移植機及びそれを備えた移植作業車
【課題】
根鉢を備えるタイプの苗でも移植機によって移植でき,更に、植込盤の回転速度が移植機の走行速度より遅い場合でも、苗が載置手段や保持手段によって後方から押されず倒されないようにできる、移植機及びそれを備えた移植作業車を提供する。
【解決手段】
移植機A1は取付フレーム1と基フレーム2を備えている。基フレーム2は側部フレーム20,20と中フレーム26と後部フレーム21を枠組して形成してある。中フレーム26には従動走行輪3が設けてある。また各側部フレーム20と中フレーム26の間にはそれぞれ植込盤4が設けてある。植込盤4は従動走行輪3による回転力によって回転する。植込盤4の周縁部には外方へ突出して載置機構部7が複数個設けてある。載置機構部7は、植込盤4が回転して下側の苗放し部Rにさしかかったときに、プラグ苗の根鉢を載せる載置部72が植込盤4の内側へ移動する。
根鉢を備えるタイプの苗でも移植機によって移植でき,更に、植込盤の回転速度が移植機の走行速度より遅い場合でも、苗が載置手段や保持手段によって後方から押されず倒されないようにできる、移植機及びそれを備えた移植作業車を提供する。
【解決手段】
移植機A1は取付フレーム1と基フレーム2を備えている。基フレーム2は側部フレーム20,20と中フレーム26と後部フレーム21を枠組して形成してある。中フレーム26には従動走行輪3が設けてある。また各側部フレーム20と中フレーム26の間にはそれぞれ植込盤4が設けてある。植込盤4は従動走行輪3による回転力によって回転する。植込盤4の周縁部には外方へ突出して載置機構部7が複数個設けてある。載置機構部7は、植込盤4が回転して下側の苗放し部Rにさしかかったときに、プラグ苗の根鉢を載せる載置部72が植込盤4の内側へ移動する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は移植機及びそれを備えた移植作業車に関するものである。更に詳しくは、根鉢を備えるタイプの苗でも移植できるようにする移植機及びそれを備えた移植作業車に関する。
【背景技術】
【0002】
通常、キャベツやタマネギ等は、苗床に種を蒔き、発芽した苗が適切な大きさに育ったところで、圃場(畝)に植え替えて栽培されている。苗の種類としては、(1)枠で囲った容器内に適当に種を蒔いて育て、土を保持させない状態で植え込むものや、(2)多数の区画された育苗部を備える専用の苗床で育て、根鉢(根の周りの土のついた部分)ごと植え込むものがある。後者の根鉢を備えた苗は、一般的にプラグ苗やポット苗と称されている。
【0003】
従来から苗は、手植えや移植機を使用して圃場に植えられている。移植機としては、例えば、本発明者が開発した特許文献1に示すものがある。この移植機は、溝形成装置によって畝上部に植込溝を形成し、苗植込装置に挟ませた苗を植込溝に植え込み、覆土ローラーにより植込溝に土を戻すことで苗を畝上に植え込むという一連の作業を、走行に伴って順次できるという構造を有している。
【0004】
【特許文献1】特開2001−218506号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記公報記載の移植機は、苗の植え込みの省力化を図ったという点において好評を得ていた。しかし、次に示す課題が解消できれば、更に使い勝手が良くなることがわかった。
移植機は、挟持構造を有する回転板に、根が回転板の縁からやや飛び出すように苗の芽や葉を挟み持たせることで、この苗を畝に植え込んでいくというものである。従って、根鉢がないタイプの苗であれば、何ら支障なく植え込み可能である。
これに対し根鉢を備えるタイプの苗の場合は、根鉢が相当の重量を有しているので、芽や葉を挟み持たせたときに根鉢の重みによって苗の茎部分が折れてしまうことがあり、苗自体をダメにしてしまうことがあった。つまり、従来型の移植機では、根鉢を備えるタイプの苗の移植は困難であった。
【0006】
(本発明の目的)
本発明の目的は、根鉢を備えるタイプの苗でも移植機によって移植できるようにした移植機及びそれを備えた移植作業車を提供することにある。
本発明の他の目的は、苗の移植を行う移植機において、例えば、植込盤の回転速度が移植機の走行速度より遅い場合でも、苗が載置手段や保持手段によって後方から押されず倒されないようにした移植機及びそれを備えた移植作業車を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を達成するために講じた本発明の手段は次のとおりである。
第1の発明にあっては、
苗の移植を行う移植機であって、
畝に植込溝を形成する溝形成装置(6)と、
植込溝に苗を植え込む植込盤(4)と、
上記植込盤(4)の外縁側に設けてあり当該植込盤(4)の回転と共に回転移動する、苗の根鉢の載置手段または保持手段と、
苗が植え込まれた植込溝に土を覆土する覆土手段と、
を備えており、
上記植込盤(4)は、二枚の可撓性を有する回転板(40,40)を合わせて苗を挟むことができるようにしてあり、当該回転板(40,40)の上部に苗を入れる苗挟み部(B)を有し、下部に挟んだ苗を離す苗放し部(R)を有するよう構成してあることを特徴とする、
移植機である。
【0008】
第2の発明にあっては、
載置手段または保持手段は、植込盤(4)の苗放し部(R)にさしかかったときに植込盤(4)の回転中心側へ移動して植込盤(4)の外周に突出しないよう構成してあることを特徴とする、
第1の発明に係る移植機である。
【0009】
第3の発明にあっては、
回転板(40,40)と共に回転する取付部材を備えており、載置手段または保持手段は当該取付部材に支持部を介して取り付けてあり、当該支持部は、上記載置手段または保持手段が苗放し部(R)にさしかかったときに動いて、取付部材に対する取付角度が変わるよう構成してあることを特徴とする、
第2の発明に係る移植機である。
【0010】
第4の発明にあっては、
走行に伴い回転する従動走行輪(3)を備えており、植込盤(4)は当該従動走行輪(3)の回転力を利用して回転するよう構成してあることを特徴とする、
第1,第2または第3の発明に係る移植機である。
【0011】
第5の発明にあっては、
植込盤(4)は、動力手段による動力を利用して回転するよう構成してあることを特徴とする、
第1,第2または第3の発明に係る移植機である。
【0012】
第6の発明にあっては、
植込盤(4)は、回転速度が変速可能に構成してあることを特徴とする、
第1,第2,第3,第4または第5の発明に係る移植機である。
【0013】
第7の発明にあっては、
第1,第2,第3,第4,第5または第6の発明に係る移植機を、耕耘装置と畝形成装置を有する走行作業車に取り付けたことを特徴とする、
移植作業車である。
【0014】
苗の根鉢が保持可能な保持手段としては、例えば、根鉢を挟み持つ形態を有するものを挙げることができる。
【0015】
本発明に係る移植機は、走行作業車に取り付けて使用される牽引式にすることもできるし、原動機等を設けて自ら走行する自走式にすることもできる。
【0016】
なお、ここでは本発明の各構成要件のそれぞれに、後述する実施の形態において示す各部の符号を対応させて付与したが、この符号はあくまで説明の理解を助けるためのものであって、各構成要件の上記各部への限定を意味するものではない。
【0017】
(作 用)
移植機の走行に伴い、畝には植込溝が形成される。植込溝は、溝形成装置によって土が掻き分けられ、植込溝の両側に盛り上げられてできる。苗は、移植作業者によって苗挟み部から入れられ、根鉢が載置手段または保持手段に載置または保持されて、芽や葉が回転板に挟まれる。そして苗は、植込盤が回転し、載置手段または保持手段が苗放し部にさしかかったところで植込盤から離れて植込溝に入る。最後に苗は、覆土手段により植込溝の両側に盛り上げられていた土が植込溝に覆土されて植え込まれる。
【0018】
載置手段または保持手段が、植込盤の苗放し部にさしかかったときに植込盤の回転中心側へ移動して植込盤の外周に突出しないよう構成してあるものは、載置手段または保持手段から苗が離れるのと同時にまたは離れた後に、当該載置手段または保持手段が植込盤の回転中心側へ移動する。
【0019】
植込盤の回転板と共に回転する取付部材を備え、載置手段または保持手段が当該取付部材に支持部を介して取り付けてあるものは、載置手段または保持手段が苗放し部にさしかかったときに支持部が動いて、取付部材に対する取付角度が変わり、これにより載置手段または保持手段が回転中心側へ移動する。
【0020】
植込盤の回転速度が変速可能に構成してあるものは、植込盤の回転速度を変えることにより苗の植え込み間隔を変えることができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明は、上記構成を有することにより、次のような効果を有する。
(a)本発明によれば、移植機に苗の根鉢の載置手段または保持手段が備えてあるので、例えば、根鉢を有するプラグ苗等でも、根鉢を載置手段に載せたり保持手段で保持させたりすることにより茎を折ることなく植え込むことができる。
【0022】
(b)載置手段または保持手段が、植込盤の苗放し部にさしかかったときに植込盤の回転中心側へ移動して植込盤の外周に突出しないよう構成してあるものは、載置手段または保持手段から苗が離れるのと同時にまたは離れた後に、当該載置手段または保持手段が植込盤の回転中心側へ移動する。従って例えば、植込盤の回転速度が移植機の走行速度より遅い場合でも、苗は載置手段または保持手段によって後方から押されず倒されない。
【0023】
(c)植込盤の回転速度が変速可能に構成してあるものは、植込盤の回転速度を変えることにより苗の植え込み間隔を変えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
本発明を図面に示した実施の形態に基き、更に詳細に説明する。
図1は本発明に係る移植機の一実施の形態を示す全体斜視図、
図2は移植機の前部側を示す拡大斜視図、
図3は移植機の後部側を示す拡大斜視図、
図4は従動走行輪と植込盤近傍を示す概略平面図、
図5は植込盤と載置機構部を示す拡大斜視図、
図6は溝形成装置と苗挟み部の上面視説明図、
図7は溝均し具の斜視図、
図8は植込盤の周縁部の構造を示す部分端面図、
図9は載置機構部の移動軌跡を示す説明図である。
なお、図4では図を簡略化するため載置機構部7は図示を省略している。
【0025】
図1ないし図3を参照する。符号A1は移植機で、取付フレーム1と基フレーム2を備えている。
取付フレーム1の上部中央部には、走行作業車であるトラクター(図示省略)に取り付けるための取付ブラケット10が設けてある。基フレーム2は、前端部を取付フレーム1の下部に軸着して、上下方向に回動可能に取り付けてある。
【0026】
基フレーム2は、左右両側に設けられる直線形状の側部フレーム20,20と、側部フレーム20,20の間に配置され、平面視略「コ」型形状に形成してある中フレーム26と、各側部フレーム20と中フレーム26の後端部に架設される後部フレーム21を備えて構成してある。中フレーム26は、各側部フレーム20と略同じ長さを有する中骨部材260,260を備え、その一端に架設部材261を架け渡して形成してある。
【0027】
基フレーム2は、側部フレーム20,20の前端部と、中フレーム26の架設部材261が、取付フレーム1に対し上下方向に回動可能なよう軸着してある。また、基フレーム2の前部寄りの側部フレーム20、20間には、移植作業者が足を載せるための足載バー22が横架してある。
【0028】
また、基フレーム2の後部寄りの位置には、所要高さを有する台フレーム23が、側部フレーム20,20と中フレーム26上に立てて設けてある。台フレーム23の上部には、移植する苗を収容する苗容器24が取り付けてある。
【0029】
台フレーム23の前方側には、直線形状を有する補強部材29a,29aが、中骨部材260,260の前部側との間に斜めに架け渡してある。図3を参照する。また、台フレーム23の後方側には、補強部材29b,29bが中骨部材260,260の後端部との間に斜めに架け渡してある。更に、台フレーム23の前部と上記取付フレーム1の取付ブラケット10との間には、一定のストロークで伸縮自在なリンク25が架設してある。
【0030】
図1ないし図4を参照する。基フレーム2の側部フレーム20、20と中骨部材260、260には、同軸直線上となる箇所にそれぞれ軸受け27・・・が設けてある。軸受け27・・・には、側部フレーム20、20と中骨部材260、260に直交するようにして回転軸28が軸支してある。
【0031】
図4を参照する。一方の中骨部材260の軸受け27よりやや後側の箇所には、更に、軸受け270が設けてある。軸受け270には回転軸280が回転可能に軸支してある。回転軸280の従動走行輪3(後述)寄りの一端にはスプロケット281aが固着してあり、植込盤4(後述)寄りの他端にはスプロケット281bが着脱可能に固着してある。本実施の形態でスプロケット281bは、スプロケット281aよりも直径が小さく歯数の少ないものを使用している。しかし、これは限定するものではなく、例えば、直径が大きく歯数の多いものを使用することもできる。
【0032】
中骨部材260、260の間には、所要の直径を有する従動走行輪3が設けてある。従動走行輪3は、環形状を有する輪体30と、輪体30の中心に配置してある所要長さを有するスリーブ31を備え、スポーク33をスリーブ31と輪体30の間に架設した構造を有している。輪体30には、板状の突起32が外方に突出して等間隔で多数設けてある。また、スリーブ31の一方の端部には、所要の歯数を有するスプロケット310が固着してある。
【0033】
