説明

積層体、シーラント被覆アルミニウム材、シーラント被覆アルミニウム材の製造方法及び積層体の製造方法

【課題】異なる種類の金属がセルフピアシングリベットにより接合されていても腐食の発生を防ぐことができる積層体等を提供する。
【解決手段】積層体10は、アルミニウム板20と、アルミニウム板20の一方の表面上に設けられた第一のシーラント層40と、アルミニウム板20の他方の表面側に設けられた鋼材30と、アルミニウム板20と鋼材30との間に設けられた第二のシーラント層41と、を備え、各層は、セルフピアシングリベット50により固着され、第一のシーラント層40及び第二のシーラント層41は、乾燥膜厚100〜3000μmである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車、鉄道車両などの輸送分野、機械部品、建築構造物等に用いられる積層体、シーラント被覆アルミニウム材、シーラント被覆アルミニウム材の製造方法及び積層体の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
アルミニウム板及びアルミニウム合金板(以下、総称してアルミニウム板という)は、耐食性が良好で軽量であることから、飲料缶材料、建材、電機及び電子部品を含む家電材並びに自動車材等の用途に広く利用されている。
【0003】
特に自動車材の分野においては、車体の軽量化を図るため、アルミニウム板で形成された車輌用部材(例えばアルミルーフパネル)が利用されている。そして、一つの車輌に、アルミ製の車輌用部材と鉄製の車輌用部材とが用いられ、これらを接合することがある。しかし、この場合、従来の抵抗スポット溶接では、接合界面に脆い金属間化合物が生成され、継手強度が低く信頼性に問題があった。
【0004】
また、異種金属部材間の接合強度を確保するために、異種金属部材をトランジションピースを介して融接する技術が開発されている。しかし、トランジションピースが高価であるためコスト的に実施が困難であった。
【0005】
そこで、従来、セルフピアシングリベット(SPR)を用いて異種金属部材を機械的に接合する方法が実用化されている。セルフピアシングリベット接合は、異種金属接合方法の中では接合時間が短く、異種金属同士の溶融による接触を必要としない為、多くの種類の金属を接合することが可能である。また、異種金属を接合する他の方法であるメカニカルクリンチ接合よりも、接合強度が高い等の特徴を持つ。
【0006】
そして、縁部の全周に絶縁シール部を設けたアルミ製のルーフパネルと、スチール製のサイドレールとを、セルフピアシングリベットにより接合する接合構造が知られている(特許文献1)。
【0007】
また、平板状の板材と、接合座面部を有する板材とを接合する接合構造であって、接合部を包囲するように環状のシール部材が配置され、そのシール部材を2つの板材で挟んだ状態で、接合部をセルフピアシングリベットにより接合する接合構造が知られている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2000−272541号公報
【特許文献2】特開2007−113083号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、セルフピアシングリベット接合では、リベットを打ち込んだ後、板からの反発力を受ける。そのため、リベットの食い込み量が小さくなり、図2(a)及び(b)に示すように、リベット頭部とアルミニウム板との間に隙間Sが形成される場合がある。特許文献1に記載の構造では、板端面にのみシーリングをしており、鋼板とアルミニウム板間や接合部近傍にはシーリングがないため、リベット頭部とアルミニウム板との隙間から水分が浸入した場合、腐食が発生するといった問題点があった。また、金属製リベットが使用される為、リベットと被接合材との電食も引き起こされていた。
【0010】
また、特許文献2に記載の構造では、絶縁シール材があるものの、アルミニウム板と接着されておらず、隙間から水分が浸入すれば腐食が発生するという問題があった。
【0011】
本発明は、このような従来技術の問題点に鑑みてなされたものであり、異なる種類の金属をセルフピアシングリベット接合により積層しても腐食の発生を防止できる積層体等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するための本発明の第1の観点に係る積層体は、
アルミニウム材層と、
前記アルミニウム材層の一方の表面上に設けられた第一のシーラント層と、
前記アルミニウム材層の他方の表面側に設けられた鋼材層と、
