説明

積層フィルムおよびインクジェット記録材料

【課題】コーティングやラミネート等の二次加工性に優れた積層フィルム、および、高いインク受容性、良好な発色性を実現できるインクジェット記録材料、このインクジェット記録材料により単純な工程で製造することができるディスプレー材料を提供する。
【解決手段】基材層、この基材層の上に積層された粘着層、この粘着層の上に積層された仮基材層を有する積層フィルム、この積層フィルムの基材層における粘着層が積層された面とは反対の面に、インク受容層が積層されている積層フィルムからなるインクジェット記録材料、このインクジェット記録材料が別素材にホットメルト接着したディスプレー材料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層フィルムおよびインクジェット記録材料に関し、特に、コーティングやラミネート等の二次加工性に優れ、最終的に薄膜フィルムとすることができる積層フィルムおよびインクジェット記録材料に関する。
【背景技術】
【0002】
プラスチックフィルム材料は、従来から使用されている包装材分野、建材分野を始め、昨今では電子材料等あらゆる分野へ使用され、その機能は多様化している。このような多様な機能を有するプラスチックフィルム材料は、従来は素材同士を配合することによって、特定の機能が付与されていたが、最近では、コーティング、蒸着、異種材料とのラミネート(ドライラミネート、熱ラミネート)等の表面機能化技術が発達してきたため、これらの表面機能化技術により特定の機能が付与されている。
【0003】
表面機能化技術においては、プラスチックフィルムをコーティングやラミネート等の二次加工に付する必要がある。この二次加工においては、プラスチックフィルムの巻物自体をコーティング設備やラミネート設備に取り付け、この巻物から巻き出したプラスチックフィルムに対して、数本のロールをパスしながら所定の加工を施し、再びフィルムを巻き取って巻物にする。よって、プラスチックフィルムは、二次加工において取扱容易であることが必要である。
【0004】
また、最近では、プラスチックフィルム材料の薄膜化の要求が高く、例えば二軸延伸PETフィルムでは12.5μm以下のフィルムが使用されている。そして、このような薄膜フィルムに上記の表面機能化技術により特定の機能を付与する場合においても、二次加工において取扱容易であることが求められている。
【0005】
一方、インクジェットプリンターによる印刷技術が多数開発されると共に、プリンター等のハードウエア、ラスターイメージプロセッサー等のソフトウエアが進化したことにより、インクジェットプリンターによる高精細な印刷が可能となった。それに伴い、インクジェットプリンター用の記録材料(以下、「インクジェット記録材料」ということがある。)も進化し、高品質な画像を記録するに耐えうる記録材料が開発されている。従って、このようなインクジェット記録材料を用いた看板やパネル等のディスプレー材料が、市場にて多く見られるようになってきた。
【0006】
特に、業務用のディスプレー材料おいては、遠方からでも明確に視認できる、高い視認性を有することが要求される。そのため、業務用のディスプレー材料に用いるインクジェット記録材料としては、高いインク吸収性および受容性を有し、発色性が良いことが必要とされる。
【0007】
しかし、従来から使用されている空隙型のインクジェット記録材料においては、インク受容層において多孔質無機微粒子が用いられ、この多孔質無機微粒子の空孔における毛細管現象によりインクを吸収し、保持していることから、インクの吸収量には限界があった。従って、高いインク受容性、良好な発色性を実現するためには、この多孔質無機微粒子からなるインク受容層がある程度の厚みを有することが必要であった。
【0008】
また、このようなインク受容層は耐水性や耐傷性に乏しいため、インクジェット記録材料の印字画像面に耐久性を付与し、業務用のディスプレー材料の視認性を維持するためには、インクジェット記録材料におけるインク受容層の表面に、保護フィルムを被せる必要があった。
【0009】
特許文献1には、透明基材の片面に、感熱接着性と、水性インクの受容性とを有するインク受容層を成形したことを特徴とする記録媒体が記載されている。
【0010】
特許文献2には、基体上にインク受容層、および最外層として表面層を有するインクジェット用記録材が記載されている。
【特許文献1】特開2002−67481号公報
【特許文献2】特開2001−287447号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
薄膜のプラスチックフィルム材料に、表面機能化技術により二次加工を施す場合は、薄膜フィルムのコシが弱いため、二次加工の製造ライン上でフィルムのフラット性を保ちにくく、コーティングムラやシワ入り等が生じてしまい、加工適性が低くなるという問題があった。このような問題に対し、フィルムの加工業者等は設備的な工夫をすることにより対処しているが、その工夫にも限度があり、すべての薄膜フィルムに対応できるものではなかった。
【0012】
また、特に、厚さ10μmを下回るような薄膜フィルムについては、フィルムメーカーで安定して製造すること自体が困難であった。また、たとえ製造できたとしても、製造後のフィルムの巻取りが困難であったり、その後の二次加工において取扱いが困難であったりという問題があった。
【0013】
薄膜プラスチックフィルムの取扱い性を向上させるために、異種材料をラミネートすることが考えられるが、異種材料をラミネートするためにコストや労力がかかるという問題があり、一般的に用いられる方法ではなかった。
【0014】
一方、従来から使用されている空隙型のインクジェット記録材料においては、インク受容層が水系溶媒の溶液コーティングによって製造されていることから、塗布量に限界があること、および、溶媒として高沸点の水を用いていることより、インク受容層をある程度の厚みを有するものとし、インクジェット記録材料を高いインク受容性、良好な発色性を有するものとするのは難しかった。
【0015】
また、上記コーティング法の他、押出ラミネートによる製造方法も提案されてきたが、別ラインで製造されたフィルムに、インク受容層を押出ラミネートするものであるので、製造コストが高く、労力がかかるという問題があった。
【0016】
このような問題点は特許文献1に記載の記録媒体においても存在している。つまり、特許文献1に記載の記録媒体においては、インク受容層が吸収性充填剤および水性溶剤を用いた塗布方法により形成されていることから、インク受容層を厚くすることが難しく、良好な発色性を実現することが困難であった。
【0017】
また、このようなインク受容層は耐水性や耐傷性に乏しいため、インクジェット記録材料の印字画像面に耐久性を付与するためには、もう一枚表面保護フィルムを被せる必要があった。そのため、表面に保護フィルムを被せる場合は、保護フィルムの材料、および複合化するための接着剤等が必要となるため材料が多くなり、かつ、製造工程が複雑になるという問題があった。そして、接着剤を介することから、透明性が低下したり空気層が混入することにより画像の視認性が低下したり、湿気、温度等の外的環境により、製造した積層シートに反りが生じてしまうという問題もあった。
