説明

移植機及びそれを備えた移植作業車

【課題】
植え込み間隔にばらつきが生じ難い、移植機及びそれを備えた移植作業車を提供する。
【解決手段】
移植機A1は取付フレーム1と基フレーム2を備えている。基フレーム2は側部フレーム20,20と中フレーム26と後部フレーム21を枠組して形成してある。中フレーム26には従動走行輪3が設けてある。また各側部フレーム20と中フレーム26の間にはそれぞれ植込盤4が設けてある。植込盤4は従動走行輪3による回転力によって回転し、従動走行輪3より回転速度がやや遅くなるようにしてある。植込盤4の回転板40、40間には目印板42が設けてあり、目印板42には、苗を入れる箇所を示す表示部材420が周方向に等間隔で七箇所に設けてある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は移植機及びそれを備えた移植作業車に関する。更に詳しくは、植え込み間隔にばらつきが生じ難い、移植機及びそれを備えた移植作業車に関する。
【背景技術】
【0002】
通常、キャベツやタマネギ等は、苗床に種を蒔き、発芽した苗が適切な大きさに育ったところで、圃場(畝)に植え替えて栽培されている。従来から苗は、手植えや移植機を使用して圃場に植え込まれている。
【0003】
移植機としては、例えば、本発明者が開発した特許文献1に示すものがある。この移植機は、溝形成装置によって畝上部に植込溝を形成し、苗植込装置に挟ませた苗を植込溝に植え込み、覆土ローラーにより植込溝に土を戻すことで苗を畝上に植え込むという一連の作業を、走行に伴って順次できるという構造を有している。
【0004】
【特許文献1】特開2001−218506号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記公報記載の移植機は、苗の植え込みの省力化を図ったという点において好評を得ていた。しかし、次に示す課題が解消できれば、更に使い勝手が良くなることがわかった。
野菜は種類ごとに形や育ち方が違う。そのため苗の植え込み間隔は、野菜の種類によって変える必要がある(例えば、キャベツは30センチ間隔、タマネギは20センチ間隔等である)。上記した移植機の場合では、苗植込装置に挟ませた苗の間隔が、そのまま植込溝への植え込み間隔になるが、この間隔は苗を苗植込装置に挟ませる作業者の目分量によって調整されている。つまり、植え込み間隔を狭くする場合では、前記作業者が目分量によって苗植込装置に挟ませる苗の間隔を狭くし、逆に、植え込み間隔を広くする場合では、同様に作業者が目分量によって苗植込装置に挟ませる苗の間隔を広くしている。従って、植え込み間隔にばらつきが生じ易く、安定性に欠ける。
【0006】
(本発明の目的)
本発明の目的は、植え込み間隔にばらつきが生じ難い、移植機及びそれを備えた移植作業車を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を達成するために講じた本発明の手段は次のとおりである。
第1の発明にあっては、
苗の移植を行う移植機であって、
畝に植込溝を形成する溝形成装置(6)と、
回転速度が変速可能な植込盤(4)と、
苗が植え込まれた植込溝に土を覆土する覆土手段と、
を備えており、
上記植込盤(4)は、二枚の可撓性を有する回転板(40,40)を合わせて苗を挟むことができるようにして、当該回転板(40,40)の上部に苗を入れる苗挟み部(B)を有し、下部に挟んだ苗を離す苗放し部(R)を有するよう構成してあり、更に、当該植込盤(4)には、上記回転板(40,40)と共に回転し、苗挟み部(B)において苗を入れる箇所を指し示す目印手段が設けてあることを特徴とする、
移植機である。
【0008】
第2の発明にあっては、
走行に伴い回転する従動走行輪(3)を備えており、植込盤(4)は当該従動走行輪(3)の回転力を利用して回転するよう構成してあることを特徴とする、
第1の発明に係る移植機である。
【0009】
第3の発明にあっては、
植込盤(4)は、動力手段による動力を利用して回転するよう構成してあることを特徴とする、
第1または第2の発明に係る移植機である。
【0010】
第4の発明にあっては、
第1,第2または第3の発明に係る移植機を、耕耘装置と畝形成装置を有する走行作業車に取り付けたことを特徴とする、