前記アルミニウム材層と前記鋼材層との間に設けられた第二のシーラント層と、
を備える積層体であって、
前記各層は、セルフピアシングリベットにより固着され、
前記第一のシーラント層及び前記第二のシーラント層は、乾燥膜厚100〜3000μmである
ことを特徴とする。
【0013】
また、前記第一のシーラント層及び前記第二のシーラント層は、ウレタンプレポリマー、であることが望ましい。
【0014】
また、上記目的を達成するための本発明の第2の観点に係るシーラント被覆アルミニウム材は、
本発明の第1の観点に係る積層体に用いられ、
前記第一のシーラント層及び前記第二のシーラント層は、前記アルミニウム材の両表面に設けられていることを特徴とする。
【0015】
また、前記第一のシーラント層及び前記第二のシーラント層は、ウレタンプレポリマー、であることが望ましい。
【0016】
また、上記目的を達成するための本発明の第3の観点に係るシーラント被覆アルミニウム材の製造方法は、
アルミニウム材の両表面にウレタンプレポリマーを塗布する工程と、
前記ウレタンプレポリマーが塗布されたアルミニウム材を、到達板温60〜80℃で25分以上焼付する工程と、
を含むことを特徴とする。
【0017】
また、上記目的を達成するための本発明の第4の観点に係る積層体の製造方法は、
本発明の第1の観点に係る積層体の製造方法であって、
各層を積層する工程と、
鋼材を下側にしてダイスの上に載置する工程と、
アルミニウム材側から、パンチによりセルフピアシングリベットを打ち込む工程と、
を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明により、異なる種類の金属をセルフピアシングリベット接合により積層しても腐食の発生を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施形態に係る積層体を示す断面図である。
【図2】従来のセルフピアシングリベット接合された積層体を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態を説明する。尚、以下に記載する実施形態は本発明の好適な実施形態であり、本願発明の範囲を制限するものではない。また、当業者であればこれらの各要素又は全要素をこれと均等なものに置換した実施形態を採用することが可能であるが、これらの実施形態も本発明の範囲に含まれる。
【0021】
図1に示すように、本実施形態に係る積層体10は、アルミニウム板20の表面に第一のシーラント層40及び第二のシーラント層41が形成されたシーラント被覆アルミニウム材60と、鋼材30と、セルフピアシングリベット50とからなる。そして、積層体10は、シーラント被覆アルミニウム材60と、鋼材30とが、セルフピアシングリベット50により接合されて形成されている。
【0022】
まず、本実施形態に係るシーラント被覆アルミニウム材60を構成する各要素について説明する。
【0023】
(アルミニウム板)
アルミニウム板20には、純アルミニウム、ならびに、鉄、銅、マンガン、珪素、マグネシウム、亜鉛、クロム、ニッケル等を1種又は2種以上含有するアルミニウム合金材が用いられる。アルミニウム板20の厚さは特に限定されるものではないが、0.1〜3mmのものが好適に用いられる。
【0024】
アルミニウム板20は、大気中に放置されることで酸化被膜を生成する。また、圧延などの製造工程で、アルミニウム板20の表面には油分が付着する。この酸化被膜及び油分を除去するため、アルカリ性水溶液及び/又は酸性水溶液による脱脂、洗浄を行うことが好ましい。これらの脱脂や洗浄には、通常のアルミニウム処理法として行われる方法でよく、市販の処理液を使用することも可能である。アルカリ性水溶液には、水酸化ナトリウムや水酸化カリウム等が用いられ、酸性水溶液には、硫酸、硝酸、リン酸、フッ酸、硝酸とフッ酸の混合液等が用いられる。
【0025】
(シーラント層)
本実施形態に係るシーラント被覆アルミニウム60は、耐食性を向上させるため、第一のシーラント層40及び第二のシーラント層41を有している。シーラント剤としてはウレタンプレポリマーが好適である。
【0026】
ウレタンプレポリマーは、水、酸性水、塩基性水を封止して腐食を防ぐことができる。これは、腐食原因である水や酸/塩基がウレタンプレポリマー中に溶けることができないからである。結果的に、金属部品付近の水分濃度が低く保たれることで、腐食防止効果が発揮される。
【0027】
