説明

積層シート

【課題】保持面の表面精度が高く、被研磨材の吸着性に非常に優れる積層シート及びその製造方法を提供する。
【解決手段】基材シートとポリウレタン発泡層とからなる積層シートにおいて、前記ポリウレタン発泡層は、平均気泡径が20〜300μmである略球状の連続気泡を含む熱硬化性ポリウレタン発泡体からなり、前記熱硬化性ポリウレタン発泡体は、イソシアネート成分と活性水素基含有化合物とを原料成分として含有し、前記活性水素基含有化合物は、平均水酸基価が100〜300mgKOH/gであり、かつ官能基数が2〜4、水酸基価が105〜300mgKOH/gの高分子量ポリオールを50〜100重量%含有し、前記熱硬化性ポリウレタン発泡体は、湿潤状態での動摩擦係数が0.5以上であることを特徴とする積層シート。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はレンズ、反射ミラー等の光学材料、シリコンウエハ等の半導体ウエハ、ガラス基板、金属基板、及びディスクなどの表面を研磨する際に、これらを研磨ヘッドに保持固定するために使用する積層シート(保持シート、バッキングシート)、半導体ウエハ等の半導体製品や光学系製品等を精密加工する工程において、製品を保持または保護するために使用する積層シート(粘着シート)に関する。
【背景技術】
【0002】
高度の表面平坦性を要求される材料の代表的なものとしては、半導体集積回路(IC、LSI)を製造するシリコンウエハと呼ばれる単結晶シリコンの円盤があげられる。シリコンウエハは、IC、LSI等の製造工程において、回路形成に使用する各種薄膜の信頼できる半導体接合を形成するために、酸化物層や金属層を積層・形成する各工程において、表面を高精度に平坦に仕上げることが要求される。このような研磨仕上げ工程においては、一般的に研磨パッドはプラテンと呼ばれる回転可能な支持円盤に固着され、シリコンウエハ等の被研磨材は研磨ヘッドに固着される。
【0003】
従来、シリコンウエハやガラス等の被研磨材を研磨ヘッドに固定する方法としては、(1)ワックスを介して研磨ヘッドと被研磨材を固定するワックス・マウンティング法、(2)吸引することにより被研磨材を研磨ヘッドに固定するバキューム・チャック法、又は(3)研磨ヘッドに貼付けた人工皮革や高分子発泡シートにより被研磨材を固定するノーワックス・マウンティング法が採用されている。
【0004】
ワックス・マウンティング法は、ワックスを使用しているため、被研磨材の着脱に手間がかかったり、研磨後に被研磨材を洗浄してワックスを除去する必要があり、作業工程が煩雑であるという問題を有している。
【0005】
バキューム・チャック法は、吸引口部分で被研磨材が変形し、それにより研磨後の被研磨材の表面精度が悪くなるという問題を有している。
【0006】
ノーワックス・マウンティング法は、被研磨材の着脱が容易であり、生産効率に優れるという利点があるが、人工皮革や高分子発泡シートの保持面の表面精度が悪い場合には、研磨後の被研磨材の表面平滑性も悪くなるという問題があった。
【0007】
上記ノーワックス・マウンティング法の問題点を解決する方法として、発泡層の表面に樹脂よりなる粘着性樹脂層を設けたバッキング材を用いることが提案されている(特許文献1)。また、細長い形状であり、かつ発泡層表面に向かって直径が大きくなる独立気泡を発泡層に設けたことを特徴とするシート状弾性発泡体が提案されている(特許文献2)。
【0008】
しかし、特許文献1のバッキング材の製造方法は、粘着性樹脂層を別途設ける必要があり、また弾性層を湿式凝固させることにより製造しているため作業工程が煩雑である。また、溶剤を使用しなければならないため環境負荷が大きく、溶剤の抽出に多量の水が必要になる等の製造上の問題がある。
【0009】
特許文献2では、上記のような気泡を形成することが困難であり、しかも発泡層表面の空隙率が大きいため発泡層の変形が大きくなり、その結果、研磨後の被研磨材の表面平滑性が悪くなると考えられる。また、被研磨材を発泡層に貼り付ける際にエア噛みが発生したり、吸水性が低いため発泡層と被研磨材との間にスラリーの水膜が生じて被研磨材の吸着性が低下するという問題があった。
【0010】
上記問題を解決するため、本出願人は、基材シートと、球状の連続気泡を有するポリウレタン発泡層とからなる積層シートを提案した(特許文献3)。本発明は、その改良発明である。
【0011】
【特許文献1】特開2002−355754号公報
【特許文献2】特開平6−23664号公報
【特許文献3】特開2007−245571号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、保持面の表面精度が高く、被研磨材の吸着性に非常に優れる積層シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、以下に示す積層シートにより上記目的を達成できることを見出し本発明を完成するに至った。
【0014】
すなわち、本発明は、基材シートとポリウレタン発泡層とからなる積層シートにおいて、前記ポリウレタン発泡層は、平均気泡径が20〜300μmである略球状の連続気泡を含む熱硬化性ポリウレタン発泡体からなり、前記熱硬化性ポリウレタン発泡体は、イソシアネート成分と活性水素基含有化合物とを原料成分として含有し、前記活性水素基含有化合物は、平均水酸基価が100〜300mgKOH/gであり、かつ官能基数が2〜4、水酸基価が105〜300mgKOH/gの高分子量ポリオールを50〜100重量%含有し、前記熱硬化性ポリウレタン発泡体は、湿潤状態での動摩擦係数が0.5以上であることを特徴とする積層シート、に関する。
