説明

積層ポリエステルフィルム

【課題】 ハードコート層等の各種の表面機能層との密着性に優れ、例えば、液晶やプラズマディスプレイ等の部材である各種の光学用フィルムや、成形用フィルム等において、ハードコート層等の表面機能層との密着性を必要とする用途に好適に利用することができる積層ポリエステルフィルムを提供する。
【解決手段】 ポリエステルフィルムの少なくとも片面に、アクリル樹脂およびカルボジイミド系化合物を含有する塗布液を塗布して形成された塗布層を有することを特徴とする積層ポリエステルフィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層ポリエステルフィルムに関するものであり、例えば、液晶ディスプレイ(LCD)のタッチパネルおよびバックライトユニット等において、ハードコート層等との良好な密着性が必要な各種光学用の部材として好適に用いられる積層ポリエステルフィルムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、ポリエステルフィルムは、各種の光学用フィルムに多く用いられ、液晶ディスプレイ(LCD)やプラズマディスプレイ(PDP)等の部材であるタッチパネル、反射防止フィルム、プリズムシート、光拡散シート、電磁波シールドフィルム等の用途に用いられている。これらの部材に用いられるベースフィルムには優れた透明性、視認性が要求される。
【0003】
これらのフィルムには、カール防止や傷つき防止等の性能を向上させるために、上記光学用フィルムの裏面層あるいは下地層として、ハードコート加工されることが多い。基材のポリエステルフィルムとハードコート層との密着性を向上させるために、中間層として易接着の塗布層が設けられる場合が一般的である。易接着性の塗布層としては、例えば、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂等が知られている(特許文献1、2)。
【0004】
また、最近では、スマートフォンあるいはタブレットPCなどのタッチパネルを使用したアプリケーションが急激に増えている。これらのアプリケーションの増加に伴い、タッチパネルに用いられるハードコート層は、単に傷つき防止のために用いられるのではなく、視認性、防眩性、耐指紋性、帯電防止性、耐候性あるいは耐湿熱性などの機能性の付与が求められている。
すなわち、ハードコート層等の構成は変化が激しく、さまざまな層との密着性、耐湿熱性が良好であるような易接着性能を有するポリエステルフィルムが求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8−281890号公報
【特許文献2】特開2000−229395号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記実情に鑑みなされたものであって、その解決課題は、ハードコート層等の各種の表面機能層との密着性に優れた積層ポリエステルフィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記実情に鑑み、鋭意検討した結果、特定の構成からなる積層ポリエステルフィルムを用いれば、上述の課題を容易に解決できることを知見し、本発明を完成させるに至った。
【0008】
すなわち、本発明の要旨は、ポリエステルフィルムの少なくとも片面に、アクリル樹脂およびカルボジイミド系化合物を含有する塗布液を塗布して形成された塗布層を有することを特徴とする積層ポリエステルフィルムに存する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の積層ポリエステルフィルムによれば、ハードコート層等を形成した際に、密着性に優れた積層ポリエステルフィルムを提供することができ、その工業的価値は高い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明における積層ポリエステルフィルムを構成するポリエステルフィルムは単層構成であっても多層構成であってもよく、2層、3層構成以外にも本発明の要旨を越えない限り、4層またはそれ以上の多層であってもよく、特に限定されるものではない。
【0011】
本発明において使用するポリエステルは、ホモポリエステルであっても共重合ポリエステルであってもよい。ホモポリエステルからなる場合、芳香族ジカルボン酸と脂肪族グリコールとを重縮合させて得られるものが好ましい。芳香族ジカルボン酸としては、テレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸などが挙げられ、脂肪族グリコールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等が挙げられる。代表的なポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレート等が例示される。一方、共重合ポリエステルのジカルボン酸成分としては、イソフタル酸、フタル酸、テレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸、オキシカルボン酸(例えば、p−オキシ安息香酸など)等の一種または二種以上が挙げられ、グリコール成分として、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、4−シクロヘキサンジメタノール、ネオペンチルグリコール等の一種または二種以上が挙げられる。
