説明

積層ポリエステルフィルムおよびそれを用いた太陽電池バックシート、太陽電池

【課題】
優れた耐湿熱性、回収性、機械特性を有する積層ポリエステルフィルムを提供すること。
【解決手段】
少なくともポリエステル層(P1層)とポリエステル層(P2層)を有する積層ポリエステルフィルムであって、ポリエステル層(P1層)はポリエチレンテレフタレートを主たる成分とする層であり、ポリエステル層(P2層)はポリシクロへキシレンジメチレンテレフタレートまたはポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートのいずれかを主たる成分とする層であり、ポリエステル層(P1層)の厚みの総和d1(μm)とポリエステル層(P2層)の厚みの総和d2(μm)の比d1/d2が2以上8以下である積層ポリエステルフィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐湿熱性、回収性、機械特性の良好な積層ポリエステルフィルムを用いた太陽電池バックシート用フィルム、それを用いた太陽電池バックシートおよびそれを用いた太陽電池に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリエステル(特にポリエチレンテレフタレート)は機械特性、熱特性、耐薬品性、電気特性、成形性に優れ、様々な用途に用いられている。そのポリエステルをフィルム化したポリエステルフィルム、中でも二軸配向ポリエステルフィルムは、その機械的特性、電気的特性などから、銅張り積層板、太陽電池バックシート、粘着テープ、フレキシブルプリント基板、メンブレンスイッチ、面状発熱体、もしくはフラットケーブルなどの電気絶縁材料、磁気記録材料や、コンデンサ用材料、包装材料、自動車用材料、建築材料、写真用途、グラフィック用途、感熱転写用途などの各種工業材料として使用されている。
【0003】
これらの用途のうち、特に屋外で用いられる電気絶縁材料(例えば太陽電池バックシートなど)、自動車用材料、建築材料などでは、長期にわたり過酷な環境下で使用されることが多い。しかし、汎用的なポリエステルは加水分解により分子量が低下し、また、脆化が進行して機械特性などが低下するため、耐湿熱性の向上が求められている。
【0004】
そのため、ポリエステルの加水分解を抑制すべく様々な検討がなされてきた。例えば、アルカリ金属、アルカリ土類金属、リンを特定量含有し、触媒残渣による内部析出粒子を含有するポリエステル(特許文献1)、エポキシ化合物(特許文献2、特許文献3)やポリカルボジイミド(特許文献4)を添加して、ポリエステル自体の耐湿熱性を向上させる技術が検討されている。また、二軸配向ポリエステルフィルムについては、フィルムを高IV(高固有粘度)とし、かつ面配向度を制御することで、耐湿熱性を向上させるといった検討が行われている(特許文献5)。また、ポリエステルを加水分解の抑制に優れるポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートとし、かつ面配向度を制御することで、耐湿熱性を向上させるといった検討も行われている(特許文献6)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭60−31526号公報
【特許文献2】特開平9−227767号公報
【特許文献3】特開2007−302878号公報
【特許文献4】特表平11−506487号公報
【特許文献5】特開2007−70430号公報
【特許文献6】特開2009−45888号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前述の特許文献1、5の技術では耐湿熱性向上効果が十分ではなかった。
【0007】
また、特許文献2、3の技術では溶融成形時にゲル化して成形不良となったり、異物化する可能性が高く、均質なフィルムを形成するためにはその異物をきちんと除去する必要があるが、困難である。また耐湿熱性向上効果も不十分である。
【0008】
また、特許文献4の技術は、耐湿熱性向上効果は高いものの、ポリカルボジイミド、およびポリエステル樹脂と反応して生成する化合物の耐熱性が低いために、溶融成形時に人体に有害な分解ガスを発生するため、安全性の問題がある。また、製造できたとしても、使用済みのフィルムや、何らかの理由により製品とはならなかったフィルムを回収し、これらを細かく裁断し、フレーク状にしたものを、再度ポリエステルの原料として再利用(回収)する際には、加熱し溶融せしめる必要があるが、当該加熱・溶融工程においても、人体に有害な分解ガスが発生することがあるため、回収したフレーク状のフィルムを再利用することが困難であったり、再利用してもポリカルボジイミドの耐湿熱性向上効果が十分得られないなど回収性の問題がある。
【0009】
また、特許文献6の技術は、耐湿熱性向上効果は高いものの、ポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートより成る単層フィルムは、ポリエチレンテレフタレートより成る単層フィルムに比べて、湿熱処理前のフィルムの破断伸度が低く、機械特性が不十分である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
少なくともポリエステル層(P1層)とポリエステル層(P2層)を有する積層ポリエステルフィルムであって、ポリエステル層(P1層)はポリエチレンテレフタレートを主たる成分とする層であり、ポリエステル層(P2層)はポリシクロへキシレンジメチレンテレフタレートまたはポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートのいずれかを主たる成分とする層であり、ポリエステル層(P1層)の厚みの総和d1(μm)とポリエステル層(P2層)の厚みの総和d2(μm)の比d1/d2が2以上8以下である積層ポリエステルフィルムである。
【発明の効果】
【0011】
本発明により、優れた耐湿熱性、回収性、機械特性を有する積層ポリエステルフィルムを提供することができる。また、それを用いることで、高い耐久性を有した太陽電池バックシートおよびそれを用いた太陽電池を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の積層ポリエステルフィルムを用いた太陽電池の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の積層ポリエステルフィルムは、少なくともポリエステル層(P1層)とポリエステル層(P2層)を有する積層ポリエステルフィルムであって、ポリエステル層(P1層)はポリエチレンテレフタレートを主たる成分とする層であり、ポリエステル層(P2層)はポリシクロへキシレンジメチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートのいずれかを主たる成分とする層であって、ポリエステル層(P1層)の厚みの総和d1(μm)とポリエステル層(P2層)の厚みの総和d2(μm)の比d1/d2が2以上8以下であることを特徴とする積層ポリエステルフィルムである。
本発明の積層ポリエステルフィルムにおいて、上記要件を満たすことによって、従来の積層ポリエステルフィルムでは得られなかった高い耐湿熱性を得ることができる。その理由について以下に説明する。
【0014】
一般的な積層ポリエステルフィルムは結晶性ポリエステルから構成されることが多く、ポリエステルには熱結晶部と非晶部が存在する。また、かかるポリエステルを二軸延伸して得られる積層ポリエステルフィルム中には、配向によりポリエステルが結晶化した部分(以下、配向結晶化部とする)と非晶部が存在し、熱結晶部、配向結晶化部に比べて非晶部は密度が低く、分子間距離も大きい。
【0015】
ここで、ポリエステルが湿熱雰囲気下に曝されると、水分は密度の低いこの非晶部の分子鎖間から内部に浸入し、非晶部を可塑化して、非晶部分子鎖の運動性を高める。また、ポリエステルのカルボキシル基末端のプロトンを触媒として、分子運動性の高まった非晶部を加水分解する。加水分解された樹脂は分子量が低減し、更に分子鎖運動性が高くなることで熱エネルギーにより熱結晶化が進行する。結晶化が進行すると、フィルムは硬くなるが、分子量が低下するため、粘りのないフィルムとなる。すなわち、脆いフィルムとなるのである。そして、上記のサイクルを繰り返すことで、フィルムの脆化が著しく進行し、最終的には僅かな衝撃でも破断に至る状態となってしまう。
【0016】
一方、本発明の積層ポリエステルフィルムは、ポリエチレンテレフタレートを主たる成分とするポリエステル層(P1層)に、ポリシクロへキシレンジメチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートのいずれかを主たる成分とするポリエステル層(P2層)を積層したものである。ポリシクロへキシレンジメチレンテレフタレートを主たる成分とするポリエステルは高結晶性を有するポリエステルであり、このポリエステルをポリエステル層(P2層)としてポリエチレンテレフタレートを主たる成分とするポリエステル層(P1層)に積層せしめたフィルムは、該積層ポリエステルフィルムが湿熱雰囲気下に曝されたとしても、高結晶性のポリエステル層(P2層)が、非晶部の分子鎖間からの水分の浸入を抑制することとなる。
【0017】
また、ポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートを主たる成分とするポリエステルはガラス転移温度が高いポリエステルであり、このポリエステルをポリエステル層(P2層)として積層した場合、ポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートはポリエステル層(P1層)を構成するポリエチレンテレフタレートよりも、湿熱雰囲気下での分子鎖の運動性が低いため、加水分解反応と湿熱雰囲気下の熱エネルギーによる熱結晶化の進行による脆化を抑えることが出来る。以上から、従来にない優れた耐湿熱性を有する積層ポリエステルフィルムを提供できるというものである。
【0018】
また、本発明の効果を発現させるためには、P1層とP2層の両方を有する必要がある。
たとえば、ポリシクロへキシレンジメチレンテレフタレートを主たる成分とする単層ポリエステルフィルムは、優れた耐湿熱性を有するものの、該ポリエステル中に存在する非晶部が少ないので、本発明の積層ポリエステルフィルムに比べて、湿熱処理前のフィルムの破断伸度が低く、機械特性に劣ったものとなる。
【0019】
