説明

穀類収納袋における換気装置

【課題】簡単な操作で、確実に、穀類収納袋の中央部分にパイプを垂直方向に埋入させることができる換気装置を提案する。
【解決手段】上端が開口した一定長のパイプの周壁に、所定の長さにわたり穀類が通過し得ない大きさの多数の細孔を貫設するとともに、前記パイプの下端は先細り状に閉止したテーパー部を形成し、このテーパー部の側斜面から開始しパイプの周壁面の途中にかけてらせん状のスクリュー羽根を連続して設け、穀類を収容した穀類収納袋の中央部分に、前記パイプの上端開口部を上方に突出させた状態でほぼ垂直方向に深く埋設可能とするという手段を採用した。また、上記パイプの上端部近傍に、互いに90度の角度で放射状に突出する4本のハンドルを着脱自在に取り付けるという手段、上記ハンドルの長さが、それぞれ上記パイプの直径の2倍から3倍であるという手段を採用した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、コンバインによって収穫される生籾等の穀類を、直接大型の穀類収納袋に収容した際に、穀類の内部昇温によって発生するムレを防止する換気装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、コンバインによって生籾等を収穫する場合、従来の収容量が30〜40kg範囲の小型の穀類収納袋に代えて、コンバインに内蔵されたタンクに貯蔵される700〜1,000kgもの生籾を一気に移し換え可能な大型の穀類収納袋を使用して、収穫能率の向上を図ることが行われている。
【0003】
そして、この穀類収納袋としては、直径が1.2m、高さ1.3m程の大きさの袋体が広く用いられている。また、刈り取られた生籾が充満した収納袋は、そのまま自家の乾燥機または地域のライスセンター等に搬入して乾燥させた上で保存するという手段が採用されている。
【0004】
一般に刈り取られた生籾の含水分は28%前後と高く、かかる多量の水分を含んだ生籾を収容した収納袋は、内部通気がほとんど得られないことから、特に農繁期などでは、生籾を上記収納袋に収納した状態で数時間にも及ぶ乾燥待ちを余儀なくされることもあり、この間に収納袋の中心部分の生籾は、内部の温度上昇によるムレが発生し、精米した場合の変色や割米の原因となり、ときには発芽してしまうこともあり、商品価値を大きく低下させるという問題があった。
【0005】
そこで、この問題を解決する目的で、本願発明者は、特許文献1に開示されるような有孔パイプからなる換気装置を提案している。即ち、上端を開口し、下端を先細り状のテーパー面とした一定長さのパイプの周壁に、生籾が通過し得ない大きさの多数の細孔を貫設し、このパイプを上記収納袋の中心部分における底部から上方に突出した状態で深く埋入させるようにして換気装置を構成し、ムレの発生しやすい収納袋の内部の換気を促進して、温度上昇を抑制するようにしたものである。
【0006】
上記構成の換気装置は、上端開口を露出させた状態で、生籾が充満した収納袋の中心部分に深く埋入させることによって、温度上昇が高く、水分の蒸散が盛んな部分の空気をパイプ周壁の細孔から導入し、それを自然対流により、または、ファンを介して外部に排出し、この部分の生籾のムレを確実に抑制できるものである。
【0007】
【特許文献1】実開平7−12885号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記特許文献1に記載の換気装置は、下端を先細り状のテーパー面とするか、或いは、そのテーパー面のみに小さなスクリュー羽根を取り付けたものであったから、大量の生籾を収容した収納袋の開口面からその先端部を埋入させようとする際、先端部は比較的容易に埋入するが、回転させながら進行させるに従って、パイプ周壁の抵抗によりその進行が妨げられ、収納袋の底部まで完全に埋設させるには、多大な労力を必要としていた。
【0009】
また、その場合、この換気装置は垂直に近い方向に進行させて埋設することが好ましいが、従来のものは、その回転ハンドルが、水平横方向に一対、即ち互いに180度の方向に2本のハンドル棒が突出して設けられているだけであったから、一度に180度ずつ回転させなければならず、その回転操作が面倒であるとともに、併せて垂直方向を維持するために、熟練を要するものであった。
【0010】
このため、その進行を補助するものとして、図3に示すように、パイプの周壁にのみスクリュー羽根を設けたものも提案されているが、この場合、先端部のテーパー面に羽根がないため、その進行方向にブレが生じやすく、垂直方向を維持しながら埋入させることが困難であった。
