説明

移植可能な生体材料およびその調製方法

本発明は、骨組織を得るステップと、骨組織をボイルするステップと、コラーゲンを除去するために前記骨組織を処置するステップとを含む、移植可能な生体材料の調製方法に関する。本発明は、前記プロセスによって調製した移植可能な生体材料も提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規の移植可能な生体材料(移植可能な骨移植組織)の調製方法に関する。特に、本発明は、無機性(anorganic)の移植可能な生体材料の調製方法および前記方法によって得ることができる移植可能な生体材料に関する。
【背景技術】
【0002】
骨組織の移植は、ほとんどの整形外科手術分野で日常的に使用されている技術である。自家移植片(すなわち、レシピエントの身体の異なる部分から得た骨)の使用により、レシピエントがさらなる手術を必要とし、ドナー部位が罹患する。しかし、自家移植片の使用は、患者にとって苦痛であり、ドナー部位が合併症を罹患するリスクを含み得るので、完全に満足できるものではない。さらに、多数の手術において大量の骨組織が必要とされ、これは自家移植に適合しない。骨の同種移植片または異種移植片の使用は、それぞれ、ドナー由来の骨組織からの同種または異種のレシピエントへの移植を含む。移植を実施するために、骨組織を清潔且つ純粋になるように処置することが必要である。処置に起因する骨組織の機械的性質の変化および免疫原性による拒絶は、骨の異種移植片および同種移植片における共通の問題である。
【0003】
同種移植片は、ウイルス感染リスクおよび再コロニー形成の失敗のような他の欠点も有する一方で、異種移植片は強い免疫拒絶を引き起こす。ほとんどの免疫拒絶は、骨組織中に含まれるタンパク質ならびに髄様組織中の細胞残屑/他の成分に由来する。遅い/不正確な再コロニー形成は、タンパク質(主にコラーゲン)が細胞外基質に埋め込まれ、それにより、骨芽細胞の透過のための空間が不十分になることに起因する。
【0004】
拒絶および再コロニー形成に関する問題を解決するために、骨組織からのタンパク質の除去は、移植前の主なステップである。しかし、動物骨の処理で使用されるほとんどの溶媒は非常に有毒である。例えば、US5,585,116は、選択的な尿素ベースの除去剤と組み合わせた有毒溶媒を使用したタンパク質除去方法を記載している。さらに、これらの溶媒は、骨組織の空隙率が高いためにリンスによって完全に除去することは容易ではない。溶媒処置骨組織の処理に関して、複雑さおよびコストの高さに関する他の問題も存在する。
【0005】
US5,725,579およびUS6,217,614は、超臨界状態(supercritical state)の流動物(例えば、二酸化炭素(CO2))で骨組織を処置するステップを含む骨有機基質(主にコラーゲン)の調製方法を記載している。したがって、この方法は、超臨界状態の流動物を使用する必要がある。さらに、この方法は、プロテアーゼを使用したタンパク質の除去ステップが必要である。これらの超臨界状態の流動物の使用ステップおよびタンパク質除去ステップは、非常に費用のかかる過程である。
【0006】
別の適切な移植材料は、コラーゲン基質中に多孔質の骨無機質ナノ粒子を含む粒子状骨無機質製品である、Ed.Geistlich Sohne AG Fur Chemische IndustrieのBio-Oss Collagenである。ナノ粒子は、天然の骨に由来し、平均直径が0.1〜10μmの範囲である。Bio-Oss Collagenは、U.S.5,573,771にも記載されている。Bio-Ossに関する問題は、ナノ粒子を移植可能な骨移植組織として適切な三次元足場構造に成形することの難しさにある。Osteograft/N(CeraMed,Lakewood,CO)およびOsteoGen(Impladent,Hollisville,NY)などの他の異種移植片は、構造が変化していた。一般に、有機基質を除去する一般的方法は、加熱である。しかし、結晶が約600℃に加熱されると、再結晶が起こり、結晶が成長する傾向があり、それにより、材料の構造が変化する。さらに、成分によっては喪失するものもあれば改変するものもある。結果として、これら全ての異種移植片は、表面積が小さくなり、いくつかの孔が失われて弾力性が減少する傾向がある。
【0007】
上記問題を考慮して、新規の適切な実用的且つ低価格な移植可能な生体材料がこの技術分野で必要である。
【発明の開示】
【0008】
本発明は、処理に関連する全ての上記問題を軽減することを目的とし、骨誘導性が高く、骨伝導性が高く、生体適合性を示し、且つ天然の骨に匹敵する機械的強度を有する移植可能な生体材料を提供する。最も重要なことは、非常に低価格であり、且つ処理が簡潔である。
【0009】
第1の態様によれば、本発明は、
a)骨組織を得るステップと、
b)骨組織をボイルするステップと、
c)コラーゲンを除去するために前記骨組織を処置するステップと
を含む、移植可能な生体材料の調製方法を提供する。
【0010】
本発明の方法では、ボイルステップ(b)を水中(例えば、蒸留水)で行うことができる。
【0011】
特に、実質的にコラーゲンを破壊し、骨髄および細胞外基質タンパク質(ECM:extracellular matrix protein)を除去するためにボイルステップを行うことができる。
【0012】
残存する有機基質を遊離および/または除去するために、超音波での処置ステップをさらに適用することができる。
【0013】
本発明の方法は、任意選択的に、次のボイルステップの前に水を交換してボイルステップの2回以上繰り返しを含み得る。
【0014】
本方法は、任意選択的に、骨組織をボイル前に洗浄するステップを含み得る。洗浄を、当分野で公知の任意の適切な方法にしたがって実施することができる。例えば、機械的に洗浄するか、空気で洗浄するか、液体を用いて洗浄することができる。例えば、水の使用によって洗浄を行うことができる。
【0015】
本発明の方法では、ステップc)が、コラーゲンを融解および変性させるために前記骨組織を高温(例えば、200〜250℃(例えば、210℃))で処置し、さらに、コラーゲンを遊離および/または溶解するための溶媒で処置することを含み得る。コラーゲンを遊離および/または溶解するための溶媒は、当分野で公知の任意の非毒性の適切な溶媒(好ましくはアルコール)であり得る。例えば、エタノール、ヒドラジン、メタノール、および/または塩酸グアニジンである。特に、70%エタノールである。
【0016】
移植可能な生体材料を、コラーゲンの除去および/または脱凝集した有機基質(主にコラーゲン)の除去を最大にするために、超音波で処置することもできる。アルコールの存在下での超音波での処置によってステップを行うことができる。
【0017】
本発明の方法は、骨組織を所定の形状に切断するステップd)をさらに含み得る。骨組織を、当分野で公知の任意の適切な手段(例えば、ナイフ、鋏)の使用によって切断し、そして/または高圧ウォータージェットを用いて切断することができる。
【0018】
本発明の方法は、切断した骨を、好ましくは移植前に滅菌するステップe)をさらに含み得る。
【0019】
本発明の方法は、移植可能な生体材料を包装するステップをさらに含み得る。
【0020】
本発明によって得たか得ることができる移植可能な生体材料は、化学的性質および物理的性質が変化しないので、良好な骨伝導能力を示す(すなわち、移植片の首尾のよい再コロニー形成を容易にする)。特に、移植可能な生体材料は、無機性骨組織である。得られた移植可能な生体材料は、有機基質を含まない。
【0021】
本発明の移植可能な生体材料中のコラーゲンの存在は、SEM−EDX試験の使用によって評価されている。SEM−EDXは、コラーゲンの成分であるが骨足場自体には存在しない硫黄(S)の存在を検出する。SEM−EDXによって本発明の移植可能な生体材料中に硫黄は検出されなかった。したがって、本発明は、SEM−EDXによって検出不可能であるためにコラーゲンを含まない移植可能な生体材料を提供する。特に、ステップ(c)の処置後にSEM−EDXによってコラーゲンを検出することができない。
【0022】
特に、本発明の方法の任意の実施形態によって得たか得ることができる移植可能な生体材料の組成物のCa/P比は1.64である。
【0023】
特に、本発明の方法は、骨組織を超臨界状態の流動物で処理するステップを含まない。
【0024】
本発明はまた、骨組織を得るステップと、
前記骨組織を水で洗浄するステップと、
前記骨組織を水でボイルするステップと、
前記ボイルした骨組織を洗浄するステップと、
前記骨組織を乾燥させるステップと、
コラーゲンを融解して変性させるために前記骨組織を高温で処置するステップと、
前記コラーゲンを溶解するために前記骨組織を溶媒で処置し、そして/または超音波で処置するステップと、
前記溶媒を前記骨組織から蒸発させるステップと
を含む移植可能な生体材料の調製方法を提供する。
【0025】
別の態様によれば、本発明の方法は、上記の移植可能な生体材料を調製するステップと、生体材料を脊椎動物に移植するステップをさらに含む。
【0026】
一般に、例えば、損傷または疾患の結果として体内の骨を置換および/または再構築する目的のために移植を行うことができる。移植を使用して、歯周欠損および歯周再生を置換および/または再構築することができる。一般に、本発明の移植可能な生体材料を使用して、骨を増加させることもできる。
【0027】
本発明の方法は、移植可能な生体材料を移植前にインビトロで培養するステップをさらに含み得る。さらに、本方法は、移植可能な生体材料に移植前に患者自身の単離細胞を播種するステップを含み得る。
【0028】
本方法は、生体材料を脊椎動物に移植する美容ステップをさらに含む。例えば、生体材料を、美容整形時にヒトに移植する。
【0029】
さらなる態様によれば、本発明は、本発明の方法の任意の実施形態にしたがって調製した移植可能な生体材料を提供する。特に、移植可能な生体材料を骨組織から作製し、移植可能な生体材料中のコラーゲンはSEM−EDXによって検出できない。
【0030】
移植可能な生体材料は、有機基質を含まない無機性骨材であり得る。特に、移植可能な生体材料の組成物のCa/P比は1.64である。
【0031】
移植可能な生体材料を移植前にインビトロで培養することができる。例えば、移植可能な生体材料に移植前に患者自身の単離細胞を播種することができる。
【0032】
