説明

積層セラミック部品端子電極用導体ペースト

【課題】緻密で、素体との接着強度が高く、かつ、耐メッキ液性に優れ、薄膜化にも対応可能な端子電極用導体ペーストを提供すること。
【解決手段】 銅を含む導電性粉末、ガラス粉末及びビヒクルを主成分とし、前記ガラス粉末中の各成分の含有量が、SiO 7〜12重量%、Al 11〜15重量%、B 15〜28重量%、BaO 25〜45重量%、CaO 5〜15重量%、ZnO 7〜25重量%、SiO+B 25〜35重量%であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層セラミック部品端子電極用導体ペーストに係り、特に、コンデンサ、インダクタなどの積層セラミック部品の端子電極を形成するのに適した積層セラミック部品端子電極用導体ペーストに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、コンデンサやインダクタなどの積層セラミック部品は、次のようにして製造される。
まず、誘電体や磁性体などの未焼成セラミックシートと内部電極ペースト層とを交互に複層積み重ねて未焼成の積層体とし、この積層体を切断後、高温で焼成してセラミック素体(以下、「素体」とする)とする。次いで、導電性粉末とガラスなどの無機結合剤粉末とをビヒクル中に分散させた積層セラミック部品端子電極用導体ペーストを、素体から内部電極の露出する端子面に、ディッピング、刷け塗り、スクリーン印刷など種々の方法により塗布する。その後、乾燥させてから高温で焼成して、内部電極と電気的に接続した端子電極を形成する。端子電極上には、ニッケルメッキ層と、半田付性の良いスズ若しくはその合金からなるスズメッキ層と、が必要に応じて順次形成されて積層セラミック部品となる。
【0003】
内部電極材料としては、パラジウム、銀−パラジウム、白金などの貴金属が用いられていたが、省資源やコストダウンに加え、パラジウムの酸化膨張に起因するデラミネーションやクラックの発生を防止するために、ニッケルや銅などの卑金属が用いられるようになってきている。このため、端子電極用導体ペーストにも内部電極材料と良好な電気的接合を形成しやすいニッケル、コバルト、銅などの導電性粉末が使用されている。また、焼成の際に内部電極や端子電極に含有される卑金属が酸化して導電性が低下するのを防止するために、非酸化性雰囲気中、即ち窒素や水素−窒素などの不活性雰囲気中もしくは還元性雰囲気中において、最高温度700〜900℃程度で行われる。
【0004】
中でも、銅系の導電性粉末を含む導体ペーストの場合、非酸化性雰囲気中で焼成しても安定な耐還元性ガラスを無機結合剤として用いる必要がある。また、端子電極上に電気メッキ処理を行う場合、電気メッキ液が酸性のためガラス成分が変質又は溶解してしまい、ガラスの構造が破壊され、素体との接着強度が大きく低下することがある。また、端子電極上に電気メッキ処理を行う際に、ガラス成分の溶けた部分や、焼成膜中のボイドなどから電極膜中に浸み込んだメッキ液が原因となり、絶縁抵抗の低下や素体クラックの発生を招く他、浸入したメッキ液が半田リフロー時に熱せられてガス化し、溶融した半田が飛び散るいわゆる「半田爆ぜ現象」を引き起こすことがある。
【0005】
そこで、導体ペーストのガラス成分には、耐メッキ液性を備え、かつ、緻密な焼成膜を形成しうる特性が要求されており、亜鉛系やバリウム系のガラスを用いることが検討されている(特許文献1、特許文献2参照)。また、アルカリ・シリケートガラスを用いることも検討されている(特許文献3、特許文献4参照)。
【特許文献1】特開2002−100526号公報
【特許文献2】特開2003−246644号公報
【特許文献3】特開2002−25337号公報
【特許文献4】特開2003−347148号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、近年、積層セラミック部品に対する高容量化、高性能化、信頼性の向上の要求はますます厳しくなっている。特に、小型大容量の積層セラミックコンデンサにおいては、小型化に伴って端子電極の薄膜化の要求が高まっており、膜厚が50μm以下のもの、さらには20μm程度のものも要求されるようになってきた。このように薄い端子電極で、従来と同等以上の優れた電極特性を得るためには、より緻密で、素体との接着強度が大きく、また耐メッキ液性の優れていることが必要である。
