説明

積層体

本発明は、電子実装用途における絶縁層、半導体装置用途における半導体ウェハ固定用接着性フィルムとして好適に用いられる積層体、それを用いた各種積層体および積層体の製造方法を提供することを目的とする。本発明は、基材層(A)および接着層(B)からなり、A層の片面または両面にB層が形成された積層体(I)であって、A層は、(A−1)特定の全芳香族ポリイミド(PIA−1)または(A−2)特定の全芳香族ポリアミド(PAA−2)からなるフィルムであり、B層は、(B−1)特定の全芳香族ポリイミド(PIB−1)、(B−2)特定の全芳香族ポリアミド(PAB−2)、または(B−3)全芳香族ポリイミド(PIB−3)および特定の全芳香族ポリアミド(PAB−3)からなる樹脂組成物(RCB−3)である積層体、それを用いた積層体および積層体の製造方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、接着性および耐熱性に優れた積層体に関する。さらに詳しくは、全芳香族ポリイミドまたは全芳香族ポリアミドからなる基材層に、接着層が形成された積層体に関する。本発明は該積層体を接着シートとして用いた半導体基板などの積層体の製造方法に関する。
【背景技術】
近年、電子機器の高機能化、高性能化、小型化が進んでおり、それに伴って、用いられる電子部品の更なる小型化、軽量化が求められてきている。そのため、半導体素子パッケージ、配線材料および配線部品についても、より高密度、高機能かつ高性能なものが求められるようになってきた。半導体パッケージ、COLパッケージ、LOCパッケージおよびMCM(MultiChip Module)等の高密度実装材料並びに多層FPCのプリント配線板材料として用いることのできる、耐熱性、電気信頼性、接着性に優れた材料が求められている。
特に、携帯電話等の小型電子機器用途として近年盛んに用いられるようになっている多層FPCでは、従来のエポキシ含浸プリプレグに代わる材料として、ポリイミド系、芳香族ポリアミド系の接着性を有する薄膜材料に市場の注目が集まりつつある「躍進するポリイミドの最新動向II」(住ベテクノリサーチ株式会社発行)および「最新ポリイミド−基礎と応用−」(株式会社エヌティーエス発行)参照)。例えば、可溶性の熱可塑性ポリイミドとエポキシ樹脂とのブレンド、シロキサン変性ポリイミドなどが挙げられる(特開2000−109645号公報および特開2003−292778号公報参照)。
しかし、近年電子部品の小型化への強い要請から、より厚さの薄いフィルムが要求され、厚みの減少にともない高い剛性が必要とされるようになってきた。さらに、近年、電子実装用途に使用されるハンダとして、環境への配慮から無鉛ハンダが用いられ、リフロー温度の高温化が進み、耐熱性と寸法安定性を有するフィルムの要求が高まっている。
また、半導体デバイス製造工程において用いられる接着材料も、半導体デバイスの小型化、薄型化などに伴い改良が要請されている。
シリコン、ガリウムヒ素などの半導体デバイスの製造工程は、大径の半導体ウェハ状態で素子形成等を行う前工程と、ウェハを素子小片(チップ)ごとに分離し、最終製品に仕上げる後工程とに分けられる。
前工程では、半導体チップの小型・薄型化方法として、例えば大径の半導体ウェハ状態での素子形成等を行った後に、バックグラインディング処理を施して、半導体ウェハの裏面を削ることでチップ全体の薄型化を図っている。半導体ウェハの裏面を削るには、半導体ウェハの表面を支持体に接着し固定する必要がある。
この際、半導体ウェハ表面と支持体を接着する方法として、ダミーウェハ(支持体)にワックスを加熱塗布し、半導体ウェハ表面と張り合わせる方法が提案されている。しかし、薄型化の後に、半導体ウェハを支持体に接着固定したまま金属蒸着、焼成等の各種処理を施す必要がある。ワックスを使用する方法は、ワックスの耐熱性に問題があり、ワックスで支持体に接着した状態の半導体ウェハの金属蒸着、焼成等を実施できないという欠点がある。
そこで、例えば400℃以上といった耐熱性を有する接着シートが望まれている。
また後工程では、まず、半導体ウェハはチップごとに切断分離(ダイシング)され、この後リードフレーム上へのチップのダイボンディング工程が続く。この間、半導体ウェハはあらかじめ接着シートに貼着された状態でダイシング、洗浄、乾燥が行なわれ、その後、接着シートの引き延ばし(エキスパンディング)、接着シートからのチップの引き剥がし(ピックアップ)の各工程が加えられる。
ダイシング工程から乾燥工程までは、接着シートには、チップに対して充分な接着力を維持することが求められる。ピックアップ時には、チップに接着成分が付着しない程度に良好な剥離性を有することが求められる。
これらの要求を満たすために、種々の接着シートが提案されている。例えば、(メタ)アクリル酸エステル共重合体、エポキシ樹脂、光重合性低分子化合物、熱活性型潜在性エポキシ樹脂硬化剤および光重合開始剤からなる組成物を用いて形成される粘熱接着層と、基材層とからなる粘接着テープ(特開平2−32181号公報参照)が提案されている。
また、剥離層が実質的に存在しない表面を有する支持フィルムと導電性接着剤とからなるダイシング用フィルム(特公平3−34853号公報参照)が提案されている。
半導体基板と保持基板の剥離方法として、水などを用いる方法が提案されている(例えば、特開2001−77304号公報、特開2002−237515号公報、特開2002−203821号公報および特開2002−192394号公報参照)。また、接着面に膨潤性粒子を付着させた後、水を用いた膨潤によって体積膨張を利用して剥離する方法(例えば、特開2002−270553号公報参照)が提案されている。ところがこれらの方法は、剥離に長時間を要するため、生産性が低く現実的でない。また、特に350℃以上の熱処理を要求される場合には、接着面が強化されてしまい、剥離することが不可能となるといった課題があった。
この様な、350℃以上の熱処理が行われる場合の剥離方法として、接着層に合成スメクタイト微粉末のような液体膨潤製無機粒子を添加し、液体膨潤を利用して剥離する方法や、有機保護層を溶媒などで膨潤させたり、溶解させたりするなどして剥離する方法(例えば特開2002−270553号公報および特開2002−343751号公報参照)が提案されている。しかし、膨潤性無機物や可溶性/膨潤性有機保護層は半導体製品の金属成分や熱分解物による汚染の懸念があり、より耐熱性の優れた接着材料を用いて、なおかつ短時間で剥離可能な効果的な剥離方法が求められていた。
また、電池容器として、耐熱性、耐腐食性と絶縁性を有し、金属と強固に接着可能であるフィルムが提案されている(特開2003−340960号公報および特開2002−56823号公報参照)。しかし、更なる耐熱性の向上が要求されている。
また、耐熱性、軽量小型化、化学的安定性といった観点から、金属を始めとする種々の材料と安定した接着性を有する耐熱性、化学的安定性、剛性に優れた薄膜材料が航空用途、自動車部品用途、食品用途といった各種分野において望まれている。
【発明の開示】
本発明の第1の目的は、耐熱性、剛性および他の素材との接着性に優れた積層体(I)を提供することにある。
本発明の第2の目的は、該積層体(I)の接着層(B)の表面に被接着層(C)が強固に接着された、耐熱性および剛性に優れた積層体(II)を提供することにある。
本発明の第3の目的は、該積層体(II)の基材層(A)の表面に有機保護層(D)および被処理物層(E)が形成された、積層体(III)を提供することにある。
また、本発明の第4の目的は、該積層体(III)の被処理物層(E)を処理し、有機保護層(D)および処理された層(E’)からなる積層体(V)を製造する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
本発明は、基材層(A)および接着層(B)からなり、A層の片面または両面にB層が形成された積層体(I)であって、
A層は、
(A−1)ガラス転移点が350℃以上の全芳香族ポリイミド(PIA−1)または
(A−2)ガラス転移点が350℃以上の全芳香族ポリアミド(PAA−2)、
からなるフィルムであり、
B層は、
(B−1)ガラス転移点が180℃以上350℃未満の全芳香族ポリイミド(PIB−1)、
(B−2)ガラス転移点が180℃以上350℃未満の全芳香族ポリアミド(PA−2)、または
(B−3)全芳香族ポリイミド(PIB−3)およびガラス転移点が180℃以上350℃未満の全芳香族ポリアミド(PAB−3)からなる樹脂組成物(RCB−3)よりなる、積層体である。
また本発明は、A層の片面にB層が形成された積層体であって、B層の上に被接着層(C)が形成された積層体(II)である。
また本発明は、基材層(A)、接着層(B)、被接着層(C)、有機保護層(D)および被処理物層(E)からなる積層体であって、A層の一方の面上にB層およびC層がこの順序に形成され、A層の他方の面上にD層およびE層がこの順序に形成された積層体(III)である。
さらに本発明は、積層体(III)から、D層および処理されたE層(E’)からなる積層体(V)を製造する方法であって、
(1)積層体(III)のE層の外表面を処理してE’層とした積層体(III’)を得る表面処理工程、
(2)積層体(III’)を350℃以上の温度に維持する熱処理工程、
(3)積層体(III’)から、C層を剥離し、B層、A層、D層およびE’層からなる積層体(IV)を得る第1剥離工程、並びに
(4)積層体(IV)をA層とD層との界面で剥離し、D層およびE’層からなる積層体(V)を得る第2剥離工程、
からなる前記製造方法である。
本明細書において、基材層(A)をA層、接着層(B)をB層、被接着層(C)をC層、有機保護層(D)をD層、被処理物層(E)をE層、処理されたE層(E’)をE’層と呼ぶことがある。
【発明の効果】
本発明の積層体(I)は、耐熱性、剛性、寸法安定性および他の素材との接着性に優れている。従って、実装材料などの電子材料、半導体製造の工程部材、電池容器、航空部品、自動車部品、食品のような様々な分野において接着シートとして好適に用いることができる。特に電子材料の分野においては、寸法安定性に優れた絶縁材料として好適に用いることができる。積層体(I)は、剛性に優れることから従来用いられている絶縁材料より薄くすることが可能であり、ハンドリング性に優れる。
本発明の積層体(II)は、耐熱性、寸法安定性に優れ、被接着層(C)との接着性に優れる。従って、被接着層(C)として、シリコン、42合金などの低い熱膨張係数の素材を用いても、被接着層(C)の剥離などが起こらない。
本発明の積層体(III)は、耐熱性、寸法安定性、接着性に優れ、半導体製造工程の中間材料として用いることができる。
本発明の積層体(V)の製造方法によれば、接着シートとして特定の接着層(B)を有する積層体(I)を用いるので、熱処理により、被接着層(C)と接着層(B)とを容易に剥離することが可能である。また、有機保護層(D)と基材層(A)との界面も容易に剥離することが可能である。従って、本発明方法によれば、350℃以上の高温での熱処理を行う薄葉化半導体部品を熱分解物などによる汚染を生じさせることなく、効率的に製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
以下、本発明について詳細を説明する。
<積層体(I)>
本発明の積層体(I)は、基材層(A)および基材層(A)の片面または両面に形成された接着層(B)から構成される。
A層は、(A−1)ガラス転移温度が350℃以上の全芳香族ポリイミド(PIA−1)または(A−2)ガラス転移温度が350℃以上の全芳香族ポリアミド(PAA−2)からなるフィルムである。
B層は、(B−1)ガラス転移点が180℃以上350℃未満の全芳香族ポリイミド(PIB−1)、(B−2)ガラス転移点が180℃以上350℃未満の全芳香族ポリアミド(PBB−2)または(B−3)全芳香族ポリイミド(PIB−3)およびガラス転移点が180℃以上350℃未満の全芳香族ポリアミド(PAB−3)からなる樹脂組成物(RCB−3)よりなる。
本発明の積層体(I)は、ヤング率が3GPaを超える直交する2方向が面内に存在することが好ましい。3GPa以下では、その剛性が不十分となり、各種用途における処理工程通過性に劣る場合がある。この傾向は積層体が薄くなるほど顕著となる。面内に存在する直交する2方向のヤング率が、より好ましくは5GPa以上、さらに好ましくは7GPa以上である。
積層体(I)の形状は、テープ状、ラベル状などあらゆる形状をとることができる。積層体(I)は、以下の構造を有することができる。
(1)A層がPIA−1からなり、B層がPIB−1からなる構造。
(2)A層がPIA−1からなり、B層がPAB−2からなる構造。
(3)A層がPIA−1からなり、B層がPIB−3およびPAB−3からなる樹脂組成物(RCB−3)からなる構造。
(4)A層がPAA−2からなり、B層がPIB−1からなる構造。
(5)A層がPAA−2からなり、B層がPAB−2からなる構造。
(6)A層がPAA−2からなり、B層がPIB−3およびPAB−3からなる樹脂組成物(RCB−3)からなる構造。
<A層>
A層は、(A−1)ガラス転移点が350℃以上の全芳香族ポリイミド(PIA−1)または(A−2)ガラス転移点が350℃以上の全芳香族ポリアミド(PAA−2)からなるフィルムである。
ガラス転移点が350℃未満の場合、耐熱性や寸法安定性が不十分となり、例えば、半導体製造工程の加熱処理や実装用途におけるはんだリフロー工程などの各工程で支障を生じる。ガラス転移点は、好ましくは355℃以上、さらに好ましくは355〜600℃である。ガラス転移点は動的粘弾性測定より得られた動的貯蔵弾性率E’、動的損失弾性率E”を用い算出される動的損失正接tanδの値から算出する。
A層は、ヤング率が10GPaを超える直交する2方向が面内に存在するフィルムであることが好ましい。ヤング率が10GPa以下の場合、十分な剛性が得られず、ハンドリング性に劣ることがある。その傾向は、A層の厚みが25μm以下となる場合、特に顕著となる。直交する2方向のヤング率は、さらに好ましくは、12GPa以上、特に好ましくは14GPa以上である。
A層は、線熱膨張係数が−12ppm/℃〜12ppm/℃であることが好ましい。A層の線熱膨張係数は、−10ppm/℃〜10ppm/℃であることがさらに好ましい。これより特に電子材料用途における寸法安定性に優れた絶縁材料として好適に用いることができる。
A層は、平均厚みが50μm以下であることが好ましい。50μmより厚い場合、基材厚みの増加に伴い積層体全体の厚みも増すため、各種用途における小型化、薄膜化の要求を満足しない場合がある。この様な要求から、A層の厚みは、30μm以下がより好ましく、さらに好ましくは20μm以下であり、15μm以下が特に好ましい。下限は特に限定するものではないが、フィルムの取扱性の観点から、実質的に0.1μm程度である。
<全芳香族ポリイミド(PIA−1)>
A層を構成する(A−1)ガラス転移点が350℃以上の全芳香族ポリイミド(PIA−1)は、芳香族テトラカルボン酸成分と芳香族ジアミン成分由来の構成単位を有する全芳香族ポリイミドである。
芳香族テトラカルボン酸成分としては、例えば、ピロメリット酸、1,2,3,4−ベンゼンテトラカルボン酸、2,3,5,6−ピリジンテトラカルボン酸、2,3,4,5−チオフェンテトラカルボン酸、2,2’,3,3’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸、2,3’,3,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸、2,2’,3,3’−ビフェニルテトラカルボン酸、2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸、3,3’,4,4’−p−テルフェニルテトラカルボン酸、2,2’,3,3’−p−テルフェニルテトラカルボン酸、2,3,3’,4’−p−テルフェニルテトラカルボン酸、1,2,4,5−ナフタレンテトラカルボン酸、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸、1,2,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸、2,3,6,7−アントラセンテトラカルボン酸、1,2,5,6−アントラセンテトラカルボン酸、1,2,6,7−フェナンスレンテトラカルボン酸、1,2,7,8−フェナンスレンテトラカルボン酸、1,2,9,10−フェナンスレンテトラカルボン酸、3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸、2,6−ジクロロナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸、2,7−ジクロロナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸、2,3,6,7−テトラクロロナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸、1,4,5,8−テトラクロロナフタレン−2,3,6,7−テトラカルボン酸、ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)エーテル、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル、ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)メタン、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)メタン、ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)スルホン、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン、1,1−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)エタン、1,1−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エタン、2,2−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン、2,6−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ピリジン、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ジメチルシラン等が挙げられる。また、これらの芳香族テトラカルボン酸成分は二種以上を同時に併用することもできる。
この中でも、好ましい芳香族テトラカルボン酸成分は、ピロメリット酸単独、またはピロメリット酸とそれと異なる上記の芳香族テトラカルボン酸との組合せが挙げられる。
より具体的には、全テトラカルボン酸成分に基づき、ピロメリット酸二無水物が50〜100モル%であることが好ましい。ピロメリット酸二無水物50モル%以上とすることで全芳香族ポリイミド中のイミド基濃度を高めることができ、接着性を良好なものとすることができる。好ましくはピロメリット酸二無水物が70〜100モル%であり、さらに好ましくは90〜100モル%である。ピロメリット酸二無水物単独で用いることが特に好ましい。
芳香族ジアミン成分としては、例えば1,4−フェニレンジアミン、1,3−フェニレンジアミン、1,4−ジアミノナフタレン、1,5−ジアミノナフタレン、1,8−ジアミノナフタレン、2,6−ジアミノナフタレン、2,7−ジアミノナフタレン、2,6−ジアミノアントラセン、2,7−ジアミノアントラセン、1,8−ジアミノアントラセン、2,4−ジアミノトルエン、2,5−ジアミノ(m−キシレン)、2,5−ジアミノピリジン、2,6−ジアミノピリジン、3,5−ジアミノピリジン、2,4−ジアミノトルエンベンジジン、3,3’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジクロロベンジジン、3,3’−ジメチルベンジジン、3,3’−ジメトキシベンジジン、2,2’−ジアミノベンゾフェノン、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、3,3’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,4’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、3,3’−ジアミノジフェニルスルフィド、3,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’−ジアミノジフェニルチオエーテル、4,4’−ジアミノ−3,3’,5,5’−テトラメチルジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノ−3,3’,5,5’−テトラエチルジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノ−3,3’,5,5’−テトラメチルジフェニルメタン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、2,6−ビス(3−アミノフェノキシ)ピリジン、1,4−ビス(3−アミノフェニルスルホニル)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェニルスルホニル)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノフェニルチオエーテル)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェニルチオエーテル)ベンゼン、4,4’−ビス(3−アミノフェノキシ)ジフェニルスルホン、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ジフェニルスルホン、ビス(4−アミノフェニル)アミン、ビス(4−アミノフェニル)−N−メチルアミン、ビス(4−アミノフェニル)−N−フェニルアミン、ビス(4−アミノフェニル)ホスフィンオキシド、1,1−ビス(3−アミノフェニル)エタン、1,1−ビス(4−アミノフェニル)エタン、2,2−ビス(3−アミノフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−アミノ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス「4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]メタン、ビス[3−メチル−4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]メタン、ビス[3−クロロ−4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]メタン、ビス[3,5−ジメチル−4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]メタン、1,1−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]エタン、1,1−ビス[3−メチル−4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]エタン、1,1−ビス[3−クロロ−4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]エタン、1,1−ビス[3,5−ジメチル−4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]エタン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[3−メチル−4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[3−クロロ−4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[3,5−ジメチル−4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ブタン、2,2−ビス[3−メチル−4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ブタン、2,2−ビス[3,5−ジメチル−4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ブタン、2,2−ビス[3,5−ジブロモ−4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ブタン、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2,2−ビス(4−アミノフェニル)プロパン、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2,2−ビス[3−メチル−4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン等およびそれらのハロゲン原子あるいはアルキル基による芳香核置換体が挙げられる。上記の芳香族ジアミン成分は二種以上を同時に併用することもできる。
また、好ましい芳香族ジアミン成分としては、1,4−フェニレンジアミン、1,3−フェニレンジアミン、3,4’−ジアミノジフェニルエーテルおよび1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテルが例示される。芳香族ジアミン成分は、全ジアミン成分に基づき、1,4−フェニレンジアミンが40〜100モル%であることがさらに好ましい。1,4−フェニレンジアミン以外の他の芳香族ジアミン成分としては、1,3−フェニレンジアミン、3,4’−ジアミノジフェニルエーテルおよび4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼンが好ましい。これらの中でも、3,4’−ジアミノジフェニルエーテルが特に好ましい。
従って、好ましい全芳香族ポリイミド(PIA−1)として、下記式(I)

