積層フィルムのカール矯正方法及び装置、並びに積層フィルムの製造方法
【課題】オレシワの発生を防止しつつ、積層フィルムを製造する。
【解決手段】紫外線硬化性材料を含む液を支持フィルムに塗布する。液からなる膜を支持フィルムの表面に形成する。膜に紫外線を照射する。紫外線の照射により、膜を有する支持フィルムは、支持層11とハードコート層12とを有する積層フィルム10となる。得られた積層フィルム10は、ハードコート層12が内側となるようにカールしている。カール状態の積層フィルム10を予熱ケーシング56、蒸気接触ケーシング57へと順次導入する。蒸気接触ケーシング57において、蒸気送出機72は、スリット76から蒸気71を積層フィルム10にあてる。搬送ローラ27とスリット76との間隔CL1は、100mm以上となっている。
【解決手段】紫外線硬化性材料を含む液を支持フィルムに塗布する。液からなる膜を支持フィルムの表面に形成する。膜に紫外線を照射する。紫外線の照射により、膜を有する支持フィルムは、支持層11とハードコート層12とを有する積層フィルム10となる。得られた積層フィルム10は、ハードコート層12が内側となるようにカールしている。カール状態の積層フィルム10を予熱ケーシング56、蒸気接触ケーシング57へと順次導入する。蒸気接触ケーシング57において、蒸気送出機72は、スリット76から蒸気71を積層フィルム10にあてる。搬送ローラ27とスリット76との間隔CL1は、100mm以上となっている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層フィルムのカール矯正方法及び装置、並びに積層フィルムの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
セルロースアシレートフィルムなどのポリマーフィルムは、その優れた透明性、柔軟性などの特長を有する。このようなポリマーフィルムの用途は、窓ガラスに貼り付けるための窓貼り用フィルム、タッチパネル用フィルム、ITO基盤用フィルム、メンブレンスイッチ用フィルム、三次元加飾用フィルム、フラットパネルディスプレイ用の光学機能性フィルム等、多岐にわたる。
【0003】
上述したような用途のうち、ポリマーフィルムの表面を手、布、タッチペン等で接触するケース、又は、ポリマーフィルムの表面を手、布、タッチペン等で擦るケースが想定される。かかる場合には、ポリマーフィルムの表面に傷がつくことを防ぐために、ポリマーフィルムよりも硬質なハードコート層をポリマーフィルムの表面に設ける。
【0004】
このハードコート層を表面に有するポリマーフィルム(以下、積層フィルムと称する)の製造方法の一例を説明する。まず、ポリマーフィルムの表面に、紫外線や電子線などの照射により硬化する材料を含む膜を形成する(膜形成工程と称する)。次に、膜を乾燥させる(乾燥工程と称する)。第3に、膜に紫外線や電子線等を照射する(照射工程と称する)。この紫外線や電子線等の照射により、この膜はハードコート層となる。こうして、積層フィルムを製造することができる。
【0005】
ところで、膜がハードコート層となる過程における重合反応により、積層フィルムは、ハードコート層が内側を向くようにカールしてしまう。積層フィルムのカール現象は、ハードコート層を有する積層フィルムに限られず、一般的な積層フィルムでも見られるものである。積層フィルムのカールを矯正するために、積層フィルムに水または有機溶剤の蒸気を吹き付ける方法(蒸気接触工程と称する)が知られている(例えば、特許文献1)。
【0006】
また、積層フィルムを大量生産する場合には、搬送ロールを用いて帯状の支持フィルムを搬送し、支持フィルムの搬送路に、膜形成工程を行う膜形成部、乾燥工程を行う乾燥部、及び照射工程を行う照射部を搬送方向上流側から順次設ける。そして、得られた積層フィルムにカールが発生している場合には、カールを矯正するための蒸気接触工程を行う蒸気接触部を、照射部よりも搬送方向下流側に設ける。これにより、膜形成工程、乾燥工程、照射工程、及び蒸気接触工程を連続して行うことができるため、カールが抑えられた積層フィルムの大量生産が可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−195051号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところが、図11及び図12に示すように、ハードコート層201a及び支持層201bを有する積層フィルム201を製造する過程において、蒸気接触工程を行う蒸気接触部への導入前や導入後における積層フィルム201に、オレシワ205が発生してしまう場合がある。オレシワ205は、積層フィルム201の表面から突出し、積層フィルム201の搬送方向Aに向かって伸びるように形成される。このようなオレシワ205は、高さHが1mm程度となる場合もある。このようなオレシワ205が発生した部分は、製品として用いることができない。
【0009】
本発明は、上記課題を解決するためのものであり、積層フィルムのカール矯正方法及び装置、並びに積層フィルムの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明である積層フィルムのカール矯正方法は、片方の表面に露呈する第1層と、他方の表面に露呈する第2層とを有し、前記片方の表面が内側になるようにカールする帯状の積層フィルムを長手方向に搬送し、この搬送状態の積層フィルムの前記他方の表面に前記蒸気をあてて、ガラス状態の前記第2層をゴム状態にする第1相転移を起こした後、ゴム状態の前記第2層をガラス状態にする第2相転移を起こし、前記第1相転移又は前記第2相転移の際、前記第2層が固体物と接触しないように前記積層フィルムの搬送を行うことを特徴とする。
【0011】
また、本発明の積層フィルムのカール矯正方法は、片方の表面に露呈する第1層と、他方の表面に露呈する第2層とを有し、前記片方の表面が内側になるようにカールする帯状の積層フィルムを長手方向に搬送し、この搬送状態の積層フィルムの前記他方の表面に前記蒸気をあてて、ガラス状態の前記第2層をゴム状態にする第1相転移を起こした後、ゴム状態の前記第2層をガラス状態にする第2相転移を起こし、前記第2層のうちゴム状態の部分が固体物と接触しないように前記積層フィルムの搬送を行うことを特徴とする。
【0012】
また、前記第1相転移又は前記第2相転移の際、前記第2層が前記固体物と接触しないように前記積層フィルムの搬送を行ってもよい。例えば、前記積層フィルムの下方から浮上風をあてながら、前記積層フィルムの搬送を行ってもよいし、前記積層フィルムの幅方向両側縁部を把持した把持部材の前記長手方向への移動により、前記積層フィルムの搬送を行ってもよい。また、前記積層フィルムの長手方向に並べられ、前記他方の面を支持する複数の搬送ローラを用いて、前記積層フィルムの搬送を行ない、前記積層フィルムのうち、隣り合った前記搬送ローラの間に位置する部分のみに、前記蒸気をあて、前記蒸気があたる領域と前記搬送ローラとの間隔は100mm以上であることが好ましい。
【0013】
前記積層フィルムのうち前記搬送ローラとの接触部分における湿度を、前記蒸気が供給された前記他方の表面における湿度よりも低い状態を維持する低湿度維持工程を行うことが好ましい。
【0014】
また、本発明である積層フィルムのカール矯正方法は、片方の表面に露呈する第1層と、他方の表面に露呈する第2層とを有し、前記片方の表面が内側になるようにカールする帯状の積層フィルムを長手方向に搬送し、前記積層フィルムの長手方向に並べられ、前記他方の面を支持する複数の搬送ローラを用いて、前記積層フィルムの搬送を行ない、この搬送状態の積層フィルムの前記他方の表面のうち、隣り合った前記搬送ローラの間に位置する部分に前記蒸気をあてて、ガラス状態の前記第2層をゴム状態にする第1相転移を起こした後、ゴム状態の前記第2層をガラス状態にする第2相転移を起こし、前記積層フィルムのうち前記搬送ローラとの接触部分における湿度を、前記蒸気が供給された前記他方の表面における湿度よりも低い状態を維持する低湿度維持工程を行うことを特徴とする。
【0015】
前記低湿度維持工程では前記接触部分へ向かう蒸気を吸引することが好ましい。また、前記低湿度維持工程では前記接触部分へ向かう蒸気を遮断することが好ましい。更に、前記低湿度維持工程では、前記接触部分に乾燥空気を供給することが好ましい。
【0016】
前記積層フィルムを下方から上方に向かって搬送することが好ましい。また、前記蒸気の接触の前に、前記第2層の温度がこの第2層をなす物質のガラス転移温度を超えることなく、このガラス転移温度に近づくように、積層フィルムを予熱することが好ましい。更に、前記第1層は紫外線硬化性材料又は電子線硬化材料から生成した重合体を含み、前記第2層はセルロースアシレートフィルムを含むことが好ましい。加えて、前記蒸気には水蒸気が含まれることが好ましい。
【0017】
また、本発明の積層フィルムの製造方法は、上記の積層フィルムのカール矯正方法を用いて、前記積層フィルムを製造することを特徴とする。
【0018】
本発明の積層フィルムのカール矯正装置は、片方の表面に露呈する第1層と、他方の表面に露呈する第2層とを有し、前記片方の表面が内側になるようにカールする帯状の積層フィルムを長手方向に搬送する搬送手段と、この搬送状態の積層フィルムの前記他方の表面に前記蒸気をあてて、ガラス状態の前記第2層をゴム状態にする第1相転移を起こした後、ゴム状態の前記第2層をガラス状態にする第2相転移を起こす蒸気供給手段とを有し、前記搬送手段は、前記第1相転移又は前記第2相転移の際、前記第2層が固体物と接触しないように、前記積層フィルムの搬送を行うことを特徴とする。
【0019】
本発明の積層フィルムのカール矯正装置は、片方の表面に露呈する第1層と、他方の表面に露呈する第2層とを有し、前記片方の表面が内側になるようにカールする帯状の積層フィルムを長手方向に搬送する搬送手段と、この搬送状態の積層フィルムの前記他方の表面に前記蒸気をあてて、ガラス状態の前記第2層をゴム状態にする第1相転移を起こした後、ゴム状態の前記第2層をガラス状態にする第2相転移を起こす蒸気供給手段とを有し、前記搬送手段は、前記第2層のうちゴム状態の部分が固体物と接触しないように前記積層フィルムの搬送を行うことを特徴とする。
【0020】
また、前記搬送手段は、前記第1相転移又は前記第2相転移の際、前記第2層が前記固体物と接触しないように前記積層フィルムの搬送を行うことが好ましい。前記搬送手段は、例えば、前記積層フィルムを浮上させるために、前記積層フィルムの下方から前記積層フィルムに向けて風を送る浮上搬送部を備えていてもよいし、前記積層フィルムの幅方向両側縁部を把持する把持機構と、前記幅方向両側縁部を把持した把持機構を前記積層フィルムの長手方向へ移動させる移動機構とを備えていてもよい。また、前記搬送手段は、前記蒸気接触手段よりも前記搬送方向上流側または下流側に設けられる搬送ローラを備え、前記蒸気接触手段に設けられ、前記蒸気が送り出されるスリット及び前記搬送手段の間隔が100mm以上であってもよい。
【0021】
前記積層フィルムのうち前記搬送ローラとの接触部分における湿度を、前記蒸気が供給された前記他方の表面における湿度よりも低い状態を維持する低湿度維持手段を有することが好ましい。
【0022】
また、本発明の積層フィルムのカール矯正装置は、片方の表面に露呈する第1層と、他方の表面に露呈する第2層とを有し、前記片方の表面が内側になるようにカールする帯状の積層フィルムを長手方向に搬送する搬送手段と、この搬送状態の積層フィルムの前記他方の表面に前記蒸気をあてて、ガラス状態の前記第2層をゴム状態にする第1相転移を起こした後、ゴム状態の前記第2層をガラス状態にする第2相転移を起こす蒸気供給手段とを有し、前記搬送手段は、前記蒸気接触手段よりも前記搬送方向上流側または下流側に設けられる搬送ローラを備え、前記積層フィルムのうち前記搬送ローラとの接触部分における湿度を、前記蒸気が供給された前記他方の表面における湿度よりも低い状態を維持する低湿度維持手段を有することを特徴とする。
【0023】
前記低湿度維持手段は、前記接触部分へ向かう蒸気を吸引する蒸気吸引部を備えることが好ましい。また、前記低湿度維持手段は、前記接触部分へ向かう蒸気を遮断する蒸気遮断部を備えることが好ましい。更に、前記低湿度維持手段は、前記接触部分に乾燥空気を供給する乾燥空気供給部を備えることが好ましい。
【0024】
前記積層フィルムが下方から上方に向かって搬送されることが好ましい。また、前記蒸気には水蒸気が含まれることが好ましい。
【発明の効果】
【0025】
所定の蒸気接触工程や、蒸気接触工程を経た積層フィルムの冷却により、積層フィルムのカールの矯正が可能となる。ところが、カールが矯正される過程において、変形(膨張や収縮等)状態の積層フィルムが搬送ローラ等の固体物と接触すると、オレシワが発生してしまう。本発明によれば、積層フィルムの搬送において、積層フィルムのうち変形する部分を非接触状態とするため、オレシワ発生を抑えることが可能となる。また、本発明によれば、積層フィルムのうち搬送ローラなどの固体物との接触部分における湿度を、積層フィルムのうち蒸気が供給された部分における湿度よりも低くするため、オレシワ発生を抑えることが可能となる。したがって、本発明によれば、カール及びオレシワが抑制された積層フィルムを製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】積層フィルムの概要を示す側面図である。
【図2】積層フィルム製造設備の概要を示す説明図である。
【図3】第1の蒸気接触部を有する第1のカール矯正装置の概要を示す説明図である。
【図4】第1の蒸気接触部を有する第2のカール矯正装置の概要を示す説明図である。
【図5】第2の蒸気接触部の概要を示す説明図である。
【図6】第3の蒸気接触部の概要を示す説明図である。
【図7】第4の蒸気接触部の概要を示す説明図である。
【図8】ターンバーの概要を示す斜視図である。
【図9】低湿度維持ケーシングを有する第5の蒸気接触部の概要を示す説明図である。
【図10】冷却ケーシングを有する第3のカール矯正装置の概要を示す説明図である。
【図11】オレシワが発生した積層フィルムの平面図である。
【図12】オレシワが発生した積層フィルムの側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
積層フィルム10は、図1に示すように、支持層11と、支持層11よりも硬いハードコート層12とを有する。積層フィルム10の厚さdは、特に限定されないが、5μm以上120μm以下であることが好ましく、40μm以上100μm以下であることがより好ましい。また、支持層11の厚さdsとハードコート層12の厚さdhとの比dh/dsは、例えば、0.04以上0.50以下であることが好ましく、0.10以上0.40以下であることがより好ましい。
【0028】
