説明

積層セラミックコンデンサ及びその製造方法

【課題】本発明は積層セラミックコンデンサ及び積層セラミックコンデンサの製造方法に関する。
【解決手段】本発明による積層セラミックコンデンサは、第1セラミック誘電体パウダーを含む複数の誘電体層が積層されて形成され、順に第1側面、第2側面、第3側面及び第4側面で取り囲まれた積層本体と、複数の誘電体層上に形成され、積層本体の対向する上記第1側面及び上記第3側面にそれぞれ引出されるように形成された第1内部電極パターン及び第2内部電極パターンと、積層本体の第2側面及び第4側面にそれぞれ形成され、第1セラミック誘電体パウダーより粒径の小さい第2セラミック誘電体パウダーを含む第1サイド部及び第2サイド部とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は積層セラミックコンデンサ及びその製造方法に関し、より具体的には、耐久性を確保し信頼性の高い積層セラミックコンデンサを製造することができる方法及びこれにより製造された積層セラミックコンデンサに関する。
【背景技術】
【0002】
コンデンサは電気を貯蔵することができる素子であって、基本的に、2つの電極を対向させて電圧をかけると、各電極に電気が蓄積される。直流電圧を印加した場合は、電気が蓄電されながらコンデンサの内部に電流が流れ、蓄電がが完了すると、電流が流れなくなる。一方、交流電圧を印加した場合は、電極の極性が交互に変わりながら交流電流が流れ続ける。
【0003】
このようなコンデンサは、電極間に備えられる絶縁体の種類によって、アルミニウムで電極を構成し、上記アルミニウム電極の間に薄い酸化膜を備えるアルミニウム電解コンデンサ、電極材料としてタンタルを使用するタンタルコンデンサ、電極の間にチタニウム、バリウムのような高い誘電率の誘電体を使用するセラミックコンデンサ、電極の間に備えられる誘電体として高い誘電率系セラミックを多層構造で使用する積層セラミックコンデンサ(Multi Layer Ceramic Condenser、MLCC)、電極の間の誘電体としてポリスチレンフィルムを使用するフィルムコンデンサなど様々な種類に分けられる。
【0004】
その中でも、積層セラミックコンデンサは、温度特性及び周波数特性に優れ、かつ小型で具現できるという長所があり、最近では、高周波回路など多様な分野で応用されている。
【0005】
従来技術による積層セラミックコンデンサは、複数の誘電体シートが積層されて積層体を形成し、上記積層体の外部に異なる極性を有する外部電極が形成され、上記積層体の内部に交互に積層された内部電極が上記それぞれの外部電極に連結されることができる。
【0006】
上記誘電体シートの間に相互に形成された内部電極がそれぞれ異なる極性を有するように連結され容量結合を起こすことで、上記積層セラミックコンデンサはキャパシタンス値を有するようになる。
【0007】
最近、電子製品の小型化及び高集積化により、積層セラミックコンデンサも小型化及び高集積化のための研究が行われている。特に、積層セラミックコンデンサは、高容量化及び小型化のために、誘電体層を薄層化して高積層化し、内部電極のオーバーラップ(over lap)面積を確保しようと、積層本体のマージン部を最適化するための多様な試みが行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】韓国公開特許第2009−0061556号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、積層セラミックコンデンサ内部の積層本体とサイド部の間に残留応力が形成されることを防止し、信頼度の高い積層セラミックコンデンサの製造方法及びその製造方法による積層セラミックコンデンサを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明による積層セラミックコンデンサは、第1セラミック誘電体パウダーを含む複数の誘電体層が積層されて形成され、順に第1側面、第2側面、第3側面及び第4側面で取り囲まれた積層本体と、複数の誘電体層上に形成され、積層本体の対向する上記第1側面及び上記第3側面にそれぞれ引出されるように形成された第1内部電極パターン及び第2内部電極パターンと、積層本体の第2側面及び第4側面にそれぞれ形成され、第1セラミック誘電体パウダーより粒径の小さい第2セラミック誘電体パウダーを含む第1サイド部及び第2サイド部とを含む。
【0011】
上記第1セラミック誘電体パウダーの累積粒度分布の累積重量90%の粒径D90は、50から300μmであることができる。
上記第2セラミック誘電体パウダーの累積粒度分布の累積重量90%の粒径D90は、20から300μmであることができる。
【0012】