で表される構成単位からなる全芳香族ポリイミドが挙げられる。
上記式(I)中のArは非反応性の置換基を含んでいてもよい1,4−フェニレン基である。
非反応性の置換基とは、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、シクロヘキシル基などのアルキル基、フェニル基、ナフチル基などの芳香族基、クロロ基、フルオロ基、ブロモ基などのハロゲン基、メトキシ基、エトキシ基、フェノキシ基などのアルコキシル基、ニトロ基等が例示される。
従ってAr1として、2−クロロ−1,4−フェニレン基、2−ブロモ−1,4−フェニレン基、2−メチル−1,4−フェニレン基、2−エチル−1,4−フェニレン基、2−シクロヘキシル−1,4−フェニレン基、2−フェニル−1,4−フェニレン基、2−ニトロ−1,4−フェニレン基、2−メトキシ−1,4−フェニレン基、2,5−ジクロロ−1,4−フェニレン基、2,6−ジクロロ−1,4−フェニレン基、2,5−ジブロモ−1,4−フェニレン基、2,6−ジブロモ−1,4−フェニレン基、2−クロロ−5−ブロモ−1,4−フェニレン基、2−クロロ−5−フルオロ−1,4−フェニレン基、2,5−ジメチル−1,4−フェニレン基、2,6−ジメチル−1,4−フェニレン基、2,5−ジシクロヘキシル−1,4−フェニレン基、2,5−ジフェニル−1,4−フェニレン基、2,5−ジニトロ−1,4−フェニレン基、2,5−ジメトキシ−1,4−フェニレン基、2,3,5−トリクロロ−1,4−フェニレン基、2,3,5−トリフルオロ−1,4−フェニレン基、2,3,5−トリメチル−1,4−フェニレン基、2,3,5,6−テトラクロロ−1,4−フェニレン基、2,3,5,6−テトラフルオロ−1,4−フェニレン基、2,3,5,6−テトラブロモ−1,4−フェニレン基、2,3,5,6−テトラメチル−1,4−フェニレン基、2,3,5,6−テトラエチル−1,4−フェニレン基等が挙げられる。この中でも、1,4−フェニレン基が特に好ましい。
また、好ましい全芳香族ポリイミド(PIA−1)として、40モル%以上100モル%未満の上記式(I)で表わされる構成単位および0モル%を超え60モル%以下の下記式(IV)

で表わされる構成単位からなる全芳香族ポリイミドが挙げられる。
上記式(IV)中のAr4aおよびAr4bはそれぞれ独立に、非反応性の置換基を含んでいてもよい炭素数6〜20の芳香族基である。
非反応性の置換基として、上記式(I)中のArにおいて説明されている非反応性の置換基と同じものを例示できる。炭素数6〜20の芳香族基として、フェニレン基、ナフタレンジイル基等が挙げられる。
従ってAr4aおよびAr4bとして、1,4−フェニレン基、2−クロロ−1,4−フェニレン基、2−ブロモ−1,4−フェニレン基、2−メチル−1,4−フェニレン基、2−エチル−1,4−フェニレン基、2−シクロヘキシル−1,4−フェニレン基、2−フェニル−1,4−フェニレン基、2−ニトロ−1,4−フェニレン基、2−メトキシ−1,4−フェニレン基、2,5−ジクロロ−1,4−フェニレン基、2,6−ジクロロ−1,4−フェニレン基、2,5−ジブロモ−1,4−フェニレン基、2,6−ジブロモ−1,4−フェニレン基、2−クロロ−5−ブロモ−1,4−フェニレン基、2−クロロ−5−フルオロ−1,4−フェニレン基、2,5−ジメチル−1,4−フェニレン基、2,6−ジメチル−1,4−フェニレン基、2,5−ジシクロヘキシル−1,4−フェニレン基、2,5−ジフェニル−1,4−フェニレン基、2,5−ジニトロ−1,4−フェニレン基、2,5−ジメトキシ−1,4−フェニレン基、2,3,5−トリクロロ−1,4−フェニレン基、2,3,5−トリフルオロ−1,4−フェニレン基、2,3,5−トリメチル−1,4−フェニレン基、2,3,5,6−テトラクロロ−1,4−フェニレン基、2,3,5,6−テトラフルオロ−1,4−フェニレン基、2,3,5,6−テトラブロモ−1,4−フェニレン基、2,3,5,6−テトラメチル−1,4−フェニレン基、2,3,5,6−テトラエチル−1,4−フェニレン基、1,3−フェニレン基、5−クロロ−1,3−フェニレン基、5−ブロモ−1,3−フェニレン基、5−メチル−1,3−フェニレン基、5−エチル−1,3−フェニレン基、5−シクロヘキシル−1,3−フェニレン基、5−フェニル−1,3−フェニレン基、5−ニトロ−1,3−フェニレン基、5−メトキシ−1,3−フェニレン基、2,5−ジクロロ−1,3−フェニレン基、2,5−ジブロモ−1,3−フェニレン基、2,5−ジブロモ−1,3−フェニレン基、2−クロロ−5−ブロモ−1,3−フェニレン基、2−クロロ−5−フルオロ−1,3−フェニレン基、2,5−ジメチル−1,3−フェニレン基、2,5−ジメチル−1,3−フェニレン基、2,5−ジシクロヘキシル−1,3−フェニレン基、2,5−ジフェニル−1,3−フェニレン基、2,5−ジニトロ−1,3−フェニレン基、2,5−ジメトキシ−1,3−フェニレン基、2,4,6−トリクロロ−1,3−フェニレン基、2,4,6−トリフルオロ−1,3−フェニレン基、2,4,6−トリメチル−1,3−フェニレン基、1,6−ビフェニレン基、2,6−ナフチレン基等が挙げられる。この中でも1,4−フェニレン基、1,3−フェニレン基が好ましい。
また、上記式(IV)中のnは1または2である。nが2である場合、実質的にAr4aが式(VI)中に2個存在することになるが、この2つのAr4aは、それぞれ独立に異なる構造であっても、同じ構造であっても構わない。特に好ましくはnが1である。
<全芳香族ポリイミドフィルムの製造>
全芳香族ポリイミド(PIA−1)からなるフィルムは、以下の方法により製造することができる。すなわち、原料の芳香族テトラカルボン酸成分および芳香族ジアミン成分を有機極性溶媒中にて重合せしめて、前駆体であるポリアミック酸またはポリアミック酸誘導体を含有する溶液を製造する。次いで、該溶液を支持体などにキャストし、乾燥し、熱処理してイミド化せしめることにより製造することができる。
原料の芳香族テトラカルボン酸成分としては、芳香族テトラカルボン酸二無水物が挙げられる。芳香族テトラカルボン酸成分の一部若しくは全部がジカルボン酸ハロゲン化物ジカルボン酸アルキルエステル誘導体であっても構わない。芳香族テトラカルボン酸二無水物を用いることが好ましい。
原料の芳香族ジアミン成分としては、芳香族ジアミン、芳香族ジアミンのアミド酸形成性誘導体が挙げられる。芳香族ジアミン成分のアミノ基の一部若しくは全てがトリアルキルシリル化されていてもよい。また酢酸の如く脂肪族酸によりアミド化されていても良い。この中でも、芳香族ジアミンを用いることが好ましい。
有機極性溶媒としては、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルアセトアミドおよびジメチルイミダゾリジノン等が挙げられる。重合温度は、−30℃〜120℃の範囲が好ましい。乾燥は、80〜400℃の範囲が好ましい。熱処理は250〜600℃の範囲が好ましい。
また、ジシクロヘキシルカルボジイミドや無水酢酸のような脂肪族酸無水物と、ピリジンの如く有機窒素化合物とを組合せ、化学的に脱水環化反応せしめて、膨潤ゲルフィルムを得て、該ゲルフィルムを任意に延伸した後、定長乾燥・熱処理を施し製造することができる(特開2002−179810号公報)。特にこの方法は、その延伸条件により任意に線熱膨張係数やヤング率を制御することが可能であり、このような用途において、特に好ましい方法といえる。
<全芳香族ポリアミド(PAA−2)>
A層を構成する(A−2)ガラス転移点が350℃以上の全芳香族ポリアミド(PAA−2)は、芳香族ジカルボン酸成分と芳香族ジアミン成分由来の構成単位を有する全芳香族ポリアミドである。
芳香族ジカルボン酸成分としては、例えばテレフタル酸、イソフタル酸、1,4−ジカルボキシナフタレン、1,5−ジカルボキシナフタレン、1,8−ジカルボキシナフタレン、2,6−ジカルボキシナフタレン、2,7−ジカルボキシナフタレン、2,6−ジカルボキシアントラセン、2,7−ジカルボキシアントラセン、1,8−ジカルボキシアントラセン、2,4−ジカルボキシトルエン、2,5−ジカルボキシ(m−キシレン)、3,3’−ジカルボキシビフェニル、2,2’−ジカルボキシベンゾフェノン、4,4’−ジカルボキシベンゾフェノン、3,3’−ジカルボキシジフェニルエーテル、4,4’−ジカルボキシジフェニルエーテル、3,4’−ジカルボキシジフェニルエーテル、3,3’−ジカルボキシジフェニルメタン、4,4’−ジカルボキシジフェニルメタン、3,4’−ジカルボキシジフェニルメタン、3,4’−ジカルボキシジフェニルスルホン、4,4’−ジカルボキシジフェニルスルホン、3,3’−ジカルボキシジフェニルスルフィド、3,4’−ジカルボキシジフェニルスルフィド、4,4’−ジカルボキシジフェニルスルフィド、4,4’−ジカルボキシジフェニルチオエーテル、4,4’−ジカルボキシ−3,3’,5,5’−テトラメチルジフェニルエーテル、4,4’−ジカルボキシ−3,3’,5,5’−テトラエチルジフェニルエーテル、4,4’−ジカルボキシ−3,3’,5,5’−テトラメチルジフェニルメタン、1,3−ビス(3−カルボキシフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−カルボキシフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(3−カルボキシフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−カルボキシフェノキシ)ベンゼン、2,6−ビス(3−カルボキシフェノキシ)ピリジン、1,4−ビス(3−カルボキシフェニルスルホニル)ベンゼン、1,4−ビス(4−カルボキシフェニルスルホニル)ベンゼン、1,4−ビス(3−カルボキシフェニルチオエーテル)ベンゼン、1,4−ビス(4−カルボキシフェニルチオエーテル)ベンゼン、4,4’−ビス(3−カルボキシフェノキシ)ジフェニルスルホン、4,4’−ビス(4−カルボキシフェノキシ)ジフェニルスルホン、ビス(4−カルボキシフェニル)アミン、ビス(4−カルボキシフェニル)−N−メチルアミン、ビス(4−カルボキシフェニル)−N−フェニルアミン、ビス(4−カルボキシフェニル)ホスフィンオキシド、1,1−ビス(3−カルボキシフェニル)エタン、1,1−ビス(4−カルボキシフェニル)エタン、2,2−ビス(3−カルボキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−カルボキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−カルボキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン、4,4’−ビス(4−カルボキシフェノキシ)ビフェニル、ビス[4−(3−カルボキシフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4−(4−カルボキシフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4−(4−カルボキシフェノキシ)フェニル]エーテル、ビス[4−(4−カルボキシフェノキシ)フェニル]メタン、ビス[3−メチル−4−(4−カルボキシフェノキシ)フェニル]メタン、ビス[3−クロロ−4−(4−カルボキシフェノキシ)フェニル]メタン、ビス[3,5−ジメチル−4−(4−カルボキシフェノキシ)フェニル]メタン、1,1−ビス[4−(4−カルボキシフェノキシ)フェニル]エタン、1,1−ビス[3−メチル−4−(4−カルボキシフェノキシ)フェニル]エタン、1,1−ビス[3−クロロ−4−(4−カルボキシフェノキシ)フェニル]エタン、1,1−ビス[3,5−ジメチル−4−(4−カルボキシフェノキシ)フェニル]エタン、2,2−ビス[4−(4−カルボキシフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[3−メチル−4−(4−カルボキシフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[3−クロロ−4−(4−カルボキシフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[3,5−ジメチル−4−(4−カルボキシフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−カルボキシフェノキシ)フェニル]ブタン、2,2−ビス[3−メチル−4−(4−カルボキシフェノキシ)フェニル]ブタン、2,2−ビス[3,5−ジメチル−4−(4−カルボキシフェノキシ)フェニル]ブタン、2,2−ビス[3,5−ジブロモ−4−(4−カルボキシフェノキシ)フェニル]ブタン、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2,2−ビス(4−カルボキシフェニル)プロパン、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2,2−ビス[3−メチル−4−(4−カルボキシフェノキシ)フェニル]プロパン等およびそれらのハロゲン原子あるいはアルキル基による芳香核置換体が挙げられる。上記の芳香族ジカルボン酸成分は二種以上を同時に併用することもできる。
好ましい芳香族ジカルボン酸成分は、テレフタル酸、イソフタル酸である。これらの中でも、力学特性と耐熱性の観点からテレフタル酸が特に好ましい。
芳香族ジアミン成分としては、1,4−フェニレンジアミン、1,3−フェニレンジアミン、1,4−ジアミノナフタレン、1,5−ジアミノナフタレン、1,8−ジアミノナフタレン、2,6−ジアミノナフタレン、2,7−ジアミノナフタレン、2,6−ジアミノアントラセン、2,7−ジアミノアントラセン、1,8−ジアミノアントラセン、2,4−ジアミノトルエン、2,5−ジアミノ(m−キシレン)、2,5−ジアミノピリジン、2,6−ジアミノピリジン、3,5−ジアミノピリジン、2,4−ジアミノトルエンベンジジン、3,3’−ジアミノビフェニル、2,2’−ジアミノベンゾフェノン、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、3,3’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,4’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、3,3’−ジアミノジフェニルスルフィド、3,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’−ジアミノジフェニルチオエーテル、4,4’−ジアミノ−3,3’,5,5’−テトラメチルジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノ−3,3’,5,5’−テトラエチルジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノ−3,3’,5,5’−テトラメチルジフェニルメタン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、2,6−ビス(3−アミノフェノキシ)ピリジン、1,4−ビス(3−アミノフェニルスルホニル)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェニルスルホニル)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノフェニルチオエーテル)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェニルチオエーテル)ベンゼン、4,4’−ビス(3−アミノフェノキシ)ジフェニルスルホン、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ジフェニルスルホン、ビス(4−アミノフェニル)アミン、ビス(4−アミノフェニル)−N−メチルアミン、ビス(4−アミノフェニル)−N−フェニルアミン、ビス(4−アミノフェニル)ホスフィンオキシド、1,1−ビス(3−アミノフェニル)エタン、1,1−ビス(4−アミノフェニル)エタン、2,2−ビス(3−アミノフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−アミノ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]メタン、ビス[3−メチル−4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]メタン、ビス[3−クロロ−4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]メタン、ビス[3,5−ジメチル−4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]メタン、1,1−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]エタン、1,1−ビス[3−メチル−4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]エタン、1,1−ビス[3−クロロ−4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]エタン、1,1−ビス[3,5−ジメチル−4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]エタン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[3−メチル−4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[3−クロロ−4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[3,5−ジメチル−4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ブタン、2,2−ビス[3−メチル−4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ブタン、2,2−ビス[3,5−ジメチル−4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ブタン、2,2−ビス[3,5−ジブロモ−4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ブタン、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2,2−ビス(4−アミノフェニル)プロパン、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2,2−ビス[3−メチル−4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン等およびそれらのハロゲン原子あるいはアルキル基による芳香核置換体が挙げられる。上記の芳香族ジアミン成分は二種以上を同時に併用することもできる。
好ましい芳香族ジアミン成分は、1,4−フェニレンジアミン、1,3−フェニレンジアミン、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルエーテルおよび1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼンである。これらの中でも、機械特性と耐熱性の観点から1,4−フェニレンジアミンが特に好ましい。
全芳香族ポリアミド(PAA−2)は、具体的には下記式(V)