従動走行輪3は、スリーブ31内に回転軸28を通して、この回転軸28を中心として回転できるよう設けてある。なお、スリーブ31と回転軸28との間には、図示は省略したがベアリング等の摩擦抵抗軽減手段が設けてあり、従動走行輪3が抵抗の少ない状態で回転できるようにしてある。
【0034】
回転軸280のスプロケット281aと、従動走行輪3のスプロケット310との間にはチェーンT1が所要の張力をもって巻き掛けてある。これにより従動走行輪3の回転力は回転軸280に伝わる。
【0035】
引き続き図4を参照する。基フレーム2における各側部フレーム20と中骨部材260とで囲まれた枠内には、それぞれ植込盤4が設けてある。
植込盤4は、所要長さを有するスリーブ41と、可撓性を有するポリプロピレン製の二枚の円盤状の回転板40、40と、回転板40、40より径小な円盤状を有する取付部材である取付板42と、所要間隔をもってスリーブ41に固着してある回転板取付具43,43を備えている。スリーブ41には押圧ボルト410が設けてあり、ねじ込んで先端を回転軸28に押し当てることで、植込盤4が回転軸28に固定できるようにしてある。
【0036】
図5及び図8を参照する。回転板40、40の内面側の周縁部側には、所要幅の挟持帯49が全周にわたり設けてある。挟持帯49はゴム製で、中空状の凸部490と凹部491を交互に設けた構造を有している。この挟持帯49は、向き合う回転板40同士で互いに凸部490がずらしてあり、相互に噛み込むことができるようにしてある。これによると苗を傷めることなく確実に保持できる。
また、取付板42の周縁部には、載置機構部7(後述)を取り付ける取着穴420が周方向に等間隔で七箇所に形成してある。
【0037】
再び図4を参照する。植込盤4は、所要間隔を設けた状態で回転板取付具43,43をスリーブ41に固着し、更に、この回転板取付具43,43の間に取付板42を固着して、各回転板取付具43にそれぞれ回転板40を合わせるよう取り付けて構成してある。この植込盤4は、スリーブ41内に回転軸28を通して、押圧ボルト410をねじ込むことで回転軸28に固定してある。なお、回転板40は、ポリプロピレンで形成したものを示したが、材料は限定するものではなく、可撓性を有していれば、例えば、ポリエチレン等の他の合成樹脂を使用することもできる。
【0038】
側部フレーム20と中骨部材260とで囲まれた一方の枠内における回転軸28には、所要の歯数を有するスプロケット282が固着してある。回転軸28に固着したスプロケット282と、回転軸280のスプロケット281bとの間にはチェーンT2が巻き掛けてある。これにより回転軸280の回転力が回転軸28に伝わり、回転軸28に固着してある植込盤4が回転する。
【0039】
図5を参照する。植込盤4を構成する取付板42には、プラグ苗Pを植え込む際に使用する載置手段である載置機構部7が取り付けてある。
載置機構部7は、基部側に取着穴700が形成してあるブラケット部材70と、支持部である回動支持部材71と、プラグ苗Pの根鉢N部分を載せる載置手段である載置部72を備えている。
【0040】
ブラケット部材70は板材を切断して形成してあり、先部側が取付板42の縁部から外方に突出するよう、ボルトB1を取着穴700と取着穴420に通して取り付けてある。ブラケット部材70の先端部には略直角に折り曲げてストッパー部701が形成してある。ストッパー部701の近傍には回動支持部材71を取り付ける回動ピン702が設けてある。ストッパー部701には引っ張りバネS1の一端を引っ掛ける引掛部703が形成してある。
【0041】
回動支持部材71も板材を切断して形成してあり、上記した回動ピン702に回動可能に取り付けてある。回動支持部材71の回動ピン702より取付板42側の部分には、クランク状に折り曲げて段部711が形成してあり、その先には制御体当接部710が形成されている。制御体当接部710は制御体8(後述)に当たる長さを有している。制御体当接部710の所要位置には、引っ張りバネS1の他端を引っ掛ける引掛部712が突出して設けてある。回動支持部材71は、段部711を設けることにより取付板42に当たらないようブラケット部材70に取り付けてある。
【0042】
回動支持部材71の回動ピン702より外側の部分には挟持固定部713が形成してある。挟持固定部713は、回転板40,40の内側と外側に当たる箇所に所要間隔をあけた状態で下方に延びた部分を設け、それぞれの下端部を繋ぐよう、即ち、進行方向側に挟み部を有するよう側面視略「凵」型形状に形成してある。これにより挟持固定部713が回転板40,40に挟まれて固定された状態で苗を載置部72に載せることができる。挟持固定部713の先端側には、載置部72を取り付ける取付穴が形成してある(図では見えない)。
【0043】
載置部72は、平面状の載台部720の上面の両側に壁部721,721を立てて側面視に略「凵」型形状に形成してあり、更に、載台部720の下面から取着ブラケット722を垂設して構成してある。取着ブラケット722には長穴723が形成してある。
載置部72は、長穴723と挟持固定部713の取付穴にボルトB2を通し、反対側からナット(図では見えない)を螺合して取り付けてある。載置部72は、ナットを緩めることで長穴723に沿って移動可能で、取付角度も調節可能である。
【0044】
回動支持部材71は、引っ張りバネS1を引掛部703と引掛部712に引っ掛けて、常態でストッパー部701と当たって押す方向に付勢されるように設定されている。
なお、本実施の形態で載置機構部7は取付板42の周縁部に等間隔で七箇所に設けたが、載置機構部7の数は特に限定するものではなく、六箇所に設けることもできるし、八箇所に設けることもできる。一般には、移植する苗の植え込み間隔を狭くする場合に数を多くし、反対に間隔を拡げる場合に数を少なくするよう設定される。
【0045】
図2及び図3を参照する。植込盤4の回転板40、40の前部側の上部は、ローラ44、44によって所要幅だけ拡げてある。ローラ44、44は、上記台フレーム23に取付アーム440によって取り付けてある。また、回転板40、40の前部側のほぼ中間の高さ位置には、回転板40、40を密着させる挟持部材45、45が両側の外面に接触して設けてある。挟持部材45、45は、可撓性を有する線材で形成されており、上記足載バー22に固定してあるアーム46、46に取り付けてある。こうして回転板40、40の拡がった部分から密着している部分にかけて苗挟み部Bが形成される。なお、挟持部材45、45の下部側は、回転板40、40下方の苗放し部R(後述)の近傍まで延長されている。
【0046】
回転板40、40の後部側の下部は、ローラ47、47によって所要幅だけ拡げてある。ローラ47、47は、基フレーム2の後部フレーム21に、取付具48を介して取り付けてある。回転板40、40は、挟持部材45の下部側による挟持が解除された位置で拡がり始め、その位置は、基フレーム2が畝上面と平行であるときに、回転軸28の真下になるように設定してある(多少、前後へずらすこともできる)。こうして回転板40、40が拡がる苗放し部Rが、回転軸28の真下で苗を離すよう形成される。
また、取付具48は高さの調整ができるようにしてある。これにより例えば植え込まれていく苗が取付具48に接触して傷がついたり倒れたりしないように、苗の高さに合わせて調整することができる。
【0047】
図3及び図9参照する。後部フレーム21には、回動支持部材71を回動ピン702を中心として回動させる制御体8が、回転板40、40で挟まれた内方へ延ばして取り付けてある。制御体8は、後部フレーム21から延びる腕部材80と、腕部材80の先端に設けてある案内部材81を備えている。案内部材81は、立ち上がり部811とその下側から横方向にやや湾曲して延びた水平部812を有し、その間が湾曲部813で繋がれた、即ち、側面視略「し」型形状に形成してある。案内部材81の外幅面には、長さ方向の全長にわたって案内溝810が形成してある。
【0048】
制御体8は、案内部材81が回動ピン702の回転軌跡よりも回転軸28側になるよう位置し、植込盤4が回転したときに制御体当接部710が、案内溝810に沿って案内されて回動ピン702を中心として回動するよう配置してある。
【0049】
図1及び図2を参照する。足載バー22には、溝形成装置6(後述)を構成する脚部60が設けられている。脚部60には、上記植込盤4を挟む二箇所に支脚ロッド50、50が取り付けてある。支脚ロッド50は、その前端部が軸着されており、後部側は斜め上下方向(上方へ互いに拡がる方向)へ揺動(回動)可能である。
【0050】
支脚ロッド50と脚部60間には、支脚ロッド50を下方へ回動させる方向へ付勢する引っ張りバネ51が装着してある。そして、支脚ロッド50の先端部(後端部)には、覆土手段である覆土ローラ5が取り付けてある。
【0051】
覆土ローラ5の外周部表面には、スポンジゴムが層状に設けてある。覆土ローラ5の接地面の方向は、移植機A1の走行方向に対し、やや内側を向くように設定してある。支脚ロッド50は伸縮調整が可能である。なお、覆土手段は覆土ローラ5に限るものではなく、例えば、畝上面を滑りながら覆土する板状の覆土板を採用することもできる。
【0052】
各植込盤4の前方の下部側には、それぞれ上記した溝形成装置6が設けてある。各溝形成装置6の脚部60は、前部側が足載バー22に固定してあり、後部側は斜め下方へ延長してある。
【0053】
図6を参照する。脚部60の前部側には、軸受体61が取り付けてある。軸受体61には、溝切り盤62が回転可能に設けてある。溝切り盤62は、二枚の回転板620、620を前部側の周縁部が互いに接触するように傾けて、回転可能に軸着して形成してある。
【0054】
図6及び図7を参照する。脚部60の下端部には、溝均し具63が取り付けてある。溝均し具63は、側板630、630と、前部側でそれらを連結する滑り板631を有している。滑り板631は、走行方向へ向けて所要角度で上り傾斜させてある。滑り板631の位置は、溝切り盤62の接地部よりやや後方に設定してある。側板630、630の間隔が、苗を植え込む植込溝の幅になる。側板630、630の下部側は解放されているので、作業に伴って溝均し具63内部に土がたまってしまうことがなく、スムーズな作業ができる。
なお、溝切り盤62と溝均し具63及び上記植込盤4の平面視における中心線は、移植機A1の走行方向と平行な同一直線上にある。
【0055】
図1を参照する。基フレーム2の後部フレーム21の中央部には、後方へ張り出して高さ維持輪38が設けてある。高さ維持輪38は、高さが調整できるよう設けてある。また、高さ維持輪38は、畝上面において沈みにくいよう十分な幅をもって形成されている。
植込盤4は、苗の植え込み時において下縁部が畝の上面と接する程度の高さに設定する必要がある。従って、圃場の土の状態等によっては高さを調整しなければならない。植込盤4の高さは、高さ維持輪38を昇降させることにより調整される。
【0056】
(作 用)
図1ないし図9を参照し、移植機A1を使用して畝にプラグ苗を植え込む際の作用を説明する。
移植機A1は、取付フレーム1の取付ブラケット10をトラクター(図示省略)の後部側に取り付けて使用される。
まず、移植機A1を取り付けたトラクターに運転者が搭乗する。そして、移植機A1の取付フレーム1上に設けた座席(符号11で示す部分に取り付けられる)に、二人の移植作業者が後ろ向きに搭乗する。
【0057】
トラクターを走行させて移植機A1を牽引する。移植機A1の前進に伴い、溝切り盤62が畝上部に食い込んだ状態で回転しながら走行し、畝上部に筋溝が形成される。そして更に、後方に位置する溝均し具63により筋溝は均されて植込溝が形成される。
【0058】
また、移植機A1の前進に伴い、畝上で従動走行輪3が接地して回転するので、スリーブ31及びスプロケット310が回転し、チェーンT1を介してスプロケット281a及び回転軸280が回転する。これにより各回転軸280に固着してあるスプロケット281bが回転し、チェーンT2を介してスプロケット282及び回転軸28が回転する。こうして植込盤4,4が回転する。本実施の形態で示す移植機A1では、スプロケット281aより直径が小さく歯数の少ないスプロケット281bを使用して、植込盤4の方が従動走行輪3より回転速度がやや遅くなるようにしてある。このように植込盤4の回転速度を遅くすることで苗の植え込み間隔を拡げることができる。
【0059】
走行時における従動走行輪3は、板状の突起32が畝上部に突き刺さりながら回転しており、この突起32によって前進する方向に対する抵抗が得られるようにしてあるので、移植機A1は畝上で滑り難い。
【0060】
移植作業者は、ローラ44,44によって形成された苗挟み部Bに順次プラグ苗Pを挿入する。プラグ苗Pは、回転板40の縁部から突出した載置機構部7の載置部72上に根鉢Nを載せて、芽や葉が回転板40、40で挟まれるようにして苗挟み部Bに挿入される。プラグ苗Pを載せる作業は、載置機構部7の挟持固定部713が回転板40、40に挟まれて固定された状態でできるので、載置機構部7がぐらつかず載せやすい。こうしてプラグ苗Pは、芽や葉が回転板40、40で挟まれて保持される。このように移植機A1は、苗を載せる載置機構部7を備えているので、根鉢Nを有するプラグ苗Pであっても茎を折ることなく把持して植え込むことができる。
【0061】
プラグ苗Pは、植込盤4によって保持されたまま下方へ移動し、植込溝に対応する苗放し部Rにさしかかったときに回転板40、40が拡がり、挟持状態が解放されて載置部72から離れて(落ち)、植込溝に垂直に入る。このときプラグ苗Pは、植込盤4の回転速度が従動走行輪3と略同じかまたはやや速ければ、載置部72がそのまま後方へ移動し、植込溝に入った状態で覆土ローラ5によって固定される。しかし、本実施の形態で示す移植機A1のように植込盤4の回転速度が従動走行輪3よりやや遅い場合では、載置部72が後方へ移動する速度よりも、移植機A1の走行速度の方が速くなる。従って、この場合では載置部72が植込溝に入ったプラグ苗を後方から押して倒してしまう。
