説明

積層フィルムの製造方法

【課題】溶剤除去、回収装置等を必要とせず、作業環境への影響、火災発生の危険性も小さく、かつ、アンカーコート剤を使用することなく、層間接着力が強い、プロピレン樹脂層とエチレン系樹脂層との積層フィルムを製造する方法を提供する。
【解決手段】上記製造法を、融解ピーク温度が140℃以下の結晶性プロピレン系共重合体樹脂によって形成されたプロピレン系樹脂フィルム表面に、エチレンと炭素数が3〜20のα−オレフィンとを共重合して得た、密度が0.870〜0.910g/cm、MFRが1〜100g/10分の直鎖状エチレン・α−オレフィン共重合体60〜99重量%とMFRが1〜50g/10分の高圧法低密度ポリエチレン1〜40重量%との混合物からなるエチレン系樹脂を、アンカーコート剤を介さずに溶融押出ラミネートするものとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プロピレン系樹脂層とエチレン系樹脂層との層間接着性に優れた積層フィルムの製造方法に関する。詳しくはプロピレン系樹脂層とエチレン系樹脂層との層間接着性に優れ、包装袋、印刷紙、写真等の表面保護、耐水・耐油性の付与、光沢の付与等のためのプリントラミネートフィルムに用いることのできる積層フィルムの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリオレフィン樹脂フィルムは、包装用袋、印刷紙の表面保護、耐水性や耐油性の付与ならびに、表面光沢向上等を目的として広く使用されている。特に、印刷された紙面にフィルムを加熱圧着して表面保護を行うことは広く実施されている。このような目的に使用されるフィルムとして、光沢や透明性といった光学特性に優れる二軸延伸ポリプロピレンフィルム基材に、低融点のエチレン系樹脂を積層した積層フィルムが多く用いられている。
【0003】
このような積層フィルムとしては、二軸延伸ポリプロピレンフィルム基材にエチレン・アルキルエステル共重合体とエチレン・酢酸ビニル共重合体の混合物よりなる樹脂組成物を溶融押出ラミネート法で積層した積層フィルム(特開昭56−42652号公報、特公平4−2431号公報、特開平3−73341号公報)、あるいは、メタロセン化合物を触媒とした直鎖状エチレン・α−オレフィン共重合体にエチレン系樹脂を配合した樹脂接着層を積層したフィルムを加熱圧着のみで貼り合わせてプリントラミネ−ト製品を製造する方法(特開平7−117197号公報)が提案されている。
【0004】
二軸延伸ポリプロピレンフィルム基材にエチレン系樹脂を積層する場合、層間接着性を実用上問題の生じないレベルにするため、フィルム基材を酸化処理し、かつアンカーコート剤を介してエチレン系樹脂を積層する必要があった。
【0005】
しかし、アンカーコート剤を使用する方法では、溶剤の乾燥工程が必要となり、設備が大掛かりになる、乾燥時に発生する溶剤臭の拡散に伴い作業環境が悪化する、火災発生の危険性が大である、塗布又は乾燥能力の限界で加工速度が上げられない等の問題がある。
【0006】
また、現状では、アンカーコート剤を使用せず二軸延伸ポリプロピレン系フィルム基材に樹脂接着層を積層したフィルムでは、フィルム基材と樹脂接着層の層間接着力が弱く、印刷紙への加熱圧着後の印刷紙とフィルムとの間に気泡が残存して透明性の低い部分が生じるため、印刷情報の視認性が損なわれ外観(ツブレ)が悪くなる。また、延伸ポリプロピレン系フィルムと樹脂接着層間で簡単に剥離するためラミネート接着強度が弱く製品として使用できないといった問題が生じる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、溶剤除去、回収装置等を必要とせず、作業環境への影響、火災発生の危険性も小さく、かつ、アンカーコート剤を使用することなく、層間接着力が強い、プロピレン樹脂層とエチレン系樹脂層との積層フィルムを製造する方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、かかる問題を解決するため鋭意検討した結果なされたものである。
【0009】
すなわち、本発明の第一の発明によれば、融解ピーク温度が140℃以下の結晶性プロピレン系共重合体樹脂によって形成されたプロピレン系樹脂フィルム表面に、エチレンと炭素数が3〜20のα−オレフィンとを共重合して得た密度が0.870〜0.910g/cm、MFRが1〜100g/10分の直鎖状エチレン・α−オレフィン共重合体60〜99重量%とMFRが1〜50g/10分の高圧法低密度ポリエチレン1〜40重量%との混合物からなるエチレン系樹脂を、アンカーコート剤を介さずに溶融押出ラミネートすることを特徴とする積層フィルムの製造方法が提供される。
【0010】
また、本発明の第二の発明によれば、第一の発明において、結晶性プロピレン系共重合体樹脂が、全融解熱量(ΔHm)に対する130℃までの融解熱量(ΔHm130)の比(ΔHm130/ΔHm)が0.5以上のものであることを特徴とする積層フィルムの製造方法が提供される。
【0011】
また、本発明の第三の発明によれば、第一または第二の発明において、結晶性プロピレン系共重合体樹脂が、メタロセン触媒を用いて製造された結晶性プロピレンエチレンランダム共重合体樹脂であることを特徴とする積層フィルムの製造方法が提供される。
【0012】
また、本発明の第四の発明によれば、第一ないし第三のいずれかの発明において、直鎖状エチレン・α−オレフィン共重合体が、温度上昇溶離分別(TREF)測定による80℃における溶出量が共重合体全量に対して90重量%以上のものであることを特徴とする積層フィルムの製造方法が提供される。
【0013】
また、本発明の第五の発明によれば、第一ないし第四のいずれかの発明において、直鎖状エチレン・α−オレフィン共重合体が、メタロセン触媒を用いて製造されたものであることを特徴とする積層フィルムの製造方法が提供される。
【0014】
また、本発明の第六の発明によれば、第一ないし第五のいずれかの発明において、エチレン系樹脂の溶融押出ラミネート温度が150〜300℃であることを特徴とする積層フィルムの製造方法が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
[結晶性プロピレン系共重合体樹脂]
結晶性プロピレン系共重合体樹脂は、融解ピーク温度(以下、Tmと略す。)が140℃以下のもの、好ましくは80〜140℃、特に好ましくは90〜135℃のものが使用される。Tmが140℃を超過するものは、押出ラミネートで積層するエチレン系樹脂との接着性に劣り、印刷紙等に熱圧着したプリントラミネート製品の外観(ツブレ)が悪くなり、プリントラミネート製品の接着強度も悪化する。
【0016】
