説明

積層フィルム

【課題】 本発明は、静電気に起因する種々の障害を防止する帯電防止性の湿度依存性が少なく、かつ、長期に亘りその効果が持続し、かつ低温度下における耐ピンホール性に優れ、かつ積層フィルム本来の透明性を保持した、ポリアミド層を有する帯電防止効果の優れる積層フィルムを提供することである。
特に全脂肪族系の積層フィルムを提供すること、電子部品等の包装用の帯電防止フィルムの提供を目的とした。
【解決手段】 ポリアミド樹脂、ポリエーテルエステルアミドエラストマー及び電解質化合物との組成物を含む層、及び特定のアイオノマー樹脂層よりなる積層フィルムを提供すること。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粉体や塵埃等が静電付着し難く、湿度依存性が小さく、長期に亘り持続する帯電防止性が付与された、電子部品等の包装に適する、特定のポリアミド層と特定のアイオノマー層を含む積層フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
ポリアミドフィルムは一般機械物性、熱的特性、バリヤー性はもちろんのこと、包装材料分野で重要視される耐衝撃性、耐摩耗性及び耐ピンホール性に優れていることから、幅広い分野に使用されている。
【0003】
しかしながら、ポリアミドフィルムは、電気抵抗率が高く、帯電しやすいため、帯電した電気を漏洩することができず、表面にほこりが付着したり、静電気に起因する種々の障害が発生する。
これらの欠点を改良する方法として、界面活性剤等を表面に塗布又は、ポリアルキレンオキサイド等の吸水性化合物やアルキルアミン等の低分子型帯電防止剤を樹脂に練り込む方法が知られている。しかし、界面活性剤、ポリアルキレンオキサイドやアルキルアミン等の帯電防止剤は、初期の帯電防止性には優れるもののブリードアウトしやすく且つ耐水性が悪いため、長期間に亘り帯電防止性効果が持続しないという欠点を有している。また、湿度に対する、帯電防止発現効果の依存性が非常に大きい。
【0004】
特許文献1及び特許文献2には、帯電防止効果の持続性を向上させる方法として、ポリアミドとポリオキシアルキレングリコールを主成分とするポリエーテルエステルアミドエラストマーを、熱可塑性樹脂に配合する方法が提案されている。
【0005】
ポリアミドフィルムは、内容物の密着した際に、ポリオレフィン系フィルムと比較して弾性率が高く、硬いため、内容物の表面形状への追従性が悪く、フィルム折り畳み部(屈曲部)において、内容物との摩擦等によりピンホールが生じ易いという問題を有している。
さらに、近年冷凍技術が発達してきたことにより、食品包装後5℃以下の低温雰囲気で扱われることが多くなっている。上記特性中においてもこと実用上、最も重要視される耐ピンホール性、柔軟性についてはその温度依存性が顕著であり、5℃以下といった低温雰囲気での使用において、ピンホールによる充填物の漏れ出し等のトラブルが発生し、実用上必ずしも満足するものではなかった。ポリアミドフィルムを5℃以下といった低温雰囲気での使用を可能とするための改善方法として、特許文献3にポリアミドと、ポリエーテル成分としてポリオキシテトラメチレングリコールを用いたポリエーテルエステルアミドエラストマーかなるポリアミドフィルムが開示されている。
【0006】
特許文献4には、(A)ポリアミド樹脂70〜99.5質量%と、(B)(a)ラクタム、アミノカルボン酸及び、ジアミンとジカルボン酸の塩からなる群より選ばれる少なくとも1種のポリアミド形成単位と、脂肪族ジカルボン酸、脂環族ジカルボン酸及び芳香族ジカルボン酸の中から選ばれる少なくとも1種のジカルボン酸からなるポリアミドハードセグメント、(b)数平均分子量300〜5000の特定構造の芳香環含有ポリエーテルよりなるソフトセグメント、及び(c)アルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属化合物からなり、かつ(a)と(b)の合計質量に対して、(c)が0.01〜5質量%含有されてなるポリエーテルエステルアミドエラストマー30〜0.5質量%とを含むポリアミド樹脂組成物よりなるポリアミドフィルムが開示されている。
【0007】
【特許文献1】特開昭60−23435号公報
【特許文献2】特開昭60−170646号公報
【特許文献3】特開平5−230365号公報
【特許文献4】特開2003−012921号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、静電気に起因する種々の障害を防止する帯電防止性の湿度依存性が少なく、かつ、長期に亘りその効果が持続し、かつ低温度下における耐ピンホール性に優れ、かつ積層フィルム本来の透明性を保持した、ポリアミド層を有する帯電防止効果の優れる積層フィルムを提供することである。
特に全脂肪族系の積層フィルムを提供すること、電子部品等の包装用の帯電防止フィルムの提供を目的とした。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、前述の問題点を解決する積層フィルムの開発を目的に鋭意検討した結果、ポリアミド樹脂、ポリエーテルエステルアミドエラストマー及び電解質化合物との組成物を含む層、及び特定のアイオノマー樹脂層よりなる積層フィルムが帯電防止性、耐ピンホール性、透明性に優れていることを見出し、本発明に到達した。
【0010】
本発明は、ポリアミド樹脂組成物層及びアイオノマー樹脂層との少なくとも2層以上を積層した積層フィルムであり、
(I)ポリアミド樹脂組成物層は、ポリアミド樹脂(A)70〜99.5質量%及びポリアミドエラストマー組成物(B)30〜0.5質量%とを含むポリアミド樹脂組成物であり、
(II)ポリアミドエラストマー組成物(B)は、電解質塩化合物及びポリアミドエラストマー(C)を含み、かつ電解質塩化合物及びポリアミドエラストマー(C)の合計質量100質量%に対して、電解質塩化合物を0.01〜10質量%含み、
(III)ポリアミドエラストマー(C)は、ポリアミドハードセグメント(a)及び数平均分子量300〜5000の下記一般式(1)で示されるポリアルキレンオキサイドを含むソフトセグメント(b)から得られるポリエーテルエステルアミドエラストマーであり、
(IV)ポリアミドエラストマー(C)のポリアミドハードセグメント(a)は、ポリアミド樹脂(A)と同一のポリアミド形成単位をポリアミドハードセグメント(a)100質量%に対し60質量%以上含み、かつ脂肪族ジカルボン酸、脂環族ジカルボン酸及び芳香族ジカルボン酸の中から選ばれる少なくとも1種のジカルボン酸を含み、
(V)アイオノマー樹脂層は、エチレン/不飽和カルボン酸共重合体のカリウムアイオノマー、又はエチレン/不飽和カルボン酸共重合体のカリウムアイオノマー及び熱可塑性重合体とを含むアイオノマー組成物であることを特徴とする積層フィルムを提供することである。
【0011】
【化1】

(式中、Qは炭素数2〜4のアルキレン基、nは1〜50の整数を表す。)
【0012】
本発明の積層フィルムの好ましい態様を以下に示す。本発明では、以下の好ましい態様は複数組み合わせることができる。
1)ポリアミド樹脂(A)は、ε−カプロラクタム、ω−ドデカンラクタム、12−アミノドデカン酸、ヘキサメチレンジアミン・アジピン酸塩からなる群より選ばれる少なくとも1種のポリアミド形成単位からなる単独重合体又は共重合体であることが好ましい。
2)ポリアミドエラストマー(C)は、
(1)ポリアミド樹脂(A)と同一のポリアミド形成単位をポリアミドハードセグメント(a)100質量%に対し60質量%以上含み、かつアジピン酸、セバシン酸、テレフタル酸、イソフタル酸及び3−スルホイソフタル酸ナトリウムからなる群より選ばれる少なくとも一種のジカルボン酸を含むポリアミドハードセグメント(a)、
及び
(2)数平均分子量300〜5000の下記一般式(2)で示されるポリアルキレンオキサイドを含むソフトセグメント(b)から得られるポリエーテルエステルアミドエラストマーであることが好ましい。
【0013】
【化2】