【0018】
特許文献2に記載のインクジェット記録材料においては、インク受容層の他に、表面層を設けている。これにより印字画像面に耐久性を付与できると考えられる。しかし、特許文献2に記載のインクジェット記録材料は、フィルム素材の薄膜化の要求にこたえるものではなかった。
【0019】
そこで、本発明は、以上のような問題点に鑑みて、コーティングやラミネート等の二次加工性に優れ、最終的に薄層フィルムとすることができる積層フィルム、および、高いインク受容性、良好な発色性を実現できるインクジェット記録材料、このインクジェット記録材料により単純な工程で製造することができるディスプレー材料を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
以下、本発明について説明する。なお、本発明の理解を容易にするために添付図面の参照符号を括弧書きにて付記するが、それにより本発明が図示の形態に限定されるものではない。
【0021】
第一の本発明は、基材層(30)、この基材層の上に積層された粘着層(20)、この粘着層の上に積層された仮基材層(10)を有する積層フィルムであって、この粘着層(20)の測定温度23℃、周波数1Hzで測定した貯蔵弾性率G´が1.0×10Pa以下である積層フィルム(100A)である。
【0022】
貯蔵弾性率G´は、レオメトリックス社製の粘弾性測定装置ダイナミックアナライザー「RDA−II」を用いて測定した。
【0023】
第二の本発明は、基材層(30)、この基材層の上に積層された粘着層(20)、この粘着層の上に積層された仮基材層(10)を有する積層フィルムであって、この仮基材層(10)の経時収縮率が30日間で0.1%以下である積層フィルム(100A)である。
【0024】
第三の本発明は、基材層(30)、この基材層の上に積層された粘着層(20)、この粘着層の上に積層された仮基材層(10)を有する積層フィルムであって、この粘着層(20)の測定温度23℃、周波数1Hzで測定した貯蔵弾性率G’が1.0×10Pa以下であり、この仮基材層(10)の経時収縮率が30日間で0.1%以下である積層フィルム(100A)である。
【0025】
第一〜第三の本発明において、基材層(30)における粘着層(20)が積層された面とは反対の面に、保護層(40)が積層されていてもよい。
【0026】
第一〜第三の本発明において、基材層(30)は、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネート(PC)、ポリ塩化ビニル(PVC)、アクリロニトリルブタジエンスチレン共重合体(ABS)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリスチレン(PS)、ポリプロピレン(PP)からなる群から選ばれる1種以上の樹脂からなる層であることが好ましい。
【0027】
第一〜第三の本発明において、仮基材層(10)は、ポリプロピレン(PP)を主体とする層であることが好ましい。
【0028】
第一〜第三の本発明において、仮基材層(10)は、結晶核剤を含有している層であることが好ましい。
【0029】
第一〜第三の本発明において、基材層(30)および仮基材層(10)の厚み比は、「1:8」〜「1:50」であることが好ましい。
【0030】
第一〜第三の本発明において、基材層(30)および仮基材層(10)の厚み比は、「1:1.5」〜「1:10」であることが好ましい。
【0031】
第一〜第三の本発明の積層フィルム(100A)における各層は、共押出により積層されていることが好ましい。
【0032】
第四の本発明は、第一〜第三の本発明の積層フィルム(100A)の基材層(30)における粘着層(20)が積層された面とは反対の面に、インク受容層(50)が積層されている積層フィルムからなるインクジェット記録材料(200A)である。
【0033】
第四の本発明において、インク受容層(50)は、無機微粒子を含有している層であることが好ましい。
【0034】
第四の本発明において、インク受容層(50)の融点は、60℃以下であることが好ましい。
【0035】
第四の本発明において、インク受容層(50)は、下記一般式(1)で表されるポリアルキレンオキシド系樹脂を主成分とする層であることが好ましい。
【0036】
【化1】

[一般式(1)において、Xは活性水素基を2個有する有機化合物の残基であり、Rはジカルボン酸類化合物残基またはジイソシアネート系化合物残基であり、Aは下記一般式(2)によって表される。]
【0037】
【化2】

[一般式(2)において、Zは炭素数2以上の炭化水素基であり、a、b、cはそれぞれ1以上の整数であり、a、b、cより計算される質量比、{44×(a+c)/(炭素数4以上のアルキレンオキシドの分子量)×b}は、80/20〜94/6である。また、c/(a+c)は0.5以上1.0未満である。]
【0038】
第四の本発明において、インク受容層(50)における、基材層(30)を積層した面とは反対の面に、耐熱性支持層(60)が積層されていることが好ましい。
【0039】
第四の本発明のインクジェット記録材料(200A、200B)における各層は、共押出により積層されていることが好ましい。
【0040】
第四の本発明において、基材層(30)における粘着層(20)を形成した面のJIS B 0601:1994に基づく十点平均粗さ(Rz)は、0.5μm以上3.0μm以下であることが好ましい。このように基材層(30)における粘着層(20)を形成した面に凹凸を付与し防眩性を付与する方法としては、粘着層(20)または仮基材層(10)に充填剤を添加することによって、基材層(30)の表面に凹凸を形成する方法を挙げることができる。上記の平均粗さ(Rz)が小さすぎると、防眩効果が薄れる。また、平均粗さ(Rz)が大きすぎると、画像視認性が悪くなる。防眩性の評価については、インク受容層に画像を印刷して、別素材に貼り合わせて作製したディスプレー材料に対して、斜め45度から40Wの白熱球にて照らした際に、画像が視認できるかどうかにより判断する(防眩していないものについては、反射して見えない。)。
【0041】
第五の本発明は、上記のインクジェット記録材料(200A)のインク受容層(50)に画像を記録する工程、画像を記録したインク受容層(50)側を、別素材(70)にホットメルト接着する工程、を有するディスプレー材料(300)の製造方法である。
【0042】
第六の本発明は、上記のインクジェット記録材料(200A)、および、このインクジェット記録材料におけるインク受容層(50)側がホットメルト接着した別素材(70)を有する、ディスプレー材料(300)である。
【0043】
第六の発明において、インク受容層(50)および別素材(70)の溶解性パラメーター(SP値)の差は、4以内であることが好ましい。
【発明の効果】
【0044】