で表される構成単位からなる全芳香族ポリアミドが好ましい。
上記式(V)中のAr5aおよびAr5bは、それぞれ独立に非反応性の置換基を有していてもよい炭素数6〜20の芳香族基である。
炭素数6〜20の芳香族基として、フェニレン基、ナフタレンジイル基、アントラセンジイル基、トルエンジイル基等が挙げられる。
非反応性の置換基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、シクロヘキシル基などのアルキル基、フェニル基、ナフチル基などの芳香族基、クロロ基、フルオロ基、ブロモ基などのハロゲン基、ニトロ基、メトキシ基、エトキシ基、フェノキシ基等が例示される。
従って、全芳香族ポリアミド(PAA−2)は、下記式(II)

で表わされる構成単位からなる全芳香族ポリアミドが特に好ましい。
<全芳香族ポリアミドフィルムの製造>
全芳香族ポリアミド(PAA−2)は、以下の方法により製造することができる。すなわち、前述の芳香族ジカルボン酸成分のクロリドと芳香族ジアミン成分とを、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミドのような有機極性溶媒中で反応せしめ製造することができる。
また、同様の原料をテトラヒドロフランなどの有機溶媒と、水などの貧溶媒を用いて界面重合して製造することができる。この際、界面重合において水酸化ナトリウム水溶液のごとくアルカリを重合促進剤として用いてもよい。
フィルムは、得られた全芳香族ポリアミド溶液を用いて、湿式製膜、乾式製膜により製造することができる。重合後の全芳香族ポリアミド溶液をそのまま用いてもよい。
また一旦、全芳香族ポリアミドを単離後、溶媒に再溶解したものを用いてもよい。溶媒としては、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド等の有機極性溶媒が好ましい。溶解性の低い全芳香族ポリアミドの場合、溶媒として、濃硫酸、濃硝酸、ポリりん酸等の強酸性を用いることが好ましい。
全芳香族ポリアミド溶液には、所望により、溶解助剤として無機塩例えば塩化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化リチウム、硝酸リチウムなどを添加してもよい。溶液中の全芳香族ポリアミド濃度は、好ましくは1〜60重量%、さらに好ましくは3〜40重量%である。
また、積層体(I)を構成するA層の表面は、B層との安定した接着力を得るなどの目的で、コロナ処理、プラズマ処理、サンドブラスト処理等の各種表面処理並びに硝酸などの酸処理、水酸化カリウムのようなアルカリ処理、シランカップリング剤処理など各種表面改質剤による処理を行っても良い。
<接着層(B)>
本発明の積層体(I)を構成する接着層(B)は、上記のA層の片面または両面に形成される。両面にB層を形成する場合、それぞれのB層は、その目的、被接着層(C)に応じて、以下に示す範囲内で適宜、独立に厚み、成分などを設定することが可能である。したがって、両面にB層を構成する場合、厚み方向の積層構造および構成は、対称積層構造であっても、非対称積層構造であってもよい。
B層は、(B−1)ガラス転移点が180℃以上350℃未満の全芳香族ポリイミド(PIB−1)、(B−2)ガラス転移点が180℃以上350℃未満の全芳香族ポリアミド(PAB−2)または(B−3)全芳香族ポリイミド(PIB−3)およびガラス転移点が180℃以上350℃未満の全芳香族ポリアミド(PAB−3)からなる樹脂組成物(RCB−3)よりなる。
B層が、PIB−1またはPAB−2からなる場合、ガラス転移点が180℃未満であると耐熱性が不十分となり、350℃以上であると被接着層(C)との接着に高温を要したり、接着性が劣る場合がある。ガラス転移点は、好ましくは200〜345℃の範囲であり、さらに好ましくは220〜340℃の範囲である。
B層の厚さは0.1μm〜50μmの範囲であることが好ましい。0.1μm未満の場合、被接着層(C)との接着精度がとれず、圧着装置の接触面の平面性・平滑性の精度が要求され、平面性・平滑性の制御が不十分となり、接着斑が発生する場合が多くなる。また50μmより大きい場合、無機材料からなる被接着層(C)と接着せしめる際に熱が伝わりにくく、温度を伝えるまでに時間がかかり生産性が低下する。また、積層体全体の厚みが厚くなり、各種用途における小型化、薄膜化の要求に満足しない場合がある。
従って、先述のA層の好ましい厚みを考慮し、積層体(I)全体の厚さは実質的に1〜150μmの範囲であることが好ましい。より好ましくは1〜100μmの範囲であり、さらに好ましくは1〜50μmの範囲であり、2〜25μmの範囲が特に好ましい。
またB層は、積層体の形状や被接着層(C)の形状、積層体の使用目的・方法に応じて任意の積層形態を取ることができる。具体的には、B層自体が緻密な塗膜として形成されていてもよい。また、接着力を制御する目的で例えば、ガラス、カーボン、酸化チタン、タルク、発泡性粒子、チタン酸バリウム、など無機塩類、金属、ガラスなどの粒状物、短繊維状物、ウィスカーなどを本来の特性を損なわない範囲で添加しても構わない。例えば、40vol%以下の範囲で加えても構わない。
またB層は、その接着精度を高めたり、接着力を制御するため、多孔質であっても構わない。多孔質である場合、多孔としては連続多孔でも独立多孔でもよく、空隙率が例えば80%までが好適に用いることができる。多孔質のB層の製造方法の例としては、例えばPCT/JP03/11729に開示される多孔質の全芳香族ポリアミドの製造法を好適に用いることができる。
さらに、B層は必ずしもA層の全面に存在する必要はなく、積層体の形状や被接着層(C)の形状、積層体の使用目的・方法に応じて任意の積層形態を取ることができる。例えば、テープ状の積層体の中央部分のみB層を有していたり、両端部のみB層を有していたり、格子状にB層が存在したりしてもよい。ディスク状の形態の積層体の外周部、中央部または、放射状に部分的にB層を有していたりという形態をとることができる。特に限定するものではないが、例えば、A層の接着剤存在面の面積に対して、10%以上の面積に接着層が存在していれば、大抵の場合好適に適用できる。
B層として用いられる全芳香族ポリイミド(PIB−1)および全芳香族ポリアミド(PAB−2)の構成成分としては基材層(A)に用いられるものと同じ構成成分のものが例示される。ただし、接着性という観点から上記の如くガラス転移点を満足する必要があり、実質的に好ましい全芳香族ポリイミドおよび全芳香族ポリアミドは、構成成分の組合せや組成比の点などで異なってくる。
<全芳香族ポリイミド(PIB−1)>
B層を構成する(B−1)ガラス転移点が180℃以上350℃未満の全芳香族ポリイミド(PIB−1)は、芳香族テトラカルボン酸成分および芳香族ジアミン成分由来の構成単位を有する全芳香族ポリイミドである。
芳香族テトラカルボン酸成分は、前述の全芳香族ポリイミド(PIA−1)と同じものを例示できる。
好ましい芳香族テトラカルボン酸成分としては、化学的安定性、耐熱性の観点から、ピロメリット酸単独、あるいはピロメリット酸とそれと異なる上記の芳香族テトラカルボン酸との組合せからなるものが例示される。より具体的には、全テトラカルボン酸成分に基づき、ピロメリット酸二無水物が50〜100モル%であることが好ましい。ピロメリット酸二無水物50モル%以上とすることで、全芳香族ポリイミド中のイミド基濃度を高めることができ、接着性を良好なものとすることができる。好ましくはピロメリット酸二無水物が70〜100モル%であり、さらに好ましくは90〜100モル%であり、ピロメリット酸二無水物単独で用いることが特に好ましい。
芳香族ジアミン成分は、前述の全芳香族ポリイミド(PIA−1)と同じものを例示できる。
好ましい芳香族ジアミン成分としては、1,4−フェニレンジアミン、1,3−フェニレンジアミン、3,4’−ジアミノジフェニルエーテルおよび1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテルが例示される。より好ましくは主として、少なくとも3,4’−ジアミノジフェニルエーテルおよび1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテルが例示される。
特に好ましい芳香族ジアミン成分としては、全ジアミン成分の70〜100モル%が、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼンおよび4,4’−ジアミノジフェニルエーテルからなる群から選ばれる少なくとも一種であることが好ましい。これら以外の他の芳香族ジアミン成分としては、1,4−フェニレンジアミン、1,3−フェニレンジアミンが好ましい。さらに、これらの中でも3,4’−ジアミノジフェニルエーテルおよびそれ以外の他の芳香族ジアミン成分との併用が好ましい。3,4’−ジアミノジフェニルエーテル単独で用いることが特に好ましい。
従って、全芳香族ポリイミド(PIB−1)として、式(IV)