上記第2セラミック誘電体パウダーのBET比表面積が第1セラミック誘電体パウダーのBET比表面積より1から50m/g分だけ大きいことができる。
【0013】
上記複数の誘電体層の上面または下面に積層され、第3セラミック誘電体パウダーを含む第1カバー層及び第2カバー層を含むことができる。
【0014】
上記第3セラミック誘電体パウダーの粒径は、第1セラミック誘電体パウダーの粒径と類似することができる。
【0015】
上記複数の誘電体層、第1サイド部及び第2サイド部の焼結温度は、800から1200℃であることができる。
【0016】
上記第1カバー層及び第2カバー層の焼結温度は、800から1200℃であることができる。
【0017】
上記複数の誘電体層、第1サイド部及び第2サイド部の焼結後のセラミックグレイン(grain)の累積粒度分布の累積重量90%の粒径D90は、20から1000μmであることができる。
【0018】
本発明による積層セラミックコンデンサの製造方法は、第1セラミック誘電体パウダー、有機バインダー及び有機溶剤を含むセラミックスラリーで複数のセラミックグリーンシートを形成する段階と、セラミックグリーンシート上に第1内部電極パターンまたは第2内部電極パターンを印刷する段階と、第1内部電極パターンと第2内部電極パターンが交差して積層されるように複数のセラミックグリーンシートを積層し、順に第1側面、第2側面、第3側面及び第4側面を含む積層本体を形成する段階と、第2側面及び第4側面のそれぞれに第1セラミック誘電体パウダーより粒径の小さい第2セラミック誘電体パウダー、有機バインダー及び有機溶剤を含む第2セラミックスラリーが塗布された第1サイド部及び第2サイド部を形成する段階とを含む。
【0019】
上記複数の誘電体層の上面及び下面に第1セラミック誘電体パウダーと類似するサイズの粒径を有する第3セラミック誘電体パウダーを含むそれぞれ第1カバー層及び第2カバー層を形成する段階をさらに含むことができる。
【0020】
上記第1セラミック誘電体パウダーの累積粒度分布の累積重量90%の粒径D90は、50から300μmであることができる。
【0021】
上記第2セラミック誘電体パウダーの累積粒度分布の累積重量90%の粒径D90は、20から300μmであることができる。
【0022】
上記第2セラミック誘電体パウダーのBET比表面積が第1セラミック誘電体パウダーのBET比表面積より1から50m/g分だけ大きいことができる。
【0023】
上記複数の誘電体層、第1サイド部及び第2サイド部の焼結温度は、800から1200℃であることができる。
【0024】
上記複数の誘電体層、第1サイド部及び第2サイド部の焼結後のセラミックグレイン(grain)の累積粒度分布の累積重量90%の粒径D90は、20から1000μmであることができる。
【0025】
上記第1側面に引出された第1内部電極パターン及び第3側面に引出された第2内部電極パターンとそれぞれ連結される第1外部電極及び第2外部電極を形成する段階をさらに含むことができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によると、積層セラミックコンデンサの複数の誘電体層が積層された積層本体と、上記積層本体の側面に形成されるサイド部の間に残留応力が形成されることを防止することができる。
【0027】
従って、焼成時にサイド部と積層本体の間にクラックが形成されたり、チップの形状が変形されることを防止することができる。これにより、信頼性の高い積層セラミックコンデンサを製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の一実施形態による積層セラミックコンデンサの斜視図である。
【図2】本発明の一実施形態による積層本体の分解斜視図である。
【図3】図1の積層セラミックコンデンサのA−A’方向の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下では、添付の図面を参照して本発明の好ましい実施形態を説明する。但し、本発明の実施形態は様々な形態に変形されることができ、本発明の範囲は以下で説明する実施形態に限定されない。
【0030】
また、本発明の実施形態は当業界で平均的な知識を有する者に本発明をより完全に説明するために提供されるものである。従って、図面における要素の形状及びサイズなどはより明確な説明のために誇張されることがあり、図面上に同じ符号で示される要素は同じ要素である。
【0031】
以下では、図1から図3を参照し、本発明の一実施形態による積層セラミックコンデンサ及びその製造方法について説明する。
【0032】
図1は本発明の一実施形態による積層セラミックコンデンサの斜視図であり、図2は本発明の一実施形態による積層本体の分解斜視図であり、図3は図1の積層セラミックコンデンサのA−A’方向の断面図である。
【0033】
