもよい。
【0056】
入力部151は、ユーザの操作を受け付ける入力デバイスである。入力部151としては、例えば、キーの押下を検出するキーパッドや、タッチ位置を検出するタッチパネルを用いることができる。表示部152は、画像を表示するディスプレイである。表示部152としては、例えば、液晶ディスプレイ(LCD:Liquid Crystal Display)や有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイを用いることができる。
【0057】
送信処理部160は、移動局100で発生した音声信号やパケットデータを取得し、誤り訂正符号化や変調を行って、送信信号としてのベースバンド信号を生成する。送信処理部160は、信号処理部161,162,163を有する。
【0058】
信号処理部161は、音声信号などを取得して、1x方式のベースバンド処理を行う。信号処理部162は、パケットデータなどを取得して、EV−DO方式のベースバンド処理を行う。信号処理部161,162で行われるベースバンド処理には、拡散変調が含まれる。信号処理部163は、パケットデータなどを取得し、WiMAX方式のベースバンド処理を行う。信号処理部163で行われるベースバンド処理には、逆高速フーリエ変換(IFFT:Inverse Fast Fourier Transform)が含まれる。
【0059】
無線送信部170は、送信処理部160から取得したベースバンド信号を高周波の無線信号にアップコンバートし、無線信号をアンテナ111,113に出力する。無線送信部170は、CDMA送信部171およびOFDMA送信部172を有する。
【0060】
CDMA送信部171は、信号処理部161から取得した1x方式のベースバンド信号を処理し、アンテナ111に無線信号を出力する。また、信号処理部162から取得したEV−DO方式のベースバンド信号を処理し、アンテナ111に無線信号を出力する。OFDMA送信部172は、信号処理部163から取得したWiMAX方式のベースバンド信号を処理し、アンテナ113に無線信号を出力する。
【0061】
移動局100は、アイドルモード中は、送信処理部160および無線送信部170を停止することができる。また、後述するように、パケット通信についてはWiMAX方式でなくEV−DO方式のアイドルモードを用いるため、OFDMA受信部122および信号処理部133も停止することができる。また、移動局100は、アイドルモード中は、CDMA受信部121および信号処理部131,132を、ページング情報を受信するタイミングで間欠的に動作させ、それ以外のタイミングでは停止させる。ここで、停止処理には、電力供給の停止や、クロック周波数の低下などの処理が含まれ得る。
【0062】
なお、無線受信部120、受信処理部130、送信処理部160および無線送信部170は、第1の実施の形態の無線通信部11の一例である。端末制御部140は、第1の実施の形態の制御部12の一例である。
【0063】
図8は、端末制御部の例を示すブロック図である。端末制御部140は、無線ドライバ141,141a、サーチ制御部142,142a、アイドル制御部143,143a、データ通信制御部144,144a、ハンドオーバ制御部145,145a、無線制御部146およびIPスタック147を有する。なお、図8では、無線アクセス網220,230を利用したパケット通信に関するブロックを示しており、他のブロック(例えば、無線アクセス網210を利用した音声通信に関するブロックなど)は省略している。
【0064】
無線ドライバ141は、EV−DO方式のパケット通信に関して、信号処理部132,162の信号処理を制御する。無線ドライバ141aは、WiMAX方式のパケット通信に関して、信号処理部133,163の信号処理を制御する。
【0065】
サーチ制御部142は、無線アクセス網220の基地局のサーチを、無線ドライバ141を介して信号処理部132に指示する。サーチ制御部142aは、無線アクセス網230の基地局のサーチを、無線ドライバ141aを介して信号処理部133に指示する。
【0066】
アイドル制御部143は、EV−DO方式のパケット通信の開始や終了を検知し、アクティブモードとアイドルモードの切り替えを、無線ドライバ141を介して信号処理部132,162に指示する。アイドル制御部143aは、WiMAX方式のパケット通信の開始や終了を検知し、アクティブモードとアイドルモードの切り替えを、無線ドライバ141aを介して信号処理部133,163に指示する。
【0067】
データ通信制御部144は、EV−DO方式のパケット通信を制御する。データ通信制御部144aは、WiMAX方式のパケット通信を制御する。