積層フィルム10は、図2に示す積層フィルム製造設備20にて製造される。積層フィルム製造設備20は、ロール状の支持フィルム(以下、支持フィルムロールと称する)21から支持フィルム22を送り出す送り出し部23と、支持フィルム22から積層フィルム10をつくる搬送路24と、搬送路24から送り出された積層フィルム10を巻き芯にロール状に巻き取る巻き取り部25とを有する。搬送路24には、送り出し部23から巻き取り部25に向かって複数の搬送ローラ27が並べられる。
【0029】
(支持フィルム)
支持フィルム22の形成材料は、特に限定されないが、ポリマーであることが好ましい。そして、ポリマーのうち、セルロースアシレートであることがより好ましい。なお、セルロースアシレートの詳細は後述する。
【0030】
搬送路24には、支持フィルム22に膜28を形成する膜形成装置31と、膜28を乾燥する乾燥装置32と、膜28に所定の紫外線を照射する照射装置33と、紫外線照射によりつくられた積層フィルム10のカールを矯正するカール矯正装置34とが、送り出し部23から巻き取り部25に向って順次設けられる。なお、カール矯正装置34と巻き取り部25との間に、積層フィルム10を乾燥する乾燥装置38を設けてもよい。
【0031】
膜形成装置31は、塗布液を流出するダイ40を有する。ダイ40は、支持フィルム22の表面に塗布液を塗布する。塗布液の塗布により、支持フィルム22の表面には、塗布液からなる膜28が形成される。塗布液は、紫外線硬化性材料を適当な溶剤に溶解若しくはコロイド状分散して作製される。この際、紫外線硬化性材料の濃度は、用途に応じて適宜選択されるが、一般的には、10質量%以上95質量%以下であることが好ましい。
【0032】
(紫外線硬化性材料)
紫外線硬化性材料としては、例えば、電離放射線硬化性の多官能モノマーや多官能オリゴマーを用いることが好ましい。電離放射線硬化性の多官能モノマーや多官能オリゴマーの官能基としては、光、電子線、放射線重合性のものが好ましく、中でも光重合性官能基が好ましい。光重合性官能基としては、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、スチリル基、アリル基等の不飽和の重合性官能基等が挙げられ、中でも、(メタ)アクリロイル基が好ましい。
【0033】
(溶剤)
溶剤としては、支持フィルム22をなす物質を溶解させない化合物であることが好ましい。また、積層フィルム10における支持層11とハードコート層12との密着性を向上させるために、支持フィルム22をなす物質を膨潤させる化合物であることが好ましい。更に、溶剤としては、紫外線硬化性材料が沈殿を生じることなく、均一に溶解又は分散されるものであれば特に制限はなく、2種類以上の溶剤を併用することもできる。
【0034】
溶剤の好ましい例としては、分散媒体としては、アルコール類、ケトン類、エステル類、アミド類、エーテル類、エーテルエステル類、炭化水素類、ハロゲン化炭化水素類等が挙げられる。具体的には、アルコール(例えばメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ベンジルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、エチレングリコールモノアセテート等)、ケトン(例えばメチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン等)、エステル(例えば酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、蟻酸エチル、蟻酸プロピル、蟻酸ブチル、乳酸エチル等)、脂肪族炭化水素(例えばヘキサン、シクロヘキサン、ハロゲン化炭化水素(例えばメチレンクロライド、メチルクロロホルム等)、芳香族炭化水素(例えばトルエン、キシレン等)、アミド(例えばジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、n−メチルピロリドン等)、エーテル(例えばジオキサン、テトラハイドロフラン、エチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル等)、エーテルアルコール(例えば1−メトキシ−2−プロパノール、エチルセルソルブ、メチルカルビノール等)、フルオロアルコール類(例えば、特開平8−143709号公報段落番号[0020]、同11−60807号公報段落番号[0037]等に記載の化合物) が挙げられる。
【0035】
これらの溶剤は、それぞれ単独で又は2 種以上を混合して使用することができる。好ましい溶剤としては、トルエン、キシレン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、メタノール、イソプロパノール、ブタノールが挙げられる。また、ケトン溶剤(例えばメチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等)を主にした塗布溶剤系も好ましく用いられ、ケトン系溶剤の含有量が硬化性組成物に含まれる全溶剤の10質量%以上であることが好ましい。より好ましくは30質量%以上である。
【0036】
乾燥装置32は、膜28に乾燥風43をあてる乾燥風供給機44を有する。照射装置33は、膜28に紫外線を照射する紫外線照射機46を有する。紫外線照射機46は、紫外線を発生する光源を有する。紫外線を発生する光源として、例えば、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、カーボンアーク灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ等を用いることが出来る。
【0037】
カール矯正装置34は、積層フィルム10のカールを矯正する。カール矯正装置34の詳細は後述する。乾燥装置38は、積層フィルム10に乾燥風43をあてる乾燥風供給機48を有する。乾燥風43との接触により、積層フィルム10に含まれる水や溶剤等が蒸発する。
【0038】
(カール矯正装置)
カール矯正装置34は、図3に示すように、予熱ケーシング56と、蒸気接触ケーシング57とを有する。搬送ローラ27により形成される搬送路24は、支持フィルム22の搬送方向上流側から順次設けられる予熱ケーシング56及び蒸気接触ケーシング57を貫通する。
【0039】
予熱ケーシング56内には、予熱風61を送り出す予熱風送出機62が設けられる。予熱風送出機62は、搬送路24の片側に配される。予熱ケーシング56内を搬送される積層フィルム10の支持層11と対向するように予熱風送出機62を配することが好ましい。なお、予熱風送出機62が支持層11及びハードコート層12と対向するように、搬送路24の両側に予熱風送出機62を配してもよい。
【0040】
予熱風61による積層フィルム10の加熱は、支持層11をなす物質の温度Tfが、支持層11をなす物質のガラス転移温度Tg0を超えることなく、ガラス転移温度Tg0に近づくように行うことが好ましい。(Tg−Tf)の値は、30℃以上80℃以下であることが好ましい。ここで、ガラス転移温度Tg0とは、照射工程後であって蒸気接触工程前における、支持層11のガラス転移温度を指す。
【0041】
複数の搬送ローラ27により、蒸気接触ケーシング57内の搬送路24は下方から上方に向かうように形成される。隣り合う搬送ローラ27の間には、スリット70から蒸気71を送り出す蒸気送出機72が設けられる。なお、隣り合う搬送ローラ27の間において、積層フィルム10近傍の蒸気71を散らすための乾燥空気74をスリット73から送り出す乾燥空気送出機75や、蒸気71などをスリット76から吸い込む吸気機77等を設けても良い。また、隣り合う搬送ローラ27の間において、各種センサを有するセンサユニット79とが設けられる。蒸気送出機72と、乾燥空気送出機75と、吸気機77と、センサユニット79とは、蒸気接触ケーシング57内を搬送される積層フィルム10の支持層11と対向するように、搬送路24に沿って配される。
【0042】
なお、蒸気送出機72と、乾燥空気送出機75と、吸気機77と、センサユニット79とは、搬送路24の両側に設けてもよい。また、乾燥空気送出機75、吸気機77のうちいずれか一方、または両方を省略してもよい。
【0043】
複数の蒸気送出機72は、搬送路24に沿って並ぶ。乾燥空気送出機75は、蒸気送出機72よりも搬送方向上流側、及び蒸気送出機72よりも搬送方向下流側にそれぞれ設けられる。なお、乾燥空気送出機75を蒸気送出機72よりも搬送方向下流側のみに設けてもよい。
【0044】
吸気機77は、蒸気送出機72及び乾燥空気送出機75の間に設けられる。センサユニット79は、吸気機77よりも搬送方向上流側、及び蒸気送出機72よりも搬送方向下流側にそれぞれ設けられる。
【0045】
なお、蒸気接触ケーシング57の上流側もしくは下流側の少なくとも一方に、又は、両側に、蒸気71の構成する物質を吸着する吸着機を設けてもよい。
【0046】
センサユニット79は、積層フィルム10の温度を検知する温度センサと、積層フィルム10のカールの大きさを検知するカール量センサとを有する。温度センサとして、例えば、赤外線式温度センサなどを用いることができる。カール量センサとして、例えば、レーザ変位計などを用いることができる。
【0047】
蒸気接触ケーシング57内に設けられる搬送ローラ27は、積層フィルム10のうち変形状態の部分と接触しない位置に設けられる。より具体的には、スリット70と搬送ローラ27との間隔CL1は、100mm以上2500mm以下であることが好ましく、150mm以上1000mm以下であることがより好ましい。
【0048】
なお、オレシワ発生の防止や積層フィルム10における結露防止のために、蒸気接触ケーシング57内に設けられる搬送ローラ27の温度を調節するローラ温度調節装置を設けてもよい。ローラ温度調節装置は、搬送ローラ27に設けられ、伝熱媒体(水やオイル等)の流通可能なジャケットと、伝熱媒体の温度を調節する温度調節機と、ジャケット及び温度調節部の間で伝熱媒体を循環させる循環機とを備えることが好ましい。温度調節機は、搬送路24を通過する積層フィルム10の温度との差が小さくなるように、伝熱媒体の温度を調節することが好ましい。こうして、搬送ローラ27の温度を積層フィルム10の温度よりも高くする、または搬送ローラ27の温度を積層フィルム10の温度よりも低くすることができる。なお、搬送ローラ27として、コイルを内蔵するものを用い、ローラ温度調節装置として、電磁誘導を利用して、当該コイルを内蔵する搬送ローラ27を加熱するものを用いても良い。
【0049】
制御部81は、センサユニット79から読み取った積層フィルム10の温度やカール量に基づいて、予熱風61、乾燥空気74、及び蒸気71についての各条件(温度、湿度及び風量など)を適宜調節する。これにより、カールを矯正することが可能となる。
【0050】
(蒸気)
蒸気71は、支持フィルム22を軟化させ得る物質の蒸気であり、より詳しくは、支持フィルム22を構成する物質のガラス転移温度Tgを低下させ得るものの蒸気である。当該物質としては、塩化メチレン、水、有機溶剤、水及び有機溶剤の混合物、または二以上の有機溶剤の混合物のいずれでもよい。有機溶剤としては、ジクロロメタン、酢酸メチル、アセトンなどがあげられる。
【0051】
蒸気71は、飽和蒸気及び過熱蒸気のいずれであってもよい。蒸気の沸点をBPとするときに、蒸気71の温度は、例えば、(BP−30)℃以上(BP+30)℃以下であることが好ましく、BP℃以上(BP+20)℃以下であることがより好ましい。また、蒸気71の温度は、蒸気71との接触により低下した支持層11をなす物質のガラス転移温度よりもAだけ高いことが好ましい。ここで、Aは60℃以下である。Aが60℃を超えてしまうと、ガラス状態の支持層11をゴム状態にさせるために十分な量の水分を支持層11内に保持することが困難となる結果、ガラス状態からゴム状態への相転移が困難になるためである。また、蒸気71の絶対湿度AHv及び蒸気71をあてる際の積層フィルム10の温度における飽和絶対湿度AHfの比(=AHv/AHf)の値は0.8以上4.4以下であることが好ましく、2.5以上4.0以下であることがより好ましい。
【0052】
本発明の作用について説明する。積層フィルム製造設備20では、図2に示すように、送り出し部23は、支持フィルム22を搬送路24へ送り出す。支持フィルム22は、搬送路24の通過により積層フィルム10となって、巻き取り部25へ送られる。巻き取り部25は、積層フィルム10を巻き芯に巻き取る。
【0053】
次に、搬送路24における詳細を説明する。膜形成装置31は、支持フィルム22の表面に膜28を形成する。乾燥装置32は膜28に乾燥風43をあてて、膜28から溶剤を蒸発させる。照射装置33は、膜28に紫外線を照射する。紫外線の照射により、紫外線硬化性材料の重合が行われる。紫外線硬化性材料の重合により、膜28はハードコート層12(図1参照)となる。こうして、支持フィルム22からなる支持層11(図1参照)と、ハードコート層12(図1参照)とを有する積層フィルム10が製造される。
【0054】
ここで、紫外線硬化性材料の重合に起因して体積が減少する結果、積層フィルム10には第1の内部応力が発生する。そして、第1の内部応力の発生により、ハードコート層12が内側を向くようにカール(以下、第1のカールと称する)してしまう。積層フィルム10に生じた第1のカールを矯正するため、蒸気送出機72は、制御部81の制御の下、カール状態の積層フィルム10の支持層11へ蒸気71をあてる。蒸気71との接触により、支持層11の含水率が上昇する結果、支持層11はガラス状態からゴム状態となる。その後、支持層11の含水率が低下すると、支持層11はゴム状態からガラス状態となる。このように、ゴム状態からガラス状態へ変化する際、支持層11の収縮が起こる。支持層11の収縮の結果、支持層11に第2の内部応力が発生する。第2の内部応力は、第1のカールを相殺し得る第2のカールを発生させる。したがって、蒸気71との接触により、第1のカールを矯正することができる。
【0055】
ところが、蒸気との接触によって支持層11ではガラス状態からゴム状態への相転移が起こり、この相転移により支持層11の膨張が起こる。そして、支持層11の膨張が、搬送ローラ27と接触している部分で起こると、積層フィルム10にオレシワが発生してしまう。
【0056】
また、支持層11の温度よりも高い温度(例えば、20〜30℃高い)の搬送ローラ27を用いて積層フィルム10を搬送した場合、支持層11のうち搬送ローラ27と接触した部分は膨張する。この結果、蒸気と接触した支持層11のうち搬送ローラ27と接触する部分にはオレシワが発生してしまう。
【0057】
本発明では、ゴム状態の支持層11または膨張している状態の支持層11と非接触になるような位置に搬送ローラ27を設けたため、積層フィルム10のオレシワを抑えつつ、積層フィルム10のカールを矯正することが可能となる。
