説明

積層光学フィルム

【課題】所望のNz係数を有する光学フィルムを簡易な方法により提供すること。
【解決手段】Nz係数が異なる2枚の光学フィルムを、両者の遅相軸が平行となるように積層した積層光学フィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、偏光板保護フィルムや位相差フィルム等の光学材料に使用される光学フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
最近の液晶テレビに代表される薄型ディスプレイ市場の拡大に伴い、より鮮明な画像をより低価格で得たいという要求が高まっている。これを実現するために重要となるのが、各種光学フィルムであり、偏光板保護フィルム及び位相差フィルムはその代表である。
【0003】
液晶表示装置用の偏光板保護フィルム及び位相差フィルムにおいては、そのNz係数が0.5、−0.5、0付近の値であると、液晶表示装置に適用した場合に、光漏れ、色むら、カラーシフトが少なく、良好な画像を提供できることが知られている。そのため、Nz係数が0.5、−0.5、0付近の値である光学フィルムが望まれている。しかし、従来の液晶表示装置用の偏光板保護フィルムや位相差フィルムとして用いられているトリアセチルセルロースフィルムやノルボルネン系樹脂フィルムのNz係数は大きな正の値を示し、液晶表示装置用の保護フィルム及び位相差フィルムとしては、必要な機能を提供できていない。
【0004】
単一フィルムを用いてNz係数の値を0<Nz係数<1にする試みがなされている(特許文献1)。特許文献1に開示される方法は、光学フィルムを加熱延伸処理する際に、その片面又は両面に熱収縮フィルムを接着し、熱収縮フィルムの加熱による収縮力の作用下で光学フィルムを傾斜配向させるというものである。しかしながら、この方法には、熱収縮フィルムの接着工程や剥離工程が入るので生産性に問題がある。
また、単一フィルムを用いてNz係数を0以下に設計する試みがなされている(特許文献2)。しかし、特許文献2に開示される方法も、製造工程が複雑となるため、上記に示した方法と同様に生産性に劣る。
このように、所望のNz係数を満足するような位相差フィルムを製造するのは難しい。
【0005】
【特許文献1】特開平5−157911号公報
【特許文献2】特開2001−174631号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、所望のNz係数を有する光学フィルムを簡易な方法により提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、鋭意検討を行った結果、Nz係数の異なる2枚の光学フィルム(フィルム1、2)を、両者の遅相軸が平行となるように積層すると、積層フィルムのNz係数は、以下の式(1)で表される値と概ね等しい値となり、このことを利用すれば積層光学フィルムのNz係数のおおまかな設計が可能になることを見出し、本発明を完成するに至った。

ここで、nx1、2はフィルム1、2の面内の遅相軸方向の屈折率であり、ny1、2はそれと垂直方向の屈折率であり、nz1、2はフィルム1、2の厚み方向の屈折率である。また、d1、2はフィルム1、2の厚さ(μm)である。
【0008】
すなわち、積層光学フィルムのNz係数は、積層する2枚の光学フィルムとして、各々のNz係数を上記式にあてはめたときに積層光学フィルムのNz係数(の予測値)が所望する値となるような組み合わせを選択すると共に、それらを遅相軸が平行となるように積層することにより、自由に制御することができる。
【0009】
なお、本発明において、2枚のフィルムを、両者の遅相軸が平行となるように積層するとは、各フィルムの遅相軸の交差角が0°±10°となるように積層することをいい、0°±5°であることがより好ましい。
なお、2枚のフィルムの遅相軸の交差角が0°±10°を超えてしまうと、光漏れやコントラストの低下を起こす傾向があるので、この点からも、両者の遅相軸の交差角が0°±10°となるように積層することが好ましく、0°±5°であることがより好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、所望のNz係数を有する光学フィルムを簡易な方法で提供することができる。
しかも、このようにして製造した積層光学フィルムは耐折強度にも優れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明について具体的に説明する。
なお、本発明においては、平面方向のリタデーション(Re)と厚み方向のリタデーション(Rth)、Nz係数を次のように定義する。
Re=(nx−ny)×d、
Rth=[(nx+ny)/2−nz]×d
Nz =(nx−nz)/|(nx‐ny)|
ここで、nxはフィルム面内の遅相軸方向の屈折率であり、nyはそれと垂直方向の屈折率であり、nzはフィルムの厚み方向の屈折率である。また、dはフィルムの厚さ(nm)である。
【0012】
本発明は、Nz係数が異なる2枚の光学フィルムを、両者の遅相軸が平行となるように積層した積層光学フィルムである。
本発明においては、積層光学フィルムのNz係数を設計する手がかりとして前述の式(1)を利用し、Nz係数が異なる2枚の光学フィルムとして、各々のnx、ny、nz及び厚みdを式(1)に代入したときに積層光学フィルムのNz係数として所望する値に近い値となるような組合せを選択することが好ましい。
【0013】
本発明の好ましい態様において、Nz係数が異なる2枚の光学フィルムは、一枚が厚み方向レタデーション(Rth)が正のフィルムA又は厚み方向レタデーション(Rth)が負のフィルムB1であり、もう一枚が厚み方向レタデーション(Rth)が負のフィルムB2である。
【0014】
本発明における厚み方向レタデーション(Rth)が正のフィルムAを構成する材料としては、セルロースエステル、例えば、トリアセチルセルロース、ジアセチルセルロース、プロピオニルセルロース、ブチルセルロース、アセチルプロピオニルセルロース、ニトロセルロースが挙げられる。これらのなかでも、トリアセチルセルロースが好ましい。
ここで、セルロースエステル系樹脂とは、セルロースの水酸基の一部または全部がエステル化された化合物であるセルロースエステル及びその誘導体をいう。
【0015】
また、厚み方向レタデーション(Rth)が正のフィルムAを構成する材料の別の例としてノルボルネン系樹脂が挙げられる。
ここで、ノルボルネン系樹脂は、ノルボルネン系単量体を単量体成分として含む樹脂をいい、ノルボルネン系単量体とは、その構造中にノルボルネン骨格を有する単量体をいう。ノルボルネン系樹脂としては、例えば、ノルボルネン系単量体の開環重合体もしくは開環共重合体、またはそれらの水素添加物、ノルボルネン系単量体の付加重合体もしくは付加共重合体またはそれらの水素添加物などを挙げることができる。なかでも、ノルボルネン系単量体の重合体の水素添加物は、製膜性が良く、機械的強度、耐熱性、透明性に優れるので、好適に用いることができる。
【0016】
厚み方向レタデーション(Rth)が正のフィルムAのさらに別の例として、ポリカーボネート樹脂が挙げられる。
本発明においては、光学フィルムの分野で一般に用いられているポリカーボネート樹脂をそのまま用いることができる。好ましくは芳香族ポリカーボネートであり、更に好ましくは、ポリビスフェノールAカーボネートである。
【0017】
本発明における厚み方向レタデーション(Rth)が負のフィルムB1、2を構成する材料としては、スチレン系樹脂(B−1)、アクリル系樹脂(B−2)が挙げられる。
【0018】
本発明において、スチレン系樹脂(B−1)とは、少なくともスチレン系単量体を単量体成分として含む重合体をいう。ここで、スチレン系単量体とは、その構造中にスチレン骨格を有する単量体をいう。
【0019】
スチレン系単量体の具体例としては、スチレンの他に、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、エチルスチレン、p−tert−ブチルスチレンなどの核アルキル置換スチレン、α−メチルスチレン、α−メチル−p−メチルスチレンなどのα−アルキル置換スチレンなどのビニル芳香族化合物単量体などが挙げられ、代表的なものはスチレンである。
【0020】
スチレン系樹脂(B−1)は、スチレン系単量体成分に他の単量体成分を共重合したものでよい。共重合可能な単量体としては、メチルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、メチルフェニルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート等のアルキルメタクリレート;メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート等のアルキルアクリレートなどの不飽和カルボン酸アルキルエステル単量体;メタクリル酸、アクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、桂皮酸等の不飽和カルボン酸単量体;無水マレイン酸、イタコン酸、エチルマレイン酸、メチルイタコン酸、クロルマレイン酸などの無水物である不飽和ジカルボン酸無水物単量体;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等の不飽和ニトリル単量体;1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン(イソプレン)、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエン等の共役ジエンなどが挙げられ、これらの2種以上を共重合してもよい。
このような他の単量体成分の共重合割合は、スチレン系単量体成分に対して、50質量%以下であることが好ましい。
【0021】
スチレン系樹脂(B−1)としては、特に、スチレン−アクリロニトリル共重合体(B−1−1)、スチレン−メタクリル酸共重合体(B−1−2)、スチレン−無水マレイン酸共重合体(B−1−3)が、耐熱性、透明性等の光学材料に求められる特性を有しているため好ましい。
また、スチレン−アクリロニトリル共重合体(B−1−1)、スチレン−メタクリル酸共重合体(B−1−2)、スチレン−無水マレイン酸共重合体(B−1−3)は、メタクリル酸メチルを単量体成分として含む重合体との相溶性が高いことから、アクリル系樹脂(B−2)としてメタクリル酸メチルを単量体成分として含む重合体を用いる場合に特に好ましい。
【0022】
スチレン−アクリロニトリル共重合体(B−1−1)の場合、共重合体中のアクリロニトリルの共重合割合は1〜40質量%であることが好ましい。さらに好ましい範囲は1〜30質量%であり、とりわけ好ましい範囲は1〜25質量%である。共重合体中のアクリロニトリルの共重合割合が1〜40質量%の場合、透明性に優れるため好ましい。
【0023】
スチレン−メタクリル酸共重合体(B−1−2)の場合、共重合体中のメタクリル酸の共重合割合が0.1〜50質量%であることが好ましい。より好ましい範囲は0.1〜40質量%であり、さらに好ましい範囲は0.1〜30質量%である。共重合体中のメタクリル酸の共重合割合が0.1質量%以上であると耐熱性に優れ、50質量%以下の範囲であれば透明性に優れるので好ましい。
【0024】
スチレン−無水マレイン酸共重合体(B−1−3)の場合、共重合体中の無水マレイン酸の共重合割合が0.1〜50質量%であることが好ましい。より好ましい範囲は0.1〜40質量%であり、さらに好ましい範囲は0.1質量%〜30質量%である。共重合体中の無水マレイン酸の共重合割合が0.1質量%以上であると耐熱性に優れ、50質量%以下の範囲であれば透明性に優れるので好ましい。
【0025】
これらの中でも、耐熱性の観点から、スチレン−メタクリル酸共重合体(B−1−2)、スチレン−無水マレイン酸共重合体(B−1−3)が特に好ましい。
スチレン系樹脂(B−1)として、組成、分子量など異なる複数種類のスチレン系樹脂を併用することもできる。
スチレン系樹脂(B−1)は、公知のアニオン、塊状、懸濁、乳化または溶液重合方法により得ることができる。また、スチレン系樹脂(B−1)は、共役ジエンやスチレン系単量体のベンゼン環の不飽和二重結合が水素添加されていてもよい。水素添加率は核磁気共鳴装置(NMR)によって測定できる。
