説明

積層体、有機EL表示素子、及び、有機EL表示素子の製造方法

【課題】優れた低抵抗性、優れた耐湿性、及びパターニング性を有する積層体と、それを備えた有機EL表示素子を得る。
【解決手段】基体1の上に第1の電極層3、第1の電極層3上に形成される有機EL層4と、有機EL層4上に形成される第2の電極層5とを備える有機EL表示素子の製造方法であって、第1の電極層3又は第2の電極層5に導電接続される積層体35を形成するステップを備え、積層体35を形成するステップは、Ag又はAg合金を主成分とする導体層11を形成するステップと、導体層11上にNi−Mo合金を主成分とするキャップ層12を形成するステップとを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層体、有機エレクトロルミネセンス(EL)表示素子及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
次世代の薄型表示素子(以下、「FPD」と略記する)として、有機EL表示素子が携帯電話等に使用され始めている。有機EL表示素子は、有機発光材料を備えて、自発発光によって表示が行われる。高速応答性、視認性、輝度などの点で、従来の液晶ディスプレイ(LCD)やプラズマディスプレイ(PDP)に比して格段に優れている。その基本的構成や動作原理は、例えば、非特許文献1に示されている。一般的には、透明な電極(例えば、錫ドープ酸化インジウム(ITO))と他の電極との間に、発光を行うための有機EL発光材料が挟持された構成となっている。有機EL発光材料としては、陽極側から正孔輸送層、発光層、電子輸送層などが備えられる。現在、有機EL表示素子の長寿命化と高輝度化、フルカラー化等を達成できるよう、さらなる研究が進められているところである。
【0003】
有機EL表示素子は、電流駆動型のディスプレイである。なかでも、パッシブ駆動型の有機EL表示素子では、各行の選択期間だけ電流が流れ、それに応じて発光層が発光して表示が行われる。その結果、電圧駆動型のLCDの場合と比較して、大電流が電極に流れ込むことになる。例えば、画素サイズが300μm×300μmで、陽極本数が100本のパネルを1/64デューティ比で駆動する場合を想定する。発光効率が1cd/Aであって、平均輝度300cd/mで点灯させるには、選択期間に陰極に流れ込む電流の総和は172.8mAとなる。このように大電流が流れるため、電圧が上昇して階調表示時の表示ムラが発生したり、使用する陽極ドライバにかかる圧力が上昇するなどの問題があった。かかる問題を回避するためには、電圧上昇を抑制するための電極や配線の低抵抗化の技術が重要となる。
【0004】
図22は、従来の有機EL表示素子の部分断面図である。この有機EL表示素子は、同図に示すように透明基板101、陽極120a、補助配線130、開口絶縁膜140、有機EL層160、対向基板180などを備えている。ガラスなどの透明基板101上には、陽極120aが設けられている。補助配線130は、接続端子側パターン部130b及び内側パターン部130aとから構成されている。陰極170は、前記補助配線130を介して外部の接続配線193と電気的に接続されている。このように、有機EL表示素子は、一般的に、陰極と接続端子との間に補助配線130が設けられ、電流が補助配線130を介して接続端子に流れるような構造を採用している。有機EL層160の発光は、陽極120aと陰極170との間に電流を流すことによって行われる。
【0005】
開口絶縁膜140は、有機EL層160と陽極120aとが接触する画素開口部140aを画定する役割を有している。通常、陽極120aにはITO(酸化インジウム一酸化スズ)が、陰極にはAl、Mg、Ag等の酸化されやすい金属が使用される。補助配線130については、Cr等の金属が用いられる。補助配線130として、例えば膜厚300nm、幅150μm、長さ4mm、比抵抗20μΩcmのCrパターンを用いると、その抵抗値は17.7Ωとなる。そして、上述のような電流を流した場合には、3.1V程度の電圧降下が配線抵抗に応じて生じ、所望の電位より上昇することになる。
【0006】
上記図22に示した従来例においては、陰極170と補助配線130とのコンタクト抵抗が上昇してしまうという別の問題がある。その原因は、製造工程を経るに従って、補助配線130の表面に酸化層が形成されてしまうことによるものと考えている。このため、有機EL表示素子においては、陰極と補助配線とのコンタクト部における抵抗の上昇を抑制するという課題が、上述した電極や配線の低抵抗化の課題の他に生じ得る。
【0007】
一般的に、FPDの低抵抗配線材料として、Al又はAl合金がよく用いられる。しかし、Al又はAl合金は、ヒロックが生じやすく、表面にAl酸化物が形成されやすい。また、他の金属と電気的コンタクトを取ろうとしても、接触抵抗が高く、そのままでは使用することが難しい。そのため、多くの場合、Mo又はMo合金(Cr、Ti、Ta、Zr、Hf又はVとMoとの合金)で、Al又はAl合金をキャップする手法が採用されている(例えば、特許文献1)。MoはAlと同じエッチング液でエッチングが可能で、AlとMoとを一括してパターニング形成することができるからである。しかしながら、一般的に、Moの耐湿性は低く、空気中の水分で腐食しやすいので、MoをFPDの配線材料に用いると配線が劣化しやすいという問題があった。
【0008】
一方、キャップ材料として耐湿性の高いCrを用いてAlをキャップすると、Alと同じエッチング液でエッチングすることができない。従って、製造工程で一括パターニングを行うことが困難であった。また、キャップ材料として、耐湿性の高いNiを用いてAlをキャップすると、高湿条件で放置しても、抵抗値がほとんど変化しないという優れた点があるものの、例えば、リン酸:硝酸:酢酸:水=16:1:2:1(体積比)などのエッチング液では、事実上Niをエッチングすることができないという問題があった(非特許文献2参照)。また、Niは強磁性体であるため、一般的な薄膜形成法であるマグネトロンスパッタ法を用いることが難しい。よって、Ni薄膜をFPDの配線材料として用いることは困難である。
【0009】
従来技術として、駆動回路との接続端子に透明電極材料を用い、かつ、陰極材料と補助配線材料とを同一にする技術が提案されている(特許文献2)。この場合、陰極材料と補助配線材料との接続前に陰極表面や補助配線表面が酸化されなければ、陰極と補助配線とのコンタクト抵抗の問題は生じないと考えられる。
【0010】
しかしながら、有機EL表示素子の陰極には、一般的に、酸化しやすい材料が用いられる。このため、補助配線を陰極と同一材料とすると、有機EL表示素子の製造工程で補助配線表面が酸化されてしまい、陰極とのコンタクト抵抗が高くなるという問題が生じる。特に、高温で保持した場合にコンタクト抵抗の上昇は顕著である。例えば、陰極及び補助配線にAlあるいはAl合金を適用した場合には、100℃程度の保持で、コンタクト抵抗が著しく上昇してしまう。
【0011】
別の従来技術として、陰極と補助配線とのコンタクト抵抗を低減するための技術が提案されている(特許文献3)。この特許文献3によれば、補助配線を下地パターンと電極パターンとの2つに分けて形成し、下地パターンにTiNあるいはCrを適用し、電極パターンにAlを適用して、陰極とコンタクトさせることで、低抵抗なコンタクト特性が得られるとしている。
しかしながら、特許文献3においては、補助配線の形成に2回のフォトリソグラフィ工程が必要となる。しかも、配線材料としてTiNを用いるので、パターニングに際してドライエッチングを適用する必要があり、生産性に問題が生ずる。また、下地パターンにCrを用いた場合には、初期コンタクト特性が良好な場合であっても、100℃程度の高温に放置した場合には、コンタクト抵抗が著しく高くなることがある。
