説明

穀物水分測定装置

【課題】穀物を圧砕した状態で水分値を測定する穀物水分測定装置において、穀物を圧砕する際の圧力を監視して適正な水分値を算出可能とする。
【解決手段】支持部材111にクッション材113を介して固定された固定電極110と、該固定電極と対をなす可動電極108とを有し、これら両電極間に試料(穀物)203を介在させ、可動電極を固定電極側に所定量だけ移動させて可動電極が試料に対して所定の大きさの圧力を加えた状態で可動電極と固定電極との間の電気的特定値を測定して、その電気的特定値に基づいて試料の水分値を算出する穀物水分測定装置であって、可動電極を固定電極側に所定量だけ移動させたときの試料に加わる可動電極の圧力の大きさを検知する圧力検知手段112と、圧力検知結果に基づいて、可動電極を固定電極側に所定量だけ移動させたときの試料に加わる可動電極の圧力の大きさを監視する機能を有する圧力監視演算部303とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は穀物の水分値を測定する穀物水分測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
米などの穀物の水分値を測定する穀物水分測定装置は各種実用化されている(たとえば、特許文献1参照)。特許文献1に記載された穀物水分測定装置は、次のようにして穀物の水分を測定する。
【0003】
試料受け皿に測定対象となる穀物(試料という)を所定量だけ入れた試料保持プレートを穀物水分測定装置本体の試料皿挿入口から挿入する。これにより、試料保持プレートに設けられた試料受け皿は穀物水分測定装置本体内に設けられた固定電極に接触した状態となり、この状態で試料を圧砕するためのハンドルをストッパなどによってその回転が規制されるまで回転させる。
【0004】
ハンドルの回転により、ハンドル側に設けられた可動電極で試料受け皿内の試料を圧砕させ、試料を圧砕した状態で可動電極と固定電極との間の電気的特定値(直流回路の場合の電気抵抗値と交流回路の場合のインピーダンスの両方を考慮してこれらを電気的特定値と呼ぶことにする)を測定し、測定した電気的特定値に基づいて試料である穀物の含有水分値(%)を得る。なお、固定電極は穀物水分測定装置本体内に固定された支持部材上に板バネや合成ゴム製などでなるクッション材を介して取り付けられるのが一般的である。
【0005】
【特許文献1】特開平9−304315号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した穀物水分測定装置においては、可動電極と固定電極との間の電気的特定値を測定する際の試料に加わる可動電極の圧力の大きさが、バラツキの少ない適正な水分値を得るための重要な要素となる。
【0007】
すなわち、電気的特定値を測定する際の試料に加わる可動電極の圧力が大きすぎると水分値がより大きな値として出力され、逆に圧力が小さいと水分値がより小さな値として出力される傾向となるからである。
【0008】
そこで、電気的特定値を測定する際の試料に加わる可動電極の圧力の大きさは、所定の大きさの圧力となるように設定されており、その所定の大きさの圧力のときに適正な水分値が得られるようになっている。なお、電気的特定値を測定する際の試料に加わる可動電極の圧力の大きさは、本来の最適な圧力に対して所定の許容範囲が設定され、その許容範囲内の圧力であれば、求められる水分値も許容範囲内に収まるようになっている。
【0009】
したがって、ハンドルを回転させたとき、ハンドルの回転がストッパなどにより規制された状態となったときの試料に加わる可動電極の圧力の大きさ、すなわち、電気的特定値を測定する際の試料に加わる可動電極の圧力の大きさが、許容範囲内であれば、バラツキの少ない高精度な水分測定が可能となる。
【0010】
ところで、電気的特定値を測定する際の試料に加わる可動電極の圧力の大きさは、試料受け皿に入れる試料の量によっても異なり、また、前述した固定電極と固定プレートとの間に存在するクッション材の弾性力の大きさによっても異なってくる。
【0011】
すなわち、試料皿に入れる試料の量が多すぎても少なすぎても、電気的特定値を測定する際の試料に加わる可動電極の圧力が許容範囲を外れることがあり、また、試料皿に入れる試料の量が適正であっても、クッション材の劣化による弾性力の低下により、圧力の大きさが許容範囲を外れてしまうことがある。なお、固定プレートを支持する支持部材の割れなどによっても、電気的特定値を測定する際の試料に加わる可動電極の圧力の大きさが許容範囲を外れてしまうことがある。
