説明

移植可能な血管アクセス装置

個々の互換性構成要素として、流体チャンバを画定するチャンバ本体、本体構成要素、および隔壁を有する構成可能かつ移植可能なアクセスポートを提供する。個々の構成要素は、機械的特性、接着剤、または溶接によって組み立てられて、完全なアクセスポートを提供することができる。好ましくは、2つ以上のサイズまたは幾何学形状を有する少なくとも1つの本体構成要素を提供する。チャンバ本体および隔壁を特定用途に適した本体構成要素と組み合わせることによって、アクセスポートを移植前に特定用途に合わせて形成することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、皮下に移植可能な血管アクセスポートに関する。本発明は、より詳細には、針で貫通可能な自己シール式隔壁を有する移植可能なアクセスポートに関し、このアクセスポートは、カテーテルと流体連通する流体キャビティに繰返しアクセスすることができるようにする。この移植可能なアクセスポートは、移植可能なアクセスポートを複数の構成にすることができる互換性構成要素のアセンブリである。
【背景技術】
【0002】
アクセスポータルまたはポートは、外科処置を施さずに、身体の遠隔領域に薬物を繰返し送達する便利な方法を提供するものである。ポートは身体内に完全に植え込むことができ、薬物、注射液、血液製品、および他の流体を注入することができるようにする。ポートは、血液サンプリングに使用することもできる。
【0003】
周知のポートは、通常、自己シール式隔壁を通してアクセス可能なチャンバを備える。従来技術の隔壁は、シリコーンのウェファー様円筒形ブロックからWeeks他の米国特許第4,802,885号の予備成形された隔壁に至る多様な形状をしている。米国特許第4,802,885号の予備成形隔壁は、対向する凸面および周囲堤を備える。
【0004】
一般には、世話をする人がポートの隔壁を動悸によって位置付ける。ポートアクセスは、通常はノンコアリング針である針を、ポートの隔壁を通してチャンバ内に垂直に挿入して行われる。次いで、薬物または流体が大量注射または持続注入によって投与される。通常、流体はチャンバを通ってカテーテル内に流れ、最終的に流体が所望される部位に流れる。旧式ポートは、隔壁以外は全て金属または全てプラスチックで構成される。どのタイプの構成にも独自の利点および欠点がある。
【0005】
総金属構造は、経皮注射を繰り返した後に自己シール式に隔壁を維持する利点がある。さらに、チタンまたはステンレス鋼などの総金属構造は、生体適合性であり注入される流体とも適合性があるポートを提供する。
【0006】
しかし、総金属構造は比較的重く、製造が難しく、比較的高コストであるという欠点がある。また、総金属ポートは、大きい磁気共鳴イメージング(MRI)アーチファクトを生成する。一方、総プラスチックポートは、製造コストが低く、軽量であり、MRIアーチファクトを生成しない利点がある。しかし、プラスチックから形成されたポートは、注入流体がポートのプラスチック本体に対して化学反応を起こす可能性があるという欠点がある。総プラスチックポートは、経皮注射を繰り返した後に隔壁とのシール係合を維持することができない欠点がある。さらに、総プラスチックポートは、針のアクセスによって内面に切れ目および引っ掻き傷を生じやすい。こうした切れ目および引っ掻き傷は、病巣、血餅、または沈殿物の形成を招くことがある。
【0007】
総金属ポートと総プラスチックポートの利点を組み合わせる努力がなされてきた。たとえば、Weeks他の米国特許第4,802,885号では、予備成形シリコーンの隔壁によってシールされたチャンバを有する金属リザーバが単一片のシリコーンエラストマーで被覆されている。しかし、単一片のエラストマーで被覆された総金属ポートには重大な欠点がある。こうした欠点には、製造中の品質管理の問題、および成形プロセスが高コストであることが含まれる。
【0008】
開放型金属カップと協働する複数片の総プラスチック製ハウジングを提供して隔壁をシール式に係合する他の努力もなされている。たとえば、Tuckerの米国特許第5,213,574号を参照されたい。この設計は、設計に関する欠点があり、隔壁が不適切にシールされる可能性があるプラスチックハウジングの欠陥を含む。隔壁が不適切にシールされると、ポート全体を廃棄しなければならない。
【0009】
したがって、従来のポート装置の問題に対処するアクセスポート装置が求められている。
【0010】
皮下アクセスポートとして知られている多様な移植可能な装置が、患者の血流に流体を送達し、またはそれから流体を抜き取るために使用されている。こうしたアクセスポートは、通常、針で貫通不可能なハウジングを備え、ハウジングは1つまたは複数の流体キャビティを取り囲み、こうした流体キャビティごとに、アクセスポートが体内に植え込まれた場合に患者の皮膚に隣接するハウジングの側部にハウジングを通って連通するアクセス開口部を画定する。針で貫通可能な隔壁は、各アクセス開口部内に受けられてそれを密閉する。排出ステム内に位置する出口通路は、それぞれ流体キャビティと連通して、薬物を流体キャビティから患者の身体内の所定の位置までアクセスポートに取り付けられた移植済みカテーテルを通して分注する。