(式中、Rは炭素数2〜3のアルキレン基、nは1〜50の整数を表す。)
3)アイオノマー樹脂層のエチレン/不飽和カルボン酸共重合体のカリウムアイオノマーは、不飽和カルボン酸含量が10〜30質量%、中和度が60%以上であることが好ましい。
4)アイオノマー樹脂層のエチレン/不飽和カルボン酸共重合体のカリウムアイオノマー及び熱可塑性重合体とを含むアイオノマー組成物において、
熱可塑性重合体は、エチレン単独重合体、エチレン/炭素数3〜10のα−オレフィン共重合体、エチレン/酢酸ビニル及び/又は不飽和エステル共重合体から選択されされる重合体を少なくとも1種含み、
エチレン/不飽和カルボン酸共重合体のカリウムアイオノマー20〜90質量%及び熱可塑性重合体80〜10質量%であることが好ましい。
5)ポリアミド樹脂組成物層は最外層に配置されることが好ましく、アイオノマー樹脂層は最内層に配置されることが好ましい。
6)積層フィルムが、電子部品包装用であることが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明の積層フィルムは、特定の電解質化合物が配合されたポリエーテルエステルアミドエラストマーをポリアミド樹脂に添加することにより、帯電防止性、耐ピンホール性に優れ、かつ今まででは考えられないような積層フィルム本来の透明性を保持している。
本発明の積層フィルムは、フィルム表裏面共に、帯電防止性能に優れる。また、最外層に特定のポリアミド樹脂組成物、最内層に特定の熱可塑性樹脂組成物を使用することにより、帯電防止性と共に、耐衝撃性、耐屈曲性をはじめとする機械的強度、透明性、低温シール性、ホットタック性等の特性バランスに優れた積層フィルムを得ることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明の積層フィルムは、ポリアミド樹脂組成物層及びアイオノマー樹脂層との少なくとも2層以上を積層した積層フィルムであり、ポリアミド樹脂組成物層が最外層に、アイオノマー樹脂層が最内層に配置される事が好ましい。
本発明の積層フィルムは、ポリアミド樹脂組成物層及びアイオノマー樹脂層以外に、該ポリアミド樹脂組成物層及びアイオノマー樹脂層を除く他の層を積層することができる。
本発明の積層フィルムの層構成は、ポリアミド樹脂組成物層/アイオノマー樹脂層の2層、ポリアミド樹脂組成物層/他の層/アイオノマー樹脂層、他の層/ポリアミド樹脂組成物層/アイオノマー樹脂層、ポリアミド樹脂組成物層/アイオノマー樹脂層/他の層の3層、前記3層の層間及び/又は表面層のいずれかにポリアミド樹脂組成物層、アイオノマー樹脂層、他の層等を配置した4層以上を示すことができる。
【0016】
ポリアミド樹脂組成物層は、ポリアミド樹脂(A)70〜99.5質量%及びポリアミ0(A)72〜97質量%とポリアミドエラストマー組成物(B)28〜3質量%を含む層、より好ましくはポリアミド樹脂(A)75〜95質量%とポリアミドエラストマー組成物(B)25〜5質量%を含む層である。
ポリアミド樹脂組成物において、ポリアミドエラストマー組成物(B)が、上記の値未満であると、帯電防止性、耐ピンホール性の改良効果が小さく、一方、上記の値を超えると耐熱性が悪化し、また、それに見合う効果の向上が期待できず、経済的に不利となるばかりでなく、均一な厚みのフィルムが得られなくなる。
【0017】
ポリアミド樹脂(A)は、ラクタム、アミノカルボン酸、又はジアミンとジカルボン酸とからなるナイロン塩等のポリアミド形成単位を原料として、溶融重合、溶液重合や固相重合等の公知の方法で重合、又は共重合することにより得ることができる。

【0018】
ラクタムとしては、ε−カプロラクタム、ω−エナントラクタム、ω−ウンデカンラクタム、ω−ドデカンラクタム、α−ピロリドン、α−ピペリドン等が挙げられる。これらは1種又は2種以上を用いることができる。
アミノカルボン酸としては、6−アミノカプロン酸、7−アミノヘプタン酸、9−アミノノナン酸、11−アミノウンデカン酸、12−アミノドデカン酸等が挙げられる。これらは1種又は2種以上を用いることができる。
【0019】
ナイロン塩を構成するジアミンとしては、エチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ペプタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、トリデカメチレンジアミン、テトラデカメチレンジアミン、ペンタデカメチレンジアミン、ヘキサデカメチレンジアミン、ヘプタデカメチレンジアミン、オクタデカメチレンジアミン、ノナデカメチレンジアミン、エイコサメチレンジアミン、2/3−メチル−1,5−ペンタンジアミン、2−メチル−1,8−オクタンジアミン、2,2,4/2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、5−メチル−1,9−ノナンジアミン等の脂肪族ジアミン、1,3/1,4−シクロヘキサンジアミン、1,3/1,4−シクロヘキサンジメチルアミン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)プロパン、ビス(3−メチル−4−アミノシクロヘキシル)メタン、ビス(3−メチル−4−アミノシクロヘキシル)プロパン、5−アミノ−2,2,4−トリメチル−1−シクロペンタンメチルアミン、5−アミノ−1,3,3−トリメチルシクロヘキサンメチルアミン(イソホロンジアミン)、ビス(アミノプロピル)ピペラジン、ビス(アミノエチル)ピペラジン、ノルボルナンジメチルアミン、トリシクロデカンジメチルアミン等の脂環式ジアミン、パラキシリレンジアミン、メタキシリレンジアミン等の芳香族ジアミン等が挙げられる。これらは1種又は2種以上を用いることができる。
【0020】
ナイロン塩を構成するジカルボン酸としては、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカンジカルボン酸、ドデカンジカルボン酸、トリデカンジカルボン酸、テトラデカンジカルボン酸、ペンタデカンジカルボン酸、ヘキサデカンジカルボン酸、オクタデカンジカルボン酸、エイコサンジカルボン酸等の脂肪族ジカルボン酸、1,3/1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジカルボン酸、ノルボルナンジカルボン酸等の脂環式ジカルボン酸、イソフタル酸、テレフタル酸、1,4/1,5/2,6/2,7−ナフタレンジカルボン酸、ジフェニルメタン−4,4’−ジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸等が挙げられる。
【0021】
ポリアミド樹脂(A)の具体例としては、ポリアミド6、ポリアミド7、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド46、ポリアミド66、ポリアミド69、ポリアミド6/10、ポリアミド6/11、ポリアミド6/12、ポリアミド6T、ポリアミド6I、ポリアミドMXD6、ポリアミド6/66(ポリアミド6とポリアミド66のコポリマー、以下、コポリマーは同様に記載)、ポリアミド6/69、ポリアミド6/610、ポリアミド6/611、ポリアミド6/12、ポリアミド6/612、ポリアミド6/6T、ポリアミド6/6I、ポリアミド6/66/610、ポリアミド6/66/12、ポリアミド6/66/612、ポリアミド66/6T、ポリアミド66/6I、ポリアミド6T/6I、ポリアミド66/6T/6I等が挙げられる。これらの中でも、得られる成形品の耐熱性、機械的強度、透明性や経済性、入手の容易さ等を考慮して、ポリアミド6、ポリアミド12、ポリアミド66、ポリアミド6/66、ポリアミド6/12、ポリアミド6/66/12が挙げられる。
【0022】
ポリアミド樹脂(A)のJIS K−6920に準じて測定した相対粘度は、2.0〜5.0であることが好ましく、2.5〜4.5であることがより好ましい。ポリアミド樹脂の相対粘度が前記の値未満であると、得られるポリアミドフィルム等の成形物の機械的性質が低くなる場合がある。また、前記の値を超えると、溶融時の粘度が高くなり、フィルム等の成形が困難となる場合がある。
【0023】
ポリアミド樹脂(A)は、その末端基の種類及びその濃度や分子量分布には特別の制約は無い。
分子量調節や成形加工時の溶融安定化のため、モノアミン、ジアミン、モノカルボン酸、ジカルボン酸のうちの1種あるいは2種以上を適宜組合せて添加することができる。例えば、ラウリルアミン、ステアリルアミン、ヘキサメチレンジアミン、メタキシリレンジアミン等のアミンや酢酸、ステアリン酸、安息香酸、アジピン酸、イソフタル酸、テレフタル酸等のカルボン酸が挙げられる。これら分子量調節剤の使用量は分子量調節剤の反応性や重合条件により異なるが、最終的に得ようとするポリアミドの相対粘度が前記の範囲になるように、適宜決めることができる。
【0024】
ポリアミド樹脂(A)は、さらに、JIS K−6920に規定する低分子量物の含有量の測定方法に準じて測定した水抽出量が1.0%以下であることが好ましく、0.5%以下であることがより好ましい。水抽出量前記の値を超えると、フィルム成形等では、Tダイ付近へのオリゴマー成分の付着が著しく、これら付着物によるダイラインやフィッシュアイの発生により外観不良が生じ易い場合がある。さらに、ポリアミド樹脂(A)は、オレフィン樹脂と比較して吸湿性が大きく、吸湿したものを使用すると、原料を溶融押出しする際、加水分解が起こるためオリゴマーが発生し、フィルム等の成形物の製造が困難となるので、こと前に乾燥し水分含有率が0.1質量%以下であることが好ましい。
【0025】
ポリアミドエラストマー組成物(B)は、電解質塩化合物及びポリアミドエラストマー(C)を含む組成物である。ポリアミドエラストマー組成物(B)の電解質塩化合物の含有量は、ポリアミドエラストマー(C)及び電解質塩化合物の合計100質量%に対し、0.01〜10質量%であり、0.02〜5質量%であることが好ましく、0.05〜3質量%であることがより好ましい。電解質塩化合物の含有量が、前記の値未満であると帯電帯電防止性能が劣り、一方、前記の値を超えるととフィルムの表面外観が劣るものとなる。
特に、ポリアミドエラストマー(C)のソフトセグメント(b)のアルキレンオキサイドのモル数に対する電解質塩化合物中のアルカリ金属又はアルカリ土類金属のカチオンのモル数に留意が必要である。ソフトセグメント(b)のアルキレンオキサイドに対する電解質塩化合物中のアルカリ金属又はアルカリ土類金属のカチオンのモル数を飽和溶解濃度以下にすることが望ましい。飽和溶解濃度以上の場合はソフトセグメント(b)のアルキレンオキサイドに未溶解の電解質塩化合物成分は帯電防止効果に寄与しないことが考えられる。
【0026】
ポリアミドエラストマー(C)は、ポリアミドハードセグメント(a)及び数平均分子量300〜5000の下記一般式(1)、好ましくは下記一般式(2)で示されるポリアルキレンオキサイドを含むソフトセグメント(b)から得られるポリエーテルエステルアミドエラストマーである。
【0027】
【化3】