【0026】
本発明においてアクリル系樹脂(B−2)とは、アクリル酸、メタクリル酸又はこれらの誘導体を単量体成分として含む重合体をいう。
【0027】
アクリル系樹脂(B−2)としては、アクリル酸アルキルエステル又はメタクリル酸アルキルエステルを単量体成分として含む重合体(B−2−1)が好適な例として挙げられる。
【0028】
アクリル酸アルキルエステル又はメタクリル酸アルキルエステルを単量体成分として含む重合体(B−2−1)の具体例としては、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸t−ブチルシクロヘキシル、メタクリル酸メチル等のメタクリル酸アルキルエステル;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸2−エチルヘキシル等のアクリル酸アルキルエステルより選ばれる1種以上の単量体を重合したもの等が挙げられる。
【0029】
ここで、アクリル酸アルキルエステル又はメタクリル酸アルキルエステルを単量体成分として含む重合体には、メタクリル酸アルキルエステル、アクリル酸アルキルエステル以外の単量体が共重合されたものも含まれる。
アクリル酸アルキルエステル、メタクリル酸アルキルエステルと共重合可能なメタクリル酸アルキルエステル、アクリル酸アルキルエステル以外の単量体としては、スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン等の芳香族ビニル化合物類;アクリロニトリル、メタクリルニトリル等のシアン化ビニル類;N−フェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド等のマレイミド類;無水マレイン酸等の不飽和カルボン酸無水物類;アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸等の不飽和酸類等が挙げられる。これらは一種または二種以上組み合わせて使用することもできる。
メタクリル酸アルキルエステル、アクリル酸アルキルエステル以外の単量体成分を共重合する場合、その共重合割合は、メタクリル酸アルキルエステル、アクリル酸アルキルエステルに対して、50質量%未満であることが好ましい。さらに好ましくは40質量%以下であり、とりわけ好ましくは30質量%以下である。50質量%未満であると全光線透過率などの光学特性に優れるため好ましい。
【0030】
アクリル酸アルキルエステル又はメタクリル酸アルキルエステルを単量体成分として含む重合体の中でも、メタクリル酸メチルの単独重合体または、メタクリル酸メチルと他の単量体との共重合体が、耐熱性、透明性等光学材料に求められる特性を有しているため好ましい。
メタクリル酸メチルと共重合させる単量体としては、特にアクリル酸アルキルエステル類が、耐熱分解性に優れ、これを共重合させて得られるメタクリル系樹脂の成形加工時の流動性が高いため好ましい。メタクリル酸メチルにアクリル酸アルキルエステル類を共重合させる場合のアクリル酸アルキルエステル類の使用量は、耐熱分解性の観点から0.1質量%以上であることが好ましく、耐熱性の観点から15質量%以下であることが好ましい。0.2質量%以上14質量%以下であることがさらに好ましく、1質量%以上12質量%以下であることがとりわけ好ましい。
アクリル酸アルキルエステル類の中でも、アクリル酸メチル及びアクリル酸エチルが、少量メタクリル酸メチルと共重合させるだけでも前述の成形加工時の流動性の改良効果が著しく得られるため好ましい。
【0031】
また、本発明においてはアイソタクチックポリメタクリル酸エステルとシンジオタクチックポリメタクリル酸エステルを同時に用いることもできる。
【0032】
アクリル酸アルキルエステル又はメタクリル酸アルキルエステルを単量体成分として含む重合体(B−2−1)の質量平均分子量は、5万〜20万であることが好ましい。重合体(B−2−1)の質量平均分子量は成形品の強度の観点から5万以上が好ましく、成形加工性、流動性の観点から20万以下が好ましい。さらに好ましい範囲は7万〜15万である。
【0033】
アクリル酸アルキルエステル又はメタクリル酸アルキルエステルを単量体成分として含む重合体(B−2−1)を製造する方法として、例えばキャスト重合、塊状重合、懸濁重合、溶液重合、乳化重合、アニオン重合等の一般に行われている重合方法を用いることができる。光学用途としては微小な異物の混入はできるだけ避けることが好ましく、この観点からは懸濁剤や乳化剤を用いない塊状重合や溶液重合が好ましい。
溶液重合を行う場合には、単量体の混合物をトルエン、エチルベンゼン等の芳香族炭化水素の溶媒に溶解して調製した溶液を用いることができる。塊状重合により重合させる場合には、通常行われるように加熱により生じる遊離ラジカルや電離性放射線照射により重合を開始させることができる。
【0034】
重合反応に用いられる開始剤としては、ラジカル重合において用いられる任意の開始剤を使用することができ、例えば、アゾビスイソブチルニトリル等のアゾ化合物、ベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート等の有機過酸化物を用いることができる。
特に、90℃以上の高温下で重合を行わせる場合には、溶液重合が一般的であるので、10時間半減期温度が80℃以上で、かつ用いる有機溶媒に可溶である過酸化物、アゾビス開始剤などが好ましい。具体的には、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、シクロヘキサンパーオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、1,1’−アゾビス(1−シクロヘキサンカルボニトリル)、2−(カルバモイルアゾ)イソブチロニトリル等を挙げることができる。
これらの開始剤は、例えば、0.005〜5質量%の範囲で用いることが好ましい。
【0035】
重合反応に必要に応じて用いられる分子量調節剤としては、ラジカル重合において一般に用いられる任意のものが使用でき、例えば、ブチルメルカプタン、オクチルメルカプタン、ドデシルメルカプタン、チオグリコール酸2−エチルヘキシル等のメルカプタン化合物が特に好ましいものとして挙げられる。
これらの分子量調節剤は、重合体(B−2−1)の重合度が好ましい範囲内に制御されるような濃度範囲で添加する。
【0036】
アクリル酸アルキルエステル又はメタクリル酸アルキルエステルを単量体成分として含む重合体(B−2−1)の中でも、メタクリル酸メチル単独重合体、メタクリル酸メチル−アクリル酸メチル共重合体、メタクリル酸メチル−アクリル酸エチル共重合体が好ましく、成形加工時の流動性と耐熱性をバランスよく兼ね備えているという点で、とりわけ、メタクリル酸メチル−アクリル酸メチル共重合体が好ましい。
【0037】
また、アクリル系樹脂(B−2)の別の好適な例としては、メタクリル酸エステル及び/又はアクリル酸エステルと、他の2種類以上の単量体とを共重合させた3元以上の共重合体(B−2−2)が挙げられる。
メタクリル酸エステル及び/又はアクリル酸エステルと共重合させる他の単量体成分としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、o−メチルスチレン、p−メチルスチレン、o−エチルスチレン、p−エチルスチレン及びp−t−ブチルスチレン等の芳香族ビニル化合物類;アクリロニトリル、メタクリロニトリル、エタクリロニトリル等のシアン化ビニル類;N−メチルマレイミド、N−エチルマレイミド、N−シクロヘキシルマレ イミド、N−フェニルマレイミド、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、ブトキシメチルアクリルアミド、N−プロピルメタクリル アミド等のマレイミド類;無水マレイン酸、無水イタコン酸等の不飽和カルボン酸無水物類;アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、α−置換アクリル酸、α−置換メタクリル酸、マレイン酸等の不飽和カルボン酸類;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸クロロメチル、(メタ)アクリル酸2−クロロエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2,3,4,5,6−ペンタヒドロキシヘキシル及び(メタ)アクリル酸2,3,4,5−テトラヒドロキシペンチル等の不飽和カルボン酸アルキルエステルが挙げられる。
【0038】
3元以上の共重合体(B−2−2)の中でも特に好適なものとして、耐熱アクリル系樹脂(B−2−2−1)が好適に挙げられる。
【0039】
本発明において、耐熱アクリル系樹脂(B−2−2−1)は、メタクリル酸エステル及び/又はアクリル酸エステル単位、芳香族ビニル化合物単位及び下記一般式[1]で表される化合物単位を含む共重合体である。
【0040】
一般式[1]
【化1】

【0041】
(式中、XはOまたは、N−Rを示す。Oは酸素原子、Nは窒素原子、Rは水素原子またはアルキル基またはアリール基またはシクロアルカン基である。)
【0042】
耐熱アクリル系樹脂(B−2−2−1)の第一の単量体成分であるメタクリル酸エステル及び/又はアクリル酸エステルの具体例としては、例えば、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸n−ヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸t−ブチルシクロヘキシル、等のメタクリル酸エステル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸2−エチルヘキシル等のアクリル酸エステルが挙げられる。なかでも、メタクリル酸メチルが好ましい。
【0043】
耐熱アクリル系樹脂(B−2−2−1)の第二の単量体成分である芳香族ビニル化合物の具体例としては、スチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、エチルスチレン、p−tert−ブチルスチレンなどの核アルキル置換スチレン;α−メチルスチレン、α−メチル−p−メチルスチレンなどのα−アルキル置換スチレン、などが挙げられる。なかでも、スチレンが好ましい。
【0044】
耐熱アクリル系樹脂(B−2−2−1)の第三の単量体成分である一般式[1]で表される単位のうち、XがOであるものとしては、無水マレイン酸、イタコン酸、エチルマレイン酸、メチルイタコン酸、クロルマレイン酸などの無水物である不飽和ジカルボン酸無水物単量体単位が挙げられる。これらのなかでも、無水マレイン酸が最も好ましい。また、XがN−Rであるものとしては、N−フェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド等のマレイミド単量体が挙げられる。
【0045】
耐熱アクリル系樹脂(B−2−2−1)を構成する単量体単位の共重合割合は、耐熱性、光弾性係数の点から、メタクリル酸エステル及び/又はアクリル酸エステル単位が40質量%以上90質量%以下、芳香族ビニル化合物単位が5質量%以上40質量%以下、上記一般式[1]で表される化合物単位5質量%以上20質量%以下であることが好ましい。
より好ましくは、メタクリル酸エステル及び/又はアクリル酸エステル単位が42質量%以上83質量%以下、芳香族ビニル化合物単位が12質量%以上40質量%以下、上記一般式[1]で表される化合物単位が5質量%以上18質量%以下である。
さらに好ましくは、メタクリル酸エステル及び/又はアクリル酸エステル単位が45質量%以上78質量%以下、芳香族ビニル化合物単位が16質量%以上40質量%以下、上記一般式[1]で表される化合物単位が6質量%以上15質量%以下である。
【0046】
また、上記一般式[1]で表される化合物単位の共重合割合に対する芳香族ビニル化合物単位の割合が1倍以上3倍以下であることが好ましい。
【0047】