【0011】
アクセスポートおよびカテーテルが患者の皮膚下に植え込まれた後、多量の薬物または血液を1つのこうした流体キャビティから、患者の皮膚を通過し隔壁を貫通してそれぞれ流体キャビティの1つ内に入るノンコアリング針によって分注することができる。この薬物は、カテーテルの遠位端を通って患者の身体の静脈系内への入口点に向けられる。
【0012】
血液を患者の身体からこうしたアクセスポートを介してサンプリング用に抜き取ることもできる。これは、患者の皮膚およびそれぞれの隔壁をノンコアリング針で貫通し、そこに負圧を加えて行うことができる。それによって血液が、貫通された隔壁に対応する流体キャビティ内にカテーテルを介して抜き取られ、次いで針を介して患者の身体の外に抜き出される。
【0013】
その後の凝固を防ぐため、薬物が注入されたのと同じ方法で、やはり患者の皮膚および隔壁を貫通するノンコアリング針を使用して、抜取り経路に食塩水またはヘパリンをどっと流す。
【0014】
薬物の断続的または連続的な注射は、アクセスポートによって分注することができる。連続アクセスでは、装着携行式ポンプまたは患者の上部に吊り下げられた重力供給式IVバッグに取り付けられたノンコアリング針を使用する。装着携行式ポンプまたはIVバッグは、薬物または流体を、針を通してアクセスポート内の流体キャビティ内に連続して供給し、そこからカテーテルを通して静脈系内の入口点に送る。
【0015】
アクセスポートが植え込まれた後にそれぞれ隔壁を位置付けし易くするため、幾つかのアクセスポートには、隔壁の外周の周りに配置された隆起した円形リングが組み込まれている。この隆起リングによって、医療専門家の指先による触診に皮下隔壁によりもたらされる触感覚が高められる。あるいは、他のアクセスポートでは、実質的に同じ目的で、隆起円形リングではなく触診用隆起部が使用されている。この触診隆起部によって、アクセスポートが皮下に植え込まれた場合に、隔壁の位置を正確に決定することができるようになる。
【0016】
患者の身体内組織との反応を阻止するため、アクセスポートはチタンまたはステンレス鋼など非反応材料から形成される。こうした材料は非反応性であっても、磁気共鳴影像法(「MRI」)、CATスキャン、またはコンピュータ断層撮影法など画像診断法が使用される場合に、チタンまたはステンレス鋼材料を使用して形成されたアクセスポートによって、移植されたアクセスポート付近の患者の身体の画像が干渉現象を起こし、または不鮮明になる。患者の身体内に金属アクセスポートが存在することによって生じる不鮮明な領域は、アクセスポート自体を超えて拡張される。したがって、金属アクセスポートを使用すると、アクセスポートが植え込まれる身体内の領域に対して使用される画像診断法が制限を受ける。幾つかのアクセスポートは、金属材料の代わりに、少なくとも部分的に生体適合性プラスチックで形成されている。
【0017】
アクセスポート用の材料およびその形成に関する他の問題は、流体キャビティおよび流体キャビティとカテーテルの間に配置された関連構造を通って流れる流体に幾つかの製造手順で有害な衝撃が与えられることである。ポートが金属で形成されてもプラスチック材料で形成されても、アクセスポートの製造中に、流体キャビティおよび出口通路を形成することが必要になる。出口通路は、それを介して流体を取り付けたカテーテル内に向けるようにする。この製造プロセスによって、流体キャビティにより流体の流れが出口通路を通るように向けられる領域に鋭い縁部、継目、および角が残されることが多い。血液または他の流体が隔壁を通って流体キャビティ内に注入されるときに、流体キャビティ内で高まる圧力によって流体が出口通路を通って流される傾向がある。流体キャビティ内の流体がアクセスポートの製造中に形成された鋭い縁部および角を通過して流れると、鋭い縁部および角に隣接して渦の形をとる乱流が発生する。血液など流体の一部はこの乱流に敏感であり、注入された血液の赤血球成分の溶解がこうした乱流領域で起こる可能性がある。
【0018】
さらに、円形の流体キャビティを形成すると、流体の流れが遅くなる領域がハウジング内に発生することが多い。こうした領域は死腔と呼ばれ、通常は、隔壁の底部が流体キャビティの壁とインターフェースをとる場所、および流体キャビティの床が流体を流すべき出口通路と接触する場所など移行領域内に発生する。死腔を通る流体の流れが遅くなると、停滞が生じ、一部の流体がこうした死腔内に閉じ込められることになる。アクセスポートを使用して血液を引き抜きまたは輸血する場合、こうした死腔内に閉じ込められた血液は、血餅を形成して流体キャビティを通る流体の流れを阻止することがある。
【0019】