図1を参照すると、本発明の一実施形態による積層セラミックコンデンサは、積層本体20と上記積層本体20の両端に形成された第1外部電極10a及び第2外部電極10bを含む。
【0034】
上記積層本体20は複数の誘電体層が積層されて形成されたもので、第1側面、第2側面、第3側面及び第4側面を含む。上記第1側面と第3側面は対向するように形成され、第2側面と第4側面も対向するように形成される。
【0035】
上記積層本体20は複数の誘電体層と、上記複数の誘電体層の間に形成され、第1側面及び第3側面に引出される第1内部電極パターン及び第2内部電極パターンを含む。また、上記第1内部電極パターンと第2内部電極パターンは1つ以上の誘電体層を介して互いに交差して積層される構造を有する。
【0036】
また、上記第1側面と第3側面にそれぞれ第1内部電極パターンと第2内部電極パターンが引出されるように形成され、上記第1側面及び第3側面には第1外部電極10a及び第2外部電極10bが形成され、第1内部電極パターンまたは第2内部電極パターンはそれぞれ第1外部電極10a及び第2外部電極10bに電気的に連結されることができる。
【0037】
上記積層本体を構成する複数の誘電体層は高い誘電率を有するセラミックグリーンシートで形成されることができ、後に、積層及び焼成過程を経て複数の誘電体層が積層された積層本体を形成することができる。
【0038】
上記第1外部電極10a及び第2外部電極10bは、電気伝導性に優れた物質からなることができ、積層セラミックコンデンサの内部に形成された第1内部電極パターン、第2内部電極パターンまたはその他の多様なパターンと外部素子を電気的に連結する役割をすることができる。
【0039】
また、上記第1外部電極10a及び第2外部電極10bは、これに制限されず、Ni、AgまたはPdのような電気伝導性に優れた物質からなることができる。
【0040】
本発明の一実施形態によると、上記積層本体の耐久性を確保し、チップの信頼性を向上させるために、積層本体の側面にマージン部を形成することができる。
【0041】
セラミックグリーンシートを形成するために、第1セラミック誘電体パウダー、有機バインダー及び有機溶剤を含む第1セラミックスラリーを製造し、上記第1セラミックスラリーを基材上に塗布して複数のセラミックグリーンシートを形成した後、セラミックグリーンシートを積層して積層本体を形成することができる。
【0042】
一方、マージン部を形成するために、第2セラミック誘電体パウダー、有機バインダー及び有機溶剤を含む第2セラミックスラリーを製造し、第2セラミックスラリーに積層本体をディッピング(dipping)する方式を用いることができる。
【0043】
この場合、マージン部を形成するセラミックスラリーは、積層本体を構成するセラミックグリーンシートを構成するセラミックスラリーと同時に焼成できるように適切な強度と緻密性を保持しなければならない。
【0044】
しかし、第1セラミック誘電体パウダーと第2セラミック誘電体パウダーが類似する粒径を有すると、第1セラミック誘電体パウダーは、積層及び圧着工程を通じて粒子間の間隔が緻密になり、焼結温度が相対的に低くなって第1セラミック誘電体パウダーを含む積層本体の焼結温度がさらに低くなる現象が発生した。
【0045】
そのため、積層本体にマージン部を形成し、同時焼成工程に取り入れると、マージン部が未焼成となり、マージン部と積層本体間に残留応力が生じ、クラックが発生するなどの問題点があった。
【0046】
しかし、本発明の一実施形態によると、マージン部を構成する第2セラミック誘電体パウダーの粒径を第1セラミック誘電体パウダーの粒径と異なるようにして同時焼成を行うことができる。
【0047】
さらに、マージン部を積層本体の全面に形成せず、第2側面及び第4側面のみに第1サイド部及び第2サイド部を形成し、サイド部の厚さを最適化して焼結特性をより向上させることができる。
【0048】
積層本体とマージン部が同時に焼成されることにより、積層本体とマージン部の間に残留応力が発生し、クラックが形成されることを防止することができる。
【0049】
以下では、図2及び図3を参照し、本発明の一実施形態による積層セラミックコンデンサの製造方法について説明する。
【0050】
本発明の一実施形態による積層セラミックコンデンサの製造方法は、第1セラミック誘電体パウダー、有機バインダー及び有機溶剤を含むセラミックスラリーで複数のセラミックグリーンシートを形成する段階と、セラミックグリーンシート上に第1内部電極パターンまたは第2内部電極パターンを印刷する段階と、第1内部電極パターンと第2内部電極パターンが交差して積層されるように複数のセラミックグリーンシートを積層し、順に第1側面、第2側面、第3側面及び第4側面を含む積層本体を形成する段階と、第2側面及び第4側面のそれぞれに第1セラミック誘電体パウダーより粒径の小さい第2セラミック誘電体パウダー、有機バインダー及び有機溶剤を含む第2セラミックスラリーが塗布された第1サイド部及び第2サイド部を形成する段階とを含む。