【0058】
オレシワの発生プロセスは、以下の通り推測される。
【0059】
(オレシワの発生プロセスその1)
支持層11のうち搬送ローラ27と接触している部分は、搬送ローラ27の周面との摩擦力により巾方向への膨張することが困難である。このため、当該部分にて膨張が起こると当該部分は厚み方向へ膨張する結果、積層フィルム10が搬送ローラ27の周面に対して起立するように折れ曲がってしまう。こうして、図12に示すようなオレシワが積層フィルム10に発生してしまう。
【0060】
(オレシワの発生プロセスその2)
搬送ローラとの接触に起因する支持層11の膨張により、積層フィルム10のうち搬送ローラよりも搬送方向上流側の部分、及び搬送方向下流側の部分とでは、幅が異なる。この幅の差に起因して、内部応力が発生する結果、積層フィルム10にオレシワが発生してしまう。
【0061】
支持層11の一部においてガラス状態からゴム状態への相転移が起こると、相転移に起因する支持層11の膨張が起こる。支持層11が、支持層11よりも高温の搬送ローラ27と接触すると、支持層11の熱膨張が起こる。支持層11の膨張は、上述した2つのプロセスのうちいずれか一方または両方を経て、積層フィルム10でのオレシワを誘発する。
【0062】
更に、ゴム状態の支持層11のヤング率は、ガラス状態の場合のものに比べて小さい。このため、ゴム状態の支持層11は、外力や内部応力に対する形状維持が困難な状態となる。この結果、支持層11がゴム状態の場合には、相転移に起因する膨張や、支持層11の熱膨張により、積層フィルム10にオレシワが発生しやすくなる。
【0063】
オレシワは、物性の異なる支持層11及びハードコート層12が存在する積層フィルム10において発生しやすい。例えば、支持層11の熱膨張率がハードコート層12よりも大きい場合には、積層フィルム10にオレシワが発生しやすい。
【0064】
また、本発明では、積層フィルム10を蒸気接触ケーシング57に導入する前に、積層フィルム10を予熱ケーシング56に導入する。図3に示すように、制御部81の制御の下、予熱風送出機62は、予熱ケーシング56に導入された積層フィルム10に予熱風61をあてる。予熱風61との接触により、積層フィルム10の温度が飽和絶対湿度AHfの比(=AHv/AHf)が所定の範囲内となるように調節される。これにより、カールの矯正を確実にすることができる。
【0065】
蒸気接触ケーシング57内において、下方から上方に向かう搬送路24を形成したため、膨張している状態の支持層11を非接触のまま、積層フィルム10を搬送することが容易となる。また、複数の蒸気送出機72のうちいくつかの蒸気送出機72について、蒸気71の送り出しを停止することで、支持層11へ蒸気71をあてる工程に要する時間調節を行うことができる。係る場合において、下方から上方に向かう搬送路24を形成したため、搬送路24に沿って並べられた蒸気送出機72のうち、下流側の蒸気送出機72では蒸気71の送り出しを行い、上流側の蒸気送出機72では蒸気71の送り出しを止めることにより、支持層11へ蒸気71をあてる工程に要する時間調節が容易となる。
【0066】
更に、本発明では、蒸気送出機72の搬送方向上流側や搬送方向下流側に乾燥空気送出機75や吸気機77を配したため、蒸気との接触により膨張する部分を狭い範囲にすることができる結果、膨張する部分と搬送ローラ27との接触を回避することができる。
【0067】
上記実施形態では、蒸気接触ケーシング57内に設けられる搬送ローラ27により、下方から上方に向かう搬送路24を形成したが、本発明はこれに限られない。図4に示すように、カール矯正装置34は、予熱ケーシング56と、蒸気接触ケーシング57とを有し、蒸気接触ケーシング57内の搬送路24は、水平に設けられる。
【0068】
上記実施形態では、積層フィルム10の搬送手段として、複数の搬送ローラ27を用いたが、本発明はこれに限られず、図5に示すクリップテンタ111を用いてもよい。
【0069】
クリップテンタ111は、クリップ113、レール114,115、及びチェーン116、117を備えている。レール114,115は搬送路24の両側に設置され、それぞれのレール114,115は所定のレール間隔で離間するように配される。レール114、115よりも上流側には原動スプロケット118が設けられ、レール114、115よりも下流側には従動スプロケット119が設けられる。
【0070】
チェーン116、117は、原動スプロケット118及び従動スプロケット119の間に掛け渡され、レール114,115に沿って移動自在に取り付けられている。クリップ113は、チェーン116、117に所定の間隔で複数取り付けられている。なお、図の煩雑化を避けるため、図5にはクリップ113の一部のみを示す。各スプロケット118,119の回転により、クリップ113はレール114,115に沿って移動する。
【0071】
レール114,115の上流端近傍には、把持開始位置PAが設けられる。また、レール114,115の下流端近傍には、把持解除位置PBが設けられる。把持開始手段122により、把持開始位置PAを通過したクリップ113は、積層フィルム10の幅方向両端部(以下、耳部と称する)を把持する。また、把持解除手段123により、把持解除位置PBを通過したクリップ113は、積層フィルム10の耳部の把持を解除する。把持開始位置PAから把持解除位置PBまでの間において、レール114、115の間隔W1は一定である。
【0072】
こうして、クリップ113が把持開始位置PA及び把持解除位置PBを通過することにより、積層フィルム10は、クリップ113により耳部のみを把持された状態で搬送される。このようなクリップテンタ111において、積層フィルム10のうち、1対の耳部の間に位置する製品部にのみ蒸気71をあてる蒸気送出機126をレール114,115の間に設ける。これにより、積層フィルム10の支持層11に蒸気を接触させつつ、積層フィルム10のうち膨張する部分を非接触の状態で、積層フィルム10の搬送が可能となる。
【0073】
なお、クリップテンタ111を用いる場合、搬送路24を下方から上方に向かうように設けてもよいし、水平方向に設けてもよい。
【0074】
積層フィルム10の搬送手段として、図6に示すように、搬送路24の下方に浮上搬送機131を設けてもよい。浮上搬送機131は、蒸気71を浮上風として、搬送路24に向けて送り出す。なお、浮上風を搬送路24に向けて送り出す浮上搬送機131と別に、蒸気送出機72を設けてもよい。蒸気送出機72は、搬送路24の下方または上方のいずれか一方に設けてもよいし、両方に設けてもよい。これにより、積層フィルム10の支持層11に蒸気を接触させつつ、積層フィルム10のうち膨張する部分を非接触の状態で、積層フィルム10の搬送が可能となる。
【0075】
また、図7及び図8に示すように、蒸気71を浮上風として送り出すターンバー141を複数用いてもよい。ターンバー141は、蒸気71を浮上風として送り出す開口142を有する。一のターンバー141は開口142が下方へ向くように配され、他のターンバー141は、一のターンバー141よりも上方に設けられ、開口142が上方へ向くように配される。これにより、積層フィルム10の浮上搬送と、積層フィルム10の下方から上方への搬送とが可能となる。なお、ターンバー141を3つ以上設ける場合も、これと同様にして、ターンバー141を千鳥状に設ければよい。
【0076】
上記実施例では、積層フィルム10を支持して搬送する搬送ローラ27を用いたが、本発明はこれに限られず、積層フィルム10を挟持するニップローラを用いてもよい。これにより、積層フィルム10のうち膨張する部分を非接触の状態で、積層フィルム10の搬送が可能となる。
【0077】
図3及び図4の蒸気接触ケーシング57では、スリット70から所定量CL1だけ離れた位置に搬送ローラ27を設けたが、本発明はこれに限られず、図9に示すように、入口150a及び出口150bを有する低湿度ケーシング150を用いて、搬送ローラ27を囲んでも良い。これにより、積層フィルム10のうち搬送ローラ27と接触する部分に蒸気71が到達しにくくなるため、当該接触する部分の近傍を低湿度(例えば、50%RH以下)に維持することができる。このように、低湿度ケーシング150を設けることにより、オレシワの発生条件の1つである、当該接触する部分の近傍が高湿度となることを回避することができる。
【0078】
なお、蒸気送出機72の上流側及び下流側に配された搬送ローラ27の両方について、低湿度ケーシング150を設けたが、本発明はこれに限られず、いずれか一方について低湿度ケーシング150を設けてもよい。
【0079】
また、積層フィルム10のうち搬送ローラ27と接触する部分に乾燥気体(例えば、10%RH以下)74を供給する乾燥気体供給部155を設けても良い。乾燥気体供給部155を設ける位置は、蒸気送出機72と搬送ローラ27との間であればよい。
【0080】
また、積層フィルム10のうち搬送ローラ27と接触する部分に向かう蒸気71を吸引するために、吸気機77を設けても良い。吸気機77を設ける位置は、蒸気送出機72と搬送ローラ27との間であればよい。
【0081】
なお、乾燥気体供給部155や吸気機77を設ける場合には、低湿度ケーシング150を省略しても良い。
【0082】
上記実施形態では、予熱ケーシング56及び蒸気接触ケーシング57を有するカール矯正装置34を用いたが、本発明はこれに限られず、図10に示すように、予熱ケーシング56及び蒸気接触ケーシング57に加え、冷却ケーシング160を有するカール矯正装置34を用いても良い。
【0083】
冷却ケーシング160は、蒸気接触ケーシング57の下流側に設けられる。冷却ケーシング160は、蒸気送出機72に代えて、スリット161から冷気162を送り出す冷気送出機163を用いたこと以外は、図4に示す蒸気接触ケーシング57と略同様の構造を有する。
【0084】
冷却ケーシング160では、積層フィルム10を所定の冷却速度で冷却する冷却工程が行われる。冷却工程によれば、支持層11がより大きく収縮する結果、より大きな第2の内部応力が発生する。したがって、冷却工程により、カールの矯正能力を向上させることができる。なお、蒸気接触工程及び冷却工程は連続して行うことが好ましい。
【0085】
ところが、冷却工程において積層フィルム10にオレシワが発生する場合がある。オレシワの発生プロセスは、以下のとおり推測される。支持層11の温度よりも低い温度(例えば、20〜30℃低い)の搬送ローラ27を用いて積層フィルム10を搬送した場合、搬送ローラ27と接触した支持層11では収縮が起こる。搬送ローラ27との接触に起因する支持層11の収縮により、積層フィルム10のうち搬送ローラよりも搬送方向上流側の部分、及び搬送方向下流側の部分とでは、幅が異なる。この幅の差に起因して、内部応力が発生する結果、図12に示すようなオレシワが積層フィルム10に発生してしまう。また、支持層11の一部において、ゴム状態からガラス状態への相転移が起こると、相転移に起因する支持層11の収縮が起こる。そして、収縮している状態の支持層11が搬送ローラ27と接触すると、同様にして、図12に示すようなオレシワが積層フィルム10に発生してしまう。
【0086】
更に、支持層11がゴム状態の場合には、相転移に起因する収縮や、支持層11の熱収縮により、積層フィルム10にオレシワが発生しやすくなる。
【0087】
本発明では、ゴム状態の支持層11または収縮している状態の支持層11と非接触になるような位置に搬送ローラ27を設けたため、積層フィルム10のオレシワを抑えつつ、積層フィルム10のカールを矯正することが可能となる。
【0088】
上記実施形態では、冷却工程を行う冷却ケーシングとして、図4に示す蒸気接触ケーシング57と同様の構造を有するものを用いたが、本発明はこれに限られず、図3、図5〜図7、図9のうちいずれか1つに示す蒸気接触ケーシング57と同様の構造を有するものを用いても良い。
【0089】
なお、蒸気接触ケーシング57において、支持層11の温度がガラス転移温度Tgよりも高い状態(ゴム状態)の場合には、搬送ロール27と支持層11との温度差は8℃未満とすることが好ましい。そして、蒸気接触ケーシング57において、支持層11の温度がガラス転移温度Tgよりも低い状態(ガラス状態)の場合には、搬送ロール27と支持層11との温度差は30℃未満とすることが好ましい。これにより、オレシワの発生をより確実に防止することができる。
【0090】
カール矯正装置34での各ケーシング内において、支持層11のうちゴム状態の部分は、非接触の状態で搬送することが好ましい。支持層11がゴム状態である積層フィルム10を搬送する場合には、積層フィルム10に冷却風をあて、ゴム状態の支持層11がガラス状態になるまで積層フィルムを冷却することが好ましい。積層フィルム10のうちガラス状態の部分は、搬送ローラ27などを用いて搬送することができる。
【0091】
支持層11がゴム状態となっている時間を短くするために、除湿工程を行ってもよい。除湿工程は、湿度が調節された調湿風を支持層11にあて、支持層11に含まれる水分子を支持層11の外部へ放出させるものである。除湿工程は、冷却ケーシング150で行っても良いし、蒸気接触ケーシング57及び冷却ケーシング150の間で行っても良い。また、蒸気接触ケーシング57からの蒸気が冷却ケーシング150内へ入ることを防ぐために、蒸気の流入を防ぐ遮り部材を冷却ケーシング150の入口に設けても良い。
【0092】
蒸気接触工程の前後に行われる各工程において、積層フィルム10の温度が、積層フィルム10の雰囲気の露点よりも高くなるように、積層フィルム10の温度、または積層フィルム10の雰囲気の露点を調節する結露防止工程を行うことが好ましい。この結露防止工程において、前述した除湿工程を行っても良い。
【0093】
上記実施形態では、紫外線硬化性材料と溶剤とを含む塗布液を用いたが、本発明はこれに限られず、紫外線硬化性材料と溶剤とを含む塗布液の代わりに、電子線硬化性材料と溶剤とを含む塗布液を用いてもよい。この場合には、紫外線の照射に代えて、電子線の照射を行えばよい。
【0094】
(セルロースアシレート)
セルロースアシレートとしては、トリアセチルセルロース(TAC)が特に好ましい。そして、セルロースアシレートの中でも、セルロースの水酸基をカルボン酸でエステル化している割合、すなわち、アシル基の置換度が下記式(I)〜(III)の全てを満足するものがより好ましい。なお、以下の式(I)〜(III)において、A及びBは、アシル基の置換度を表わし、Aはアセチル基の置換度、またBは炭素原子数3〜22のアシル基の置換度である。なお、TACの90重量%以上が0.1mm〜4mmの粒子であることが好ましい。
(I) 2.5≦A+B≦3.0
(II) 0≦A≦3.0
(III) 0≦B≦2.9
【0095】