で表される構成単位からなる全芳香族ポリイミドが挙げられる。
上記式(IV)中のAr4aおよびAr4bはそれぞれ独立に、非反応性の置換基を含んでいてもよい炭素数6〜20の芳香族基である。nは1または2である。
炭素数6〜20の芳香族基として、フェニレン基、ナフタレンジイル基等が挙げられる。
非反応性の置換基として、メチル基、エチル基、プロピル基、シクロヘキシル基などのアルキル基、フェニル基、ナフチル基などの芳香族基、クロロ基、フルオロ基、ブロモ基などのハロゲン基、メトキシ基、エトキシ基、フェノキシ基などのアルコキシル基、ニトロ基等が例示される。
また、70モル%以上100モル%未満の上記式(IV)で表わされる構成単位および0モル%を超え30モル%以下の式(I)

で表される構成単位からなる全芳香族ポリイミドが挙げられる。
式(I)中のArは非反応性の置換基を含んでもよい1,4−フェニレン基である。非反応性の置換基として、メチル基、エチル基、プロピル基、シクロヘキシル基などのアルキル基、フェニル基、ナフチル基などの芳香族基、クロロ基、フルオロ基、ブロモ基などのハロゲン基、メトキシ基、エトキシ基、フェノキシ基などのアルコキシル基、ニトロ基等が例示される。
<全芳香族ポリイミド(PIB−1)からなるB層の形成>
B層は、全芳香族ポリイミドの前駆体であるポリアミック酸またはポリアミック酸誘導体の有機極性溶媒溶液を、A層上にキャスト(流延)し、乾燥せしめることにより形成することができる。乾燥と共に加熱し熱イミド化せしめてもよい。このとき2種以上のポリアミック酸またはポリアミック酸誘導体を用いて、2種以上のポリイミドの相溶ブレンドからなる層を形成させても良い。
該溶液中に適宜イミド化助剤として、無水酢酸の如く脱水剤やピリジンの如く有機塩基触媒を添加して用いることもできる。
有機極性溶媒として、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド等が好ましい。
キャストの方法としては、ダイ押し出しによる方法、アプリケーターを用いた方法、コーターを用いた方法などが挙げられる。
キャストする際の該溶液の温度については特に制限がなく、該溶液の粘度が30〜20,000Poiseの間となるように選択するのが好ましい。より好ましくは、50〜2,000Poiseが例示される。
キャストした後、乾燥により溶媒を飛散させる。乾燥は、熱風加熱、真空加熱、赤外線加熱、マイクロ波加熱による乾燥が挙げられるが、熱風による加熱乾燥が好ましい。この時の乾燥温度は、30℃〜650℃であり、より好ましくは40℃〜600℃であり、さらに好ましくは70℃〜550℃である。
また他の方法として、予め前述のA層と同様の方法で製造された全芳香族ポリイミドフィルムを熱ロール、熱プレス機などによりラミネートする方法が挙げられる。
<全芳香族ポリアミド(PAB−2)>
B層を構成する(B−2)ガラス転移点が180℃以上350℃未満の全芳香族ポリアミド(PAB−2)は、芳香族ジカルボン酸成分および芳香族ジアミン成分由来の全芳香族ポリアミドである。
芳香族ジカルボン酸成分として、テレフタル酸、イソフタル酸が例示される。これらの中でも、機械特性と耐熱性の観点からイソフタル酸が特に好ましい。
芳香族ジアミン成分としては、1,4−フェニレンジアミン、1,3−フェニレンジアミン、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルエーテルおよび1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼンが例示される。さらに好ましくは、機械特性と耐熱性の観点から1,3−フェニレンジアミン、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルエーテルおよび1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼンである。この中でも1,3−フェニレンジアミン、3,4’−ジアミノジフェニルエーテルが特に好ましい。
従って、特に好ましくは全芳香族ポリアミド(PAB−2)として、テレフタル酸および/またはイソフタル酸からなる芳香族ジカルボン酸成分と、1,4−フェニレンジアミン、1,3−フェニレンジアミン、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルエーテルおよび1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼンからなる群より選ばれる少なくとも一種の芳香族ジアミン成分に由来する全芳香族ポリアミドが例示される。
さらに具体的には式(V)

で表される構成単位からなる全芳香族ポリアミドが例示される。
式(V)中、Ar5aおよびAr5bはそれぞれ、独立に非反応性の置換基を有していてもよい炭素数6〜20の芳香族基である。
炭素数6〜20の芳香族基として、フェニレン基、ナフタレンジイル基、アントラセンジイル基、トルエンジイル基等が挙げられる。
非反応性の置換基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、シクロヘキシル基などのアルキル基、フェニル基、ナフチル基などの芳香族基、クロロ基、フルオロ基、ブロモ基などのハロゲン基、ニトロ基、メトキシ基、エトキシ基、フェノキシ基等が例示される。
好ましい全芳香族ポリアミドとしては、下記式(III)

で表わされる全芳香族ポリアミドが挙げられる。
また下記式(VI)

で表わされる全芳香族ポリアミドが挙げられる。
上記式(VI)中のAr6aおよびAr6bはそれぞれ独立に非反応性の置換基を含んでいてもよい炭素数6〜20の芳香族基である。
炭素数6〜20の芳香族基として、フェニレン基、ナフタレンジイル基、アントラセンジイル基、トルエンジイル基等が挙げられる。フェニレン基、特に、1,4−フェニレン基、1,3−フェニレン基が好ましい。
非反応性の置換基として、メチル基、エチル基、プロピル基、シクロヘキシル基などのアルキル基、フェニル基、ナフチル基などの芳香族基、クロロ基、フルオロ基、ブロモ基などのハロゲン基、メトキシ基、エトキシ基、フェノキシ基などのアルコキシル基、ニトロ基等が例示される。
nは1または2である。nが2である場合、実質的にAr6aが式(VI)中に2個存在することになるが、この2つのAr6aは、それぞれ独立に異なる構造であっても、同じ構造であっても構わない。特に好ましくはnが1である。
また、式(III)で表わされる繰り返し単位および式(VI)で表わされる繰り返し単位からなる全芳香族ポリアミドが挙げられる。全繰り返し単位中、式(III)で表わされる繰り返し単位の割合は10〜90モル%、式(VI)で表わされる繰り返し単位は90〜10モル%が好ましい。
<全芳香族ポリアミドからなるB層の形成>
全芳香族ポリアミド(PAB−2)は、以下の方法により製造することができる。すなわち、前述の芳香族ジカルボン酸成分のクロリドと芳香族ジアミン成分とを、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミドのような有機極性溶媒中で反応せしめ製造することができる。
また、同様の原料をテトラヒドロフランなどの有機溶媒と、水などの貧溶媒を用いて界面重合して製造することができる。この際、界面重合において水酸化ナトリウム水溶液のごとくアルカリを重合促進剤として用いてもよい。
B層の形成は、得られた全芳香族ポリアミド溶液をA層上にキャスト(流延)し、乾燥せしめることにより形成することができる。重合後の全芳香族ポリアミド溶液をそのまま用いてもよい。
また一旦、全芳香族ポリアミドを単離後、溶媒に再溶解したものを用いてもよい。溶媒としては、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド等の有機極性溶媒が好ましい。溶解性の低い全芳香族ポリアミドの場合、溶媒として、濃硫酸、濃硝酸、ポリりん酸等の強酸性を用いることが好ましい。
全芳香族ポリアミド溶液には、所望により、溶解助剤として無機塩例えば塩化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化リチウム、硝酸リチウムなどを添加してもよい。溶液中の全芳香族ポリアミド濃度は、好ましくは1〜60重量%、さらに好ましくは3〜40重量%である。
キャストの方法としては、ダイ押し出しによる方法、アプリケーターを用いた方法、コーターを用いた方法などが挙げられる。
キャストする際の該溶液の温度については特に制限がなく、該溶液の粘度が30〜20,000Poiseの間となるように選択するのが好ましい。より好ましくは、50〜2,000Poiseである。
キャストした後、乾燥により溶媒を飛散させる。乾燥は、熱風加熱、真空加熱、赤外線加熱、マイクロ波加熱による乾燥が挙げられるが、熱風による加熱乾燥が好ましい。この時の乾燥温度は、30℃〜500℃であり、より好ましくは40℃〜450℃であり、さらに好ましくは70℃〜400℃である。
また他の方法として、予め前述のA層と同様の方法で製造された全芳香族ポリアミドフィルムを熱ロール、熱プレス機などによりラミネートする方法が挙げられる。
<樹脂組成物(RCB−3)>
B層として、全芳香族ポリイミド(PIB−3)と、ガラス転移点が180℃以上350℃未満の全芳香族ポリアミド(PAB−3)からなる樹脂組成物(RCB−3)を用いることができる。
全芳香族ポリアミド(PAB−3)のガラス転移点が180℃未満の場合、耐熱性が不十分となる。350℃以上の場合、被接着体(C)との接着に高温、高圧を要したり、接着性が劣る場合がある。全芳香族ポリアミド(PAB−3)のガラス転移点は、好ましくは200〜345℃の範囲であり、さらに好ましくは220〜340℃の範囲である。
このような組み合わせの樹脂組成物を用いることにより、半導体、電子材料分野を始めとし、近年、ますます要求が高まりつつある耐熱性と接着性の両立や、種々の被接着体に対し、所望の接着性と耐熱性を有するB層が選定可能となる。
樹脂組成物(RCB−3)は、10〜99重量%の全芳香族ポリイミド(PIB−3)および1〜90重量%全芳香族ポリアミド(PAB−3)からなることが好ましい。RCB−3は、40〜98重量%の全芳香族ポリイミド(PIB−3)および2〜60重量%全芳香族ポリアミド(PAB−3)からなることがさらに好ましい。
<全芳香族ポリイミド(PIB−3)>
全芳香族ポリイミド(PIB−3)は、全芳香族ポリイミド(PIA−1)と同じ構成成分のものが例示される。
従って、好ましい全芳香族ポリイミド(PIB−3)として、下記式(I)

で表される構成単位からなる全芳香族ポリイミドが挙げられる。
上記式(I)中のArは非反応性の置換基を含んでいてもよい1,4−フェニレン基である。非反応性の置換基として、メチル基、エチル基、プロピル基、シクロヘキシル基などのアルキル基、フェニル基、ナフチル基などの芳香族基、クロロ基、フルオロ基、ブロモ基などのハロゲン基、メトキシ基、エトキシ基、フェノキシ基などのアルコキシル基、ニトロ基等が例示される。
<全芳香族ポリアミド(PAB−3)>
全芳香族ポリアミド(PAB−3)は、全芳香族ポリアミド(PAB−2)と同じ構成成分のものが例示される。ただし、全芳香族ポリアミドについては、接着性という観点から上記の如く特定範囲のガラス転移点を有する必要があり、実質的に好ましい全芳香族ポリアミドは、構成成分の組合せや組成比などの点で、異なってくる。
好ましい全芳香族ポリアミド(PAB−3)としては、下記式(III)

で表わされる全芳香族ポリアミドが挙げられる。
また下記式(VI)