さらに、一部の従来の血管アクセスポートでは、内部リザーバが互いに結合された2つのプラスチック部分によって形成される。そのため、隣接する部分が互いに衝合するところに望ましくない継目が形成されることになる。リザーバの内部をできるだけ平滑にして、ポートを介した血液の注入または抜取り中に血球への損傷および血液凝固の開始を防ぐ助けをしなければならない。
【0020】
アクセスポートの設計および形成で起こる他の問題は、隔壁のアクセスポートのハウジング内への配置に関する。隔壁をハウジング内に配置することは、2つの相反する目的の妥協策である。注射のためには隔壁が簡単に差異化される距離だけ隔壁を分離する必要があり、患者の快適性および美観のためにはアクセスポートの全体寸法を制限する必要がある。しかし、隔壁を、距離を置いて配置して隔壁の差異化を容易にするには、対応する流体キャビティも距離をおいて配置することになる。その結果、複数のキャビティを備えるアクセスポートに対する他の構造的要件、すなわち、各流体キャビティからの出口通路が移植可能なカテーテルをアクセスポートに結合すべき点で僅かに間隔をおいて配置されるという要件と相反することになる。
【0021】
流体の流れをそれぞれ空間的に分離された流体キャビティから複数のルーメンカテーテルの寸法に必要とされる流体流出の並列構造内に案内するには、中間構造部材が必要である。それによって当然、製造プロセスが複雑になり、製造コストが上がる他に構造的変更による故障も増える。
【0022】
空間的に分離された流体キャビティからカテーテルに使用可能な並列構造内に流す通路の構成に加えられる製造の制約を解決するために使用されるこうした中間部材の幾つかの例がある。1つは、通路を屈曲した金属管の形態で形成し、次いで、その金属管をアクセスポートのより大きい本体内にインサート成形または溶接することである。こうした金属構成要素の使用は、アクセスポートが植え込まれる身体内のこうした領域に対して使用することができる画像診断法に関する制限を受けないアクセスポートの製造を妨げるものであろう。さらに、こうした金属製排出通路に伴う性質によって、金属管とアクセスポートの本体との間隙を介して薬物が漏れる可能性が生じる。
【0023】
あるいは、空間的に分離された流体キャビティから僅かに間隔をおいて配置されたカテーテルのルーメン内への流体の流れを生成するため、各流体キャビティ自体が空間的に分離された排出ステムを有するように設計される。こうした排出ステムは、次いで、僅かに間隔をおいて配置されたカテーテルのルーメンに永久に取り付けるためのハブ構造によって結合される。このタイプの構成では、アクセスポート全体のサイズが増大し、ハブ要素の形成および組み立ての必要性が加えられて製造コストが上がる。この方法では、ポートのカテーテルへの連結は永久的である。したがって、カテーテルをトリムによって短縮する場合は、そのトリムをカテーテルの遠位端で行わなければならず、そのため、特別に設計された先端または弁の全てのタイプを使用することはできなくなる。
【0024】
アクセスポートの使用で起こる他の幾つかの問題は、カテーテルのアクセスポートへの実際の連結に関するものである。これは、カテーテルをアクセスポートのハウジングから突き出た排出ステムに固定することによって最も一般的に起こる問題である。カテーテルをアクセスポートの排出ステムに係止する目的で、ねじ形システムが形成され、カテーテルが排出ステムに取り付けられ、次いで排出ステムがアクセスポートにねじ込まれる。しかし、このシステムを使用する場合は、カテーテルを排出ステムに係合させる範囲を決めることが難しい。幾つかのカテーテル連結システムでは、取り付けを視覚的に確認することができない。その結果、漏れや故障が生じることがある。
【0025】
この問題を克服するには、カテーテルが工場で事前に取り付けられてアクセスポートが製造される。この実施によって、カテーテルのずれによって起こる漏れや故障に関する問題の多くが緩和されるが、このシステムはアクセスポートに使用可能なカテーテルのタイプを厳密に限定するものである。そのため、特殊化された遠位端を有するカテーテルが使用できなくなるが、カテーテルの遠位端は、最終的な寸法付けを行うためにトリムすることができる唯一の端部である。たとえば、遠位端にGroshong.RTM.スリット弁を使用するカテーテルは、カテーテルを変更せずに取り除かれるカテーテルの遠位端を有していない。
【0026】
したがって、上記の問題を克服し、経済的に製造することができる改良型血管アクセスポートが求められている。本発明は、こうした必要性を満たし、他の関連する利点を提供するものである。
【特許文献1】米国特許第4,802,885号明細書
【特許文献2】米国特許第5,213,574号明細書
【特許文献3】米国特許出願第09/582,406号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0027】