【0062】
図9を参照する。載置機構部7は、回動支持部材71がブラケット部材70に対して回動可能に設けられている。載置機構部7は、植込盤4が回転して下方へ移動し苗放し部Rにさしかかったときに、制御体当接部710が制御体8の案内溝810に当たり、更に植込盤4が回転することで制御体当接部710が案内部材81に沿った状態で押されたようになる。これにより回動支持部材71は、引っ張りバネS1の付勢力に抗するよう回動ピン702を中心として回動し始め、載置部72が植込盤4の内側へ移動する。具体的には、まず、制御体当接部710は、立ち上がり部811の案内溝810に当たって図9の(ア)で示す状態となり、続いて湾曲部813の案内溝810に沿って案内されて回動することで図9の(イ)から(ウ)で示す状態となり、更に水平部812の案内溝810に案内されることで図9の(エ)から(オ)で示す状態となる。このように載置機構部7では、プラグ苗Pが畝に落ちた後に載置部72が植込盤4の内側へ移動し、邪魔にならないようになるので、植込盤4の回転速度が従動走行輪3よりもやや遅い場合でも、プラグ苗Pは載置部72によって押されず倒されない。
【0063】
載置部72が植込盤4の内側へ移動した回動支持部材71は、植込盤4が更に回転することにより、制御体当接部710が案内溝810から外れ、引っ張りバネS1の付勢力に抗していた状態が解除される。制御体当接部710の当接状態が解除されると、回動支持部材71は、引っ張りバネS1によって瞬時に回動ピン702を中心として上記とは逆方向に回動して図9の(カ)で示す元の状態に戻り、再び常態でストッパー部701と当たった状態になる。
【0064】
植込溝に入ったプラグ苗は、移植機A1の走行により植込溝の両側に盛り上げられていた土が、覆土ローラ5によって押圧されて植込溝に戻され、根部が土の圧力で固定される。こうしてプラグ苗Pは、畝上に略垂直に植え込まれる。
【0065】
移植機A1は、スプロケット281bが回転軸280から着脱可能であり、適宜、交換可能である。従って、スプロケット281bを直径や歯数の異なるものに交換することにより、植込盤4の回転速度を変えることができ、苗の植え込み間隔が調整できる。苗の植え込み間隔はそれぞれ野菜毎に適した間隔がある。つまり、移植機A1は、多種の野菜の苗植えに対応できる。また、移植機A1は、上記したように苗を落とした後に載置部72が内側に移動するので、植込盤4の回転速度を遅くし植え込み間隔を更に拡げた場合でも、苗を倒さずに植え込むことができる。なお、苗の植え込み間隔の調整は、上記したスプロケット281bの交換以外にも、例えば、歯数の異なるスプロケットを回転軸の長さ方向に複数枚重ねて多段構造を有するようにしても良い(例えば、自転車の変速ギア構造)。また、従動走行輪3や植込盤4の大きさを変えたり、他のスプロケットを交換したりしても良い。
【0066】
植込盤4は、押圧ボルト410をねじ込むことで回転軸28に固定してあるので、押圧ボルト410を緩めて回転軸28に沿って軸方向に移動させることができ、これにより植込盤4,4で植え込まれる苗の横方向の間隔(条間)も変えることができる。
【0067】
本実施の形態で示す移植機A1では、スプロケットにチェーンを巻き掛けて動力が伝達されるようにしたが、これは限定するものではなく、例えば、プーリーやベルト、ギア(歯車)使うこともできる。また、植込盤4への動力の伝達は、回転軸28の軸線上以外の箇所を経由して伝えるようにしたが、これも限定するものではない。例えば、従動走行輪3と植込盤4の回転数を変えることができる減速手段を間に介在させれば、従動走行輪3を軸支する軸と植込盤4を軸支する軸は同軸線上に設けることもできる。
【0068】
なお、植込盤の回転速度を従動走行輪3よりも遅くするための構成は、上記したものに限定するものではない。例えば、図10に示す構成を採用することもできる。
【0069】
図10は本発明に係る移植機の他の実施の形態であり、従動走行輪と植込盤近傍を示す概略平面図である。
図10において、上記図1ないし図9で示したものと同一または同等箇所には同一の符号を付して示している。また、以下の説明において構造について上記で示した箇所と重複する説明は、必要な事項を除き省略する。なお、図10においても図を簡略化するため載置機構部は図示を省略している。
【0070】
基フレーム2の側部フレーム20、20と中骨部材260、260には、同軸直線上となる箇所にそれぞれ軸取付部27a・・・が設けてある。軸取付部27a・・・には、側部フレーム20、20と中骨部材260、260に直交するようにして軸28aが軸支してある。
【0071】
また、中骨部材260、260の軸取付部27a、27aよりやや後側の箇所には、軸受け270a,270aが設けてある。各軸受け270aには回転軸280aがそれぞれ回転可能に軸支してある。回転軸280aの従動走行輪3寄りの一端には、所要の歯数を有するスプロケット281aが固着してあり、植込盤4a寄りの他端には、このスプロケット281aよりも直径が小さく歯数の少ないスプロケット281bが着脱可能に固着してある。
【0072】
従動走行輪3を構成するスリーブ31の両端には、所要の歯数を有するスプロケット310,310が固着してある。従動走行輪3は、スリーブ31内に軸28aを通して、この軸28aを中心として回転できるよう設けてある。
【0073】
回転軸280aのスプロケット281aと、従動走行輪3のスプロケット310との間にはチェーンT3が所要の張力をもって巻き掛けてある。これにより従動走行輪3の回転力は回転軸280aに伝わる。
【0074】
植込盤4aは、所要長さを有するスリーブ411aを備えており、このスリーブ411aの外側にスリーブ41を被せるよう設けて構成してある。スリーブ41に設けてある押圧ボルト410をねじ込むことで、植込盤4aをスリーブ411aに固定することができる。スリーブ411aの一方の端部には、所要の歯数を有するスプロケット412aが固着してある。植込盤4aは、スリーブ411a内に軸28aを通して、この軸28aを中心として回転できるよう設けてある。
【0075】
回転軸280aのスプロケット281bと、スリーブ411aに設けてあるスプロケット412aとの間にはチェーンT4が巻き掛けてある。これにより従動走行輪3の回転力が回転軸280aを介して植込盤4aのスリーブ411aに伝わる。
なお、スリーブ411aと軸28aとの間には、図示は省略したがベアリング等の摩擦抵抗軽減手段が設けてあり、植込盤4aが抵抗の少ない状態で回転できるようにしてある。
【0076】
(作 用)
図10を参照して、従動走行輪3の回転力が植込盤4aに伝わるときの様子を説明する。
なお、上記した移植機A1と共通する構成により生じる同様の作用、効果については説明を省略し、相違する点についてのみ説明する。
移植機の前進に伴い、畝上で従動走行輪3が接地して回転するので、スリーブ31及びスプロケット310が回転し、チェーンT3を介してスプロケット281a及び回転軸280aが回転する。これにより各回転軸280aに固着してあるスプロケット281bが回転し、チェーンT4を介してスプロケット412aが回転する。こうして植込盤4a,4aは軸28aの周りを回転する。
【0077】
更に、植込盤4aの回転速度を従動走行輪3よりも遅くするための構成は、例えば、図11に示す構成を採用することもできる。
図11は本発明に係る移植機の他の実施の形態であり、従動走行輪と植込盤近傍を示す概略平面図である。
図11において、上記図1ないし図10で示したものと同一または同等箇所には同一の符号を付して示している。また、以下の説明において構造について上記で示した箇所と重複する説明は、必要な事項を除き省略する。なお、図11においても図を簡略化するため載置機構部は図示を省略している。
【0078】
基フレーム2の側部フレーム20、20と中骨部材260、260には、同軸直線上となる箇所にそれぞれ軸取付部27b,27c,27d,27eが設けてある。軸取付部27bと軸取付部27c及び軸取付部27dと軸取付部27eには、それぞれ軸28bが軸支してある。
【0079】
また、中骨部材260、260の軸取付部27c、27dよりやや後側の箇所には、軸受け270b,270cが設けてある。軸受け270b、270cには回転軸280bが回転可能に軸支してある。回転軸280bには従動走行輪3が固着して設けてある。回転軸280bの両端には、スプロケット412a、412aよりも直径が小さく歯数の少ないスプロケット281c、281cが着脱可能に固着してある。植込盤4a,4aはそれぞれの軸28bに設けてある。
【0080】
回転軸280bのスプロケット281cと、植込盤4aのスプロケット412aとの間にはチェーンT5が所要の張力をもって巻き掛けてある。
【0081】
(作 用)
図11で示す移植機は、前進に伴い畝上で従動走行輪3が接地して回転するので、回転軸280bが回転し、チェーンT5を介してスプロケット412aが回転する。こうして植込盤4a,4aは軸28bの周りを回転するようになる。
なお、上記した移植機A1や図10で示す移植機と共通する構成により生じる同様の作用、効果については説明を省略し、相違する点についてのみ説明した。
【0082】
また、制御体の構成も上記したものに限定するものではない。例えば、図12に示す構成を採用することもできる。
【0083】
図12は制御体の他の実施の形態を示す説明図である。
図12において、上記図1ないし図9で示したものと同一または同等箇所には同一の符号を付して示している。また、以下の説明において構造について上記で示した箇所と重複する説明は、必要な事項を除き省略する。
【0084】
制御体8aは、回動支持部材71を回動させる案内部材81aと、台フレーム23に一端が取り付けてあり、案内部材81aを固定して設けるための固定部材80aを備えている。
【0085】
案内部材81aは、所要の径を有する円板の外縁部の一部分に外方に膨出した膨出部810aを備えた形状を有している。案内部材81aの円板部分を形成する膨出部810a寄りの外縁部には、回転軸28を通して円板部分の中心部にこの回転軸28を配置するための取付溝811aが形成してある。また、円板部分の膨出部810aと反対側には、案内部材81aの取付位置を調整し、固定部材80aに固定する取付位置調整溝813aが形成してある。取付位置調整溝813aは、回転軸28を回転中心とする円弧形状の一部を構成するよう形成してある。案内部材81aの外幅面には、全周にわたって案内溝812aが形成してある。
【0086】
固定部材80aの下部側には、案内部材81aの取付位置調整溝813aに差し込んで取り付ける取付ボルト部800aが突設してある。
【0087】
制御体8aは、固定部材80aの一端を台フレーム23に固定して垂設してあり、案内部材81aを回転板40,40の間に入れて取付溝811aに回転軸28を通し、固定部材80aの取付ボルト部800aを取付位置調整溝813aに差し込んで取り付けてある。案内部材81aは、回転軸28を中心として取付ボルト部800aが取付位置調整溝813a内を動く範囲で回動可能であり、回動支持部材71を動かす膨出部810aの位置を決めたところで取付ボルト部800aにナット813aを螺着して固定してある。
【0088】
(作 用)
図12を参照して、制御体8aを使用したときの載置機構部7の移動状態を説明する。
なお、上記した移植機A1と共通する構成により生じる同様の作用、効果については説明を省略し、相違する点についてのみ説明する。
載置機構部7は、植込盤4が回転して下方へ移動し苗放し部Rにさしかかったときに、制御体当接部710が膨出部810aに形成してある案内溝812aに当たり、更に植込盤4が回転することで制御体当接部710が膨出部810aに沿った状態で押されたようになる。これにより回動支持部材71は、引っ張りバネS1の付勢力に抗するよう回動ピン702を中心として回動し始め、載置部72が植込盤4の内側へ移動する。具体的には、まず、制御体当接部710は、膨出部810aの立ち上がった箇所の案内溝812aに当たって図12の(ア)で示す状態となり、続いて膨出部810aの水平な箇所の案内溝812aに沿って案内されて回動することで図12の(イ)から(ウ)で示す状態となり、更に案内されることで図12の(エ)で示す状態となる。
【0089】
載置部72が植込盤4の内側へ移動した回動支持部材71は、植込盤4が更に回転することにより、制御体当接部710が膨出部810aから外れ、引っ張りバネS1の付勢力に抗していた状態が解除される。制御体当接部710の当接状態が解除されると、回動支持部材71は、引っ張りバネS1によって瞬時に回動ピン702を中心として上記とは逆方向に回動して図12の(オ)で示す元の状態に戻り、再び常態でストッパー部701と当たった状態になる。このように案内部材81の膨出部810aは、制御体当接部710の動きを変えるいわばカムのような働きを奏する。
【0090】
また、載置機構部の構成も上記したものに限定するものではない。例えば、図13に示す構成を採用することもできる。
【0091】
図13は載置機構部及び制御体の他の実施の形態を示す説明図である。
図13において、上記図1ないし図9で示したものと同一または同等箇所には同一の符号を付して示している。また、以下の説明において構造について上記で示した箇所と重複する説明は、必要な事項を除き省略する。
【0092】
載置機構部7aは、基部側に取着穴(図では見えない)が形成してあるブラケット部材70aと、リンク部材71aと、リンク部材71aの先端に取り付けてあり、プラグ苗Pの根鉢N部分を載せる載置部72aを備えている。
【0093】