【0015】
本発明の積層シートのポリウレタン発泡層は、平均気泡径が20〜300μmである略球状の連続気泡を有しているため、被研磨材をポリウレタン発泡層に貼り付ける際にエアを噛み込んでも連続気泡を介してエアを外部に排出することができる。それにより、被研磨材を平坦性高くポリウレタン発泡層に貼り付けることが可能である。また、発泡層と被研磨材との間にスラリーが浸入した場合でも、連続気泡を通じてスラリーをポリウレタン発泡層内部に吸収することができるため、発泡層と被研磨材との間にスラリーの水膜が生じることを防止することができる。そのため、被研磨材の吸着性の低下を効果的に防止することができる。また、ポリウレタン発泡層の連続気泡は略球状であるため耐久性に優れている。そのため、該発泡層を有する積層シートを用いて被研磨材を研磨した場合には、研磨速度の安定性が向上する。
【0016】
前記連続気泡の平均気泡径が20μm未満の場合には、スラリーを発泡層内部に吸収しにくくなり、発泡層と被研磨材との間にスラリーの水膜が生じやすくなる傾向にある。一方、300μmを超える場合には、発泡層表面の平滑性が悪化し、局所的な圧縮特性のバラツキが生じやすくなるため、研磨後の被研磨材の表面平滑性が悪くなる傾向にある。
【0017】
ポリウレタン発泡層は、前記連続気泡と共に独立気泡を含んでいてもよいが、該ポリウレタン発泡層の連続気泡率は50%以上であることが好ましく、より好ましくは65%以上である。
【0018】
前記熱硬化性ポリウレタン発泡体は、イソシアネート成分と活性水素基含有化合物とを原料成分として含有し、前記活性水素基含有化合物は、平均水酸基価が100〜300mgKOH/gであり、かつ官能基数が2〜4、水酸基価が105〜300mgKOH/gの高分子量ポリオールを50〜100重量%含有する。活性水素基含有化合物の平均水酸基価を前記範囲に調整し、かつ前記高分子ポリオールを特定量用いることにより、熱硬化性ポリウレタン発泡体の湿潤状態での動摩擦係数を大きくすることができる。それにより、被研磨材の吸着性に非常に優れるポリウレタン発泡層が得られる。また、目的とする連続気泡を安定的に形成することができ、かつポリウレタン発泡層の機械的特性が良好になる。
【0019】
活性水素基含有化合物の平均水酸基価が100mgKOH/g未満の場合には、熱硬化性ポリウレタン発泡体に「へたり」が発生しやすくなるため研磨安定性が低下し、300mgKOH/gを超える場合には、ポリウレタン発泡層の被研磨材への追随性が悪くなり、被研磨材の保持性が低下するため好ましくない。平均水酸基価は、130〜200mgKOH/gであることが好ましい。
【0020】
また、活性水素基含有化合物中の前記高分子量ポリオールの含有量が50重量%未満の場合には、熱硬化性ポリウレタン発泡体が連続気泡構造になりにくくなるため好ましくない。
【0021】
前記高分子量ポリオールは、ポリカプロラクトンポリオールであることが好ましく、前記イソシアネート成分は、ジフェニルメタンジイソシアネート及び/又はその変性体であることが好ましい。これら化合物を用いることにより、熱硬化性ポリウレタン発泡体の湿潤状態での動摩擦係数をより大きくすることができ、被研磨材の吸着性に非常に優れる積層シートが得られる。
【0022】
前記熱硬化性ポリウレタン発泡体は、測定30秒後のアスカーC硬度が20〜50度であり、測定1秒後のアスカーC硬度と測定30秒後のアスカーC硬度の差が5度以下であることが好ましい。測定30秒後のアスカーC硬度が20度未満の場合には、耐久性が低下したり、研磨後の被研磨材の表面平滑性が悪くなる傾向にある。一方、測定30秒後のアスカーC硬度が50度を超える場合には、被研磨材の保持性が悪くなる傾向にある。また、測定1秒後のアスカーC硬度と測定30秒後のアスカーC硬度の差が5度を超える場合には、研磨安定性が低下する傾向にある。
【0023】
また、前記熱硬化性ポリウレタン発泡体は、比重が0.2〜0.6であることが好ましい。比重が0.2未満の場合には、気泡率が高くなりすぎて耐久性が悪くなる傾向にある。一方、比重が0.6を超える場合には、ある一定の弾性率にするために材料を低架橋密度にする必要がある。その場合、永久ひずみが増大し、耐久性が悪くなる傾向にある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
本発明の積層シートは、基材シートとポリウレタン発泡層とからなり、前記ポリウレタン発泡層は、平均気泡径が20〜300μmである略球状の連続気泡を含む熱硬化性ポリウレタン発泡体(以下、ポリウレタン発泡体という)からなる。
【0025】
前記ポリウレタン発泡体は、例えば、機械発泡法(メカニカルフロス法を含む)により調製された気泡分散ウレタン組成物を基材シート上で硬化させることにより形成することができる。
【0026】
機械発泡法により空気等の気体を微細気泡として原料中に分散させて気泡分散ウレタン組成物を調製し、該気泡分散ウレタン組成物を硬化させることにより気泡径が小さく、かつ気泡表面に略円形孔が形成された略球状の連続気泡を有するポリウレタン発泡体を容易に形成することができる。また、機械発泡法では、空気等の気体は原料中に溶解させずに分散させているため、ポリウレタン発泡体の厚さを均一に調整する工程の後に新たな気泡が発生すること(後発泡現象)を抑制することができ、厚み精度や比重をコントロールしやすいという利点がある。また、溶剤を使用する必要がないため、コスト面で優れるだけでなく、環境面からも好ましい。
【0027】
具体的には、気泡分散ウレタン組成物は、以下の方法により調製される。
