説明

積層シート

【課題】 本発明は、粘着層に着色材料が添加されたとしても、粘着層の経時劣化を抑制できるとともに、粘着層からの着色材料のブリードアウトを抑制でき、さらに、厚みの増大や製造工程数の増大の問題の発生を抑制しつつ打ち抜き性も良好な積層シートを提供する。
【解決手段】 粘着層30と硬化型材料層20を直接積層してなる積層体40を有する積層シート10において、硬化型材料層20が、エネルギー線もしくは熱によって硬化する硬化型樹脂を含んでなり、粘着層30が、アクリルトリブロック共重合体を含み、50℃における動的貯蔵弾性率が1.5×10Pa以上であり、且つ、0℃における動的貯蔵弾性率が5.0×10Pa以下であることにより、粘着層30の経時劣化を抑制できるとともに、粘着層30からの着色材料のブリードアウトを抑制でき、さらに、厚みの増大や製造工程数の増大の問題の発生を抑制しつつ打ち抜き性も良好な積層シート10が得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着層と硬化型材料層を積層してなる積層シートに関する。
【背景技術】
【0002】
粘着層と硬化型材料層とを積層した積層体を有する積層シートは、支持体に対して積層構造を固定するためのシートをはじめ、支持体がシートである場合には、積層体を支持体積層してなるものなど、様々な形態で使用される。
【0003】
例えば、このような積層シートの一形態として、ホログラムの技術分野におけるホログラム転写シートなどが挙げられる。
【0004】
ホログラムは、例えば、紫外線硬化型樹脂などの硬化型材料からなる層構造に物体光と参照光の干渉縞のパターンを記録することで形成され、三次元画像情報の記録をはじめ、高密度に様々な情報を記録できる。すると、ホログラムは、上記したような情報を記録した層構造を有するホログラム層を基材シート上に積層したシート構造に形成されることができる。そして、このようなシート構造を有するものとして、ホログラム転写シートが、具体的に例示される。
【0005】
ホログラム転写シートは、剥離紙などを基材シートとして、基材シート上に上記ホログラム層を形成し、さらに、様々な被着体(支持体)にホログラム層を粘着させるための粘着剤からなる粘着層をそのホログラム層面上に直接形成した積層構造を備える。ホログラム転写シートは、必要に応じて所望の形状に抜き打ち加工され、ホログラム転写シートのホログラム層が様々な被着体に転写される。ホログラム転写シートから支持体へのホログラム層の転写は、ホログラム層と粘着層の積層体ごとその被着体に転写される。このとき、ホログラム層は、粘着層によって支持体面上に貼り付けられて固定される。
【0006】
したがって、硬化型材料層と粘着層とを積層した積層構造を有する積層シートには、積層シートがホログラム転写シートである場合に打ち抜き加工を施されることがあることを鑑みれば、加工時の打ち抜き性が良好なものであることが好ましいとされる。また、積層シートがホログラム転写シートである場合には、ホログラム層と支持体との粘着性が良好に維持されることが特に要請される。
【0007】
ところで、ホログラム転写シートにおいては、支持体面の地模様を隠蔽して、ホログラム画像のコントラストを良好にするために、ホログラム層と粘着層の間に着色層が積層されることがある。特に、ホログラム層に記録されたホログラムが体積ホログラムであるような場合、着色層の積層によるホログラム画像のコントラスト向上効果は、大きなものとなる。ところが、その一方で、ホログラム層と粘着層の間に着色層を追加することは、ホログラム転写シートから支持体上に転写される層構造の全厚みを増大させてしまうという問題を生じさせてしまう。特に、ホログラム層を転写される支持体が柔軟な材質のものであるような場合などには、支持体のうちホログラム層の転写がなされた部分が、部分的に幅厚になり、支持体の柔軟性が損なわれる虞が大きくなる。また、ホログラム層が支持体外面上に転写されて外面に露出する場合、ホログラム層が支持体表面から突出した状態となりやすく、ホログラム層が外部から物理力を受けやすくなるうえ摩擦を生じやすくなり、そのことがホログラム層の情報の記録状態に悪影響を及ぼす虞がある。さらに、ホログラム転写シートに着色層が積層される場合、ホログラム転写シートの製造工程数が増大するという問題もある。
【0008】
そこで、着色層を新たに設ける代わりに、粘着層に着色材料を添加して粘着層自体を着色する試みがなされている(特許文献1)。この試みは、着色層の機能を粘着層に付与しようとするものである。
【0009】
ここでホログラム転写シートのように硬化型材料層と粘着層とを積層した層構造を有する積層シートが形成される際には、積層シート形成時における硬化型材料層と粘着層との粘着性に優れる点で、粘着層には、通常、アクリル粘着剤が用いられている。ところが、これまで用いられてきたようなアクリル粘着剤で形成された粘着層では、特許文献1のように粘着層に着色材料を添加された場合に、粘着層の粘着性の低下(経時劣化)が著しく進行しやすくなる問題がある。さらに、粘着層に隠蔽性を与える目的で用いられたはずの着色材料が、その粘着層から硬化型材料層へと染み出してしまう(ブリードアウト)という問題が生じてしまう。
【0010】
このようなブリードアウトの問題点に関しては、粘着層と硬化型材料層との間に、更に接着層を別途積層することが提案されている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2001−142381号公報
【特許文献2】特開2000−112357号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、特許文献2に記載された技術のように、粘着層と硬化型材料層との間に、更に接着層を別途積層することになれば、結局、「支持体のうちホログラム層の転写がなされた部分が、部分的に幅厚になる」という「厚みの増大」の問題や、製造工程数の増大の問題が再び生じてしまう。
【0013】
したがって、硬化型材料層と粘着層とを積層した層構造を有する積層シートにおいては、厚みの増大や製造工程数の増大の問題、粘着層に着色材料が添加された場合に粘着層の経時劣化が早まる問題、および、粘着層からの着色材料のブリードアウトの問題の全てを十分に解決できるような積層シートが得られていない。
【0014】
そして、そのうえで、ホログラム転写シートのような硬化型材料層と粘着層とを積層した層構造を有する積層シートにおいては、上記したように打ち抜き性が良好であることが好ましい。
【0015】
本発明は、粘着層に着色材料が添加されたとしても、粘着層の経時劣化を抑制できるとともに、粘着層からの着色材料のブリードアウトを抑制でき、さらに、厚みの増大や製造工程数の増大の問題の発生を抑制しつつ打ち抜き性も良好な積層シートを提供することを目的とし、また、良好なホログラム転写シートを形成するために使用可能な積層シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、(1)粘着層と硬化型材料層を直接積層してなる積層体を有する積層シートであって、
硬化型材料層は、エネルギー線もしくは熱によって硬化する硬化型樹脂を含んでなり、
粘着層は、アクリルトリブロック共重合体を含み、50℃における動的貯蔵弾性率が1.5×10Pa以上であり、且つ、0℃における動的貯蔵弾性率が5.0×10Pa以下である、ことを特徴とする積層シート、
(2)粘着層は、アクリルジブロック共重合体を含む、上記(1)に記載の積層シート、
(3)硬化型材料層は、ホログラム層である、上記(1)または(2)に記載の積層シート、
(4)粘着層は、所定色の着色材料を含む、上記(1)から(3)のいずれかに記載の積層シート、
(5)着色材料は、黒色顔料を含む、上記(4)に記載の積層シート、
(6)積層体は、基材シートに直接もしくは間接に積層されており、粘着層と基材シートの間に硬化型材料層が位置している、上記(1)から(5)のいずれかに記載の積層シート、
(7)積層体は、基材シートに剥離可能に積層されている、上記(6)に記載の積層シート、を要旨とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、粘着層に着色材料が添加されたとしても、粘着層の経時劣化を抑制できるとともに、粘着層からの着色材料のブリードアウトを抑制でき、さらに、厚みの増大や製造工程数の増大の問題の発生を抑制しつつ打ち抜き性も良好な積層シートが得られる。この積層シートは、様々なシートとして使用されることができ、例えば、所定の硬化型材料層にホログラムを記録させておくことでホログラム転写シートとして好適に使用されることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の積層シートの実施例の1つを模式的に示す断面模式図である。
【図2】本発明の積層シートがホログラム転写シートである場合における、積層シートの実施例の1つを模式的に示す断面模式図である。
【図3】本発明の積層シートがホログラム転写シートである場合における、積層シートの他の実施例(第2の実施形態の例)の1つを模式的に示す断面模式図である。
【図4】本発明の積層シートがホログラム転写シートである場合における、積層シートの他の実施例(第3の実施形態の例)の1つを模式的に示す断面模式図である。
【図5】ホログラム層に記録された絵柄と、積層シートの輝度を測定するための測定スポットとを説明するための説明図である。
【図6】積層シートの性能を評価するための光学測定系を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の積層シート10は、粘着層30と硬化型材料層20を直接積層してなる積層体40を有する。硬化型材料層20は、エネルギー線もしくは熱によって硬化する硬化型材料を含んでなる。硬化型材料には、エネルギー線によって硬化するエネルギー線硬化型材料と、熱によって硬化する熱硬化型材料があげられる。エネルギー線硬化型材料としては、光線によって硬化する感光硬化型材料、電子線によって硬化する電子線硬化型材料があげられる。また、エネルギー線硬化型材料と熱硬化型材料のそれぞれについて、樹脂材料と非樹脂材料を挙げることができる。なお、エネルギー線という概念は、紫外線、可視光線、赤外線等の電磁波と、電子線等の放射線の両方を含んでなる概念である。
【0020】
積層シート10は、ホログラムを記録するためシート材や、ホログラム転写シート(すなわち、ホログラムを記録した後に得られるホログラム転写シート1)として使用可能である。
【0021】
そこで、積層シート10がホログラム転写シート1である場合を例として挙げつつ、詳細に説明する。
【0022】
(第1の実施形態)
積層シート10は、基材シート5に、硬化型材料層20であるホログラム層2と、粘着層3(30)とをこの順に積層してなる積層体40であるホログラム積層体4を有してなるホログラム転写シート1である(第1の実施形態の積層シート)。このとき、ホログラム積層体4は、基材シート5上に剥離可能に積層される。また、ホログラム積層体4においては、粘着層3と基材シート5の間にホログラム層2が位置していることになる。
【0023】
<基材シート5>
基材シート5としては、後述するようにホログラム層2を支持する機能を有するものであれば特に限定されない。基材シート5は、ホログラム層2の種類(例えば、体積ホログラム)などに応じて適宜選択して用いることができる。
【0024】