ブラケット部材70aは板材を切断して長方形状に形成してあり、基部側には取付板42に取り付けるための取着穴(図では見えない)が設けてある。また、ブラケット部材70aの先部側は略直角に折り曲げてあり、この折り曲げた部分にはリンク部材71aを通すガイド穴701aが形成してある。ブラケット部材70aは、取着穴にボルト部を有するリンク部材取付軸部702a(後述)を通し、更にこれを取着穴420に通して取付板42の反対側からナット(図では見えない)を螺合することで、折り曲げた部分が取付板42の縁部からやや外方に突出するよう固定してある。また、ブラケット部材の表面には、リンク部材71aの動きを所定の位置で止めるストッパー部703aが設けてある。
【0094】
リンク部材取付軸部702aは、ブラケット部材70aを固定するためのボルト部を備えており、その頭部には、周方向に回転可能で、リンク部材71aの一部が挟んで取り付けられるリンク部材固定部704aが設けてある。
【0095】
リンク部材71aは、共に所要長さを有する載置部取着部材710aと制御体当接部材711aを連結ピンP1で回動可能に連結して形成してある。このリンク部材71aは、連結ピンP1がガイド穴701aよりやや回転中心側に配置された状態となるよう、載置部取着部材710aをガイド穴701aに通して、制御体当接部材711aをリンク部材固定部704aに取り付けて設けてある。リンク部材取付軸部702aにはねじりコイルバネ(図では見えない)が設けてあり、常態で制御体当接部材711aがストッパー部703aを押圧する方向に付勢力がかかるようにしてある。上記したストッパー部703aは、リンク部材71aが当たった状態で載置部取着部材710aと制御体当接部材711aが略直線状になる位置に設けてある。
【0096】
符号8bは、制御体当接部材711aが当たることによってリンク部材71aを連結ピンP1から折曲させる制御体を示している。制御体8bは、後部フレーム(図示省略)から延びる腕部材80bを備え、先端側を略90度内方向に曲げて長さの短い当接部81bを形成して構成してある。
【0097】
制御体8bは、当接部81bがリンク部材取付軸部702aの回転軌跡よりも軸28側になるよう位置し、植込盤4が回転したときに制御体当接部材711aがこの当接部81bに当たって、そのまま連結ピンP1からリンク部材71aが折曲するよう配置してある
【0098】
(作 用)
図13を参照して、載置機構部の移動状態を説明する。
なお、上記した移植機A1と共通する構成により生じる同様の作用、効果については説明を省略し、相違する点についてのみ説明する。
載置機構部7aは、植込盤4が回転して下方へ移動し苗放し部Rにさしかかったときに、制御体当接部材711aが当接部81bに当たり、更に植込盤4が回転することでこの制御体当接部材711aは当接部81bに押されたようになる。これにより制御体当接部材711aは、ねじりコイルバネの付勢力に抗するようリンク部材取付軸部702aを中心として周方向に回動し、リンク部材71aが連結ピンP1から折曲し始め、載置部72aが植込盤4の内側へ移動する。具体的には、制御体当接部材711aは、当接部81bに当たって図12の(ア)で示す状態から折曲し始めて(イ)で示す状態となり、続いて(ウ)で示す状態となる。このように載置機構部7aは、プラグ苗Pが畝に落ちた後に載置部72aが植込盤4の内側へ移動する。
【0099】
載置部72aが植込盤4の内側へ移動した状態のリンク部材71aは、植込盤4が更に回転することにより、制御体当接部材711aが当接部81bから外れて付勢力に抗していた状態が解除される。制御体当接部材711aの当接状態が解除されると、リンク部材71aは、ねじりコイルバネの付勢力によって瞬時に(エ)で示す元の状態に戻り、再び常態で制御体当接部材711aがストッパー部703aに当たった状態になる。
【0100】
図14は本発明に係る移植機の他の実施の形態を示す全体斜視図、
図15は移植機の前部側を示す拡大斜視図、
図16は移植機の後部側を示す拡大斜視図である。
図14ないし図16において、上記図1ないし図9で示したものと同一または同等箇所には同一の符号を付して示している。また、以下の説明において構造について上記で示した箇所と重複する説明は、必要な事項を除き省略する。
【0101】
図16を参照する。符号A2は移植機を示している。基フレーム2上の台フレーム23後部には、所要箇所に折曲部を備えた補強部材29c,29cが、中骨部材260,260の後端部との間に架け渡してある。補強部材29c,29cの折曲部近傍には、昇降調整装置295を取り付ける板状形状のボルト取付部材290cが架け渡してある。ボルト取付部材290cには、ハンドル296を有する調整ボルト297が螺合してある。
【0102】
側部フレーム20、20と中骨部材260、260には、同軸直線上となる箇所に軸受け27(中骨部材260に設けられた軸受けは図では隠れて見えない)が設けてあり、軸受け27には、側部フレーム20、20と中骨部材260、260に直交するよう回転軸28cが軸支してある。
【0103】
図15を参照する。軸支された回転軸28cのうち中骨部材260、260の間に配置された箇所には、従動走行輪3aから伝えられた回転力を受け渡すためのギア装置300が設けてある。ギア装置300は、歯数の異なるスプロケットを回転軸28cの長さ方向に複数枚重ねて多段構造を有するよう構成してあり、詳しくは外側に向かって段々と歯数が少なくなるよう構成してある(詳細には図示していない)。このギア装置300を構成するスプロケットには、スプロケット301(後述)より径大で歯数の多いものから径小で歯数の少ないものまで含まれている。
図16を参照する。また、回転軸28cの中骨部材260、260寄りの箇所には、スイングアーム34,34が上下方向に回動可能に軸支してある。
【0104】
両スイングアーム34,34の先端部には、回転軸35が架け渡して回転可能に軸支してある。回転軸35には、所要の歯数を有するスプロケット301と、従動走行輪3aが固着してあり、走行に伴う従動走行輪3aの回転と共にスプロケット301及び回転軸35が回転するようにしてある。従動走行輪3aは、輪体30aを有し、スポーク33aを介して回転軸35に固定してある構造で、外周部には等間隔で突起32aが多数設けてある。
【0105】
図14を参照する。回転軸28cのギア装置300と回転軸35のスプロケット301の間には、無端状のチェーンT6が所要の張力を有するよう巻き掛けてある。なお、チェーンT6は、巻き掛けるギア装置300が歯数の異なるものに替わった場合でも、テンションプーリ37によって張力が緩まないようにしてある。ギア装置300,スプロケット301やテンションプーリ37は、例えば、自転車等に用いられている公知技術の構造を使用したので詳細な説明は省略する。
回転軸28cのギア装置300、チェーンT6、回転軸35のスプロケット301はチェーンカバー39で覆ってある。
【0106】
図16を参照する。各スイングアーム34の上部には、略逆「V」型形状を有する支柱部材330が立設してあり、両支柱部材330,330の上端部間には、板状形状を有する連結部材331が架け渡してある。連結部材331には、調整ボルト297が螺合可能なボルト穴332が形成してある。
【0107】
スイングアーム34,34は、上記したボルト取付部材290cに取り付けてある調整ボルト297の先端側を連結部材331のボルト穴332に螺合することで、補強部材29c,29cと連結してある。昇降調整装置295は、ハンドル296を回すことにより調整ボルト297における連結部材331の螺合位置を変えることができる。
【0108】
基フレーム2における各側部フレーム20と中骨部材260とで囲まれた枠内には、それぞれ植込盤4aが備えてある。植込盤4aは回転軸28cに設けてある。各植込盤4は、可撓性を有するポリプロピレン製の二枚の回転板40a、40aを合わせた構造を有しており、回転板40a、40aは取付具41aを介して回転軸28cに固着してある。
【0109】
(作 用)
図14ないし図16を参照して、移植機A2の作用を説明する。
なお、上記した移植機A1と共通する構成により生じる同様の作用、効果については説明を省略し、相違する点についてのみ説明する。
移植機A2は前進に伴い、従動走行輪3aが畝の上面で接地して回転するので、スプロケット301が回転し、チェーンT6を介してギア装置300及び回転軸28cが回転する。これにより回転軸28cに固定してある植込盤4a,4aも回転する。このとき植込盤4aの回転速度は、ギア装置300においてチェーンT6がかかったスプロケットが、スプロケット301よりも径大で歯数も多い場合に従動走行輪3aの回転速度よりも遅くなり、スプロケット301よりも径小で歯数が少ない場合に従動走行輪3aの回転速度よりも早くなる。このように移植機A2では、ギア装置300でチェーンT6をかけるスプロケットを変えることにより、簡単に植込盤4aの回転速度を変えて、苗の植え込み間隔が調整できる。
【0110】
植込盤4aは、苗の植え込み時において下縁部が畝の上面と接する程度の高さに設定する必要がある。従って、圃場の土の状態等によっては高さを調整しなければならない。植込盤4aの高さは、昇降調整装置295のハンドル296により調整ボルト297を回し、ボルト取付部材290cと連結部材331の間の距離を変えて、従動走行輪3aの位置を変えることで調整される。つまり、従動走行輪3aは上記移植機A1で示す高さ維持輪38の機能を兼ねている。
【0111】
ギア装置300は、直径や歯数の異なるスプロケットを複数枚備えて構成したが、この枚数は特に限定するものではない。例えば、2,3,4,5,6,7,8,9または10枚またはそれ以上並べて構成することもできる。また、ギア装置は回転軸35側に設けることもできるし、回転軸28c側と回転軸35側の両方に設けることもできる。
【0112】
本実施の形態でスイングアーム34は、回転軸28cに設けて、回転軸28cが回動中心となるようにしたが、これは限定するものではなく、スイングアーム34の回動中心は、回転軸28c以外の箇所に設けることもできる。
【0113】
上記実施の形態では植込盤の回転速度が従動走行輪よりやや遅い場合について説明したが、例えば、植込盤の回転速度は従動走行輪より早くすることもできるし、また、早くした場合では、更に載置機構部の載置部は固定した状態にでき、苗放し部にさしかかったときでも植込盤の内側へ移動しないようにすることもできる。
【0114】
上記実施の形態ではプラグ苗を植え込む場合を例示したが、これは移植機A1、A2によって使用できる苗の種類を限定するものではない。移植機A1、A2は、例えば、根鉢がないタイプの苗も使用することができる。この場合、載置機構部7,7aは取り付けたままでも良いし、外しておいても良い。
【0115】
本明細書で使用している用語と表現は、あくまで説明上のものであって限定的なものではなく、上記用語、表現と等価の用語、表現を除外するものではない。
また、本発明は図示されている実施の形態に限定されるものではなく、技術思想の範囲内において種々の変形が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0116】
【図1】本発明に係る移植機の一実施の形態を示す全体斜視図。
【図2】移植機の前部側を示す拡大斜視図。
【図3】移植機の後部側を示す拡大斜視図。
【図4】従動走行輪と植込盤近傍を示す概略平面図。
【図5】植込盤と載置機構部を示す拡大斜視図。
【図6】溝形成装置と苗挟み部の上面視説明図。
【図7】溝均し具の斜視図。
【図8】植込盤の周縁部の構造を示す部分端面図。
【図9】載置機構部の移動軌跡を示す説明図。
【図10】本発明に係る移植機の他の実施の形態であり、従動走行輪と植込盤近傍を示す概略平面図。
【図11】本発明に係る移植機の他の実施の形態であり、従動走行輪と植込盤近傍を示す概略平面図。
【図12】制御体の他の実施の形態を示す説明図。
【図13】載置機構部及び制御体の他の実施の形態を示す説明図。
【図14】本発明に係る移植機の他の実施の形態を示す全体斜視図。
【図15】移植機の前部側を示す拡大斜視図。
【図16】移植機の後部側を示す拡大斜視図。
【符号の説明】
【0117】
A1,A2 移植機
N 根鉢
P プラグ苗
R 苗放し部
B 苗挟み部
1 取付フレーム
2 基フレーム
3,3a 従動走行輪
4,4a 植込盤
5 覆土ローラ
6 溝形成装置
7,7a 載置機構部
8,8a 制御体
【技術分野】
【0001】
本発明は移植機及びそれを備えた移植作業車に関するものである。更に詳しくは、根鉢を備えるタイプの苗でも移植できるようにする移植機及びそれを備えた移植作業車に関する。
【背景技術】
【0002】
通常、キャベツやタマネギ等は、苗床に種を蒔き、発芽した苗が適切な大きさに育ったところで、圃場(畝)に植え替えて栽培されている。苗の種類としては、(1)枠で囲った容器内に適当に種を蒔いて育て、土を保持させない状態で植え込むものや、(2)多数の区画された育苗部を備える専用の苗床で育て、根鉢(根の周りの土のついた部分)ごと植え込むものがある。後者の根鉢を備えた苗は、一般的にプラグ苗やポット苗と称されている。
【0003】
従来から苗は、手植えや移植機を使用して圃場に植えられている。移植機としては、例えば、本発明者が開発した特許文献1に示すものがある。この移植機は、溝形成装置によって畝上部に植込溝を形成し、苗植込装置に挟ませた苗を植込溝に植え込み、覆土ローラーにより植込溝に土を戻すことで苗を畝上に植え込むという一連の作業を、走行に伴って順次できるという構造を有している。
【0004】
【特許文献1】特開2001−218506号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記公報記載の移植機は、苗の植え込みの省力化を図ったという点において好評を得ていた。しかし、次に示す課題が解消できれば、更に使い勝手が良くなることがわかった。
