説明

移植機

【課題】植付作業機の前方に圃場を整地する整地ロータ等の整地装置を備えた移植機において、この整地装置の前側に溜まった泥水が左右に押し流されて隣接する既植苗の倒れや損傷が発生するといった不具合を解消する。
【解決手段】植付作業機の前方に整地装置38を備えた移植機において、前記整地装置38の前方に、次植付行程への指標を圃場面Gに形成するサイドマーカ66L,66Rの作用方向に泥水が流入するように姿勢変更可能な泥水案内手段58を設け、当該サイドマーカ66L,66Rの作動側、即ち既植苗条列の反対側に泥水を流入させて既植苗側への泥水の流入を抑制するように構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植付作業機の前方に設けられ、回転駆動することによって圃場を整地する整地ロータ等の整地装置を備える移植機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、機体の後部に設けた昇降リンク機構を介して植付作業機を昇降可能に連結すると共に、この植付作業機の前方に整地ロータを設け、該整地ロータを圃場面に接地する作用位置で機体の進行方向に回転駆動させることによって、苗植え付け位置前方の荒れた圃場面を整地する整地作業と植付作業とを同時に行うことができる乗用型田植機が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2004−65111号公報(第4−6頁、図3−図6)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
そして、上述したように整地ロータを圃場面に接地する作用位置で回転駆動させると、整地ロータによって撥ね上げられる泥水(泥土)が後方の苗載台に付着することから、整地ロータの上方には、当該整地ロータの上方及び後側を覆うロータカバーを設けている。
【0004】
ところが、代掻作業と植付作業を同時に行う場合は、回転駆動する整地ロータの前側に泥水が溜まり、この整地ロータの前側に溜まった泥水が左右に押し流されると共に、当該整地ロータによって撥ね上げられた泥水がロータに沿って左右に流れ、更に隣接する既植苗側にこれらの泥水が流入すると既植苗が流されたり、既植苗の倒れや損傷が発生するといった不具合を有していた。特に高速で整地作業と植付作業を同時に行う場合は、上述した不具合が顕在化する虞があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決することを目的とした請求項1の発明は、植付作業機を機体の後部に昇降自在に連結すると共に、該植付作業機の前方に整地装置を備えた移植機において、前記整地装置の前方に、既植苗側への泥水の流入を抑制する泥水案内手段を設けたことを第1の特徴としている。
【0006】
また、請求項2の発明は、次植付行程への指標を圃場面に形成するサイドマーカの作用方向に泥水が流入するように泥水案内手段を姿勢変更することによって、既植苗側への泥水の流入を抑制するように構成したことを第2の特徴としている。
【発明の効果】
【0007】
請求項1の発明によれば、整地装置の前方に、既植苗側への泥水の流入を抑制する泥水案内手段を設けたことによって、整地作業と植付作業を同時に行う場合に、前記整地装置により押しやられる泥水が隣接する既植苗側に流入することを抑制できるので、当該泥水により既植苗が流されたり、既植苗の倒れや損傷が発生するといった従来の不具合を解消できるようになる。
【0008】
また、請求項2の発明によれば、次植付行程への指標を圃場面に形成するサイドマーカの作用方向に泥水が流入するように泥水案内手段を姿勢変更することによって、既植苗側への泥水の流入を抑制するように構成したので、当該サイドマーカの作動側、即ち既植苗条列の反対側に泥水を流入させることができ、従来の既植苗が流されたり、既植苗の倒れや損傷が発生するといった不具合を解消できるようになり、高速で整地作業と植付作業を同時に行う場合にも極めて有効である。また、泥水を流入させる方向の選択を、サイドマーカ操作に連動して一つの操作で行えるようになることから、誤操作による不具合も起こらない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