セルロースを構成するβ−1,4結合しているグルコース単位は、2位,3位及び6位に遊離の水酸基を有している。セルロースアシレートは、これらの水酸基の一部または全部を炭素数2以上のアシル基によりエステル化した重合体(ポリマー)である。アシル置換度は、2位,3位及び6位それぞれについて、セルロースの水酸基がエステル化している割合(100%のエステル化は置換度1である)を意味する。
【0096】
全アシル化置換度、即ち、DS2+DS3+DS6は2.00〜3.00が好ましく、より好ましくは2.22〜2.90であり、特に好ましくは2.40〜2.88である。また、DS6/(DS2+DS3+DS6)は0.28以上が好ましく、より好ましくは0.30以上、特に好ましくは0.31〜0.34である。ここで、DS2はグルコース単位の2位の水酸基のアシル基による置換度(以下、「2位のアシル置換度」とも言う)であり、DS3は3位の水酸基のアシル基による置換度(以下、「3位のアシル置換度」とも言う)であり、DS6は6位の水酸基のアシル基による置換度(以下、「6位のアシル置換度」とも言う)である。
【0097】
本発明のセルロースアシレートに用いられるアシル基は1種類だけでも良いし、あるいは2種類以上のアシル基が使用されていても良い。2種類以上のアシル基を用いるときは、その1つがアセチル基であることが好ましい。2位,3位及び6位の水酸基による置換度の総和をDSAとし、2位,3位及び6位の水酸基のアセチル基以外のアシル基による置換度の総和をDSBとすると、DSA+DSBの値は、より好ましくは2.22〜2.90であり、特に好ましくは2.40〜2.88である。また、DSBは0.30以上であり、特に好ましくは0.7以上である。さらにDSBはその20%以上が6位水酸基の置換基であるが、より好ましくは25%以上が6位水酸基の置換基であり、30%以上がさらに好ましく、特には33%以上が6位水酸基の置換基であることが好ましい。また更に、セルロースアシレートの6位の置換度が0.75以上であり、さらには0.80以上であり特には0.85以上であるセルロースアシレートも挙げることができる。これらのセルロースアシレートにより溶解性の好ましい溶液(ドープ)が作製できる。特に非塩素系有機溶剤において、良好な溶液の作製が可能となる。さらに粘度が低く、濾過性の良い溶液の作製が可能となる。
【0098】
セルロースアシレートの原料であるセルロースは、リンター,パルプのどちらから得られたものでも良い。
【0099】
本発明のセルロースアシレートの炭素数2以上のアシル基としては、脂肪族基でもアリール基でも良く特に限定されない。それらは、例えばセルロースのアルキルカルボニルエステル、アルケニルカルボニルエステルあるいは芳香族カルボニルエステル、芳香族アルキルカルボニルエステルなどであり、それぞれさらに置換された基を有していても良い。これらの好ましい例としては、プロピオニル、ブタノイル、ペンタノイル、ヘキサノイル、オクタノイル、デカノイル、ドデカノイル、トリデカノイル、テトラデカノイル、ヘキサデカノイル、オクタデカノイル、iso−ブタノイル、t−ブタノイル、シクロヘキサンカルボニル、オレオイル、ベンゾイル、ナフチルカルボニル、シンナモイル基などを挙げることができる。これらの中でも、プロピオニル、ブタノイル、ドデカノイル、オクタデカノイル、t−ブタノイル、オレオイル、ベンゾイル、ナフチルカルボニル、シンナモイルなどがより好ましく、特に好ましくはプロピオニル、ブタノイルである。
【実施例】
【0100】
(実験1)
図2に示す積層フィルム製造設備20において、平らな支持フィルムを膜形成装置31、乾燥装置32及び照射装置33へと順次導入し、支持フィルムからなる支持層(厚さ80μm)とハードコート層(厚さ9μm)とを有する積層フィルム10を得た。照射装置33から送り出された積層フィルム10は、ハードコート層が内側になるようにカールしていた。積層フィルム10のカールの曲率は、20.9m−1であった。積層フィルム10のカールの曲率の算出方法は後述する。
【0101】
予熱風送出機62は、風速10m/s、温度110℃の予熱風61を積層フィルム10に、6秒間あてて、予熱ケーシング56における積層フィルム10の表面の温度を80℃に維持した。
【0102】
蒸気送出機72は、風速5m/s、温度110℃、絶対湿度575g/m3の蒸気71を積層フィルム10に、2秒間あてた。吸気機77の吸気量Vinは、0Nm3/分であった。乾燥空気送出機75による乾燥空気74の風速v1は0m/sであった。スリット70と搬送ローラ27との間隔CL1は90mmであった。
【0103】
積層フィルム10のカールの曲率の算出方法は以下の通りである。まず、照射装置33から送り出された積層フィルム10から長手方向の長さが5mmのスリット状のフィルムを切り出す。次に、積層フィルム10の幅方向へ150mm間隔でスリット状のフィルムを切断し、複数の測定フィルム(縦の長さ5mm、横の長さ150mm)を得る。そして、平らな台の上に、ハードコート層が下側を向くように測定フィルムを配する。このとき、測定フィルムは、横から見たときに、上方に向かって凸となる様に円弧状に湾曲している。横方向における測定フィルムの両端を結ぶ線分の長さLと、台から測定フィルムのうち最も高い位置までの高さHとを測定する。そして、長さLと高さHとから、積層フィルムの幅方向における測定フィルム10のカールの曲率Cを算出する。
【0104】
(実験2〜9)
吸気量Vin、間隔CL1、乾燥空気74の風速v1を表1に示した値にしたこと以外は、実験1と同様にして、積層フィルム10を製造した。
【0105】
【表1】
【0106】
(オレシワの評価)
実験1〜9により得られた積層フィルム10にオレシワが発生したか否かについて、目視観察を行い、以下基準に基づいて判定した。
○:オレシワが確認できなかった。
×:オレシワが確認できた。
【符号の説明】
【0107】
10 積層フィルム
11 支持層
12 ハードコート層
24 搬送路
27 搬送ローラ
34 カール矯正装置
57 蒸気接触ケーシング
71 蒸気
72 蒸気送出機
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層フィルムのカール矯正方法及び装置、並びに積層フィルムの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
セルロースアシレートフィルムなどのポリマーフィルムは、その優れた透明性、柔軟性などの特長を有する。このようなポリマーフィルムの用途は、窓ガラスに貼り付けるための窓貼り用フィルム、タッチパネル用フィルム、ITO基盤用フィルム、メンブレンスイッチ用フィルム、三次元加飾用フィルム、フラットパネルディスプレイ用の光学機能性フィルム等、多岐にわたる。
【0003】
上述したような用途のうち、ポリマーフィルムの表面を手、布、タッチペン等で接触するケース、又は、ポリマーフィルムの表面を手、布、タッチペン等で擦るケースが想定される。かかる場合には、ポリマーフィルムの表面に傷がつくことを防ぐために、ポリマーフィルムよりも硬質なハードコート層をポリマーフィルムの表面に設ける。
【0004】
このハードコート層を表面に有するポリマーフィルム(以下、積層フィルムと称する)の製造方法の一例を説明する。まず、ポリマーフィルムの表面に、紫外線や電子線などの照射により硬化する材料を含む膜を形成する(膜形成工程と称する)。次に、膜を乾燥させる(乾燥工程と称する)。第3に、膜に紫外線や電子線等を照射する(照射工程と称する)。この紫外線や電子線等の照射により、この膜はハードコート層となる。こうして、積層フィルムを製造することができる。
【0005】
ところで、膜がハードコート層となる過程における重合反応により、積層フィルムは、ハードコート層が内側を向くようにカールしてしまう。積層フィルムのカール現象は、ハードコート層を有する積層フィルムに限られず、一般的な積層フィルムでも見られるものである。積層フィルムのカールを矯正するために、積層フィルムに水または有機溶剤の蒸気を吹き付ける方法(蒸気接触工程と称する)が知られている(例えば、特許文献1)。
【0006】
また、積層フィルムを大量生産する場合には、搬送ロールを用いて帯状の支持フィルムを搬送し、支持フィルムの搬送路に、膜形成工程を行う膜形成部、乾燥工程を行う乾燥部、及び照射工程を行う照射部を搬送方向上流側から順次設ける。そして、得られた積層フィルムにカールが発生している場合には、カールを矯正するための蒸気接触工程を行う蒸気接触部を、照射部よりも搬送方向下流側に設ける。これにより、膜形成工程、乾燥工程、照射工程、及び蒸気接触工程を連続して行うことができるため、カールが抑えられた積層フィルムの大量生産が可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−195051号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところが、図11及び図12に示すように、ハードコート層201a及び支持層201bを有する積層フィルム201を製造する過程において、蒸気接触工程を行う蒸気接触部への導入前や導入後における積層フィルム201に、オレシワ205が発生してしまう場合がある。オレシワ205は、積層フィルム201の表面から突出し、積層フィルム201の搬送方向Aに向かって伸びるように形成される。このようなオレシワ205は、高さHが1mm程度となる場合もある。このようなオレシワ205が発生した部分は、製品として用いることができない。
【0009】
本発明は、上記課題を解決するためのものであり、積層フィルムのカール矯正方法及び装置、並びに積層フィルムの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明である積層フィルムのカール矯正方法は、片方の表面に露呈する第1層と、他方の表面に露呈する第2層とを有し、前記片方の表面が内側になるようにカールする帯状の積層フィルムを長手方向に搬送し、この搬送状態の積層フィルムの前記他方の表面に前記蒸気をあてて、ガラス状態の前記第2層をゴム状態にする第1相転移を起こした後、ゴム状態の前記第2層をガラス状態にする第2相転移を起こし、前記第1相転移又は前記第2相転移の際、前記第2層が固体物と接触しないように前記積層フィルムの搬送を行うことを特徴とする。
【0011】
また、本発明の積層フィルムのカール矯正方法は、片方の表面に露呈する第1層と、他方の表面に露呈する第2層とを有し、前記片方の表面が内側になるようにカールする帯状の積層フィルムを長手方向に搬送し、この搬送状態の積層フィルムの前記他方の表面に前記蒸気をあてて、ガラス状態の前記第2層をゴム状態にする第1相転移を起こした後、ゴム状態の前記第2層をガラス状態にする第2相転移を起こし、前記第2層のうちゴム状態の部分が固体物と接触しないように前記積層フィルムの搬送を行うことを特徴とする。
【0012】
また、前記第1相転移又は前記第2相転移の際、前記第2層が前記固体物と接触しないように前記積層フィルムの搬送を行ってもよい。例えば、前記積層フィルムの下方から浮上風をあてながら、前記積層フィルムの搬送を行ってもよいし、前記積層フィルムの幅方向両側縁部を把持した把持部材の前記長手方向への移動により、前記積層フィルムの搬送を行ってもよい。また、前記積層フィルムの長手方向に並べられ、前記他方の面を支持する複数の搬送ローラを用いて、前記積層フィルムの搬送を行ない、前記積層フィルムのうち、隣り合った前記搬送ローラの間に位置する部分のみに、前記蒸気をあて、前記蒸気があたる領域と前記搬送ローラとの間隔は100mm以上であることが好ましい。
【0013】
前記積層フィルムのうち前記搬送ローラとの接触部分における湿度を、前記蒸気が供給された前記他方の表面における湿度よりも低い状態を維持する低湿度維持工程を行うことが好ましい。
【0014】
また、本発明である積層フィルムのカール矯正方法は、片方の表面に露呈する第1層と、他方の表面に露呈する第2層とを有し、前記片方の表面が内側になるようにカールする帯状の積層フィルムを長手方向に搬送し、前記積層フィルムの長手方向に並べられ、前記他方の面を支持する複数の搬送ローラを用いて、前記積層フィルムの搬送を行ない、この搬送状態の積層フィルムの前記他方の表面のうち、隣り合った前記搬送ローラの間に位置する部分に前記蒸気をあてて、ガラス状態の前記第2層をゴム状態にする第1相転移を起こした後、ゴム状態の前記第2層をガラス状態にする第2相転移を起こし、前記積層フィルムのうち前記搬送ローラとの接触部分における湿度を、前記蒸気が供給された前記他方の表面における湿度よりも低い状態を維持する低湿度維持工程を行うことを特徴とする。
【0015】
前記低湿度維持工程では前記接触部分へ向かう蒸気を吸引することが好ましい。また、前記低湿度維持工程では前記接触部分へ向かう蒸気を遮断することが好ましい。更に、前記低湿度維持工程では、前記接触部分に乾燥空気を供給することが好ましい。
【0016】
前記積層フィルムを下方から上方に向かって搬送することが好ましい。また、前記蒸気の接触の前に、前記第2層の温度がこの第2層をなす物質のガラス転移温度を超えることなく、このガラス転移温度に近づくように、積層フィルムを予熱することが好ましい。更に、前記第1層は紫外線硬化性材料又は電子線硬化材料から生成した重合体を含み、前記第2層はセルロースアシレートフィルムを含むことが好ましい。加えて、前記蒸気には水蒸気が含まれることが好ましい。
【0017】
また、本発明の積層フィルムの製造方法は、上記の積層フィルムのカール矯正方法を用いて、前記積層フィルムを製造することを特徴とする。
【0018】
本発明の積層フィルムのカール矯正装置は、片方の表面に露呈する第1層と、他方の表面に露呈する第2層とを有し、前記片方の表面が内側になるようにカールする帯状の積層フィルムを長手方向に搬送する搬送手段と、この搬送状態の積層フィルムの前記他方の表面に前記蒸気をあてて、ガラス状態の前記第2層をゴム状態にする第1相転移を起こした後、ゴム状態の前記第2層をガラス状態にする第2相転移を起こす蒸気供給手段とを有し、前記搬送手段は、前記第1相転移又は前記第2相転移の際、前記第2層が固体物と接触しないように、前記積層フィルムの搬送を行うことを特徴とする。
【0019】
本発明の積層フィルムのカール矯正装置は、片方の表面に露呈する第1層と、他方の表面に露呈する第2層とを有し、前記片方の表面が内側になるようにカールする帯状の積層フィルムを長手方向に搬送する搬送手段と、この搬送状態の積層フィルムの前記他方の表面に前記蒸気をあてて、ガラス状態の前記第2層をゴム状態にする第1相転移を起こした後、ゴム状態の前記第2層をガラス状態にする第2相転移を起こす蒸気供給手段とを有し、前記搬送手段は、前記第2層のうちゴム状態の部分が固体物と接触しないように前記積層フィルムの搬送を行うことを特徴とする。
【0020】