【0028】
(1)イソシアネート成分及び高分子量ポリオールなどを反応させてなるイソシアネート末端プレポリマーにシリコン系界面活性剤を添加した第1成分を、非反応性気体の存在下で機械撹拌し、非反応性気体を微細気泡として分散させて気泡分散液とする。そして、該気泡分散液に高分子量ポリオールや低分子量ポリオールなどの活性水素基含有化合物を含む第2成分を添加し、混合して気泡分散ウレタン組成物を調製する。第2成分には、適宜触媒、カーボンブラックなどのフィラーを添加してもよい。
【0029】
(2)イソシアネート成分(又はイソシアネート末端プレポリマー)を含む第1成分、及び活性水素基含有化合物を含む第2成分の少なくとも一方にシリコン系界面活性剤を添加し、シリコン系界面活性剤を添加した成分を非反応性気体の存在下で機械攪拌し、非反応性気体を微細気泡として分散させて気泡分散液とする。そして、該気泡分散液に残りの成分を添加し、混合して気泡分散ウレタン組成物を調製する。
【0030】
(3)イソシアネート成分(又はイソシアネート末端プレポリマー)を含む第1成分、及び活性水素基含有化合物を含む第2成分の少なくとも一方にシリコン系界面活性剤を添加し、前記第1成分及び第2成分を非反応性気体の存在下で機械攪拌し、非反応性気体を微細気泡として分散させて気泡分散ウレタン組成物を調製する。
【0031】
ポリウレタンは、機械発泡法により、気泡表面に略円形孔が形成された略球状の連続気泡を容易に形成することができるため積層シートの発泡層の形成材料として好ましい。
【0032】
イソシアネート成分としては、ポリウレタンの分野において公知の化合物を特に限定なく使用できる。例えば、2,4−トルエンジイソシアネート、2,6−トルエンジイソシアネート、2,2’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、ポリメリックMDI、カルボジイミド変性MDI(例えば、商品名ミリオネートMTL、日本ポリウレタン工業製)、ウレタン変性MDI、アロファネート変性MDI、ビュレット変性MDI、1,5−ナフタレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、m−フェニレンジイソシアネート、p−キシリレンジイソシアネート、m−キシリレンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート、エチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、4,4’−ジシクロへキシルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート等の脂環式ジイソシアネートが挙げられる。これらは1種で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0033】
上記のイソシアネート成分のうち、2,2’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、及び4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートなどのジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、ポリメリックMDI、カルボジイミド変性MDI、ウレタン変性MDI、アロファネート変性MDI、及びビュレット変性MDIなどの変性MDIを用いることが好ましい。
【0034】
活性水素基含有化合物とは、イソシアネート成分と反応する活性水素を有する高分子量ポリオール、低分子量ポリオール、低分子量ポリアミン、及びアルコールアミンである。
【0035】
高分子量ポリオールとしては、ポリウレタンの技術分野において、通常用いられるものを挙げることができる。例えば、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、ポリエチレングリコール等に代表されるポリエーテルポリオール、ポリブチレンアジペートに代表されるポリエステルポリオール、ポリカプロラクトンポリオール、ポリカプロラクトンのようなポリエステルグリコールとアルキレンカーボネートとの反応物などで例示されるポリエステルポリカーボネートポリオール、エチレンカーボネートを多価アルコールと反応させ、次いでえられた反応混合物を有機ジカルボン酸と反応させたポリエステルポリカーボネートポリオール、ポリヒドロキシル化合物とアリールカーボネートとのエステル交換反応により得られるポリカーボネートポリオール、ポリマー粒子を分散させたポリエーテルポリオールであるポリマーポリオールなどが挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0036】
本発明においては、官能基数が2〜4、水酸基価が105〜300mgKOH/gの高分子量ポリオールを用いることが必要である。水酸基価は、105〜200mgKOH/gであることが好ましい。また、前記高分子量ポリオールとして、ポリカプロラクトンジオール、ポリカプロラクトントリオール、及びポリカプロラクトンテトラオールなどのポリカプロラクトンポリオールを用いることが好ましい。前記高分子量ポリオールは、活性水素基含有化合物中に50〜100重量%含有させることが必要であり、好ましくは60〜90重量%である。
【0037】