したがって、本発明はまた、本発明の方法の任意の実施形態にしたがって調製した移植可能な材料を含むインビトロ細胞培養物を提供する。インビトロ細胞培養物は、患者自身の細胞を播種される移植可能な生体材料を含み得る。
【0033】
移植可能な生体材料を、特定の用途に適切になるような形状およびサイズにすることができる。例えば、そのサイズは1mm3〜3cm3であり得る。特に、サイズは、5mm×5mm(直径/高さ)である。
【0034】
本発明はまた、本発明の範囲内の任意の実施形態の移植可能な生体材料を含むパッケージまたはキットを提供する。特に、移植可能な生体材料は、パッケージに含まれているか、キットが滅菌されている。
【0035】
別の態様によれば、本発明は、脊椎動物における移植のための移植可能な生体材料の調製のための骨組織の使用を提供する。特に、移植可能な生体材料中のコラーゲンをSEM−EDXによって検出できない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
本発明は、処理に関連する全ての上記問題を軽減することを目的とし、骨誘導性が高く、骨伝導性が高く、生体適合性を示し、且つ天然の骨に匹敵する機械的強度を有する移植可能な生体材料を提供する。最も重要には、非常に低価格であり、且つ処理が簡潔である。
【0037】
本明細書中で使用される、用語「移植可能な生体材料」は、「移植可能な骨移植組織」である。したがって、本出願の目的のために、2つの用語を交換可能に使用することができる。本発明の移植可能な生体材料は、無機性骨移植組織である。特に実施例に関連して、用語「ブタ無機性骨材」(APB)を使用し、これは、ブタ起源の本発明の移植可能な生体材料をいう。
【0038】
本発明は、骨組織から得た移植可能な生体材料の新規の調製方法を提供する。
【0039】
移植可能な生体材料を、消費のために交配させたか、調理後に処分された動物の骨から調製することができる(図1)。したがって、大量のこれらの骨型を、容易且つ安価に利用可能である。骨を、任意の種類の適切な脊椎動物から得ることができる。例えば、ブタおよびウシなどから得ることができる。
【0040】
骨は、ほとんどの脊椎動物の強固な骨格を形成する1つの結合組織型である。骨は、一部は有機物であり(細胞および基質)、一部は無機物である(石灰化成分)。いずれの骨においても、無機構成要素は、乾燥重量の65〜70%を占め、有機構成要素は、乾燥重量の30〜35%を占める。ほとんど全ての無機物質(約75%)は、ヒドロキシアパタイトと呼ばれる化合物であり、コラーゲン線維間に蓄積されるようになる。I型コラーゲンは、骨中の主なコラーゲンである。ほぼ90〜95%の有機基質(有機材料とも示される)は、線維性タンパク質であるコラーゲンと呼ばれる物質である。残り(すなわち、5〜10%)は、他の非コラーゲンタンパク質の骨髄を含む。非コラーゲンタンパク質は、細胞外基質タンパク質(ECM)およびコンドロイチン硫酸、ケラチン硫酸、およびリン脂質のような物質を含む。したがって、骨の30〜35%は、他の化合物の小画分を含むコラーゲンである。コラーゲンは、ムコ多糖類細胞間質(ground substance)中に包埋している。骨が石灰化されるようになった場合、結晶材料はコラーゲン線維の長さに沿って規則正しく分布するようになる。骨髄は、全ての骨の小柱間の空間内に位置する。骨髄は、種々の細胞(造血において活性な細胞、脂肪細胞、および細網細胞が含まれる)を含む。骨髄は、「脚の骨などの巨大な骨の中心に由来する軟質材料である。この材料は主に脂肪であり、機械的分離によって骨材料から分離される」と定義されている。(Official Publication of American Feed Control Officials,1997,page 191)。
【0041】
骨の骨格組織において以下の5つの骨細胞型が見出されている:骨幹細胞、骨芽細胞、骨細胞、破骨細胞、および骨内膜細胞。骨芽細胞は、骨形成に関与する。骨細胞は、骨芽細胞から生じ、その後に骨小腔(lacunae)中の骨組織内に捕捉されて骨基質の維持を補助する。破骨細胞は、骨吸収で活性な多核細胞である。
【0042】
1つの態様によれば、本発明は、有機基質を除去するステップを含む移植可能な生体材料の調製方法を提供する。特に、本発明の方法は、
a)骨組織を得るステップと、
b)骨組織をボイルするステップと、
c)コラーゲンを除去するために前記骨組織を処置するステップと
を含む、移植可能な生体材料の調製方法を提供する。
【0043】
本発明の方法では、ボイルステップ(b)を水中で行うことができる。例えば、蒸留水中で行うことができる。
【0044】
特に、ボイルステップを実施して骨から有機基質を実質的に除去することができる。有機基質(コラーゲンおよび非コラーゲンタンパク質が含まれる)を、ボイルステップによって実質的に脱凝集し、除去する。
【0045】
本発明の方法は、ボイルステップを2回またはそれ以上反復し、任意選択的に、次のボイルステップ前に水を交換するステップを含み得る。ボイル回数に特に制限は無く、特定の動物の特定の骨にしたがって選択することができる。例えば、骨を、20分〜24時間ボイルしてスラリー(血液、骨髄、脂質、および残存する筋肉が含まれる)を除去することができる。特に、骨を、30分間〜6時間、より詳細には、1〜2時間ボイルする。特定の態様によれば、本方法は、水中の骨組織を1時間ボイルする第1のステップ、および水を交換してさらに1時間ボイルし続けるステップを含む第2のステップを含み、任意選択的にさらに2回このステップを繰り返す。
【0046】
本方法は、任意選択的に、ボイル前および/またはボイル後に骨組織を洗浄するステップを含み得る。当分野で公知の任意の適切な方法にしたがって洗浄することができる。例えば、機械的に洗浄するか、空気で洗浄するか、液体を用いて洗浄する。水(例えば、水道水)を使用して、骨組織を完全に洗浄することができる。
【0047】
特に、ボイルステップ後、骨組織を、水(例えば、脱イオン水)で完全に洗浄する。
【0048】
本方法は、ボイルした骨組織を乾燥させるステップをさらに含み得る。骨組織を乾燥させるか加熱することによって乾燥ステップを行うことができる。例えば、オーブンでの加熱乾燥によって乾燥させることができる。処置する骨組織の種類および量に適切な時間オーブンで加熱することができる。例えば、10分間〜2時間、特に、30分間〜1時間乾燥させることができる。オーブンの温度は、骨が得られる供給源および骨の型に適切な任意の温度(例えば、150〜300℃、特に200〜250℃)であり得る。例えば、210〜220℃で30分間〜2時間加熱であり得る。任意選択的に、一定領域の過熱を防止するために、骨組織の位置を変えることが可能である。
【0049】
乾燥後、骨組織を、滅菌するためにオートクレーブで処置することができる。このステップを、適切な時間および適切な温度で行うことができる。例えば、80〜300℃、特に100〜200℃で行うことができる。骨組織を、100〜200℃で5分間〜2時間(例えば、120〜125℃で15分間)オートクレーブすることができる。
【0050】
本発明の方法では、ステップc)は、コラーゲンを除去するための1回または複数回のステップを含む。当分野で公知の任意の適切なコラーゲンの除去方法を使用することができる。例えば、ステップc)は、コラーゲンを融解して変性させるために高温(例えば、150〜300℃、詳細には200〜250℃、より詳細には210〜220℃、好ましくは210℃)で骨組織を処置し、コラーゲンを溶解するために溶媒でさらに処置するステップを含む。コラーゲンを溶解するために使用した溶媒は、当分野で公知の非毒性の適切な溶媒、例えば、非水性溶媒、好ましくはアルコールであり得る。例えば、エタノール、特に、70%エタノールであり得る。コラーゲンの溶解および/または有機基質の残渣の完全な除去のための本発明の目的に適切な他の非水性溶媒は、ヒドラジン、メタノール、および/または塩酸グアニジンである。
【0051】
脱凝集(破壊)および凝集有機基質(主にコラーゲン)を最大に有効に除去するために、骨組織を超音波で処置することもできる。アルコールの存在下における超音波での処置によってこのステップを行うことができる。公知の標準的なプロトコール(例えば、37℃で30分間)にしたがって、超音波処理を行うことができる。しかし、必要に応じて時間および温度を変化させることができる。無機性骨組織が得られる。特に、本発明によって得られるか得ることができる移植可能な生体材料は、有機基質を完全に含まない無機性骨組織である。
【0052】
本発明の移植可能な生体材料中のコラーゲンの存在を、SEM−EDX試験の使用によって評価した。SEM−EDXは、コラーゲンの主成分であるが、骨足場自体に存在しない硫黄の存在を検出する。表1〜10に示すように、海綿骨および皮質骨の多数の領域におけるSEM−EDXの分析により、任意の無機性骨領域中に硫黄は検出されなかった。したがって、本発明は、SEM−EDXによって検出可能なコラーゲンを含まない移植可能な生体材料を提供する。特に、本発明の方法のステップc)は、骨組織がSEM−EDXによって検出可能なコラーゲンを含まないように骨組織を処置してコラーゲンを除去するステップを含む。
【0053】
本発明の方法は、さらに、所定の形状に骨組織を切断するステップd)を含み得る(図2)。骨組織を、当分野で公知の任意の適切な手段(例えば、ナイフ、鋏)の使用によって切断することができ、そして/または高圧ウォータージェットを用いて分断することができる。ウォータージェット切断の精度は10μmまでであり、純粋のジェットを使用して行うので、切断ツール由来のいかなる汚染リスクも回避され、さらに、大量生産目的のために使用することができる。骨組織片の形状は、移植に適切な任意の形状であってよく、直角平行六面体、円筒形、またはプラグ型などであり得る。移植可能な生体材料を、特定の用途のためのサイズにすることができる。例えば、そのサイズは1mm3〜3cm3であり得る。しかし、適切なサイズおよび/または形状を、外傷のサイズにしたがって選択することができる。好ましいサイズは、例えば、5mm×5mm(直径/高さ)であり得る(Martin,I.,et al.,J.Orthopaedic Res,16:181-189,1998;Wei Tan,B.S.,et al,.Tissue Engineering,7:203-210,2001)。
【0054】
本発明の方法は、さらに、移植前に切断した骨を滅菌するステップe)を含み得る。