で表わされる全芳香族ポリアミドが挙げられる。
上記式(VI)中のAr6aおよびAr6bはそれぞれ独立に非反応性の置換基を含んでいてもよい炭素数6〜20の芳香族基である。
炭素数6〜20の芳香族基として、フェニレン基、ナフタレンジイル基、アントラセンジイル基、トルエンジイル基等が挙げられる。フェニレン基、特に、1,4−フェニレン基、1,3−フェニレン基が好ましい。
非反応性の置換基として、メチル基、エチル基、プロピル基、シクロヘキシル基などのアルキル基、フェニル基、ナフチル基などの芳香族基、クロロ基、フルオロ基、ブロモ基などのハロゲン基、メトキシ基、エトキシ基、フェノキシ基などのアルコキシル基、ニトロ基等が例示される。
nは1または2である。nが2である場合、実質的にAr6aが式(VI)中に2個存在することになるが、この2つのAr6aは、それぞれ独立に異なる構造であっても、同じ構造であっても構わない。特に好ましくはnが1である。
また、式(III)で表わされる繰り返し単位および式(VI)で表わされる繰り返し単位からなる全芳香族ポリアミドが挙げられる。全繰り返し単位中、式(III)で表わされる繰り返し単位の割合は10〜90モル%、式(VI)で表わされる繰り返し単位は90〜10モル%が好ましい。
<樹脂組成物(RCB−3)からなるB層の形成>
B層は、全芳香族ポリイミド(PIB−3)の前駆体と全芳香族ポリアミド(PAB−3)および有機極性溶媒を含有する溶液を、A層上にキャスト(流延)し、乾燥し、形成することができる。乾燥と共に加熱し熱イミド化せしめてもよい。
該溶液は、全芳香族ポリイミド(PIB−3)の前駆体であるポリアミック酸またはポリアミック酸誘導体を、全芳香族ポリアミド(PAB−3)の有機極性溶媒中にて重合せしめることにより調製することができる。
また該溶液は、全芳香族ポリイミド(PIB−3)の前駆体の有機極性溶媒溶液と全芳香族ポリアミドの有機極性溶媒溶液とをそれぞれ準備し、これらを適宜、混合したり、希釈したりすることにより調製することができる。
該溶液中に適宜イミド化助剤として、無水酢酸の如く脱水剤やピリジンの如く有機塩基触媒を添加して用いることもできる。
キャストの方法としては、ダイ押し出しによる方法、アプリケーターを用いた方法、コーターを用いた方法などが挙げられる。なお、キャストする際の該溶液の温度については特に制限がなく、該溶液の粘度が5〜20,000Poiseの間となるように選択するのが好ましい。より好ましくは、10〜10,000Poiseが例示される。
キャストした後、乾燥により溶媒を飛散させる。乾燥は、熱風加熱、真空加熱、赤外線加熱、マイクロ波加熱による乾燥が挙げられるが、熱風による加熱乾燥が好ましい。この時の乾燥温度は、30℃〜650℃であり、より好ましくは40℃〜600℃であり、さらに好ましくは70℃〜550℃である。
また他の方法として、予め製造された全芳香族ポリイミドおよび全芳香族ポリアミドを含有する樹脂組成物からなるフィルムを調製し、熱ロール、熱プレス機などによりラミネートする方法が挙げられる。
全芳香族ポリアミド(PAB−3)は、溶液重合、界面重合など従来公知のいずれの方法により製造することができる。また、重合後の全芳香族ポリアミド溶液をそのまま用いてもよいし、一旦、ポリマーを単離後、溶剤に再溶解したものを用いてもよい。溶剤としては、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド等の有機極性溶媒が好ましいが、濃硫酸、濃硝酸、ポリりん酸等の強酸性溶媒を用いても構わない。前記芳香族ポリアミド溶液には、所望により、溶解助剤として無機塩例えば塩化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化リチウム、硝酸リチウムなどを添加することができる。溶液中のポリマー濃度は1〜60重量%程度さらには3〜40重量%であることが好ましい。
<積層体(II)>
本発明は、積層体(I)のB層上に、さらに被接着層(C)が形成された積層体(II)を包含する。C層は、積層体の片面のみに形成されていてもよく、また両面にそれぞれ独立のC層が接着されていてもよい。すなわち、A/B/Cの構成や、C/B/A/B/Cの構成が挙げられる。このとき両側のC層は同じでも異なっていても良い。例えば積層体の片面に金属箔をC層として用い、反対の面には全芳香族ポリイミドフィルムをC層として用いた、厚み方向に非対称の積層体も挙げられる。
<被接着層(C)>
C層は、有機材料、無機材料を問わず用いることが出来る。有機材料としては、ポリイミド、ポリエステル、ナイロン、ポリアリレート、ポリエーテルイミド、全芳香族ポリアミド、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、アクリル樹脂、ポリエーテルケトン、ポリスルフォン、ポリフェニレンエーテル、BTレジン、ポリベンゾイミダゾールなどの種々の高分子材料が挙げられる。
また、無機材料としては、例えば、アルミニウム、鉄、シリコン、ゲルマニウムなどの金属;42合金、鉄/ニッケル合金、ステンレス類、真鍮などの合金;チタン酸バリウム、チタン酸カリウム、窒化チタン、窒化アルミニウム、窒化ホウ素などの窒化化合物;酸化ジルコニウム、酸化アルミニウム、三菱ガス化学(株)製のセラジン(登録商標)などのセラミック;ガラス;カーボンなどが挙げられる。
好ましくはシリコン、ゲルマニウムなどの半導体金属であり、シリコンウェハがより好ましく挙げられる。従って、例えば、いわゆるプリプレグより製造されるカーボン/エポキシ複合体、焼結による多孔質セラミックス/エポキシ複合体などが挙げられる。
また積層体(I)とC層との線熱膨張係数差が30ppm/℃以内であることが好ましい。さらに好ましくは線熱膨張係数差が25ppm/℃であり、20ppm/℃以下が特に好ましい。これより特に電子材料用途における寸法安定性に優れた絶縁材料として好適に用いることができる。
このC層の厚さは、特に限定されるものではなく、用途、目的に応じた厚さでよいが、1μm〜5,000μmの範囲であることが好ましい。1μm未満の場合、積層体(I)との接着の際に、圧着装置の精度が要求され、接着面を斑なく均質に接着することが困難となる場合がある。また、圧着するに十分な機械的強度が得られずに、圧着時に破壊したりする場合がある。また5,000μm以上の場合、積層体(I)と接着せしめる際に熱が伝わりにくく、温度を伝えるまでに時間がかかり生産性が低下する場合がある。
<積層体(II)の製造>
また、積層体(II)を製造する方法は特に限定されるものではないが、積層体(I)とC層を室温、場合によっては加熱、加圧しながら貼り合わせる。貼り合わせる方法としては加熱プレス機、真空プレス機を用いたプレスによる接着、ローラーによる接着などが挙げられる。
例えば、加熱プレス機を用いたプレスによる接着の場合、加熱プレス機の天板と、積層体(I)ならびにC層との境界に、熱伝導を阻害しない程度の厚さで、接着面全体で圧力が伝わるように緩衝材を挟んでもよい。緩衝材として、保護板、フィルムおよび繊維等が挙げられる。保護板としては、ステンレス、鉄、チタン、アルミニウム、銅などの金属、それらの合金などが挙げられる。フィルム、繊維としては、全芳香族ポリイミド、全芳香族ポリアミドなどの耐熱性ポリマーからなるフィルム、繊維などが挙げられる。
温度や圧力、時間などの接着条件は、積層体(I)とC層の材質または組合せにより適宜調節することが好ましい。好適な温度は20℃〜600℃の範囲である。より好ましくは50℃〜550℃の範囲である。さらに好ましくは100℃〜500℃の範囲である。圧力は、積層体(I)とC層が全体的に受ける平均圧力としては0.001MPa〜1,000MPaの範囲であり、好ましくは0.01MPa〜100MPaの範囲である。圧力が0.001MPa未満の場合、充分に接着することができず、また1,000MPaより高い圧力の場合、C層が破損する場合がある。
また保圧時間は、接着方式、接着温度、C層の形状等による、圧力の伝わり方、熱伝導性などを考慮して、適宜最適な条件を選択することが好ましい。例えば、平面加熱プレス機を用いて加熱加圧接着をする場合は、0.1秒〜48時間の範囲が好ましい。0.1秒未満の場合、接着力不足となり、接着力の安定した積層体(II)が得られにくくなる。48時間より長い場合、生産性が低くなるだけでなく、長時間、高温高圧条件に供すると、積層体(II)と他の有機材料からなる有機保護層(D)と接着する際、積層体(II)と有機保護層(D)との接着力が低下することがある。すなわち、積層体(II)と半導体チップ上の有機保護層(D)との接着性の低下が起こる。この原因は定かではないが、積層体(II)の特に表面の熱による化学変化や、高温高圧によるモロフォロジー変化によるものと考えられる。より好ましくは、接着の際の保圧時間は、1秒〜24時間の範囲がより好ましい。また、接着の際には温度を上昇させ所定の圧力で所定の時間接着させた後、室温で一定時間加圧したまま放冷してもよく、また温度を上昇させ所定の圧力で所定の時間接着させた後、圧力を解除した状態で一定時間保温したままにしてもよい。
また、C層を両面に有する積層体(II)を製造する場合、コストや接着精度、接着位置精度などの観点から、目的に応じて、両面同時に接着してもよく、片面を接着した後、他の面を接着するなどの逐次的な接着を施しても構わない。
<積層体(III)>
積層体(III)は、A層、B層、C層、有機保護層(D層)および被処理物層(E層)からなる積層体であって、A層の一方の面上に、B層およびC層がこの順序に形成され、A層の他方の面上にD層およびE層がこの順序に形成された積層体である。
<有機保護層(D)>
D層は、E層の片面に、E層を保護する目的で形成される有機膜である。D層を構成する樹脂として、ポリイミド特に全芳香族ポリイミド、ポリアミド特に芳香族ポリアミド、ポリエーテルイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリベンゾイミダゾール、ポリビニルアルコール、トリアセチルセルロース、ポリ−4−メチルペンテン、エチレン−ビニルアルコール共重合体、ポリメチルメタクリレート、フッ素のテトラフルオロエチレン−フルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、クロロトリフルオロエチレン−エチレン共重合体(E/CTFE)などが挙げられる。
D層として、特に薄葉化半導体を製造する際などにおける半導体回路の保護、絶縁に用いられる有機保護膜が例示される。従って、従来公知の各種有機絶縁膜を用いることができる。この中でも、シリコーン変性ポリイミド、ポリイミド、ポリベンゾイミダゾール、ポリアミドなどの如く高耐熱性を有するものが好ましく用いることができる。
D層の厚さは、1nm〜1,000μmが好ましい。より好ましくは10nm〜500μmであり、更に好ましくは100nm〜100μmである。
D層の形成方法は、従来公知のいずれの方法を用いても良いが、塗布・コーティング法としては表面重合法やゾルゲル法などが挙げられる。更に詳しくは例えば、ワニスをスピンコーターにて塗布し膜を形成する方法が挙げられる。塗布されたワニスを感光性樹脂であれば光硬化したり、熱硬化性樹脂であれば、熱硬化したり、あるいは溶剤を加熱乾燥して膜を形成する。特に感光性ワニスの場合は、必要に応じて露光による特殊・特定のパターニングでの保護層の形成が可能である。
<被処理物層(E)>
E層は、処理される露出面とは反対側に各種の層を積層した複層構造のものが好ましく用いられる。E層として、シリコンウェハ、ガリウム−ヒ素ウェハシリコンカーバイドウェハといった半導体基板やセラミック基板を使用した電子回路が挙げられる。
例えば、シリコンウェハに回路部品形成層がコーティングされたものが挙げられる。またアルミニウムなどの金属スパッタおよびその金属を用いた回路形成などがされていてもよい。
E層の厚さは、特に限定されるものではないが、5〜2,000μmが好ましい。より好ましくは10〜1,000μmであり、更には10〜500μmが特に好ましい。
E層の形成方法は、従来公知の半導体製造方法のいかなる方法を用いても良い。例えば、「はじめての半導体プロセス」(前田 和夫著 工業調査会)、「半導体のすべて」(菊池 正典著 日本実業出版社)などに詳細に記載されている。
<積層体(III)の製造方法>
積層体(III)の製造方法は、特に限定されるものではなく、従来公知のいかなる方法を用いてもよい。上記のC層と、E層およびD層からなる積層体とを、積層体(I)を介して加熱、加圧しながら貼り合わせる方法が例示される。
また、積層体(I)は、あらかじめA層にB層が形成されたものを用いても良く、A層、B層をそれぞれフィルムとして準備して、別途過熱プレスなどにより接着したものを用いても良く、A層、B層をそれぞれフィルムとして準備して、C層やE層とD層からなる積層体と共に同時に一括積層してもかまわない。
更には、適宜任意の組合せで多段的に積層しても良い。貼り合わせる方法としては加熱プレス機、真空プレス機を用いたプレスによる接着、ローラーによる接着などが挙げられる。ただし、張り合わせる際には、積層体(I)を構成するA層がD層と接し、B層がC層と接するようにして積層する必要がある。これを逆にすると、十分な接着力が得られない場合や、熱処理後の剥離性が不十分となる場合がある。
例えば、加熱プレス機を用いたプレスによる接着の場合、加熱プレス機の天板と積層すべき層を加熱プレス機へ設置する。この際、積層する層と天板との間に、熱伝導を阻害しない程度の厚さで、接着面全体で圧力が伝わるように緩衝材を設置しても良い。緩衝材としては、例えばステンレス、鉄、チタン、アルミニウム、銅、などの金属またはそれらの合金などの保護板;全芳香族ポリイミドおよび/または全芳香族ポリアミドなどの耐熱性ポリマーからなるフィルム;これらの耐熱性ポリマーからなる繊維などの樹脂を好適に用いることが出来る。
また、シリコンウェハなどの半導体ウェハを用いる場合は、その形に合わせた金型などを用いてもよい。温度、圧力、時間などの接着条件は特に限定されないが、用いるC層、E層、D層および積層体(I)の材質または組合せによりこれらを任意にコントロールできる。
接着の際の好適な温度としては、例えば、150℃〜600℃の範囲が例示できる。好ましくは180℃〜550℃の範囲である。さらに好ましくは、200℃〜500℃の範囲である。
また接着の際の圧力は、C層とE層が全体的に受ける平均圧力として0.01MPa〜500MPaの範囲である。平均圧力が0.01MPa未満の場合、充分に接着することができず、また500MPaより高い圧力の場合、C層またはE層が破損する場合がある。好ましくは0.1MPa〜100MPaの範囲である。
また、接着の際の保圧時間は、0.1秒〜24時間の範囲が好ましい。0.1秒未満の場合、接着力不足となり、接着力の安定した積層体が得られにくくなる。24時間より長い場合、生産性が低くなるだけでなく、コスト高となる。より好ましくは、接着の際の保圧時間は、1秒〜12時間の範囲であり、更には1秒〜1時間の範囲であり、1秒〜10分の範囲が特に好ましい。
また、接着の際には温度を上昇させ所定の圧力で所定の時間接着させた後、室温で一定時間加圧したまま放冷してもよく、また温度を上昇させ所定の圧力で所定の時間接着させた後、圧力を解除した状態で一定時間保温したままにしてもよいし、適宜、送風などにより強制冷却しても構わない。
<積層体(V)の製造方法>
本発明は積層体(III)から、D層および処理されたE層(E’層)からなる積層体(V)を製造する方法を包含する。該製造方法は、
(1)積層体(III)のE層の外表面を処理してE’層とした積層体(III’)を得る表面処理工程、
(2)積層体(III’)を少なくとも350℃以上の温度に維持する熱処理工程、
(3)積層体(III’)から、C層を剥離し、B層、A層、D層およびE’層からなる積層体(IV)を得る第1剥離工程、並びに
(4)積層体(IV)をA層とD層との界面で剥離し、D層およびE’層からなる積層体(V)を得る第2剥離工程、からなる。
本発明方法は、C層とB層との剥離強度が熱処理により変化し、その変化を制御することで、容易に剥離することが可能であることを見出したことを特徴とする。またD層とA層との剥離は、せん断剥離強度とピール強度との差を利用することにより容易に機械的に剥離できる。
C層の剥離は超音波照射により行なうことが好ましい。積層体(III’)を水に浸漬させた状態で、30秒間以上超音波を照射することがさらに好ましい。E層の外表面の処理が、薄葉化処理であることが好ましい。E層が、回路部品形成された半導体基板であることが好ましい。
<表面処理工程>
表面処理工程は、積層体(III)のE層の露出面に処理を施すことにより処理された層(E’)を有する積層体(III’)を得る工程である。
E層の露出面に施す処理としては、ウェハのグラインド、グラインド後のポリッシングなど薄葉化工程がある。また、ウェハ基板裏面への沸酸、硝酸などによる表面前処理がある。さらに、アルミニウムや金などの金属蒸着と1時間以内程度の250℃〜500℃程度の焼成処理などを含めたウェハ基板裏面への金属薄膜形成処理などが挙げられる。これらの処理を単独でも複数でも、行うことができる。
この中でも特に好ましいのは研磨、グランインドによる薄葉化処理である。処理されたE層(E’)の厚さは、好ましくは400μm以下、更に好ましくは200μm以下、より好ましくは100μm以下である。下限としてはE’層の強度が維持されていれば特に限定されないが、好ましくは3μm以上、更に好ましくは5μm以上である。
また、この一連の処理の中に後述する熱処理工程が含まれる場合がある。例えば、E層の露出面をグラインドし、薄葉化処理を行い、次いで、不純物導入処理として熱処理を施したりする場合がある。また、表面の前処理として酸処理などを施した後、金属を蒸着せしめて、その金属膜あるいはエッチングなどにより金属膜から回路を形成しその金属膜の焼成処理として熱処理を施したりする場合がある。これらの熱処理温度が350℃以上の場合、熱処理工程となる。
<熱処理工程>
熱処理工程は、積層体(III’)を350℃以上の温度に維持する工程である。
本発明の積層体(III)は、接着シートとしてA層およびB層からなる積層体(I)を用いるため350℃以上の熱処理を行っても、接着シートの接着力が必要以上に強化されず、適度な接着性と剥離性とを維持することを特徴とする。すなわち、従来の接着シートを用いた場合には、高温の熱処理によって、剥離が困難になるが、本発明の接着シートを用いることにより、350℃以上の熱処理後にも容易に剥離することが可能となる。
より好ましい熱処理温度は375℃以上であり、更に好ましくは400℃以上であり、425℃以上であることが特に好ましい。熱処理温度の上限は特に限定されないが、実質的には700℃程度である。この350℃以上の熱処理は、空気中でも、窒素などの不活性ガス中で行ってもよいが、不活性ガス中で行うことが好ましい。また、常圧でも真空でも減圧状態で行ってもよく、常圧で行うことが好ましいが、処理の初期の段階で、窒素置換や吸湿による水分除去を目的として減圧を行う場合もある。
熱処理の時間は、1秒〜48時間以内が好ましい。1秒未満では、熱処理後に剥離性と接着性が好適な状態にならない場合があり、48時間より長く行うと、熱劣化により剥離性と接着性が好適な状態にならない場合がある。より好ましくは、10秒以上24時間以内であり、30秒以上12時間以内が特に好ましい。
本発明によれば、350℃以上の高温での熱処理を行っても、接着強化などの現象がなく、容易に剥離が可能であり、効果的に積層体(V)を得ることができる。
<第1剥離工程>
熱処理を施した積層体(III’)から、C層を剥離して積層体(IV)を得る工程である。本来、積層体(V)を得る為には、A層とD層との界面を剥離させれば、目的を達成できるが、A層とD層との界面の接着力は強いため、C層の如く剛直な層が存在する場合、直接剥離することは困難である。
従って、まずB層とC層との界面を剥離する。B層とC層との界面を剥離させる方法としては、以下の方法が挙げられる。
例えば積層体(III’)を、0℃〜100℃の水に1秒〜12時間程度浸漬して、吸水させた後に、200℃以上のホットプレートに接触させ、急激に加熱し水分を気化させることによる体積膨張を利用して剥離する方法がある。また、吸水した積層体(III’)を液体窒素などに浸漬して急速冷却させ、水が凍ることによる体積膨張を利用して剥離する方法がある。また、積層体(III’)の片面から、氷などで0℃に冷却し、反対の面を200℃以上に加熱したプレートに接触させ加熱することによる熱膨張差を利用して剥離する方法がある。また、液体などに浸漬し超音波を照射して剥離する方法がある。さらに、アルカリ溶液などに浸漬して溶解し剥離する方法がある。
簡便かつ汚染や薬品などによる劣化などの懸念がないという点から、超音波照射により剥離させる方法が特に好ましい。更に具体的には、超音波照射をする際の媒体としては水が好ましい。すなわち、水に浸漬した積層体(III’)を超音波照射する方法が好ましく、その照射時間は30秒以上であることが好ましい。照射時間の上限は特に限定するものではないが、生産性などの観点から実質的に24時間以内であるが、より好ましくは5時間以内であり、更には2時間以内であり、1時間以内が特に好ましい
以上の如くしてB層とC層との界面を剥離することによって、B層、A層、D層およびE’層からなる積層体(IV)を得る。この際、剥離されたC層は、回収し、再び積層体(II)およびまたは(III)を製造する際に再利用することができる。C層を再利用するに当たって、必要に応じてC層の表面を洗浄したり、アルカリ性および/または酸性溶液による処理を施したり、シリコンカーバイド研磨剤などにより研磨などの処理を施すことができる。
<第2剥離工程>
積層体(IV)のA層とD層との界面を剥離し積層体(V)を得る工程である。即ち、上記の如くして得られたB層、A層、D層およびE’層からなる積層体(IV)から、B層およびA層からなる積層体(I)を剥がし、D層およびE’層からなる積層体(V)を得る工程である。
積層体(I)はフレキシブルな積層体であるため、いわゆるピール強度測定の際に引き剥がす様に、剥離することが可能である。これは、積層体(I)が、高いせん断剥離強度を有しつつピール強度が低いためである。剥離温度は、各層として用いられる成分の組合せにより適宜最適化でき、特に限定される物ではない。しかしながら、例えば0℃以上300℃以下で行うことが好ましい。より好ましくは0℃以上200℃以下である。
本発明方法によれば、段階的に剥離することで、積層体(V)を効果的に得ることが可能となる。ただし、薄葉化半導体などのように積層体(V)が著しく薄いものとなる場合、積層体(V)自体の反りや変形により取り扱いが困難となる場合がある。剥離工程やその後の取り扱いにおいて不要な応力負荷が積層体(V)にかかり積層体(V)が損傷を受ける場合がある。このような場合、剥離工程に入る前に、枠などにはられたダイシングテープなどに積層体(III’)のE’層の露出面を仮固定してから、そのまま第1、第2剥離工程を行い、最終的に積層体(V)がダイシングテープにはられた状態で得ることが好ましい。
上記の如く工程を経てE’層とD層とからなる積層体(V)が効果的に得られる。得られたE’層とD層とからなる積層体(V)は、半導体基板或いは薄葉化半導体基板として好適に用いられる。
【実施例】
以下、実施例により本発明を具体的に説明する。本発明における物性の測定方法、効果の評価方法は次の方法に従って行った。
(1)接着性
A層およびB層からなる積層体(I)に被接着層(C層)を形成し積層体(II)の作成を試みた際に以下の基準で評価した。
・接着できなかった場合:×
・接着できるものの、手で曲げると曲部から剥離が生じたり、積層体(II)から積層体(I)をほとんど力を要せずに手で引き剥がすことが可能な場合:△
・手で曲げても剥離が生じなかったり、手で剥離を試みても接着界面での剥離が困難である場合:○
(2)粘弾性測定
22mm×10mmのサンプルを用い、50℃〜500℃の範囲で昇温させ、6.28rad/sの周波数においてRheometrics RSA IIにて測定を行った。ガラス転移点は測定より得られた動的貯蔵弾性率E’、動的損失弾性率E”によって算出される動的損失正接tanδの値から算出した。
(3)フィルム機械物性
接着性シート(積層体(I))または基材層(A)のヤング率および強伸度は、50mm×10mmのサンプルを用いて、25℃にて引っ張り速度5mm/minにて、オリエンテックUCT−1Tにより測定を行った。
(4)シリコンウェハの表面粗度測定
シリコンウェハの中央部分1.2mm×0.92mmを非接触3次元微小表面形状観察システムNT−2000(WYKO)にて測定を行った。
(5)膨潤度
膨潤状態の重量(W)と乾燥状態の重量(W)とから下記式(1)
膨潤度(wt/重量%)=(Ww/W−1)×100・・・(1)
により算出した。
(6)線熱膨張係数
約13mm(L)×4mmのサンプルを用いて、TAインスツルメントTMA2940Thermomechanical Analyzerにより、昇温速度10℃/minにて、50℃〜250℃の範囲で昇温、降温させ、100℃から200℃の間での

