説明

積層体

本発明は、1対の基材;および前記1対の基材の間に備えられる、1つ以上の光変色フィルムと1つ以上の赤外線(IR)遮蔽フィルムとを含み、前記1対の基材と接する前記光変色フィルムまたは前記赤外線(IR)遮蔽フィルムは接合フィルムによって前記基材と接合されることを特徴とする積層体に関する。本発明に係る積層体は、紫外線遮断効果および赤外線(IR)遮断効果がある高耐久性光変色機能を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光変色機能および赤外線遮蔽機能を有し且つ高耐久性である積層体に関する。本出願は2008年11月14日に韓国特許庁に提出された韓国特許出願第10−2008−0113622号の出願日の利益を主張し、その内容の全ては本明細書に含まれる。
【背景技術】
【0002】
一般的なガラスは光をそのまま通過させて車両または室内の温度を急激に上昇させ、車両の場合、運転者および乗客が直射光線によって明確な視野を確保することができないようにする。
【0003】
前記のような問題点を防止するために、車両用ガラスに光変色物質をフィルム形態で適用する方法が提案されている。
【0004】
しかし、紫外線および可視光を遮断する光変色機能および赤外線を遮断する赤外線遮蔽機能と共に高耐久性も有する積層体に関する技術は未だに課題として残っている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、紫外線および可視光を遮断する光変色機能および赤外線を遮断する赤外線遮蔽機能と共に高耐久性も有する積層体を提供することをその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、1対の基材;および前記1対の基材の間に備えられる、1つ以上の光変色フィルムと1つ以上の赤外線(IR)遮蔽フィルムとを含み、前記1対の基材と接する前記光変色フィルムまたは前記赤外線(IR)遮蔽フィルムは接合フィルムによって前記基材と接合されることを特徴とする積層体を提供する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、紫外線、可視光および赤外線の遮断性を向上させることができ、耐久性に優れ、変色透過率を効果的に下げることができるガラス積層体が提供される。
【0008】
本発明に係る積層体の基材がガラスである場合、本発明に係る積層体は、車両のウィンドウまたは建築物のウィンドウとして使うことができ、この場合、エネルギ節減効果のある安全ウィンドウを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明に係る積層体の一実施状態を示す図である。
【図2】本発明に係る積層体の一実施状態を示す図である。
【図3】実施例の結果(変色前UV−VIS−NIR領域(200〜2000nm)の透過率スペクトル)を示すグラフである。
【図4】実験例2の結果(着色状態における可視光領域の透過率測定)を示すグラフである。
【図5】実験例3の結果(耐候性テスト)を示すグラフである。
【図6】実験例4の結果(耐候性テスト)を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明に係る積層体は、1対の基材;および前記1対の基材の間に備えられる、1つ以上の光変色フィルムと1つ以上の赤外線(IR)遮蔽フィルムとを含み、前記1対の基材と接する前記光変色フィルムまたは前記赤外線(IR)遮蔽フィルムは接合フィルムによって前記基材と接合されることを特徴とする。
【0011】
前記基材はガラスまたは高分子フィルムであってもよい。
【0012】
前記基材がガラスである場合、本発明に係る積層体は、色々な分野において多層構造を有する積層体として使われる。一例として、本発明に係る積層体は車両のウィンドウまたは建築物のウィンドウとして使うことができる。
【0013】
前記ガラス1枚の厚さは1.8〜2.5mmであることが好ましい。その厚さが1.8mm未満である場合には、薄すぎるために接合工程時に破損し得るし、2.5mmを超過する場合には、車両ドアの窓の規格に適していない場合がある。
【0014】