【0055】
骨組織の脱水および消毒からなるステップを、任意選択的に、本発明の任意の段階で行うことができる。このステップを、漸増濃度のエタノール(例えば、70%、95%、および100%)のいくつかの連続する浴への通過によって行うことができる。エタノールが優れたウイルス中和抗体(virucidin)であるので、同時に組織を脱水し、本発明の生体材料の安全性を高めることが可能となる。適切な温度(例えば、30〜80℃、好ましくは30〜60℃)での通気オーブンでの乾燥により、このステップを完了することができる。
【0056】
本発明の方法は、さらに、移植可能な生体材料を包装するステップを含み得る。包装後、骨組織を滅菌することができる。当分野で公知の任意の方法(例えば、β粒子またはγ線(25k Gray)による照射)にしたがって、この滅菌を行うことができる。
【0057】
特定の実施形態によれば、本発明の方法は、
骨組織を得るステップと、
前記骨組織を水で洗浄するステップと、
前記骨組織を水でボイルするステップと、
前記ボイルした骨組織を洗浄するステップと、
前記骨組織を乾燥させるステップと、
コラーゲンを融解して変性させるために前記骨組織を高温で処置するステップと、
凝集した有機基質を滅菌および/または緩めるために前記骨組織を溶媒で処置するステップと、
前記溶媒を前記骨組織から蒸発させるステップと、
任意選択的に、前記凝集した有機基質(主にコラーゲン)を完全に除去するために超音波で前記骨組織をさらに処置するステップとを含む。
【0058】
より詳細には、本発明の方法は、
骨組織を得るステップと、
前記骨組織を水道水で完全に洗浄するステップと、
前記骨組織を水で1時間ボイルしてスラリーを確実に除去するステップと、
前記ボイルした骨組織を洗浄するステップと、
水を交換し、さらに1時間ボイルし続け、これをさらに2回繰り返すステップと、
前記骨組織を脱イオン水で完全に洗浄するステップと、
220℃のオーブンで30分間乾燥させるステップと、
121℃で15分間オートクレーブするステップと、
コラーゲンを融解して変性させるのに十分に高い温度のオーブンで2時間乾燥させるステップと、
コラーゲンをさらに緩めるために前記骨を2日間エタノールに浸漬するステップと、
風乾によって前記骨からエタノールを蒸発させるステップと、
前記骨組織を所定の形状に切断するステップと、
移植前に滅菌するために前記切断した骨をエタノールでリンスするステップとを含む。
【0059】
本発明によって得られた、または得ることができる移植可能な生体材料は、良好な骨伝導能力(すなわち、首尾のよい移植片の再コロニー形成を容易にする)を示す。
【0060】
本発明の任意の実施形態によって得られるか得ることができる移植可能な生体材料のCa/P比は1.64であり、これは、天然の骨(実施例1に示す人骨)よりもわずかに低い。
【0061】
US5,725,579およびUS6,217,614(共に本明細書中に参照することにより組み込まれる)は、平均2%未満の脂肪を含む組織が得られるように適合させた超臨界状態の流動物で骨組織を処置するステップを含む、機械的強度が改良された主にコラーゲン中の移植可能な骨有機基質の調製過程を記載している。さらに、先行技術の過程は、超臨界状態の流動物で処理した骨組織を化学的処置または酵素的処置を含むさらなる従来の過程に供して特定のタンパク質を除去するステップを含む。さらなる化学的処置を過酸化水素を使用して行うことができる一方で、酵素的処置をプロテアーゼを用いて行うことができる。このさらなる処置により、骨組織からのタンパク質のより有効な除去が確実に行われ、それにより、この方法で処置した骨組織の拒絶リスクが減少する。
【0062】
これに反して、本発明の方法によって得られた、または得ることができる移植可能な生体材料は、天然の骨を超える強度を持たないが、天然の骨の強度に匹敵する強度を有する。さらに、本発明の方法は、骨組織を超臨界状態の流動物で処理するステップを必要とせず、さらに、プロテアーゼによるタンパク質の除去を必要としない。実際、本発明の方法は、コラーゲン線維(有機基質とも呼ばれる有機物質の約90%〜95%)および細胞間質からなる骨基質内の有機基質を除去するステップを含む。基質の硬度は、コラーゲン線維間に蓄積するその無機塩(ヒドロキシアパタイト;骨乾燥重量の約75%)の含有量に起因する。骨組織のボイルステップによって有機基質を実質的に除去する。実質的にコラーゲンを含む残りの有機基質を、当分野で公知の任意の方法(例えば、適切な溶媒、特に非水性溶媒(例えば、アルコール)での骨組織の処置)を使用して除去する。したがって、本発明の方法は、エタノール(特に、70%エタノール)、ヒドラジン、メタノール、および/または塩酸グアニジンであり得る溶媒でコラーゲンを溶解するステップを含む。しかし、当分野で公知の他の適切な非水性溶媒も使用することができる。
【0063】
したがって、本発明の方法は、超臨界状態の流動物で骨組織を処置するステップを含まない。さらに、本発明の方法は、プロテアーゼまたは任意の他の酵素処置でタンパク質を除去するステップを含まない。
【0064】
別の態様によれば、本発明の方法は、上記の移植可能な生体材料を調製するステップと、さらに、脊椎動物(例えば、哺乳動物(ヒトが含まれる))に生体材料を移植するステップとを含む。本発明はまた、生体材料を脊椎動物に移植する美容ステップを含む。
【0065】
一般に、例えば、損傷または疾患の結果として体内の骨を置換および/または再構築する目的のために移植を行うことができる。移植を使用して、歯周欠損および歯周再生を置換および/または再構築することもできる。一般に、本発明の移植可能な生体材料を使用して、骨を増加させることもできる。移植可能な生体材料を、美容整形に使用することもできる。例えば、生体材料を移植した脊椎動物の審美的外観の改良のために脊椎動物を手術する。脊椎動物は、哺乳動物(ヒトまたは非ヒト哺乳動物)であり得る。
【0066】
例えば、このような移植片は、整形外科、特に移植片が負荷を受けた場合に(すなわち、特に、脊髄手術(頸椎癒合、腰椎椎間板の置換など)、胎盤基部(base of the cotyle)の再構築、関節形成術、骨切り術、偽関節、および関節固定術など)必要とされるであろう。
【0067】
本発明の移植可能な生体材料は、人骨と組成がほとんど同一の天然の無機性骨移植材料であり、患者の骨細胞が成長することができる一過性足場として使用される。この移植物(implant)が正しい骨の成分および三次元構造を有するので、身体は、最終的に、足場を天然の骨組織と置換し、天然に移植物を再造形するであろう。同一材料で作製され、同一構造を有するので、この移植物と既存組織との間には機械的不適合も存在しない。
【0068】
さらなる態様によれば、本発明はまた、移植可能な生体材料を移植前にインビトロで培養するさらなるステップも含み得る。さらに、本方法は、移植前に、移植可能な生体材料に患者自身の単離細胞を播種するステップを含み得る。
【0069】
特に、本発明の任意の実施形態によって得られるか得ることができる移植可能な生体材料の組成物のCa/P比は1.64である。
【0070】
特に、本発明の方法は、超臨界状態の流動物で骨組織を処置するステップを含まない。
【0071】
さらなる態様によれば、本発明は、本発明の方法の任意の実施形態によって調製した移植可能な生体材料を提供する。特に、移植可能な生体材料のCa/P比は約1.64である。
【0072】
別の態様によれば、本発明は、移植可能な生体材料であって、前記移植可能な生体材料を骨組織から作製し、前記生体材料中のコラーゲンをSEM−EDXによって検出できない、移植可能な生体材料を提供する。生体材料は、有機基質を含まない無機性骨であり得る。特に、生体材料のCa/P比は約1.64である。
【0073】
移植可能な生体材料を移植前にインビトロで培養することができる。例えば、移植前に、移植可能な生体材料に患者自身の単離細胞を播種することができる。
【0074】
したがって、本発明はまた、本発明の方法の任意の実施形態によって調製した移植可能な生体材料を含むインビトロ細胞培養物を提供する。インビトロ細胞培養物は、患者自身の細胞を播種された移植可能な生体材料を含み得る。
【0075】
別の態様によれば、本発明は、上記移植可能な生体材料を含むパッケージまたはキットを提供する。パッケージまたはキット中の生体材料を滅菌することができる。
【0076】
さらに別の態様によれば、本発明は、移植可能な生体材料中のコラーゲンをSEM−EDXによって検出できない、脊椎動物に移植するための本発明の任意の実施形態の移植可能な生体材料の調製のための使用を提供する。移植可能な生体材料は、有機基質を含まない無機性骨材料であり得る。特に、生体材料のCa/P比は約1.64である。
【0077】
本発明の任意の実施形態の移植可能な生体材料は、骨組織の処理に関連する当分野に存在する問題を解決し、骨誘導性が高く、骨伝導性が高く、生体適合性を示し、且つ天然の骨に匹敵する機械的強度を有する移植可能な骨組織を提供する。最も重要には、提案された様式で動物骨を処置するために非常に低価格であり、且つ処理が簡潔である。
【0078】
本発明のさらなる利点は、全処理が天然の処置および有毒化学物質(プロテアーゼ)を含まない低刺激性の溶媒を含み、超臨界状態の流動物で骨組織を処置する必要がないことである。ボイル過程および/または超音波処置の繰り返しは、骨足場の物理的性質および化学的性質を変化させることなく、骨髄およびECMを破壊するのに優れている。本発明によれば、ECMおよび骨髄細胞を、骨組織から除去し、骨足場のみを残す。このような材料は、天然の骨とほとんど同一の性質を有する。したがって、このような材料は骨伝導性が高く、ウイルス感染または免疫拒絶のリスクを負うことなく、移植に安全である。
【0079】
本発明をここに一般に記載しているが、本発明は以下の実施例を参照してより深く理解される。以下の実施例は例示の目的で提供しており、本発明を制限することを意図しない。
【実施例】
【0080】
[実施例1]
