説明

移載システム

【課題】スタッカクレーン等の移載装置と棚などの間で、物品の移載を短時間でかつ省スペースに、さらに低衝撃で行うことができる移載システムの提供。
【解決手段】棚受け30に、物品載置面に対して同じ高さの上下2本のマーク31,32を設け、スライドフォーク16の少なくとも2箇所に設けたイメージセンサ36,37で検出し、スライドフォーク16の傾きを検出する。スライドフォーク16と物品の接触面が水平になるように、昇降台2をチルトさせる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、スタッカークレーンや天井走行車、有軌道台車、無人搬送車などの、移載装置と、棚などの物品台を組み合わせたシステムに関する。この発明は特に、移載装置の傾きを補正するようにしたシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
スライドフォークなどで物品を移載する際に、スライドフォークが自重や物品からの荷重でたわむことが知られている。そこで特許文献1はスライドフォークを搭載した昇降台を傾けて、スライドフォークのたわみを補正することを提案している。補正を正確に行うには、スライドフォークのたわみを正確に検出する必要がある。しかし歪みゲージなどのセンサでは、スライドフォークの出退や振動による加速度が誤差となり、たわみを正確に検出するのは難しい。
【特許文献1】実開平7−9811
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
この発明の課題は、高速で省スペースでかつ低衝撃に物品を移載できるようにすることにある。
請求項2の発明での追加の課題は、移載装置が出退を完了するのを待たずに、傾斜を検出できるようにすることにある。
請求項3の発明での追加の課題は、より正確に移載装置の傾斜を検出できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
この発明は、出退自在なアームを備えた移載装置と、該移載装置により物品を受け渡しされる物品台、とを備えた移載システムにおいて、
前記物品台の少なくとも2箇所に、物品載置面に対して同じ高さのマークを設け、
前記移載装置のアームに、前記少なくとも2箇所のマークの高さの差を検出するための検出手段を設け、
該検出手段で求めた高さ位置の差を解消するように、移載装置をアームの出退方向に沿ってチルト(傾斜)させるためのチルト手段を設けたことを特徴とする。
【0005】
好ましくは、前記マークが物品載置面に平行な連続線からなる。
また好ましくは、前記検出手段がアームの出退方向に沿って間隔を開けて配置した少なくとも一対の光学センサからなる。
【発明の効果】
【0006】
この発明では、アームを物品台側へ前進させて、少なくとも2箇所のマークの高さの差を検出する。アームが物品載置面に平行で有れば検出側から見たマークの高さに差はなく、平行でなければマークに高さの差が生じる。そこでこの差を解消するように移載装置をチルトさせると、アームを物品載置面に平行に移載できる。アームを物品載置面に平行にすると、物品台とアームとの間で物品を受け渡しする際の衝撃が小さくなる。またアームを微速で昇降させるストロークを短くできるので、移載時間を短縮でき、物品台側のスペースを節減できる。これらによって、低衝撃、高速、かつ省スペースに移載できる。
【0007】
マークが物品載置面に平行な連続線からなるようにすると、アームの出退の広い範囲でマークを検出できる。またマークを少なくとも1箇所で検出するとその高さを記憶し、以降はマークの高さ変化を検出して、アームの傾斜を検出できる。従ってアームが定位置まで進出しなくても、傾斜を検出できる。
マークの高さの差による傾斜の検出では、マークを検出する位置の間隔が広い程、検出精度が向上する。そこでアームの出退方向に沿って間隔を開けて検出手段を配置すると、さらに正確にアームの傾斜を検出できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下に本発明を実施するための最適実施例を示す。
【実施例】
【0009】
図1〜図8に、スタッカークレーンを例に実施例の移載システムを示す。各図において、2は昇降台で、例えば一対のマスト4,4に沿って昇降し、その下部にはスタッカークレーンの図示しない台車があり、図示しない走行レール上を走行する。また台車には走行モータと、昇降台2の昇降モータとが設けられている。昇降台2は例えば左右のガイドユニット6,6とリニアモーションガイド(LMガイド)7とにより、マスト4に沿って昇降し、8は昇降台2の上部フレームで、ガイドユニット6に対し、ピン10,12により、ピン10を揺動中心としてチルト(傾斜)自在に取り付けられている。
【0010】