【0012】
本発明のポリエステルフィルム中には液晶ディスプレイの液晶等が紫外線により劣化することを防止するために、紫外線吸収剤を含有させてもよい。紫外線吸収剤は、紫外線吸収能を有する化合物で、ポリエステルフィルムの製造工程で付加される熱に耐えうるものであれば特に限定されない。
【0013】
紫外線吸収剤としては、有機系紫外線吸収剤と無機系紫外線吸収剤があるが、透明性の観点からは有機系紫外線吸収剤が好ましい。有機系紫外線吸収剤としては、特に限定されないが、例えば、環状イミノエステル系、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系などが挙げられる。耐久性の観点からは環状イミノエステル系、ベンゾトリアゾール系がより好ましい。また、紫外線吸収剤を2種類以上併用して用いることも可能である。
【0014】
本発明のフィルムのポリエステル層中には、易滑性の付与および各工程での傷発生防止を主たる目的として、粒子を配合することが好ましい。配合する粒子の種類は、易滑性付与可能な粒子であれば特に限定されるものではなく、具体例としては、例えば、シリカ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、硫酸カルシウム、リン酸カルシウム、リン酸マグネシウム、カオリン、酸化アルミニウム、酸化チタン等の無機粒子、アクリル樹脂、スチレン樹脂、尿素樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ベンゾグアナミン樹脂等の有機粒子等が挙げられる。さらに、ポリエステル製造工程中、触媒等の金属化合物の一部を沈殿、微分散させた析出粒子を用いることもできる。
【0015】
一方、使用する粒子の形状に関しても特に限定されるわけではなく、球状、塊状、棒状、扁平状等のいずれを用いてもよい。また、その硬度、比重、色等についても特に制限はない。これら一連の粒子は、必要に応じて2種類以上を併用してもよい。
【0016】
また、用いる粒子の平均粒径は、通常0.01〜5μm、好ましくは0.1〜3μmの範囲である。平均粒径が0.01μm未満の場合には、易滑性を十分に付与できなかったり、粒子が凝集して、分散性が不十分となり、フィルムの透明性を低下させたりする場合がある。一方、5μmを超える場合には、フィルムの表面粗度が粗くなりすぎて、後工程においてハードコート層等、各種の表面機能層を形成させる場合等に不具合が生じる場合がある。
【0017】
さらにポリエステル層中の粒子含有量は、通常0.0001〜5重量%、好ましくは0.001〜3重量%の範囲である。粒子含有量が0.0001重量%未満の場合には、フィルムの易滑性が不十分な場合があり、一方、5重量%を超えて添加する場合にはフィルムの透明性が不十分な場合がある。
【0018】
ポリエステル層中に粒子を添加する方法としては、特に限定されるものではなく、従来公知の方法を採用しうる。例えば、各層を構成するポリエステルを製造する任意の段階において添加することができるが、好ましくはエステル化もしくはエステル交換反応終了後、添加するのが良い。
【0019】
また、ベント付き混練押出機を用い、エチレングリコールまたは水などに分散させた粒子のスラリーとポリエステル原料とをブレンドする方法、または、混練押出機を用い、乾燥させた粒子とポリエステル原料とをブレンドする方法などによって行われる。
【0020】
なお、本発明におけるポリエステルフィルム中には、上述の粒子以外に必要に応じて従来公知の酸化防止剤、帯電防止剤、熱安定剤、潤滑剤、染料、顔料等を添加することができる。
【0021】
本発明におけるポリエステルフィルムの厚みは、フィルムとして製膜可能な範囲であれば特に限定されるものではないが、通常10〜350μm、好ましくは50〜250μmの範囲である。
【0022】
次に本発明におけるポリエステルフィルムの製造例について具体的に説明するが、以下の製造例に何ら限定されるものではない。すなわち、先に述べたポリエステル原料を使用し、ダイから押し出された溶融シートを冷却ロールで冷却固化して未延伸シートを得る方法が好ましい。この場合、シートの平面性を向上させるためシートと回転冷却ドラムとの密着性を高めることが好ましく、静電印加密着法および/または液体塗布密着法が好ましく採用される。次に得られた未延伸シートは二軸方向に延伸される。その場合、まず、前記の未延伸シートを一方向にロールまたはテンター方式の延伸機により延伸する。延伸温度は、通常70〜120℃、好ましくは80〜110℃であり、延伸倍率は通常2.5〜7倍、好ましくは3〜6倍である。次いで、一段目の延伸方向と直交する方向に延伸するが、その場合、延伸温度は通常70〜170℃であり、延伸倍率は通常3〜7倍、好ましくは3.5〜6倍である。そして、引き続き180〜270℃の温度で緊張下または30%以内の弛緩下で熱処理を行い、二軸配向フィルムを得る。上記の延伸においては、一方向の延伸を2段階以上で行う方法を採用することもできる。その場合、最終的に二方向の延伸倍率がそれぞれ上記範囲となるように行うのが好ましい。