【0051】
本発明の一実施形態による積層セラミックコンデンサを示す図2を参照すると、本発明の一実施形態による積層セラミックコンデンサを製造するために、複数のセラミックグリーンシート201、202を用意する。
【0052】
上記複数のセラミックグリーンシート201、202は、第1セラミック誘電体パウダー、有機バインダー及び有機溶剤を含む第1セラミックスラリーをキャリアフィルムのような基材上に塗布して形成することができる。
【0053】
上記第1セラミック誘電体パウダーは高い誘電率を有する物質であり、これに制限されず、チタン酸バリウム系材料、鉛複合ペロブスカイト系材料またはチタン酸ストロンチウム系材料などを使用することができ、チタン酸バリウムパウダーを使用することが好ましい。
【0054】
上記有機バインダーは微細なセラミック誘電体パウダーの分散性と粘性を確保するためのもので、有機バインダーの量を調節してセラミックスラリーの粘度を調節することができる。上記有機バインダーとして樹脂を使用することができ、これに制限されず、エチルセルロースとポリビニールブチラールなどのような樹脂を使用することができる。
【0055】
上記複数のセラミックグリーンシート201、202に、異なる面に引出される第1内部電極パターン30a及び第2内部電極パターン30bを印刷することができる。
【0056】
これにより、第1内部電極パターン30aが印刷された複数の第1セラミックグリーンシート201が製造され、第2内部電極パターン30bが印刷された複数の第2セラミックグリーンシート202が製造されることができる。
【0057】
上記複数の第1セラミックグリーンシート201と複数の第2セラミックグリーンシート202は交差して積層されて積層本体を形成する。上記積層本体は第1側面、第2側面、第3側面及び第4側面を含む。
【0058】
上記第1内部電極パターン30aは積層本体の第1側面に引出されるように形成され、上記第2内部電極パターン30bは積層本体の第3側面に引出されるように形成されることができる。
【0059】
上記第1内部電極パターン30a及び第2内部電極パターン30bは電気伝導性に優れた導電性金属で形成されることができ、これに制限されず、Ag、Ni、Cu、Pd及びこれらの合金で構成された群から選択された1つ以上を含むことができる。
【0060】
本発明の一実施形態によると、上記積層本体は最上面に積層される第1カバー層100aと最下面に積層される第2カバー層100bを含むことができる。
【0061】
上記第1カバー層100aと第2カバー層100bは積層本体の最上面と最下面に積層され、内部に積層された複数の第1セラミックグリーンシート及び複数の第2セラミックグリーンシートを外部の物理的、化学的ストレスから保護する役割をする。
【0062】
上記第1カバー層100a及び第2カバー層100bは、第3セラミック誘電体パウダー、有機バインダー及び有機溶剤を含む第3セラミックスラリーがキャリアフィルムのような基材上に塗布されて形成される。
【0063】
上記第3セラミック誘電体パウダーは、第1セラミック誘電体パウダーと類似する粒径を有することが好ましい。
【0064】
積層本体の焼成時、複数の第1セラミックグリーンシート201及び第2セラミックグリーンシート202と第1カバー層100a及び第2カバー層100bを同時に焼成するために、類似する粒径を有するように製作されることが好ましい。
【0065】
従って、本発明の一実施形態によると、上記積層本体20は第1セラミック誘電体パウダーを含む複数の誘電体層と第3セラミック誘電体パウダーを含む第1及び第2カバー層が積層及び圧着されて形成され、第1セラミック誘電体パウダーと第3セラミック誘電体パウダーは類似する粒径を有するため、類似する温度で同時に焼成されることができる。
【0066】
また、本発明の一実施形態によると、積層本体20は複数の誘電体層の絶縁性を保持するための最少領域を除き、全領域を覆うように内部電極パターンが形成されるため、内部電極パターンは積層本体20の内部で容量を確保するための最大面積を確保することができる。
【0067】
積層セラミックコンデンサの場合、第1内部電極パターン30aと第2内部電極パターン30bのオーバーラップ(overlap)面積によって容量を確保することができる。本発明の一実施形態によると、第1内部電極パターン30a及び第2内部電極パターン30bにより重なるオーバーラップ(overlap)面積が最大となる。これにより、高容量積層セラミックコンデンサを具現することができる。
【0068】
本発明の一実施形態によると、積層本体20の第2側面及び第3側面にそれぞれ第1サイド部150a及び第2サイド部150bを形成することができる。