より算出した。
(7)粘度測定
固有粘度[η](dl/g)は、1重量%塩化リチウム/NMP溶液を溶解液として用いて、芳香族ポリアミック酸組成物濃度0.05重量%にて、温度0℃にて測定した結果から算出した。
[実施例1]
(ポリアミック酸NMP溶液(PAA溶液)の調製)
温度計、撹拌装置および原料投入口を備えた反応容器に、窒素雰囲気下、脱水NMP1,920gを入れ、更に1,4−フェニレンジアミン26.52gを加え完全に溶解させた。その後、氷浴にて冷却し、ジアミン溶液の温度を3℃とした。この冷却したジアミン溶液に無水ピロメリット酸53.46gを添加し1時間反応させた。この時、反応溶液の温度は5〜20℃であった。更に該反応溶液を室温(23℃)下、3時間反応させ、次いで、無水フタル酸0.091gを添加し、1時間反応させアミン末端封止を行い、粘調溶液として4重量%ポリアミック酸NMP溶液(以下PAA溶液)を得た。
(A層(PI))
得られたPAA溶液をガラス板上に厚み1.5mmのドクターブレードを用いてキャストし、無水酢酸1,050ml、ピリジン450gおよびNMP1,500mlからなる30℃の脱水縮合浴に30分浸漬しイミド/イソイミド化させ、支持体であるガラス板から分離し、ゲルフィルムを得た。
得られたゲルフィルムをNMPに室温下20分浸漬させ洗浄を行った後、該ゲルフィルムの両端をチャック固定し、室温下、直交する2軸方向にそれぞれ1.85倍に10mm/秒の速度で同時二軸延伸した。延伸開始時のゲルフィルムの膨潤度は1,510%であった。
延伸後のゲルフィルムを枠固定し、乾燥空気を用いた熱風乾燥機にて160℃から300℃まで多段的に昇温していき、乾燥および熱処理を実施した。次いで、熱風循環式オーブンを用いて300℃〜450℃まで多段的に昇温していき全芳香族ポリイミドフィルム(A層)を得た。従って、A層は、下記式(I−a)

で表される構成単位のみからなる全芳香族ポリイミドよりなる。得られたA層の厚みは13μmであり、縦方向横方向のヤング率はそれぞれ、17.2GPa、18.5GPaであった。また、50℃〜500℃の範囲で動的粘弾性測定を行ったところ、ガラス転移点は観測されなかった。このことからガラス転移点は500℃以上であることを確認した。また、A層の線熱膨張係数は−6ppm/℃であった。
(B層(PAB−2))
また、帝人テクノプロダクツ株式会社製コーネックス(登録商標)のパウダーをN−メチル−2−ピロリドン(以下NMPと略す。)に5℃で分散させた後、40℃で溶解させ10重量%溶液を得た。このコーネックス(登録商標)10重量%溶液を、ガラス板上に貼り付け固定した上記A層上に、厚み28μmのバーコーターを用いて流延させた。その後、熱風乾燥機にて160℃にて30分乾燥させた後多段的に昇温していき、最終的に300℃/30minの乾燥および熱処理を行うことにより全芳香族ポリアミドよりなる接着層(B)をA層上に形成した。したがって、B層は、下記式(III)

で表わされる全芳香族ポリアミドよりなる。このようにしてA層の片面にB層が塗膜形成された積層体(I)を得た。
積層体の厚みは、16μmであった。従ってB層の塗膜厚みは3μmであった。また、B層のガラス転移点は285℃であった。積層体の縦方向横方向のヤング率はそれぞれ、13.9GPa、13.6GPaであった。また、線熱膨張係数は−5ppm/℃であった。
[実施例2]
(B/A/B)
実施例1で得られた積層体(I)をA層が上になるようにしてガラス板上に貼り付け、固定した。該積層体上にコーネックス(登録商標)10重量%NMP溶液を厚み28μmのバーコーターを用いて流延させた。その後、熱風乾燥機にて160℃にて30分乾燥させた後、多段的に昇温していき、最終的に300℃/30minの乾燥および熱処理を行うことにより全芳香族ポリアミドよりなるB層を形成した。このようにしてA層の両面にB層が塗膜形成された積層体を得た。
該積層体の厚みは、19μmであった。すなわち厚み13μmの全芳香族ポリイミドフィルムからなるA層の両面に厚み3μmの全芳香族ポリアミドからなるB層が塗膜された積層体が得られた。また、B層のガラス転移点は実施例1と同じく285℃であった。
積層体の縦方向横方向のヤング率はそれぞれ、11.2GPa、10.7GPaであった。また、線熱膨張係数は−4ppm/℃であった。
[実施例3]
(A層(PAA−2))
A層として、帝人アドバンストフィルム(株)製全芳香族アラミドフィルムであるアラミカ(登録商標)を用いた。従って、A層は、下記式(II)

で表される構成単位のみからなる全芳香族ポリアミドフィルムよりなる。A層の厚みは12μmであり、縦方向横方向のヤング率はそれぞれ、14.9GPa、14.6GPaであった。また、動的粘弾性測定から算出したガラス転移点は355℃であった。また、A層の線熱膨張係数は2ppm/℃であった。
(B層(PAB−2))
更に、コーネックス(登録商標)10重量%溶液を、ガラス板上に貼り付け固定したA層上に、厚み28μmのバーコーターを用いて流延させた。その後、熱風乾燥機にて160℃にて30分乾燥させた後、多段的に昇温していき、最終的に300℃/30minの乾燥および熱処理を行うことによりB層を有する積層体(I)を得た。したがって、B層は、下記式(III)

で表わされる全芳香族ポリアミドよりなる。このようにしてA層の片面にB層が塗膜形成された積層体(I)を得た。
該積層体の厚みは、15μmであった。従ってB層の厚みは3μmであった。また、B層のガラス転移点は285℃であった。積層体の縦方向横方向のヤング率はそれぞれ、11.4GPa、10.8GPaであった。また、線熱膨張係数は2ppm/℃であった。
[実施例4]
(A層(PIA−1))
実施例1で用いたものと同じ全芳香族ポリイミドフィルムをA層として用いた。
(B層(PIB−1))
温度計、撹拌装置および原料投入口を備えた反応容器に、窒素雰囲気下、脱水NMP1,840gを入れ、更に3,4’−ジアミノジフェニルエーテル76.58gを加え完全に溶解させる。その後、氷浴にて冷却し、ジアミン溶液の温度を3℃とした。この冷却したジアミン溶液に無水ピロメリット酸83.42gを添加し1時間反応させた。この時反応溶液の温度は5〜20℃であった。更に該反応液を50℃にて3時間反応させ、粘調溶液として8重量%ポリアミック酸NMP溶液を得た。このポリアミック酸8重量%NMP溶液を、ガラス板上に貼り付け固定したA層上に、厚み28μmのバーコーターを用いて流延させた。その後、熱風乾燥機にて160℃にて30分乾燥させた後多段的に昇温していき、最終的に350℃/20minの乾燥および熱イミド化処理を行うことにより全芳香族ポリイミドよりなるB層をA層上に形成した。したがって、B層は、下記式(IV−a)

で表される全芳香族ポリイミドからなる。このようにしてA層の片面にB層が塗膜形成された積層体(I)を得た。
該積層体の厚みは、16μmであった。従ってB層の塗膜厚みは3μmであった。また、B層のガラス転移点は330℃であった。積層体の縦方向横方向のヤング率はそれぞれ、14.2GPa、14.4GPaであった。また、線熱膨張係数は−4ppm/℃であった。
[実施例5〜18]
(A/B/C)
上記のごとく得られた積層体(I)を用いて、下記表1に示す組合せで、各種被接着層(C層)の上に積層体(I)のB層面を密着するように載せた後、金板で挟み、更に圧力斑をなくす目的に緩衝材としてケブラー製の平織りの布を載せ、加熱プレス機内にセットした。加熱プレス機にて実接面の表面温度を350℃にした後、5.5MPaで2分間プレスして、積層体(II)を得た。積層体(II)の厚み、B層とC層との間の接着性および積層体(I)と被接着層(C)との線熱膨張


