説明

積層剥離容器

【課題】製造や組立が容易であり、シール性能を向上させ、経時的なシール性能の劣化がなく、キャップに大きな開口のバージンシールを設けることも可能としつつ、外層と内層の間に空気が導入されて容器外観形状の変化を防止するとともに、内層の内容物が空気にさらされるのを防止する積層剥離容器を提供すること。
【解決手段】積層剥離容器100の口筒部120の側方に貫通孔121が少なくとも1箇所設けられ、キャップ130のスカート壁部140に口筒部120に離接する弁機構を有する中栓150が内挿され、該中栓150が、中空円筒状の保持外枠151と、内容物の一方向のみの流れを許容する中央弁体152と、空気の一方向のみの流れを許容する空気弁体153を有していること。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外層と内層が自在に剥離する積層剥離容器に関し、外層と内層の間に空気を導入可能に構成されたキャップとを有する積層剥離容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、外層と内層を剥離可能とし、容器内の減圧に対して内層のみが変形して外層と内層の間に空気が導入されて容器外観形状の変化を防止するとともに、内層の内容物が空気にさらされるのを防止する積層剥離容器が知られている。
【0003】
公知の積層剥離容器は、例えば外層をスクイズした際には、外層と内層の間の空気が外部に排出されずに内層の内容物のみが注ぎ出され、スクイズを解除した際には、外層の原型への復帰力によって外層と内層の間の空気が導入され内層内には空気が進入しないように構成され、このために、外層と内層の間の空気に対する逆止弁機構と、内層の内容物に対する逆止弁機構とをキャップ内に設けたものが知られている(例えば、特許文献1等参照。)。
【0004】
この公知の積層剥離容器においては、容器本体の口筒部の嵌合される中栓と、該中栓とキャップの間に配される弁体とが別体になっており、中栓に設けられた内容物の吐出口と弁体とで内層の内容物に対する逆止弁機構が、キャップに設けられた吸入口と弁体とで外層と内層の間の空気に対する逆止弁機構がそれぞれ構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3497736号公報(全頁、全図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1に示すような公知の積層剥離容器においては、中栓、弁体、キャップそれぞれの製造精度やそれらの位置関係により逆止弁機構のシール性能が大きく左右されるため、製造や組立にコストがかかるという問題があった。
また、それぞれの逆止弁機構は、キャップの締め込みによってそのシール性が担保されるため、経時的な締め付け力の低下にともないシール性能が劣化してしまうとういう問題があった。
また、弁体が中栓とキャップの間に配されるため、キャップに大きな開口のバージンシールを設けても中栓の開口の大きさで開口部が制約されるという問題があった。
【0007】
そこで本発明は、前述したような公知の積層剥離容器の問題を解決するものであって、製造や組立が容易であり、シール性能を向上させ、経時的なシール性能の劣化がなく、キャップに大きな開口のバージンシールを設けることも可能としつつ、容器内の減圧に対して内層のみが変形して外層と内層の間に空気が導入されて容器外観形状の変化を防止するとともに、内層の内容物が空気にさらされるのを防止する積層剥離容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本請求項1に係る発明は、剥離自在な外層および内層の少なくとも2層からなり、該外層の開口側に口筒部が設けられた容器本体と、前記口筒部に外嵌して該容器本体を密封するとともに、前記内層内の内容物を注ぎ出し可能、かつ、前記外層と内層の間に空気を導入可能に構成されたキャップとを有する積層剥離容器であって、前記容器本体の口筒部の側方には、該口筒部を貫通して前記外層と内層との間に空気を導入可能な貫通孔が少なくとも1箇所設けられ、前記キャップが、円形状又は環状の頂壁と該頂壁の周縁から垂下し、前記口筒部に外嵌し前記貫通孔より下方で密に嵌合する中空円筒状のスカート壁部からなるキャップ本体と、該頂壁の上部を覆い、該キャップ本体に開閉可能に連結された上蓋とを有し、前記上蓋は、天面壁と該天面壁の周縁から垂下する側壁とからなり、前記スカート壁部には、前記口筒部に離接する弁機構を有する中栓が内挿され、該中栓が、中空円筒状の保持外枠と、内容物の一方向のみの流れを許容する中央弁体と、空気の一方向のみの流れを許容する空気弁体を有していることにより、前記課題を解決するものである。