また、ポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートを主たる成分とする単層ポリエステルフィルムは、優れた耐湿熱性を有するものの、本発明の積層ポリエステルフィルムに比べて、湿熱処理前のフィルムの破断伸度が低く、機械特性に劣ったものとなる。
【0020】
また、ポリエチレンテレフタレートを主たる成分とする単層ポリエステルフィルムは、加水分解反応と湿熱雰囲気下の熱エネルギーによる熱結晶化の進行による脆化を抑制するポリエステル層を含有していないため、本発明の積層ポリエステルフィルムに比べて耐湿熱性に劣ったものとなる。
【0021】
以後、ポリエステル層(P1層)を構成するポリエステルをポリエステル(A1),ポリエステル層(P2層)を構成するポリエステルをポリエステル(A2)と称し、これらについてさらに詳しく説明する。
【0022】
本発明の積層ポリエステルフィルムにおけるポリエステル(A1)およびポリエステル(A2)とは、二官能のカルボン酸成分もしくはそのエステル形成性誘導体(以下、「ジカルボン酸成分」と総称する)と、二官能のアルコール成分(以下、「ジオール成分」と総称する)の重縮合体をいう。
【0023】
ポリエステル樹脂を構成するジカルボン酸成分としては、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸、ドデカンジオン酸、ダイマー酸、エイコサンジオン酸、ピメリン酸、アゼライン酸、メチルマロン酸、エチルマロン酸等の脂肪族ジカルボン酸類、アダマンタンジカルボン酸、ノルボルネンジカルボン酸、イソソルビド、シクロヘキサンジカルボン酸、デカリンジカルボン酸などの脂環族ジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、1,8−ナフタレンジカルボン酸、4,4’−ジフェニルジカルボン酸、4,4’−ジフェニルエーテルジカルボン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、フェニルエンダンジカルボン酸、アントラセンジカルボン酸、フェナントレンジカルボン酸、9,9’−ビス(4−カルボキシフェニル)フルオレン酸等、芳香族ジカルボン酸などのジカルボン酸、もしくはそのエステル誘導体などが代表例としてあげられるがこれらに限定されない。
【0024】
また、ポリエステル樹脂を構成するジオール成分として、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール等の脂肪族ジオール類、シクロヘキサンジメタノール、スピログリコール、イソソルビドなどの脂環式ジオール類、ビスフェノールA、1,3―ベンゼンジメタノール,1,4−ベンセンジメタノール、9,9’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、芳香族ジオール類等のジオール、上述のアルコール成分のヒドロキシ末端にジオール類を付加させたアルコール成分も好ましく用いられる。
【0025】
上述の化合物を適宜組み合わせて、重縮合させることで本発明におけるポリエステル(A1)および(A2)を得ることができる。なお、上記共重合成分に限られず、多官能の共重合成分などを含んでいても構わない。
【0026】
ここで、本発明の積層ポリエステルフィルムにおいて、ポリエステル層(P1層)を構成するポリエステル(A1)は、ポリエチレンテレフタレートを主たる成分とするポリエステルである。ここで、主たる成分とはジオール成分の98モル%以上がエチレングリコール成分であり、ジカルボン酸成分の98モル%以上がテレフタル酸成分であるポリエステルである。
【0027】
ポリエステル(A1)において、ジオール成分中のエチレングリコール成分が98モル%未満および/またはジカルボン酸成分中のテレフタル酸成分が98モル%未満の場合、ポリエステル層(P1層)の結晶性が低下し、本発明の積層ポリエステルフィルムが湿熱雰囲気下に曝された場合に、非晶部の加水分解反応と湿熱雰囲気下での熱結晶化が進行しやすくなる結果、耐湿熱性が低下する。ジオール成分の98モル%以上をエチレングリコール成分とし、ジカルボン酸成分の98モル%以上をテレフタル酸成分とすることによって耐湿熱性を付与することが可能となる。
【0028】
本発明の積層ポリエステルフィルムにおいて、ポリエステル層(P1層)中のポリエステル(A1)は、該ポリエステルの重量平均分子量Mw1が37500以上60000以下であることが好ましい。
【0029】
ここでいう重量平均分子量Mw1とは、以下の方法により求めた。溶媒としてヘキサフルオロプロパノール(0.005N−トリフルオロ酢酸ソーダ)を用い、PET−DMT(標準品)を0.06重量%となるように溶解させた溶液を作製し、カラムとしてShodex HFIP 806M (昭和電工(株)製)を2本、検出器としてRI型(2414型、感度256、WATERS社製)を搭載したゲル浸透クロマトグラフ GCP−244(WATERS社製)を使用し、PET−DMT(標準品)の溶液を室温(23℃)、流速0.5mL/minでGPC測定を行った。得られた溶出容積(V)及び分子量(M)を用いて次式の3次の近似式の係数(A)を計算して校正曲線を作図した。
Log(M)=A+AV+A+A
次に、溶媒としてヘキサフルオロプロパノール(0.005N−トリフルオロ酢酸ソーダ)を用い、ポリエステル層(P1層)を0.06重量%となるように溶解させた溶液を作成し、その溶液を用いてGPC測定を行った。なお、測定条件は任意ではあるが、本測定においては、インジェクション量0.300ml、流速は0.5ml/minで実施した。
【0030】
得られた溶出曲線分子量曲線と分子量校正曲線を重ね合わせ、各流出時間に対応する分子量を求め、次式により算出した値でもって、重量平均分子量を求めた。
重量平均分子量(Mw)=Σ(Ni・Mi)/Σ(Ni・Mi)
(ここで、Niはモル分率、Miは分子量較正曲線を介して得られたGPC曲線の各溶出位置の分子量である。)
なお、ポリエステル層(P1層)が溶媒に不溶な成分を含有する場合は、その不溶な成分を除去した後に測定した値である。
【0031】
より好ましくは、重量平均分子量Mw1が38500以上58000以下であり、更に好ましくは40000以上55000以下である。重量平均分子量Mw1が37500よりも小さい場合、ポリエステル(A1)が耐湿熱特性に劣り、長期使用時に加水分解が進行し、その結果、機械的強度が低下する可能性があるため好ましくない。一方、60000を越えると、重合が困難となったり、重合できたとしても押出機によるポリエステルの押出が困難となり、製膜が困難となるため好ましくない。本発明の積層ポリエステルフィルムにおいて、ポリエステル層(P1層)を構成するポリエステル(A1)の重量平均分子量Mw1を37500以上60000以下とすることによって、容易に成形が可能であり、かつ高い耐湿熱性を有する積層ポリエステルフィルムとすることが可能となる。
【0032】
本発明の積層ポリエステルフィルムにおいて、ポリエステル層(P2層)を構成するポリエステル(A2)は、(i)ポリシクロへキシレンジメチレンテレフタレート、または(ii)ポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートのいずれかを主たる成分とするものである。
【0033】
具体的には、ポリエステル(A2)が(i)ポリシクロへキシレンジメチレンテレフタレートの場合は、ジオール成分の95モル%以上がシクロヘキシレンジメタノール成分であり、ジカルボン酸成分の90モル%以上がテレフタル酸成分であるものである。
【0034】
また、(ii)ポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートの場合はジオール成分の95モル%以上がエチレングリコール成分であり、ジカルボン酸成分の95モル%以上が2,6−ナフタレンジカルボン酸成分であるものである。
【0035】
より好ましくは(i)の場合は、ジオール成分の98モル%以上がシクロヘキシレンジメタノール成分であり、ジカルボン酸成分の93モル%以上98モル%以下がテレフタル酸成分である。
【0036】
または、(ii)の場合は、ジオール成分の98モル%以上がエチレングリコール成分であり、ジカルボン酸成分の98モル%以上が2,6−ナフタレンジカルボン酸成分であるのがよい。
【0037】
なお、ジカルボン酸成分、ジオール成分の上限は100モル%である。
【0038】
ポリエステル層(P2層)を構成するポリエステル(A2)が(i)の場合において、ジオール成分中のシクロヘキシレンジメタノール成分が95モル%未満および/またはジカルボン酸成分中のテレフタル酸成分が90モル%未満の場合、または、(ii)の場合において、ジオール成分中のエチレングリコール成分が95モル%未満および/またはジカルボン酸成分中の2,6−ナフタレンジカルボン酸成分が95モル%未満の場合には、ポリエステル層(P2層)を構成するポリエステル(A2)の結晶性が低くなり、本発明の積層ポリエステルフィルムが湿熱雰囲気下に曝された場合に、非晶部の加水分解反応及び湿熱雰囲気下での熱結晶化が進行しやすくなる結果、耐湿熱性が低下する。
【0039】
本発明の積層ポリエステルフィルムにおいて、ポリエステル層(P2層)を構成するポリエステル(A2)が(i)の場合において、ジオール成分の95モル%以上がシクロヘキシレンジメタノール成分であり、ジカルボン酸成分の90モル%以上がテレフタル酸成分とする、もしくは、(ii)の場合において、ジオール成分の95モル%以上がエチレングリコール成分であり、ジカルボン酸成分の95モル%以上が2,6−ナフタレンジカルボン酸成分とすることによって、耐湿熱性に優れた積層ポリエステルフィルムとすることができる。
【0040】
なお、(i)において、ジカルボン酸成分として、テレフタル酸を98モル%以下とした場合は、製膜性とポリエステル層(P1層)とポリエステル層(P2層)間の密着性をより向上させることができるため、より好ましい。
【0041】
ここで、本発明の積層ポリエステルフィルムのポリエステル層(P1層)のポリエステル(A1)およびポリエステル層(P2層)のポリエステル(A2)における結晶性は高い方が好ましい。ここでいう結晶性が高いとは、JIS K7122(1999)に準じて、昇温速度20℃/minで25℃から325℃まで20℃/分の昇温速度で加熱(1stRUN)して得られる示差走査熱量測定チャートにおいて、融解に伴う吸熱ピークが吸熱ピークの面積から求められる融解熱量ΔHmが10J/g以上であることをいう。好ましくは融解熱量ΔHmが20J/g以上、より好ましくは30J/g以上である。融解熱量ΔHmが10J/gを下回ると、延伸、熱処理を行ったといえども、十分な配向結晶化部を形成できることはなく、ポリエステルの結晶部が少なくなり、密度が低く水分が浸入しやすい非晶部が多いため、耐湿熱性に劣るものとなる。また、フィルムの耐熱性、寸法安定性の面でも好ましくない結果となり易い。結晶性を有するポリエステルを用いることで、延伸、熱処理による配向結晶化をより高めることが可能となり、その結果、より機械的強度、寸法安定性に優れた積層ポリエステルフィルムとすることができる。