【0012】
有機EL表示素子においては、上述した陰極と補助配線とのコンタクト部における抵抗の上昇を抑制するという課題に加えて、接続端子と補助配線とのコンタクト部における抵抗の上昇を抑制することも重要な課題である。さらに、陰極と補助配線とのコンタクト部においては、流れる電流により発生するジュール熱に対しても安定であることが必要となる。すなわち、ジュール熱によりコンタクト抵抗が上昇しにくいことが必要となる。なお、ジュール熱によってコンタクト抵抗が上昇するのは、補助配線等に使用されている金属の酸化によるものと考えられている。さらに、接続端子部は、密封された素子内部ではなく、使用環境下に暴露されるので、耐環境性、特に耐湿性に優れていることが望ましい。耐湿性を兼ね備えていないと、有機EL表示パネルのシール外部において湿分による腐食などが進行するからである。
【0013】
そこで、本出願人は先に、低抵抗であって、パターニング性能に優れ、かつ耐湿性が高い配線付き基体を実現できる積層体を備える有機EL表示装置を提案した(特許文献4)。
【0014】
なお、近年のFPDにおけるフルカラー化や高精細表示化の要求に伴って、透明電極のさらなる低抵抗化も望まれている。LCD等に従来から用いられているITO層の低抵抗化は限界が近づいているため、TFT−LCD等で広く用いられている低抵抗金属をITOと併用する低抵抗配線技術が導入されている。
【非特許文献1】Appl.Phys.Lett.,51,913(1987)
【非特許文献2】楢岡持威、外1名、「フォトエッチングと微細加工」 総合電子出版社 1977年5月10日 82〜83貢
【特許文献1】特開平13−311954号公報
【特許文献2】特開平11−317292号公報
【特許文献3】特開平11−329750号公報
【特許文献4】国際公開第04/040946号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
近年、表示パネルの大型化、高精細化、高輝度化の要求はますます高まっている。これらの特性の向上を達成するためには、さらなる低抵抗化が可能な積層体の開発が望まれるところである。また、特許文献4が備える基本的性能と同等かそれ以上の性能を満足しながら、特許文献4よりも製造プロセスを複雑化せず、高コスト化しないで、製造プロセスにおける歩留まりの向上を図りつつより低抵抗化が可能な積層体の開発が望まれるところである。
【0016】
なお、上記課題は、有機EL表示装置においてのみ生じ得るものではなく、低抵抗化が要求される積層体、及びこの積層体を備えるものにおいても同様の課題が生じ得るものである。
【0017】
本発明は、上記背景に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、以下のような積層体、有機EL表示素子及びその製造方法を提供することである。すなわち、優れた低抵抗性、耐湿性、パターニング性を有し、製造プロセスにおける歩留まりを向上することができる積層体等を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意検討を重ねた。その結果、以下に示す態様において、本件発明の目的を達成し得ることを見出し、本件発明を完成するに至った。
【0019】
本発明の第1の態様は、基体の上に対向する第1の電極層と第2の電極層とが備えられ、
前記第1の電極層と前記第2の電極層との間に有機EL層が配置された有機EL表示素子の製造方法であって、前記第1の電極層に導電接続される積層体を形成するステップを備え、
前記積層体を形成するステップは、Ag又はAg合金を主成分とする導体層を形成するステップと、前記導体層上にNi−Mo合金を主成分とするキャップ層を形成するステップとを有する有機EL表示素子の製造方法である。
【0020】
本発明の第1の態様によれば、導体層としてAg又はAg合金を主成分とすることにより、簡易な工程で低抵抗な積層体を有する有機EL表示素子の製造方法を提供することができる。また、キャップ層としてNi−Mo合金、導体層としてAg,又はAg合金を主成分としているので精細なパターニングが可能である。また、パターニングをする際に同じエッチング液によりほぼ同じ速度でエッチングを行うことができるので、キャップ層と導体層とを一括してパターニングすることができる。さらに、キャップ層としてNi−Mo合金を主成分としているので、耐湿性に優れ、キャップ層の低抵抗を維持することができる。また、キャップ層としてNi−Mo合金を主成分としているので、Ag又はAg合金の表面にAg酸化物層が発生するのを抑え、接触抵抗の増加を防止することができる。
【0021】
本発明の第2の態様は、前記積層体を形成するステップの後、感光性膜を塗布する感光性膜塗布ステップと、前記感光性膜にフォトマスクを介して露光する露光ステップと、前記露光ステップ後に前記感光性膜を現像する現像ステップとを備え、前記現像ステップは、pH10以上、あるいはpH4以下の薬液で処理されるされる有機EL表示素子の製造方法である。
【0022】
本発明者らが鋭意検討を重ねたところ、特許文献4に適用した導体層(Al又はAl合金部(以下、「Al系金属層」ともいう))においては、微細な細孔が発生していることを突き止めた。その原因をさらに探求したところ、この微細な細孔は、積層体を形成した後の感光性膜の現像工程においてしばしば発生することがわかった。微細孔が発生する理由は、例えば以下の理由によるものと考えている。配線抵抗を低くするために、例えば高温でAl系金属層を成膜するとAl系金属層の粒成長によりAl系金属層の平坦性が失われてしまう場合が生じ得る。かかる場合、Al系金属層をキャップ層により完全に覆うことができなくなってしまう恐れがある。キャップ層により覆われていないAl系金属層の部位において、Al系金属層が感光性膜の現像工程で用いられる薬液に溶け出し、微細な細孔が発生したためと考えている。
【0023】
本発明の第2の態様によれば、導体層としてAg又はAg合金を用いているので、上記微細な細孔の発生を防止することができる。これは、Ag又はAg合金が現像液に対して不溶なためである。このため、導体層がキャップ層により被覆されていない条件下においても上記細孔が発生しない。また、導体層としてAg又はAg合金を用いることにより配線の平滑性を上げることができる。これらの結果、特許文献4に比して、より低抵抗な積層体を有する有機EL表示素子の製造方法を提供することができる。また、微細な細孔の発生を防止できるので、特許文献4に比して製造プロセスにおける不留まりを向上させることができる。
【0024】
本発明の第3の態様は、前記積層体を形成するステップの後、感光性膜を塗布する感光性膜塗布ステップと、前記感光性膜にフォトマスクを介して露光する露光ステップと、前記露光ステップ後に前記感光性膜を現像する現像ステップと、前記現像ステップにより前記感光性膜が現像されて露出された被感光性膜をエッチングするエッチングステップと、残存している前記感光性膜を剥離する剥離ステップとを備え、前記剥離ステップは、pH10以上、あるいはpH4以下の薬液で処理されるされる有機EL表示素子の製造方法である。
【0025】
上記微細な細孔は、上述した現像工程の場合のほか、感光性膜の剥離工程において発生する場合があることも突き止めた。その理由は、上述した理由と同様である。本発明の第3の態様によれば、導体層としてAg又はAg合金を用いているので、上記微細な細孔の発生を防止することができる。これは、Ag又はAg合金が剥離工程に用いられる薬液に対して不溶なためである。このため、導体層がキャップ層により被覆されていない条件下においても上記細孔が発生しない。また、導体層としてAg又はAg合金を用いることにより配線の平滑性を上げることができる。その結果、特許文献4に比して、より低抵抗な積層体を有する有機EL表示素子の製造方法を提供することができる。また、微細な細孔の発生を防止できるので、特許文献4に比して製造プロセスにおける不留まりを向上させることができる。