移植作業車である。
【0011】
なお、ここでは本発明の各構成要件のそれぞれに、後述する実施の形態において示す各部の符号を対応させて付与したが、この符号はあくまで説明の理解を助けるためのものであって、各構成要件の上記各部への限定を意味するものではない。
【0012】
(作 用)
移植機の走行に伴い、畝には植込溝が形成される。植込溝は、溝形成装置によって土が掻き分けられ、植込溝の両側に盛り上げられてできる。苗は、回転する植込盤に苗挟み部が形成されたときに、移植作業者によって目印手段が指し示す箇所に入れられて回転板に挟まれる。そして苗は、植込盤が回転し、下方に移動して苗放し部にさしかかったところで植込盤から離れて植込溝に入る。最後に苗は、覆土手段により植込溝の両側に盛り上げられていた土が植込溝に覆土されて植え込まれる。
【0013】
植込盤の回転速度が変速可能に構成してあるので、植込盤の回転速度を変えることにより苗の植え込み間隔を変えることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、例えば野菜ごとに植込盤の回転速度を変えて、この状態で目印手段が示す箇所に苗を入れるようにすることにより、苗を野菜ごとに異なる間隔で、しかも一定の植え込み間隔で植え込むことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明を図面に示した実施の形態に基き、更に詳細に説明する。
図1は本発明に係る移植機の一実施の形態を示す全体斜視図、
図2は移植機の前部側を示す拡大斜視図、
図3は移植機の後部側を示す拡大斜視図、
図4は従動走行輪と植込盤近傍を示す概略平面図、
図5は植込盤を回転板の間から縦方向に断面した縦断面図、
図6は溝形成装置と苗挟み部の上面視説明図、
図7は溝均し具の斜視図、
図8は植込盤の周縁部の構造を示す部分端面図である。
【0016】
図1ないし図3を参照する。符号A1は移植機で、取付フレーム1と基フレーム2を備えている。
取付フレーム1の上部中央部には、走行作業車であるトラクター(図示省略)に取り付けるための取付ブラケット10が設けてある。基フレーム2は、前端部を取付フレーム1の下部に軸着して、上下方向に回動可能に取り付けてある。
【0017】
基フレーム2は、左右両側に設けられる直線形状の側部フレーム20,20と、側部フレーム20,20の間に配置され、平面視略「コ」型形状に形成してある中フレーム26と、各側部フレーム20と中フレーム26の後端部に架設される後部フレーム21を備えて構成してある。中フレーム26は、各側部フレーム20と略同じ長さを有する中骨部材260,260を備え、その一端に架設部材261を架け渡して形成してある。
【0018】
基フレーム2は、側部フレーム20,20の前端部と、中フレーム26の架設部材261が、取付フレーム1に対し上下方向に回動可能なよう軸着してある。また、基フレーム2の前部寄りの側部フレーム20、20間には、移植作業者が足を載せるための足載バー22が横架してある。
【0019】
また、基フレーム2の後部寄りの位置には、所要高さを有する台フレーム23が、側部フレーム20,20と中フレーム26上に立てて設けてある。台フレーム23の上部には、移植する苗を収容する苗容器24が取り付けてある。
【0020】
台フレーム23の前方側には、直線形状を有する補強部材29a,29aが、中骨部材260,260の前部側との間に斜めに架け渡してある。図3を参照する。また、台フレーム23の後方側には、補強部材29b,29bが中骨部材260,260の後端部との間に斜めに架け渡してある。更に、台フレーム23の前部と上記取付フレーム1の取付ブラケット10との間には、一定のストロークで伸縮自在なリンク25が架設してある。
【0021】
図1ないし図4を参照する。基フレーム2の側部フレーム20、20と中骨部材260、260には、同軸直線上となる箇所にそれぞれ軸受け27・・・が設けてある。軸受け27・・・には、側部フレーム20、20と中骨部材260、260に直交するようにして回転軸28が軸支してある。
【0022】