[実施例19]
(A/B/A/B/A/B/A/B/A)
実施例1にて得られた積層体(I)をB層が上になるようにして4枚密着するように重ねた後、その上に実施例1にて用いたものと同じ基材(A層)を更に上に密着するように重ねた後、金板で挟み、更に圧力斑をなくす目的に緩衝材としてケブラー製の平織りの布を載せ、加熱プレス機内にセットした。加熱プレス機にて実接面の表面温度を350℃にした後、5.5MPaで2分間プレスして、全芳香族ポリイミドフィルムからなる基材層(A)5層と全芳香族ポリアミドからなる接着層(B)4層とが交互に積層された積層体を得た。該積層体の厚みは71μmであり、接着性評価は○であった。
[実施例20]
(A/B/A/B/A/B/A/B/A)
実施例3にて得られた積層体(I)をB層が上になるようにして4枚密着するように重ねた後、その上に実施例3にて用いたものと同じ基材(A層)であるアラミカ(登録商標)を更に上に密着するように重ねた後、金板で挟み、更に圧力斑をなくす目的に緩衝材としてケブラー製の平織りの布を載せ、加熱プレス機内にセットした。加熱プレス機にて実接面の表面温度を350℃にした後、5.5MPaで2分間プレスして、全芳香族ポリアミドフィルムからなる基材層(A)5層と全芳香族ポリアミドからなる接着層(B)4層とが交互に積層された積層体を得た。該積層体の厚みは69μmであり、接着性評価は○であった。
[実施例21]
実施例1で得られたA層(PIA−1)を用いた。
(B層(PIB−3/PAB−3=47/53))
また、帝人テクノプロダクツ株式会社製コーネックス(登録商標)のパウダーをNMPに5℃で分散させた後、60℃で溶解させ4重量%溶液を得た。コーネックスのガラス転移温度は285℃であった。
更にPAA溶液と4重量%コーネックスNMP溶液とNMPとを調合して、ポリアミック酸1.9重量%と全芳香族ポリアミド1.9重量%とを含むNMP溶液を得た。
(A/B)
該NMP溶液をガラス板上に貼り付け固定した上記全芳香族ポリイミドフィルムからなるA層上に、スパイラルアプリケーターを用いて流延させた。その後、熱風乾燥機にて120℃にて30分乾燥し、次いで280℃にて20分乾燥し、最終的に350℃/30minの乾燥および熱処理を行うことにより、B層を塗膜形成した。従って得られた積層体(I)は上記式(I−a)で表される全芳香族ポリイミド47重量%および下記式(III)

で表される全芳香族ポリアミド53重量%より構成される樹脂組成物からなるB層を片面に有する積層体である。
該積層体の平均厚みは、16μmであった。従ってB層の塗膜平均厚みは3μmであった。積層体の縦方向横方向のヤング率はそれぞれ、12.9GPa、13.1GPaであった。
[実施例22]
(B/A/B)
実施例21で得られた積層体(I)をA層面が上になるようにしてガラス板上に貼り付け、固定した。該積層体上に実施例21にて調整したポリアミック酸および全芳香族ポリアミドを溶解したNMP溶液を厚み28μmのバーコーターを用いて流延させた。その後、熱風乾燥機にて120℃にて30分乾燥し、次いで280℃にて20分乾燥し、最終的に300℃/30minの乾燥および熱処理を行うことにより上記式(I−a)で表される全芳香族ポリイミド47重量%および上記式(III)で表される全芳香族ポリアミド53重量%より構成される樹脂組成物からなるB層を形成した。このようにしてA層の両面にB層が塗膜形成された積層体(I)を得た。
該積層体の平均厚みは、19μmであった。すなわち平均厚み13μmの全芳香族ポリイミドフィルムからなるA層の両面に平均厚み3μmの全芳香族ポリイミドおよび全芳香族ポリアミドから構成される樹脂組成物からなるB層が塗膜された積層体が得られた。積層体の縦方向横方向のヤング率はそれぞれ、10.8GPa、10.6GPaであった。
[実施例23]
(A層(PIA−1))
(B層(PIB−3/PAB−3=73/27))
PAA溶液と4重量%コーネックスNMP溶液とNMPとを調合して、ポリアミック酸2.77重量%と全芳香族ポリアミド0.93重量%とを含むNMP溶液を用いた以外は、実施例21と同様にしてA層の片面にB層が塗膜形成された積層体を得た。このようにして上記式(I−a)で表される全芳香族ポリイミド73重量%および上記式(III)で表される全芳香族ポリアミド27重量%より構成される樹脂組成物からなるB層を片面に有する積層体(I)を得た。
該積層体の平均厚みは、17μmであった。従ってB層の塗膜平均厚みは4μmであった。積層体の縦方向横方向のヤング率はそれぞれ、13.4GPa、11.8GPaであった。
[実施例24]
(A層(PIA−1))
(B層(PIB−3/PAB−3=83/17))
PAA溶液と4重量%コーネックスNMP溶液とNMPとを調合して、ポリアミック酸2.97重量%と全芳香族ポリアミド0.53重量%とを含むNMP溶液を用いた以外は、実施例21と同様にしてA層の片面にB層を形成した。このようにして上記式(I−a)で表される全芳香族ポリイミド83重量%および上記式(III)で表される全芳香族ポリアミド17重量%より構成される樹脂組成物からなるB層を片面に有する積層体(I)を得た。
該積層体の平均厚みは、16μmであった。従ってB層の塗膜平均厚みは3μmであった。積層体の縦方向横方向のヤング率はそれぞれ、12.1GPa、13.4GPaであった。
[実施例25]
(A層(PIA−1))
(B層(PIB−3/PAB−3=91/9))
PAA溶液と4重量%コーネックスNMP溶液とNMPとを調合して、ポリアミック酸3.04重量%と全芳香族ポリアミド0.26重量%とを含むNMP溶液を用いた以外は、実施例21と同様にしてA層の片面にB層を形成した。このようにして上記式(I−a)で表される全芳香族ポリイミド91重量%および上記式(III)で表される全芳香族ポリアミド9重量%より構成される樹脂組成物からなるB層を片面に有する積層体(I)を得た。
該積層体の平均厚みは、16μmであった。従ってB層の塗膜平均厚みは3μmであった。積層体の縦方向横方向のヤング率はそれぞれ、13.3GPa、13.1GPaであった。
[実施例26]
(A層(PIA−1))
(B層(PIB−3/PAB−3=96/4))
PAA溶液と4重量%コーネックスNMP溶液とNMPとを調合して、ポリアミック酸2.88重量%と全芳香族ポリアミド0.12重量%とを含むNMP溶液を用いた以外は、実施例21と同様にしてA層の片面にB層を形成した。このようにして上記式(I−a)で表される全芳香族ポリイミド96重量%および上記式(III)で表される全芳香族ポリアミド4重量%より構成される樹脂組成物からなるB層を片面に有する積層体(I)を得た。
該積層体の平均厚みは、15μmであった。従ってB層の塗膜平均厚みは2μmであった。積層体の縦方向横方向のヤング率はそれぞれ、12.6GPa、13.9GPaであった。
[実施例27]
(A層(PAA−2))
A層として、帝人アドバンストフィルム(株)製全芳香族アラミドフィルムであるアラミカ090−RP(登録商標)を用いた。従って、A層は、上記式(II)で表される構成単位のみからなる全芳香族ポリアミドフィルムである。A層の平均厚みは9μmであり、縦方向横方向のヤング率はそれぞれ、14.9GPa、14.6GPaであった。また、アラミカの線熱膨張係数は2ppm/℃であり、動的粘弾性測定から算出したガラス転移点は355℃であった。
(B層(PIB−3/PAB−3=47/53))
PAA溶液と4重量%コーネックスNMP溶液とNMPとを調合して、ポリアミック酸1.9重量%と全芳香族ポリアミド1.9重量%とを含むNMP溶液を得た。
(A/B)
該NMP溶液をガラス板上に貼り付け固定した上記全芳香族ポリアミドフィルムからなるA層上に、スパイラルアプリケーターを用いて流延させた。その後、熱風乾燥機にて120℃にて30分乾燥し、次いで280℃にて20分乾燥し、最終的に300℃/30分の乾燥および熱処理を行うことにより、B層をA層上に形成した。このようにして上記式(I−a)で表される全芳香族ポリイミド47重量%および上記式(III)で表される全芳香族ポリアミド53重量%より構成される樹脂組成物からなるB層を片面に有する積層体(I)を得た。
該積層体の平均厚みは、13μmであった。従ってB層の塗膜平均厚みは4μmであった。積層体の縦方向横方向のヤング率はそれぞれ、9.2GPa、9.5GPaであった。
[実施例28〜42]
(A/B/C)
実施例21、23〜27で得られた積層体を用いて、下記表2に示す組合せで、各種被接着層(C)の上に積層体の接着層(B)面を密着するように載せた後、金板で挟み、更に圧力斑をなくす目的に緩衝材としてケブラー製の平織りの布を載せ、加熱プレス機内にセットした。加熱プレス機にて実接面の表面温度を350℃にした後、2.7MPaで2分間プレスして、積層体(II)を得た。積層体の平均厚みおよび接着性の評価結果を表2に記す。
下記表2中に示す被接着層(C)として、シリコンウェハーは信越半導体(株)製6inchモニターウェハ(GKO−3516−A)を用いて、鏡面を接着面とした。SUS304は厚み1mmの鏡面板のものを用いた。42合金としてはニラコ製の厚み10μmの42インバーを用い、表2中42インバーと記載した。電解銅箔としては、古河サーキットフォイル(株)製、厚み35μm、GTS−MPを用いた。フェロタイプ板はASANUMA&CO.,LTD.製フェロタイププレート、スタンダード、ステンレスハードクローム0.4mmを用いた。有機高分子フィルムは、東レデュポン(株)製カプトン100Hを用い、表2中カプトンHと記載した。
[実施例43]
プレス圧力を0.5MPaにした以外は実施例28と同様にして加熱プレスを行い、積層体を得た。積層体の平均厚みおよび接着性の評価結果を表2に記す。
[実施例44]
プレス圧力を7.0MPaにした以外は実施例28と同様にして加熱プレスを行い、積層体を得た。積層体の平均厚みおよび接着性の評価結果を表2に記す。
[実施例45]
(C/B/A/B/C)
実施例22において得られた積層体を用いて、該積層体の両面にあるB層とシリコンウェハーの鏡面とが密着するように、2枚のシリコンウェハーで該積層体を挟み、重ねた後、更に金板で挟んだ。次いで、プレス時の圧力斑をなくす目的で緩衝材としてケブラー製の平織りの布を載せ、加熱プレス機内にセットした。加熱プレス機にて実接面の表面温度を350℃にした後、2.7MPaで2分間プレスして、積層体を得た。積層体の平均厚みおよび接着性の評価結果を表2に記す。
下記表2中に示すC層として、シリコンウェハーは信越半導体(株)製6inchモニターウェハ(GKO−3516−A)を用いて、鏡面を接着面とした。