高分子量ポリオールと共に、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,4−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、トリメチロールプロパン、グリセリン、1,2,6−ヘキサントリオール、ペンタエリスリトール、テトラメチロールシクロヘキサン、メチルグルコシド、ソルビトール、マンニトール、ズルシトール、スクロース、2,2,6,6−テトラキス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサノール、ジエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、及びトリエタノールアミン等の低分子量ポリオール;エチレンジアミン、トリレンジアミン、ジフェニルメタンジアミン、及びジエチレントリアミン等の低分子量ポリアミン;モノエタノールアミン、2−(2−アミノエチルアミノ)エタノール、及びモノプロパノールアミン等のアルコールアミンなどの低分子量成分を併用してもよい。これら低分子量成分は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0038】
これらのうち、水酸基価が400〜1830mgKOH/gの低分子量ポリオール及び/又はアミン価が400〜1870mgKOH/gの低分子量ポリアミンを用いることが好ましい。水酸基価は700〜1250mgKOH/gであることがより好ましく、アミン価は400〜950mgKOH/gであることがより好ましい。水酸基価が400mgKOH/g未満又はアミン価が400mgKOH/g未満の場合には、連続気泡化の向上効果が十分に得られない傾向にある。一方、水酸基価が1830mgKOH/gを超える場合又はアミン価が1870mgKOH/gを超える場合には、ポリウレタンのハードセグメント間の距離が短くなり、被研磨材の吸着性の向上効果が十分に得られない傾向にある。特に、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、トリメチロールプロパン、又は1,4−ブタンジオールを用いることが好ましい。
【0039】
前記低分子量成分を用いる場合には、活性水素基含有化合物の平均水酸基価が100〜300mgKOH/gになるように用いることが必要である。
【0040】
活性水素基含有化合物の平均水酸基価(OHVav)は下記式により求められる。
【数1】

上記式において、nは高分子量ポリオール及び低分子量成分の数、aiは水酸基価、ciは添加重量部である。例えば、使用する活性水素基含有化合物が第1〜第n成分まである場合、第1成分の水酸基価をa1、及び添加重量部をc1とし、・・・、第n成分の水酸基価をan、及び添加重量部をcnとする。
【0041】
ポリウレタンをプレポリマー法により製造する場合において、イソシアネート末端プレポリマーの合成時及び硬化時に使用する活性水素基含有化合物の種類、配合比は特に制限されないが、イソシアネート末端プレポリマーの合成時には活性水素基含有化合物中に高分子量ポリオールを80重量%以上用い、イソシアネート末端プレポリマーの硬化時には活性水素基含有化合物中に低分子量成分を80重量%以上使用することが好ましい。このような活性水素基含有化合物の使い分けは、得られるポリウレタンの物理特性の安定性及び生産性の観点から好ましい方法である。
【0042】
イソシアネート成分、高分子量ポリオール、低分子量成分の比は、各々の分子量やポリウレタン発泡層の所望物性などにより種々変え得る。所望する特性を有する発泡層を得るためには、合計活性水素基(水酸基+アミノ基)数に対するイソシアネート成分のイソシアネート基数は、0.80〜1.20であることが好ましく、さらに好ましくは0.99〜1.15である。イソシアネート基数が前記範囲外の場合には、硬化不良が生じて要求される連続気泡、比重、硬度、及び圧縮率などが得られない傾向にある。
【0043】
なお、イソシアネート末端プレポリマーは、分子量が1000〜10000程度のものが加工性、物理的特性等が優れており好適である。また、プレポリマーが常温で固体の場合には適宜の温度に予熱し溶融して使用する。
【0044】
シリコン系界面活性剤としては、例えば、ポリアルキルシロキサン、又はアルキルシロキサンとポリエーテルアルキルシロキサンとの共重合体を含有するものが挙げられる。かかるシリコン系界面活性剤としては、SH−192及びL−5340(東レダウコーニングシリコーン社製)、B−8443(ゴールドシュミット社製)等が好適な化合物として例示される。
【0045】
なお、必要に応じて、酸化防止剤等の安定剤、滑剤、顔料、充填剤、帯電防止剤、その他の添加剤を加えてもよい。
【0046】
前記微細気泡を形成するために使用される非反応性気体としては、可燃性でないものが好ましく、具体的には窒素、酸素、炭酸ガス、ヘリウムやアルゴン等の希ガスやこれらの混合気体が例示され、乾燥して水分を除去した空気の使用がコスト的にも最も好ましい。
【0047】
非反応性気体を微細気泡状にして分散させる撹拌装置としては、公知の撹拌装置を特に限定なく使用可能であり、具体的にはホモジナイザー、ディゾルバー、2軸遊星型ミキサー(プラネタリーミキサー)などが例示される。撹拌装置の撹拌翼の形状も特に限定されないが、ホイッパー型の撹拌翼の使用にて微細気泡が得られ好ましい。
【0048】
なお、発泡工程において気泡分散液を調製する撹拌と、第1成分と第2成分を混合する撹拌は、異なる撹拌装置を使用することも好ましい態様である。混合工程における撹拌は気泡を形成する撹拌でなくてもよく、大きな気泡を巻き込まない撹拌装置の使用が好ましい。このような撹拌装置としては、遊星型ミキサーが好適である。気泡分散液を調製する発泡工程と各成分を混合する混合工程の撹拌装置を同一の撹拌装置を使用しても支障はなく、必要に応じて撹拌翼の回転速度を調整する等の撹拌条件の調整を行って使用することも好適である。