本発明は、構成可能かつ移植可能なアクセスポートアセンブリを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0028】
このアクセスポートアセンブリは、流体チャンバを画定するチャンバ本体、前記流体チャンバへの出入りを提供するように構成された隔壁、および互換性本体構成要素を備え、前記チャンバ本体および前記隔壁は、複数の互換性本体構成要素と係合するよう構成されている。好ましくは、2つ以上の幾何学形状および/またはサイズを有する少なくとも1つの互換性本体構成要素を提供することができる。したがって、標準サイズのチャンバ本体および隔壁を様々なサイズおよび/または幾何学形状の本体構成要素と共に組み立てて、様々な全体サイズおよび/または幾何学形状を有するアクセスポートを提供することができる。
【0029】
本発明は、関連する態様により、特定の適用例に合わせたサイズおよび/または幾何学形状に形成されたアクセスポートを提供するように構成し組み立てることができる互換性構成要素を有するアクセスポートを提供する。したがって、最少数でかつ最低コストの製造工程で最大数の異なるアクセスポート構成を提供することができる。
【0030】
本発明は、他の関連する態様により、完全な移植可能なアクセスポートを提供するよう組み立てることができる個々の互換性アクセスポート構成要素のキットを提供する。このキットは、開放型流体チャンバを画定するチャンバ本体、本体構成要素、および前記流体チャンバへの出入りを提供するための隔壁を含むことができる。好ましくは、このキットは、複数の本体構成要素を備えており、複数の本体構成要素は様々なサイズおよび/または幾何学形状を有する。
【0031】
本発明の利点は、以下の説明から明らかになるであろう。この説明は添付図面と併せて考慮されたい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
本発明は、互換性構成要素のアセンブリを備えるアクセスポート装置である。アクセスポートは、そういうものとして、通常、流体チャンバ本体、本体部分、および非一体型アセンブリに設けることができる隔壁を備えることができる。幾つかの異なる構成を有するアクセスポートの多様な構成要素を提供することができる。そういうものとして、アクセスポートを様々な本体構成要素から組み立てて、一連の様々な構成を有する移植可能なアクセスポートを形成することができる。
【0033】
本発明のこの態様の例示の一実施形態では、移植中にアクセスポートを隣接する組織に締結して、植え込まれた位置からの望ましくない移動が生じないようにアクセスポートを固定することが望ましいことを留意されたい。アクセスポートに縫合開口部を設けて、アクセスポートを移植部位に隣接する組織に縫合することによって、アクセスポートを固定し易くすることができる。ポートをこうして固定することによって、アクセスポートを意図された移植部位内で皮下にしっかりと安定させることができるようになる。しかし、身体内の様々な移植部位により、たとえ僅かでもあれば、縫製開口部の異なる構成および異なるアクセスポートの輪郭が必要とされる。
【0034】
さらに、患者のサイズおよび性別、並びに意図される移植部位によって、必要とされる、または所望のアクセスポートのサイズ、形状、および幾何学的構成が大きく変わることも留意されたい。移植部位または適用例ごとに完全に異なるアクセスポートが必要とされるのではなく、本発明によるアクセスポートは、様々な適用例に対応するため、本体部分など特定の構成要素だけを変更することができるようになされている。したがって、縫合リングは、アクセスポートが有益な適用例に影響を与えることができる。しかし理解されるように、以下に記載する縫合リングは、単にそれ自体がアクセスポートの輪郭全体に適した外側本体部分であり、アクセスポートのどの縫合設備からも独立して存在することができる。
【0035】
図1を参照すると、互換性アセンブリによる単一のアクセスポート装置100の第1の例示の実施形態が示されている。この例示の実施形態によれば、アクセスポート100は、アクセスポート100の上縁を形成するキャップリング112によって取り囲まれた隔壁110を備える。キャップリング112を、互換性本体構成要素の上面に配置することができる。互換性本体構成要素は、この実施形態の場合は縫合リング114である。本体構成要素114は、アクセスポート100の輪郭全体および幾何学的構成を全般的に画定する。アクセスポート装置100の側壁から延在し、アクセスポート100の内部の流体チャンバと流体連通するステム106を設けることができる。
【0036】
図2に目を転じると、分解図で例示のアクセスポート100が示されている。このアクセスポートアセンブリ100は、通常、開放型流体チャンバを画定する流体チャンバ本体102、縫合リング114、および自己シール式に針の出入りを可能にすることができる隔壁110を備える。図で示したように、アクセスポート100は、チャンバ本体102と縫合リング114の間に少なくとも部分的に配置された縫合プラグ108を備えることもできる。また、アクセスポート100は、アクセスポート100の上部に配置され、好ましくは隔壁110の少なくとも一部を取り囲むキャップリング112を備えることもできる。