前記高分子フィルムは、ポリエチレンテレフタレート(polyethyleneterephthalate、PET)、ポリアリレート(polyarylates)、ポリエーテルスルホン(polyethersulfone、PES)、ポリカーボネート(polycarbonates、PC)、ポリエチレンナフタレート(polyethylenenaphthalates、PEN)、ポリイミド(polyimide、PI)およびエポキシ樹脂のうちから選択された1種以上の物質から形成された透明プラスチックフィルムであってもよい。
【0015】
前記基材が高分子フィルムである場合、本発明に係る積層体は、車両および建築用色付けフィルム、広告用表示板または装飾用の品物として使うことができる。
【0016】
前記光変色フィルムの厚さは20〜1000μmであってもよい。前記光変色フィルムの厚さが前記範囲内であることが、目的とする光変色性能を提供し、光変色フィルムの加工性を維持するのに有利である。
【0017】
前記光変色フィルムは、コーティング法またはキャスティング法、押出法を利用して製造することができる。
【0018】
前記光変色フィルムの製造方法はこれに限定されず、光変色フィルムが適用される条件に応じて調節することができ、当業者に知られた様々な方法を利用することもできる。
【0019】
前記光変色フィルムは1つまたは2つ以上を積層することができる。好ましくは、前記光変色フィルムは最大5個まで用いることができる。
【0020】
前記光変色フィルムは、バインダー樹脂および光変色染料を含む光変色フィルム製造用組成物から形成することができる。
【0021】
前記バインダー樹脂は、透明性を有する高分子樹脂または色々な種類のモノマーを重合して得られる樹脂のうちから選択された1種以上を含むことができる。しかし、その種類は特に限定されず、本発明が属する技術分野で通常に用いられるものを制限されることなく選択して用いることができる。
【0022】
前記高分子樹脂としては、ポリエステル、ポリアクリレート、ポリカーボネート、ポリエチレンなどが挙げられる。前記モノマーはアクリレート基を含む全ての種類の単分子を意味する。一例として、アクリレートモノマーを重合して得られた樹脂をバインダー樹脂として用いることができる。
【0023】
前記バインダー樹脂はポリビニルブチラール樹脂、エチレンビニルアセテート樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリウレタン樹脂およびポリアクリレート樹脂のうちから選択された1種以上を含むことができ、これを用いる場合、耐候性を向上させることができるので好ましい。
【0024】
ここで、ポリビニルブチラール樹脂は、重量平均分子量が40、000〜120、000であってもよい。前記ポリビニルブチラール樹脂を用いる場合、可塑剤としてグリコール系可塑剤を用いることができる。
【0025】
前記光変色染料は、スピロオキサジン(spirooxazine)、ベンゾピラン(benzopyran)、ナフトピラン(naphthopyran)、chromemeおよびアゾ化合物(azo compound)からなる群から選択された1種以上を含むことができる。
【0026】
前記光変色フィルム製造用組成物は、前記バインダー樹脂100重量部に対して前記光変色染料0.01〜2重量部を含むことができる。
【0027】
前記光変色フィルム製造用組成物は、バインダー樹脂100重量部に対し、0.01〜5重量部の重合開始剤、0.01〜5重量部の安定化剤(熱安定剤または光安定剤)、0.01〜5重量部の紫外線吸収剤、0.01〜5重量部の酸化防止剤、0.01〜5重量部の連鎖移動剤、0.01〜5重量部の赤外線吸収剤、0.01〜5重量部の消泡剤、0.01〜5重量部の帯電防止剤、0.01〜5重量部の離型剤、0.01〜1重量部のレベリング剤および0.0001〜0.5重量部の一般染料のうちから選択された1種以上をさらに含むことができる。
【0028】
ここで、熱安定剤は前記バインダー樹脂100重量部に対し0.1〜3重量部で含まれ、光安定剤は前記バインダー樹脂100重量部に対し0.01〜1重量部で含まれる。
【0029】
前記一般染料は、光変色染料だけでは発現しにくい初期色を補正する役割をすると同時に光変色染料の分解時に生じ得る歪曲された色や染みなどを隠す役割をするものであり、その種類は特に限定されない。
【0030】