基材シート5としては、例えば、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリフッ化エチレン系フィルム、ポリフッ化ビニリデンフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリ塩化ビニリデンフィルム、エチレン−ビニルアルコール共重合体フィルム、ポリビニルアルコールフィルム、ポリメチルメタクリレートフィルム、ポリエーテルスルホンフィルム、ポリエーテルエーテルケトンフィルム、ポリアミドフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム等の樹脂フィルムを適宜用いることができる。
【0025】
積層シート10において、ホログラム積層体4が基材シート5に対して効果的に剥離可能に積層された状態とするためには、基材シート5としては、特に限定されるものではなく、PET(ポリエチレンテレフタレート)製のシート材などの樹脂製のシートなどを適宜用いることができるが、透明もしくは半透明なものを用いられることが好ましい。
【0026】
基材シート5の厚みは、ホログラム層2の用途や種類等に応じて適宜選択されるものであるが、2μm〜200μm、好ましくは10μm〜50μmの範囲内とされるのが通常である。
【0027】
<ホログラム層2>
硬化型材料層20であるホログラム層2は、エネルギー線もしくは熱によって硬化する硬化型材料を構成する化合物を含んでなる材料組成物(硬化型材料層用材料組成物)の硬化物からなる層であって、ホログラムを構成する干渉縞を形成している層である。ホログラム層2としては、ホログラムを構成する干渉縞がホログラム層2にどのように記録されているかに応じて、体積ホログラム層や、表面レリーフホログラムを記録する層などが挙げられる。
【0028】
(硬化型材料層用材料組成物)
ホログラム層2を構成するために調製される硬化型材料層用材料組成物については、硬化型材料層用材料組成物の硬化時もしくは硬化後にホログラムを記録することができるものであれば特に限定されるものではなく、ホログラム層2を形成する場合に用いられる公知の材料組成物を適宜用いることができる。
【0029】
硬化型材料層用材料組成物に含まれる硬化型材料については、次のように説明される。
【0030】
(硬化型樹脂材料)
ホログラム層2が表面レリーフホログラムを記録する層である場合には、硬化型材料層用材料組成物の硬化型材料は、硬化可能な材料であって硬化後の層表面に微細な凹凸パターンを形成した状態を維持可能であれば、特に限定されずに使用可能であり、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、エネルギー線硬化性樹脂等を適宜用いることができる。熱硬化性樹脂としては、例えば、不飽和ポリエステル樹脂、アクリルウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ変性アクリル樹脂、エポキシ変性不飽和ポリエステル樹脂、アルキッド樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、フェノール樹脂、セルロース樹脂、ジアリルフタレート樹脂、ポリアセタール樹脂等、有機成分とゾルゲル反応可能な金属アルコキシド基を含有した有機−無機ハイブリッド樹脂等が挙げられる。また、熱可塑性樹脂としては、アクリル樹脂、アクリルアミド樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリウレタン、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリカーボネート、シリコーン樹脂等が挙げられる。これらの樹脂は、単独あるいは2種以上の組み合わせで使用することができ、また、各種イソシアネート樹脂や、ナフテン酸コバルト、ナフテン酸亜鉛等の金属石鹸ベンゾイルパーオキサイド、メチルエチルケトンパーオキサイド等の過酸化物、ベンゾフェノン、アセトフェノン、アントラキノン、ナフトキノン、アゾビスイソブチロニトリル、ジフェニルスルフィド等の熱あるいは紫外線硬化剤を配合してもよい。
【0031】
また、エネルギー線硬化性樹脂としては、エチレン性不飽和結合をもつモノマー、オリゴマー、ポリマー等を使用することができる。モノマーとしては、例えば、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート等が挙げられる。オリゴマーとしては、エポキシアクリレート、ウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート等が挙げられる。ポリマーとしては、ウレタン変性アクリル樹脂、エポキシ変性アクリル樹脂が挙げられ、特に耐熱性や加工性の観点から、ウレタン変性アクリル樹脂が好ましく用いられる。
【0032】
次に、ホログラム層2が体積ホログラムを記録する層(体積ホログラム層)である場合、硬化型材料層用材料組成物は、表面レリーフホログラムを記録する層である場合について示した硬化型材料を含む硬化型材料層用材料組成物を用いることができる。また、ホログラム層2が体積ホログラムを記録する層である場合、硬化型材料層用材料組成物としては、例えば、銀塩材料、重クロム酸ゼラチン乳剤、光重合性樹脂(感光硬化型樹脂材料)、光架橋性樹脂等の公知の体積ホログラム記録材料を用いることができる。
【0033】
さらに、ホログラム層2が体積ホログラム層である場合において、硬化型材料層用材料組成物としては、(i)バインダ樹脂、光重合可能な化合物、光重合開始剤および増感色素を含有する材料組成物(第1の感光材料)、(ii)カチオン重合性化合物、ラジカル重合性化合物、光ラジカル重合開始剤系および光カチオン重合開始剤系を含有する材料組成物(第2の感光材料)が、好適に用いられる。
【0034】
(第1の感光材料について)
第1の感光材料はバインダ樹脂、光重合可能な化合物、光重合開始剤および増感色素を含有する。
【0035】
(バインダ樹脂)
第1の感光材料に含まれるバインダ樹脂としては、例えば、ポリ(メタ)アクリル酸エステル、またはその部分加水分解物、ポリ酢酸ビニルまたはその加水分解物、アクリル酸、アクリル酸エステル等の共重合可能なモノマー群の少なくとも1つを重合成分とする共重合体、またはそれらの混合物や、ポリイソプレン、ポリブタジエン、ポリクロロプレン、ポリビニルアルコールの部分アセタール化物であるポリビニルアセタール、ポリビニルブチラール、ポリ酢酸ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体等、またはそれらの混合物等を挙げることができる。ここで、ホログラム層2に記録されるホログラムが体積ホログラムである場合、ホログラム層形成用材料層にホログラムを記録する記録工程を行ったのちに記録された体積ホログラムを安定化するべく、ホログラムの記録工程の後に加熱工程を施すことでホログラム層形成用材料層に含まれるモノマーを移動させる工程が実施されることが好ましい。このため、バインダ樹脂は、ガラス転移温度が比較的低く、上記したモノマーの移動が容易となるものであることが好ましい。
【0036】
(光重合可能な化合物)
第1の感光材料に含まれる光重合可能な化合物は、光を受けて反応活性種(ラジカル、カチオンなど)を発生して、化合物相互で反応(重合反応)が進行可能なものであり、硬化型材料をなすが、この光重合可能な化合物は、後述するような1分子中に少なくとも1個のエチレン性不飽和結合を有する光重合、光架橋可能なモノマー、オリゴマー、プレポリマーおよびそれらの混合物を用いることができる。光重合可能な化合物として使用可能な化合物の具体例としては、不飽和カルボン酸およびその塩、不飽和カルボン酸と脂肪族多価アルコール化合物とのエステル、不飽和カルボン酸と脂肪族多価アミン化合物とのアミド化合物等を挙げることができる。
【0037】
第1の感光材料に含まれる光重合可能な化合物として使用可能な不飽和カルボン酸のモノマーとしては、具体例に、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸等及びそれらのハロゲン置換不飽和カルボン酸、例えば塩素化不飽和カルボン酸、臭素化不飽和カルボン酸、フッ素化不飽和カルボン酸等が挙げることができる。上記ハロゲン置換不飽和カルボン酸としては、2,2,3,3−テトラフルオロプロピルアクリレート、1H,1H,2H,2H−ヘプタデカフルオロデシルアクリレート、2,2,3,3−テトラフルオロプロピルメタクリレート等を挙げることができる。
【0038】
第1の感光材料に含まれる光重合可能な化合物として使用可能な「脂肪族多価アルコール化合物と不飽和カルボン酸とのエステル」のモノマーの具体例としては、例えば、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、クロトン酸エステル、イソクロトン酸エステル、マレイン酸エステルなどを挙げることができる。
【0039】
「脂肪族多価アルコール化合物と不飽和カルボン酸とのエステル」のモノマーたる「アクリル酸エステル」としては、エチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、1,3−ブタンジオールジアクリレート、テトラメチレングリコールジアクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリ(アクリロイルオキシプロピル)エーテル、トリメチロールエタントリアクリレート等を挙げることができる。また、メタクリル酸エステルとしては、テトラメチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールエタントリメタクリレート等を挙げることができる。また、上記イタコン酸エステルとしてはエチレングリコールジイタコネート、プロピレングリコールジイタコネート、1,3−ブタンジオールジイタコネート等を挙げることができる。また、上記クロトン酸エステルとしては、エチレングリコールジクロトネート、テトラメチレングリコールジクロトネート、ペンタエリスリトールジクロトネート、ソルビトールテトラクロトネート等を挙げることができる。さらに上記イソクロトン酸エステルとしては、エチレングリコールジイソクロトネート、ペンタエリスリトールジイソクロトネート、ソルビトールテトライソクロトネート等を挙げることができる。さらにまた、上記マレイン酸エステルとしては、エチレングリコールジマレエート、トリエチレングリコールジマレエート、ペンタエリスリトールジマレエート、ソルビトールテトラマレエート等を挙げることができる。
【0040】
第1の感光材料に含まれる光重合可能な化合物として使用可能な「不飽和カルボン酸と脂肪族多価アミン化合物とのアミド」のモノマーの具体例としては、メチレンビスアクリルアミド、メチレンビスメタクリルアミド、1,6−ヘキサメチレンビスアクリルアミド、1,6−ヘキサメチレンビスメタクリルアミド等を挙げることができる。
【0041】
(光重合開始剤)
第1の感光材料に含まれる光重合開始剤としては、例えば、1,3−ジ(t−ブチルジオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3´,4,4´−テトラキス(t−ブチルジオキシカルボニル)ベンゾフェノン、N−フェニルグリシン、2,4,6−トリス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、3−フェニル−5−イソオキサゾロン、2−メルカプトベンズイミダゾール、また、イミダゾール二量体類等を挙げることができる。ホログラム層2に記録されるホログラムが体積ホログラムである場合、ホログラム層形成用材料層にホログラムを記録する記録工程を行ったのちには、光重合開始剤は分解処理されるものであることが好ましい。記録工程の後に光重合開始剤が分解処理されると、記録された体積ホログラムがより安定化する。そのような光重合開始剤としては、例えば有機過酸化物系の光重合開始剤をあげることができる。有機過酸化物系の光重合開始剤は紫外線照射することにより容易に分解される。
【0042】