移植機は、挟持構造を有する回転板に、根が回転板の縁からやや飛び出すように苗の芽や葉を挟み持たせることで、この苗を畝に植え込んでいくというものである。従って、根鉢がないタイプの苗であれば、何ら支障なく植え込み可能である。
これに対し根鉢を備えるタイプの苗の場合は、根鉢が相当の重量を有しているので、芽や葉を挟み持たせたときに根鉢の重みによって苗の茎部分が折れてしまうことがあり、苗自体をダメにしてしまうことがあった。つまり、従来型の移植機では、根鉢を備えるタイプの苗の移植は困難であった。
【0006】
(本発明の目的)
本発明の目的は、根鉢を備えるタイプの苗でも移植機によって移植できるようにした移植機及びそれを備えた移植作業車を提供することにある。
本発明の他の目的は、苗の移植を行う移植機において、例えば、植込盤の回転速度が移植機の走行速度より遅い場合でも、苗が載置手段や保持手段によって後方から押されず倒されないようにした移植機及びそれを備えた移植作業車を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を達成するために講じた本発明の手段は次のとおりである。
第1の発明にあっては、
苗の移植を行う移植機であって、
畝に植込溝を形成する溝形成装置(6)と、
植込溝に苗を植え込む植込盤(4)と、
上記植込盤(4)の外縁側に設けてあり当該植込盤(4)の回転と共に回転移動する、苗の根鉢の載置手段または保持手段と、
苗が植え込まれた植込溝に土を覆土する覆土手段と、
を備えており、
上記植込盤(4)は、二枚の可撓性を有する回転板(40,40)を合わせて苗を挟むことができるようにしてあり、当該回転板(40,40)の上部に苗を入れる苗挟み部(B)を有し、下部に挟んだ苗を離す苗放し部(R)を有するよう構成してあることを特徴とする、
移植機である。
【0008】
第2の発明にあっては、
載置手段または保持手段は、植込盤(4)の苗放し部(R)にさしかかったときに植込盤(4)の回転中心側へ移動して植込盤(4)の外周に突出しないよう構成してあることを特徴とする、
第1の発明に係る移植機である。
【0009】
第3の発明にあっては、
回転板(40,40)と共に回転する取付部材を備えており、載置手段または保持手段は当該取付部材に支持部を介して取り付けてあり、当該支持部は、上記載置手段または保持手段が苗放し部(R)にさしかかったときに動いて、取付部材に対する取付角度が変わるよう構成してあることを特徴とする、
第2の発明に係る移植機である。
【0010】
第4の発明にあっては、
走行に伴い回転する従動走行輪(3)を備えており、植込盤(4)は当該従動走行輪(3)の回転力を利用して回転するよう構成してあることを特徴とする、
第1,第2または第3の発明に係る移植機である。
【0011】
第5の発明にあっては、
植込盤(4)は、動力手段による動力を利用して回転するよう構成してあることを特徴とする、
第1,第2または第3の発明に係る移植機である。
【0012】
第6の発明にあっては、
植込盤(4)は、回転速度が変速可能に構成してあることを特徴とする、
第1,第2,第3,第4または第5の発明に係る移植機である。
【0013】
第7の発明にあっては、
第1,第2,第3,第4,第5または第6の発明に係る移植機を、耕耘装置と畝形成装置を有する走行作業車に取り付けたことを特徴とする、
移植作業車である。
【0014】
苗の根鉢が保持可能な保持手段としては、例えば、根鉢を挟み持つ形態を有するものを挙げることができる。
【0015】
本発明に係る移植機は、走行作業車に取り付けて使用される牽引式にすることもできるし、原動機等を設けて自ら走行する自走式にすることもできる。
【0016】
なお、ここでは本発明の各構成要件のそれぞれに、後述する実施の形態において示す各部の符号を対応させて付与したが、この符号はあくまで説明の理解を助けるためのものであって、各構成要件の上記各部への限定を意味するものではない。
【0017】
(作 用)
移植機の走行に伴い、畝には植込溝が形成される。植込溝は、溝形成装置によって土が掻き分けられ、植込溝の両側に盛り上げられてできる。苗は、移植作業者によって苗挟み部から入れられ、根鉢が載置手段または保持手段に載置または保持されて、芽や葉が回転板に挟まれる。そして苗は、植込盤が回転し、載置手段または保持手段が苗放し部にさしかかったところで植込盤から離れて植込溝に入る。最後に苗は、覆土手段により植込溝の両側に盛り上げられていた土が植込溝に覆土されて植え込まれる。
【0018】
載置手段または保持手段が、植込盤の苗放し部にさしかかったときに植込盤の回転中心側へ移動して植込盤の外周に突出しないよう構成してあるものは、載置手段または保持手段から苗が離れるのと同時にまたは離れた後に、当該載置手段または保持手段が植込盤の回転中心側へ移動する。
【0019】
植込盤の回転板と共に回転する取付部材を備え、載置手段または保持手段が当該取付部材に支持部を介して取り付けてあるものは、載置手段または保持手段が苗放し部にさしかかったときに支持部が動いて、取付部材に対する取付角度が変わり、これにより載置手段または保持手段が回転中心側へ移動する。
【0020】
植込盤の回転速度が変速可能に構成してあるものは、植込盤の回転速度を変えることにより苗の植え込み間隔を変えることができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明は、上記構成を有することにより、次のような効果を有する。
(a)本発明によれば、移植機に苗の根鉢の載置手段または保持手段が備えてあるので、例えば、根鉢を有するプラグ苗等でも、根鉢を載置手段に載せたり保持手段で保持させたりすることにより茎を折ることなく植え込むことができる。
【0022】
(b)載置手段または保持手段が、植込盤の苗放し部にさしかかったときに植込盤の回転中心側へ移動して植込盤の外周に突出しないよう構成してあるものは、載置手段または保持手段から苗が離れるのと同時にまたは離れた後に、当該載置手段または保持手段が植込盤の回転中心側へ移動する。従って例えば、植込盤の回転速度が移植機の走行速度より遅い場合でも、苗は載置手段または保持手段によって後方から押されず倒されない。
【0023】
(c)植込盤の回転速度が変速可能に構成してあるものは、植込盤の回転速度を変えることにより苗の植え込み間隔を変えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
本発明を図面に示した実施の形態に基き、更に詳細に説明する。
図1は本発明に係る移植機の一実施の形態を示す全体斜視図、
図2は移植機の前部側を示す拡大斜視図、
図3は移植機の後部側を示す拡大斜視図、
図4は従動走行輪と植込盤近傍を示す概略平面図、
図5は植込盤と載置機構部を示す拡大斜視図、
図6は溝形成装置と苗挟み部の上面視説明図、
図7は溝均し具の斜視図、
図8は植込盤の周縁部の構造を示す部分端面図、
図9は載置機構部の移動軌跡を示す説明図である。
なお、図4では図を簡略化するため載置機構部7は図示を省略している。
【0025】
図1ないし図3を参照する。符号A1は移植機で、取付フレーム1と基フレーム2を備えている。
取付フレーム1の上部中央部には、走行作業車であるトラクター(図示省略)に取り付けるための取付ブラケット10が設けてある。基フレーム2は、前端部を取付フレーム1の下部に軸着して、上下方向に回動可能に取り付けてある。
【0026】
基フレーム2は、左右両側に設けられる直線形状の側部フレーム20,20と、側部フレーム20,20の間に配置され、平面視略「コ」型形状に形成してある中フレーム26と、各側部フレーム20と中フレーム26の後端部に架設される後部フレーム21を備えて構成してある。中フレーム26は、各側部フレーム20と略同じ長さを有する中骨部材260,260を備え、その一端に架設部材261を架け渡して形成してある。
【0027】
基フレーム2は、側部フレーム20,20の前端部と、中フレーム26の架設部材261が、取付フレーム1に対し上下方向に回動可能なよう軸着してある。また、基フレーム2の前部寄りの側部フレーム20、20間には、移植作業者が足を載せるための足載バー22が横架してある。
【0028】
また、基フレーム2の後部寄りの位置には、所要高さを有する台フレーム23が、側部フレーム20,20と中フレーム26上に立てて設けてある。台フレーム23の上部には、移植する苗を収容する苗容器24が取り付けてある。
【0029】
台フレーム23の前方側には、直線形状を有する補強部材29a,29aが、中骨部材260,260の前部側との間に斜めに架け渡してある。図3を参照する。また、台フレーム23の後方側には、補強部材29b,29bが中骨部材260,260の後端部との間に斜めに架け渡してある。更に、台フレーム23の前部と上記取付フレーム1の取付ブラケット10との間には、一定のストロークで伸縮自在なリンク25が架設してある。
【0030】
図1ないし図4を参照する。基フレーム2の側部フレーム20、20と中骨部材260、260には、同軸直線上となる箇所にそれぞれ軸受け27・・・が設けてある。軸受け27・・・には、側部フレーム20、20と中骨部材260、260に直交するようにして回転軸28が軸支してある。
【0031】
図4を参照する。一方の中骨部材260の軸受け27よりやや後側の箇所には、更に、軸受け270が設けてある。軸受け270には回転軸280が回転可能に軸支してある。回転軸280の従動走行輪3(後述)寄りの一端にはスプロケット281aが固着してあり、植込盤4(後述)寄りの他端にはスプロケット281bが着脱可能に固着してある。本実施の形態でスプロケット281bは、スプロケット281aよりも直径が小さく歯数の少ないものを使用している。しかし、これは限定するものではなく、例えば、直径が大きく歯数の多いものを使用することもできる。
【0032】
中骨部材260、260の間には、所要の直径を有する従動走行輪3が設けてある。従動走行輪3は、環形状を有する輪体30と、輪体30の中心に配置してある所要長さを有するスリーブ31を備え、スポーク33をスリーブ31と輪体30の間に架設した構造を有している。輪体30には、板状の突起32が外方に突出して等間隔で多数設けてある。また、スリーブ31の一方の端部には、所要の歯数を有するスプロケット310が固着してある。
【0033】
従動走行輪3は、スリーブ31内に回転軸28を通して、この回転軸28を中心として回転できるよう設けてある。なお、スリーブ31と回転軸28との間には、図示は省略したがベアリング等の摩擦抵抗軽減手段が設けてあり、従動走行輪3が抵抗の少ない状態で回転できるようにしてある。
【0034】
回転軸280のスプロケット281aと、従動走行輪3のスプロケット310との間にはチェーンT1が所要の張力をもって巻き掛けてある。これにより従動走行輪3の回転力は回転軸280に伝わる。
【0035】
引き続き図4を参照する。基フレーム2における各側部フレーム20と中骨部材260とで囲まれた枠内には、それぞれ植込盤4が設けてある。
植込盤4は、所要長さを有するスリーブ41と、可撓性を有するポリプロピレン製の二枚の円盤状の回転板40、40と、回転板40、40より径小な円盤状を有する取付部材である取付板42と、所要間隔をもってスリーブ41に固着してある回転板取付具43,43を備えている。スリーブ41には押圧ボルト410が設けてあり、ねじ込んで先端を回転軸28に押し当てることで、植込盤4が回転軸28に固定できるようにしてある。
【0036】
図5及び図8を参照する。回転板40、40の内面側の周縁部側には、所要幅の挟持帯49が全周にわたり設けてある。挟持帯49はゴム製で、中空状の凸部490と凹部491を交互に設けた構造を有している。この挟持帯49は、向き合う回転板40同士で互いに凸部490がずらしてあり、相互に噛み込むことができるようにしてある。これによると苗を傷めることなく確実に保持できる。
また、取付板42の周縁部には、載置機構部7(後述)を取り付ける取着穴420が周方向に等間隔で七箇所に形成してある。
【0037】
再び図4を参照する。植込盤4は、所要間隔を設けた状態で回転板取付具43,43をスリーブ41に固着し、更に、この回転板取付具43,43の間に取付板42を固着して、各回転板取付具43にそれぞれ回転板40を合わせるよう取り付けて構成してある。この植込盤4は、スリーブ41内に回転軸28を通して、押圧ボルト410をねじ込むことで回転軸28に固定してある。なお、回転板40は、ポリプロピレンで形成したものを示したが、材料は限定するものではなく、可撓性を有していれば、例えば、ポリエチレン等の他の合成樹脂を使用することもできる。
【0038】
側部フレーム20と中骨部材260とで囲まれた一方の枠内における回転軸28には、所要の歯数を有するスプロケット282が固着してある。回転軸28に固着したスプロケット282と、回転軸280のスプロケット281bとの間にはチェーンT2が巻き掛けてある。これにより回転軸280の回転力が回転軸28に伝わり、回転軸28に固着してある植込盤4が回転する。
【0039】
図5を参照する。植込盤4を構成する取付板42には、プラグ苗Pを植え込む際に使用する載置手段である載置機構部7が取り付けてある。
載置機構部7は、基部側に取着穴700が形成してあるブラケット部材70と、支持部である回動支持部材71と、プラグ苗Pの根鉢N部分を載せる載置手段である載置部72を備えている。
【0040】
ブラケット部材70は板材を切断して形成してあり、先部側が取付板42の縁部から外方に突出するよう、ボルトB1を取着穴700と取着穴420に通して取り付けてある。ブラケット部材70の先端部には略直角に折り曲げてストッパー部701が形成してある。ストッパー部701の近傍には回動支持部材71を取り付ける回動ピン702が設けてある。ストッパー部701には引っ張りバネS1の一端を引っ掛ける引掛部703が形成してある。