【0042】
本発明の積層ポリエステルフィルムにおいて、ポリエステル層(P1層)、ポリエステル層(P2層)それぞれの層には、必要に応じて本発明の効果が損なわれない範囲で、耐熱安定剤、耐酸化安定剤、紫外線吸収能を有する物質、紫外線安定剤、有機系/無機系の易滑剤、有機系/無機系の微粒子、充填剤、核剤、染料、分散剤、カップリング剤等の添加剤が含まれていてもよい。
【0043】
本発明の積層ポリエステルフィルムは、上述の要件を満たすポリエステル層(P1層)とポリエステル層(P2層)の積層構造からなるが、その構成は、上述のポリエステル層(P1層)とポリエステル層(P2層)を含んでいれば、ポリエステル層(P1層)を内層とし、ポリエステル層(P1層)の片側に位置する層をポリエステル層(P2層)とする構成、または両側に位置する層をポリエステル層(P2層)とする構成など、何れの構成でも構わないが、ポリエステル層(P1層)の両側に位置する層をポリエステル層(P2層)とすることが、耐湿熱性をより高めることが可能となり、かつ湿熱雰囲気下でのフィルムの変形が小さいという点でより好ましい。また、太陽電池バックシート加工段階においては、他フィルムとのラミネートやエチレン−ビニルアセテート共重合体(EVA)との圧着などの際に、フィルムは何段階もの熱履歴を受けることになるため、ポリエステル層(P1層)とポリエステル層(P2層)を含む2層構成であれば、フィルムのカールが発生しやすくなる。
【0044】
本発明の積層ポリエステルフィルムにおいて、該積層ポリエステルフィルムの厚みは25μm以上であることが好ましい。より好ましくは40μm以上である。該積層ポリエステルフィルムの厚みが25μmに満たないと、太陽電池バックシートの作製時に、積層ポリエステルフィルムに皺が入りやすくなって作業性が低下したり、積層ポリエステルフィルムの耐擦過性が低下し、積層ポリエステルフィルムを加工中および/または使用中に穴が開きやすくなり、バックシートの絶縁性が低下する場合がある。本発明の積層ポリエステルフィルムにおいて、厚みを25μm以上とすることによって、作業性と耐擦過性を付与することが可能となる
また、本発明では、ポリエステル層(P1層)の厚みの総和d1(μm)とポリエステル層(P2層)の厚みの総和d2(μm)の比d1/d2が2以上8以下であることが重要である。
【0045】
ここで、ポリエステル層(P1層)の厚みの総和d1とは、3層以上からなるフィルムにおいて、P1層に該当する層が2以上ある場合は、P1層に該当する全ての層の厚みを合計するという意味である。同様に、ポリエステル層(P2層)の厚みの総和d2とは、3層以上からなるフィルムにおいて、P2層に該当する層が2以上ある場合は、P2層に該当する全ての層の厚みを合計するという意味である。
【0046】
本発明の積層ポリエステルフィルムにおいて、ポリエステル層(P1層)の厚みの総和d1(μm)と、ポリエステル層(P2層)の厚みの総和d2(μm)の比(以後、「積層比」と称することもある)d1/d2が2以上8以下である必要がある。より好ましくは、3以上6以下である。
【0047】
積層比が8を越えると、積層ポリエステルフィルム中のポリエステル層(P2層)が非常に薄くなるため、ポリエステル層(P2層)を積層することによる耐湿熱性向上効果が十分に得られない。
【0048】
積層比が2よりも小さいと、フィルム製膜時に共延伸での製膜が困難となったり、共延伸性を向上させるために延伸温度を上げる必要があるため、製膜できたとしてもポリエステル層(P1層)の配向が低下して耐湿熱性が低下したり、ポリエステル層(P1層)とポリエステル層(P2層)の収縮応力差が大きくなって、層間剥離が起こる場合がある。ここで、共延伸とは、共押出法、溶融ラミネート法、熱ラミネート法、接着法、コーティング法、およびこれらを組み合わせた方法等により得られた未延伸積層ポリエステルフィルムを構成するポリエステル層(P1層)とポリエステル層(P2層)を同時に延伸して、延伸積層ポリエステルフィルムを得る方法を言う。
【0049】
すなわち、d1/d2を上記数値範囲内とすることにより、耐湿熱性に優れるフィルムを生産性良く得ることができる。
【0050】
また、d1/d2を上記数値範囲内とすることにより、再利用性(回収性)に優れるフィルムとすることができる。ここで再利用(回収)とは、使用済みのフィルムや、何らかの理由により製品とはならなかったフィルムを回収し、これらを細かく裁断し、フレーク状にしたものを、再度ポリエステル層(P1層)の原料として用いることができることを言う。
【0051】
本件発明では、d1/d2を上記数値範囲内とすることにより、回収したフィルムをポリエステル層(P1層)の原料として積層ポリエステルフィルムを製造したとしても、良好な耐湿熱性を持たせることができる。そのため、フィルム製造コストを大幅に低下させることができる。
【0052】
一方、d1/d2が上記数値範囲外であるフィルムを回収し、これをポリエステル層(P1層)の原料として積層ポリエステルフィルムを製造した場合、当該積層ポリエステルフィルムは、十分な耐湿熱性を有しない。
【0053】
また、本発明の積層ポリエステルフィルムにおいて、ポリエステル層(P1層)は一軸、もしくは二軸に配向(延伸)されていることが好ましい。配向(延伸)することにより、配向結晶化により機械的強度を高くすることができ、その結果、耐湿熱性をより向上させることが可能となる。より好ましくは耐湿熱性、耐熱性が選りすぐれるという点で、二軸に延伸されていることが好ましい。
【0054】
また、本発明の積層ポリエステルフィルムにおいて、ポリエステル層(P2層)は一軸、もしくは二軸に配向(延伸)されていることが好ましい。配向(延伸)することにより、配向結晶化により機械的強度を高くすることができ、その結果、耐湿熱性をより向上させることが可能となる。より好ましくは耐湿熱性、耐熱性が選りすぐれるという点で、二軸に延伸されていることが好ましい。
【0055】
さらには、本発明の積層ポリエステルフィルムにおいて、ポリエステル層(P1層)、ポリエステル層(P2層)の両方が二軸に配向(延伸)されていることが、耐湿熱性、耐熱性が更に高くなるという点でより好ましい。
【0056】
本発明の積層ポリエステルフィルムは、温度125℃、相対湿度100%,2.5atmの条件下72時間放置後の伸度保持率が20%以上であることが好ましい。ここでいう伸度保持率とは、ASTM−D882(1999)に基づいて測定されたものであって、処理前のフィルムの破断伸度E0,温度125℃、相対湿度100%、2.5atmの条件下72時間放置後の破断伸度をE1としたときに、次式(1)により得られた値である。
伸度保持率(%)=E1/E0×100 (1)
より好ましくは、上述の方法にて求められた伸度保持率が30%以上、更に好ましくは35%以上、更に好ましくは40%以上、更に好ましくは45%以上、最も好ましくは50%以上である。本発明の積層ポリエステルフィルムにおいて、伸度保持率が20%に満たないと、長期使用した際に機械的強度が低下し、その結果、例えば、該積層ポリエステルフィルムを太陽電池バックシートに用いた場合、そのバックシートを用いた太陽電池の使用中に、外部から何らかの衝撃が太陽電池に加わったとき(例えば、落石などが太陽電池に当たった場合など)に、バックシートが破断することがあるため好ましくない。本発明の積層ポリエステルフィルムにおいて、伸度保持率を20%以上とすることによって、長期使用時におけるバックシートの機械的強度の耐久性を高めることができる。
【0057】
また、本発明の積層ポリエステルフィルムは、他のフィルムと積層することができる。該他のフィルムの例として、機械的強度を高めるためのポリエステル層、帯電防止層、他素材との密着層、耐紫外線性を有するための耐紫外線層、難燃性付与のための難燃層、耐衝撃性や耐擦過性を高めるためのハードコート層など、用途に応じて、任意に選択することができる。その具体例として、本発明の積層ポリエステルフィルムを太陽電池バックシート用フィルムとして用いる場合は、他のシート材料、発電素子を埋包しているエチレンビニルアセテートとの密着性の改善のための易接着層、耐紫外線層、難燃層の他、絶縁性の指標である部分放電現象の発生する電圧を向上させる導電層を形成させることが挙げられる。
【0058】
次に、本発明の積層ポリエステルフィルム製造方法について、その一例を説明するが、本発明は、かかる例のみに限定されるものではない。
【0059】
まず、ポリエステル層(P1層)を構成するポリエステル(A1)、ポリエステル層(P2層)を構成するポリエステル(A2)の製造方法は、以下の方法で製造することができる。
【0060】
本発明の積層ポリエステルフィルムの製造方法において、その原料となるポリエステルは、そのポリエステルを構成する上述のジカルボン酸成分およびそのエステル誘導体とジオール成分を周知の方法でエステル交換反応させることによって得ることができる。従来公知の反応触媒としてはアルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物、亜鉛化合物、鉛化合物、マンガン化合物、コバルト化合物、アルミニウム化合物、アンチモン化合物、チタン化合物、リン化合物などを挙げることが出来る。好ましくは、通常ポリエステルの製造方法が完結する以前の任意の段階に置いて、重合触媒としてアンチモン化合物またはゲルマニウム化合物、チタン化合物を添加することが好ましい。このような方法としては例えば、ゲルマニウム化合物を例に取ると、ゲルマニウム化合物粉体をそのまま添加することが好ましい。
【0061】
また、ポリエステル(A1)の重量平均分子量Mwを37500以上60000以下にコントロールするためには、上記の方法で一端、重量平均分子量が35000程度の通常の分子量のポリエステルを重合した後、ポリエステルの結晶化に伴う発熱ピーク温度以上、熱可塑性樹脂の融点未満の温度で、減圧または窒素ガスのような不活性気体の流通下で加熱する、いわゆる固相重合する方法が好ましい。該方法は熱可塑性樹脂の末端カルボキシル基量を増加させることなく重量平均分子量を高めることができる点で好ましく行われる。
【0062】
