説明

積層フィルム

【課題】ポリブチレンテレフタレート樹脂とポリ4−メチル−1−ペンテン樹脂の持つ特性を保持した積層フィルムに関するもの。
【解決手段】ポリブチレンテレフタレート樹脂(A)100重量部に対して、エポキシ基含有オレフィン系樹脂(B)0.8〜52重量部、を含有することで構成されるポリブチレンテレフタレート樹脂(C)とポリ4−メチル−1−ペンテン樹脂(D)の積層フィルム、その製造方法、およびその積層フィルムからなることを特徴とする離型フィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、離型性と形状追随性に優れた特性を維持し、また、押出性にも優れた積層フィルムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
熱可塑性ポリエステル樹脂、中でもポリブチレンテレフタレート樹脂(以下、必要により「PBT」と略す。)は、優れた耐熱性、成形性、耐薬品性及び電気絶縁性などエンジニアリングプラスチックとして好適な性質を有していることから、射出成形用を中心として各種自動車部品、電気部品、機械部品及び建設部品などの用途に使用されている。
【0003】
また、近年ではPBTの有するバリア性・耐熱性・形状保持性能などを活かしたフィルム用途分野での応用が注目されている。しかしながら、PBT樹脂は十分な離型性がなく、満足できない用途があった。
【0004】
また、ポリ4−メチル−1−ペンテンのフィルムはその特性である耐熱性、透明性、ガス透過性、離型性を利用した用途への展開が図られていたが、形状追随性が良好でないという欠点があった。
【0005】
つまり、これらの欠点を補い合う積層フィルムを作成することが、求められていた。
【0006】
上記問題を解決するために、例えば、特許文献1にはポリエステルにシリコン系剥離層を設けたフィルムが開示されている。しかしシリコン樹脂には熱硬化型と紫外線硬化型の2種類があるが、樹脂の種類や硬化方法を変えても、塗膜を完全に硬化密着させることは困難であり、使用時にその塗膜が接触する製品へと移行することが難点になっていた。
【0007】
一方、ポリエステルとポリ4−メチル−1−ペンテンは接着性が悪いため、2層の同時押出をしても、互いが接着しない。また特許文献2〜4にはポリ4−メチル−1−ペンテン樹脂とポリエステルを含む樹脂の間に接着性樹脂を介す方法が開示されているが、中間層の影響により、形状追随性が劣るという問題が発生していた。
【特許文献1】特開2005−138339号公報
【特許文献2】特開2000−218752号公報
【特許文献3】特開平9−268243号公報
【特許文献4】特開平2−107438号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は前記従来技術を更に改良することを目的とするものである。即ち、離型性および形状追随性を併せ持つポリブチレンテレフタレート樹脂とポリ4−メチル−1−ペンテン樹脂の積層フィルムを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者等はかかる従来技術の有する問題点を解決すべく鋭意研究した結果、本発明を完成したものであって、その目的とするところはポリブチレンテレフタレート樹脂とポリ4−メチル−1−ペンテン樹脂の特性を生かした積層フィルムである。すなわち、
(1)ポリブチレンテレフタレート樹脂(A)100重量部に対して、エポキシ基含有オレフィン系樹脂(B)0.8〜52重量部を配合してなるポリブチレンテレフタレート樹脂組成物(C)と、ポリ4−メチル−1−ペンテン樹脂(D)の積層フィルム、
(2)ポリブチレンテレフタレート樹脂(A)の固有粘度が0.7〜1.9である上記(1)に記載の積層フィルム、
(3)エポキシ基含有オレフィン系樹脂(B)がエチレン−グリシジルメタクリレートである上記(1)または(2)に記載の積層フィルム、
(4)エポキシ基含有オレフィン系樹脂(B)がエチレン−グリシジルメタクリレートであり、エポキシ基含有オレフィン系樹脂(B)全体を100重量%としたときのエチレンの割合が65〜97重量%、グリシジルメタクリレートの割合が3〜35重量%である上記(1)〜(3)のいずれかに記載の積層フィルム、
