説明

移載装置

【課題】 被移載物を、姿勢変化を伴って載置対象物に移載する場合であっても、被移載物が不用意に落下してしまうことを確実に防止することができる移載装置を提供する。
【解決手段】 移載装置1は、移載ハンド11が起立姿勢のときに、台座3が載置される床面Fに近接・離反する方向に変位自在となるように設けられ、かつ液晶表示装置2を台座3に移載する過程で床面Fに接触するように設けられる変位部材を備え、床面Fとの接触による変位部材の移載ハンド11に対する相対的な変位に基づいて、液晶表示装置2が着座状態であるか否かを検出する着座センサ15を含み、移載ハンド11は、着座センサ15により着座状態であると検出されているときにのみ、スイッチSW1,SW2の操作によって解放動作するように構成され、着座センサ15は、移載ハンド11が起立姿勢のときに、変位部材を、床面Fに近接する方向に付勢する圧縮コイルばね94を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被移載物を吊り下げて載置対象物に移載する移載装置に関し、特に、被移載物の落下を防止する機構を備えた移載装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、液晶テレビの組み立て工程では、液晶表示装置(被移載物)を台座(載置対象物)に載置する際、移載ハンドでクランプ(把持)した液晶表示装置を台座の上方から降下させ、液晶表示装置と台座とが一体となった状態、すなわち液晶表示装置が台座に着座した状態で、作業者が手元にあるスイッチを操作することにより、液晶表示装置を移載ハンドから解放している。
【0003】
しかしながら、液晶表示装置の下降が不十分な状態で、作業者が誤ってスイッチを操作してしまうことにより、液晶表示装置と台座とが一体となる前に液晶表示装置が移載ハンドから解放され、結果的に、液晶表示装置が台座から外れて倒れてしまうという問題が起こっている。
【0004】
このような問題を解決するための従来技術は、たとえば特許文献1に提案されている。特許文献1には、治具パレット上に載置されるシリンダヘッド(被移載物)を、搬送ラインのトレー(載置対象物)上に移載するための、吊り下げ式に構成された移載機が開示されている。
【0005】
特許文献1の移載機における移載機本体には、シリンダヘッドの側面に形成される横孔に対して挿脱可能な先端部を有するフック部材と、該横孔に対して前記先端部が挿脱動作するようにフック部材を作動させるためのスイッチと、シリンダヘッドが床面に当接している状態(着座状態)にあるか否かを検知可能に構成された着座確認部とが設けられ、シリンダヘッドが着座状態にあることが着座確認部によって検知されていない状態では、作業者がスイッチを操作しても、フック部材が作動しないように構成されている。
【0006】
これにより、シリンダヘッドが着座する前に、作業者が誤ってスイッチを操作したとしても、フック部材が作動せず、シリンダヘッドが移載機本体から解放されることがないので、シリンダヘッドが不用意に落下してしまうことを防止することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平9−124267号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1における前記着座確認部は、鉛直方向に沿って摺動自在に基板に保持される摺動バーと、摺動バーが基板に対し鉛直上方へ所定の距離だけ変位したときに、摺動バーの上端部に設けられる検知部が検出されるように、前記基板上に設けられた近接センサとを備え、移載機本体の降下に伴って、床面に当接した摺動バーの下端部が該床面に押圧され、これにより近接センサによって検知部が検出されたときに、シリンダヘッドが着座状態であることが検出されるように構成されている。
【0009】
このような構成の着座確認部は、治具パレット上に載置されるシリンダヘッドを、シリンダヘッドの姿勢を変更せずにそのまま、搬送ラインのトレー上に移載する移載機に対しては、好適に用いることができる。
【0010】
