説明

積層体及び積層体を備えた開閉扉

【課題】部品点数が少なく且つ軽量で製造時の組立作業が容易な積層体を提供する。
【解決手段】表皮10bに、表板12、両分割裏板13及び両側板14の表面を貼着しておき、表板12と各側板14との隣接端部、各分割裏板13と各側板14との隣接端部で直角に折り曲げることで芯材11を各板12〜14の裏面に貼着する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、積層体及び積層体を備えた開閉扉に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、例えば、特許文献1に示すように、クローゼットの扉(クローゼットドア)等のように、扉を構成する複数の板状扉構成部材を蝶番で連結して折り畳み可能に形成された折り畳み式の開閉扉が知られている。
【0003】
また、一般に開閉扉として、耐久性や省コストの観点から、断面略矩形長尺状の木製の中実基材の表面にシート状で可撓性を有する化粧材としての表皮を貼着してなる長尺状積層体を幅方向に直列に複数並べ、屈曲可能に互いに連結させた構成のものが知られている。
【特許文献1】特開平11−190178号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記特許文献1の扉は、スチール製の前部構成部材及び後部構成部材を備えているために重量が増大し、該扉を吊り下げる吊下げ部材や天井側ガイドレール等を高剛性にする必要があり、クローゼットが高価なものとなっていた。また、前記前部構成部材と後部構成部材とを多数のリベットにより結合するようにしているため、部品点数が多くなるとともに組付工数も増大する等の問題があった。さらに、折り畳み式の開閉扉であるため、開閉扉を閉める際に、折り畳み部分(ヒンジ部分)に使用者の衣類が挟まったり、指を挟んだりするおそれがあった。
【0005】
また、前記従来例の後者においては、基材が長尺状の木製の中実基材であるため、積層体の重量が増大し、前記特許文献1の扉と同様の問題点があった。
【0006】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、部品点数が少なく且つ軽量で製造時の組立作業が容易な積層体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した目的を達成するため、本発明は、隣接端部に傾斜面を形成した状態で並べて配置した各板材の裏面に表皮を貼着しておき、隣接する傾斜面がなす溝部の尖端部に位置する表皮を支点として折り曲げて各板材を芯材の周りに貼着するようにした。
【0008】
具体的に、本発明は、断面矩形状の木製の基材の表面に1枚のシート状で可撓性を有する表皮を貼着してなる長尺状の積層体を対象とし、次のような解決手段を講じた。
【0009】
すなわち、請求項1の発明は、前記基材は、断面矩形状の芯材と、該芯材の周りに接合一体化された断面矩形枠状の基材構成部材とからなり、
前記基材構成部材は、1枚の表板と、該表板と板厚方向に対向して離間して配置された2枚の分割裏板と、該表板及び両分割裏板の幅方向両端に互いに対向して離間して配置された2枚の側板とからなっていて、前記表板、両分割裏板及び両側板の板厚は互いに同じとされており、
前記表板と各側板との隣接端部、並びに前記各分割裏板と各側板との隣接端部には、それぞれ裏面側の隅角部を切り欠いてなる傾斜面が形成されている一方、各分割裏板における各側板と反対側の端部には、各分割裏板の表面に対し垂直な垂直端面が形成され、
前記基材構成部材は、互いに隣接する前記傾斜面同士が当接し且つ両分割裏板の垂直端面同士が対向して隣接し、且つ該両分割裏板の表面同士が面一となって、前記表板、両分割裏板及び両側板の各裏面で囲まれる部分に断面矩形状の中空部を区画する断面矩形枠状に形成され、
前記表皮は、前記表板、両分割裏板及び両側板の表面に貼着されていて、前記表板と各側板との隣接端部、各分割裏板と各側板との隣接端部で直角に折り曲げられ、且つ当該表皮の幅方向両端部が前記分割裏板の垂直端面と面一になるように配置され、
前記芯材は、前記基材の長手方向両端部及び中間部に互いに間隔をあけて配設された断面矩形状の補強部材と、該各補強部材間に配設され、両端面が該各補強部材に接合された断面矩形状の軽量材からなる連結部材とで構成されて、前記基材構成部材の中空部内に配置され、該芯材の表面に前記表板、両分割裏板及び両側板の各裏面が接着されて配置されていることを特徴とするものである。
【0010】
また、請求項2の発明は、断面矩形状の木製の基材の表面に1枚のシート状で可撓性を有する表皮を貼着してなる長尺状の積層体を対象とし、次のような解決手段を講じた。
【0011】
すなわち、請求項2の発明は、前記基材は、断面矩形状の芯材と、該芯材の周りに接合一体化された断面矩形枠状の基材構成部材とからなり、
前記基材構成部材は、1枚の表板と、該表板と板厚方向に対向して離間して配置された2枚の分割裏板と、該表板及び両分割裏板の幅方向両端に互いに対向して離間して配置された2枚の側板と、該表板、各分割裏板及び各側板の各々の間に配設された複数のコーナ片とからなっていて、前記表板、両分割裏板及び両側板の板厚は互いに同じとされており、
前記表板、各分割裏板及び各側板の幅方向両端部には、各板の表面に対し垂直な垂直端面が形成され、各コーナ片の高さは各板の板厚と同じとされ、
前記基材構成部材は、前記両分割裏板の垂直端面同士が対向して隣接し、両分割裏板の表面同士が面一となって、前記表板、両分割裏板及び両側板の各裏面並びにコーナ片で囲まれる部分に断面矩形状の中空部を区画するように断面矩形枠状に形成され、
前記表皮は、前記表板、両分割裏板及び両側板並びに各コーナ片の表面に貼着されていて、前記表板と各側板との間のコーナ片、各側板と各分割裏板との間のコーナ片で面取り形状をなすように折り曲げられ、且つ当該表皮の幅方向両端部が分割裏板の垂直端面と面一になるように配置され、
前記芯材は、前記基材の長手方向両端部及び中間部に互いに間隔をあけて配設された断面矩形状の補強部材と、該各補強部材間に配設され、両端面が該各補強部材に接合された断面矩形状の軽量材からなる連結部材とで構成されて、前記基材構成部材の中空部内に配置され、該芯材の表面に前記表板、両分割裏板及び両側板の各裏面が接着されて配置されていることを特徴とするものである。