(5)ポリ4−メチル−1−ペンテン樹脂(D)のMFRが260℃、5分滞留、5kg荷重下で測定された値で0.5〜200g/10minである上記(1)〜(4)のいずれかに記載の積層フィルム、
(6)(C)および(D)を同時押出することを特徴とする上記(1)〜(5)のいずれかに記載の積層フィルムの製造方法、
(7)(C)および(D)を無延伸押出することを特徴とする上記(1)〜(5)のいずれかに記載の積層フィルムの製造方法、
(8)上記(1)〜(5)のいずれかに記載の積層フィルムからなることを特徴とする離型フィルムを提供するものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明のポリブチレンテレフタレート樹脂とポリ4−メチル−1−ペンテン樹脂の両特性を併せ持つ積層フィルムを得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下に本発明について詳細に説明する。
【0012】
本発明で使用するポリブチレンテレフタレート樹脂(A)とは、テレフタル酸あるいはそのエステル形成性誘導体と1,4−ブタンジオールあるいはそのエステル形成性誘導体とを主成分とし重縮合反応させる等の通常の重合方法によって得られる重合体であって、特性を損なわない範囲、例えば20重量%程度以下、他の共重合成分を含んでも良い。これら(共)重合体の好ましい例としては、ポリブチレンテレフタレート、ポリブチレン(テレフタレート/イソフタレート)、ポリブチレン(テレフタレート/アジペート)、ポリブチレン(テレフタレート/セバケート)、ポリブチレン(テレフタレート/デカンジカルボキシレート)、ポリブチレン(テレフタレート/ナフタレート)、ポリ(ブチレン/エチレン)テレフタレート等が挙げられ、単独で用いても2種以上混合しても良い。
【0013】
ポリブチレンテレフタレートの固有粘度は0.7〜1.9が好ましく、より好ましくは0.8〜1.85、さらに好ましくは1.2〜1.8である。固有粘度が0.7未満であるとフィルムの製膜性が悪化し、また1.9より大きいと押出機の負荷が大きくなるため好ましくない。
本発明のエポキシ基含有オレフィン系樹脂(B)のオレフィンとしては、エチレン、プロピレン、1−ブテンなどであり、エポキシ基含有不飽和単量体の具体例としては、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、エタクリル酸グリシジル、イタコン酸グリシジルなどであり、さらに、ビニルエーテル類、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル類、メチル、エチル、プロピル、ブチルなどのアクリル酸およびメタクリル酸エステル類などを共重合したグリシジルエ−テル類およびグリシジルエステル類が挙げられ、エポキシ基含有オレフィン系樹脂(B)の具体例としては、エチレン/グリシジルメタクリレート共重合体、エチレン/酢酸ビニル/メタクリル酸グリシジル共重合体、エチレン/メタクリル酸メチル/メタクリル酸グリシジル共重合体、エチレン/アクリル酸グリシジル共重合体、エチレン/酢酸ビニル/アクリル酸グリシジル共重合体、エチレン/グリシジルエーテル共重合体などが挙げられる。なかでもエチレン/グリシジルメタクリレート共重合体が最も好ましい。また、エチレンとグリシジルメタクリレートの割合はエチレン65〜97重量%、グリシジルメタクリレート3〜35重量%が好ましく、より好ましくはエチレン80〜95重量%、グリシジルメタクリレート5〜20重量%、さらに好ましくはエチレン85〜88重量%、グリシジルメタクリレート12重量%〜15重量%である。グリシジルメタクリレートの割合が3重量%未満になると4−メチル−1−ペンテン樹脂との十分な接着力が認められず、また、35重量%を超えるとPBTとの反応が加速し、増粘するので、好ましくない。
【0014】