前記一般染料は、前記バインダー樹脂100重量部に対して0.0001〜0.5重量部で含まれることが好ましい。その含量が0.0001重量部未満である場合には、一般染料を添加することによって期待される効果を得にくく、0.5重量部を超過する場合には、期待以上に濃い濃度の色が発現されて光変色染料の効果を相殺し、溶剤との相溶性の差によって沈殿が発生し得るし、このような沈殿によって染みをもたらす。
【0031】
前記光変色フィルム製造用組成物は架橋剤をさらに含むことができる。すなわち、前記光変色フィルム製造用組成物は、前記バインダー樹脂、前記光変色染料、および架橋剤を含むことができる。例えば、前記バインダー樹脂としてアクリル系樹脂を含み、前記アクリル系樹脂100重量部に対し、前記架橋剤0.99〜30重量部および前記光変色染料0.01〜5重量部をさらに含むことができる。
【0032】
前述した光変色フィルム製造用組成物の組成および含量は、光変色フィルムが適用される条件に応じて調節することができるため、前記組成および含量が前述したものに限定されるのではない。
【0033】
本発明において、前記光変色フィルムとしてはフリースタンディング(freestanding)フィルムを用いることが好ましい。フリースタンディング(freestanding)フィルムとは、接着性がない常温常圧において形態が変わらないフィルムを意味する。
【0034】
このように光変色フィルムが接着性のないフィルムである場合、前記光変色フィルムを前記基材との接合だけでなく、前記光変色フィルムと接する他のフィルム、例えば、前記赤外線(IR)遮蔽フィルムとの付着のために接合フィルムが別途に備えられる。接合フィルムの場合も、UV遮断剤がどの程度含まれているか、あるいは厚さがどの程度であるかにより、光変色フィルム(UVが照射されて光変色機能が実現)の性能に影響を与えられる。
【0035】
フリースタンディング(freestanding)フィルムの形態とは異なり、光変色フィルムとして接着性を帯びる粘着コーティング層に光変色染料を導入することにより、粘着コーティング層に直接光変色効果を適用したフィルムを用いることもできる。しかし、このような粘着コーティング層の形態はフリースタンディング(freestanding)フィルムより耐久性が落ちる。
【0036】
前記赤外線(IR)遮蔽フィルムは、金属錯体系染料、フタロシアニン系染料、ナフタロシアニン系染料、分子内金属−錯体形態を有するシアニン系染料、およびジイモニウム系染料からなる群から選択された1種以上の赤外線吸収染料;または赤外線を反射あるいは吸収できる全ての種類の金属を含むことができる。好ましくは、スズ(Tin)、アンチモン(Antimony)、白金(Pt)のうちから選択された1種以上の金属を含むことができる。
【0037】
本発明によれば、赤外線(IR)遮蔽フィルムは、バインダー樹脂10〜60重量%、溶媒30〜80重量%、分散剤1〜10重量%および赤外線吸収染料0.01〜1重量%を含むことができる。例えば、バインダー樹脂30重量%、溶媒65重量%、分散剤4.9重量%および赤外線吸収染料0.1重量%を含むことができる。
【0038】
前記赤外線(IR)遮蔽フィルムの厚さは20〜200μmであってもよい。この厚さ範囲が紫外線遮蔽性能および加工性の面で有利であるが、この範囲だけに限定されるものではない。
【0039】
前記赤外線(IR)遮蔽フィルムは、ポリエチレンテレフタレート(polyethyleneterephthalate、PET)、ポリカーボネート(polycarbonates、PC)、ポリエチレン(polyethylene、PE)、またはポリメチルメタクリレート(polymethylmethacrylate、PMMA)などの透明フィルム上に金属をコーティングして独自的フィルムを作るか、光変色フィルム上にコーティングをして製造することができる。
【0040】
本発明において、前記光変色フィルムとしてフリースタンディング(freestanding)フィルム形態のものを用いる場合、前記赤外線(IR)遮蔽フィルムとしては前記光変色フィルムに直接コーティングされた形態のコーティング層を用いることができる。また、前記赤外線(IR)遮蔽フィルムとしてフリースタンディング(freestanding)フィルム形態のものを用いつつ、前記光変色フィルムと前記赤外線(IR)遮蔽フィルムとの間に接合フィルムをさらに備えることもできる。