耐熱アクリル系樹脂(B−2−2−1)には、上記した必須構成単量体成分に加え、必要に応じ共重合可能な他の単量体を共重合して得られた耐熱アクリル樹脂も包含される。ここで用いられる共重合可能な他の単量体として、メタクリル酸、アクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、桂皮酸等の不飽和カルボン酸単量体;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等の不飽和ニトリル単量体;1,3‐ブタジエン、2‐メチル‐1,3‐ブタジエン(イソプレン)、2,3‐ジメチル‐1,3‐ブタジエン、1,3‐ペンタジエン、1,3‐ヘキサジエン等の共役ジエン等が挙げられ、これらの2種以上を共重合することも可能である。
【0048】
耐熱アクリル系樹脂(B−2−2−1)を製造する方法としては、ラジカル開始剤を使用した塊状重合が適した方法であるが、溶液重合、乳化重合を用いることも可能である。
水系懸濁重合は、無水マレイン酸を単量体成分として用いる場合には、その水溶性が高いため、終始安定な懸濁系を保つことが困難であり、推奨されない。
【0049】
一般的なラジカル開始剤の中で、アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)のようなアゾ系開始剤、及び過酸化系開始剤のうち、ベンゾイルパーオキサイドを該耐熱アクリル系樹脂の重合に使用した場合、得られるポリマーが着色することがある。
過酸化系開始剤としてラウロイルパーオキサイド、デカノイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシ2−エチルヘキサノエートを使用すると、耐熱アクリル樹脂(B−3)の着色はない。もっとも、t−ブチルパーオキシ2−エチルヘキサノエートを使用したポリマーは、耐水性が低く、熱水に浸漬した場合の重量増加が大きく、表面が白化することがある。
したがって、耐熱アクリル系樹脂(B−2−2−1)の重合には、ラウロイルパーオキサイドのようなジアシルパーオキサイドを適用することが好ましい。
【0050】
耐熱アクリル系樹脂(B−2−2−1)の好ましい重合方法としては、特公昭63−1964号公報に記載の方法が挙げられる。
【0051】
耐熱アクリル系樹脂(B−2−2−1)のメルトインデックス(ASTM D1238;I条件)は、成形品の強度の観点から10g/10分以下であることが好ましい。より好ましくは6g/10分以下、さらに好ましくは3g/10分以下である。
【0052】
また、3元以上の共重合体(B−2−2)の別の好適な例として、メタクリル酸エステル及び/又はアクリル酸エステル単位、芳香族ビニル化合物単位及び下記一般式[2]で表される6員環構造を有する酸無水物単位を含む共重合体である耐熱アクリル系樹脂(B−2−2−2)が挙げられる。この6員環構造を有する酸無水物単位を含む共重合体(B−2−2−2)は、耐熱性に優れると共に、これから得られる成形体のレタデーション設計が容易であることから、光学材料に適している。
【0053】
一般式[2]
【化2】

【0054】
(式中、R1、R2は、それぞれ独立に水素原子又は炭素数が1〜6の置換又は非置換のアルキル基を表し、該アルキル基は、例えば、水酸基で置換されていてもよい。)
【0055】
なお、本発明においては、重合前のモノマー成分のことを「〜単量体」(ただし、「単量体」を省略して化合物名のみ記載する場合もある。)といい、共重合体を構成する構成単位のことを「〜単量体単位」という。
【0056】
耐熱アクリル系樹脂(B−2−2−2)の第一の単量体成分であるメタクリル酸エステル及び/又はアクリル酸エステルの具体例としては、前述の耐熱アクリル系樹脂(B−2−2−1)において例示したものを用いることができ、メタクリル酸エステルとしては、特に、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸(2−エチルヘキシル)、メタクリル酸(t−ブチルシクロヘキシル)、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸(2,2,2−トリフルオロエチル)などを好適に用いることができる。代表的なものはメタクリル酸メチルである。
【0057】
また、アクリル酸エステルとしては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸フェニル、アクリル酸(2−エチルヘキシル)、アクリル酸(t−ブチルシクロヘキシル)、アクリル酸ベンジル、アクリル酸(2,2,2−トリフルオロエチル)などを好適に用いることができる。
【0058】
上記メタクリル酸エステル、アクリル酸エステルは、単独で使用してもよいし、二種以上組み合わせて使用することもできる。
【0059】
メタクリル酸エステル及び/又はアクリル酸エステルの仕込み量は、耐熱アクリル系樹脂(B−2−2−2)の耐熱性、光学特性等のバランスを考慮した場合、重合の際に用いる全単量体成分の量を100質量部とした場合、5質量部以上85質量部以下であることが好ましく、より好ましくは5質量部以上70質量部以下、更に好ましくは10質量部以上60質量部以下である。
【0060】
耐熱アクリル系樹脂(B−2−2−2)の第二の単量体成分である芳香族ビニル化合物の具体例としては、前述の耐熱アクリル系樹脂(B−2−2−1)において例示したものを用いることができ、特に、下記一般式[3]で表す化合物を好適に用いることができる。
【0061】
一般式[3]
【化3】

(式中、R6は水素原子又は炭素数が置換又は非置換の1〜6のアルキル基を表し、アルキル基は置換基として例えば、水酸基を有していてもよい。また、nは0〜5の整数を表す。R7は独立して水素原子、炭素数が1〜12の置換又は非置換のアルキル基、炭素数が1〜12の置換又は非置換のアルコキシ基及び炭素数が1〜8の置換又は非置換のアリール基から選ばれる一種の基であり、各R7は同一であっても、異なっていてもよい。また、各R7は互いに結合して環構造を形成してもよい。)
【0062】
一般式[3]で表される化合物の具体例としては、スチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、2,5−ジメチルスチレン、3,4−ジメチルスチレン、3,5−ジメチルスチレン、p−エチルスチレン、m−エチルスチレン、о−エチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、イソプロペニルベンセン(α−メチルスチレン)等のスチレン系単量体;1−ビニルナフタレン、2−ビニルナフタレン、1,1−ジフェニルエチレン、イソプロペニルトルエン、イソプロペニルエチルベンゼン、イソプロペニルプロピルベンゼン、イソプロペニルブチルベンゼン、イソプロペニルペンチルベンゼン、イソプロペニルヘキシルベンゼン、イソプロペニルオクチルベンゼン等が挙げられ、共重合体に要求される特性に応じて適宜選択することができる。好ましい単量体は、スチレン系単量体であり、より好ましくはスチレン、イソプロペニルベンゼン、更に好ましくはスチレンである。
【0063】
上記芳香族ビニル化合物は、単独で使用してもよいし、二種以上組み合わせて使用することもできる。
【0064】
芳香族ビニル化合物の仕込み量は、耐熱アクリル系樹脂(B−2−2−2)に求められる光学特性、耐熱性、加工性に応じて適宜最適な量を決定することができるが、生産性等も考慮した場合、重合の際に用いる全単量体成分の量を100質量部とした場合、0.5質量部以上50質量部以下であることが好ましく、より好ましくは10質量部を超えて45質量部以下、更に好ましくは20質量部以上45質量部以下、特に好ましく25質量部以上42質量部以下、最も好ましくは28質量部以上42質量部以下である。
【0065】
また、耐熱アクリル系樹脂(B−2−2−2)の第三の単位である一般式[2]で表される6員環構造を有する酸無水物単位は、不飽和カルボン酸単量体及び、必要に応じて不飽和カルボン酸エステル単量体とを、その他の単量体成分であるメタクリル酸エステル及び/又はアクリル酸エステル、芳香族ビニル化合物と重合させ、共重合させた後、かかる共重合体を適当な触媒の存在下あるいは非存在下で加熱し、脱アルコールおよび/または脱水による分子内環化反応を行わせることにより生成することができる。この場合、典型的には共重合体を加熱することにより2単位の不飽和カルボン酸単位のカルボキシル基が脱水されて、あるいは隣接する不飽和カルボン酸単位と不飽和カルボン酸エステル単位からアルコールの脱離により1単位の6員環構造を有する酸無水物単位が生成される。
【0066】
一般式[2]で表される6員環構造を有する酸無水物単位を生成するための不飽和カルボン酸単量体の具体例としては、下記一般式[4]で表される化合物が挙げられる。
【0067】
一般式[4]
【化4】

【0068】
(式中、R5は水素原子又は炭素数が1〜6の置換又は非置換のアルキル基を表し、該アルキル基は、例えば、水酸基を有していてもよい。)
【0069】
例えば、メタクリル酸、アクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、桂皮酸等が挙げられ、不飽和カルボン酸アルキルエステル単量体としては、例えば、メタクリル酸メチル、アクリル酸メチル等が挙げられ、好適には、メタクリル酸又はアクリル酸を用いることができ、より好ましくはメタクリル酸を用いることができる。
これらの不飽和カルボン酸は、単独で使用してもよいし、二種以上組み合わせて使用することもできる。
【0070】
不飽和カルボン酸単量体の仕込み量は、耐熱アクリル系樹脂(B−2−2−2)に求められる耐熱性、加工性、光学特性や、生産性等を考慮すると、重合の際に用いる全単量体の量を100質量部とした場合、1質量部以上50質量部以下であることが好ましく、より好ましくは5質量部以上40質量部以下、更に好ましくは10質量部以上40質量部以下、とりわけ好ましくは10質量部以上35質量部以下、特に好ましくは15質量部以上35質量部以下、最も好ましくは20質量部以上30質量部以下である。
【0071】
耐熱アクリル系樹脂(B−2−2−2)には、上記した必須構成単位の単量体成分に加え、本発明の効果を損わない範囲でその他の単量体を共重合して得られた耐熱アクリル樹脂も包含される。ここで用いられるその他の単量体としては、例えば、必須構成単位の単量体以外のビニル系単量体を用いることができる。その他の単量体として用いるビニル系単量体としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアン化ビニル類;無水マレイン酸、無水イタコン酸等の不飽和カルボン酸無水物類;N−メチルマレイミド、N−エチルマレイミド、N−フェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド等のマレイミド類;アクリルアミド、メタクリルアミド等のアミド類等を挙げることができる。
【0072】
その他の単量体を含有する場合、耐熱アクリル系樹脂(B−2−2−2)の光学特性や耐熱性、加工性を考慮すると、その仕込み量は、重合の際に用いる全単量体の量を100質量部とした場合、0.1〜50質量部であることが好ましく、より好ましくは0.1〜40質量部、更に好ましくは0.5〜35質量部、とりわけ好ましくは1〜30質量部、特に好ましくは1〜25質量部である。
【0073】
耐熱アクリル系樹脂(B−2−2−2)は、特公平02−26641号公報、特開2006−266543号公報、特開2006−274069号公報、特開2006−274071号公報、特開2006−283013公報、特開2005−162835公報に記載の方法を参照して、組成比を決定し、製造、評価することができる。
【0074】
耐熱アクリル系樹脂(B−2−2−2)の重合方法としては、塊状重合、溶液重合、乳化重合、懸濁重合、沈殿重合等の従来公知の方法を用いることができ、微小異物の混入を低減することが可能であることから、懸濁剤や乳化剤を用いない塊状重合、溶液重合、沈殿重合が好ましく、分子量の制御の容易さなどの生産性を考慮すると、塊状重合、溶液重合が好ましい。
【0075】