一方、液晶テレビの組み立て工程では、平置き姿勢の液晶表示装置をクランプし、移送する過程で液晶表示装置の左右を軸として90度起こして着座姿勢にしてから、液晶表示装置を降下させて台座に載置する必要がある。この場合、液晶表示装置を移載するための移載装置に、前記構成の着座確認部を設けることで、液晶表示装置が十分に降下していること(液晶表示装置が台座に着座している状態であること)を検出することは可能である。
【0011】
しかしながら、移載装置が平置き姿勢の液晶表示装置をクランプしている状態では、移載装置に設けられる着座確認部も、着座状態を検知するための姿勢(すなわち、摺動バーが鉛直方向に延びて保持されている状態)から上下に90度回転した姿勢、すなわち摺動バーが水平に延びて保持されている状態になってしまう。
【0012】
したがって、前記構成の着座確認部を移載装置に搭載すると、移載装置が平置き姿勢の液晶表示装置をクランプしている状態のとき、摺動バーが振動などによって容易に摺動してしまうため、移載途中にも拘らず、液晶表示装置が着座状態であると誤検出してしまうおそれがある。
【0013】
本発明の目的は、被移載物を、姿勢変化を伴って載置対象物に移載する場合であっても、被移載物が不用意に落下してしまうことを確実に防止することができる移載装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、被移載物を、載置面に載置されている対象物に移載して着座させるための移載装置であって、
水平な軸線まわりに回動自在に支持され、被移載物の把持および解放が可能な移載ハンドと、
前記移載ハンドに解放動作させるための操作を入力するためのスイッチと、
前記移載ハンドの姿勢を、被移載物を把持するときの把持姿勢から被移載物を対象物に載置するときの起立姿勢に移行させるために、前記移載ハンドを前記軸線まわりに回動させるアクチュエータと、
前記移載ハンドに設けられる着座センサであって、
前記移載ハンドが起立姿勢のときに、前記載置面に近接・離反する方向に変位自在となるように設けられ、かつ被移載物を対象物に移載する過程で前記載置面に接触するように設けられる変位部材を備え、
前記載置面との接触による前記変位部材の前記移載ハンドに対する相対的な変位に基づいて、被移載物が対象物に着座している着座状態であるか否かを検出する着座センサとを含み、
前記移載ハンドは、前記着座センサにより着座状態であると検出されているときにのみ、前記スイッチの操作によって解放動作するように構成され、
前記着座センサは、前記移載ハンドが起立姿勢のときに、前記変位部材を、前記載置面に近接する方向に付勢する付勢手段をさらに備えることを特徴とする移載装置である。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、液晶ハンドの姿勢が、被移載物を把持するときの把持姿勢で支持されている状態であっても、載置面を検出するための変位部材が付勢手段によって付勢されているので、移載装置に生じた振動などによって変位部材が不所望に変位してしまうことが防止され、移載途中にも拘らず被移載物が不用意に落下してしまうことを確実に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施形態に係る移載装置1を正面側から見た斜視図であり、移載ハンド11を把持姿勢で保持している状態を示している。
【図2】移載装置1を正面側から見た斜視図であり、移載ハンド11を起立姿勢で保持している状態を示している。
【図3】移載装置1の右側面図であり、移載ハンド11を把持姿勢で保持している状態を示している。
【図4】移載装置1の右側面図であり、移載ハンド11を起立姿勢で保持している状態を示している。
【図5】ハンドル14の構成を示す図である。
【図6】着座センサ15の構成を概略的に示す図であり、移載ハンド11が起立姿勢にされているときの着座センサ15を示している。図6(a)は、床面Fが検出される前の状態を示し、図6(b)は、床面Fが検出された状態を示している。