【0012】
また、請求項3の発明は、請求項1又は2に記載の積層体を備えた開閉扉であって、長手方向を上下方向に配置した複数の前記積層体が幅方向に直列に並べられて連結材によって屈曲可能に連結され、
前記各積層体の上端側の芯材に取り付けられた吊下げ部材を介して当該積層体の上端が上側ガイドレールに移動可能に吊下げ支持される一方、該各積層体の下端側の芯材に取り付けられた支持部材を介して当該積層体の下端が下側ガイドレールに移動可能に支持され、
前記複数の積層体が前記上側及び下側ガイドレールに案内されて一体に移動可能であることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に係る発明によれば、表皮を、表板、両分割裏板及び両側板の表面に、幅方向の両端面が両分割裏板の垂直端面と面一となるように貼着しておき、表板と各側板との隣接端部、各分割裏板と各側板との隣接端部で直角に折り曲げて、芯材に表板、両分割裏板及び両側板の各裏面を接着したから、各板と表皮とを1つの部材として取り扱うことができ、芯材の周りに各板を貼着する際の各板間の取付誤差を抑える上で有利となる。また、表皮を予め各板の表面に貼着しているから、各板を芯材の周りに貼着した後で表皮を貼着する場合に比べて作業工数が低減でき、表皮に皺が寄ることも抑制できる。これにより、製品の仕上がりが向上するとともに組み立て作業がしやすくなる。
【0014】
さらに、芯材は補強部材間に配設された連結部材によって一体的に接合されているため、該芯材の表面に表板、両側板及び両分割裏板を接着する際に、前記連結部材を有しない、すなわち、補強部材が離間して配設されている場合に比べて組み付け作業性が著しく向上する。また、強度が必要な箇所にのみ木製材等の補強部材を配置したこと及び連結部材を軽量材で構成としたことで、積層体全体を1本の木製材で構成した場合に比べて積層体の軽量化を図ることができ、例えば、積層体を吊り下げる吊下げ部材にかかる重量負担を軽減できるとともに、開閉扉の左右方向の開閉動作がスムーズに行える等、様々な利点がある。
【0015】
請求項2に係る発明によれば、請求項1に係る発明の前記効果に加えて、表板、両分割裏板及び両側板の間にそれぞれコーナ片を設け、芯材に各板を貼着するときにコーナ片で面取り形状をなすように折り曲げられるから、該面取り形状部が高精度に形成できて製品の見栄えが良くなる。
【0016】
さらに、請求項1の発明と同様に、芯材は補強部材間に配設された連結部材によって一体的に接合されているため、該芯材の表面に表板、両側板及び両分割裏板を接着する際に、前記連結部材を有しない、すなわち、補強部材が離間して配設されている場合に比べて組み付け作業性が著しく向上する。また、強度が必要な箇所にのみ木製材等の補強部材を配置したこと及び連結部材を軽量材で構成としたことで、積層体全体を1本の木製材で構成した場合に比べて積層体の軽量化を図ることができ、例えば、積層体を吊り下げる吊下げ部材にかかる重量負担を軽減できるとともに、開閉扉の左右方向の開閉動作がスムーズに行える等、様々な利点がある。
【0017】
請求項3に係る発明によれば、吊下げ部材及び支持部材を積層体の芯材に取り付けたから、安定して長期にわたって開閉扉を使用することができる。また、長尺状の積層体を複数本、幅方向に並べて折り曲げ可能としたため、積層体の本数を増減することにより幅が任意の開閉扉に設定することができる。また、前記従来例のように、ヒンジ部を中心にして開閉扉を開閉するものではないので、使用者の衣類がヒンジ部に挟まったり、指を挟んだりすることがない。また、開閉扉は、連結材によって屈曲可能であるため、開閉扉の配設自由度を向上することができる。また、高精度且つ容易に製造を行うことができる積層体を用いて開閉扉を構成したから、見栄えの良い開閉扉の製造コストを抑える上で有利となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的な例示に過ぎず、本発明を制限することを意図するものではない。
【0019】
<実施形態1>
図1は、本発明の実施形態1に係る開閉扉の全体構成を示す斜視図である。図1に示すように、この開閉扉50は、クローゼット40に用いられるものであり、長尺状の積層体10を長手方向が上下方向となるように幅方向に直列に複数並べ、後述する連結ワイヤ21(図5参照)等の連結材によって屈曲可能に連結されて構成されている。この開閉扉50は、複数本の積層体10,10,・・・を連結材で連結させた一対の左側扉50a及び右側扉50bで構成されて、左側扉50a及び右側扉50bをそれぞれ離間させる方向(左右)に開くことで、クローゼット40内の衣類等を取り出すことができるようになっている。
【0020】
左側扉50aの右端の積層体10及び右側扉50bの左端の積層体10の長手方向の略中央位置には、積層体10の表面に取っ手50c,50cが突出するように取り付けられている。
【0021】
前記複数の積層体10,10,・・・は、上端が吊下げ部材60を介して天蓋板51に吊下げ支持されている。具体的には、天蓋板51の下面の外周に沿って配置された上側ガイドレール52に移動可能に吊下げられている。また、各積層体10,10,・・・の下端は、支持部材70を介して下側ガイドレール54に移動可能に支持されている。前記下側ガイドレール54は、上側ガイドレール52と対向するように床板53の上面に配置されている。
【0022】
前記複数の積層体10,10,・・・は、上側及び下側ガイドレール52,54に沿って案内されて一体に左右方向に移動可能となっている。すなわち、取っ手50c,50cを持って左側扉50a及び右側扉50bをそれぞれ左右に開くことで、左側扉50a及び右側扉50bが上側及び下側ガイドレール52,54に沿ってそれぞれ移動し、左側扉50a及び右側扉50bの間が開口される。そして、積層体10は、後述する表板12が正面側(前側)に、2枚の分割裏板13が背面側(後側、すなわちクローゼット内側)に向くように吊り下げられている。
【0023】
図2は、開閉扉の上端を吊下げ支持する吊下げ部材の構成を示す側面断面図である。図2に示すように、この吊下げ部材60は、上側ガイドレール52と摺動自在な上側ガイドローラ61と、上側ガイドローラ61を回動可能に軸支する軸受部材62と、該軸受部材62と積層体10とを連結する連結片63と、積層体10上端に埋め込まれ連結片63を積層体10上端に係合する円筒部材64と、該円筒部材64から連結片63が離脱しないように保持する封止キャップ65とを備えている。