本質的に全ての脊椎動物の天然の骨は、化学式が[Ca10(PO46(OH)2]であるヒドロキシアパタイト(HA)を基本構造とする。しかし、骨、エナメル質、象牙質、および他の石灰化組織などの生体組織中に見出されるHAの結晶は、他の原子ならびに過リン酸基(HPO42-)、炭酸イオン(CO32-)、マグネシウム(Mg)、フッ素(F)などのイオンを含む(LeGeros RZ.,Crystal Growth Charact.1981;4:1-45;Rey C,et al.,Calcif.Tissue Int.1991;49:251-258)。骨結晶は、水酸基を含まないか、HAよりもむしろ炭酸アパタイトと呼ばれる基をほとんど含まない(Bonar LC,et al.,J Bone Miner Res.1991;1167-1176)。骨結晶中の炭酸基およびリン酸基は比較的安定且つ非常に活性であり、それにより、骨の形成、石灰化、および溶解で重要な役割を果たす(LeGerps RZ.Tung MS.,Caries Res.1983;17:419-429)。
【0081】
骨代用物のための大部分の合成HA調製物は合成起源であり、骨中の生体リン酸カルシウム結晶と構造的および化学的に異なる。純粋なヒドロキシアパタイトは本質的非分解性であり、HAの吸収率はたった5〜15%/年である(Fleming JE Jr,et al.,Orhop Clin North Am.2000;31:357-374)。リン酸カルシウムセラミックスは、骨より脆弱であり、且つ引っ張り強さが低い(Jarcho M.,Clin Orthop.198l,157:259-278;Truumees E,et al.,Univ of Pennsylvania Orthopaedic J 1999,12:77-88)。これらの合成リン酸カルシウム結晶は、骨のアパタイト結晶と化学的および構造的に異なるだけでなく、いくつかの場合、種々の量の全く結晶ではない無定形のリン酸カルシウムを含む(Fleming JE Jr.,et al.,Orhop Clin North Am.2000;31:357-374;Truumees E,Herkowitz HN.,Univ of Pennsylvania Orthopaedic J 1999;12:77-88;Bohner M.,Injury.2000:31:SD37-SD47)。いくつかの場合、合成リン酸カルシウムは、酸化カルシウムなどのカルシウム塩も含む。これらのさらなるカルシウム塩は、骨の石灰化、溶解、さらに破骨細胞に関連する生物機能に及ぼす影響を調査するための長期にわたる研究対象であった。
【0082】
天然の骨は、有機構成要素の約1/3を含み、その主成分はコラーゲン原線維である(Cohen-Solal L,et al.,Proc Natl Acad Sci U S A.1979;76:4327-4330)。骨中でのコラーゲンまたは非コラーゲンタンパク質のアパタイトとのリンの共有結合により、結晶の化学的性質および構造を有意に変化させること無く有機基質から天然の動物骨を単離することが困難になる(Sakae T,et al.,J Dent Res.1988;67:1229-1234)。無機性骨材を使用した臨床試験では、良好な骨伝導性、骨同化、および種々の状況における欠点の良好な解決が証明されている(Richardson CR,et al.,J Clin Periodont.1999;26:421-428;Young C,et al.,Int J Oral Maxillofac Impl 1999;14:72-76;Lorenzoni M,et al.,Int J Oral Maxillofac Impl.1998;13:639-646)。しかし、整形外科手術において一定の副作用(contra)(機械的ストレスへの耐性、再結晶過程、および新規に形成されたHA塩の減少など)が示されている(Sciadini MF,et al.,J Orhto Res.1997;15:844-857;Jensen SS,et al.,Int J Oral Maxillofac Impl.1996;11:55-66;Raspanti M,et al.,Biomater 1994;15:433-437)。
【0083】
業務用および実験用の骨移植片材料は、種々の組成および性質を示すことができ、その多くが天然の骨と非常に異なる(Boyne PJ.Comparison of Bio-Oss and other implant materials in maintenance of the alveolar ridge of the mandibule in man.In:Huggler AH,Kuner EH,editors.Hef?e zur unfallheinde 216.Berlin:Springer' 1991.p11;Lorenzoni M,et al.,Int J Oral Maxillofac Impl 1998;13:639-646;McAllister BS,et al.,Int J Periodont Restor Dent 1998;18:227-239)。リン酸セラミックス、リン酸三カルシウム、リン酸カルシウムセメント、ナノ粒子HA、および硫酸カルシウムなどの無機カルシウム誘導体が頻繁に使用されている。これらの材料の物理化学的性質を、宿主の骨とのその接合部分に依存して調査し、生体不活性または生物活性として表した。生体セラミックスが隣接する宿主の骨由来の骨の内部成長(ingrowth)のための足場を提供するにもかかわらず、生体セラミックスは本来備わっている骨成長能力が無く、また、吸収の変動によって機械的強度が制限され、妨げられる(Jarcho M.,Clin Orthop.198l;157:259-278)。あるいは、天然の骨の無機質は、欠損した骨への新規の骨の成長を容易にするために種々の状況で臨床的に使用されている(Richardson CR,et al.,J Clin Periodont.1999;26:421-428;Young C,et al.,Int J Oral Maxillofac Impl 1999;14:72-76;Lorenzoni M,et al.,Int J Oral Maxillofac Impl.1998;13:639-646)。
【0084】
本発明の方法は、天然の結晶構造を破壊すること無く有機基質を含まない天然の骨の精製手順を示す。XRD分析、SEM−EDX、ならびに機械的試験および弾力性試験を用いた特徴づけにより、物理化学的性質を強調する。
【0085】
[材料と方法]
〔走査電子顕微鏡法による調査〕
無機性骨材の調製に示すように、無機性皮質骨および海綿骨を、1cm×1cm×0.5cmの切片にし、その後にオートクレーブを行った。密集および海綿状の調製された基本的なブタ無機性骨材ならびに骨由来の結晶構造の表面に対して走査電子顕微鏡法(SEM)による調査を行った。金でのサンプルのスパッタリング後に研究を行った。
【0086】
密集無機性骨材および海綿状無機性骨材由来の結晶構造が観察され、各結晶の構成要素をSEM-EDX(Hitachi 4200)によって分析した。
【0087】
〔物理的性質の決定〕
〔機械的強度および弾性率の試験方法〕
処置したブタ大腿骨由来の皮質骨を、典型的には、5mm×3mm×6mmの寸法に切断した。Instron 3345(Instron Corporation,Canton,MA)上の長手方向軸に沿って骨をロードした。試験装置のクロスヘッドの速度は、1mm/分であった。全データを、湿度50%で23℃の環境で乾燥骨から回収した。
【0088】
〔空隙率の試験方法〕
海綿骨(10mm×10mm×10mm)を、水銀ポロシメーター(MicromeriticsのAutopore III 9420)の透過度計に直接入れた。サンプルを、0〜60,000psiで分析した。
【0089】
〔有機基質を含まない天然の骨の単離〕
有機基質を除去するための方法を構築し、緻密骨および海綿骨由来の無機性リン酸カルシウム足場を得る。有機基質を含まない天然の骨(移植可能な生体材料)の単離を、下記の段階にしたがって調製した。
【0090】
〔ブタ無機性骨材(APB)の調製〕
ブタ無機性骨材(APB)を、新鮮なブタ大腿骨を、骨端領域および骨内領域(diahyseal region)の除去によって得た。
【0091】
(ブタ長骨の調製)
いくつかの断片に刻んだ新鮮なブタ長骨を、食肉処理場から得た。約1〜3cm3の断片をさらなる処置のために切断した。骨片を、水道水で完全に洗浄し、スラリーを除去するために30分毎に水を頻繁に交換して水中で2時間ボイルした。材料を水で洗浄し、分離した軟骨から除去した。これを脱イオン水で洗浄し、一定の領域の過熱を防止するために時折位置を変えながら210℃のオーブンで2時間乾燥させた。この時点で、このような処置により、脱凝集有機基質が部分的に除去された。このような処置において、骨髄が完全に除去された。
【0092】
(骨基質構成要素の分離)
乾燥後、材料を121℃で15分間遠心分離して、最小限の滅菌を行った。油分を除去し、有機基質の付着を緩めるために骨片を70%エタノールに浸漬した。次いで、凝集有機基質(主にコラーゲン)をさらに除去するために、これらを、70%アルコールで滅菌しながら37℃で30分間超音波処理した。溶液が濁らなくなるまでこのステップを約4時間続けた。この材料を、各30分間隔で新鮮な70%アルコールと置換した。超音波処理手順を、270ワット、63kHz、ピーク出力周波数で2〜3分間行った。最後に、処置した材料を、70%アルコール中にて121℃で15分間オートクレーブして、最大限に滅菌した。
【0093】
骨梁および皮質骨の構造を、より小さなサイズ内でインタクトに保った。本実験的研究では、処置した骨の構造を、成形し、3cmと0.5cmとの間のサイズにした。
【0094】
〔無機性異種移植片の特徴づけ〕
(XRDによる結晶構造)
ブタ無機性骨材の異なる無機質の組成を決定するために、数段階の処置後、結晶構造のフィンガープリント特徴づけのためにX線回折(XRD)を使用してその構造を決定した。このようなブタ無機性骨材の小片のXRDでは、結晶成分の有意な変化は認められなかった(図3)。
【0095】
得られた無機性骨材および合成ヒドロキシアパタイトのXRDパターンはほぼ同一である。無機性骨材は、合成HAと比較して211および002で典型的なリン酸カルシウムの典型的な回折ピークを示した。無機性骨材が合成HAより小さいにもかかわらず、広範な干渉線による(それにより、非常に広範なスペクトルが得られる)XRD分析で無機骨材由来の小結晶を示す。小さな干渉線は合成HAの結晶を示し、特徴的に狭いスペクトルを示した。
【0096】
したがって、合成HAの結晶構造は、無機骨材の結晶構造よりも強く、無機性骨材は骨形成過程により適合している。
【0097】
(SEM−EDXによって決定された化学組成)