【図7】液晶表示装置2を台座3に移載するときの動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1は、本発明の実施形態に係る移載装置1を正面側から見た斜視図であり、後述する移載ハンド11を把持姿勢で保持している状態を示している。図2は、移載装置1を正面側から見た斜視図であり、移載ハンド11を起立姿勢で保持している状態を示している。図3は、移載装置1の右側面図であり、移載ハンド11を把持姿勢で保持している状態を示している。図4は、移載装置1の右側面図であり、移載ハンド11を起立姿勢で保持している状態を示している。
【0018】
なお、図3および図4では、液晶表示装置2をクランプした状態を示すとともに、後述する台座押さえ26およびエアシリンダ27については省略して示している。
【0019】
本実施形態に係る移載装置1は、液晶表示装置(被移載物)2をクランプ可能に構成された移載ハンド11と、移載ハンド11の姿勢を、液晶表示装置2をクランプするときの把持姿勢(図1および図3に示す姿勢)から、液晶表示装置2を台座(載置対象物)3に載置するときの起立姿勢(図2および図4に示す姿勢)に移行させるために、移載ハンド11を水平に延びる軸線J1まわりに回動させるためのアクチュエータとを備えて構成され、図示しない吊り下げ装置によって、予め定める範囲内での水平移動、および昇降移動(鉛直方向に沿う移動)自在に、吊り下げられて設けられている。
【0020】
本実施形態に係る移載装置1は、前記構成により、コンベアのパレット上に平置き姿勢で載置されている液晶表示装置2をクランプして吊り下げ、近接配置されている別のコンベアのパレット上に載置されている台座3の上方まで移送するとともに、移送の過程において液晶表示装置2を平置き姿勢から着座姿勢にし、着座姿勢の液晶表示装置2を台座3の上方から降下させて、液晶表示装置2と台座3とを一体にするという一連の動作を実行することができる。
【0021】
ここで、液晶表示装置2に関して、「平置き姿勢」とは、表示面が水平面に平行または略平行なときの姿勢である。また、「着座姿勢」とは、台座3と一体となった状態(台座3に着座した状態)における姿勢であり、台座3の種類に応じて異なるものである。
【0022】
たとえば、図4に示すように、水平な載置面(以下、「床面」と称する)Fに載置したときに、液晶表示装置2の下部に設けられる連結孔に挿通される支軸3aが鉛直に延びるような台座3の場合には、表示面が鉛直方向に平行なときの姿勢が、着座姿勢に相当する。
【0023】
また、イーゼルのような立て掛け式のスタンドにより構成される台座である場合には、立て掛け角度に一致するように、表示面が鉛直方向に対して傾斜しているときの姿勢が、着座姿勢に相当する。
【0024】
以下、本実施形態に係る移載装置1の構成について詳細に説明する。
【0025】
移載装置1は、移載ハンド11と、移載ハンド11を支持する支持フレーム12と、前述のアクチュエータとして用いられるエアシリンダ13と、ハンドル14と、着座センサ15とを備えている。
【0026】
移載ハンド11は、フレーム部材21と、一対の固定側爪部22と、エアシリンダ23と、可動側爪部24と、起立戻し用ハンドル25とを含んで構成されている。
【0027】
フレーム部材21は、互いに平行に延びる一対の脚部31と、各脚部31の一端部31aに連なり、各脚部31の延在方向に直交して延びる支持バー32と、支持バー32における一方の端部から、脚部31が設けられる側とは反対側に突出する突出部35とを有している。
【0028】
以下、移載ハンド11において、脚部31の延在方向を「高さ方向」と称し、支持バー32の延在方向を「左右方向」と称し、高さ方向および左右方向のいずれにも直交する方向を「前後方向」と称する。
【0029】
また、フレーム部材21には、各脚部31の一端部31aに、前後方向の一方側に突出するように、連結部33がそれぞれ設けられている。各連結部33には、左右方向に貫通する貫通孔がそれぞれ形成され、各貫通孔は、同一の軸線を有し、後述する円柱状の軸部材73を挿通可能に形成されている。
【0030】
さらに、一方の連結部33には、脚部31の他端部31bに向かうにつれて、脚部31から離反するように延設されたレバー部34が、フレーム部材21と一体的に設けられている。
【0031】
一対の固定側爪部22は、それぞれ板状に形成された部材であり、各脚部31の他端部31bに、前後方向の他方側に突出するように固定されている。