【0037】
図示した実施形態を参照すると、チャンバ本体102は全般的に管状の部材でもよく、底部分104、およびチャンバ本体102の側壁から延び、チャンバ本体102の内部と流体連通するステム106を有する。縫合プラグ108をチャンバ本体102の周囲に配置して、縫合プラグ108内の開口部がステム106を収容するようにすることができる。図示した実施形態では、縫合プラグ108は複数のプラグ部材130および132を備えることができる。図示したように、プラグ部材は円筒形部材130または矩形部材132でもよい。例示の実施形態によれば、プラグ部材130,132の上部分を縫合リング114の形状に対応するように形作ることができる。プラグ部材130,132は、縫合リング124,126の開口部を少なくとも部分的に塞いで、組織または生物材料が縫合リング124,126内に移動するのを阻止する。縫合リング114は、チャンバ本体102と縫合プラグ108の両方を覆ってその周りに配置することができる。図示したように、縫合リング114は、開口部118を含んで、ステム106がその開口部を通って延在することができるようになされている。望ましくは、隔壁110の底面の周縁領域がチャンバ本体102の側壁120内に少なくとも部分的に受けられるようにする。有利には、隔壁110の底面がチャンバ本体の内側に延びる特徴部(図示せず)と接触できるようにする。最後に、キャップリング112が隔壁110上に配置され、キャップリング112の底面が隔壁110の上周縁領域122と共に少なくとも部分的に拡張されて、隔壁110をチャンバ本体102の側壁120に対して圧縮するようにすることができる。
【0038】
チャンバ本体102は、任意の生体適合性材料で形成され、針の出入りのためのアクセス部を有する流体チャンバを画定する底部分および壁部分を有するように構成することができる。図示した例示の実施形態によれば、チャンバ本体102を、全般的に円形で管状の幾何学形状を有し底部分104を備えるように構成することができる。一例では、チャンバ本体をキャップとして形成することができる。さらに、チャンバ本体102は好ましくは、ステム106と流体連通する出口ポートを備える。有利には、チャンバ本体102は、ステンレス鋼、チタン、または他の生体適合性金属など金属材料で形成される。あるいは、チャンバ本体102は成形された生体適合性プラスチック材料でもよい。さらに、チャンバ本体102は、流体チャンバの底部に配置された金属またはセラミックのカップを備えて、針の衝撃の結果としての引っ掻き傷および/または壊死組織片の放出を防止することができる。この態様の例示の構成は、参照によりその内容を本明細書に組み込む、2000年6月23日出願の本発明の譲受人に譲渡された米国特許出願第09/582,406号に包含されている。
【0039】
縫合プラグ108は、縫合リング114の縫合リング124,126内に組織または他の生物材料が内植かつ/または蓄積されるのを阻止するために使用することができる任意選択の構成要素である。この目的に沿って、プラグ部材130,132が縫合リング124,126内に配置されることが好ましい。縫合プラグ108を、たとえばシリコーンなど弾性材料で形成して、プラグ部材130,132が縫合針で貫通され、プラグ部材130,132を通過する縫合糸を受けることができるようにすることが可能である。弾性材料は、弾性材料を通過する縫合糸の周囲と一致することができる。
【0040】
縫合プラグ108をチャンバ本体102の外周を覆って嵌るサイズにし、縫合プラグ108が縫合プラグ108とチャンバ本体102の間の摩擦係合によって少なくとも部分的に保持されることが望ましい。縫合プラグ108を任意選択で、たとえばチャンバ本体102の外側壁の浅い溝内に、または底部分104の溝128内に配置することによって、チャンバ本体102にさらにしっかりと結合することができる。あるいは、チャンバ本体102および縫合プラグ108は、2つの構成要素を固定するための相互作用する突起および凹部を備えることができる。また代替形態として、当技術分野で周知であり、かつ/または本明細書に記載した技法を使用して、縫合プラグ108およびチャンバ本体102を溶接または生体適合性接着剤を使用して接着結合することもできる。
【0041】