(式中、Qは炭素数2〜4のアルキレン基、nは1〜50の整数を表す。)
【0028】
【化4】

(式中、Rは炭素数2〜3のアルキレン基、nは1〜50の整数を表す。)
【0029】
ポリアミドエラストマー(C)を構成するソフトセグメント(b)の使用量は、前記ハードセグメント(a)とソフトセグメント(b)の合計質量100質量%に対し、20〜80質量%であることが好ましく、25〜75質量%であることがより好ましい。ソフトセグメント(b)の量が上記の範囲より小さいと、帯電防止性が劣り、ソフトセグメント(b)の量が上記の範囲を超えると耐熱性が低下するために好ましくない。
【0030】
ポリアミドエラストマー(C)のハードセグメント(a)は、両末端にカルボキシル基を有するポリアミドであり、ラクタム、アミノカルボン酸、又はジアミンとジカルボン酸とからなるナイロン塩からなる単位等のポリアミド樹脂(A)と同一のポリアミド形成単位をハードセグメント(a)100質量%に対し、少なくとも60質量%、より好ましくは70質量%、さらに好ましくは80質量%含み、かつ脂肪族ジカルボン酸、脂環族ジカルボン酸及び芳香族ジカルボン酸の中から選ばれる少なくとも1種のジカルボン酸を含むことにより、得られるフィルム等の成形物の透明性が優れる。ポリアミド樹脂(A)と同一のポリアミド形成単位が60質量%未満であると、得られる積層フィルムの透明性が劣る。
【0031】
ポリアミドエラストマー(C)のハードセグメント(a)のジカルボン酸は、分子量調整剤として使用し、この存在下に上記ポリアミド形成単位を常法により開環重合あるいは重縮合させることによって両末端カルボキシル基を有するポリアミドが得られる。
【0032】
ポリアミドエラストマー(C)のハードセグメント(a)のジカルボン酸としては、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカンジカルボン酸、ドデカンジカルボン酸等の脂肪族ジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジカルボン酸等の脂環族ジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、1,4/1,5/2,6/2,7−ナフタレンジカルボン酸、ジフェニルメタン−4,4’−ジカルボン酸、3−スルホイソフタル酸ナトリウム、3−スルホイソフタル酸カリウム等の3−スルホイソフタル酸アルカリ金属塩等の芳香族ジカルボン酸が挙げられる。これらは1種又は2種以上を用いることができる。これらの中でも、脂肪族ジカルボン酸、芳香族ジカルボン酸、3−スルホイソフタル酸アルカリ金属塩が好ましく、アジピン酸、セバシン酸、テレフタル酸、イソフタル酸及び3−スルホイソフタル酸ナトリウムがより好ましい。
【0033】
ポリアミドエラストマー(C)のハードセグメント(a)の数平均分子量は、500〜5000であることが好ましく、500〜3000であることがより好ましい。数平均分子量が前記の値未満であると、ポリアミドエラストマー(C)自体の耐熱性が低下する場合があり、前記の値を超えると、反応性が低下するためポリアミドエラストマー(C)製造時に多大な時間を要する。
【0034】
Qは、炭素数2〜4のアルキレン基であり、−CHCH−、−CHCHCH−、−CHCH(CH)−、−CHCHCHCH−が挙げられる。これらは1種又は2種以上を用いることができる。
特に、Qは、−CHCH−であることがに制電性が優れるために好ましい。
Rは、炭素数2〜3のアルキレン基であり、−CHCH−、−CHCHCH−、−CHCH(CH)−が挙げられる。これらは1種又は2種以上を用いることができる。
【0035】
ポリアミドエラストマー(C)のソフトセグメント(b)において、一般式(1)又は一般式(2)で示されるポリアルキレンオキサイドの数平均分子量は300〜5000であり、500〜4000であることが好ましく、1000〜3000であることがより好ましく、1500〜3000であることがさらに好ましい。ポリアルキレンオキサイドの数平均分子量が、前記の値未満であると帯電防止性が不十分となり、前記の値を超えると、反応性が低下するためポリアミドエラストマー(C)製造時に多大な時間を要する。
【0036】
ポリアミドエラストマー(C)の製法は特に限定されるものではないが、例えば下記製法[1]又は製法[2]を例示することができる。
製法[1]:ポリアミド形成単位とジカルボン酸を反応させてハードセグメント(a)を形成せしめ、これにソフトセグメント(b)を加えて、高温、減圧下で重合反応を行う方法。
製法[2]:ハードセグメント(a)を形成するポリアミド形成単位及びジカルボン酸と、ソフトセグメント(b)を同時に反応槽に仕込み、水の存在下又は非存在下に、高温で加圧反応させることによって中間体を生成させ、その後減圧下でハードセグメント(a)とソフトセグメント(b)との重合反応を行う方法。
【0037】
上記の重合反応には、通常、公知のエステル化触媒が使用される。該触媒としては、例えば三酸化アンチモン等のアンチモン系触媒、モノブチルスズオキシド等のスズ系触媒、テトラブチルチタネート等のチタン系触媒、テトラブチルジルコネート等のジルコニウム系触媒、酢酸ジルコニル、酢酸亜鉛等の有機酸金属塩系触媒等が挙げられる。触媒の使用量は、ハードセグメント(a)とソフトセグメント(b)の合計質量に対して、0.1〜5質量%であることが好ましい。
【0038】
ポリアミドエラストマー(C)の相対粘度(0.5質量%、m−クレゾール溶液、25℃)は、1.2〜3.0であることが好ましく、1.3〜2.5であることがより好ましい。相対粘度が前記の値未満であると耐熱性が悪くなる場合があり、前記の値を超えると、製造時に多大な時間を要する場合がある。
【0039】
ポリアミドエラストマー組成物(B)に含まれる電解質塩化合物は、本発明の積層フィルムの耐ピンホール性を低下させることなく、湿度依存性がほとんどなく、かつ優れた帯電防止性能を付与することができる。
【0040】
電解質塩化合物は、アルカリ金属又はアルカリ土類金属のカチオンと、イオン解離可能なアニオンとによって構成される金属塩成分である。
アルカリ金属イオンとしては、ナトリウム、カリウム、リチウム、セシウム等が挙げられる。
アルカリ土類金属イオンとしては、マグネシウム、カルシウムが挙げられる。これらは1種又は2種以上を用いることができる。これらの中でも、イオン半径の小さいナトリウム、カリウム、リチウムが好ましく、ナトリウム、リチウムがより好ましい。
【0041】
電解質塩化合物のイオン解離可能なアニオンとしては、過塩素酸、過臭素酸等の過ハロゲン酸アニオン、塩素酸、臭素酸等のハロゲン酸アニオン、塩素、臭素、フッ素、ヨウ素等のハロゲンアニオン、オクチルスルホン酸、ステアリルスルホン酸等のアルキルスルホン酸アニオン、ドデシルベンゼンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸等のアリールスルホン酸アニオン、ラウリル硫酸、エチル硫酸等のアルキル硫酸アニオン、硫酸アニオン、酢酸、プロピオン酸等のカルボン酸アニオン、アルキルリン酸アニオン、リン酸アニオン、亜リン酸アニオン、硝酸アニオン、石炭酸アニオン、テトラフルオロホウ素、ヘキサフルオロヒ素、ヘキサフルオロリン等のハロゲン化物アニオン、トリクロロメタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、トリス(トリフルオロメタンスルホニル)メタン、トリクロロ酢酸、トリフルオロ酢酸等のハロゲン化アルキルを有する有機酸アニオン、チオシアン酸アニオン、テトラフェニルホウ素アニオン等が挙げられる。これらは1種又は2種以上を用いることができる。
これらの中でも、過塩素酸、トリフルオロメタンスルホン酸、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、トリス(トリフルオロメタンスルホニル)メタンアニオンが好ましく、過塩素酸アニオンがより好ましい。
【0042】
電解質塩化合物の具体例としては、過塩素酸リチウムLiClO、過塩素酸ナトリウムNaClO、トリフルオロメタンスルホン酸リチウムLi(CFSO)、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドリチウムLi・N(CFSO、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドナトリウムNa・N(CFSO、トリス(トリフルオロメタンスルホニル)メタンリチウムLi・C(CFSO、トリス(トリフルオロメタンスルホニル)メタンナトリウムNa・C(CFSO等が挙げられる。これらは1種又は2種以上を用いることができる。