【0024】
前記上側ガイドレール52は、板状体を断面略矩形状に折り曲げて形成したものであり、その下端の前後方向(図2において左右方向)中央位置にはレール開口52aが形成されている。
【0025】
前記上側ガイドローラ61は、左右一対のローラで構成されて上側回動軸61aにより連結されている。そして、上側ガイドローラ61は、上側ガイドレール52の内部空間内に前記レール開口52aを挟んで対向して配置され、ローラ面が上側ガイドレール52の下側内周面に沿って摺動するようになっている。
【0026】
前記軸受部材62は、一対の上側ガイドローラ61,61間を連結する上側回動軸61aを回動自在に軸支するものであり、側面視でT型に形成されその水平部が上側ガイドレール52のレール開口52aから挿通されて上側ガイドレール52内に配置される一方、垂直部がレール開口52aを通って下方に延び且つその下端部に前後方向に貫通する貫通孔62aが形成されている。
【0027】
前記連結片63は、軸受部材62の他端と積層体10の上端とを連結するものであり、一端部には断面凹状の凹溝が形成され、この凹溝内には軸受部材62の下端部が嵌合されている。凹溝の両側壁には前後方向に貫通する貫通孔63a,63aが形成されている。連結片63の他端部には、一端部よりも幅広のフランジ部63bが形成されている。そして、前記連結片63の貫通孔63a,63a及び軸受部材62の貫通孔62aには締結ボルト67が挿通され、連結片63の一端部から突出した締結ボルト67のボルト軸に締結ナット68が螺合され、連結片63と軸受部材62とが締結されている。
【0028】
前記円筒部材64は、有底筒状の円筒形状に形成され、筒部開口64aが下方に開口するように配置されている。円筒部材64の筒底部には筒部開口64aよりも小さな筒底開口64bが形成されている。前記連結片63は、下方の筒部開口64aから挿入されて連結片63の一端部が筒底開口64bから突出し、且つ連結片63のフランジ部63bが筒底部の底面に当接している。これにより、円筒部材64から連結片63が上方に抜けないようになっている。前記円筒部材64は、積層体10における後述の芯材11の上端部に配設された補強部材11aに形成された挿入口69に圧入等により挿入されて、積層体10から離脱しないようになっている。
【0029】
前記封止キャップ65は、円筒部材64の筒部開口64aから挿入した連結片63が円筒部材64から下方に離脱するのを防止するためのものである。具体的に、円筒部材64の下方の筒部開口64aから連結片63を挿入した後で、筒部開口64aからキャップ鍔部65aを有する封止キャップ65が嵌め込まれている。したがって、円筒部材64を積層体10の挿入口69に挿入する際には、事前に円筒部材64に連結片63を挿通して封止キャップ65を嵌め込む作業を行う必要がある。
【0030】
上述したように、吊下げ部材60の円筒部材64を芯材11の補強部材11aに取り付けたので、円筒部材64が強固に取り付けられ、積層体10を安定して吊り下げることができる。
【0031】
図3は、開閉扉の下端を移動可能に支持する支持部材の構成を示す断面図である。図3に示すように、この支持部材70は、下側ガイドレール54の上部凹溝54aの側壁に摺動する下側ガイドローラ71と、下側ガイドローラ71を回動自在に軸支する下側回動軸72と、下側回動軸72の軸方向上端部に同軸で連結された摺動軸73と、積層体10の下端部に圧入等により挿入され摺動軸73を軸方向に摺動自在に保持する有底筒状の保持部材74と、保持部材74の筒底部と摺動軸73の上端部との間に配設された圧縮バネ75と、保持部材74の空間部74aの開口周縁を覆うように取り付けられた鍔部76とを備えている。そして、前記支持部材70の保持部材74は、積層体10における後述の芯材11の下端部に配設された補強部材11aに、圧入等により挿入されて積層体10から離脱しないように取り付けられている。
【0032】
前記下側ガイドレール54は、その上面が床板53の上面と面一となるように床板53に埋め込まれている。この下側ガイドレール54は、上部凹溝54aと、この上部凹溝54aよりも開口幅の小さい下部凹溝54bとが形成された段付き溝で構成されている。
【0033】
前記下側ガイドローラ71は、上部凹溝54aの側壁面に摺動するローラ面を有するローラ部71aと、該ローラ部71aの下端部に一体に形成されローラ部71aの直径及び下側ガイドレール54の下部凹溝54bの幅よりも小さな直径の軸端取付部71bとを有している。
【0034】
前記下側ガイドローラ71には、ローラ面が上部凹溝54aの側壁面に摺動するように、上下方向に延びる下側回動軸72が挿通され、下側回動軸72の上端部が摺動軸73の下端部に取り付けられて、下側ガイドローラ71が下側回動軸72周りに回動可能に軸支されている。前記下側回動軸72の下端部は、下側ガイドローラ71が下側回動軸72から抜け落ちないように、且つ下側ガイドローラ71が回動できるように前記軸端取付部71bの下端部の略中央位置で軸方向に窪んだ凹溝内でカシメられている。
【0035】
前記摺動軸73は、積層体10の下端部に挿入された保持部材74の空間部74a内で上下方向に摺動して下側ガイドローラ71を上下方向に移動させるものであり、保持部材74の空間部74a内に挿入された圧縮バネ75により下方に移動するように付勢されている。また、前記保持部材74の空間部74aの開口周縁には、摺動軸73が空間部74a内へ設定以上入り込まないようにストッパとして機能する鍔部76が設けられている。
【0036】
上述したように、前記支持部材70の下側ガイドローラ71を上下方向に移動可能としたから、下側ガイドローラ71のローラ部71aの下面が下側ガイドレール54の上部凹溝54aの溝底面に当接しても、下側ガイドローラ71は下側回動軸72の周りを回動するため、下側ガイドローラ71と下側ガイドレール54との引っかかりが解消され、開閉扉50の開閉がスムーズに行われるようになっている。また、支持部材70の保持部材74を芯材11の補強部材11aに取り付けたので、保持部材74が補強部材11aに強固に取り付けられ、積層体10を下側ガイドレール54に沿って安定して移動させることができる。