【0069】
第1内部電極パターン30aと第2内部電極パターン30bは、誘電体層のそれぞれ第1側面及び第3側面に引出され、かつ誘電体層を覆うように形成されるため、第1及び第2内部電極パターン30a、30bは第1側面、第2側面、第3側面及び第4側面に全て露出されることができる。
【0070】
これにより、第1及び第2内部電極パターンは、チップに製造されると、外部に露出して物理的、化学的ストレスにより損傷され、第1及び第2内部電極パターンの不良を齎すことがある。
【0071】
積層本体の上面と下面には第1カバー層100a及び第2カバー層100bが形成されるため、第1及び第2内部電極パターンを保護することができる。また、積層本体の第1側面と第3側面には第1外部電極と第2外部電極が形成されるため、内部に形成された第1及び第2内部電極パターンを保護することができる。
【0072】
従来、第1及び第2内部電極パターンを誘電体層の内部に印刷する場合は、第2側面及び第4側面に第1及び第2内部電極パターンが露出しなかった。そのため、別途のマージン(margin)を形成しなくても第1及び第2内部電極パターンを外的ストレスから保護することができた。
【0073】
しかし、本発明の一実施形態によると、誘電体層を覆うように第1及び第2内部電極パターンが印刷されるため、第2側面及び第4側面に第1及び第2内部電極パターンが露出する。
【0074】
従って、本発明の一実施形態によると、第2側面及び第4側面にそれぞれ第1サイド部150a及び第2サイド部150bを形成することができる。
【0075】
第2側面及び第4側面のみに、選択的にスラリーを塗布して第1サイド部150a及び第2サイド部150bを形成するため、第1カバー層100a及び第2カバー層100bの厚さに影響を及ぼさずに済む。
【0076】
本発明の一実施形態によると、第2側面及び第4側面のみに、選択的にスラリーを塗布するため、これに制限されず、第2側面及び第4側面を除き、全面に着脱可能なフィルムを付着してスラリーにディッピングし、付着されたフィルムを除去する方式で、第2側面及び第4側面のみにスラリーを塗布して第1サイド部150a及び第2サイド部150bを形成することができる。
【0077】
上記第1サイド部150a及び第2サイド部150bは第2セラミックスラリーが塗布されて形成される。上記第2セラミックスラリーは第2セラミック誘電体パウダー、有機バインダー及び有機溶剤を含む。
【0078】
上記有機バインダー及び有機溶剤は、第2セラミック誘電体パウダーを第2セラミックスラリーの内部に分散させるためのもので、特に、有機バインダーはこれに制限されず、エチルセルロースまたはポリビニールブチラールのような樹脂を使用することができる。
【0079】
上記第2セラミック誘電体パウダーは高い誘電率を有する物質で、第1セラミック誘電体パウダーと同一物質を使用することができる。また、これに制限されず、チタン酸バリウム系材料、鉛複合ペロブスカイト系材料またはチタン酸ストロンチウム系材料などを使用することができ、チタン酸バリウムパウダーを使用することが好ましい。
【0080】
本発明の一実施形態によると、上記第2セラミック誘電体パウダーの粒径は第1セラミック誘電体パウダーの粒径より小さいことが好ましい。
【0081】
第1セラミック誘電体パウダーと第2セラミック誘電体パウダーの粒径が類似する場合、第1セラミック誘電体パウダーを含む誘電体層は第2セラミック誘電体パウダーを含む第1及び第2サイド部より低い温度で焼結される。
【0082】
それは、誘電体層に積層及び圧着工程を通じてセラミック誘電体パウダー間の緻密性が付与され、より低い温度で焼結できるためである。
【0083】
上記誘電体層と第1及び第2サイド部の焼結温度が異なる場合、積層本体に第1及び第2サイド部を形成した後、同時焼成する過程で第1及び第2サイド部が未焼結となる。
【0084】
これにより、誘電体層と第1及び第2サイド部の間に残留応力が発生し、誘電体層と第1及び第2サイド部の間にクラックまたは変形が発生することがある。
【0085】
従って、本発明の一実施形態によると、第2セラミック誘電体パウダーの粒径を第1セラミック誘電体パウダーの粒径より小さくし、誘電体層とサイド部の焼結温度を一致させることができる。
【0086】
上記第1セラミック誘電体パウダーの累積粒度分布の累積重量90%の粒径D90は、50から300μmであることができる。また、上記第2セラミック誘電体パウダーの累積粒度分布の累積重量90%の粒径D90は、20から300μmであることができる。
【0087】
より具体的には、上記第2セラミック誘電体パウダーのBET比表面積が第1セラミック誘電体パウダーのBET比表面積より1から50m/g分だけ大きいことが好ましい。
【0088】