ハンドオーバ制御部145は、無線アクセス網220の基地局の間のハンドオーバや、無線アクセス網230の基地局(基地局231など)から無線アクセス網220の基地局(基地局221など)へのハンドオーバを制御する。ハンドオーバ制御部145aは、無線アクセス網230の基地局の間のハンドオーバや、無線アクセス網220の基地局から無線アクセス網230の基地局へのハンドオーバを制御する。
【0068】
無線制御部146は、無線アクセス網220,230への接続やハンドオーバ、アクティブモードとアイドルモードの切り替えなどの制御を統括する。無線アクセス網220,230に跨がるハンドオーバでは、無線制御部146は、IP継続性(IP Continuity)が実現されるように制御する。すなわち、ハンドオーバ前にホームエージェント321から割り当てられたホームアドレスが、ハンドオーバ後に引き継がれるようにする。
【0069】
IPスタック147は、ホームエージェント321から割り当てられたホームアドレスとしてのIPアドレスを記憶する。無線アクセス網230から無線アクセス網220へのハンドオーバの際には、IPスタック147に記憶されたIPアドレスが、無線制御部146によってハンドオーバ制御部145に提供される。無線アクセス網220から無線アクセス網230へのハンドオーバの際には、IPスタック147に記憶されたIPアドレスが、無線制御部146によってハンドオーバ制御部145aに提供される。
【0070】
図9は、アイドル状態への遷移を示すフローチャートである。以下、図9に示す処理をステップ番号に沿って説明する。
(ステップS11)端末制御部140は、無線アクセス網220(EV−DO方式)または無線アクセス網230(WiMAX方式)によるパケット通信の終了を検知する。
【0071】
(ステップS12)端末制御部140は、他に音声通信やパケット通信が発生していないことを確認し、アクティブモードからアイドルモードに遷移することを決定する。
(ステップS13)端末制御部140は、パケット通信のために、無線アクセス網220,230のうち無線アクセス網230(WiMAX方式)に接続中であるか判断する。無線アクセス網230に接続中である場合、処理をステップS14に進める。無線アクセス網220(EV−DO方式)に接続中である場合、処理をステップS17に進める。
【0072】
(ステップS14)端末制御部140は、信号処理部132,133,162,163を制御し、無線アクセス網230の基地局231から無線アクセス網220の基地局221へのハンドオーバを行う。ハンドオーバは、基地局231との接続を切断する前に基地局221との接続を確立するハンドオーバ(MBBHO:Make-Before-Break Handover)とする。当該ハンドオーバの際、端末制御部140は、移動局100に割り当てられたホームアドレスを引き継ぐ。IP継続性を維持したハンドオーバの手順は後述する。
【0073】
(ステップS15)端末制御部140は、信号処理部132,162を制御し、移動局100を無線アクセス網220(EV−DO方式)のアイドルモードに遷移させる。
(ステップS16)端末制御部140は、送信処理部160と無線送信部170の信号処理を停止させる。また、OFDMA受信部122と信号処理部133(WiMAXの信号処理を行う回路)の信号処理を停止させる。また、CDMA受信部121と信号処理部131,132を、ページングのタイミングに合わせて間欠的に動作させる。
【0074】
(ステップS17)端末制御部140は、信号処理部132,162を制御し、移動局100を無線アクセス網220(EV−DO方式)のアイドルモードに遷移させる。端末制御部140は、送信処理部160と無線送信部170の信号処理を停止させる。また、CDMA受信部121と信号処理部131,132を間欠的に動作させる。
【0075】
これにより、移動局100は、アイドルモードの間、無線アクセス網230(WiMAX方式)の基地局231をサーチしない。また、移動局100は、アイドルモードの間、無線アクセス網210(1x方式)の基地局211と無線アクセス網220(EV−DO方式)の基地局221から、間欠的にページング情報を受信する。
【0076】
図10は、アクティブ状態への遷移を示すフローチャートである。以下、図10に示す処理をステップ番号に沿って説明する。
(ステップS21)端末制御部140は、アイドルモード中、アクティブモードへ復帰してパケット通信を行うトリガを検出する。パケット通信のトリガとしては、無線アクセス網220の基地局221から移動局100の呼び出しを示すページング情報が受信されたことや、送信するパケットデータが移動局100内で発生したことが挙げられる。
【0077】