ここで、Tmは示差走査型熱量計(DSC)により測定した値である。セイコー社製示差走査型熱量計(DSC)を用い、サンプル約5mgを採り、200℃で5分間保持した後、40℃まで10℃/分の降温スピードで冷却した。続いて10℃/分の昇温スピードで融解させた時に得られる融解熱量曲線からTmを得る。すなわち、融解熱量曲線の最大ピーク温度をTmとした。
【0017】
結晶性プロピレン系共重合体樹脂は、全融解熱量(ΔHm)に対する130℃までの融解熱量(ΔHm130)の比(ΔHm130/ΔHm)が0.5以上のもの、好ましくは、0.6以上のものが好ましい。ΔHm130/ΔHmが0.5未満のものは、押出ラミネートで積層するエチレン系樹脂との接着強度が低下したり、プリントラミネート製品の接着強度が低下したりすることがある。
【0018】
ここで、ΔHmおよびΔHm130は示差走査型熱量計(DSC)により測定した値である。上記融解熱量曲線からΔHmおよびΔHm130を得る。すなわち、該融解熱量曲線において、最初の吸熱が開始した温度と全ての吸熱が終了した温度との間を、直線で結んで融解熱量を求めるためのベースラインとする。該融解熱量曲線とベースラインとに囲まれた部分に相当する融解熱量を全融解熱量(ΔHm)、低温側から起算した130℃までの融解熱量を130℃までの融解熱量(ΔHm130)とした。
【0019】
また、結晶性プロピレン系共重合体樹脂は、メルトフローレート(JIS−K6921、230℃、2.16kg荷重)が好ましくは0.1〜50g/10分、より好ましくは0.5〜40g/10分である。MFRが上記範囲外であると、フィルムの加工性に劣りやすい。
【0020】
また、本発明で用いられる結晶性プロピレン系共重合体樹脂の重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)は、1.5〜4.5であるのが好ましく、より好ましくは1.8〜4.0、最も好ましくは2.0〜3.0である。Mw/Mnが上記範囲を超えると、層間接着性が低下する傾向があり、上記範囲未満では、フィルム加工性が悪化することがある。Mw/Mnを所定の範囲に調整する方法としては、適当なメタロセン触媒を選択することが挙げられる。
【0021】
なお、Mw/Mnの測定は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で行った。測定条件は次の通りである。
装置:ウオーターズ社製GPC 150C型
検出器:MIRAN社製 1A赤外分光光度計(測定波長、3.42μm)
カラム:昭和電工社製AD806M/S 3本(カラムの較正は東ソー製単分散ポリスチレン(A500,A2500,F1,F2,F4,F10,F20,F40,F288の各0.5mg/ml溶液)の測定を行い、溶出体積と分子量の対数値を2次式で近似した。また、試料の分子量はポリスチレンとポリプロピレンの粘度式を用いてポリプロピレンに換算した。ここでポリスチレンの粘度式の係数はα=0.723、logK=−3.967であり、ポリプロピレンはα=0.707、logK=−3.616である。)
測定温度:140℃
濃度:20mg/10mL
注入量:0.2ml
溶媒:オルソジクロロベンゼン
流速:1.0ml/分
【0022】
本発明に使用する結晶性プロピレン系共重合体樹脂は、プロピレンとα−オレフィンとのランダム共重合体である。結晶性プロピレン系共重合体樹脂のプロピレンとランダム共重合するα−オレフィンとしては、炭素数2〜20のα−オレフィン(ただしプロピレンを除く)が挙げられる。具体的にはエチレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、4−メチル−ペンテン−1、4−メチル−ヘキセン−1、4,4−ジメチルペンテン−1等が例示できる。α−オレフィンは一種類でも二種類以上を用いてもよい。このうち炭素数2のα−オレフィンすなわちエチレンが最も好ましい。結晶性プロピレン系共重合体樹脂のプロピレン含量は、好ましくは60〜99重量%、より好ましくは65〜98重量%であり、α−オレフィン含量は、好ましくは1〜40重量%、より好ましくは2〜35重量%である。
【0023】
結晶性プロピレン系共重合体樹脂は、メタロセン触媒を用いることにより、好適に製造される。メタロセン触媒については後述する。
【0024】
上記結晶性プロピレン系共重合体樹脂には、本発明の目的が損なわれない範囲で各種添加剤、例えば造核剤、滑剤、アンチブッロキング剤、酸化防止剤、耐候安定剤、帯電防止剤、防曇剤、着色剤、低分子量ポリマーなどを必要に応じて添加することができる。
【0025】
[エチレン系樹脂]
本発明の積層フィルムに用いるエチレン系樹脂は、直鎖状エチレン・α−オレフィン共重合体を主成分とするものである。かかる直鎖状エチレン・α−オレフィン共重合体は、エチレンと炭素数が3〜20のα−オレフィンとを共重合した直鎖状エチレン・α−オレフィン共重合体である。直鎖状エチレン・α−オレフィン共重合体のα−オレフィンとしては、炭素数3〜20のα−オレフィンである。具体的にはプロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−ヘプテン、4−メチル−ペンテン−1、4−メチル−ヘキセン−1、4,4−ジメチルペンテン−1等を例示できる。好ましくは炭素数3〜12のα−オレフィンであり、より好ましくは炭素数3〜8のα−オレフィンである。α−オレフィンは一種類でも二種類以上を用いてもよい。
【0026】
直鎖状エチレン・α−オレフィン共重合体のエチレン含量は、好ましくは60〜99重量%、より好ましくは65〜98重量%であり、α−オレフィン含量は、好ましくは1〜40重量%、より好ましくは2〜35重量%である。
【0027】
直鎖状エチレン・α−オレフィン共重合体は、密度が0.870〜0.910g/cm、好ましくは0.875〜0.900g/cmである。密度が0.870g/cm未満では、成形性に劣り、ブッロキング性も悪くなり、印刷紙等への熱圧着時に積層フィルムの伸びや破断が起きる可能性がある。密度が0.910g/cmを越えては印刷体の印刷面との接着性が劣り、ツブレが生じ外観が悪くなる。なお、密度は、JIS K6922に準拠し、MFR測定のストランドを用い密度勾配管法により測定した値である。
【0028】
また、直鎖状エチレン・α−オレフィン共重合体は、MFR(JIS−K6922、190℃、2.16kg荷重)が1〜100g/10分、好ましくは5〜80g/10分のものである。MFRが、100g/10分以上外のものは溶融粘度が低すぎるため、フィルム成形性に劣り、MFRが1g/10分未満のものは、印刷紙等に熱圧着したプリントラミネート製品の外観(ツブレ)が悪化する。
【0029】