図4を参照する。一方の中骨部材260の軸受け27よりやや後側の箇所には、更に、軸受け270が設けてある。軸受け270には回転軸280が回転可能に軸支してある。回転軸280の従動走行輪3(後述)寄りの一端にはスプロケット281aが固着してあり、植込盤4(後述)寄りの他端にはスプロケット281bが着脱可能に固着してある。本実施の形態でスプロケット281bは、スプロケット281aよりも直径が小さく歯数の少ないものを使用している。しかし、これは限定するものではなく、例えば、直径が大きく歯数の多いものを使用することもできる。
【0023】
中骨部材260、260の間には、所要の直径を有する従動走行輪3が設けてある。従動走行輪3は、環形状を有する輪体30と、輪体30の中心に配置してある所要長さを有するスリーブ31を備え、スポーク33をスリーブ31と輪体30の間に架設した構造を有している。輪体30には、板状の突起32が外方に突出して等間隔で多数設けてある。また、スリーブ31の一方の端部には、所要の歯数を有するスプロケット310が固着してある。
【0024】
従動走行輪3は、スリーブ31内に回転軸28を通して、この回転軸28を中心として回転できるよう設けてある。なお、スリーブ31と回転軸28との間には、図示は省略したがベアリング等の摩擦抵抗軽減手段が設けてあり、従動走行輪3が抵抗の少ない状態で回転できるようにしてある。
【0025】
回転軸280のスプロケット281aと、従動走行輪3のスプロケット310との間にはチェーンT1が所要の張力をもって巻き掛けてある。これにより従動走行輪3の回転力は回転軸280に伝わる。
【0026】
引き続き図4を参照する。基フレーム2における各側部フレーム20と中骨部材260とで囲まれた枠内には、それぞれ植込盤4が設けてある。
植込盤4は、所要長さを有するスリーブ41と、可撓性を有するポリプロピレン製の二枚の円盤状の回転板40、40と、回転板40、40より径小な円盤状を有する目印板42と、所要間隔をもってスリーブ41に固着してある回転板取付具43,43を備えている。スリーブ41には押圧ボルト410が設けてあり、ねじ込んで先端を回転軸28に押し当てることで、植込盤4が回転軸28に固定できるようにしてある。
【0027】
図5及び図8を参照する。回転板40、40の内面側の周縁部側には、所要幅の挟持帯49が全周にわたり設けてある。挟持帯49はゴム製で、中空状の凸部490と凹部491を交互に設けた構造を有している。この挟持帯49は、向き合う回転板40同士で互いに凸部490がずらしてあり、相互に噛み込むことができるようにしてある。これによると苗を傷めることなく確実に保持できる。
また、目印板42の周縁部には、苗を入れる箇所を示す目印手段である表示部材420が取り付けてある。表示部材420は、所要長さを有する帯状の板材の先端側を略90度ねじった形状を有しており、基部側を目印板42の側面に当てて移植作業者から見やすいよう取り付けてある。表示部材420は周方向に等間隔で七箇所に取り付けてある。
【0028】
再び図4を参照する。植込盤4は、所要間隔を設けた状態で回転板取付具43,43をスリーブ41に固着し、更に、この回転板取付具43,43の間に取付板42を固着して、各回転板取付具43にそれぞれ回転板40を合わせるよう取り付けて構成してある。この植込盤4は、スリーブ41内に回転軸28を通して、押圧ボルト410をねじ込むことで回転軸28に固定してある。なお、回転板40は、ポリプロピレンで形成したものを示したが、材料は限定するものではなく、可撓性を有していれば、例えば、ポリエチレン等の他の合成樹脂を使用することもできる。
【0029】
側部フレーム20と中骨部材260とで囲まれた一方の枠内における回転軸28には、所要の歯数を有するスプロケット282が固着してある。回転軸28に固着したスプロケット282と、回転軸280のスプロケット281bとの間にはチェーンT2が巻き掛けてある。これにより回転軸280の回転力が回転軸28に伝わり、回転軸28に固着してある植込盤4が回転する。
【0030】