ブタ無機骨材の全組成を、走査電子顕微鏡エネルギー分散型X線分光法によって分析した(SEM-EDX,Hitachi 4200)(図4および5)。処置した材料は、典型的なCa/P比が1.64である天然の骨の無機質含有量を保持し、人骨よりもわずかに低い1.71である(Ref:LeGeros,R.Z.,Apatites in biological system.Prog.Crystal Growth Charact.,4,1-45,1981)。HAの組成を示す標準的なCa/P比に加えて、ブタ無機性骨材中に見出されるMgなどの他の無機質が存在していた。おそらくこのことが人骨と比較してHA比が低くなる理由の1つであり得る。
【0098】
〔ブタ無機性骨材の結晶の性質〕
(空隙率)
SEMによって分析した緻密骨および海綿骨の典型的な構造を、図6A〜Eに示す。結果は、天然の骨の無機質の側面(side)相互接続孔系を証明した。一般に、ブタ骨材の天然の骨無機質は、巨視孔(図6A)、密集した微細孔(図6B)、海綿骨(図6D)、および緻密骨(図6C)および海綿骨(図6E)中の結晶間の空間からなる。結晶サイズを、SEM−EDX画像由来の足場断面から直接測定した(図6C)。評価した孔の最も大きな軸の測定により、微結晶のサイズは、約100nmであった。系により、全体的な空隙率は65%と高くなり、天然の骨の内面が得られた。高空隙率および内面により、移植片材料の内部への宿主骨修復物の浸透が非常に増強される。
【0099】
(物理的性質)
測定により、無機性皮質骨の圧縮強度が40MPaであるヒト皮質骨の圧縮強度と比較して同一範囲の40.9Mpaであることが示された。合成HAは高い圧縮強度を示し、周囲の宿主レシピエント骨と比較して合成材料の剛性および密度が高い。
【0100】
無機性皮質骨の弾性係数は、最大強度で1.1Gpaであり、平均強度は約621.4MPaであった。他方では、合成HAは、より高い弾性係数を示し(34〜100Gpa)、それにより、可撓性が低かった。
【0101】
【表1】

【0102】
【表2】

【0103】
【表3】

【0104】
【表4】

【0105】
〔無機性の緻密骨および海綿骨中の結晶の不均質の構成要素の分布〕
(無機性の緻密骨中の各結晶の化学組成)
図6、7、および8に示す天然の骨由来の典型的な構造が存在するにもかかわらず、緻密骨および海綿骨からいくつかの異なる種の固有の結晶が分化する可能性がある。移植片材料の化学組成は、宿主組織に組み込まれる比率および範囲ならびにその後の移植部位の物理的特徴に影響を与える。骨再造形を考慮して、移植片材料の組成も骨の溶解、石灰化、および形成に影響を与える。各結晶の化学組成を区別するために、緻密骨由来の4つの各結晶構造および海綿骨由来の6つの各結晶構造をSEM−EDX分析のために選択した(図7および8)。
【0106】
緻密骨については図7(A、B、C、およびD)に、海綿骨についての図8(A、B、C、D、E、およびF)に示した顕微鏡写真中に形態および成分を示す。緻密骨中の各結晶の特徴および成分により、全結晶中で原子百分率のみが異なる元素アルミニウム(Al)の存在が示唆された(緻密骨1〜緻密骨4として示した表1〜4)。元素ナトリウム(Na)は、緻密骨4の結晶中のみで出現した(図7D、表4)。緻密骨2(図7B、表2)および緻密骨3(図7C、表3)の結晶構成要素は、それぞれ図4および5中のブタ無機性骨材の全結晶構造と比較して、典型的な元素であるリン酸塩(P)またはマグネシウム(Mg)を有さなかった。各結晶のCa/P比は全て1未満であった。アルミニウム(Al)の原子百分率の範囲は、これら4つの結晶構造内で非常にばらつきがあった。最も小さいAlの比率は、緻密骨2の0.02%であり(図7B、表2)、緻密骨4はその400倍であり得る(図7D、表4)。
【0107】
緻密骨と比較して、海綿骨由来の6つの結晶構造は、類似の構成要素を示し、元素の組み合わせが異なっていた(それぞれ図8A〜F、海綿骨1〜6)。6つの結晶構造のうちの4つは、元素Alを欠き、海綿骨1および2のAlの原子百分率は極めて等価であった。全結晶構造のCa/P比は1未満であり、緻密骨由来の結晶構造と類似していた。緻密骨よりも海綿骨の方がナトリウムの原子百分率が高いことも認められた。
【0108】
本発明者らが分析した各結晶由来の構成要素の比較を、表5〜10に列挙する。
【0109】
【表5】

【0110】
【表6】

【0111】
【表7】

【0112】
【表8】

【0113】
【表9】

【0114】
【表10】

【0115】
SEM−EDX分析由来の結果により、ブタの天然の骨は概して天然の骨(Ca/P比が1.64)と類似の成分を有することが証明された。興味深いことに、結晶構造に基づいたほとんどの領域でCa、P、C、O、およびMgのような基本的元素が不均質に分布している。いくつかの結晶でP、C、および/またはMgのようないくつかの基本的元素を欠き得る場合、全部ではないが、一般に、AlおよびNaなどの余剰元素が異なる結晶構造に添加されている。
【0116】
[考察]
この実験では、データは、本発明のブタ無機性骨材(移植可能な生体材料)の調製方法により、XRDおよびSEM−EDXによって分析した緻密骨および海綿骨の構造、結晶構造、および化学成分がインタクトに維持されることを明確に証明している。APBのCa/P比(1.64)は、ヒドロキシアパタイト(1.67)よりもわずかに低い。生体アパタイトは、年齢によって決定される組成、結晶サイズ、および形態、他の微量元素(Mg、炭酸塩、Na、Cl、リン酸塩など)、ならびに微量元素(ストロンチウム(Sr)、鉛(Pb)、クロム(Cr)、亜鉛(Zn)、ニッケル(Ni)など)が純粋なHAと異なる(Featherstone,JDB,et al.,Calcif.Tissue Int.1983;35:169-171;McConnel,D.,Biochim.Biophys.Acta.1980;32:169-174;Brown WE,Chow LC.,Ann.Res.Mater.Sci.1976;6:213-226;Arends J,Davidson C.,Calcif.Tiss.Res.1975;18:65-79;LeGeros RZ.,Arch.Oral Biol.1974;20:63-71;LeGeros RZ,Bonel G.,Calc.Tiss.Res.1978;26:111-116)。純粋なHAについての式Ca10(PO46(OH)2を、生体アパタイトについての(Ca、Na、Mg、K)10(PO4、CO3、HPO46(OH、Cl、F)2と置換することができる。APBの低Ca/Pを、Caとの他の微量元素の置換基(本発明の場合、Mg、Na、およびAlなど)によって説明することができる。元素Cの百分率は、Ca/P比に寄与する重要な要因であり、炭酸化アパタイトは、著者が分析した全結晶構造内の主な構造である。象牙質および骨において炭酸濃度も最も高いことが報告されている(LeGeros RZ.Incorporation of magnesium in synthetic and biological apatites:a preliminary report.In:Tooth Enamel IV,Tearnhead RW,Suga S;Eds.Elsevier:Amsterdam:32-36,1984)。
【0117】
ABPのXRDパターンにより、炭酸アパタイトの微量のMgとの置換に関して構造全体が十分にインタクトなままであることが示唆される。ABPは、機械的強度、弾力性、および結晶構造(巨視孔、微細孔、および結晶間の空間が含まれる)に関して物理的性質も十分に保存されている。
【0118】
ブタ無機性骨材の調製過程中、考慮される重要な検討材料は、70%エタノールのみを適用し、結晶構造の変化を誘導し得る高温を回避するために210℃未満の温度を維持する穏やかな溶媒処置を含む。骨の結晶構造を400℃を超える温度に加熱した場合、再結晶が起こって結晶が成長し、それにより、構造および化学組成が変化する(Raspanti M,et al.,Biomater 1994;15:433-437)。
【0119】
結果として、ブタ無機性骨材は、骨の天然の無機質含有量を保持し、合成ヒドロキシアパタイトと比較して複雑な組成が保存される。図6で解釈されるように、ブタ無機性骨材形態の表面/体積比は高く、相互作用のために巨大な表面(おそらく細胞の増殖、分化、およびアポトーシスの指示に必要な正確な三次元構造)が提供される。
【0120】
図6に示すように、研究所で生成される合成材料では天然のブタの骨の複雑な表面は複製されなかった。海綿骨および緻密骨の構造を含むそれぞれの固有の不均質な結晶構造が、細胞の増殖、分化、および骨形成の指示のための足場の複雑な網状組織をさらに構築する。天然の骨は、新規の骨の構築のための供給源を提供するだけでなく、複雑な三次元構造および生体材料の組み合わせの網状組織も提供する。骨再造形を指示するためのこのような複雑な系は、いかなる合成材料によっても再生は容易ではない。
【0121】
[実施例2:有機骨(organic bone)の溶解]
無機性骨材は、インビトロでの骨の溶解/沈殿分析に理想的な生体材料である。有機基質を含まないブタ無機性骨材は、天然の骨と同様の物理化学的性質および結晶構造を保持する(実施例1に示す)。しかし、一定の実験の困難さに起因する天然の骨の沈殿についてはほとんど知られていない。したがって、本実施例の目的は、骨芽細胞に遭遇するか遭遇しないブタ無機性骨材由来の結晶構造の溶解/沈殿を調査し、生理学的条件下での骨石灰化に関連する種々の所見を強調することである。沈殿物は、いくつかの元素(Caおよび/またはPが含まれる)を含む。各元素の溶解率がそれぞれの対応する部位の組成に依存するので、全沈殿物のCa/P比は1未満である。本発明者らは、皮質骨および海綿骨に沿った必須/微量元素の不均質の分布を報告した。生体無機性アパタイトの生物活性の現象の基礎をなす一般的に提案されている機構は、アパタイト由来のカルシウム、リン酸塩、ケイ素、および微量/必須元素の溶解を含む。
【0122】
したがって、実施例2の溶解/沈殿の結果として得られたCa/P比は、実施例1で得られた有機骨の組成物のCa/P比(1.64)と異なる。
【0123】
[材料と方法]
〔ブタ無機性骨材〕
ブタ無機性骨材(APB)(移植可能な生体材料とも示される)を、実施例1に記載のように得た。処置したサンプルを、試験前にオートクレーブした(121℃で15分間)。個のような処置下では、骨梁および皮質骨の構造はインタクトなままであった。BDS(BD Biosciencez,Bedford,USA)と呼ばれる市販の合成リン酸カルシウム足場をコントロールとして使用した。