【0041】
回動支持部材71も板材を切断して形成してあり、上記した回動ピン702に回動可能に取り付けてある。回動支持部材71の回動ピン702より取付板42側の部分には、クランク状に折り曲げて段部711が形成してあり、その先には制御体当接部710が形成されている。制御体当接部710は制御体8(後述)に当たる長さを有している。制御体当接部710の所要位置には、引っ張りバネS1の他端を引っ掛ける引掛部712が突出して設けてある。回動支持部材71は、段部711を設けることにより取付板42に当たらないようブラケット部材70に取り付けてある。
【0042】
回動支持部材71の回動ピン702より外側の部分には挟持固定部713が形成してある。挟持固定部713は、回転板40,40の内側と外側に当たる箇所に所要間隔をあけた状態で下方に延びた部分を設け、それぞれの下端部を繋ぐよう、即ち、進行方向側に挟み部を有するよう側面視略「凵」型形状に形成してある。これにより挟持固定部713が回転板40,40に挟まれて固定された状態で苗を載置部72に載せることができる。挟持固定部713の先端側には、載置部72を取り付ける取付穴が形成してある(図では見えない)。
【0043】
載置部72は、平面状の載台部720の上面の両側に壁部721,721を立てて側面視に略「凵」型形状に形成してあり、更に、載台部720の下面から取着ブラケット722を垂設して構成してある。取着ブラケット722には長穴723が形成してある。
載置部72は、長穴723と挟持固定部713の取付穴にボルトB2を通し、反対側からナット(図では見えない)を螺合して取り付けてある。載置部72は、ナットを緩めることで長穴723に沿って移動可能で、取付角度も調節可能である。
【0044】
回動支持部材71は、引っ張りバネS1を引掛部703と引掛部712に引っ掛けて、常態でストッパー部701と当たって押す方向に付勢されるように設定されている。
なお、本実施の形態で載置機構部7は取付板42の周縁部に等間隔で七箇所に設けたが、載置機構部7の数は特に限定するものではなく、六箇所に設けることもできるし、八箇所に設けることもできる。一般には、移植する苗の植え込み間隔を狭くする場合に数を多くし、反対に間隔を拡げる場合に数を少なくするよう設定される。
【0045】
図2及び図3を参照する。植込盤4の回転板40、40の前部側の上部は、ローラ44、44によって所要幅だけ拡げてある。ローラ44、44は、上記台フレーム23に取付アーム440によって取り付けてある。また、回転板40、40の前部側のほぼ中間の高さ位置には、回転板40、40を密着させる挟持部材45、45が両側の外面に接触して設けてある。挟持部材45、45は、可撓性を有する線材で形成されており、上記足載バー22に固定してあるアーム46、46に取り付けてある。こうして回転板40、40の拡がった部分から密着している部分にかけて苗挟み部Bが形成される。なお、挟持部材45、45の下部側は、回転板40、40下方の苗放し部R(後述)の近傍まで延長されている。
【0046】
回転板40、40の後部側の下部は、ローラ47、47によって所要幅だけ拡げてある。ローラ47、47は、基フレーム2の後部フレーム21に、取付具48を介して取り付けてある。回転板40、40は、挟持部材45の下部側による挟持が解除された位置で拡がり始め、その位置は、基フレーム2が畝上面と平行であるときに、回転軸28の真下になるように設定してある(多少、前後へずらすこともできる)。こうして回転板40、40が拡がる苗放し部Rが、回転軸28の真下で苗を離すよう形成される。
また、取付具48は高さの調整ができるようにしてある。これにより例えば植え込まれていく苗が取付具48に接触して傷がついたり倒れたりしないように、苗の高さに合わせて調整することができる。
【0047】
図3及び図9参照する。後部フレーム21には、回動支持部材71を回動ピン702を中心として回動させる制御体8が、回転板40、40で挟まれた内方へ延ばして取り付けてある。制御体8は、後部フレーム21から延びる腕部材80と、腕部材80の先端に設けてある案内部材81を備えている。案内部材81は、立ち上がり部811とその下側から横方向にやや湾曲して延びた水平部812を有し、その間が湾曲部813で繋がれた、即ち、側面視略「し」型形状に形成してある。案内部材81の外幅面には、長さ方向の全長にわたって案内溝810が形成してある。
【0048】
制御体8は、案内部材81が回動ピン702の回転軌跡よりも回転軸28側になるよう位置し、植込盤4が回転したときに制御体当接部710が、案内溝810に沿って案内されて回動ピン702を中心として回動するよう配置してある。
【0049】
図1及び図2を参照する。足載バー22には、溝形成装置6(後述)を構成する脚部60が設けられている。脚部60には、上記植込盤4を挟む二箇所に支脚ロッド50、50が取り付けてある。支脚ロッド50は、その前端部が軸着されており、後部側は斜め上下方向(上方へ互いに拡がる方向)へ揺動(回動)可能である。
【0050】
支脚ロッド50と脚部60間には、支脚ロッド50を下方へ回動させる方向へ付勢する引っ張りバネ51が装着してある。そして、支脚ロッド50の先端部(後端部)には、覆土手段である覆土ローラ5が取り付けてある。
【0051】
覆土ローラ5の外周部表面には、スポンジゴムが層状に設けてある。覆土ローラ5の接地面の方向は、移植機A1の走行方向に対し、やや内側を向くように設定してある。支脚ロッド50は伸縮調整が可能である。なお、覆土手段は覆土ローラ5に限るものではなく、例えば、畝上面を滑りながら覆土する板状の覆土板を採用することもできる。
【0052】
各植込盤4の前方の下部側には、それぞれ上記した溝形成装置6が設けてある。各溝形成装置6の脚部60は、前部側が足載バー22に固定してあり、後部側は斜め下方へ延長してある。
【0053】
図6を参照する。脚部60の前部側には、軸受体61が取り付けてある。軸受体61には、溝切り盤62が回転可能に設けてある。溝切り盤62は、二枚の回転板620、620を前部側の周縁部が互いに接触するように傾けて、回転可能に軸着して形成してある。
【0054】
図6及び図7を参照する。脚部60の下端部には、溝均し具63が取り付けてある。溝均し具63は、側板630、630と、前部側でそれらを連結する滑り板631を有している。滑り板631は、走行方向へ向けて所要角度で上り傾斜させてある。滑り板631の位置は、溝切り盤62の接地部よりやや後方に設定してある。側板630、630の間隔が、苗を植え込む植込溝の幅になる。側板630、630の下部側は解放されているので、作業に伴って溝均し具63内部に土がたまってしまうことがなく、スムーズな作業ができる。
なお、溝切り盤62と溝均し具63及び上記植込盤4の平面視における中心線は、移植機A1の走行方向と平行な同一直線上にある。
【0055】
図1を参照する。基フレーム2の後部フレーム21の中央部には、後方へ張り出して高さ維持輪38が設けてある。高さ維持輪38は、高さが調整できるよう設けてある。また、高さ維持輪38は、畝上面において沈みにくいよう十分な幅をもって形成されている。
植込盤4は、苗の植え込み時において下縁部が畝の上面と接する程度の高さに設定する必要がある。従って、圃場の土の状態等によっては高さを調整しなければならない。植込盤4の高さは、高さ維持輪38を昇降させることにより調整される。
【0056】
(作 用)
図1ないし図9を参照し、移植機A1を使用して畝にプラグ苗を植え込む際の作用を説明する。
移植機A1は、取付フレーム1の取付ブラケット10をトラクター(図示省略)の後部側に取り付けて使用される。
まず、移植機A1を取り付けたトラクターに運転者が搭乗する。そして、移植機A1の取付フレーム1上に設けた座席(符号11で示す部分に取り付けられる)に、二人の移植作業者が後ろ向きに搭乗する。
【0057】
トラクターを走行させて移植機A1を牽引する。移植機A1の前進に伴い、溝切り盤62が畝上部に食い込んだ状態で回転しながら走行し、畝上部に筋溝が形成される。そして更に、後方に位置する溝均し具63により筋溝は均されて植込溝が形成される。
【0058】
また、移植機A1の前進に伴い、畝上で従動走行輪3が接地して回転するので、スリーブ31及びスプロケット310が回転し、チェーンT1を介してスプロケット281a及び回転軸280が回転する。これにより各回転軸280に固着してあるスプロケット281bが回転し、チェーンT2を介してスプロケット282及び回転軸28が回転する。こうして植込盤4,4が回転する。本実施の形態で示す移植機A1では、スプロケット281aより直径が小さく歯数の少ないスプロケット281bを使用して、植込盤4の方が従動走行輪3より回転速度がやや遅くなるようにしてある。このように植込盤4の回転速度を遅くすることで苗の植え込み間隔を拡げることができる。
【0059】
走行時における従動走行輪3は、板状の突起32が畝上部に突き刺さりながら回転しており、この突起32によって前進する方向に対する抵抗が得られるようにしてあるので、移植機A1は畝上で滑り難い。
【0060】
移植作業者は、ローラ44,44によって形成された苗挟み部Bに順次プラグ苗Pを挿入する。プラグ苗Pは、回転板40の縁部から突出した載置機構部7の載置部72上に根鉢Nを載せて、芽や葉が回転板40、40で挟まれるようにして苗挟み部Bに挿入される。プラグ苗Pを載せる作業は、載置機構部7の挟持固定部713が回転板40、40に挟まれて固定された状態でできるので、載置機構部7がぐらつかず載せやすい。こうしてプラグ苗Pは、芽や葉が回転板40、40で挟まれて保持される。このように移植機A1は、苗を載せる載置機構部7を備えているので、根鉢Nを有するプラグ苗Pであっても茎を折ることなく把持して植え込むことができる。
【0061】
プラグ苗Pは、植込盤4によって保持されたまま下方へ移動し、植込溝に対応する苗放し部Rにさしかかったときに回転板40、40が拡がり、挟持状態が解放されて載置部72から離れて(落ち)、植込溝に垂直に入る。このときプラグ苗Pは、植込盤4の回転速度が従動走行輪3と略同じかまたはやや速ければ、載置部72がそのまま後方へ移動し、植込溝に入った状態で覆土ローラ5によって固定される。しかし、本実施の形態で示す移植機A1のように植込盤4の回転速度が従動走行輪3よりやや遅い場合では、載置部72が後方へ移動する速度よりも、移植機A1の走行速度の方が速くなる。従って、この場合では載置部72が植込溝に入ったプラグ苗を後方から押して倒してしまう。
【0062】
図9を参照する。載置機構部7は、回動支持部材71がブラケット部材70に対して回動可能に設けられている。載置機構部7は、植込盤4が回転して下方へ移動し苗放し部Rにさしかかったときに、制御体当接部710が制御体8の案内溝810に当たり、更に植込盤4が回転することで制御体当接部710が案内部材81に沿った状態で押されたようになる。これにより回動支持部材71は、引っ張りバネS1の付勢力に抗するよう回動ピン702を中心として回動し始め、載置部72が植込盤4の内側へ移動する。具体的には、まず、制御体当接部710は、立ち上がり部811の案内溝810に当たって図9の(ア)で示す状態となり、続いて湾曲部813の案内溝810に沿って案内されて回動することで図9の(イ)から(ウ)で示す状態となり、更に水平部812の案内溝810に案内されることで図9の(エ)から(オ)で示す状態となる。このように載置機構部7では、プラグ苗Pが畝に落ちた後に載置部72が植込盤4の内側へ移動し、邪魔にならないようになるので、植込盤4の回転速度が従動走行輪3よりもやや遅い場合でも、プラグ苗Pは載置部72によって押されず倒されない。
【0063】
載置部72が植込盤4の内側へ移動した回動支持部材71は、植込盤4が更に回転することにより、制御体当接部710が案内溝810から外れ、引っ張りバネS1の付勢力に抗していた状態が解除される。制御体当接部710の当接状態が解除されると、回動支持部材71は、引っ張りバネS1によって瞬時に回動ピン702を中心として上記とは逆方向に回動して図9の(カ)で示す元の状態に戻り、再び常態でストッパー部701と当たった状態になる。
【0064】
植込溝に入ったプラグ苗は、移植機A1の走行により植込溝の両側に盛り上げられていた土が、覆土ローラ5によって押圧されて植込溝に戻され、根部が土の圧力で固定される。こうしてプラグ苗Pは、畝上に略垂直に植え込まれる。
【0065】
移植機A1は、スプロケット281bが回転軸280から着脱可能であり、適宜、交換可能である。従って、スプロケット281bを直径や歯数の異なるものに交換することにより、植込盤4の回転速度を変えることができ、苗の植え込み間隔が調整できる。苗の植え込み間隔はそれぞれ野菜毎に適した間隔がある。つまり、移植機A1は、多種の野菜の苗植えに対応できる。また、移植機A1は、上記したように苗を落とした後に載置部72が内側に移動するので、植込盤4の回転速度を遅くし植え込み間隔を更に拡げた場合でも、苗を倒さずに植え込むことができる。なお、苗の植え込み間隔の調整は、上記したスプロケット281bの交換以外にも、例えば、歯数の異なるスプロケットを回転軸の長さ方向に複数枚重ねて多段構造を有するようにしても良い(例えば、自転車の変速ギア構造)。また、従動走行輪3や植込盤4の大きさを変えたり、他のスプロケットを交換したりしても良い。
【0066】
植込盤4は、押圧ボルト410をねじ込むことで回転軸28に固定してあるので、押圧ボルト410を緩めて回転軸28に沿って軸方向に移動させることができ、これにより植込盤4,4で植え込まれる苗の横方向の間隔(条間)も変えることができる。
【0067】