【0041】
前記赤外線(IR)遮蔽フィルムは1つまたは2つ以上を積層することができる。好ましくは、前記赤外線(IR)遮蔽フィルムは最大3個まで用いることができる。
【0042】
本発明に係る積層体において、前記1対の基材、前記光変色フィルムまたは前記赤外線(IR)遮蔽フィルムは、接合フィルムを用いて、前記基材と接合されることを特徴とする。
【0043】
前記接合フィルムは前記基材と接するフィルムである光変色フィルムまたは赤外線(IR)遮蔽フィルムと基材を接合させ、積層体の耐久性および安全性を向上させる役割をする。具体的には、前記積層体が衝撃などの要因によって破壊される場合にも積層体から離れた破片が分離されずに前記接合フィルムに接着されているので安全性を向上させることができ、時間が経過することによって各層が分離されるなどの問題を減少させて耐久性を向上させることができる。
【0044】
前記接合フィルムは、ポリビニルブチラール樹脂、エチレンビニルアセテート樹脂、ポリエチレン樹脂およびポリウレタン樹脂のうちから選択された1種以上の樹脂を含むことができる。
【0045】
本発明に係る積層体は、前記基材がガラスである場合、色々な分野に多層構造を有する積層体として使うことができる。
【0046】
本発明に係る多層構造を有する積層体は車両のウィンドウまたは建築物のウィンドウとして使うことができる。
【0047】
本発明に係る積層体を、例えば、車両のウィンドウとしてまたは建築物のウィンドウとして設置する場合、前記1対の基材のうちの1つは、例えば車両の外部または建築物の外部に露出される外側基材となり、残りの1つは車両の内部または建築物の内部に位置する内側基材となる。この時、前記積層体は、外側基材、接合フィルム、光変色フィルム、赤外線(IR)遮蔽フィルム、接合フィルム、内側基材の順に積層される構造を有することができる。また、前記積層体は、外側基材、接合フィルム、光変色フィルム、接合フィルム、赤外線(IR)遮蔽フィルム、接合フィルム、内側基材の順に積層される構造を有することができる。
【0048】
本発明に係る積層体が2つ以上の光変色フィルムまたは赤外線(IR)遮蔽フィルムを含む場合、前記光変色フィルムと赤外線(IR)遮蔽フィルムは交互に積層することができる。例えば、本発明に係る積層体は、外側基材、接合フィルム、光変色フィルム、接合フィルム、光変色フィルム、接合フィルム、赤外線(IR)遮蔽フィルム、接合フィルム、内側基材の順に積層される構造を有することができる。また、本発明に係る積層体は、外側基材、接合フィルム、光変色フィルム、接合フィルム、赤外線(IR)遮蔽フィルム、接合フィルム、赤外線(IR)遮蔽フィルム、接合フィルム、内側基材の順に積層される構造を有することができる。
【0049】
本発明に係る積層体は、外側基材、接合フィルム、赤外線(IR)遮蔽フィルム、接合フィルム、光変色フィルム、接合フィルム、内側基材の順に積層される構造を有することもできるが、図3に示すように、外側基材側に赤外線(IR)遮蔽フィルムが位置している時(サンプルB)より光変色フィルムが外側基材側に位置している時(サンプルA)が変色透過率が効果的にさらに低くなる。
【0050】
以下では添付図面を参照して本発明についてより詳細に説明するが、これは本発明を例示するためのものであって、図面によって本発明の範囲が限定されるものではない。
【0051】
本発明の一側面による積層体は、図1に示すように、第1ガラス401;第1接合フィルム402;光変色フィルム403;赤外線(IR)遮蔽コーティング層408;第2接合フィルム406;および第2ガラス407を含む。
【0052】
本発明のまた他の一側面による積層体は、図2に示すように、第1ガラス401;第1接合フィルム402;光変色フィルム403;第2接合フィルム404;赤外線(IR)遮蔽フィルム405;第2接合フィルム406;および第2ガラス407を含む。
【0053】
ここで、基材がガラスであり、接合フィルムを用い、各1枚の光変色フィルムおよび赤外線(IR)遮蔽フィルムを用いたが、これに限定されず、基材が高分子フィルムであってもよく、光変色フィルムおよび/または赤外線(IR)遮蔽フィルムを何枚も備えることができることは勿論である。
【0054】