【0049】
そして、上記方法で調製した気泡分散ウレタン組成物を基材シート上に塗布し、該気泡分散ウレタン組成物を硬化させてポリウレタン発泡体からなるポリウレタン発泡層を形成する。
【0050】
基材シートの形成材料は特に制限されず、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリイミド、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニル、ポリフルオロエチレンなどの含フッ素樹脂、ナイロン、セルロースなどを挙げることができる。
【0051】
基材シートの厚さは特に制限されないが、強度、可とう性等の観点から0.05〜0.3mm程度であることが好ましい。
【0052】
気泡分散ウレタン組成物を基材シート上に塗布する方法としては、例えば、グラビア、キス、コンマなどのロールコーター、スロット、ファンテンなどのダイコーター、スクイズコーター、カーテンコーターなどの塗布方法を採用することができるが、基材シート上に均一な塗膜を形成できればいかなる方法でもよい。
【0053】
気泡分散ウレタン組成物を基材シート上に塗布して流動しなくなるまで反応したポリウレタン発泡体を加熱し、ポストキュアすることは、ポリウレタン発泡体の物理的特性を向上させる効果があり、極めて好適である。ポストキュアは、40〜70℃で10〜60分間行うことが好ましく、また常圧で行うと気泡形状が安定するため好ましい。
【0054】
ポリウレタン発泡層の製造において、第3級アミン系等の公知のポリウレタン反応を促進する触媒を使用してもかまわない。触媒の種類や添加量は、各成分の混合工程後、基材シート上に塗布するための流動時間を考慮して選択する。
【0055】
ポリウレタン発泡層の製造は、各成分を計量して容器に投入し、機械撹拌するバッチ方式であってもよく、また撹拌装置に各成分と非反応性気体を連続して供給して機械撹拌し、気泡分散ウレタン組成物を送り出して成形品を製造する連続生産方式であってもよい。
【0056】
本発明の積層シートの製造方法においては、基材シート上にポリウレタン発泡層を形成した後又はポリウレタン発泡層を形成するのと同時に、ポリウレタン発泡層の厚さを均一に調整することが必要である。ポリウレタン発泡層の厚さを均一に調整する方法は特に制限されないが、例えば、研磨材でバフがけする方法、プレス板でプレスする方法などが挙げられる。バフがけした場合には、ポリウレタン発泡層の表面にスキン層を有さない積層シートが得られ、プレスした場合には、ポリウレタン発泡層の表面にスキン層を有する積層シートが得られる。プレスする際の条件は特に制限されないが、ガラス転移点以上に温度調節することが好ましい。
【0057】
一方、上記方法で調製した気泡分散ウレタン組成物を基材シート上に塗布し、該気泡分散ウレタン組成物上に離型シートを積層する。その後、押圧手段により厚さを均一にしつつ気泡分散ウレタン組成物を硬化させてポリウレタン発泡体からなるポリウレタン発泡層を形成してもよい。該方法は、積層シートの厚さを極めて均一に制御することができるため特に好ましい方法である。
【0058】
離型シートの形成材料は特に制限されず、前記基材シートと同様の樹脂や紙などを挙げることができる。離型シートは、熱による寸法変化が小さいものが好ましい。なお、離型シートの表面は離型処理が施されていてもよい。
【0059】
基材シート、気泡分散ウレタン組成物(気泡分散ウレタン層)、及び離型シートからなるサンドイッチシートの厚さを均一にする押圧手段は特に制限されないが、例えば、コーターロール、ニップロールなどにより一定厚さに圧縮する方法が挙げられる。圧縮後に発泡層中の気泡が1.2〜2倍程度大きくなることを考慮して、圧縮に際しては、(コーター又はニップのクリアランス)−(基材シート及び離型シートの厚み)=(硬化後のポリウレタン発泡層の厚みの50〜85%)とすることが好ましい。また、比重が0.2〜0.5のポリウレタン発泡層を得るためには、ロールを通過する前の気泡分散ウレタン組成物の比重は0.24〜1であることが好ましい。
【0060】
そして、前記サンドイッチシートの厚さを均一にした後に、流動しなくなるまで反応したポリウレタン発泡体を加熱し、ポストキュアしてポリウレタン発泡層を形成する。ポストキュアの条件は前記と同様である。
【0061】
その後、ポリウレタン発泡層上の離型シートを剥離して積層シートを得る。この場合、ポリウレタン発泡層上にはスキン層が形成されている。なお、離型シートを剥離した後にポリウレタン発泡層をバフがけ等することによりスキン層を除去してもよい。
【0062】
ポリウレタン発泡層の厚さは特に制限されないが、0.2〜1.2mmであることが好ましく、より好ましくは0.3〜0.8mmである。
【0063】
ポリウレタン発泡層は、気泡表面に略円形孔が形成された略球状の連続気泡を有している。なお、該連続気泡はクラッシングにより形成されたものではない。
【0064】
ポリウレタン発泡体中の連続気泡の平均気泡径は、20〜300μmであることが必要であり、好ましくは50〜150μmである。また、気泡表面の略円形孔の平均直径は100μm以下であることが好ましく、より好ましくは50μm以下である。
【0065】
ポリウレタン発泡体は、湿潤状態での動摩擦係数が0.5以上であることが必要であり、好ましくは0.6以上である。
【0066】