【0007】
ここで、バリウム系や亜鉛系のガラスを用いる場合、導電性粉末とともに焼成される際に、ボイドの少ない緻密な焼成膜構造を形成し、メッキ液の電極膜への浸み込みを抑制することが知られている。特に、亜鉛系のガラスの場合、ガラスと素体との間により強固な反応層が形成されるため、接着強度や膜強度が向上するとともに、強度劣化を防止することができる。しかしながら、バリウム系や亜鉛系のガラス自体は耐酸性がそれほど高くなく、焼成後の端子電極の耐メッキ液性を向上させるためには、膜厚を在る程度以上厚く形成する必要がある。
【0008】
アルカリ・シリケートガラスを用いる場合は、ガラス自体の耐酸性が高いため、端子電極の耐メッキ液性は或る程度向上するが、ガラス軟化点を低下させるために多量のアルカリ金属成分を添加する必要がある。そのため、ガラス成分の流動性が高くなって素体に浸み込んでしまい、素体強度の低下やクラックの発生を引き起こしやすくなってしまう。また、ガラス成分の流動性が高いと端子電極の表面にガラス浮きが起こり、メッキ付性や半田付性が低下してしまう。
一方、このような問題を解消させるためにアルカリ金属成分の含有量を減らすとともに、軟化点を下げるための融剤としてアルカリ土類金属などを配合した場合、流動性に劣るために端子電極の膜密度が低下してしまう。すると端子電極膜中の空孔からメッキ液が浸透したり、また、素体の端子面の縁部(以下、「コーナー部」とする)の膜厚の薄い部分で電極剥離が発生してしまうという問題が生じる。
【0009】
また、銅系の導電性粉末を含有する導体ペーストは、前述の通り非酸化性雰囲気中で焼成する必要がある。そのため、ビヒクル成分の焼成、除去が完全に行われにくく、端子電極の膜中にビヒクル成分の分解物である残留カーボンが発生してしまうという問題がある。特に、ガラス成分の低温での流動性が高い場合、焼成段階の初期にガラスが軟化流動して緻密過ぎる膜構造を作ってしまい、ビヒクル成分を閉じ込めてしまうため、残留カーボンが増加するという問題があった。
残留カーボンは、引き続く高温焼成段階でセラミック誘導体の一部を還元するため、素体の劣化やクラックを引き起こすことがある。また、高温焼成段階でガス化して端子電極膜中にブリスタを発生させ、端子電極膜の一部がドーム状に盛り上がる現象が生じてしまうという問題がある。
【0010】
本発明者らは、端子電極に酸性メッキ液を用いて電気メッキ処理する際、ガラス自体の耐酸性が高いこと、並びに、かつ、焼成後の端子電極膜の緻密性が十分であること、という条件が同時に満たされていない場合には、端子電極の薄膜化に対応できるような十分な耐メッキ液性が得られず、積層セラミック部品の信頼性を低下させると考えた。そこで、メッキ液に対する溶解性が小さく、かつ、焼成段階で適切な流動性を示すようなガラスを使用することにより、焼成後の端子電極膜の耐メッキ液性が大幅に改善されるとともに、良好な膜密度、接着強度及びメッキ付性を有することを見いだし、ガラス成分の組成について種々の検討を行った。
【0011】
本発明の目的は、緻密で、素体との接着強度が高く、耐メッキ液性に優れ、薄膜化にも対応可能な端子電極を形成することのできる積層セラミック部品端子電極用導体ペーストを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、積層セラミック部品端子電極用導体ペーストにおいて、
銅を含む導電性粉末、ガラス粉末及びビヒクルを主成分とし、前記ガラス粉末中の各成分の含有量が、SiO 7〜12重量%、Al 11〜15重量%、B 15〜28重量%、BaO 25〜45重量%、CaO 5〜15重量%、ZnO 7〜25重量%、SiO+B 25〜35重量%、であることを特徴とする。
【0013】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の積層セラミック部品端子電極用導体ペーストにおいて、
前記ガラス粉末中の各成分の含有量の重量比が、下記式(1)及び(2)を満たすことを特徴とする。
0.25≦Al/(Al+SiO+B)≦0.35 …(1)
0.1≦CaO/(CaO+BaO)≦0.4 …(2)
【発明の効果】
【0014】