本発明に係る積層体は、車両ウィンドウ、建築材料、建築用色付けフィルム、広告用表示板、装飾用の品物などに使われる。
【実施例】
【0055】
以下では、実施例により、本発明をより詳細に説明する。但し、下記実施例は本発明を例示するだけのものに過ぎず、本発明の範疇および技術思想の範囲内で様々な変更および修正が可能であることは当業者にとっては明らかなものであり、このような変形および修正が添付した特許請求の範囲に属することも当然のことである。
【0056】
実施例1
<光変色フィルム製造用組成物の製造>
反応器に、バインダー樹脂としてポリメチルメタクリレート100重量部、バインダー樹脂100重量部に対し、光変色染料であるPalatinate purple(James Robinson社製)1重量部、一般染料であるPapilion Blue(Eastwell社製)0.02重量部、UV吸収剤としてTinuvin 1130(Ciba社製)0.2重量部、光安定剤としてTinuvin 123(Ciba社製)1.0重量部、および熱安定剤としてHP1010(Ciba社製)0.8重量部を添加し、30分間よく混合して固体化合物を作った。
【0057】
<光変色フィルムの製造>
前記固体混合物を、押出装置を利用して、厚さ500μmの押出フィルムをフリースタンディング(freestanding)フィルムタイプに製作した。
【0058】
<赤外線(IR)遮蔽フィルムの製造>
赤外線(IR)遮蔽フィルムは、ANP社のSR6070を利用して、100μmのポリエチレンテレフタレート(polyethyleneterephthalate、PET)フィルム上にコーティングして製造した。
【0059】
<積層体の製造>
ガラス基板とガラス基板との間に、前記で製造した光変色フィルムおよび赤外線(IR)遮蔽フィルムを入れ、接合フィルムであるEVAフィルムを入れた後、140℃、10MPaの条件で真空圧着して積層体を製造した。
【0060】
実施例2
下記のような方法により製造された光変色フィルム製造用組成物によって光変色フィルムを製造したことを除いては、実施例1と同じ方法により製造した。
【0061】
<光変色フィルム製造用組成物の製造>
バインダー樹脂としてBP4PA 60重量部(バインダー樹脂100重量部を基準とする、以下、同一)、9−EGDA 20重量部、スチレン10重量部、DVB(divinylbenzene)10重量部に、光変色染料であるPalatinate purple(James Robinson社製)0.2重量部、光安定剤としてTinuvin 144(Ciba社製)1.0重量部、および熱開始剤0.2重量部を添加した後、約2時間攪拌して完全に溶解させ、光変色フィルム製造用組成物を収得した。
【0062】
<光変色フィルムの製造>
前記光変色フィルム製造用組成物を300μmのスペ−サ(spacer)で分離されたガラスモールドの間に注入した後、95℃で6時間硬化した後、モールドを分離して、光変色フィルムをフリースタンディング(freestanding)フィルムタイプに製造した。
【0063】
[実験例1]
ガラス/EVA接合フィルム/ガラスの積層構造を有するサンプルを製造し(比較例1)、実施例2による光変色フィルムを用いて、ガラス/EVA接合フィルム/光変色フィルム/EVA接合フィルム/ガラスの積層構造を有するサンプルを製造し(比較例2)、実施例2による光変色フィルムおよび赤外線(IR)遮蔽フィルムを用いて、ガラス/EVA接合フィルム/光変色フィルム/EVA接合フィルム/赤外線(IR)遮蔽フィルム/EVA接合フィルム/ガラスの構造を有するサンプルを製造し(実施例2)、SHIMADZU社のSolidSpec−3700装置を利用して、変色前のUV−VIS−NIR領域(200〜2000nm)の透過率スペクトルを得た。
【0064】
図3のグラフに示すように、単純接合ガラス(比較例1)に比べ、光変色接合ガラス(比較例2)の場合、UVおよびVIS領域の遮断効果が大きくなり、光変色および赤外線(IR)遮蔽フィルムを共に接合した場合(実施例2)、UV−VIS−NIR領域における遮断効果が大きくなることを確認することができる。
【0065】
[実験例2]