【0037】
なお、前記吊下げ部材60及び前記支持部材70は、各積層体10,10,・・・毎に設けられている。
【0038】
(積層体)
以下、本発明の特徴部分である、開閉扉50をなす積層体10の構成について説明する。図4は、積層体の構成を示す断面図である。図4に示すように、この積層体10は、断面矩形状の木製の基材10aの表面に1枚のシート状で可撓性を有する表皮10bを貼着してなる長尺状の部材で構成されている。
【0039】
前記基材10aは、断面矩形状の芯材11及び基材構成部材15を備え、該基材構成部材15は、芯材11の周りに接合一体化された1枚の表板12と、表板12と板厚方向に対向して離間して配置された2枚の分割裏板13,13と、表板12及び両分割裏板13,13の幅方向両端に互いに対向して離間して配置された2枚の側板14,14とを断面矩形枠状に組み合わせて構成されている。
【0040】
前記芯材11は、図5に示すように、前記基材10aの長手方向両端部及び中間部に互いに間隔をあけて配設された断面矩形状の補強部材11aと、各補強部材11a間に配設され、両端面が各補強部材11aに接合された断面矩形状の連結部材11bとで構成されている。
【0041】
具体的に、前記補強部材11aは、所定の強度が確保された中実の木製材で形成され、前記連結部材11bは、例えば発泡スチロール、硬質発泡ポリウレタン、段ボール等の軽量材で形成されている。このように、強度が必要な箇所にのみ木製材を配置した構成の積層体10は、積層体10全体を1本の木製材で構成した場合に比べて積層体10の軽量化を図ることができ、吊下げ部材60にかかる重量負担を軽減できるとともに、開閉扉50の開閉動作がスムーズに行え、さらには断熱効果もある等、様々な利点がある。
【0042】
前記芯材11の周りに接合一体化された前記基材構成部材15をなす表板12、両分割裏板13及び両側板14の板厚は、互いに同じ厚さ(例えば、2.5〜3.0mm)に設定されている。
【0043】
そして、前記表板12と各側板14との隣接端部、並びに前記各分割裏板13と各側板14との隣接端部には、それぞれ裏面側の隅角部を切り欠いてなる傾斜面16,16,・・・がそれぞれ形成されている。また、各分割裏板13における各側板14と反対側の端部には、各分割裏板13の表面に対して垂直な垂直端面17,17が形成されている。そして、前記表板12、両分割裏板13及び両側板14は、互いに隣接する傾斜面16同士が当接し且つ両分割裏板13の垂直端面17,17同士が対向して互いに当接状態あるいは微小の隙間を有するように隣接し(本実施形態では当接状態)、且つ両分割裏板13の表面同士が面一となっている。これにより、表板12、両分割裏板13及び両側板14の各裏面で囲まれる部分に断面矩形状の中空部19が区画される。この中空部19内に前記芯材11が表板12、両分割裏板13及び両側板14の各裏面に接着されて配置されている。
【0044】
前記表皮10bは、可撓性を有するシート状の樹脂材で構成されており、表板12、両分割裏板13及び両側板14の表面に貼着されていて、表板12と各側板14との隣接端部、各分割裏板13と各側板14との隣接端部で直角に折り曲げられ、且つ幅方向両端部が分割裏板13の垂直端面17と面一になるように配置されている。
【0045】
(開閉扉の構造)
図6は開閉扉の構成を示す図であり、図6(a)は左側面図、図6(b)は正面図、図6(c)は右側面図である。図6(a)〜図6(c)に示すように、開閉扉50は、複数本の積層体10,10,・・・を幅方向に直列に並べ、芯材11の補強部材11a(図6では上下方向の両端部及び上下方向略中央部の3箇所)に、各積層体10の板厚方向の略中央位置を幅方向に貫通して延びる連結材としての連結ワイヤ21が取り付けられている。この連結ワイヤ21としては、本実施形態1ではバネ特性、すなわち伸縮性を有する金属製のワイヤであるが、伸縮性を有するゴム製の紐、その他伸縮性を有しない紐等を用いることができる。
【0046】
前記連結ワイヤ21の一端(図6では左端)には、連結ワイヤ21が積層体10から抜けないようにするための係止部材21aが取り付けられ、この係止部材21aは、開閉扉50をなす複数の積層体10,10,・・・のうち図6で左端に位置する積層体10に対して、係止部材21aの表面が積層体10の左端面から突出しないように挿入されている。また、前記連結ワイヤ21の他端(図6では右端)にはねじ部21bが形成され、積層体10が連結ワイヤ21から離脱しないようにするために係止ナット22が前記ねじ部21bに取り付けられている。この係止ナット22は、開閉扉50をなす複数の積層体10,10,・・・のうち図6で右端に位置する積層体10の右端面に対して所定間隔を有して外方に配置されている。これにより、図7に示すように、開閉扉50を屈曲させたとき、すなわち、クローゼット40のコーナ部40a近傍における隣接する積層体10,10同士の間に隙間が生じて複数の積層体10,10,・・・を屈曲可能に連結することができるようになっている。
【0047】
そして、積層体10は、表板12を正面側(前側)に、2枚の分割裏板13を背面側(後側)に向けて吊下げられるので、外部から2枚の分割裏板13の垂直端面17(表皮10bの幅方向端面)が見えず見栄えがよい。また、連結ワイヤ21は補強部材11aを貫通しているので、開閉扉50の開閉時に連結ワイヤ21が補強部材11a内を摺動しても積層体10が破損するのを抑制することができる。
【0048】
なお、複数の積層体10,10,・・・を連結する連結材として、前記連結ワイヤ21の他にも、図8に示すような帯状の連結シート23を用いてもよい。図8(a)は開閉扉の構成を示す背面図、図8(b)は左側面図である。図8(a)及び図8(b)に示すように、開閉扉50は、複数の積層体10,10,・・・を幅方向に直列に並べ、各積層体10の補強部材11aに対応する背面に幅方向に帯状に延びる可撓性を有する連結シート23が貼着されている。図8に示す例では、連結シート23として樹脂シートを用いている。これにより、図9に示すように、開閉扉50を屈曲させたとき、すなわち、クローゼット40のコーナ部40a近傍における隣接する積層体10,10の境界位置にある連結シート23を支点として隙間が生じることとなり、複数の積層体10を屈曲可能に連結することができるようになっている。
【0049】