【0023】
また、本発明においては積層ポリエステルフィルムを構成するポリエステルフィルム製造に関しては同時二軸延伸法を採用することもできる。同時二軸延伸法は、前記の未延伸シートを通常70〜120℃、好ましくは80〜110℃で温度コントロールされた状態で機械方向および幅方向に同時に延伸し配向させる方法であり、延伸倍率としては、面積倍率で4〜50倍、好ましくは7〜35倍、さらに好ましくは10〜25倍である。そして、引き続き、170〜250℃の温度で緊張下または30%以内の弛緩下で熱処理を行い、延伸配向フィルムを得る。上述の延伸方式を採用する同時二軸延伸装置に関しては、スクリュー方式、パンタグラフ方式、リニアー駆動方式等、従来公知の延伸方式を採用することができる。
【0024】
次に本発明における積層ポリエステルフィルムを構成する塗布層の形成について説明する。塗布層に関しては、ポリエステルフィルムの製膜工程中にフィルム表面を処理する、インラインコーティングにより設けられてもよく、一旦製造したフィルム上に系外で塗布する、オフラインコーティングを採用してもよい。製膜と同時に塗布が可能であるため、製造が安価に対応可能であることから、インラインコーティングが好ましく用いられる。
【0025】
インラインコーティングについては、以下に限定するものではないが、例えば、逐次二軸延伸においては、特に縦延伸が終了した横延伸前にコーティング処理を施すことができる。インラインコーティングによりポリエステルフィルム上に塗布層が設けられる場合には、製膜と同時に塗布が可能になると共に、延伸後のポリエステルフィルムの熱処理工程で、塗布層を高温で処理することができるため、塗布層上に形成され得る各種の表面機能層との密着性や耐湿熱性等の性能を向上させることができる。また、延伸前にコーティングを行う場合は、塗布層の厚みを延伸倍率により変化させることもでき、オフラインコーティングに比べ、薄膜で均一な塗工を行うことができる。すなわち、インラインコーティング、特に延伸前のコーティングにより、ポリエステルフィルムとして好適なフィルムを製造することができる。
【0026】
本発明においては、ポリエステルフィルムの少なくとも片面に、アクリル樹脂およびカルボジイミド系化合物を含有する塗布液から形成された塗布層を有することを必須の要件とするものである。
【0027】
本発明で用いるアクリル樹脂とは、アクリル系、メタアクリル系のモノマーに代表されるような、炭素−炭素二重結合を持つ重合性モノマーからなる重合体である。これらは、単独重合体あるいは共重合体いずれでも差し支えない。また、それら重合体と他のポリマー(例えばポリエステル、ポリウレタン等)との共重合体も含まれる。例えば、ブロック共重合体、グラフト共重合体である。あるいは、ポリエステル溶液、またはポリエステル分散液中で炭素−炭素二重結合を持つ重合性モノマーを重合して得られたポリマー(場合によってはポリマーの混合物)も含まれる。同様にポリウレタン溶液、ポリウレタン分散液中で炭素−炭素二重結合を持つ重合性モノマーを重合して得られたポリマー(場合によってはポリマーの混合物)も含まれる。同様にして他のポリマー溶液、または分散液中で炭素−炭素二重結合を持つ重合性モノマーを重合して得られたポリマー(場合によってはポリマー混合物)も含まれる。
【0028】
上記炭素−炭素二重結合を持つ重合性モノマーとしては、特に限定はしないが、特に代表的な化合物としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、フマル酸、マレイン酸、シトラコン酸のような各種カルボキシル基含有モノマー類、およびそれらの塩;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、モノブチルヒドロキルフマレート、モノブチルヒドロキシイタコネートのような各種の水酸基含有モノマー類;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレートのような各種の(メタ)アクリル酸エステル類;(メタ)アクリルミド、ジアセトンアクリルアミド、N−メチロールアクリルアミドまたは(メタ)アクリロニトリル等のような種々の窒素含有ビニル系モノマー類;スチレン、α−メチルスチレン、ジビニルベンゼン、ビニルトルエンのような各種スチレン誘導体、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルのような各種のビニルエステル類;γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン等のような種々の珪素含有重合性モノマー類;燐含有ビニル系モノマー類;塩化ビニル、塩化ビニリデンのような各種のハロゲン化ビニル類;ブタジエンのような各種共役ジエン類が挙げられる。
【0029】
ハードコート層等との密着性を向上させるために、水酸基、アミノ基、アミド基等の官能基を含有するアクリル樹脂を使用することが好ましい。
【0030】
本発明のフィルムにおける塗布層形成には、塗布層の塗膜を強固にし、各種のハードコート層等と十分な密着性を有し、これらの層を形成後の耐湿熱性等を向上させるために架橋剤としてカルボジイミド系化合物を使用する。
【0031】