実験例1の光変色フィルムと赤外線(IR)遮蔽フィルムを用いて、外部ガラス/EVA接合フィルム/光変色フィルム/EVA接合フィルム/赤外線遮蔽フィルム/EVA接合フィルム/内部ガラスの構造を有する積層体サンプル(A)と、外部ガラス/EVA接合フィルム/赤外線遮蔽フィルム/EVA接合フィルム/光変色フィルム/EVA接合フィルム/内部ガラスの構造を有する積層体サンプル(B)を製造した。
【0066】
ここで、積層体を例えば車両に設置するとした時、車両の外部環境に露出されるガラスが外部ガラスであり、車両の内部に位置するガラスが内部ガラスである。
【0067】
このように、光変色フィルムが外部ガラス側に付着され、赤外線(IR)遮蔽フィルムが内部ガラス層に付着された積層体サンプル(A)と、赤外線(IR)遮蔽フィルムが外部ガラス側に付着され、光変色フィルムが内部ガラス側に付着された積層体サンプル(B)を次のような方法で比較してみた。
【0068】
初期積層体の透過率を100%に基準として365nm波長の紫外線(1.35mW/cm)を外部ガラスに4分間照射した後、直ちにUV−Vis検出器を利用して、各々、着色状態における可視光領域の透過率を測定した。
【0069】
図4に示すように、光変色フィルムが外部ガラス側に位置している時が、赤外線(IR)遮蔽フィルムが外部ガラス側に位置している時より、変色透過率が効果的により低くなることが分かる。
【0070】
実施例3(エチレンビニルアセテート樹脂の使用)
反応器に、トルエン79重量%、光変色染料であるPalatinate purple(James Robinson社製)0.1重量%、一般染料であるPapilion Blue(Eastwell社製)0.01重量%、UV吸収剤としてTinuvin 1130(Ciba社製)0.06重量%、光安定剤としてTinuvin 123(Ciba社製)0.27重量%、熱安定剤としてHP1010(Coba社製)0.23重量%、およびレベリング向上剤としてTego 270(Degussa社製)0.03重量%を添加し、60℃の温度で30分間攪拌して完全に溶解させた後、バインダー樹脂としてエチレンビニルアセテート樹脂(ビニルアセテート含量が40%、Exxonmobile社製)20.3重量%を入れ、同一の温度で約2時間攪拌して完全に溶解させた。
【0071】
前記溶液を濾過して光変色樹脂組成物を収得した。前記で製造した光変色樹脂組成物をガラス板上に700μm厚さでコーティングして、他のガラス板を覆い、140℃、10MPaの条件で真空圧着して光変色ガラスを製造した。
【0072】
実施例4(ポリビニルブチラール樹脂の使用)
反応器に、グリコール系可塑剤であるS−2075(Solutai社製)9重量%、ブチルセロソルブ34重量%、トルエン34重量%、光変色染料であるPalatinate purple(James Robinson社製)0.11重量%、一般染料であるPapilion Blue(Eastwell社製)0.01重量%、UV吸収剤としてTinuvin 1130(Ciba社製)0.06重量%、光安定剤としてTinuvin 123(Ciba社製)0.32重量%、熱安定剤としてHP1010(Ciba社製)0.27重量%、およびレベリング向上剤としてTego 270(Degussa社製)0.03重量%を添加し、60℃の温度で30分攪拌して完全に溶解させた後、バインダー樹脂としてポリビニルブチラール樹脂22.2重量%を入れ、同一の温度で約2時間攪拌して完全に溶解させた。
【0073】
前記溶液を濾過して光変色樹脂組成物を収得した。前記で製造した光変色樹脂組成物をガラス板上に700μm厚さでコーティングして、他のガラス板を覆い、140℃、10MPaの条件で真空圧着して光変色ガラスを製造した。
【0074】
実施例5(アクリレート樹脂の使用)
バインダー樹脂としてポリビニルブチラール樹脂の代わりにアクリレート樹脂を用いたことを除いては、実施例4と同一に実施した。
【0075】
実験例3
実施例3〜5による光変色ガラスの耐候性は、促進耐候性試験機であるATLAS UV 2000を利用し、ASTM G154−99に従い、UVA 340 lampを利用して、0.77W/m/nmの光量で照射した。
【0076】
露出周期は次の通りである。
−8時間60(±3)℃ ブラックパネル温度(Black Panel Temperature)
4時間Condensation 50(±3)℃ ブラックパネル温度(Black Panel Temperature)