【0009】
本請求項2に係る発明は、請求項1に記載された積層剥離容器の構成に加えて、前記中栓は、前記保持外枠が前記スカート壁部に内挿保持され、前記中空弁体は、前記保持外枠の内側に間隔を開けて保持されて前記口筒部の開口部に弾性的に離接するよう構成され、前記空気弁体は、前記保持外枠の下方に伸びて前記口筒部の先端の外周に弾性的に離接するよう構成されていることにより、前記課題を解決するものである。
【0010】
本請求項3に係る発明は、請求項2に記載された積層剥離容器の構成に加えて、前記中央弁体が、前記口筒部に向かって凸の半球状に形成されるとともに、前記保持外枠の内周面と接続する複数個の弾性腕部によって一体的に形成され、前記空気弁体が、前記保持外枠の下方に一体に形成されていることにより、前記課題を解決するものである。
【0011】
本請求項4に係る発明は、請求項3に記載された積層剥離容器の構成に加えて、前記頂壁は円形状に形成され、該頂壁の中央に、弱化部により切り取り可能に形成された切取部を有する口壁を有し、該切取部の下方には、前記中央弁体を前記口筒部に向かって押圧する押圧凸部が形成されていることにより、前記課題を解決するものである。
【0012】
本請求項5に係る発明は、請求項3に記載された積層剥離容器の構成に加えて、前記頂壁は環状に形成され、該頂壁の開口部を前記上蓋が覆い、該上蓋の裏面には、前記中央弁体を前記口筒部に向かって押圧する押圧突起が設けられていることにより、前記課題を解決するものである。
【0013】
本請求項6に係る発明は、請求項1乃至請求項5のいずれかに記載された積層剥離容器の構成に加えて、前記口筒部と前記スカート壁部が、それぞれに設けられた螺旋ネジ部で螺合されるように構成され、前記口筒部の前記貫通孔より上部には、上下方向に空気の流通が可能な切欠部が設けられていることにより、前記課題を解決するものである。
【発明の効果】
【0014】
本請求項1に係る発明の積層剥離容器は、中栓が、中空円筒状の保持外枠と、内容物の一方向のみの流れを許容する中央弁体と、空気の一方向のみの流れを許容する空気弁体を有し、該中栓がスカート壁部に内挿されることによって、弁体が一体となった中栓をキャップのスカート壁部に内挿して予め一体化して取り扱うことが可能となる。
【0015】
このことで、中栓、弁体およびキャップの組立作業や位置決め作業が容易となるとともに、製造精度が向上する。また、キャップの締め付け力によって弁体を中栓に押し付けて弁体のシール性を確保する構成とする必要がないため、キャップの締め付け力の経時的な低下にともなうシール性能の劣化を防止することができる。
【0016】
本請求項2に記載の構成によれば、中空弁体が保持外枠の内側に間隔を開けて保持されて口筒部の開口部に弾性的に離接するよう構成されているため、保持外枠をスカート壁部に近い位置で保持することで中空弁体を口筒部の開口部の上方に位置させ、開口部全体が開閉する弁機構とすることができ、シール性を損なうことなく内容物の注ぎ出すための開口を大きくすることができる。また、このことで、スカート壁部の上部に大きな開口を設けることが可能となるため、キャップのスカート壁部の上部に大きな開口のバージンシールを設けることが可能となる。
【0017】
また、空気弁体は、保持外枠の下方に伸びて口筒部の先端の外周に弾性的に離接するよう構成されているため、形状や位置の精度が低くても、口筒部の先端の外周に弾性的に嵌合することで芯合わせされシール性能が確保される。さらに、空気弁体は、キャップの締め付け方向の位置が多少ずれてもシールが可能であるため、キャップの締め付け力の経時的な低下にともなうシール性能の劣化を防止することができる。
【0018】
本請求項3に記載の構成によれば、中央弁体が口筒部に向かって凸の半球状に形成されるとともに、保持外枠の内周面と接続する複数個の弾性腕部によって一体的に形成されることにより、中央弁体が弾性力によって口筒部の開口部を上方から確実に横圧して閉塞することができ、シール性を向上することができるとともに、内容物を押し出す際にも、中央弁体が弾性力に抗して上方に円滑に移動するため、逆止弁としての動作を確実に円滑に行うことができる。
【0019】
また、中央弁体と空気弁体が保持外枠とが一体に形成されていることにより、射出成形等の樹脂成形技術によって中栓を1部品として製造することが可能であり、形状や寸法の精度を容易に確保できるため、製造や組立が容易となる。