耐熱アクリル系樹脂(B−2−2−2)の製造に際しては、溶媒を用いることができる。溶媒は、重合方法に併せて最適なものを適宜選択することができ、具体例としては、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等の芳香族炭化水素類;メタノール、エタノール、シクロヘキサノール等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン等のケトン類;ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン等の炭化水素類;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類等が挙げられ、これらは単独で使用してもよいし、二種以上を併用することもできる。
【0076】
耐熱アクリル系樹脂(B−2−2−2)の製造に際し、特に溶液重合や塊状重合を行う時、生成する共重合体の溶媒への溶解性が低い場合には共重合体が析出して安定運転が難しくなることも考えられる。そこで、溶媒の選択に際しては、共重合体の溶媒への溶解度を考慮することが好ましい。具体的には、使用する溶媒の溶解度パラメーターδは9.0〜15.0(cal/cm31/2であることが好ましい。好ましくは9.2〜14.0(cal/cm31/2、更に好ましくは9.3〜13.5(cal/cm31/2、とりわけ好ましくは9.4〜13.0(cal/cm31/2、特に好ましくは9.7〜12.8(cal/cm31/2である。溶解度パラメーターの値や値の求め方は、例えば、「Journal of Paint Technology Vol.42、No.541、February 1970」中のP.76−P.118に投稿されているK.L.Hoy著「New Values of the Solubility Parameters From Vapor Pressure Data」や、J.Brandrup他著「Polymer Handbook Fourth Edition」P−VII/675−P714などを参考にすることができる。なお、1(cal/cm31/2は、凡そ0.49(MPa)1/2である。
【0077】
耐熱アクリル系樹脂(B−2−2−2)の製造に際して、芳香族炭化水素やケトン類等の水酸基を含有しない溶媒を用いた場合、共重合体製造時に実用的に有用な重合度で運転すると、高分子量成分が析出してくるなどして分子量や分子量分布の制御が難しくなる傾向があるため、重合度が上げられないことがある。特に、不飽和カルボン酸単量体の仕込み比が15質量%以上である時に高分子量成分が析出してくる傾向がある。そこで、生産性を考慮する必要がある場合、下記一般式[5]で表される水酸基を少なくとも一つ以上有する溶媒を用いることが好ましい。
【0078】
一般式[5]
8−OH
(式中、R8は炭素数が1〜15の置換又は非置換のアルキル基を表す。R8は、例えば、水酸基で置換されていてもよく、また、エーテル結合を含有していてもよい。)
【0079】
また、不飽和カルボン酸単量体は重合性が高い傾向があるため、重合禁止剤が未添加であったり、重合禁止剤の添加量が少ないときには、常温〜高温下で自己重合をすることがある。反応系から回収される溶媒や単量体をリサイクルする際に、精留塔を用いて分離操作を行うことがあるが、精留塔中で不飽和カルボン酸単量体の重合が進むと、リサイクルできなくなる上、重合体の析出、固化により機器を傷める恐れがある。そこで、反応系から単量体や溶媒を回収してリサイクルを行う場合にも、水酸基を少なくとも一つ有する溶媒を用いることが好ましい。
【0080】
このような水酸基を少なくとも一つ有する溶媒の具体例としては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、カプリルアルコール、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、シクロペンタノール、シクロヘキサノール、シクロヘプタノール、2−メチルシクロヘキサノール、3−メチルシクロヘキサノール、4−メチルシクロヘキサノール、2−エチルシクロヘキサノール、3−エチルシクロヘキサノール、4−エチルシクロヘキサノール、2,3−ジメチルシクロヘキサノール、2,4−ジメチルシクロヘキサノール、2,5−ジメチルシクロヘキサノール、2、6−ジメチルシクロヘキサノール、3、4−ジメチルシクロヘキサノール、3,5−ジメチルシクロヘキサノール等の水酸基を一つ有するアルコール類;エチレングリコール、グリセリン等の水酸基を複数含有するアルコール類;メチルセロソルブ等のエーテル結合含有アルコール等が挙げられる。
【0081】
中でも二級アルコール類が好ましく、より好ましくは、環状構造を有するアルコール類であり、中でも不飽和カルボン酸単量体や不飽和カルボン酸単量体単位を含む共重合体との混合性に優れるシクロヘキサノールは、有機酸である不飽和カルボン酸単量体類による金属腐食防止(重合溶液のリサイクル液回収工程や重合、リサイクルに用いる装置等の配管腐食性防止)の観点からも特に好ましい。
【0082】
また、耐熱アクリル系樹脂(B−2−2−2)の製造に際して用いられる溶媒中に含まれる水分量は5質量%以下であることが好ましく、より好ましくは3質量%以下、更に好ましくは0.01〜2質量%、特に好ましくは0.1〜2質量%である。
【0083】
また、不飽和カルボン酸単量体は、アクリル酸エステル単量体や芳香族ビニル化合物単量体などと比較すると沸点が高い傾向にあり、リサイクル液の分離操作を行う際に精留塔下部に高濃度で残りやすく、精留塔下部で不飽和カルボン酸単量体の自己重合が進んで単量体や溶媒等のリサイクル性が損われる恐れがある。前述のとおり、水酸基を少なくとも一つ含有する溶媒を用いることにより、不飽和カルボン酸単量体の自己重合は低減されるが、より高いリサイクル性等を求める場合には、溶媒の沸点が100℃以上であることが好ましく、より好ましくは100℃以上200℃以下、更に好ましく110℃以上200℃以下、特に好ましくは120℃以上190℃以下、とりわけ好ましくは130℃以上190℃以下である。
【0084】
更には、使用する単量体の中で最も沸点の高い単量体の沸点(X)と使用する溶媒の沸点(Y)の差(X−Y(℃))が、−50℃≦(X−Y)≦40℃であることが好ましく、より好ましくは−40℃≦(X−Y)≦30℃、さらに好ましくは−40℃≦(X−Y)≦20℃、特に好ましくは−30℃≦(X−Y)≦20℃、とりわけ好ましくは−25℃≦(X−Y)≦15℃、最も好ましくは−15℃≦(X−Y)≦10℃である。
【0085】
耐熱アクリル系樹脂(B−2−2−2)の製造に際し、溶液重合や塊状重合を行う場合は、製造の安定性を考慮すると、使用する溶媒に対する耐熱アクリル系樹脂(B−2−2−2)の溶解度は、0.1g/100mL以上であることが好ましく、1g/100mLを超えることがより好ましい。更には2g/100mL以上であることが好ましい。
【0086】
また、重合溶液のリサイクル液回収工程や重合、リサイクルに用いる装置の配管腐食性などを考慮した場合、使用する溶媒の水に対する溶解性は0.7g/100mL以上100g/100mL以下であることが好ましい。より好ましくは1.0g/100mL以上80g/100mL、更に好ましくは1.0g/100mL以上50g/100mL以下、とりわけ好ましくは1.0g/100mL以上25g/100mL以下、特に好ましくは1.0g/100mL以上15g/100mL以下、最も好ましくは1.0g/100mL以上10g/100mL以下である。
【0087】
耐熱アクリル系樹脂(B−2−2−2)の製造時に使用する溶媒の添加量は、多すぎると重合溶液中の単量体濃度が下がり、生産性が低下してしまうし、少なすぎると重合溶液の粘度が上がるため重合溶液の温度を上げる等の処置が必要となり、生産コストが上がる傾向がある。したがって、溶媒添加量自体は重合可能な範囲で適宜決定することができるが、生産性、生産コストを勘案すると、全単量体成分と溶媒の合計を100質量%とした場合に、溶媒の量が5質量%以上60質量%以下であることが好ましい。より好ましくは5質量%以上50質量%以下、更に好ましくは10質量%以上45質量%以下、特に好ましくは15質量%以上40質量%以下である。
【0088】
耐熱アクリル系樹脂(B−2−2−2)の製造における重合温度は、重合が進行する温度であればよいが、生産性の観点から50℃以上200℃以下であることが好ましく、より好ましくは90℃以上200℃以下である。より好ましくは100℃以上200℃以下、更に好ましくは100℃以上180℃以下、とりわけ好ましくは110℃以上170℃以下、特に好ましくは120℃以上160℃である。また、重合時間は、必要な重合度を得ることができる時間であればよく、特に規定はされないが、生産性などの観点から0.5時間以上6時間以下であることが好ましく、より好ましくは1時間以上5時間以下、更に好ましくは1時間以上3時間以下である。
【0089】
耐熱アクリル系樹脂(B−2−2−2)の製造時において、重合液中の溶存酸素濃度は10ppm以下であることが好ましい。溶存酸素濃度は、例えば、溶存酸素計 DOメーターB−505(飯島電子工業株式会社製)を用いて測定をすることができる。溶存酸素濃度を低下させる方法としては、重合溶液中に不活性ガスをバブリングする方法、重合開始前に重合溶液を含む容器内を不活性ガスで0.2MPa程度まで加圧した後に放圧する操作を繰り返す方法、重合溶液を含む容器中に不活性ガスを通ずる方法等の方法を適宜選択することができる。
【0090】
耐熱アクリル系樹脂(B−2−2−2)の分子量分布範囲は、加工流動性、機械強度の観点から、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)が1.5〜3.0の範囲にあることが好ましい。より好ましくは、1.6〜2.7であり、さらに好ましくは1.6〜2.4の範囲である。
本発明において、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて、PMMA換算によって求めた値のことをいう。
【0091】
耐熱アクリル系樹脂(B−2−2−2)のGPCにより測定した重量平均分子量(Mw)は、流動性、耐熱性、延伸安定性等のバランスから、好ましくは5万〜30万、より好ましくは5〜25万、さらに好ましくは7〜22万、特に好ましくは8〜20万である。
【0092】
前述のとおり、耐熱アクリル系樹脂(B−2−2−2)の一般式[2]で表される6員環構造を有する酸無水物単位は、不飽和カルボン酸単量体及び、必要に応じて不飽和カルボン酸エステル単量体と、その他の単量体成分と重合させ、共重合体とした後、かかる共重合体を触媒の存在或いは非存在下で加熱することにより、不飽和カルボン酸単量体単位からの脱水反応、若しくは不飽和カルボン酸単量体単位及び不飽和カルボン酸エステル単位からの脱アルコール反応による分子内環化反応により得ることができる。
このような分子内環化反応を起こす方法は、特に制限されないが、例えば、ベント口を有する押出機を用いる方法や、窒素、アルゴン等の不活性ガス雰囲気下若しくは減圧下で脱揮タンクを用いる方法等が挙げられる。
【0093】
分子内環化反応を起こすために用いる装置としては、例えば、フラッシュタンク、二軸押出機、単軸押出機、二軸・単軸複合型連続混練押出機、三軸以上の多軸押出機、ニーダー等が挙げられ、これらは一種又は二種以上を併用してもよい。
【0094】
分子内環化反応を加熱脱揮により起こす場合、その温度は、所望する共重合体組成、未反応単量体の量や溶媒量の多少に応じて適宜設定することができ、分子内環化反応が起こる温度であれば特に制限されないが、好ましくは180〜300℃、より好ましくは200〜300℃、更に好ましくは200〜280℃、特に好ましくは220〜280℃である。
【0095】
また、加熱脱揮及び/又は環化反応を行う場合の加熱時間は、所望する共重合体組成に応じて適宜設定することが可能であり、通常1〜240分、好ましくは1〜150分、より好ましくは1〜120分、特に好ましくは2〜90分、特に好ましくは3〜60分であり、とりわけ好ましくは5〜60分である。
【0096】
押出機を用いる場合、加熱時間を確保するために、スクリュー直径(D)とスクリュー長さ(L)の比はL/D=20以上であることが好ましく、より好ましくは30以上、特に好ましくは40以上とすることが好ましい。また、実用的にはL/Dが120以下であることが好ましい。
【0097】