図2及び図3を参照する。植込盤4の回転板40、40の前部側の上部は、ローラ44、44によって所要幅だけ拡げてある。ローラ44、44は、上記台フレーム23に取付アーム440によって取り付けてある。また、回転板40、40の前部側のほぼ中間の高さ位置には、回転板40、40を密着させる挟持部材45、45が両側の外面に接触して設けてある。挟持部材45、45は、可撓性を有する線材で形成されており、上記足載バー22に固定してあるアーム46、46に取り付けてある。こうして回転板40、40の拡がった部分から密着している部分にかけて苗挟み部Bが形成される。なお、挟持部材45、45の下部側は、回転板40、40下方の苗放し部R(後述)の近傍まで延長されている。
【0031】
回転板40、40の後部側の下部は、ローラ47、47によって所要幅だけ拡げてある。ローラ47、47は、基フレーム2の後部フレーム21に、取付具48を介して取り付けてある。回転板40、40は、挟持部材45の下部側による挟持が解除された位置で拡がり始め、その位置は、基フレーム2が畝上面と平行であるときに、回転軸28の真下になるように設定してある(多少、前後へずらすこともできる)。こうして回転板40、40が拡がる苗放し部Rが、回転軸28の真下で苗を離すよう形成される。
また、取付具48は高さの調整ができるようにしてある。これにより例えば植え込まれていく苗が取付具48に接触して傷がついたり倒れたりしないように、苗の高さに合わせて調整することができる。
【0032】
図1及び図2を参照する。足載バー22には、溝形成装置6(後述)を構成する脚部60が設けられている。脚部60には、上記植込盤4を挟む二箇所に支脚ロッド50、50が取り付けてある。支脚ロッド50は、その前端部が軸着されており、後部側は斜め上下方向(上方へ互いに拡がる方向)へ揺動(回動)可能である。
【0033】
支脚ロッド50と脚部60間には、支脚ロッド50を下方へ回動させる方向へ付勢する引っ張りバネ51が装着してある。そして、支脚ロッド50の先端部(後端部)には、覆土手段である覆土ローラ5が取り付けてある。
【0034】
覆土ローラ5の外周部表面には、スポンジゴムが層状に設けてある。覆土ローラ5の接地面の方向は、移植機A1の走行方向に対し、やや内側を向くように設定してある。支脚ロッド50は伸縮調整が可能である。なお、覆土手段は覆土ローラ5に限るものではなく、例えば、畝上面を滑りながら覆土する板状の覆土板を採用することもできる。
【0035】
各植込盤4の前方の下部側には、それぞれ上記した溝形成装置6が設けてある。各溝形成装置6の脚部60は、前部側が足載バー22に固定してあり、後部側は斜め下方へ延長してある。
【0036】
図6を参照する。脚部60の前部側には、軸受体61が取り付けてある。軸受体61には、溝切り盤62が回転可能に設けてある。溝切り盤62は、二枚の回転板620、620を前部側の周縁部が互いに接触するように傾けて、回転可能に軸着して形成してある。
【0037】
図6及び図7を参照する。脚部60の下端部には、溝均し具63が取り付けてある。溝均し具63は、側板630、630と、前部側でそれらを連結する滑り板631を有している。滑り板631は、走行方向へ向けて所要角度で上り傾斜させてある。滑り板631の位置は、溝切り盤62の接地部よりやや後方に設定してある。側板630、630の間隔が、苗を植え込む植込溝の幅になる。側板630、630の下部側は解放されているので、作業に伴って溝均し具63内部に土がたまってしまうことがなく、スムーズな作業ができる。
なお、溝切り盤62と溝均し具63及び上記植込盤4の平面視における中心線は、移植機A1の走行方向と平行な同一直線上にある。
【0038】
図1を参照する。基フレーム2の後部フレーム21の中央部には、後方へ張り出して高さ維持輪38が設けてある。高さ維持輪38は、高さが調整できるよう設けてある。また、高さ維持輪38は、畝上面において沈みにくいよう十分な幅をもって形成されている。
植込盤4は、苗の植え込み時において下縁部が畝の上面と接する程度の高さに設定する必要がある。従って、圃場の土の状態等によっては高さを調整しなければならない。植込盤4の高さは、高さ維持輪38を昇降させることにより調整される。
【0039】
(作 用)
図1ないし図7を参照し、移植機A1を使用して畝に苗を植え込む際の作用を説明する。
移植機A1は、取付フレーム1の取付ブラケット10をトラクター(図示省略)の後部側に取り付けて使用される。
まず、移植機A1を取り付けたトラクターに運転者が搭乗する。そして、移植機A1の取付フレーム1上に設けた座席(符号11で示す部分に取り付けられる)に、二人の移植作業者が後ろ向きに搭乗する。