本発明で使用するカルボジイミド系化合物とは、塗布層上に形成され得るハードコート層等の表面機能層との密着性の向上や、塗布層の耐湿熱性の向上のために用いられるものである。カルボジイミド系化合物は、分子内にカルボジイミド構造を1つ以上有する化合物であるが、より良好な密着性等のために、分子内に2つ以上有するポリカルボジイミド系化合物がより好ましい。
【0032】
カルボジイミド系化合物は従来公知の技術で合成することができ、一般的には、ジイソシアネート化合物の縮合反応が用いられる。ジイソシアネート化合物としては、特に限定されるものではなく、芳香族系、脂肪族系いずれも使用することができ、具体的には、トリレンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネートなどが挙げられる。
【0033】
さらに本発明の効果を消失させない範囲において、ポリカルボジイミド系化合物の水溶性や水分散性を向上するために、界面活性剤を添加することや、ポリアルキレンオキシド、ジアルキルアミノアルコールの四級アンモニウム塩、ヒドロキシアルキルスルホン酸塩などの親水性モノマーを添加して用いてもよい。
【0034】
本発明における積層ポリエステルフィルムにおいて、塗布面上にハードコート層等の種々の表面機能層が形成されたときの密着性の向上や干渉ムラの低減、透明性の向上、塗布面状を良化させる等のために任意のポリマーを併用することも可能である。
【0035】
ポリマーの具体例としては、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、ポリアルキレングリコール、ポリアルキレンイミン、メチルセルロース、ヒドロキシセルロース、でんぷん類等が挙げられる。上記中でも特に塗布面状や密着性の向上という観点からポリエステル樹脂、ウレタン樹脂を併用することが好ましい。
【0036】
それらの中でも、分子内にベンゼン環等の芳香族化合物を数多く含有させることができ、それにより屈折率が高くなるため、ハードコート層等の表面機能層を形成後の干渉ムラを軽減できるという観点から、ポリエステル樹脂がより好ましい。
【0037】
ポリエステル樹脂とは、主な構成成分として例えば、下記のような多価カルボン酸および多価ヒドロキシ化合物からなる。すなわち、多価カルボン酸としては、テレフタル酸、イソフタル酸、オルトフタル酸、フタル酸、4,4’−ジフェニルジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、2−カリウムスルホテレフタル酸、5−ソジウムスルホイソフタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸、グルタル酸、コハク酸、トリメリット酸、トリメシン酸、ピロメリット酸、無水トリメリット酸、無水フタル酸、p−ヒドロキシ安息香酸、トリメリット酸モノカリウム塩およびそれらのエステル形成性誘導体などを用いることができ、多価ヒドロキシ化合物としては、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,3−プロパンジオ−ル、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオ−ル、2−メチル−1,5−ペンタンジオ−ル、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノ−ル、p−キシリレングリコ−ル、ビスフェノ−ルA−エチレングリコ−ル付加物、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコ−ル、ポリプロピレングリコ−ル、ポリテトラメチレングリコ−ル、ポリテトラメチレンオキシドグリコ−ル、ジメチロ−ルプロピオン酸、グリセリン、トリメチロ−ルプロパン、ジメチロ−ルエチルスルホン酸ナトリウム、ジメチロ−ルプロピオン酸カリウムなどを用いることができる。これらの化合物の中から、それぞれ適宜1つ以上を選択し、常法の重縮合反応によりポリエステル樹脂を合成すればよい。
【0038】
さらに、縮合多環式芳香族構造を有するポリエステル樹脂は、縮合多環式芳香族構造を有するがゆえに屈折率が高く、容易に塗布層の屈折率の調整ができ、ハードコート層等の表面機能層を形成後の干渉ムラを軽減することができるので好ましい。
【0039】
縮合多環式芳香族構造の具体例としては、例えば、下記式で示される構造、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン、ナフタセン、ベンゾ[a]アントラセン、ベンゾ[a]フェナントレン、ピレン、ベンゾ[c]フェナントレン、ペリレンを有する化合物等が挙げられる。
【0040】
【化1】

【0041】
縮合多環式芳香族構造をポリエステル樹脂に組み込む方法としては、例えば、縮合多環式芳香族構造に置換基として水酸基を2つあるいはそれ以上導入してジオール成分あるいは多価水酸基成分とするか、あるいはカルボン酸基を2つあるいはそれ以上導入してジカルボン酸成分あるいは多価カルボン酸成分として作成する方法がある。ポリエステル樹脂の安定性の観点から、縮合多環式芳香族構造にカルボン酸基を導入し、酸成分とすることが好ましい。また、積層ポリエステルフィルム製造工程において、着色がしにくいという点で、縮合多環式芳香族構造はナフタレン構造であることが好ましい。