(増感色素)
第1の感光材料に含まれる増感色素としては、チオピリリウム塩系色素、メロシアニン系色素、キノリン系色素、スチリルキノリン系色素、ケトクマリン系色素、チオキサンテン系色素、キサンテン系色素、オキソノール系色素、シアニン染料、ローダミン染料、チオピリリウム塩系色素、ピリリウムイオン系色素、ジフェニルヨードニウムイオン系色素等を挙げることができる。
【0043】
(第2の感光材料について)
第2の感光材料は、カチオン重合性化合物、ラジカル重合性化合物、光ラジカル重合開始剤系、および、カチオン重合開始剤系を含有する。カチオン重合性化合物とラジカル重合性化合物が、硬化型材料をなす。
【0044】
(カチオン重合性化合物)
第2の感光材料に含まれるカチオン重合性化合物としては、ラジカル重合性化合物の重合が比較的低粘度の材料組成物中で行われることが好ましいという点から、室温で液状のものが好適に用いられる。このようなカチオン重合性化合物としては、例えば、ジグリセロールジエーテル、ペンタエリスリトールポリジグリシジルエーテル、1,4−ビス(2,3−エポキシプロポキシパーフルオロイソプロピル)シクロヘキサン、ソルビトールポリグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル等を挙げることができる。
【0045】
(ラジカル重合性化合物)
第2の感光材料に含まれるラジカル重合性化合物としては、分子中に少なくとも1つのエチレン性不飽和二重結合を有するものが好ましい。また、ホログラム層2に記録されるホログラムが体積ホログラムである場合、ラジカル重合性化合物の平均屈折率は、上記カチオン重合性化合物の平均屈折率より大きいことが好ましく、なかでも0.02以上大きいことが好ましい。これは、ラジカル重合性化合物とカチオン重合性化合物との屈折率の差によって、体積ホログラムが形成されることによるものである。平均屈折率の差が上記値を満たす場合には、ホログラム層形成用材料層に十分な屈折率変調を形成して体積ホログラムを記録することができる。ラジカル重合性化合物としては、例えば、アクリルアミド、メタクリルアミド、スチレン、2−ブロモスチレン、フェニルアクリレート、2−フェノキシエチルアクリレート、2,3−ナフタレンジカルボン酸(アクリロキシエチル)モノエステル、メチルフェノキシエチルアクリレート、ノニルフェノキシエチルアクリレート、β−アクリロキシエチルハイドロゲンフタレート等を挙げることができる。
【0046】
(光ラジカル重合開始剤系)
第2の感光材料に含まれる光ラジカル重合開始剤系としては、ホログラム層形成用材料層にホログラムを記録する際に、後述の第1露光によって活性ラジカルを生成し、該活性ラジカルがラジカル重合性化合物を重合させることができるものであれば特に限定されるものではない。また、光ラジカル重合開始剤系は、一般に光を吸収する成分である増感剤と活性ラジカル発生化合物や酸発生化合物を組み合わせたもので構成されてもよい。このような光ラジカル重合開始剤系における増感剤は、可視レーザー光を吸収するために色素のような有色化合物が用いられる場合が多いが、ホログラム層2を無色透明とする場合には、シアニン系色素の使用が好ましい。シアニン系色素は一般に光によって分解しやすいため、ホログラム層形成用材料層にホログラムを記録してホログラム層2を形成後に更に露光を施す処理、または室内光や太陽光の下に数時間から数日放置する処理を実施することで、ホログラム層2中の色素が分解される。これにより、可視波長域における光の吸収を抑制されたホログラム層2が形成され、ホログラムを記録したホログラム層2として無色透明ものを得ることができるからである。
【0047】
シアニン系色素の具体例としては、アンヒドロ−3,3´−ジカルボキシメチル−9−エチル−2,2´チアカルボシアニンベタイン、アンヒドロ−3−カルボキシメチル−3´,9´−ジエチル−2,2´チアカルボシアニンベタイン、3,3´,9−トリエチル−2,2´−チアカルボシアニン・ヨウ素塩、3,9−ジエチル−3´−カルボキシメチル−2,2´−チアカルボシアニン・ヨウ素塩、3,3´,9−トリエチル−2,2´−(4,5,4´,5´−ジベンゾ)チアカルボシアニン・ヨウ素塩、2−[3−(3−エチル−2−ベンゾチアゾリデン)−1−プロペニル]−6−[2−(3−エチル−2−ベンゾチアゾリデン)エチリデンイミノ]−3−エチル−1,3,5−チアジアゾリウム・ヨウ素塩、2−[[3−アリル−4−オキソ−5−(3−n−プロピル−5,6−ジメチル−2−ベンゾチアゾリリデン)−エチリデン−2−チアゾリニリデン]メチル]3−エチル−4,5−ジフェニルチアゾリニウム・ヨウ素塩、1,1´,3,3,3´,3´−ヘキサメチル−2,2´−インドトリカルボシアニン・ヨウ素塩、3,3´−ジエチル−2,2´−チアトリカルボシアニン・過塩素酸塩、アンヒドロ−1−エチル−4−メトキシ−3´−カルボキシメチル−5´−クロロ−2,2´−キノチアシアニンベタイン、アンヒドロ−5,5´−ジフェニル−9−エチル−3,3´−ジスルホプロピルオキサカルボシアニンヒドロキシド・トリエチルアミン塩等が挙げられ、これらの1種または2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0048】
活性ラジカル発生化合物としては、例えば、ジアリールヨードニウム塩類、あるいは2,4,6−置換−1,3,5−トリアジン類が挙げられる。高い感光性が必要なときは、ジアリールヨードニウム塩類の使用が特に好ましい。上記ジアリールヨードニウム塩類の具体例としては、ジフェニルヨードニウム、4,4´−ジクロロジフェニルヨードニウム、4,4´−ジメトキシジフェニルヨードニウム、4,4´−ジターシャリーブチルジフェニルヨードニウム、3,3´−ジニトロジフェニルヨードニウムなどのクロリド、ブロミド、テトラフルオロボレート、ヘキサフルオロホスフェート、ヘキサフルオロアルセネート、ヘキサフルオロアンチモネート、トリフルオロメタンスルホン酸塩、9,10−ジメトキシアントラセン−2−スルホン酸塩などが例示される。又2,4,6−置換−1,3,5−トリアジン類の具体例としては、2−メチル−4,6−ビス(トリクロロメチル)ー1,3,5−トリアジン、2,4,6−トリス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、2−フェニル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−(p−メトキシフェニルビニル)−1,3,5−トリアジン、2−(4´−メトキシ−1´−ナフチル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン等が挙げられる。
【0049】
(光カチオン重合開始剤系)
第2の感光材料に含まれる光カチオン重合開始剤系としては、ホログラム層形成用材料層にホログラムを記録する際の第1露光に対しては低感光性又は非感光性であって、第1露光と異なる波長の光を照射する後露光(第2露光)に対して感光性を有してブレンステッド酸あるいはルイス酸を発生し、カチオン重合性化合物を重合させる機能を発揮するような開始剤系であれば、特に限定されるものではない。光カチオン重合開始剤系は、第1露光の間はカチオン重合性化合物を重合させないものから構成されることが特に好ましい。このような光カチオン重合開始剤系としては、例えばジアリールヨードニウム塩類、トリアリールスルホニウム塩類、鉄アレン錯体類等が挙げられる。ジアリールヨードニウム塩類で好ましいものとしては上述した光ラジカル重合開始剤系で示したヨードニウムのテトラフルオロボレート、ヘキサフルオロホスフェート、ヘキサフルオロアルセネート、ヘキサフルオロアンチモネートなどが挙げられる。トリアリールスルホニウム塩類で好ましいものとしては、トリフェニルスルホニウム、4−ターシャリーブチルトリフェニルスルホニウム等が挙げられる。
【0050】
(その他の添加剤)
硬化型材料層用材料組成物には、上記に挙げる各種の化合物のほかにもその他の添加剤を添加可能である。
【0051】
ホログラム層2が表面レリーフホログラムを記録する層である場合、硬化型材料層用材料組成物には、反応性をもたないアクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂等のポリマーが、その他の添加剤として添加されていてもよい。この場合、ホログラム層2を構成するための層構造に、表面レリーフホログラムを構成する凹凸レリーフパターン形状を、より正確に形成することができるようになる。また、ホログラム層2を構成するための層構造により容易に形成するために、硬化型材料層用材料組成物には、離型剤がその他の添加剤として添加されていてもよい。離型剤としては、公知の離型剤や界面活性剤、例えば、ポリエチレンワックス、アミドワックス等の固形ワックス、フッ素化合物、フッ素ポリマー、リン酸エステル、シリコーンオイル、シリコーン樹脂等が挙げられる。
【0052】
また、ホログラム層2が表面レリーフホログラムを記録する層である場合においては、表面レリーフホログラムを記録する凹凸レリーフパターン形状が外部から応力や熱を受けた際に凹凸レリーフパターン形状が崩壊することを抑制するために(すなわち、ホログラム層2の凹凸パターンの硬度や耐熱性を付与するために)、硬化型材料層用材料組成物には、シリカ、チタニア、アルミナ等の無機酸化物微粒子や金属アルコキシド、金属アルコキシドオリゴマー等が、その他の添加剤として添加されていてもよい。さらに、硬化型材料層用材料組成物には、重合防止剤、酸化防止剤、増感剤、紫外線吸収剤、安定化剤、可塑剤、消泡剤等が、その他の添加剤として添加されてもよい。
【0053】
ホログラム層2が体積ホログラム層である場合、硬化型材料層用材料組成物として第2の感光材料を好ましく用いることができるところ、その第2の感光材料には、上記に説明した各種の化合物の他の添加剤として、必要に応じてバインダ樹脂、熱重合防止剤、シランカップリング剤、可塑剤、着色料等が併用されてもよい。バインダ樹脂は、ホログラム層2を形成するための材料組成物の成膜性、ホログラム層形成用材料層の膜厚の均一性を改善する場合や、ホログラム層形成用材料層の形成後にホログラムを記録する干渉縞をホログラム層形成用材料層に形成するための第2露光を行うまでの間、材料組成物を安定に存在させるために使用される。バインダ樹脂は、カチオン重合性化合物やラジカル重合性化合物と相溶性のよいものであればよく、例えば塩素化ポリエチレン、ポリメチルメタクリレート、メチルメタクリレートと他の(メタ)アクリル酸アルキルエステルとの共重合体、塩化ビニルとアクリロニトリルの共重合体、ポリ酢酸ビニル等が挙げられる。バインダ樹脂は、その側鎖又は主鎖にカチオン重合性基等の反応性官能基を有するものでもよい。
【0054】
ホログラム層2の厚みは、特に限定されるものではないが、ホログラム層2が表面レリーフホログラムを記録した層である場合には、ホログラム層2の厚みとして、ホログラム層2に表面レリーフホログラムの凹凸を記録できる程度の厚みが確保される。具体的には、ホログラム層2が表面レリーフホログラムを記録した層である場合、ホログラム層2の厚みは、0.5μm〜20μmの範囲内であることが好ましく、特に1μm〜10μmの範囲内であることが好ましい。
【0055】
また、ホログラム層2が体積ホログラム層である場合には、ホログラム層2の厚みとして、ホログラム層2に体積ホログラムを記録できる程度の厚みが確保される。具体的には、ホログラム層2が表面レリーフホログラムを記録した層である場合、ホログラム層2の厚みは、1μm〜50μmの範囲内であることが好ましく、特に3μm〜25μmの範囲内であることが好ましい。また、ホログラム層2が体積ホログラム層である場合、ホログラム層2の厚みは、1μm〜50μmの範囲内であることが好ましく、特に3μm〜25μmの範囲内であることが好ましい。ホログラム層2の厚みが1μm未満であると、ホログラム画像が暗くなりその視認性が悪化する虞がある。ホログラム層2の厚みが50μmを超えると、ホログラム層2の形成コスト高になる虞があり、また、ホログラム層2を支持体に取り付けても支持体からホログラム層2が剥がれ易くなる。