次に、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1及び図2は、移植機の一例である4条植え乗用型田植機11の側面図と平面図であって、乗用型田植機11の機体フレーム12の後端部には、油圧シリンダ13を備える昇降リンク機構14が設けてあり、この昇降リンク機構14を介して植付作業機15を昇降可能に連結すると共に、機体フレーム12の下部には、左右一対の前輪16と後輪17とを備えている。
【0010】
そして、機体フレーム12の前部には、エンジン18を被包するボンネット19を備えており、このエンジン18から出力される動力を、油圧式無段変速装置(HST)とトランスミッションケース内の動力伝達装置を介して走行動力と植付動力とに分配し、上述した左右一対の前輪16と後輪17、及び植付作業機15に伝達できるように構成している。
【0011】
また、機体フレーム12の後部上方には、運転席21を備え、この運転席21の前方に各種モニタを表示する操作パネル22を装備すると共に、該操作パネル22の上部に運転ハンドル23、該運転ハンドル23の下方には操縦部24の床面を形成するステップ25を設けている。
【0012】
更に詳しくは、昇降リンク機構14の後端には、リンクホルダ26が取付けてあり、このリンクホルダ26の図示しないローリング軸を介して、植付作業機15をローリング可能に支持するドライブケース27を横設している。そして、このドライブケース27に立設した左右一対の苗載台支持ステー28によって、前高後低状の傾斜姿勢で左右往復動可能に苗載台29を支持している。
【0013】
また、ドライブケース27の左右両端には、植付伝動ケース31が取り付けてあり、この植付伝動ケース31に内装した図示しないチェン伝動機構及び植付駆動軸等を介して、当該植付伝動ケース31の後端部に組付けた植付ケース(ロータリケース)32が回転駆動するようになっている。
【0014】
そして、植付ケース32の両端部には、一対の移植杆33が設けてあり、この移植杆33により苗載台29に並置されているマット苗から一株分の苗を掻取って、この掻取った苗を連続的に圃場に移植することができるようになっている。即ち、植付ケース32には、自らの回転に伴って一対の移植杆33を所定の軌跡に沿って回転運動させることができる図示しない遊星ギヤ機構を内装している。
【0015】
また、植付伝動ケース31の下方には、センターフロート34及びサイドフロート35,35が機体の左右方向に所定の間隔を存して配設してあり、乗用型田植機11は、これらのフロート34,35,35の下面が圃場面Gに接地する状態まで植付作業機15を下降させた後、機体を走行させながら上述の如く移植作業を行うことができるようになっている。
【0016】
そして、上述した後輪17とフロート34,35、35の間には、複数(4個)の整地ロータ36を植付作業機15の略全幅に亘ってロータ軸37に軸支した整地装置38を配設している。即ち当該整地ロータ36を圃場面Gに接地させた状態で回転駆動することによって、移植杆33による苗植え付け位置前方の荒れた圃場面Gを整地する整地作業が行なえるようになっている。
【0017】
次に、整地装置38を構成する複数の整地ロータ36の支持構造について説明する。図1及び図3に示すように、ドライブケース27に立設した左右一対の苗載台支持ステー28の上部には、操作軸39を回動可能に軸支するボス40を固設すると共に、当該操作軸39の一側端部に固設した図示しないブラケットを介して、整地ロータ36が圃場面Gに接地する作用位置と、整地ロータ36が圃場面Gから離間した収納位置に変更することができる昇降操作レバー41を取り付けている。
【0018】
そして、操作軸39の両端には、回動アーム42が取り付けてあり、この回動アーム42の先端に吊アーム43を連結すると共に、該吊アーム43の下端を苗載台支持ステー28の基端部から前方に延出した回動アーム44の中間部に連結することによって、当該縦アーム43と苗載台支持ステー28が略平行となるリンクL1を構成している。
【0019】
更に、回動アーム44の上方には、吊アーム43に基端部を連結した支持アーム45を備え、両アーム44,45によって平行リンクL2を構成すると共に、両アーム44,45の先端には、整地ロータ36のロータ軸37を軸支するボス46aを固設したサポートアーム46を連結している。
【0020】