【0124】
〔細胞培養手順〕
骨芽細胞(MC3T3−E1)を、10%ウシ胎児血清(FBS)、50Uml-1ストレプトマイシン、および50μgml-1ペニシリン(Gibco)を補足したα−最小必須培地(MEM)中で培養した。筋芽細胞(C2C12)を、4mMグルタミン、1.5g/L重炭酸ナトリウム、および4.5g/Lグルコース、10%FBSおよび50Uml-1ストレプトマイシン、および50μgml-1ペニシリン(Gibco)を含むダルベッコ改変イーグル培地中で培養した。倒立位相差光学顕微鏡(Olympus,CKX41)を使用して、細胞の形態を観察した。
【0125】
〔足場の調製〕
0.5cm3の足場としてブタ無機性骨材(APB)を調製した。直径が5mmの市販の合成リン酸カルシウム(BDS;BD Biosciences)の実験で使用した。
【0126】
無機質の沈殿を研究するために、APBおよびBDSの足場を、培養培地中にて37℃で1日間プレインキュベートした。足場の培地とのプレインキュベーションの目的は、足場を完全に水和させることである。
【0127】
〔インビトロ石灰化〕
0.5cm3の足場を、24ウェルプレートに入れた。約5×106個の細胞を含む1mlの培養培地を、足場上に播種し、37℃で一晩インキュベートした。実験終了まで、4日毎に培地を交換した。
【0128】
[分析]
〔アルカリホスファターゼアッセイ〕
アルカリホスファターゼ活性を、APアッセイキット(Sigma Diagnostics,Switzerland)を使用して測定した。簡単に述べれば、12ウェルプレート中の後期継代細胞を、1mm3のAPBで処置しないかAPBで1日間、2日間、および3日間処置した。示した時点で、細胞を、氷冷PBS(pH7.4)で2回リンスし、氷冷PBSに再懸濁し、次いで、600×gで2分間遠心分離した。ペレットを、6μlの氷冷PBSに再懸濁した。サンプル(2μl)を、10μLの可溶化溶液(pH10.5)(5mM Tris、100mMグリシン、および0.1% TritonX−100)に添加し、室温で5分間溶解させた。可溶化サンプルを、OD450で測定した。総タンパク質のIU/L/μgを得るために、アルカリホスファターゼを、1分間での1μgのタンパク質あたりのリン酸p−ニトロフェノール量(nmol)として示した。総タンパク質を、標準としてウシ血清アルブミンを使用したBio−Radタンパク質アッセイキットII(BioRad,Glattbrugg,Switzerland)によって測定した。
【0129】
〔走査電子顕微鏡エネルギー分散型X線分光法〕
7日目および14日目に培地を分析した。無機質分析は、走査電子顕微鏡エネルギー分散型X線分光法(Jeol 3010;TEM-EDX)に基づいた。
【0130】
播種から1週間後および2週間後、培養由来の培地をそれぞれ回収した。回収した培地を、3,000rpmで10分間遠心分離して、細胞破片を除去した。次いで、100μlの培地を、室温で炭素蒸着TEM銅グリッドに吸収させた。過剰な液体を濾紙片で除去し、グリッドを風乾した。
【0131】
〔走査電子顕微鏡エネルギー分散型X線分光法〕
カバーガラス上で2週間培地のみまたはAPBと共に骨芽細胞を含む培地を分析した。培地を除去し、カバーガラス上の沈殿を風乾し、Auでコーティングした。サンプルを、走査電子顕微鏡エネルギー分散型X線分光法(SEM-EDX,Hitachi 4200)の使用によって分析した。
【0132】
〔X線回折〕
サンプリングピッチ0.02およびスキャン速度20/分を用いたステップスキャン手順を使用し、グラファイト逆モノクロマト(back-monochromato)を具備したShimadzu回折計(λCuKα、30mA、40kV)を使用して、X線回折(XRD)を記録した。培地を、室温でそれぞれ2mm3のサイズのスポンジに吸収させ、風乾した。
【0133】
[結果]
〔培養物の形態〕
5mm3のブタ無機性骨材(APB)に、骨芽細胞MC3T3−E1を播種した。14日間のインキュベーション後、光学顕微鏡下で細胞の形態を観察した。APBによって促進された滑らかな縁を有する非常に細長い形状を有する細胞が認められた(図9B)。正常細胞は平均サイズが30μmの非常に不規則な形状を有するが、APB指示細胞は、200μmまで伸長することができた(図9A)。このような細長い細胞は、細胞をAPBと密接に接触させずにインキュベートした場合のみで認められた(データ示さず)。さらに、細胞のAPBとのインキュベーション日数の増加は、骨芽細胞の分化のマーカーであるアルカリホスファターゼ活性の増加と相関した(図10)。培地を骨芽細胞のみから回収した場合、ALPの明確な変化は無かった。まとめると、これらの所見は、APBが骨形成過程における骨芽細胞のインビトロ分析に適切な環境を提供することを示す。
【0134】
〔APBの骨芽細胞とのインキュベート中の結晶構造の形成〕
骨芽細胞およびAPBのインキュベーション中、いくつかの結晶構造が石灰化し、皿に沈殿した(図11A〜C)。表面上に孔様構造(図11A)、直線(図11B)、またはその両方(図11C)のいずれかを有する非常に組織化された配列を有するシェル様構造である。これらの結晶構造は、より小さなサイズからより大きなサイズへの連続した経路の後に形成される。
【0135】
〔APBと共に細胞を含む培地から沈殿した成分の分析〕
ブタ無機性骨材の溶解および結晶構造の形成により、細胞分化および骨形成についての大量の情報が得られる。
【0136】
実施例1の実験は、SEM−EDXによって、緻密骨および海綿骨が、一般に、P、O、C、Ca、およびMgを含むことを示した。緻密骨および海綿骨APB内に各結晶中のP、O、C、Ca、Al、Na、およびMgの不均質な分布が認められた。場所に依存して、各結晶構造でCa/Pモル比が異なった。三次元(3−D)構造は、3−D構造のみでなく、各結晶構造の成分によっても複雑化する。APBと共に細胞を含む培地由来の沈殿物を試験するために、骨芽細胞を濃縮様式(6×105細胞/ml)で0.5mm3のサイズのAPBに入れた。1週間のインキュベーション後、このような馴化培地下でのいくつかの区別された結晶構造由来の成分の分析を、TEM−EDXによって試験した。APBおよび細胞を含まない同一の培地を、コントロールとして使用した。使用した培地に基づいて、馴化培地から沈殿した各結晶構造の成分は、培地自体、APBの溶解、またはその両方に由来し得る。沈殿用のコントロール培地由来の基本成分は、Na、K、P、S、Ca、C、およびMgであった。馴化培地由来のいくつかの沈殿物は、基本成分のほとんどを含んでいた(表11)。
【0137】
【表11】

【0138】
一般に、馴化培地由来の沈殿は、元素Clの原子百分率が42%、57%、および34%と非常に高く、Caの原子百分率が非常に低かった。対照的に、コントロール中のClの原子百分率は1.5%、1.2%、および2.6%と非常に低かった。一定の元素の区別された異なるモル比を有する各結晶構造の他の類似の成分に加えて、いくつかの余剰元素(Cr、Si、およびCoが含まれる)を、APBから溶解し、いくつかの沈殿を石灰化することができる。6つの結晶構造のうちの2つは、元素Siを含んでいた。
【0139】
APB調製中のガラスベースのスライドガラスまたは容器のいずれか由来の元素Siの汚染を防止するために、顕微鏡実験の準備中にガラスと接触しない無ケイ素APBを調製した。図12に示すように、骨芽細胞を含むこのような無ケイ素APB由来の結晶構造の成分は、元素Siを含んでいた。ガラスベースのスライドガラスを使用するか使用しないコントロール培地は、試験した各沈殿物中にケイ素は認められなかった。合成リン酸カルシウム足場(BDS)を含む同一細胞由来の沈殿も試験した。同一条件下でケイ素や微量元素は検出されなかった。
【0140】
時間依存性石灰化を評価するために、APBと2週間接触させた骨芽細胞を試験した。2週間の沈殿由来の成分プロフィールは、1週間の成分プロフィールと有意に異なっていた。基本成分は、S、C、およびSiであった。元素Siは、試験した各固体中に沈殿していた。種々の微量元素(Cr、Mn、Fe、およびNiなど)も見出された(図13B)。微量元素を含む結晶構造は、枝(brunch)様形態を示し(図13A)、十分に組織化されたニードル構造は、単純なSi含有カーボネート(図13CおよびD)またはCl、Si含有カーボネート(図13EおよびF)をそれぞれ有していた。
【0141】
〔骨芽細胞依存性石灰化〕
微量元素およびSiの沈殿/石灰化により、特定の細胞がこの過程を調節するのかという疑問が生じた。この疑問に答えるために、2つの培養条件を準備した。一方は、細胞を添加しない通常の培養条件下で培養したAPBであった。他方は、筋芽細胞、C2C12などの非骨芽細胞と培養したAPBであった。
【0142】
2週間APBを含む培地から得た結晶構造を分析した。結果は、微量元素および元素Siが結晶構造と共に沈殿したことを示した(図14A、B、C)。異なる場所中の1つの結晶構造由来の成分は、異なる元素分布を示した。結晶構造の縁は、C、O、S、Cl、Si、Ni、およびAlを含んでいる一方で(図14AおよびB)、結晶の中心はNi以外の同一の元素を含んでいた(図14AおよびC)。P、Ca、Cr、Fe、およびZnなどのいくつかの他の成分も中心で検出された。通常の培地中のAPBのみ由来の沈殿/石灰化により、微量元素およびSiを含む結晶を形成することができ、骨芽細胞は過程に直接影響を及ぼさないことが示された。
【0143】
沈殿の連続的順序を研究するために、骨芽細胞の代わりに、非骨芽細胞を、APBとインキュベートした。Cr、Ni、およびSiを、筋芽細胞およびAPBを含む培地中で形成された結晶構造で検出することもできる(図15A、B)。結果により、沈殿/石灰化過程が骨芽細胞と無関係であることがさらに確認された。
【0144】
[考察]