本発明の積層フィルムは、適度な厚みを有する仮基材層を有することから、コーティングやラミネート等の二次加工性に優れた積層フィルムとすることができる。そして、仮基材層を剥離することにより、薄層フィルムを得ることができる。また、仮基材層が表面保護層として働くため、積層フィルムに耐傷性を付与することができる。本発明のインクジェット記録材料は、上記の効果に加えて、インク受容層を適度な厚みを有するものとすることができ、高いインク受容性、良好な発色性を実現することができる。また、本発明のディスプレー材料は、このインクジェット記録材料を用いて単純な工程で製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0045】
以下、本発明を図面に示す実施形態に基づき説明する。
【0046】
<積層フィルム100>
図1(a)に層構成の模式図を示したように、本発明の積層フィルム100Aは、基材層30、粘着層20、仮基材層10がこの順で積層された構成を有する。なお、積層フィルム100は、積層フィルム100Aおよび積層フィルム100Bを含む上位概念である。
【0047】
本発明の積層フィルム100Aにおいては、仮基材層10が存在することにより、基材層30を薄膜フィルムとすることができる。また、仮基材層10が存在することにより、積層フィルム100Aにコシが与えられ、積層フィルム100Aの取扱い性が向上する。また、基材層30を使用する直前まで、仮基材層10が基材層30の上に存在しているので、基材層30の表面を保護し、耐傷性を付与することができる。
【0048】
(基材層30)
基材層30は、粘着層20および仮基材層10が剥離された後に、薄層フィルムとなるものである。基材層30を構成する樹脂としては、通常フィルム化されている素材を用いることができ、例えば、グリコール変性ポリエチレンテレフタレート(PETG)、ポリカーボネート(PC)、アクリロニトリルブタジエンスチレン共重合体(ABS)、ポリ塩化ビニル(PVC)等を用いることができる。なお、基材層30には、本発明の効果を妨げない程度に、酸化防止剤や帯電防止剤等の添加剤を添加することができる。
【0049】
積層フィルム100における基材層30の層厚としては、15μm以下であることが好ましく、10μm以下であることがより好ましい。また、強度の点から1μm以上であることが好ましく、3μm以上であることがより好ましい。
【0050】
(仮基材層10)
仮基材層10は、積層フィルム100Aにおいてフィルムにコシを与える役割を有しており、基材層30を薄膜フィルムとすることができると共に、積層フィルム100Aの取扱い性を良好にすることができる。また、仮基材層10は、表面保護層としての役割を有しており、基材層30の表面を保護し、耐傷性を付与することができる。
【0051】
仮基材層10を構成する樹脂としては、通常フィルム化されている素材を用いることができ、上記の基材層30を構成する樹脂と同様のものを用いることができる。この中でも、コスト等の面から、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等を用いることが好ましい。さらに、仮基材層10を構成する樹脂としては、特に、非極性で他の樹脂と接着しにくい点からポリプロピレン(PP)を用いるのが好ましい。
【0052】
また、仮基材層10を構成する樹脂が結晶性の場合には、仮基材層10の経時的収縮が懸念される。経時的収縮は仮基材層10を構成する樹脂が経時的に結晶化する場合に起こる。この経時的収縮が起こった場合、ロール状に巻き取ったフィルムにおいて巻き締まりが生じ、巻きコブが発生する等によりフィルムのフラット性が失われてしまう。特に、フラット性を重視する素材の場合において、この問題が顕著となる。このような仮基材層10の経時的収縮を防止するためには、仮基材層10を構成する樹脂の経時的結晶化を防ぐべく、あらかじめ樹脂の結晶化を促進しておく手法を採ることができる。
【0053】
結晶化を促進する手法としては、結晶核剤を添加する方法を挙げることができる。この結晶核剤には有機系と無機系のものがある。有機系の結晶核剤としては、例えば、安息香酸の金属塩、有機リン酸エステルの金属塩等が挙られる。また、無機系の結晶核剤としては、タルク等が挙げられる。
【0054】
結晶化を促進するとしても、結晶化度を100%に到達させることは困難である。よって、可能な限り結晶化を促進した後、あとは、充填効果により収縮を抑制するといった、物理的に結晶化による収縮を抑制する手法を取ることが有効である。
【0055】
特に、無機系の結晶核剤を使用すると、結晶化をより促進することができることから好ましい。例えば、一般的かつ低コストであるタルク等を用いることができる。
【0056】
なお、結晶化促進にはキャスティング時の温度が重要であり、ある程度キャスティングロールの温度を高温に保つことが有効である。例えば、仮基材層10をポリプロピレン(PP)により構成する場合には、キャスティング温度を40℃以上に設定することが好ましい。
【0057】
以上の観点から、仮基材層10の経時収縮率は、30日間で0.1%以下であることが好ましく、0.05%以下であることがより好ましい。仮基材層10の経時収縮率は、〔(初期状態の仮基材層の標線間長さ)−(30日経過後の仮基材層の標線間長さ)〕/(初期状態の仮基材層の標線間長さ)×100(%)から求めた値である。
【0058】
仮基材層10の層厚は、300μm以下であることが好ましく、250μm以下であることがより好ましい。また、強度の点から30μm以上であることが好ましく、50μm以上であることがより好ましい。
【0059】
(粘着層20)
粘着層20は、仮基材層10を基材層30に粘着させるための層である。仮基材層10は、積層フィルム100Aの取扱い時においては、粘着層20を介して、基材層30上に粘着されている。そして、仮基材層10は、基材層30を薄膜フィルムとして使用する際には、基材層30から剥離される。よって、粘着層20は、積層フィルム100Aをコーティングやラミネート等の二次加工に付する場合は、仮基材層10と基材層30との粘着性を担保し、かつ、基材層30を薄膜フィルムとして使用する際には、基材層30の表面から剥離できるものである必要がある。
【0060】
このような観点から、粘着層20は、測定温度23℃、周波数1Hzで測定した貯蔵弾性率G´が、1.0×10Pa以下である層とすることが好ましい。粘着層20の弾性率が大きすぎると、仮基材層10と基材層30とを粘着することが難しくなる。
【0061】
貯蔵弾性率G´は、レオメトリックス社製の粘弾性測定装置ダイナミックアナライザーRDAIIを用いて測定した。
【0062】
粘着層20を構成する樹脂としては、溶融押出成形が可能であるもので、上記の所定の弾性率を有する粘着層20とすることができるものであれば特に限定されず、例えば、ポリプロピレンのコポリマー、非晶性のポリプロピレン、酸変性オレフィン、エチレン酢酸ビニル共重合体、ボンドファースト(住友化学社製)等の変性プラスチック等、あるいは、これらの混合物を用いることができる。
【0063】
また、粘着層20は、仮基材層10との接着性を良好にするために、仮基材層10と同種類の素材により構成することが好ましい。これにより、基材層30から仮基材層10を剥離した時に、粘着層20が仮基材層10側に接着しているため、仮基材層10と粘着層20とを共に剥離することができる。そして、基材層30からなる薄層フィルムを得ることができる。
【0064】