これらの中でも、過塩素酸ナトリウム、過塩素酸リチウム、トリフルオロメタンスルホン酸ナトリウム、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドナトリウム、トリス(トリフルオロメタンスルホニル)メタンナトリウムがさらに好ましく、過塩素酸ナトリウムが特に好ましい。
【0043】
ポリアミドエラストマー組成物(B)において、
電解質塩化合物をポリアミドエラストマー(C)に添加する方法としては、組成物中に効果的に分散させるため、ポリアミドエラストマー(C)に予め分散させておくことが望ましく、特にポリアミドエラストマー(C)の製造時に予め添加し分散させることことが望ましい。
ここで、電解質塩化合物の存在下にポリアミドエラストマー(C)を製造するには、該エラストマーの重合前、重合中、あるいは重合後エラストマーの分離・回収前に、該電解質塩化合物を一括又は分割して添加すればよい。また、この電解質塩化合物の添加方法としては、そのまま添加してもよく、重合成分にあらかじめ溶解して添加してもよく、さらには別の溶媒に溶解して添加してもよい。
【0044】
ポリアミド樹脂組成物の調製方法としては、ポリアミド樹脂(A)とポリアミドエラストマー組成物(B)とを公知の方法で混合又は混練することによって製造される。
ポリアミド樹脂組成物は、本発明の特性を損なわない範囲でさらに必要に応じて各種添加剤を配合し、公知の方法で混合又は混練することによって製造される。例えば、タンブラーやミキサーを用いて、成形時にポリアミド樹脂原料に直接添加するドライブレンド法、成形時に使用する濃度で予めポリアミド樹脂原料に一軸又は二軸の押出機を用いて溶融混練する練り込み法、あるいは予め高濃度でポリアミド樹脂原料に一軸又は二軸の押出機を用いて練り込み、これを成形時に希釈して使用するマスターバッチ法等が挙げられる。
【0045】
ポリアミド樹脂組成物は、得られるフィルムの特性を損なわない範囲内で、熱安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、耐候剤、滑剤、フィラー、核剤、可塑剤、発泡剤、ブロッキング防止剤、防雲剤、難燃剤、染料、顔料、安定剤、カップリング剤等の各種添加剤を含有することができる。
【0046】
ポリアミド樹脂組成物は、得られるフィルムの帯電防止効果を更に向上させる目的で、非イオン性、カチオン性もしくは両性の界面活性剤を含有させてもよい。非イオン性界面活性剤としては、高級アルコールエチレンオキサイド付加物、脂肪酸エチレンオキサイド付加物、高級アルキルアミンエチレンオキサイド付加物、ポリプロピレングリコールエチレンオキサイド付加物等のポリエチレングリコール型非イオン界面活性剤、ポリエチレンオキサイド、グリセリンの脂肪酸エステル、ペンタエリスリットの脂肪酸エステル、ソルビット及びソルビタンの脂肪酸エステル、多価アルコールのアルキルエーテル、アルカノールアミン類の脂肪族アミド等の多価アルコール型非イオン界面活性剤等が挙げられる。カチオン性界面活性剤としては、アルキルトリメチルアンモニウム塩等の第4級アンモニウム塩類等が挙げられる。両性界面活性剤としては、高級アルキルアミノプロピオン酸塩等のアミノ酸型両性界面活性剤、高級アルキルジメチルベタイン、高級アルキルジヒドロキシエチルベタイン等のベタイン型両性界面活性剤等が挙げられる。これらは1種又は2種以上を用いることができる。
【0047】
ポリアミド樹脂組成物は、得られるフィルムの耐ピンホール性をさらに向上させる目的で、フィルムの透明性を損なわない範囲内で、オレフィン系共重合体、及びその変性物やエラストマーを含有させることができる。オレフィン系共重合体の具体例としては、エチレン/α−オレフィン系共重合体、エチレン/α,β−不飽和カルボン酸エステル系共重合体、エチレン/酢酸ビニル部分鹸化物系共重合体、エチレン/α,β−不飽和カルボン酸系共重合体、アイオノマー重合体等が挙げられる。エラストマーとしては、本発明の範囲外のポリエーテルアミド、ポリエーテルエステルアミド、ポリエステルアミド等のポリアミド系エラストマー、両末端にポリスチレン相、ゴム中間相として水素添加型ポリオレフィンをもちポリスチレン相が架橋点を担っているブロック共重合体であるスチレン系エラストマー等が挙げられる。これらは1種又は2種以上を用いることができる。
【0048】
アイオノマー樹脂層は、エチレン/不飽和カルボン酸共重合体のカリウムアイオノマー、又はエチレン/不飽和カルボン酸共重合体のカリウムアイオノマー及び熱可塑性重合体とを含むアイオノマー組成物を含む層である。
【0049】
カリウムアイオノマーのベースポリマーとなるエチレン/不飽和カルボン酸共重合体は、エチレンと不飽和カルボン酸、さらに任意に他の極性単量体を共重合して得られるものである。
【0050】
エチレン/不飽和カルボン酸共重合体の不飽和カルボン酸としては、アクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、無水マレイン酸、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノエチル等が挙げられる。これらは1種又は2種以上を用いることができる。これらの中でも、アクリル酸、メタクリル酸が好ましい。
【0051】
エチレン/不飽和カルボン酸共重合体において、共重合成分となりうる他の極性単量体としては、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸n−ヘキシル、アクリル酸−2−エチルヘキシル、アクリル酸イソオクチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸イソブチル、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチル等の不飽和カルボン酸エステル、一酸化炭素等が挙げられる。これらは1種又は2種以上を用いることができる。これらの中でも、不飽和カルボン酸エステルが好ましく、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチルがより好ましい。
他の極性単量体の含有率は、カリウムアイオノマー100質量%中に、0〜40質量%であることが好ましく、0〜30質量%であることがより好ましく、0〜20質量%であることがさらに好ましい。一般に、該他の極性単量体の含有量が前記の値を超えると、耐磨耗性、耐熱性に劣る場合がある。
エチレン/不飽和カルボン酸共重合体は、エチレンと不飽和カルボン酸、さらに必要に応じて他の極性単量体を、高温、高圧下でラジカル共重合等の公知の重合法により得ることができる。
【0052】
カリウムアイオノマーとは、エチレン/不飽和カルボン酸共重合体中のカルボキシル基の一部又は全部がカリウムイオンの中和によりイオン化されたものである。
カリウムアイオノマーとして、ベースポリマーとなるエチレン/不飽和カルボン酸共重合体の不飽和カルボン酸含有量や中和度が小さすぎると、優れた帯電防止性を有する積層フィルムを得ることが容易でない場合がある。
エチレン/不飽和カルボン酸共重合体の不飽和カルボン酸含有量は、エチレン/不飽和カルボン酸共重合体100質量%に対し、10〜30質量%であることが好ましく、10〜25質量%であることがより好ましく、カルボキシル基のカリウムイオンによる中和度は、カルボキシル基100モル%に対し60モル%以上であることが好ましく、70モル%以上であることがより好ましい。
さらに、帯電防止性能の優れた積層フィルムを得るために、平均酸含有量の異なる2種以上のエチレン/不飽和カルボン酸共重合体のカリウムアイオノマーを混合物が好ましい。2種以上のエチレン/不飽和カルボン酸共重合体のカリウムアイオノマーにおいて、混合エチレン/不飽和カルボン酸共重合体のカリウムアイオノマーの平均酸含有量が、エチレン/不飽和カルボン酸共重合体100質量%に対し、10〜30質量%であることが好ましく、10〜20質量%であることがより好ましく、最高酸含有量と最低酸含有量との酸含有量の差(最高酸含量−最低酸含量)が、1質量%以上であることが好ましく、2〜20質量%であることがより好ましい。。
【0053】