【0040】
トラクターを走行させて移植機A1を牽引する。移植機A1の前進に伴い、溝切り盤62が畝上部に食い込んだ状態で回転しながら走行し、畝上部に筋溝が形成される。そして更に、後方に位置する溝均し具63により筋溝は均されて植込溝が形成される。
【0041】
また、移植機A1の前進に伴い、畝上で従動走行輪3が接地して回転するので、スリーブ31及びスプロケット310が回転し、チェーンT1を介してスプロケット281a及び回転軸280も回転する。これにより各回転軸280に固着してあるスプロケット281bが回転し、チェーンT2を介してスプロケット282及び回転軸28が回転する。こうして植込盤4,4が回転する。本実施の形態で示す移植機A1では、スプロケット281aより直径が小さく歯数の少ないスプロケット281bを使用して、植込盤4の方が従動走行輪3より回転速度がやや遅くなるようにしてある。このように植込盤4の回転速度を遅くすることで苗の植え込み間隔を拡げることができる。
【0042】
走行時における従動走行輪3は、板状の突起32が畝上部に突き刺さりながら回転しており、この突起32によって前進する方向に対する抵抗が得られるようにしてあるので、移植機A1は畝上で滑り難い。
【0043】
移植作業者は、ローラ44,44によって形成された苗挟み部Bに順次苗を挿入する。苗は、回転板40,40の間で表示部材420が示す箇所に芽や葉が回転板40、40で挟まれるよう苗挟み部Bに挿入する。表示部材420は、先端側がねじってあるので移植作業者が正面からでも見易い。こうして苗は等間隔で回転板40、40で挟まれて保持される。
【0044】
苗は、植込盤4によって保持されたまま下方へ移動し、植込溝に対応する苗放し部Rにさしかかったときに回転板40、40が拡がり、挟持状態が解放されて植込溝に垂直に入る。
そして、移植機A1の走行により植込溝の両側に盛り上げられていた土が覆土ローラ5によって押圧されて、植込溝に戻され、根部が土の圧力で固定される。こうして苗は、畝上に植え込まれる。
【0045】
このように移植機A1によれば、苗を入れる箇所が表示部材420で示され、回転板40,40に等間隔で挟むことができるようになっているので、植え込み時の間隔にあたってもばらつきが生じず、安定した間隔で植え込むことができる。
【0046】
また、移植機A1は、スプロケット281bが回転軸280から着脱可能であり、適宜、交換可能である。従って、スプロケット281bを直径や歯数の異なるものに交換することにより、植込盤4の回転速度を変えることができ、苗の植え込み間隔が調整できる。つまり、移植機A1は、植え込み間隔が調整できるので、苗を野菜ごとに異なる間隔で、しかも一定の間隔で植え込むことができる。
【0047】
なお、苗の植え込み間隔の調整は、上記したスプロケット281bの交換以外にも、例えば、歯数の異なるスプロケットを回転軸の長さ方向に複数枚重ねて多段構造を有するようにしても良い(例えば、自転車の変速ギア構造)。また、従動走行輪3や植込盤4の大きさを変えたり、他のスプロケットを交換したりしても良い。
【0048】
植込盤4は、押圧ボルト410をねじ込むことで回転軸28に固定してあるので、押圧ボルト410を緩めて回転軸28に沿って軸方向に移動させることができ、これにより植込盤4,4で植え込まれる苗の横方向の間隔(条間)も変えることができる。
【0049】
本実施の形態で示す移植機A1では、スプロケットにチェーンを巻き掛けて動力が伝達されるようにしたが、これは限定するものではなく、例えば、プーリーやベルト、ギア(歯車)使うこともできる。また、植込盤4への動力の伝達は、回転軸28の軸線上以外の箇所を経由して伝えるようにしたが、これも限定するものではない。例えば、従動走行輪3と植込盤4の回転数を変えることができる減速手段を間に介在させれば、従動走行輪3を軸支する軸と植込盤4を軸支する軸は同軸線上に設けることもできる。
【0050】
本実施の形態で示す目印手段である表示部材420は、所要長さを有する帯状の板材の先端側を略90度ねじった形状を有するものを使用したが、目印手段はこれに限定するものではなく、移植作業者に対して苗を入れる箇所を示すことができれば、例えば、塗装を施したり、シールや目立つ色の部材を貼付したり、形の異なる表示部材を用いても良い。また、目印手段は、例えば、回転板40に設けることもできる。