【0056】
<ホログラム層2の形成>
ホログラム層2は、硬化型材料層用材料組成物を硬化させてなるホログラム層形成用樹脂層の形成時もしくは形成後にホログラムを構成する干渉縞を形成することでホログラムの記録を実施することにより形成される。
【0057】
(ホログラム層形成用樹脂層の形成)
ホログラム層形成用樹脂層の形成方法について、硬化型材料がエネルギー線硬化型材料である場合を例として説明する。
【0058】
まず、エネルギー線硬化型材料を構成する化合物(エネルギー線硬化型材料構成化合物)、バインダ樹脂、光重合開始剤、増感色素を、上記したような配合比率で混合して硬化型材料層用樹材料組成物を調製し、溶剤に混合して、固型成分が15重量%〜25重量%程度の塗布液を調整する。溶剤には、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロルベンゼン、テトラヒドロフラン、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、酢酸エチル、1,4−ジオキサン、1,2−ジクロロエタン、ジクロルメタン、クロロホルム、メタノール、エタノール、イソプロパノール等、またはそれらの混合溶剤などが用いられる。次に、基材上に塗布液を乾燥後膜厚1μm〜100μm、好ましくは1μm〜50μm、さらに好ましくは3μm〜25μmとなるように塗布して塗布膜を形成する。次に、得られた塗布膜にエネルギー線を照射する工程が実施され、塗布膜に含まれるエネルギー線硬化型材料構成化合物を重合させて硬化型材料の硬化物となし、塗布膜がホログラム層形成用材料層となる。この工程と同時又は後にホログラムの記録が行われ、ホログラム層形成用材料層の形成工程の後にホログラム層2が形成され、もしくは、ホログラム層形成用材料層の形成工程がそのままホログラム層2の形成工程となる。なお、エネルギー線硬化型材料構成化合物を重合させる際に、エネルギー線硬化型材料構成化合物に対して照射されるエネルギー線としては、紫外線が好ましく用いられる。
【0059】
(ホログラムの記録)
積層シート10では、ホログラム層形成用材料層に、様々な情報がホログラムとして記録されている。この場合、ホログラムを構成する干渉縞のパターンがホログラム層形成用材料層の形成時あるいは形成後に記録されて、ホログラム層形成用材料層がホログラム層2をなすことになる。
【0060】
ここで、ホログラムの原版について、物体光と参照光の干渉縞のパターンをホログラム層形成用樹脂層に記録されることでホログラムとしての記録が実現される。積層シート10がホログラムの原版用のシートである場合には、干渉縞のパターンが、凹凸パターンや屈折率変調構造としてホログラム層形成用材料層に記録される。そしてこのときホログラム層形成用材料層がホログラム層2をなし、ホログラムの原版としての積層シート10が形成される。
【0061】
また、ホログラムの複製版について、次のように、ホログラムを構成する干渉縞をホログラム層形成用材料層へ記録することが実現される。ホログラムを構成する干渉縞を凹凸パターンとして記録したホログラムの原版からホログラム層形成用材料層にホログラムを構成する干渉縞を記録することによって複製を実現する場合、ホログラムの原版を用いて、ホットエンボス法を用いて凹凸パターンをホログラム層形成用材料層に転写することでホログラムの複製版の製造を行うことができる。ホログラムを構成する干渉縞を屈折率変調構造として記録したホログラム(体積ホログラム)の原版からホログラム層形成用材料層にホログラムを構成する干渉縞を記録することによって複製を実現する場合、ホログラムの原版を用いて、従前より公知な光学複製による方法を用いて屈折率変調構造をホログラム層形成用材料層に転写することでホログラムの複製版の製造を行うことができる。
【0062】
体積ホログラムの複製版の製造について、より具体例に示す。まず、第1の感光材料もしくは第2の感光材料からなる硬化型材料層用材料組成物を基材上に塗布して塗布膜を形成しておく。次に、塗布膜を形成した基板にホログラムの原版を密着させ、エネルギー線を用いて公知の干渉露光法を実施することにより、ホログラムの原版に形成される干渉縞(屈折率変調構造のパターン)を塗布膜に記録した体積ホログラム層としてのホログラム層2が形成され、ホログラムの原版の複製版が得られる。なお、屈折率変調の促進、重合反応完結のために、干渉露光後、紫外線による全面露光や加熱等の処理を適宜行うことができる。ここに、原版に記録された体積ホログラムの複製に使用されるエネルギー線は、可視レーザー光、例えば、アルゴンイオンレーザー(458nm、488nm、514.5nm)、クリプトンイオンレーザー(647.1nm)、ヘリウム−ネオンイオンレーザー(633nm)、YAGレーザー(532nm)等のレーザー光を用いることができる。なお、硬化型材料層用材料組成物として第2感光材料が用いられる場合、ホログラムを塗布膜に記録するにあたり干渉露光法を行う際に、塗布膜の露光が2段階(第1露光、第2露光)で実施される。第1露光では光ラジカル重合開始剤系が感光する波長のレーザー光等の光(第1の光)が塗布膜に照射され、次いで実施される第2露光では光カチオン重合開始剤系が感光する波長の光であって上記第1の光とは別の波長の光が塗布膜に照射される。
【0063】
こうしてホログラム層形成用材料層がホログラム層2をなし、ホログラムの複製版としての積層シート10が形成される。
【0064】
このように、積層シート10は、ホログラムの原版、複製版のいずれにとしても好適に使用できるものである。
【0065】
<粘着層3>
積層シート10の粘着層3(30)は、50℃における動的貯蔵弾性率が5.0×10Pa以上であり、且つ、0℃における動的貯蔵弾性率が5.0×10Pa以下である。
【0066】
粘着層3の50℃における動的貯蔵弾性率が5.0×10Pa以上であることにより、積層シート10は充分な動的貯蔵弾性率を有するため、打ち抜き性に優れたものとなり、粘着層3の0℃における動的貯蔵弾性率が5.0×10Pa以下であることにより、積層シート10は低温での接着性に優れたものとなる。
【0067】
なお、動的貯蔵弾性率は、次に示すような方法で測定される値を示す。すなわち、所定の温度条件下で周期的な歪みを強制的に試験片に与え、その際に試験片に生じた応力を計測する方法を実施することによって、粘弾性関数(E=E’+i・E”)を構成する複素弾性率(E),貯蔵弾性率(E’),損失弾性率(E”)及び損失正接(tanδ=E”/E’)が特定される。
【0068】
具体的には、レオメトリックス社製、固体粘弾性アナライザーRSA−IIを用い、圧縮モードにて、測定周波数1Hz、測定温度を−50℃〜150℃、昇温速度5℃/minの条件下で、試験片に生じる応力を測定し、その測定された値を基にして、動的貯蔵弾性率が求められる。なお、試験片は、次のように作製されたものである。まず、剥離性を有するポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(セパレーター)(厚さ38μm)を準備し、このセパレーターの上に粘着層構成樹脂を含む粘着層形成用組成物(粘着層形成用溶液)を乾燥後の厚みが25μmとなるようにアプリケーターで塗工して塗膜を得て、この塗膜を乾燥させることで塗膜を粘着層となし、その粘着層表面に、セパレーターをさらにラミネートする。こうして、2枚のセパレーターの間に粘着層を形成してなる粘着フィルムが作製される。次に、粘着フィルムの1枚のセパレーターを剥離して粘着層を露出させ、さらに、もう一枚のセパレーターを剥離しつつ、粘着層をロール状に巻取り、粘着層の捲回構造物からなる試験片を得た。この試験片は、直径4.57mm程度、高さ2mm〜4.75mm程度の円柱状であり、目視上、粘着層の間に気泡の混入が認められないものである。
【0069】
粘着層3は、アクリルトリブロック共重合体を含んでなる。アクリルトリブロック共重合体は、次に示す一般式(1)で示される構造を重合体主鎖中に有する。
【0070】
【化1】

【0071】
上記一般式(1)中、[A]および[C]は、それぞれメタクリル酸アルキルエステルの重合体ブロックを表す。また、[B]は、(メタ)アクリル酸アルキルエステルの重合体ブロックを示す。
【0072】
アクリルトリブロック共重合体において、[A]で示す重合体ブロック、[C]で示される重合体ブロックは、それぞれ、ガラス転移温度(Tg)が+110℃以上であり、且つ、シンジオタクティシティーが70%以上であることが好ましい。
【0073】
ガラス転移温度(Tg)は、レオメトリックス社製、固体粘弾性アナライザーRSA−IIを用い、圧縮モードにて測定周波数1Hz、測定温度を−50℃〜150℃、昇温速度5℃/minとして、試験片の動的粘弾性および損失正接(tanδ)を測定し、その測定結果における損失正接の最大値(ピーク値)を与える温度として求められた(DMA法)。
【0074】
シンジオタクティシティーは、従前より公知な方法を用いて求められる。すなわち、シンジオタクティシティーは、[A][C]に示すブロック共重合体を重水素化クロロホルムに溶解してなる試験試料を用いて1H−NMRおよび13C−NMRでスペクトルの測定を行い、そのスペクトルデータに基づき求められるシンジオタクティックトライアッド(rr)の含量(%)を示す。
【0075】
[A]で示される重合体ブロック、[C]で示される重合体ブロックのそれぞれを構成するモノマーは、メタクリル酸アルキルエステルを主成分とし、上記した条件(ガラス転移温度とシンジオタクティシティーの条件)を満たしうるものであれば、特に限定されるものではなく、例えば、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピルなどを挙げることができる。
【0076】
また、アクリルトリブロック共重合体において、[B]で示される重合体ブロックは、ガラス転移温度(Tg)が+30℃以下であることが好ましい。このガラス転移温度は、上記した[A][C]で示される重合体ブロックのガラス転移温度と同じ方法で特定される。
【0077】
一般式(1)中、[B]で示される重合体ブロックを構成する主なモノマー成分は(メタ)アクリル酸アルキルエステル、すなわちアクリル酸アルキルエステルおよび/またはメタクリル酸アルキルエステル、である。この重合体ブロックを構成し得る(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマーとしては、必ずしも限られるものではないが、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチルなどを挙げることができる。
【0078】
[A]で示される重合体ブロック、[B]で示される重合体ブロック、[C]で示される重合体ブロックには、性質を害しない範囲の僅かな割合であれば、上記の他の構成成分が含有されていてもよい。
【0079】
粘着層3に含まれるアクリルトリブロック共重合体は、重量平均分子量/数平均分子量の比が1.00〜1.50であるようなブロック共重合体であることが好ましい。
【0080】
また、粘着層3に含まれるアクリルトリブロック共重合体は、重合性官能基など反応性官能基を含有しないものである。したがって、上記したような[A][B][C]の重合体ブロックの構成成分には、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル等のヒドロキシ基含有モノマー、(メタ)アクリル酸等の不飽和カルボン酸モノマーやアクリルアミド等の不飽和アミンモノマーが含まれない。そして、粘着層3に含まれるアクリルトリブロック共重合体の構造は、活性水素を含む不飽和カルボン酸のエステル化物、不飽和カルボン酸化合物と不飽和アミン化合物を含有しない重合体構造である。