本発明の積層セラミック部品端子電極用導体ペーストに含まれるガラス粉末には、ガラス自体の特性として十分な耐酸性を有するとともに、焼成段階で適度な挙動を示すような流動性を有する。そのため、本発明の積層セラミック部品端子電極用導体ペーストを用いて形成された積層セラミック部品の端子電極は、空孔やブリスタが少なく、緻密性及び素体との接着性が優れている。また、端子電極の膜厚を薄くしても優れた耐メッキ液性を示し、メッキ液の浸み込みによる接着強度の低下や半田爆ぜなどの問題を生ずることがない。また、ガラス浮きによる半田付性の低下や電極剥離(特にコーナー部での剥離)を生じない信頼性の高い積層セラミック部品を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下に、本発明に係る積層セラミック部品端子電極用導体ペースト(以下、「導体ペースト」とする)について、詳細に説明する。本実施形態における導体ペーストは、銅を含む導電性粉末、ガラス粉末及びビヒクルを主成分とする。
【0016】
本発明に用いられる銅を含む導電性粉末としては、銅粉末の他、銅の合金粉末やこれらと他の導電性金属との混合粉末でもよく、また銅粉末の表面に金属酸化物、ガラス、セラミックなどの無機材料を存在させた金属−無機複合粉末や、金属酸化物、ガラス、セラミックなどの粉末や他の金属粉末に銅を被覆した金属−無機複合粉末を用いることもできる。
【0017】
本発明に用いられるガラス粉末としては、各成分の含有量が、SiO 7〜12重量%、Al 11〜15重量%、B 15〜28重量%、BaO 25〜45重量%、CaO 5〜15重量%、ZnO 7〜25重量%、SiO+B 25〜35重量%、である。
また、下記式(1)及び(2)を満たすことが好ましい。
0.25≦Al/(Al+SiO+B)≦0.35 …(1)
0.1≦CaO/(CaO+BaO)≦0.4 …(2)
【0018】
以下、ガラス粉末に含まれる各成分について詳しく説明する。
【0019】
SiOはガラス形成酸化物であり、耐酸性に大きな影響を及ぼす。SiOの含有量が12%を超えるとガラス浮きが発生しやすくなり、メッキ付性が悪くなる。7.0%未満であると耐酸性が下がり、メッキ液浸漬時にガラス成分が溶解しやすくなる。
【0020】
もガラス形成酸化物であり、流動性を良好にする成分である。その含有量が28%を超えると耐酸性が下がる傾向がある。15%未満であると流動性が低下し、端子電極の膜密度が低下する。
【0021】
Alは中間酸化物であり、耐酸性に大きな影響を及ぼす。その含有量が15%を超えるとガラス作製時の冷却過程において失透しやすくなる。11%未満であると耐酸性が低下する。
【0022】
BaOはガラス修飾酸化物であり、ガラスを安定化させ、流動性を良好にする。その含有量が45%を超えると耐酸性が低下する。25%未満ではガラス浮きが生じ、メッキ付性が低下する。
【0023】
CaOもガラス修飾酸化物であり、ガラスを安定化させ、耐酸性を向上させる。その含有量が15%を超えるとガラス転移点が急激に上昇する。5.0%未満では耐酸性が低下する。
【0024】
ZnOもガラス修飾酸化物であり、ガラスを安定化させ、結晶化温度を調整する。その含有量が25%を超えると耐酸性が著しく悪くなる。7.0%未満では流動性が低下し、端子電極の膜密度が低下する。
【0025】
また、SiOとBとの合計量は、焼成段階における流動性を調整するファクターである。35%を超えると流動性が高くなりすぎてガラス浮きが発生しやすくなり、端子電極のメッキ付性が悪くなるとともにブリスタを生じる傾向がある。25%未満であると流動性が低下し、端子電極の膜密度が低下する。
【0026】
Al/(Al+SiO+B)で表される値は、耐酸性に影響を与える重要なファクターの一つである。0.25未満であると耐酸性が下がり、メッキ液浸漬時にガラス成分が溶解してしまうのを抑制できなくなる。0.35を超えると流動性が低下し、端子電極の膜密度が低下する。
【0027】
また、本発明においては、CaO/(CaO+BaO)で表される値も、耐酸性に影響を与える重要なファクターの一つである。0.1より小さいと耐酸性が下がり、メッキ液浸漬時にガラス成分が溶解してしまう。0.4を超えると、ガラス成分と素体の濡れ性が悪くなるために積層セラミック部品のコーナー部で電極剥離が発生し易くなる。