また、加熱脱揮及び/又は環化反応を減圧下で行う場合、脱揮効率などを考慮すると、200Torr以下であることが好ましく、より好ましくは150Torr以下、更に好ましくは100Torr以下、とりわけ好ましくは50Torr以下である。また、実用的には1Torr以上であることが好ましい。
【0098】
耐熱アクリル系樹脂(B−2−2−2)において、一般式[2]で表される6員環構造を有する酸無水物単位を形成する際には、環化反応を促進するために、触媒として、酸、アルカリ、塩から選ばれる少なくとも一種を添加することができる。環化触媒の添加量は、本願の目的を損わない範囲であれば特に規定はされないが、得られる共重合体の透明性、機械強度などの観点から、より少ない方が好ましい。具体的には、1質量部以下であることが好ましく、より好ましくは0.5質量部以下、更に好ましくは0.1質量部以下であることが適当である。
好適に使用される触媒の一例を挙げると、酸触媒としては塩酸、硫酸、リン酸、亜リン酸、p−トルエンスルホン酸、フェニルホスホン酸等が挙げられる。塩基性触媒としては、金属水酸化物、アミン類、イミン類、アルカリ金属誘導体、アルカリ土類金属誘導体等が挙げられる。また、塩系触媒としては、炭酸金属塩、硫酸金属塩、酢酸金属塩、ステアリン酸金属塩等が挙げられる。
【0099】
環化反応の反応促進効果、共重合体の透明性、着色性の観点から、塩基性触媒、塩系触媒を好適に用いることができる。上記環化触媒は単独で使用してもよいし、二種以上組み合わせて使用することもできる。
【0100】
耐熱アクリル系樹脂(B−2−2−2)の各構造単位の共重合割合は、高い耐熱性と本願の用途に求められる光学特性とをバランスよく高度に付与する必要がある場合には、メタクリル酸エステル及び/又はアクリル酸エステル単量体単位)が15質量%以上64質量%以下であることが好ましく、より好ましくは15質量%以上57質量%以下、より好ましくは20質量%以上51質量%以下、更に好ましくは20質量%以上48質量%以下であり、一般式[2]で表される6員環構造を有する酸無水物単位が15質量%以上35質量%以下であることが好ましく、より好ましくは17質量%以上33質量%以下、より好ましくは17質量%以上30質量%以下であり、芳香族ビニル化合物単位が1質量%以上50質量%以下であることが好ましく、好ましくは25質量%以上50質量%以下であり、より好ましくは28質量%以上50質量%以下であり、更に好ましくは28質量%以上45質量%以下、特に好ましくは28質量%以上42質量%以下、最も好ましくは31質量%以上42質量%以下である。
【0101】
更に、耐熱アクリル系樹脂(B−2−2−2)には、一般式[2]で表される6員環構造を有する酸無水物単位を生成させる際に利用した不飽和カルボン酸単量体単位が環化されずに残存していてもよい。
不飽和カルボン酸単量体単位を含有する場合、その共重合割合は、10質量%以下であることが好ましく、より好ましくは1質量%以上10質量%以下であり、更に好ましくは3質量%以上10質量%以下、とりわけ好ましくは4質量%以上8質量%以下である。
【0102】
更に、耐熱アクリル系樹脂(B−2−2−2)が不飽和カルボン酸単量体単位を含有する場合は特に、メタクリル酸エステル及び/又はアクリル酸エステル単量体単位と不飽和カルボン酸単量体単位の合計に対する不飽和カルボン酸単量体単位の比率が、30質量%以下であることが好ましく、より好ましくは1質量%以上30質量%以下である。
【0103】
また、耐熱性、流動性、加工性、機械特性、光学特性のバランスを考慮すると、不飽和カルボン酸単量体単位の共重合割合に対する一般式[2]で表される6員環構造を有する酸無水物単位の共重合割合の比(質量%)が、2≦一般式[2]で表される6員環構造を有する酸無水物単位の共重合割合)/不飽和カルボン酸単量体単位の共重合割合≦30であることが好ましい。
【0104】
また、特に光弾性係数、リターデーション等の光学特性と耐熱性、加工流動性を高度にバランスさせる必要があるときには、不飽和カルボン酸単量体単位の共重合割合に対する芳香族ビニル化合物単位の共重合割合の比は、1≦芳香族ビニル化合物単位の共重合割合/不飽和カルボン酸単量体単位の共重合割合≦10であることが好ましい。
【0105】
また、耐熱アクリル系樹脂(B−2−2−2)の各単量体単位の共重合割合は、一般的にはNMR法、赤外分光光度計、中和滴定などの方法で求めることが可能である。
【0106】
耐熱アクリル系樹脂(B−2−2−2)の重合においては、重合度を調整する目的で、重合開始剤を用いてもよい。本発明において、用いることができる重合開始剤の一例を挙げると、ラジカル重合を行う場合は、ジ−t−ブチルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ステアリルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシネオデカネート、t−ブチルパーオキシピバレート、ジラウロイルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、シクロヘキサンパーオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサンなどの有機過酸化物や、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスイソバレロニトリル、1,1’−アゾビス(1−シクロヘキサンカルボニトリル)、2,2’−アゾビス−4−メトキシ−2,4−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル、2,2’−アゾビス−2−メチルブチロニトリル、2−(カルバモイルアゾ)イソブチロニトリルなどのアゾ系の一般的なラジカル重合開始剤を挙げることができる。これらは単独で使用してもよいし、2種類以上を併用してもよい。これらのラジカル開始剤と適当な還元剤とを組み合わせてレドックス系開始剤としてもよい。これらの開始剤は、重合を行う温度と開始剤の半減期を考慮して適宜選択することができる。
【0107】
特に、90℃以上の高温下で重合を行う場合には、溶液重合が一般的であるので、10時間半減期温度が80℃以上で、かつ用いる有機溶媒に可溶である、過酸化物、アゾビス開始剤などが好ましい。具体的には、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、シクロヘキサンパーオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、1,1’−アゾビス(1−シクロヘキサンカルボニトリル)、2−(カルバモイルアゾ)イソブチロニトリル等を挙げることができる。
【0108】
これらの開始剤は、例えば、全単量体混合物100質量部に対して、0〜1質量部の範囲で用いることが好ましい。
また、溶液重合法を行う場合には、重合溶液の粘度等を考慮して重合溶液中の固体分量が10〜60質量%となるように適宜重合開始剤の種類、添加量を決定すればよい。
【0109】
耐熱アクリル系樹脂(B−2−2−2)の製造においては、本発明の目的を損わない範囲で、分子量の制御を行うことができる。例えば、アルキルメルカプタン類、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、トリエチルアミン等の連鎖移動剤;ジチオカルバメート類、トリフェニルメチルアゾベンゼン、テトラフェニルエタン誘導体等のイニファータ等を用いる方法がある。これらの添加剤の添加量を調整することにより、分子量を調整することが可能である。これらの添加剤を用いる場合、取扱性や安定性の点から、アルキルメルカプタン類が好適に用いられ、具体例としては、n−ブチルメルカプタン、n−オクチルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン、n−テトラデシルメルカプタン、n−オクタデシルメルカプタン、2−エチルヘキシルチオグリコレート、エチレングリコールジチオグリコレート、トリメチロールプロパントリス(チオグリコート)、ペンタエリスリトールテトラキス(チオグリコレート)等が挙げられる。
【0110】
これらの分子量調整剤は、耐熱アクリル系樹脂(B−2−2−2)の分子量が所望の値となるように適宜添加することができるが、一般的には全単量体混合物100質量部に対して0.001質量部〜3質量部の範囲で用いられる。
また、その他の分子量制御方法としては、重合方法を変える方法、重合開始剤の量を調整する方法、重合温度を変更する方法などが挙げられる。
これらの分子量制御方法は、一種の方法だけ用いてもよいし、二種以上の方法を併用してもよい。
【0111】
本発明においては、組成、分子量など異なる複数種類のアクリル系樹脂(B−2)を併用することができる。
【0112】
本発明においては、厚み方向レタデーション(Rth)が負のフィルムB1、2を構成する材料として、前述したスチレン系樹脂(B−1)、アクリル系樹脂(B−2)それぞれを単独で用いてもよいが、フィルムB1、2を構成する材料として、スチレン系樹脂(B−1)とアクリル系樹脂(B−2)の両方を含む樹脂組成物を用いると、フィルムBの光学設計、例えば、面内レタデーションの制御など、が容易になるので好ましい。
【0113】
この場合、スチレン系樹脂(B−1)とアクリル系樹脂(B−2)は相溶することが好ましい。相溶は、スチレン系樹脂(B−1)、アクリル系樹脂(B−2)の組成(共重合組成を含む)、配合比率、混練温度、混練圧力、冷却温度、冷却速度などを適宜選択することにより実現できる。相溶(missible)については、『高性能ポリマーアロイ』(高分子学会編集、平成3年丸善株式会社発行)に詳しい記載がある。スチレン系樹脂(B−1)とアクリル系樹脂(B−2)が相溶すると、スチレン系樹脂(B−1)とアクリル系樹脂(B−2)とを含む樹脂組成物からなるフイルムB1、2の全光線透過率を高めることが可能となると共に、使用中に相分離を起こして透明性が低下することなどのない安定性の高いフイルムB1、2を製造することができる。
【0114】
具体的には、アクリル酸アルキルエステル又はメタクリル酸アルキルエステルを単量体成分として含む重合体(B−2−1)はスチレン系樹脂(B−1)との相溶性が高いので、アクリル系樹脂(B−2)として、アクリル酸アルキルエステル又はメタクリル酸アルキルエステルを単量体成分として含む重合体(B−2−1)を用いることが特に好ましい。
【0115】
樹脂組成物中のスチレン系樹脂(B−1)の含有量は、樹脂組成物全体に対して0.1〜99.9質量%であることが好ましく、0.2〜90質量%であることがさらに好ましく、20〜80質量%であることがとりわけ好ましい。アクリル系樹脂(B−2)の含有量は、樹脂組成物全体に対して0.1〜99.9質量%であることが好ましく、10〜99.8質量%であることがさらに好ましく、20〜80質量%であることがとりわけ好ましい。
また、スチレン系樹脂(B−1)とアクリル系樹脂(B−2)の含有量の合計は、樹脂組成物に対して70質量%以上であることが好ましく、80質量%以上であることがさらに好ましく、90質量%以上であることがとりわけ好ましい。
さらに、スチレン系樹脂(B−1)とアクリル系樹脂(B−2)の質量比((B−1)/(B−2))は、スチレン系樹脂(B−1)、アクリル系樹脂(B−2)の種類にも依存するが、0.1/99.9〜99.9/0.1であることが好ましく、20/80〜80/20であることがさらに好ましく、40/60〜60/40であることがとりわけ好ましい。
【0116】
本発明においては、フィルムA、フィルムB1、2を構成する材料に、本発明の目的を損なわない範囲で、前述した以外の他の重合体を混合することができる。混合することができる重合体としては、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン、ポリアミド、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリエステル、ポリスルホン、ポリフェニレンオキサイド、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリアセタール等の熱可塑性樹脂、およびフェノール樹脂、メラミン樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂などが挙げられる。
フイルムAにセルロースエステル系樹脂、ノルボルネン系樹脂、ポリカーボネート樹脂以外の他の重合体を混合する場合、その割合は、セルロースエステル系樹脂、ノルボルネン系樹脂、ポリカーボネート樹脂の合計100質量部に対して20質量部以下であることが好ましく、さらに好ましくは5質量部以下である。 また、フィルムB1、2に(B−1)、(B−2)以外の他の重合体を混合する場合、その割合は、(B−1)、(B−2)の合計100質量部に対して、20質量部以下であることが好ましく、より好ましくは10質量部以下、さらに好ましくは5質量部以下である。
【0117】
また、本発明においては、Nz係数の異なる2枚の光学フィルムを構成する材料に、本発明の目的を損なわない範囲で紫外線吸収剤を配合することができる。
混合することができる紫外線吸収剤としては、ベンゾトリアゾール系化合物、ベンゾトリアジン系化合物、ベンゾエート系化合物、ベンゾフェノン系化合物、オキシベンゾフェノン系化合物、フェノール系化合物、オキサゾール系化合物、マロン酸エステル系化合物、シアノアクリレート系化合物、ラクトン系化合物、サリチル酸エステル系化合物、ベンズオキサジノン系化合物、ヒンダードアミン系化合物、トリアジン系化合物等が挙げられる。
【0118】
これらの中でも、ベンゾトリアゾール系化合物、ベンゾトリアジン系化合物、ベンゾエート系化合物、ベンゾフェノン系化合物、フェノール系化合物、オキサゾール系化合物、マロン酸エステル系化合物、ラクトン系化合物は、これを添加した樹脂組成物の光弾性係数の絶対値を小さくする効果があり好ましい。最も好ましくはベンゾトリアゾール系化合物、ベンゾトリアジン系化合物である。これらは単独で用いても、2種以上併用して用いても構わない。
【0119】
紫外線吸収剤が、20℃における蒸気圧(P)が1.0×10-4Pa以下である場合に成形加工性に優れ好ましい。さらに好ましい範囲は蒸気圧(P)が1.0×10-6Pa以下であり、とりわけ好ましい範囲は蒸気圧(P)が1.0×10-8Pa以下である。ここで、成型加工性に優れるとは、例えばフィルム成形時に、紫外線吸収剤のロールへの付着が少ないことなどを示す。紫外線吸収剤がロールへ付着すると、例えば成形体表面へ付着し外観、光学特性を悪化させるため、光学用材料として好ましくないものとなる。
【0120】
紫外線吸収剤が、融点(Tm)が80℃以上である場合に成形加工性に優れ好ましい。さらに好ましい範囲は融点(Tm)が130℃以上であり、とりわけ好ましい範囲は融点(Tm)が160℃以上である。
紫外線吸収剤が、23℃から260℃まで20℃/minの速度で昇温した場合の重量減少率が50%以下である場合に成形加工性に優れ好ましい。さらに好ましい範囲は重量減少率が15%以下であり、とりわけ好ましい範囲は重量減少率が2%以下である。
【0121】
本発明におけるNz係数の異なる2枚の光学フィルムは、380nmにおける分光透過率が5%以下で、かつ、400nmにおける分光透過率が65%以上であることが好ましい。紫外領域である380nmの分光透過率が低いほど偏光子や液晶素子の劣化を防ぎ、可視領域である400nm分光透過率が高いほど色再現性に優れるため、光学フィルムとして好ましく用いることができる。フィルムの分光透過率をこの範囲内に設計するには、紫外線吸収剤の量が、0.1質量%以上10質量%以下であることが好ましい。0.1質量%より多いと、380nmにおける分光透過率が小さくなり、10質量%より少ないと光弾性係数の増加が小さく、成型加工性、機械強度も向上するため好ましい。紫外線吸収剤の量のより好ましい範囲は、0.3質量%以上8質量%以下、さらに好ましい範囲は0.5質量%以上5質量%以下である。
【0122】
紫外線吸収剤の量は、核磁気共鳴装置(NMR)によりプロトンNMRを測定し、ピークシグナルの積分値の比から求める方法や、または良溶媒を用い樹脂から抽出後、ガスクロマトグラフ(GC)で測定する方法等により定量できる。
【0123】
また本発明においては、Nz係数の異なる2枚の光学フィルムを構成する材料に、本発明の目的を損なわない範囲で各種目的に応じて任意の添加剤を配合することができる。配合することができる添加剤としては、樹脂やゴム状重合体の配合に一般的に用いられるものであれば特に制限はない。
このような添加剤としては、例えば、二酸化珪素等の無機充填剤;酸化鉄等の顔料;ステアリン酸,ベヘニン酸、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、エチレンビスステアロアミド等の滑剤、離型剤;パラフィン系プロセスオイル、ナフテン系プロセスオイル、芳香族系プロセスオイル、パラフィン、有機ポリシロキサン,ミネラルオイル等の軟化剤・可塑剤;ヒンダードフェノール系酸化防止剤、アクリレート基を有するフェノール系酸化防止剤、りん系熱安定剤等の酸化防止剤;ヒンダードアミン系光安定剤;難燃剤;帯電防止剤;有機繊維、ガラス繊維、炭素繊維、金属ウィスカ等の補強剤;着色剤などが挙げられる。
【0124】
Nz係数の異なる2枚の光学フィルム中に酸化防止剤を配合する場合、フィルムを構成する樹脂組成物に対して0.01質量%以上、2質量%以下の範囲で配合することが好ましく、0.05質量%以上、2質量%以下の範囲で配合することが更に好ましく、0.1質量%以上、2.0質量%以下であることがとりわけ好ましい。
酸化防止剤の配合量が0.01質量%未満である場合には、得られるフィルムの高温加工時における熱安定性が乏しくなり、異物の発生を十分に抑制できない場合がある。一方、配合量が2質量%を超える場合には、揮発分が多く出てしまいフィルムの加工性を低下させる場合がある。
【0125】
本発明におけるNz係数の異なる2枚の光学フィルムを構成する材料となる樹脂組成物の製造方法は、特に制限されるものではなく、公知の方法が利用できる。例えば単軸押出機、二軸押出機、バンバリーミキサー、ブラベンダー、各種ニーダー等の溶融混練機を用いて、樹脂成分、必要に応じて耐加水分解抑制剤や上記その他の成分を添加して溶融混練して製造することができる。
【0126】
本発明におけるNz係数の異なる2枚の光学フィルムは、射出成形、シート成形、ブロー成形、インジェクションブロー成形、インフレーション成形、押し出し成形、発泡成形等、公知の方法で成形することが可能であり、圧空成形、真空成形等の二次加工成形法も用いることができる。
また、例えば、Tダイ、円形ダイ等が装着された押出機等を用いて、未延伸フィルムを押し出し成形することができる。押し出し成形により成形品を得る場合は、混合、配合すべき成分は事前に混合、配合されていても良く、また押し出し成形時に混合、配合することもできる。
【0127】
また、Nz係数の異なる2枚の光学フィルムの成形は、上記溶融法だけでなく、良溶媒、例えば、クロロホルム等の溶媒を用いキャスト成形によることも可能である。
【0128】
さらに必要に応じて、未延伸フィルムを機械的流れ方向(MD)に縦一軸延伸、機械的流れ方向に直行する方向(TD)に横一軸延伸することができる。例えば、工業的には、ロール延伸またはテンター延伸による一軸延伸法、ロール延伸とテンター延伸の組み合わせによる逐次2軸延伸法、テンター延伸による同時2軸延伸法、チューブラー延伸による2軸延伸法等によって延伸フィルムを製造することができる。最終的な延伸倍率は得られたフィルムの熱収縮率より判断することができる。延伸倍率は少なくともどちらか一方向に0.1%以上300%以下であることが好ましく、1%以上200%以下であることがさらに好ましく、2%以上100%以下であることがとりわけ好ましい。この範囲に設計することにより、複屈折、強度の観点で好ましい延伸フィルムが得られる。延伸倍率は、得られた延伸フィルムをガラス転移温度よりも20℃以上高い温度で収縮させ以下の関係式から延伸倍率を決定できる。また、ガラス転移温度はDSC法や粘弾性法により求めることができる。
延伸倍率(%)=[(収縮前の長さ/収縮後の長さ)−1]×100
【0129】
本発明において、Nz係数の異なる2枚の光学フィルムの厚みは、1μm以上であることが好ましく、より好ましくは5μm以上である。
【0130】
本発明において、Nz係数が異なる2枚の光学フィルムの積層は、工業的に通常用いられる方法を採用することができる。例えば、各フィルムそれぞれを接着剤を用いて貼り合わせる、いわゆるドライラミネーション法や、一方フィルムに、溶融状態の他方のフィルムを構成する樹脂組成物をT−ダイを用いて積層する、いわゆるT−ダイ法等が挙げられる。
【0131】
各フィルムを接着剤を用いて貼り合わせる場合は、光学的に透明で異方性がないアクリル系粘着剤を用いることが好ましい。また偏光フィルムとの貼り合わせ、LCDへの貼り合わせにも同様のアクリル系粘着剤を用いることが好ましい。粘着剤の厚みは通常15μm〜30μmである。
【0132】
本発明における積層光学フィルムの好ましいReの絶対値は0nm〜400nmであり、さらに好ましくは5nm〜350nmであり、とりわけ好ましくは20nmを超え350nm以下である。
本発明の積層光学フィルムを1/4波長板として用いる場合、そのReの絶対値は、100nm以上180nm以下であることが好ましく、より好ましくは120nm以上160nm以下、さらに好ましくは130nm以上150nm以下である。
また、本発明の積層光学フィルムは1/2波長板としても用いる場合、そのReの絶対値は、240nm以上320nm以下であることも好ましく、より好ましくは260nm以上300nm以下、さらに好ましくは270nm以上290nm以下である。
【0133】
本発明の積層光学フィルムは、Nz係数が異なる2枚の光学フィルムを両者の遅相軸が平行となるように積層したフィルムであるところ、2枚のフィルムを両者の遅相軸が平行となるように積層したフィルムのReは、2枚のフィルム各々のReの和に近づく。そのため、積層光学フィルムのReの値は、
2枚のフィルムを遅相軸が平行となるよう積層する前に、各フィルムのReを延伸等により所望の値に調整しておくことにより、自在に制御することができる。
ここで、各フィルムのReの絶対値の目安としては0〜400nm程度であり、さらに好ましくは5〜350nmであり、とりわけ好ましくは10nmを超え350nm以下である。
本発明において、各フィルムのReは、フィルムを構成する樹脂又は樹脂組成物の組成や質量比、成形体の厚み、及び延伸倍率等を好ましい範囲内に設計することにより制御することができる。
【0134】
本発明におけるフィルムAの好ましいRthの値は、500nm〜1nmであり、さらに好ましくは、450nm〜5nmであり、とりわけ好ましくは350nm〜10nmである。Rthの値は、MD、TD方向の延伸倍率、フィルムの厚さにより調整することができる。
【0135】
本発明におけるフィルムB1、2の好ましいRthの値は、−500nm〜−1nmであり、さらに好ましくは、−450nm〜−5nmであり、とりわけ好ましくは−350nm〜−10nmである。Rthの値は、MD、TD方向の延伸倍率、フィルム厚さ、樹脂(B−1)、樹脂(B−2)の質量比により調整することができる。
【0136】
本発明におけるNz係数の異なる2枚のフィルムを積層した積層光学フィルムの好ましいRthの値は、−500nm以上20nm以下であり、さらに好ましくは、−300nm〜20nmであり、とりわけ好ましくは、−150nm〜20nmである。
本発明者らの研究によれば、積層フィルムのRthは、両者の遅相軸の交差角の値によらず、各フィルムのRthの和となることが分かった。したがって、積層光学フィルムのRthの値は、各フィルムのRthを調整することにより制御することができる。
例えば、正負が逆のRthを有するフィルムAとフィルムBを積層すると、両者のRthが相殺し合う結果、積層フィルムのRthの絶対値が小さくなる。
【0137】
本発明におけるNz係数の異なる2枚のフィルムを積層した積層光学フィルムの好ましいNz係数は、−1.0〜1.0である。更に好ましいNz係数としては0.4〜0.6又は−0.1〜0.1又は−0.6〜−0.4である。とりわけ好ましくは0.5又は0又は−0.5である。この範囲にNz係数を制御することにより、光漏れ、色むら、カラーシフトが低減する。