また、直鎖状エチレン・α−オレフィン共重合体は、プリントラミネート適性の観点から、温度上昇溶離分別(Temperature Rising Elution Fractionation:以下TREFと略す。)測定による80℃における溶出量が共重合体全量に対して90重量%以上、好ましくは95重量%以上であることが好ましい。なお、TREF測定は、「Journal of Applied Polymer Science,Vol 26, 4217−4231.(1981)」および「高分子論文集 2P1C09(1985年)」に記載されている原理に基づき、以下のようにして行われる。不活性担体を充填したカラムに、ポリマーを溶媒に完全溶解させて供給した後に冷却し、不活性担体表面に薄いポリマー層を形成させる。続いて、温度を所定の条件で昇温して、その温度までに溶出したポリマー量を連続的に測定し、その溶出量と溶出温度との関係を表す曲線を得る。かかる曲線の形状によってポリマーの組成分布を見ることができるものである。
【0030】
以下にTREF測定の詳細を説明する。測定装置としてクロス分別装置(ダイヤインストルメント製 CFC T101)を使用した。このクロス分別装置は、試料を溶解温度の差を利用して分別する温度上昇溶離分別(TREF)機構と、分別された区分を更に分子サイズで分別するサイズ排除クロマトグラフ(Size Exclusion Chromatography:SEC)をオンラインで接続したものである。まず、測定試料のo−ジクロロベンゼン溶液(濃度3mg/ml)を、不活性担体であるガラスビーズが充填された内径4mm、長さ150mmのステンレス製カラムに、0.4ml注入する。次にカラムを1℃/分の速度で140℃から0℃の温度まで冷却し、試料を不活性担体にコーティングする。カラムが0℃で更に30分間保持された後、0℃の温度で溶解している成分2mlが、1ml/分の流速でTREFカラムからSECカラム(昭和電工製 AD806MS 3本)へ注入される。SECで分子サイズの分別が行われている間に、TREFカラムでは次の溶出温度に昇温され、その温度に約30分間保持される。SECでの各溶出区分の測定は39分間隔で行われた。溶出温度は以下の温度で段階的に昇温される。
0,5,10,15,20,25,30,35,40,45,49,52,55,58,61,64,67,70,73,76,79,82,85,88,91,94,97,100,102,120,140℃
【0031】
該SECカラムで分子サイズによって分別された溶液は、装置付属の赤外線分光光度計でポリマーの濃度に比例する吸光度が測定され(波長3.42μ,メチレンの伸縮振動で検出)、各溶出温度区分のクロマトグラムが得られる。内蔵のデータ処理ソフトを用い、上記測定で得られた各溶出温度区分のクロマトグラムのベースラインを引き、演算処理される。各クロマトグラムの面積が積分され、積分溶出曲線が計算される。この積分溶出曲線上、溶出温度が80℃における溶出量を、温度上昇溶離分別測定による80℃における溶出量とした。
【0032】
また、本発明で用いられる直鎖状エチレン・α−オレフィン共重合体の重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)は、1.5〜3.0、好ましくは1.6〜2.8、より好ましくは1.7〜2.5であることが好ましい。Mw/Mnが上記範囲を超えると、透明性が低下するので好ましくなく、上記範囲未満では、押出負荷が上昇したり、シャークスキンが発生しやすくなるなど、加工適性が悪化することがある。なお、Mw/Mnの測定は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で行った。測定条件は次の通りである。
装置:ウオーターズ社製GPC 150C型
検出器:MIRAN社製 1A赤外分光光度計(測定波長、3.42μm)
カラム:昭和電工社製AD806M/S 3本(カラムの較正は東ソー製単分散ポリスチレン(A500,A2500,F1,F2,F4,F10,F20,F40,F288の各0.5mg/ml溶液)の測定を行い、溶出体積と分子量の対数値を2次式で近似した。また、試料の分子量はポリスチレンとポリエチレンの粘度式を用いてポリエチレンに換算した。ここでポリスチレンの粘度式の係数はα=0.723、logK=−3.967であり、ポリエチレンはα=0.733、logK=−3.407である。)
測定温度:140℃
濃度:20mg/10mL
注入量:0.2ml
溶媒:オルソジクロロベンゼン
流速:1.0ml/分
【0033】
該直鎖状エチレン・α−オレフィン共重合体には、本発明の目的が損なわれない範囲で各種添加剤、例えば造核剤、滑剤、アンチブッロキング剤、酸化防止剤、耐候安定剤、帯電防止剤、防曇剤、着色剤、低分子量ポリマーなどを必要に応じて添加してもよい。
【0034】
直鎖状エチレン・α−オレフィン共重合体は、メタロセン触媒を用いることにより、好適に製造される。メタロセン触媒については後述する。
【0035】
直鎖状エチレン・α−オレフィン共重合体には、押出ラミネート加工時の加工性(サージング現象、ネックイン)を改良するため、MFR(JIS K6922、190℃、2.16kg荷重)が1〜50g/10分の高圧法低密度ポリエチレンを混合させる。その際の配合比率は、直鎖状エチレン・α−オレフィン共重合体が60〜99重量%、好ましくは70〜97重量%、より好ましくは80〜95重量%である。高圧法低密度ポリエチレンが1〜40重量%、好ましくは3〜30重量%、より好ましくは5〜20重量%である。高圧法低密度ポリエチレンが1重量%未満であるとサージング現象を生じやすく、ネックインが大きくなり加工性に劣る傾向がある。一方、高圧法低密度ポリエチレンが40重量%を超過すると、プリントラミネート製品のツブレ性、光沢性が悪化することがある。
【0036】
結晶性プロピレン系共重合体樹脂および直鎖状エチレン・α−オレフィン共重合体は、いずれも重合触媒としてメタロセン触媒を用いて重合されたものが望ましい。
【0037】
メタロセン触媒は公知のものを使用できるが、シクロペンタジエニル骨格を有する配位子を含む周期律表第4〜6族の遷移金属化合物と、助触媒、必要により有機アルミニウム化合物と、担体とからなる触媒を挙げることができる。
【0038】
ここで、シクロペンタジエニル骨格を有する配位子を含む周期律表第4〜6族の遷移金属化合物において、そのシクロペンタジエニル骨格とは、シクロペンタジエニル基、置換シクロペンタジエニル基等である。置換シクロペンタジエニル基の置換基としては、炭素数1〜20の炭化水素基、ハロゲン基、炭素数1〜20のハロゲン含有炭化水素基、アルコキシ基、アリールオキシ基、珪素含有炭化水素基、リン含有炭化水素基、窒素含有炭化水素基又はホウ素含有炭化水素基、シリル基、シリル置換アルキル基、シリル置換アリール基、シアノ基、シアノアルキル基、シアノアリール基、ハロシリル基等から選ばれた少なくとも1種の置換基が挙げられる。その置換シクロペンタジエニル基の置換基は2個以上有していてもよく、また係る置換基同士が互いに結合して環を形成してもよい。置換基同士が互いに結合し形成された環がさらに置換基を有していてもよい。