一方、整地ロータ36の昇降操作レバー41が設けられている側の苗載台支持ステー28には、昇降操作レバー41用のレバーガイド47が固設してあり、このレバーガイド47に備える複数段の係止溝47aのうち、当該昇降操作レバー41を係止溝47aの所望の位置に係止することによって、整地ロータ36が圃場面Gから離間する収納位置と、図1に示すように整地ロータ36が圃場面Gに接地する複数段の作用位置とに多段調節することができるようになっている。
【0021】
更に詳しくは、昇降操作レバー41を上下方向に回動操作することによって操作軸39が回動し、それに連動する吊アーム43に連結した回動アーム44と支持アーム45(平行リンクL2)を介して、整地ロータ36が昇降操作されるようになっており、次いで当該昇降操作レバー41を左右方向に操作して上述の係止溝47aに係止することによって、整地ロータ36の位置決めがなされ、例えば図1に示すような整地ロータ34の作用位置においては、整地ロータ36はフロート34,35,35の下面からの突出量が10〜40mmの範囲で調節が可能であり、植付作業におけるマット苗の植付深さより浅い表層部分の整地を行うことができるようになっている。
【0022】
尚、昇降操作レバー41の操作荷重を軽減すべく操作軸39の両端を軸支する支持ボス40とリンクL2の間には補助スプリング(引張スプリング)S1を張設している。また、整地ロータ36は、側面視で略六角形に形成してあって、その周面には、整地ロータ36の回転により荒れた圃場面Gを掻き均して均平にする6枚の板状整地部材36aを配置している。即ち、板状整地部材36aと、該板状整地部材36aを側面視で六角形の稜角に配置せしめる連結部材36bとを、ポリアミド(ナイロン)等の熱可塑性樹脂による射出成形により一体的に形成すると共に、当該整地ロータ36を全体としては篭型構造に形成している。
【0023】
次に、整地装置38の伝動系について説明する。機体フレーム12の後部下方に配設されているリヤアクスルケース51の前部には、図示しない油圧式無段変速装置とトランスミッションケース内の動力伝達装置を介して伝達されるエンジン18の動力を、後輪17の駆動力と整地ロータ36の駆動力に分配する伝動機構と、整地ロータ36への駆動力の伝動を断接するクラッチ機構とを備えた分配ケース52を設けている。そして、この分配ケース52内の伝動機構により分岐された一方の動力を、伝動軸53を介して整地ロータ36を回転駆動させる駆動ケース54内の伝動機構に伝達している。尚、伝動軸53の回転による駆動ケース54の連れ回りを規制すべく、該駆動ケース54を昇降リンク機構14を構成する一側のロアリンク14bにロッド55を介して吊持している。
【0024】
また、運転席21の左側には、上述した整地ロータ36への駆動力の伝達を断接するクラッチ機構を入/切操作するクラッチレバー56が設けてあり、このクラッチレバー56によって前記クラッチ機構を入り操作することにより、整地ロータ36を車速に対して1.5〜2.5倍程度の周速で回転させる一方、前記クラッチ機構を切り操作することにより、整地ロータ36への駆動力の伝達を断つことができるように構成している。
【0025】
以上説明した構成の整地装置38を備える乗用型田植機11で植付作業を行うにあたり、整地ロータ36を圃場面Gに接地させて回転駆動することによって、枕地等の荒れた圃場面Gの整地を行いながら苗を植え付ける場合は、先ず昇降操作レバー41を回動操作して整地ロータ36がフロート34,35,35の下面よりも下方で圃場面Gに接地する作用位置となるように調節し、次いでクラッチレバー56によって整地装置38のクラッチ機構を入り操作して、当該整地ロータ36へ駆動力が伝達される状態とする。
【0026】
そして、フロート34,35,35の下面が圃場面Gに接地する状態まで植付作業機15を下降させ、次いで植付クラッチを入り操作して乗用型田植機11の走行を開始することにより、当該乗用型田植機11の走行に伴って整地ロータ36が回転し、荒れた圃場面Gを掻き均して均平に整地した後に、苗載台28上に並置されているマット苗から一株分の苗を移植杆32により掻取って連続的に圃場に移植する、整地作業と植付作業とを同時に行うことができるようになっている。尚、上述の如く整地ロータ36を圃場面Gに接地する作用位置で回転駆動させると、整地ロータ36によって撥ね上げられる泥水(泥土)Dが後方の苗載台29に付着することから、整地ロータ36の上方には、当該整地ロータ36の上方及び後側を覆うロータカバー57,57を設けている。