ポリウレタン発泡体の比重は、0.2〜0.6であることが好ましく、より好ましくは0.3〜0.5である。
【0067】
ポリウレタン発泡体の硬度は、測定30秒後のアスカーC硬度にて20〜50度であることが好ましく、より好ましくは30〜50度である。また、測定1秒後のアスカーC硬度と測定30秒後のアスカーC硬度の差は5度以下であることが好ましく、より好ましくは3度以下である。
【0068】
ポリウレタン発泡層の厚みバラツキは、100μm以下であることが好ましく、より好ましくは60μm以下である。厚みバラツキが100μmを越えるものは、積層シートが大きなうねりを持ったものとなる。その結果、研磨後の被研磨材の表面平滑性が悪くなる傾向にある。
【0069】
積層シートの基材シート表面には、研磨ヘッドに貼り付けるための両面テープが設けられていてもよい。両面テープは、不織布やフィルム等の基材の両面に接着層を設けた一般的な構成を有するものである。接着層の組成としては、例えば、ゴム系接着剤やアクリル系接着剤等が挙げられる。
【実施例】
【0070】
以下、本発明を実施例を上げて説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0071】
(連続気泡の平均気泡径、及び円形孔の平均直径の測定)
作製したポリウレタン発泡層を厚み1mm以下になるべく薄くカミソリ刃で平行に切り出したものをサンプルとした。サンプルをスライドガラス上に固定し、SEM(S−3500N、日立サイエンスシステムズ(株))を用いて100倍で観察した。得られた画像を画像解析ソフト(WinRoof、三谷商事(株))を用いて、任意範囲の連続気泡の気泡径を全て測定し、その値から平均気泡径を算出した。また、任意範囲の連続気泡の円形孔の直径を全て測定し、その値から平均直径を算出した。
【0072】
(連続気泡率の測定)
連続気泡率はASTM−2856−94−C法に準拠して測定した。ただし、円形に打ち抜いたポリウレタン発泡層を10枚重ねたものを測定サンプルとした。測定器は、空気比較式比重計930型(ベックマン株式会社製)を用いた。連続気泡率は下記式により算出した。
連続気泡率(%)=〔(V−V1)/V〕×100
V:サンプル寸法から算出した見かけ容積(cm
V1:空気比較式比重計を用いて測定したサンプルの容積(cm
【0073】
(湿潤状態での動摩擦係数〔wet μ〕の測定)
作製した積層シートを直径25mmの円形状に打ち抜いてサンプルを得た。そして、サンプルを温度23℃±2℃の純水中に1時間浸漬した。その後、サンプルを取り出し、表面に付着している水分を拭き取った。測定にはHEIDONトライボギア(新東科学株式会社製、ミューズ TYPE:94i)を用いた。トライボギア底面の直径25mmの円形状の測定治具に前記サンプルを両面テープで固定した。トレー中にガラス板(SCHOTT DES AG社製、B270)を設置し、前記ガラス板上にトライボギアが水平になるように静置した。そして、前記ガラス板とサンプルの接触面が十分浸るように前記トレー中に純水を注ぎ入れ、その後、動摩擦係数〔wet μ〕を測定した。
【0074】
(比重測定)
JIS Z8807−1976に準拠して行った。作製したポリウレタン発泡層を4cm×8.5cmの短冊状(厚み:任意)に切り出したものをサンプルとし、温度23℃±2℃、湿度50%±5%の環境で16時間静置した。測定には比重計(ザルトリウス社製)を用い、比重を測定した。
【0075】
(硬度測定)
JIS K−7312に準拠して行った。作製したポリウレタン発泡層を5cm×5cm(厚み:任意)の大きさに切り出したものをサンプルとし、温度23℃±2℃、湿度50%±5%の環境で16時間静置した。測定時には、サンプルを重ね合わせ、厚み10mm以上とした。硬度計(高分子計器社製、アスカーC型硬度計、加圧面高さ:3mm)を用い、加圧面を接触させてから1秒後、30秒後の硬度を測定した。
【0076】
実施例1
容器にポリカプロラクトンジオール(ダイセル化学製、プラクセル210N、OHV:110、官能基数:2)80重量部、ポリカプロラクトントリオール(ダイセル化学製、プラクセル305、OHV:305、官能基数:3)18重量部、トリメチロールプロパン(OHV:1254、官能基数:3)2重量部、シリコン系界面活性剤(SH−192、東レ・ダウコーニング・シリコーン社製)10重量部、及び触媒(No.25、花王製)0.1重量部を入れ、混合して第2成分(25℃)を調製した。なお、平均水酸基価(OHVav)は、168.0mgKOH/g(計算値)である。そして、撹拌翼を用いて、回転数900rpmで反応系内に気泡を取り込むように約7分間激しく撹拌を行った。その後、第1成分であるカルボジイミド変性MDI(日本ポリウレタン工業(株)製、ミリオネートMTL、NCOwt%:29wt%、25℃)47.7重量部を前記第2成分に添加し(NCO/OH=1.1)、約1分間撹拌して気泡分散ウレタン組成物を調製した。
【0077】
調製した気泡分散ウレタン組成物を基材シート(ポリエチレンテレフタレート、厚さ:0.2mm)上に塗布して気泡分散ウレタン層を形成した。そして、該気泡分散ウレタン層上に離型処理した離型シート(ポリエチレンテレフタレート、厚さ:0.2mm)を被せた。ニップロール(クリアランス:0.75mm)にて気泡分散ウレタン層を0.8mmの厚さにし、その後40℃で60分間キュアしてポリウレタン発泡層を形成した。その後、ポリウレタン発泡層上の離型シートを剥離した。そして、基材シート表面にラミ機を使用して両面テープ(ダブルタックテープ、積水化学工業製)を貼りあわせて積層シートを作製した。ポリウレタン発泡層の断面を顕微鏡で観察したところ、気泡表面に円形孔が形成された球状の連続気泡が主に形成されていた。