[実施例46]
(A/B/A/B/A/B/A/B/A)
実施例21にて得られた積層体をB層が上になるようにして4枚密着するように重ねた後、その上に実施例21にて用いたものと同じA層を更に上に密着するように重ねた後、金板で挟み、更に圧力斑をなくす目的に緩衝材としてケブラー製の平織りの布を載せ、加熱プレス機内にセットした。加熱プレス機にて実接面の表面温度を350℃にした後、2.7MPaで2分間プレスして、全芳香族ポリイミドフィルムからなる基材層(A)5層と全芳香族ポリアミドからなる接着層(B)4層とが交互に積層された積層体を得た。該積層体の平均厚みは76μmであり、接着性の評価は○であった。
[実施例47]
(A/B/A/B/A/B/A/B/A)
実施例27にて得られた積層体をB層が上になるようにして4枚密着するように重ねた後、その上に実施例27にて用いたものと同じ基材(A層)である帝人アドバンストフィル厶(株)製アラミカ090RP(登録商標)を更に上に密着するように重ねた後、金板で挟み、更に圧力斑をなくす目的に緩衝材としてケブラー製の平織りの布を載せ、加熱プレス機内にセットした。加熱プレス機にて実接面の表面温度を350℃にした後、2.7MPaで2分間プレスして、全芳香族ポリアミドフィルムからなる基材層(A)5層と全芳香族ポリアミドからなる接着層(B)4層とが交互に積層された積層体を得た。該積層体の平均厚みは59μmであり、接着性の評価は○であった。
[実施例48]
(E/D/A/B/C)
(被接着層(C))
支持体用の保持基板として、厚さ625μm、直径150mmのシリコンウェハー(C)を準備した。
(半導体基板(D/E)
また、半導体基板として、厚さ625μm、直径150mmのシリコンウェハー(E)の鏡面側に商品名:リカコートEN20、新日本理化(株)製、20重量%NMP溶液を用いてスピンコートし、120℃/30分、200℃/90分間乾燥してなる平均厚み20μmのポリイミドコート層(D)を形成したウェハを準備した。
(接着シート(A/B))
接着シートとして、実施例24にて得られた積層体(A/B)を用意した。
次に、被接着層(C)、接着シート(A/B)および半導体基板(D/E)を積層した。尚、B層がC層鏡面側に接し、D層がA層と接するように積層した。この状態のまま、熱プレス機にセットし、2.7MPa、300℃で2分間プレスを行って積層体(III)を得た。
(表面処理工程)
この積層体(III)の半導体基板のE層露出側を研磨機にセットし、シリコンカーバイド粒子を有する研磨紙を用い160gf/cmの荷重下で、研磨板を110rpmの回転数にて回転させて、E層を研磨し、厚みが130μmのE’層を有する積層体(III’)を得た。研磨は粒度#150、#800、#2,000の順で行った。研磨時に積層体の剥離は観察されなかった。
(熱処理工程)
得られた積層体(III’)を高速高温炉(MOTOYAMA製 SBA−2045)内に設置し、流量1.5L/minの窒素雰囲気下、300℃〜450℃間を10℃/min、450℃〜500℃間を5℃/minにて昇温し、450℃にて1時間熱処理を施した後、室温まで放置冷却した。
(第1剥離工程)
次いで積層体(III’)を超音波洗浄機の水に浸漬し、室温にて30分超音波照射を行った。この際、超音波照射開始から10分以内において、自然にC層の鏡面とB層との界面が剥離した。このようにして、B層、A層、D層およびE’層からなる積層体(IV)を得た。この際、剥離したC層は特に劣化などは見られず、必要に応じて洗浄などして再利用することが可能なものであった。
(第2剥離工程)
水分などをふき取った後、得られた積層体(IV)の表面に存在する接着シート(A/B)をめくるようにして引き剥がすことにより、A層とD層との界面の剥離を行った。その結果、薄葉化されたE’層とD層とからなる積層体(V)を得た。この際、積層体(V)のD層表面は、A層積層体の残りなどもなく非常にきれいな表面であった。
以上のことから、本発明の積層体は半導体製造工程における半導体基板薄葉化工程における接着シートとして好適に用いることができる。
[実施例49]
(A/B/C)
(A層(PIA−1))
A層として、実施例1にて得られた全芳香族ポリイミドフィルムを用意した。即ち、A層は、上記式(I−a)で表される構成単位のみからなる全芳香族ポリイミドフィルムである。
(B層(PIB−3/PAB−3=50/50))
次に、温度計、攪拌装置および原料投入口を備えた反応容器に、窒素雰囲気下、脱水NMP1,500gを入れ、NMPを氷浴にて3℃に冷却した。次いで、あらかじめ120℃にて6時間乾燥した帝人テクノプロダクツ(株)製全芳香族ポリアミド、コーネックス(登録商標)のパウダー49.99gを添加し、徐々に加温し最終的に60℃にて溶解し、3.2重量%全芳香族ポリアミドNMP溶液を調製した。
該全芳香族ポリアミドNMP溶液を溶媒として、p−フェニレンジアミン18.62g(0.1722mol)を加え完全に溶解した。その後、氷浴にて冷却し、芳香族ジアミン溶液の温度を3℃とした。この冷却したジアミン溶液に無水ピロメリット酸37.74g(0.1730mol)を添加し1時間反応させた。この時、反応溶液の温度は5〜20℃であった。更に該反応液を60℃にて2時間反応、粘稠なポリアミック酸および全芳香族ポリアミドからなる組成物溶液を得た。該組成物溶液は3.5重量%のポリアミック酸および3.1重量%の全芳香族ポリアミドを含むNMP溶液である。また、芳香族ポリアミック酸組成物の固有粘度は11.2dl/gであった。
得られた樹脂組成物NMP溶液を更にNMPにて希釈し、1.8重量%のポリアミック酸および1.6重量%の全芳香族ポリアミドを含むNMP溶液とした後、ガラス板上に貼り付け固定した上記全芳香族ポリイミドフィルムからなるA層上に、スパイラルアプリケーターを用いて流延させた。その後、熱風乾燥機にて120℃にて30min乾燥し、次いで280℃にて20分乾燥し、最終的に350℃/30minの乾燥および熱処理を行うことにより、B層を塗膜形成した。このようにして上記式(I−a)で表される全芳香族ポリイミド50重量%および上記式(III)で表される全芳香族ポリアミド50重量%より構成される樹脂組成物からなる接着層(B)を片面に有する接着性シートを得た。
該積層体の平均厚みは、15μmであった。従ってB層の塗膜平均厚みは2μmであった。積層体の縦方向横方向のヤング率はそれぞれ、13.4GPa、11.3GPaであった。また、線熱膨張係数は1ppm/℃であった。
上記のごとく得られた積層体を用いた以外は実施例28と同様に厚さ625μmのシリコンウェハーとの接着を行った。得られた積層体(II)は、厚さ638μmで、接着状態は手で曲げても剥離が生じなく、非常に良好であり、○であると評価した。
[実施例50]
(E/D/A/B/C)
(被接着層(C))
被接着層(C)として、厚さ625μm、直径150mmのシリコンウェハを準備した。
(半導体基板(D/E)
また、半導体基板として、厚さ625μm、直径150mmのシリコンウェハ(E)の鏡面側にスピンコートによりポリイミド膜(D)を形成したウェハを準備した。
(接着シート(A/B))
接着シートとして、無水ピロメリット酸とp−フェニレンジアミンから合成した縮合物を脱水環化して得られた厚さ12.5μmのガラス転移点が500℃以上(測定において500℃までガラス転移点が観測されなかった。)の芳香族ポリイミドフィルム(A)を準備し、その片面にイソフタル酸クロライドとm−フェニレンジアミンから合成した芳香族ポリアミド(帝人テクノプロダクツ(株)製、登録商標コーネックス)の15%N−メチル−2−ピロリドン溶液をコーティングし、乾燥させて厚み3μmのB層を形成した。
次に被接着層(C)、接着シート(A/B)および半導体基板(D/E)を積層した。B層はC層に接し、D層はA層に接するよう積層した。この状態のまま、熱プレス機にセットし、5MPa、300℃で2分間プレスを行って積層体(III)を得た。
(表面処理工程)
この積層体(III)のE層の露出側を研磨機にセットし、シリコンカーバイド粒子を有する研磨紙を用い160gf/cmの荷重下で、研磨板を110rpmの回転数にて回転させてE層を研磨し、厚みが130μmのE’層を有する積層体(III’)を得た。研磨は粒度#150、#800、#2000の順で行った。研磨時に積層体の剥離は観察されなかった。
(熱処理工程)
得られた積層体(III’)を高速高温炉(MOTOYAMA製 SBA−2045)内に設置し、流量1.5L/minの窒素雰囲気下、300℃〜450℃間を10℃/min、450℃〜500℃間を5℃/minにて昇温し、500℃にて1時間熱処理を施した後、室温まで放置冷却した。
(第1剥離工程)
次いで積層体(III’)を超音波洗浄機の水に浸漬し、室温にて30分超音波照射を行った。この際、超音波照射開始から10分以内において、自然にC層とB層との界面が剥離した。B層、A層、D層およびE’層からなる積層体(IV)を得た。この際剥離したC層は特に劣化などは見られず、必要に応じて洗浄などして再利用することが可能なものであった。
(第2剥離工程)
水分などをふき取った後、得られた積層体(IV)を表面に存在する接着シートをめくるようにして引き剥がし、D層とE’層からなる積層体(V)を得た。この際、積層体(V)のD層表面は、A層の残りなどもなく非常にきれいな表面であった。
[実施例51]
(被接着層(C))
被接着層(C)として、厚さ625μm、直径150mmのシリコンウェハを準備した。
(半導体基板(D/E)
また、半導体基板として、厚さ625μm、直径150mmのシリコンウェハ(E)の鏡面側にスピンコートによりポリイミド膜(D)を形成したウェハを準備した。
(接着シート(A/B))
無水ピロメリット酸とp−フェニレンジアミンから合成した縮合物を脱水環化して得られたガラス転移点が500℃以上(測定において500℃までガラス転移点が観測されなかった。)の芳香族ポリイミドフィルム(A層:厚さ12.5μm)を準備した。その片面にイソフタル酸クロライドとm−フェニレンジアミンから合成した芳香族ポリアミド(帝人テクノプロダクツ(株)製、登録商標コーネックス)の15%N−メチル−2−ピロリドン溶液をコーティングし、乾燥させて厚み3μmのB層を形成し接着シート(A/B)を得た。
次に被接着層(C)、接着シート(A/B)および半導体基板(D/E)を積層した。B層はC層に接し、D層はA層に接するよう積層した。この状態のまま、熱プレス機にセットし、2MPa、300℃で2分間プレスを行って積層体(III)を得た。
(表面処理工程)
この積層体(III)のE層の露出側を研磨機にセットし、シリコンカーバイド粒子を有する研磨紙を用い160gf/cmの荷重下で、研磨板を110rpmの回転数にて回転させてE層を研磨し、厚みが130μmのE’層を有する積層体(III’)を得た。研磨は粒度#150、#800、#2000の順で行った。研磨時に積層体の剥離は観察されなかった。
(熱処理工程)
得られた積層体(III’)を高速高温炉(MOTOYAMA製 SBA−2045)内に設置し、流量1.5L/minの窒素雰囲気下、300℃〜400℃間を10℃/min、400℃〜450℃間を5℃/minにて昇温し、450℃にて1時間熱処理を施した後、室温まで放置冷却した。
(第1剥離工程)
次いで積層体(III’)を超音波洗浄機の水に浸漬し、室温にて30分超音波照射を行った。この際、超音波照射開始から10分以内において、自然に被接着層(C)とB層との界面が剥離した。このようにして、B層、A層、D層およびE’層からなる積層体(IV)を得た。この際剥離したC層は特に劣化などは見られず、必要に応じて洗浄などして再利用することが可能なものであった。
(第2剥離工程)
水分などをふき取った後、得られた積層体(IV)の表面に存在する接着シートをめくるようにして引き剥がすことにより、D層およびE’層からなる積層体(V)を得た。この際、積層体(V)D層表面は、A層の残りなどもなく非常にきれいな表面であった。
【産業上の利用可能性】
本発明の積層体は、実装材料などの電子材料、半導体装置の製造工程の部材、電池容器、航空部品、自動車部品、食品のような様々な分野において接着性シートとして好適に用いることができる。
本発明方法は、薄葉化半導体部品の製造に有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材層(A)および接着層(B)からなり、A層の片面または両面にB層が形成された積層体(I)であって、
A層は、
(A−1)ガラス転移点が350℃以上の全芳香族ポリイミド(PIA−1)または
(A−2)ガラス転移点が350℃以上の全芳香族ポリアミド(PAA−2)、
からなるフィルムであり、
B層は、
(B−1)ガラス転移点が180℃以上350℃未満の全芳香族ポリイミド(PIB−1)、
(B−2)ガラス転移点が180℃以上350℃未満の全芳香族ポリアミド(PAB−2)、または
(B−3)全芳香族ポリイミド(PIB−3)およびガラス転移点が180℃以上350℃未満の全芳香族ポリアミド(PAB−3)からなる樹脂組成物(RCB−3)よりなる、前記積層体。
【請求項2】
ヤング率が3GPaを超える直交する2方向が面内に存在する請求項1に記載の積層体。
【請求項3】
A層は、ヤング率が10GPaを超える直交する2方向が面内に存在するフィルムである請求項1に記載の積層体。
【請求項4】
A層は、線熱膨張係数が、−12ppm/℃〜12ppm/℃のフィルムである請求項1に記載の積層体。
【請求項5】
A層の平均厚みが、50μm以下である請求項1に記載の積層体。
【請求項6】
A層の、(A−1)ガラス転移点が350℃以上の全芳香族ポリイミド(PIA−1)が下記式(I)

式中、Arは非反応性の置換基を含んでもよい1,4−フェニレン基である、
で表される構成単位からなる請求項1に記載の積層体。
【請求項7】
A層の、(A−2)ガラス転移点が350℃以上の全芳香族ポリアミド(PAA−2)が下記式(II)

で表される構成単位からなる請求項1に記載の積層体。
【請求項8】
B層の、(B−1)ガラス転移点が180℃以上350℃未満の全芳香族ポリイミド(PIB−1)が下記式(IV)

式中、Ar4aおよびAr4bはそれぞれ独立に、非反応性の置換基を含んでいてもよい炭素数6〜20の芳香族基であり、nは1または2である、
で表わされる構成単位からなる請求項1に記載の積層体。
【請求項9】
B層の、(B−2)ガラス転移点が180℃以上350℃未満の全芳香族ポリアミド(PAB−2)が、下記式(III)

で表わされる構成単位からなる請求項1に記載の積層体。
【請求項10】
樹脂組成物(RCB−3)が、全芳香族ポリイミド(PIB−3)10〜99重量%およびガラス転移点が180℃以上350℃未満の全芳香族ポリアミド(PAB−3)1〜90重量%からなる樹脂組成物である請求項1に記載の積層体。
【請求項11】
樹脂組成物(RCB−3)を構成する全芳香族ポリイミド(PIB−3)が下記式(I)

式中、Arは非反応性の置換基を含んでもよい1,4−フェニレン基である、
で表される構成単位からなる請求項10に記載の積層体。
【請求項12】
樹脂組成物(RCB−3)を構成する全芳香族ポリアミド(PAB−3)が下記式(III)

で表される構成単位からなる請求項10に記載の積層体。
【請求項13】
A層がPIA−1からなり、B層がPIB−1からなる請求項1に記載の積層体。
【請求項14】
A層がPIA−1からなり、B層がPAB−2からなる請求項1に記載の積層体。
【請求項15】
A層がPIA−1からなり、B層がPIB−3およびPAB−3からなる樹脂組成物(RCB−3)からなる請求項1に記載の積層体。
【請求項16】
A層がPAA−2からなり、B層がPIB−1からなる請求項1に記載の積層体。
【請求項17】
A層がPAA−2からなり、B層がPAB−2からなる請求項1に記載の積層体。
【請求項18】
A層がPAA−2からなり、B層がPIB−3およびPAB−3からなる樹脂組成物(RCB−3)からなる請求項1に記載の積層体。
【請求項19】
A層の片面にB層が形成された請求項1に記載の積層体であって、B層の上に被接着層(C)が形成された積層体(II)。
【請求項20】
C層が、無機材料からなる請求項19に記載の積層体。
【請求項21】
C層が、シリコンウェハまたは金属からなる請求項19に記載の積層体。
【請求項22】
基材層(A)、接着層(B)、被接着層(C)、有機保護層(D)および被処理物層(E)からなる請求項1に記載の積層体であって、A層の一方の面上にB層およびC層がこの順序に形成され、A層の他方の面上にD層およびE層がこの順序に形成された積層体(III)。
【請求項23】
D層が、ポリイミドからなる請求項22に記載の積層体。
【請求項24】
E層が、シリコンウェハからなる請求項22に記載の積層体。
【請求項25】
請求項22に記載の積層体(III)から、D層および処理されたE層(E’)からなる積層体(V)を製造する方法であって、
(1)積層体(III)のE層の外表面を処理してE’層とした積層体(III’)を得る表面処理工程、
(2)積層体(III’)を350℃以上の温度に維持する熱処理工程、
(3)積層体(III’)から、C層を剥離し、B層、A層、D層およびE’層からなる積層体(IV)を得る第1剥離工程、並びに
(4)積層体(IV)をA層とD層との界面で剥離し、D層およびE’層からなる積層体(V)を得る第2剥離工程、
からなる製造方法。
【請求項26】
C層の剥離を超音波照射により行なう請求項25に記載の製造方法。
【請求項27】
水に浸漬した積層体(III’)に30秒間以上、超音波を照射し、C層を剥離する請求項25に記載の製造方法。
【請求項28】
E層の外表面の処理が、薄葉化処理である請求項25に記載の製造方法。
【請求項29】
E層が、回路部品形成された半導体基板である請求項25に記載の製造方法。

【国際公開番号】WO2005/061227
【国際公開日】平成17年7月7日(2005.7.7)
【発行日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−516535(P2005−516535)
【国際出願番号】PCT/JP2004/019688
【国際出願日】平成16年12月22日(2004.12.22)
【出願人】(000003001)帝人株式会社 (1,209)
【Fターム(参考)】