【0042】
カルボン酸基を導入したナフタレン構造としては、代表的なものとして、2,6−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、および2,7−ナフタレンジカルボン酸等が挙げられる。この中でも2,6−ナフタレンジカルボン酸が特に好ましい。
【0043】
なお、縮合多環式芳香族構造には、水酸基やカルボン酸基以外にも、硫黄元素を含有する置換基、フェニル基等の芳香族置換基、ハロゲン元素基等を導入することにより、屈折率の向上が期待できる。また、塗布性や密着性の観点から、アルキル基、エステル基、アミド基等の置換基を導入してもよいし、水への分散性向上のために、スルホン酸基等の親水基を導入してもよい。
【0044】
本発明において、塗布層の屈折率の調整を補足的に行うために、縮合多環式芳香族構造を有するポリエステル樹脂以外の高屈折率材料を併用することも可能である。例えば、金属酸化物の微粒子、ビスフェノールA構造のような芳香族構造を多く含有する化合物、硫黄元素やハロゲン元素を含有する化合物等が挙げられる。
【0045】
さらに塗布層中には本発明の主旨を損なわない範囲において、カルボジイミド系化合物以外の架橋剤を併用することも可能である。カルボジイミド系化合物以外の架橋剤としては、種々公知の架橋剤が使用できるが、例えば、オキサゾリン化合物、メラミン化合物、エポキシ化合物、イソシアネート系化合物等が挙げられる。
【0046】
また、塗布層の滑り性改良やブロッキング改良のために、粒子を含有することも可能である。用いる粒子としては、例えば、シリカ、アルミナ、酸化金属等の無機粒子、あるいは架橋高分子粒子等の有機粒子等を挙げることができる。
【0047】
さらに本発明の主旨を損なわない範囲において、塗布層には必要に応じて消泡剤、塗布性改良剤、増粘剤、有機系潤滑剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、発泡剤、染料、顔料等が含有されてもよい。
【0048】
本発明において、塗布層を形成する塗布液中の全揮発成分に対する割合としてアクリル樹脂は、通常3〜60重量%、好ましくは5〜50重量%、より好ましくは10〜40重量%である。3重量%未満の場合は、アクリル樹脂成分が少ないことにより密着性が十分でない場合があり、60重量%を超える場合は、塗布層がもろくなり、密着性が十分でない場合や、耐湿熱性が十分ではない場合がある。
【0049】
本発明において、塗布層を形成する塗布液中の全揮発成分に対する割合としてカルボジイミド系化合物は、通常1〜50重量%、好ましくは3〜40重量%、より好ましくは5〜30重量%である。1重量%未満の場合は、塗布層がもろくなり、湿度や熱に十分に耐えられない場合があり、50重量%を超える場合は、塗布外観が悪化する場合や、塗布液の安定性が悪化する場合がある。
【0050】
本発明のポリエステルフィルムにおいて、上述した塗布層を設けた面と反対側の面にも塗布層を設けることも可能である。例えば、ハードコート層を形成した反対側にプリズム層、マイクロレンズ、光拡散層、ハードコート層等の機能層を形成する場合に、当該機能層との密着性を向上させることが可能である。反対側の面に形成する塗布層の成分としては、従来公知のものを使用することができる。例えば、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂等のバインダーポリマー、カルボジイミド系化合物、オキサゾリン化合物、エポキシ化合物、メラミン化合物、イソシアネート系化合物等の架橋剤等が挙げられ、これらの材料を単独で用いてもよいし、複数種を併用して用いてもよい。また、上述してきたようなアクリル樹脂およびカルボジイミド系化合物を含有する塗布液から形成された塗布層(ポリエステルフィルムに両面同一の塗布層)であってもよい。
【0051】
塗布層中の各種成分の分析は、例えば、TOF−SIMS等の表面分析によって行うことができる。
【0052】
インラインコーティングによって塗布層を設ける場合は、上述の一連の化合物を水溶液または水分散体として、固形分濃度が0.1〜50重量%程度を目安に調整した塗布液をポリエステルフィルム上に塗布する要領にて積層ポリエステルフィルムを製造するのが好ましい。また、本発明の主旨を損なわない範囲において、水への分散性改良、造膜性改良等を目的として、塗布液中には少量の有機溶剤を含有していてもよい。有機溶剤は1種類のみでもよく、適宜、2種類以上を使用してもよい。
【0053】
本発明における積層ポリエステルフィルムに関して、ポリエステルフィルム上に設けられる塗布層の膜厚は、通常0.002μm〜1.0μmである。干渉ムラを軽減する必要のある用途では、好ましくは0.04〜0.20μm、より好ましくは0.07〜0.15μmの範囲である。膜厚が上記範囲より外れる場合は、塗布外観が悪化したり、表面機能層との密着性が十分でない場合がある。
【0054】
本発明において、塗布層を設ける方法はリバースグラビアコート、ダイレクトグラビアコート、ロールコート、ダイコート、バーコート、カーテンコート等、従来公知の塗工方式を用いることができる。塗工方式に関しては「コーティング方式」槇書店 原崎勇次著 1979年発行に記載例がある。
【0055】