(ステップS22)端末制御部140は、信号処理部132,162を制御し、移動局100を無線アクセス網220(EV−DO方式)のアクティブモードに遷移させる。
(ステップS23)端末制御部140は、OFDMA受信部122と信号処理部133の信号処理を再開させる。信号処理部133は、パイロット信号(プリアンブルなど)に基づいて、無線アクセス網230(WiMAX方式)の基地局231をサーチする。
【0078】
(ステップS24)端末制御部140は、信号処理部133のサーチの結果、無線アクセス網230(WiMAX方式)の基地局231に接続可能か判断する。例えば、基地局231からの無線信号の受信レベルが閾値を超えると接続可能と判断する。接続可能な場合、処理をステップS25に進める。接続不可の場合、処理をステップS27に進める。
【0079】
(ステップS25)端末制御部140は、信号処理部132,133,162,163を制御し、無線アクセス網220の基地局221から無線アクセス網230の基地局231へのハンドオーバを行う。ハンドオーバは、基地局221との接続を切断する前に基地局231との接続を確立するMBBHOとする。当該ハンドオーバの際、端末制御部140は、移動局100に割り当てられたホームアドレスを引き継ぐ。
【0080】
(ステップS26)端末制御部140は、無線アクセス網230(WiMAX方式)を利用したパケット通信を決定する。OFDMA受信部122、信号処理部133,163およびOFDMA送信部172は、基地局231とパケット通信を行う。
【0081】
(ステップS27)端末制御部140は、無線アクセス網220(EV−DO方式)を利用したパケット通信を決定する。CDMA受信部121、信号処理部132,162およびCDMA送信部171は、基地局221とパケット通信を行う。
【0082】
図11は、無線アクセス網への初期接続の例を示すシーケンス図である。図11は、WiMAX方式により、移動局100が無線アクセス網230の基地局231に接続するときの無線区間の手順を示している。
【0083】
(ステップS31)基地局231は、無線フレームにおいて、無線リソースの割り当てを示すDL−MAPとUL−MAPを送信している。移動局100は、基地局231からDL−MAPを受信してUL−MAPの位置を確認し、UL−MAPを受信する。
【0084】
(ステップS32)基地局231は、無線フレームのDLバーストにおいて、ULサブフレームの物理特性(使用可能な変調符号化方式など)を示すULチャネル記述子を送信している。移動局100は、DL−MAPを参照して、ULチャネル記述子を受信する。
【0085】
(ステップS33)移動局100は、基地局231から受信したUL−MAPとULチャネル記述子を参照して、レンジング領域の位置と使用可能なレンジングコードを特定する。そして、レンジング領域でレンジングコードを送信する。
【0086】
(ステップS34)基地局231は、レンジングコードを検出すると、レンジング応答(RNG−RSP)メッセージをセル内に送信する。なお、この時点では、基地局231は、レンジングコードの送信元が移動局100であることを認識していない。
【0087】
(ステップS35)基地局231は、レンジングコードの送信元に、ULバーストの無線リソースを割り当てる。そして、割り当て結果を反映したUL−MAPを送信する。
(ステップS36)移動局100は、基地局231からRNG−RSPメッセージを受信すると、UL−MAPを参照して、移動局100に割り当てられたULバーストの無線リソースを確認する。そして、当該無線リソースを用いて、レンジング要求(RNG−REQ)メッセージを基地局231に送信する。RNG−REQメッセージには、移動局100を識別するためのMAC(Medium Access Control)アドレスが含まれる。
【0088】
(ステップS37)基地局231は、RNG−REQメッセージを受信して移動局100を認識し、コネクションを識別するためのコネクションIDを付与する。そして、コネクションIDを含むレンジング応答(RNG−RSP)メッセージを送信する。
【0089】
(ステップS38)移動局100は、RNG−RSPメッセージを基地局231から受信すると、登録要求(REG−REQ)メッセージを基地局231に送信する。REG−REQメッセージには、移動局100の通信能力を示す情報が含まれる。
【0090】
(ステップS39)基地局231は、移動局100からREG−REQメッセージを受信し、移動局100の通信能力と基地局231の通信能力に基づいて、移動局100と基地局231の間の無線通信の運用モードを決定する。そして、決定した運用モードの情報を含む登録応答(REG−RSP)メッセージを移動局100に送信する。