本体構成要素の縫合リング114は、好ましくは成形プラスチック構成要素であり、有利には射出成形された生体適合性プラスチック製品である。図で示したように、縫合リング114は、図2に116で示した、開口部118を二分する裂け目を含むことができる。裂け目116がある程度開口するように強制して分割し、ステム106が裂け目116を介して受けられ開口部118を通って延びることができるようにすることによって、この裂け目116により、縫合リング114の成形が容易になる他に、縫合リング114を縫合プラグ108およびチャンバ本体102を覆って配置することができるようになる。縫合リング114は、上記で述べたように、縫合プラグ108上に配置されたプラグ部材130,132に対応する縫合開口部124,126を含むこともできる。開口部124および126は、縫合リング114の上面から下方に延びる壁部分を備えることができ、この壁部分は、プラグ部材130,132または縫合プラグ108を少なくとも部分的に受けるように構成することができる。
【0042】
縫合リング114は、それぞれ縫合リング114と、縫合プラグ108およびチャンバ本体102のうちの少なくとも1つ上のスナップ嵌め、トングおよび溝型特性、ビードとチャネル特性、圧入など相互作用かつ/または係合する機械的固定手段によって、チャンバ本体102および/または縫合プラグ108に対して組み立てることができる。一例では、縫合リング114に、チャンバ本体102の底部分104の周縁部と係合することができるアンダーカットまたは同様の特性が設けられる。溶接、生体適合性接着剤、およびこれらの組合せなどの方法を含む、縫合リング114をチャンバ本体102および/または縫合プラグ108に対して組み立てる多数の他の可能な方法が当業者には容易に明らかであろう。
【0043】
縫合リング114のチャンバ本体102および/または縫合プラグ108に対する組立てに追加して、またはその一部として、開口部118を二分割する縫合リング内の裂け目116を接合することができる。裂け目116にわたる縫合リング114の接合は、スナップ嵌めまたは圧入、溶接、生体適合性接着剤など機械的特性を使用して行うことができる。裂け目116の接合で、たとえば縫合リング114をステム106に固定することによって、または縫合リングの周囲のスナップ嵌めが裂け目116の分離などで開放されるのを阻止することによって、アセンブリの安全性を高めることができる。
【0044】
隔壁110は、隔壁110が針の出入りを可能にして流体を流体チャンバに送達することができるようにする点で、半透過性のシリコーンなどエラストマーで形成することができる。前の開示により、隔壁110に、特定のポートを経皮的に確認できるようにする触覚的特性を提供することができる。
【0045】
キャップリング112は、望ましくは金属またはセラミック材料から形成されて、引っ掻き傷および/または壊死組織片が隔壁110を介して導入される危険性を低減する。しかし、キャップリング112は、生体適合性ポリマーなど、より経済的な材料から形成することもできる。キャップリング112は、丸みを付けた、または角度を付けた上面を備えて、針を下方に隔壁110に向けて移動させ、針が隔壁内に誤って入るのを防ぐことができる。有利には、トングおよび溝型特性、および/または生体適合性接着剤、あるいは溶接など機械的特性を使用してキャップリングを縫合リング114に結合することができる。
【0046】
図3は、本発明による本体構成要素114'の第2の例示の実施形態を示す。本体構成要素114'は、その中にチャンバ本体102を受けるように構成された内側壁302を備える。図で示した実施形態は、縫合開口部を有していない傾斜上面304を備える。したがって、この例示の本体構成要素114'を使用するアクセスポートは、制限を受けない方法で皮下に植え込むことができる。前の実施形態に関して、本体構成要素114'は、ステムを収容するための開口部318および裂け目316を含むことができる。
【0047】
図4には第2の例示の本体構成要素114'を使用する例示の組み立てられた移植可能なアクセスポート300が示されている。このアクセスポート300は、通常、本体構成要素114'に対して組み立てられた隔壁110'およびキャップリング112'を有する本体構成要素114'、並びにチャンバ本体(図示せず)を備えることができる。溶接、接着結合、およびその組合せなど機械的特性を使用して幾つかの構成要素を組み立てることができる。互換性構成要素のアセンブリであるアクセスポート300を提供する本発明の目的に従って、隔壁110'、キャップリング112'、およびチャンバ本体は第1の例示の実施形態のコンテキストで記載したものと全く同じもの、または同様の変化したものでもよい。しかし理解されるように、縫合プラグはこの実施形態では必要とされない。
【0048】
図5および図6は、本発明の他の例示の代替実施形態を示す。チャンバ本体を受けるための開口部を画定する内側壁502を有する、本体構成要素114''の第3の例示の実施形態を提供する。図6で示したように、本体構成要素114''の上縁506に、たとえばキャップリング112''および/または隔壁110''を本体構成要素114''に取り付けるためのトング特性を提供することができる。本体構成要素114''の上面504は、偏心的に下方に縁506から外側に向けて先細になっており、本体構成要素が開口部518から離れて細長くなっている長楕円形構成を提供している。理解されるように、本体構成要素114''は、様々な代替の偏心的かつ/または非円形形状に構成することもできる。さらに、図5および図6で示した例示の実施形態は縫合開口部を有していないところが示されているが、当業者には容易に理解されるように、縫合開口部および様々な同様の特性を組み込むことができる。