【0020】
本請求項4に記載の構成によれば、頂壁は円形状に形成され、頂壁の中央に、弱化部により切り取り可能に形成された切取部(バージンシール)を有する口壁が設けられ、切取部(バージンシール)の下方に中央弁体を口筒部に向かって押圧する押圧凸部が形成されていることにより、内容物が充填された使用前の状態で圧力によって中央弁体が開くことを防止でき、輸送時や保管時に外部から圧力がかかったり、温度変化等によって内圧が上昇したりしても、逆止弁が作動せず内容物が中央弁体の上部に漏洩することを防止できる。
【0021】
本請求項5に記載の構成によれば、頂壁は環状に形成され、頂壁の開口部を上蓋が覆い、上蓋の裏面に、中央弁体を口筒部に向かって押圧する押圧突起が設けられていることにより、使用時以外の上蓋を閉じている状態では、外部から圧力がかかったり、温度変化等によって内圧が上昇したりしても、逆止弁が作動せず内容物が中央弁体の上部に漏洩することを防止できる。
【0022】
本請求項6に記載の構成によれば、口筒部とスカート壁部が、それぞれに設けられた螺旋ネジ部で螺合されるように構成され、口筒部の貫通孔より上部には上下方向に空気の流通が可能な切欠部が設けられていることにより、外層と内層の間に導入される空気の流通を妨げることなく、キャップと容器本体を強固に締め付け固定できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の第1実施例である積層剥離容器の口筒部近傍の断面図。
【図2】本発明の第1実施例である積層剥離容器の容器本体の口筒部の半断面図。
【図3】図2の90度視点を変えた断面図。
【図4】本発明の第1実施例である積層剥離容器のキャップの断面図。
【図5】本発明の第1実施例である積層剥離容器の中栓の平面図。
【図6】本発明の第1実施例である積層剥離容器の中栓の半断面図。
【図7】本発明の第1実施例である積層剥離容器の内容物注ぎ出し時の説明図。
【図8】本発明の第1実施例である積層剥離容器の空気導入時の説明図。
【図9】本発明の第2実施例である積層剥離容器の口筒部近傍の断面図。
【図10】本発明の第2実施例である積層剥離容器のキャップの断面図。
【図11】図9の上蓋開放時の断面図。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0024】
以下に、本発明の第1実施例である積層剥離容器100の構成および動作について、図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の第1実施例である積層剥離容器100の内容物が充填された使用前の状態を示し、容器本体110、キャップ130および中栓150を有している。
容器本体110は、剥離自在な外層111および内層112の2層からなり、外層111の開口側に口筒部120が設けられている。
【0025】
キャップ130は、円形状の頂壁144と頂壁144の周縁から垂下し、口筒部120に外嵌し貫通孔121より下方で密に嵌合する中空円筒状のスカート壁部140からなるキャップ本体131と、頂壁144の上部を覆い、キャップ本体131に開閉可能に連結された上蓋133とを有し、上蓋133は、天面壁132と天面壁132の周縁から垂下する側壁149とからなり、中栓150を内挿し、口筒部120に外嵌して容器本体110を密封するとともに、内層112内の内容物を注ぎ出し可能、かつ、外層111と内層112の間に空気を導入可能に構成されている。
外層111は、図1においては口筒部120近傍のみを図示したが、図示より下方では、スクイズ動作が可能なよう、すなわち押圧に対して変形し、押圧力を解除すると弾性により元の形状に復帰可能なように、材料、形状および厚み等が適宜選択される。
図1に図示された外層111の口筒部120近傍では、外層111は、キャップ130を固定し後述する逆止弁機構を円滑に機能させるために、形状が変化しないように、材料、形状および厚み等が適宜選択される。
【0026】
内層112は、少なくとも口筒部120の先端が外層111と密着固定されて外層111の内部空間に装填され、自由に変形可能で内容物の減少にともなって外層111との間の空間の容積が自由に変化可能なように、材料、形状および厚み等が適宜選択される。
なお、外層111および内層112は、それぞれ、単一の材料で一体的に形成されても良く、複数の材料で複数の部分に分割され適宜の手段で密着固定されて容器としての機能を持つように構成されても良い。