【0091】
次に、IPアドレスを維持したハンドオーバの手順について説明する。まず、WiMAX方式の無線アクセス網230からEV−DO方式の無線アクセス網220へのハンドオーバを説明し、その後、無線アクセス網220から無線アクセス網230へのハンドオーバを説明する。なお、EV−DOネットワークとWiMAXネットワークの間のハンドオーバの例については、前述の非特許文献1(Peretz Feder, Ramana Isukapalli and Semyon Mizikovsky, "WiMAX-EVDO Interworking Using Mobile IP")にも記載されている。
【0092】
図12は、第1のハンドオーバの例を示すシーケンス図である。
(ステップS111)移動局100は、基地局231を介してASNゲートウェイ232と通信し、無線アクセス網230への接続を行う。移動局100と基地局231の間の無線区間では、図11に示したような手順が実行される。
【0093】
(ステップS112)ASNゲートウェイ232は、AAAサーバ322に移動局100の認証を要求する。AAAサーバ322は、EPA(Extensible Authentication Protocol)を用いて移動局100を認証する。EPA認証では、例えば、移動局100の識別子としてNAI(Network Address Identifier)が用いられる。AAAサーバ322は、移動局100の認証に成功すると、移動局100のパケットデータを中継するホームエージェントとして、ホームエージェント321を指定する。
【0094】
(ステップS113)ASNゲートウェイ232は、基地局231を介して移動局100との間に、初期サービスフロー(Initial Service Flow)を確立する。
(ステップS114)移動局100は、DHCP(Dynamic Host Configuration Protocol)を用いて通信の設定情報を取得するため、DHCP DISCOVERメッセージをASNゲートウェイ232に送信する。
【0095】
(ステップS115)ASNゲートウェイ232は、MIP(Mobile Internet Protocol)登録要求を、AAAサーバ322から指定されたホームエージェント321に送信する。ASNゲートウェイ232は、PMIP(Proxy Mobile Internet Protocol)クライアントとして機能する。MIP登録要求には、移動局100がWiMAXネットワークに存在することを示す情報(PMIP access-technology type extension)が含まれる。
【0096】
(ステップS116)ホームエージェント321は、移動局100が未登録であることを検出する。すると、MIP登録要求を有効にする(validate)ためのキー(MN−HA(Mobile Node - Home Agent)キー)を、AAAサーバ322に要求する。
【0097】
(ステップS117)AAAサーバ322は、ホームエージェント321にMN−HAキーを送信する。ホームエージェント321は、AAAサーバ322から受信したMN−HAキーを用いて、MIP登録要求を有効にする。
【0098】
(ステップS118)ホームエージェント321は、ホームアドレスとしてのIPアドレスを移動局100に割り当て、移動局100を登録する。そして、MIP登録応答を、ASNゲートウェイ232に送信する。
【0099】
(ステップS119)ASNゲートウェイ232は、ホームエージェント321によって割り当てられたIPアドレスを含むDHCP OFFERメッセージを、基地局231を介して移動局100に送信する。
【0100】
(ステップS120)移動局100は、DHCP OFFERメッセージによってASNゲートウェイ232から提示された設定情報に問題がないか確認し、問題がなければ、DHCP REQUESTメッセージをASNゲートウェイ232に送信する。
【0101】
(ステップS121)ASNゲートウェイ232は、DHCP OFFERメッセージで提示した設定情報(IPアドレスを含む)を正式に移動局100に適用することを決定する。そして、DHCP ACKメッセージを移動局100に送信する。
【0102】
(ステップS122)ASNゲートウェイ232は、基地局231を介して移動局100との間に、サービスフローを確立する。
(ステップS123)ASNゲートウェイ232は、無線アクセス網230を利用することによる移動局100への課金を開始するよう、AAAサーバ322に通知する。
【0103】