より具体的には、不飽和カルボン酸含有量が1〜10質量%、好ましくは2〜10質量%、190℃、2160g荷重におけるメルトフローレートが1〜600g/10分、好ましくは10〜500g/10分のエチレン/不飽和カルボン酸共重合体(X−1)と、不飽和カルボン酸含有量が11〜25質量%、好ましくは13〜23質量%、190℃、2160g荷重におけるメルトフローレートが1〜600g/10分、好ましくは10〜500g/10分のエチレン/不飽和カルボン酸共重合体(X−2)の2種を少なくとも含み、平均不飽和カルボン酸含有量が10〜20質量%、好ましくは11〜15質量%、190℃、2160g荷重における平均メルトフローレートが1〜300g/10分、好ましくは10〜200g/10分、より好ましくは20〜150g/10分の混合エチレン/不飽和カルボン酸共重合体であって、上記カリウムイオンによる中和度を有する混合アイオノマーが特に好ましい。混合アイオノマーにおいて、共重合体(X−1)と共重合体(X−2)の合計量に基づいて、共重合体(X−1)の混合割合は、2〜60質量%であることが好ましく、5〜50質量%であることがより好ましく、共重合体(X−2)の混合割合は、98〜40質量%であることが好ましく、95〜50質量%であることがより好ましい。
【0054】
カリウムアイオノマーの加工性や他成分を配合する場合の混和性等を考慮すると、190℃、2160g荷重におけるメルトフローレートが、0.1〜100g/10分であることが好ましく、0.2〜50g/10分であることがより好ましい。
【0055】
アイオノマー樹脂層は、カリウムアイオノマーのみで構成されていてもよいが、積層フィルムの非帯電性に悪影響を与えない範囲において、他の熱可塑性重合体を配合することができる。
このような熱可塑性重合体としては、オレフィン系重合体が挙げられる。オレフィン系重合体としては、直鎖状低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ−1−ブテン、ポリ−1−ヘキセン、ポリ−1−オクテン、ポリ−1−デセン、ポリ−4−メチルー1−ペンテン等の単独重合体、エチレン/炭素数3〜12のα−オレフィン共重合体、エチレン/ビニルエステル共重合体(ビニルエステルとしては、酢酸ビニル、プロピンオン酸ビニル等)、エチレン/不飽和カルボン酸共重合体(不飽和カルボン酸としては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸モノエチル、無水マレイン酸等)、エチレン/不飽和カルボン酸共重合体のNa、Li、Zn、Mg、Ca等のアイオノマー、エチレン/不飽和カルボン酸エステル共重合体(不飽和カルボン酸エステルとしては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸nブチル、アクリル酸−2−エチルヘキシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸グリシジル、マレイン酸ジメチル等)、エチレン/不飽和カルボン酸/不飽和カルボン酸エステルの共重合体、エチレン/不飽和カルボン酸/不飽和カルボン酸エステルの共重合体のNa、Li、Zn、Mg、Ca等のアイオノマー、エチレン/一酸化炭素共重合体、エチレン/一酸化炭素/不飽和カルボン酸エステル共重合体、エチレン/一酸化炭素/ビニルエステル共重合体等が挙げられる。これらは1種又は2種以上を用いることができる。これらの中でも、エチレン系重合体が好ましく、ポリエチレンがより好ましく、直鎖状低密度ポリエチレンがさらに好ましい。直鎖状低密度ポリエチレンは、エチレンと炭素数3以上のα−オレフィンとの共重合体であって、密度が0.88〜0.93g/cmであることが好ましく、0.89〜0.92g/cmであることがより好ましく、190℃、2160g荷重におけるMFRが、0.1〜100g/10分であることが好ましく、0.2〜80g/10分であることがより好ましい。また、該共重合体における炭素数3以上のα−オレフィンとしては、炭素数4〜12であることが好ましく、炭素数5〜10であることがより好ましい。。
エチレン系重合体としては、必ずしもバージン品を使用する必要はなく、例えば、積層フィルムの成形の際に生ずるオフスペック品や耳等の成形屑をリサイクル使用してもよい。
【0056】
アイオノマー樹脂層のエチレン/不飽和カルボン酸共重合体のカリウムアイオノマー及び熱可塑性重合体とを含むアイオノマー組成物は、エチレン/不飽和カルボン酸共重合体のカリウムアイオノマー20〜100質量%(但し、100質量%を除く)及び熱可塑性重合体80〜0質量%(但し、0質量%を除く)を含む組成物であることが好ましく、エチレン/不飽和カルボン酸共重合体のカリウムアイオノマー25〜90質量%及び熱可塑性重合体75〜10質量%を含む組成物であることがより好ましく、エチレン/不飽和カルボン酸共重合体のカリウムアイオノマー25〜80質量%及び熱可塑性重合体75〜20質量%を含む組成物であることがさらに好ましい。
【0057】
アイオノマー樹脂に対して、帯電防止性能を更に向上させる目的で、非イオン性、アニオン性、カチオン性もしくは両性の界面活性剤を含有させてもよい。非イオン性界面活性剤としては、高級アルコールエチレンオキサイド付加物、脂肪酸エチレンオキサイド付加物、高級アルキルアミンエチレンオキサイド付加物、ポリプロピレングリコールエチレンオキサイド付加物等のポリエチレングリコール型非イオン界面活性剤、ポリエチレンオキサイド、グリセリンの脂肪酸エステル、ペンタエリスリットの脂肪酸エステル、ソルビット及びソルビタンの脂肪酸エステル、多価アルコール系化合物、アミノアルコール系化合物等の多価アルコール型非イオン界面活性剤等が挙げられる。アニオン性界面活性剤としては、高級脂肪酸のアルカリ金属塩等のカルボン酸塩類、高級アルコール硫酸エステル塩、高級アルキルエーテル硫酸エステル塩等の硫酸エステル塩類、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルスルホン酸塩、パラフィンスルホン酸塩等のスルホン酸塩類、高級アルコールリン酸エステル塩等のリン酸エステル塩類等が挙げられる。カチオン性界面活性剤としては、アルキルトリメチルアンモニウム塩等の第4級アンモニウム塩類等が挙げられる。両性界面活性剤としては、高級アルキルアミノプロピオン酸塩等のアミノ酸型両性界面活性剤、高級アルキルジメチルベタイン、高級アルキルジヒドロキシエチルベタイン等のベタイン型両性界面活性剤等が挙げられる。これらは1種又は2種以上を用いることができる。
【0058】
アイオノマー樹脂には、帯電防止性能を向上させるために、上記例示の中でも、アルコール性水酸基を2個以上有する多価アルコール系化合物、アミノアルコール系化合物を配合することが好ましい。該化合物の分子量は、2000以下であることが好ましく、1000以下であることがより好ましい。多価アルコール系化合物としては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレングリコール等のポリオキシアルキレングリコール、グリセリン、ヘキサントリオール、ペンタエリスリトール、ソルビトール等の多価アルコール、及びこれらのエチレンオキシド付加物、多価アミンとアルキレンオキシドの付加物等が挙げられる。これらは1種又は2種以上を用いることができる。
これらの中でも、ポリエチレングリコール、グリセリンが好ましい。
【0059】
アイオノマー樹脂において、多価アルコール系化合物又はアミノアルコール系化合物の配合量は、カリウムアイオノマー100質量%に対して、0.1〜30質量%であることが好ましく、1〜20質量%であることがより好ましく、2〜15質量%であることがさらに好ましい。多価アルコール系化合物又はアミノアルコール系化合物を、上述のようなカリウムアイオノマーと併用することより、相当量配合しても組成物中に取りこまれブリードアウトすることは少ないが、前記の値を超えると、ブリードアウトする場合がある。一方、前記の値未満であるとと、低湿度下における帯電防止性能が不足気味となる場合がある。
【0060】
アミノアルコール系化合物としては、具体的には、ジエタノールアミン、ジプロパノールアミン、ジペンタノールアミン、N−メチルエタノールアミン、N−エチルプロパノールアミン等の化学式(3)で示されるアルカノールアミン、化学式(4)で示されるアルキルアミンのアルキレンオキシド付加物、化学式(5)で示されるアルキルアミドのアルキレンオキシド付加物等が挙げられる。これらは1種又は2種以上を用いることができる。これらの中でも、ジエタノールアミンが好ましい。
【0061】
【化5】