図8の開閉扉50においても、連結シート23を芯材11の補強部材11aに対応する背面に貼着したので、図6と同様に、開閉扉50の開閉時に作用する外力が補強部材11aに作用し、これにより、積層体10の破損を抑制することができる。
【0050】
そして、連結材として、前記のように連結ワイヤ21及び連結シート23の実施形態をそれぞれ示したが、連結材はこれらを組み合わせて構成するようにしてもよい。すなわち、例えば、開閉扉50の上端及び下端の両側に連結ワイヤ21を使用し、その上下方向中間に連結シート23を使用するように構成してもよい。
【0051】
なお、図6及び図7において、前記吊下げ部材60及び支持部材70の図示を省略している。また、図8(a)において、2枚の分割裏板13の対向近接する垂直端面17(表皮10bの幅方向端面)の図示を省略している。
【0052】
(積層体の製造方法)
次に、本発明の積層体10の製造方法について説明する。まず、図10(a)に示すように、シート状で可撓性を有する表皮10bの裏面に少なくとも幅方向の端面が面一となるように木製板10cの表面側を貼着した基板20を用意する。この場合、基板20は市販品を購入したものでもよく、積層体10を製造するに先立って表皮10bと木製材10cとを貼着したものでもよい。
【0053】
そして、図10(b)に示すように、木製板10cの裏面に、前記基板20の法線に対して45度ずつ傾斜した溝側面を有する拡角90度のV字状の4本の切削溝18を基板20の長手方向に沿うように且つ所定の間隔をあけて並ぶように形成することで、1枚の表板12が幅方向中央に、2枚の側板14がその両側に、2枚の分割裏板13が前記両側板14の側方にそれぞれ配置されるように前記木製板10cを分割するとともに、各々の隣接端部に傾斜面16を形成して前記基材構成部材15を製作する。
【0054】
次に、前記基材構成部材15を折り曲げることで形成される矩形状中空部に対応した形状の芯材11を用意する。この芯材11としては、図5に示すように、長手方向両端部及び中間部に互いに間隔をあけて配設された断面矩形状の補強部材11aと、該各補強部材11a間に配設され、両端面が該各補強部材11aに接合された断面矩形状の前記軽量材からなる連結部材11bとで形成されたものを用いる。
【0055】
そして、前記木製板10cの少なくとも前記切削溝18を除く裏面に接着剤を塗布した後、芯材11の表板12に対応する対応面を基板20側(基材構成部材15側)に向け、芯材11を長手方向両端が基板20の長手方向両端に位置付けられるように位置合わせして基板20における表板12上に載置する。
【0056】
次に、前記各側板14を各分割裏板13と共に、表板12及び各側板14間の切削溝18の底部の尖端部に位置する表皮10bを支点として芯材11の側板14に対応する対応面側に折り曲げることで、表板12及び側板14間の互いに隣接する傾斜面16を当接させて側板14を芯材11の側板14に対応する対応面にそれぞれ接着する。
【0057】
そして、前記各分割裏板13を側板14及び分割裏板13間の切削溝18の底部の尖端部の表皮10bを支点として芯材11の分割裏板13に対応する対応面側に折り曲げることで、側板14及び分割裏板13間の互いに隣接する傾斜面16を当接させて分割裏板13の垂直端面同士が対向して隣接するように分割裏板13を芯材11の分割裏板13に対応する対応面にそれぞれ接着する。
【0058】
以上のように、本発明の実施形態1に係る積層体によれば、表皮10bを、表板12、両分割裏板13及び両側板14の表面に、幅方向の両端面が両分割裏板13の垂直端面17と面一になるように貼着しておき、表板12と各側板14との隣接端部、各分割裏板13と各側板14との隣接端部で直角に折り曲げて、芯材11に表板12、両分割裏板13及び両側板14の各裏面を接着したから、各板12〜14と表皮10bとを1つの部材として取り扱うことができ、芯材11の周りに各板12〜14を貼着する際の各板12〜14間の取付誤差を抑える上で有利となる。また、表皮10bを予め各板12〜14の表面に貼着しているから、各板12〜14を芯材11の周りに貼着した後で表皮10bを貼着する場合に比べて作業工数が低減でき、表皮10bに皺が寄ることも抑制できる。これにより、製品の仕上がりが向上するとともに組み立て作業がしやすくなる。
【0059】
また、表皮10bの裏面に木製板10cを貼着しておき、木製板10cの長手方向に沿ってV字状の切削溝18を形成することで、基材構成部材15をなす各板材12〜14を表皮10b上に形成するようにしたから、各板12〜14を別々に製作した後で表皮10b上に並べて貼着する場合に比べて作業工数を低減できる。また、隣接する各板同士の12〜14当接面となる傾斜面16をなす切削溝18を切削作業で形成するようにしているから、各板12〜14の傾斜面16を別々に形成した場合に比べて傾斜面16の部品加工精度、すなわち、各板12〜14の傾斜面16同士を当接させたときの組立精度が非常に高く、各板12〜14を精度良く芯材11に接着することができて製品の仕上がり、すなわち見栄えが向上する。
【0060】
また、基板20を表皮10bと木製板10cとの両幅方向端面が面一になるように両者を貼着したため、該貼着後に前記端面が面一となるように該端面を加工する場合に比べて作業工数を低減できる。
【0061】
また、開閉扉50を構成する際に、吊下げ部材60及び支持部材70を積層体10の芯材11に取り付けたから、安定して長期にわたって開閉扉50を使用することができる。また、長尺状の積層体10を複数本、幅方向に並べて折り曲げ可能としたため、積層体10の本数を増減することにより幅が任意の開閉扉50に設定することができる。また、前記従来例のように、ヒンジ部を中心にして開閉扉50を開閉するものではないので、使用者の衣類がヒンジ部に挟まったり、指を挟んだりすることがない。また、開閉扉50は、連結ワイヤ21や連結シート23によって屈曲可能であるため、開閉扉50の配設自由度を向上することができる。
【0062】
また、図1に示すようなクローゼット40において、クローゼット40のコーナ部40a(開閉扉50が屈曲している部分)で、隣接する積層体10,10間の外側に隙間ができるが、この隙間は小さく、しかも使用者はこのコーナ部40a付近にはいないため、この隙間に前記従来例のように使用者の衣類が挟まったり、指を挟んだりするおそれがなく安全である。
【0063】