【0032】
エアシリンダ23は、筒状のシリンダ本体41と、シリンダ本体41に挿入されたピストンロッド42とを備える。シリンダ本体41の内部は、ピストンロッド42によって加圧室と大気開放室とに区画され、本実施形態に係るエアシリンダ23は、シリンダ本体41内の加圧室に、図示しない空圧源から高圧ガスを導入することにより、その高圧ガスの圧力によって、ピストンロッド42にシリンダ本体41内へ没入する方向の力が発生するように構成されている。
【0033】
また、エアシリンダ23は、ピストンロッド42が高さ方向に延び、かつ、ピストンロッド42をシリンダ本体41内へ没入する方向(以下、「没入方向」と称する)に変位させたときに、ピストンロッド42の先端部42aが、固定側爪部22に近接する方向へ移動するような姿勢となるように、支持バー32における左右方向の中央部に固定されている。
【0034】
可動側爪部24は、ピストンロッド42の先端部42aに固定され、詳細には、前後方向の他方側に突出するように設けられている。
【0035】
上記構成により、ピストンロッド42が没入方向に変位するようにエアシリンダ23を作動することで、可動側爪部24を、一対の固定側爪部22に近接する方向に移動させることができる。逆に、ピストンロッド42がシリンダ本体41内から突出する方向(以下、「突出方向」と称する)に変位するようにエアシリンダ23を作動することで、可動側爪部24を、一対の固定側爪部22から離反する方向に移動させることができる。
【0036】
起立戻し用ハンドル25は、突出部35に固定される固定部81と、固定部81に対して直角に屈曲し、作業者によって掴まれる把持部82とによって、L字状に形成されている。起立戻し用ハンドル25は、固定部81が左右方向に延び、かつ、把持部82が、固定部81に対し前後方向の一方側に延びるように、突出部35に設けられている。この起立戻し用ハンドル25は、起立姿勢にある移載ハンド11を把持姿勢に戻す際に用いられ、把持姿勢に戻す方向への回転力が、作業者によって付与される。
【0037】
また、本実施形態に係る移載ハンド11には、液晶表示装置2を台座3に着座させるための動作を行う際に、台座3を押さえるための台座押さえ26が、左右方向の中央に設けられるとともに、この台座押さえ26を高さ方向に昇降駆動するためのエアシリンダ27が設けられている。
【0038】
さらに、本実施形態に係る移載ハンド11には、フレーム部材21における一方の脚部31に、前後方向の他方側に突出するように、ワークセンサ(図示せず)が設けられている。このワークセンサは、把持姿勢の移載ハンド11を、液晶表示装置2の上方から降下させたとき、フレーム部材21と液晶表示装置2との距離が、所定の距離未満になったことを検出できるように構成されたセンサであり、本実施形態では、接触式のセンサによって実現されている。この所定の距離は、可動側爪部24と一対の固定側爪部22とによって液晶表示装置2を確実にクランプすることができるような距離に決定される。
【0039】
支持フレーム12は、大略的に矩形枠状に形成され、その上端が前記吊り下げ装置の連結軸5に固定される枠部71と、間を空けて対向する2つのアーム片によってそれぞれ構成されており、その基端部が枠部71の下端に固定され、該基端部から斜め下方に向かって延びるように設けられる一対のアーム部72と、各アーム部72の前記基端部とは反対側の遊端部にそれぞれ設けられ、その軸線が、水平に延びる軸線J1に一致するように、2つのアーム片に架け渡されて固定される円柱状の軸部材73とを有する。
【0040】
前記構成の支持フレーム12における各軸部材73に、図1および図2に示すように、前述の移載ハンド11における一対の連結部33が、その貫通孔を介してそれぞれ連結される。これにより、移載ハンド11は、軸線J1まわりに回動自在に、支持フレーム12によって支持される。本実施形態では、移載ハンド11を支持フレーム12に連結したとき、自然状態において、移載ハンド11が把持姿勢で保持されるように構成されている。
【0041】