(式3中、Rはアルキレン基、Rは水素原子又はアルキル基、nは1〜3の整数。)
【0062】
【化6】

(式4中、Rは炭素数12〜22程度のアルキル基、m、nは任意の整数。)
【0063】
【化7】

(式中、Rは炭素数12〜22程度のアルキル基、m、nは任意の整数。)
【0064】
アイオノマー樹脂の調製方法としては、エチレン/不飽和カルボン酸共重合体のカリウムアイオノマー又は該カリウムアイオノマーと熱可塑性重合体に、必要に応じて各種添加剤を配合し、公知の方法で混合することによって製造される。例えば、タンブラーやミキサーを用いて、成形時にこれら原料を直接添加するドライブレンド法、成形時に使用する濃度で予め樹脂原料を一軸又は二軸の押出機を用いて溶融混練する練り込み法、あるいは予め高濃度で樹脂原料を一軸又は二軸の押出機を用いて練り込み、これを成形時に希釈して使用するマスターバッチ法等が挙げられる。
【0065】
本発明の積層フィルムにおいて、ポリアミド樹脂組成物層及びアイオノマー樹脂層の間に、カルボキシル基、酸無水物基、カルボン酸エステル基、カルボン酸金属塩、カルボン酸イミド基、カルボン酸アミド基、エポキシ基から選ばれる少なくとも1種類の官能基を含有するポリオレフィン重合体を含む接着層を設けることができる。
【0066】
上記の官能基を含む化合物の例として、アクリル酸、メタアクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、クロトン酸、メチルマレイン酸、メチルフマル酸、メサコン酸、シトラコン酸、グルタコン酸、シス−4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸、エンドビシクロ−[2,2,1]−5−ヘプテン−2,3−ジカルボン酸及びこれらカルボン酸の金属塩、マレイン酸モノメチル、イタコン酸モノメチル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ヒドロキシエチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ヒドロキシエチル、メタクリル酸アミノエチル、マレイン酸ジメチル、イタコン酸ジメチル、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸、エンドビシクロ−[2,2,1]−5−ヘプテン−2,3−ジカルボン酸無水物、マレイミド、N−エチルマレイミド、N−ブチルマレイミド、N−フェニルマレイミド、アクリルアミド、メタクリルアミド、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、エタクリル酸グリシジル、イタコン酸グリシジル、シトラコン酸グリシジル等が挙げられる。
【0067】
本発明の積層フィルムにおいて、ポリアミド樹脂組成物層及びアイオノマー樹脂層、さらに上記接着層を除く他の層としては、高密度ポリエチレン(HDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)、ポリプロピレン(PP)、エチレン/プロピレン共重合体(EPR)、エチレン/ブテン共重合体(EBR)、エチレン/酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン/酢酸ビニル共重合体鹸化物(EVOH)、エチレン/アクリル酸共重合体(EAA)、エチレン/メタクリル酸共重合体(EMAA)、エチレン/アクリル酸メチル共重合体(EMA)、エチレン/メタクリル酸メチル共重合体(EMMA)、エチレン/アクリル酸エチル共重合体(EEA)等の本発明に規定以外のポリオレフィン系樹脂、、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンイソフタレート(PEI)、ポリへキシレンテレフタラート(PCT)、PET/PEI共重合体、ポリアリレート(PAR)、ポリブチレンナフタレート(PBN)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、液晶ポリエステル(LCP)等のポリエステル系樹脂、ポリアセタール(POM)、ポリフェニレンオキシド(PPO)等のポリエーテル系樹脂、ポリサルホン(PSF)、ポリエーテルスルホン(PES)等のポリサルホン系樹脂、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリチオエーテルサルホン(PTES)等のポリチオエーテル系樹脂、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリアリルエーテルケトン(PAEK)等のポリケトン系樹脂、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリメタクリロニトリル、アクリロニトリル/スチレン共重合体(AS)、メタクリロニトリル/スチレン共重合体、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン共重合体(ABS)、メタクリロニトリル/スチレン/ブタジエン共重合体(MBS)等のポリニトリル系樹脂、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリメタクリル酸エチル(PEMA)等のポリメタクリレート系樹脂、ポリ酢酸ビニル(PVAc)等のポリビニルエステル系樹脂、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、ポリ塩化ビニル(PVC)、塩化ビニル/塩化ビニリデン共重合体、塩化ビニリデン/メチルアクリレート共重合体等のポリ塩化ビニル系樹脂、酢酸セルロース、酪酸セルロース等のセルロース系樹脂、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)、ポリフッ化ビニル(PVF)、エチレン/テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、エチレン/クロロトリフルオロエチレン共重合体(ECTFE)、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体(TFE/HFP,FEP)、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン/ビニリデンフルオライド共重合体(TFE/HFP/VDF,THV)、テトラフルオロエチレン/フルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体(PFA)等のフッ素系樹脂、ポリカーボネート(PC)等のポリカーボネート系樹脂、熱可塑性ポリイミド(PI)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリエーテルイミド等のポリイミド系樹脂、熱可塑性ポリウレタン樹脂、ポリカーボネート(PC)等のポリカーボネート系樹脂、熱可塑性ポリイミド(PI)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリエーテルイミド等のポリイミド系樹脂、熱可塑性ポリウレタン系樹脂、ポリカプロアミド(ポリアミド6)、ポリウンデカンアミド(ポリアミド11)、ポリドデカンアミド(ポリアミド12)、ポリエチレンアジパミド(ポリアミド26)、ポリテトラメチレンアジパミド(ポリアミド46)、ポリヘキサメチレンアジパミド(ポリアミド66)、ポリヘキサメチレンアゼラミド(ポリアミド69)、ポリヘキサメチレンセバカミド(ポリアミド610)、ポリヘキサメチレンウンデカミド(ポリアミド611)、ポリヘキサメチレンドデカミド(ポリアミド612)、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド(ポリアミド6T)、ポリヘキサメチレンイソフタルアミド(ポリアミド6I)、ポリヘキサメチレンヘキサヒドロテレフタラミド(ポリアミド6T(H))、ポリノナメチレンアジパミド(ポリアミド96)、ポリノナメチレンアゼラミド(ポリアミド99)、ポリノナメチレンセバカミド(ポリアミド910)、ポリノナメチレンウンデカミド(ポリアミド911)、ポリノナメチレンドデカミド(ポリアミド912)、ポリノナメチレンテレフタラミド(ポリアミド9T)、ポリトリメチルメキサメチレンテレフタラミド(ポリアミドTMHT)、ポリノナメチレンイソフタラミド(ポリアミド9I)、ポリノナメチレンナフタラミド(ポリアミド9N)、ポリノナメチレンヘキサヒドロテレフタラミド(ポリアミド9T(H))、ポリデカメチレンアジパミド(ポリアミド106)、ポリデカメチレンアゼラミド(ポリアミド109)、ポリデカメチレンデカミド(ポリアミド1010)、ポリデカメチレンドデカミド(ポリアミド1012)、ポリデカメチレンテレフタラミド(ポリアミド10T)、ポリデカメチレンイソフタラミド(ポリアミド10I)、ポリデカメチレンナフタラミド(ポリアミド10N)、ポリデカメチレンヘキサヒドロテレフタラミド(ポリアミド10T(H))、ポリドデカメチレンアジパミド(ポリアミド126)、ポリドデカメチレンアゼラミド(ポリアミド129)、ポリドデカメチレンセバカミド(ポリアミド1210)、ポリドデカメチレンドデカミド(ポリアミド1212)、ポリドデカメチレンテレフタラミド(ポリアミド12T)、ポリドデカメチレンイソフタラミド(ポリアミド12I)、ポリドデカメチレンナフタラミド(ポリアミド12N)、ポリドデカメチレンヘキサヒドロテレフタラミド(ポリアミド12T(H))、ポリメタキシリレンアジパミド(ポリアミドMXD6)、ポリビス(4−アミノシクロヘキシル)メタンドデカミド(ポリアミドPACM12)、ポリビス(3−メチル−4−アミノシクロヘキシル)メタンドデカミド(ポリアミドジメチルPACM12)、ポリイソホロンアジパミド(ポリアミドIPD6)、ポリイソホロンテレフタラミド(ポリアミドIPDT)やこれらポリアミド原料モノマ−を数種用いた共重合体等の本発明に規定された以外のポリアミド系樹脂、ポリエステルエラストマー、ポリウレタンエラストマー等の熱可塑性樹脂を用いることができる。
【0068】
本発明の積層フィルムにおいて、ポリアミド樹脂組成物層及びアイオノマー樹脂層、さらに上記接着層を除く他の層としては、紙、アルミニウムや銅等の金属、織布、不織布等の布、木材等を用いることができる。
【0069】
本発明の積層フィルムでは、各層の厚さは特に制限されず、各層を構成する種類、積層フィルムにおける全体の層数等は用途等に応じて調節し得るが、それぞれの層の厚みは、積層フィルムの透明性、耐衝撃性、耐摩耗性及び耐屈曲性、帯電防止性等の特性、及びコストを考慮して決定され、一般には、ポリアミド樹脂組成物層、アイオノマー樹脂層、接着層及び/又はその他の層の厚さは、積層フィルム全体の厚みに対して、それぞれ3〜90%であることが好ましい。特に、ポリアミド樹脂組成物層及びアイオノマー樹脂層の厚みは積層フィルム全体の厚みに対して、5〜80%であることがより好ましく、10〜50%であることがさらに好ましい。また、接着層及び/又はその他の層の厚さの厚みは積層フィルム全体の厚みに対して、2〜20%であることがより好ましく、3〜15%であることがさらに好ましい。
【0070】