【0028】
ガラス粉末にはこの他、特性に影響のない範囲で少量の他の酸化物、例えばアルカリ金属、ストロンチウム、マンガン、銅、スズ、鉄又はコバルトなどの酸化物を含有させることができる。
【0029】
ガラス粉末の大きさは特に限定されるものではないが、通常、平均粒径0.1〜10μmのものが用いられる。なお、端子電極の表面にガラス浮きが生じやすい場合には、ガラス粉末の粒径を調整することによって防止することが可能である。そのため、本発明のガラス粉末としては、好ましくは平均粒径0.5〜5μm、さらに好ましくは1〜4μmのものが用いられる。
【0030】
このようなガラス粉末は、溶融急冷法、ゾルゲル法、アトマイズ法など、いかなる方法で得られたものでもよい。例えば、各成分の原料化合物を混合し、溶融、急冷、粉砕する通常の方法で製造することができる。この場合、スタンプミルなどにより粗粉砕したのち所定の粒径にするためにボールミルや遊星ボールミルを用いての湿式粉砕、或いは遊星ボールミルやジェットミルなどを用いての乾式粉砕することが好ましい。この他、噴霧培焼法、噴霧熱分解法、或いは成分元素を含む原料粉末を仮焼したものを粉砕し、これを気相中に分散させた状態で熱分解すると共にガラス化させる方法でも製造することができる。これらの方法では、微細で粒度の揃った球状のガラス粉末を得ることができ、別途粉砕処理を行う必要がないので好ましい。
【0031】
本発明に用いられるビヒクルとしては特に限定はなく、通常銀ペーストのビヒクルとして使用されている有機バインダや溶剤などが適宜選択して配合される。例えば有機バインダとしては、セルロース類、アクリル樹脂、フェノール樹脂、アルキッド樹脂、ロジンエステルなどが、また溶剤としてはアルコール系、エーテル系、エステル系、炭化水素系などの有機溶剤や水、これらの混合溶剤が挙げられる。この他通常添加されるような可塑剤や、高級脂肪酸や脂肪酸エステル系などの分散剤、界面滑性剤などを適宜配合することができる。ビヒクルの配合量は特に限定されるものではなく、無機成分をペースト中に保持し得る適切な量で、用途や塗布方法に応じて適宜調整される。
【0032】
本発明の導体ペーストには、前記成分以外に通常配合されるような無機成分、例えば、アルミナ、シリカ、酸化銅、酸化マンガン、チタン酸バリウム、酸化チタンなどの金属酸化物や、誘導体層と同質のセラミック粉末、モンモリロナイトなどを目的に応じて適宜添加することができる。
【実施例】
【0033】
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明する。
【0034】
まず、以下の手順で実施例1〜5に係るガラス粉末を調合した。
表1に示すような酸化物組成になるように各成分を秤量し、十分に混合した後白金ルツボ中に投入し、大気中1400℃で60分間溶融し、次いでグラファイト上に流出させて空冷して得られたガラスをスタンプミルで粉砕後、遊星ボールミルを用いて湿式粉砕を行い、平均粒径3.3μmのガラス粉末を得た。
また、同様にして表1に示すような酸化物組成で各成分を秤量し、比較例1〜6に係るガラス粉末を調合した。
【表1】

【0035】
得られた各ガラス粉末の熱特性を示すガラス転移点Tgを、示差熱分析装置を用いて測定した。その測定結果を表1に示す。
【0036】
また、焼成後の端子電極の耐メッキ液性の指標の一つとなる各ガラス粉末の耐酸性を以下のようにして調べた。
ガラス粉末10重量部を、アクリル樹脂系バインダをベンジルアルコールに溶解した有機ビヒクル3重量部中に分散したペーストを作製し、チタン酸バリウムを焼結して作られた平板上に印刷、乾燥させた後、酸素濃度が約5ppmの窒素雰囲気中800℃で焼成して、膜厚約20μmのガラス被膜を形成した。その後、ガラス被膜が形成された基板をpHが約4の酸性有機スズメッキ浴に2時間浸漬し、浸漬前後の重量変化から、ガラス皮膜の残存率(重量%)を測定し、残存率が30%以上のものを○、10〜30%のものを△、10%未満のものを×と評価した。その測定結果を表1に示す。
【0037】
続いて、以下の手順で導体ペーストを作製し、各実施例及び比較例に係る端子電極を形成した。