ここで、「把持姿勢」とは、図1および図3に示すように、高さ方向および左右方向が水平面に平行または略平行なときの移載ハンド11の姿勢のことである。移載ハンド11を把持姿勢にすることで、平置き姿勢で載置されている液晶表示装置2の上部および下部を、一対の固定側爪部22と可動側爪部24とによってクランプすることができる。なお、液晶表示装置2をクランプする際には、可動側爪部24によって液晶表示装置2の上部を支持し、一対の固定側爪部22によって液晶表示装置2の下部を支持するように、クランプするものとする。
【0042】
また、「起立姿勢」とは、図2および図4に示すように、把持姿勢の移載ハンド11を、軸線J1まわりに可動側爪部24が上方へ移動するような方向に、所定の角度だけ回動したときの移載ハンド11の姿勢のことである。ここで、所定の角度とは、平置き姿勢の液晶表示装置2を、着座姿勢にするために必要な回転角度である。
【0043】
たとえば、図4に示すような台座3に液晶表示装置2を組み付ける場合には、所定の角度は、90度となる。また、前述のように立て掛け式のスタンドに液晶表示装置2を組み付ける場合には、所定の角度は、立て掛け時の角度に等しく、たとえば100度となる。
【0044】
エアシリンダ13は、移載ハンド11を軸線J1まわりに回動させるためのアクチュエータとして用いられ、本実施形態では、把持姿勢に保持されている移載ハンド11を、軸線J1まわりに回動させて、起立姿勢に変化させるために用いられる。
【0045】
エアシリンダ13は、筒状のシリンダ本体51と、シリンダ本体51に挿入されたピストンロッド52とを備える。シリンダ本体51の内部は、ピストンロッド52によって加圧室と大気開放室とに区画されている。本実施形態に係るエアシリンダ13は、シリンダ本体51内の加圧室に、図示しない空圧源から高圧ガスを導入することにより、その高圧ガスの圧力によって、シリンダ本体51から突出する方向の力がピストンロッド52に発生するように構成されている。
【0046】
エアシリンダ13は、移載ハンド11のレバー部34が配設される側のアーム部72の上方位置に設けられ、シリンダ本体51の上端部51aが、枠部71に固定されたブラケット53に軸支されている。これにより、エアシリンダ13は、水平に延びる軸線J2まわりに揺動自在に、支持フレーム12に支持されている。一方、シリンダ本体51の下端部から突出するピストンロッド52は、下方に延び、その先端部52aが、レバー部34の先端部34aに結合されている。
【0047】
上記構成により、ピストンロッド52が突出方向に変位するようにエアシリンダ13を作動することで、レバー部34の先端部34aがピストンロッド52の先端部52aにより下方に押圧され、これにより、把持姿勢におけるレバー部34の先端部34aを、軸線J1まわりに下方へ回動させることができる。さらに、このレバー部34の回動に伴って、移載ハンド11全体を軸線J1まわりに回動させることにより、把持姿勢の移載ハンド11を、起立姿勢に変化させることができる。
【0048】
本実施形態に係る移載装置1は、図示しない起立角度変更用ピンにより、移載ハンド11の把持姿勢からの回転角を制限できるように構成されている。具体的には、把持姿勢からの回転角を、90度および100度のいずれかに制限できるように構成されている。たとえば90度に制限するように起立角度変更用ピンを手動で調整することにより、把持姿勢から軸線J1まわりに90度回動したときに、それ以上の回動を阻止することができる。すなわち、把持姿勢から軸線J1まわりに90度回動したところで、移載ハンド11の回動が自動的に阻止される。したがって、作業者は、液晶表示装置2が載置される台座3の種類に応じて、起立角度変更用ピンを適宜調整することにより、移載ハンド11を所望の起立姿勢にすることができる。
【0049】
図5は、ハンドル14の構成を示す図である。ハンドル14は、作業者が両手で掴むことができるように構成され、支持フレーム12に固定されている。また、ハンドル14には、操作部61が設けられている。本実施形態では、操作部61には、一対の爪開閉スイッチSW1,SW2と、横臥・起立切換用スイッチSW3と、クランプ確認ランプLAとが設けられている。
【0050】