【0039】
上記炭素数1〜20の炭化水素基としては、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基等が挙げられ、具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、2−エチルヘキシル基、デシル基等のアルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基;フェニル基、トリル基等のアリール基;ベンジル基、ネオフイル基等のアラルキル基等が例示される。
【0040】
置換基同士すなわち炭化水素同士が互いに結合して1または2以上の環を形成する場合の置換シクロペンタジエニル基としては、インデニル基、炭素数1〜8の炭化水素基(アルキル基等)等の置換基により置換された置換インデニル基、ナフチル基、炭素数1〜8の炭化水素基(アルキル基等)等の置換基により置換された置換ナフチル基、フルオレニル基、炭素数1〜8の炭化水素基(アルキル基等)等の置換基により置換された置換フルオレニル基、アズレニル基、炭素数1〜8の炭化水素基(アルキル基等)等の置換基により置換された置換アズレニル基等が挙げられる。
【0041】
シクロペンタジエニル骨格を有する配位子を含む周期律表第4〜6族の遷移金属化合物について、その遷移金属としては、ジルコニウム、チタン、ハフニウム等が挙げられ、特にジルコニウム、ハフニウムが好ましい。該遷移金属化合物は、シクロペンタジエニル骨格を有する配位子としては通常1〜3個を有し、また2個以上有する場合は架橋基により互いに結合していてもよい。なお、係る架橋基としてはアルキレン基、アルキリデン基、シリレン基、ゲルミレン基等が挙げられる。これらは水素原子がアルキル基、ハロゲン等で置換されたものであってもよい。
【0042】
周期律表第4〜6族の遷移金属化合物において、シクロペンタジエニル骨格を有する配位子以外の配位子としては、代表的なものとして、水素、ハロゲン基、炭素数1〜20の炭化水素基(アルキル基、アルケニル基、アリール基、アルキルアリール基、アラルキル基、ポリエニル基等)、炭素数1〜20の酸素含有炭化水素基、炭素数1〜20の窒素含有炭化水素基、炭素数1〜20のリン含有炭化水素基又は炭素数1〜20の珪素含有炭化水素基などが挙げられる。
【0043】
シクロペンタジエニル骨格を有する配位子を含む周期律表第4〜6族の遷移金属化合物の非限定的な例として、次の化合物を挙げることができる。ビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ビス(インデニル)ジルコニウムジクロリド、ビス(フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ビス(アズレニル)ジルコニウムジクロリド、ビス(4,5,6,7−テトラヒドロインデニル)ジルコニウムジクロリド、(シクロペンタジエニル)(3,4−ジメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、メチレンビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、メチレン(シクロペンタジエニル)(3,4−ジメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、イソプロピリデン(シクロペンタジエニル)(3,4−ジメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、エチレン(シクロペンタジエニル)(3,5−ジメチルペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、メチレンビス(インデニル)ジルコニウムジクロリド、エチレンビス(2−メチルインデニル)ジルコニウムジクロリド、エチレン1,2−ビス(4−フェニルインデニル)ジルコニウムジクロリド、エチレン(シクロペンタジエニル)(フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレン(シクロペンタジエニル)(テトラメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス(インデニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス(4,5,6,7−テトラヒドロインデニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレン(シクロペンタジエニル)(フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレン(シクロペンタジエニル)(オクタヒドロフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、メチルフェニルシリレンビス[1−(2−メチル−4,5−ベンゾ(インデニル)]ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス[1−(2−メチル−4,5−ベンゾインデニル)]ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス[1−(2−メチル−4H−アズレニル)]ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス[1−(2−メチル−4−(4−クロロフェニル)−4H−アズレニル)]ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス[1−(2−エチル−4−(4−クロロフェニル)−4H−アズレニル)]ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス[1−(2−エチル−4−ナフチル−4H−アズレニル)]ジルコニウムジクロリド、ジフェニルシリレンビス[1−(2−メチル−4−(4−クロロフェニル)−4H−アズレニル)]ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス[1−(2−メチル−4−(フェニルインデニル))]ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス[1−(2−エチル−4−(フェニルインデニル))]ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス[1−(2−エチル−4−ナフチル−4H−アズレニル)]ジルコニウムジクロリド、ジメチルゲルミレンビス(インデニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルゲルミレン(シクロペンタジエニル)(フルオレニル)ジルコニウムジクロリド。