このような観点から、仮基材層10をポリプロピレンにより構成した場合は、粘着層20を構成する樹脂は、ポリプロピレンのコポリマー、非晶性のポリプロピレン、あるいは、これらの混合物とすることが好ましい。これにより、仮基材層10と粘着層20とを接着層を介さずとも接着することができ、粘着層20の弾性率を低下させて、粘着性を持たせることができる。
【0065】
粘着層20の弾性率を低くすることで粘着性を高め、積層フィルム100Aが製造ライン上で剥離しないような設計とすることができる。また、上記した粘着層20の好ましい弾性率の範囲内において、弾性率を高めに設定し、基材層30を薄膜フィルムとして使用する際における基材層30と仮基材層10との剥離性を重視した設計とすることもできる。このように、本発明の積層フィルム100Aにおいては、粘着層20の粘着性を制御して、種々の用途に適用することができる。
【0066】
本発明の積層フィルム100においては、基材層30および仮基材層10の厚み比は、「1:8」〜「1:50」とすることが好ましい。仮基材層10の厚みが厚すぎると、却って巻き取り等の加工適性、二次加工性、および取扱性が悪くなる。また、仮基材層10の厚みが薄すぎると、積層フィルムにコシを与えることができなくなる。
【0067】
(保護層40)
図1(b)に層構成の模式図を示したように、本発明の積層フィルム100Aの基材層30における粘着層20が積層された面と反対の面には、必要に応じて、保護層40を設けた構成100Bとすることができる。
【0068】
保護層40としては、例えば、耐熱性を付与するための耐熱性支持層を設けることができる。耐熱支持層は、基材層30の融点が低い場合において、基材層30を保護するために設けられる層である。耐熱性支持層は、積層フィルム100Bを共押出して成形後、冷却した後に剥離してもよいし、基材層30を薄膜フィルムとして使用する際に剥離してもよい。耐熱性支持層を構成する樹脂としては、例えばポリプロピレン、ポリエチレンなどを挙げることができる。
【0069】
(積層フィルム100の製造方法)
本発明の積層フィルム100Aは、基材層30、粘着層20および仮基材層10を共押出成形することにより製造することができる。共押出成形は、各層を形成する樹脂材料のそれぞれに対応する三台の押出機を使用して、各層を形成する樹脂材料を、一体に組み合わせてなる押出ダイに導いて、ダイ内部またはダイ開口部にて接触させて単一押出製品である積層フィルムとする成形方法である。
【0070】
保護層40を設ける場合は、保護層40、基材層30、粘着層20および仮基材層10を四台の押出機を使用して、共押出成形することにより積層フィルム100Bとすることができる。
【0071】
<インクジェット記録材料200>
図2(a)に層構成の模式図を示したように、本発明のインクジェット記録材料200Aは、上記の積層フィルム100Aの基材層30における粘着層20が積層された面とは反対の面に、インク受容層50が積層されている。なお、インクジェット記録材料200は、インクジェット記録材料200Aおよびインクジェット記録材料200Bを含む上位概念である。つまり、本発明のインクジェット記録材料200Aは、インク受容層50、基材層30、粘着層20、および仮基材層10がこの順で積層された構成を有する。
【0072】
本発明のインクジェット記録材料200Aによると、インク受容層50をある程度の厚みを有するものとすることができるので、高いインク受容性、良好な発色性を実現できるインクジェット記録材料200Aとすることができる。また、仮基材層10がインクジェット記録材料200Aにコシを与え、取扱い性を良好なものにすることができる。
【0073】
(インク受容層50)
ホットメルト接着性を有するインク受容層50としては、ホットメルト接着性およびインク受容性の両方の性質を併せ持つ親水性樹脂を主成分とする単一成分系として構成することもできるし、ホットメルト接着性を有する樹脂に、インク受容性を持たせるための親水性樹脂および/または添加剤を混合して複合成分系として構成することもできる。
【0074】
以下、インク受容層50を構成する成分として、単一成分系を用いる場合について、説明する。ホットメルト接着性およびインク受容性の両方の性質を併せ持つ親水性樹脂としては、融点が40〜60℃であるポリアルキレンオキシド系樹脂を挙げることができる。
【0075】
このようなポリアルキレンオキシド系樹脂としては、下記一般式(1)で表されるポリアルキレンオキシド系樹脂を挙げることができる。
【0076】
【化3】

【0077】
一般式(1)において、Xは活性水素基を2個有する有機化合物の残基であり、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ビスフェノールA、アニリンプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等が挙げられる。Rはジカルボン酸類化合物残基もしくはジイソシアネート系化合物残基であり、ジカルボン酸類化合物残基としては、環状ジカルボン酸化合物または直鎖状ジカルボン酸化合物が望ましく、例えば、ジカルボン酸、ジカルボン酸無水物、ジカルボン酸の低級アルキルエステルが挙げられる。
【0078】
上記ジカルボン酸としては、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、マロン酸、コハク酸、セバシン酸、マレイン酸、フマル酸、アジピン酸、イタコン酸が挙げられる。上記ジカルボン酸無水物としては、上記各種ジカルボン酸の無水物が挙げられる。また、上記ジカルボン酸の低級アルキルエステルとしては、上記各種のジカルボン酸のメチルエステル、ジメチルエステル、エチルエステル、ジエチルエステル、プロピルエステル、ジプロピルエステル等が挙げられる。特に好ましくは、炭素数12〜36の直鎖状ジカルボン酸およびその低級アルキルエステルが挙げられ、1,10−デカメチレンジカルボン酸、1,14−テトラデカメチレンジカルボン酸、1,18−オクタデカメチレンジカルボン酸、1,32−ドトリアコンタンメチレンジカルボン酸等が挙げられる。
【0079】
ジイソシアネート系化合物残基の例としては、4,4´−ジフェニルメタンジイソシアネート、トルエンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等が挙げられる。
【0080】
上記の中でも、Rとしては、反応の容易性という観点から、上記ジカルボン酸無水物およびジカルボン酸の低級アルキルエステルを用いることが好ましい。これらは単独で、または2種以上併用して用いることができる。
【0081】
また、Aは下記一般式(2)によって表される。
【0082】
【化4】

【0083】
一般式(2)において、Zは炭素数2以上の炭化水素基であり、例えば好ましいものとしてはエチル基、プロピル基等のアルキル基が挙げられる。a、b、cはそれぞれ1以上の整数であり、a、b、cより計算される質量比、{44×(a+c)/(炭素数4以上のアルキレンオキシドの分子量)×b}は、80/20〜94/6である。80/20より小さくても、前記親水性樹脂として使用することができるが、この場合は、親水性が低下したり、インク吸水性、印刷適性が劣るものとなったり等の問題が生じる。一方、94/6を超えても、前記親水性樹脂として使用することがきできるが、この場合は、インクの滲み耐水性等の点で劣るという問題が生じる。a、b、cの割合を上述の範囲内とすることにより、親水性を失わず、かつ水に対して不溶化することができる。また、c/(a+c)は0.5以上1.0未満に設定される。
