説明

積層シート

【課題】とくにカレンダー成形性に優れ、インクの密着性に優れるうえ、さらに透明性、耐白化性に優れた積層シートを提供する。
【解決手段】テレフタル酸、エチレングリコールおよび1,4−シクロヘキサンジメタノールからなるポリエステル系樹脂(a)50〜99質量%、およびコアが共役ジエン系化合物、エチレングリコールジメタクリレートおよびスチレンからなる架橋物であり、シェルが芳香族ビニル化合物からなるグラフト共重合体架橋物(b)1〜50質量%、からなる組成物(A)100質量部に対し、例えばモンタン酸部分ケン化エステル(c)0.2〜10質量部を配合した樹脂組成物をカレンダー成形し、得られたシートに、バインダーとして例えば塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体を主成分とする着色インキを含む印刷模様層を印刷してなる積層シート。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カレンダー成形シート用樹脂組成物、これを用いたシートおよび積層シートに関するものであり、詳しくは、とくにカレンダー成形性に優れ、2液硬化型ウレタン樹脂への密着性、インクの密着性に優れるうえ、さらに透明性、耐白化性に優れたカレンダー成形シート用樹脂組成物、これを用いたシートおよび積層シートに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、家具、ドア、ドア枠、腰板、巾木、窓枠などの表面材などに使用される化粧シートには、塩化ビニル系樹脂フィルムが多量に使用されていた。塩化ビニル系樹脂化粧シートは、ダブリング装置の加熱ドラム上で、透明な塩化ビニル系樹脂フィルムと印刷を施した着色塩化ビニル系樹脂フィルムを重ねて熱圧着し、さらにエンボスロールでフィルム表面にエンボスの型押しを行うことにより製造されていた。しかし、塩化ビニル系樹脂は、焼却条件悪いと問題が生ずる等、最近の環境問題への社会の要求から塩化ビニル系樹脂に代わる化粧シートが求められていた。
そこで、塩化ビニル系樹脂フィルムに代えて、非晶質ポリエステル樹脂フィルムを用いることが検討されている。
【0003】
例えば特許文献1(特開2001−40188号公報)には、ブタジエン70〜100質量%、芳香族ビニル単量体または芳香族(メタ)アクリレート単量体30〜0質量%、これらと共重合可能なビニル単量体10〜0質量%及び架橋性単量体5〜0質量%からなるブタジエン系共重合体25〜55質量部に、芳香族ビニル単量体30〜100質量%、(メタ)アクリル酸アルキルエステル70〜0質量%及びそれらと共重合可能なビニル単量体0〜20質量%からなる単量体混合物75〜45質量部を重合して得られるグラフト共重合体(A)1〜30質量%と非晶質ポリエチレンテレフタレート系樹脂(B)99〜70質量%からなる樹脂組成物が提案され、この樹脂組成物は透明性と耐衝撃性を同時に満足できるとされている。
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載された樹脂組成物は、これをカレンダー成形してシートを製造しようとすると、ストレーナに設置されたメッシュに目詰まりが生じたり、カレンダーロール剥離性が悪いなど、カレンダー成形性に大きな課題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−40188号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって本発明の目的は、とくにカレンダー成形性に優れ、2液硬化型ウレタン樹脂への密着性、インクの密着性に優れるうえ、さらに透明性、耐白化性に優れたカレンダー成形シート用樹脂組成物、これを用いたシートおよび積層シートを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の発明は、下記のカレンダー成形シート用樹脂組成物をカレンダー成形してなるシートに、着色インキを含む印刷模様層を印刷してなる積層シートであって、前記着色インキに含まれるバインダーが、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン変性樹脂、ポリイソシアネート化合物、ポリカーボネート樹脂およびアミノ樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種を主成分とすることを特徴とする積層シートである。
前記カレンダー成形シート用樹脂組成物:
ジカルボン酸成分がテレフタル酸であり、かつジオール成分がエチレングリコール60〜80モル%および1,4−シクロヘキサンジメタノール20〜40モル%からなるポリエステル系樹脂(a)50〜99質量%、および
コアが共役ジエン系化合物、エチレングリコールジメタクリレートおよび必要に応じてスチレンからなる架橋物であり、シェルが芳香族ビニル化合物からなるグラフト共重合体架橋物(b)1〜50質量%、からなる組成物(A)100質量部に対し、炭素数28〜32の直鎖脂肪酸及び/又はその誘導体系ワックス(c)0.2〜10質量部を配合したことを特徴とするカレンダー成形シート用樹脂組成物。
【0008】
請求項2に記載の発明は、前記成分(b)において、共役ジエン系化合物および芳香族ビニル化合物の割合が、共役ジエン系化合物20〜60質量%および芳香族ビニル化合物40〜80質量%であることを特徴とする請求項1に記載の積層シートである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ポリエステル系樹脂およびグラフト共重合体の架橋物(ゴム成分)からなる組成物に対し、炭素数28〜32の直鎖脂肪酸及び/又はその誘導体系ワックスを特定範囲で配合したので、カレンダー成形時のストレーナに設置されたメッシュの目詰まりが少なく、成形されたカレンダーシートにバンクマーク等の欠点が発生せず、ゴム成分の分散不良に起因するブツも発生せず、ゴム成分を高添加してもロール剥離性(テイクオフ時の金属ロールへのベタツキ防止)に優れる等カレンダー成形性に優れ、2液硬化型ウレタン樹脂への密着性、インクの密着性に優れるうえ、さらに透明性、耐白化性に優れたカレンダー成形シート用樹脂組成物、これを用いたシートおよび積層シートを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】積層シートの一例を説明するための断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明をさらに詳しく説明する。
ポリエステル系樹脂(a)
本発明に使用するポリエステル系樹脂(a)は、当業界で公知の材料であり、例えば特許第3280374号明細書に開示されている。この成分(a)は、溶融状態からの結晶化半時間が少なくとも5分、好ましくは少なくとも12分のポリエステルである。なお本明細書で使用する用語「ポリエステル」はコポリエステルも含むものとする。無限の結晶化半時間を有するため、無定形ポリエステルが好ましい。
本発明における結晶化半時間は、パーキン・エルマー(Perkin-Elmer)モデルDSC−2示差走査熱量計を使用して測定する。15.0mgのサンプルをアルミニウムパンの中に密封し、約320℃/分の速度で290℃で2分間加熱する。次いで、サンプルを、所定の等温結晶化温度まで約320℃/分(装置として不可能な場合は20℃/分)の速度で、ヘリウムの存在下に、直ちに冷却する。結晶化半時間は、等温結晶化温度に達してからDSC曲線上の結晶化ピークの点までの時間間隔として決定する。
【0012】
成分(a)は、例えばテレフタル酸またはジメチルテレフタル酸とエチレングリコールとを主成分としてエステル化反応を経て重縮合反応によって製造されたものが好適に使用される。
また成分(a)は、上記のジカルボン酸およびグリコール成分の他に、第3成分を共重合させた共重合体タイプのものも包含し、本発明においてはこのタイプが好ましい。
本発明の好ましい態様において、第3成分としては、1,4−シクロヘキサンジメタノール、テレフタル酸、イソフタル酸等が好適である。
とくに好ましい成分(a)を以下に例示する。
ジカルボン酸成分がテレフタル酸であり、かつジオール成分がエチレングリコール50〜99モル%(好ましくは60〜80モル%)および1,4−シクロヘキサンジメタノール1〜50モル%(好ましくは20〜40モル%)であるもの。
また、成分(a)の粘度はIV値として0.65〜0.85が好ましい。
本発明に使用するポリエステル系樹脂(a)の製造方法は、すでに当業界において広く知られており、例えば米国特許5,340,907号明細書に開示されている。
【0013】
グラフト共重合体架橋物(b)
本発明で使用するグラフト共重合体架橋物(b)は、共役ジエン系化合物と芳香族ビニル化合物からなるグラフト共重合体の架橋物である。
共役ジエン系化合物としては、例えば、1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエンなどが挙げられる。コアを構成する共役ジエン系化合物を重合する際に任意成分として、スチレン、メタクリル酸メチル等を存在させることも可能である。