【0049】
本明細書で示した幾つかの例示の実施形態は本体構成要素の様々な構成を示しているが、理解されるように、様々な構成のアレイを有し、したがってアクセスポートアセンブリの使用可能な構成の数を増やして、チャンバ本体、隔壁、キャップリングなど多数の他の構成要素を同様に提供することができる。有利には、様々な構成要素の各実施形態が、ある標準限界寸法を固守して、構成要素の様々な実施形態がアクセスポートアセンブリで他の構成要素と互換性があるようにすることができる。たとえば、様々な本体構成要素が標準サイズのチャンバ本体を受けるように構成し、様々な隔壁が標準サイズの本体構成要素、キャップリング、およびチャンバ本体と共に使用することができるように構成することができる。しかし、幾つかの構成要素の様々な実施形態を、他の構成要素の実施形態のサブセットだけと機能するように提供して、完全ではない互換性をもたらすこともできる。
【0050】
任意選択の実施形態によれば、アクセスポートの個々の構成要素を医者または専門家が選択し組み立てて、アクセスポートを特定の適用例に合うように形成することができる。有利には、アクセスポートを、一般的な多様な用途のために構成された事前に組み立てられた構成要素に依存せずに、在庫の構成要素から要求に基づいて組み立てることができる。
【0051】
本発明は、比較的簡単で費用効率の高い製造並びに多様性の向上を容易にするものである。各個々の構成要素は、たとえば通常の従来の射出成形、またはインサート射出成形、金属射出成形、鋳造などによって大量生産し、費用効率を上げることができる。さらに、「標準」チャンバ本体を収容し、またはそれに対して組み立てることができる、広範な輪郭を有する本体構成要素を提供することができる。したがって、アセンブリの構成要素を1つだけ変更することによって、身体の様々な位置への配置を容易にする多数の構成を有するアクセスポートを提供することが可能になる。さらに、実施形態で示していないが、ステムをTまたはYステムとして提供し、2つのチャンバ本体を単一のステムに流体式に結合することができる。この態様によれば、2つのチャンバ本体を受けるように構成された縫合リングを提供することによって、2つのポートを有するチャンバ本体を形成する必要なしに、本発明のこの態様の互換性がある側面を組み込んだ複数のポートアクセス装置を提供することができる。
【0052】
したがって、本明細書に記載した目的を満たす移植可能な血管アクセス装置が提供されることが明らかである。当業者には理解されるように、本発明には修正および/または変更を加えることができ、それらは全て頭記の特許請求の範囲に記載したように本発明の範囲内にあるものとみなされる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明による、組み立てられた例示の移植可能なアクセスポートを示す斜視図である。
【図2】図1で示した例示の移植可能なアクセスポートを示す分解斜視図である。
【図3】本発明による、第2の例示の本体部分を示す斜視図である。
【図4】図3で示した第2の例示の本体部分を使用する例示の移植可能なアクセスポートを示す斜視図である。
【図5】本発明による、第3の例示の本体部分を示す斜視図である。
【図6】図5で示した第3の例示の本体部分を使用する例示の移植可能なアクセスポートを示す斜視図である。
【符号の説明】
【0054】
100,300 アクセスポート
102 チャンバ本体
104 底部分
106 ステム
108 縫合プラグ
110,110',110'' 隔壁
112,112',112'' キャップリング
114,124,126 縫合リング
114',114'' 本体構成要素
116,316 裂け目
118,318,518 開口部
120 側壁
122 上周縁領域
128 溝
130,132 プラグ部材
302,502 内側壁
304 上面
506 縁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベース、流体チャンバを画定し前記ベースから延在する垂直な壁、および前記流体チャンバと流体連通するチャンバ本体の出口ポートを備えるチャンバ本体と、
前記チャンバ本体をその中に受けるよう構成された開口部を含む互換性本体構成要素と、
前記流体チャンバの頂部を画定するよう構成され配置された隔壁と、を備え、
前記チャンバ本体および前記隔壁が複数の前記本体構成要素と係合するよう構成されている、移植可能なアクセスポートアセンブリ。
【請求項2】
前記本体構成要素に固定可能であり前記隔壁の周縁を少なくとも部分的に覆うサイズである環状キャップリングをさらに備える請求項1に記載の移植可能なアクセスポート。