一対の爪開閉スイッチSW1,SW2は、エアシリンダ23を作動させるための押しボタン式のスイッチである。本実施形態では、前述のワークセンサによって、フレーム部材21と液晶表示装置2との距離が、所定の距離未満であることが検出されている状態のときにのみ、可動側爪部24を前記近接・離反する方向に作動させるための、各スイッチ操作が有効となるように構成されている。
【0051】
さらに、本実施形態では、後述する着座センサ15によって、液晶表示装置2と台座3とが一体となっている状態、すなわち液晶表示装置2が着座状態であることが検出されている状態のときにのみ、可動側爪部24を離反する方向に作動させるためのスイッチ操作が有効となるように構成されている。
【0052】
本実施形態では、可動側爪部24を近接する方向に作動させるためのスイッチ操作とは、いずれか一方の爪開閉スイッチSW1(またはSW2)を押圧する操作に相当し、可動側爪部24を離反する方向に作動させるためのスイッチ操作とは、一対の爪開閉スイッチSW1,SW2を両方同時に押圧する操作に相当する。
【0053】
横臥・起立切換用スイッチSW3は、エアシリンダ13を作動させるためのトグルスイッチである。横臥・起立切換用スイッチSW3は、「横臥」側と「起立」側とに切換可能に構成され、「起立」側に切換えられたときに、エアシリンダ13の加圧室に高圧ガスが導入され、これによりピストンロッド52が突出方向に変位される。また、「横臥」側に切換えられたときには、エアシリンダ13の加圧室から高圧ガスが排出され、これによりピストンロッド52が没入方向に変位される。
【0054】
クランプ確認ランプLAは、移載ハンド11によって液晶表示装置2が正しくクランプされている状態のときに点灯するように構成され、作業者は、このクランプ確認ランプLAの点灯状態により、液晶表示装置2が移載ハンド11によって正しくクランプされているか否かを確認することができる。
【0055】
ハンドル14には、図示しないが、クランプ圧力計およびクランプ圧力調整用のレギュレータなども設けられている。また、本実施形態では、支持フレーム12の一部に、後述する着座センサ15の機能を無効にすることができる着座センサ無効スイッチが設けられている。
【0056】
以下、本実施形態の移載装置1に設けられる着座センサ15について説明する。図6は、着座センサ15の構成を概略的に示す図であり、移載ハンド11が起立姿勢にされているときの着座センサ15を示すものである。図6(a)は、着座センサ15が床面Fに接触していない状態(無負荷時)を示し、図6(b)は、着座センサ15が床面Fに接触し、着座状態であることが検出されている状態を示している。
【0057】
着座センサ15は、図6に示すように、シャフト91と、こま部材92と、シャフトガイド93と、圧縮コイルばね94と、床当てパッド95と、リミットスイッチ96とを含んで構成される。
【0058】
シャフトガイド93は、移載ハンド11における一方の脚部31に固定して設けられ、シャフト91を挿通可能な挿通孔が、高さ方向に沿って形成されている。シャフト91は、円柱状の長尺部材であり、長手方向の一端部には、シャフト91に外挿されたこま部材92が締結固定されている。また、長手方向の他端部には、シャフト91の外径よりも大きな外径を有する円盤状の床当てパッド95が固定されている。
【0059】
このようにこま部材92および床当てパッド95が固定されたシャフト91は、こま部材92と床当てパッド95との間の部分が、シャフトガイド93における挿通孔に挿通された状態で保持される。より詳細には、床当てパッド95が、脚部31の他端部31b側に配置され、こま部材92が脚部31の一端部31a側に配置されるように保持されている。これらシャフト91、こま部材92および床当てパッド95によって、起立姿勢の移載ハンド11において上下方向に変位自在に設けられる変位部材が構成されている。
【0060】
起立姿勢の移載ハンド11では、床当てパッド95が、シャフトガイド93の下方に配置され、こま部材92が、シャフトガイド93の上面部によって、下方への移動を制限されている。このとき、床当てパッド95が、一対の固定側爪部22よりも所定の距離だけ下方に配置されるように、予め調整されている。この所定の距離は、移載ハンド11を上方から降下させて液晶表示装置2が着座状態になったときに、後述するリミットスイッチ96がON状態からOFF状態に切り換わるような距離に設定されている。