さらに、エポキシ基含有オレフィン系樹脂(B)は3元共重合体でも効果があり、中でも、エチレン/メチルアクリレート/メタクリル酸グリシジル共重合体、エチレン/エチルアクリレート/メタクリル酸グリシジル共重合体が好ましく、より好ましくはエチレン/メチルアクリレート/メタクリル酸グリシジル共重合体である。
【0015】
エポキシ基含有オレフィン系樹脂(B)の添加配合量はポリブチレンテレフタレート樹脂(A)を100重量部とした場合、0.8〜52重量部、特に2〜10重量部が好ましい。0.8重量部未満ではポリ4−メチル−1−ペンテン樹脂との接着力が乏しく、52重量部を越えるとPBT本来が持つ特性(バリア性、耐熱性、形状保持性)が損なわれるため好ましくない。
【0016】
本発明のポリ4−メチル−1−ペンテン樹脂(D)は4−メチルー1−ペンテンの単独重合体、あるいは4−メチル−1−ペンテンとα−オレフィンとの共重合体である。ここで、4−メチル−1−ペンテンとの共重合させるα−オレフィンとしては、炭素数が2〜20のオレフィンであって、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−ウンデセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−オクタデセン等があって、これらは1種類であっても2種類以上を組み合わせて使用しても良い。そして、α−オレフィンは共重合体中に0〜20モル%好ましくは0〜15モル%含有されていることが望ましい。
【0017】
このポリ4−メチル−1−ペンテン樹脂はフィルム成形するのに十分な流動性とフィルムとしての十分な機械的強度を示す分子量を有していれば良く、特に制限はないが、そのMFR(メルトフローレート)は0.5〜200、好ましくは5〜120(g/10min)の範囲にあることが望ましい。なお、MFRはASTM D1238に準拠し、260℃、6分滞留、5kg荷重下で測定された値である。
【0018】
このようなポリ4−メチル−1−ペンテン樹脂は、チーグラー・ナッタ触媒やメタロセン触媒を使用することによって、公知の方法で製造することができる。
さらに、本発明のポリブチレンテレフタレート樹脂もしくはポリ4−メチル−1ペンテン樹脂には、本発明の効果を損なわない範囲で、強化材、充填剤、酸化防止剤、安定剤、紫外線吸収剤、着色剤、離型剤、難燃剤などの通常の添加剤および少量の他種ポリマーを添加することができる。
【0019】
安定剤としては、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾールを含むベンゾトリアゾール系化合物、ならびに2,4−ジヒドロキシベンゾフェノンのようなベンゾフェノン系化合物、モノまたはジステアリルホスフェート、トリメチルホスフェートなどのリン酸エステルなどを挙げることができる。
【0020】
これらの各種添加剤は、2種以上を組み合わせることによって相乗的な効果が得られることがあるので、併用して使用してもよい。
【0021】
なお、例えば酸化防止剤として例示した添加剤は、安定剤や紫外線吸収剤として作用することもある。また、安定剤として例示したものについても酸化防止作用や紫外線吸収作用のあるものがある。すなわち前記分類は便宜的なものであり、作用を限定したものではない。
【0022】
離型剤としては、カルナウバワックス、ライスワックス等の植物系ワックス、蜜ろう、ラノリン等の動物系ワックス、モンタンワックス等の鉱物系ワックス、パラフィンワックス、ポリエチレンワックス等の石油系ワックス、ひまし油及びその誘導体、脂肪酸及びその誘導体等の油脂系ワックスが挙げられ、高級脂肪酸誘導体としては、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、モンタン酸等の高級脂肪酸と1価または2価以上のアルコールとのエステル、これら高級脂肪酸エステルを部分的に金属酸化物、例えばCa(OH)、NaOH、Mg(OH)、Zn(OH)、LiOH、Al(OH)を用いてケン化した部分ケン化エステル、高級脂肪酸と金属酸化物または金属水酸化物とから得られる完全ケン化物、高級脂肪酸、多価アルコールのエステルにつなぎ剤としてアジピン酸等のジカルボン酸を用いて縮合させた複合エステル、高級脂肪酸とモノアミンまたはジアミンから得られるモノまたはジアミドなどが挙げられる。