【0014】
シェルを構成するグラフト部分に使用される芳香族ビニル化合物としては、スチレン、4−メトキシスチレン、4−エトキシスチレン、4−プロポキシスチレン、4−ブトキシスチレン、2−メチルスチレン、3−メチルスチレン、4−メチルスチレン、4−エチルスチレン、2,5−ジメチルスチレン、2−クロロスチレン、3−クロロスチレン、4−クロロスチレン、2,4−ジクロロスチレン、4−ブロモスチレン、2,5−ジクロロスチレン、α−メチルスチレン等が挙げられる。ただし、シェルには(メタ)アクリル酸アルキルエステルを含まない。本発明は、シェルには(メタ)アクリル酸アルキルエステルを含まないため従来の技術よりカレンダー成形性に優れ、その他の熱可塑性樹脂への密着性、2液硬化型ウレタン樹脂への密着性、インクの密着性に優れるうえ、さらに透明性、耐白化性に優れる。
【0015】
成分(b)において、共役ジエン系化合物と芳香族ビニル化合物の割合は、共役ジエン系化合物20〜60質量%および芳香族ビニル化合物40〜80質量%であるのが好ましい。さらに好ましくは、共役ジエン系化合物35〜50質量%および芳香族ビニル化合物50〜65質量%である。
【0016】
架橋前のグラフト共重合体は乳化重合、懸濁重合、溶液重合等で得ることができるが乳化重合が好ましい。乳化重合については公知の乳化方法、重合順序によって製造される。
【0017】
本発明の成分(b)は、得られたグラフト共重合体を架橋性単量体により架橋してなる。グラフト共重合体を架橋することにより、耐衝撃性向上、溶融粘度が向上するためにカレンダー成形時のシート表面のカスレ、エアマークがなく、金属ロールからの剥離安定性が得られるため好ましい。架橋はコアを構成する共役ジエン系化合物を重合させる際に行うことが好ましいが、シェルをグラフトしたグラフト体を架橋することも可能である。
架橋性単量体としては、2個以上の反応性の等しい二重結合をもつ単量体、例えばジビニルベンゼン等の芳香族ジビニル単量体;エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、オリゴエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート等のアルカンポリオールポリアクリレート等が挙げられるが、中でも耐衝撃性向上効果に優れるという理由からエチレングリコールジメタクリレートが好ましい。
また架橋時に使用される有機過酸化物としては、例えば、ジクミルパーオキシド、ジ−tert−ブチルパーオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ジ−(tert−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ−(tert−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3、1,3−ビス(tert−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、1,1−ビス(tert−ブチルパーオキシ)−3、3,5−トリメチルシクロヘキサン、n−ブチル−4,4−ビス(tert−ブチルパーオキシ)バレレート、ベンゾイルパーオキシド、p−クロロベンゾイルパーオキシド、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキシド、tert−ブチルパーオキシベンゾエート、tert−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、ジアセチルパーオキシド、ラウロイルパーオキシド、tert−ブチルクミルパーオキシド等を挙げることができる。これらのうちで、臭気性、着色性、スコーチ安全性の観点から、2,5−ジメチル−2,5−ジ−(tert−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ−(tert−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3が特に好ましい。
架橋性単量体の添加量は、成分(b)において0.1〜5質量%、好ましくは2〜4質量%である。
また有機過酸化物の添加量は、例えば成分(b)100質量部に対し、0.05〜3質量部、好ましくは0.05〜1質量部である。
【0018】
本発明における組成物(A)は、ポリエステル系樹脂(a)50〜99質量%、およびグラフト共重合体架橋物(b)1〜50質量%からなり、好ましくは、ポリエステル系樹脂(a)55〜92質量%およびグラフト共重合体架橋物(b)8〜45質量%からなる。