【0084】
インク受容層50を構成するポリアルキレンオキシド系樹脂の具体例としては、エチレングリコールにエチレンオキシドを付加重合した後、ブチレンオキシドを付加重合し、さらにエチレンオキシドを付加重合して得たポリアルキレンオキシドに、オクタデカン−1,18−ジカルボン酸メチルを加えエステル交換反応を行って得た樹脂(重量平均分子量:15万、融点:50℃、分解温度:230℃)を挙げることができる。
【0085】
上記の親水性樹脂を押出成形する場合には、親水性樹脂にトコフェロールなどの酸化防止剤を添加することで、熱分解等の問題を回避できる。
【0086】
以下、インク受容層50を構成する成分として、複合成分系を用いる場合について、説明する。ホットメルト接着性を有する樹脂に、インク受容性を持たせるための親水性樹脂および/または添加剤を混合して複合成分系として構成する場合における、インク受容性を持たせるための親水性樹脂としては、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシメチルセルロース、ゼラチン、ポリエチレンオキシド等を用いることができる。
【0087】
この中で、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドンを親水性樹脂として用いた場合は、これらを単独で用いたのでは、インク受容層に十分なインク受容性を持たせることができない。そこで、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドンを親水性樹脂として用いた場合は、以下において説明する多孔質の無機微粒子を添加剤として加える必要がある。
【0088】
上記インク受容性を持たせるための親水性樹脂の中でも、ポリエチレンオキシドが、親水性が非常に高いことから、好ましい。また、例えば、インク受容性を持たせるための新水性樹脂としては、上記した一般式(1)で表されるポリアルキレンオキシド系樹脂を用いることもできる。
【0089】
ホットメルト接着性を有する樹脂としては、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリアミド、ポリエステル、ロジン系ポリマー、ピネン系ポリマーおよびこれらの混合物、誘導体、共重合体や変性体等を用いることができる。また、ホットメルト接着性を有する樹脂としては、上記において例示した樹脂に対して、シランカップリング機能を付与したものや酸変性を行ったもの等を使用することもできる。これらの樹脂を用いた場合は、基材層30との接着強度、およびディスプレー材料にするときにおける別素材との接着強度をより高く維持することができる。
【0090】
親水性樹脂のインク吸収性を向上させるため多孔質の無機微粒子を添加することができるが、ここでいう無機微粒子としては、シリカやアルミナなどを用いることができる。また、空孔を制御したナノポーラスシリカやメソポーラスシリカ等の吸収能力の非常に高い無機微粒子を使用することもできる。
【0091】
インク受容層50において、疎水性成分であるホットメルト接着性を有する樹脂(以下、「疎水性成分」ということがある。)と、親水性成分であるインク受容性を持たせるための親水性樹脂(以下、「親水性成分」ということがある。)を混合する場合においては、疎水性成分であるホットメルト接着性を有する樹脂を海、親水性成分であるインク受容性を持たせるための親水性樹脂を島とする、海島構造とすることが好ましい。これは、高湿度下等においてインク受容層50が吸湿し、親水性樹脂の凝集力が低下した時に、親水性樹脂がインク受容層50の組成の大部分すなわち海の構造をとっている場合においては、凝集力の低下すなわち基材層30および別素材70との接着力の低下が発現するからである。これに対して、疎水性成分が海の構造をとっている場合においては、インク受容層50が吸湿した際においても、その疎水性成分での接着力にて基材層30および別素材70との接着力を保持することができる。
【0092】
上記のような好ましい構造である海島構造とするために、親水性成分と疎水性成分の比率は、60:40〜30:70(親水性成分:疎水性成分)、好ましくは、50:50〜45:65(親水性成分:疎水性成分)とすることが望ましい。親水性成分が多すぎると、親水性部分が多くなり吸湿時の凝集力低下が発現する。一方、疎水性成分が多すぎると、インク受容層50のインク吸収性が低下する。
【0093】
親水性成分と疎水性成分との構造的結合性を高めるために、架橋構造を構築することが有効である。架橋には電子線、紫外線、ガンマ線などの放射線などで架橋を施す方法等の他、以下の方法を挙げることができる。
【0094】
親水性成分と疎水性成分とのインタラクションを持たせるための架橋を施す方法としては、例えば、水素引き抜きタイプ光ラジカル重合開始剤を添加して製膜した後、紫外線光を適宜照射することにより架橋を行う等の方法を挙げることができる。ここで、水素引き抜きタイプ光ラジカル重合開始剤とは、他の分子から水素を引き抜く形でラジカルを生成する光重合開始剤であり、本発明で用いることができる代表的な水素引き抜きタイプ光ラジカル重合開始剤としては、ベンゾフェノン、あるいは、ベンジル、o−ベンゾイル安息香酸メチル、2,4,6−トリメチルベンゾフェノン、4−メチルベンゾフェノン、アクリル化ベンゾフェノン、チオキサンソン、3−ケトクマリン、2−エチルアンスラキノン、カンファーキノン、ミヒラーケトン、テトラ(t−ブチルパーオキシカルカルボニル)ベンゾフェノン等のベンゾフェノン誘導体の中から選ばれる1種または2種以上の混合物を用いることができる。上記で例示した水素引き抜きタイプ光ラジカル重合開始剤の中でも、透明性、硬化性の点でベンゾフェノンを用いることが好ましい。
【0095】
また、水素引き抜きタイプ光ラジカル重合開始剤は、解裂タイプ光重合開始剤と混合して用いることもできる。
【0096】
水素引き抜きタイプ光ラジカル重合開始剤の含有量は、インク受容層50の厚みや、紫外線照射条件に合わせて選択されるが、親水性成分および疎水性成分の全体を基準(100質量%)として、0.01〜10質量%の範囲であることが好ましく、厚膜硬化性、透明性、経時安定性を考慮すると、0.05〜2.0質量%であることがより好ましい。水素引き抜きタイプ光ラジカル重合開始剤の含有量が少なすぎると架橋が進行し難く、また、水素引き抜きタイプ光ラジカル重合開始剤の含有量が多すぎると、未反応の水素引き抜きタイプラジカル重合開始剤が多量に存在し、経時反応により吸水性に影響が出る。
【0097】
また、上記したインク受容層50を構成する成分としては、吸水性の調整のためにさらに、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、アクリル等を添加することができる。
【0098】