本実施の形態で示す移植機A1では、スプロケットにチェーンを巻き掛けて動力が伝達されるようにしたが、これは限定するものではなく、例えば、プーリーやベルト、ギア(歯車)使うこともできる。また、植込盤4への動力の伝達は、回転軸28の軸線上以外の箇所を経由して伝えるようにしたが、これも限定するものではない。例えば、従動走行輪3と植込盤4の回転数を変えることができる減速手段を間に介在させれば、従動走行輪3を軸支する軸と植込盤4を軸支する軸は同軸線上に設けることもできる。
【0068】
なお、植込盤の回転速度を従動走行輪3よりも遅くするための構成は、上記したものに限定するものではない。例えば、図10に示す構成を採用することもできる。
【0069】
図10は本発明に係る移植機の他の実施の形態であり、従動走行輪と植込盤近傍を示す概略平面図である。
図10において、上記図1ないし図9で示したものと同一または同等箇所には同一の符号を付して示している。また、以下の説明において構造について上記で示した箇所と重複する説明は、必要な事項を除き省略する。なお、図10においても図を簡略化するため載置機構部は図示を省略している。
【0070】
基フレーム2の側部フレーム20、20と中骨部材260、260には、同軸直線上となる箇所にそれぞれ軸取付部27a・・・が設けてある。軸取付部27a・・・には、側部フレーム20、20と中骨部材260、260に直交するようにして軸28aが軸支してある。
【0071】
また、中骨部材260、260の軸取付部27a、27aよりやや後側の箇所には、軸受け270a,270aが設けてある。各軸受け270aには回転軸280aがそれぞれ回転可能に軸支してある。回転軸280aの従動走行輪3寄りの一端には、所要の歯数を有するスプロケット281aが固着してあり、植込盤4a寄りの他端には、このスプロケット281aよりも直径が小さく歯数の少ないスプロケット281bが着脱可能に固着してある。
【0072】
従動走行輪3を構成するスリーブ31の両端には、所要の歯数を有するスプロケット310,310が固着してある。従動走行輪3は、スリーブ31内に軸28aを通して、この軸28aを中心として回転できるよう設けてある。
【0073】
回転軸280aのスプロケット281aと、従動走行輪3のスプロケット310との間にはチェーンT3が所要の張力をもって巻き掛けてある。これにより従動走行輪3の回転力は回転軸280aに伝わる。
【0074】
植込盤4aは、所要長さを有するスリーブ411aを備えており、このスリーブ411aの外側にスリーブ41を被せるよう設けて構成してある。スリーブ41に設けてある押圧ボルト410をねじ込むことで、植込盤4aをスリーブ411aに固定することができる。スリーブ411aの一方の端部には、所要の歯数を有するスプロケット412aが固着してある。植込盤4aは、スリーブ411a内に軸28aを通して、この軸28aを中心として回転できるよう設けてある。
【0075】
回転軸280aのスプロケット281bと、スリーブ411aに設けてあるスプロケット412aとの間にはチェーンT4が巻き掛けてある。これにより従動走行輪3の回転力が回転軸280aを介して植込盤4aのスリーブ411aに伝わる。
なお、スリーブ411aと軸28aとの間には、図示は省略したがベアリング等の摩擦抵抗軽減手段が設けてあり、植込盤4aが抵抗の少ない状態で回転できるようにしてある。
【0076】
(作 用)
図10を参照して、従動走行輪3の回転力が植込盤4aに伝わるときの様子を説明する。
なお、上記した移植機A1と共通する構成により生じる同様の作用、効果については説明を省略し、相違する点についてのみ説明する。
移植機の前進に伴い、畝上で従動走行輪3が接地して回転するので、スリーブ31及びスプロケット310が回転し、チェーンT3を介してスプロケット281a及び回転軸280aが回転する。これにより各回転軸280aに固着してあるスプロケット281bが回転し、チェーンT4を介してスプロケット412aが回転する。こうして植込盤4a,4aは軸28aの周りを回転する。
【0077】
更に、植込盤4aの回転速度を従動走行輪3よりも遅くするための構成は、例えば、図11に示す構成を採用することもできる。
図11は本発明に係る移植機の他の実施の形態であり、従動走行輪と植込盤近傍を示す概略平面図である。
図11において、上記図1ないし図10で示したものと同一または同等箇所には同一の符号を付して示している。また、以下の説明において構造について上記で示した箇所と重複する説明は、必要な事項を除き省略する。なお、図11においても図を簡略化するため載置機構部は図示を省略している。
【0078】
基フレーム2の側部フレーム20、20と中骨部材260、260には、同軸直線上となる箇所にそれぞれ軸取付部27b,27c,27d,27eが設けてある。軸取付部27bと軸取付部27c及び軸取付部27dと軸取付部27eには、それぞれ軸28bが軸支してある。
【0079】
また、中骨部材260、260の軸取付部27c、27dよりやや後側の箇所には、軸受け270b,270cが設けてある。軸受け270b、270cには回転軸280bが回転可能に軸支してある。回転軸280bには従動走行輪3が固着して設けてある。回転軸280bの両端には、スプロケット412a、412aよりも直径が小さく歯数の少ないスプロケット281c、281cが着脱可能に固着してある。植込盤4a,4aはそれぞれの軸28bに設けてある。
【0080】
回転軸280bのスプロケット281cと、植込盤4aのスプロケット412aとの間にはチェーンT5が所要の張力をもって巻き掛けてある。
【0081】
(作 用)
図11で示す移植機は、前進に伴い畝上で従動走行輪3が接地して回転するので、回転軸280bが回転し、チェーンT5を介してスプロケット412aが回転する。こうして植込盤4a,4aは軸28bの周りを回転するようになる。
なお、上記した移植機A1や図10で示す移植機と共通する構成により生じる同様の作用、効果については説明を省略し、相違する点についてのみ説明した。
【0082】
また、制御体の構成も上記したものに限定するものではない。例えば、図12に示す構成を採用することもできる。
【0083】
図12は制御体の他の実施の形態を示す説明図である。
図12において、上記図1ないし図9で示したものと同一または同等箇所には同一の符号を付して示している。また、以下の説明において構造について上記で示した箇所と重複する説明は、必要な事項を除き省略する。
【0084】
制御体8aは、回動支持部材71を回動させる案内部材81aと、台フレーム23に一端が取り付けてあり、案内部材81aを固定して設けるための固定部材80aを備えている。
【0085】
案内部材81aは、所要の径を有する円板の外縁部の一部分に外方に膨出した膨出部810aを備えた形状を有している。案内部材81aの円板部分を形成する膨出部810a寄りの外縁部には、回転軸28を通して円板部分の中心部にこの回転軸28を配置するための取付溝811aが形成してある。また、円板部分の膨出部810aと反対側には、案内部材81aの取付位置を調整し、固定部材80aに固定する取付位置調整溝813aが形成してある。取付位置調整溝813aは、回転軸28を回転中心とする円弧形状の一部を構成するよう形成してある。案内部材81aの外幅面には、全周にわたって案内溝812aが形成してある。
【0086】
固定部材80aの下部側には、案内部材81aの取付位置調整溝813aに差し込んで取り付ける取付ボルト部800aが突設してある。
【0087】
制御体8aは、固定部材80aの一端を台フレーム23に固定して垂設してあり、案内部材81aを回転板40,40の間に入れて取付溝811aに回転軸28を通し、固定部材80aの取付ボルト部800aを取付位置調整溝813aに差し込んで取り付けてある。案内部材81aは、回転軸28を中心として取付ボルト部800aが取付位置調整溝813a内を動く範囲で回動可能であり、回動支持部材71を動かす膨出部810aの位置を決めたところで取付ボルト部800aにナット813aを螺着して固定してある。
【0088】
(作 用)
図12を参照して、制御体8aを使用したときの載置機構部7の移動状態を説明する。
なお、上記した移植機A1と共通する構成により生じる同様の作用、効果については説明を省略し、相違する点についてのみ説明する。
載置機構部7は、植込盤4が回転して下方へ移動し苗放し部Rにさしかかったときに、制御体当接部710が膨出部810aに形成してある案内溝812aに当たり、更に植込盤4が回転することで制御体当接部710が膨出部810aに沿った状態で押されたようになる。これにより回動支持部材71は、引っ張りバネS1の付勢力に抗するよう回動ピン702を中心として回動し始め、載置部72が植込盤4の内側へ移動する。具体的には、まず、制御体当接部710は、膨出部810aの立ち上がった箇所の案内溝812aに当たって図12の(ア)で示す状態となり、続いて膨出部810aの水平な箇所の案内溝812aに沿って案内されて回動することで図12の(イ)から(ウ)で示す状態となり、更に案内されることで図12の(エ)で示す状態となる。
【0089】
載置部72が植込盤4の内側へ移動した回動支持部材71は、植込盤4が更に回転することにより、制御体当接部710が膨出部810aから外れ、引っ張りバネS1の付勢力に抗していた状態が解除される。制御体当接部710の当接状態が解除されると、回動支持部材71は、引っ張りバネS1によって瞬時に回動ピン702を中心として上記とは逆方向に回動して図12の(オ)で示す元の状態に戻り、再び常態でストッパー部701と当たった状態になる。このように案内部材81の膨出部810aは、制御体当接部710の動きを変えるいわばカムのような働きを奏する。
【0090】
また、載置機構部の構成も上記したものに限定するものではない。例えば、図13に示す構成を採用することもできる。
【0091】
図13は載置機構部及び制御体の他の実施の形態を示す説明図である。
図13において、上記図1ないし図9で示したものと同一または同等箇所には同一の符号を付して示している。また、以下の説明において構造について上記で示した箇所と重複する説明は、必要な事項を除き省略する。
【0092】
載置機構部7aは、基部側に取着穴(図では見えない)が形成してあるブラケット部材70aと、リンク部材71aと、リンク部材71aの先端に取り付けてあり、プラグ苗Pの根鉢N部分を載せる載置部72aを備えている。
【0093】
ブラケット部材70aは板材を切断して長方形状に形成してあり、基部側には取付板42に取り付けるための取着穴(図では見えない)が設けてある。また、ブラケット部材70aの先部側は略直角に折り曲げてあり、この折り曲げた部分にはリンク部材71aを通すガイド穴701aが形成してある。ブラケット部材70aは、取着穴にボルト部を有するリンク部材取付軸部702a(後述)を通し、更にこれを取着穴420に通して取付板42の反対側からナット(図では見えない)を螺合することで、折り曲げた部分が取付板42の縁部からやや外方に突出するよう固定してある。また、ブラケット部材の表面には、リンク部材71aの動きを所定の位置で止めるストッパー部703aが設けてある。
【0094】
リンク部材取付軸部702aは、ブラケット部材70aを固定するためのボルト部を備えており、その頭部には、周方向に回転可能で、リンク部材71aの一部が挟んで取り付けられるリンク部材固定部704aが設けてある。
【0095】
リンク部材71aは、共に所要長さを有する載置部取着部材710aと制御体当接部材711aを連結ピンP1で回動可能に連結して形成してある。このリンク部材71aは、連結ピンP1がガイド穴701aよりやや回転中心側に配置された状態となるよう、載置部取着部材710aをガイド穴701aに通して、制御体当接部材711aをリンク部材固定部704aに取り付けて設けてある。リンク部材取付軸部702aにはねじりコイルバネ(図では見えない)が設けてあり、常態で制御体当接部材711aがストッパー部703aを押圧する方向に付勢力がかかるようにしてある。上記したストッパー部703aは、リンク部材71aが当たった状態で載置部取着部材710aと制御体当接部材711aが略直線状になる位置に設けてある。
【0096】
符号8bは、制御体当接部材711aが当たることによってリンク部材71aを連結ピンP1から折曲させる制御体を示している。制御体8bは、後部フレーム(図示省略)から延びる腕部材80bを備え、先端側を略90度内方向に曲げて長さの短い当接部81bを形成して構成してある。
【0097】
制御体8bは、当接部81bがリンク部材取付軸部702aの回転軌跡よりも軸28側になるよう位置し、植込盤4が回転したときに制御体当接部材711aがこの当接部81bに当たって、そのまま連結ピンP1からリンク部材71aが折曲するよう配置してある
【0098】
(作 用)
図13を参照して、載置機構部の移動状態を説明する。
なお、上記した移植機A1と共通する構成により生じる同様の作用、効果については説明を省略し、相違する点についてのみ説明する。
載置機構部7aは、植込盤4が回転して下方へ移動し苗放し部Rにさしかかったときに、制御体当接部材711aが当接部81bに当たり、更に植込盤4が回転することでこの制御体当接部材711aは当接部81bに押されたようになる。これにより制御体当接部材711aは、ねじりコイルバネの付勢力に抗するようリンク部材取付軸部702aを中心として周方向に回動し、リンク部材71aが連結ピンP1から折曲し始め、載置部72aが植込盤4の内側へ移動する。具体的には、制御体当接部材711aは、当接部81bに当たって図12の(ア)で示す状態から折曲し始めて(イ)で示す状態となり、続いて(ウ)で示す状態となる。このように載置機構部7aは、プラグ苗Pが畝に落ちた後に載置部72aが植込盤4の内側へ移動する。