第2セラミック誘電体パウダーと第1セラミック誘電体パウダーのBET比表面積の差が1m/g未満であれば、第1及び第2サイド部が未焼結となることがある。
【0089】
また、50m/gを超えると、焼成時に、第1及び第2サイド部の収縮率が大きすぎて、誘電体層と第1及び第2サイド部の間の収縮率の差によりクラックまたは変形が発生することがあるためである。
【0090】
特に、積層本体の内部電極は、焼成過程で外部電極に拡散する現象が発生する。この際、第1及び第2サイド部が収縮しすぎると、第1及び第2サイド部と積層本体の間の内部電極の拡散力と第1及び第2サイド部に及ぼす収縮力によりクラックが発生することがある。
【0091】
従って、第2セラミック誘電体パウダーと第1セラミック誘電体パウダーのBET比表面積の差は、1から50m/gであることが好ましい。
【0092】
これにより、本発明の一実施形態によると、上記第1セラミック誘電体パウダーを含む複数の誘電体層の焼結温度と第2セラミック誘電体パウダーを含む第1及び第2サイド部の焼結温度が類似するようになる。
【0093】
本発明の一実施形態によると、上記複数の誘電体層、第1サイド部及び第2サイド部の焼結温度は、800から1200℃であることが好ましい。
【0094】
複数の誘電体層と第1及び第2サイド部は、類似する焼結温度を有するようにすることができ、これにより、積層本体と第1及び第2サイド部を同時に焼成することができるため、焼成過程で一部分が焼成されない現象を防止することができる。
【0095】
本発明の一実施形態によると、積層本体は複数の誘電体層と上記誘電体層の上面と下面にそれぞれ形成される第1カバー層及び第2カバー層を含む。上記第1及び第2カバー層は複数の誘電体層に含まれる第1セラミック誘電体パウダーと粒径が類似する第3セラミック誘電体パウダーを含む。
【0096】
従って、複数の誘電体層と第1及び第2カバー層は類似する温度で焼結されることができるため、上記第1及び第2カバー層の焼結温度も800から1200℃であることができる。
【0097】
積層本体と第1及び第2サイド部が焼結されると、内部に含まれた有機バインダー及び有機溶剤は全て蒸発し、セラミック誘電体パウダーは緻密化され、セラミックグレイン(grain)に成長する。
【0098】
本発明の一実施形態によると、誘電体層を構成する第1セラミック誘電体パウダーと第1及び第2サイド部を構成する第2セラミック誘電体パウダーの焼結後のセラミックグレイン(grain)の累積粒度分布の累積重量90%の粒径D90は、20から1000μmであることができる。
【0099】
本発明の一実施形態によると、誘電体層を構成する第1セラミック誘電体パウダーと第1カバー層及び第2カバー層を構成する第3セラミック誘電体パウダーは、積層及び圧着工程を通じて緻密化される工程を経るため、焼結後の成長されたセラミックグレイン(grain)は第2セラミック誘電体パウダーで構成された第1及び第2サイド部のセラミックグレインの粒径と類似するようになる。
【0100】
特に、本発明の一実施形態によると、第1セラミック誘電体パウダーと第2セラミック誘電体パウダーのBET比表面積の差が1から50m/gであるため、焼結後、成長したセラミックグレイン(grain)は類似するサイズを有するようになる。
【0101】
これにより、積層本体と第1及び第2サイド部は、同じサイズに成長したセラミックグレインを含むことができ、積層本体と第1及び第2サイド部の間に残留応力が発生することを防止することができる。
【0102】
結果的に、積層本体と第1及び第2サイド部の焼結過程で残留応力が発生することを防止し、積層本体と第1及び第2サイド部のクラック及び変形を防止することができる。さらに、完成した積層セラミックコンデンサにおいても、積層本体と第1及び第2サイド部が一体化されることができ、積層セラミックコンデンサの耐久性が増加する。
【0103】
図1及び図3を参照すると、本発明の一実施形態による積層セラミックコンデンサは第1セラミック誘電体パウダー、有機バインダー及び有機溶剤を含む第1セラミックスラリーが塗布されて形成された複数の誘電体層が積層されて形成され、順に第1側面、第2側面、第3側面及び第4側面で取り囲まれた積層本体20と、上記複数の誘電体層の間に形成され、積層本体の対向する第1側面及び第3側面にそれぞれ引出されるように形成された第1内部電極パターン30a及び第2内部電極パターン30bと、上記積層本体20の第2側面及び第4側面にそれぞれ形成され、第1セラミック誘電体パウダーより粒径の小さい第2セラミック誘電体パウダー、有機バインダー及び有機溶剤を含む第2セラミックスラリーが塗布されて形成された第1サイド部150a及び第2サイド部150bとを含む。
【0104】