(ステップS124)ASNゲートウェイ232を介して、移動局100とホームエージェント321との間にデータパスが確立される。これにより、移動局100のパケットデータが、当該データパスに沿って伝送される。
【0104】
(ステップS125)移動局100は、無線アクセス網230(WiMAX方式)から無線アクセス網220(EV−DO方式)へハンドオーバすることを決定する。すると、移動局100は、基地局221と同期し、基地局221を介してPDSN222と接続を確立する。接続の確立は、例えば、3GPP2(3rd Generation Partnership Project 2)規格A−S008−Aの方法を用いる。
【0105】
図13は、第1のハンドオーバの例を示すシーケンス図(続き)である。
(ステップS126)PSDN222は、AAAサーバ322に移動局100の認証を要求する。AAAサーバ322は、RAN(Radio Access Network)認証を行う。
【0106】
(ステップS127)移動局100は、PPP(Point-to-Point Protocol)ネゴシエーションにより、PDSN222との間でPPPセッションを確立する。
(ステップS128)PDSN222は、FA advertisementメッセージと呼ばれるMIPメッセージを、基地局221を介して移動局100に送信する。
【0107】
(ステップS129)移動局100は、MIP登録要求を、基地局221を介してPDSN222に送信する。このMIP登録要求には、移動局100に割り当てられたホームアドレスが含まれる。または、ホームアドレスに代えて、全ビットが0または1のビット列がMIP登録要求に挿入される。
【0108】
(ステップS130)PDSN222は、AAAサーバ322にアクセスする。AAAサーバ322は、移動局100に対してホームエージェントが既に指定されているか確認する。ここでは、ホームエージェント321が移動局100に対して指定されている。
【0109】
(ステップS131)AAAサーバ322は、既に移動局100に対して指定済みであるホームエージェント321の情報を含むアクセス応答をPDSN222に送信する。
(ステップS132)PDSN222は、AAAサーバ322から指定されたホームエージェント321に、MIP登録要求を送信する。このMIP登録要求には、移動局100がEV−DOネットワークに存在するため、WiMAXネットワークに存在することを示す情報(PMIP access-technology type extension)が含まれない。これにより、移動局100がEV−DOネットワークに存在することを識別できる。
【0110】
(ステップS133)ホームエージェント321は、移動局100が登録済みであることを検出する。また、MN−HAキーをAAAサーバ322に要求し、AAAサーバ322から受信したMN−HAキーを用いてMIP登録要求を有効にする(validate)。
【0111】
(ステップS134)ホームエージェント321は、移動局100に割り当て済みのホームアドレスを維持し、MIP登録応答をPDSN222に送信する。
(ステップS135)PDSN222は、無線アクセス網220を利用することによる移動局100への課金を開始するよう、AAAサーバ322に通知する。
【0112】
(ステップS136)PDSN222は、MIP登録応答を移動局100に送信する。
(ステップS137)PDSN222を介して、移動局100とホームエージェント321との間にデータパスが確立される。これにより、移動局100のパケットデータが、当該データパスに沿って伝送される。
【0113】
(ステップS138)移動局100から無線アクセス網220(EV−DO方式)への接続が完了して無線アクセス網220を利用したデータパスが確立された後、移動局100から無線アクセス網230(WiMAX方式)への接続が切断される。
【0114】
(ステップS139)ASNゲートウェイ232は、無線アクセス網230を利用することによる移動局100への課金を停止するよう、AAAサーバ322に通知する。
このように、無線アクセス網230から無線アクセス網220に、移動局100に割り当てられたIPアドレスを維持してハンドオーバすることができる。
【0115】
図14は、第2のハンドオーバの例を示すシーケンス図である。
(ステップS211)移動局100は、アイドルモードからアクティブモードに遷移すると、基地局221と同期し、基地局221を介してPDSN222と接続を確立する。
【0116】
(ステップS212)PSDN222は、AAAサーバ322に移動局100の認証を要求する。AAAサーバ322は、RAN認証を行う。
(ステップS213)移動局100は、PPPネゴシエーションにより、PDSN222との間でPPPセッションを確立する。