【0044】
また、チタニウム化合物、ハフニウム化合物等の他の第4、5、6族遷移金属化合物についても上記と同様の化合物が挙げられる。シクロペンタジエニル骨格を有する配位子を含む周期律表第4〜6族の遷移金属化合物は、1種又は2種以上の混合物として用いることができる。
【0045】
助触媒としては、前記周期律表第4〜6族の遷移金属化合物を重合触媒として有効になしうる、または触媒的に活性化された状態のイオン性電荷を均衝させうるものをいう。本発明において用いられる助触媒としては、アルモキサン等の有機アルミニウムオキシ化合物、ルイス酸、イオン交換性層状珪酸塩、ホウ素化合物、酸化ランタンなどのランタノイド塩、酸化スズ等が挙げられる。
【0046】
必要に応じ用いることができる有機アルミニウム化合物は、一般式(AlR3−pで示される化合物である。本発明では、この式で表される化合物を単独で、複数種混合してあるいは併用して使用することができることはいうまでもない。また、この使用は触媒調製時だけでなく、予備重合あるいは重合時にも可能である。この式中、Rは炭素数1〜20の炭化水素基を示し、Xは、ハロゲン、水素、アルコキシ基、アミノ基を示す。pは1〜3までの、qは1〜2までの整数である。Rとしてはアルキル基が好ましく、またXは、それがハロゲンの場合には塩素が、アルコキシ基の場合には炭素数1〜8のアルコキシ基が、アミノ基の場合には炭素数1〜8のアミノ基が好ましい。これらのうち、好ましくは、p=3、q=1のトリアルキルアルミニウムおよびp=2、q=1のジアルキルアルミニウムヒドリドである。更に好ましくは、Rが炭素数1〜8であるトリアルキルアルミニウムである。
【0047】
必要に応じ用いることができる担体としては、無機または有機化合物の多孔質酸化物が好ましい。具体的には、SiO、Al、MgO、ZrO、TiO、B、CaO、ZnO、BaO、ThO等またはこれらの混合物が挙げられ、SiO−Al、SiO−V、SiO−TiO、SiO−MgO、SiO−Cr等が挙げられる。特に好ましい例としては、担体の機能と助触媒の機能とを兼ねたイオン交換性層状ケイ酸塩を使用することが好ましい。
【0048】
[積層フィルムの製造方法]
本発明方法においては、積層フィルムが、上記結晶性プロピレン系共重合体樹脂によって形成されたプロピレン系樹脂フィルム表面に、上記エチレン系樹脂をアンカーコート剤を介さずに溶融押出ラミネートして積層することによって製造される。
【0049】
プロピレン系樹脂フィルムの成形方法は公知の方法がいずれも採用でき、インフレーション法、Tダイ法などが挙げられる。また、プロピレン系樹脂フィルムは未延伸であっても、一軸もしくは二軸方向に延伸されたものであっても良い。プロピレン系樹脂フィルムには、コロナ処理、火炎処理、プラズマ処理等公知の表面処理を施してもよい。また、プロピレン系樹脂フィルムは、単層フィルムとして使用することも、上記エチレン系樹脂が積層される表面とは裏側の面に他の樹脂層が積層された複数層フィルムとして使用することもできる。
【0050】
上記プロピレン系樹脂フィルムの表面に、アンカーコート剤を介さず、エチレン系樹脂を溶融押出ラミネートし、積層フィルムとする。エチレン系樹脂の溶融押出温度は、150〜300℃、好ましくは180〜280℃が好ましい。300℃を越えるとプリントラミネート適性が悪化する恐れがあり、150℃未満であると接着強度が低下する傾向にある。
【0051】
本発明方法による積層フィルムは、プロピレン系樹脂フィルムの厚みが1〜250μm、好ましくは3〜200μm、特に好ましくは5〜150μmであり、エチレン系樹脂が1〜250μm、好ましくは5〜200μm、特に好ましくは7〜100μmである。かくして得られる積層フィルムは、アンカーコート剤を用いていないにも関わらず、実用上充分な層間接着強度を示す。層間接着強度は60g/15mm以上、好ましくは80g/15mm以上、より好ましくは130g/15mmであることが望まれる。
【0052】
この積層フィルムには、本発明の効果を損なわない範囲で、フィルムへの各種機能付与を目的とする他の層、例えば、プラスチックフィルム、アルミ箔、紙等を積層することができる。更にこの積層フィルムには、必要に応じて、金属蒸着加工、コロナ放電処理、印刷加工、電子線架橋などの各種フィルム加工処理を施すこともできる。
【0053】
この積層フィルムは、エチレン系樹脂層をヒートシール層又は熱圧着層として、ヒートシールフィルム、プリントラミネートフィルムなどに使用することができる。以下にプリントラミネートフィルムとして好ましい態様を説明する。
【0054】
[プリントラミネートフィルム]
本発明方法による積層フィルムに基づき、プリントラミネートフィルムとして使用する場合、プロピレン系樹脂フィルムとしては、プロピレン系樹脂と結晶性プロピレン系共重合体樹脂を共押出によって2層に押出してシート状にし、縦横に延伸した二軸延伸ポリプロピレンフィルムが好ましい。プロピレン系樹脂としては光沢、剛性の観点から、MFRが0.1〜50g/10分、融点が150〜180℃のプロピレン単独重合体、プロピレン・α−オレフィンランダム共重合体から適宜選択される。好ましくはMFRが1〜10g/10分、融点が155〜170℃のプロピレン単独重合体である。
【0055】
二軸延伸ポリプロピレンフィルムの結晶性プロピレン系共重合体樹脂層面に、エチレン系樹脂をアンカコート剤を介さずに溶融押出ラミネートし、プリントラミネートフィルムに供する。かくして得られたプリントラミネートフィルムには、シート状物の印刷面との接着性を良好にするため、エチレン系樹脂層面にコロナ処理、オゾン処理等の酸化処理を行うことが好ましい。特にコロナ処理が最も簡便で効果がある。
【0056】
かくして得られたプリントラミネートフィルムは、印刷紙に熱圧着しプリントラミネート製品となる。熱圧着は、温度が60〜120℃の加熱ロールを用い、プリントラミネートフィルムの熱圧着層と印刷紙とをロール線圧5〜100Kgの圧力で行うことができる。
【実施例】
【0057】
以下、実施例に基づいて本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
1.フィルムの評価方法
(1)エチレン系樹脂層とプロピレン系樹脂フィルム層との接着強度