【0019】
炭素数28〜32の直鎖脂肪酸及び/又はその誘導体系ワックス(c)
本発明で使用される成分(c)は、本組成物における成分(b)の分散性向上・組成物のロール剥離性向上効果を有する。成分(b)は従来のゴムより分散性・組成物のロール剥離性に優れるが、本発明では成分(c)との相乗効果が極めて著しい。
本発明で使用される成分(c)としては、例えば炭素数28〜32の直鎖脂肪酸またはその誘導体の単体や、混合物であることができる。また、前記誘導体は、炭素数28〜32の直鎖脂肪酸を鹸化したもの、エステル化したもの等が挙げられる。なお、エステル化物は、炭素数28〜32の直鎖脂肪酸をグリコール類でエステル化したものが好ましい。このようなグリコール類を用いたエステル化物は、下記式(1)で表される構造を有する。
【0020】
【化1】

【0021】
式中、Rは脂肪酸の直鎖部分を表し、Qは炭素数2または3のアルキレン基を表す。なお、式(1)のエステル化物は、Q基を介して2分子の脂肪酸が結合しているが、この形態も本発明における成分(c)に含まれるものとする。
【0022】
本発明でとくに好ましい成分(c)は、モンタン酸をエチレングリコールまたはブチレングリコールでエステル化したものであり、最適には、モンタン酸をブチレングリコールで部分エステル化し、残りを水酸化カルシウムで鹸化した混合物である。このような最適の成分(c)は、市販されているものを利用することもでき、例えばクラリアントジャパン製のモンタン酸部分ケン化エステルHW−OP(融点75℃)が挙げられる。
【0023】
成分(c)の配合割合は、前記組成物(A)100質量部に対し、0.2〜10質量部、好ましくは0.5〜5質量部である。成分(c)の配合割合が0.2質量部よりも少ないと成分(b)が凝集し、分散不良に起因するブツが発生する。またストレーナに設置されたメッシュの目詰まりが多く発生する。さらにロール剥離性も悪化する。10質量部よりも多いとシート表面への吹き出しによるベタツキがあり好ましくない。
【0024】
また、成分(c)の炭素数が28未満では、成分(b)が凝集し、分散不良に起因するブツが発生する。またストレーナに設置されたメッシュの目詰まりが多く発生する。さらにロール剥離性も悪化する。32を超えた場合も、成分(b)が凝集し、分散不良に起因するブツが発生する。またストレーナに設置されたメッシュの目詰まりが多く発生する。さらにロール剥離性も悪化する。
【0025】
本発明の組成物を製造する方法としては前記各成分を個別に準備し、通常の混練装置、例えばヘンシェルミキサー、タンブラーなどを用いて混練し、単軸押出機、二軸押出機バンバリーミキサーなど通常の賦形に用いられる装置により賦形して組成物となす方法を採用することができる。また、本発明の組成物には、必要に応じて、通常の添加剤として使用される抗酸化剤、熱安定剤、耐光性向上剤、紫外線吸収剤、滑剤、可塑剤、離型剤、帯電防止剤、摺動性向上剤、着色剤などを添加することもできる。さらに、本発明の組成物には、耐薬品性を向上する目的で、結晶性を有するポリエチレンテレフタレート系樹脂およびポリブチレンテレフタレート系樹脂から選ばれた少なくとも1種の晶質ポリエステル樹脂を混合してもよい。
ただし、本発明の組成物には質量平均分子量100万以上のアクリロニトリル−スチレン系共重合体を含まないことが好ましい。
【0026】
本発明の組成物は、カレンダー成形しシートを形成するのにとくに有用である。すなわち、本発明の組成物を用いたカレンダー成形では、上記のカレンダー成形性が非常に良好となる。カレンダー成形機の種類はとくに制限されない。例えば使用するカレンダー装置に特に制限はなく、例えば、直立型3本ロール、直立型4本ロール、L型4本ロール、逆L型4本ロール、Z型ロールなどを挙げることができる。また、カレンダー処理条件もとくに制限されない。例えばカレンダーロールの温度は、160〜220℃の範囲を適宜採用することができる。
本発明の樹脂組成物をカレンダー成形した後に得られるシート(以下、カレンダー成形シートという)の厚さは、例えば30〜1000μm、好ましくは50〜500μmである。
【0027】
また本発明では、前記のようにして得られたカレンダー成形シート上に2液硬化型ウレタン樹脂の塗膜層を良好な密着性でもって設けることができる。2液硬化型ウレタン樹脂の塗膜層をカレンダー成形シート表面に設けることにより、カレンダー成形シートのスクラッチ性、耐汚染性を向上することができる。