【0061】
また、本実施形態では、シャフトガイド93と床当てパッド95との間で、圧縮コイルばね94がシャフト91に外挿されて設けられている。この圧縮コイルばね94は、床当てパッド95を、シャフトガイド93から離反する方向に付勢するように設けられており、付勢手段を構成している。
【0062】
したがって、着座センサ15は、無負荷時、すなわち床当てパッド95が床面Fに接触していないときには、圧縮コイルばね94の付勢力によって、こま部材92がシャフトガイド93の上面部に係止された状態が保持される。
【0063】
リミットスイッチ96は、回動自在なアクチュエータ部96aと、アクチュエータ部96aの回動位置に応じてON/OFFが切り換るスイッチ部とを備え、シャフトガイド93の上面部近傍に、シャフトガイド93の上面部に接触しているこま部材92に対してアクチュエータ部96aが接触するように設置されている。
【0064】
リミットスイッチ96は、アクチュエータ部96aがこま部材92に接触しているときに、スイッチ部がONとなり、こま部材92がシャフトガイド93の上面部に接触している状態から前記所定の距離だけ変位することにより、アクチュエータ部96aとこま部材92との接触が解除されると、スイッチ部がOFFとなるように構成されている。また、リミットスイッチ96は、スイッチ部がONのときには、可動側爪部24を離反する方向に作動させるためのスイッチ操作を無効にし、スイッチ部がOFFのときに、可動側爪部24を離反する方向に作動させるためのスイッチ操作を有効にするように構成されている。
【0065】
着座センサ15は、上記構成により、起立姿勢の移載ハンド11を、台座3の上方から降下させると、まず床当てパッド95が床面Fと接触し、さらに移載ハンド11を降下させると、床面Fに接触した床当てパッド95が床面Fに押圧され、圧縮コイルばね94が圧縮されて縮むとともに、こま部材92がシャフトガイド93の上面部から離反する方向に変位する。そして、こま部材92がシャフトガイド93の上面部から前記所定の距離だけ変位したときに、リミットスイッチ96のスイッチ部がONからOFFに切り換わる。したがって、液晶表示装置2の下降が不十分な状態で、液晶表示装置2がアンクランプされることを防止することができる。
【0066】
また、本実施形態では、床当てパッド95をシャフトガイド93から離反する方向に付勢する圧縮コイルばね94によって、無負荷時に、こま部材92がシャフトガイド93の上面部に係止された状態を保持されるように構成されている。したがって、移載ハンド11が把持姿勢のときに振動などが生じても、リミットスイッチ96のスイッチ部がONからOFFに切り換わってしまうことを防止することができる。これにより、移載の過程で液晶表示装置2が不用意に落下してしまうことを確実に防止することができる。
【0067】
図7は、液晶表示装置2を台座3に移載するときの動作を示すフローチャートである。移載ハンド11が把持姿勢に保持されている状態で動作が開始される。ステップS1では、作業者が、ハンドル14を掴んで操縦することにより、クランプ対象である平置き姿勢の液晶表示装置2の上方まで移載装置1を移動させる。
【0068】
液晶表示装置2の上方まで移動すると、ステップS2では、作業者が、ハンドル14を掴んで操縦することにより、移載装置1を降下させる。このとき、ワークセンサによって、フレーム部材21と液晶表示装置2との距離が、所定の距離未満になったことが検出される。
【0069】
ワークセンサによって所定の距離未満になったことが検出されると、一対の爪開閉スイッチSW1,SW2に対するスイッチ操作が有効となり、ステップS3では、作業者が、一対の爪開閉スイッチSW1,SW2のいずれか一方を押圧操作することにより、エアシリンダ23が作動して、可動側爪部24が一対の固定側爪部22に近接する方向に変位駆動される。これにより、平置き姿勢の液晶表示装置2が、移載ハンド11によってクランプされる。なお、所定の把持力でクランプされるように予め調整されている。
【0070】