積層フィルムを幅15mm、長さ100mmの試験片切断し、長さ方向50mmを手で剥離した後、島津製作所引張試験機で90度方向に300mm/分の引張速度で剥離した引張強度の値を示した。
【0058】
2.プリントラミネート製品の評価方法
(1)光沢
プリントラミネート製品の印刷部の光沢度(20度)を、JIS−K7150に準拠して測定した。測定装置にはスガ試験機社製のUGV−5DP(商品名)を用いた。
(2)ツブレ性
ツブレ性(印刷紙と積層接着樹脂との密着性)を目視で観察し、下記評価基準で評価した。
外観のツブレ状態 評価
残存空気が全くなく、印刷色が鮮明 ○
印刷色上に空気がスジ状や斑点として残存 △
印刷色上に空気が帯状に残存し、印刷色が不鮮明 ×
【0059】
(3)プリントラミネートフィルムと印刷紙との接着強度
プリントラミネート製品を幅25mm、長さ100mmの試験片切断し、長さ方向50mmを手で剥離した後、島津製作所引張試験機で180度方向に300mm/分の引張速度で剥離した引張強度の値を示した。
(4)トンネリング性
プリントラミネート製品の印刷紙の非貼合面にマイクロシリンジにて軽油100μlを滴下、温度23℃、湿度50%の雰囲気下に放置し、24時間後の積層フィルム面の変化を観察し、下記の評価基準で評価した。
トンネリング性評価
◎ 接着強度、外観が全く問題なし
○ 接着強度が僅かに低下しているが外観変化なし(使用に耐える程度)
△ 僅かにブツブツが発生
× 明らかにトンネリング発生
【0060】
3.テスト使用樹脂
PP−1:結晶性プロピレン単独重合体 ノバテックPP FL6CK(日本ポリケム(株)製)
【0061】
PP−2:プロピレンエチレンランダム共重合体樹脂
以下の方法により製造した。
助触媒の調製
セパラブルフラスコ中で蒸留水1130gに96%硫酸(750g)を加え、その後スメクタイト族ケイ酸塩(水沢化学社製ベンクレイSL;平均粒径27μm、300g)を30℃で加えた。このスラリーを1.0℃/分で1時間かけて90℃まで昇温し、90℃で300分反応させた。この反応スラリーを1時間で室温まで冷却し、蒸留水でpH3まで洗浄した。得られた固体を、窒素気流下130℃で2日間予備乾燥後、53μm以上の粗大粒子を除去し、さらに200℃で2時間減圧乾燥することにより、スメクタイト208.3gを得た。セパラブルフラスコ中で硫酸リチウム1水和物(211g)に、蒸留水521gを加えて溶液とした後、上記スメクタイトを加えた。このスラリーを室温で240分攪拌した後、ヌッチェで濾過して粘土ケーキを得た。このケーキに蒸留水3000gを加えてスラリーとし、10分攪拌後、再び濾過してケーキを得た。この操作を3回繰り返し(最終濾液のpHは、6であった)て、得られたケーキを窒素気流下130℃で1日間予備乾燥後、53μm以上の粗大粒子を除去し、さらに200℃で2時間減圧乾燥することにより、化学処理スメクタイト80gを得た。
【0062】
固体触媒成分の調製3つ口フラスコ(容積1l)中に上記で得られた化学処理スメクタイト20gを入れヘプタン(73ml)を加えてスラリーとし、これにトリノルマルオクチルアルミニウム(50mmol:濃度145.2mg/mlのヘプタン溶液を126.3ml)を加えて1時間攪拌後、ヘプタンで1/100まで洗浄し、全容積が200mlとなるようにヘプタンを加えた。また別のフラスコ(容積200ml)中で、トルエンを3重量%含有するヘプタン(87ml)に[(r−)ジクロロ〔1,1’−ジメチルシリレンビス{2−メチル−4−(4−クロロフェニル)−4H−アズレニル}〕ジルコニウム](0.3mmol)を加えてスラリーとした後、トリイソブチルアルミニウム(1.5mmol:濃度140mg/mlのヘプタン溶液を2.13ml)を加えて60分室温で攪拌し反応させた。この溶液を、上記の(トリノルマルオクチルアルミニウムと反応させた化学処理スメクタイトが入った)1lフラスコに加えて、室温で60分攪拌した。その後、ヘプタンを213ml追加し、このスラリーを1lオートクレーブに導入した。オートクレーブの内部温度を40℃にした後、プロピレンを10kg/時の速度で2時間、40℃を保ちつつ予備重合を行った。その後、プロピレンフィードを止めて、内部温度は40℃のまま1時間残重合を行った。得られた触媒スラリーの上澄みをデカンテーションで除去し、この固体を3時間減圧乾燥することにより乾燥予備重合触媒72.9gを得た。
【0063】
重合
内容積400lの反応器に液状プロピレン、エチレン、水素およびトリイソブチルアルミニウムのヘキサン希釈溶液を連続的に供給し、内温を60℃に保持した。プロピレンの供給量は、123kg/時であり、エチレンの供給量は、3.5kg/時であり、水素の供給量は、0.21g/時であり、トリイソブチルアルミニウムの供給量は、25g/時であった。前記予備重合触媒を流動パラフィン(東燃社製:ホワイトレックス335)に、濃度が20重量%となるよう調製し、3.0g/時でフィードした。その結果、19kg/時のプロピレンエチレンランダム共重合体を得た。
【0064】
PP−3:プロピレンエチレンランダム共重合体樹脂
以下の方法により製造した。
触媒の調製
内容積0.5リットルの攪拌翼のついたガラス製反応器に、WITCO社製SiO2担持メチルアルミノキサン2.4g(20.7mmol−Al)を添加し、n−ヘプタン50mlを導入し、あらかじめトルエンに希釈した(r)−ジメチルシリレンビス(2−メチルベンゾインデニル)ジルコニウムジクロリド溶液20.0ml(0.0637mmol)を加え、続いてトリイソブチルアルミニウム・n−ヘプタン溶液4.14ml(3.03mmol)を加えた。室温にて2時間反応した後、プロピレンをフローさせ、予備重合を実施した。
【0065】
重合
内容積200リットルの攪拌式オートクレーブ内をプロピレンで十分置換した後、n−ヘプタンで希釈したトリエチルアルミニウムを3g、液化プロピレン45kg、エチレン0.77kgを導入し、内温を30℃に維持した。次いで、先に合成した固体触媒(予備重合ポリマーを除いた重量として)1.0gを加えた。その後、65℃に昇温して重合を開始させ、3時間その温度を維持した。ここでエタノール100mlを添加して反応を停止させた。残ガスをパージし、プロピレンエチレンランダム共重合体を得た。
【0066】
PP−4:プロピレンエチレンランダム共重合体樹脂
以下の方法により製造した。
重合
内容積200リットルの攪拌式オートクレーブをプロピレンで充分置換した後、精製したn−ヘプタン60リットルを導入し、ジエチルアルミニウムクロリド45g、丸紅ソルベ−社製三塩化チタン触媒16gを55℃でプロピレン雰囲気下で導入した。更に、気相部水素濃度を5.5容量%に保ちながら、55℃の温度で、プロピレン5.8kg/時間及びエチレンを0.36kg/時間のフィード速度で4時間フィードした後、更に1時間重合を継続した。その後、生成物を濾過し、乾燥を行って、プロピレンエチレンランダム共重合体を得た。