次に、ポリエステル層(P1層)の製造方法は、ポリエステル層(P1層)用原料を押出機内で加熱溶融し、口金から冷却したキャストドラム上に押し出してシート状に加工する方法(溶融キャスト法)を使用することができる。その他の方法として、ポリエステル層(P1層)用の原料を溶媒に溶解させ、その溶液を口金からキャストドラム、エンドレスベルト等の支持体上に押出して膜状とし、次いでかかる膜層から溶媒を乾燥除去させてシート状に加工する方法(溶液キャスト法)等も使用することができる。
【0063】
また、ポリエステル層(P1層)にポリエステル層(P2層)を積層する方法は、二つ以上の押出機を用い、一つの押出機にポリエステル層(P1層)用原料、その他の押出機にポリエステル層(P2層)用原料を投入し、溶融状態でポリエステル層(P1層)とポリエステル層(P2層)を合流させ、口金から冷却したキャストドラム上に共押出してシート状に加工する方法(共押出法)、単膜で作製したポリエステル層(P1層)にポリエステル層(P2層)用原料を押出機に投入して溶融押出して口金から押出しながらラミネートする方法(溶融ラミネート法)、ポリエステル層(P1層)とポリエステル層(P2層)それぞれ別々に作製し、加熱されたロール群などにより熱圧着する方法(熱ラミネート法)、接着剤を介して張り合わせる方法(接着法)、その他、ポリエステル層(P2層)用材料、を溶媒に溶解・分散させ、そのそれぞれの塗液をあらかじめ作製していたポリエステル層(P1層)上に塗布する方法(コーティング法)、およびこれらを組み合わせた方法等が使用することができる。
【0064】
また、本発明の積層ポリエステルフィルムにおいて、ポリエステル層(P1層)および/またはポリエステル層(P2層)として、一軸もしくは、二軸延伸されたフィルム基材を選択した場合、その製造方法として、まず、押出機(共押出法で積層する場合は複数台の押出機)に原料を投入し、溶融して口金から押出し(共押出法で積層する場合は共押出)し、表面温度を10℃以上60℃以下に冷却されたドラム上で静電気により密着冷却固化し、未延伸フィルムを作製する。
【0065】
この未延伸フィルムを一軸または二軸延伸することによって、本発明の積層ポリエステルフィルムを得ることが可能となる。なお、二軸延伸する方法としては、長手方向と幅方向の延伸とを分離して行う逐次二軸延伸方法の他に、長手方向と幅方向の延伸を同時に行う同時二軸延伸方法のどちらであっても構わない。
【0066】
逐次二軸延伸法により、二軸延伸する場合は、上述の未延伸フィルムをポリエステル層(P1層)のガラス転移温度Tg+1℃以上Tg+60℃以下の温度に加熱されたロール群に導き、長手方向(縦方向、すなわちフィルムの進行方向)に2.5倍以上5倍以下に延伸し、20℃以上50℃以下の温度のロール群で冷却する。
【0067】
続いて、フィルムの両端をクリップで把持しながらテンターに導き、ポリエステル層(P1層)のガラス転移温度Tg+1℃以上Tg+70℃以下の温度に加熱された雰囲気中で、長手方向に直角な方向(幅方向)に2.5以上5倍以下に延伸する。
【0068】
より好ましくは、長手方向には、ポリエステル層(P1層)のTg+1℃以上Tg+15℃以下、幅方向にはポリエステル層(P1層)のTg+5℃以上Tg+30℃以下の温度範囲とすることで、ポリエステル層(P1層)を高配向としつつ、良好にポリエステル層(P2層)を共延伸することが可能となる。
【0069】
延伸倍率は、長手方向と幅方向それぞれ2.5倍以上5倍以下とするが、その面積倍率(縦延伸倍率×横延伸倍率)は6.5倍以上15倍以下であることが好ましい。面積倍率が6.5倍未満であると、得られる二軸延伸積層フィルムのフィルム強度が不十分となったり、厚みムラが激しくなったりする場合があり、逆に面積倍率が15倍を超えると延伸時に破れを生じ易くなる傾向がある。
【0070】
得られた二軸延伸フィルムの結晶配向を完了させて、平面性と寸法安定性を付与するために、引き続きテンター内にて好ましくはポリエステル層(P1層)の原料となるポリエステル(A1)のTg以上融点Tm1未満の温度で1秒以上30秒以下の熱処理を行ない、均一に徐冷後、室温まで冷却する。
【0071】
また、上記熱処理工程中では、必要に応じて幅方向あるいは長手方向に3〜12%の弛緩処理を施してもよい。
【0072】
続いて必要に応じて、異素材との密着性をさらに高めるためにコロナ放電処理などを行い、巻き取ることにより、本発明の積層ポリエステルフィルムを形成することができる。
【0073】
また、他のフィルムを積層する場合は前記の共押出法のほか、作製したフィルム上に他の熱可塑性樹脂を溶融押出して口金から押出しながらラミネートする方法(溶融ラミネート法)、本発明の積層ポリエステルフィルムと他の樹脂からなるフィルムとを熱圧着する方法(熱ラミネート法)、本発明の積層ポリエステルフィルムと他の樹脂からなるフィルムとを接着剤を介して貼り合わせる方法(接着法)、本発明の積層ポリエステルフィルムの表面に別の材料を塗布して積層する方法(コーティング法)およびこれらを組み合わせた方法等を使用することができる。
【0074】
本発明の積層ポリエステルフィルムは、優れた機械的強度、耐湿熱性、耐熱性、耐擦過性を有する特徴を生かして、銅張り積層板、太陽電池バックシート、粘着テープ、フレキシブルプリント基板、メンブレンスイッチ、面状発熱体、もしくはフラットケーブルなどの電気絶縁材料、コンデンサ用材料、自動車用材料、建築材料を初めとした耐湿熱性が特に重視されるような用途に好適に使用することができる。これらの中で、太陽電池バックシート用フィルムとして好適に用いられる。以下、詳細に説明する。
【0075】
本発明の太陽電池バックシートは上述の積層ポリエステルフィルムを含むことを特徴とし、必要とされる特性に応じて、任意の構成を用いることができる。たとえば、必要とされる特性に応じて、本発明の太陽電池バックシートに発電素子を封止するポリエチレンビニルアセテートEVAとの密着性を向上させるEVA密着層、EVA密着層との密着性を上げるためのアンカー層、水蒸気バリア層、紫外線劣化を防ぐための紫外線吸収層、発電効率を高めるための光反射層、意匠性を発現させるための光吸収層、各層を接着するための接着層などを形成させることによって構成される。
【0076】
EVA密着層は発電素子を封止するEVA系樹脂との密着性を向上させる層であって、最も発電素子に近い側に設置され、バックシートとシステムとの接着に寄与する。その材料はEVA系の樹脂との密着性が発現されれば特に制限はなく、例えばEVAや、EVAとエチレン−メチルアクリレート共重合体(EMA)、エチレン−エチルアクリレート共重合体(EEA)、エチレン−ブチルアクリレート共重合体(EBA)、エチレン−メタクリル酸共重合体(EMAA)、アイオノマー樹脂、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリアミド樹脂などの混合物が好ましく用いられる。
【0077】
また、必要に応じてEVA密着層のバックシートへの密着性を向上させるため、アンカー層を形成することも好ましく行われる。その材料はEVA密着層との密着性が発現されれば特に制限はなく、例えばアクリル樹脂やポリエステル樹脂など樹脂を主たる構成成分とする混合物が好ましく用いられる。
【0078】
水蒸気バリア層は太陽電池を構成した際に発電素子の水蒸気の劣化を防ぐため、バックシート側からの水蒸気の進入を防ぐための層である。酸化珪素、酸化アルミニウム等の酸化物やアルミニウム等の金属層を真空蒸着やスパッタリングなどの周知の方法でフィルム表面に設けることにより形成される。その厚みは通常100オングストローム以上200オングストローム以下の範囲であるのが好ましい。
【0079】
この場合、本発明の積層ポリエステルフィルム上に直接ガスバリア層を設ける場合と別のフィルムにガスバリア性を有する層を設け、このフィルムを本発明の積層ポリエステルフィルム表面に積層する場合、いずれも好ましく用いられる。また、金属箔(たとえばアルミ箔)をフィルム表面に積層する方法も用いることができる。この場合の金属箔の厚さは10〜50μmの範囲が、加工性とガスバリア性から好ましい。
【0080】
紫外線吸収層は、内層の樹脂の紫外線劣化を防ぐために紫外線を遮断するための層であって、380nm以下の紫外線を遮断する機能を有していれば任意のものを用いることができる。
【0081】
光反射層は、光を反射する層であって、本層を形成することによって、内層の樹脂の紫外線劣化を防止したり、太陽電池システムに吸収されずにバックシートまで到達した光を反射してシステム側に返すことで発電効率を高めるために用いる層であって、酸化チタンや硫酸バリウムなどの白色顔料や、気泡などを含有した層である。
【0082】
光吸収層は、光を吸収する層であって、本層を形成することによって、内層の樹脂の紫外線劣化を防止したり、太陽電池の意匠性を向上させるために用いる層である。
【0083】
なお、本発明の太陽電池バックシートにおいて、上述の層はすべて独立した層として形成する必要はなく、複数の機能を兼ね備えた機能統合層として形成するのも好ましい形態である。また、本発明の積層ポリエステルフィルムにすでに機能を有する場合は省略することも可能である。例えば、本発明の積層ポリエステルフィルムにおいて、ポリエステル層(P1層)および/またはポリエステル層(P2層)に酸化チタン、硫酸バリウムなどの無機酸化物を用いて白色性を有する場合は、光反射層を省略することができる場合がある。また、カーボンブラック、カーボンファイバー、カーボンナノチューブ、フラーレン等の炭素系化合物や、その他光吸収剤を含有して光吸収性を有する場合には光吸収層を、無機粒子として紫外線吸収性を有するものを含有する場合などは紫外線吸収層を省略することができる場合がある。
【0084】
本発明の太陽電池バックシートは、従来のバックシートより耐湿熱性が高いという特徴を生かして、従来の太陽電池と比べて耐久性を向上させることが可能となる。
【0085】
本発明の太陽電池バックシートの厚みは25μm以上500μm以下が好ましく、100μm以上300μm以下がより好ましい。更に好ましくは、125μm以上200μm以下である。厚みが10μm未満の場合、フィルムの平坦性を確保することが困難となる。一方、500μmより厚い場合、太陽電池に搭載した場合、太陽電池全体の厚みが大きくなりすぎることがある。
【0086】
本発明の太陽電池は、本発明の積層ポリエステルフィルムを用いた太陽電池バックシートを含むことを特徴とする。本発明の積層ポリエステルフィルムを用いた太陽電池バックシートは従来のバックシートより耐湿熱性が高いという特徴を生かして、従来の太陽電池と比べて高耐久とすることが可能となる。その構成の例を図1に示す。電気を取り出すリード線(図1には示していない)を接続した発電素子をEVA系樹脂などの透明な充填剤2で封止したものに、ガラスなどの透明基板4と、バックシート1と呼ばれる樹脂シートを貼り合わせて構成されるが、これに限定されず、任意の構成に用いることができる。