本発明において、ポリエステルフィルム上に塗布層を形成する際の乾燥および硬化条件に関しては特に限定されるわけではなく、例えば、オフラインコーティングにより塗布層を設ける場合、通常、80〜200℃で3〜40秒間、好ましくは100〜180℃で3〜40秒間を目安として熱処理を行うのが良い。
【0056】
一方、インラインコーティングにより塗布層を設ける場合、通常、70〜280℃で3〜200秒間を目安として熱処理を行うのが良い。
【0057】
また、オフラインコーティングあるいはインラインコーティングに係わらず、必要に応じて熱処理と紫外線照射等の活性エネルギー線照射とを併用してもよい。本発明における積層ポリエステルフィルムを構成するポリエステルフィルムにはあらかじめ、コロナ処理、プラズマ処理等の表面処理を施してもよい。
【0058】
本発明における塗布層は干渉ムラの発生を抑制するために、屈折率を調整することが好ましい。干渉ムラのあるフィルムをタッチパネル等のディスプレイに使用すると、視認性の悪いものになってしまい、使用しづらいものとなる場合がある。そのため干渉ムラ対策をすることが好ましい。一般的には、干渉ムラを軽減させるための塗布層の屈折率は、基材のポリエステルフィルムの屈折率とハードコート層の屈折率の相乗平均付近と考えられ、この辺りの屈折率に調整することが理想的である。ポリエステルフィルムの屈折率が高いため、一般的には塗布層の屈折率を高く設計する必要がある。
【0059】
塗布層の屈折率と塗布層の反射率は密接な関係がある。干渉ムラを軽減する設計にする場合、塗布層の絶対反射率は、横軸に波長、縦軸に反射率を示すグラフを描き、反射率の極小値が波長400〜800nmの範囲に1つあり、その極小値は3.5%以上であることが好ましい。本発明の塗布層においては、絶対反射率の極小値が同じ波長に現れるならば、極小値の反射率は、屈折率が高い場合は高い値となり、屈折率が低い場合は低い値となる。
【0060】
本発明における絶対反射率は、波長400〜800nmの範囲に極小値が1つ存在することが好ましく、より好ましくは波長500〜700nmの範囲に極小値が1つ存在するものである。また、その極小値の値が、好ましくは3.5〜6.0%、より好ましくは3.8〜5.8%の範囲である。波長400〜800nmの範囲にある極小値が1つではない場合、また、極小値の絶対反射率が上記の値を外れる場合は、ハードコート層等の表面機能層を形成後に干渉ムラが発生し、フィルムの視認性が低下する場合がある。本発明において、上記範囲の絶対反射率は、例えば、縮合多環式芳香族構造を有するポリエステル樹脂の種類や量、カルボジイミド系化合物の種類や量、その他に併用し得るポリマー、架橋剤を適宜選択することによって得ることができるが、本発明においては、縮合多環式芳香族構造の量の変更が最も有効である。
【0061】
本発明のポリエステルフィルムには、塗布層の上にハードコート層等、各種の表面機能層を設けるのが一般的である。ハードコート層に使用される材料としては、特に限定されないが、例えば、単官能(メタ)アクリレート、多官能(メタ)アクリレート、テトラエトキシシラン等の反応性珪素化合物等の硬化物が挙げられる。これらのうち生産性及び硬度の両立の観点より、活性エネルギー線硬化性の多官能(メタ)アクリレートを含む組成物の重合硬化物であることが特に好ましい。
【0062】
紫外線硬化性の多官能(メタ)アクリレートを含む組成物としては特に限定されるものでない。例えば、公知の紫外線硬化性の多官能(メタ)アクリレートを一種類以上混合したもの、活性エネルギー線硬化性ハードコート材として市販されているもの、あるいはこれら以外に本実施形態の目的を損なわない範囲において、その他の成分を更に添加したものを用いることができる。
【0063】
活性エネルギー線硬化性の多官能(メタ)アクリレートとしては、特に限定されるものではないが、例えばジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレートペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸エチレンオキサイド変性トリ(メタ)アクリレート、ε−カプロラクトン変性トリス(アクロキシエチル)イソシアヌレート等のイソシアヌル酸変性トリ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ) アクリレート等のアルカンジオールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAエチレンオキサイド変性ジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールFエチレンオキサイド変性ジ(メタ)アクリレート等のビスフェノール変性ジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0064】
紫外線硬化性の多官能(メタ)アクリレートを含む組成物に含まれるその他の成分は特に限定されるものではない。例えば、無機又は有機の微粒子、重合開始剤、重合禁止剤、酸化防止剤、帯電防止剤、分散剤、界面活性剤、光安定剤及びレベリング剤等が挙げられる。また、ウェットコーティング法において成膜後乾燥させる場合には、任意の量の溶媒を添加することができる。