【0023】
難燃剤の中で臭素系難燃剤としては、難燃性を付与するために、必要不可欠なものである。その臭素系難燃剤の具体例としては、ハロゲン化ポリカーボネート(例えばテトラブロモビスフェノールAのカーボネートオリゴマー)、ハロゲン化アクリル樹脂、ハロゲン化エポキシ樹脂、ハロゲン化フェノキシ樹脂、ハロゲン化ポリスチレン、テトラブロモビスフェノールA・エチルエーテルオリゴマー、ハロゲン化ポリフェニレンエーテル(例えば、ポリジブロモフェニレンオキサイド)などの高分子量有機ハロゲン化合物;デカブロモジフェニルエーテル、ヘキサブロモフェノール、テトラブロモビスフェノールA、テトラブロモビスフェノールAのエポキシ化物、テトラブロモビスフェノールA・ビス(2,3−ジブロモプロピルエーテル)、テトラブロモビスフェノールA・ビス(アリルエーテル)、テトラブロモビスフェノールA・2−ヒドロキシエチルエーテル等の臭素化ビスフェノールA、ヘキサブロモベンゼン、テトラブロモ無水フタル酸、トリブロモフェノール、ビス(トリブロモフェノキシ)エタン、ビス(ペンタブロモフェノキシ)エタン、エチレンビステトラブロモフタルイミド、臭素化スチレン、テトラブロモビスフェノールS、テトラブロモビスフェノールSのビス(2,3−ジブロモプロピルエーテル)などの低分子量有機ハロゲン化合物などを挙げることができ、これらの有機ハロゲン系難燃剤は単独で使用しても、2種以上併用してもよい。また、リン系、無機系などの難燃剤を使用することもできる。 多種ポリマとしては、ポリカーボネート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ナイロン樹脂、PPS樹脂、ポリテトラフルオロエチレンなどを添加することができる。
【0024】
本発明のフィルム用ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物の製造方法については通常知られている方法で実施すればよく、特に限定する必要はない。代表例として、単軸あるいは2軸の押出機、バンバリーミキサー、ニーダーあるいはミキシングロールなど、公知の溶融混合機を用いて、200〜350℃の温度で溶融混練する方法を挙げることができる。各成分は、予め一括して混合しておき、それから溶融混練してもよい。あるいは(C)成分100重量部に対し、例えば1重量部以下であるような少量添加剤成分については、他の成分を上記の方法などで混練しペレット化した後、成形前に添加することもできる。なお、各成分に付着している水分は少ない方がよく、予め事前乾燥しておくことが望ましいが、必ずしも全ての成分を乾燥させる必要がある訳ではない。
【0025】
本発明の樹脂は、Tダイまたはインフレーションによる押出によって、フィルムを製造することができるが、その中でも、Tダイによる同時押出はポリブチレンテレフタレート樹脂とポリ4−メチル−1−ペンテン樹脂の積層フィルムを製造する最良方法である。これにより、一度に積層フィルムを作成することができる。
【0026】
また、本発明のフィルムの厚みはポリブチレンテレフタレートフィルムおよびポリ4−メチル−1−ペンテンフィルムがそれぞれ、5〜500μmの間であれば、特に制限はない。
【0027】
本発明の積層フィルムは、耐熱性、耐薬品性、電気絶縁性、離型性、形状追随性に優れ、耐熱フィルム、離型フィルム、電気絶縁フィルム等の用途に幅広く利用可能である。
【実施例】
【0028】
以下に実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明する。実施例および比較例に使用した配合組成物を以下に示す。
(A−a)ポリブチレンテレフタレート樹脂 固有粘度1.74 東レ(株)社製PBT樹脂“トレコン”1400S
(A−b)ポリブチレンテレフタレート樹脂 固有粘度1.26 東レ(株)社製PBT樹脂“トレコン”1200S
(A−c)ポリブチレンテレフタレート樹脂 固有粘度0.85 東レ(株)社製PBT樹脂“トレコン”1100S