【0087】
発電素子は、太陽光の光エネルギーを電気エネルギーに変換するものであり、結晶シリコン系、多結晶シリコン系、微結晶シリコン系、アモルファスシリコン系、銅インジウムセレナイド系、化合物半導体系、色素増感系など、目的に応じて任意の素子を、所望する電圧あるいは電流に応じて複数個を直列または並列に接続して使用することができる。
【0088】
透光性を有する基材は太陽電池の最表層に位置するため、高透過率のほかに、高耐候性、高耐汚染性、高機械強度特性を有する透明材料が使用される。透光性を有する基材は上記特性と満たせばいずれの材質を用いることができる。その例としてはガラス、四フッ化エチレン−エチレン共重合体(ETFE)、ポリフッ化ビニル樹脂(PVF)、ポリフッ化ビニリデン樹脂(PVDF)、ポリ四フッ化エチレン樹脂(TFE)、四フッ化エチレン−六フッ化プロピレン共重合体(FEP)、ポリ三フッ化塩化エチレン樹脂(CTFE)、ポリフッ化ビニリデン樹脂などのフッ素系樹脂、オレフィン系樹脂、アクリル系樹脂、およびこれらの混合物などが好ましく挙げられる。ガラスの場合、強化されているものを用いるのがより好ましい。またフッ素系樹脂の場合は、高耐候性という理由でポリフッ化ビニリデン樹脂、四フッ化エチレン−エチレン共重合体を主たる成分とするのがより好ましく、機械的強度の点で、四フッ化エチレン−エチレン共重合体を主たる成分とするのが更に好ましい。また樹脂製の透光基材を用いる場合は、機械的強度の観点から、上記樹脂を一軸または二軸に延伸したものも好ましく用いられる。
【0089】
また、これら基材には発電素子の封止材剤であるEVA系樹脂との接着性を付与するために、表面に、コロナ処理、プラズマ処理、オゾン処理、易接着処理を施すことも好ましく行われる。
【0090】
発電素子を封止するための樹脂は、発電素子の表面の凹凸を樹脂で被覆固定し、外部環境から発電素子を保護し、電気絶縁の目的の他、透光性を有する基材やバックシートと発電素子に接着するため、高透明性、高耐候性、高接着性、高耐熱性を有する材料が使用される。その例としては、エチレン−ビニルアセテート共重合体(EVA)、エチレン−メチルアクリレート共重合体(EMA)、エチレン−エチルアクリレート共重合体(EEA)樹脂、エチレン−メタクリル酸共重合体(EMAA)、アイオノマー樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、およびこれらの混合物などが好ましく用いられる。これらの樹脂のうち、耐候性、接着性、充填性、耐熱性、耐寒性、耐衝撃性のバランスが優れるという点で、エチレン−ビニルアセテートがより好ましく用いられる。
【0091】
ここで、本発明の太陽電池において、上述の太陽電池バックシートは発電素子を封止した樹脂層の背面に設置される。上述の太陽電池バックシートにおいて、本発明の積層ポリエステルフィルムは発電素子側になるように配置されていても良いし、発電素子と反対側になるように配置されていても良い。いずれの構成であっても、本発明の積層ポリエステルフィルムは従来のものに比べて耐湿熱性が高いため、太陽電池システムの耐久性を高めることが可能となる。
【0092】
以上のように、本発明の太陽電池は、上述の積層ポリエステルフィルムを用いた太陽電池バックシートを組み込むことにより、従来の太陽電池と比べて、耐久性を高めた太陽電池システムとすることが可能となる。また、この太陽電池は、太陽光発電システム、小型電子部品の電源など、屋外用途、屋内用途に限定されず各種用途に好適に用いることができる。
【0093】
[特性の評価方法]
(1)固有粘度
オルトクロロフェノール100mlにP層を溶解させ(溶液濃度C=1.2g/ml)、その溶液の25℃での粘度をオストワルド粘度計を用いて測定した。また、同様に溶媒の粘度を測定した。得られた溶液粘度、溶媒粘度を用いて、下記式(2)により、[η]を算出し、得られた値でもって固有粘度(IV)とした。
ηsp/C=[η]+K[η]・C ・・・(2)
(ここで、ηsp=(溶液粘度/溶媒粘度)―1、Kはハギンス定数(0.343とする)である。)。
【0094】
(2)層厚みd1、d2、積層比d1/d2
下記(A1)〜(A5)の手順にて求めた。なお、測定は10ヶ所場所を変えて測定し、その平均値でもってポリエステル層(P1層)の厚みd1、ポリエステル層(P2層)の厚みd2、積層比d1/d2とした。
(A1)ミクロトームを用いて、フィルム断面を厚み方向に潰すことなく、フィルム面方向に対して垂直に切断する。
(A2)次いで切断した断面を、電子顕微鏡を用いて観察し、500倍に拡大観察した画像を得る。なお、観察場所は無作為に定めるものとするが、画像の上下方向がフィルムの厚み方向と、画像の左右方向がフィルム面方向とそれぞれ平行になるようにするものとする。
(A3)前記(A2)で得られる画像中におけるポリエステル層(P1層)の厚みd1、ポリエステル層(P2層)の厚みd2を求めた。
(A4)d1をd2で除し、積層比d1/d2を算出した。
なお、上記の方法で界面が不鮮明で確認できない場合は、(A1)の作業の後、四酸化ルテニウムなどを用いて染色を実施してから(A2)の作業を実施する。
【0095】
(3)融点Tm
JIS K7122(1999)に準じて、セイコー電子工業(株)製示差走査熱量測定装置”ロボットDSC−RDC220”を、データ解析にはディスクセッション”SSC/5200”を用いて測定を実施した。サンプルパンにサンプルを5mgずつ秤量し、サンプル樹脂を25℃から325℃まで20℃/分の昇温速度で加熱し、その状態で5分間保持し、次いで25℃以下となるよう急冷した(1strun)。引き続き、再度室温から20℃/分の昇温速度で325℃まで昇温を行って測定を行った(2ndrun)。得られた2ndRUNの示差走査熱量測定チャートにおける結晶融解ピーク温度でもって融点Tmとした。なお、1stRUNまたは2ndRUNの示差走査熱量測定チャートにおいて、複数の結晶融解ピークが確認された場合には、最も高い結晶融解ピーク温度を融点Tmとして上記同様の方法にて測定を再実施した。
【0096】
(4)破断伸度
破断伸度は、ASTM−D882(1999)に基づいて、サンプルを1cm×20cmの大きさに切り出し、チャック間5cm、引っ張り速度300mm/minにて引っ張ったときの破断伸度を測定した。なお、測定は5サンプルについて測定を実施し、その平均値でもって破断伸度E0とした。また、フィルムの縦方向、横方向のそれぞれについて測定した後、それらの平均値として求めた。
【0097】
得られたポリエステルフィルムの湿熱処理前のフィルムの機械特性について、以下のように判定した。
破断伸度E0が140%以上:S
破断伸度E0が130%以上140%未満の場合:A
破断伸度E0が120%以上130%未満の場合:B
破断伸度E0が110%以上120%未満の場合:C
破断伸度E0が110%未満の場合:E
S〜Cが良好であり、その中でもSが最も優れている。
【0098】
(5)耐湿熱性
試料を測定片の形状(1cm×20cm)に切り出した後、タバイエスペック(株)製プレッシャークッカーにて、温度125℃、相対湿度100%RHの条件下にて72時間処理を行い、その後上記(4)項に従って破断伸度を測定した。なお、測定はn=5とし、また、フィルムの縦方向、横方向のそれぞれについて測定した後、その平均値を破断伸度E1とした。また、処理を行う前のフィルムについても上記(4)項に従って破断伸度E0を測定した。得られた破断伸度E0,E1を用いて、次式(3)により伸度保持率を算出した。
伸度保持率(%)=E1/E0×100 (3)
バックシートの伸度保持率は、上記と同様に処理前のバックシートの破断伸度E0’とし、温度125℃、相対湿度100%RH、2.5atmの条件下で72時間処理後の破断伸度E1’を求め、次式(4)により伸度保持率を算出した。
伸度保持率(%)=E1’/E0’×100 (4)
得られたポリエステルフィルムの伸度保持率について、以下のように判定した。
伸度保持率が50%以上:SS
伸度保持率が45%以上50%未満の場合:S
伸度保持率が40%以上45%未満の場合:A
伸度保持率が35%以上40%未満の場合:B
伸度保持率が30%以上35%未満の場合:C
伸度保持率が20%以上30%未満の場合:D
伸度保持率が20%未満の場合:E
SS〜Dが良好であり、その中でもSSが最も優れている。
【0099】
また、バックシートの伸度保持率について、以下のように判定した。
伸度保持率が40%以上:SS
伸度保持率が35%以上40%未満の場合:S
伸度保持率が30%以上35%未満の場合:A
伸度保持率が25%以上30%未満の場合:B
伸度保持率が20%以上25%未満の場合:C
伸度保持率が10%以上20%未満の場合:D
伸度保持率が10%未満の場合:E
SS〜Dが良好であり、その中でもSSが最も優れている。
【0100】
(6)耐擦過性
スチールウール#0000でポリエステル層(P1層)表面を荷重を変更し、それぞれの荷重において一定荷重下で10往復(速度10cm/s)摩擦し、傷が付かなかった最大荷重を測定した。上記測定を10サンプルについて行い、その平均最大荷重を求め、耐擦過性は以下の基準で判定した。
平均最大荷重が80g/cm:S
平均最大荷重が50g/cm:B
平均最大荷重が20g/cm:E
S〜Bが良好であり、その中でもSが最も優れている。
【0101】
(7)回収性
以下で述べる実施例や比較例で得られたフィルムの耐湿熱性を上記(5)項にしたがって評価し、伸度保持率F0を得た。次に、得られたフィルムを細かく裁断しフレーク状にし、回収品を得た。かかるフレーク状の回収品を用いて、下記のとおり、回収品を原料としたフィルムを製造した。
ポリエステル層(P1層)の原料として、フレーク状の回収品を20重量%と、それぞれの実施例や比較例で用いたポリエステル(A1)を80重量%とを混合せしめたものを用いた。それ以外は、それぞれの実施例や比較例と同様の方法で、フィルムを製造した。
【0102】
かくして得られた回収品を原料としたフィルムについて、上記(5)項に記載の方法を用いて、耐湿熱性の評価を行い、伸度保持率F1を得た。そして、次式(5)により耐湿熱性の維持率を算出した。
耐湿熱性の維持率(%)=F1/F0×100 (5)。
【0103】
回収性は以下の基準で判定した。
耐湿熱性の維持率が90%以上の場合:SS
耐湿熱性の維持率が80%以上90%未満の場合:S
耐湿熱性の維持率が70%以上80%未満の場合:A
耐湿熱性の維持率が60%以上70%未満の場合:B
耐湿熱性の維持率が55%以上60%未満の場合:C
耐湿熱性の維持率が50%以上55%未満の場合:D