【0027】
外層111の口筒部120には、図2、図3に示すように、上部が開口して最上部の外周側に外層と内層との間に導入される空気の一方向のみの流れを許容するための逆止弁機構を構成する上端段部123が設けられ、側方に貫通孔121が設けられている。また、貫通孔121より上端側にキャップ130が螺合する螺旋ネジ部122が設けられ、貫通孔121より下方側には、キャップ130が密に嵌合して下方への空気の流れを阻止するための大径部125が設けられている。
【0028】
貫通孔121の外側開口部の上端側は、螺旋ネジ部122を含めて平面状に形成された切欠部124が設けられており、キャップ130が螺合した際に貫通孔121の外側開口部から上端段部123までに空気が自由に通過可能な空間を形成している。なお、図示された本実施例では、2つの貫通孔121が180°対向した位置に設けられているが、どのような位置にいくつ設けるかは、必要に応じて適宜選択して良い。
【0029】
キャップ130は、図4に示すように、口筒部120に外嵌する中空円筒状のスカート壁部140と、スカート壁部140の上部を開閉可能な頂壁144とを有している。
スカート壁部140の内周側の上端側には、中栓150を保持する上部保持凸部141と下部保持凸部142が設けられている。スカート壁部140の内周側の下部保持凸部142の下方には、口筒部120の螺旋ネジ部122と螺合する螺旋ネジ部143が設けられている。スカート壁部140の下端側は、口筒部120の大径部125に嵌合可能な内径を有し、内周側の周方向に連続するように密封凸部146が設けられており、密封凸部146が口筒部120の大径部125との間で密に嵌合することで、スカート壁部140の内周側の下方への空気の流れが阻止される。
【0030】
頂壁144には、弱化部135により切り取り可能に形成された切取部134が設けられ、未使用時の気密性を確保するバージンシールを構成している。切取部134の下方には、後述する中央弁体152を口筒部120に向かって押圧する押圧凸部139が形成されている。本実施例では、切取部134の中央を厚みが一定で下方に膨出する形状として押圧凸部139を形成しているが、中央の厚みを大きくするようにして押圧凸部139を形成しても良い。
【0031】
切取部134の上方にはプルリング138が形成されており、使用開始時にプルリング138を上方に引き上げることで切取部134が弱化部135から破断して切り取られ、頂壁144の中央に切取部134の形状の開口が形成される。頂壁144上部の弱化部135の外周側には、上方に向かって内容物を円滑に注ぎ出すための注出筒部136が形成されている。
【0032】
上蓋の天面壁には、天面壁の下面から垂下する封止壁部137が設けられ、頂壁144の上端の注出筒部136の内周面と密着して、切取部134を引き裂いた後の密封を保持している。さらに上蓋133は、頂壁144の外周側に設けられたヒンジ部147で結合されて開閉可能に構成されており、頂壁144の上端の注出筒部136の外周側に設けられた上蓋係止部148にスナップ嵌合することで閉状態を維持可能に構成されている。
【0033】
上蓋133の下面側には、閉状態の時に注出筒部136の内周側と密着する封止壁部137が設けられており、上蓋133が閉状態の時の密封性を向上している。なお、ヒンジ部147による結合を省略して、上蓋133を独立した部材としても良く、その場合、上蓋係止部148と上蓋133とを、周方向のスナップ嵌合、ネジ嵌合等の他の嵌合手段を用いても良い。
【0034】
中栓150は、図5、図6に示すように、中空円筒状の保持外枠151と、保持外枠151の内側に間隔を開けて保持されて口筒部120の開口部に弾性的に離接して内容物の注ぎ出し方向のみの流れを許容するよう構成された中央弁体152と、保持外枠151の下方に伸びて口筒部120の先端の上端段部123の外周に弾性的に離接して空気の外層と内層の間への導入方向のみの流れを許容するよう構成された空気弁体153とを有している。
【0035】
中央弁体152は、口筒部120の開口部に向かって凸の半球状に形成されるとともに保持外枠151の内周の複数箇所と接続する弾性腕部155によって一体的に形成されている。また、中央弁体152の上方には、前述した切取部134の押圧凸部139によって図1に示すように口筒部120の開口部に向かって押圧される被押圧部156が形成されている。弾性腕部155は、両端が保持外枠151と中央弁体152の周方向の異なる位置で接続され中央部が周方向に伸びるように構成され、この弾性腕部155を周方向に複数設けている。この構造で、中央弁体152が軸方向にのみ弾性的に移動可能とされ、口筒部120の開口部に密着することで逆止弁として動作する。なお、弾性腕部155の数、周方向長さ、断面積等は、必要とする弾性力に応じて適宜設計して良く、逆止弁として動作する構造であれば、本実施例のような弾性腕部155によらない構造で保持外枠151の内周部に支持しても良い。