本発明の一実施形態によると、上記第1セラミック誘電体パウダーを含む複数の誘電体層と第2セラミック誘電体パウダーを含む第1及び第2サイド部の焼結温度を一致させるために、第2セラミック誘電体パウダーの粒径は第1セラミック誘電体パウダーの粒径より小さいことができる。
【0105】
より具体的には、上記第1セラミック誘電体パウダーの累積粒度分布の累積重量90%の粒径D90は50から300μmであることができる。また、上記第2セラミック誘電体パウダーの累積粒度分布の累積重量90%の粒径D90は20から300μmであることができる。
【0106】
すなわち、上記第2セラミック誘電体パウダーのBET比表面積が第1セラミック誘電体パウダーのBET比表面積より1から50m/g分だけ大きいことができる。
【0107】
これにより、積層及び圧着工程を経る複数の誘電体層と第1及び第2サイド部は同時に焼成されることができ、焼成過程で複数の誘電体層と第1及び第2サイド部の間に残留応力が発生することを防止することができる。
【0108】
本発明の一実施形態によると、上記複数の誘電体層の上面または下面に積層され、第3セラミック誘電体パウダーを含む第1カバー層100a及び第2カバー層100bを含むことができる。
【0109】
従って、複数の誘電体層を外的ストレスから保護することができる。
【0110】
上記第1及び第2カバー層100a、100bは第1セラミック誘電体パウダーと類似するサイズの粒径を有することができる。第1及び第2カバー層100a、100bは複数の誘電体層とともに積層及び圧着工程を経るため、第1セラミック誘電体パウダーと類似するサイズの粒径を有する第3セラミック誘電体パウダーを含んでも類似する焼結温度を有することができる。
【0111】
従って、本発明の一実施形態によると、上記複数の誘電体層、第1サイド部及び第2サイド部の焼結温度は800から1200℃であることができる。
【0112】
さらに、上記第1カバー層及び第2カバー層の焼結温度は800から1200℃であることができる。
【0113】
本発明の一実施形態によると、第1セラミック誘電体パウダーと第2セラミック誘電体パウダーは適切なサイズを有するように選択されるため、類似する焼結温度を有することができ、これにより、複数の誘電体層と第1及び第2サイド部が同時に焼成されても未焼結となる構成が存在しない。
【0114】
また、本発明の一実施形態によると、焼成によりセラミックスラリーが有機バインダー及び有機溶剤が除去された後にセラミックグレイン(grain)に成長するが、上記セラミックグレインは相互類似するサイズを有するようになる。
【0115】
上記複数の誘電体層、第1サイド部及び第2サイド部の焼結後のセラミックグレイン(grain)の累積粒度分布の累積重量90%の粒径D90は、20から1000μmであることができる。
【0116】
本発明の一実施形態によると、第1セラミック誘電体パウダーの粒径が第2セラミック誘電体パウダーの粒径より大きくても、第1セラミック誘電体パウダーは積層及び圧着工程を通じて緻密化されるため、結果的に、焼成された後に成長したセラミックグレインは、第2セラミック誘電体パウダーが成長したセラミックグレインと類似するようになる。
【0117】
これにより、積層本体を構成する複数の誘電体層、第1及び第2カバー層と上記積層本体に付着される第1及び第2サイド部は一体化されることができ、後に、使用するにおいて伴われる外的ストレスに対する強い耐久性を有するようになる。
【0118】
本発明の一実施形態によると、複数の誘電体層の内部に最大限のオーバーラップ面積を確保できる内部電極パターンを印刷することができる。これにより、高容量積層セラミックコンデンサを具現することができる。
【0119】
また、本発明の一実施形態によると、積層本体に上記積層本体と類似する焼結温度を有する第1及び第2サイド部を形成するため、積層本体と同時に焼結させることができる。これにより、積層本体と第1及び第2サイド部において、焼成過程で発生する残留応力を防止し、製品のクラック及び変形が形成されることを防止することができる。
【0120】
また、本発明の一実施形態によると、積層本体と第1及び第2サイド部は類似するサイズのセラミックグレインが成長するため、一体化されることができ、これにより、積層セラミックコンデンサの耐久性を確保することができる。
【符号の説明】
【0121】
10a、10b 第1及び第2外部電極
20、120 積層本体
30a、30b 第1及び第2内部電極パターン
100a、100b 第1及び第2カバー層
150a、150b 第1及び第2サイド部
201、202 第1及び第2セラミックグリーンシート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1セラミック誘電体パウダーを含む複数の誘電体層が積層されて形成され、順に第1側面、第2側面、第3側面及び第4側面で取り囲まれた積層本体と、