液晶表示装置2が、移載ハンド11によってクランプされると、ステップS4では、作業者が、ハンドル14を掴んで操縦することにより、台座3に向かって移載装置1を移動させる。この移動の過程において、作業者は、横臥・起立切換用スイッチSW3を、「起立」側に切り換える操作を実行することにより、把持姿勢の移載ハンド11が、起立姿勢に姿勢が変化される。これにより、クランプされている液晶表示装置2も、平置き姿勢から着座姿勢に移行する。
【0071】
そして、ステップS5では、作業者が、ハンドル14を掴んで操縦することにより、移載装置1を台座3の上方から降下させる。このとき、着座センサ15によって、液晶表示装置2が着座状態であることが検出される。
【0072】
着座センサ15によって、液晶表示装置2が着座状態であることが検出されると、可動側爪部24を離反する方向に作動させるためのスイッチ操作が有効となり、ステップS6では、作業者が、一対の爪開閉スイッチSW1,SW2を両方同時に押圧操作することにより、エアシリンダ23が作動して、可動側爪部24が一対の固定側爪部22から離反する方向に変位駆動される。これにより、液晶表示装置2が、アンクランプされる。
【0073】
アンクランプ後、作業者が、ハンドル14を掴んで操縦することにより、移載装置1を待機位置まで移動させる。この際、作業者が、横臥・起立切換用スイッチSW3を、「横臥」側に切り換える操作を実行し、起立戻し用ハンドル25を操作することにより、起立姿勢の移載ハンド11が、把持姿勢に姿勢が変化される。これにより、一連の移載動作は終了する。
【0074】
上記実施形態では、移載ハンド11の起立姿勢が、把持姿勢に対して軸線J1まわりに90度回動させた姿勢である場合について説明しているが、これに限らず、移載ハンド11の起立姿勢が、把持姿勢に対して軸線J1まわりに90度以上、たとえば100度回動させた姿勢である場合であっても、同様に実施することができる。この場合、移載ハンド11を起立姿勢にしたとき、着座センサ15におけるシャフト91の延在方向は、鉛直方向に対し10度程度傾斜することとなるが、前記構成による着座センサ15を用いれば、問題なく着座状態を検出することができる。
【符号の説明】
【0075】
1 移載装置
2 液晶表示装置
3 台座
11 移載ハンド
12 支持フレーム
13 エアシリンダ
14 ハンドル
15 着座センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被移載物を、載置面に載置されている対象物に移載して着座させるための移載装置であって、
水平な軸線まわりに回動自在に支持され、被移載物の把持および解放が可能な移載ハンドと、
前記移載ハンドに解放動作させるための操作を入力するためのスイッチと、
前記移載ハンドの姿勢を、被移載物を把持するときの把持姿勢から被移載物を対象物に載置するときの起立姿勢に移行させるために、前記移載ハンドを前記軸線まわりに回動させるアクチュエータと、
前記移載ハンドに設けられる着座センサであって、
前記移載ハンドが起立姿勢のときに、前記載置面に近接・離反する方向に変位自在となるように設けられ、かつ被移載物を対象物に移載する過程で前記載置面に接触するように設けられる変位部材を備え、
前記載置面との接触による前記変位部材の前記移載ハンドに対する相対的な変位に基づいて、被移載物が対象物に着座している着座状態であるか否かを検出する着座センサとを含み、
前記移載ハンドは、前記着座センサにより着座状態であると検出されているときにのみ、前記スイッチの操作によって解放動作するように構成され、
前記着座センサは、前記移載ハンドが起立姿勢のときに、前記変位部材を、前記載置面に近接する方向に付勢する付勢手段をさらに備えることを特徴とする移載装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−218857(P2012−218857A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−84907(P2011−84907)
【出願日】平成23年4月6日(2011.4.6)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】