【0036】
空気弁体153は、保持外枠151の下方に弾性変形により弁として作用するように一体に形成されて、口筒部120の上端段部123の外周面に押し付けられることで逆止弁として動作する。このことで、各構成部材の形状や位置の精度が低くても、空気弁体153が口筒部120の先端の外周に弾性的に嵌合することで芯合わせされシール性能が確保される。また、空気弁体153がキャップ130の締め付け方向の位置が多少ずれてもシールが可能であるため、キャップの締め付け力の経時的な低下にともなうシール性能の劣化を防止することができる。
【0037】
保持外枠151の下方外周側には、前述したキャップ130のスカート壁部140に設けられた下部保持凸部142に係止する係合顎部154が設けられている。係合顎部154は、弾性変形が可能な厚みで形成されており、中栓150をキャップ130のスカート壁部140の下方から挿入した際に、螺旋ネジ部143および下部保持凸部142を変形しながら乗り越えるように構成されている。このことで、中栓150をキャップ130のスカート壁部140の内部に保持させるための組立作業が容易となる。また、中栓150の各構成部分を一体に形成することが可能なため、射出成形等の樹脂成形技術によって中栓を1部品として製造することが可能であり、製造や組立が容易となる。
【0038】
以上のように構成された本発明の第1実施例である積層剥離容器100の作用および動作について、図1、図7、図8に基づいて説明する。
まず、容器本体110の内層112内に内容物が充填された状態で、切取部134が切り取られていない状態のキャップ130に中栓150が内挿されて、図1に示すように、該キャップ130が口筒部120に螺合される。そして、キャップ130が口筒部120に完全に螺合された時、口筒部120の上端が中栓150の中央弁体152をわずかに上方に押し上げるように設計することで、中央弁体152が常に弾性腕部155の弾性により口筒部120の上端に押し付けられ、逆止弁として確実に作用することが可能となる。
【0039】
また、切取部134の下方に設けられた押圧凸部139が、中央弁体152の被押圧部156を押圧するように形成されているため、未使用時に圧力によって中央弁体152が開くことを防止でき、輸送時や保管時に外部から圧力がかかったり、温度変化等によって内圧が上昇したりしても、逆止弁が作動せず内容物が中央弁体152の上部に漏洩することを防止できる。また、当該押し上げにより、中栓150の保持外枠151の上端部が、キャップ130のスカート壁部140の内周側の上端側に設けられた上部保持凸部141に押し付けられる。このことで、保持外枠151の上端部から上方への空気の流れが阻止される。
【0040】
切取部134が切り取られた開口から内容物を注ぎ出す際は、図7に示すように、上蓋133が開放された状態で、例えば容器本体110を強く握る等の動作で、外部から変形させて内部に圧力を加える。この時、外層111と内層112の間に存在する空気が加圧され、貫通孔121を通じて、外層111の口筒部120、キャップ130のスカート壁部140および中栓150で囲まれた空間の空気も加圧される。
この際、口筒部120とスカート壁部140は、大径部125と密封凸部146により密封されており、スカート壁部140と中栓150は、保持外枠151の上端部が上部保持凸部141に押し付けられることで密封されており、口筒部120と中栓150は、保持外枠151の下端部に伸びる空気弁体153が口筒部120の上端段部123の外周面に押し付けられて逆止弁として働いて密封されている。
このため、上記加圧された空気は流出することなく、その圧力は内層112内の内容物を押し出す力としてのみ作用する。圧力を受けた内層112内の内容物は、黒矢印で図示するように、開口部を閉塞している中栓150の中央弁体152を弾性腕部155の弾性に抗して押し上げて外部に注ぎ出される。
【0041】