前記複数の誘電体層上に形成され、積層本体の前記第1側面及び第3側面にそれぞれ引出されるように形成された第1内部電極パターン及び第2内部電極パターンと、
前記積層本体の第2側面及び第4側面にそれぞれ形成され、第1セラミック誘電体パウダーより粒径の小さい第2セラミック誘電体パウダーを含む第1サイド部及び第2サイド部と、
を含む積層セラミックコンデンサ。
【請求項2】
前記第1セラミック誘電体パウダーの累積粒度分布の累積重量90%の粒径D90は、50から300μmである請求項1に記載の積層セラミックコンデンサ。
【請求項3】
前記第2セラミック誘電体パウダーの累積粒度分布の累積重量90%の粒径D90は、20から300μmである請求項1に記載の積層セラミックコンデンサ。
【請求項4】
前記第2セラミック誘電体パウダーのBET比表面積が第1セラミック誘電体パウダーのBET比表面積より1から50m/g分だけ大きい請求項1に記載の積層セラミックコンデンサ。
【請求項5】
前記複数の誘電体層の上面または下面に積層され、第3セラミック誘電体パウダーを含む第1カバー層及び第2カバー層を含む請求項1に記載の積層セラミックコンデンサ。
【請求項6】
前記第3セラミック誘電体パウダーの粒径は、第1セラミック誘電体パウダーの粒径と類似する請求項5に記載の積層セラミックコンデンサ。
【請求項7】
前記複数の誘電体層、第1サイド部及び第2サイド部の焼結温度は、800から1200℃である請求項1に記載の積層セラミックコンデンサ。
【請求項8】
前記第1カバー層及び第2カバー層の焼結温度は、800から1200℃である請求項5に記載の積層セラミックコンデンサ。
【請求項9】
前記複数の誘電体層、第1サイド部及び第2サイド部のセラミックグレイン(grain)の累積粒度分布の累積重量90%の粒径D90は、20から1000μmである請求項1に記載の積層セラミックコンデンサ。
【請求項10】
第1セラミック誘電体パウダー、有機バインダー及び有機溶剤を含む第1セラミックスラリーで複数のセラミックグリーンシートを形成する段階と、
前記セラミックグリーンシート上に第1内部電極パターンまたは第2内部電極パターンを印刷する段階と、
前記第1内部電極パターンと第2内部電極パターンが交差して積層されるように複数のセラミックグリーンシートを積層し、順に第1側面、第2側面、第3側面及び第4側面を含む積層本体を形成する段階と、
前記第2側面及び第4側面のそれぞれに第1セラミック誘電体パウダーより粒径の小さい第2セラミック誘電体パウダー、有機バインダー及び有機溶剤を含む第2セラミックスラリーが塗布された第1サイド部及び第2サイド部を形成する段階と、
を含む積層セラミックコンデンサの製造方法。
【請求項11】
前記複数の誘電体層の上面及び下面に第1セラミック誘電体パウダーと類似するサイズの粒径を有する第3セラミック誘電体パウダーを含む第1カバー層及び第2カバー層を形成する段階をさらに含む請求項10に記載の積層セラミックコンデンサの製造方法。
【請求項12】
前記第1セラミック誘電体パウダーの累積粒度分布の累積重量90%の粒径D90は、50から300μmである請求項10に記載の積層セラミックコンデンサの製造方法。
【請求項13】
前記第2セラミック誘電体パウダーの累積粒度分布の累積重量90%の粒径D90は、20から300μmである請求項10に記載の積層セラミックコンデンサの製造方法。
【請求項14】
前記第2セラミック誘電体パウダーのBET比表面積が第1セラミック誘電体パウダーのBET比表面積より1から50m/g分だけ大きい請求項10に記載の積層セラミックコンデンサの製造方法。
【請求項15】
前記複数の誘電体層、第1サイド部及び第2サイド部の焼結温度は、800から1200℃である請求項10に記載の積層セラミックコンデンサの製造方法。
【請求項16】
前記複数の誘電体層、第1サイド部及び第2サイド部のセラミックグレイン(grain)の累積粒度分布の累積重量90%の粒径D90は、20から1000μmである請求項10に記載の積層セラミックコンデンサの製造方法。
【請求項17】
前記第1側面に引出された第1内部電極パターン及び第3側面に引出された第2内部電極パターンとそれぞれ連結される第1外部電極及び第2外部電極を形成する段階をさらに含む請求項10に記載の積層セラミックコンデンサの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−129494(P2012−129494A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−164059(P2011−164059)
【出願日】平成23年7月27日(2011.7.27)
【出願人】(594023722)サムソン エレクトロ−メカニックス カンパニーリミテッド. (1,585)
【Fターム(参考)】