この実験では、天然の無機性骨材足場中で細胞性無機質の沈殿が認められた。これらの条件下で、補足のない古典的な培養培地中で自発的な無機質の沈殿が検出された。骨芽細胞培養系は、インビトロでの石灰化過程の調査および移植材料に対する骨形成細胞の応答の評価のための有益なツールと見なされる。インビトロでの石灰化過程に関する有用な情報を提供するために、骨培養系においてβ−グリセロールホスフェートなどの有機リン酸塩が日常的に使用されている(Tenenbaum,H.C.,J.Dent Res.1981;60:1586-1589;Temembai,.H.C.,Heersche,J.N.,Calcif.Tissue Int.1982;34:76-79;Ecarot-Charrier,G.,et al.,J.Cell Biol.1983;96:639-643;Robey,P.G.,Termine,J.D,Calcif Tissue Int.1985;37:453-460;Gotoh,Y.,et al.,Bone Miner.1990;8:239-250)。これらの実験は、有機リン酸塩がアルカリホスファターゼによって加水分解されて遊離無機リン酸塩を放出し(Fortuna,R.,et al.,Calcif.Tissue Int.1980;30:217-225)、それにより、石灰化促進の化学ポテンシャルが得られることを明確に示した。しかし、破骨細胞の過程、非常に組織化された三次元構造、不均質な成分分布、および他のエフェクターによって天然の骨の分解の程度が様々であるので、天然の沈殿/石灰化は、非常に複雑な系であると見なされる。天然の骨からのHAの段階的溶解により、カルシウムイオンおよびリン酸イオンが放出され、周囲の細胞集団に影響を与えてリン酸カルシウムが再沈殿し、それにより、骨付着および骨組織への結合が増強される(Daculsi,G.,et al.,Calcif.Tissue.Int.1990;46:20-27;Bagambisa,F.B.,et al.,J.Biomed.Mater.Res.1993;27:1047-1055)。
【0145】
この実験では、動的無機性骨材は、骨形成のための基本構成要素だけでなく、他の微量/必須元素も提供する。40を超える沈殿物の組成および結晶形態を、走査電子顕微鏡(SEM)およびエネルギー分散型X線分析(EDX)によって決定した。分析により、第1週目の調査した全ての沈殿が主な構成要素としてナトリウム、カリウム、リン酸塩、硫黄、およびカルシウムを含むことが明らかとなった。主な構成要素内で、いくつかのサンプルは、C、Cr、Si、およびMgなどの他の元素からなっていた。測定したほとんどの結晶構造は、広範なCa/Pモル比を有していた(0.5と2.7との間)。コントロール培地から測定したCa/Pは、0.7〜0.92内に非常に固定された。一旦沈殿物を2週間の石灰化培地から採取すると、沈殿の新規の組成が見出されるので、主な構成要素は減少した。主な構成要素は、元素Siを含む元素SまたはCのいずれかであった。種々の微量元素が見出された。APBのみの培地またはAPBを含む非骨芽細胞の培地の分析から同一の現象が認められた。SEM/EDXを用いた選択された培地の試験により、種々の沈殿物の構成要素の特徴的な形態および元素組成が明らかとなった。結晶構造の形態は、枝様形状ならびにケイ酸塩の典型的な構造であるニードルおよび結晶様外観などの他の形状を示した。
【0146】
沈殿物において一定のプロフィールが存在する。初期段階でマグネシウム(Mg)含有沈殿物が時折認められ、後期に完全に消滅した。初期にリン酸塩が沈殿し、後期にほとんど認められなかった。炭酸塩沈殿は、リン酸塩、Mg含有沈殿物と比較して異なるプロフィールを有していた。ケイ素含有沈殿物が初期段階で沈殿し、全沈殿物が後期にも一貫して生じた。ケイ素含有沈殿物由来のこのようなプロフィールは、微量元素含有沈殿物と適合した。初期段階で、元素CrおよびCoが見出された。より多様な微量元素が後期段階で認められた。図16A、Bに示されるように、APBを含む骨芽細胞の培地由来の1つの典型的な沈殿物は、他の成分(C、O、Na、およびK、Al、Si)と共に種々の微量元素を有していた。この沈殿物のサイズは、約2μmである。いくつかの元素が初期段階で見出され、且つ後期に完全に検出不可能になる理由は、初期の溶解の絶対的発生および/または認められた沈殿物によって部分的に支持される沈殿物を形成する沈殿に起因していた。Siおよび微量元素含有沈殿物の所見では、骨形成過程時に必須/微量元素の溶解/沈殿が連続して起こると結論づけることができる。
【0147】
さらなる調査は、任意の結晶形態(特に、HAの前駆体またはは自体)を検出することができるかどうかをチェックすることであった。無定形リン酸カルシウム(ACP)、brushit(DCPD)、β−リン酸三カルシウム(β−TCP)、またはリン酸八カルシウム(OCP)などのいくつかの可能な前駆体から生体アパタイトを形成することができることが提案されている(Brown,W.E.,Chow,L.C.,Ann.Res.Mater.Sci.1976;6:213-226;Francis,M.D.and Webb,N.C.,Calcify.Tissue Res.1971;6:335-342)。APBのみ、骨芽細胞を含むAPB、および骨芽細胞を含む合成リン酸カルシウム(BDS)由来のいくつかの馴化培地のXRDパターン分析では31.4および45に典型的なピークが認められた(図17)。APBと共に骨芽細胞を含む培地由来の結晶が最も高いピークを示したので、培地自体または他の馴化培地由来のピークは、2番目に高いピークであるか、ほとんどピークがなかった。これらはNaClに特徴的なピークであるにも関わらず、2θのリン酸カルシウムを示すピークは32である。骨芽細胞を含むAPB由来の32でのピークの高さに基づいて、リン酸カルシウムが存在する可能性が高い。
【0148】
BDSは、市販の合成アパタイトである。これをコントロールとして使用する一方で、細胞はこのような足場の表面場に十分に増殖することができる。SEM−EDXによるBDSの成分分析により、Ca/Pが1.36である元素C、O、Si、P、およびCaが示された(図18A、B)。BDSが元素Siを含むにもかかわらず、細胞の存在下でBDSの溶解時にSiを含む沈殿物が認められないことが、APB中のSiの原子百分率が高い(2.87%)ことと無関係に認められた(データ示さず)。実施例1では、APBの主成分がP、O、C、Ca、およびMgであることが示された。Siおよび微量/必須元素をSEM−EDXで明らかに検出することができなかった。結果は、BDS中のSiはAPB投与におけるSiと比較して溶解が困難なようであることを示す。合成アパタイトの溶解性が齲歯に関連する脱石灰化過程と再石灰化過程との組み合わせにおいて興味深いにもかかわらず(LeGeros,R.Z.,Prog.Crystal Growth Charact.1981;4:1-45;LeGeros,RZ.,Suga,S.,Calcif.Tissue Int.1980;32:169-174;LeGeros,RZ.,et al.,Calc.Tiss.Res.1978;26:111-116;Boskey,A.,Posner,A.S.,J.Phys.Chem.1976;80:40-45)、Si、Al、およびMgのような微量元素および他の必須元素が溶解/沈殿で受容な役割を果たし得るので、カルシウム欠乏性アパタイトを形成するためのカルシウム化合物の反応を研究することは非常に難しい(Zhuoer,H.,J.analy.Atomic spectro.1994;9:11-15;Mirtchi,A.A.,et al.,Biomater.1990;11:83-88;LeGeros,R.Z.,et al.,J.Dent.Res.1982;61-342,Abstr.1482)。
【0149】
インビボでの溶解/沈殿の研究は、骨再造形過程を理解するために重要である。カルシウム、リン酸塩、ケイ素、および他の微量/必須元素の溶解についての生体無機性アパタイトの生物活性により、生物環境における天然の溶解性が得られる。本発明者らの所見は、生体系における溶解/沈殿の過程が生理学的条件下でのその組成および微細構造に依存するようであるという仮定を強化する。骨芽細胞はAPBのインキュベーションによって高度に分化することができるにも関わらず、分化した細胞は、溶解/沈殿過程に影響を及ぼさない。HAセラミックスの研究は、生物活性が微細構造と密接に関連することを示す(Nelson,D.G.,et al.,J.Ultrastruct.Res.1983;84:1-15;Daculsi,G.,et al.,Calcif.Tissue Int.1989;45:95-103)。ケイ素置換HA生体セラミックスは、純粋なHA投与と比較して溶解速度が増加する(Porter,A.E.,et al.,Biomater.2003;24:4609-4620)。Si、Mg、またはSi置換HAは良好な生体適合性を示し、より良好な移植生体材料と見なされる(Carlisle,E.M.,Science 1970;167:279)。
【図面の簡単な説明】
【0150】
【図1】処理前の動物の骨を示す図である。
【図2】移植前に骨足場を切断し、エタノールでリンスする。
【図3】ブタ無機性骨材(A)および合成ヒドロキシアパタイト(hydroxypatite)(B)の無機構造を含むX線回折パターン分析を示す図である。
【図4】走査電子顕微鏡エネルギー分散型X線(SEM−EDX)由来のブタ無機性骨材構造の概観を示す図である。
【図5】Ca/P比が1.64の成分分析を示す図である。
【図6A】無機性網状構造および密集構造のSEM分析由来の足場構造(全構造、35倍)を示す図である。
【図6B】無機性密集構造のSEM分析由来の足場構造(3500倍)を示す図である。
【図6C】無機性密集構造のSEM分析由来の足場構造(45000倍)を示す図である。
【図6D】無機性網状構造のSEM分析由来の足場構造(2500倍)を示す図である。
【図6E】無機性網状構造のSEM分析由来の足場構造(8000倍)を示す図である。
【図7】緻密骨中の各結晶構造のSEM−DEX分析を示す図である。
【図8】海綿骨中の各結晶構造のSEM−DEX分析を示す図である。
【図9A】ブタ無機性骨材との接触前の正常な骨芽細胞3T3の形態を示す図である。
【図9B】ブタ無機性骨材との接触後の分化細胞の形態を示す図である。
【図10】正常な骨芽細胞3T3(MC3T3)および分化した細胞(MC3T3/APB)のALP活性を示すグラフである。
【図11】小さな点を有する卵様結晶を示す図である。
【図12】3T3細胞およびAPBを含む溶液中で形成された結晶のEDXの結果を示す図である。
【図13】EDX(D〜F)によって示された成分と共に3T3細胞およびAPBを含む溶液中にて2週間で形成された結晶(A〜C)の顕微鏡写真である。
【図14】異なる位置(部位1(B)および部位2(C))でのEDXによって示された成分と共にAPBのみを含む溶液中にて2週間で形成された結晶(A)の顕微鏡写真である。