<実施形態2>
図11は本発明の実施形態2に係る積層体の構成を示す正面図、図12(a)は図11のA−A線断面図、図12(b)は図11のB−B線断面図である。前記実施形態1との違いは、積層体30の断面形状を変更した点であるため、以下、実施形態1と同じ部分については同じ符号を付し、相違点についてのみ説明する。
【0064】
(積層体)
図11及び図12に示すように、この積層体30は、断面矩形状の木製の基材30aの表面に1枚のシート状で可撓性を有する表皮10bを貼着してなる長尺状の部材で構成されている。
【0065】
前記基材30aは、断面矩形状の芯材11及び基材構成部材38を備え、該基材構成部材38は、芯材11の周りに接合一体化された1枚の表板32と、表板32と板厚方向に対向して離間して配置された2枚の分割裏板33と、表板32及び両分割裏板33の幅方向両端に互いに対向して離間して配置された2枚の側板34と、表板32、各分割裏板33及び各側板34の各々の間に配設された4つのコーナ片35とを断面矩形枠状に組み合わせて構成されている。
【0066】
前記芯材11は、前記実施形態1と同様の構成であるため説明を省略する。ここで、前記芯材11の周りに接合一体化された断面矩形枠状の基材構成部材38をなす表板32、両分割裏板33及び両側板34の板厚は互いに同じ厚さ(例えば、2.5〜3.0mm)に設定されている。
【0067】
そして、前記表板32、各分割裏板33及び各側板34の幅方向両端部には、各板32〜34の表面に対して垂直な垂直端面37,37が形成されている一方、各コーナ片35は、その裏面側の両隅角部を切り欠いてなる傾斜面36,36が形成されていて、傾斜面36,36を二等辺とする断面直角二等辺三角形状とされ、該二等辺を頂点とするコーナ片35の高さは各板32〜34の板厚と同じとされている。
【0068】
そして、前記各コーナ片35の傾斜面36と、該傾斜面36に隣接する各板32〜34の垂直端面37とが当接し且つ両分割裏板33の垂直端面37,37同士が対向して互いに当接状態あるいは微小の隙間を有するように隣接し(本実施形態では当接状態)、両分割裏板33の表面同士が面一となって、前記基材構成部材38で囲まれる部分に断面矩形状の中空部39が区画される。この中空部39内に前記芯材11が前記表板32、両分割裏板33及び両側板34の各裏面に接着されて配置されている。
【0069】
前記表皮10bは、可撓性を有するシート状の樹脂材で構成されており、前記基材構成部材38の表面に貼着されていて、表板32と各側板34との間のコーナ片35、各側板34と各分割裏板33との間のコーナ片35で面取り形状をなすように折り曲げられ、且つ幅方向両端部が分割裏板33の垂直端面37と面一になるように配置されている。
【0070】
(積層体の製造方法)
次に、本発明の積層体30の製造方法について説明する。まず、前記実施形態1と同様に、シート状で可撓性を有する表皮10bの裏面に少なくとも幅方向の端面が面一となるように木製板10cの表面側を貼着した基板20を用意する(図10(a)参照)。この場合、基板20は市販品を購入したものでもよく、積層体30を製造するに先立って表皮10bと木製材10cとを貼着したものでもよい。
【0071】
そして、図13に示すように、木製板10cの裏面に、一方の溝側面が前記基板20の法線と平行で他方の溝側面が法線に対し傾斜した45度の拡角を有し且つ各々の傾斜した溝側面が法線に対し互いに対称となるように隣接して形成された逆M字状の切削溝31を基板20の長手方向に沿うように且つ該切削溝31が所定の間隔をあけて並ぶように4条形成することで、1枚の表板32が幅方向中央に、2枚の側板34がその両側に、2枚の分割裏板33が前記両側板34の側方に、且つ4つのコーナ片35が隣接する各板材32〜34間にそれぞれ配置される。
【0072】
次に、前記基材構成部材38を折り曲げることで形成される矩形状中空部に対応した形状の芯材11を用意する。この芯材11としては、図14に示すように、長手方向両端部及び中間部に互いに間隔をあけて配設された断面矩形状の補強部材11aと、該各補強部材11a間に配設され、両端面が該各補強部材11aに接合された断面矩形状の実施形態1と同様の連結部材11bとで形成されたものを用いる。
【0073】
そして、前記木製板10cの少なくとも前記切削溝31を除く裏面に接着剤を塗布した後、前記芯材11の表板32に対応する対応面を前記基板20側(基材構成部材38側)に向け、前記芯材11を長手方向両端が基板20の長手方向両端に位置付けられるように位置合わせして前記基板20における表板32上に載置する。
【0074】
次に、前記各側板34を各分割裏板33と共に、前記表板32及び側板34間の切削溝31の底部における2つの尖端部に位置する表皮10bを支点として前記芯材11の側板34に対応する対応面側に折り曲げることで、前記表板32及び側板34間のコーナ片35の傾斜面36を該表板32及び側板34の垂直端面37に当接させて前記側板34を芯材11の側板34に対応する対応面にそれぞれ接着する。
【0075】
そして、前記各分割裏板33を前記側板34及び分割裏板33間の切削溝31の底部における2つの尖端部に位置する表皮10bを支点として前記芯材11の分割裏板33に対応する対応面側に折り曲げることで、該側板34及び分割裏板33間のコーナ片35の傾斜面36を該側板34及び分割裏板33の垂直端面37に当接させて、前記分割裏板33の垂直端面37,37同士が対向して隣接するように該分割裏板33を前記芯材11の分割裏板33に対応する対応面にそれぞれ接着する。
【0076】
以上のように、本発明の実施形態2に係る積層体によれば、表板32、両分割裏板33及び両側板34の間にそれぞれコーナ片35を設け、芯材11に各板材32〜34を貼着するときにコーナ片35で面取り形状をなすように表皮10bを折り曲げるので、積層体30の4隅が直角の場合に比べて製品の見栄えが良くなる。その他の効果については、前記実施形態1と同様である。
【0077】
<実施形態3>
図15は本発明の実施形態3に係る積層体の構成を示す断面図である。前記実施形態2との違いは、積層体45の断面形状を変更した点であるため、以下、実施形態2と同じ部分については同じ符号を付し、相違点についてのみ説明する。
【0078】
(積層体)