【請求項3】
前記本体構成要素が、前記本体構成要素を通って延びる少なくとも1つの縫合開口部を有する縫合リングである請求項1に記載の移植可能なアクセスポート。
【請求項4】
前記少なくとも1つの縫合開口部内で受けられるよう構成された少なくとも1つのプラグ部材を含む縫合プラグをさらに備える請求項3に記載の移植可能なアクセスポート。
【請求項5】
前記チャンバ本体が生体適合性金属からなる請求項1に記載の移植可能なアクセスポート。
【請求項6】
前記チャンバ本体が生体適合性プラスチックからなる請求項1に記載の移植可能なアクセスポート。
【請求項7】
前記チャンバ本体が前記流体チャンバの底部の少なくとも一部を覆う金属挿入部材をさらに備える請求項6に記載の移植可能なアクセスポート。
【請求項8】
前記本体構成要素が成形プラスチック構成要素を含む請求項1に記載の移植可能なアクセスポート。
【請求項9】
個々の構成要素として、
開放型流体チャンバを画定する壁を備えるチャンバ本体と、
前記チャンバ本体を受けるよう構成された凹部を含む互換性本体構成要素と、
前記チャンバ本体によって画定される前記開放型流体チャンバを閉鎖するサイズの隔壁と、を備え、
前記チャンバ本体および前記隔壁が複数の前記互換性本体構成要素と係合するよう構成されている、移植可能なアクセスポートキット。
【請求項10】
複数の互換性本体構成要素を備え、前記複数の互換性本体構成要素が様々な幾何学形状を有し、前記チャンバ本体および前記隔壁と様々な本体構成要素との係合によって様々な幾何学形状を有するアクセスポートが形成される請求項9に記載の移植可能なアクセスポートキット。
【請求項11】
複数の互換性本体構成要素を備え、前記複数の互換性本体構成要素が様々なサイズを有し、前記チャンバ本体および前記隔壁と様々な本体構成要素との係合によって様々なサイズを有するアクセスポートが形成される請求項9に記載の移植可能なアクセスポートキット。
【請求項12】
前記互換性本体構成要素が概して円形の輪郭を有し、前記凹部に隣接する比較的厚い部分から比較的薄い周縁部まで先細になっている請求項9に記載の移植可能なアクセスポートキット。
【請求項13】
前記互換性本体構成要素が概して長円形の輪郭を有し、前記凹部に隣接する比較的厚い領域から比較的薄い周縁部まで先細になっている請求項9に記載の移植可能なアクセスポートキット。
【請求項14】
前記比較的厚い領域が前記互換性本体構成要素内に偏心的に配置される請求項13に記載の移植可能なアクセスポートキット。
【請求項15】
個々の構成要素として、
開放型流体チャンバを画定する壁を備えるチャンバ本体と、
前記チャンバ本体を受けるように構成された凹部、および縫合リングを通って延びる少なくとも1つの縫合開口部を含む互換性縫合リングと、
前記チャンバ本体によって画定される前記開放型流体チャンバを閉鎖するサイズの隔壁と、を備え、
前記チャンバ本体および前記隔壁が複数の前記互換性縫合リングと係合するよう構成されている、移植可能なアクセスポートキット。
【請求項16】
複数の互換性縫合リングを備え、前記複数の互換性縫合リングが様々な幾何学形状を有し、前記チャンバ本体および前記隔壁と様々な縫合リングとの係合によって様々な幾何学形状を有するアクセスポートが形成される請求項15に記載の移植可能なアクセスポートキット。
【請求項17】
複数の互換性縫合リングを備え、前記複数の互換性縫合リングが様々なサイズを有し、前記チャンバ本体および前記隔壁と様々な縫合リングとの係合によって様々なサイズを有するアクセスポートが形成される請求項15に記載の移植可能なアクセスポートキット。
【請求項18】
前記互換性本体構成要素が概して円形の輪郭を有し、前記凹部に隣接する比較的厚い部分から比較的薄い周縁部まで先細になっている請求項15に記載の移植可能なアクセスポートキット。
【請求項19】
前記互換性本体構成要素が概して長円形の輪郭を有し、前記凹部に隣接する比較的厚い領域から比較的薄い周縁部まで先細になっている請求項15に記載の移植可能なアクセスポートキット。
【請求項20】
前記比較的厚い領域が前記互換性本体構成要素内に偏心的に配置される請求項19に記載の移植可能なアクセスポートキット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2006−522669(P2006−522669A)
【公表日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−509894(P2006−509894)
【出願日】平成16年4月12日(2004.4.12)
【国際出願番号】PCT/US2004/011103
【国際公開番号】WO2004/091434
【国際公開日】平成16年10月28日(2004.10.28)
【出願人】(505375584)エスティーディー・メッド・インコーポレーテッド (1)
【Fターム(参考)】