また、前記搬送手段は、前記第1相転移又は前記第2相転移の際、前記第2層が前記固体物と接触しないように前記積層フィルムの搬送を行うことが好ましい。前記搬送手段は、例えば、前記積層フィルムを浮上させるために、前記積層フィルムの下方から前記積層フィルムに向けて風を送る浮上搬送部を備えていてもよいし、前記積層フィルムの幅方向両側縁部を把持する把持機構と、前記幅方向両側縁部を把持した把持機構を前記積層フィルムの長手方向へ移動させる移動機構とを備えていてもよい。また、前記搬送手段は、前記蒸気接触手段よりも前記搬送方向上流側または下流側に設けられる搬送ローラを備え、前記蒸気接触手段に設けられ、前記蒸気が送り出されるスリット及び前記搬送手段の間隔が100mm以上であってもよい。
【0021】
前記積層フィルムのうち前記搬送ローラとの接触部分における湿度を、前記蒸気が供給された前記他方の表面における湿度よりも低い状態を維持する低湿度維持手段を有することが好ましい。
【0022】
また、本発明の積層フィルムのカール矯正装置は、片方の表面に露呈する第1層と、他方の表面に露呈する第2層とを有し、前記片方の表面が内側になるようにカールする帯状の積層フィルムを長手方向に搬送する搬送手段と、この搬送状態の積層フィルムの前記他方の表面に前記蒸気をあてて、ガラス状態の前記第2層をゴム状態にする第1相転移を起こした後、ゴム状態の前記第2層をガラス状態にする第2相転移を起こす蒸気供給手段とを有し、前記搬送手段は、前記蒸気接触手段よりも前記搬送方向上流側または下流側に設けられる搬送ローラを備え、前記積層フィルムのうち前記搬送ローラとの接触部分における湿度を、前記蒸気が供給された前記他方の表面における湿度よりも低い状態を維持する低湿度維持手段を有することを特徴とする。
【0023】
前記低湿度維持手段は、前記接触部分へ向かう蒸気を吸引する蒸気吸引部を備えることが好ましい。また、前記低湿度維持手段は、前記接触部分へ向かう蒸気を遮断する蒸気遮断部を備えることが好ましい。更に、前記低湿度維持手段は、前記接触部分に乾燥空気を供給する乾燥空気供給部を備えることが好ましい。
【0024】
前記積層フィルムが下方から上方に向かって搬送されることが好ましい。また、前記蒸気には水蒸気が含まれることが好ましい。
【発明の効果】
【0025】
所定の蒸気接触工程や、蒸気接触工程を経た積層フィルムの冷却により、積層フィルムのカールの矯正が可能となる。ところが、カールが矯正される過程において、変形(膨張や収縮等)状態の積層フィルムが搬送ローラ等の固体物と接触すると、オレシワが発生してしまう。本発明によれば、積層フィルムの搬送において、積層フィルムのうち変形する部分を非接触状態とするため、オレシワ発生を抑えることが可能となる。また、本発明によれば、積層フィルムのうち搬送ローラなどの固体物との接触部分における湿度を、積層フィルムのうち蒸気が供給された部分における湿度よりも低くするため、オレシワ発生を抑えることが可能となる。したがって、本発明によれば、カール及びオレシワが抑制された積層フィルムを製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】積層フィルムの概要を示す側面図である。
【図2】積層フィルム製造設備の概要を示す説明図である。
【図3】第1の蒸気接触部を有する第1のカール矯正装置の概要を示す説明図である。
【図4】第1の蒸気接触部を有する第2のカール矯正装置の概要を示す説明図である。
【図5】第2の蒸気接触部の概要を示す説明図である。
【図6】第3の蒸気接触部の概要を示す説明図である。
【図7】第4の蒸気接触部の概要を示す説明図である。
【図8】ターンバーの概要を示す斜視図である。
【図9】低湿度維持ケーシングを有する第5の蒸気接触部の概要を示す説明図である。
【図10】冷却ケーシングを有する第3のカール矯正装置の概要を示す説明図である。
【図11】オレシワが発生した積層フィルムの平面図である。
【図12】オレシワが発生した積層フィルムの側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
積層フィルム10は、図1に示すように、支持層11と、支持層11よりも硬いハードコート層12とを有する。積層フィルム10の厚さdは、特に限定されないが、5μm以上120μm以下であることが好ましく、40μm以上100μm以下であることがより好ましい。また、支持層11の厚さdsとハードコート層12の厚さdhとの比dh/dsは、例えば、0.04以上0.50以下であることが好ましく、0.10以上0.40以下であることがより好ましい。
【0028】
積層フィルム10は、図2に示す積層フィルム製造設備20にて製造される。積層フィルム製造設備20は、ロール状の支持フィルム(以下、支持フィルムロールと称する)21から支持フィルム22を送り出す送り出し部23と、支持フィルム22から積層フィルム10をつくる搬送路24と、搬送路24から送り出された積層フィルム10を巻き芯にロール状に巻き取る巻き取り部25とを有する。搬送路24には、送り出し部23から巻き取り部25に向かって複数の搬送ローラ27が並べられる。
【0029】
(支持フィルム)
支持フィルム22の形成材料は、特に限定されないが、ポリマーであることが好ましい。そして、ポリマーのうち、セルロースアシレートであることがより好ましい。なお、セルロースアシレートの詳細は後述する。
【0030】
搬送路24には、支持フィルム22に膜28を形成する膜形成装置31と、膜28を乾燥する乾燥装置32と、膜28に所定の紫外線を照射する照射装置33と、紫外線照射によりつくられた積層フィルム10のカールを矯正するカール矯正装置34とが、送り出し部23から巻き取り部25に向って順次設けられる。なお、カール矯正装置34と巻き取り部25との間に、積層フィルム10を乾燥する乾燥装置38を設けてもよい。
【0031】
膜形成装置31は、塗布液を流出するダイ40を有する。ダイ40は、支持フィルム22の表面に塗布液を塗布する。塗布液の塗布により、支持フィルム22の表面には、塗布液からなる膜28が形成される。塗布液は、紫外線硬化性材料を適当な溶剤に溶解若しくはコロイド状分散して作製される。この際、紫外線硬化性材料の濃度は、用途に応じて適宜選択されるが、一般的には、10質量%以上95質量%以下であることが好ましい。
【0032】
(紫外線硬化性材料)
紫外線硬化性材料としては、例えば、電離放射線硬化性の多官能モノマーや多官能オリゴマーを用いることが好ましい。電離放射線硬化性の多官能モノマーや多官能オリゴマーの官能基としては、光、電子線、放射線重合性のものが好ましく、中でも光重合性官能基が好ましい。光重合性官能基としては、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、スチリル基、アリル基等の不飽和の重合性官能基等が挙げられ、中でも、(メタ)アクリロイル基が好ましい。
【0033】
(溶剤)
溶剤としては、支持フィルム22をなす物質を溶解させない化合物であることが好ましい。また、積層フィルム10における支持層11とハードコート層12との密着性を向上させるために、支持フィルム22をなす物質を膨潤させる化合物であることが好ましい。更に、溶剤としては、紫外線硬化性材料が沈殿を生じることなく、均一に溶解又は分散されるものであれば特に制限はなく、2種類以上の溶剤を併用することもできる。
【0034】
溶剤の好ましい例としては、分散媒体としては、アルコール類、ケトン類、エステル類、アミド類、エーテル類、エーテルエステル類、炭化水素類、ハロゲン化炭化水素類等が挙げられる。具体的には、アルコール(例えばメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ベンジルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、エチレングリコールモノアセテート等)、ケトン(例えばメチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン等)、エステル(例えば酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、蟻酸エチル、蟻酸プロピル、蟻酸ブチル、乳酸エチル等)、脂肪族炭化水素(例えばヘキサン、シクロヘキサン、ハロゲン化炭化水素(例えばメチレンクロライド、メチルクロロホルム等)、芳香族炭化水素(例えばトルエン、キシレン等)、アミド(例えばジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、n−メチルピロリドン等)、エーテル(例えばジオキサン、テトラハイドロフラン、エチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル等)、エーテルアルコール(例えば1−メトキシ−2−プロパノール、エチルセルソルブ、メチルカルビノール等)、フルオロアルコール類(例えば、特開平8−143709号公報段落番号[0020]、同11−60807号公報段落番号[0037]等に記載の化合物) が挙げられる。
【0035】
これらの溶剤は、それぞれ単独で又は2 種以上を混合して使用することができる。好ましい溶剤としては、トルエン、キシレン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、メタノール、イソプロパノール、ブタノールが挙げられる。また、ケトン溶剤(例えばメチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等)を主にした塗布溶剤系も好ましく用いられ、ケトン系溶剤の含有量が硬化性組成物に含まれる全溶剤の10質量%以上であることが好ましい。より好ましくは30質量%以上である。
【0036】
乾燥装置32は、膜28に乾燥風43をあてる乾燥風供給機44を有する。照射装置33は、膜28に紫外線を照射する紫外線照射機46を有する。紫外線照射機46は、紫外線を発生する光源を有する。紫外線を発生する光源として、例えば、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、カーボンアーク灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ等を用いることが出来る。
【0037】
カール矯正装置34は、積層フィルム10のカールを矯正する。カール矯正装置34の詳細は後述する。乾燥装置38は、積層フィルム10に乾燥風43をあてる乾燥風供給機48を有する。乾燥風43との接触により、積層フィルム10に含まれる水や溶剤等が蒸発する。
【0038】
(カール矯正装置)
カール矯正装置34は、図3に示すように、予熱ケーシング56と、蒸気接触ケーシング57とを有する。搬送ローラ27により形成される搬送路24は、支持フィルム22の搬送方向上流側から順次設けられる予熱ケーシング56及び蒸気接触ケーシング57を貫通する。
【0039】
予熱ケーシング56内には、予熱風61を送り出す予熱風送出機62が設けられる。予熱風送出機62は、搬送路24の片側に配される。予熱ケーシング56内を搬送される積層フィルム10の支持層11と対向するように予熱風送出機62を配することが好ましい。なお、予熱風送出機62が支持層11及びハードコート層12と対向するように、搬送路24の両側に予熱風送出機62を配してもよい。
【0040】
予熱風61による積層フィルム10の加熱は、支持層11をなす物質の温度Tfが、支持層11をなす物質のガラス転移温度Tg0を超えることなく、ガラス転移温度Tg0に近づくように行うことが好ましい。(Tg−Tf)の値は、30℃以上80℃以下であることが好ましい。ここで、ガラス転移温度Tg0とは、照射工程後であって蒸気接触工程前における、支持層11のガラス転移温度を指す。
【0041】
複数の搬送ローラ27により、蒸気接触ケーシング57内の搬送路24は下方から上方に向かうように形成される。隣り合う搬送ローラ27の間には、スリット70から蒸気71を送り出す蒸気送出機72が設けられる。なお、隣り合う搬送ローラ27の間において、積層フィルム10近傍の蒸気71を散らすための乾燥空気74をスリット73から送り出す乾燥空気送出機75や、蒸気71などをスリット76から吸い込む吸気機77等を設けても良い。また、隣り合う搬送ローラ27の間において、各種センサを有するセンサユニット79とが設けられる。蒸気送出機72と、乾燥空気送出機75と、吸気機77と、センサユニット79とは、蒸気接触ケーシング57内を搬送される積層フィルム10の支持層11と対向するように、搬送路24に沿って配される。
【0042】
なお、蒸気送出機72と、乾燥空気送出機75と、吸気機77と、センサユニット79とは、搬送路24の両側に設けてもよい。また、乾燥空気送出機75、吸気機77のうちいずれか一方、または両方を省略してもよい。
【0043】
複数の蒸気送出機72は、搬送路24に沿って並ぶ。乾燥空気送出機75は、蒸気送出機72よりも搬送方向上流側、及び蒸気送出機72よりも搬送方向下流側にそれぞれ設けられる。なお、乾燥空気送出機75を蒸気送出機72よりも搬送方向下流側のみに設けてもよい。
【0044】
吸気機77は、蒸気送出機72及び乾燥空気送出機75の間に設けられる。センサユニット79は、吸気機77よりも搬送方向上流側、及び蒸気送出機72よりも搬送方向下流側にそれぞれ設けられる。
【0045】
なお、蒸気接触ケーシング57の上流側もしくは下流側の少なくとも一方に、又は、両側に、蒸気71の構成する物質を吸着する吸着機を設けてもよい。
【0046】
センサユニット79は、積層フィルム10の温度を検知する温度センサと、積層フィルム10のカールの大きさを検知するカール量センサとを有する。温度センサとして、例えば、赤外線式温度センサなどを用いることができる。カール量センサとして、例えば、レーザ変位計などを用いることができる。
【0047】
蒸気接触ケーシング57内に設けられる搬送ローラ27は、積層フィルム10のうち変形状態の部分と接触しない位置に設けられる。より具体的には、スリット70と搬送ローラ27との間隔CL1は、100mm以上2500mm以下であることが好ましく、150mm以上1000mm以下であることがより好ましい。
【0048】
なお、オレシワ発生の防止や積層フィルム10における結露防止のために、蒸気接触ケーシング57内に設けられる搬送ローラ27の温度を調節するローラ温度調節装置を設けてもよい。ローラ温度調節装置は、搬送ローラ27に設けられ、伝熱媒体(水やオイル等)の流通可能なジャケットと、伝熱媒体の温度を調節する温度調節機と、ジャケット及び温度調節部の間で伝熱媒体を循環させる循環機とを備えることが好ましい。温度調節機は、搬送路24を通過する積層フィルム10の温度との差が小さくなるように、伝熱媒体の温度を調節することが好ましい。こうして、搬送ローラ27の温度を積層フィルム10の温度よりも高くする、または搬送ローラ27の温度を積層フィルム10の温度よりも低くすることができる。なお、搬送ローラ27として、コイルを内蔵するものを用い、ローラ温度調節装置として、電磁誘導を利用して、当該コイルを内蔵する搬送ローラ27を加熱するものを用いても良い。