【0099】
載置部72aが植込盤4の内側へ移動した状態のリンク部材71aは、植込盤4が更に回転することにより、制御体当接部材711aが当接部81bから外れて付勢力に抗していた状態が解除される。制御体当接部材711aの当接状態が解除されると、リンク部材71aは、ねじりコイルバネの付勢力によって瞬時に(エ)で示す元の状態に戻り、再び常態で制御体当接部材711aがストッパー部703aに当たった状態になる。
【0100】
図14は本発明に係る移植機の他の実施の形態を示す全体斜視図、
図15は移植機の前部側を示す拡大斜視図、
図16は移植機の後部側を示す拡大斜視図である。
図14ないし図16において、上記図1ないし図9で示したものと同一または同等箇所には同一の符号を付して示している。また、以下の説明において構造について上記で示した箇所と重複する説明は、必要な事項を除き省略する。
【0101】
図16を参照する。符号A2は移植機を示している。基フレーム2上の台フレーム23後部には、所要箇所に折曲部を備えた補強部材29c,29cが、中骨部材260,260の後端部との間に架け渡してある。補強部材29c,29cの折曲部近傍には、昇降調整装置295を取り付ける板状形状のボルト取付部材290cが架け渡してある。ボルト取付部材290cには、ハンドル296を有する調整ボルト297が螺合してある。
【0102】
側部フレーム20、20と中骨部材260、260には、同軸直線上となる箇所に軸受け27(中骨部材260に設けられた軸受けは図では隠れて見えない)が設けてあり、軸受け27には、側部フレーム20、20と中骨部材260、260に直交するよう回転軸28cが軸支してある。
【0103】
図15を参照する。軸支された回転軸28cのうち中骨部材260、260の間に配置された箇所には、従動走行輪3aから伝えられた回転力を受け渡すためのギア装置300が設けてある。ギア装置300は、歯数の異なるスプロケットを回転軸28cの長さ方向に複数枚重ねて多段構造を有するよう構成してあり、詳しくは外側に向かって段々と歯数が少なくなるよう構成してある(詳細には図示していない)。このギア装置300を構成するスプロケットには、スプロケット301(後述)より径大で歯数の多いものから径小で歯数の少ないものまで含まれている。
図16を参照する。また、回転軸28cの中骨部材260、260寄りの箇所には、スイングアーム34,34が上下方向に回動可能に軸支してある。
【0104】
両スイングアーム34,34の先端部には、回転軸35が架け渡して回転可能に軸支してある。回転軸35には、所要の歯数を有するスプロケット301と、従動走行輪3aが固着してあり、走行に伴う従動走行輪3aの回転と共にスプロケット301及び回転軸35が回転するようにしてある。従動走行輪3aは、輪体30aを有し、スポーク33aを介して回転軸35に固定してある構造で、外周部には等間隔で突起32aが多数設けてある。
【0105】
図14を参照する。回転軸28cのギア装置300と回転軸35のスプロケット301の間には、無端状のチェーンT6が所要の張力を有するよう巻き掛けてある。なお、チェーンT6は、巻き掛けるギア装置300が歯数の異なるものに替わった場合でも、テンションプーリ37によって張力が緩まないようにしてある。ギア装置300,スプロケット301やテンションプーリ37は、例えば、自転車等に用いられている公知技術の構造を使用したので詳細な説明は省略する。
回転軸28cのギア装置300、チェーンT6、回転軸35のスプロケット301はチェーンカバー39で覆ってある。
【0106】
図16を参照する。各スイングアーム34の上部には、略逆「V」型形状を有する支柱部材330が立設してあり、両支柱部材330,330の上端部間には、板状形状を有する連結部材331が架け渡してある。連結部材331には、調整ボルト297が螺合可能なボルト穴332が形成してある。
【0107】
スイングアーム34,34は、上記したボルト取付部材290cに取り付けてある調整ボルト297の先端側を連結部材331のボルト穴332に螺合することで、補強部材29c,29cと連結してある。昇降調整装置295は、ハンドル296を回すことにより調整ボルト297における連結部材331の螺合位置を変えることができる。
【0108】
基フレーム2における各側部フレーム20と中骨部材260とで囲まれた枠内には、それぞれ植込盤4aが備えてある。植込盤4aは回転軸28cに設けてある。各植込盤4は、可撓性を有するポリプロピレン製の二枚の回転板40a、40aを合わせた構造を有しており、回転板40a、40aは取付具41aを介して回転軸28cに固着してある。
【0109】
(作 用)
図14ないし図16を参照して、移植機A2の作用を説明する。
なお、上記した移植機A1と共通する構成により生じる同様の作用、効果については説明を省略し、相違する点についてのみ説明する。
移植機A2は前進に伴い、従動走行輪3aが畝の上面で接地して回転するので、スプロケット301が回転し、チェーンT6を介してギア装置300及び回転軸28cが回転する。これにより回転軸28cに固定してある植込盤4a,4aも回転する。このとき植込盤4aの回転速度は、ギア装置300においてチェーンT6がかかったスプロケットが、スプロケット301よりも径大で歯数も多い場合に従動走行輪3aの回転速度よりも遅くなり、スプロケット301よりも径小で歯数が少ない場合に従動走行輪3aの回転速度よりも早くなる。このように移植機A2では、ギア装置300でチェーンT6をかけるスプロケットを変えることにより、簡単に植込盤4aの回転速度を変えて、苗の植え込み間隔が調整できる。
【0110】
植込盤4aは、苗の植え込み時において下縁部が畝の上面と接する程度の高さに設定する必要がある。従って、圃場の土の状態等によっては高さを調整しなければならない。植込盤4aの高さは、昇降調整装置295のハンドル296により調整ボルト297を回し、ボルト取付部材290cと連結部材331の間の距離を変えて、従動走行輪3aの位置を変えることで調整される。つまり、従動走行輪3aは上記移植機A1で示す高さ維持輪38の機能を兼ねている。
【0111】
ギア装置300は、直径や歯数の異なるスプロケットを複数枚備えて構成したが、この枚数は特に限定するものではない。例えば、2,3,4,5,6,7,8,9または10枚またはそれ以上並べて構成することもできる。また、ギア装置は回転軸35側に設けることもできるし、回転軸28c側と回転軸35側の両方に設けることもできる。
【0112】
本実施の形態でスイングアーム34は、回転軸28cに設けて、回転軸28cが回動中心となるようにしたが、これは限定するものではなく、スイングアーム34の回動中心は、回転軸28c以外の箇所に設けることもできる。
【0113】
上記実施の形態では植込盤の回転速度が従動走行輪よりやや遅い場合について説明したが、例えば、植込盤の回転速度は従動走行輪より早くすることもできるし、また、早くした場合では、更に載置機構部の載置部は固定した状態にでき、苗放し部にさしかかったときでも植込盤の内側へ移動しないようにすることもできる。
【0114】
上記実施の形態ではプラグ苗を植え込む場合を例示したが、これは移植機A1、A2によって使用できる苗の種類を限定するものではない。移植機A1、A2は、例えば、根鉢がないタイプの苗も使用することができる。この場合、載置機構部7,7aは取り付けたままでも良いし、外しておいても良い。
【0115】
本明細書で使用している用語と表現は、あくまで説明上のものであって限定的なものではなく、上記用語、表現と等価の用語、表現を除外するものではない。
また、本発明は図示されている実施の形態に限定されるものではなく、技術思想の範囲内において種々の変形が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0116】
【図1】本発明に係る移植機の一実施の形態を示す全体斜視図。
【図2】移植機の前部側を示す拡大斜視図。
【図3】移植機の後部側を示す拡大斜視図。
【図4】従動走行輪と植込盤近傍を示す概略平面図。
【図5】植込盤と載置機構部を示す拡大斜視図。
【図6】溝形成装置と苗挟み部の上面視説明図。
【図7】溝均し具の斜視図。
【図8】植込盤の周縁部の構造を示す部分端面図。
【図9】載置機構部の移動軌跡を示す説明図。
【図10】本発明に係る移植機の他の実施の形態であり、従動走行輪と植込盤近傍を示す概略平面図。
【図11】本発明に係る移植機の他の実施の形態であり、従動走行輪と植込盤近傍を示す概略平面図。
【図12】制御体の他の実施の形態を示す説明図。
【図13】載置機構部及び制御体の他の実施の形態を示す説明図。
【図14】本発明に係る移植機の他の実施の形態を示す全体斜視図。
【図15】移植機の前部側を示す拡大斜視図。
【図16】移植機の後部側を示す拡大斜視図。
【符号の説明】
【0117】
A1,A2 移植機
N 根鉢
P プラグ苗
R 苗放し部
B 苗挟み部
1 取付フレーム
2 基フレーム
3,3a 従動走行輪
4,4a 植込盤
5 覆土ローラ
6 溝形成装置
7,7a 載置機構部
8,8a 制御体
【特許請求の範囲】
【請求項1】
苗の移植を行う移植機であって、
畝に植込溝を形成する溝形成装置(6)と、
植込溝に苗を植え込む植込盤(4)と、
上記植込盤(4)の外縁側に設けてあり当該植込盤(4)の回転と共に回転移動する、苗の根鉢の載置手段または保持手段と、
苗が植え込まれた植込溝に土を覆土する覆土手段と、
を備えており、
上記植込盤(4)は、二枚の可撓性を有する回転板(40,40)を合わせて苗を挟むことができるようにしてあり、当該回転板(40,40)の上部に苗を入れる苗挟み部(B)を有し、下部に挟んだ苗を離す苗放し部(R)を有するよう構成してあることを特徴とする、
移植機。
【請求項2】
載置手段または保持手段は、植込盤(4)の苗放し部(R)にさしかかったときに植込盤(4)の回転中心側へ移動して植込盤(4)の外周に突出しないよう構成してあることを特徴とする、
請求項1記載の移植機。
【請求項3】
回転板(40,40)と共に回転する取付部材を備えており、載置手段または保持手段は当該取付部材に支持部を介して取り付けてあり、当該支持部は、上記載置手段または保持手段が苗放し部(R)にさしかかったときに動いて、取付部材に対する取付角度が変わるよう構成してあることを特徴とする、
請求項2記載の移植機。
【請求項4】
走行に伴い回転する従動走行輪(3)を備えており、植込盤(4)は当該従動走行輪(3)の回転力を利用して回転するよう構成してあることを特徴とする、
請求項1,2または3記載の移植機。
【請求項5】
植込盤(4)は、動力手段による動力を利用して回転するよう構成してあることを特徴とする、
請求項1,2または3記載の移植機。
【請求項6】
植込盤(4)は、回転速度が変速可能に構成してあることを特徴とする、
請求項1,2,3,4または5記載の移植機。
【請求項7】
請求項1,2,3,4,5または6記載の移植機を、耕耘装置と畝形成装置を有する走行作業車に取り付けたことを特徴とする、
移植作業車。
【請求項1】
苗の移植を行う移植機であって、
畝に植込溝を形成する溝形成装置(6)と、
植込溝に苗を植え込む植込盤(4)と、
上記植込盤(4)の外縁側に設けてあり当該植込盤(4)の回転と共に回転移動する、苗の根鉢の載置手段または保持手段と、
苗が植え込まれた植込溝に土を覆土する覆土手段と、
を備えており、
上記植込盤(4)は、二枚の可撓性を有する回転板(40,40)を合わせて苗を挟むことができるようにしてあり、当該回転板(40,40)の上部に苗を入れる苗挟み部(B)を有し、下部に挟んだ苗を離す苗放し部(R)を有するよう構成してあることを特徴とする、
移植機。
【請求項2】
載置手段または保持手段は、植込盤(4)の苗放し部(R)にさしかかったときに植込盤(4)の回転中心側へ移動して植込盤(4)の外周に突出しないよう構成してあることを特徴とする、
請求項1記載の移植機。
【請求項3】
回転板(40,40)と共に回転する取付部材を備えており、載置手段または保持手段は当該取付部材に支持部を介して取り付けてあり、当該支持部は、上記載置手段または保持手段が苗放し部(R)にさしかかったときに動いて、取付部材に対する取付角度が変わるよう構成してあることを特徴とする、
請求項2記載の移植機。
【請求項4】
走行に伴い回転する従動走行輪(3)を備えており、植込盤(4)は当該従動走行輪(3)の回転力を利用して回転するよう構成してあることを特徴とする、
請求項1,2または3記載の移植機。
【請求項5】
植込盤(4)は、動力手段による動力を利用して回転するよう構成してあることを特徴とする、
請求項1,2または3記載の移植機。
【請求項6】
植込盤(4)は、回転速度が変速可能に構成してあることを特徴とする、
請求項1,2,3,4または5記載の移植機。
【請求項7】
請求項1,2,3,4,5または6記載の移植機を、耕耘装置と畝形成装置を有する走行作業車に取り付けたことを特徴とする、
移植作業車。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2006−166821(P2006−166821A)
【公開日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−365093(P2004−365093)
【出願日】平成16年12月16日(2004.12.16)
【出願人】(500065347)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年12月16日(2004.12.16)
【出願人】(500065347)
【Fターム(参考)】
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