【0065】
ハードコート層の形成方法は、有機材料を用いた場合にはロールコート法、ダイコート法等の一般的なウェットコート法が採用される。形成されたハードコート層には必要に応じて加熱や紫外線、電子線等の活性エネルギー線照射を施し、硬化反応を行うことができる。
【実施例】
【0066】
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はその要旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。また、本発明で用いた測定法および評価方法は次のとおりである。
【0067】
(1)ポリエステルの極限粘度の測定方法
ポリエステルに非相溶な他のポリマー成分および顔料を除去したポリエステル1gを精秤し、フェノール/テトラクロロエタン=50/50(重量比)の混合溶媒100mlを加えて溶解させ、30℃で測定した。
【0068】
(2)平均粒径の測定方法
TEM(株式会社日立ハイテクノロジーズ製 H−7650、加速電圧100V)を使用して塗布層を観察し、粒子10個の粒径の平均値を平均粒径とした。
【0069】
(3)塗布層の膜厚測定方法
塗布層の表面をRuOで染色し、エポキシ樹脂中に包埋した。その後、超薄切片法により作成した切片をRuOで染色し、塗布層断面をTEM(株式会社日立ハイテクノロジーズ製 H−7650、加速電圧100V)を用いて測定した。
【0070】
(4)塗布外観の評価方法
ポリエステルフィルムの塗膜形成面を3波長光域型蛍光灯下で目視にて、塗布ムラを観察し、塗布ムラが確認できないものを○、薄い塗布ムラが確認されるものを△、明瞭な塗布ムラが確認されるものを×とした。
【0071】
(5)密着性の評価方法
ポリエステルフィルムの塗膜形成面に下記塗布剤組成から構成される活性エネルギー線硬化樹脂を#16ワイヤーバーにより塗布し、80℃で1分間乾燥し溶剤を除去した後、紫外線照射機から紫外線をメタルハライドランプ120Wで180mJ/cm照射し、厚み5μmのハードコート層を形成した。得られたフィルムに対して、初期(密着性1)、および80℃、90%RHの環境下で168時間後(密着性2)、JIS K5600−5−6に記載された試験方法に準じて接着性を求めた。具体的には100個の升目状の切り傷を、隙間間隔1mmのカッターガイドを用いて付けた。次いで、18mm幅のテープ(ニチバン株式会社製セロテープ(登録商標)CT−18)を升目上の切り傷面に貼り付け、2.0kgのローラーを20往復して完全に付着させた後、90度の剥離角度で急激に剥がした後の剥離面を観察し、剥離面積が5%未満ならば○、5%以上30%未満なら△、30%以上ならば×とした。
《活性エネルギー線硬化樹脂組成》
KAYARAD−DPHA(日本化薬株式会社製) 24部
R−128H(日本化薬株式会社製) 6部
Irgacure 651(BASF株式会社製) 1.5部
トルエン(和光純薬株式会社製) 70部
【0072】
(6)干渉ムラの評価方法
ポリエステルフィルムの塗膜形成面に(5)に記載の塗布剤組成から構成される活性エネルギー線硬化樹脂を#16ワイヤーバーにより塗布し、80℃で1分間乾燥し溶剤を除去した後、紫外線照射機から紫外線をメタルハライドランプ120Wで180mJ/cm照射し、厚み5μmのハードコート層を形成した。得られたフィルムを3波長光域型蛍光灯下で目視にて、干渉ムラを観察し、干渉ムラが確認できないものを◎、薄くまばらな干渉ムラが確認されるものを○、薄いが線状の干渉ムラが確認できるものを△、明瞭な干渉ムラが確認されるものを×とした。
【0073】
(7)ポリエステルフィルムにおける塗布層表面からの絶対反射率の評価方法
あらかじめ、ポリエステルフィルムの測定裏面に黒テープ(ニチバン株式会社製ビニールテープVT―50)を貼り、分光光度計(日本分光株式会社製 紫外可視分光光度計 V−570 および自動絶対反射率測定装置 ARM−500N)を使用して同期モード、入射角5°、N偏光、レスポンス Fast、データ取区間隔1.0nm、バンド幅10nm、走査速度1000m/minで塗布層面を波長範囲400〜800nmの絶対反射率を測定し、その極小値における波長(ボトム波長)と反射率を評価した。
【0074】
実施例および比較例において使用したポリエステルは、以下のようにして準備したものである。
<ポリエステル(A)の製造方法>
テレフタル酸ジメチル100重量部とエチレングリコール60重量部とを出発原料とし、触媒として酢酸マグネシウム・四水塩0.09重量部を反応器にとり、反応開始温度を150℃とし、メタノールの留去とともに徐々に反応温度を上昇させ、3時間後に230℃とした。4時間後、実質的にエステル交換反応を終了させた。この反応混合物にエチルアシッドフォスフェート0.04重量部を添加した後、三酸化アンチモン0.04重量部を加えて、4時間重縮合反応を行った。すなわち、温度を230℃から徐々に昇温し280℃とした。一方、圧力は常圧より徐々に減じ、最終的には0.3mmHgとした。反応開始後、反応槽の攪拌動力の変化により、極限粘度0.63に相当する時点で反応を停止し、窒素加圧下ポリマーを吐出させた。得られたポリエステル(A)の極限粘度は0.63であった。
【0075】
<ポリエステル(B)の製造方法>