【図15】EDX(B)によって示された成分と共にC212細胞およびAPBを含む溶液中にて2週間で形成された結晶(A)の顕微鏡写真である。
【図16】カバーガラス(A)上の沈殿物のSE顕微鏡写真およびその主な成分(B)を示す図である。
【図17】溶液中の結晶のXRDパターンを示す図である。
【図18】BDSのSE顕微鏡写真(A)およびEDXによって検出されたその主な成分(B)を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
移植可能な生体材料の調製方法であって、
a)骨組織を得るステップと、
b)骨組織をボイルするステップと、
c)コラーゲンを除去するために前記骨組織を処置するステップと
を含む方法。
【請求項2】
ステップ(c)の処置後にSEM−EDXによってコラーゲンが検出されない、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ボイルステップが水中で行われる、請求項1〜2に記載の方法。
【請求項4】
前記ボイルステップが蒸留水中で行われる、請求項1〜3に記載の方法。
【請求項5】
ボイル前に前記骨組織を洗浄するステップを含む、請求項1〜4に記載の方法。
【請求項6】
前記骨組織が、機械的に、空気でまたは液体を用いて洗浄される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記骨組織が水で洗浄される、請求項5〜6に記載の方法。
【請求項8】
ステップc)が、コラーゲンを融解および変性させるために前記骨組織を200〜250℃で処置するステップと、コラーゲンを溶解するための溶媒でさらに処置するステップとを含む、請求項1〜7に記載の方法。
【請求項9】
前記温度が210℃である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記コラーゲンを溶解するための溶媒が、エタノール、ヒドラジン、メタノール、および/または塩酸グアニジンである、請求項8〜9に記載の方法。
【請求項11】
前記骨組織を超音波で処置するステップをさらに含む、請求項1〜10に記載の方法。
【請求項12】
前記骨組織を所定の形状に切断するステップd)をさらに含む、請求項1〜11に記載の方法。
【請求項13】
前記骨組織が高圧ウォータージェットを用いて切断される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
切断した前記骨を移植前に滅菌するステップe)をさらに含む、請求項12〜13に記載の方法。
【請求項15】
移植可能な生体材料を包装するステップをさらに含む、請求項1〜14に記載の方法。
【請求項16】
得られた前記移植可能な生体材料のCa/P比が1.64である、請求項1〜15に記載の方法。
【請求項17】
骨組織を得るステップと、
前記骨組織を水で洗浄するステップと、
前記骨組織を水でボイルするステップと、
前記ボイルした骨組織を洗浄するステップと、
前記骨組織を乾燥させるステップと、
コラーゲンを融解および変性させるために前記骨組織を高温で処置するステップと、
前記コラーゲンを溶解するために前記骨組織を溶媒で処置、および/または超音波で処置するステップと、
前記溶媒を前記骨組織から蒸発させるステップと
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記移植可能な生体材料中のコラーゲンがSEM−EDXによって検出されない、請求項1〜17に記載の方法。
【請求項19】
得られた移植可能な生体材料が無機性骨材である、請求項1〜18に記載の方法。
【請求項20】
得られた移植可能な生体材料が有機基質を含まない、請求項1〜19に記載の方法。
【請求項21】
前記方法が、超臨界状態の流動物で前記骨組織を処置するステップを含まない、請求項1〜20に記載の方法。
【請求項22】
移植前に前記移植可能な生体材料をインビトロで培養するステップをさらに含む、請求項1〜21に記載の方法。
【請求項23】
移植前に前記移植可能な生体材料に患者自身の単離細胞を播種するステップをさらに含む、請求項1〜22に記載の方法。
【請求項24】
前記生体材料を脊椎動物に移植するステップをさらに含む、請求項1〜23に記載の方法。
【請求項25】
前記生体材料を脊椎動物に移植する美容ステップをさらに含む、請求項1〜23に記載の方法。
【請求項26】
請求項1〜25に記載の方法にしたがって調製された移植可能な生体材料。
【請求項27】
移植可能な生体材料であって、前記移植可能な生体材料が骨組織から作製され、前記移植可能な生体材料中のコラーゲンがSEM−EDXによって検出されない、移植可能な生体材料。
【請求項28】
有機基質を含まない無機性骨材である、請求項27に記載の移植可能な生体材料。
【請求項29】
前記移植可能な生体材料のCa/P比が1.64である、請求項27〜28に記載の移植可能な生体材料。
【請求項30】
移植前に前記移植可能な生体材料がインビトロで培養される、請求項27〜29に記載の移植可能な生体材料。
【請求項31】
移植前に前記移植可能な生体材料が患者自身の単離細胞を播種される、請求項27〜30に記載の移植可能な生体材料。
【請求項32】
請求項26〜31に記載の移植可能な生体材料を含むパッケージまたはキット。
【請求項33】
前記移植可能な生体材料が滅菌されている、請求項32に記載のパッケージまたはキット。
【請求項34】
脊椎動物に移植するための移植可能な生体材料の調製のための骨組織の使用であって、前記移植可能な生体材料中のコラーゲンがSEM−EDXによって検出されない、使用。
【請求項35】
前記移植可能な生体材料が有機基質を含まない無機性骨材である、請求項34に記載の使用。
【請求項36】
前記移植可能な生体材料のCa/P比が1.64である、請求項34〜35に記載の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7A】
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【図7B】
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【図7C】
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【図7D】
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【図8A】
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【図8B】
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【図8C】
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【図8D】
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【図8E】
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【図8F】
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【図9A】
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【図9B】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13A】
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【図13B】
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【図13C】
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【図13D】
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【図13E】
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【図13F】
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【図14A】
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【図14B】
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【図14C】
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【図15A】
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【図15B】
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【図16A】
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【図16B】
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【図17】
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【図18A】
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【図18B】
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【公表番号】特表2008−500094(P2008−500094A)
【公表日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−515000(P2007−515000)
【出願日】平成17年5月24日(2005.5.24)
【国際出願番号】PCT/SG2005/000165
【国際公開番号】WO2005/115491
【国際公開日】平成17年12月8日(2005.12.8)
【出願人】(504354117)エイジェンシー・フォー・サイエンス,テクノロジー・アンド・リサーチ (17)
【Fターム(参考)】