【0067】
PP−5:プロピレンエチレンランダム共重合体樹脂 ノバテックPP EG7F(日本ポリケム(株)製)
【0068】
上記PP−1〜PP−5の物性を表1にまとめた。
【0069】
【表1】

【0070】
次に実施例、比較例で用いたエチレン系樹脂について説明する。
LLDPE−1:エチレン・1−ヘキセン共重合体樹脂 MFR:30g/10分、密度:0.880g/cm、Mw/Mn:2.0、温度上昇溶離分別(TREF)において80℃における溶出量:100重量%(日本ポリケム(株)製カーネルKJ640(商品名))メタロセン系材料
LLDPE−2:エチレン・1−ヘキセン共重合体樹脂 MFR:11g/10分、密度:0.920g/cm、Mw/Mn:2.4、温度上昇溶離分別(TREF)において80℃における溶出量:87重量%(日本ポリケム(株)製カーネルKC581(商品名))メタロセン系材料
LDPE:高圧法低密度ポリエチレン MFR:14g/10分 密度:0.919g/cm(日本ポリケム(株)製ノバテックLD LC701(商品名))
【0071】
4.プロピレン系樹脂フィルムの製造
(1)OPP−1
PP−1を押出機に投入し、全厚15μmの延伸フィルムになるようにTダイから押出しし、冷却ロールで急冷することにより厚さ0.6mmのシートを得て、このシートをテンター式遂次二軸延伸装置にて110℃で縦方向に5倍、引き続きテンター炉内で160℃に予熱をかけた後158℃で横方向に9倍の延伸倍率で延伸し、5%緩和させつつ158℃で熱セットをかけて、フィルム全厚15μmの単層二軸延伸ポリプロピレン系フィルム(OPP−1)を得た。
【0072】
(2)OPP−2
PP−2パウダー100重量部に、酸化防止剤としてチバガイギー社製イルガノックス1010を0.1重量部、チバガイギー社製イルガフォス168を0.1重量部、ステアリン酸カルシュウムを0.05重量部配合し、ヘルシンキミキサーにて攪拌した後、押出機にて溶融押出し、ペレット化し、表面層用樹脂組成物を得た。中間層用としてPP−1を、表面層用として前記表面層用樹脂組成物を各々個別に2台の押出機に投入し、2層の全厚15μmの延伸フィルムにしたときのスキン層厚みが2μmとなるようにTダイから共押出しし、冷却ロールで急冷することにより厚さ0.6mmのシートを得、このシートをテンター式遂次二軸延伸装置にて110℃で縦方向に5倍、引き続きテンター炉内で160℃に予熱をかけた後158℃で横方向に9倍の延伸倍率で延伸し、5%緩和させつつ158℃で熱セットをかけて、フィルム全厚15μm、表面層厚みが2μmの2種2層二軸延伸ポリプロピレン系フィルム(OPP−2)を得た。
【0073】
(3)OPP−3
表面層用樹脂組成物の原料PPとして、PP−3パウダーを用いたこと以外は、OPP−2の製造と同様の操作を行い、フィルム全厚15μm、表面層厚みが2μmの2種2層二軸延伸ポリプロピレン系フィルム(OPP−3)を得た。
【0074】
(4)OPP−4
表面層用樹脂組成物の原料PPとして、PP−4パウダーを用いたこと以外は、OPP−2の製造と同様の操作を行い、フィルム全厚15μm、表面層厚みが2μmの2種2層二軸延伸ポリプロピレン系フィルム(OPP−4)を得た。
【0075】
(5)OPP―5
中間層用としてPP−1を、表面層用としてPP―5を各々個別に2台の押出機に投入し、2層の全厚15μmの延伸フィルムにしたときのスキン層厚みが2μmとなるようにTダイから共押出しし、冷却ロールで急冷することにより厚さ0.6mmのシートを得、このシートをテンター式遂次二軸延伸装置にて110℃で縦方向に5倍、引き続きテンター炉内で160℃に予熱をかけた後158℃で横方向に9倍の延伸倍率で延伸し、5%緩和させつつ158℃で熱セットをかけて、フィルム全厚15μm、表面層厚みが2μmの2種2層二軸延伸ポリプロピレン系フィルム(OPP−5)を得た。
【0076】
(6)OPP−6
PP−2パウダー100重量部に、酸化防止剤としてチバガイギー社製イルガノックス1010を0.1重量部、チバガイギー社製イルガフォス168を0.1重量部、ステアリン酸カルシュウムを0.05重量部配合し、ヘルシンキミキサーにて攪拌した後、押出機にて溶融押出し、ペレット化し、樹脂組成物を得た。前記樹脂組成物を押出機に投入し、Tダイから押出しし、冷却ロールで急冷することにより厚さ0.6mmのシートを得て、このシートをテンター式遂次二軸延伸装置にて110℃で縦方向に5倍、引き続きテンター炉内で160℃に予熱をかけた後158℃で横方向に9倍の延伸倍率で延伸し、5%緩和させつつ158℃で熱セットをかけて、フィルム全厚15μmの単層二軸延伸ポリプロピレン系フィルム(OPP−6)を得た。
【0077】
<実施例1>
(1)LLDPE−1の90重量%と、LDPEの10重量%とのポリエチレン混合物を口径が90mmの押出機に装着したTダイスから、樹脂温度250℃、幅500mm、肉厚15μmになるようにフィルム状に溶融押出しした。
(2)次いで、押出ラミネート装置の基材の繰出部よりOPP−2を繰り出し、OPP−2の表面層面にTダイスからフィルム状に溶融押出し、表面をマット仕上げした冷却ロールと圧縮ゴムロールで圧着ラミネートした。更に積層されたフィルムの接着樹脂層の表面に20w・分/mのコロナ放電処理を施し、積層フィルムを得た。
(3)次に、得られた積層フィルムのコロナ処理面とオフセット印刷したアート紙をロール温度が70、80、100℃、線圧が55.6Kg、速度が30m/分の圧着機で熱圧着し、プリントラミネート製品を得た。
(4)積層フィルム、印刷紙に加熱接着させた製品の評価を上記の方法で行った。結果を表2、表3に示す。
【0078】
<実施例2>
(1)中間層用にLLDPE−1の80重量%とLDPEの20重量%とのポリエチレン混合物、表面層用にLLDPE−1を各々個別に口径が65mmの2台の押出機に装着したTダイスから、樹脂温度250℃、幅500mm、肉厚が7μmと8μmになるようにフィルム状に2層で溶融共押出しした。
(2)次いで、押出ラミネート装置の基材の繰出部よりOPP−2を繰り出し、OPP−2の表面層面にTダイスからフィルム状に2層で溶融共押出しされた中間層が合わさるように表面をマット仕上げした冷却ロールと圧縮ゴムロールで圧着ラミネートした。更に積層されたフィルムの接着樹脂の表面層表面に20w・分/mのコロナ放電処理を施し、積層フィルムを得た。
(3)以下は実施例1と同様にした。結果を表2、表3に示す。
【0079】
<実施例3>
実施例2(1)においてポリエチレン混合物の溶融共押出し樹脂温度を220℃とする以外は、実施例2と同様に行った。結果を表2、表3に示す。