本発明のインクジェット記録材料においては、基材層30および仮基材層10の厚み比は、「1:1.5」〜「1:10」とすることが好ましい。
【0099】
また、本発明のインクジェット記録材料において基材層30は、70μm以下であることが好ましく、60μm以下であることがより好ましい。また、強度の点から1μm以上であることが好ましく、3μm以上であることがより好ましい。
【0100】
(耐熱性支持層60)
図2(b)に層構成の模式図を示したように、本発明のインクジェット記録材料200Aのインク受容層50における基材層30が積層された面と反対の面には、必要に応じて、耐熱支持層60を設けた構成200Bとすることができる。耐熱性支持層60は、耐熱性の低いインク受容層50を保護するための層である。耐熱性支持層60は、インクジェット記録材料200Bを共押出して成形後、冷却した後に剥離してもよいし、後に説明するように、インクジェット記録材料200Bを別素材70にホットメルト接着してディスプレー材料を製造する前に剥離してもよい。耐熱性支持層60を構成する樹脂としては、積層フィルム100Bにおいて記載したものと同様のものを使用することができる。
【0101】
(インクジェット記録材料200の製造方法)
本発明のインクジェット記録材料200A、200Bは、上記の積層フィルム100A、100Bと同様の方法で製造することができる。インクジェット記録材料200Aは、インク受容層50、基材層30、粘着層20および仮基材層10を四台の押出機を使用して、共押出性成形することにより製造することができる。また、インクジェット記録材料200Bは、耐熱性支持層60、インク受容層50、基材層30、粘着層20および仮基材層10を五台の押出機を使用して、共押出性成形することにより製造することができる。
【0102】
<ディスプレー材料300>
図3に層構成の模式図を示したように、本発明のディスプレー材料300は、上記したインクジェット記録材料200A、および、このインクジェット記録材料200Aにおけるインク受容層50側がホットメルト接着した別素材70を有する。つまり、本発明のディスプレー材料300は、別素材70上に、インク受容層50、基材層30、粘着層20、および仮基材層10がこの順に積層された構造を有する。
【0103】
本発明のディスプレー材料300は、ホットメルト接着性を有するインク受容層50を別素材70にホットメルト接着することによって、単純な工程で製造することができる。また、ディスプレー材料300の使用時においては、仮基材層10が剥離され、基材層30が表層を形成し、インク受容層50の保護フィルムとしての役割を有する。よって、基材層30が存在することで、ディスプレー材料300の印字画像面に耐久性を付与することができる。また、基材層30の厚さ薄く成形した場合においては、印字画像の視認性をより良好なものとすることができる。
【0104】
(別素材70)
別素材70としては、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ABS等の樹脂からなるシート、プレート、発泡成形体等を用いることができる。
【0105】
(ディスプレー材料300の製造方法)
本発明のディスプレー材料300は、インクジェット記録材料200Aのインク受容層50における基材層30が積層された面とは反対の面に画像、文字等を印刷して、この印刷した面側を、別素材70にホットメルト接着することによって製造することができる。また、耐熱性支持層60を設けたインクジェット記録材料200Bの場合は、この耐熱性支持層60を剥離してから、上記と同様にしてホットメルト接着して、ディスプレー材料300とすることができる。
【実施例】
【0106】
以下実施例および比較例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
<積層フィルム>
実施例1
3種3層マルチマニホールドダイにて共押出成形を行い、以下の層構成を有する積層フィルムを得た。
仮基材層(ポリプロピレン樹脂(日本ポリプロ社製、FY6HA)70質量部とタルク(日本タルク社製マイクロエースK−1)30質量部との混合物)100μm、
粘着層(ポリプロピレン樹脂(日本ポリプロ社製、FY6HA)50質量部と軟質ポリプロピレン樹脂(住友化学社製、T3712)50質量部との混合物)10μm、
基材層(PETG6763、イーストマンケミカル社製)10μm。
【0107】
実施例2
実施例1において、仮基材層の厚みを200μmにした以外は、実施例1と同様にして、積層フィルムを得た。
【0108】
実施例3
実施例1において、粘着層として、T3712(住友化学社製)を用い、基材層としてポリカーボネート(三菱エンジニアリングプラスチック社製、ノバレックス7020AD2)を用いた以外は、実施例1と同様にして積層フィルムを得た。
【0109】
実施例4
実施例1において、粘着層として、T3712(住友化学社製)を用い、仮基材層としてポリプロピレン(日本ポリプロ社製、FY6HA)に結晶核剤(荒川化学工業社製パインクリスタルKM−1500)を仮基材層の全質量に対し5質量%の割合で添加したものを用いた以外は、実施例1と同様にして、積層フィルムを得た。
【0110】
実施例5
実施例1において、粘着層として、ボンドファースト(住友化学社製)を用いた以外は、実施例1と同様にして、積層フィルムを得た。
【0111】
実施例6
実施例1において、粘着層として、モディック(三菱化学社製)を用いた以外は、実施例1と同様にして、積層フィルムを得た。
【0112】
参考例1
実施例1において、仮基材層としてポリプロピレン樹脂(日本ポリプロ社製、FY6HA)を用いて、タルクを添加しなかった以外は、実施例1と同様にして、積層フィルムを得た。
【0113】
参考例2
実施例1において、粘着層として(三菱エンジニアリングプラスチック社製、FH3315)を用いた以外は、実施例1と同様にして、積層フィルムを得た。
【0114】
参考例3
仮基材層として、ポリプロピレン(日本ポリプロ社製、FY6HA)70質量部とタルク(日本タルク社製マイクロエースK−1)30質量部との混合物を用いて、100μmの単層フィルムを成形した。この仮基材層に粘着剤としてタケラック(三井武田ケミカル社製)を塗布し、基材層である二軸延伸PETフィルム(東レ社製、ルミラーU94、厚さ12.5μm)を貼り付けて、積層フィルムを得た。
【0115】
比較例1
PETG6763(イーストマンケミカル社製)を用いて、単層成形により10μmのフィルムを得た。
【0116】
比較例2
二軸延伸PETフィルム(東レ社製、ルミラーU94、厚さ12.5μm)をそのまま使用した。
【0117】
上記の実施例、参考例および比較例にて得られたフィルムに対して、以下の評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0118】
(二次加工性)
各積層フィルムの基材層側(一部の単層フィルムの表面)に接着剤(三井武田ケミカル社製、デュミラン D251S)を、グラビアコーターにて60m/分のライン速度で、1.5g/m(乾燥時)の塗布量にて塗布・乾燥して、フィルムを巻き取った。この巻き取ったフィルムを巻き出して、ホットラミネータを用いて、二軸延伸PETフィルム(帝人デュポンフィルム社製、メリネックス 705#100)と、60℃で、5m/分でラミネートした。