【0011】
本発明は、上記諸課題に鑑みて発明をしたものであって、簡単な操作で、かつ、確実に、収納袋の中央部分においてパイプを垂直方向に埋入させることができるようにした穀類収納袋における換気装置を提案するものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上述した課題を解決するため、本発明は、穀類収納袋における換気装置として、上端が開口した一定長のパイプの周壁に、所定の長さにわたり穀類が通過し得ない大きさの多数の細孔を貫設するとともに、前記パイプの下端は先細り状に閉止したテーパー部を形成し、このテーパー部の側斜面から開始しパイプの周壁面の途中にかけてらせん状のスクリュー羽根を連続して設け、穀類を収容した穀類収納袋の中央部分に、前記パイプの上端開口部を上方に突出させた状態でほぼ垂直方向に深く埋設可能とするという手段を採用した。
【0013】
また、上記パイプの上端部近傍に、互いに90度の角度で放射状に突出する4本のハンドルを着脱自在に取り付けるという手段を採用した。
【0014】
このとき、上記ハンドルの長さが、それぞれ上記パイプの直径の2倍から3倍であるという手段を採用した。
【0015】
さらに、上記先細り状のテーパー部の先端角度が鋭角であるという手段を採用した。
【0016】
また、上記パイプの上端開口部に吸引ファンを装着可能とするという手段を採用した。
【発明の効果】
【0017】
上記構成にかかる本発明の穀類収納袋における換気装置は、収納袋の中心部の湿潤空気を、その周壁に設ける多数の細孔を通じてパイプ内に導入し、自然対流により外部に放出するという作用は従前のこの種装置と同様であるが、パイプの下端を先細り状に閉止したテーパー部を形成し、このテーパー部の側斜面から開始しパイプの周壁面の途中にかけてらせん状のスクリュー羽根を連続して設けているので、その設置の際に、テーパー部のスクリュー羽根は、鋭角部分と相乗的に作用して、パイプを真っ直ぐに進行させる作用を奏し、胴部面のスクリュー羽根は、回転によりパイプを確実に前進させる作用を奏するものである。
【0018】
そのため、パイプを中心部分において垂直方向に確実に埋設することが可能であり、上記換気作用が収納袋全体に均等に作用して、収容穀類のムレの発生を防止し、変色や割れを防止することで商品価値を維持できるという格別の効果が期待できるものである。
【0019】
また、4本のハンドルを放射状に突出して設けているので、パイプを90度ずつ、確実に回転させることができ、パイプを正確に埋入させることができる。
【0020】
このとき、ハンドルの長さをパイプ径に比べて大きくしたので、大きな回転トルクを得ることが可能であり、回転操作を楽に行えるものである。
【0021】
また、テーパー部の先端角度を鋭角にすることにより、穀類の上面中心部に埋入させる際に、容易に行うことができるとともに、進行時にブレが生じることを抑制し、垂直方向に確実に埋設できるようになる。
【0022】
また、パイプの上端開口部に吸引ファンを設けた場合には、換気を強制的に行うので、自然対流によるものに比べて、格段に換気能力が向上し、効率よくムレの発生を防止でき、商品価値を損なうことがないものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明に係る穀類収納袋における換気装置の好ましい実施形態の一つを、添付した図面に従って説明する。図1は、本発明装置の全体斜視図である。また、図2は、本発明装置の使用態様を示す説明図で、穀類の例として生籾を収納した穀類収納袋の上面中心部分に深く挿入したものである。
【0024】
図1及び図2において、1は、金属製または硬質の合成樹脂製のパイプであり、その上端開口部2に必要に応じて外向きのフランジ3を設ける。また、上記パイプ1の周壁には、所定の長さにわたり多数の細孔4、4・・・を貫設している。この細孔4の孔径は、例えば生籾が通過し得ない程度の大きさとする。なお、パイプ1の周壁に設ける細孔4の領域は、少なくとも、収納袋(B)に収容した生籾(R)に対する挿入深さ以上の長さにわたって設けるものとする。
【0025】