【0049】
制御部81は、センサユニット79から読み取った積層フィルム10の温度やカール量に基づいて、予熱風61、乾燥空気74、及び蒸気71についての各条件(温度、湿度及び風量など)を適宜調節する。これにより、カールを矯正することが可能となる。
【0050】
(蒸気)
蒸気71は、支持フィルム22を軟化させ得る物質の蒸気であり、より詳しくは、支持フィルム22を構成する物質のガラス転移温度Tgを低下させ得るものの蒸気である。当該物質としては、塩化メチレン、水、有機溶剤、水及び有機溶剤の混合物、または二以上の有機溶剤の混合物のいずれでもよい。有機溶剤としては、ジクロロメタン、酢酸メチル、アセトンなどがあげられる。
【0051】
蒸気71は、飽和蒸気及び過熱蒸気のいずれであってもよい。蒸気の沸点をBPとするときに、蒸気71の温度は、例えば、(BP−30)℃以上(BP+30)℃以下であることが好ましく、BP℃以上(BP+20)℃以下であることがより好ましい。また、蒸気71の温度は、蒸気71との接触により低下した支持層11をなす物質のガラス転移温度よりもAだけ高いことが好ましい。ここで、Aは60℃以下である。Aが60℃を超えてしまうと、ガラス状態の支持層11をゴム状態にさせるために十分な量の水分を支持層11内に保持することが困難となる結果、ガラス状態からゴム状態への相転移が困難になるためである。また、蒸気71の絶対湿度AHv及び蒸気71をあてる際の積層フィルム10の温度における飽和絶対湿度AHfの比(=AHv/AHf)の値は0.8以上4.4以下であることが好ましく、2.5以上4.0以下であることがより好ましい。
【0052】
本発明の作用について説明する。積層フィルム製造設備20では、図2に示すように、送り出し部23は、支持フィルム22を搬送路24へ送り出す。支持フィルム22は、搬送路24の通過により積層フィルム10となって、巻き取り部25へ送られる。巻き取り部25は、積層フィルム10を巻き芯に巻き取る。
【0053】
次に、搬送路24における詳細を説明する。膜形成装置31は、支持フィルム22の表面に膜28を形成する。乾燥装置32は膜28に乾燥風43をあてて、膜28から溶剤を蒸発させる。照射装置33は、膜28に紫外線を照射する。紫外線の照射により、紫外線硬化性材料の重合が行われる。紫外線硬化性材料の重合により、膜28はハードコート層12(図1参照)となる。こうして、支持フィルム22からなる支持層11(図1参照)と、ハードコート層12(図1参照)とを有する積層フィルム10が製造される。
【0054】
ここで、紫外線硬化性材料の重合に起因して体積が減少する結果、積層フィルム10には第1の内部応力が発生する。そして、第1の内部応力の発生により、ハードコート層12が内側を向くようにカール(以下、第1のカールと称する)してしまう。積層フィルム10に生じた第1のカールを矯正するため、蒸気送出機72は、制御部81の制御の下、カール状態の積層フィルム10の支持層11へ蒸気71をあてる。蒸気71との接触により、支持層11の含水率が上昇する結果、支持層11はガラス状態からゴム状態となる。その後、支持層11の含水率が低下すると、支持層11はゴム状態からガラス状態となる。このように、ゴム状態からガラス状態へ変化する際、支持層11の収縮が起こる。支持層11の収縮の結果、支持層11に第2の内部応力が発生する。第2の内部応力は、第1のカールを相殺し得る第2のカールを発生させる。したがって、蒸気71との接触により、第1のカールを矯正することができる。
【0055】
ところが、蒸気との接触によって支持層11ではガラス状態からゴム状態への相転移が起こり、この相転移により支持層11の膨張が起こる。そして、支持層11の膨張が、搬送ローラ27と接触している部分で起こると、積層フィルム10にオレシワが発生してしまう。
【0056】
また、支持層11の温度よりも高い温度(例えば、20〜30℃高い)の搬送ローラ27を用いて積層フィルム10を搬送した場合、支持層11のうち搬送ローラ27と接触した部分は膨張する。この結果、蒸気と接触した支持層11のうち搬送ローラ27と接触する部分にはオレシワが発生してしまう。
【0057】
本発明では、ゴム状態の支持層11または膨張している状態の支持層11と非接触になるような位置に搬送ローラ27を設けたため、積層フィルム10のオレシワを抑えつつ、積層フィルム10のカールを矯正することが可能となる。
【0058】
オレシワの発生プロセスは、以下の通り推測される。
【0059】
(オレシワの発生プロセスその1)
支持層11のうち搬送ローラ27と接触している部分は、搬送ローラ27の周面との摩擦力により巾方向への膨張することが困難である。このため、当該部分にて膨張が起こると当該部分は厚み方向へ膨張する結果、積層フィルム10が搬送ローラ27の周面に対して起立するように折れ曲がってしまう。こうして、図12に示すようなオレシワが積層フィルム10に発生してしまう。
【0060】
(オレシワの発生プロセスその2)
搬送ローラとの接触に起因する支持層11の膨張により、積層フィルム10のうち搬送ローラよりも搬送方向上流側の部分、及び搬送方向下流側の部分とでは、幅が異なる。この幅の差に起因して、内部応力が発生する結果、積層フィルム10にオレシワが発生してしまう。
【0061】
支持層11の一部においてガラス状態からゴム状態への相転移が起こると、相転移に起因する支持層11の膨張が起こる。支持層11が、支持層11よりも高温の搬送ローラ27と接触すると、支持層11の熱膨張が起こる。支持層11の膨張は、上述した2つのプロセスのうちいずれか一方または両方を経て、積層フィルム10でのオレシワを誘発する。
【0062】
更に、ゴム状態の支持層11のヤング率は、ガラス状態の場合のものに比べて小さい。このため、ゴム状態の支持層11は、外力や内部応力に対する形状維持が困難な状態となる。この結果、支持層11がゴム状態の場合には、相転移に起因する膨張や、支持層11の熱膨張により、積層フィルム10にオレシワが発生しやすくなる。
【0063】
オレシワは、物性の異なる支持層11及びハードコート層12が存在する積層フィルム10において発生しやすい。例えば、支持層11の熱膨張率がハードコート層12よりも大きい場合には、積層フィルム10にオレシワが発生しやすい。
【0064】
また、本発明では、積層フィルム10を蒸気接触ケーシング57に導入する前に、積層フィルム10を予熱ケーシング56に導入する。図3に示すように、制御部81の制御の下、予熱風送出機62は、予熱ケーシング56に導入された積層フィルム10に予熱風61をあてる。予熱風61との接触により、積層フィルム10の温度が飽和絶対湿度AHfの比(=AHv/AHf)が所定の範囲内となるように調節される。これにより、カールの矯正を確実にすることができる。
【0065】
蒸気接触ケーシング57内において、下方から上方に向かう搬送路24を形成したため、膨張している状態の支持層11を非接触のまま、積層フィルム10を搬送することが容易となる。また、複数の蒸気送出機72のうちいくつかの蒸気送出機72について、蒸気71の送り出しを停止することで、支持層11へ蒸気71をあてる工程に要する時間調節を行うことができる。係る場合において、下方から上方に向かう搬送路24を形成したため、搬送路24に沿って並べられた蒸気送出機72のうち、下流側の蒸気送出機72では蒸気71の送り出しを行い、上流側の蒸気送出機72では蒸気71の送り出しを止めることにより、支持層11へ蒸気71をあてる工程に要する時間調節が容易となる。
【0066】
更に、本発明では、蒸気送出機72の搬送方向上流側や搬送方向下流側に乾燥空気送出機75や吸気機77を配したため、蒸気との接触により膨張する部分を狭い範囲にすることができる結果、膨張する部分と搬送ローラ27との接触を回避することができる。
【0067】
上記実施形態では、蒸気接触ケーシング57内に設けられる搬送ローラ27により、下方から上方に向かう搬送路24を形成したが、本発明はこれに限られない。図4に示すように、カール矯正装置34は、予熱ケーシング56と、蒸気接触ケーシング57とを有し、蒸気接触ケーシング57内の搬送路24は、水平に設けられる。
【0068】
上記実施形態では、積層フィルム10の搬送手段として、複数の搬送ローラ27を用いたが、本発明はこれに限られず、図5に示すクリップテンタ111を用いてもよい。
【0069】
クリップテンタ111は、クリップ113、レール114,115、及びチェーン116、117を備えている。レール114,115は搬送路24の両側に設置され、それぞれのレール114,115は所定のレール間隔で離間するように配される。レール114、115よりも上流側には原動スプロケット118が設けられ、レール114、115よりも下流側には従動スプロケット119が設けられる。
【0070】
チェーン116、117は、原動スプロケット118及び従動スプロケット119の間に掛け渡され、レール114,115に沿って移動自在に取り付けられている。クリップ113は、チェーン116、117に所定の間隔で複数取り付けられている。なお、図の煩雑化を避けるため、図5にはクリップ113の一部のみを示す。各スプロケット118,119の回転により、クリップ113はレール114,115に沿って移動する。
【0071】
レール114,115の上流端近傍には、把持開始位置PAが設けられる。また、レール114,115の下流端近傍には、把持解除位置PBが設けられる。把持開始手段122により、把持開始位置PAを通過したクリップ113は、積層フィルム10の幅方向両端部(以下、耳部と称する)を把持する。また、把持解除手段123により、把持解除位置PBを通過したクリップ113は、積層フィルム10の耳部の把持を解除する。把持開始位置PAから把持解除位置PBまでの間において、レール114、115の間隔W1は一定である。
【0072】
こうして、クリップ113が把持開始位置PA及び把持解除位置PBを通過することにより、積層フィルム10は、クリップ113により耳部のみを把持された状態で搬送される。このようなクリップテンタ111において、積層フィルム10のうち、1対の耳部の間に位置する製品部にのみ蒸気71をあてる蒸気送出機126をレール114,115の間に設ける。これにより、積層フィルム10の支持層11に蒸気を接触させつつ、積層フィルム10のうち膨張する部分を非接触の状態で、積層フィルム10の搬送が可能となる。
【0073】
なお、クリップテンタ111を用いる場合、搬送路24を下方から上方に向かうように設けてもよいし、水平方向に設けてもよい。
【0074】
積層フィルム10の搬送手段として、図6に示すように、搬送路24の下方に浮上搬送機131を設けてもよい。浮上搬送機131は、蒸気71を浮上風として、搬送路24に向けて送り出す。なお、浮上風を搬送路24に向けて送り出す浮上搬送機131と別に、蒸気送出機72を設けてもよい。蒸気送出機72は、搬送路24の下方または上方のいずれか一方に設けてもよいし、両方に設けてもよい。これにより、積層フィルム10の支持層11に蒸気を接触させつつ、積層フィルム10のうち膨張する部分を非接触の状態で、積層フィルム10の搬送が可能となる。
【0075】
また、図7及び図8に示すように、蒸気71を浮上風として送り出すターンバー141を複数用いてもよい。ターンバー141は、蒸気71を浮上風として送り出す開口142を有する。一のターンバー141は開口142が下方へ向くように配され、他のターンバー141は、一のターンバー141よりも上方に設けられ、開口142が上方へ向くように配される。これにより、積層フィルム10の浮上搬送と、積層フィルム10の下方から上方への搬送とが可能となる。なお、ターンバー141を3つ以上設ける場合も、これと同様にして、ターンバー141を千鳥状に設ければよい。
【0076】
上記実施例では、積層フィルム10を支持して搬送する搬送ローラ27を用いたが、本発明はこれに限られず、積層フィルム10を挟持するニップローラを用いてもよい。これにより、積層フィルム10のうち膨張する部分を非接触の状態で、積層フィルム10の搬送が可能となる。
【0077】
図3及び図4の蒸気接触ケーシング57では、スリット70から所定量CL1だけ離れた位置に搬送ローラ27を設けたが、本発明はこれに限られず、図9に示すように、入口150a及び出口150bを有する低湿度ケーシング150を用いて、搬送ローラ27を囲んでも良い。これにより、積層フィルム10のうち搬送ローラ27と接触する部分に蒸気71が到達しにくくなるため、当該接触する部分の近傍を低湿度(例えば、50%RH以下)に維持することができる。このように、低湿度ケーシング150を設けることにより、オレシワの発生条件の1つである、当該接触する部分の近傍が高湿度となることを回避することができる。
【0078】
なお、蒸気送出機72の上流側及び下流側に配された搬送ローラ27の両方について、低湿度ケーシング150を設けたが、本発明はこれに限られず、いずれか一方について低湿度ケーシング150を設けてもよい。
【0079】
また、積層フィルム10のうち搬送ローラ27と接触する部分に乾燥気体(例えば、10%RH以下)74を供給する乾燥気体供給部155を設けても良い。乾燥気体供給部155を設ける位置は、蒸気送出機72と搬送ローラ27との間であればよい。
【0080】
また、積層フィルム10のうち搬送ローラ27と接触する部分に向かう蒸気71を吸引するために、吸気機77を設けても良い。吸気機77を設ける位置は、蒸気送出機72と搬送ローラ27との間であればよい。
【0081】
なお、乾燥気体供給部155や吸気機77を設ける場合には、低湿度ケーシング150を省略しても良い。
【0082】
上記実施形態では、予熱ケーシング56及び蒸気接触ケーシング57を有するカール矯正装置34を用いたが、本発明はこれに限られず、図10に示すように、予熱ケーシング56及び蒸気接触ケーシング57に加え、冷却ケーシング160を有するカール矯正装置34を用いても良い。
【0083】
冷却ケーシング160は、蒸気接触ケーシング57の下流側に設けられる。冷却ケーシング160は、蒸気送出機72に代えて、スリット161から冷気162を送り出す冷気送出機163を用いたこと以外は、図4に示す蒸気接触ケーシング57と略同様の構造を有する。
【0084】
冷却ケーシング160では、積層フィルム10を所定の冷却速度で冷却する冷却工程が行われる。冷却工程によれば、支持層11がより大きく収縮する結果、より大きな第2の内部応力が発生する。したがって、冷却工程により、カールの矯正能力を向上させることができる。なお、蒸気接触工程及び冷却工程は連続して行うことが好ましい。
【0085】