図15に示すように、この積層体45は、断面矩形状の木製の基材30aの表面に1枚のシート状で可撓性を有する表皮10bを貼着してなる長尺状の部材で構成されている。
【0079】
前記基材30aは、断面矩形状の芯材11及び基材構成部材38を備え、該基材構成部材38は、芯材11の周りに接合一体化された1枚の表板32と、表板32と板厚方向に対向して離間して配置された2枚の分割裏板33と、表板32及び両分割裏板33の幅方向両端に互いに対向して離間して配置された2枚の側板34と、表板32、各分割裏板33及び各側板34の各々の間における4隅に互いに幅方向に間隔をあけて配設されたコーナ片41とを断面矩形枠状に組み合わせて構成されている。
【0080】
前記芯材11は、その4隅が曲面状の面取り形状に形成されている点以外は前記実施形態2と同様の構成であるため説明を省略する。ここで、前記芯材11の周りに接合一体化された断面矩形枠状の基材構成部材38をなす表板32、両分割裏板33及び両側板34の板厚は互いに同じ厚さ(例えば、2.5〜3.0mm)に設定されている。
【0081】
そして、前記表板32、各分割裏板33及び各側板34の幅方向両端部には、各板32〜34の表面に対して垂直な垂直端面37,37が形成されている。また、各コーナ片41は、表面に対して略垂直な面を有する複数のコーナ片部41a(この実施形態3では7個)が幅方向に等間隔で立設して構成されており、各コーナ片41の高さは各板32〜34の板厚と同じとされている。
【0082】
そして、隣接するコーナ片部41a間の裏面側の幅方向の間隔が狭くなる方向に表皮10bが折り曲げられ且つ両分割裏板33の垂直端面37,37同士が対向して互いに当接状態あるいは微小の隙間を有するように隣接し(本実施形態では当接状態)、両分割裏板33の表面同士が面一となって、前記基材構成部材38で囲まれる部分に断面矩形状の中空部39が区画される。この中空部39内に前記芯材11が前記表板32、両分割裏板33、両側板34及び各コーナ片41の各裏面に接着されて配置されている。
【0083】
前記表皮10bは、可撓性を有するシート状の樹脂材で構成されており、前記基材構成部材38の表面に貼着されていて、表板32と各側板34との間のコーナ片41、各側板34と各分割裏板33との間のコーナ片41で曲面状の面取り形状をなすように折り曲げられ、且つ幅方向両端部が分割裏板33の垂直端面37と面一になるように配置されている。
【0084】
なお、本実施形態3では、各コーナ片41を構成するコーナ片部41aの幅方向両端部には、各コーナ片部41aの表面に対して略垂直な面を形成するようにしたが、例えば、コーナ片部41aの先端部の幅方向の幅が表皮10b側の基部よりも小さくなるように、該基端部から先端部にかけて細くなるテーパ状に形成してもよい。
【0085】
(積層体の製造方法)
次に、本発明の積層体45の製造方法について説明する。まず、前記実施形態2と同様に、シート状で可撓性を有する表皮10bの裏面に少なくとも幅方向の端面が面一となるように木製板10cの表面側を貼着した基板20を用意する(図10(a)参照)。この場合、基板20は市販品を購入したものでもよく、積層体45を製造するに先立って表皮10bと木製材10cとを貼着したものでもよい。
【0086】
そして、図16に示すように、木製板10cの裏面に、全ての溝側面が前記基板20の法線と略平行となるように形成された切削溝42を基板20の長手方向に沿うように且つ該切削溝42が所定の間隔をあけて並ぶように形成することで、1枚の表板32が幅方向中央に、2枚の側板34がその両側に、2枚の分割裏板33が前記両側板34の側方に、且つ7個のコーナ片部41aからなるコーナ片41が隣接する各板材32〜34間にそれぞれ配置される。
【0087】
次に、前記基材構成部材38を折り曲げることで形成される矩形状中空部に対応した形状の芯材11を用意する。この芯材11としては、図5に示すように、長手方向両端部及び中間部に互いに間隔をあけて配設された断面矩形状の補強部材11aと、該各補強部材11a間に配設され、両端面が該各補強部材11aに接合された断面矩形状の実施形態1と同様の連結部材11bとで形成されたものを用いる。ただし、本実施形態3では、芯材11の4隅が曲面状の面取り形状に形成されたものを用いる。
【0088】
そして、前記木製板10cの裏面に接着剤を塗布した後、前記芯材11の表板32に対応する対応面を前記基板20側(基材構成部材38側)に向け、前記芯材11を長手方向両端が基板20の長手方向両端に位置付けられるように位置合わせして前記基板20における表板32上に載置する。
【0089】
次に、前記各側板34を、各分割裏板33と共に芯材11の側板34に対応する対応面側に折り曲げることで、表板32及び側板34間のコーナ片41及び側板34を、芯材11のコーナ片41及び側板34に対応する対応面にそれぞれ接着する。
【0090】
そして、前記各分割裏板33を、芯材11の分割裏板33に対応する対応面側に折り曲げることで、分割裏板33の垂直端面37,37同士が対向して隣接するように、側板34及び分割裏板33間のコーナ片41及び分割裏板33を、芯材11のコーナ片41及び分割裏板33に対応する対応面にそれぞれ接着する。
【0091】
以上のように、本発明の実施形態3に係る積層体によれば、表板32、両分割裏板33及び両側板34の間に複数のコーナ片部41aからなるコーナ片41をそれぞれ設け、芯材11に各板材32〜34を貼着するときにコーナ片41で曲面状の面取り形状をなすように表皮10bを折り曲げるので、積層体45の4隅が直角の場合に比べて製品の見栄えが一層良くなる。その他の効果については、前記実施形態2と同様である。
【0092】
なお、本実施形態3では、コーナ片部41aを7個で形成するようにしたが、この形態に限定するものではなく、滑らかなアールを形成するために必要な複数個のコーナ片部41aにすればよい。
【0093】
また、前記実施形態1乃至3において、開閉扉50はクローゼット40に使用される実施例を説明したが、クローゼット40以外にも、例えば、部屋を仕切る間仕切り壁、開閉扉、倉庫等の開閉扉として使用でき、上述した実施形態に限定されるものではない。
【産業上の利用可能性】
【0094】
以上説明したように、本発明は、部品点数が少なく且つ軽量で製造時の組立作業が容易な積層体を提供することができるという実用性の高い効果が得られることから、きわめて有用で産業上の利用可能性は高い。