積層光学フィルムのNz係数は、Nz係数の異なる2枚のフィルム各々のnz、ny、nz及び厚みdを調整すると共に、両者のフィルム面内の遅相軸が平行となるように積層することにより、制御することができる。
より具体的には、各々のフィルムのnz、ny、nz及び厚みdを、式(1)にあてはめたときに、積層フィルムのNz係数(の予測値)が積層光学フィルムのNz係数として所望する値となるように調整する。

ここで、nx1、2はフィルム1、2の面内の遅相軸方向の屈折率であり、ny1、2はそれと垂直方向の屈折率であり、nz1、2はフィルム1、2の厚み方向の屈折率である。また、d1、2はフィルム1、2の厚さ(μm)である。
なお、フィルムのnx、ny、nz係数は、例えば、フィルムを構成する樹脂や樹脂組成物の組成(共重合割合、配合比等を含む)、縦(MD)方向と横(TD)方向の延伸倍率を調整することにより制御できる。
【0138】
本発明において、固有複屈折とは、配向に依存した複屈折の大きさを表す値で、下式により定義される。
固有複屈折=npr−nvt
ここで、nprは、一軸性の秩序をもって配向した高分子の配向方向と平行な方向の屈折率、nvtはその配向方向と垂直な方向の屈折率である。
【0139】
本発明の積層光学フィルムには、例えば反射防止処理、透明導電処理、電磁波遮蔽処理、ガスバリア処理等の表面機能化処理をすることもできる。
【実施例】
【0140】
次に実施例によって本発明を具体的に説明する。
本発明および実施例で用いた評価法を説明する。
(I)分子量の測定
i)スチレン系樹脂(B−1)
GPC(測定装置:東ソー(株)製GPC−8020、検出器:示差屈折検出器(RI)、カラム:昭和電工株式会社製Shodex K−805、801連結)を用い、溶媒はクロロホルム、測定温度40℃で、市販標準ポリスチレン換算で質量平均分子量を求める。
ii)アクリル系樹脂(B−2)
東ソー株式会社製ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(HLC−8120+8020)カラムに、東ソー株式会社製TSKスーパーHH−M(2本)とスーパーH2500(1本)を直列に並べ、検出器として示差屈折検出器を用いる。測定試料となるアクリル系樹脂0.02gを20ccのTHF溶媒に溶解し、注入量10ml、展開流量0.3ml/minで、溶出時間と、強度を測定した。ジーエルサイエンス株式会社製の重量平均分子量が既知の単分散のメタクリル系樹脂を標準試料とした検量線を用いて、測定試料のアクリル系樹脂の重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)を求め、分子量分布をMw/Mnとして算出する。
【0141】
(II)共重合割合の測定
i)スチレン−アクリロニトリル共重合体中のアクリロニトリルの共重合割合の測定
試料となるスチレン−アクリロニトリル共重合体を熱プレス機を用いてフィルムに成形し、日本分光株式会社製FT−410を用いて、フィルムの1603cm-1、2245cm-1におけるアクリロニトリル基に由来する吸光度を測定する。アクリロニトリル含量が既知のスチレン−アクリロニトリル共重合体を用いてあらかじめ求めておいたスチレン−アクリロニトリル共重合体中のアクリロニトリル含量と1603cm-1、2245cm-1の吸光度比の関係を用いて、スチレン−アクリロニトリル共重合体中のアクリロニトリル含量を定量する。
ii)スチレン−無水マレイン酸共重合体中の無水マレイン酸の共重合割合の測定
試料となるスチレン−無水マレイン酸共重合体を重クロロホルムに溶解し、日本電子株式会社製1H−NMR(JNM ECA−500)を用い、周波数500MHz、室温にてNMR測定を行なった。測定結果より、スチレン単位中のベンゼン環のプロトンピーク(7ppm付近)と無水マレイン酸単位中のアルキル基のプロトンピーク(1〜3ppm付近)の面積比から、試料中のスチレン単位と無水マレイン酸単位のモル比を求める。得られたモル比とそれぞれのモノマー単位の質量比(スチレン単位:無水マレイン酸単位=104:98)から、スチレン−無水マレイン酸共重合体中の無水マレイン酸の共重合割合を求める。
iii)スチレン−メタクリル酸共重合体中のメタクリル酸の共重合割合の測定
試料となるスチレン−メタクリル酸共重合体を重クロロホルムに溶解し、日本電子株式会社製1H−NMR(JNM ECA−500)を用い、周波数500MHz、室温にてNMR測定を行なう。測定結果より、スチレン単位中のベンゼン環のプロトンピーク(7ppm付近)とメタクリル酸単位中のアルキル基のプロトンピーク(1〜3ppm付近)の面積比から、試料中のスチレン単位とメタクリル酸単位のモル比を求める。得られたモル比とそれぞれのモノマー単位の質量比(スチレン単位:メタクリル酸単位=104:86)から、スチレン−メタクリル酸共重合体中のメタクリル酸の共重合割合を求める。
iv)メタクリル酸メチル−無水マレイン酸−スチレン共重合体中のそれぞれの共重合割合の測定
試料となるメタクリル酸メチル−無水マレイン酸−スチレン共重合体を重クロロホルムに溶解し、日本電子株式会社製1H−NMR(JNM ECA−500)を用い、周波数500MHz、室温にてNMR測定を行なう。測定結果より、スチレン単位中のベンゼン環のプロトンピーク(7ppm付近)と無水マレイン酸単位中のアルキル基のプロトンピーク(1〜3ppm付近)とメタクリル酸メチル単位中のメチル基のプロトンピーク(0.5〜1ppm付近)の面積比から、試料中のスチレン単位と無水マレイン酸単位とメタクリル酸メチル単位のモル比を求める。得られたモル比とそれぞれのモノマー単位の質量比(スチレン単位:無水マレイン酸単位:メタクリル酸メチル=104:86:100)から、メタクリル酸メチル−無水マレイン酸−スチレン共重合体中のそれぞれの共重合割合を求める。
【0142】
v)メタクリル酸メチル−6員環構造を有する酸無水物−スチレン共重合体中のそれぞれの共重合割合の測定
試料となるメタクリル酸メチル−6員環構造を有する酸無水物単位−スチレン共重合体50mgを重ジメチルスルホキシド(d−DMSO)0.75mLに溶解し、日本電子製1H−NMR(JNM ECA−500)を用い、周波数500MHz、40℃にてNMR測定を行なった。
測定結果より、スチレン単位内のベンゼン環のプロトンピーク(7ppm付近)の積分値、メタクリル酸単位内のカルボン酸のプロトンピーク(12〜13ppm付近)の積分値を求め、これらの値から、スチレン単位に対するメタクリル酸単位のモル比を求める。
次に、2.7〜4ppm付近の複数のピークの積分値の合計から、3.3ppm付近に観測されるDMSO中の水によるピークの積分値を減じることにより、メタクリル酸メチル単位のCOOMe部位のメチル基のプロトンピークの積分値を求め、この値とスチレン単位内のベンゼン環のプロトンピーク(7ppm付近)の積分値とから、スチレン単位に対するメタクリル酸メチル単位のモル比を求める。
スチレン単位に対する6員環構造を有する酸無水物単位のモル比は、次のようにして求める。すなわち、0〜2.2ppm付近の複数のピークは、スチレン単位内の主鎖骨格中に含まれるメチレン基、メタクリル酸単位内の主鎖骨格中に含まれるメチレン基、メタクリル酸単位内の主鎖骨格に直接結合しているメチル基、メタクリル酸メチル単位内の主鎖骨格中に含まれるメチレン基、メタクリル酸メチル単位内の主鎖骨格に直接結合しているメチル基、6員環構造を有する酸無水物単位内の主鎖骨格中に含まれるメチレン基及び、6員環を有する酸無水物単位内の6員環中に含まれるメチレン基、及び、6員環を有する酸無水物単位内の6員環に直接結合するメチル基に由来するものと認められる。そこで、0〜2.2ppm付近の複数のピークの積分値の合計とスチレン単位内のベンゼン環のプロトンピーク(7ppm付近)の積分値との比率、先に求めたスチレン単位に対するメタクリル酸単位のモル比、及び、先に求めたスチレン単位に対するメタクリル酸メチル単位のモル比を利用して、スチレン単位に対する6員環を有する酸無水物単位のモル比を算出する。
このようにして求めたスチレン単位に対する各単位のモル比から、試料中のメタクリル酸メチル単位、一般式[2]で表される6員環を有する酸無水物単位、スチレン単位、メタクリル酸単位のモル比を求め、この値と各々のモノマー単位の質量比(メタクリル酸メチル単位:6員環を有する酸無水物単位:スチレン単位:メタクリル酸単位=100:154(例えば、耐熱アクリル系樹脂(B−2−2−2)1の場合):104:86)から、メタクリル酸メチル−6員環を有する酸無水物単位−スチレン共重合体中のそれぞれの共重合割合を求める。
【0143】
(III)光学特性の測定
i)固有複屈折値正負の判断
ガラス転移温度以上、ガラス転移温度+50℃以下の範囲内で伸張応力をかけながら延伸を行い、急冷固化し、23℃におけるnpr−nvtを測定する。npr−nvtが負の場合、固有複屈折が負、npr−nvtが正の場合、固有複屈折が正と判断する。
ii)面内レタデーション(Re)の測定
シックネスゲージを用いてフィルムの厚さd(nm)を測定する。この値を大塚電子(株)社製複屈折測定装置RETS−100に入力し、測定面が測定光と垂直になるように試料を配置し、23℃で回転検光子法により面内レタデーション(Re)を測定・算出する。
iii)厚み方向レタデーション(Rth)及びNz係数の測定
Metricon社製レーザー屈折計Model2010を用いて、23℃で光学フィルムの平均屈折率nを測定する。そして、平均屈折率nとフィルム厚さd(nm)を大塚電子(株)社製複屈折測定装置RETS−100に入力し、23℃で厚み方向レタデーション(Rth)、Nz係数を測定・算出する。
【0144】
[実施例1〜17、比較例1〜3]
(I)厚み方向レタデーション(Rth)が正のフィルムAの製造
i)ノルボルネン系樹脂フィルムA1
ノルボルネン系樹脂フィルムを以下のようにして得た。環状ポリオレフィンとしてエチレンとノルボルネンとの付加重合を行った。これによりエチレン−ノルボルネンランダム共重合体(エチレンの共重合割合:65mol%、MFR:31g/10分、数平均分子量:68000)を製造した。ここで得た樹脂100質量部をシクロヘキサン80質量部、トルエン80質量部、キシレン80質量部の混合溶剤に溶解し、流延法により厚さ55μmのフィルムを作製した。固有複屈折値は正であった。
後述の(II)のフィルムBの製造と同様にして、1軸延伸フィルムをA1を得た。
ii)ポリカーボネート系樹脂フィルムA2〜4
ポリビスフェノールAカーボネートフィルムを用意した。固有複屈折値は正であった。
後述の(II)のフィルムBの製造と同様にして、1軸延伸又は2軸延伸フィルムをA2〜4を得た。
【0145】
(II)厚み方向レタデーション(Rth)が負のフィルムBの製造
(フィルムBを構成する材料の準備)
i)スチレン−無水マレイン酸共重合体(B−1−3)
装置の全てがステンレス鋼で製作されているものを用いて、連続溶液重合を行った。スチレン91.7質量部、無水マレイン酸8.3質量部の比率で合計100質量部を準備した。(ただし、両者は混合しない。)メチルアルコール5質量部、重合開始剤として1,1−tert−ブチルパーオキシ−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン0.03質量部をスチレンに混合し、第1調合液とした。0.95kg/hr.の速度で連続して内容積4Lのジャケット付き完全混合重合機に供給した。
一方、70℃に加熱した無水マレイン酸を、第二調合液として0.10kg/hr.の速度で同一重合機へ供給し、111℃で重合を行った。重合転化率が54%となったところで、重合液を重合機から連続して取り出し、まず230℃に予熱後、230℃に保温し、20torrに減圧された脱揮器に供給し、平均滞留0.3時間経過後、脱揮器の底部のギヤポンプより連続して排出し、スチレン−無水マレイン酸共重合体(B−1−3)を得た。
得られたスチレン−無水マレイン酸共重合体(B−1−3)は無色透明で、組成分析の結果、スチレンの共重合割合85質量%、無水マレイン酸単位15質量%であった。ASTM−D1238に準拠して測定した230℃、2.16kg荷重のメルトフローレート値は2.0g/10分であった。また、23℃におけるその光弾性係数(未延伸)は、4.1×10-12Pa-1であり、固有複屈折は負であった。