また、ウレタンプレポリマーは、液状シーラント剤と比較すると高粘度である為、セルフピアシングリベット接合時に、リベットとアルミニウム板の間に巻き込まれない。ウレタンプレポリマーは、リベットが打ち込まれることによって押し上げられ、図1(b)に示すように、アルミニウム板20とリベット頭部51に形成される隙間を埋める。そして、図2(b)に示すような、水が浸入するおそれがある袋構造の隙間Sが形成されることを防止する。ウレタンプレポリマーとして例えば、SRシールA−24(サンライズMSI社製)やS−461(セメダインヘンケル社製)等が挙げられる。またシーラント剤としてウレタンプレポリマーだけでなく、シリコーンポリマーも適用可能である。シリコーンポリマーとしては例えば、信越シリコーン(株)製一液型RTVゴム脱オキシムタイプ等が挙げられる。
【0028】
第一のシーラント層40及び第二のシーラント層41は、隙間の封止効果を発揮させるため、乾燥膜厚が100〜3000μmで形成されている。厚さが100μm未満では十分な耐食性が得られず、3000μmを超えると塗膜が脆くなる。また、第一のシーラント層40及び第二のシーラント層41は、同じ膜厚で形成されている必要はなく、異なる膜厚であってもよい。
【0029】
次に、本実施形態に係るシーラント被覆アルミニウム材60の第一のシーラント層40及び第二のシーラント層41の形成方法について説明する。
【0030】
(シーラント層形成方法)
第一のシーラント層40及び第二のシーラント層41の形成には、塗布方法としてロールコート法、ロールスクイズ法、エアナイフ法、ケミコーター法、浸漬法、スプレー法、バーコート法等を利用できる。その中でも、塗膜の均一性に優れ、生産性が良好なロールコーター法を適用することが好ましい。塗布後、到達板温60〜80℃で焼付を25分以上実施することで均一な層が得られる。到達板温が60℃未満では、シーラント剤が硬化せず、80℃を超えると、シーラント剤と金属面間に焦げ付きが発生し、シーラント剤が金属面から剥離する。また、焼付時間が25分未満では、シーラント剤が硬化しない。
【0031】
以上で、本実施形態に係るシーラント被覆アルミニウム材60が得られる。
【0032】
次に、本実施形態に係る積層体10を構成する鋼材30及びリベット50について説明する。
【0033】
(鋼材)
鋼材30には、鉄ならびに炭素、珪素、マンガン、燐、硫黄等を1種又は2種以上含有する鋼材を用いることができる。鋼材30の厚さは特に限定されるものではないが、0.6〜1mmのものが好適に用いられる。本発明に使用される鋼材30は、表面に油分が付着した状態でもよく、また、鋼材の発錆を防ぐ為の防錆油が塗布された状態でもよい。また、亜鉛鍍金や合金化溶融亜鉛鍍金、アルミニウム鍍金など各種鍍金層が施された鍍金鋼板を用いてもよい。
【0034】
(リベット)
リベット50は、大径のリベット頭部51と、リベット頭部51から延びて内側に空洞が形成されたリベット突起部52と、から成る。リベット突起部52の長さは、アルミニウム板20の厚さ以上であることが必要である。リベット50には、錫亜鉛鍍金層でコーティングされたタングステン/カーバイドから成る超硬合金を用いているが、これに限らず、あらゆる鍍金層でコーティングされた合金を用いることができる。
【0035】
次に、本実施形態に係る積層体10を形成する方法について説明する。
【0036】
(セルフピアシングリベット接合方法)
セルフピアシングリベット接合には、パンチとダイスを有する締結装置を用いる。
まず、シーラント被覆アルミニウム材60を鋼材30の上側に重ね合わせる。次に、重ね合わせた板材を、鋼材30を下側にした状態で、ダイスの上に配置する。そして、シーラント被覆アルミニウム材60側から、パンチによりセルフピアシングリベット50を打ち込む。打ち込まれたセルフピアシングリベット50は、シーラント被覆アルミニウム材60を貫通し、鋼材30内でダイス形状に開くことにより、シーラント被覆アルミニウム材60と鋼材30とを締結する(図1参照)。ダイスの形状は、板厚や材料強度に合わせて決めることができる。
【0037】
次に、上記の接合方法によって得られた、本実施形態に係る積層体10について説明する。
【0038】
(積層体)
積層体10は、図1に示すように、シーラント被覆アルミニウム材60と鋼材30とが、セルフピアシングリベット50で接合されて作製されている。接合されるアルミニウム板20と鋼材30の接合面間には、アルミニウム板20に予め設けられたシーラント層41が挟まれることにより、積層金属間の空間を埋めている。また、シーラント層41の撥水性によって、水分の浸透を防ぎ、異種金属の接触による電食を防ぐことができる。
【0039】
また、シーラント被覆アルミニウム材60をダイス側とし、鋼材30側からリベット50を打ち込むことも可能であるが、良好な接合部を形成する為に、鋼材30をダイス側とし、シーラント被覆アルミニウム材60側からリベット50を打ち込むことが好ましい。