本発明の積層フィルムの厚みは、用途により適宜決定すればよく特に制限されないが、1〜500μmであることが好ましく、10〜200μmであることがより好ましく、20〜100μmであることがさらに好ましい。全体の厚みが、前記の値未満であると、機械的強度に劣る場合があり、また、前記の値を超えると、フィルムが硬くなり、軟包装用に適さなくなる場合がある。
【0071】
本発明の積層フィルムを製造するに当たっては、層の数もしくは材料の数に対応する押出機を用いて、溶融押出し、ダイ内あるいは外において同時に積層する共押出法、あるいは、前記1種又は2種類以上の重合体よりなるフィルム基材を予め製造しておき、その片面又は両面にそれ以外の重合体を溶融押出する押出ラミネート法、更には前記1種又は2種類以上の重合体よりなるフィルムとそれ以外の重合体よりなるフィルムとを有機チタン化合物、イソシアネート化合物、ポリエステル系化合物、ポリウレタン化合物等の公知の接着剤を用いてラミネートするドライラミネート法等が挙げられる。
本発明の積層フィルムにおいては、各種材料を溶融状態で共押出し、両者を熱融着(溶融接着)して一段階で積層構造のフィルムを製造する共押出法により製造されることが好ましい。
【0072】
共押出法としては、特に制限されることはなく、公知の方法、例えば、共押出インフレーション法、共押出Tダイ法等が挙げられる。
【0073】
共押出インフレーション法は、インフレーションフィルム製造装置を用いて共押出する方法であり、例えば、押出機で溶融混練された樹脂がダイの円形のスリットを通ってチューブ状に押し出され、このチューブ状に押し出された樹脂の内部に気体(通常は空気)を吹き込み、吹き込まれた気体の圧力を調整することによって広範囲の幅のフィルムを製造する方法である。フィルムの幅と円形スリットの直径との比は、ブローアップ比(BUR)と呼ばれており、フィルムの厚さは、樹脂の押出速度と上記BURの選択によって調整される。押し出されたチューブ状の樹脂は、その外側から気体(通常は空気)及び/又は液体(通常は水)によって冷却される。
【0074】
共押出Tダイ法は、共押出キャスト法とも呼ばれ、Tダイフィルム製造装置等を用いて共押出する方法であり、例えば、押出機で溶融混練された樹脂がT−ダイあるいはコートハンガーダイの平行スリットを通って押し出され、水等の冷媒を通したロールに接触、冷却されて、フィルムを製造する方法である。Tダイ法は、一般に、透明性が良く、厚み精度の良いフィルムを製造することができる。フィルムの厚さは、樹脂の押出速度とフィルムの引き取り速度の選択によって調整される。
【0075】
製造されたフィルムは未延伸の状態で使用できるが、得られるフィルムの強度及びガスバリア性の観点から積層延伸フィルムとして使用してもよい。積層延伸フィルムの延伸倍率は使用用途によって異なるが、該積層未延伸フィルムを、フィルムの流れ方向(縦方向)及びこれと直角方向(横方向)に各々2.5〜5.0倍の範囲で二軸延伸する。延伸倍率が前記の値未満であると、延伸の効果が少なく、フィルムの強度が劣る場合がある。また、延伸倍率が前記の値を超えると、延伸時にフィルムが裂けたり、破断する場合がある。
【0076】
また、延伸工程は積層未延伸フィルムの製造に引続き、連続して実施しても良いし、積層未延伸フィルムを一旦巻き取り、別工程として延伸を実施しても良い。二軸延伸の方法は、テンター式逐次二軸延伸法、テンター式同時二軸延伸法、チューブラー延伸法等公知の延伸方法が採用できる。例えば、テンター式逐次二軸延伸法の場合、積層未延伸フィルムを50〜110℃の温度範囲に加熱し、ロール式縦延伸機によって縦方向に2.5〜5.0倍に延伸し、続いてテンター式横延伸機によって60〜120℃の温度範囲内で横方向に2.5〜5.0倍に延伸することにより積層二軸延伸フィルムを製造することができる。テンター式同時二軸延伸法やチューブラー延伸法の場合、積層未延伸フィルムを60〜2100℃の温度範囲において、縦横方向同時に各軸方向に2.5〜5.0倍に延伸することにより積層二軸延伸フィルムを製造することができる。
【0077】
上記方法により延伸された積層二軸延伸フィルムは、引続き熱処理をする。熱処理することにより常温における寸法安定性を付与することができる。この場合の熱処理温度は、110℃を下限として重合体(A)の融点より5℃低い温度を上限とする範囲を選択するのがよく、これにより常温寸法安定性のよい、任意の熱収縮率をもった延伸フィルムを得ることができる。熱処理操作により、充分に熱固定された該積層二軸延伸フィルムは、常法に従い、冷却して巻き取る。
【0078】
さらに、本発明の積層フィルムは、印刷性、ラミネート、粘着剤付与性を高めるため、コロナ放電処理、プラズマ処理、火炎処理、酸処理等の表面処理を行うことができる。また、必要に応じて、このような処理がなされた後、印刷、ラミネート、粘着剤塗布、ヒートシール等の二次加工工程を経てそれぞれの目的とする用途に使用することができる。
【0079】
本発明の積層フィルムは、こんにゃく、漬物等のように水とともに包装される食品類の包装用フィルム、ミルク、酒、醤油等の液体である食品類の包装用フィルム、菓子等の乾燥した食品類の包装用フィルム、ハム、ソーセージ等の加工肉類の包装用フィルム、鰹節、粉チーズ等の粉体食品包装用フィルム、電気・電子部品、医薬品粉体等の製品の包装用フィルム、壁紙、マット、床材、フレコン内袋、コンテナー、透湿フィルム、防汚フィルム、防塵フィルム、PVC代替フィルム等に使用することができる。
本発明の積層フィルムは、内層を熱融着等の方法ではりあわせることにより、部材を収納や、保管、移送ができる袋、容器等を製造することができる。
【実施例】
【0080】
以下において実施例及び比較例を掲げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明の要旨を越えない限り以下の例に限定されるものではない。なお、実施例及び比較例におけるフィルム物性の測定法、使用した材料は以下の通りである。
【0081】
[透明性]
透明性の尺度であるヘイズはASTM D−1003に準じ、直読ヘイズコンピューター(スガ試験機(株)製、HGM−2DP)を使用して測定した。
【0082】
[耐屈曲性]
8インチ×11インチの大きさに切断したフィルムを、温度23℃、相対湿度65%の条件下に、24時間以上放置してコンディショニングしたのち、ゲルボフレックステスター(理学工業(株)製)を使用し、MIL−B−131Cに準拠した方法にて、積層フィルムの内層を内側にして、温度23℃、2000回の屈曲テスト後に生じたピンホール数を計測した。
【0083】
[帯電防止性]
(表面固有抵抗)
評価フィルムを23℃、相対湿度50%で3日間放置してコンディショニングしたのち、絶縁抵抗計(横河ヒューレット・パッカード(株)製、4329A型)を用いて、23℃、相対湿度50%の雰囲気下、印加電圧500V、30秒の条件にて表面固有抵抗を測定した。測定は、積層フィルムの外層側を表とし、内層側を裏とした。
(帯電圧半減期)
評価フィルムを23℃、相対湿度60%で3日間放置してコンディショニングしたのち、スタチックオネストメータ(シシド静電気(株)製、H−0110)を用いて、23℃、相対湿度50%の雰囲気下、印加電圧10kV、試料間距離20mmの条件にて、帯電圧半減期を測定した。測定は、積層フィルムの外層側を表とし、内層側を裏とした。
【0084】
[ポリアミド樹脂]
(A1)ポリアミド6(宇部興産(株)製 UBE NYLON 1022B 相対粘度3.35)
(A2)ポリアミド6/66(宇部興産(株)製 UBE NYLON 5034B 相対粘度4.05)
(A3)ポリアミド6/12(宇部興産(株)製 UBE NYLON 7034B 相対粘度3.8)
【0085】
[ポリアミドエラストマー組成物、ポリアミドエラストマー]
(B1)ポリエーテルエステルアミドエラストマー(チバスペシャリティケミカル(株)製 イルガスタットP22、ε−カプロラクタム、アジピン酸、ポリエチレンオキサイド及び過塩素酸ナトリウム含有するポリエーテルエステルアミドエラストマー)
(B2)ポリエーテルエステルアミドエラストマー(チバスペシャリティケミカル(株)製 イルガスタットP18、ω−ドデカンラクタム、アジピン酸、ポリエチレンオキサイド及び過塩素酸ナトリウム含有するポリエーテルエステルアミドエラストマー)
(C1)ポリエーテルエステルアミドエラストマー(ダイセル・デグッサ(株)製 ダイアミド E40−S3、ω−ドデカンラクタム、ドデカジカルボン酸、ポリテトラメチレンオキサイドからなるポリエーテルエステルアミドエラストマー)
【0086】
[アイオノマー]
(D1)エチレン/メタクリル酸共重合体の亜鉛アイオノマー(三井・デュポンポリケミカル(株)製 ハイミラン1706)
(D2)エチレン/メタクリル酸共重合体のカリウムアイオノマー(三井・デュポンポリケミカル(株)製 ハイミランMK153)
【0087】
[熱可塑性重合体]
(E1)エチレン/酢酸ビニル共重合体(三井・デュポンポリケミカル(株)製 エバフレックスP1405)
(E2)直鎖状低密度ポリエチレン(三井化学(株)製 SP2320)
(E3)低密度ポリエチレン(宇部興産(株)製 UBEポリエチレンF023)
(E4)エチレン/酢酸ビニル共重合体鹸化物((株)クラレ製 エバールF101B)
【0088】
[接着性樹脂]
(F1)接着性ポリオレフィン(三井化学(株)製 アドマーNF528)
【0089】
(実施例1)
表1に示す樹脂組成を使用して、水冷インフレーションフィルム成形機((株)プラコー製)にて、外層を押出温度240℃、内層を押出温度200℃にて別々に溶融させ、吐出された溶融樹脂をアダプターによって合流させ、ダイス口径100mmφからブローアップ比(BUR)1.3にて、2層に積層された管状フィルムに成形した。その後冷却し、引き取りを行い、表1に示す厚みを有する2層の積層フィルムを得た。当該積層フィルムの物性測定結果を表4に示す。
【0090】
(実施例2〜12、比較例1〜7)
表1に示す樹脂組成を使用して、水冷インフレーションフィルム成形機((株)プラコー製)にて、外層を押出温度240℃、内層を押出温度200℃、接着層を押出温度190℃にて別々に溶融させ、吐出された溶融樹脂をアダプターによって合流させ、ダイス口径100mmφからブローアップ比(BUR)1.3にて、3層に積層された管状フィルムに成形した。その後冷却し、引き取りを行い、表1に示す厚みを有する3層の積層フィルムを得た。当該積層フィルムの物性測定結果を表4に示す。
【0091】
(実施例13、14)
表2に示す樹脂組成を使用して、水冷インフレーションフィルム成形機((株)プラコー製)にて、外層を押出温度240℃、中間層を押出温度240℃、内層を押出温度200℃、接着層を押出温度190℃にて別々に溶融させ、吐出された溶融樹脂をアダプターによって合流させ、ダイス口径100mmφからブローアップ比(BUR)1.3にて、4層に積層された管状フィルムに成形した。その後冷却し、引き取りを行い、表2に示す厚みを有する4層の積層フィルムを得た。当該積層フィルムの物性測定結果を表4に示す。
【0092】
(実施例15)
表3に示す樹脂組成を使用して、水冷インフレーションフィルム成形機((株)プラコー製)にて、外層を押出温度240℃、中間層及び内層を押出温度200℃、接着層を押出温度190℃にて別々に溶融させ、吐出された溶融樹脂をアダプターによって合流させ、ダイス口径100mmφからブローアップ比(BUR)1.3にて、4層に積層された管状フィルムに成形した。その後冷却し、引き取りを行い、表3に示す厚みを有する4層の積層フィルムを得た。当該積層フィルムの物性測定結果を表4に示す。
【0093】
【表1】