【0012】
前述の特許文献1に開示された水分測定装置は、水分値以外に時刻や温度を表示する機能を付加することにより、表示された時刻や温度を考慮した水分測定を可能とするというものであるが、特許文献1に開示された発明は、電気的特定値(特許文献1に記載の技術では電気抵抗値としている)を測定する際の試料に加わる可動電極の圧力の大きさについては言及されてなく、前述したような圧力の変動に対する課題が存在すると考えられる。
【0013】
そこで本発明は、可動電極と固定電極との間の電気抵抗値を測定する際の試料に加わる可動電極の圧力の大きさの監視を行い、その監視結果を表示可能とし、さらに、必要に応じて水分値の補正をも可能とする穀物水分測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
(1)本発明の穀物水分測定装置は、筐体に設けられた支持部材にクッション材を介して固定された固定電極と、前記固定電極と対をなす可動電極とを有し、前記固定電極と可動電極との間に測定対象となる穀物を介在させ、前記可動電極を前記固定電極側に所定量だけ移動させることによって前記可動電極が前記穀物に対して所定の大きさの圧力を加えた状態で前記可動電極と前記固定電極との間の電気的特定値を求め、求められた電気的特定値に基づいて前記穀物の水分値を算出する穀物水分測定装置であって、前記可動電極を前記固定電極側に所定量だけ移動させたときの前記穀物に加わる前記可動電極の圧力の大きさを検知可能な圧力検知手段と、前記圧力検知手段による圧力検知結果に基づいて、前記可動電極を前記固定電極側に所定量だけ移動させたときの前記穀物に加わる前記可動電極の圧力の大きさを監視する機能を有する圧力監視演算部とを有することを特徴とする。
【0015】
(2)前記(1)に記載の穀物水分測定装置において、前記圧力検知手段は、前記固定電極と前記クッション材との間に設けられることが好ましい。
【0016】
(3)前記(1)または(2)に記載の穀物水分測定装置において、前記圧力監視演算部は、前記可動電極を前記固定電極側に所定量だけ移動させたときの前記穀物に加わる前記可動電極の圧力の大きさが前記所定の大きさの圧力でない場合、前記穀物に加わる前記可動電極の圧力の大きさが適正でないことを表示するための信号を生成する機能をさらに有することが好ましい。
【0017】
(4)前記(1)〜(3)のいずれかに記載の穀物水分測定装置において、前記圧力監視演算部は、前記可動電極を前記固定電極側に所定量だけ移動させたときの前記穀物に加わる前記可動電極の圧力の大きさが前記所定の大きさの圧力でない場合、前記算出された水分値を補正するための信号を出力する機能をさらに有することが好ましい。
【0018】
(5)前記(4)に記載の穀物水分測定装置において、前記水分値を補正するための信号に基づいて前記算出された水分値を補正する水分値補正演算部を有することが好ましい。
【0019】
(6)前記(1)〜(5)のいずれかに記載の穀物水分測定装置において、前記所定の大きさの圧力には許容範囲を設けることが好ましい。
【0020】
(7)前記(1)〜(6)のいずれかに記載の穀物水分測定装置において、前記電気的特定値は、電気抵抗値とすることが好ましい。
【発明の効果】
【0021】
本発明の穀物水分測定装置は、具体的には、可動電極と固定電極との間に介在された穀物を圧砕させた状態で、可動電極と固定電極との間の電気的特定値(電気抵抗値など)を測定し、測定した電気的特定値に基づいて穀物の水分値を算出するものである。このような穀物水分測定装置においては、電気的特定値(電気抵抗値など)を測定する際の穀物に加わる可動電極の圧力の大きさを適正な圧力とすることが、バラツキの少ない高精度な水分値を得るための重要な要素となる。
【0022】
すなわち、穀物に加わる可動電極の圧力の大きさは、ハンドルの回転がストッパなどにより規制され状態となったとき、すなわち、可動電極を固定電極側に所定量だけ移動させたときに所定の大きさの圧力が加わるように設定されていて、その所定の大きさの圧力において電気的特定値を測定するようになっている。
【0023】
これに対処するために、本発明では、前述の(1)に記載の発明の如く、可動電極を固定電極側に所定量だけ移動させたときの穀物に加わる可動電極の圧力の大きさを検知する圧力検知手段と、その圧力検知結果に基づいて、可動電極を固定電極側に所定量だけ移動させたときの穀物に加わる可動電極の圧力の大きさを監視する機能を有する圧力監視演算制御部とを設けるようにしている。
【0024】
これにより、電気的特定値(電気抵抗値など)を測定する際の穀物に加わる可動電極の圧力の大きさ監視することができ、圧力が適正でない場合には、それをユーザに知らせることができる。これによって、ユーザは圧力の大きさが適正でないことを知ることができ、圧力が適正でない状態で測定された水分値を、正しく測定された水分値であると認識してしまうといったことを未然に防止することができる。
【0025】
また、前述の(2)に記載された穀物水分測定装置によれば、圧力検知手段が固定電極とクッション材との間に設けられているので、クッション材の劣化などを適切に反映した圧力を検知することができる。すなわち、クッション材が劣化して弾性力が低下したような場合には、穀物に加わる可動電極の圧力の大きさが小さくなるが、このような状況は圧力検知手段からの圧力検知結果に適切に反映される。これにより、圧力検知結果に基づいて圧力の監視を適切に行うことができる。また、クッション材を支持する支持部材の割れなどによる圧力の低下や、測定対象となる穀物の量に起因する圧力の変化も、圧力検知手段からの圧力検知結果に適切に反映させることができる。
【0026】
また、前述の(3)に記載の穀物水分測定装置によれば、圧力監視演算制御部は、可動電極の圧力の大きさが適正でないことを表示するための信号を生成する機能を有している。このような信号を用いることにより、圧力の大きさが適正でないことを示す表示を行うことができる。これにより、ユーザは圧力の大きさが適正でないことを一目で確認することができる。
【0027】
また、前述の(4)に記載の穀物水分測定装置によれば、圧力監視演算制御部が水分値を補正するための信号を出力する機能を有している。圧力監視演算制御部からこのような水分値を補正するための信号を用いることにより、水分値の補正を容易に行なうことができる。
【0028】
また、前述の(5)に記載の穀物水分測定装置によれば、圧力監視演算制御部から出力される水分値を補正するための信号に基づいて、算出された水分値を補正する水分値補正演算部を有している。これにより、穀物に加わる前記可動電極の圧力の大きさが所定の大きさの圧力でない場合、圧力監視演算制御部から出力される水分値を補正するための信号を用いることによって、そのときの圧力の大きさを考慮した補正後の水分値を算出することができる。このような水分値補正演算部を設けることにより、ユーザは当該水分測定装置を販売店などに点検・修理に出すまでの間、その水分測定装置をそのまま使用することができる。
【0029】
また、前述の(6)に記載の穀物水分測定装置によれば、所定の大きさの圧力には許容範囲を設けるようにしている。これは、算出される水分値が許容できる誤差の範囲に収まる程度に、圧力の大きさにも許容範囲を設けるということであり、このように、圧力の大きさも許容範囲を設けることにより、メンテナンス性に優れたものとなる。
【0030】
また、前述の(7)に記載の穀物水分測定装置によれば、電気的特定値は、電気抵抗値とするとしているが、これは、直流の電気回路を想定したものである。このように、直流の電気回路とすることにより、電気回路そのものを簡単なものとすることができる。また、電源として乾電池などを使用することができるので、屋外で使用する安価で小型の穀物水分測定装置として最適なものとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下、本発明の実施形態について説明する。なお、本発明は穀物の水分を測定するための穀物水分測定装置であり、測定対象となる穀物は、玄米、白米、大麦、小麦、裸麦などが例として挙げられる。
【0032】
図1は本発明の実施形態に係る穀物水分測定装置の外観構成を示す図である。本発明の実施形態に係る穀物水分測定装置(以下では単に水分測定装置という)は、その構成を大別すると、水分測定装置本体100と試料保持プレート200とで構成される。
【0033】
水分測定装置本体100は、筐体101の上端面に設けられたハンドル102、測定結果など各種の表示を行う表示画面103、各種操作ボタン(穀物選択ボタン104、測定ボタン105、平均値算出ボタン106など)、筐体101の側面部に設けられた試料保持プレート挿入口107を有している。
【0034】
一方、試料保持プレート200は、プレート部201と、プレート部201に設けられた凹状の試料受け皿部202とを有している。試料受け皿部202は、測定対象となる穀物の粒(試料203いう)を所定量保持可能な凹状となっており、その底面板204は導電性部材が用いられる。この底面板204は、その下端面が図1の破線円内の部分断面図に示すように、プレート部201の裏面に露出するようにプレート部201に取り付けられている。
【0035】
なお、図1の破線円内の部分断面図は、試料保持プレート200のB−B’線の矢視断面を示す図である。また、底面板204の上端面(試料203を載せる側の面)には、ハンドル102の押圧力によって試料203が圧砕されやすいように、凹凸(図示せず)が形成されている。
【0036】
図2は図1におけるA−A’線の矢視部分断面を示す図である。なお、図2(a)はハンドル102を回転させる前の状態、図2(b)はハンドル102を所定量回転させた後の状態を示すものである。また、図2において図1と同一構成要素には同一符号が付されている。
【0037】
図2に示すように、ハンドル102はネジ部108を有し、そのネジ部108が筐体101に取り付けられた導電性部材でなるハンドル支持リング109に螺合している。そして、ハンドル102を時計方向に回転させることによりハンドル102とともにネジ部108が下方向に移動し、ハンドル102を反時計方向に回転させることによりハンドル102とともにネジ部108が上方向に移動するようになっている。
【0038】
また、ハンドル102の少なくともネジ部108は導電性部材で形成され、そのネジ部108は可動電極としての役目を果たす。このように、ネジ部108は可動電極としての役目を果たすので、ネジ部108を以下では可動電極108と呼ぶことにする。また、可動電極108の先端面は、試料保持プレート200の試料受け皿部202に入っている試料203を圧砕しやすくするために凹凸(図示せず)が形成される。
【0039】
なお、ハンドル102はストッパ(図示せず)などにより時計方向への一定以上の回転が規制されるようになっている。これにより、可動電極108の下方向への移動量は予め決められている。すなわち、図2(a)に示す状態から、ハンドル102を時計方向に回転させると、可動電極108は下方向に移動して行くが、ハンドル102の回転がストッパにより規制されると、可動電極108の下方向への移動はその時点で停止して図2(b)に示すような状態となる。
【0040】
また、筐体101内には、導電性部材でなる固定電極110が設けられる。この固定電極110は、筐体101に設けられた支持部材111に圧力検知手段112とクッション材113を介して取り付けられる。なお、圧力検知手段112としては、市販されている板状の圧力センサを用いることができる。また、クッション材113はたとえばシリコンなどを用いた合成ゴム系部材でなる板状のものであり、その表面に与えられる押圧力に反発する弾性力を有している。
【0041】
また、固定電極110は試料保持プレート200が乗せられたとき、試料受け皿部202の底面板204の下端面と密接した状態となる。なお、試料保持プレート200を試料保持プレート挿入口107から挿入したとき、試料受け皿部202と可動電極108の先端面とが対向する位置となるように、試料保持プレート200の挿入がガイドされるようになっている。したがって、試料保持プレート200を試料保持プレート挿入口107に挿入すると、試料受け皿部202と可動電極108の先端面とが自然に対向する位置となり、その状態で、ハンドル102を時計方向に回転させれば、試料受け皿部202内の試料203は、可動電極108によって圧砕される。
【0042】
なお、ハンドル102を時計方向に回転させ、ストッパによって回転が規制された状態となったときに試料203に対して所定の大きさの圧力が加わるように設定されており、その圧力のもとで可動電極108と固定電極110との間の電気的特定値が求められるようになっている。
【0043】
このような構成において、ある穀物の水分値を測定する場合の測定手順について説明する。まず、試料保持プレート200の試料受け皿部202に測定対象となる穀物を所定量入れる。このときの穀物の量としては、測定対象となる穀物がたとえば玄米であるとすれば、玄米粒が試料受け皿部202内で全体に広がる程度の量とすることが好ましい。
【0044】
また、測定を行う際の設定として、図1に示した穀物選択ボタン104により測定対象となる穀物の種類を設定する。たとえば、測定対象となる穀物がたとえば玄米であれば、表示画面103に「玄米」が表示されるまで穀物選択ボタン104を操作する。そして、測定対象となる試料の入った試料保持プレート200を試料保持プレート挿入口107に挿入して、ハンドル102を時計方向にその回転が規制されるまで回転させる。これにより、試料受け皿部202内の試料は、可動電極108の先端部によって圧砕される。そして、図1に示した測定ボタン105を押すと、表示画面103に試料の水分値(%)が表示される。
【0045】
なお、測定対象となる試料の水分値を求める場合には、上述した操作を数回行ってその平均値として求めることがより好ましい。この場合、上述した操作を数回行ったあと、平均値算出ボタン106を押すことによって、数回の測定による平均の水分値が表示される。
【0046】
ところで、表示される水分値(%)は、可動電極108と固定電極110との間すなわち圧砕された試料の電気的特定値に基づいて得られるものである。なお、実施形態おいて使用する電気回路は直流回路であるとし、電気的特定値は電気抵抗値であるとして説明する。
【0047】
前述したように、ハンドル102をその回転が規制されるまで回転させることにより、可動電極108が試料203に対して所定の大きさの圧力を加えた状態で、可動電極108と固定電極110との間の電気抵抗値を求め、求められた電気抵抗値に基づいて水分を算出する。このように、可動電極108が試料203に対して所定の大きさの圧力を加えた状態で、可動電極108と固定電極110との間の電気抵抗値を測定することによって、適正な水分値が算出されるようになっている。
【0048】
すなわち、前述したように、ハンドル102がストッパなどによりそれ以上の回転が規制された状態となったときに、試料203に所定の大きさの圧力が加わるように設定されており、その圧力のもとで電気抵抗値を求めて、求められた電気抵抗値に基づいて水分値を算出するようになっている。したがって、ハンドル102がストッパなどによりそれ以上の回転が規制された状態となったときに、試料203に所定の大きさの圧力が加わることが重要である。
【0049】
そこで、本発明ではハンドル102がストッパなどによりそれ以上の回転が規制された状態となったときの圧力の大きさを圧力検知手段112からの圧力検知信号により監視するようにしている。
【0050】
図3は本発明の実施形態に係る水分測定装置の演算制御装置の構成図である。図3に示すように、本発明の水分測定装置の演算制御装置300は、マイクロコンピュータで構成することができる。
【0051】
この演算制御装置300は、可動電極108と固定電極110との間の電気抵抗値及び圧力検知手段112からの圧力検知信号をアナログ/デジタル変換(A/D変換という)するA/D変換部301、A/D変換された電気抵抗値に基づいて水分値を算出する水分値算出演算部302、A/D変換された圧力検知信号に基づいて圧力の監視を行う圧力監視演算部303、表示画面103に対する表示制御を行う表示制御部304、圧力監視演算部303による圧力監視結果に基づき、必要に応じて水分値算出演算部302で算出された水分値の補正を行う水分値補正演算部305を有する。
【0052】
圧力監視演算部303は、ハンドル102がストッパなどによりそれ以上の回転が規制された状態の試料203に加わる可動電極108の圧力の大きさ、すなわち、可動電極108が下方向(固定電極110側)に所定量だけ移動したときの試料203に加わる可動電極108の圧力の大きさが、所定の大きさの圧力(設定圧力値と呼ぶことにする)となっているか否かを判定する機能を有している。
【0053】
また、圧力監視演算部303は、可動電極108が固定電極110側に所定量だけ移動したときの試料203に加わる可動電極108の圧力の大きさを判定した結果、試料203に加わる可動電極108の圧力の大きさが設定圧力値でない場合は、試料203に加わる可動電極108の圧力の大きさが適正でないことを表示するための信号(圧力異常表示信号という)を生成して表示制御部304に送る機能をも有している。
【0054】
さらに、圧力監視演算部303は、可動電極108が固定電極110側に所定量だけ移動したときの試料203に加わる可動電極108の圧力の大きさを判定した結果、試料203に加わる可動電極108の圧力の大きさが設定圧力値でない場合は、算出された水分値を補正するための信号(水分値補正信号)を水分値補正演算部305に出力する機能をも有している。
【0055】
このような構成において、試料の入った試料保持プレート200を試料保持プレート挿入口107に挿入して、ハンドル102を時計方向にその回転が規制されるまで回転させた状態で、測定ボタン105が押されると、可動電極108と固定電極110との間の電気抵抗値が求められる。そして、求められた電気抵抗値がA/D変換部301でA/D変換され、A/D変換された電気抵抗値が水分値算出演算部302に与えられる。これにより、水分値算出演算部302ではそのときの電気抵抗値に基づいて試料の水分値(%)を算出する。
【0056】
一方、圧力検知手段112からの圧力検知信号もA/D変換部301によりA/D変換され、A/D変換された圧力検知信号が圧力監視演算部303に入力される。圧力監視演算部303では、圧力検知信号(Pαとする)が設定圧力値となっているか否かを判定する。なお、設定圧力値には、許容範囲を設けておく。すなわち、設定圧力値の許容範囲の下限値をPmin、上限値をPmaxとすれば、圧力検知信号PαがPmin≦Pα≦Pmaxであるか否かを判定する。
【0057】
ここで、圧力検知信号PがPmin≦Pα≦Pmaxであれば、圧力は正常であるとする。このように、圧力が正常である場合は、水分値算出演算部302で算出された水分値に対する補正処理などを行う必要はない。なお、圧力が正常であることを示す表示を行うようにしてもよい。
【0058】
また、検出された圧力検知信号PαがPmin≦Pα≦Pmaxでなければ、圧力は異常であるとする。すなわち、Pmax<Pαである場合は、圧力は許容範囲の上限値Pmaxよりも大きく、圧力が大きすぎることを意味し、逆に、Pα<Pminである場合は、圧力は許容範囲の下限値Pmin未満であり、圧力が小さすぎることを意味している
【0059】
ここで、圧力が大きすぎる原因としては、たとえば、試料受け皿部202に入っている試料の量が多すぎることが主な原因として考えられる。したがって、圧力が大きすぎる場合は、圧力監視演算部303では、圧力が大きすぎることを示す圧力異常信号を表示制御部304に出力する。
【0060】
これにより、表示制御部304では、たとえば、「試料を適正な量にしてください」といった表示を表示画面103上で行う。このとき、表示画面103上での表示だけでなく、圧力異常を示す表示ランプ(図示せず)を点灯させることも可能である。なお、表示画面103上での表示と表示ランプでの表示の両方を行うようにしてもよいが、いずれか一方のみであってもよい。
【0061】
一方、圧力が小さすぎる原因としては、たとえば、クッション材113の劣化による弾性力の低下や支持部材111の割れなどが考えられる。さらには、試料受け皿部202に入っている試料の量が極端に少ない場合にも圧力が小さくなる場合もある。このように、圧力が許容範囲の下限値未満である場合も、圧力監視演算部303では、圧力が小さすぎることを示す圧力異常信号を表示制御部304に出力する。
【0062】
この場合も、圧力が許容範囲よりも小さいことをユーザに知らせるための表示を表示画面103上で行う。圧力が許容範囲の下限値未満であることを示す表示としては、たとえば、表示画面103上に、「試料の量を適量としてください」といった内容も考えられるが、圧力が許容範囲の下限値未満となる原因としては、クッション材113の劣化や支持部材111の割れなど部品の不具合が考えられるので、このような部品の不具合が生じた可能性を示す表示を行うことが好ましい。
【0063】
すなわち、クッション材113の劣化や支持部材111の割れなどが発生していると、たとえ、試料受け皿部202に試料203が適量入っていたとしても、圧力が許容範囲よりも小さくなる可能性が高い。特に、水分測定装置を購入してから長期間が経過すると、経年変化などにより、クッション材113が劣化したり、クッション材113を支持する支持部材111の劣化などによる支持部材111の割れなどが生じる場合もある。
【0064】
このような状況に対処するために、表示画面103に表示する表示内容としては、前述の「試料の量を適量としてください」といった内容以外に、クッション材113の劣化や支持部材111の割れなど、試料が適量でないこと以外にも原因があることを考慮して、販売店で点検してもらうことを勧める内容として、たとえば、「販売店で点検してください」といった表示を行うことが好ましい。
【0065】
このように、圧力が小さすぎる場合にも、表示画面103での表示を行うとともに、表示ランプ(図示せず)を点灯させることも可能である。このように、表示画面103上での表示と表示ランプによる表示の両方を行うことも可能であるが、いずれか一方のみであってもよい。
【0066】
また、表示ランプの点灯を行う場合には、圧力が大きすぎる場合と小さすぎる場合とでそれぞれ異なった色などの表示ランプを設けて、それぞれ対応する表示ランプを点灯させることも可能である。
【0067】
また、算出された水分値の補正を行うことも可能である。これは、クッション材113の劣化や支持部材111の割れなどの不具合はユーザがその場で対応できるものではなく、当面の措置として、補正によって適正な水分値を表示させることがユーザに対する利便性向上という点で好ましいと考えられるからである。
【0068】
このように、クッション材113の劣化や支持部材111の割れなどの不具合によって、圧力が許容範囲未満となった場合、圧力監視演算部303では、水分値補正信号を水分値補正演算部305に出力する。これにより、水分値補正演算部305では、圧力監視演算部303から与えられた水分値補正信号に基づき、水分値算出演算部302で算出された水分値を補正する。なお、補正後の水分値は表示制御部304に与えられ、補正後の水分値として表示画面103で表示される。
【0069】
以上説明したように本発明の実施形態によれば、ハンドル102をその回転が規制されるまで回転させた状態、すなわち、可動電極108を下方向(固定電極110側)に所定量だけ移動させたときの試料203に加わる可動電極108の圧力の大きさを検知可能な圧力検知手段112を設けるとともに、圧力検知手段112による圧力検知結果に基づいて、可動電極108を固定電極110側に所定量だけ移動させたときの試料203に加わる可動電極108の圧力の大きさを監視する機能を有する圧力監視演算部303を設けている。これにより、電気的特定値(電気抵抗値など)を測定する際の試料に加わる可動電極108の圧力の大きさが適正であるか否かを監視することができる。
【0070】
これにより、そのときの圧力の大きさが適正でない場合には、何らかの対処を行うことができ、圧力の大きさが適正ではない状態で算出された水分値を、その時の試料の水分値であるとして認識してしまうといったことを未然に防止することができる。
【0071】
このような不具合に対処するために、圧力が許容範囲を外れた場合には、ユーザにその旨を表示するようにしている。特に、圧力が許容範囲の下限値未満である場合には、クッション材113の劣化や支持部材111の割れなどが原因である場合が多く、このような状況に対処可能とするために、その旨を表示するだけでなく、算出された水分値を補正して補正後の水分値を表示させることも可能としている。
【0072】
なお、本発明は上述の実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変形実施可能となるものである。たとえば、ハンドル102は回転式のものを例にとって説明したが、回転式に限られるものではなく、上下方向に可動させる方式のものであってもよい。
【0073】
また、前述の実施形態では、クッション材113として、シリコンなどによる合成ゴム系のものを用いたが、これに限られるものではなく、たとえば、金属性の板バネ、コイルバネなどを用いることも可能である。
【0074】
また、前述の実施形態では、電気的特定値として電気抵抗値を求め、求められた電気抵抗値に基づいて水分値を算出する穀物の水分値を算出するようにした。すなわち、前述の実施形態では直流回路を想定したものであったが、交流回路を構成することによって本発明を実現することができる。この場合、電気的特定値としてインピーダンスを求め、求められたインピーダンスに基づいて水分値を算出する。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】本発明の実施形態に係る穀物水分測定装置の外観構成を示す図。
【図2】図1におけるA−A’線の矢視部分断面図。
【図3】本発明の実施形態に係る水分測定装置の演算制御装置の構成図。
【符号の説明】
【0076】
100・・・水分測定装置本体、200・・・試料保持プレート、101・・・筐体、102・・・ハンドル、103・・・表示画面、104・・・穀物選択ボタン、105・・・測定ボタン、106平均値算出ボタン、107・・・試料保持プレート挿入口、108・・・可動電極、109・・・支持部材、110・・固定電極、111・・・支持部材、112・・・圧力検知手段、113・・・クッション材、201・・・プレート部、202・・・試料受け皿部、203・・・試料、204・・・底面板、300・・・演算制御部、301・・・A/D変換部、302・・・水分値算出演算部、303・・・圧力監視演算部、304・・・表示制御部、305・・・水分値補正演算部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体に設けられた支持部材にクッション材を介して固定された固定電極と、前記固定電極と対をなす可動電極とを有し、前記固定電極と可動電極との間に測定対象となる穀物を介在させ、前記可動電極を前記固定電極側に所定量だけ移動させることによって前記可動電極が前記穀物に対して所定の大きさの圧力を加えた状態で前記可動電極と前記固定電極との間の電気的特定値を求め、求められた電気的特定値に基づいて前記穀物の水分値を算出する穀物水分測定装置であって、
前記可動電極を前記固定電極側に所定量だけ移動させたときの前記穀物に加わる前記可動電極の圧力の大きさを検知可能な圧力検知手段と、
前記圧力検知手段による圧力検知結果に基づいて、前記可動電極を前記固定電極側に所定量だけ移動させたときの前記穀物に加わる前記可動電極の圧力の大きさを監視する機能を有する圧力監視演算部と、
を有することを特徴とする穀物水分測定装置。
【請求項2】
請求項1に記載の穀物水分測定装置において、
前記圧力検知手段は、前記固定電極と前記クッション材との間に設けられることを特徴とする穀物水分測定装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の穀物水分測定装置において、
前記圧力監視演算部は、前記可動電極を前記固定電極側に所定量だけ移動させたときの前記穀物に加わる前記可動電極の圧力の大きさが前記所定の大きさの圧力でない場合、前記穀物に加わる前記可動電極の圧力の大きさが適正でないことを表示するための信号を生成する機能をさらに有することを特徴とする穀物水分測定装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の穀物水分測定装置において、
前記圧力監視演算部は、前記可動電極を前記固定電極側に所定量だけ移動させたときの前記穀物に加わる前記可動電極の圧力の大きさが前記所定の大きさの圧力でない場合、前記算出された水分値を補正するための信号を出力する機能をさらに有することを特徴とする穀物水分測定装置。
【請求項5】
請求項4に記載の穀物水分測定装置において、
前記水分値を補正するための信号に基づいて前記算出された水分値を補正する水分値補正演算部を有することを特徴とする穀物水分測定装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の穀物水分測定装置において、
前記所定の大きさの圧力には許容範囲を設けることを特徴とする穀物水分測定装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の穀物水分測定装置において、
前記電気的特定値は、電気抵抗値であることを特徴とする穀物水分測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−285913(P2007−285913A)
【公開日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−114296(P2006−114296)
【出願日】平成18年4月18日(2006.4.18)
【出願人】(306001471)株式会社オガ電子 (3)
【Fターム(参考)】