(B−a)エチレン/グリシジルメタクリレート=88/12(重量%)共重合体(住友化学社製ボンドファースト−E)
(B−b)エチレン/グリシジルメタクリレート=80/20(重量%)共重合体
この共重合体はエチレン80重量%とグリシジルメタクリレート20重量%、また、ラジカル開始剤である1・3−ビス(t−ブチルパーオキシイソプロビル)ベンゼンを0.5重量部、安定剤であるIR1010(チバガイギー社製)を0.1重量部をヘンシェルミキサーで均一混合した後、120mΦ2軸押出機にて温度270℃、平均滞留時間0.8分で溶融混練し、共重合して得られたものである
(B−c)エチレン単独重合体(三井化学社製 ウルトラゼックス 2005HC)
(B−d)エチレン/グリシジルメタクリレート=70/30(重量%)共重合体
この共重合体はエチレン70重量%とグリシジルメタクリレート20重量%、また、ラジカル開始剤である1・3−ビス(t−ブチルパーオキシイソプロビル)ベンゼンを0.5重量部、安定剤であるIR1010(チバガイギー社製)を0.1重量部をヘンシェルミキサーで均一混合した後、120mΦ2軸押出機にて温度270℃、平均滞留時間0.8分で溶融混練し、共重合して得られたものである
(B−e)エチレン/グリシジルメタクリレート=94/6(重量%)共重合体(住友化学社製 ETX6)
(B−f)エチレン/メチルアクリレート/グリシジルメタクリレート=64/30/6(重量%)共重合体(住友化学社製 ボンドファースト 7M)
(D−a)4−メチル−1−ペンテン樹脂(MFR21g/10min)(三井化学社製 RT31)
(D−b)4−メチル−1−ペンテン樹脂(MFR180g/10min)(三井化学社製 DX820)
(i)形状追随性は、作成した積層フィルムを一辺が10mm、高さ5mmの四角錐の金属片にフィルムを突っ張るように押し当て、その後、フィルムを剥がして、追随性を確認し、追随されていれば、○、角が丸まっていれば、×とした。
(ii)(C)と(D)のフィルムの接着力については50mm×10mmの試験片を作成し、フィルム作成後、23℃、50%RH環境下で24時間放置後、2層を手で剥がした。剥がれなければ、○、2層の表層で剥離してしまった場合、×とした。
【0029】
[実施例1〜10]
(A)成分および(B)成分を表1に示す割合で室温混合し、スクリュー径57mmφの2軸押出機ZSK57を用いて溶融混練を行った。なお(A)成分および(B)成分の供給は押出機元込め部から行い、またシリンダ温度は250℃に設定した。ダイスから吐出されたストランドは冷却バス内で冷却した後、ストランドカッターにてペレット化して(C)成分を得、130℃の熱風乾燥機で3時間以上乾燥した。次に、得られた(C)成分および表1に記載の(D)成分を用意し、(C)成分はシリンダ温度250℃で、(D)成分はシリンダ温度290℃に設定し、以下の製膜装置で同時押出し、2層の積層フィルムを作成し評価を行った。製膜装置はシンコーマシナリー社製の単軸押出機VS40−25を使用し、スクリュウはフルフライトコンスタントピッチ、圧縮比3で2層のTダイを使用した。(C)成分と(D)成分のフィルム厚みはそれぞれ100μmとした。
【0030】
それらの結果を表1に示すが、得られたフィルムはいずれも、形状追随性、(C)と(D)の2層の接着力共に良好であった。
【0031】
[実施例11]
(A)成分および(B)成分を、押出機を用いて溶融混練せずに、(A)成分および(B)成分を室温で混合して(C)成分を得た以外は実施例1と同様にして積層フィルムを作成し、評価を行なった。
【0032】
その結果を表1に示すが、得られたフィルムは形状追随性、(C)と(D)の2層の接着力共に良好であった。
【0033】
[比較例1〜4]
表1に示す配合で行った以外は、実施例1と同様にして積層フィルムを作成し、評価を行なった。 それらの結果を表1に示すが、(B)成分としてエポキシ基のないオレフィンを使用した場合(比較例1)、(A)成分のみを使用した場合(比較例2)、(A)成分に少量の(B)成分を添加した場合(比較例3)は、(C)成分と(D)成分の接着力が不十分であった。一方、(A)成分に多量の(B)成分を添加した場合は、形状追随性が不十分であった(比較例4)。