【0094】
【表2】

【0095】
【表3】

【0096】
【表4】




【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリアミド樹脂組成物層及びアイオノマー樹脂層との少なくとも2層以上を積層した積層フィルムであり、
(I)ポリアミド樹脂組成物層は、ポリアミド樹脂(A)70〜99.5質量%及びポリアミドエラストマー組成物(B)30〜0.5質量%とを含むポリアミド樹脂組成物であり、
(II)ポリアミドエラストマー組成物(B)は、電解質塩化合物及びポリアミドエラストマー(C)を含み、かつ電解質塩化合物及びポリアミドエラストマー(C)の合計質量100質量%に対して、電解質塩化合物を0.01〜10質量%含み、
(III)ポリアミドエラストマー(C)は、ポリアミドハードセグメント(a)及び数平均分子量300〜5000の下記一般式(1)で示されるポリアルキレンオキサイドを含むソフトセグメント(b)から得られるポリエーテルエステルアミドエラストマーであり、
(IV)ポリアミドエラストマー(C)のポリアミドハードセグメント(a)は、ポリアミドハードセグメント(a)100質量%に対しポリアミド樹脂(A)と同一のポリアミド形成単位を60質量%以上含み、かつ脂肪族ジカルボン酸、脂環族ジカルボン酸及び芳香族ジカルボン酸の中から選ばれる少なくとも1種のジカルボン酸を含み、
(V)アイオノマー樹脂層は、エチレン/不飽和カルボン酸共重合体のカリウムアイオノマー、又はエチレン/不飽和カルボン酸共重合体のカリウムアイオノマー及び熱可塑性重合体とを含むアイオノマー組成物であることを特徴とする積層フィルム。
【化1】

(式中、Qは炭素数2〜4のアルキレン基、nは1〜50の整数を表す。)
【請求項2】
ポリアミド樹脂(A)が、ε−カプロラクタム、ω−ドデカンラクタム、12−アミノドデカン酸、ヘキサメチレンジアミン・アジピン酸塩からなる群より選ばれる少なくとも1種のポリアミド形成単位からなる単独重合体又は共重合体であることを特徴とする請求項1記載の積層フィルム。
【請求項3】
ポリアミドエラストマー(C)は、
(1)ポリアミドハードセグメント(a)100質量%に対しポリアミド樹脂(A)と同一のポリアミド形成単位を60質量%以上含み、かつアジピン酸、セバシン酸、テレフタル酸、イソフタル酸及び3−スルホイソフタル酸ナトリウムからなる群より選ばれる少なくとも一種のジカルボン酸を含むポリアミドハードセグメント(a)、
及び
(2)数平均分子量300〜5000の下記一般式(2)で示されるポリアルキレンオキサイドを含むソフトセグメント(b)から得られるポリエーテルエステルアミドエラストマーであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の積層フィルム。
【化2】

(式中、Rは炭素数2〜3のアルキレン基、nは1〜50の整数を表す。)
【請求項4】
アイオノマー樹脂層のエチレン/不飽和カルボン酸共重合体のカリウムアイオノマーが、不飽和カルボン酸含量が10〜30質量%、中和度が60%以上であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の積層フィルム。
【請求項5】
アイオノマー樹脂層のエチレン/不飽和カルボン酸共重合体のカリウムアイオノマー及び熱可塑性重合体とを含むアイオノマー組成物において、
熱可塑性重合体が、エチレン単独重合体、エチレン/炭素数3〜10のα−オレフィン共重合体、エチレン/酢酸ビニル及び/又は不飽和エステル共重合体から選択されされる重合体を少なくとも1種含み、
エチレン/不飽和カルボン酸共重合体のカリウムアイオノマー20〜90質量%及び熱可塑性重合体80〜10質量%であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の積層フィルム。
【請求項6】
ポリアミド樹脂組成物層が、最外層に配置されることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の積層フィルム。
【請求項7】
積層フィルムが、電子部品包装用であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の積層フィルム。




【公開番号】特開2006−35848(P2006−35848A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−150595(P2005−150595)
【出願日】平成17年5月24日(2005.5.24)
【出願人】(000000206)宇部興産株式会社 (2,022)
【Fターム(参考)】