耐湿熱性の維持率が50未満の場合:E
SS〜Dが良好であり、その中でもSSが最も優れている。
【0104】
(8)耐カール性
フィルムを150mm×幅100mmに切り出し、タバイエスペック(株)製真空乾燥機(LKV−122)を用いて、無風下140℃雰囲気下で10分間静置し、取り出して冷却した。冷却後のフィルム四隅浮き上がり高さを測長し、平均値を求めた。なお、測定はフィルムの長手方向を長辺に切り出した場合と、幅方向を長辺として切り出した場合と、それぞれについてn=5で測定を実施し、その平均値を算出し、フィルムの接地する面を両面それぞれの場合において測定し、より値の大きい方の値でカール高さとした。
【0105】
得られたカール高さについて、以下のように判定した。
カール高さが5mm以下の場合:S
カール高さが5mmを越えて10mm以下の場合:A
カール高さが10mmを越えて15mm以下の場合:B
カール高さが15mmを越えて20mm以下の場合:C
カール高さが20mmを越える、またはカールが大きく測定不可の場合:E
S〜Cが良好であり、その中でもSが最も優れている。
【0106】
(9)平面性
フィルムを150mm×幅100mmに切り出し、形成したバックシートのカール、たわみなどを観察して、バックシートの四隅浮き上がり高さを測長し、平均値を求めた。なお、測定はバックシートの長手方向を長辺に切り出した場合と、幅方向を長辺として切り出した場合と、それぞれについてn=5で測定を実施し、また、バックシートの接地する面を両面それぞれの場合において測定し、それぞれの平均値を算出し、より値の大きい方の値でカール高さとした。
【0107】
得られたカール高さについて、以下のように判定した。
カール高さが3mm以下の場合:S
カール高さが3mmを越えて5mm以下の場合:A
カール高さが5mmを越えて8mm以下の場合:B
カール高さが8mmを越えて15mm以下の場合:C
カール高さが15mmを越える、またはカールが大きく測定不可の場合:E
S〜Cが良好であり、その中でもSが最も優れている。
【実施例】
【0108】
以下、本発明について実施例を挙げて説明するが、本発明は必ずしもこれらに限定されるものではない。
【0109】
(実施例1−1)
[ポリエステル(A1)(ポリエチレンテレフタレート)の製造]
第一工程として、ジカルボン酸成分としてテレフタル酸ジメチル100mol%、ジオール成分としてエチレングリコール100mol%を用い、触媒として酢酸マグネシウム、三酸化アンチモンを150℃、窒素雰囲気下で溶融後、攪拌しながら230℃まで3時間かけて昇温し、メタノールを留出させ、エステル交換反応を終了した。
第二工程として、エステル交換反応終了後、リン酸をエチレングリコールに溶解したエチレングリコール溶液を添加した。
第三工程として、重合反応を最終到達温度285℃、真空度0.1Torrで行い、固有粘度0.54のポリエステル(ポリエチレンテレフタレート)を得た。
第四工程として、得られたポリエチレンテレフタレートを160℃で6時間乾燥、結晶化させたのち、220℃、真空度0.3Torr、9時間の固相重合を行い、固有粘度0.75、融点255℃のポリエチレンテレフタレート(PET)(ポリエステル(A1))を得た。
【0110】
[ポリエステル(A2)(ポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレート)の製造]
第一工程として、テレフタル酸ジメチル100mol%、1,4−シクロヘキサンジメタノール100mol%、触媒として酢酸マグネシウム、三酸化アンチモンを150℃、窒素雰囲気下で溶融後、攪拌しながら230℃まで3時間かけて昇温し、メタノールを留出させ、エステル交換反応を終了した。
第二工程として、エステル交換反応終了後、リン酸をエチレングリコールに溶解したエチレングリコール溶液(PH5.0)を添加した。
第三工程として、重合反応を最終到達温度300℃、真空度0.1Torrで行い、固有粘度0.58のポリエステルを得た。
第四工程として、得られたポリエステルを160℃で6時間乾燥、結晶化させたのち、250℃、真空度0.3Torr、8時間の固相重合を行い、固有粘度1.0、融点Tm290℃のポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレート(PCT)(ポリエステル(A2))を得た。
【0111】
[積層ポリエステルフィルムの製造]
ポリエステル(A1)を温度180℃、真空度0.5mmHgの条件で、4時間真空乾燥を行った後、主押出機に供給した。また、主押出機とは別に副押出機を用い、この副押出機に、上記ポリエステル(A2)を温度180℃、真空度0.5mmHgの条件で、4時間真空乾燥した後に供給した。主押出機は、窒素雰囲気下280℃の温度で、副押出機は、窒素雰囲気下300℃の温度でそれぞれ溶融させ、次いで主押出機に供給した成分層の両側表層に副押出機に供給した成分層が厚み比率で、副押出機の成分層:主押出機の成分層:副押出機の成分層=1:16:1、となるよう合流させ、Tダイ口金内より、溶融3層積層共押出しを行い、積層シートとし、25℃に保った冷却ドラムに静電印加密着してキャストし、未延伸積層フィルムを得た。
【0112】
続いて、該未延伸積層フィルムを80℃の温度に加熱したロール群で予熱した後、90℃の温度の加熱ロールを用いて長手方向(縦方向)に3.3倍延伸を行い、25℃の温度のロール群で冷却して一軸延伸積層フィルムを得た。
【0113】
得られた一軸延伸積層フィルムの両端をクリップで把持しながらテンター内の90℃の温度の予熱ゾーンに導き、引き続き連続的に100℃の温度の加熱ゾーンで長手方向に直角な方向(幅方向)に3.7倍延伸した。さらに引き続いて、テンター内の熱処理ゾーンで200℃の温度で20秒間の熱処理を施し、さらに200℃の温度で4%幅方向に弛緩処理を行った。次いで、均一に徐冷後、巻き取って厚さ25μmの二軸延伸(二軸配向)積層ポリエステルフィルムを得た。
【0114】
得られた積層ポリエステルフィルムの耐湿熱性、回収性、機械特性、耐擦過性、耐カール性の評価を行った結果を表1に示す。表1に示すように、耐湿熱性、回収性、機械特性、耐擦過性、耐カール性に優れる積層ポリエステルフィルムであった。
【0115】
[バックシートの作成]
得られた積層ポリエステルフィルムに接着剤(“タケラック”(登録商標)A310(三井武田ケミカル(株)製)90質量部、“タケネート”(登録商標)A3(三井武田ケミカル(株)製)10重量部を混合したもの)を塗布し150℃30秒乾燥させたのち、厚さ75μm二軸延伸ポリエステルフィルム“ルミラー”(登録商標)X10S(東レ(株)製)を重ね合わせて、50℃に加熱したラミネーターに通して貼り合わせた。さらに、厚さ12μmのガスバリアフィルム“バリアロックス”(登録商標)VM−PET1031HGTS(東レフィルム加工(株)製)を蒸着層が外側となるようにして、二軸延伸積層ポリエステルフィルム側に上記接着剤で貼り合わせ、厚さ125μmの太陽電池バックシートを作製した。得られたバックシートの耐湿熱性、平面性の評価を実施したところ、表1の通り、高い耐湿熱性、良好な平面性を有することが分かった。
【0116】
(実施例1−2〜1−10)
表1に示す厚み、積層比となるように製膜した以外は、実施例1−1と同様にして、二軸延伸積層ポリエステルフィルムを得た。
得られた積層ポリエステルフィルムの耐湿熱性、回収性、機械特性、耐擦過性、耐カール性の評価を行った結果を表1に示す。表1に示すように、耐湿熱性、回収性、機械特性、耐擦過性、耐カール性に優れる積層ポリエステルフィルムであった。
【0117】
また、得られた積層ポリエステルフィルムを実施例1−1と同様の方法で太陽電池バックシートを作製した。得られたバックシートの耐湿熱性、平面性の評価を実施したところ、表1の通り、高い耐湿熱性、良好な平面性を有することが分かった。
【0118】
(実施例1−11〜実施例1−20)
[ポリエステル(A2)(PCT/I 10mol%)の製造]
ジカルボン酸成分としてテレフタル酸90mol%、イソフタル酸10mol%、ジオール成分としてシクロヘキサンジメタノール100mol%を用い、触媒として酢酸マグネシウム、三酸化アンチモン、亜リン酸を用いて重縮合反応を行い、固有粘度1.0、融点Tm275℃のイソフタル酸共重合ポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレート(PCT/I 10mol%)を得た。PCT/I 10mol%のイソフタル酸の共重合率は、ジカルボン酸に対し10mol%である。
【0119】
[積層ポリエステルフィルム等の製造]
ポリエステル(A2)としてPCT/I 10mol%を用い、表1に示す厚み、積層比となるように製膜した以外は、実施例1−1と同様にして、二軸延伸積層ポリエステルフィルムを得た。
【0120】
得られた積層ポリエステルフィルムの耐湿熱性、回収性、機械特性、耐擦過性、耐カール性の評価を行った結果を表1に示す。表1に示すように、耐湿熱性、回収性、機械特性、耐擦過性、耐カール性に優れる積層ポリエステルフィルムであった。
【0121】
また、得られた積層ポリエステルフィルムを実施例1−1と同様の方法で太陽電池バックシートを作製した。得られたバックシートの耐湿熱性、平面性の評価を実施したところ、表1の通り、高い耐湿熱性、良好な平面性を有することが分かった。
【0122】
なお、ポリエステル(A2)の共重合成分はイソフタル酸に限定されるものではない。例えば、ポリエステル(A2)として、テレフタル酸90mol%と2,6−ナフタレンジカルボン酸10mol%からなるジカルボン酸成分と、シクロヘキサンジメタノール100mol%からなるジオール成分とから構成されるポリエステルを用いる以外は、上記と同様の製膜方法によって得られた二軸延伸積層ポリエステルフィルムの耐湿熱性、回収性、機械特性、耐擦過性、耐カール性の評価を行っても、上記と同様の結果が得られた。
【0123】
(実施例1−21)
溶融流路内でポリエステル層(P1層)用原料およびポリエステル層(P2層)用原料を複合出来る装置(合流装置)を通し、P2層/P1層からなる複合構成(積層構造)を有する未延伸積層シートを得て、押出に際して、複合構成の複合比(積層比)が[P2層厚み/P1層厚み]=[20%/80%]となるように各押出機の押出し量を制御した以外は、実施例1−1と同様の製法で、厚さ50μmの二軸延伸(二軸配向)積層ポリエステルフィルムを得た。
得られた積層ポリエステルフィルムの耐湿熱性、回収性、機械特性、耐擦過性、耐カール性の評価を行った結果を表1に示す。表1に示すように、耐湿熱性、回収性、機械特性、耐擦過性、耐カール性に優れる積層ポリエステルフィルムであった。