ポリエステル(A)の製造方法において、エチルアシッドフォスフェート0.04重量部を添加後、平均粒子径1.6μmのエチレングリコールに分散させたシリカ粒子を0.2重量部、三酸化アンチモン0.04重量部を加えて、極限粘度0.65に相当する時点で重縮合反応を停止した以外は、ポリエステル(A)の製造方法と同様の方法を用いてポリエステル(B)を得た。得られたポリエステル(B)は、極限粘度0.65であった。
【0076】
塗布層を構成する化合物例は以下のとおりである。
(化合物例)
・アクリル樹脂:(I)下記組成で重合したアクリル樹脂の水分散体
エチルアクリレート/n−ブチルアクリレート/メチルメタクリレート/N−メチロールアクリルアミド/アクリル酸=65/21/10/2/2(重量%)の乳化重合体(乳化剤:アニオン系界面活性剤)
【0077】
・カルボジイミド系化合物:(II)
ポリカルボジイミド系化合物 カルボジライト V−02(日清紡ケミカル株式会社製)
【0078】
・ポリエステル樹脂:(IIIA)下記組成で共重合したポリエステル樹脂の水分散体
モノマー組成:(酸成分)テレフタル酸/イソフタル酸/5−ソジウムスルホイソフタル酸//(ジオール成分)エチレングリコール/1,4−ブタンジオール/ジエチレングリコール=56/40/4//70/20/10(mol%)
・ポリエステル樹脂(縮合多環式芳香族化合物含有):(IIIB)
下記組成で共重合したポリエステル樹脂の水分散体
モノマー組成:(酸成分)2,6−ナフタレンジカルボン酸/5−ソジウムスルホイソフタル酸//(ジオール成分)エチレングリコール/ジエチレングリコール=92/8//80/20(mol%)
【0079】
・粒子:(IV)平均粒径0.07μmのシリカゾル
【0080】
実施例1:
ポリエステル(A)、(B)をそれぞれ90%、10%の割合で混合した混合原料を最外層(表層)の原料とし、ポリエステル(A)を中間層の原料として、2台の押出機に各々を供給し、各々285℃で溶融した後、40℃に設定した冷却ロール上に、2種3層(表層/中間層/表層=1:18:1の吐出量)の層構成で共押出し冷却固化させて未延伸シートを得た。次いで、ロール周速差を利用してフィルム温度85℃で縦方向に3.4倍延伸した後、この縦延伸フィルムの両面に、下記表1に示す塗布液1を塗布し、テンターに導き、横方向に120℃で4.0倍延伸し、225℃で熱処理を行った後、横方向に2%弛緩し、塗布量(乾燥後)が表2に示すような塗布層を有する厚さ125μmのポリエステルフィルムを得た。
【0081】
得られたポリエステルフィルムに関して各種の密着性を評価したところ、いずれの評価でも良好であった。このフィルムの特性を下記表2に示す。
【0082】
実施例2〜12:
実施例1において、塗布剤組成を表1に示す塗布剤組成に変更する以外は実施例1と同様にして製造し、ポリエステルフィルムを得た。でき上がったポリエステルフィルムは表2に示すとおりであり、密着性は良好であり、干渉ムラも問題ないレベルであった。
【0083】
比較例1:
実施例1において、塗布層を設けないこと以外は実施例1と同様にして製造し、ポリエステルフィルムを得た。でき上がった積層ポリエステルフィルムを評価したところ、表2に示すとおりであり、干渉ムラが生じ、密着性も弱いものであった。
【0084】
比較例2、3:
実施例1において、塗布剤組成を表1に示す塗布剤組成に変更する以外は実施例1と同様にして製造し、ポリエステルフィルムを得た。でき上がった積層ポリエステルフィルムを評価したところ、表2に示すとおりであり、干渉ムラは問題ないレベルであったが、密着性が弱いものであった。
【0085】
比較例4:
実施例1において、塗布剤組成を表1に示す塗布剤組成に変更する以外は実施例1と同様にして製造し、ポリエステルフィルムを得た。でき上がった積層ポリエステルフィルムを評価したところ、表2に示すとおりであり、干渉ムラが生じ、密着性も弱いものであった。
【0086】
比較例5:
実施例1において、塗布剤組成を表1に示す塗布剤組成に変更する以外は実施例1と同様にして製造し、ポリエステルフィルムを得た。でき上がった積層ポリエステルフィルムを評価したところ、表2に示すとおりであり、塗布外観が悪化し、干渉ムラが生じるものであった。
【0087】
【表1】

【0088】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0089】
本発明のフィルムは、例えば、液晶やプラズマディスプレイ等の部材である各種の光学用フィルムや、成形用フィルム等において、ハードコート層等の表面機能層との密着性を必要とする用途に好適に利用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエステルフィルムの少なくとも片面に、アクリル樹脂およびカルボジイミド系化合物を含有する塗布液から形成された塗布層を有することを特徴とする積層ポリエステルフィルム。

【公開番号】特開2013−1099(P2013−1099A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−138071(P2011−138071)
【出願日】平成23年6月22日(2011.6.22)
【出願人】(000006172)三菱樹脂株式会社 (1,977)
【Fターム(参考)】