そして、このラミネートの際の適性について以下の基準により評価した。
○:ラミネートの際に、ムラ、シワがまったく生じず、かつ、積層フィルムが層間剥離を生じない場合。
×:ラミネートの際に、ムラ、シワが一部において生じた場合、または、積層フィルムが層間剥離を生じた場合。
【0119】
(フィルムの製造のしやすさ)
各フィルムを製造する際におけるフィルムキャスティング時の引取安定性、およびフィルムを巻物とする際のシワ入りや折れ等、ならびに、フィルムを製造する際における作業性および製造コストを以下の基準により評価した。
○:フィルム作製の際に、シワや折れが生じず、製造コストが低く、作業性が良い。
×:フィルム作製の際に、シワや折れが生じ、または、製造コストが高く、作業性が悪い。
【0120】
(取扱性)
各フィルムを1×1.5mに切り出し、10m間隔で配されたテーブル間を行き来させたときにおける取扱性を以下の基準により評価した。
○:持ち運びに際して、フィルムに折れ、シワが生じなかった。
×:持ち運びに際して、フィルムに折れ、シワが生じた。
【0121】
(経時保管性)
各フィルムを巻物として、40℃で、30日間保管した際に、フラット性が維持できているかどうかを以下の基準により評価した。また、経時保管性と同条件に保管した際に、フィルムの巻き取り方向に沿って10cm間隔の標線が何%収縮したかを測定した経時収縮率を、括弧内に併せて示した。
○:仮基材層の経時収縮率が0.1%以下であり、フラット性が維持できていた。
×:仮基材層の経時収縮率が0.1%より大きく、フレアが生じてフラット性が維持できなかった。
【0122】
(粘着性)
NTカッターA300の新しい刃先を用いて、フィルムの巻き取り方向と直角な方向に、切込みをいれた際において、以下の基準により評価した。
○:切断面にまったく層剥離が見られず、指先で5回揉んでも層剥離が見られなかった。
△:切断しただけでは剥離が見られないが、指先で5回揉むと層剥離がわずかでも生じた。
×:切断するだけで層剥離がわずかでも生じた。
【0123】
(粘着層の貯蔵弾性率G´)
粘着層について、23℃、周波数1Hzで貯蔵弾性率を測定した。
【0124】
【表1】

【0125】
本発明の積層フィルム(実施例1〜6)は、すべての評価項目において良好な結果を示した。これに対して、参考例1のフィルムは、仮基材層に結晶核剤が含まれていないので、仮基材層が経時的に収縮してしまい、経時保管性が劣ったものとなった。また、参考例2のフィルムは、粘着層の弾性率が本発明の好ましい範囲を外れたものであるので、粘着性が劣っており、二次加工性が劣っていた。参考例3のフィルムは、仮基材層を単層フィルムとして得てから、接着剤を介して基材と接着しているので、フィルムの製造のしやすさが劣っていた。比較例1のフィルムは、PETの薄膜フィルムを単層成形したもので、二次加工性、フィルムの製造のしやすさ、および取扱性が劣っていた。比較例2のフィルムは、市販のPETの薄膜フィルムであり、二次加工性、取扱性が劣っていた。
【0126】
<インクジェット記録材料>
実施例7
4種4層マルチマニホールドダイにて共押出成形を行い、以下の層構成を有するインクジェット記録材料を得た。
仮基材層(ポリプロピレン樹脂(日本ポリプロ社製、FY6HA)70質量部とタルク(日本タルク社製マイクロエースK−1)30質量部との混合物)100μm、
粘着層(ポリプロピレン樹脂(日本ポリプロ社製、FY6HA)50質量部とT3712(住友化学社製)50質量部との混合物)10μm、
基材層(PETG6763、イーストマンケミカル社製)12μm、
インク受容層(樹脂A)20μm。
【0127】
上記のインク受容層を構成する「樹脂A」とは、エチレングリコールにエチレンオキシドを付加重合した後、ブチレンオキシドを付加重合し、さらにエチレンオキシドを付加重合して得たポリアルキレンオキシドに、オクタデカン−1,18−ジカルボン酸メチルを加え、エステル交換反応を行って得られた、重量平均分子量15万の樹脂である(以下、同様。)。
【0128】
実施例8
実施例7において、基材層として、ポリカーボネート(三菱エンジニアリングプラスチック社製、ノバレックス7020AD2)を用いた以外は、実施例7と同様にして、インクジェット記録材料を得た。
【0129】
参考例4
基材層として二軸延伸PETフィルム(三菱化学ポリエステルフィルム社製、T600、厚さ12μm)を用いて、この基材層の片面に、樹脂Aを押出ラミネートして厚さ20μmのインク受容層を形成した。仮基材層として、ポリプロピレン樹脂(日本ポリプロ社製、FY6HA)70質量部とタルク(日本タルク社製マイクロエースK−1)30質量部との混合物を単層成形して、厚さ100μmのフィルムを作製し、これに粘着剤(デュミランD251S、三井武田ケミカル社製)を塗布した。そして、基材層におけるインク受容層を形成した面とは反対の面に仮基材層を粘着剤を介して張り付けてインクジェット記録材料を得た。
【0130】
参考例5
実施例7において、仮基材層として、(三菱エンジニアリングプラスチック社製、FH3315)を用い、タルクを添加しなかった以外は、実施例7と同様にして、インクジェット記録材料を得た。
【0131】
比較例3
基材層として二軸延伸PETフィルム(三菱化学ポリエステルフィルム社製、T600、厚さ12μm)を用いて、この基材層の片面に、樹脂Aを押出ラミネートして厚さ20μmのインク受容層を形成し、インクジェット記録材料を得た。
【0132】
比較例4
2種2層マルチマニホールドダイにて共押出成形を行い、以下の層構成を有するインクジェット記録材料を得た。
基材層(PETG6763、イーストマンケミカル社製)12μm、
インク受容層(樹脂A)20μm。
【0133】
比較例5
基材層として二軸延伸PETフィルム(三菱化学ポリエステルフィルム社製、T600、厚さ12μm)を用いて、この基材層の片面に、ポリビニルアルコール(日本合成化学工業社製ゴーセファイマーZ200)とシリカ(水澤化学工業社製ミズカシルP78A)の混合物(質量比1:2(PVA:シリカ))を水に分散溶解した分散溶液(固形分が10.5質量%となるように濃度調整したもの)をコンマコーターにて塗布して厚さ20μmのインク受容層を形成し、インクジェット記録材料を得た。
【0134】
上記の実施例、参考例および比較例で得られたインクジェット記録材料に対して、以下の評価を行った。評価結果を表2に示す。
【0135】
(印字適性)
各インクジェット記録材料にHP社製インクジェットプリンター「デザインジェット5500」で印字を行い、印字した文字の精細性、プリンターでの搬送性を以下の基準により評価した。
○:文字が鮮明に視認でき、かつ、問題なくプリンターで搬送される。
×:文字の少なくとも一部分が不鮮明となり、また、プリンター内での搬送の際に問題が生じる。
【0136】
「フィルムの製造のしやすさ」、「取扱性」、および「経時保管性」についての評価方法は、上記の積層フィルムにおける場合と同様である。
【0137】
【表2】

【0138】