銅粉末(平均粒径4μm、フレーク状)100重量部とガラス粉末10重量部を、アクリル樹脂系バインダをテルピネオールに溶解したビヒクル40重量部と共にロールミルで混練して電極ペーストを作製した。得られた電極ペーストを、ニッケル内部電極を有する外径寸法2.0mm×1.2mm×1.2mmのチタン酸バリウム系積層セラミックコンデンサ素体の端子面に、焼成膜厚が40μmとなるようにディッピング法で塗布し、乾燥後、酸素濃度5ppmの窒素雰囲気中860℃で焼成し、端子電極を形成した。
【0038】
次いで端子電極上に電気メッキにより、ニッケルメッキ膜及びスズメッキ膜を順次形成し、それぞれについて、以下の要領で、膜密度、ブリスタ、メッキ付性及び電極剥離の評価を行った。
【0039】
膜密度は、各端子電極の断面(端子面に対し垂直な面)を走査電子顕微鏡で観察し、空孔率が0.6%未満を○、0.6%以上3%未満を△、3%以上を×と評価した。
ブリスタは、端子電極の表面にブリスタの発生が検出されなかった場合は○、ブリスタ発生率が30%未満を△、30%以上を×と評価した。
メッキ付性は、端子電極の表面に連続なメッキ膜が形成されたものを○、不連続となったものを×と評価した。なお、ガラス浮きがある場合にメッキ膜は不連続となりやすい。
電極剥離は、端子電極が素体のコーナー部に完全に密着している場合を○、剥離している場合を×とした。
【0040】
表1からわかるように、比較例1に関しては、SiO、Al及びCaOの含有量が少なく、SiO+B、Al/(Al+SiO+B)及びCaO/(CaO+BaO)の値も小さくなっており、耐酸性が著しく低下している。比較例2に関しては、Bの含有量が多く、SiO+Bの値が大きく、Al/(Al+SiO+B)の値が小さくなっており、ブリスタが多数発生するとともにメッキ付性が著しく低下している。比較例3に関しては、SiO+Bの値が小さくなっており、焼成後の端子電極に空孔が発生してしまい膜密度が低下している。比較例4に関しては、AlとBaOの含有量が少なく、SiO+BとCaO/(CaO+BaO)の値が大きく、Al/(Al+SiO+B)の値が小さくなっており、耐酸性が低下するとともに電極剥離が発生している。比較例5に関しては、Alの含有量が少なく、Al/(Al+SiO+B)の値も小さくなっており、ブリスタが多数発生するとともにメッキ付性が著しく低下している。比較例6に関しては、AlとBaOの含有量が少なく、SiO+BとCaO/(CaO+BaO)の値が大きくなる一方、Al/(Al+SiO+B)の値は小さくなっており、メッキ付性が著しく低下している。
【0041】
一方、本発明の組成のガラス粉末は、各成分の含有量をSiO 7〜12重量%、Al 11〜15重量%、B 15〜28重量%、BaO 25〜45重量%、CaO 5〜15重量%、ZnO 7〜25重量%、SiO+B 25〜35重量%であり、その上更に下記式(1)及び(2)を満たしている。
0.25≦Al/(Al+SiO+B)≦0.35 …(1)
0.1≦CaO/(CaO+BaO)≦0.4 …(2)
そのため、耐酸性に優れており、そのガラス粉末を用いることにより、緻密で、素体との接着強度が強く、かつ、耐メッキ液性に優れ、薄膜化にも対応可能な端子電極が形成される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
銅を含む導電性粉末、ガラス粉末及びビヒクルを主成分とし、前記ガラス粉末中の各成分の含有量が、SiO 7〜12重量%、Al 11〜15重量%、B 15〜28重量%、BaO 25〜45重量%、CaO 5〜15重量%、ZnO 7〜25重量%、SiO+B 25〜35重量%、であることを特徴とする積層セラミック部品端子電極用導体ペースト。
【請求項2】
前記ガラス粉末中の各成分の含有量の重量比が、下記式(1)及び(2)を満たすことを特徴とする請求項1に記載の積層セラミック部品端子電極用導体ペースト。
0.25≦Al/(Al+SiO+B)≦0.35 …(1)
0.1≦CaO/(CaO+BaO)≦0.4 …(2)

【公開番号】特開2007−103845(P2007−103845A)
【公開日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−294849(P2005−294849)
【出願日】平成17年10月7日(2005.10.7)
【出願人】(000186762)昭栄化学工業株式会社 (55)
【Fターム(参考)】