【0077】
前記過程を繰り返す過程中にサンプルを取り出し、変色時の透過率を測定した。フィルム透過率を100%に基準として365nm波長の紫外線(1.35mW/cm)を積層体に4分間照射し後、直ちにUV−Vis検出器を利用して、各々、着色状態における可視光領域の透過率を測定した。
【0078】
実験例3の結果を示す図5から分かるように、本発明に係るガラス積層体が、ポリビニルブチラール樹脂、エチレンビニルアセテート樹脂またはアクリレート樹脂をバインダー樹脂として用いて製造した光変色フィルムを含めば、優れた耐候性を提供することができるということが分かる。特にアクリレート樹脂を用いた場合が耐候性が顕著に良いことが分かる。
【0079】
実験例4
実施例2で製造した光変色フィルムは光変色染料を粘着層に導入しないスタンディングフィルム(free standing film)として製造されたものであり、実施例2で製造した光変色フィルムと、下記のような方法により光変色染料を粘着コーティング層に導入した光変色フィルムの耐候性促進実験を行い、その結果を図6に示す。耐候性促進実験は実験例3と同じ方法により実施した。
【0080】
<光変色染料を粘着コーティング層に導入した光変色フィルムの製造>
反応器に、コーティング液(LG化学社、製品名AT21PC:ポリオール、ジオール、およびジイソシアネートを含むポリウレタンモノマーコーティング液)97重量%を投入し、光変色染料であるPalatinate purple(James Robinson社製)2重量%を投入した後、TINUVIN−144(TINUVINTM、チバガイギー社製)1重量%を添加し、常温で3時間攪拌してコーティング組成物を製造した。前記で製造したコーティング組成物を300μm厚さのポリカーボネート(polycarbonates、PC)フィルム上にバーコーティングした後、130℃で1時間硬化して光変色性ポリウレタンコーティング膜を製造した。このコーティング膜上に他の300μm厚さのポリカーボネート(polycarbonates、PC)フィルムを140℃でラミネーションして光変色フィルムを製造した。
【0081】
図6に示すように、光変色フィルムをフリースタンディング(freestanding)フィルムとして形成する場合が光変色染料を粘着コーティング層に導入して製造する光変色フィルムより耐候性に優れることを確認することができる。
【0082】
実施例6
光変色フィルムとして実施例2のように製造した。前記光変色フィルムに、実施例1で用いたANP社のSR6070を用いてコーティングした後、100℃で30分間乾燥して、赤外線(IR)遮蔽フィルムがコーティングされた光変色フィルムを製造した。
【0083】
ガラス基板とガラス基板との間に、前記で製造した赤外線(IR)遮蔽フィルムがコーティングされた光変色フィルムを入れ、接合フィルムであるEVAフィルムを入れた後、140℃、10MPaの条件で真空圧着してガラス積層体を製造した。
【0084】
図3に示すように、IR遮蔽フィルムを直接入れた場合より、IR遮蔽効果は多少落ちるが、全体的に光変色効果およびIR遮蔽効果を示すことができる。
【符号の説明】
【0085】
400 ・・・積層体
401 ・・・第1ガラス
402 ・・・第1接合フィルム
403 ・・・光変色フィルム
404 ・・・第2接合フィルム
405 ・・・赤外線(IR)遮蔽フィルム
406 ・・・第3接合フィルム
407 ・・・第2ガラス
408 ・・・赤外線(IR)遮蔽コーティング層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1対の基材;および
前記1対の基材の間に備えられる、1つ以上の光変色フィルムと1つ以上の赤外線(IR)遮蔽フィルムとを含み、
前記1対の基材と接する前記光変色フィルムまたは前記赤外線(IR)遮蔽フィルムは接合フィルムによって前記基材と接合されることを特徴とする積層体。
【請求項2】
前記積層体は、前記外側基材、前記接合フィルム、前記光変色フィルム、前記接合フィルム、前記赤外線(IR)遮蔽フィルム、前記接合フィルム、前記内側基材の順に積層される構造を有することを特徴とする、請求項1に記載の積層体。
【請求項3】