【0026】
本発明の第4の態様は、前記現像ステップ、又は前記レジスト剥離ステップにNaOH水溶液、又は、KOH水溶液を用いる有機EL表示素子の製造方法である。汎用的な薬液を用いることができるのでコストダウンを実現することができる。
【0027】
本発明の第5の態様は、前記積層体を駆動回路と接続するための接続端子から前記第1の電極層に至る配線の少なくとも一部に用いるよう、前記積層体をパターニングする有機EL表示素子の製造方法である。
【0028】
本発明の第6の態様は、上記有機EL表示素子の製造方法によって製造された有機EL表示素子である。本発明の第6の態様によれば、簡易な工程で低抵抗な積層体を有する有機EL表示素子を提供することができる。
【0029】
本発明の第7の態様は、基体の上に対向する第1の電極層と第2の電極層とが備えられ、
前記第1の電極層と前記第2の電極層との間に有機EL層が配置された有機EL表示素子であって、前記第1の電極層に導電接続される積層体を備え、前記積層体はAg又はAg合金を主成分とする導体層と、前記導体層上にNi−Mo合金を主成分とするキャップ層とを有する有機EL表示素子である。
【0030】
本発明の第7の態様によれば、導体層としてAg又はAg合金を主成分とすることにより、簡易な工程で低抵抗な積層体を有する有機EL表示素子の製造方法を提供することができる。また、キャップ層としてNi−Mo合金、導体層としてAg,又はAg合金を主成分としているので、精細なパターニングが可能である。また、パターニングをする際に同じエッチング液によりほぼ同じ速度でエッチングを行うことができるので、キャップ層と導体層とを一括してパターニングすることができる。さらに、キャップ層としてNi−Mo合金を主成分としているので、耐湿性に優れ、キャップ層の低抵抗を維持することができる。また、キャップ層としてNi−Mo合金を主成分としているので、Ag又はAg合金の表面にAg酸化物層が発生するのを抑え、接触抵抗の増加を防止することができる。
【0031】
本発明の第8の態様は、前記導体層と前記キャップ層との間にNi拡散防止層を備える有機EL表示素子である。Ni拡散防止層を備えることにより、キャップ層からNiが導体層に拡散し、導体層の抵抗が増大するのを防止することができる。
【0032】
本発明の第9の態様は、前記Ni拡散防止層の主成分として、Mo又はMo合金が用いられる有機EL表示素子である。Ni拡散防止層をMo又はMoの合金とすることにより、キャップ層と導体層とを一括してエッチングを行うことができる。Ni拡散防止層は、MoNb、MoTa、MoV又はMoWのいずれかであることがより好ましい。このように構成することにより、耐湿性の向上を図ることができるためである。
【0033】
本発明の第10の態様は、前記第1の電極層は透明導電層であり、透明導電層と前記導体層との間に下地層を備える有機EL表示素子である。下地層を設けることにより透明電極として利用可能な透明導体層と、積層体を構成する導体層とを直接接触させる場合に比して、接触抵抗を小さくすることができる。透明導電層としては、ITO層が好適に用いられる。導体層としてAg又はAg合金を用いているので、上記微細な細孔の発生を防止できる。従って、透明導電層としてITO層を用いた場合に、ITO層の上に積層される積層体等のパターニングの際の現像工程、エッチング工程、又は剥離工程で用いられる薬液によってITO層が還元され、表面が荒れることを防止することができる。その結果、短絡を防止することができる。また、ITO層上に積層される有機EL層のホール注入性が悪化するのを防止することができる。
【0034】
本発明の第11の態様は、前記第1の電極層と駆動回路とを接続するための補助配線の少なくとも一部が前記積層体により構成されている有機EL表示素子である。
【0035】
本発明の第12の態様は、配線付き基体の形成用の積層体であって、前記基体上に、Ag又はAg合金を主成分とする導体層と、前記導体層の上にNi−Mo合金を主成分とするキャップ層とが備えられた積層体である。
【0036】
本発明の第12の態様によれば、導体層としてAg又はAg合金を主成分とすることにより、上記微細な細孔の発生を防止することができる。その結果、特許文献4に比して、より積層体の低抵抗化を実現することができる。また、微細な細孔の発生を防止できるので、特許文献4に比して製造プロセスにおける歩留まりを向上させることができる。また、キャップ層としてNi−Mo合金、導体層としてAg,又はAg合金を主成分としているので、精細なパターニングが可能であり、パターニングをする際に同じエッチング液でほぼ同じ速度でエッチングすることができる。さらに、キャップ層としてNi−Mo合金を主成分としているので、耐湿性が優れ、キャップ層の低抵抗を維持するとともに、Ag又はAg合金の表面にAg酸化物層が発生するのを抑え、接触抵抗の増加を防止する機能を有する。
【0037】
本発明の第13の態様は、前記導体層と前記基体との間に、基体側から透明導電層と下地層とをこの順に備える積層体である。下地層を設けることにより透明電極として利用可能な透明導体層と、積層体を構成する導体層とを直接接触させる場合に比して、接触抵抗を小さくすることができる。
【0038】
本発明の第14の態様は、前記導体層と前記キャップ層との間にNi拡散防止層を備える積層体である。Ni拡散防止層を備えることにより、キャップ層からNiが導体層に拡散し、導体層の抵抗が増大するのを防止することができる。なお、このNi拡散防止層は、Moを主成分とすることがより好ましい。キャップ層と第1の導体層とを一括してエッチングを行うことができるからである。また、Ni拡散防止層は、MoNb、MoTa、MoV又はMoWのいずれかであることがさらに好ましい。このように構成することにより、耐湿性の向上を図ることができるためである。
【発明の効果】
【0039】
本発明においては、以下のような積層体、有機EL表示素子、有機EL表示素子の製造方法を提供することができるという優れた効果がある。すなわち、優れた低抵抗性、耐湿性、パターニング性を有し、製造プロセスにおける歩留まりの高い積層体等を提供することができるという優れた効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0040】
以下に、本発明を適用可能な実施の形態が説明される。以下の説明は、本発明の実施形態を説明するものであり、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0041】
本実施形態に使用される基体としては、透明又は不透明のガラス基板、セラミック基板、プラスチック基板、金属基板などが挙げられる。基体は、必ずしも平面で板状である必要はなく曲面でも異型状でもよい。
基体側から発光させる構造の有機EL素子に用いる場合には、基体は透明であることが好ましく、特にガラス基板が強度及び耐熱性の点から好ましい。ガラス基板としては、例えば、無色透明なソーダライムガラス基板、石英ガラス基板、ホウケイ酸ガラス基板、無アルカリガラス基板を挙げることができる。有機EL素子に用いる場合のガラス基板の厚さは、強度及び透過率の点から0.2〜1.5mmとするのが好ましい。
【0042】