【0124】
また、得られた積層ポリエステルフィルムを実施例1−1と同様の方法で太陽電池バックシートを作製した。得られたバックシートの耐湿熱性、平面性の評価を実施したところ、表1の通り、高い耐湿熱性、良好な平面性を有することが分かった。
【0125】
(実施例1−22〜実施例1−23)
表1に示す厚み、積層比となるように製膜した以外は、実施例1−1と同様にして、二軸延伸積層ポリエステルフィルムを得た。
得られた積層ポリエステルフィルムの耐湿熱性、回収性、機械特性、耐擦過性、耐カール性の評価を行った結果を表1に示す。表1に示すように、耐湿熱性、回収性、機械特性、耐カール性に優れる積層ポリエステルフィルムであった。ただし、他の実施例に比べて、耐擦過性に劣るものであった。
【0126】
また、得られた積層ポリエステルフィルムを実施例1−1と同様の方法で太陽電池バックシートを作製した。得られたバックシートの耐湿熱性、平面性の評価を実施したところ、表1の通り、高い耐湿熱性、良好な平面性を有していた。
【0127】
(実施例1−24〜実施例1−26)
表1に示す厚み、積層比となるように製膜した以外は、実施例1−1と同様にして、二軸延伸積層ポリエステルフィルムを得た。
得られた積層ポリエステルフィルムの耐湿熱性、回収性、機械特性、耐擦過性、耐カール性の評価を行った結果を表1に示す。表1に示すように、耐湿熱性、回収性、機械特性、耐擦過性、耐カール性に優れる積層ポリエステルフィルムであった。
【0128】
また、得られた積層ポリエステルフィルムを実施例1−1と同様の方法で太陽電池バックシートを作製した。得られたバックシートの耐湿熱性、平面性の評価を実施したところ、表1の通り、高い耐湿熱性、良好な平面性を有していた。
【0129】
(実施例2−1)
[ポリエステル(A2)(PEN)の製造]
ジカルボン酸成分として2,6−ナフタレンジカルボン酸100mol%、ジオール成分としてエチレングリコール100mol%を用い、触媒として酢酸マグネシウム、三酸化アンチモン、亜リン酸を用いて重縮合反応を行い、固有粘度0.60、融点Tm265℃のポリエチレンー2,6−ナフタレンジカルボキシレート(PEN)を得た。
【0130】
[積層ポリエステルフィルム等の製造]
ポリエステル(A2)として、上記ポリエステル(PEN)を用い、窒素雰囲気下290℃の温度で溶融させ、表2に示す厚み、積層比となるように製膜した以外は、実施例1−1と同様にして、二軸延伸積層ポリエステルフィルムを得た。
得られた積層ポリエステルフィルムの耐湿熱性、回収性、機械特性、耐擦過性、耐カール性の評価を行った結果を表2に示す。表2に示すように、耐湿熱性、回収性、機械特性、耐擦過性、耐カール性に優れる積層ポリエステルフィルムであった。
【0131】
また、得られた積層ポリエステルフィルムを実施例1−1と同様の方法で太陽電池バックシートを作製した。得られたバックシートの耐湿熱性、平面性の評価を実施したところ、表2の通り、高い耐湿熱性、良好な平面性を有することが分かった。
【0132】
(実施例2−2〜2−10)
表2に示す厚み、積層比となるように製膜した以外は、実施例2−1と同様にして、二軸延伸積層ポリエステルフィルムを得た。
得られた積層ポリエステルフィルムの耐湿熱性、回収性、機械特性、耐擦過性、耐カール性の評価を行った結果を表2に示す。表2に示すように、耐湿熱性、回収性、機械特性、耐擦過性、耐カール性に優れる積層ポリエステルフィルムであった。
【0133】
また、得られた積層ポリエステルフィルムを実施例1−1と同様の方法で太陽電池バックシートを作製した。得られたバックシートの耐湿熱性、平面性の評価を実施したところ、表2の通り、高い耐湿熱性、良好な平面性を有することが分かった。
【0134】
(実施例2−11〜実施例2−20)
[ポリエステル(A2)(PEN/I 5mol%)の製造]
ジカルボン酸成分として2,6−ナフタレンジカルボン酸95mol%、イソフタル酸5mol%、ジオール成分としてエチレングリコール100mol%を用い、触媒として酢酸マグネシウム、三酸化アンチモン、亜リン酸を用いて重縮合反応を行い、固有粘度0.60、融点Tm=260℃のイソフタル酸共重合ポリエチレンー2,6−ナフタレンジカルボキシレート(PEN/I 5mol%)を得た。PEN/I 5mol%のイソフタル酸の共重合率は、ジカルボン酸に対し5mol%である。
【0135】
[積層ポリエステルフィルム等の製造]
ポリエステル(A2)としてPEN/I 5mol%を用い、表2に示す厚み、積層比となるように製膜した以外は、実施例2−1と同様にして、二軸延伸積層ポリエステルフィルムを得た。
得られた積層ポリエステルフィルムの耐湿熱性、回収性、機械特性、耐擦過性、耐カール性の評価を行った結果を表2に示す。表2に示すように、耐湿熱性、回収性、機械特性、耐擦過性、耐カール性に優れる積層ポリエステルフィルムであった。
【0136】
また、得られた積層ポリエステルフィルムを実施例1−1と同様の方法で太陽電池バックシートを作製した。得られたバックシートの耐湿熱性、平面性の評価を実施したところ、表2の通り、高い耐湿熱性、良好な平面性を有することが分かった。
なお、ポリエステル(A2)の共重合成分はイソフタル酸に限定されるものではない。例えば、ポリエステル(A2)として、2,6−ナフタレンジカルボン酸100mol%からなるジカルボン酸成分と、シクロヘキサンジメタノール95mol%とブタンジオール5mol%とからなるジオール成分とから構成されるポリエステルを用いる以外は上記と同様の製膜方法によって得られた二軸延伸積層ポリエステルフィルムの耐湿熱性、回収性、機械特性、耐擦過性、耐カール性の評価を行っても、上記と同様の結果が得られた。
【0137】
(実施例2−21)
溶融流路内でポリエステル層(P1層)用原料およびポリエステル層(P2層)用原料を複合出来る装置(合流装置)を通し、P2層/P1層なる複合構成(積層構造)を有する未延伸積層シートを得て、押出に際して、複合構成の複合比(積層比)が[P2層厚み/P1層厚み]=[20%/80%]となるように各押出機の押出し量を制御した以外は、実施例2−1と同様の製法で、厚さ50μmの二軸延伸(二軸配向)積層ポリエステルフィルムを得た。
得られた積層ポリエステルフィルムの耐湿熱性、回収性、機械特性、耐擦過性、耐カール性の評価を行った結果を表2に示す。表2に示すように、耐湿熱性、回収性、機械特性、耐擦過性、耐カール性に優れる積層ポリエステルフィルムであった。
【0138】
また、得られた積層ポリエステルフィルムを実施例1−1と同様の方法で太陽電池バックシートを作製した。得られたバックシートの耐湿熱性、平面性の評価を実施したところ、表2の通り、高い耐湿熱性、良好な平面性を有することが分かった。
【0139】
(実施例2−22〜実施例2−23)
表2に示す厚み、積層比となるように製膜した以外は、実施例2−1と同様にして、二軸延伸積層ポリエステルフィルムを得た。
得られた積層ポリエステルフィルムのポリエステル層(P1層)の耐湿熱性、回収性、機械特性、耐擦過性、耐カール性の評価を行った結果を表2に示す。表2に示すように、耐湿熱性、回収性、機械特性、耐カール性に優れる積層ポリエステルフィルムであった。ただし、他の実施例に比べて耐擦過性に劣るものであった。
【0140】
また、得られた積層ポリエステルフィルムを実施例1−1と同様の方法で太陽電池バックシートを作製した。得られたバックシートの耐湿熱性、平面性の評価を実施したところ、表2の通り、高い耐湿熱性、良好な平面性を有していた。
【0141】
(実施例2−24〜実施例2−26)
表2に示す厚み、積層比となるように製膜した以外は、実施例2−1と同様にして、二軸延伸積層ポリエステルフィルムを得た。
得られた積層ポリエステルフィルムのポリエステル層(P1層)の耐湿熱性、回収性、機械特性、耐擦過性、耐カール性の評価を行った結果を表2に示す。表2に示すように、耐湿熱性、回収性、機械特性、耐擦過性、耐カール性に優れる積層ポリエステルフィルムであった。
【0142】
また、得られた積層ポリエステルフィルムを実施例1−1と同様の方法で太陽電池バックシートを作製した。得られたバックシートの耐湿熱性、平面性の評価を実施したところ、表2の通り、高い耐湿熱性、良好な平面性を有していた。
【0143】
(比較例1−1〜比較例1−2)
表1に示す厚み、積層比となるように製膜した以外は、実施例1−1と同様にして、二軸延伸積層ポリエステルフィルムを得た。
得られた積層ポリエステルフィルムの耐湿熱性、回収性、機械特性、耐擦過性、耐カール性の評価を行った結果を表1に示す。表1に示すように、耐湿熱性、機械特性、耐擦過性、耐カール性に優れる積層ポリエステルフィルムであったものの、回収性に劣る積層ポリエステルフィルムであることが分かった。
【0144】
なお、得られた積層ポリエステルフィルムを実施例1−1と同様の方法で太陽電池バックシートを作製した。得られたバックシートの耐湿熱性、平面性の評価を実施したところ、表1の通り、高い耐湿熱性、良好な平面性を有していた。
【0145】
(比較例1−3〜比較例1−4)
表1に示す厚み、積層比となるように製膜した以外は、実施例1−1と同様にして、二軸延伸積層ポリエステルフィルムを得た。
得られた積層ポリエステルフィルムの耐湿熱性、回収性、機械特性、耐擦過性、耐カール性の評価を行った結果を表1に示す。表1に示すように、回収性、機械特性、耐擦過性、耐カール性に優れる積層ポリエステルフィルムであったものの、耐湿熱性に劣る積層ポリエステルフィルムであることが分かった。
【0146】
また、得られた積層ポリエステルフィルムを実施例1−1と同様の方法で太陽電池バックシートを作製した。得られたバックシートの耐湿熱性、平面性の評価を実施したところ、表1の通り、平面性は優れるものの、耐湿熱性に劣ることが分かった。
【0147】
(比較例1−5〜比較例1−8)
ポリエステル(A2)として、ジカルボン酸成分としてテレフタル酸85mol%、イソフタル酸15mol%、ジオール成分としてシクロヘキサンジメタノール100mol%を用い、触媒として酢酸マグネシウム、三酸化アンチモン、亜リン酸を用いて重縮合反応を行い、固有粘度1.0、融点272℃のイソフタル酸15mol%を含むポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレート(PCT/I 15mol%)を用い、表1に示す厚み、積層比となるように製膜した以外は、実施例1−1と同様にして、二軸延伸積層ポリエステルフィルムを得た。得られた積層ポリエステルフィルムの耐湿熱性、回収性、機械特性、耐擦過性、耐カール性の評価を行った結果を表1に示す。表1に示すように、回収性、機械特性、耐擦過性、耐カール性に優れる積層ポリエステルフィルムであったものの、耐湿熱性に劣る積層ポリエステルフィルムであることが分かった。