前記積層体は、前記外側基材、前記接合フィルム、前記光変色フィルム、赤外線(IR)遮蔽コーティング層、前記接合フィルム、前記内側基材の順に積層される構造を有することを特徴とする、請求項1に記載の積層体。
【請求項4】
前記基材はガラスまたは高分子フィルムであることを特徴とする、請求項1に記載の積層体。
【請求項5】
前記光変色フィルムは、バインダー樹脂および光変色染料を含む光変色フィルム製造用組成物を含むことを特徴とする、請求項1に記載の積層体。
【請求項6】
光変色フィルム製造用組成物は架橋剤をさらに含むことを特徴とする、請求項5に記載の積層体。
【請求項7】
前記バインダー樹脂は、ポリビニルブチラール樹脂、エチレンビニルアセテート樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリウレタン樹脂およびポリアクリレート樹脂のうちから選択された1種以上を含むことを特徴とする、請求項5に記載の積層体。
【請求項8】
前記光変色染料は、スピロオキサジン(spirooxazine)、ベンゾピラン(benzopyran)、ナフトピラン(napthopyran)、クロメム(chromeme)およびアゾ化合物(azo compound)からなる群から選択された1種以上を含むことを特徴とする、請求項5に記載の積層体。
【請求項9】
前記光変色フィルム製造用組成物は、前記バインダー樹脂100重量部に対して前記光変色染料0.01〜2重量部を含むことを特徴とする、請求項5に記載の積層体。
【請求項10】
前記光変色フィルム製造用組成物は、前記バインダー樹脂100重量部に対し、0.01〜5重量部の重合開始剤、0.01〜5重量部の安定化剤、0.01〜5重量部の紫外線吸収剤、0.01〜5重量部の酸化防止剤、0.01〜5重量部の連鎖移動剤、0.01〜5重量部の赤外線吸収剤、0.01〜5重量部の消泡剤、0.01〜5重量部の帯電防止剤、0.01〜5重量部の離型剤、0.01〜1重量部のレベリング剤および0.0001〜0.5重量部の一般染料のうちから選択された1種以上をさらに含むことを特徴とする、請求項5に記載の積層体。
【請求項11】
前記光変色フィルムはフリースタンディング(freestanding)フィルムであることを特徴とする、請求項1に記載の積層体。
【請求項12】
前記赤外線(IR)遮蔽フィルムは、金属錯体系染料、フタロシアニン系染料、ナフタロシアニン系染料、分子内金属−錯体形態を有するシアニン系染料、およびジイモニウム系染料からなる群から選択された1種以上の赤外線吸収染料;または 柱石 (Tin)、アンチモン(Antimony)、白金(Pt)のうちから選択された1種以上の金属を含むことを特徴とする、請求項1に記載の積層体。
【請求項13】
前記接合フィルムは、ポリビニルブチラール樹脂、エチレンビニルアセテート樹脂、ポリエチレン樹脂およびポリウレタン樹脂のうちから選択された1種以上の樹脂を含むことを特徴とする、請求項1に記載の積層体。
【請求項14】
前記1対の基材のうちの1つは、前記積層体が設置される設置環境の外部に露出される外側基材であり、残りの1つは内部に位置する内側基材であり、
前記積層体は、前記外側基材、前記接合フィルム、前記光変色フィルム、前記赤外線(IR)遮蔽フィルム、前記接合フィルム、前記内側基材の順に積層される構造を有することを特徴とする、請求項1に記載の積層体。
【請求項15】
前記積層体が2つ以上の光変色フィルムまたは赤外線(IR)遮蔽フィルムを含み、前記光変色フィルムと赤外線(IR)遮蔽フィルムが交互に積層される構造を有することを特徴とする、請求項1に記載の積層体。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公表番号】特表2012−508131(P2012−508131A)
【公表日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−536256(P2011−536256)
【出願日】平成21年11月16日(2009.11.16)
【国際出願番号】PCT/KR2009/006730
【国際公開番号】WO2010/056082
【国際公開日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【出願人】(500239823)エルジー・ケム・リミテッド (1,221)
【Fターム(参考)】