【0081】
本発明によれば、粘着層3が、上記したようなアクリルトリブロック共重合体を含有することにより、ホログラム層2と粘着層3のホログラム積層体4を積層シート10から支持体に転写した後において支持体とホログラム層2との粘着性を効果的に維持することができるという効果を奏する。
【0082】
なお、粘着層3には、アクリルトリブロック共重合体のほかにアクリルジブロック共重合体が更に含まれることが好ましい。
【0083】
ブロック共重合体組成物では、上記したアクリルトリブロック共重合体のほかにアクリルジブロック共重合体が更に含まれることにより、粘着層3の粘着力を保持させることができる。
【0084】
アクリルジブロック共重合体は、2種類の重合体ブロック(重合体ブロック(D1)、重合体ブロック(D2))を、重合体主鎖の主成分として含有してなる。
【0085】
一方の重合体ブロック(重合体ブロック(D1))は、(メタ)アクリル酸アルキルエステルからなる。
【0086】
重合体ブロック(D1)を構成するモノマーは、(メタ)アクリル酸アルキルエステルのモノマーであり、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチルなどを挙げることができる。
【0087】
他方の重合体ブロック(D2)は、重合体ブロック(D1)と構造を異にする(メタ)メタクリル酸アルキルエステルをモノマーとする重合体が用いられる。
【0088】
粘着層3に含まれるアクリルジブロック共重合体は、重合性官能基など反応性官能基を含有しないものである。上記重合体ブロック(D1)(D2)に示すそれぞれの重合体ブロックの構成成分には、いずれも(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル等のヒドロキシ基含有モノマー、(メタ)アクリル酸等の不飽和カルボン酸モノマーやアクリルアミド等の不飽和アミンモノマーが含まれない。そして、粘着層3に含まれるアクリルジブロック共重合体の構造は、活性水素を含む不飽和カルボン酸のエステル化物、不飽和カルボン酸化合物と不飽和アミン化合物を含有しない重合体構造である。
【0089】
粘着層3が、アクリルトリブロック共重合体およびアクリルジブロック共重合体を含有する場合、その配合比率が(アクリルトリブロック共重合体(重量部))/(アクリルジブロック共重合体(重量部))の値で4〜10の範囲であることが好ましい。粘着層が、このような配合比率でアクリルトリブロック共重合体およびアクリルジブロック共重合体を含有することにより、積層シートの打ち抜き性を良好に保ちつつ、ホログラム層と粘着層の積層体を支持体に転写した後において支持体とホログラム層との粘着性を効果的に維持することができるという効果を奏する。
【0090】
ところで、粘着層3は、その粘着層3を構成する異なる重合体の分子相互間に擬似的な架橋構造(擬似架橋構造)を有するものであることが好ましい。これは、粘着層3を粘着力や粘着性の保持力(粘着力の経時安定性)に優れた層構造とするには、粘着層3を構成する重合体がある程度の凝集力を有することが好ましいためである。この点、擬似架橋構造を形成可能にする材料(擬似架橋材料)としては、上記したアクリルトリブロック共重合体のほか、SIS(スチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体)ゴム、SBS(スチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体)ゴムなどの合成ゴムもあげられる。これらの合成ゴムは、トリブロック共重合体である点では、アクリルトリブロック共重合体と共通する。しかしながら、粘着層3の耐候性の観点から、これらの合成ゴムよりも上記したようなアクリルトリブロック共重合体のほうが、粘着層3を構成する樹脂として大きく優れたものである。
【0091】
積層シート10において、ホログラム層2は硬化型材料層用材料組成物を硬化してなる硬化型材料層20であってこの層にホログラムを記録してなる層であるが、硬化型材料層用材料組成物を溶剤に混合しやすくする目的で、硬化型材料層用材料組成物には、ホログラム層2を構成する化合物としてオリゴマーよりも低分子な成分(例えばモノマー)が使用されている場合が多い。このような場合、低分子の成分がホログラム層2に未硬化の状態で残存することとなりやすい。そして粘着層3はホログラム層2と界面を接するため、ホログラム層2中に含まれる虞のある未硬化の成分は、粘着層3を構成する材料と反応してしまう可能性が指摘される。ところが、積層シート10では、上記したように粘着層3は反応性官能基のない樹脂から構成されているため、ホログラム層2と粘着層3の接触界面で、ホログラム層2中に含まれる虞のある未硬化の成分と粘着層3を構成する樹脂とが反応してしまって、粘着層3の粘着力の経時安定性に悪影響が生じる虞が抑制される。
【0092】
積層シート10において、硬化型材料層用材料組成物の1つであるホログラム層形成用材料組成物として第1の感光材料が用いられる場合に、第1の感光材料が、光重合可能な化合物として光ラジカル重合性モノマーを含み、光重合開始剤として光ラジカル重合開始剤を含み、その他にバインダ樹脂および増感色素を含有してなる場合がある。ここに、第1の感光材料を用いた干渉露光法が実施されると、光重合性モノマーとバインダ樹脂との屈折率差を利用して体積ホログラムを記録する層構造が、ホログラム層2として形成されることができる。この場合に実施される干渉露光法では、基材に第1の感光材料を塗布して形成された塗布膜に干渉光が照射されることになるため、塗布膜に対して強く露光された部分(強い干渉光の照射される部分)と弱く露光された部分(弱い干渉光の照射される部分)とが存在することになる。塗布膜に対して強く露光された部分では、弱く露光された部分に優先して、塗布膜に含まれる光ラジカル重合モノマーの光ラジカル重合反応が開始される。このとき、その光ラジカル重合反応に伴い光ラジカル重合性モノマーの拡散移動が起こる。そしてその拡散移動の結果として、塗布膜中では、干渉光の強弱に応じた光ラジカル重合性モノマーの疎密が生じ、それが塗布膜に屈折率の差を生じさせる。この屈折率の差により塗布膜に体積ホログラムが記録されつつ塗布膜が硬化し、ホログラム層2が形成される。この場合、塗布膜の硬化と同時にホログラム層2は体積ホログラムを発現可能な層となる。このような干渉露光法では、塗布膜の硬化条件(光ラジカル重合反応の実施条件)によっては、塗布膜に含まれる各種化合物のうち低分子量の化合物成分がホログラム層2に未硬化の状態で残存することとなりやすい。そのようなホログラム層2に対面するように粘着層3が積層されると、ホログラム層2に含まれる未硬化の化合物成分が粘着層3に移行することがあり、さらには、この移行した未硬化の化合物成分が粘着層3に含まれる化合物と反応して粘着層3の凝集力に悪影響を及ぼすことがある。ところが、この積層シート10では、粘着層3が反応性官能基のない樹脂から構成され、上記したようにホログラム層2から粘着層3に移行した化合物成分が粘着層3を構成する樹脂と反応してしまうおそれが抑制されているので、粘着層3の粘着力の経時安定性に悪影響が生じる虞が効果的に抑制される。
【0093】
また、例えば、硬化型材料層用材料組成物として、銀塩材料や重クロム酸ゼラチン乳剤が用いられる場合、上記第1の感光材料が用いられる場合と同じく、ホログラム層2に未硬化の状態で硬化型材料層用材料組成物の構成成分が残存する可能性がある。ところが、積層シート10では、粘着層3が反応性官能基のない樹脂から構成されているので、硬化型材料層用材料組成物の構成成分をなす化合物の分子骨格に含まれることのある水酸基などの官能基と、粘着層3に含まれる化合物とが反応する虞も抑制されている。このことからも、積層シート10では、粘着層3の粘着力の経時安定性に悪影響が生じる虞が効果的に抑制される。
【0094】
粘着層3には、所定色の着色材料が含まれていてもよい。
【0095】
この場合、着色材料としては、光吸収性染料または着色顔料を用いることができる。すなわち、光吸収性染料または着色顔料を含む公知のグラビア印刷用インキ、スクリーン印刷インキなどの通常のインキを用いることができる。
【0096】
粘着層3に着色材料を含有させる場合においては、粘着層3の色が、散乱性の少ない色(光沢がある色)であって、特にホログラム層2が体積ホログラム層である場合には、体積ホログラム層の色合いとは相反する色合いであることが好ましい。したがって、粘着層3の色種は、黒色であることが好ましい。このような粘着層3は、黒色染料や黒色顔料が粘着層3に含有されることによって形成できる。
【0097】
このように、本発明において、粘着層3に所定色の着色材料が含まれると、着色材料によって、積層シート10のホログラム画像のコントラストを向上させて、ホログラム再生像をより明瞭に再現させることができる。
【0098】
粘着層3には、粘着性をより促進させる粘着付与剤(タッキファイヤー)が含まれていてもよい。タッキファイヤーは、分子量が数百〜数千のオリゴマー程度の樹脂材料である。この樹脂材料としては、具体的に、ロジンエステル系樹脂、テルペン系樹脂、フェノール系樹脂、石油樹脂、アクリル系樹脂などを挙げることができる。
【0099】
粘着層3が、タッキファイヤーを含有する場合、その配合比率が粘着層構成樹脂の全量(重量部)に対して0〜25重量%の範囲であることが好ましい。粘着層3が、このような配合比率でタッキファイヤーを含有することにより、ホログラム層2と粘着層3の積層体でなるホログラム積層体4を積層シート10から支持体に転写した後において支持体とホログラム層2との粘着性を効果的に維持することができるという効果を奏する。なお、粘着層構成樹脂とは、粘着層3がアクリルジブロック共重合体を含まずアクリルトリブロック共重合体を含む場合(第1の場合)には、アクリルトリブロック共重合体を示し、粘着層3がアクリルジブロック共重合体とアクリルトリブロック共重合体の両者を含む場合(第2の場合)には、アクリルジブロック共重合体とアクリルトリブロック共重合体の両者を示すものとする。また粘着層構成樹脂の全量とは、第1の場合には、アクリルトリブロック共重合体の配合量(重量部)を示し、第2の場合には、アクリルジブロック共重合体の配合量(重量部)とアクリルトリブロック共重合体の配合量(重量部)の合計量を示す。
【0100】
なお、粘着層3には、上記したようなタッキファイヤーのほか、本発明の目的を損なわない範囲で、必要に応じて、粘着層の経時劣化を防止するための光安定剤、紫外線吸収剤や酸化防止剤等の各種の添加剤が配合されていてもよい。
【0101】
(第1の実施形態の積層シートの製造)
第1の実施形態の積層シート10は、次のように製造されることができる(第1の製造方法)。
【0102】
(第1の製造方法)
基材シート5上に、上記したようにホログラム層形成用材料層を形成するとともに、それをホログラム層2となす。これにより、基材シート5とホログラム層2を積層してなるホログラムシートを得る。その一方で、剥離性を有するフィルム材(セパレーター)を準備し、上記した粘着層構成樹脂を含む粘着層形成用組成物を調整し、セパレーター面上に粘着層形成用組成物を塗布して粘着層3を形成することにより、粘着フィルムを得る。この粘着フィルムは、セパレーターと粘着層3とが積層された構造を有してなり、且つ、セパレーターから粘着層3を剥離可能に構成される。そして、ホログラムシートのホログラム層2面と粘着フィルムの粘着層3とが対面するように、ホログラムシートと粘着フィルムを重ね合わせ、粘着層3をホログラム層2に貼り付けた後、セパレーターを剥離する。これにより、粘着層3とホログラム層2とを直接積層した積層構造を有する積層シート10を得ることができる。