【0117】
(ステップS214)PDSN222は、FA advertisementメッセージと呼ばれるMIPメッセージを移動局100に送信する。
(ステップS215)移動局100は、MIP登録要求をPDSN222に送信する。MIP登録要求には、ホームアドレス、または、0または1のビット列が含まれる。
【0118】
(ステップS216)PDSN222は、AAAサーバ322にアクセスする。AAAサーバ322は、移動局100に対してホームエージェントが既に指定されているか確認する。ここでは、ホームエージェント321が移動局100に対して指定されている。
【0119】
(ステップS217)AAAサーバ322は、既に移動局100に対して指定済みであるホームエージェント321の情報を含むアクセス応答をPDSN222に送信する。
(ステップS218)PDSN222は、AAAサーバ322から指定されたホームエージェント321に、MIP登録要求を送信する。MIP登録要求には、WiMAXネットワークに存在することを示す情報は含まれない。これにより、移動局100がEV−DOネットワークに存在することを識別できる。
【0120】
(ステップS219)ホームエージェント321は、移動局100が登録済みであることを検出する。また、MN−HAキーをAAAサーバ322に要求し、AAAサーバ322から受信したMN−HAキーを用いてMIP登録要求を有効にする。
【0121】
(ステップS220)ホームエージェント321は、移動局100に割り当て済みのホームアドレスを維持し、MIP登録応答をPDSN222に送信する。
(ステップS221)PDSN222は、無線アクセス網220を利用することによる移動局100への課金を開始するよう、AAAサーバ322に通知する。
【0122】
(ステップS222)PDSN222は、MIP登録応答を移動局100に送信する。
(ステップS223)PDSN222を介して、移動局100とホームエージェント321との間にデータパスが確立される。これにより、移動局100のパケットデータが、当該データパスに沿って伝送できるようになる。
【0123】
(ステップS224)移動局100は、無線アクセス網230への接続を行う。
(ステップS225)ASNゲートウェイ232は、AAAサーバ322に移動局100の認証を要求する。AAAサーバ322は、移動局100のEPA認証を行う。また、AAAサーバ322は、移動局100に対してホームエージェント321を指定する。
【0124】
図15は、第2のハンドオーバの例を示すシーケンス図(続き)である。
(ステップS226)ASNゲートウェイ232は、基地局231を介して移動局100との間に、初期サービスフローを確立する。
【0125】
(ステップS227)移動局100は、DHCPを用いて通信の設定情報を取得するため、DHCP DISCOVERメッセージをASNゲートウェイ232に送信する。
(ステップS228)ASNゲートウェイ232は、MIP登録要求を、AAAサーバ322から指定されたホームエージェント321に送信する。MIP登録要求には、移動局100がWiMAXネットワークに存在することを示す情報が含まれる。
【0126】
(ステップS229)ホームエージェント321は、MIP登録要求を有効にする(validate)ためのMN−HAを、AAAサーバ322に要求する。
(ステップS230)AAAサーバ322は、ホームエージェント321にMN−HAキーを送信する。ホームエージェント321は、AAAサーバ322から受信したMN−HAキーを用いて、MIP登録要求を有効にする。
【0127】
(ステップS231)ホームエージェント321は、移動局100に割り当て済みのホームアドレスを維持し、ASNゲートウェイ232にMIP登録応答を送信する。
(ステップS232)ASNゲートウェイ232は、DHCP OFFERメッセージを、基地局231を介して移動局100に送信する。
【0128】
(ステップS233)移動局100は、DHCP REQUESTメッセージを、基地局231を介してASNゲートウェイ232に送信する。
(ステップS234)ASNゲートウェイ232は、DHCP ACKメッセージを、基地局231を介して移動局100に送信する。
【0129】
(ステップS235)ASNゲートウェイ232は、基地局231を介して移動局100との間にサービスフローを確立する。
(ステップS236)ASNゲートウェイ232は、無線アクセス網230を利用することによる移動局100への課金を開始するよう、AAAサーバ322に通知する。
【0130】
(ステップS237)ASNゲートウェイ232を介して、移動局100とホームエージェント321との間にデータパスが確立される。これにより、移動局100のパケットデータが、当該データパスに沿って伝送される。