また2液硬化型ウレタン樹脂の塗膜層には、ウレタン樹脂100質量部当たり0.5〜20質量部、より好ましくは1〜10質量部のワックスを含有するのが好ましい。ワックスを配合することにより、前記のようにして得られたカレンダー成形シートの耐スクラッチ性をさらに向上することができる。ワックスの含有量が0.5質量部未満であると、カレンダー成形シートの耐スクラッチ性が不十分になるおそれがある。逆に20質量部を超えると、ワックスがカレンダー成形シートの表面にブリーディングしてカレンダー成形シートの外観が損なわれるおそれがある。
2液硬化型ウレタン樹脂の塗膜層は、ポリオール成分とポリイソシアネート成分を混合したのち塗布し、硬化反応により形成される塗膜層である。2液硬化型ウレタン樹脂の塗膜層の厚さは、1〜10μmであることが好ましく、3〜7μmであることがより好ましい。本発明に用いるポリオール成分に特に制限はなく、例えば、主鎖にポリエステル結合を有する油変性アルキッド樹脂、オイルフリーポリエステル、ポリカプロラクトンポリオール、ポリカーボネートポリオール、アクリルポリオール、ヒドロキシル基を有するビニルポリマー、ヒドロキシル基を有するフッ素樹脂、ポリエーテルポリオール、エポキシポリオールなどを挙げることができる。これらの中で、アクリルポリオールを好適に用いることができる。ポリオール成分は、有機溶剤に溶解した溶液として用いることが好ましい。使用する溶剤としては、例えば、トルエン、キシレン、酢酸エチル、酢酸ブチル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどの活性水素を有しない溶剤を挙げることができる。本発明に用いるポリイソシアネートに特に制限はなく、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、水添ジフェニルメタンジイソシアネートなどや、これらのビューレット体、イソシアヌレート体などを挙げることができる。これらの中で、無黄変性のヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート及び水添ジフェニルメタンジイソシアネートを好適に用いることができる。2液硬化型ウレタン樹脂の塗膜層に用いるワックスに特に制限はなく、例えば、パラフィン、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックスなどの炭化水素系ワックス、ステアリン酸、ヒドロキシステアリン酸、複合型ステアリン酸、オレイン酸などの脂肪酸系ワックス、ステアリン酸アミド、オキシステアリン酸アミド、オレイン酸アミド、エルシルアミド、リシノール酸アミド、ベヘン酸アミド、メチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミドなどの脂肪族アミド系ワックス、ステアリン酸−n−ブチルなどの脂肪族エステル系ワックス、脂肪族金属石けん系ワックス、尿素−ホルムアルデヒドワックスなどを挙げることができる。ワックスは、ポリオール成分の溶液中にあらかじめ分散しておくことが好ましい。
【0028】
2液硬化型ウレタン樹脂の塗膜層は、透明であっても着色されていてもよい。このような本発明の積層シートは、メンブレンプレス成形、真空プレス成形、圧空プレス成形等にとくに適している。
なお、2液硬化型ウレタン樹脂の塗膜層の着色は、ウレタン樹脂溶液に公知の顔料または染料を適当量添加することによりなされる。塗膜層を着色した場合は、例えば表面をエンボス加工する等して意匠性を付与し、木口材(エッジ材)等として好適に用いることができる。
【0029】
また本発明は、前記のようにして得られたカレンダー成形シートに、着色インキを含む印刷模様層を印刷してなる積層シートを提供するものである。このような積層シートは、各層間の密着性が非常に優れている。着色インキに含まれるバインダーは、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン変性樹脂、ポリイソシアネート化合物、ポリカーボネート樹脂およびアミノ樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種を主成分とするのが好ましい。中でもカレンダー成形シートとの接着性が良好であるという理由から、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体がさらに好ましい。
【0030】
また、前記のカレンダー成形シートまたは積層シートと、他の熱可塑性樹脂シートとをラミネートすることも可能である。他の熱可塑性樹脂としては、非晶質のポリエステル樹脂が好ましいものとして挙げられるが、非晶質のポリエステル樹脂に結晶性ポリエステル樹脂を添加することも可能である。