【0148】
また、得られた積層ポリエステルフィルムを実施例1−1と同様の方法で太陽電池バックシートを作製し、得られたバックシートの耐湿熱性、平面性の評価を実施した。いずれのバックシートも良好な平面性を有していたものの、耐湿熱性が劣ることがわかった。
【0149】
(比較例1−9〜比較例1−14)
表1に示す厚み、積層比となるように製膜した以外は、実施例1−1と同様にして、二軸延伸積層ポリエステルフィルムを得た。得られた積層ポリエステルフィルムの耐湿熱性、回収性、機械特性、耐擦過性、耐カール性の評価を行った結果を表1に示す。表1に示すように、耐湿熱性、機械特性、耐擦過性、耐カール性に優れる積層ポリエステルフィルムであったものの、回収性に劣る積層ポリエステルフィルムであることが分かった。
【0150】
また、得られた積層ポリエステルフィルムを実施例1−1と同様の方法で太陽電池バックシートを作製し、得られたバックシートの耐湿熱性、平面性の評価を実施した。いずれのバックシートも良好な耐湿熱性、平面性を有することがわかった。
【0151】
(比較例1−15)
ポリエステル(A2)として、ジカルボン酸成分としてテレフタル酸100mol%、ジオール成分としてエチレングリコール100mol%を用い、触媒として酢酸マグネシウム、三酸化アンチモン、亜リン酸を用いて重縮合反応を行い、固有粘度0.75、融点255℃のポリエチレンテレフタレート(PET)を用い、表1に示す厚みとなるように製膜した以外は、実施例1−1と同様にして、二軸延伸単層ポリエステルフィルムを得た。得られた単層ポリエステルフィルムの耐湿熱性、回収性、機械特性、耐擦過性、耐カール性の評価を行った結果を表1に示す。表1に示すように、回収性、機械特性、耐擦過性、耐カール性に優れる積層ポリエステルフィルムであったものの、耐湿熱性に劣る積層ポリエステルフィルムであることが分かった。
【0152】
また、得られた積層ポリエステルフィルムを実施例1−1と同様の方法で太陽電池バックシートを作製し、得られたバックシートの耐湿熱性、平面性の評価を実施した。いずれのバックシートも良好な平面性を有していたものの、耐湿熱性が劣ることがわかった。
【0153】
(比較例1−16)
ポリエステル(A1)として、ジカルボン酸成分としてテレフタル酸100mol%、ジオール成分としてシクロヘキサンジメタノール100mol%を用い、触媒として酢酸マグネシウム、三酸化アンチモン、亜リン酸を用いて重縮合反応を行い、固有粘度1.0、融点Tm290℃のポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレート(PCT)を用い、表1に示す厚みとなるように製膜した以外は、実施例1−1と同様にして、二軸延伸単層ポリエスフィルムを得た。得られた単層ポリエステルフィルムの耐湿熱性、回収性、機械特性、耐擦過性、耐カール性の評価を行った結果を表1に示す。表1に示すように、耐湿熱性、回収性、耐擦過性、耐カール性に優れる積層ポリエステルフィルムであったものの、機械特性に劣る積層ポリエステルフィルムであることが分かった。
【0154】
なお、得られた積層ポリエステルフィルムを実施例1−1と同様の方法で太陽電池バックシートを作製した。得られたバックシートの耐湿熱性、平面性の評価を実施したところ、表1の通り、高い耐湿熱性、良好な平面性を有していた。
【0155】
(比較例2−1〜比較例2−2)
表2に示す厚み、積層比となるように製膜した以外は、実施例2−1と同様にして、二軸延伸積層ポリエステルフィルムを得た。
得られた積層ポリエステルフィルムの耐湿熱性、回収性、機械特性、耐擦過性、耐カール性の評価を行った結果を表2に示す。表2に示すように、耐湿熱性、機械特性、耐擦過性、耐カール性に優れる積層ポリエステルフィルムであったものの、回収性に劣るポリエステルフィルムであることが分かった。
【0156】
また、得られた積層ポリエステルフィルムを実施例1−1と同様の方法で太陽電池バックシートを作製した。得られたバックシートの耐湿熱性、平面性の評価を実施したところ、表2の通り、高い耐湿熱性、良好な平面性を有していた。
【0157】
(比較例2−3〜比較例2−4)
表2に示す厚み、積層比となるように製膜した以外は、実施例2−1と同様にして、二軸延伸積層ポリエステルフィルムを得た。
得られた積層ポリエステルフィルムの耐湿熱性、回収性、機械特性、耐擦過性、耐カール性の評価を行った結果を表2に示す。表2に示すように、回収性、機械特性、耐擦過性、耐カール性に優れる積層ポリエステルフィルムであったものの、耐湿熱性に劣る積層ポリエステルフィルムであることが分かった。
【0158】
また、得られた積層ポリエステルフィルムを実施例1−1と同様の方法で太陽電池バックシートを作製した。得られたバックシートの耐湿熱性、平面性の評価を実施したところ、表2の通り、平面性は優れるものの、耐湿熱性に劣ることが分かった。
【0159】
(比較例2−5〜比較例2−8)
ポリエステル(A2)として、ジカルボン酸成分として2,6−ナフタレンジカルボン92mol%、イソフタル酸8mol%、ジオール成分としてエチレングリコール100mol%を用い、触媒として酢酸マグネシウム、三酸化アンチモン、亜リン酸を用いて重縮合反応を行い、固有粘度1.0、融点256℃のイソフタル酸8mol%を含むポリエチレンー2,6−ナフタレンジカルボキシレート(PEN/I 8mol%)を用い、表2に示す厚み、積層比となるように製膜した以外は、実施例2−1と同様にして、二軸延伸積層ポリエステルフィルムを得た。得られた積層ポリエステルフィルムの耐湿熱性、回収性、機械特性、耐擦過性、耐カール性の評価を行った結果を表2に示す。表2に示すように、回収性、機械特性、耐擦過性、耐カール性に優れる積層ポリエステルフィルムであったものの、耐湿熱性に劣る積層ポリエステルフィルムであることが分かった。
【0160】
また、得られた積層ポリエステルフィルムを実施例1−1と同様の方法で太陽電池バックシートを作製し、得られたバックシートの耐湿熱性、平面性の評価を実施した。いずれのバックシートも良好な平面性を有していたものの、耐湿熱性が劣ることがわかった。
【0161】
(比較例2−9〜比較例2−14)
表2に示す厚み、積層比となるように製膜した以外は、実施例2−1と同様にして、二軸延伸積層ポリエステルフィルムを得た。得られた積層ポリエステルフィルムの耐湿熱性、回収性、機械特性、耐擦過性、耐カール性の評価を行った結果を表2に示す。表2に示すように、耐湿熱性、機械特性、耐擦過性、耐カール性に優れる積層ポリエステルフィルムであったものの、回収性に劣る積層ポリエステルフィルムであることが分かった。
【0162】
また、得られた積層ポリエステルフィルムを実施例1−1と同様の方法で太陽電池バックシートを作製し、得られたバックシートの耐湿熱性、平面性の評価を実施した。いずれのバックシートも良好な耐湿熱性、平面性を有することが分かった。
【0163】
(比較例2−15)
ポリエステル(A1)として、ジカルボン酸成分として2,6−ナフタレンジカルボン酸100mol%、ジオール成分としてエチレングリコール100mol%を用い、触媒として酢酸マグネシウム、三酸化アンチモン、亜リン酸を用いて重縮合反応を行い、固有粘度0.6、融点Tm265℃のポリエチレンー2,6−ナフタレンジカルボキシレート(PEN)を用い、表2に示す厚みとなるように製膜した以外は、実施例2−1と同様にして、二軸延伸単層ポリエスフィルムを得た。得られた単層ポリエステルフィルムの耐湿熱性、回収性、機械特性、耐擦過性、耐カール性の評価を行った結果を表2に示す。表2に示すように、耐湿熱性、回収性、耐擦過性、耐カール性に優れる積層ポリエステルフィルムであったものの、機械特性に劣る積層ポリエステルフィルムであることが分かった。
【0164】
なお、得られた積層ポリエステルフィルムを実施例1−1と同様の方法で太陽電池バックシートを作製した。得られたバックシートの耐湿熱性、平面性の評価を実施したところ、表1の通り、高い耐湿熱性、良好な平面性を有していた。
【0165】
【表1−1】

【0166】
【表1−2】

【0167】
【表2−1】

【0168】
【表2−2】

【産業上の利用可能性】
【0169】
本発明のポリエステルフィルムは、銅張り積層板、太陽電池バックシート、粘着テープ、フレキシブルプリント基板、メンブレンスイッチ、面状発熱体、もしくはフラットケーブルなどの電気絶縁材料、コンデンサ用材料、自動車用材料、建築材料を初めとした長期に渡る耐湿熱性が重視されるような用途に好適に使用することができる。
【符号の説明】
【0170】
1:太陽電池バックシート
2:透明充填剤
3:発電素子
4:透明基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくともポリエステル層(P1層)とポリエステル層(P2層)を有する積層ポリエステルフィルムであって、
ポリエステル層(P1層)はポリエチレンテレフタレートを主たる成分とする層であり、
ポリエステル層(P2層)はポリシクロへキシレンジメチレンテレフタレートまたはポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートのいずれかを主たる成分とする層であり、
ポリエステル層(P1層)の厚みの総和d1(μm)とポリエステル層(P2層)の厚みの総和d2(μm)の比d1/d2が2以上8以下である積層ポリエステルフィルム。
【請求項2】
ポリエステル層(P1層)の両側にポリエステル層(P2層)が積層されてなる請求項1に記載の積層ポリエステルフィルム。
【請求項3】
ポリエステル層(P1層)およびポリエステル層(P2層)が二軸配向されてなる請求項1または2に記載の積層ポリエステルフィルム。
【請求項4】
太陽電池バックシートに用いられる請求項1〜3のいずれかに記載の積層ポリエステルフィルム。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の積層ポリエステルフィルムを用いた太陽電池バックシート。
【請求項6】
請求項5に記載の太陽電池バックシートを用いた太陽電池。

【図1】
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【公開番号】特開2011−167909(P2011−167909A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−33228(P2010−33228)
【出願日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】