【図面の簡単な説明】
【0095】
【図1】本発明の実施形態1に係る開閉扉の全体構成を示す斜視図である。
【図2】図1における吊下げ部材の構成を示す側面断面図である。
【図3】図1における支持部材の構成を示す断面図である。
【図4】図1における積層体の構成を示す断面図である。
【図5】芯材の構成を示す斜視図である。
【図6】(a)は開閉扉の構成を示す左側面図、(b)は正面図、(c)は右側面図である。
【図7】図6における開閉扉を屈曲させた状態を示す平面図である。
【図8】(a)は連結材として帯状の連結シートを用いた開閉扉の構成を示す背面図、(b)は左側面図である。
【図9】図8における開閉扉を屈曲させた状態を示す平面図である。
【図10】(a)は表皮の裏面に木製板を貼着した状態を示す斜視図、(b)は(a)における木製板の裏面に切削溝を形成したときの基板の状態を示す断面図である。
【図11】本発明の実施形態2に係る積層体の構成を示す正面図である。
【図12】(a)は図11のA−A線断面図、(b)は図11のB−B線断面図である。
【図13】木製板の裏面に切削溝を形成したときの基板の状態を示す断面図である。
【図14】基板に芯材を接着するときの手順を示す斜視図である。
【図15】本発明の実施形態3に係る積層体の構成を示す図12(a)相当断面図である。
【図16】木製板の裏面に切削溝を形成したときの基板のコーナ片周辺の状態を示す断面図である。
【符号の説明】
【0096】
10、30、45 積層体
10a、30a 基材
10b 表皮
11 芯材
11a 補強部材
11b 連結部材
12、32 表板
13、33 分割裏板
14、34 側板
15、38 基材構成部材
16、36 傾斜面
17、37 垂直端面
19、39 中空部
21 連結ワイヤ(連結材)
23 連結シート(連結材)
35、41 コーナ片
50 開閉扉
52 上側ガイドレール
54 下側ガイドレール
60 吊下げ部材
70 支持部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
断面矩形状の木製の基材の表面に1枚のシート状で可撓性を有する表皮を貼着してなる長尺状の積層体であって、
前記基材は、断面矩形状の芯材と、該芯材の周りに接合一体化された断面矩形枠状の基材構成部材とからなり、
前記基材構成部材は、1枚の表板と、該表板と板厚方向に対向して離間して配置された2枚の分割裏板と、該表板及び両分割裏板の幅方向両端に互いに対向して離間して配置された2枚の側板とからなっていて、前記表板、両分割裏板及び両側板の板厚は互いに同じとされており、
前記表板と各側板との隣接端部、並びに前記各分割裏板と各側板との隣接端部には、それぞれ裏面側の隅角部を切り欠いてなる傾斜面が形成されている一方、各分割裏板における各側板と反対側の端部には、各分割裏板の表面に対し垂直な垂直端面が形成され、
前記基材構成部材は、互いに隣接する前記傾斜面同士が当接し且つ両分割裏板の垂直端面同士が対向して隣接し、且つ該両分割裏板の表面同士が面一となって、前記表板、両分割裏板及び両側板の各裏面で囲まれる部分に断面矩形状の中空部を区画する断面矩形枠状に形成され、
前記表皮は、前記表板、両分割裏板及び両側板の表面に貼着されていて、前記表板と各側板との隣接端部、各分割裏板と各側板との隣接端部で直角に折り曲げられ、且つ当該表皮の幅方向両端部が前記分割裏板の垂直端面と面一になるように配置され、
前記芯材は、前記基材の長手方向両端部及び中間部に互いに間隔をあけて配設された断面矩形状の補強部材と、該各補強部材間に配設され、両端面が該各補強部材に接合された断面矩形状の軽量材からなる連結部材とで構成されて、前記基材構成部材の中空部内に配置され、該芯材の表面に前記表板、両分割裏板及び両側板の各裏面が接着されて配置されていることを特徴とする積層体。
【請求項2】
断面矩形状の木製の基材の表面に1枚のシート状で可撓性を有する表皮を貼着してなる長尺状の積層体であって、
前記基材は、断面矩形状の芯材と、該芯材の周りに接合一体化された断面矩形枠状の基材構成部材とからなり、
前記基材構成部材は、1枚の表板と、該表板と板厚方向に対向して離間して配置された2枚の分割裏板と、該表板及び両分割裏板の幅方向両端に互いに対向して離間して配置された2枚の側板と、該表板、各分割裏板及び各側板の各々の間に配設された複数のコーナ片とからなっていて、前記表板、両分割裏板及び両側板の板厚は互いに同じとされており、
前記表板、各分割裏板及び各側板の幅方向両端部には、各板の表面に対し垂直な垂直端面が形成され、各コーナ片の高さは各板の板厚と同じとされ、
前記基材構成部材は、前記両分割裏板の垂直端面同士が対向して隣接し、両分割裏板の表面同士が面一となって、前記表板、両分割裏板及び両側板の各裏面並びにコーナ片で囲まれる部分に断面矩形状の中空部を区画するように断面矩形枠状に形成され、
前記表皮は、前記表板、両分割裏板及び両側板並びに各コーナ片の表面に貼着されていて、前記表板と各側板との間のコーナ片、各側板と各分割裏板との間のコーナ片で面取り形状をなすように折り曲げられ、且つ当該表皮の幅方向両端部が分割裏板の垂直端面と面一になるように配置され、
前記芯材は、前記基材の長手方向両端部及び中間部に互いに間隔をあけて配設された断面矩形状の補強部材と、該各補強部材間に配設され、両端面が該各補強部材に接合された断面矩形状の軽量材からなる連結部材とで構成されて、前記基材構成部材の中空部内に配置され、該芯材の表面に前記表板、両分割裏板及び両側板の各裏面が接着されて配置されていることを特徴とする積層体。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の積層体を備えた開閉扉であって、
長手方向を上下方向に配置した複数の前記積層体が幅方向に直列に並べられて連結材によって屈曲可能に連結され、
前記各積層体の上端側の芯材に取り付けられた吊下げ部材を介して当該積層体の上端が上側ガイドレールに移動可能に吊下げ支持される一方、該各積層体の下端側の芯材に取り付けられた支持部材を介して当該積層体の下端が下側ガイドレールに移動可能に支持され、
前記複数の積層体が前記上側及び下側ガイドレールに案内されて一体に移動可能であることを特徴とする開閉扉。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate