説明

穀類加工食品用品質改良剤およびこれを用いた穀類加工食品

馬鈴薯由来の水溶性酸性多糖類かちなる穀類加工食品用品質改良剤。穀類加工食品の澱粉の流出が防止されて艶の消失が改善され、食品同士の結着性がなくなってほぐれ性が改善され、さらには戻し湯の白濁が防止されて穀類加工食品の品質が改善される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、穀類加工食品用品質改良剤およびこの品質改良剤が添加されてなる穀類加工食品に関する。本発明は、特に、馬鈴薯由来の水溶性酸性多糖類からなる品質改良剤およびこの品質改良剤を添加することにより戻し湯の白濁防止、艶の改善、ベタ付き防止、さらに保存後の食品同士の結着性が低下し、ほぐれ性が改良された麺類、飯類などの穀類加工食品に関する。
【背景技術】
麺類や加工米飯食品等の穀類加工食品においては、経時的に食品表面に離水を生じ、この離水した水分に澱粉質が流出して艶が消失したり、または食品同士が結着し、団子状になってほぐれ難くなる等の問題がある。さらに、麺類においては、湯戻しした際の戻し湯が白濁する等の問題が生じる。これらは、いずれも食味上好ましくないが、特に食品同士の結着については食べにくい、おいしくないというのみならず、食べる直前に最終的に加熱する時の加熱ムラの原因となり、加熱効率ひいては作業効率を低下させることにもなる。
この食品同士の結着をなくし、ほぐれ性を改善する従来の方法としては、油脂または乳化油脂を添加混合する方法(特開平3−175940号公報)、HLBの高い蔗糖脂肪酸エステルを添加する方法(特公昭60−8103号公報)、有機酸を添加する方法(特開昭61−181350号公報)、大豆由来の多糖類を添加する方法(特開平6−121647号公報)、多糖類と乳化剤を組み合わせて添加する方法(特開2001−95514号公報)、機械的な振動を与えながら加工する方法(特開平1−101855号公報)などが開示されているが、油分を添加した場合には油浮きがでて和風の食品には使用し難く、乳化剤を使用した場合にはぱさつき感がでて表面の艶が失われ、有機酸などの酸またはその塩類を添加すると味に影響を及ぼし、大豆由来の多糖類素材を添加した場合には飯粒および麺線がベタつくなどの問題が残されており、また麺類を湯戻しした場合のスープ等の白濁防止の効果も充分ではなかった。
一方、根菜類、特に馬鈴薯には、澱粉質と共にペクチン性の酸性多糖類が含まれることが古くより知られており(Ullmanns Enzyklopaedie der techn.Chemie,Bd.13,171,Urban & Schwarzenberg,Muenchen−Berlin(1962))、これをペクチンの製造原料とする抽出法の検討が種々なされてきた(Die Staerke 26(1974)12,417−421、CCB 3,1(1978)48−50、Getreide Mehl und Brot 37,5(1983)131−137、特開昭60−16140号公報、Chem.Eng.Technol 17(1994)291−300、WO97/49298号公報)。また、用途に関しても古くから研究が行われており、主にゲル化剤としての使用の検討がなされている(ZSW Bd.31(1978)H.9 348−351、Getreide Mehl und Brot 37,5(1983)131−137、WO97/49298号公報)が、実用化には至っていない。
【発明の開示】
本発明は、穀類加工食品の澱粉の流出を防止することにより艶の消失を改善し、食品同士の結着性をなくしてほぐれ性を改善し、さらには戻し湯の白濁を防止することにより穀類加工食品の品質を改善することを課題とする。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を進めた結果、馬鈴薯由来の水溶性酸性多糖類が穀類加工食品に対する品質改善効果を有することを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、馬鈴薯由来の水溶性酸性多糖類からなる穀類加工食品用品質改良剤を提供する。
本発明は、また、上記穀類加工食品用品質改良剤を添加してなる穀類加工食品を提供する。
本発明に係る穀類加工食品においては、艶およびほぐれ性が改善され、また戻し湯の白濁防止効果が向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
本発明において、穀類加工食品とは、穀類食品(米飯、麦飯等)および穀類の1次加工食品またはさらにこれを2次加工した食品のことをいう。穀類の1次加工食品としてはバターライス、粟餅、乾麺、生麺、パスタ、ソバ等があり、2次加工食品としては1次加工食品を調味するしないに関わらず、これを再調理した食品、例えば、おにぎり、ピラフ、かやくご飯、調味インスタントラーメン等がある。
これらの穀類加工食品には、家庭で調理されるものをはじめ、その場で食べることを目的とする最終製品や、食べる際に調理の必要な半製品が含まれ、常温、冷蔵、冷凍、氷温等の方法で市場に流通している食品が含まれる。
一方、本発明に用いられる馬鈴薯由来の水溶性酸性多糖類(以下、酸性馬鈴薯多糖類という)は、馬鈴薯を原料とし、それから通常の方法で澱粉質、蔗糖などの少糖類、蛋白質などを除いた粕を用いて抽出されるが、pH3〜7、好ましくはpH4〜6の弱酸性域において、好ましくは80℃以上130℃以下、より好ましくは100℃以上130℃以下の温度で加熱抽出し、水溶性画分を分画した後、そのまま乾燥するか、あるいは、例えば、酵素処理、界面活性剤処理、活性炭処理、樹脂吸着処理またはエタノール沈殿処理を行って夾雑する澱粉質もしくは低分子物質を除去し、乾燥することによって得ることができる。
このようにして得られる酸性馬鈴薯多糖類は、組成のおよそ7割以上が糖質(澱粉を含む)であり、その他、粗灰分、粗蛋白などを含有している。また、構成糖としてウロン酸を含むことを特徴とする。
なお、澱粉は糖質であるといっても本発明における酸性多糖類からは夾雑物であり、本発明における酸性馬鈴薯多糖類は抽出の際に夾雑する澱粉質を除去して酸性多糖類の純度を上げることにより、機能がより強く発揮されるようになる。夾雑する澱粉質は、ヨウ素を用いた定量法による含量の測定において、60%以下、好ましくは30%以下、より好ましくは10%以下にすることが望ましい。澱粉質の除去には、公知の方法を用いればよく、例えば、酵素による分解、あるいは100℃以下の水による原料からの洗浄除去、抽出液中の不溶化部分の分離等が挙げられる。
酸性馬鈴薯多糖類の原料としては、生のまたは乾燥した馬鈴薯をそのまま使用することもできるが、取扱い上での溶解性やコストを含めた工業的な利用可能性の面から、澱粉産業の加工副産物として副生される生のまたは乾燥した澱粉粕を使用することが好ましい。
次に、この酸性馬鈴薯多糖類を穀類食品または穀類加工食品に添加し、またはこの酸性馬鈴薯多糖類により穀類食品または穀類加工食品を表面処理する方法としては、例えば、次の方法を挙げることができる。
イ.予め水洗した米に酸性馬鈴薯多糖類を添加し、水かげんし、炊飯する。また、その米飯をさらに酸性馬鈴薯多糖類で処理する。
ロ.麺またはパスタを茹でる際の水または熱湯に予め酸性馬鈴薯多糖類を添加して茹でる。
ハ.炊飯、蒸煮後の米飯や茹で上がった麺またはパスタに酸性馬鈴薯多糖類の水溶液を絡ませて表面処理する。
ニ.成形した穀類食品、例えば、ピラフに予め酸性馬鈴薯多糖類の水溶液を噴霧して表面処理し、冷凍または加熱加工する。
ホ.予め調味液に酸性馬鈴薯多糖類を溶解しておき、この調味液をパスタ、麺または飯にまぶして表面処理する。
ヘ.炊飯、蒸煮後の米飯や茹で上がった麺またはパスタに酸性馬鈴薯多糖類の粉体をそのまま添加する。
ト.麺またはパスタ生地に酸性馬鈴薯多糖類を添加して練り込む。
これらの方法は上記の個々の食品には有効であるが、一般的に効果的な添加または表面処理の方法は、上記イ〜ハの炊飯の水や麺またはパスタを茹でる際の水または熱湯に予め酸性馬鈴薯多糖類を添加しておく方法や、酸性馬鈴薯多糖類水溶液を麺、パスタまたは米飯に絡ませて表面処理する方法である。
添加量は、穀類食品または穀類加工食品に対してウロン酸を指標成分として好ましくは0.003〜1.0質量%、より好ましくは0.035〜0.5質量%、さらに好ましくは0.08〜0.2質量%である。
上記した如き方法により、本発明に係る穀類加工食品用品質改良剤により穀類加工食品を処理することにより、穀類加工食品のほぐれが良く、麺線や飯粒の結着がないこと、水分の流出がなく歩留まりが良いこと、麺線や飯粒の艶が良くなること、湯戻しした際の戻し湯の白濁が防止されることなどの優れた効果を得ることができる。これらの効果は、主に穀類食品表面への澱粉質の流出を防止するなどの効果によるものと考えられる。
穀類加工食品のほぐれ性の改良による効果としては、その食品を食べる際に食べ易い、おいしいと感じることのほかに、再調理をする際に加熱ムラがなく、熱効率がよいため、短時間で最適の食品を得ることができるということが挙げられる。
その他に、酸性馬鈴薯多糖類を添加し、または酸性馬鈴薯多糖類で表面処理した穀類加工食品の特徴および効果としては、他の多糖類素材を添加したときにみられるような飯粒および麺線のベタつきがなく、また乳化剤を使用したときにみられるようなぱさつき感がなく、表面の艶が維持されること、麺質および飯質の低下が少なく、長期の保存においても効果が持続されること、油分を添加したときにみられるような油浮きがなく、和風の食品にも使用しやすいこと、添加方法が簡単なため特別な設備を必要としないことなどが挙げられる。
本発明において、酸性馬鈴薯多糖類は、単独で使用することが可能であるけれども、適宜他の添加剤と併用することもできる。他の添加剤としては、レシチンやグリセリン脂肪酸エステル、蔗糖脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル等の乳化剤、一般の動植物性油脂や脂溶性ビタミンであるトコフェロール等、デキストリン、寒天、カラギーナン、ファーセレラン、タマリンド種子多糖、タラガム、カラヤガム、ペクチン、キサンタンガム、アルギン酸ナトリウム、トラガカントガム、グアーガム、ローカストビーンガム、プルラン、ジェランガム、アラビアガム、水溶性大豆多糖類、ヒアルロン酸、シクロデキストリン、キトサン、カルボキシメチルセルロース(CMC)、アルギン酸プロピレングリコールエステル、カードラン、ガティガム、サイリウムシードガム等の多糖類やこれらの多糖類の加水分解物、さらには各種澱粉、加工澱粉、澱粉分解物、糖アルコールなどが挙げられ、また澱粉としては通常食品として供される塊茎、地下根、穀物、豆類由来ものであれば、特に限定されるものではない。例えば、コーン、ワキシーコーン、小麦、米、馬鈴薯、甘しょ、タピオカなどが挙げられるが、これらうちではコーン、ワキシーコーン、タピオカが好ましい。また、これらの澱粉を2種以上組み合わせて使用することもできる。さらに、それらの澱粉を分解し、アルファー化し、誘導化し、分画し、あるいは物理的加工を施したものであってもよい。例えば、澱粉糖、焙焼デキストリン、酸化澱粉、酸処理澱粉、アルカリ処理澱粉、酵素処理澱粉、アルファー化澱粉、エステル化澱粉、エーテル化澱粉、グラフト化澱粉、架橋澱粉、アミロース、アミロペクチン、湿熱処理澱粉などが挙げられる。好ましくは、焙焼デキストリン、酸化澱粉、酸処理澱粉、アルカリ処理澱粉、酵素処理澱粉、エステル化澱粉、エーテル化澱粉、グラフト化澱粉、架橋澱粉であり、さらに好ましくは酸化澱粉、酸処理澱粉、アルカリ処理澱粉、酵素処理澱粉である。また、これらの化工および加工方法が異なる澱粉を2種以上組み合わせることも可能である。さらに、ゼラチン、ホエー等のアルブミン、カゼインナトリウム、可溶性コラーゲン、卵白、卵黄末、大豆蛋白等の蛋白質や、カルシウム強化剤等の塩類、クエン酸、乳酸などの有機酸ならびにその塩類等が挙げられる。
以下、実施例により本発明をさらに説明するが、これは例示であって本発明の範囲がこれらの例によって何ら制限されるものではない。なお、例中、%は質量基準で示される。
製造例1
酸性馬鈴薯多糖類(ア)の調製
乾燥した馬鈴薯澱粉粕(水分13%、澱粉含量(固形分中)42%)50gを水950gに懸濁した後に、塩酸でpHを4.5に調整し、120℃で30分間加熱することにより、水溶性酸性多糖類を抽出した。冷却後、遠心分離(10000g×30分間)を行い、多糖類抽出液と沈殿部に分離した。分離した沈殿部に等質量の水を加えて再度遠心分離を行い、上澄み液を先の多糖類抽出液と混合した後そのまま乾燥して、酸性馬鈴薯多糖類(ア)を回収した。
製造例2
酸性馬鈴薯多糖類(イ)の調製
乾燥馬鈴薯澱粉粕(商品名:Paselli−FP、AVEBE社、水分12%、澱粉含量(固形分中)19%)500gを水9500gに懸濁した後に、塩酸でpHを4.5に調整後、120℃で30分間加熱して、水溶性酸性多糖類を抽出した。冷却後、遠心分離(10000g×30分間)を行い、多糖類抽出液と沈殿部に分離した。分離した沈殿部に等質量の水を加えて再度遠心分離を行い、上澄み液を先の多糖類抽出液と混合した後に乾燥して、酸性馬鈴薯多糖類(イ)を得た。
製造例3
酸性馬鈴薯多糖類(ウ)の調製
乾燥馬鈴薯澱粉粕(商品名:POTEX,リカビー・シュテルケルセン社、水分5%、澱粉含量(固形分中)7%)500gを水9500gに懸濁した後に、塩酸でpHを4.5に調整後、120℃で30分間加熱して、水溶性酸性多糖類を抽出した。冷却後、遠心分離(10000g×30分間)を行い、多糖類抽出液と沈殿部に分離した。分離した沈殿部に等質量の水を加えて再度遠心分離を行い、上澄み液を先の多糖類抽出液と混合した後に乾燥して、酸性馬鈴薯多糖類(ウ)を得た。
製造例4
酸性馬鈴薯多糖類(エ)の調製
製造例2と同様にして得られた粗多糖類液に、澱粉糖化酵素(商品名:アミログルコシダーゼ、ノボ社)を40単位(1分間に1μモルのマルトースを分解する酵素量を1単位とする)添加し、50℃で1時間作用させた。反応終了後、90℃、10分間の熱処理を行うことにより酵素を失活させ、濾別して得られた糖化液にアルコール濃度80%となるようにエタノールを加えて沈殿精製処理を行った。回収した沈殿部を乾燥して、酸性馬鈴薯多糖類(エ)を得た。
以上で得られた各酸性馬鈴薯多糖類の分析結果を纏めると下記の表1の通りであった。なお、全糖の測定はフェノール硫酸法により、ウロン酸の測定はBlumenkrantz法により、澱粉含量の測定はヨウ素呈色法により行った。

実施例1(うどんテスト)
方法
冷凍うどん(加ト吉(株)製)を沸騰水で茹でた後に水洗し、水切りを行い、うどん質量に対して多糖類試料を下記の表2に示す量で添加した。酸性馬鈴薯多糖類の添加量を、酸性馬鈴薯多糖類中のウロン酸を指標成分としてウロン酸添加量で0.1%になるようにした。なお、添加は、水切りしたうどん100gに対して5gの試験液(所定量の酸性馬鈴薯多糖類を溶解した溶液)を滴下することにより行った。添加後、5℃で一晩静置した後に官能評価を行った。結果を表3に示す。


評価基準
見た目 1(艶が良い)・・3(基準)・・5(艶が悪い)
ほぐれ易さ 1(ほぐれ易い)・・・・・・・・5(ほぐれにくい)
ウロン酸を指標成分としてその量が0.10%になるように酸性馬鈴薯多糖類を添加したうどんは、いずれも無添加のものと比べて、ほぐれ性が改善されていた。ただし、澱粉含量により麺の艶に与える影響に違いがあった。ほぐれ性を改良する効果のみを期待するならば、澱粉含量60%以下で十分であるが、麺の艶をも改善するためには、澱粉含量は30%以下が適当であると認められた。澱粉含量を10%以下にすると、さらに麺質が改善され、より一層ほぐれ効果と艶が強く感じられるようになった。
実施例2(うどんテスト〜酸性馬鈴薯多糖類添加量の影響)
方法
冷凍うどん(加ト吉(株)製)を沸騰水で茹でた後に水洗し、水切りを行い、うどん質量に対して試料として酸性馬鈴薯多糖類(エ)を下記の表4に示す量で添加した。添加は、実施例1と同じ方法で行った。添加後、5℃で一晩静置した後に官能評価を行った。結果を表5に示す。




評価基準
見た目 1(艶が良い)・・3(基準)・・5(艶が悪い)
ほぐれ易さ 1(ほぐれ易い)・・・・・・・・5(ほぐれにくい)
ウロン酸を指標成分としてその量が0.003%以上となるように酸性馬鈴薯多糖類を添加したうどんは、いずれも無添加のものと比べ、見た目(艶)並びにほぐれ性が改善されていた。ただし、ウロン酸の添加量が0.3%以上になると表面処理する際の作業性が低下し、さらに1.0%以上になると添加後の麺の所々に試料液溜まりが残るようになった。
実施例3(冷凍鶏肉ピラフ)
鶏肉250gを、骨をとって、2センチ角に切り、予め塩こしょうをしておいた。玉ねぎを、ブランチングとして、予め電子レンジで加熱しておき、1センチ角に切った。ピーマンをさっと茹で、同じ大きさに切った。上記鶏肉を強火で炒め、白ワインを少々ふり入れた。バターを加え、玉ねぎ、ピーマンを軽く炒め、そこへ予め100gのデミグラスソース、80gのブイヨンに2.2gの酸性馬鈴薯多糖類(エ)を溶解したものを絡ませて表面処理した米飯(米2合分)を加えて、水分がなくなるまで炒めた。
でき上がった鶏肉ピラフの荒熱をとり、容器に充填し、冷凍保存した。使用時に必要量を取り出し、電子レンジで加熱またはフライパンで再度炒めた。こうしてでき上がったピラフは、ほぐれやすく、均一に短時間で加熱でき、おいしいものであった。また、調理後さめてもベタつかず、おいしく食することができた。また、冷凍品をとり出す際もばらけ易いため、必要量を取り出し易かった。
実施例4(レトルトうどん)
冷凍うどん(加ト吉(株)製)を沸騰水で茹で、すばやく50℃に加温した5%酸性馬鈴薯多糖類(エ)水溶液に1分間浸漬して表面処理した。水を切り、レトルトパウチに充填して、レトルト殺菌し(120℃、10分間)、常温で1週間保存した。なお、表面処理による酸性馬鈴薯多糖類(エ)の付着量はうどんの質量に対して0.22%であった。比較として、上記酸性馬鈴薯多糖類(エ)の代わりに水溶性大豆多糖類(ソヤファイブ−S−DN:不二製油(株)製)を用いて上記と同じ処理を行った。この2品のうどんを食する前に熱いつゆを注ぎ、インスタントうどんとした。両者ともにほぐれがよく、熱のかかり方が一様でおいしいものであった。しかしながら、水溶性大豆多糖類で表面処理したものは、つゆがやや白濁していた。対して、酸性馬鈴薯多糖類で表面処理したものは、つゆの濁りがなく、見た目にも非常に優れたものであった。
実施例5(中華麺)
中華生麺(東洋水産(株)製)を沸騰水で茹でた後に、流水にて冷却後、麺を氷水につけて締めた。その後水を切り、2%酸性馬鈴薯多糖類(エ)水溶液(乳酸を0.8%含有する)に30秒間浸漬して表面処理した。十分に水切りを行った麺を、レトルトパウチに充填して、沸騰水浴中で5分間の殺菌を行った。表面処理による酸性馬鈴薯多糖類(エ)の付着量は中華麺の質量に対して0.12%であった。比較として、上記酸性馬鈴薯多糖類(エ)の代わりに水溶性大豆多糖類(ソヤファイブ−S−DN:不二製油(株)製)を用いて上記と同じ処理を行った。この2品の中華麺を食する前に湯戻しした。これらの中華麺は両者ともにほぐれがよく、箸を通さなくても湯戻し中に麺がほぐれて熱のかかり方が一様でおいしいものであった。しかしながら、水溶性大豆多糖類で表面処理したものは、スープがやや白濁していた。対して、酸性馬鈴薯多糖類で表面処理したものはスープの濁りがなく、見た目にも非常に優れたものであった。
実施例6(インスタント焼きそば)
市販の乾麺タイプのインスタントやきそばの別添のソースに、酸性馬鈴薯多糖類(エ)を乾麺重量の0.3%となる量で添加した。このインスタントやきそばを常法に従って作り、食したが、麺のべたつきがなく、食味性の優れたものであった。また、経時後もべたつかず、いつまでもおいしく食することができた。
実施例7(バターライス)
厚手鍋にバターを溶かし、みじん切りの玉ねぎを軽く炒めた。そこへ水洗した米300gを加え、酸性馬鈴薯多糖類(エ)を1.8g、ブイヨンを600ml添加して炊きあげた。こうしてでき上がったバターライスは、調理の腕前には関係なくべたつかず、ばらけの良いものであり、風味も良く、付け合わせの料理にも良くあった。また、冷凍保存やレトルト加熱によってもそれらの効果が損なわれることなく保存でき、再調理にも手間がかからなかった。
実施例8(マカロニグラタン)
茹で上がったマカロニを60℃に加温した1.5%酸性馬鈴薯多糖類(エ)水溶液に1分間浸漬して表面処理し、レトルトパウチに充填してレトルト殺菌(120℃、10分間)を行った。表面処理による酸性馬鈴薯多糖類(エ)の付着量はマカロニの質量に対して0.08%であった。このマカロニを、使用時に袋から出し、手早くホワイトソースと混ぜ合わせてオーブンで焼き、マカロニグラタンをつくった。このグラタン用のマカロニはほぐれがよく、袋離れがよかった。これは、家庭用のインスタント食品や量販店用として有効に利用できると考えられた。
【産業上の利用可能性】
本発明の酸性馬鈴薯多糖類からなる穀類加工食品用品質改良剤を穀類加工食品に添加し、この改良剤により表面処理することにより、穀類加工食品のほぐれがよく、麺線や飯粒の結着がないこと、水分の流出がなく、歩留まりがよいこと、麺線や飯粒の艶が良くなること、戻し湯の白濁が防止されることなどの効果が得られ、品質の改良された穀類加工食品を提供することができる。さらに、他の多糖類素材を添加したときにみられるような飯粒および麺線のベタつきがなく、乳化剤を使用したときにみられるようなぱさつき感がなくて、表面の艶が維持され、麺質および飯質の低下が少なく、長期の保存においても効果が持続され、油分を添加したときにみられるような油浮きがなく、和風の食品にも使用しやすく、また添加方法が簡単なため特別な設備を必要としないなどの優れた効果も併せて得ることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
馬鈴薯由来の水溶性酸性多糖類かちなる穀類加工食品用品質改良剤。
【請求項2】
馬鈴薯由来の水溶性酸性多糖類が構成糖としてウロン酸を含む多糖である、請求項1記載の品質改良剤。
【請求項3】
請求項1または2に記載した品質改良剤が添加されてなる穀類加工食品。

【国際公開番号】WO2004/039176
【国際公開日】平成16年5月13日(2004.5.13)
【発行日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−548017(P2004−548017)
【国際出願番号】PCT/JP2003/012915
【国際出願日】平成15年10月8日(2003.10.8)
【出願人】(000236768)不二製油株式会社 (386)
【出願人】(000175283)三栄源エフ・エフ・アイ株式会社 (429)
【Fターム(参考)】