【0027】
ところが、整地作業と植付作業を同時に行う場合は、回転駆動する整地ロータ36の前側に泥水Dが溜まり、この整地ロータ36の前側に溜まった泥水Dが左右に押し流されると共に、整地ロータ36によって撥ね上げられた泥水Dが当該整地ロータ36に沿って左右に流れ、更に隣接する既植苗側にこれらの泥水Dが流入すると既植苗が流されたり、既植苗の倒れや損傷が発生するといった不具合を有していた。特に高速で整地作業と植付作業を同時に行う場合は、上述した不具合が顕在化する虞があった。
【0028】
そこで、上記課題を解決すべく本発明においては、整地装置38の前方に、既植苗側への泥水Dの流入を抑制する泥水案内手段58を設けており、以下この泥水案内手段58の構成について詳細に説明する。
【0029】
図4及び図5に示すように、整地ロータ36を回転駆動させる伝動機構を備えた駆動ケース54の下部には、ロッド55の下端部を連結するアーム59aを固着したスペーサ59を介して均し板61を螺設している。この均し板61は、駆動ケース54の図示しない入力軸と伝動軸53のジョイント(自在継手)部分を覆うと共に、当該駆動ケース54の後部をソリ状に湾曲させて覆っている。
【0030】
そして、乗用型田植機11の左右中間位置に相当するスペーサ59の前端部Fには、ボス59bが立設してあって、このボス59bに下方から嵌挿する回動ピン62の下端に平面視で略三角形の支持部材63の頂角部を固設すると共に、該支持部材63の両低角側、即ち支持部材63の先端部に側面視で後下がり傾斜となる泥水案内プレート64を一体的に固設している。一方、回動ピン62の上端には、図示しない二面取り部を形成してあり、この二面取り部に中間部を嵌装すると共に泥水案内プレート64に対して平行となる上部アーム65を螺設している。
【0031】
また、泥水案内プレート64は、整地ロータ36の前方に位置し、且つ回動ピン62を中心として左右の後輪17と干渉しない位置、即ち駆動ケース54の左右両側に位置する整地ロータ36の略中間部まで左右に振り分け状態で延出させてある。そして、上述した構成により泥水案内プレート64は、回動ピン62を中心として自在に回動するようになっており、本発明においては、当該泥水案内プレート64を、次植付行程への指標を圃場面に形成する左右のサイドマーカ66L,66Rに連動して作用(回動)可能に構成することによって、上述した従来の不具合を解消する泥水案内手段58を一体的に形成している。
【0032】
左右のサイドマーカ66L,66Rは、図6に示すように、ドライブケース27の左右両端から延出される左右のブラケット67L,67Rに起伏自在に配置してあり、更に詳しくは、両サイドマーカ66L,66Rは、バネ用鋼線をL字状に形成すると共に先端部に樹脂製のマーカ体68を備え、このマーカ体68を圃場面Gに没入させて走行することにより、次植付行程への指標を圃場面Gに形成することができる作業姿勢Aと、当該マーカ体68を圃場面Gから持ち上げた格納姿勢Bとに切換えることができるようになっている。
【0033】
また、左右のブラケット67L,67Rには、使用しない左右のサイドマーカ66L,66Rを係止する格納用フック69を備えており、この格納用フック69によって両サイドマーカ66L,66Rを使用しない時の不要な作動を防止できるようにしている。尚、左右のサイドマーカ66L,66Rの基端部には、両サイドマーカ66L,66Rを倒伏動作可能に支持するマーカ支持アーム70L,70Rを備え、このマーカ支持アーム70L,70Rと左右のブラケット67L,67R間に張設した引張スプリングS2によって、両サイドマーカ66L,66Rを常時倒伏方向に付勢している。
【0034】
そして、上述した左右のサイドマーカ66L,66Rの個別の起伏動作は、運転席21の右側に設けられて植付作業機15の昇降操作レバーを兼ねるマーカ操作レバー71、このマーカ操作レバー71に連係する運転席21の下方に設けられたマーカ操作アーム72、該マーカ操作アーム72の揺動動作に連係する左右の操作ワイヤ73L,73R等からなる従来公知のマーカ操作機構を介して行われるようになっている。
【0035】
マーカ操作レバー71は、上下方向に揺動自在に支持されると共に下方に揺動させたマーカ操作位置においては、左右方向にも揺動操作することができるようになっている。そして、マーカ操作レバー71の基端部には、図示しない係合ピンが固着されていて、この係合ピンは、当該マーカ操作レバー71の左右揺動操作に伴って略前後に移動する。
【0036】
また、マーカ操作アーム72は、その略中間部を回動支点として前後方向に揺動自在に支持されると共に、当該マーカ操作アーム72の右端部には、マーカ操作レバー71の係合ピンが係脱する図示しない略Uの字状の係合溝を設けている。更にマーカ操作アーム72の回動支点に対して左右振り分け状に連結した図示しないロッドや、このロッドに連動するマーカストッパ、及びマーカ駆動アームを介して左右の操作ワイヤ73L,73Rを連結している。そして、左右の操作ワイヤ73L,73Rは、左右のサイドマーカ66L,66Rを倒伏動作可能に支持するマーカ支持アーム70L,70Rに連結してある。
【0037】
上述した構成により、左右のサイドマーカ66L,66Rを操作する際は、先ず、マーカ操作レバー71をマーカ操作位置まで下方に揺動させ、しかる後に当該マーカ操作レバー71を左右に揺動させると、係合ピンを介してマーカ操作アーム72が前後方向に揺動され、次いで左右の操作ワイヤ73L,73Rを介して両サイドマーカ66L,66Rをそれぞれ個別に起立させたり、倒伏させることができるようになっている。
【0038】
尚、左右のサイドマーカ66L,66Rの起伏状態とマーカ操作位置におけるマーカ操作レバー71の左右揺動位置の関係は、該マーカ操作レバー71を中央に位置させた時には、両サイドマーカ66L,66Rとも起立状態をとり、左側に揺動させた時は、左側のサイドマーカ66Lのみが倒伏し、当該マーカ操作レバー71を切り換えて右側に揺動させた時は、右側のサイドマーカ66Rのみが倒伏するようになっている。
【0039】
そして、図4〜図6に示すように、左右の操作ワイヤ73L,73Rが連結されているマーカ支持アーム70L,70Rと、泥水案内手段58を構成する上部アーム65とを連係させる連動ワイヤ74L,74Rを設けている。この連動ワイヤ74L,74Rの上部アーム65側の策端金具75は、側面視でコの字状の断面形状を有すると共に上下に貫通する長孔75aを備え、この長孔75aを上部アーム65の左右両端に立設した係合ピン65aに嵌装した状態で連結すると共に、両ワイヤ74L,74Rのアウターケーシング76を駆動ケース54から立設した支持部材77に取り付けている。一方、連動ワイヤ74L,74Rのマーカ支持アーム70L,70R側の図示しない策端金具は、左右のサイドマーカ66L,66Rを起伏動作させる左右の操作ワイヤ73L,73Rと略並行となるように連結してある。
【0040】
また、スペーサ59の前端部Fに立設したボス59bの下部に外嵌する捩りスプリングS3が設けてあり、この捩りスプリングS3は、スペーサ59の最前端部に立設したピン59cによって回り止めがなされると共に、泥水案内プレート64の支持部材63に立設した係合ピン63aに当該捩りスプリングS3の自由端Sa,Sbを係止させることによって、後述する泥水案内プレート64の不要な揺動の規制と、該泥水案内プレート64が左右に強制傾斜された状態からの復帰付勢手段として作用する。
【0041】
以上説明した構成によれば、整地装置38を構成する整地ロータ36の前方に設けた泥水案内手段58である泥水案内プレート64を、次植付行程への指標を圃場面に形成する左右のサイドマーカ66L,66Rに連動して作用(回動)させることができるようになる。即ち、マーカ操作位置にあるマーカ操作レバー71を所望の操作方向、例えば右側に揺動させると、マーカ操作機構を介して右側のサイドマーカ66Rのみが倒伏するが、この時、マーカ支持アーム70Rと泥水案内手段58を構成する上部アーム65とを連係する連動ワイヤ74Rによって、当該上部アーム65は、図5に示すようにG矢印方向に引かれるので、泥水案内プレート64は、図7(a)に示す如く右下がり傾斜となって右側のサイドマーカ66Rが倒伏した方向(作用方向)に泥水が流入するように姿勢変更される。
【0042】
一方、マーカ操作位置にあるマーカ操作レバー71を左側に揺動させると、マーカ操作機構を介して左側のサイドマーカ66Lのみが倒伏するが、この時、マーカ支持アーム70Lと泥水案内手段58を構成する上部アーム65とを連係する連動ワイヤ74Lによって、当該上部アーム65は、図5に示すようにH矢印方向に引かれるので、泥水案内プレート64は、図7(b)に示す如く左下がり傾斜となって左側のサイドマーカ66Lが倒伏した方向(作用方向)に泥水が流入するように姿勢変更される。