5は上記パイプ1の下端に形成する先細り状に閉止したテーパー部であり、その先端角度は90度よりかなり小さい鋭角とする。6はらせん状のスクリュー羽根であり、上記テーパー部5の側斜面からパイプ1の胴部の周壁面の途中にかけて連続して設けている。このようにパイプ1下端に鋭角状のテーパー部5を形成するのは、収納袋(B)に収容した生籾(R)の上面中心部分に挿入する際に、挿入しやすくするためであり、さらにスクリュー羽根6を広範囲に設けたのは、先端がぶれることなく、垂直方向に回転しながら深く進行するようにするためである。即ち、テーパー部5のスクリュー羽根6は、鋭角部分と相乗的に作用して、パイプ1を真っ直ぐに進行させる作用を奏し、胴部面のスクリュー羽根6は、回転によりパイプ1を確実に前進させる作用を奏するものである。
【0026】
なお、7、7・・は、上記パイプの上端部近傍に着脱自在に取り付けるパイプ回転用のハンドルであり、少なくとも互いに90度の角度をもって放射状に突出して4本設けている。このハンドルのそれぞれの長さは、操作性を考慮すれば、パイプ1の直径に比べて少なくともその長さの2倍以上3倍以下とすることが好ましい。これにより、操作時に大きな回転トルクを得ることができるとともに、一度に90度ずつ回転させればよいから、パイプの挿入作業が正確に、かつ、小さな力で楽に行えるようになる。
【0027】
また、図2において、8は吸引ファンであり、パイプ1上端に設けた外向きのフランジ3を利用して、内部が密閉状態となるように取り付けるもので、必要に応じて設ける。この吸引ファン8により、パイプ1内の空気を強制的に排出し、換気機能を向上させる。
【0028】
なお、上記パイプ1の直径は、例えば、5〜10cm前後の比較的細めのものであれば、挿入しやすいという利点があるが、後述する換気能力が低下するようであれば、それ以上の直径とすることもあり、特に限定するものではない。また、必要に応じて、細めのものを複数本、同時に使用するようにしてもよい。
【0029】
上記構成の、本発明に係る換気装置は、図2に示すように、収納袋の生籾上面の中心部分において、ハンドル7の回転操作により垂直方向に挿入埋設する。これにより、中心部分における湿潤空気をパイプ1の周壁の細孔4からパイプ1内に導入し、これを自然対流によって上端開口部2から外部に排出するものである。また、フランジ3を介して吸引ファン8を装着した場合には、内部の湿潤空気を強制的に吸引し、排出するものである。そのため、生籾の温度上昇によって生じる内部のムレを確実に防止できるようになり、商品価値を損なうことがないという格別の効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明に係る穀類収納袋における換気装置の一例を示す斜視図である。
【図2】本発明装置の使用態様を示す説明図である。
【図3】従来の換気装置の下端部の部分拡大図である。
【符号の説明】
【0031】
1 パイプ
2 上端開口部
3 フランジ
4 細孔
5 テーパー部
6 スクリュー羽根
7 ハンドル
8 吸引ファン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上端が開口した一定長のパイプの周壁に、所定の長さにわたり穀類が通過し得ない大きさの多数の細孔を貫設するとともに、前記パイプの下端は先細り状に閉止したテーパー部を形成し、このテーパー部の側斜面から開始しパイプの周壁面の途中にかけてらせん状のスクリュー羽根を連続して設け、穀類を収容した穀類収納袋の中央部分に、前記パイプの上端開口部を上方に突出させた状態でほぼ垂直方向に深く埋設可能としたことを特徴とする穀類収納袋における換気装置。
【請求項2】
上記パイプの上端部近傍に、互いに90度の角度で放射状に突出する4本のハンドルを着脱自在に取り付けた請求項1記載の穀類収納袋における換気装置。
【請求項3】
上記ハンドルの長さが、それぞれ上記パイプの直径の2倍から3倍である請求項2記載の穀類収納袋における換気装置。
【請求項4】
上記先細り状のテーパー部の先端角度が鋭角である請求項1から請求項3のいずれか1項記載の穀類収納袋における換気装置。
【請求項5】
上記パイプの上端開口部に吸引ファンを装着可能とした請求項1から請求項4のいずれか1項記載の穀類収納袋における換気装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2010−124750(P2010−124750A)
【公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−302753(P2008−302753)
【出願日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【出願人】(000217251)田中産業株式会社 (13)
【Fターム(参考)】