【0078】
実施例2
シリコン系界面活性剤の添加量を10重量部から6重量部に変更し、撹拌時間を約7分間から約4分間に変更した以外は実施例1と同様の方法で気泡分散ウレタン組成物を調製した。そして、該気泡分散ウレタン組成物を用いた以外は実施例1と同様の方法で積層シートを作製した。ポリウレタン発泡層の断面を顕微鏡で観察したところ、気泡表面に円形孔が形成された球状の連続気泡が主に形成されていた。
【0079】
実施例3
シリコン系界面活性剤の添加量を10重量部から3重量部に変更し、撹拌時間を約7分間から約3分間に変更した以外は実施例1と同様の方法で気泡分散ウレタン組成物を調製した。そして、該気泡分散ウレタン組成物を用いた以外は実施例1と同様の方法で積層シートを作製した。ポリウレタン発泡層の断面を顕微鏡で観察したところ、気泡表面に円形孔が形成された球状の連続気泡が主に形成されていた。
【0080】
実施例4
容器にプラクセル210N(88重量部)、プラクセル305(10重量部)、トリメチロールプロパン(2重量部)、SH−192(6重量部)、及びNo.25(0.15重量部)を入れ、混合して第2成分(25℃)を調製した。なお、平均水酸基価(OHVav)は、152.4mgKOH/g(計算値)である。そして、撹拌翼を用いて、回転数900rpmで反応系内に気泡を取り込むように約4分間激しく撹拌を行った。その後、第1成分であるカルボジイミド変性MDI(43.3重量部)を前記第2成分に添加し(NCO/OH=1.1)、約1分間撹拌して気泡分散ウレタン組成物を調製した。
【0081】
そして、該気泡分散ウレタン組成物を用いた以外は実施例1と同様の方法で積層シートを作製した。ポリウレタン発泡層の断面を顕微鏡で観察したところ、気泡表面に円形孔が形成された球状の連続気泡が主に形成されていた。
【0082】
実施例5
容器にプラクセル210N(80重量部)、プラクセル305(15重量部)、トリメチロールプロパン(5重量部)、SH−192(6重量部)、及びNo.25(0.08重量部)を入れ、混合して第2成分(25℃)を調製した。なお、平均水酸基価(OHVav)は、196.5mgKOH/g(計算値)である。そして、撹拌翼を用いて、回転数900rpmで反応系内に気泡を取り込むように約4分間激しく撹拌を行った。その後、第1成分であるカルボジイミド変性MDI(55.8重量部)を前記第2成分に添加し(NCO/OH=1.1)、約1分間撹拌して気泡分散ウレタン組成物を調製した。
【0083】
そして、該気泡分散ウレタン組成物を用いた以外は実施例1と同様の方法で積層シートを作製した。ポリウレタン発泡層の断面を顕微鏡で観察したところ、気泡表面に円形孔が形成された球状の連続気泡が主に形成されていた。
【0084】
実施例6
容器に高分子量ポリオールEX−5030(旭硝子株式会社製、OHV:33、官能基数:3)20重量部、プラクセル210N(60重量部)、プラクセル305(18重量部)、トリメチロールプロパン(2重量部)、SH−192(6重量部)、及びNo.25(0.18重量部)を入れ、混合して第2成分(25℃)を調製した。なお、平均水酸基価(OHVav)は、152.6mgKOH/g(計算値)である。そして、撹拌翼を用いて、回転数900rpmで反応系内に気泡を取り込むように約4分間激しく撹拌を行った。その後、第1成分であるカルボジイミド変性MDI(43.3重量部)を前記第2成分に添加し(NCO/OH=1.1)、約1分間撹拌して気泡分散ウレタン組成物を調製した。
【0085】
そして、該気泡分散ウレタン組成物を用いた以外は実施例1と同様の方法で積層シートを作製した。ポリウレタン発泡層の断面を顕微鏡で観察したところ、気泡表面に円形孔が形成された球状の連続気泡が主に形成されていた。
【0086】
実施例7
容器に高分子量ポリオールEX−5030(20重量部)、プラクセル210N(60重量部)、プラクセル308(ダイセル化学製、OHV:197、官能基数:3)18重量部、トリメチロールプロパン(2重量部)、SH−192(6重量部)、及びNo.25(0.18重量部)を入れ、混合して第2成分(25℃)を調製した。なお、平均水酸基価(OHVav)は、133.2mgKOH/g(計算値)である。そして、撹拌翼を用いて、回転数900rpmで反応系内に気泡を取り込むように約4分間激しく撹拌を行った。その後、第1成分であるカルボジイミド変性MDI(37.8重量部)を前記第2成分に添加し(NCO/OH=1.1)、約1分間撹拌して気泡分散ウレタン組成物を調製した。
【0087】
そして、該気泡分散ウレタン組成物を用いた以外は実施例1と同様の方法で積層シートを作製した。ポリウレタン発泡層の断面を顕微鏡で観察したところ、気泡表面に円形孔が形成された球状の連続気泡が主に形成されていた。
【0088】
比較例1
容器に高分子量ポリオールEX−5030(60重量部)、プラクセル305(40重量部)、SH−192(5重量部)、及びNo.25(0.18重量部)を入れ、混合して第2成分(25℃)を調製した。なお、平均水酸基価(OHVav)は、141.8mgKOH/g(計算値)である。そして、撹拌翼を用いて、回転数900rpmで反応系内に気泡を取り込むように約4分間激しく撹拌を行った。その後、第1成分であるカルボジイミド変性MDI(40.3重量部)を前記第2成分に添加し(NCO/OH=1.1)、約1分間撹拌して気泡分散ウレタン組成物を調製した。
【0089】