【0103】
なお、粘着層形成用組成物には必要に応じて着色材料が添加される。粘着層形成用組成物の塗布方法は、公知の印刷方法を適宜用いることができる。
【0104】
第1の製造方法では、ホログラム層2、粘着層3を別々に形成して最後に張り合わせたが、第1の実施形態の積層シート10は、次のように形成されることもできる(第2の製造方法)。
【0105】
(第2の製造方法)
基材シート5上に、上記したようにホログラム層形成用材料層を形成するとともに、それをホログラム層2となす。その一方で、上記した粘着層構成樹脂を含む粘着層形成用組成物を調整し、粘着層形成用組成物を適宜ホログラム層2の上に塗布して粘着層3を形成することにより製造することができる。
【0106】
なお、第1の製造方法や第2の製造方法などの適宜の方法で製造される積層シート10の厚みは、特に限定されるものではないが、適度な粘着力及び良好な打抜き加工性を確保することを考慮すれば、5〜250μmであることが好ましく、20〜100μmであることがより好ましい。
【0107】
(第2の実施形態)
第1の実施形態の積層シート10において基材シート5とホログラム層2との間、及び/又は、粘着層3の上に必要に応じて所定の機能を付与するための付加機能層が設けられてもよい(第2の実施形態)。
【0108】
このような付加機能層は、基材シート5、ホログラム層2、粘着層3のいずれとも異なる層構造を有してなる。具体的に、付加機能層としては、剥離層6、ハードコート層7、印刷層8等を具体的に例示することができる。
【0109】
第2の実施形態の積層シートの実施例の1つについて、その断面模式図を図3に示す。図3の例では、積層シート10は、基材シート5上に、剥離層6を介してハードコート層7、印刷層8、ホログラム層2、粘着層3がこの順序で積層されている。なお、ハードコート層7、印刷層8、ホログラム層2、粘着層3からなる積層体が、ホログラム積層体9であり、積層シート10よりホログラム積層体9を支持体に転写した際、ホログラム積層体9が支持体上に転写される。
【0110】
剥離層6は、基材シート5とハードコート層7との間に剥離性を付与する樹脂層である。剥離層6を構成する樹脂材料としては、アクリル系樹脂、セルロース系樹脂、ビニル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ウレタン系樹脂、オレフィン系樹脂、アミド系樹脂、エポキシ系樹脂などが挙げられる。剥離層6の層厚は、0.05〜10μm、好ましくは0.2〜2μmである。
【0111】
ハードコート層7は、この積層シート10よりホログラム層2を含むホログラム積層体9を支持体に転写した後に、ホログラム積層体9の最外側表面となる面をなすことになる層である。ハードコート層7が支持体上でホログラム積層体9の最外側表面となる面をなす層となることで、ハードコート層7によってホログラム層2の構造や印刷層8が外部応力から保護され、ホログラムとして記録された情報や印刷層8の状態の耐久性を向上させることができるようになる。ハードコート層7を構成する樹脂材料としては、硬化型アクリル系樹脂、セルロース系樹脂、ビニル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ウレタン系樹脂、オレフィン系樹脂、アミド系樹脂、エポキシ系樹脂などを挙げることができる。ハードコート層の層厚は、0.05〜10μm、好ましくは0.2〜2μmである。
【0112】
印刷層8は、文字や絵柄などの情報を所定領域に2次元的に記録した層である。印刷層8は、グラビア印刷用インキ、スクリーン印刷インキなどの通常のインキ等を用いて所定の面上に印刷することで形成できる。印刷層8の層厚は、0.1〜50μm、好ましくは5〜20μmである。
【0113】
第2の実施形態における積層シート10において、基材シート5、ホログラム層2、粘着層3は、それぞれ、上記した第1の実施形態における積層シート10におけるそれらと同じ層構造を有しており、また、同じ材料を用いられて形成される。
【0114】
(第3の実施形態)
上記に説明した第1の実施形態、第2の実施形態の積層シート10では、ホログラム層2および粘着層3は基材シート5の上に設けられてなる積層構造を備えるが、本発明の積層シートは、このような積層構造を有するものに限らず、次に示すような積層シート50であってもよい(第3の実施形態)。
【0115】
第3の実施形態の積層シート50は、図4に示すように、セパレーター用シート51の上に粘着層55、ホログラム層54、透明性粘着層52、基材シート53をこの順に積層してなる。この積層シート50においては、粘着層55とホログラム層54を直接積層してなるホログラム積層体56が形成されている。第3の実施形態の積層シート50における粘着層55、ホログラム層54のそれぞれの層構造は、それぞれ、第1の実施形態の積層シート10における粘着層3、ホログラム層2と同様の構造を備えており、また、第3の実施形態の積層シート50における粘着層55、ホログラム層54のそれぞれの層を構成する材料としては、それぞれ、第1の実施形態の積層シート1における粘着層3、ホログラム層2と同様の材料を用いることができる。第3の実施形態の積層シート50における基材シート53は、第1の実施形態の積層シート1における基材シート5と同じ材料・構造を備えるものを用いることができる。
【0116】
セパレーター用シート51は、粘着層55に対して剥離可能な材料を適宜選択することができ、例えば、剥離可能な樹脂材料としては、シリコーン系樹脂、セルロース系樹脂、ビニル系樹脂、ポリエステル系樹脂、オレフィン系樹脂、アミド系樹脂などが塗布されたポリエステルに代表される様なプラスチックフィルムもしくは紙等が挙げられる。
【0117】
透明性粘着層52は、光透過性を有する材料から適宜選択された材料組成物から形成されていればよい。透明性粘着層52を構成する材料としては、具体的に、一般的に粘着材や接着材を構成する樹脂材料として適用可能なエポキシ樹脂、アクリル樹脂、シリコーン樹脂や天然ゴム、合成ゴム等を例示することができる。透明性粘着層52を構成する材料としては、これら例示された樹脂材料の中でも、透明性に優れる点及び準備コストを抑制できる点で、粘着材を構成する樹脂材料として適用可能なアクリル系樹脂が好ましい。
【0118】
なお、第3の実施形態の積層シート50において、基材シート53とホログラム層54との間、及び/又は、粘着層55とセパレーター用シート51の間に、必要に応じて所定の機能を付与するための付加機能層が設けられてもよい。ここに、ホログラム転写シート50において設けられる付加機能層としては、第2の実施形態の積層シート10において設けることの可能な付加機能層を挙げることができる。したがって、ホログラム転写シート50には、第2の実施形態の積層シート10において設けることの可能な層と同じ剥離層6、ハードコート層7、印刷層8等を設けることができる。また、基材シート53をホログラム積層体56に十分な接着力をもって接着できる場合、積層シート50の構成から透明性粘着層52を除いてもよい。ただし、この場合には、基材シート53は、少なくともホログラム層2に対する剥離性を備えないものが用いられる。
【0119】
(第4の実施形態)
上記に説明した第1の実施形態の積層シート10においては、ホログラム層2および粘着層3からなるホログラム積層体4が基材シート5の上に設けられており、第2の実施形態の積層シート10においては、ホログラム層2および粘着層3を含むホログラム積層体9が基材シート5の上に設けられている。このとき、いずれの積層シート10についても、基材シート5は、ホログラム積層体4,9と剥離可能に積層されている。本発明の積層シートにおいては、このように基材シート5とホログラム積層体4,9とが剥離可能に積層されている場合に限定されず、基材シート5とホログラム積層体4,9が相互に積層固定されてなるものでもよい(第4の実施形態)。
【0120】
第4の実施形態の積層シートは、基材シート5とホログラム積層体4が相互に積層固定されていることを除けば、第1の実施形態の積層シート10と同じ積層構造を有し、且つ、それらの積層構造を構成する各層(ホログラム層2、粘着層3など)についても第1の実施形態の積層シート10と同様に構成されてなる。したがって、第4の実施形態の積層シートは、第1の実施形態の積層シート10の基材シート5として、ホログラム層2に対する剥離性を備えないものが用いられる。
【0121】
また、第4の実施形態の積層シートは、第2の実施形態の積層シート10から剥離層6を除いた積層構造を有して構成されていてよい。さらに、その積層構造を構成する各層(ホログラム層2、粘着層3、付加機能層など)は、第2の実施形態の積層シート10を構成する各層と同様に構成されてなる。ただし、このような第4の実施形態の積層シートでは、第2の実施形態の積層シート10の基材シート5として、ホログラム層2や付加機能層に対する剥離性を備えないものが用いられる。
【0122】
なお、第4の実施形態において、基材シート5とホログラム積層体4,9との密着性が不十分である場合には、基材シート5の表面(ホログラム層2との接触面)に易接着化処理を施すことによって、基材シート5とホログラム積層体4,9との間の密着性を向上することができる。易接着化処理としては、例えば、基材シート5面上に、コロナ処理、オゾン処理、プラズマ処理、電離放射線処理、重クロム酸処理、アンカーまたはプライマー処理等の表面処理や、接着層の積層処理を施すことが挙げられる。ここに、プライマー処理は、基材シート5とホログラム積層体4,9との間に両方の接着性を向上させるプライマー剤からなる薄膜を形成する処理である。プライマー剤としては例えばウレタン系、アクリル系、エチレン−酢酸ビニル共重合体系、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体系等の各種の樹脂材料組成物等が知られており、これらの中から基材の材質に合わせたものを選んで使用することができる。プライマー層の層厚は、0.01μm以上1μm未満、好ましくは0.02〜0.5μmである。なお、プライマー層には、上記したような樹脂材料組成物以外に、公知の添加剤、例えば、無機や有機の微粒子、滑剤、界面活性剤、帯電防止剤、可塑剤などが添加されていてもよい。
【0123】
また、接着層の積層処理は、基材シート5とホログラム積層体4,9との間に接着性を高めるための接着層を設ける処理である。ここに、接着層は、上記のプライマー層よりも厚みのある層である。
【0124】
接着層は、ヒートシール剤であるエチレン−酢酸ビニル共重合樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエチレン樹脂、エチレン−イソブチルアクリレート共重合樹脂、ブチラール樹脂、ポリ酢酸ビニル及びその共重合樹脂、セルロース誘導体、ポリメチルメタクリレート樹脂、ポリビニルエーテル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリプロピレン樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、SBS、SIS、SEBS、SEPS等の熱可塑性エラストマー、又は反応ホットメルト系樹脂等を素材として構成してもよい。なお、いずれの素材を使用するにせよ、接着層が無色透明になるよう、万一、着色している場合でも、ごく淡い着色で、可視光の透過が十分な素材を選択する。接着層の層厚は、1〜50μm、好ましくは2〜20μmである。
【0125】
本発明の積層シートについて、積層シート10,50がホログラム転写シート1である場合を例として上記に説明したが、積層シート10,50は、ホログラム転写シート1に限らず、粘着層30と硬化型材料層20の積層構造を有する積層体であればよい。
【0126】
次に、本発明の積層シート10について、実施例を用いて説明する。実施例について、上記と同様に積層シート10がホログラム転写シート1である場合を例として挙げつつ説明をおこなう。
【実施例】
【0127】
実施例1
<粘着層を備える粘着フィルムの作製>
粘着層を備える粘着フィルムとして、次に示すような粘着フィルムF1を作製した。
【0128】
(粘着フィルムF1)
まず、剥離性を有するポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(セパレーターという)(東セロ株式会社製;SP−PET−03(厚さ38μm))を準備する。そのセパレーター面上に、下記組成の粘着層形成用溶液(粘着層形成用溶液N1)をアプリケーター(ヨシミツ精機社製;YBA型ベーカーアプリケーター)により乾燥後膜厚が25μmとなるように塗布して塗布膜を得た後、塗布膜を形成したセパレーターをオーブンで乾燥させる工程(乾燥工程)を行って粘着層(黒色顔料含有粘着層)とセパレーターの二層積層物を得た。
【0129】
(粘着層形成用溶液N1の組成)
・アクリルトリブロックエラストマー
(クラレ株式会社製;LA2140e) 100 重量部
・ロジン系樹脂
(荒川化学工業株式会社製;KE−100) 25 重量部
・黒インキ
(ザ・インクテック株式会社製;XEL FG墨) 37.5 重量部
・酢酸エチル 100 重量部
【0130】
乾燥工程後、二層積層物の粘着層面上にセパレーター(SP−PET−01(38μm);東セロ(株)製)をラミネートして粘着フィルムF1を得た。この粘着フィルムF1は、セパレーター/黒色顔料含有粘着層/セパレーターの3層構造からなる。
【0131】
<ホログラム層を備えるフィルムの作製>
ホログラム層を備えるフィルム(ホログラムフィルム)は、次のように作製した。
【0132】
絵柄(図5中、符号60に示すような星型の柄)を体積ホログラムとして記録したホログラム原版と、PETフィルムP1(ルミラーT60(50μm):東レ(株)製)を準備し、ホログラム形成材料として、下記組成からなる体積ホログラム記録用材料を、乾燥膜厚10μmとなるようにグラビアコートにて塗工し、PETフィルムP1/体積ホログラム記録用材料の層からなる積層体を得た。
【0133】
<体積ホログラム記録用材料の組成>
・バインダ樹脂(ポリメチルメタクリレート系樹脂(分子量200,000))
50重量部
・3,9−ジエチル−3’−カルボキシルメチル−2,2’−チアカルボシアニン沃素塩
0.5重量部
・ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート 6重量部
・2,2−ビス(4−(アクリロキシジエトキシ)フェニル)プロパン
80重量部
・1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル 80重量部
・溶剤(メチルイソブチルケトン/n−ブタノール=1/1(重量比))
200重量部
【0134】
(体積ホログラムの記録)
ホログラム原版の面がホログラム記録用フィルムの体積ホログラム記録用材料の層に対面するようにホログラム原版とホログラム記録用フィルムとを重ねあわせ、体積ホログラム記録用材料の層を、ホログラム原版に重ね、PETフィルム側からレーザー光(波長;532nm)(エネルギー密度;80mJ/cm)を入射し、ホログラム記録用フィルムにホログラム原版の体積ホログラムを記録(複製)した。その後100℃の雰囲気中で10分間加熱し、高圧水銀灯を用いて、全面に照射線量;2500mJ/cmの紫外線照射(紫外線定着露光)を実施して、530nmに回折中心波長を有する絵柄60をもつ、体積ホログラムフィルムを得た。
【0135】
<積層シートの作製>
粘着フィルムF1のセパレーターを剥がし、これを、ホログラムフィルムのホログラム層面に粘着層を密着させるように体積ホログラムフィルムにラミネートし、PETフィルム/ホログラム層/黒色顔料含有粘着層/セパレーターからなる、体積ホログラムを記録された積層シートを得た。
【0136】
[積層シートにおける粘着層の評価]
積層シートにおける粘着層は、支持体に粘着する粘着機能を有する。その粘着機能の良否につき、その層構造を支持体に対して粘着させた後における剥離強度、耐久性、打ち抜き性、OD値(光学濃度)の観点から評価した。
【0137】
(剥離強度)
剥離強度は、次のように測定した。まず、積層シートを幅25mm×長さ150mmの寸法に切断して切断片を得て、その切断片におけるセパレーターを剥離して粘着層を露出させたものを得て、それを試験片とした。試験片における粘着層の露出面をSUS板に対面させつつ、2kgのローラーを用いて試験片とSUS板とを貼り付けて試験板を得て、その試験板を温度23℃、相対湿度50%の雰囲気下で所定時間(放置時間;2時間)放置した(放置処理)。放置処理後の試験板を用いて、試験片とSUS板との間の剥離強度を測定(剥離速度:300mm/min,剥離距離:120mm,剥離角度:180°)した。なお、剥離強度の測定は、「JIS Z 0237」に準拠している。また、剥離強度の測定には、引張り試験機RTF−1150−H(A&D社製)を用いた。結果を表1に示す。
【0138】
(耐久性)
耐久性の測定は、剥離強度の測定を用いて行った。この剥離強度の測定は、放置処理の条件を変更した他は上記「剥離強度」の測定方法と同じ方法で行った。耐久性の測定における放置処理条件は、表1に示すように、温度23℃、相対湿度50%の雰囲気下、温度60℃、相対湿度90%の雰囲気下、温度80℃、相対湿度0%の雰囲気下で、それぞれ所定時間(放置時間;100時間、250時間、500時間、1000時間)放置する条件である。結果を表1にあわせて示す。
【0139】
(打ち抜き性)
打抜き性の評価は、次のように作製されたサンプル製品の性能に基づいて実施した。
【0140】
<サンプル製品の作製>
積層シートを210mm×300mmに切断してシート片を得た。次に、プレス方式の裁断機(株式会社トーコー製 自動油圧裁断機(型名:SHDC−600×500−50T))に打ち抜き型を取付け、この裁断機に、先に準備したシート片をセットした。そして、シート片のセパレーター以外の層を打ち抜き型に対応した形状に打ち抜いた(打ち抜き工程)。打ち抜き工程では、シート片のセパレーターが貫通しない程度に打ち抜き型の裁断刃がシート片に入れられるように、切断刃の動きを調整した。打ち抜き工程の後、シート片のセパレーター以外の層のうち打ち抜き型の外側にある部分(余剰部)をセパレーターから手で引き剥がし(引き剥がし工程)、サンプル製品を作製した。
【0141】
サンプル製品は、アイランド状に多数の製品要素が多面付けされてなるシートとなっている。製品要素には、サンプル製品の平面視上、円形状(直径10mm)の輪郭を呈するもの(製品要素1)、矩形型(縦10mm×横10mm)の輪郭を呈するもの(製品要素2)の2種類があり、多数の製品要素1と製品要素2は、セパレーター面上に整列配置される。なお、実施例1において、このサンプル製品は、ホログラム層と黒色顔料含有粘着層の積層構造を備えており、本発明の積層シートの1形態として含めることのできるものである。
【0142】
<打ち抜き性の評価>
打ち抜き性の評価は、製品要素1と製品要素2の輪郭部分を目視観察することにより、実施した。この目視観察により、各製品要素1,2の輪郭部分に、引き剥がし工程実施時の糊残(余剰部の粘着層の残渣)が認められないものを「良好」(表中、「○」にて示す)と評価し、糊残の認められたものを「不良」(表中、「×」にて示す)と評価した。結果は表1に示すとおりである。
【0143】
(OD値)
OD値は、次のように測定した。積層シートを製造する際に使用した粘着フィルムを用いて、一方側のセパレーターを剥離して粘着層を露出させ、粘着層を露出させた積層シートとPETフィルム(東洋紡績株式会社製;コスモシャインA4100(厚さ100μm))とを、2kgのローラーを用いて貼り合わせた。粘着フィルムの他方側のセパレーターについても、一方側のセパレーターと同様に剥離するとともにPETフィルムを貼合せた。これにより、粘着フィルムの両面にPETフィルムを貼り合わせた貼合体を得た。この貼合体を幅25mm×長さ50mmの寸法に切断し、試験片とした。OD値は、この試験片を用いて測定した。測定には、反射濃度計(GretagMacbeth社製;GRETAG Macbeth D200−II)を用いた。測定は、試験片上に任意に選択された5点について実施し、各点について得た測定データの平均値をOD値とした。結果は表1に示すとおりである。
【0144】
なお、実施例1において、この貼合体は、ホログラム層と黒色顔料含有粘着層の積層構造を備えており、本発明の積層シートの1形態として含めることのできるものである。
【0145】
(動的貯蔵弾性率)
積層シートにおける粘着層の動的貯蔵弾性率は、積層シートを製造する際に使用した粘着フィルムを用いて次のように測定した。
【0146】
まず、動的貯蔵弾性率を測定するための試験片を、次のように作製した。粘着フィルムF1の1枚のセパレーターを剥離して粘着層を露出させ、さらに、もう一枚のセパレーターを剥離しつつ、粘着層をロール状に巻取り、粘着層の捲回構造物からなる試験片を得た。この試験片は、直径4.57mm程度、高さ2mm〜4.75mm程度の円柱状であり、目視上、粘着層の間に気泡の混入が認められないものである。この試験片を、粘弾性分析機にセットし、所定条件下で周期的な歪みを強制的に試験片に与え、その際に試験片に生じた応力を計測する方法を実施することによって、その応力の値を特定し、その値を基にして、0℃と50℃における動的貯蔵弾性率をそれぞれ求めた。結果は表6に示すとおりである。なお、粘弾性分析機には、レオメトリックス社製、固体粘弾性アナライザーRSA−IIを用い、試験片に周期的な歪みを与える際の所定条件は、圧縮モード、測定周波数が1Hz、測定温度が−50℃〜150℃、昇温速度が5℃/minであるとする条件である。
【0147】
[積層シートのホログラム画像の評価]
積層シートのホログラム画像の良否は、積層シートのホログラム層/黒色顔料含有粘着層の積層構造を所定の被着体(光透過性を有する平滑なガラス板)に貼り付けた貼付体について、ガラス板に貼り付けられたホログラム層におけるホログラム画像の輝度とコントラストの測定およびホログラム画像の観察を行うことによって、実施した。輝度とコントラストの測定結果については表6に示す。
【0148】
(積層シートの輝度測定)
積層シートのセパレーターを剥離して粘着層を露出させた積層シート(積層構造体)の粘着層面をガラス板面に貼り付けて貼付品を得た。貼付品の積層構造体に向けて、積層構造体の露出面側から光を入射し、積層構造体面の所定領域の輝度を測定した。
【0149】