ところが、冷却工程において積層フィルム10にオレシワが発生する場合がある。オレシワの発生プロセスは、以下のとおり推測される。支持層11の温度よりも低い温度(例えば、20〜30℃低い)の搬送ローラ27を用いて積層フィルム10を搬送した場合、搬送ローラ27と接触した支持層11では収縮が起こる。搬送ローラ27との接触に起因する支持層11の収縮により、積層フィルム10のうち搬送ローラよりも搬送方向上流側の部分、及び搬送方向下流側の部分とでは、幅が異なる。この幅の差に起因して、内部応力が発生する結果、図12に示すようなオレシワが積層フィルム10に発生してしまう。また、支持層11の一部において、ゴム状態からガラス状態への相転移が起こると、相転移に起因する支持層11の収縮が起こる。そして、収縮している状態の支持層11が搬送ローラ27と接触すると、同様にして、図12に示すようなオレシワが積層フィルム10に発生してしまう。
【0086】
更に、支持層11がゴム状態の場合には、相転移に起因する収縮や、支持層11の熱収縮により、積層フィルム10にオレシワが発生しやすくなる。
【0087】
本発明では、ゴム状態の支持層11または収縮している状態の支持層11と非接触になるような位置に搬送ローラ27を設けたため、積層フィルム10のオレシワを抑えつつ、積層フィルム10のカールを矯正することが可能となる。
【0088】
上記実施形態では、冷却工程を行う冷却ケーシングとして、図4に示す蒸気接触ケーシング57と同様の構造を有するものを用いたが、本発明はこれに限られず、図3、図5〜図7、図9のうちいずれか1つに示す蒸気接触ケーシング57と同様の構造を有するものを用いても良い。
【0089】
なお、蒸気接触ケーシング57において、支持層11の温度がガラス転移温度Tgよりも高い状態(ゴム状態)の場合には、搬送ロール27と支持層11との温度差は8℃未満とすることが好ましい。そして、蒸気接触ケーシング57において、支持層11の温度がガラス転移温度Tgよりも低い状態(ガラス状態)の場合には、搬送ロール27と支持層11との温度差は30℃未満とすることが好ましい。これにより、オレシワの発生をより確実に防止することができる。
【0090】
カール矯正装置34での各ケーシング内において、支持層11のうちゴム状態の部分は、非接触の状態で搬送することが好ましい。支持層11がゴム状態である積層フィルム10を搬送する場合には、積層フィルム10に冷却風をあて、ゴム状態の支持層11がガラス状態になるまで積層フィルムを冷却することが好ましい。積層フィルム10のうちガラス状態の部分は、搬送ローラ27などを用いて搬送することができる。
【0091】
支持層11がゴム状態となっている時間を短くするために、除湿工程を行ってもよい。除湿工程は、湿度が調節された調湿風を支持層11にあて、支持層11に含まれる水分子を支持層11の外部へ放出させるものである。除湿工程は、冷却ケーシング150で行っても良いし、蒸気接触ケーシング57及び冷却ケーシング150の間で行っても良い。また、蒸気接触ケーシング57からの蒸気が冷却ケーシング150内へ入ることを防ぐために、蒸気の流入を防ぐ遮り部材を冷却ケーシング150の入口に設けても良い。
【0092】
蒸気接触工程の前後に行われる各工程において、積層フィルム10の温度が、積層フィルム10の雰囲気の露点よりも高くなるように、積層フィルム10の温度、または積層フィルム10の雰囲気の露点を調節する結露防止工程を行うことが好ましい。この結露防止工程において、前述した除湿工程を行っても良い。
【0093】
上記実施形態では、紫外線硬化性材料と溶剤とを含む塗布液を用いたが、本発明はこれに限られず、紫外線硬化性材料と溶剤とを含む塗布液の代わりに、電子線硬化性材料と溶剤とを含む塗布液を用いてもよい。この場合には、紫外線の照射に代えて、電子線の照射を行えばよい。
【0094】
(セルロースアシレート)
セルロースアシレートとしては、トリアセチルセルロース(TAC)が特に好ましい。そして、セルロースアシレートの中でも、セルロースの水酸基をカルボン酸でエステル化している割合、すなわち、アシル基の置換度が下記式(I)〜(III)の全てを満足するものがより好ましい。なお、以下の式(I)〜(III)において、A及びBは、アシル基の置換度を表わし、Aはアセチル基の置換度、またBは炭素原子数3〜22のアシル基の置換度である。なお、TACの90重量%以上が0.1mm〜4mmの粒子であることが好ましい。
(I) 2.5≦A+B≦3.0
(II) 0≦A≦3.0
(III) 0≦B≦2.9
【0095】
セルロースを構成するβ−1,4結合しているグルコース単位は、2位,3位及び6位に遊離の水酸基を有している。セルロースアシレートは、これらの水酸基の一部または全部を炭素数2以上のアシル基によりエステル化した重合体(ポリマー)である。アシル置換度は、2位,3位及び6位それぞれについて、セルロースの水酸基がエステル化している割合(100%のエステル化は置換度1である)を意味する。
【0096】
全アシル化置換度、即ち、DS2+DS3+DS6は2.00〜3.00が好ましく、より好ましくは2.22〜2.90であり、特に好ましくは2.40〜2.88である。また、DS6/(DS2+DS3+DS6)は0.28以上が好ましく、より好ましくは0.30以上、特に好ましくは0.31〜0.34である。ここで、DS2はグルコース単位の2位の水酸基のアシル基による置換度(以下、「2位のアシル置換度」とも言う)であり、DS3は3位の水酸基のアシル基による置換度(以下、「3位のアシル置換度」とも言う)であり、DS6は6位の水酸基のアシル基による置換度(以下、「6位のアシル置換度」とも言う)である。
【0097】
本発明のセルロースアシレートに用いられるアシル基は1種類だけでも良いし、あるいは2種類以上のアシル基が使用されていても良い。2種類以上のアシル基を用いるときは、その1つがアセチル基であることが好ましい。2位,3位及び6位の水酸基による置換度の総和をDSAとし、2位,3位及び6位の水酸基のアセチル基以外のアシル基による置換度の総和をDSBとすると、DSA+DSBの値は、より好ましくは2.22〜2.90であり、特に好ましくは2.40〜2.88である。また、DSBは0.30以上であり、特に好ましくは0.7以上である。さらにDSBはその20%以上が6位水酸基の置換基であるが、より好ましくは25%以上が6位水酸基の置換基であり、30%以上がさらに好ましく、特には33%以上が6位水酸基の置換基であることが好ましい。また更に、セルロースアシレートの6位の置換度が0.75以上であり、さらには0.80以上であり特には0.85以上であるセルロースアシレートも挙げることができる。これらのセルロースアシレートにより溶解性の好ましい溶液(ドープ)が作製できる。特に非塩素系有機溶剤において、良好な溶液の作製が可能となる。さらに粘度が低く、濾過性の良い溶液の作製が可能となる。
【0098】
セルロースアシレートの原料であるセルロースは、リンター,パルプのどちらから得られたものでも良い。
【0099】
本発明のセルロースアシレートの炭素数2以上のアシル基としては、脂肪族基でもアリール基でも良く特に限定されない。それらは、例えばセルロースのアルキルカルボニルエステル、アルケニルカルボニルエステルあるいは芳香族カルボニルエステル、芳香族アルキルカルボニルエステルなどであり、それぞれさらに置換された基を有していても良い。これらの好ましい例としては、プロピオニル、ブタノイル、ペンタノイル、ヘキサノイル、オクタノイル、デカノイル、ドデカノイル、トリデカノイル、テトラデカノイル、ヘキサデカノイル、オクタデカノイル、iso−ブタノイル、t−ブタノイル、シクロヘキサンカルボニル、オレオイル、ベンゾイル、ナフチルカルボニル、シンナモイル基などを挙げることができる。これらの中でも、プロピオニル、ブタノイル、ドデカノイル、オクタデカノイル、t−ブタノイル、オレオイル、ベンゾイル、ナフチルカルボニル、シンナモイルなどがより好ましく、特に好ましくはプロピオニル、ブタノイルである。
【実施例】
【0100】
(実験1)
図2に示す積層フィルム製造設備20において、平らな支持フィルムを膜形成装置31、乾燥装置32及び照射装置33へと順次導入し、支持フィルムからなる支持層(厚さ80μm)とハードコート層(厚さ9μm)とを有する積層フィルム10を得た。照射装置33から送り出された積層フィルム10は、ハードコート層が内側になるようにカールしていた。積層フィルム10のカールの曲率は、20.9m−1であった。積層フィルム10のカールの曲率の算出方法は後述する。
【0101】
予熱風送出機62は、風速10m/s、温度110℃の予熱風61を積層フィルム10に、6秒間あてて、予熱ケーシング56における積層フィルム10の表面の温度を80℃に維持した。
【0102】
蒸気送出機72は、風速5m/s、温度110℃、絶対湿度575g/m3の蒸気71を積層フィルム10に、2秒間あてた。吸気機77の吸気量Vinは、0Nm3/分であった。乾燥空気送出機75による乾燥空気74の風速v1は0m/sであった。スリット70と搬送ローラ27との間隔CL1は90mmであった。
【0103】
積層フィルム10のカールの曲率の算出方法は以下の通りである。まず、照射装置33から送り出された積層フィルム10から長手方向の長さが5mmのスリット状のフィルムを切り出す。次に、積層フィルム10の幅方向へ150mm間隔でスリット状のフィルムを切断し、複数の測定フィルム(縦の長さ5mm、横の長さ150mm)を得る。そして、平らな台の上に、ハードコート層が下側を向くように測定フィルムを配する。このとき、測定フィルムは、横から見たときに、上方に向かって凸となる様に円弧状に湾曲している。横方向における測定フィルムの両端を結ぶ線分の長さLと、台から測定フィルムのうち最も高い位置までの高さHとを測定する。そして、長さLと高さHとから、積層フィルムの幅方向における測定フィルム10のカールの曲率Cを算出する。
【0104】
(実験2〜9)
吸気量Vin、間隔CL1、乾燥空気74の風速v1を表1に示した値にしたこと以外は、実験1と同様にして、積層フィルム10を製造した。
【0105】
【表1】
【0106】
(オレシワの評価)
実験1〜9により得られた積層フィルム10にオレシワが発生したか否かについて、目視観察を行い、以下基準に基づいて判定した。
○:オレシワが確認できなかった。
×:オレシワが確認できた。
【符号の説明】
【0107】
10 積層フィルム
11 支持層
12 ハードコート層
24 搬送路
27 搬送ローラ
34 カール矯正装置
57 蒸気接触ケーシング
71 蒸気
72 蒸気送出機
【特許請求の範囲】
【請求項1】
片方の表面に露呈する第1層と、他方の表面に露呈する第2層とを有し、前記片方の表面が内側になるようにカールする帯状の積層フィルムを長手方向に搬送し、
この搬送状態の積層フィルムの前記他方の表面に前記蒸気をあてて、ガラス状態の前記第2層をゴム状態にする第1相転移を起こした後、ゴム状態の前記第2層をガラス状態にする第2相転移を起こし、
前記第1相転移又は前記第2相転移の際、前記第2層が固体物と接触しないように前記積層フィルムの搬送を行うことを特徴とする積層フィルムのカール矯正方法。
【請求項2】
片方の表面に露呈する第1層と、他方の表面に露呈する第2層とを有し、前記片方の表面が内側になるようにカールする帯状の積層フィルムを長手方向に搬送し、
この搬送状態の積層フィルムの前記他方の表面に前記蒸気をあてて、ガラス状態の前記第2層をゴム状態にする第1相転移を起こした後、ゴム状態の前記第2層をガラス状態にする第2相転移を起こし、
前記第2層のうちゴム状態の部分が固体物と接触しないように前記積層フィルムの搬送を行うことを特徴とする積層フィルムのカール矯正方法。
【請求項3】
前記第1相転移又は前記第2相転移の際、前記第2層が前記固体物と接触しないように前記積層フィルムの搬送を行うことを特徴とする請求項2記載の積層フィルムのカール矯正方法。
【請求項4】
前記積層フィルムの下方から浮上風をあてながら、前記積層フィルムの搬送を行うことを特徴とする請求項1ないし3のうちいずれか1項記載の積層フィルムのカール矯正方法。
【請求項5】
前記積層フィルムの幅方向両側縁部を把持した把持部材の前記長手方向への移動により、前記積層フィルムの搬送を行うことを特徴とする請求項1ないし3のうちいずれか1項記載の積層フィルムのカール矯正方法。
【請求項6】
前記積層フィルムの長手方向に並べられ、前記他方の面を支持する複数の搬送ローラを用いて、前記積層フィルムの搬送を行ない、
前記積層フィルムのうち、隣り合った前記搬送ローラの間に位置する部分のみに、前記蒸気をあて、
前記蒸気があたる領域と前記搬送ローラとの間隔は100mm以上であることを特徴とする請求項1ないし3のうちいずれか1項記載の積層フィルムのカール矯正方法。
【請求項7】
前記積層フィルムのうち前記搬送ローラとの接触部分における湿度を、前記蒸気が供給された前記他方の表面における湿度よりも低い状態を維持する低湿度維持工程を行うことを特徴とする請求項6記載の積層フィルムのカール矯正方法。
【請求項8】
片方の表面に露呈する第1層と、他方の表面に露呈する第2層とを有し、前記片方の表面が内側になるようにカールする帯状の積層フィルムを長手方向に搬送し、
前記積層フィルムの長手方向に並べられ、前記他方の面を支持する複数の搬送ローラを用いて、前記積層フィルムの搬送を行ない、
この搬送状態の積層フィルムの前記他方の表面のうち、隣り合った前記搬送ローラの間に位置する部分に前記蒸気をあてて、ガラス状態の前記第2層をゴム状態にする第1相転移を起こした後、ゴム状態の前記第2層をガラス状態にする第2相転移を起こし、
前記積層フィルムのうち前記搬送ローラとの接触部分における湿度を、前記蒸気が供給された前記他方の表面における湿度よりも低い状態を維持する低湿度維持工程を行うことを特徴とする積層フィルムのカール矯正方法。
【請求項9】
前記低湿度維持工程では前記接触部分へ向かう蒸気を吸引することを特徴とする請求項7または8記載の積層フィルムのカール矯正方法。
【請求項10】
前記低湿度維持工程では前記接触部分へ向かう蒸気を遮断することを特徴とする請求項7ないし9のうちいずれか1項記載の積層フィルムのカール矯正方法。
【請求項11】
前記低湿度維持工程では、前記接触部分に乾燥空気を供給することを特徴とする請求項7ないし10のうちいずれか1項記載の積層フィルムのカール矯正方法。
【請求項12】
前記積層フィルムを下方から上方に向かって搬送することを特徴とする請求項1ないし11のうちいずれか1項記載の積層フィルムのカール矯正方法。
【請求項13】
前記蒸気の接触の前に、前記第2層の温度がこの第2層をなす物質のガラス転移温度を超えることなく、このガラス転移温度に近づくように、積層フィルムを予熱することを特徴とする請求項1ないし12のうちいずれか1項記載の積層フィルムのカール矯正方法。
【請求項14】
前記第1層は紫外線硬化性材料又は電子線硬化材料から生成した重合体を含み、
