説明

移相回路

【課題】低損失化を図ることができるとともに、小形化を図ることができる移相回路を得る。
【解決手段】第1の入出力端子1aと、第2の入出力端子1bと、第1の入出力端子1aと第2の入出力端子1bの間に接続された第1のスイッチング素子2aと、第1の入出力端子1aに一端が接続された第1のキャパシタ3aと、第2の入出力端子1bに一端が接続された第2のキャパシタ3bと、第1及び第2のキャパシタ3a、3bの他端とグランド4の間に接続された第2のスイッチング素子2bとを設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、小形かつ低損失な特性を有する移相回路に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の移相回路においては、図11に示すように、2つの単極双投スイッチ(SPDT−SW)によって、信号経路を高域通過フィルタ回路(HPF)又は低域通過フィルタ回路(LPF)に切り換える(例えば、非特許文献1参照)。本回路は、これらの通過位相の違いによって所要の移相量を得るものである。
【0003】
【非特許文献1】中原和彦他4名著「ばらつきを考慮し特性変化を抑制したHPF/LPF切替え形移相器」、2000年電子情報通信学会エレクトロニクスソサイエティ大会、C−2−19、第46頁
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述したような従来の移相回路では、2つのスイッチによる挿入損失の増大に加え、2つのスイッチと2つのフィルタ回路が必要であることにより回路サイズが増大するという問題点があった。
【0005】
この発明は、上述のような課題を解決するためになされたもので、その目的は、低損失化を図ることができるとともに、小形化を図ることができる移相回路を得るものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係る移相回路は、第1の入出力端子と、第2の入出力端子と、前記第1の入出力端子と前記第2の入出力端子の間に接続された第1のスイッチング素子と、前記第1の入出力端子に一端が接続された第1のキャパシタと、前記第2の入出力端子に一端が接続された第2のキャパシタと、前記第1及び第2のキャパシタの他端とグランドの間に接続された第2のスイッチング素子とを設けたものである。
【発明の効果】
【0007】
この発明に係る移相回路は、低損失化を図ることができるとともに、小形化を図ることができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
実施の形態1.
この発明の実施の形態1に係る移相回路について図1から図3までを参照しながら説明する。図1は、この発明の実施の形態1に係る移相回路の構成を示す回路図である。なお、以降では、各図中、同一符号は同一又は相当部分を示す。
【0009】
図1において、この発明の実施の形態1に係る移相回路は、第1の入出力端子1aと、第2の入出力端子1bと、第1のスイッチング素子2aと、第2のスイッチング素子2bと、第1のキャパシタ3aと、第2のキャパシタ3bとが設けられている。また、グランド4が描かれている。
【0010】
なお、この発明の実施の形態1では、スイッチング素子として、電界効果トランジスタを用いた例を示している。なお、第1の入出力端子1aや、第2の入出力端子1bには第1のスイッチング素子2aである電界効果トランジスタのソース、ドレインのいずれが接続されてもよい。第2のスイッチング素子2bについても同様である。
【0011】
つぎに、この実施の形態1に係る移相回路の動作について図面を参照しながら説明する。
【0012】
スイッチング素子は、スイッチが閉じた状態においては高周波において等価的に抵抗とみなすことができ、スイッチが開いた状態においては等価的にキャパシタとみなすことができる。
【0013】
図2は、この発明の実施の形態1に係る移相回路の第1の状態を示す回路図である。この回路図は、スイッチング素子が全て閉じた状態を示している。図2において、20aは第1のスイッチング素子2aが等価的に持つ抵抗であり、20bは第2のスイッチング素子2bが等価的に持つ抵抗である。ここで、抵抗20a、20bの値が十分に小さい場合、入出力端子間にキャパシタがシャント接続された回路と見なすことができるため、本回路はLPFとして動作する。
【0014】
図3は、この発明の実施の形態1に係る移相回路の第2の状態を示す回路図である。この回路図は、スイッチング素子が全て開いた状態を示している。図3において、30aは第1のスイッチング素子2aが等価的に持つキャパシタであり、30bは第2のスイッチング素子2bが等価的に持つキャパシタである。この時、入出力端子間にキャパシタがシリーズ接続された回路と見なすことができるため、本回路はHPFとして動作する。
【0015】
以上のように、本発明の実施の形態1に係る移相回路は、スイッチング素子の開閉により、LPF又はHPFの動作を示すため、これらの通過位相の違いにより、所要の移相量を得ることができる。
【0016】
上記の通り、本発明の実施の形態1によれば、従来回路で必要であった2つの単極双投スイッチが不要になるので低損失化が可能であり、さらにスイッチとフィルタ回路を個別に配置する必要がないので小形化が可能になる。
【0017】
実施の形態2.