【0040】
また、上述のとおり、シーラント層40の厚さは、100μm以上でアルミニウム板20とリベット頭部51との間に形成される隙間の封止効果を発揮する。シーラント層の厚みが100μmを超えると、リベット50をシーラント被覆アルミニウム材60に打ち込んだ時、弾性を有するシーラント層40は、リベット50に引かれて瞬間的に伸ばされ、アルミニウム板20とリベット50との隙間に追従しようとするが、途中で切断される。そのため、シーラント層40が追従しようとした分だけ、接合後のアルミニウム材とリベットの間に隙間が発生する。しかし、アルミニウム材のリベット打ち込み側の面にはシーラント層が形成されているため、リベットと被打点アルミニウム材に形成される隙間部の入り口を被覆し、水分が浸入することはない。
【0041】
このように、本実施形態に係る積層体は、表面にシーラント層が形成されたアルミニウム板と、鋼材とを、セルフピアスリベットにより接合した積層体である。アルミニウム板と鋼材との間に第二のシーラント層が存在するため、アルミニウム板と鋼材との間の隙間を封止することができる。そして、第一のシーラント層に被覆の欠落部があり、雨水等がリベット脚部とアルミニウム板の切断部端面との間の僅かな隙間から毛細管現象により浸入しても、第二のシーラント層が存在するため、電食を防ぐことができる。また、リベット頭部とアルミニウム板間に形成される隙間の入口を第一のシーラント層で封止することにより、リベットと積層体の接触腐食も防止することができる。
【0042】
また、本実施形態の積層体は、両表面にシーラント層が形成されたシーラント被覆アルミニウム材に、鋼材を積層させ、セルフピアスリベットにより接合した積層体であったが、これに限定されるものではない。片側表面にシーラント層が形成されたシーラント被覆アルミニウム材と、片側表面にシーラント層が形成された鋼材を用意し、シーラント層側を上方にした鋼材の上に、シーラント層側を上方にしたアルミニウム材を積層させ、セルフピアスリベットにより接合した積層体であってもよい。
【0043】
また、本実施形態では、シーラント剤としてウレタンプレポリマーを使用したが、これに限られるものではなく、従来、自動車に応用されているシリコーンゴム等も適用可能である。
【実施例】
【0044】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本実施例は一例に過ぎず、本発明を限定するものではない。
【0045】
まず、シーラント被覆アルミニウム材の基板として、板厚1.2mmのA6022アルミニウム合金板を準備した。また、積層される鋼板として、板厚1.0mmの冷延鋼板(SPCC)を準備した。
【0046】
アルミニウム板に対し、シーラント剤を塗装する前処理として、下記A1〜A3の洗浄を行い供試材とした。
A1:40℃の市販のアルカリ脱脂剤(水酸化ナトリウム系)に10秒間浸
漬した後、40℃の10%硝酸に10秒間浸漬
A2:40℃の5%水酸化ナトリウム水溶液に10秒間浸漬
A3:40℃の10%硝酸に10秒間浸漬
【0047】
次に、アルミニウム板に、SRシールA−24(サンライズMSI社製)をロールコーターにて塗布し、焼付処理を行った。加熱保持、乾燥条件は表1のように行った。
【0048】
その後、得られたシーラント被覆アルミニウム材と、鋼材とを、セルフピアシングリベット接合し、接合強度評価用試験片と耐食性試験用試験片を作成した。
【0049】
1)塗膜安定性
シーラント被覆アルミニウム材の被覆に、セロハンテープを貼り付け、剥がしたセロハンテープへの剥離粉の付着を目視により確認した。
○ :剥離粉の付着無し
× :剥離粉付着
○を合格とし、×を不合格とした。
【0050】
2)接合強度評価
シーラント被覆アルミニウム材及び鋼材を、それぞれ100mm×30mmに切断し、40mm×30mmを重ね合わせた。パンチ側をシーラント被覆アルミニウム材、ダイ側を鋼材として、積層部にセルフピアシングリベット接合を施し、160mm×30mmの積層体試験片を作製した。リベット頭部がアルミニウム材表面から0.3mm〜0.6mm埋没するように、リベットをシーラント被覆アルミニウム材に打ち込んだ。リベットは、東海金属HENROB社タイプセルフピアシングリベットを使用した。リベットは、錫亜鉛鍍金されたS45C材であり、胴体部3.5mmφ、突起部の長さは5mm、突起部の厚さは0.7mmで形成されたものを用いた。試験片の引張せん断強度を測定し、下記基準により分類した。
○ :引張せん断強度 ≧ 2000N