前記とは別に、カレンダー成形シートと、前述の本発明における成分(a)からなるシートとをラミネートしてもよい。
図1は、このような本発明の積層シートに他の熱可塑性樹脂シートをラミネートした形態を説明するための断面図である。図1において、積層シート1は、カレンダー成形シート11上に、印刷模様層12および他の熱可塑性樹脂からなるシート13が順次形成されて構成されている。印刷模様層12の形成は、例えばグラビア印刷法を採用して行うことができる。シート13のラミネートは、公知の接着剤を用いたフィルムラミネート法や、押出ラミネート法により行うことができる。なお、カレンダー成形シート11および/またはシート13は、着色してもよい。
【0031】
その他、本発明の積層シートは、壁紙に使用してその表面を構成することができる。この場合、積層シートは10〜100μmの厚さであることが望ましい。壁紙として使用する場合は、例えば紙製の下地に、発泡性塩化ビニルペーストを塗布し、その表面に本発明の積層シートを加熱ラミネートすればよい。
【実施例】
【0032】
以下、実施例および比較例により本発明をさらに説明するが、本発明は下記例に制限されるものではない。
【0033】
下記例では、次の各種材料のいずれかを使用した。
(1)ポリエステル系樹脂(a)
(i)イーストマンケミカル社、PETG6763
グリコール成分:エチレングリコール70モル%および1,4−シクロヘキサンジメタノール30モル%
ジカルボン酸成分:テレフタル酸
からなるポリエステル
結晶化半時間:無限
【0034】
(2)下記組成を有する共役ジエン系化合物と芳香族ビニル化合物からなるグラフト共重合体の架橋物(b)
共役ジエン系化合物としてブタジエンを43質量%含む。芳香族ビニル化合物としてスチレンを54質量%含む。エチレングリコールジメタクリレートを3質量%含む。
この成分(b)は、ブタジエン、スチレン及びエチレングリコールジメタクリレートから成る架橋SBRラテックスを合成した後、水とナトリウムスルホキシレートホルムアルデヒド、スチレン、キュメンハイドロパーオキサイドとを混合し、ゴムラテックスにスチレンをグラフトさせ凝固、濾過、洗浄、乾燥してサンプルを得た。
【0035】
(3)炭素数28〜32の直鎖脂肪酸及び/又はその誘導体系ワックス(c)
製造会社:クラリアントジャパン
商品名:HW−OP(モンタン酸部分ケン化エステル。鹸化部分はカルシウム塩、融点75℃)
【0036】
(4)成分(c)の比較成分
(i)ステアリン酸カルシウム
(ii)
製造会社:日本精化(株)
商品名:ニュートロン(オレイン酸アミド)
【0037】
(5)成分(b)の比較成分 グラフト共重合体
(i)
製造会社:鐘淵化学工業
商品名:カネエース B−56
組成:メタクリル酸エステル・スチレン/ブタジエンゴムグラフト共重合体
ゴム粒子径:0.1〜0.5μm
【0038】
(実施例1〜3および比較例1〜6)
(カレンダー成形性)
表1に示す配合処方を有する各種組成物を、バンバリーミキサーを用いて溶融混練し、カレンダー成形し、厚さ100μmのシートを得た。カレンダー成形機としては、逆L型を用いた。また、カレンダー条件は、カレンダーロール温度180℃とした。
この成形工程におけるストレーナ部のスクリーン(100メッシュ金網)交換頻度を調べた。
また、ロール剥離性を○:ロールから均一に剥離する、△:ロールから均一に剥離せず得られるシートの平滑性に劣る、×:ロールに粘着し剥離せずシート製造不可として調べた。
カレンダー成形シートの表面性は、カレンダー成形シートの表面を目視で観察し、以下の評価方法で評価を行った。バンクマーク、カスレ、エアマーク(エア抜けによる表面に残る穴)等の表面不具合がないを○、かすかにバンクマークが確認できるを△、表面不具合が認められるを×とした。
さらに、カレンダー成形シート(厚さ100μm)の透明性を、JIS K7105に準拠してヘイズ値として測定した。
測定器:東洋精機製作所社製、直読ヘイズメーターで測定することにより評価した。
透明性の評価において、ヘイズ値10%以下を◎、ヘイズ値20%以下を○、ヘイズ値60%未満を△、ヘイズ値60%以上を×とした。
また、カレンダー成形シートの白化性について、以下の試験方法・評価基準で評価を行った。
厚み0.1mm(厚さ100μm)のカレンダー成形シートを、長手側を平行にして接触させた2枚のステンレス鋼板(6cm×5cm、1mm厚)に両面テープで貼り付け、90°に折り曲げ、折り曲げた表面の白化の度合いを目視で観察し、下記の基準により評価した。