【0034】
[比較例5]
(A−a)を130℃の熱風乾燥機で3時間以上乾燥し、シリンダ温度250℃で以下の製膜装置で押出し、単層の積層フィルムを作成した。製膜装置はシンコーマシナリー社製の単軸押出機VS40−25を使用し、スクリュウはフルフライトコンスタントピッチ、圧縮比3で単層のTダイを使用した。(C)成分のフィルム厚みは100μmとした。得られた100μmのポリブチレンテレフタレート樹脂フィルムにアクリル基含有ケイ素化合物を真空製膜にて塗工し、20Mradの電子線にて硬化処理を行った。得られたフィルムを実際に使用した結果、シリコン系の塗膜が接着する製品に移行する問題が発生した。これは実施例1〜11で得られたフィルムではみられない現象である。
【0035】
[比較例6]
中間層用の物質としてエチレン・プロピレンランダム共重合体(エチレン含有量80モル、MFR21.2g/10min、比重0.88、結晶化度6%)と無水マレイン酸グラフト高密度ポリエチレン(無水マレイン酸グラフト率2.1g/100gポリマー、MFR32.4g/10min、比重0.96、結晶化度76%)と脂環族系水添石油樹脂(粘着付与剤:商品名アルコンP125、軟化点125℃、臭素価2、荒川化学社製)を88/2/10の割合でタンブラーで混合し、200℃に設定した単軸押出機(ダルメージスクリュウ、40mmΦ)で混練造粒した。得られた中間層用の物質、(A−a)を130℃の熱風乾燥機で3時間以上乾燥させたもの、および(D−a)を用いて3層Tダイフィルム押出機で共押出した。製膜装置はシンコーマシナリー社製の単軸押出機VS40−25を使用し、スクリュウはフルフライトコンスタントピッチ、圧縮比3で3層のTダイを使用した。得られたフィルムの接着力は十分だが、3層のTダイを必要とする点で工程が複雑化し、また中間層の影響により、形状追随性が劣る問題が発生した。
【0036】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリブチレンテレフタレート樹脂(A)100重量部に対して、エポキシ基含有オレフィン系樹脂(B)0.8〜52重量部を配合してなるポリブチレンテレフタレート樹脂組成物(C)と、ポリ4−メチル−1−ペンテン樹脂(D)の積層フィルム。
【請求項2】
ポリブチレンテレフタレート樹脂(A)の固有粘度が0.7〜1.9である請求項1に記載の積層フィルム。
【請求項3】
エポキシ基含有オレフィン系樹脂(B)がエチレン−グリシジルメタクリレートである請求項1または2に記載の積層フィルム。
【請求項4】
エポキシ基含有オレフィン系樹脂(B)がエチレン−グリシジルメタクリレートであり、エポキシ基含有オレフィン系樹脂(B)全体を100重量%としたときのエチレンの割合が65〜97重量%、グリシジルメタクリレートの割合が3〜35重量%である請求項1〜3のいずれかに記載の積層フィルム。
【請求項5】
ポリ4−メチル−1−ペンテン樹脂(D)のMFRが260℃、5分滞留、5kg荷重下で測定された値で0.5〜200g/10minである請求項1〜4のいずれかに記載の積層フィルム。
【請求項6】
(C)および(D)を同時押出することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の積層フィルムの製造方法。
【請求項7】
(C)および(D)を無延伸押出することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の積層フィルムの製造方法。
【請求項8】
請求項1〜5のいずれかに記載の積層フィルムからなることを特徴とする離型フィルム。

【公開番号】特開2007−210175(P2007−210175A)
【公開日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−31672(P2006−31672)
【出願日】平成18年2月8日(2006.2.8)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】