図2にチルト機構14を示すと、ピン12はガイドユニット6に取り付けられており、上部フレーム8やチルト機構14に設けた長孔18を貫通し、ナット20とリニアモーションガイド24とに固定され、ナット20はチルトモータ22によりボールネジ21に沿って左右動する。なお26は、リニアモーションガイド24をガイドするためのガイドユニットである。チルトモータ22を動作させると、上部フレーム8とチルト機構14はピン12に対して左右動し、ピン10に対して上部フレーム8は左右動できないので、昇降台2がピン10を支点として左右動する。この結果、昇降台2は、スライドフォーク16の出退方向に沿って傾斜する。
【0011】
図3,図4の30は棚受けで、スタッカークレーンが走行する自動倉庫の棚に沿って設けられ、棚受け30の支柱等は図示を省略する。棚受け30の長手方向に平行に、言い換えると棚受け30の物品載置面に平行に、上下に2本の線状のマーク31,32が設けてある。マーク31,32は例えばカラーテープなどの光学的マークである。スライドフォーク16はそのベースユニットが昇降台2に固定され、ミドルユニット34とトップユニット35とを備え、先端のトップユニット35の左右両端付近にイメージセンサ36,37を備えている。イメージセンサ36,37は例えば視野方向が上下方向1次元の光学センサであるが、面状の視野を持ったCCDカメラなどでも良い。
【0012】
図4に、棚受け30に対するトップユニットの傾き検出を示すと、40,41は図3のイメージセンサ36,37の視野を表し、例えば上下2本のマーク31,32を認識できる場合、その平均高さに対する視野中心との距離d1,d2を求める。なおマーク31,32の一方のみを検出できる場合、検出したマークと視野中心との高さ距離を求めても良い。トップユニットが水平な場合、視野中心とマーク31,32との高さの差d1,d2は共通である。d1,d2の間の差はトップユニットの傾斜を示し、図2のチルト機構14により昇降台2を傾斜させて、スライドフォークのトップユニットの傾きを0に補正する。
【0013】
図5に、昇降台制御部50とその周辺とを示す。51は昇降モータで、昇降台を昇降させ、52はスライドフォーク駆動モータで、スライドフォークを駆動させる。22は前記のチルトモータである。イメージセンサ36,37の検出信号は傾き検出部54に入力され、図4のd1,d2の差から、スライドフォークのトップユニットの傾きを検出する。また距離d1,d2から、棚受けとの間で物品の受け渡しを行うまでの残昇降距離を求めることができる。イメージセンサ36,37を用いた傾き検出では、少なくとも一方のイメージセンサがマーク31,32を検出できるようになるまで傾きを検出できない。そこでトップユニットが昇降台上から出退を開始し、あるいは昇降台上へ復帰する際の、傾き補正パターンを補正パターン記憶部56に記憶する。補正パターン記憶部56のデータは、スライドフォークの出退位置と、実荷または空荷の区別による昇降台の目標チルト角である。イメージセンサがマーク31,32を検出しない領域では、補正パターン記憶部56のデータで昇降台をチルトさせる。
【0014】
図6に、実施例での移載アルゴリズムを示す。イメージセンサ36,37は棚受け30内へ前進するまでは、スライドフォークの傾斜を検出できない。空荷の場合と実荷の場合とで、スライドフォーク16の出退量に対する傾斜を予め測定しておき、補正パターンを記憶する。スライドフォーク16の前進開始時には、補正パターン記憶部56のデータに従い昇降台2を傾斜させ、スライドフォークのトップユニット上面を水平に保ちながら前進させる。一対のイメージセンサ36,37のうち少なくとも一方のセンサが、マーク31もしくは32を検出すると、マークの高さを記憶する。トップユニットの上面が水平な場合、スライドフォークを前進させてもこの高さは変化しないはずである。そこで記憶値からの高さの変化を解消するように昇降台をチルトさせて、スライドフォーク上面を水平に保つ。左右のイメージセンサ36,37が共にマーク31,32を検出すると、トップユニット上面の傾斜を正確に測定でき、傾斜を解消するように昇降台をチルトさせる。
【0015】
スライドフォークの前進が終了すると、イメージセンサ36,37によりスライドフォークの傾斜を検出し、チルトモータにより昇降台2をチルトさせて傾きを補正しながら、昇降台を低速昇降から微速昇降へ切り換え、この間に棚受け30との間で物品を受け渡しし、次いで再度昇降台を低速昇降させ、移載を完了する。この間に、スライドフォークに加わる荷重が物品の重量分だけ変化するため、スライドフォークの傾きも変化し、これを補正するように昇降台をチルトさせる。物品の受け渡しが完了すると、スライドフォークの傾きを補正しながら後退させる。
【0016】