この発明の実施の形態2に係る移相回路について図4及び図5を参照しながら説明する。図4は、この発明の実施の形態2に係る移相回路の構成を示す回路図である。
【0018】
図4において、この発明の実施の形態2に係る移相回路は、図1の移相回路の構成に加えて、第1のスイッチング素子2aに接続された並列キャパシタ3cが設けられている。なお、並列キャパシタ3cが複数、並列接続してもよい。
【0019】
この場合、スイッチング素子が全て開いた第2の状態における入出力端子間にシリーズ接続されるキャパシタは、図3に示す、第1のスイッチング素子2aが等価的に持つキャパシタ30aと、並列キャパシタ3cとの合成容量になる。
【0020】
以上のように、本発明の実施の形態2に係る移相回路は、第2の状態における第1のスイッチング素子2aが等価的に持つ容量を小さくすることができるので、この第1のスイッチング素子2aの物理寸法を小さくすることができ、結果的に回路の小形化が可能になる。
【0021】
図5に示すように、さらに第2のスイッチング素子2bに並列キャパシタ3dを接続した場合でも、上記と同等の効果が得られる。なお、並列キャパシタ3dが複数、並列接続してもよい。
【0022】
実施の形態3.
この発明の実施の形態3に係る移相回路について図6及び図7を参照しながら説明する。図6は、この発明の実施の形態3に係る移相回路の構成を示す回路図である。
【0023】
図6において、この発明の実施の形態3に係る移相回路は、図4の移相回路の構成に加えて、第1のスイッチング素子2aに接続された並列抵抗5aが設けられている。なお、並列抵抗5aが複数、並列接続してもよい。
【0024】
この場合、スイッチング素子が全て開いた第2の状態における入出力端子間にシリーズ接続されたキャパシタは、並列抵抗5aによる損失を持つことになる。
【0025】
以上のように、本発明の実施の形態3に係る移相回路は、並列抵抗5aによって第2の状態における回路の損失を任意に決めることができるので、これを第1の状態における回路の損失と等しくすることで、第1の状態、第2の状態の両状態間の損失差を低減することが可能になる。
【0026】
図7に示すように、さらに第2のスイッチング素子2bに並列抵抗5bを接続した場合でも、上記と同等の効果が得られる。なお、並列抵抗5bが複数、並列接続してもよい。また、並列抵抗5bに並列キャパシタ3dを並列接続してもよい。
【0027】
実施の形態4.
この発明の実施の形態4に係る移相回路について図8を参照しながら説明する。図8は、この発明の実施の形態4に係る移相回路の構成を示す回路図である。
【0028】
図8において、この発明の実施の形態4に係る移相回路は、図4の移相回路の構成に加えて、並列キャパシタ3cに接続された直列抵抗6aが設けられている。なお、直列抵抗6aが複数、直列接続してもよい。
【0029】
この場合、スイッチング素子が全て開いた第2の状態における入出力端子間にシリーズ接続されたキャパシタは、直列抵抗6aによる損失を持つことになる。
【0030】
以上のように、本発明の実施の形態4に係る移相回路は、直列抵抗6aによって第2の状態における回路の損失を任意に決めることができるので、これを第1の状態における回路の損失と等しくすることで、第1の状態、第2の状態の両状態間の損失差を低減することが可能になる。なお、第2のスイッチング素子2bに並列接続された並列キャパシタ3dに接続された直列抵抗(単独、複数)も同様である。
【0031】
実施の形態5.
この発明の実施の形態5に係る移相回路について図9を参照しながら説明する。図9は、この発明の実施の形態5に係る移相回路の構成を示す回路図である。
【0032】
図9において、この発明の実施の形態5に係る移相回路は、第1の入出力端子1aと第2の入出力端子1b間に、単ビット移相回路7aと、単ビット移相回路7bとが設けられている。
【0033】
ここでは、本発明の実施の形態1に係る移相回路を、単ビット移相回路7a、7bとして用いた例を示している。
【0034】
実施の形態6.
この発明の実施の形態6に係る移相回路について図10を参照しながら説明する。図10は、この発明の実施の形態6に係る移相回路の構成を示す回路図である。
【0035】
図10において、この発明の実施の形態6に係る移相回路は、第1の入出力端子1aと第2の入出力端子1b間に、単ビット移相回路9aと、単ビット移相回路9bと、単ビット移相回路9cと、単ビット移相回路9dと、単ビット移相回路9eとが設けられている。すなわち、多ビット移相回路である。
【0036】
この例は、それぞれを、180度ビット移相回路、45度ビット移相回路、22.5度ビット移相回路、90度移相回路、及び11.25度移相回路とした場合の5ビット移相回路である。単ビット移相回路9c及び9eに、本発明の実施の形態1に係る移相回路を用いた場合を示している。
【0037】
本発明の実施の形態1から実施の形態6までは、スイッチング素子として、電界効果トランジスタを用いた場合について説明したが、バイポーラトランジスタ、PINダイオード、バラクタダイオード、MEMSスイッチを用いた場合でも同等の効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】この発明の実施の形態1に係る移相回路の構成を示す回路図である。
【図2】この発明の実施の形態1に係る移相回路の第1の状態を示す回路図である。
【図3】この発明の実施の形態1に係る移相回路の第2の状態を示す回路図である。
【図4】この発明の実施の形態2に係る移相回路の構成を示す回路図である。
【図5】この発明の実施の形態2に係る移相回路の別の構成を示す回路図である。
【図6】この発明の実施の形態3に係る移相回路の構成を示す回路図である。
【図7】この発明の実施の形態3に係る移相回路の別の構成を示す回路図である。
【図8】この発明の実施の形態4に係る移相回路の構成を示す回路図である。
【図9】この発明の実施の形態5に係る移相回路の構成を示す回路図である。
【図10】この発明の実施の形態6に係る移相回路の構成を示す回路図である。
【図11】従来の移相回路の構成を示す回路図である。
【符号の説明】
【0039】
1a 第1の入出力端子、1b 第2の入出力端子、2a 第1のスイッチング素子、2b 第2のスイッチング素子、3a 第1のキャパシタ、3b 第2のキャパシタ、3c 並列キャパシタ、3d 並列キャパシタ、4 グランド、5a 並列抵抗、5b 並列抵抗、6a 直列抵抗、7a 単ビット移相回路、7b 単ビット移相回路、9a 単ビット移相回路、9b 単ビット移相回路、9c 単ビット移相回路、9d 単ビット移相回路、9e 単ビット移相回路。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の入出力端子と、
第2の入出力端子と、
前記第1の入出力端子と前記第2の入出力端子の間に接続された第1のスイッチング素子と、
前記第1の入出力端子に一端が接続された第1のキャパシタと、
前記第2の入出力端子に一端が接続された第2のキャパシタと、
前記第1及び第2のキャパシタの他端とグランドの間に接続された第2のスイッチング素子と
を備えたことを特徴とする移相回路。
【請求項2】
前記第1のスイッチング素子と前記第2のスイッチング素子のうち少なくとも1つに、並列接続された少なくとも1つ以上の並列キャパシタをさらに備えた
ことを特徴とする請求項1記載の移相回路。
【請求項3】
前記第1のスイッチング素子と前記第2のスイッチング素子のうち少なくとも1つに、並列接続された少なくとも1つ以上の並列抵抗をさらに備えた
ことを特徴とする請求項1又は2記載の移相回路。
【請求項4】
前記並列キャパシタに直列接続された少なくとも1つ以上の直列抵抗をさらに備えた
ことを特徴とする請求項2又は3記載の移相回路。
【請求項5】
前記第1及び第2のスイッチング素子は、電界効果トランジスタである
ことを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれかに記載の移相回路。
【請求項6】
請求項1から請求項5までのいずれかに記載の移相回路を少なくとも1つ以上備えた
ことを特徴とする多ビット移相回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2010−16551(P2010−16551A)
【公開日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−173682(P2008−173682)
【出願日】平成20年7月2日(2008.7.2)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】