前記第2層はセルロースアシレートフィルムを含むことを特徴とする請求項1ないし13のうちいずれか1項記載の積層フィルムのカール矯正方法。
【請求項15】
前記蒸気には水蒸気が含まれることを特徴とする請求項1ないし14のうちいずれか1項記載の積層フィルムのカール矯正方法。
【請求項16】
請求項1ないし15のうちいずれか1項の積層フィルムのカール矯正方法を用いて、前記積層フィルムを製造することを特徴とする積層フィルムの製造方法。
【請求項17】
片方の表面に露呈する第1層と、他方の表面に露呈する第2層とを有し、前記片方の表面が内側になるようにカールする帯状の積層フィルムを長手方向に搬送する搬送手段と、
この搬送状態の積層フィルムの前記他方の表面に前記蒸気をあてて、ガラス状態の前記第2層をゴム状態にする第1相転移を起こした後、ゴム状態の前記第2層をガラス状態にする第2相転移を起こす蒸気供給手段とを有し、
前記搬送手段は、前記第1相転移又は前記第2相転移の際、前記第2層が固体物と接触しないように、前記積層フィルムの搬送を行うことを特徴とする積層フィルムのカール矯正装置。
【請求項18】
片方の表面に露呈する第1層と、他方の表面に露呈する第2層とを有し、前記片方の表面が内側になるようにカールする帯状の積層フィルムを長手方向に搬送する搬送手段と、
この搬送状態の積層フィルムの前記他方の表面に前記蒸気をあてて、ガラス状態の前記第2層をゴム状態にする第1相転移を起こした後、ゴム状態の前記第2層をガラス状態にする第2相転移を起こす蒸気供給手段とを有し、
前記搬送手段は、前記第2層のうちゴム状態の部分が固体物と接触しないように前記積層フィルムの搬送を行うことを特徴とする積層フィルムのカール矯正装置。
【請求項19】
前記搬送手段は、前記第1相転移又は前記第2相転移の際、前記第2層が固体物と接触しないように、前記積層フィルムの搬送を行うことを特徴とする請求項18記載の積層フィルムのカール矯正装置。
【請求項20】
前記搬送手段は、前記積層フィルムを浮上させるために、前記積層フィルムの下方から前記積層フィルムに向けて風を送る浮上搬送部を備えることを特徴とする請求項17ないし19のうちいずれか1項記載の積層フィルムのカール矯正装置。
【請求項21】
前記搬送手段は、
前記積層フィルムの幅方向両側縁部を把持する把持機構と、
前記幅方向両側縁部を把持した把持機構を前記積層フィルムの長手方向へ移動させる移動機構とを備えることを特徴とする請求項17ないし19のうちいずれか1項記載の積層フィルムのカール矯正装置。
【請求項22】
前記搬送手段は前記蒸気接触手段よりも前記搬送方向上流側または下流側に設けられる搬送ローラを備え、
前記蒸気接触手段に設けられ、前記蒸気が送り出されるスリット及び前記搬送手段の間隔が100mm以上であることを特徴とする請求項17ないし19のうちいずれか1項記載の積層フィルムのカール矯正装置。
【請求項23】
前記積層フィルムのうち前記搬送ローラとの接触部分における湿度を、前記蒸気が供給された前記他方の表面における湿度よりも低い状態を維持する低湿度維持手段を有することを特徴とする請求項22記載の積層フィルムのカール矯正装置。
【請求項24】
片方の表面に露呈する第1層と、他方の表面に露呈する第2層とを有し、前記片方の表面が内側になるようにカールする帯状の積層フィルムを長手方向に搬送する搬送手段と、
この搬送状態の積層フィルムの前記他方の表面に前記蒸気をあてて、ガラス状態の前記第2層をゴム状態にする第1相転移を起こした後、ゴム状態の前記第2層をガラス状態にする第2相転移を起こす蒸気供給手段とを有し、
前記搬送手段は、前記蒸気接触手段よりも前記搬送方向上流側または下流側に設けられる搬送ローラを備え、
前記積層フィルムのうち前記搬送ローラとの接触部分における湿度を、前記蒸気が供給された前記他方の表面における湿度よりも低い状態を維持する低湿度維持手段を有することを特徴とする積層フィルムのカール矯正装置。
【請求項25】
前記低湿度維持手段は、前記接触部分へ向かう蒸気を吸引する蒸気吸引部を備えることを特徴とする請求項23または24記載の積層フィルムのカール矯正装置。
【請求項26】
前記低湿度維持手段は、前記接触部分へ向かう蒸気を遮断する蒸気遮断部を備えることを特徴とする請求項23ないし25のうちいずれか1項記載の積層フィルムのカール矯正装置。
【請求項27】
前記低湿度維持手段は、前記接触部分に乾燥空気を供給する乾燥空気供給部を備えることを特徴とする請求項23ないし26のうちいずれか1項記載の積層フィルムのカール矯正装置。
【請求項28】
前記積層フィルムが下方から上方に向かって搬送されることを特徴とする請求項17ないし27のうちいずれか1項記載の積層フィルムのカール矯正装置。
【請求項29】
前記蒸気には水蒸気が含まれることを特徴とする請求項17ないし28のうちいずれか1項記載の積層フィルムのカール矯正装置。
【請求項1】
片方の表面に露呈する第1層と、他方の表面に露呈する第2層とを有し、前記片方の表面が内側になるようにカールする帯状の積層フィルムを長手方向に搬送し、
この搬送状態の積層フィルムの前記他方の表面に前記蒸気をあてて、ガラス状態の前記第2層をゴム状態にする第1相転移を起こした後、ゴム状態の前記第2層をガラス状態にする第2相転移を起こし、
前記第1相転移又は前記第2相転移の際、前記第2層が固体物と接触しないように前記積層フィルムの搬送を行うことを特徴とする積層フィルムのカール矯正方法。
【請求項2】
片方の表面に露呈する第1層と、他方の表面に露呈する第2層とを有し、前記片方の表面が内側になるようにカールする帯状の積層フィルムを長手方向に搬送し、
この搬送状態の積層フィルムの前記他方の表面に前記蒸気をあてて、ガラス状態の前記第2層をゴム状態にする第1相転移を起こした後、ゴム状態の前記第2層をガラス状態にする第2相転移を起こし、
前記第2層のうちゴム状態の部分が固体物と接触しないように前記積層フィルムの搬送を行うことを特徴とする積層フィルムのカール矯正方法。
【請求項3】
前記第1相転移又は前記第2相転移の際、前記第2層が前記固体物と接触しないように前記積層フィルムの搬送を行うことを特徴とする請求項2記載の積層フィルムのカール矯正方法。
【請求項4】
前記積層フィルムの下方から浮上風をあてながら、前記積層フィルムの搬送を行うことを特徴とする請求項1ないし3のうちいずれか1項記載の積層フィルムのカール矯正方法。
【請求項5】
前記積層フィルムの幅方向両側縁部を把持した把持部材の前記長手方向への移動により、前記積層フィルムの搬送を行うことを特徴とする請求項1ないし3のうちいずれか1項記載の積層フィルムのカール矯正方法。
【請求項6】
前記積層フィルムの長手方向に並べられ、前記他方の面を支持する複数の搬送ローラを用いて、前記積層フィルムの搬送を行ない、
前記積層フィルムのうち、隣り合った前記搬送ローラの間に位置する部分のみに、前記蒸気をあて、
前記蒸気があたる領域と前記搬送ローラとの間隔は100mm以上であることを特徴とする請求項1ないし3のうちいずれか1項記載の積層フィルムのカール矯正方法。
【請求項7】
前記積層フィルムのうち前記搬送ローラとの接触部分における湿度を、前記蒸気が供給された前記他方の表面における湿度よりも低い状態を維持する低湿度維持工程を行うことを特徴とする請求項6記載の積層フィルムのカール矯正方法。
【請求項8】
片方の表面に露呈する第1層と、他方の表面に露呈する第2層とを有し、前記片方の表面が内側になるようにカールする帯状の積層フィルムを長手方向に搬送し、
前記積層フィルムの長手方向に並べられ、前記他方の面を支持する複数の搬送ローラを用いて、前記積層フィルムの搬送を行ない、
この搬送状態の積層フィルムの前記他方の表面のうち、隣り合った前記搬送ローラの間に位置する部分に前記蒸気をあてて、ガラス状態の前記第2層をゴム状態にする第1相転移を起こした後、ゴム状態の前記第2層をガラス状態にする第2相転移を起こし、
前記積層フィルムのうち前記搬送ローラとの接触部分における湿度を、前記蒸気が供給された前記他方の表面における湿度よりも低い状態を維持する低湿度維持工程を行うことを特徴とする積層フィルムのカール矯正方法。
【請求項9】
前記低湿度維持工程では前記接触部分へ向かう蒸気を吸引することを特徴とする請求項7または8記載の積層フィルムのカール矯正方法。
【請求項10】
前記低湿度維持工程では前記接触部分へ向かう蒸気を遮断することを特徴とする請求項7ないし9のうちいずれか1項記載の積層フィルムのカール矯正方法。
【請求項11】
前記低湿度維持工程では、前記接触部分に乾燥空気を供給することを特徴とする請求項7ないし10のうちいずれか1項記載の積層フィルムのカール矯正方法。
【請求項12】
前記積層フィルムを下方から上方に向かって搬送することを特徴とする請求項1ないし11のうちいずれか1項記載の積層フィルムのカール矯正方法。
【請求項13】
前記蒸気の接触の前に、前記第2層の温度がこの第2層をなす物質のガラス転移温度を超えることなく、このガラス転移温度に近づくように、積層フィルムを予熱することを特徴とする請求項1ないし12のうちいずれか1項記載の積層フィルムのカール矯正方法。
【請求項14】
前記第1層は紫外線硬化性材料又は電子線硬化材料から生成した重合体を含み、
前記第2層はセルロースアシレートフィルムを含むことを特徴とする請求項1ないし13のうちいずれか1項記載の積層フィルムのカール矯正方法。
【請求項15】
前記蒸気には水蒸気が含まれることを特徴とする請求項1ないし14のうちいずれか1項記載の積層フィルムのカール矯正方法。
【請求項16】
請求項1ないし15のうちいずれか1項の積層フィルムのカール矯正方法を用いて、前記積層フィルムを製造することを特徴とする積層フィルムの製造方法。
【請求項17】
片方の表面に露呈する第1層と、他方の表面に露呈する第2層とを有し、前記片方の表面が内側になるようにカールする帯状の積層フィルムを長手方向に搬送する搬送手段と、
この搬送状態の積層フィルムの前記他方の表面に前記蒸気をあてて、ガラス状態の前記第2層をゴム状態にする第1相転移を起こした後、ゴム状態の前記第2層をガラス状態にする第2相転移を起こす蒸気供給手段とを有し、
前記搬送手段は、前記第1相転移又は前記第2相転移の際、前記第2層が固体物と接触しないように、前記積層フィルムの搬送を行うことを特徴とする積層フィルムのカール矯正装置。
【請求項18】
片方の表面に露呈する第1層と、他方の表面に露呈する第2層とを有し、前記片方の表面が内側になるようにカールする帯状の積層フィルムを長手方向に搬送する搬送手段と、
この搬送状態の積層フィルムの前記他方の表面に前記蒸気をあてて、ガラス状態の前記第2層をゴム状態にする第1相転移を起こした後、ゴム状態の前記第2層をガラス状態にする第2相転移を起こす蒸気供給手段とを有し、
前記搬送手段は、前記第2層のうちゴム状態の部分が固体物と接触しないように前記積層フィルムの搬送を行うことを特徴とする積層フィルムのカール矯正装置。
【請求項19】
前記搬送手段は、前記第1相転移又は前記第2相転移の際、前記第2層が固体物と接触しないように、前記積層フィルムの搬送を行うことを特徴とする請求項18記載の積層フィルムのカール矯正装置。
【請求項20】
前記搬送手段は、前記積層フィルムを浮上させるために、前記積層フィルムの下方から前記積層フィルムに向けて風を送る浮上搬送部を備えることを特徴とする請求項17ないし19のうちいずれか1項記載の積層フィルムのカール矯正装置。
【請求項21】
前記搬送手段は、
前記積層フィルムの幅方向両側縁部を把持する把持機構と、
前記幅方向両側縁部を把持した把持機構を前記積層フィルムの長手方向へ移動させる移動機構とを備えることを特徴とする請求項17ないし19のうちいずれか1項記載の積層フィルムのカール矯正装置。
【請求項22】
前記搬送手段は前記蒸気接触手段よりも前記搬送方向上流側または下流側に設けられる搬送ローラを備え、
前記蒸気接触手段に設けられ、前記蒸気が送り出されるスリット及び前記搬送手段の間隔が100mm以上であることを特徴とする請求項17ないし19のうちいずれか1項記載の積層フィルムのカール矯正装置。
【請求項23】
前記積層フィルムのうち前記搬送ローラとの接触部分における湿度を、前記蒸気が供給された前記他方の表面における湿度よりも低い状態を維持する低湿度維持手段を有することを特徴とする請求項22記載の積層フィルムのカール矯正装置。
【請求項24】
片方の表面に露呈する第1層と、他方の表面に露呈する第2層とを有し、前記片方の表面が内側になるようにカールする帯状の積層フィルムを長手方向に搬送する搬送手段と、
この搬送状態の積層フィルムの前記他方の表面に前記蒸気をあてて、ガラス状態の前記第2層をゴム状態にする第1相転移を起こした後、ゴム状態の前記第2層をガラス状態にする第2相転移を起こす蒸気供給手段とを有し、
前記搬送手段は、前記蒸気接触手段よりも前記搬送方向上流側または下流側に設けられる搬送ローラを備え、
前記積層フィルムのうち前記搬送ローラとの接触部分における湿度を、前記蒸気が供給された前記他方の表面における湿度よりも低い状態を維持する低湿度維持手段を有することを特徴とする積層フィルムのカール矯正装置。
【請求項25】
前記低湿度維持手段は、前記接触部分へ向かう蒸気を吸引する蒸気吸引部を備えることを特徴とする請求項23または24記載の積層フィルムのカール矯正装置。
【請求項26】
前記低湿度維持手段は、前記接触部分へ向かう蒸気を遮断する蒸気遮断部を備えることを特徴とする請求項23ないし25のうちいずれか1項記載の積層フィルムのカール矯正装置。
【請求項27】
前記低湿度維持手段は、前記接触部分に乾燥空気を供給する乾燥空気供給部を備えることを特徴とする請求項23ないし26のうちいずれか1項記載の積層フィルムのカール矯正装置。
【請求項28】
前記積層フィルムが下方から上方に向かって搬送されることを特徴とする請求項17ないし27のうちいずれか1項記載の積層フィルムのカール矯正装置。
【請求項29】
前記蒸気には水蒸気が含まれることを特徴とする請求項17ないし28のうちいずれか1項記載の積層フィルムのカール矯正装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2011−224985(P2011−224985A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−72204(P2011−72204)
【出願日】平成23年3月29日(2011.3.29)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年3月29日(2011.3.29)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】
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