【0051】
なお、植込盤の回転速度を従動走行輪3よりも遅くするための構成は、上記したものに限定するものではない。例えば、図9に示す構成を採用することもできる。
【0052】
図9は本発明に係る移植機の他の実施の形態であり、従動走行輪と植込盤近傍を示す概略平面図である。図9において、上記図1ないし図8で示したものと同一または同等箇所には同一の符号を付して示している。また、以下の説明において構造について上記で示した箇所と重複する説明は、必要な事項を除き省略する。
【0053】
基フレーム2の側部フレーム20、20と中骨部材260、260には、同軸直線上となる箇所にそれぞれ軸取付部27a・・・が設けてある。軸取付部27a・・・には、側部フレーム20、20と中骨部材260、260に直交するようにして軸28aが軸支してある。
【0054】
また、中骨部材260、260の軸取付部27a、27aよりやや後側の箇所には、軸受け270a,270aが設けてある。各軸受け270aには回転軸280aがそれぞれ回転可能に軸支してある。回転軸280aの従動走行輪3寄りの一端には、所要の歯数を有するスプロケット281aが固着してあり、植込盤4a寄りの他端には、このスプロケット281aよりも直径が小さく歯数の少ないスプロケット281bが着脱可能に固着してある。
【0055】
従動走行輪3を構成するスリーブ31の両端には、所要の歯数を有するスプロケット310,310が固着してある。従動走行輪3は、スリーブ31内に軸28aを通して、この軸28aを中心として回転できるよう設けてある。
【0056】
回転軸280aのスプロケット281aと、従動走行輪3のスプロケット310との間にはチェーンT3が所要の張力をもって巻き掛けてある。これにより従動走行輪3の回転力は回転軸280aに伝わる。
【0057】
植込盤4aは、所要長さを有するスリーブ411aを備えており、このスリーブ411aの外側にスリーブ41を被せるよう設けて構成してある。スリーブ41に設けてある押圧ボルト410をねじ込むことで、植込盤4aをスリーブ411aに固定することができる。スリーブ411aの一方の端部には、所要の歯数を有するスプロケット412aが固着してある。植込盤4aは、スリーブ411a内に軸28aを通して、この軸28aを中心として回転できるよう設けてある。
【0058】
回転軸280aのスプロケット281bと、スリーブ411aに設けてあるスプロケット412aとの間にはチェーンT4が巻き掛けてある。これにより従動走行輪3の回転力が回転軸280aを介して植込盤4aのスリーブ411aに伝わる。
なお、スリーブ411aと軸28aとの間には、図示は省略したがベアリング等の摩擦抵抗軽減手段が設けてあり、植込盤4aが抵抗の少ない状態で回転できるようにしてある。
【0059】
(作 用)
図9を参照して、従動走行輪3の回転力が植込盤4aに伝わるときの様子を説明する。
なお、上記した移植機A1と共通する構成により生じる同様の作用、効果については説明を省略し、相違する点についてのみ説明する。
移植機の前進に伴い、畝上で従動走行輪3が接地して回転するので、スリーブ31及びスプロケット310が回転し、チェーンT3を介してスプロケット281a及び回転軸280aが回転する。これにより各回転軸280aに固着してあるスプロケット281bが回転し、チェーンT4を介してスプロケット412aが回転する。こうして植込盤4a,4aは軸28aの周りを回転する。
【0060】
更に、植込盤4aの回転速度を従動走行輪3よりも遅くするための構成は、例えば、図10に示す構成を採用することもできる。
図10は本発明に係る移植機の他の実施の形態であり、従動走行輪と植込盤近傍を示す概略平面図である。図10において、上記図1ないし図9で示したものと同一または同等箇所には同一の符号を付して示している。また、以下の説明において構造について上記で示した箇所と重複する説明は、必要な事項を除き省略する。
【0061】
基フレーム2の側部フレーム20、20と中骨部材260、260には、同軸直線上となる箇所にそれぞれ軸取付部27b,27c,27d,27eが設けてある。軸取付部27bと軸取付部27c及び軸取付部27dと軸取付部27eには、それぞれ軸28bが軸支してある。