【0080】
<実施例4>
実施例2(2)においてOPP−2をOPP−3に変えたこと以外は、実施例2と同様に行った。結果を表2、表3に示す。
【0081】
<実施例5>
実施例2(2)においてOPP−2をOPP−4に変えたこと以外は、実施例2と同様に行った。結果を表2、表3に示す。
【0082】
<比較例1>
実施例1(2)においてOPP−2をOPP−1に変えたこと以外は、実施例1と同様に行った。結果を表2、表3に示す。ポリエチレン層と二軸延伸ポリプロピレン系フィルム層との接着強度が、著しく劣り、プリントラミネート製品の光沢、ツブレ性、印刷紙との接着強度、トンネリング性いずれも不十分であり、プリントラミネート適性を示さなかった。
【0083】
<比較例2>
実施例2(2)においてOPP−2をOPP−1に変えたこと以外は、実施例1と同様に行った。結果を表2、表3に示す。ポリエチレン層と二軸延伸ポリプロピレン系フィルム層との接着強度が、著しく劣り、プリントラミネート製品の光沢、ツブレ性、印刷紙との接着強度、トンネリング性いずれも不十分であり、プリントラミネート適性を示さなかった。
【0084】
<比較例3>
(1)LLDPE−2を口径が90mmの押出機に装着したTダイスから、樹脂温度250℃、幅500mm、肉厚15μmになるようにフィルム状に溶融押出しした。
(2)次いで、押出ラミネート装置の基材の繰出部よりOPP−2を繰り出し、OPP−2の表面層面にTダイスからフィルム状に溶融押出し、表面をマット仕上げした冷却ロールと圧縮ゴムロールで圧着ラミネートした。更に積層されたフィルムの接着樹脂層の表面に20w・分/mのコロナ放電処理を施し、積層フィルムを得た。
(3)以下は実施例1と同様にした。結果を表2、表3に示す。ポリエチレン層と二軸延伸ポリプロピレン系フィルム層との接着強度は充分であったが、プリントラミネート製品の光沢、ツブレ性、印刷紙との接着強度、トンネリング性いずれもが著しく劣り、プリントラミネート適性を示さなかった。
【0085】
<比較例4>
(1)中間層用にLLDPE−1 80重量%とLDPE 20重量%との混合物、表面層用にLLDPE−1を各々個別に口径が65mmの2台の押出機に装着したTダイスから、樹脂温度250℃、幅500mm、肉厚が7μmと8μmになるようにフィルム状に2層で溶融共押出しした。
(2)次いで、押出ラミネート装置の基材の繰出部よりOPP−5を繰り出し、Tダイスからフィルム状に2層で溶融共押出しされた中間層が合わさるように表面をマット仕上げした冷却ロールと圧縮ゴムロールで圧着ラミネートした。更に積層されたフィルムの接着樹脂の表面層表面に20w・分/mのコロナ放電処理を施し、積層フィルムを得た。
(3)以下は実施例1と同様にした。結果を表2、表3に示す。ポリエチレン層と二軸延伸ポリプロピレン系フィルム層との接着強度がやや不充分であり、プリントラミネート製品の光沢、ツブレ性、印刷紙との接着強度、トンネリング性いずれも不充分で、プリントラミネート適性を示さなかった。
【0086】
<実施例6>
実施例1(2)において、OPP−2をOPP−6に変えたこと以外は、実施例1と同様に行った。結果を表2、表3に示す。
【0087】
<実施例7>
実施例2(2)において、OPP−2をOPP−6に変えたこと以外は、実施例2と同様に行った。結果を表2、表3に示す。
【0088】
【表2】

【0089】
【表3】

【0090】
本発明方法によれば、特定の結晶性プロピレン系共重合体樹脂から形成されたプロピレン系樹脂フィルムに、アンカーコート剤を介さずに特定の直鎖状エチレン.α−オレフィン共重合体を主成分とするエチレン系樹脂を溶融押出ラミネートで積層することにより、プロピレン系樹脂フィルム層とエチレン系樹脂層との層間接着力が強い積層フィルムが得られる。そのため、アンカーコート剤を必要とせず、アンカーコート剤に使用することによる溶剤除去、回収装置等が不要であり、作業環境への影響、火災発生の危険を避けることができる。また、この積層フィルムについて、印刷紙と熱圧着したプリントラミネート製品は印刷紙との接着力が強固で、外観のすぐれた製品となるし、また、印刷体とは低温でプリントラミネートができ、製品の印刷インクの変色、カール防止ができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
融解ピーク温度が140℃以下の結晶性プロピレン系共重合体樹脂によって形成されたプロピレン系樹脂フィルム表面に、エチレンと炭素数が3〜20のα−オレフィンとを共重合して得た、密度が0.870〜0.910g/cm、MFRが1〜100g/10分の直鎖状エチレン・α−オレフィン共重合体60〜99重量%とMFRが1〜50g/10分の高圧法低密度ポリエチレン1〜40重量%との混合物からなるエチレン系樹脂を、アンカーコート剤を介さずに溶融押出ラミネートすることを特徴とする積層フィルムの製造方法。
【請求項2】
結晶性プロピレン系共重合体樹脂が、全融解熱量(ΔHm)に対する130℃までの融解熱量(ΔHm130)の比(ΔHm130/ΔHm)が0.5以上のものであることを特徴とする請求項1記載の積層フィルムの製造方法。
【請求項3】
結晶性プロピレン系共重合体樹脂が、メタロセン触媒を用いて製造された結晶性プロピレンエチレンランダム共重合体樹脂であることを特徴とする請求項1または2記載の積層フィルムの製造方法。
【請求項4】
直鎖状エチレン・α−オレフィン共重合体が、温度上昇溶離分別(TREF)測定による80℃における溶出量が共重合体全量に対して90重量%以上のものであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の積層フィルムの製造方法。
【請求項5】
直鎖状エチレン・α−オレフィン共重合体が、メタロセン触媒を用いて製造されたものであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の積層フィルムの製造方法。
【請求項6】
エチレン系樹脂の溶融押出ラミネート温度が150〜300℃であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の積層フィルムの製造方法。

【公開番号】特開2007−223331(P2007−223331A)
【公開日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−118034(P2007−118034)
【出願日】平成19年4月27日(2007.4.27)
【分割の表示】特願2002−277540(P2002−277540)の分割
【原出願日】平成14年9月24日(2002.9.24)
【出願人】(596133485)日本ポリプロ株式会社 (577)
【Fターム(参考)】