◎:白化は認められない。○:わずかに白化が認められる。×:大きな白化が認められる。
結果を表1に示す。
【0039】
(積層シート(1))
アクリルポリオール100質量部、トルエン100質量部及び酢酸エチル100質量部からなる溶液に、ポリプロピレンワックス[クローダジャパン(株)、WNl135]5質量部を添加して均一に分散し、さらにヘキサメチレンジイソシアネート5質量部を添加して、2液硬化型ウレタン樹脂塗料を調製した。これを、前記のカレンダー成形シート上に塗布して、厚さ5μmの塗膜を形成し、積層シート(1)を得た。
得られた積層シート(1)の密着性を試験した。この密着性試験は、JIS K 5400に準拠し、ロータリーカッターにて1mm角の碁盤目100マスを付け、セロテープ[ニチバン製、登録商標]を圧着させたのち、90度の剥離試験を実施した。100マスのうちの残存膜数を数えることにより、密着性の評価を行った。
結果を表1に示す。
【0040】
(積層シート(2))
前記で得たカレンダー成形シートの一方の面に、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体をバインダーとする着色インキを用いてグラビア印刷で木目模様を形成し、印刷模様層を形成した。
得られた積層シート(2)の密着性を、前記の積層シート(1)と同様に試験した。
結果を表1に示す。
【0041】
【表1】

【0042】
表1の結果から、本発明の組成物を用いた各実施例では、比較例に比べてストレーナ部のスクリーン交換頻度が少なく、かつロール剥離性も良好であり、カレンダー成形性に優れることが分かる。
また本発明の積層シートは、各層間の接着性に優れることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明によれば、とくにカレンダー成形性に優れ、2液硬化型ウレタン樹脂への密着性、インクの密着性に優れるうえ、さらに透明性、耐白化性に優れたカレンダー成形シート用樹脂組成物、これを用いたシートおよび積層シートを提供することができる。
【符号の説明】
【0044】
1 積層シート
11 カレンダー成形シート
12 印刷模様層
13 熱可塑性樹脂からなるシート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記のカレンダー成形シート用樹脂組成物をカレンダー成形してなるシートに、着色インキを含む印刷模様層を印刷してなる積層シートであって、前記着色インキに含まれるバインダーが、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン変性樹脂、ポリイソシアネート化合物、ポリカーボネート樹脂およびアミノ樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種を主成分とすることを特徴とする積層シート。
前記カレンダー成形シート用樹脂組成物:
ジカルボン酸成分がテレフタル酸であり、かつジオール成分がエチレングリコール60〜80モル%および1,4−シクロヘキサンジメタノール20〜40モル%からなるポリエステル系樹脂(a)50〜99質量%、および
コアが共役ジエン系化合物、エチレングリコールジメタクリレートおよび必要に応じてスチレンからなる架橋物であり、シェルが芳香族ビニル化合物からなるグラフト共重合体架橋物(b)1〜50質量%、からなる組成物(A)100質量部に対し、炭素数28〜32の直鎖脂肪酸及び/又はその誘導体系ワックス(c)0.2〜10質量部を配合したことを特徴とするカレンダー成形シート用樹脂組成物。
【請求項2】
前記成分(b)において、共役ジエン系化合物および芳香族ビニル化合物の割合が、共役ジエン系化合物20〜60質量%および芳香族ビニル化合物40〜80質量%であることを特徴とする請求項1に記載の積層シート。

【図1】
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【公開番号】特開2011−235645(P2011−235645A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−148836(P2011−148836)
【出願日】平成23年7月5日(2011.7.5)
【分割の表示】特願2005−226626(P2005−226626)の分割
【原出願日】平成17年8月4日(2005.8.4)
【出願人】(000250384)リケンテクノス株式会社 (236)
【Fターム(参考)】