△ :2000N > 引張せん断強度 ≧ 1800N
× :引張せん断強度 < 1800N
【0051】
3)耐食性試験
シーラント被覆アルミニウム材及び鋼材を、それぞれ150mm×60mmに切断し、150mm×30mmを重ね合わせた。パンチ側をシーラント被覆アルミニウム材、ダイ側を鋼材として積層部にセルフピアシングリベット接合を施し、150mm×90mmの積層体試験片を作製した。リベット頭部がアルミニウム材表面から0.3mm〜0.6mm埋没するように、リベットをシーラント被覆アルミニウム材に打ち込んだ。リベットは、東海金属HENROB社タイプセルフピアシングリベットを使用した。リベットは、錫亜鉛鍍金されたS45C材であり、胴体部3.5mmφ、突起部の長さは5mm、突起部の厚さは0.7mmで形成されたものを用いた。作製した試験片を化成処理及び電着塗装処理した。その後、試験片のエッジを白色ペイント(日本ペイント製)でシールし、この試験片にSAE−J2334に準拠したサイクル腐食試験(0.5%NaCl+0.1%CaCl+0.075%NaHCO水溶液浸漬(25℃)→乾燥(60℃, 50%RH以下)→湿潤(50℃, 98%RH以上))を120サイクル行った。この試験後に、接合部を剥離させて観察し、耐食性(アルミニウムの最大腐食深さ)を評価した。耐食性はアルミニウム材の最大腐食深さを測定した。
◎:最大腐食深さ 0.1mm未満
○:最大腐食深さ 0.1〜0.2mm
△:最大腐食深さ 0.2〜1.0mm
×:最大腐食深さ 1.0mmより大きい
【0052】
【表1】

【0053】
比較例1は、シーラントが薄過ぎるため、塗膜が不安定で塗布抜けが発生した。そして、その部分に水分が浸入してしまうため、耐食性が不十分であった。
比較例2は、乾燥時板温が低すぎるため、シーラントが硬化しなかった。そのため、塗膜にクラックが生じたり、塗膜が剥離した。塗膜が剥離したため、耐食性が不十分であった。
比較例3は、シーラント厚さが大きすぎて、乾燥温度と時間が足りなかった。そのため、塗膜が剥離した。また、塗膜が剥離したため、耐食性が不十分であった。
比較例4は、焼付時板温が高過ぎたため、シーラントと金属面間に焦げ付きが発生し、金属面とシーラント接触部において界面剥離が発生した。また、塗膜が剥離したため、耐食性が不十分であった。
比較例5は、加熱保持時間が短過ぎて、シーラントが硬化しなかった。そのため、塗膜が剥離した。また、塗膜が剥離したため、耐食性が不十分であった。
【符号の説明】
【0054】
10 積層体
20 アルミニウム板
30 鋼材
40 第一のシーラント層
41 第二のシーラント層
50 セルフピアシングリベット
60 シーラント被覆アルミニウム材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミニウム材層と、
前記アルミニウム材層の一方の表面上に設けられた第一のシーラント層と、
前記アルミニウム材層の他方の表面側に設けられた鋼材層と、
前記アルミニウム材層と前記鋼材層との間に設けられた第二のシーラント層と、
を備える積層体であって、
前記各層は、セルフピアシングリベットにより固着され、
前記第一のシーラント層及び前記第二のシーラント層は、乾燥膜厚100〜3000μmである
ことを特徴とする積層体。
【請求項2】
前記第一のシーラント層及び前記第二のシーラント層は、ウレタンプレポリマーから成ることを特徴とする請求項1に記載の積層体。
【請求項3】
請求項1に記載の積層体に用いられるシーラント被覆アルミニウム材であって、
前記第一のシーラント層及び前記第二のシーラント層は、前記アルミニウム材の両表面に設けられていることを特徴とするシーラント被覆アルミニウム材。
【請求項4】
前記第一のシーラント層及び前記第二のシーラント層は、ウレタンプレポリマーから成ることを特徴とする請求項3に記載のシーラント被覆アルミニウム材。
【請求項5】
アルミニウム材の両表面にウレタンプレポリマーを塗布する工程と、
前記ウレタンプレポリマーが塗布されたアルミニウム材を、到達板温60〜80℃で25分以上焼付する工程と、
を含むシーラント被覆アルミニウム材の製造方法。
【請求項6】
請求項1に記載の積層体の製造方法であって、
各層を積層する工程と、
鋼材を下側にしてダイスの上に載置する工程と、
アルミニウム材側から、パンチによりセルフピアシングリベットを打ち込む工程と、
を含む積層体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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