本実施形態の配線付き基体形成用の積層体は、図1に示すように基体たる透明基板1上にAg又はAg合金(以下、Ag系金属ともいう。)を主成分とする導体層11と、この導体層11の上に形成されるNi−Moを主成分とするキャップ層12との2層を必ず含む2層以上の積層体35である。
【0043】
導体層11に採用するAg合金とは、AgとPd、Au、Bi、Cu等の金属との合金であり、配線の抵抗値を上げる等の問題が少ない金属であることが好ましい。配線の抵抗を低くする点から、Ag−Pdの場合におけるPdの含有率は1〜5元素%とすることが好ましい。Ag−Biの場合におけるBiの含有率は、1〜2元素%程度、Ag−Cuの場合におけるCuの含有率は、0.5元素%とすることが好ましい。また、Ag−Pd−Cuの場合には、Pdの含有率は1〜2元素%、Cuの含有率は0.5元素%とすることが好ましい。導体層11の膜厚は、充分な導電性や良好なパターニング性が得られるように100〜500nmとすることが好ましく、200〜400nmとすることがより好ましい。
【0044】
キャップ層12の主成分たるNi−Mo合金層は、フォトリソグラフィ工程によりパターニングをする際に、導体層11と同じエッチング液(酸性水溶液)でほぼ同じ速度でエッチングすることができる。すなわち、導体層11とキャップ層12とを一括してバターニングすることができる。なお、導体層11とキャップ層12とのエッチング速度が大きく異なると、配線を形成する際にオーバーエッチングや残渣の原因となるので好ましくないので、エッチング液の種類に応じてNiとMoの組成比を変えて調整する。一般に、Niに対するMoの比率が大きい方が、エッチング速度が速くなる。前記キャップ層12の膜厚は、耐湿性及びパターニング性の観点から10〜200nmとすることが好ましく、15〜50nmとすることがより好ましい。
【0045】
キャップ層12に用いられるNi−Mo合金層のNiの含有率は、20〜90質量%とすることが好ましく、55〜75質量%とすることがより好ましい。Niの含有率が20質量%未満であるとNi−Mo合金層の耐湿性が充分とはいえず、90質量%を超えるとエッチング液によるエッチング速度が遅くなるので、導体層11のエッチング速度と同程度に調整することが困難になるためである。また、Ni−Mo合金層のMoの含有率は、10〜80質量%とすることが好ましく、20〜40質量%とすることがより好ましい。Moの含有率が10質量%未満であるとエッチング液によるエッチング速度が遅く、導体層11のエッチング速度と同程度に調整することが困難になり、80質量%を超えるとNi−Mo合金層の耐湿性が充分とはいえなくなるためである。Ni−Mo合金層のNi及びMoの含有率の合計は、90〜100質量%とすることが好ましい。Ni−Mo合金層は、Ti、V、Cr、Fe、Co、Zr、Nb、Ta、Wなどの金属を1種又は2種以上、耐湿性、エッチング性などを劣化させない範囲において、例えば、10質量%以下の範囲で含有していてもよい。
【0046】
本実施形態においては、キャップ層12としてNi−Mo合金、導体層11としてAg,又はAg合金を主成分としているので、精細なパターニングが可能であり、パターニングをする際に同じエッチング液でほぼ同じ速度でエッチングすることができる。すなわち、キャップ層12と導体層11とを一括してパターニングすることができる。また、キャップ層12としてNi−Mo合金を主成分としているので、耐湿性に優れ、キャップ層12の低抵抗を維持することができる。また、Ag又はAg合金の表面にAg酸化物層が発生するのを抑え、接触抵抗の増加を防止することができる。
【0047】
本発明者らが鋭意検討を重ねたところ、特許文献4に適用した積層体の構成層の一つである導体層(Al又はAl合金部)において、微細な細孔が発生していることを突き止めた。その原因をさらに探求したところ、パターニング形成時である感光性膜の現像時あるいは感光性膜の剥離時に微細な細孔が発生することが判明した。
一方、本実施形態によれば、上記微細な細孔の発生を防止することができることがわかった。これは、現像工程及び剥離工程で用いられる薬液に対して、導体層として用いられているAg又はAg合金が不溶なためである。その結果、導体層11は、優れた低抵抗特性を示す。また、導体層としてAg又はAg合金を用いることにより配線の平滑性を上げることができる。さらに、微細な細孔の発生を防止できるので、特許文献4に比して製造プロセスにおける不留まりを向上させることができる。なお、導体層がキャップ層により被覆されていない条件下においても上記細孔が発生しないことを確認した。
【0048】
次に、積層体35の製造方法について説明する。本実施形態の配線付き基体形成用の積層体35は、スパッタ法を用いて形成される。例えば、透明基板1としてガラス基板の一方の表面上に、Ag系ターゲットを用い、不活性ガス雰囲気でスパッタリングすることにより導体層11を形成する工程と、導体層11の上にNi−Mo合金系ターゲットを用いスパッタリングすることによりキャップ層12を形成する工程とにより形成することができる。
【0049】
Ag系ターゲットは、例えば、Ag金属ターゲット、Cu、Bi,Pdを含有するAg合金ターゲット、Cu、Au,Bi,Pdを含有するAg非合金ターゲットなどである。また、Ni−Mo合金用のターゲットは、例えば、Ni−Mo合金ターゲット、Feを含有するNi−Mo合金ターゲット、Feを含有するNi−Mo非合金ターゲットなどである。Feを含有するNi−Mo非合金ターゲットとしては、例えば、ターゲット面積よりも小さいNi板、Mo板、Fe板をモザイク状に組合わせたものや、Ni−Mo合金ターゲット板とFe板を組合わせたものも含む。スパッタ法により、大面積にわたり、膜厚が均一な配線付き基体形成用の積層体35が形成できる。
【0050】
本実施形態の配線付き基体形成用の積層体35は、例えば次のような方法により形成される。
Ag系ターゲット及びNi−Mo合金ターゲットを直流マグネトロンスパッタ装置のカソードに別々に取付ける。さらに、透明基板1を基板ホルダーに取付ける。次いで、成膜室内を真空に排気後、スパッタガスとしてArガスを導入する。Arガスに代えて、He、Ne、Krガスなどを用いることもできるが、Arガスを用いることがより好ましい。放電が安定で、安価なためである。スパッタ圧力は、0.1〜2Paが適当である。又背圧は、1×10−6〜1×10−2Paに設定するのが好ましい。基体温度は、室温〜400℃とするのが好ましい。成膜温度を高く設定すると、概して抵抗値が低くなるのでより好ましい。しかし、積層体の表面粗さが大きくなるため、積層体の表面粗さを小さくすることが必要なときは、基板温度を低くすることが好ましい。なお、積層体の表面粗さを低くするとAg層の上部に形成するNi−Mo層のカバレッジが良好となるという利点がある。
【0051】
Ag合金層を形成するときは、Agと合金を形成する他の金属とをそれぞれ別々のターゲットとして用いて合金層を形成してもよいが、導体層11の組成の制御性及び均一性の向上の観点から、予め所望の組成のAg合金を作製して、これをターゲットとして用いることが好ましい。まず、Ag金属ターゲットを用いてスパッタリングすることにより、透明基板1上に導体層11としてのAg合金層を形成する。次いで、その上にNi−Mo系ターゲットを用いてスパッタリングすることにより、Ni−Mo合金層を形成し、積層体35を形成する。
【0052】
積層体35は、キャップ層12を、酸化、窒化、酸窒化、酸炭化、窒炭化又は酸窒炭化などの処理を行うことが好ましい。このような処理を行うことにより、より効果的に抵抗の増大を防止することができるためである。この処理は、Ni−Mo合金層をスパッタリングにより形成する時に、スパッタガスとして、O、N、CO、COなどの反応性ガスとArガスとの混合ガスを用いる方法により行うことができる。反応性ガスの含有率は、Ni拡散防止効果の観点から5〜50体積%とすることが好ましく、20〜40体積%とすることがより好ましい。
【0053】
積層体35は、上述したように導電体11とキャップ層12との2層を透明基板1上に有するものが基本であるが、これに限定されない。後述するように、他の層を有する3層以上の層を有するものも包含することもできる。当該他の層も、スパッタ法により形成することが好ましい。
【0054】
積層体35は、錫ドープ酸化インジウム層(ITO層)を有していてもよい。その場合、Ag系金属層はITO層との接触抵抗が大きいという不都合があるので、実際には、図2に示すように、前記下地層を介して、「キャップ層12/導体層11/下地層14/ITO層13」の層構成とするのが好ましい。
【0055】
上記ITO層13は、透明電極として用いることができる。従って、基板上にITO層13を形成した後に、下地層14、導体層11及びキャップ層12を形成する際に必要箇所をマスクしておけば、マスクされた箇所は下地層14、導体層11及びキャップ層12がなく、ITO層13のみとなる。これを電極として用い、その上に、不図示の有機質層を形成して有機EL素子とすることができる。一方、マスクをしない箇所は、ITO層13の上に、下地層14、導体層11及びキャップ層12が形成され、電極であるITO層13と配線としての下地層14、導体層11及びキャップ層12を段差なく接続することができる。
【0056】
ITO層13は、透明基板1上にITO層13をエレクトロンビーム法、スパッタ法、イオンプレーティング法などを用いて成膜し形成する。ITO層13は、例えばInとSnOとの総量に対して、SnOを3〜15質量%含有するITOターゲットを用いて、スパッタリングにより成膜するのが好ましい。スパッタリングガスはOとArの混合ガスであることが好ましく、Oガス濃度は0.2〜2体積%とするのが好ましい。ITO層13の膜厚は50〜300nmとすることが好ましく、100〜200nmとすることがより好ましい。
【0057】
本実施形態によれば、ITO層13の上に積層される導体層11等のパターニングの際の現像工程、エッチング工程、又は剥離工程で用いられる薬液によってITO層が還元され、表面が荒れることを防止することができる。導体層としてAg又はAg合金を用いることにより、現像工程及び剥離工程で上述した微細な細孔が発生しないため、微細な細孔を介してITO層表面に現像工程、エッチング工程、又は剥離工程で用いられる薬液がITO層にまで及ぶことがないためである。その結果、短絡を防止することができる。また、ITO層13の表面荒れがないので、ITO層13上に積層される有機EL層のホール注入性が悪化するのを防止することができる。
【0058】
下地層14は、Mo又はMo合金を主成分とする層により構成することが好ましい。この場合、Ni−Mo合金層がさらに好ましく、Ni−Mo合金層を下地層14とする場合は、当該合金層のNi含有率は全成分に対して20〜90質量%とすることが好ましく、55〜75質量%とすることがより好ましい。Mo含有率は全成分に対して10〜80質量%とすることが好ましく、20〜40質量%とすることがより好ましい。また、下地層14を形成する場合も、Ag層と同様の条件(スパッタ圧等)で形成することが好ましい。下地層14の膜厚は、バリア性及びパターニング性の観点から10〜200nmに設定することが好ましく、15〜50nmに設定することがより好ましい。
【0059】
下地層14は、酸化、窒化、酸窒化、酸炭化、窒炭化又は酸窒炭化などの処理を行うことが好ましい。かかる処理により、より効果的に抵抗増大を防止することができるためである。さらに、上記下地層14は、Ti、V、Cr、Fe、Co、Zr、Nb、Ta、Wなどの金属が1種又は2種以上、耐湿性、エッチング性などを劣化させない範囲、例えば10質量%以下で含有されていてもよい。
【0060】
下地層14のNi−Mo合金層の組成は、キャップ層12のNi−Mo合金層の組成と同じであっても、異なっていてもよい。同じ組成であれば、同じ材質のターゲットを用いることができ、経済性に優れる。また、上記Ni−Mo合金層の組成を調整して、エッチング速度がNi−Mo合金層(キャップ層12)、Ag系金属層(導体層11)、Ni−Mo合金層(下地層14)の順に速くなるようにすれば、パターニングの時にパターン断面形状をテーパ状に形成することができる。よって、耐磨耗性、密着性が向上する点で好ましい。
【0061】
本実施形態によれば、下地層14を設けることによりITO層13と積層体35とを直接接触させる場合に比して、接触抵抗を小さくすることができる。なお、下地層14として、Mo又はMo合金を主成分とする層を導体層11の下に形成すると、パターニング後のパターン断面部では、Moが露出するが、Mo又はMo合金を主成分とする層の大部分が透明基板1又はITO層13と、導体層11とに覆われているので耐湿性の低下を防止できる。
【0062】
本実施形態においては、図3に示すように上記導体層11と上記キャップ層12との間にNi拡散防止層15を備えることができる。このように構成することにより、キャップ層12からNiが導体層11に拡散し、導体層11の抵抗が増大するのをより効果的に防止することができる。なお、このNi拡散防止層15は、Mo又はMo合金を主成分とすることがより好ましい。キャップ層12と第1の導体層11とを一括してエッチングを行うことができるからである。また、Ni拡散防止層15は、MoNb、MoTa、MoV又はMoWのいずれかであることがさらに好ましい。このように構成することにより、耐湿性の向上を図ることができるためである。
【0063】
また、本実施形態の積層体35は、導体層11と透明基板1との間に、シリカ層を有していてもよい。このシリカ層は、透明基板1と接していても、接していなくてもよい。シリカ層は、通常シリカターゲットを用いて、スパッタリングにより形成される。
【0064】
次に、積層体35のパターン形成方法について説明する。まず、積層体35として、例えば、(1)キャップ層/導体層、(2)キャップ層/Ni拡散防止層/導体層、(3)キャップ層/導体層/下地層/ITO層、などを上述の条件により積層する。続いて、積層体35の上に感光性膜を形成する。そして、積層体35の不要部分を除去するためにフォトリソグラフィ工程にてパターニングを行う。すなわち、フォトマスクを介して感光性膜を露光し、感光性膜の現像を行う。そして、感光性膜が現像されて露出された積層体35を一括してエッチングを行う。その後、残存している感光性膜を剥離する。
【0065】
感光性膜の現像工程及び剥離工程に用いられる薬液は、特に限定されないが、一例として、モノエタノールアミン水溶液、KOH水溶液、NaOH水溶液、塩酸等を挙げることができる。好ましくは、pH10以上のアルカリ性水溶液、若しくはpH4以下の酸性水溶液を用いる。
露光工程により感光性膜の未露光部と露光部とで薬液に対する溶解性を著しく異ならしめることができる。このため、感光性膜と、現像液又は剥離液との接触時間をコントロールすることにより、現像工程と剥離工程とを同一の薬液を用いて処理することができる。このようにすることにより、製造工程を簡易化することができる。無論、現像工程で用いられる現像液と、剥離工程で用いられる剥離液とを異なる薬液としてもよい。
【0066】
なお、積層体35が、ITO層13を有する場合には、キャップ層12/導体層11とITO層13を一括してエッチング液により除去してもよいが、キャップ層12及び導体層11を先に除去して、別にITO層13を除去することもできる。また、ITO層13を先にパターニングした後、導体層11及びキャップ層12をスパッタリングし、配線部分以外のキャップ層12及び導体層11を除去することもできる。
【0067】
次に、本実施形態の積層体を用いて、配線付き基体を形成して、有機EL表示素子を作製する好適例を、図4〜6を用いて説明する。図4は、有機EL表示素子の構成を模式的に示す断面図、図5は、A−A’断面図、図6は、B−B’断面図である。
【0068】
まず、透明基板たるガラス基板1A上にITO層13を形成した後に、ITO層13をエッチングしてストライブ状のパターンを形成する。そして、ITO陽極3を形成する(図4参照)。次に、下地層14としてのNi−Mo系金属層(図示せず)、導体層11としてのAg系金属層11A、キャップ層12としてのNi−Mo層12Aをこの順序でスパッタリングにより形成して、配線付き基体形成用の積層体35を得る。無論、ITO層13は、ガラス基板1Aの全面に形成しても、一部に形成してもよい。
【0069】
続いて、上述したように積層体35の上にレジストを塗布し、レジストのパターンに従って、積層体35の不要部分をエッチングし、レジストを剥離して、下地層14たるNi−Mo合金層(不図示)、Ag系金属層11A、及びNi−Mo合金層12Aからなる配線2が形成される。その後、紫外線照射洗浄を行い、積層体全体を、紫外線−オゾン処理又は酸素プラズマ処理する。紫外線照射洗浄は、通常、紫外線ランプにより紫外線を照射し、有機物を除去することにより行われる。
【0070】
次に正孔輸送層、発光層、電子輸送層を有する有機EL層4を、ITO陽極3の上に形成する。陰極分離パターンを有する場合は、有機EL層4の真空蒸着を行う前に、陰極分離パターンをフォトリソグラフィ工程により形成する。Al陰極5は、配線2、ITO陽極3、有機EL層4が形成された後、ITO陽極3と直交するように、スパッタリングにより形成する。次に、図4の破線で囲まれた部分を樹脂封止して封止缶6とする(図5及び図6参照)。なお、有機EL表示素子に用いられる配線付き基体は、有機EL表示素子の製造における特有の処理である紫外線−オゾン処理を施す必要がある。本実施形態の配線付き基体によれば、この処理に対しても耐性を有するという利点がある。
【0071】
次に、本実施形態の有機EL表示素子について詳述する。図7は本実施形態に係る有機EL表示素子の平面図、図8は図7中のC−C’断面である。また、有機EL表示素子の部分的断面図を図12〜図16に、その平面図を図17〜図21に示す。
【0072】
まず、透明基板1上に透明導電膜(ITO層)を成膜し、パターニングして陽極20aとなる電極層を形成する。この陽極20aは、上述のITO陽極3に相当する。これにより、図12に示す構成となる。次いで、透明基板1面のほぼ全体に金属の積層体35を形成する(図17)。積層体35は、Agにより構成される導体層11及びNi−Moの積層体より構成されるキャップ層12を備えている。その後、積層体35をパターニングして補助配線30を形成する(図18)。これにより図13に示す構成となる。陽極配線端部20bでは、ITO層の上に積層体35が形成されて、この積層体35が端子となる。
【0073】
そして、補助配線30及び陽極20aを含め、透明基板1面全体を覆うように開口開口絶縁膜40を成膜する(図19)。そして、画素開口部40aと絶縁膜開口部40bとを形成する(図20)。これにより、開口開口絶縁膜40は、図14に示す構成となる。陰極分離パターン(図示せず)を形成後、図15に示すよう有機EL層60を形成する。この有機EL層60は、上述した有機EL層4に相当するものである。その後、陰極材料を成膜して図16に示すように陰極70を形成し補助配線と接続する(図21)。この陰極70は、上述のAl陰極5に相当するものである。補助配線の端部は接続端子側パターンとなり、外部の駆動回路と接続される。なお、図21においては有機EL層60は省略してある。
【0074】
積層体35は、陽極20aのパターニングを行い、その後に金属の積層体35を透明基板1面上に成膜しているが、逆にしてもよい。すなわち、金属の積層体35を透明基板1面に成膜してパターニングした後に陽極20aの成膜、パターニングを行ってもよい。あるいは、透明基板1面の領域に応じて、所望の膜を適宜形成することもできる。また、陽極20a、積層体35を連続して成膜し、順番にパターニングしてもよい。
【0075】
以下、図11のフローチャートに従って有機EL表示素子の製造方法について説明する。まず、ステップSlに従って、シリカコート層を有する透明基板1のシリカコート層上に導電性層たるITO膜を成膜する。この導電性層は上記における陽極20aに該当する。透明基板としては、例えばソーダライムガラスを使用することができる。シリカコート層の厚さは通常5〜30nmであり、例えばスパッタリング法によって成膜することができる。
【0076】
なお、導電性層としては上記ITO膜に限定されず、本発明の趣旨に反しない限り公知の導電性膜を用いることができる。ただし、この導電性層は透光性を有するものが好ましい。表示素子としての機能を充分に発揮できるためである。透光性を有するとは、いわゆる透明導電性層の場合のように光の透過率が90〜100%と高い場合以外に、ある程度の透明性を有する場合も含むことを意味する。
【0077】
導電性層の厚さは通常50〜300nmとするのが好ましい。より好ましくは100〜200nmである。典型的には、DCスパッタ法により作製したITO層である。導電性層は、一般的には、このほか、真空蒸着法、イオンプレーティング法等の物理的気相成長法(PVD)で作製することができる。
【0078】
ついで、ステップS2に従って、フォトリソグラフィ工程でレジストをパターニングし、その後ステップS3に従って、ITO層をエッチングし、ついでステップS4に従ってレジストを剥離し、陽極20a及び陽極配線接続端部20bを得る。レジストとしては、本発明の趣旨に反しない限り、公知のどのようなものを使用してもよい。
【0079】
その後、ステップS5に従って、例えばDCスパッタ法により、Ag又はAg合金の低抵抗層及びNi合金で形成されたキャップ層を含む積層体35を成膜する。その後、ステップS6に従って、フォトリソグラフィ工程でレジストのバターニングを行い、ついで、ステップS7に従って、積層体35をエッチングを行う。エッチング後、ステップS8に従ってレジストを剥離する。このレジストも、本発明の趣旨に反しない限り、公知のものを使用することができる。レジストの現像工程に用いる現像液は、本発明の趣旨に反しない限り、公知のどのような現像液を使用してもよい。例えば、モノエタノールアミン水溶液、KOH水溶液、NaOH水溶液、塩酸などを用いることができる。エッチングに用いるエッチング液は、本発明の趣旨に反しない限り、公知のものを使用することができる。より好ましくは、酸性水溶液とすることが好ましい。例えば、硝酸を用いることができる。レジストの剥離についても、本発明の趣旨に反しない限り、公知のどのような剥離液を使用してもよい。例えば、モノエタノールアミン水溶液、KOH水溶液、NaOH水溶液、塩酸などを使用することができる。
【0080】
なお、上記のITO層のパターニング工程(ステップS2〜S4)と積層体35のパターニング工程(ステップS6〜S8)の代わりに、ITO層と積層体35とをスパッタ法で順に成膜し、その後積層体35とITO層とをこの順番でパターニングすることもできる。しかし、補助配線30のパターニング後に、ITO層のエッチングを行う場合、ITO層のエッチング液が強酸なので、仮にレジストにピンホールがあった場合、補助配線30のパターンの一部が消失してしまう可能性があるため、ITO層のパターニングを先行する製造方法であることが好ましい。
【0081】
その後、ステップS9に従って、開口開口絶縁膜40として、例えば感光性ポリイミド膜をスピンコーティングし、ステップS10に従ってフォトリソグラフィ工程でパターニングを行った後、ステップS11に従って硬化し、図7に示すように、画素部に画素開口部40aを有する開口開口絶縁膜40のパターンを得る。硬化後の開口開口絶縁膜40のパターンの膜厚は、通常1.0μm程度である。画素開口部が300μm×300μm程度の場合、陰極70と補助配線30とのコンタクト形成部を200μm×200μm以下とすると、表示素子全体の大きさに影響を与えないので好ましい。
【0082】
その後、ステップS12に従って、例えば感光性アクリル樹脂をスピンコートし、フォトリソグラフィ工程でパターニングを行った後、硬化し、陰極分離パターン50を形成する(図7参照)。この陰極分離パターン50を形成する際には、逆テーパー構造となるように、ネガタイプの感光性樹脂を用いることが好ましい。ネガタイプの感光性樹脂を用いると、上から光を照射した場合、深い場所ほどキュアが不十分となり、その結果、上から見た場合、硬化部分の断面積が、上の方より下の方が狭い構造となる。かかる構造が逆テーパー構造を有するという意味である。
【0083】
上記逆テーパー構造を設けると、その後の工程において、陰極70のマスク蒸着時に上から見て陰になる部分には蒸着が及ばない。そのため、陰極同士を空間的に分離することができる。本実施形態によれば、上記構成の積層体を用いているので、絶縁膜、又は、陰極分離パターンの現像工程においても現像液によって積層体に細孔が発生する恐れがない。よって、絶縁膜や隔壁の現像工程において、モノエタノールアミン水溶液、NaOH水溶液やKOH水溶液、塩酸を含む任意の現像液を使用することができる。その結果、コストを低減することができる。なお、絶縁膜40として感光性ポリイミド樹脂、陰極分離パターン50として感光性アクリル樹脂を用いる例について説明したが、これに代えて絶縁膜40として感光性アクリル樹脂を用い、陰極分離パターン50として感光性ポリイミド樹脂を用いることもできる。また、本発明の趣旨に反しない限り、エポキシ樹脂、フェノール系樹脂等公知のどのような絶縁膜用樹脂を使用することもできる。
【0084】
その後、ステップS13に従って、例えば、並行平板RFプラズマ(高周波プラズマ)装置を用いて、酸素プラズマ照射を実施して、ITO層の表面改質を行い、ついで、ステップS14に従って、例えば蒸着装置を用い、有機EL層60と陰極70とをマスク蒸着する(図15〜図16参照)。有機EL層60は、界面層、正孔輸送層、発光層、電子注入層等を構成要素とすることが多い。ただし、これとは異なる層構成を適用することもできる。有機EL層60の厚さは、通常100〜300nmである。
【0085】
なお、この絶縁膜パターンの形成により、陽極20aの端部は開口開口絶縁膜40で覆われる。このため、有機EL層60が陽極20aに接する面が平坦化され、電界集中等による有機EL層あるいは陰極の断線の可能性が減少し、陽極と陰極との絶縁耐圧が向上する。陰極にはAlを使用することが多いが、その代わりにLi等のアルカリ金属、Ag、Ca、Mg、Y、Inやそれらを含む合金を用いることもできる。陰極70の厚さは、通常50〜300nmである。これにより、有機EL層よりなる有機ELパターン60及び陰極70が形成される(図7の平面図を参照)。
【0086】
補助配線30及び陰極端子部に本実施形態の積層体を適用することにより、低抵抗であって、かつ、陰極及び駆動回路接続端子に対して低コンタクト抵抗を維持することができる。その結果、信頼性のあるコンタクト特性を有する補助配線を有する有機EL表示素子を得ることができる。
【0087】
その後、ステップS15として、対向基板80と素子基板10とを貼り合わせる。対向基板80には、CaOを樹脂に繰り込んだ捕水材91フイルムを貼り付ける。そのため、対向基板80はガラス基板をサンドブラスト等で部分的に掘り込んだ構造とすることが好ましい。ついで、素子基板の周辺に、紫外線硬化型樹脂を塗布した後、対向基板8と貼り合わせ、紫外線を照射して周辺シール90を形成し対向基板80を固定する。これらの工程は表示パネル中に水分や酸素が入らないように窒素雰囲気下で実施する。その後、基板を切断して、各パネルに分離し、かつ実装端子部を露出させる。
【0088】
ついで、ステップS16として、外部に駆動回路を実装する。具体的には、接続端子となる接続端子側パターン部30bに図8に示すように異方性導電膜92を貼り付け、その後TCPの銅箔配線を端子とTCP側接続配線が重なるよう配置し、その後、熱圧着して貼り付ける。
【0089】
次に有機EL表示素子における捕水材について説明する。有機EL表示素子では、封止する際に水分を除去する為に、捕水材を入れることが好ましい。捕水材としては、酸化バリウム、酸化力ルシウム、ゼオライト等がある。例えば、酸化力ルシウムを樹脂フイルムに含有せしめた捕水材91のフィルムを対向基板80の内面側の凹部に接着する(図8参照)。
【0090】
その後、陽極及び陰極と外部駆動回路とを接続する。高密度の接続に関しては、外部の駆動回路を銅薄配線がパターニングされたポリイミドフイルムの一方に接続し、他方を異方性導電フイルム(ACF)を介して素子端子に接続する(TCP実装)。あるいは、駆動回路ベアチップに金バンプを設け、ACFを介して端子に接続する(COG実装)方法が取られている。
【0091】
TCPとは、駆動IC及び接続用配線をポリイミドのようなフイルム上に設けた形態のものである。TCP実装を施した端子部平面図を図9に、図9のE−E‘切断線における断面を図10に示す。透明基板1に端子30cが形成されており、その上に異方性導電フイルム(ACF)92を貼り、更にその上からTCPのポリイミドフイルム上に形成された接続配線93を端子に対してアライメントして貼りつける。異方性導電フイルムは樹脂の中に導電粒子97が分散しているものである。一般的に、樹脂にはエポキシ樹脂が、導電粒子にプラスチックにNi、AuをコートしたものやNi粒子を適用したものが用いられている。
【0092】
TCPは駆動IC94及び接続配線93をポリイミドテープ95の上に形成したものである。接続配線93には主にCuが用いられている。TCP接続プロセスは、まず端子部にACFを仮圧着する。その際の温度は、50〜150℃程度であり、圧力は1〜2MPaが一般的である。
【0093】
その後、TCPの接続配線93と端子の位置関係を調整してTCPを本圧着する。その際の温度は150〜250℃程度であり、圧力は2〜3MPaが一般的である。本圧着後、接続配線93と端子の間に存在していた導電粒子が潰され電気的な接続が得られる。又実装が完了した後、実装部を樹脂で被覆して腐食を防止する方法も取られている。一般的には、シリコーン系樹脂やUV硬化型エポキシ樹脂などを用いる。このようにして、有機EL表示素子を製造することができる。
【0094】
本実施形態によれば、導体層としてAg又はAg合金を主成分とすることにより、上記微細な細孔の発生を防止することができることがわかった。これは、Ag又はAg合金が現像液に対して不溶なためである。このため、導体層がキャップ層により被覆されていない条件下においても上記細孔が発生しなかった。また、導体層としてAg又はAg合金を用いることにより配線の平滑性を上げることができた。これらの結果、特許文献4に比して、より低抵抗な積層体を有する有機EL表示素子の製造方法を提供することができた。また、微細な細孔の発生を防止できるので、特許文献4に比して製造プロセスにおける不留まりを向上させることができた。
【0095】
また、本実施形態によれば、キャップ層としてNi−Mo合金、導体層としてAg,又はAg合金を主成分としているので、精細なパターニングが可能であり、パターニングをする際に同じエッチング液でほぼ同じ速度でエッチングすることができた。すなわち、キャップ層と導体層とを一括してパターニングすることができた。さらに、キャップ層としてNi−Mo合金を主成分としているので、耐湿性が優れ、キャップ層の低抵抗を維持するとともに、Ag又はAg合金の表面にAg酸化物層が発生するのを抑え、接触抵抗の増加を防止することができる。また、MoNbをキャップ膜に用いた場合よりも、腐食が軽減されていることがわかった。
【0096】
本実施形態に係る積層体を用いることにより、低抵抗であって、パターニング性能、耐湿性に優れ、かつ、製造プロセスにおける歩留まりの向上が可能な配線付き基体を形成することができる。そして、高精彩で信頼性の高いディスプレイを製造できる。特に、素子寿命が長く、発光特性の向上のための配線の低抵抗化が望まれる有機EL表示素子に有効に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0097】
【図1】本実施形態に係る積層体の一例を示す断面図。
【図2】本実施形態に係る積層体の一例を示す断面図。
【図3】本実施形態に係る積層体の一例を示す断面図。
【図4】本実施形態に係る積層体を用いて形成された配線付き基体の一例を示す一部切り欠き正面図。
【図5】図4のA−A’切断線における部分断面図。
【図6】図4のB−B‘切断線における部分断面図。
【図7】本実施形態に係る有機EL表示素子の平面図。
【図8】図7のC−C’切断線における部分断面図。
【図9】本実施形態に係る有機EL表示素子の構成を示す模式的平面図。
【図10】図9のE−E’切断線における部分断面図。
【図11】本実施形態の製造方法の一例を示すフローチャート。
【図12】本実施形態に係る有機EL表示素子の製造工程における構成を示す部分断面図。
【図13】本実施形態に係る有機EL表示素子の製造工程における構成を示す部分断面図。
【図14】本実施形態に係る有機EL表示素子の製造工程における構成を示す部分断面図。
【図15】本実施形態に係る有機EL表示素子の製造工程における構成を示す部分断面図。
【図16】本実施形態に係る有機EL表示素子の製造工程における構成を示す部分断面図。
【図17】本実施形態に係る有機EL表示素子の製造工程の模式的平面図。
【図18】本実施形態に係る有機EL表示素子の製造工程の模式的平面図。
【図19】本実施形態に係る有機EL表示素子の製造工程の模式的平面図。
【図20】本実施形態に係る有機EL表示素子の製造工程の模式的平面図。
【図21】本実施形態に係る有機EL表示素子の製造工程の模式的平面図。
【図22】従来例に係る有機EL表示素子の陰極コンタクト部の断面図。
【符号の説明】
【0098】
1 透明基板
1A ガラス基板
2 配線
2a Ag系金属層
2b Ni−Mo層
3 ITO陽極
4 有機EL層
5 Al陰極
6 封止缶
11 導体層
11A 導体層
12 キャップ層
12A キャップ層
13 ITO層
14 下地層
15 Ni拡散防止層
20a 陽極
20b 陽極配線接続端部
30 補助配線
30a 内部側パターン
30b 接続端子側パターン部
35 積層体
40 絶縁膜
40a 画素開口部
40b 絶縁膜開口部
50 陰極分離パターン
60 有機EL層
70 陰極
80 対向基板
90 周辺シール
91 捕水材
93 接続配線
94 駆動IC
92 異方性導電フイルム
120 陽極
130 補助配線
140 絶縁膜
160 有機EL層
170 陰極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基体の上に対向する第1の電極層と第2の電極層とが備えられ、
前記第1の電極層と前記第2の電極層との間に有機EL層が配置された有機EL表示素子の製造方法であって、
前記第1の電極層に導電接続される積層体を形成するステップを備え、
前記積層体を形成するステップは、Ag又はAg合金を主成分とする導体層を形成するステップと、前記導体層上にNi−Mo合金を主成分とするキャップ層を形成するステップとを有する有機EL表示素子の製造方法。
【請求項2】
前記積層体を形成するステップの後、感光性膜を塗布する感光性膜塗布ステップと、
前記感光性膜にフォトマスクを介して露光する露光ステップと、
前記露光ステップ後に前記感光性膜を現像する現像ステップとを備え、
前記現像ステップは、pH10以上、あるいはpH4以下の薬液で処理される請求項1に記載の有機EL表示素子の製造方法。
【請求項3】
前記積層体を形成するステップの後、感光性膜を塗布する感光性膜塗布ステップと、
前記感光性膜にフォトマスクを介して露光する露光ステップと、
前記露光ステップ後に前記感光性膜を現像する現像ステップと、
前記現像ステップにより前記感光性膜が現像されて露出された被感光性膜をエッチングするエッチングステップと、
残存している前記感光性膜を剥離する剥離ステップとを備え、
前記剥離ステップは、pH10以上、あるいはpH4以下の薬液で処理される請求項1又は2に記載の有機EL表示素子の製造方法。
【請求項4】
前記現像ステップ、又は前記剥離ステップに用いられる前記薬液は、NaOH水溶液、又は、KOH水溶液である請求項2又は3に記載の有機EL表示素子の製造方法。
【請求項5】
前記積層体を駆動回路と接続するための接続端子から前記第1の電極層に至る配線の少なくとも一部に用いるよう、前記積層体をパターニングする請求項1、2、3又は4に記載の有機EL表示素子の製造方法。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の有機EL表示素子の製造方法によって製造された有機EL表示素子。
【請求項7】
基体の上に対向する第1の電極層と第2の電極層とが備えられ、
前記第1の電極層と前記第2の電極層との間に有機EL層が配置された有機EL表示素子であって、
前記第1の電極層に導電接続される積層体を備え、前記積層体はAg又はAg合金を主成分とする導体層と、
前記導体層上にNi−Mo合金を主成分とするキャップ層とを有する有機EL表示素子。
【請求項8】
前記導体層と前記キャップ層との間にNi拡散防止層を備える請求項7に記載の有機EL表示素子。
【請求項9】
請求項8に記載の有機EL表示素子において、
前記Ni拡散防止層の主成分は、Mo又はMo合金である有機EL表示素子。
【請求項10】
請求項7、8、又は9に記載の有機EL表示素子において、
前記第1の電極層は透明導電層であり、前記透明導電層と前記導電層との間に下地層を備える有機EL表示素子。
【請求項11】
請求項7〜10のいずれかに記載の有機EL表示素子において、
前記第1の電極層と駆動回路とを接続するための補助配線の少なくとも一部が前記積層体により構成されている有機EL表示素子。
【請求項12】
配線付き基体の形成用の積層体であって、
前記基体上に、Ag又はAg合金を主成分とする導体層と、
前記導体層上にNi−Mo合金を主成分とするキャップ層とが備えられた積層体。
【請求項13】
前記導体層と前記基体との間に、基体側から透明導電層と下地層とをこの順に備える請求項12に記載の積層体。
【請求項14】
前記導体層と前記キャップ層との間にNi拡散防止層を備える請求項12又13に記載の積層体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【公開番号】特開2006−40589(P2006−40589A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−214889(P2004−214889)
【出願日】平成16年7月22日(2004.7.22)
【出願人】(000000044)旭硝子株式会社 (2,665)
【出願人】(000103747)オプトレックス株式会社 (843)
【Fターム(参考)】