【0131】
(ステップS238)移動局100から無線アクセス網230(WiMAX方式)への接続が完了して無線アクセス網230を利用したデータパスが確立された後、移動局100から無線アクセス網220(EV−DO方式)への接続が切断される。
【0132】
(ステップS239)PDSN2222は、無線アクセス網220を利用することによる移動局100への課金を停止するよう、AAAサーバ322に通知する。
このように、無線アクセス網220から無線アクセス網230に、移動局100に割り当てられたIPアドレスを維持してハンドオーバすることができる。
【0133】
なお、以上の説明では、移動局100は、ハンドオーバとしてMBBHOを行うこととしたが、BBMHO(Break-Before-Make Handover)を行ってもよい。その場合、移動局100は、無線アクセス網230から無線アクセス網220へのハンドオーバでは、基地局231との接続を切断した後に基地局221との接続を確立する。また、無線アクセス網220から無線アクセス網230へのハンドオーバでは、基地局221との接続を切断した後に基地局231との接続を確立する。
【0134】
第2の実施の形態の移動通信システムによれば、カバーエリアの狭い無線アクセス網230のパケット通信後でも、カバーエリアの広い無線アクセス網220へのハンドオーバが行われて、無線アクセス網230の受信処理が停止される。よって、アイドルモード中に、無線アクセス網220に加えて無線アクセス網230についてページング情報の受信や基地局のサーチを行わなくてよく、アイドルモード中の移動局100の消費電力を低減できる。また、無線アクセス網220のページングのタイミングと無線アクセス網230のページングのタイミングが同じであっても、移動局100の負荷の増大を回避できる。
【0135】
また、アイドルモードの解除後は、移動局100が無線アクセス網220から無線アクセス網230へハンドオーバしてパケット通信を行うことで、無線アクセス網230を優先的に利用でき、無線アクセス網230の利点を享受できる。また、移動局100が無線アクセス網220,230の間のハンドオーバにおいてIPアドレスを引き継ぐことで、移動局100は継続してIPサービスの提供を受けることができる。
【符号の説明】
【0136】
10 移動通信装置
11 無線通信部
12 制御部
21,22 無線アクセス網

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の無線アクセス網を利用したデータ通信と、前記第1の無線アクセス網よりカバーエリアの広い第2の無線アクセス網を利用したデータ通信とが可能な無線通信部と、
前記第1の無線アクセス網を利用したデータ通信が終了した後、前記第1の無線アクセス網から前記第2の無線アクセス網へのハンドオーバを行ってから、自装置を待ち受け状態に遷移させる制御部と、
を有する移動通信装置。
【請求項2】
前記無線通信部は、前記待ち受け状態の間、前記第1の無線アクセス網の基地局をサーチしない、請求項1記載の移動通信装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記待ち受け状態が解除されると、前記第1の無線アクセス網の基地局の検出状況に応じて、前記第2の無線アクセス網から前記第1の無線アクセス網へのハンドオーバを行う、請求項1または2記載の移動通信装置。
【請求項4】
前記制御部は、自装置に割り当てられたアドレスが引き継がれるように、前記第1の無線アクセス網から前記第2の無線アクセス網へのハンドオーバを行う、請求項1乃至3の何れか一項に記載の移動通信装置。
【請求項5】
複数の無線アクセス網を利用可能な移動通信装置の無線通信方法であって、
第1の無線アクセス網を利用してデータ通信を行い、
前記データ通信が終了した後、前記第1の無線アクセス網から、前記第1の無線アクセス網よりカバーエリアの広い第2の無線アクセス網へのハンドオーバを行い、
前記第2の無線アクセス網へのハンドオーバの後、待ち受け状態に遷移する、
無線通信方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2012−227735(P2012−227735A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−93568(P2011−93568)
【出願日】平成23年4月20日(2011.4.20)
【出願人】(310022372)富士通モバイルコミュニケーションズ株式会社 (219)
【Fターム(参考)】