【0146】
ii)アクリル酸アルキルエステル又はメタクリル酸アルキルエステルを単量体成分として含む重合体(B−2−1)
メタクリル酸メチル89.2重量部、アクリル酸メチル5.8重量部、及びキシレン5重量部からなる単量体混合物に、1,1−ジ−t−ブチルパーオキシ−3,3,3−トリメチルシクロヘキサン0.0294重量部、及びn−オクチルメルカプタン0.115重量部を添加し、均一に混合した。この溶液を内容積10リットルの密閉耐圧反応器に連続的に供給し、攪拌下に平均温度130℃、平均滞留時間2時間で重合した後、反応器に接続された貯層に連続的に送り出し、一定条件下で揮発分を除去し、さらに押出機に連続的に溶融状態で移送し、アクリル系樹脂(B−2)(メタクリル酸メチル/アクリル酸メチル共重合体)ペレットを得た。得られた共重合体のアクリル酸メチルの共重合割合は6.0%、重量平均分子量は145,000、ASTM−D1238に準拠して測定した230℃3.8kg荷重のメルトフロー値は1.0g/分であった。また、23℃におけるその光弾性係数(未延伸)は、−5.2×10-12Pa-1であり、固有複屈折値は負であった。
【0147】
iii)耐熱アクリル系樹脂(B−2−2−1)(フィルムB6用)
特公昭63−1964号公報に記載の方法で、スチレン、メタクリル酸メチル、無水マレイン酸を用いて、メタクリル酸メチル−無水マレイン酸−スチレン共重合体を得た。
得られたメタクリル酸メチル−無水マレイン酸−スチレン共重合体の組成は、メタクリル酸メチル74質量%、無水マレイン酸10質量%、スチレン16質量%であり、重量平均分子量は、121,000、共重合体メルトフローレート値(ASTM−D1238;230℃、3.8kg荷重)は1.6g/10分であった。また、23℃におけるその光弾性係数(未延伸)は、−2.7×10-12Pa-1であり、固有複屈折値は負であった。
【0148】
iv)耐熱アクリル系樹脂(B−2−2−2)
1)耐熱アクリル系樹脂(B−2−2−2)1(フイルムB7用)
メタクリル酸メチル35質量部、スチレン21質量部、メタクリル酸14質量部、シクロヘキサノール30質量部、1,1−ジ(tert−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン50ppm、n−オクチルメルカプタン1200ppmからなる混合液を調製し、10分間窒素ガスをバブリングした。この混合液を内容量3Lのジャケット付完全混合反応機に1.5L/hrの速度で連続供給して重合を行った。重合温度135℃で2時間反応させたところ、重合体は完全に溶解しており、重合液中に含まれる重合体固形分量が42質量%となった。この重合溶液を直ちに加熱器に通して、バレル温度255℃に設定し、25Torrに減圧したベント付き二軸押出機に連続的に供給し、未反応単量体類及び溶媒の除去とともに6員環構造を有する酸無水物単位の生成を実施した。未反応単量体類及び溶媒は回収ラインを通じて回収した。得られた重合体を、さらに50Torrに減圧したベント付き二軸押出機(L/D=67)に通して、未反応単量体類及び溶媒の除去と6員環構造を有する酸無水物単位の生成を完結させた。得られた重合体の組成は、メタクリル酸メチル単位43質量%、スチレン単位33質量%、メタクリル酸単位7質量%、6員環構造を有する酸無水物単位17質量%であり、メルトフローレート(ASTM−D1238;230℃、3.8kg荷重)は0.6g/10分、Mw/Mn=1.9、Tg=136℃であった。また、23℃におけるその光弾性係数(未延伸)は、−0.1×10-12Pa-1であり、固有複屈折値は負であった。
2)耐熱アクリル系樹脂(B−2−2−2)2(フイルムB8、フイルムB9用)
メタクリル酸メチル27質量部、スチレン25質量部、メタクリル酸18質量部、シクロヘキサノール30質量部、1,1−ジ(tert−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン50ppm、n−オクチルメルカプタン1300ppmからなる混合液を調製し、10分間窒素ガスをバブリングした。この混合液を内容量3Lのジャケット付完全混合反応機に1.5L/hrの速度で連続供給して重合を行った。重合温度135℃で2時間反応させたところ、重合体は完全に溶解しており、重合液中に含まれる重合体固形分量が44質量%となった。さらに、重合溶液を260℃に設定した高温脱揮装置へ連続して供給し、1時間滞留して未反応物の除去及び脱水、脱メタノール反応による6員環構造を有する酸無水物単位の生成を行った。
得られた重合体の組成は、メタクリル酸メチル単位35質量%、スチレン単位40質量%、メタクリル酸単位7質量%、6員環構造を有する酸無水物単位18質量%であり、メルトフローレート(ASTM−D1238;230℃、3.8kg荷重)は0.7g/10分、Mw/Mn=1.9、Tg=133℃であった。また、23℃におけるその光弾性係数(未延伸)は、0.7×10-12Pa-1であり、固有複屈折値は負であった。
【0149】
(フイルムBの製造)
表1に記載の樹脂又は樹脂組成物を用い、株式会社テクノベル製Tダイ装着押し出し機(KZW15TW−25MG−NH型/幅150mmTダイ装着/リップ厚0.5mm)を用いて、スクリュー回転数、押し出し機のシリンダー内樹脂温度、Tダイの温度を表3に示す条件に調整し押し出し成形をすることにより未延伸フィルムを得た。フィルムの流れ(押し出し方向)をMD方向、MD方向に垂直な方向をTD方向とした。
そして、未延伸フィルムを幅が50mmになるように切り出し、表1に示す条件で1軸延伸(チャック間:50mm、チャック移動速度:500mm/分)を引っ張り試験機を用いて行い、1軸延伸フィルムを得た。
さらに、一部の1軸延伸フィルムについては幅が50mmになるように切り出し、表1に示す条件で1軸延伸(チャック間:50mm、チャック移動速度:500mm/分)を引っ張り試験機を用いて行い、1軸延伸又は2軸延伸フィルムB1〜9を得た。
フイルムA1〜A4、フィルムB1〜9の組成、押し出し成形条件、フィルムの厚み、面内レタデーション(Re)、厚み方向レタデーション(Rth)、Nz係数、nx−ny、nx−nzを表1に示す。
【0150】
【表1】

【0151】
(III)積層光学フィルムの製造
表2に示す組み合わせでフィルムA、Bを用い、これらを遅相軸が平行となるように、厚み約20μmのアクリル系粘着剤で貼り合わせることにより積層して、本発明に該当する実施例1〜17の積層光学フィルムを製造した。また、表2に示す組み合わせでフィルムA、Bを用い、これらを遅相軸が垂直となるように、厚み約20μmのアクリル系粘着剤で貼り合わせることにより積層して、比較例1〜3の積層光学フィルムを製造した。
表2に示すように、フィルムA、Bを、両者の遅相軸が平行となるように積層した実施例1〜17においては、積層フィルムのNz係数は、概ね式(1)を用いて予測された値となった。このことを利用して、実施例1〜17においては積層フィルムのNz係数を所望の値、すなわち、0、0.5、又は、−0.5に調整することができた。
これに対して、フィルムA、Bを、両者の遅相軸が垂直となるように積層した比較例1〜3の積層フィルムにおいては、積層フィルムのNz係数とフィルムA、Bのnx、ny、nz、dとの間に相関は見られず、積層フィルムのNz係数を所望の値に調整することはできなかった。
【0152】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0153】
本発明の積層光学フィルムは、ディスプレイ前面板、ディスプレイ基盤、タッチパネル、太陽電池に用いられる透明基盤等や、その他、光通信システム、光交換システム、光計測システム等の分野における、導波路、レンズ、光ファイバー、光ファイバーの被覆材料、LEDのレンズ、レンズカバーなど様々な光学素子を製造するたに使用できる。
特に、本発明の積層光学フィルムは、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、有機ELディスプレイ、フィールドエミッションディスプレイ、リアプロジェクションテレビ等のディスプレイに用いられる偏光板保護フィルムや、1/4波長板、1/2波長板等の位相差板、視野角制御フィルム等の液晶光学補償フィルムを製造するために好適に用いることができる。
とりわけ、本発明の積層光学フィルムは液晶表示装置用の偏光板保護フィルムや位相差フィルムを製造するために好適に用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
Nz係数が異なる2枚の光学フィルムを、両者の遅相軸が平行となるように積層した積層光学フィルム。
【請求項2】
そのNz係数が0.4〜0.6、−0.1〜0.1、又は−0.6〜−0.4である請求項1に記載の積層光学フィルム。
【請求項3】
前記Nz係数が異なる2枚の光学フィルムが、厚み方向レタデーション(Rth)が正のフィルムA又は厚み方向レタデーション(Rth)が負のフィルムB1と、厚み方向レタデーション(Rth)が負のフィルムB2である請求項1又は2に記載の積層光学フィルム。
【請求項4】
前記フィルムB1及び/又はB2が、アクリル系樹脂(B−2)又はスチレン系樹脂(B−1)とアクリル系樹脂(B−2)とを含む樹脂組成物からなる請求項3に記載の積層光学フィルム。
【請求項5】
前記スチレン系樹脂(B−1)が、スチレン−アクリロニトリル共重合体である請求項4に記載の積層光学フィルム。
【請求項6】
前記スチレン−アクリロニトリル共重合体のアクリロニトリルの共重合割合が、1〜40質量%である請求項5に記載の積層光学フィルム。
【請求項7】
前記スチレン系樹脂(B−1)が、スチレン−メタクリル酸共重合体である請求項4に記載の積層光学フィルム。
【請求項8】
前記スチレン−メタクリル酸共重合体中のメタクリル酸の共重合割合が、0.1〜50質量%である請求項7に記載の積層光学フィルム。
【請求項9】
前記スチレン系樹脂(B−1)が、スチレン−無水マレイン酸共重合体である請求項4に記載の積層光学フィルム。
【請求項10】
前記スチレン−無水マレイン酸共重合体中の無水マレイン酸の共重合割合が、0.1〜50質量%である請求項9に記載の積層光学フィルム。
【請求項11】
前記フィルムB1及び/又はB2が、メタクリル酸エステル及び/又はアクリル酸エステル単位40質量%以上90質量%以下と、芳香族ビニル化合物単位5質量%以上40質量%以下と、下記一般式[1]で表される化合物単位5質量%以上20質量%以下とを含み、下記一般式[1]で表される化合物単位の共重合割合に対する芳香族ビニル単量体単位の共重合割合の比(ビニル芳香族単量体単位の共重合割合/一般式[1]で表される化合物単位の共重合割合)が1倍以上3倍以下である耐熱アクリル系樹脂を含む請求項3に記載の積層光学フィルム。
一般式[1]
【化1】

(ただし、一般式[1]において、Xは、OまたはN−Rを表す。ここで、Oは酸素原子、Nは窒素原子、Rは水素原子またはアルキル基またはアリール基またはシクロアルカン基である。)
【請求項12】
前記フィルムB1及び/又はB2が、メタクリ酸エステル及び/又はアクリル酸エステル単量体単位15質量%以上64質量%以下と、下記一般式[2]で表される6員環構造を有する酸無水物単位15質量%以上35質量%以下と、芳香族ビニル化合物単位1質量%以上50質量%以下とを含む共重合体である耐熱アクリル系樹脂を含む請求項3に記載の積層光学フィルム。
一般式[2]
【化2】

(ただし、一般式[2]において、R1、R2は、それぞれ独立に水素原子又は炭素数が1〜6の置換又は非置換のアルキル基を表し、該アルキル基は、例えば水酸基で置換されていてもよい。)
【請求項13】
請求項1〜12のいずれか1項に記載の積層光学フィルムからなる偏光板保護フィルム。
【請求項14】
請求項1〜12のいずれか1項に記載の積層光学フィルムからなる位相差フィルム。

【公開番号】特開2009−198600(P2009−198600A)
【公開日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−37873(P2008−37873)
【出願日】平成20年2月19日(2008.2.19)
【出願人】(309002329)旭化成イーマテリアルズ株式会社 (771)
【Fターム(参考)】