図7に、実施例と従来例での昇降台の速度パターンを示し、ここでは昇降台を上昇させるものとするが、下降させる場合も同様である。昇降台が微速上昇している間に物品の受け渡しが行われる。従来例ではスライドフォークがたわんでいること等により、スライドフォークの高さを正確には定義できない。そこでたわみ等によるスライドフォーク先端の高さの曖昧さを見込んで、微速上昇区間を大きくする必要がある。これによって移載時間が延び、かつ移載時のスライドフォークの昇降ストロークが増して、棚側での物品の収容効率が低下する。実施例ではスライドフォーク先端は水平に保たれ、物品の底面とスライドフォークの上面とが最初から面接触するので衝撃が小さく、受け渡し後のスライドフォークの振動を小さくできる。
【0017】
図8は、スライドフォーク16を上昇させて、物品17を載置するまでの過程を模式的に示す。実施例では昇降台2をチルトさせるが、ここでは昇降台2に対して独立に高さを調整できる2本の支持部を用い、スライドフォーク16全体を傾斜させているかのように示す。昇降台側でたわみ補正を行い、スライドフォークを水平に保って物品17と接触させるので、スライドフォークは物品と面接触する。またスライドフォークから棚受けに荷下ろしする場合、物品は最初から棚受けと面接触する。このため物品の受け渡しに伴う衝撃を小さくできる。物品を受け渡しするとスライドフォークに加わる荷重が変化し、たわみが生じるが、このたわみを解消するように昇降台をチルトさせるので、たわみによる振動を小さくできる。これらによって小さな衝撃で物品の受け渡しを行え、微速昇降時間を短縮して短時間で物品を移載でき、かつスライドフォークのトップユニットを水平に保ったまま出退させるので、棚側の収容効率が向上する。
【0018】
実施例では移載装置としてスタッカークレーンを示したが、天井走行車や有軌道台車あるいは無人搬送車などの場合も同様である。また昇降台とスライドフォークなどを組み合わせた地上固定の移載システムの場合も、同様にスライドフォークなどの移載装置のチルト機構を設けて実施例を適用できる。実施例では移載装置としてスライドフォークを用いたが、スカラアームなどでも良い。さらに左右一対のイメージセンサに代えて、水平方向視野の広い1台のCCDカメラでも良いが、傾斜の検出精度が低下する。

【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】実施例のスタッカークレーンの昇降台を示す図
【図2】実施例の昇降台のチルト機構を示す図
【図3】実施例で棚受けに設けた上下のマークと、スライドフォークのトップユニットに設けたイメージセンサとを示す図
【図4】実施例でのスライドフォークの傾き検出方法を示す図
【図5】実施例での昇降台制御部と周辺の昇降モータ、スライドフォーク駆動モータ、チルトモータ、並びに傾き検出部と傾き補正パターンの記憶部とを示すブロック図
【図6】実施例の移載方法を示すフローチャート
【図7】実施例(上段)と従来例(下段)との、昇降台の速度パターンを示す図
【図8】実施例での、スライドフォークと物品との接触から、棚受けからの物品のリフトアップまでを模式的に示す図
【符号の説明】
【0020】
2 昇降台
4 マスト
6 ガイドユニット
7 リニアモーションガイド(LMガイド)
8 上部フレーム
10,12 ピン
14 チルト機構
16 スライドフォーク
17 物品
18 長孔
20 ナット
21 ボールネジ
22 チルトモータ
24 リニアモーションガイド
26 ガイドユニット
30 棚受け
31,32 マーク
34 ミドルユニット
35 トップユニット
36,37 イメージセンサ
40,41 視野
50 昇降台制御部
51 昇降モータ
52 スライドフォーク駆動モータ
54 傾き検出部
56 補正パターン記憶部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
出退自在なアームを備えた移載装置と、該移載装置により物品を受け渡しされる物品台、とを備えた移載システムにおいて、
前記物品台の少なくとも2箇所に、物品載置面に対して同じ高さのマークを設け、
前記移載装置のアームに、前記少なくとも2箇所のマークの高さの差を検出するための検出手段を設け、
該検出手段で求めた高さ位置の差を解消するように、移載装置をアームの出退方向に沿ってチルトさせるためのチルト手段を設けたことを特徴とする、移載システム。
【請求項2】
前記マークが、物品載置面に平行な連続線からなることを特徴とする、請求項1の移載システム。
【請求項3】
前記検出手段がアームの出退方向に沿って間隔を開けて配置した少なくとも一対の光学センサからなることを特徴とする、請求項1の移載システム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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