本発明のインクジェット記録材料(実施例7および実施例8)は、すべての評価項目において良好な結果を示した。これに対して、参考例4のインクジェット記録材料は、インク受容層を押出成形により形成し、仮基材層を粘着剤により貼り付けているので、製造工程が増え、製造コストが高く、作業性が劣っていた。また、参考例5のインクジェット記録材料は、仮基材層に結晶核剤を添加していないので、仮基材層が経時収縮し、経時保管性が劣っていた。
また、比較例3、4および5のインクジェット記録材料は、仮基材層を有していないので、取扱性が劣っていた。また、比較例5のインクジェット記録材料は、インク受容層をシリカ含有PVAの水分散液のコーティングにより形成しているので、インク受容層の形成に多数回のコートが必要であり、フィルム製造の際の作業性が悪かった。また、印字適性が劣っていた。この理由としては、インク受容層の単位体積当りのインクの吸収能力が低く、十分な発色が得られないため、および、プリンター内での搬送時にインクが擦れて視認性が悪化するため、であると考えられる。
以上、現時点において、もっとも、実践的であり、かつ、好ましいと思われる実施形態に関連して本発明を説明したが、本発明は、本願明細書中に開示された実施形態に限定されるものではなく、請求の範囲および明細書全体から読み取れる発明の要旨或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う積層フィルム、インクジェット記録材料、ディスプレー材料の製造方法、および、ディスプレー材料もまた本発明の技術的範囲に包含されるものとして理解されなければならない。
【図面の簡単な説明】
【0139】
【図1】本発明の積層フィルムの層構成を示す模式図である。
【図2】本発明のインクジェット記録材料の層構成を示す模式図である。
【図3】本発明のディスプレー材料の層構成を示す模式図である。
【符号の説明】
【0140】
10 仮基材層
20 粘着層
30 基材層
40 保護層
50 インク受容層
60 耐熱層
70 別素材
100A、100B 積層フィルム
200A、200B インクジェット記録材料
300 ディスプレー材料

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材層、この基材層の上に積層された粘着層、この粘着層の上に積層された仮基材層を有する積層フィルムであって、この粘着層の測定温度23℃、周波数1Hzで測定した貯蔵弾性率G’が1.0×10Pa以下である積層フィルム。
【請求項2】
基材層、この基材層の上に積層された粘着層、この粘着層の上に積層された仮基材層を有する積層フィルムであって、この仮基材層の経時収縮率が30日間で0.1%以下である積層フィルム。
【請求項3】
基材層、この基材層の上に積層された粘着層、この粘着層の上に積層された仮基材層を有する積層フィルムであって、この粘着層の測定温度23℃、周波数1Hzで測定した貯蔵弾性率G’が1.0×10Pa以下であり、この仮基材層の経時収縮率が30日間で0.1%以下である積層フィルム。
【請求項4】
前記基材層における前記粘着層が積層された面とは反対の面に、保護層が積層されている請求項1〜3のいずれかに記載の積層フィルム。
【請求項5】
前記基材層が、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネート(PC)、ポリ塩化ビニル(PVC)、アクリロニトリルブタジエンスチレン共重合体(ABS)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリスチレン(PS)、ポリプロピレン(PP)からなる群から選ばれる1種以上の樹脂からなる層である請求項1〜4のいずれかに記載の積層フィルム。
【請求項6】
前記仮基材層がポリプロピレン(PP)を主体とする層である、請求項1〜5のいずれかに記載の積層フィルム。
【請求項7】
前記仮基材層が結晶核剤を含有している層である、請求項1〜6のいずれかに記載の積層フィルム。
【請求項8】
各層が共押出により積層されている、請求項1〜7のいずれかに記載の積層フィルム。
【請求項9】
前記基材層および前記仮基材層の厚み比が、「1:8」〜「1:50」である、請求項1〜8のいずれかに記載の積層フィルム。
【請求項10】
前記基材層における前記粘着層が積層された面とは反対の面に、インク受容層が積層されており、前記基材層および前記仮基材層の厚み比が、「1:1.5」〜「1:10」である、請求項1〜8のいずれかに記載の積層フィルムからなるインクジェット記録材料。
【請求項11】
前記インク受容層が、無機微粒子を含有している層である、請求項10に記載のインクジェット記録材料。
【請求項12】
前記インク受容層の融点が、60℃以下である、請求項10または11に記載のインクジェット記録材料。
【請求項13】
前記インク受容層が、下記一般式(1)で表されるポリアルキレンオキシド系樹脂を主成分とする層である、請求項10〜12のいずれかに記載のインクジェット記録材料。
【化1】

[一般式(1)において、Xは活性水素基を2個有する有機化合物の残基であり、Rはジカルボン酸類化合物残基またはジイソシアネート系化合物残基であり、Aは下記一般式(2)によって表される。]
【化2】

[一般式(2)において、Zは炭素数2以上の炭化水素基であり、a、b、cはそれぞれ1以上の整数であり、a、b、cより計算される質量比、{44×(a+c)/(炭素数4以上のアルキレンオキシドの分子量)×b}は、80/20〜94/6である。また、c/(a+c)は0.5以上1.0未満である。]
【請求項14】
前記インク受容層における、前記基材層を積層した面とは反対の面に、耐熱性支持層が積層されている、請求項10〜13のいずれかに記載のインクジェット記録材料。
【請求項15】
各層が共押出により積層されている、請求項10〜14のいずれかに記載のインクジェット用記録材料。
【請求項16】
前記基材層における前記粘着層を形成した面のJIS B 0601:1994に基づく十点平均粗さ(Rz)が、0.5μm以上3.0μm以下である、請求項10〜15のいずれかに記載のインクジェット記録材料。
【請求項17】
請求項10〜13、15、16のいずれかに記載のインクジェット記録材料の前記インク受容層に画像を記録する工程、
画像を記録した前記インク受容層側を、別素材にホットメルト接着する工程、
を有するディスプレー材料の製造方法。
【請求項18】
請求項10〜13、15、16のいずれかに記載のインクジェット記録材料、および、このインクジェット記録材料における前記インク受容層側がホットメルト接着した別素材を有する、ディスプレー材料。
【請求項19】
前記インク受容層および前記別素材の溶解性パラメーター(SP値)の差が、4以内である、請求項18に記載のディスプレー材料。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−87421(P2008−87421A)
【公開日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−273205(P2006−273205)
【出願日】平成18年10月4日(2006.10.4)
【出願人】(000006172)三菱樹脂株式会社 (1,977)
【Fターム(参考)】