このとき、光の入射を行うための装置としては、キセノン光源(朝日分光社製;MAX−301)を用い、反射光の輝度を測定するための装置としては、反射光を感知する採光レンズを備える色彩輝度計(トプコン社製;BM−7)を用いた。輝度を測定するための光学測定系80は、図6に示すとおりである。この光学測定系80は、キセノン光源81から照射される光の進行方向(図6において、矢印L)と色彩輝度計の採光レンズの厚み方向(図6中、直線Yの延びる方向に沿った方向)のなす角度(鋭角側の角度θ)が30度となるように、キセノン光源81と色彩輝度計82を配置し、採光レンズ83の厚み方向の延長線上の位置であってキセノン光源から光を入射される位置に貼付品84を配置してなる。このとき、貼付品84は、その積層構造体85面をキセノン光源81と色彩輝度計82に向けるように配置されている。輝度の測定にあたっては、貼付品を様々な角度(回転角度ψ;直線Yに直交する直線Xと積層構造体85面のなす角度)に傾け、色彩輝度計82の採光レンズ83の位置から貼付品84を見た場合に最もホログラム層に記録された絵柄が明るく見える位置にて測定を行った。輝度の測定には、図6のように、絵柄部分(ホログラム画像が明るく光って見える絵柄60の部分)の領域と絵柄のない部分(ホログラム画像がなく、黒く見える部分(図6中、斜線で示す領域61)の領域より2箇所を測定スポット(図5中、破線で区画された領域62、63)として選択して、それぞれの測定スポットとなる領域62、63ついての輝度を測定した。絵柄部分(62)の輝度は3126cd/mであり、絵柄のない部分(63)の輝度は60.26cd/mであった。貼付品におけるホログラム画像のコントラストは、表6に示すとおり、51.9であった。ここで、コントラストは、(絵柄部分の輝度)を(絵柄のない部分の輝度)で除算した値を示す。
【0150】
(積層シートに形成されるホログラムの状態観察)
積層シートに形成されるホログラムの状態は、図6に示すような貼付品のホログラム画像として記録された絵柄60を目視することで観察された。絵柄60を目視した結果、視線方向を絵柄部分が最も明るく見えるような方向にそろえた場合に、絵柄のない部分(領域61の部分)がくっきりと黒く認識され、絵柄60の輪郭が明確に認識され、絵柄60の視認性に優れた状態が形成されていた。
【0151】
実施例2
粘着フィルムF1に変えて下記のように調製された粘着フィルムF2を用いたほかは、実施例1と同様にして積層シートを得た。得られた積層シートを用いて、実施例1と同様にして貼付品を得るとともに、粘着層の性能に関して剥離強度、耐久性、打ち抜き性、OD値、動的貯蔵弾性率の測定を行った。結果を表2、表6に示す。積層シートのホログラム画像の良否についてその輝度とコントラストの測定とその観察を行うことでその性能評価を行った。結果を表6に示す。
【0152】
(粘着フィルムF2)
粘着層形成用溶液として下記の組成の粘着層形成用溶液N2を用いたほかは、粘着フィルムF1と同じ製造方法およびセパレーターを用いて、粘着フィルムF2を作製した。この粘着フィルムF2も、粘着フィルムF1と同様、セパレーター/黒色顔料含有粘着層/セパレーターからなる。
【0153】
(粘着層形成用溶液N2の組成)
・アクリルトリブロックエラストマー
(クラレ株式会社製;LA2140e) 100重量部
・アクリルジブロックエラストマー
(クラレ株式会社製;LA1114) 50重量部
・ロジン系樹脂
(荒川化学工業株式会社製;KE−100) 25重量部
・黒インキ
(ザ・インクテック株式会社製;XEL FG墨)52.5重量部
・酢酸エチル 150重量部
【0154】
比較例1
次に示すように、粘着フィルムF1に変えて下記のように調製された粘着フィルムF3を用いたほかは、実施例1と同様にして積層シートを得た。
【0155】
(粘着フィルムF3)
まず、剥離性を有するポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(セパレーターという)(東セロ株式会社製;SP−PET−03(厚さ38μm))、および、黒色に着色されたPETフィルム(東レ株式会社製;ルミラーX30(厚さ75μm))(黒PETフィルムという)を準備する。その黒PETフィルム面上に、下記組成の粘着層形成用溶液(粘着層形成用溶液N3)をアプリケーター(ヨシミツ精機社製;YBA型ベーカーアプリケーター)により乾燥後膜厚が20μmとなるように塗布して塗布膜を得た後、塗布膜を形成した黒PETフィルムをオーブンで乾燥させる工程(乾燥工程)を行って粘着層(透明粘着層(無着色粘着層))と黒PETフィルムの二層積層物を得た。
【0156】
(粘着層形成用溶液N3の組成)
・アクリル系粘着剤
(日本カーバイト工業株式会社製;ニッセツPE−118) 100重量部
・イソシアネート系架橋剤
(日本カーバイト工業株式会社製;ニッセツCK−101) 2重量部
・溶剤
(メチルエチルケトン/トルエン/酢酸エチル=2/1/1(重量比)) 60重量部
【0157】
乾燥工程後、二層積層物の粘着層面上にセパレーター(東セロ株式会社製;SP−PET−01(厚さ38μm))をラミネートして三層構造物を得た。この三層構造物は、セパレーター/粘着層/黒PETフィルムの3層構造からなる。次に、この三層構造物を用い、黒PETフィルムの露出表面上に、三層構造物を作成する場合と同じ材料と方法を用いて透明粘着層とセパレーターをこの順に積層形成して、粘着フィルムF3を得た。この粘着フィルムF3は、セパレーター/粘着層/黒PETフィルム/粘着層/セパレーターの5層構造からなる。
【0158】
<積層シートの作製>
粘着フィルムF3のセパレーターを剥がし、ホログラムフィルムのホログラム層面に粘着層を密着させるようにラミネートし、PETフィルム/ホログラム層/粘着層/黒PETフィルム/粘着層/セパレーターからなる、体積ホログラムを記録した積層シートを得た。なお、ホログラムフィルムとしては、実施例1で用いたものと同じものを用いた。
【0159】
得られた積層シートを用いて、実施例1と同様にして貼付品を得るとともに、粘着層の性能に関して、実施例1と同様にして、剥離強度、耐久性、打ち抜き性、OD値、動的貯蔵弾性率の測定を行った。結果を表4、表6に示す。さらに、積層シートのホログラム画像の良否について、その輝度とコントラストの測定とその観察を行うことでその性能評価を行った。輝度とコントラストについての結果を表6に示す。また、貼付品のホログラム層に記録された絵柄を実施例1と同様に目視観察すると、視線方向を絵柄部分が最も明るく見えるような方向にそろえた場合に、絵柄のない部分がぼんやりと明るく認識され、絵柄の輪郭が際立たず、コントラストが低下した。
【0160】
比較例2
粘着フィルムF1に変えて下記のように調製された粘着フィルムF4を用いたほかは、実施例1と同様にして積層シートを得た。得られた積層シートを用いて、実施例1と同様にして貼付品を得るとともに、粘着層の性能に関して剥離強度、耐久性、打ち抜き性、OD値、動的貯蔵弾性率の測定を行った。結果を表5、表6に示す。

【0161】
(粘着フィルムF4)
まず、剥離性を有するポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(セパレーターという)(東セロ株式会社製;SP−PET−03(厚さ38μm))を準備する。そのセパレーター面上に、下記組成の粘着層形成用溶液(粘着層形成用溶液N4)をアプリケーター(ヨシミツ精機社製;YBA型ベーカーアプリケーター)により乾燥後膜厚が25μmとなるように塗布して塗布膜を得た後、塗布膜を形成したセパレーターをオーブンで乾燥させる工程(乾燥工程)を行って粘着層(黒色染料含有粘着層)とセパレーターの二層積層物を得た。
【0162】
(粘着層形成用溶液N4の組成)
・アクリル系粘着剤
(日本カーバイト工業株式会社製;ニッセツPE−118) 100重量部
・イソシアネート系架橋剤
(日本カーバイト工業株式会社製;ニッセツCK−101) 2重量部
・黒染料
(日本化薬株式会社製;カヤセットブラックK−R) 5重量部
・溶剤
(メチルエチルケトン/トルエン/酢酸エチル=2/1/1(重量比)) 55重量部
【0163】
乾燥工程後、二層積層物の粘着層面上にセパレーター(SP−PET−01(38μm);東セロ(株)製)をラミネートして粘着フィルムF1を得た。この粘着フィルムF4は、セパレーター/黒色染料含有粘着層/セパレーターの3層構造からなる。
【0164】
実施例3
実施例1で用いられたホログラムフィルムに変えて、下記のフィルムMを用いたほかは、実施例1と同様にして、積層シートを得た。
【0165】
<ホログラム層を備えるフィルムの作製>
ホログラム層を備えるフィルム(ホログラムフィルム)(フィルムM)は、次のように作製された。
【0166】
実施例1で用いられるPETフィルムP1のかわりに、表面のコーティングによって易接着処理を施されたPETフィルムP2(ルミラーT11:東レ(株)製)を使用し、その易接着処理を施された面上に体積ホログラム記録用材料の層を形成した他は、実施例1と同様にして体積ホログラムフィルムであるフィルムMを得た。
【0167】
得られた積層シートを用いて、実施例1と同様にして貼付品を得るとともに、粘着層の性能に関して剥離強度、耐久性、打ち抜き性、OD値の測定を行った。結果を表3に示す。また、積層シートのホログラム画像の良否について、その輝度とコントラストの測定とその観察を行うことでその性能評価を行った。輝度とコントラストについての結果を表6に示す。
【0168】
【表1】

【0169】
【表2】

【0170】
【表3】

【0171】
【表4】

【0172】
ただし、表4において(注)は、凝集剥離を生じたことを示す。
【0173】
【表5】

【0174】
【表6】

【0175】
表1から5からわかるように、実施例1,2で用いられた粘着フィルムF1,F2については、温度23℃、湿度50%の雰囲気下において、粘着力の低下はない。さらに、これらの粘着フィルムF1,F2には、温度60℃、湿度90%の雰囲気下、温度80℃、湿度0%の雰囲気下でも顕著な粘着力変化が認められず、粘着力はおおよそ一定に保持されており、ホログラム貼付による影響はないと考えられる。一方、比較例で用いられた粘着フィルムF3には、温度23℃、湿度50%の雰囲気下において、粘着力の経時的な低下が認められた。また、粘着フィルムF4には、温度60℃、湿度90%の雰囲気下において、粘着力の経時的な低下が認められた。さらに、粘着フィルムF3については、温度60℃、湿度90%の雰囲気下、温度80℃、湿度50%の雰囲気下では耐久性の測定において凝集剥離を生じてしまった。これらの理由としては、ホログラム層成分の移行により、粘着層の凝集力が変化したためだと思料される。
【符号の説明】
【0176】
1 ホログラム転写シート
2 ホログラム層
3,30 粘着層
4,9 ホログラム積層体
5 基材シート
6 剥離層
7 ハードコート層
8 印刷層
10,50 積層シート
20 硬化型材料層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粘着層と硬化型材料層を直接積層してなる積層体を有する積層シートであって、
硬化型材料層は、エネルギー線もしくは熱によって硬化する硬化型材料を含んでなり、
粘着層は、アクリルトリブロック共重合体を含み、50℃における動的貯蔵弾性率が1.5×10Pa以上であり、且つ、0℃における動的貯蔵弾性率が5.0×10Pa以下である、ことを特徴とする積層シート。
【請求項2】
粘着層は、アクリルジブロック共重合体を含む、請求項1に記載の積層シート。
【請求項3】
硬化型材料層は、ホログラム層である、請求項1または2に記載の積層シート。
【請求項4】
粘着層は、所定色の着色材料を含む、請求項1から3のいずれかに記載の積層シート。
【請求項5】
着色材料は、黒色顔料を含む、請求項4に記載の積層シート。
【請求項6】
積層体は、基材シートに直接もしくは間接に積層されており、粘着層と基材シートの間に硬化型材料層が位置している、請求項1から5のいずれかに記載の積層シート。
【請求項7】
積層体は、基材シートに剥離可能に積層されている、請求項6に記載の積層シート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−37082(P2011−37082A)
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−185217(P2009−185217)
【出願日】平成21年8月7日(2009.8.7)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】