【0043】
つまり、整地装置38の前方に、上述の如く既植苗側への泥水の流入を抑制する泥水案内手段58を設けたことによって、整地作業と植付作業を同時に行う場合に、整地装置38により押しやられる泥水が隣接する既植苗側に流入することを抑制することができるので、当該泥水により既植苗が流されたり、既植苗の倒れや損傷が発生するといった従来の不具合を解消できるようになる。
【0044】
そして、泥水案内手段58を、次植付行程への指標を圃場面に形成する左右のサイドマーカ66L,66Rに連動して作用させることによって、両サイドマーカ66L,66Rの作動側、即ち既植苗条列の反対側に泥水を流入させることができるので、従来の既植苗が流されたり、既植苗の倒れや損傷が発生するといった不具合を解消できるようになり、特に高速で整地作業と植付作業を同時に行う場合にも極めて有効である。また、泥水を流入させる方向の選択を、サイドマーカ操作に連動して一つの操作で行えるようになることから、誤操作による不具合も起こらない。
【0045】
更に、圃場の畦畔際や最終植付行程において、図7(c)に示す如く左右のサイドマーカ66L,66Rを起立させた状態で整地作業と植付作業を同時に行う場合は、泥水案内プレート64が整地装置38に対して平行に保持されるので、泥水を図示の如く左右均等に分流することも可能である。また、マーカ支持アーム70L,70Rを、捩りスプリングS3よりも強い付勢力により単独で倒伏側に付勢し、且つ左右のサイドマーカ66L,66Rを格納用フック69に係止させた状態においては、マーカ操作レバー71によって泥水案内プレート64のみを姿勢変更することが可能であり、それによって両サイドマーカ66L,66Rを使用しない植付行程においても任意の方向に泥水を案内することができるようになる。
【0046】
尚、植付作業機15の前方に圃場面Gを覆うように繰り出されるロール状の紙シートと、この繰り出された紙シートを圃場面に押接する複数の押えローラを備え、且つ圃場面G上に敷設された紙シート上から移植杆により複数条の植付作業を行う従来公知の紙マルチ式移植機においても、当該紙シートの前側に溜まった泥水が左右に押し流されて隣接する既植苗の倒れや損傷が発生するといった不具合を有しており、この紙マルチ式移植機に上述した泥水案内手段58を設けることによって、既植苗条列の反対側に泥水を流入させるように構成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】乗用型田植機の側面図。
【図2】乗用型田植機の平面図。
【図3】整地ロータの支持構造を示す背面図。
【図4】泥水案内手段の構成を示す側面図。
【図5】泥水案内手段の構成を示す平面図。
【図6】サイドマーカの構成を示す背面図。
【図7】(a)〜(c)泥水案内手段の作用形態を示すモデル平面図。
【符号の説明】
【0048】
15 植付作業機
31 植付装置
38 整地装置
58 泥水案内手段
66L サイドマーカ(左側)
66R サイドマーカ(右側)
G 圃場面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
植付作業機(15)を機体の後部に昇降自在に連結すると共に、該植付作業機(15)の前方に整地装置(38)を備えた移植機において、前記整地装置(38)の前方に、既植苗側への泥水の流入を抑制する泥水案内手段(58)を設けたことを特徴とする移植機。
【請求項2】
次植付行程への指標を圃場面(G)に形成するサイドマーカ(66L,66R)の作用方向に泥水が流入するように泥水案内手段(58)を姿勢変更することによって、既植苗側への泥水の流入を抑制するように構成したことを特徴とする請求項1に記載の移植機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−89475(P2007−89475A)
【公開日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−283160(P2005−283160)
【出願日】平成17年9月29日(2005.9.29)
【出願人】(000001878)三菱農機株式会社 (1,502)
【Fターム(参考)】