そして、該気泡分散ウレタン組成物を用いた以外は実施例1と同様の方法で積層シートを作製した。ポリウレタン発泡層の断面を顕微鏡で観察したところ、気泡表面に円形孔が形成された球状の連続気泡が主に形成されていた。
【0090】
比較例2
容器に高分子量ポリオールEX−5030(85重量部)、プラクセル305(13重量部)、ジエチレングリコール(OHV:1057、官能基数:2)2重量部、SH−192(5重量部)、及びNo.25(0.34重量部)を入れ、混合して第2成分(25℃)を調製した。なお、平均水酸基価(OHVav)は、88.8mgKOH/g(計算値)である。そして、撹拌翼を用いて、回転数900rpmで反応系内に気泡を取り込むように約4分間激しく撹拌を行った。その後、第1成分であるカルボジイミド変性MDI(25.2重量部)を前記第2成分に添加し(NCO/OH=1.1)、約1分間撹拌して気泡分散ウレタン組成物を調製した。
【0091】
そして、該気泡分散ウレタン組成物を用いた以外は実施例1と同様の方法で積層シートを作製した。ポリウレタン発泡層の断面を顕微鏡で観察したところ、気泡表面に円形孔が形成された球状の連続気泡が主に形成されていた。
【0092】
比較例3
容器にスチレン−アクリロニトリル共重合体からなるポリマー粒子を分散させたポリマーポリオールEX−940(旭硝子株式会社製、OHV:28、官能基数:3と換算)45重量部、ポリテトラメチレンエーテルグリコール(三菱化学工業(株)製、PTMG2000、OHV:56、官能基数:2)35重量部、プラクセル305(10重量部)、ジエチレングリコール(10重量部)、SH−192(5重量部)、及びNo.25(0.25重量部)を入れ、混合して第2成分(25℃)を調製した。なお、平均水酸基価(OHVav)は、137.4mgKOH/g(計算値)である。そして、撹拌翼を用いて、回転数900rpmで反応系内に気泡を取り込むように約4分間激しく撹拌を行った。その後、第1成分であるミリオネートMTL(39重量部)を前記第2成分に添加し(NCO/OH=1.1)、約1分間撹拌して気泡分散ウレタン組成物を調製した。
【0093】
そして、該気泡分散ウレタン組成物を用いた以外は実施例1と同様の方法で積層シートを作製した。ポリウレタン発泡層の断面を顕微鏡で観察したところ、気泡表面に円形孔が形成された球状の連続気泡が主に形成されていた。
【0094】
比較例4
容器にPTMG2000(700重量部)、ポリテトラメチレンエーテルグリコール(三菱化学工業(株)製、PTMG650、OHV:173、官能基数:2)150重量部を入れ、撹拌しながら減圧脱水を約1時間行った。その後、反応容器内を窒素置換した。そして、反応容器内にミリオネートMT(日本ポリウレタン工業(株)製、ピュアMDI)436重量部を添加した。その後、反応系内の温度を約80℃に保持しつつ約4時間反応させてイソシアネート末端プレポリマーA(NCOwt%:7.53wt%)を合成した。
【0095】
容器にイソシアネート末端プレポリマーA(128重量部)、及びSH−192(5重量部)を入れて混合し、40℃に調整して減圧脱泡して第1成分を調製した。そして、撹拌翼を用いて、回転数900rpmで反応系内に気泡を取り込むように約4分間激しく撹拌を行った。その後、25℃に温調したトリエチレングリコール(OHV:747、官能基数:2)15重量部、及びNo.25(0.12重量部)を混合した第2成分を前記第1成分に添加し(NCO/OH=1.15)、約1分間撹拌して気泡分散ウレタン組成物を調製した。なお、平均水酸基価(OHVav)は、177.2mgKOH/g(計算値)である。
【0096】
そして、該気泡分散ウレタン組成物を用いた以外は実施例1と同様の方法で積層シートを作製した。ポリウレタン発泡層の断面を顕微鏡で観察したところ、気泡表面に円形孔が形成された球状の連続気泡が主に形成されていた。
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材シートとポリウレタン発泡層とからなる積層シートにおいて、前記ポリウレタン発泡層は、平均気泡径が20〜300μmである略球状の連続気泡を含む熱硬化性ポリウレタン発泡体からなり、前記熱硬化性ポリウレタン発泡体は、イソシアネート成分と活性水素基含有化合物とを原料成分として含有し、前記活性水素基含有化合物は、平均水酸基価が100〜300mgKOH/gであり、かつ官能基数が2〜4、水酸基価が105〜300mgKOH/gの高分子量ポリオールを50〜100重量%含有し、前記熱硬化性ポリウレタン発泡体は、湿潤状態での動摩擦係数が0.5以上であることを特徴とする積層シート。
【請求項2】
前記高分子量ポリオールは、ポリカプロラクトンポリオールである請求項1記載の積層シート。
【請求項3】
前記イソシアネート成分は、ジフェニルメタンジイソシアネート及び/又はその変性体である請求項1又は2記載の積層シート。
【請求項4】
前記熱硬化性ポリウレタン発泡体は、測定30秒後のアスカーC硬度が20〜50度であり、測定1秒後のアスカーC硬度と測定30秒後のアスカーC硬度の差が5度以下である請求項1〜3のいずれかに記載の積層シート。
【請求項5】
前記熱硬化性ポリウレタン発泡体は、比重が0.2〜0.6である請求項1〜4のいずれかに記載の積層シート。



【公開番号】特開2009−241424(P2009−241424A)
【公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−91042(P2008−91042)
【出願日】平成20年3月31日(2008.3.31)
【出願人】(000003148)東洋ゴム工業株式会社 (2,711)
【Fターム(参考)】