【0062】
また、中骨部材260、260の軸取付部27c、27dよりやや後側の箇所には、軸受け270b,270cが設けてある。軸受け270b、270cには回転軸280bが回転可能に軸支してある。回転軸280bには従動走行輪3が固着して設けてある。回転軸280bの両端には、スプロケット412a、412aよりも直径が小さく歯数の少ないスプロケット281c、281cが着脱可能に固着してある。植込盤4a,4aはそれぞれの軸28bに設けてある。
【0063】
回転軸280bのスプロケット281cと、植込盤4aのスプロケット412aとの間にはチェーンT5が所要の張力をもって巻き掛けてある。
【0064】
(作 用)
図10で示す移植機は、前進に伴い畝上で従動走行輪3が接地して回転するので、回転軸280bが回転し、チェーンT5を介してスプロケット412aが回転する。こうして植込盤4a,4aは軸28bの周りを回転するようになる。
なお、上記した移植機A1や図9で示す移植機と共通する構成により生じる同様の作用、効果については説明を省略し、相違する点についてのみ説明した。
【0065】
本明細書で使用している用語と表現は、あくまで説明上のものであって限定的なものではなく、上記用語、表現と等価の用語、表現を除外するものではない。
また、本発明は図示されている実施の形態に限定されるものではなく、技術思想の範囲内において種々の変形が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明に係る移植機の一実施の形態を示す全体斜視図。
【図2】移植機の前部側を示す拡大斜視図。
【図3】移植機の後部側を示す拡大斜視図。
【図4】従動走行輪と植込盤近傍を示す概略平面図。
【図5】植込盤を回転板の間から縦方向に断面した縦断面図。
【図6】溝形成装置と苗挟み部の上面視説明図。
【図7】溝均し具の斜視図。
【図8】植込盤の周縁部の構造を示す部分端面図。
【図9】本発明に係る移植機の他の実施の形態であり、従動走行輪と植込盤近傍を示す概略平面図。
【図10】本発明に係る移植機の他の実施の形態であり、従動走行輪と植込盤近傍を示す概略平面図。
【符号の説明】
【0067】
A1 移植機
R 苗放し部
B 苗挟み部
1 取付フレーム
2 基フレーム
3 従動走行輪
4,4a 植込盤
420 表示部材
5 覆土ローラ
6 溝形成装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
苗の移植を行う移植機であって、
畝に植込溝を形成する溝形成装置(6)と、
回転速度が変速可能な植込盤(4)と、
苗が植え込まれた植込溝に土を覆土する覆土手段と、
を備えており、
上記植込盤(4)は、二枚の可撓性を有する回転板(40,40)を合わせて苗を挟むことができるようにして、当該回転板(40,40)の上部に苗を入れる苗挟み部(B)を有し、下部に挟んだ苗を離す苗放し部(R)を有するよう構成してあり、更に、当該植込盤(4)には、上記回転板(40,40)と共に回転し、苗挟み部(B)において苗を入れる箇所を指し示す目印手段が設けてあることを特徴とする、
移植機。
【請求項2】
走行に伴い回転する従動走行輪(3)を備えており、植込盤(4)は当該従動走行輪(3)の回転力を利用して回転するよう構成してあることを特徴とする、
請求項1記載の移植機。
【請求項3】
植込盤(4)は、動力手段による動力を利用して回転するよう構成してあることを特徴とする、
請求項1または2記載の移植機。
【請求項4】
請求項1,2または3記載の移植機を、耕耘装置と畝形成装置を有する走行作業車に取り付けたことを特徴とする、
移植作業車。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−166822(P2006−166822A)
【公開日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−365094(P2004−365094)
【出願日】平成16年12月16日(2004.12.16)
【出願人】(500065347)
【Fターム(参考)】