注ぎ出しを停止する際は、容器本体110の外部からの変形を解除する。この時、容器本体110の外層111は弾性により元の形状に復帰しようとするため、外層111と内層112の間に存在する空気が負圧となり、貫通孔121を通じて、外層111の口筒部120、キャップ130のスカート壁部140および中栓150で囲まれた空間の空気も負圧となる。
この際、白矢印で図示するように、口筒部120と中栓150を密封していた保持外枠151の下端部に伸びる空気弁体153が負圧により口筒部120の上端段部123の外周面から離れて空気が導入され、切欠部124、貫通孔121を通過して内層112と外層111の間の空間に空気が流入する。また、内層112の内容物も負圧となるが、当該負圧によって中栓150の中央弁体152が弾性腕部155の弾性に抗して押し上げる力が解除され、中央弁体152が開口部を閉塞して逆止弁として働くため、内層112内に空気が流入することはない。
なお、図8では、説明のため空気弁体153が上端段部123の外周面から大きく離れるように図示しているが、負圧により空気が通過すればよく、わずかな隙間が生じる変形であっても良い。
【実施例2】
【0042】
次に、本発明の第2実施例である積層剥離容器200の構成および動作について、図面に基づいて説明する。
本発明の第2実施例である積層剥離容器200は、図9、図11に示すように、容器本体210、キャップ230および中栓250を有している。
なお、積層剥離容器200のキャップ230の天蓋部232および頂壁244以外の構成、動作および作用は、第1実施例である積層剥離容器100と同様であるので、以下の説明は第2実施例である積層剥離容器200特有の部分のみとする(同様の構成、動作および作用の部分は、第1実施例である積層剥離容器100の説明の符号に100を加えて読み替える。)。
【0043】
キャップ230は、図10に示すように、環状の頂壁244と頂壁244の周縁から垂下し、口筒部220に外嵌し貫通孔221より下方で密に嵌合する中空円筒状のスカート壁部240からなるキャップ本体231と、頂壁244の上部を覆い、キャップ本体231に開閉可能に連結された上蓋233とを有し、上蓋233は、天面壁232と天面壁232の周縁から垂下する側壁249とから構成される。
頂壁244の中央には、内容物を注ぎ出す開口が形成され、開口の外周側には、上方に向かって内容物を円滑に注ぎ出すための注出筒部236が形成されている。
頂壁244の上端の注出筒部236の外周側には、封止壁部237が設けられ、上蓋233は、頂壁244の外周側に設けられたヒンジ部247で結合されて開閉可能に構成されており、頂壁244の上端の注出筒部236の外周側に設けられた上蓋係止部248にスナップ嵌合することで閉状態を維持可能に構成されている。
【0044】
上蓋233の天面壁232の下面側には、閉状態の時に注出筒部236の内周側と密着する封止壁部237が設けられており、上蓋233が閉状態の時の密封性を向上している。さらに、天面壁232の下面の中央には、中央弁体252を口筒部220に向かって押圧する押圧突起239が形成されている。
【0045】
以上のように構成された本発明の第2実施例である積層剥離容器200の特有の作用および動作についてのみ説明する。
第2実施例である積層剥離容器200は、天面壁232の下面の中央に設けられた押圧突起239が、中央弁体252の被押圧部256を押圧するように形成されているため、未使用時、使用開始後にかかわらず上蓋233を閉塞した状態とすることで、圧力によって中央弁体252が開くことを防止できる。
したがって、使用開始後であっても上蓋233を閉塞すれば、輸送時や保管時に外部から圧力がかかったり、温度変化等によって内圧が上昇したりしても、逆止弁が作動せず内容物が中央弁体252の上部に漏洩することを防止できる。
そして、使用時は図11に示すように、中央弁体252の被押圧部256は、天面壁232の押圧突起239による押圧が解除され、逆止弁として自由に動作可能となり内容物の注ぎ出しが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明の積層剥離容器は、製造や組立が容易であり、シール性能を向上させ、経時的なシール性能の劣化がなく、キャップに大きな開口のバージンシールを設けることも可能としつつ、容器内の減圧に対して内層のみが変形して外層と内層の間に空気が導入されて容器外観形状の変化を防止するとともに、内層の内容物が空気にさらされるのを防止することができるため、化学薬品、医薬品、食料品等のガス遮断性が必要な内容物を、適量の注ぎ出しと保管を繰り返す用途に使用する容器として好適に利用できる。
【符号の説明】
【0047】
100、200 ・・・積層剥離容器
110、210 ・・・容器本体
111、211 ・・・外層
112、212 ・・・内層
120、220 ・・・口筒部
121、221 ・・・貫通孔
122、222 ・・・螺旋ネジ部
123、223 ・・・上端段部
124、224 ・・・切欠部
125、225 ・・・大径部
130、230 ・・・キャップ
131、231 ・・・キャップ本体
132、232 ・・・天面壁
133、233 ・・・上蓋
134 ・・・切取部
135 ・・・弱化部
136、236 ・・・注出筒部
137、237 ・・・封止壁部
138 ・・・プルリング
139 ・・・押圧凸部
239 ・・・押圧突起
140、240 ・・・スカート壁部
141、241 ・・・上部保持凸部
142、243 ・・・下部保持凸部
143、243 ・・・螺旋ネジ部
144、244 ・・・頂壁
146、246 ・・・密封凸部
147、247 ・・・ヒンジ部
148、248 ・・・上蓋係止部
149、249 ・・・側壁
150、250 ・・・中栓
151、251 ・・・保持外枠
152、252 ・・・中央弁体
153、253 ・・・空気弁体
154、254 ・・・係合顎部
155、255 ・・・弾性腕部
156、256 ・・・被押圧部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
剥離自在な外層および内層の少なくとも2層からなり、該外層の開口側に口筒部が設けられた容器本体と、前記口筒部に外嵌して該容器本体を密封するとともに、前記内層内の内容物を注ぎ出し可能、かつ、前記外層と内層の間に空気を導入可能に構成されたキャップとを有する積層剥離容器であって、
前記容器本体の口筒部の側方には、該口筒部を貫通して前記外層と内層との間に空気を導入可能な貫通孔が少なくとも1箇所設けられ、
前記キャップが、円形状又は環状の頂壁と該頂壁の周縁から垂下し、前記口筒部に外嵌し前記貫通孔より下方で密に嵌合する中空円筒状のスカート壁部からなるキャップ本体と、該頂壁の上部を覆い、該キャップ本体に開閉可能に連結された上蓋とを有し、
前記上蓋は、天面壁と該天面壁の周縁から垂下する側壁とからなり、
前記スカート壁部には、前記口筒部に離接する弁機構を有する中栓が内挿され、
該中栓が、中空円筒状の保持外枠と、内容物の一方向のみの流れを許容する中央弁体と、空気の一方向のみの流れを許容する空気弁体を有していることを特徴とする積層剥離容器。
【請求項2】
前記中栓は、前記保持外枠が前記スカート壁部に内挿保持され、
前記中空弁体は、前記保持外枠の内側に間隔を開けて保持されて前記口筒部の開口部に弾性的に離接するよう構成され、
前記空気弁体は、前記保持外枠の下方に伸びて前記口筒部の先端の外周に弾性的に離接するよう構成されていることを特徴とする請求項1に記載の積層剥離容器。
【請求項3】
前記中央弁体が、前記口筒部に向かって凸の半球状に形成されるとともに、前記保持外枠の内周面と接続する複数個の弾性腕部によって一体的に形成され、
前記空気弁体が、前記保持外枠の下方に一体に形成されていることを特徴とする請求項2に記載の積層剥離容器。
【請求項4】
前記頂壁は円形状に形成され、該頂壁の中央に、弱化部により切り取り可能に形成された切取部を有する口壁を有し、
該切取部の下方には、前記中央弁体を前記口筒部に向かって押圧する押圧凸部が形成されていることを特徴とする請求項3に記載の積層剥離容器。
【請求項5】
前記頂壁は環状に形成され、該頂壁の開口部を前記上蓋が覆い、該上蓋の裏面には、前記中央弁体を前記口筒部に向かって押圧する押圧突起が設けられていることを特徴とする請求項3に記載の積層剥離容器。
【請求項6】
前記口筒部と前記スカート壁部が、それぞれに設けられた螺旋ネジ部で螺合されるように構成され、
前記口筒部の前記貫通孔より上部には、上下方向に空気の流通が可能な切欠部が設けられていることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の積層剥離容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−206733(P2012−206733A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−72469(P2011−72469)
【出願日】平成23年3月29日(2011.3.29)
【出願人】(000228442)日本クラウンコルク株式会社 (382)
【Fターム(参考)】